JP7188105B2 - 方向性電磁鋼板 - Google Patents

方向性電磁鋼板 Download PDF

Info

Publication number
JP7188105B2
JP7188105B2 JP2019005126A JP2019005126A JP7188105B2 JP 7188105 B2 JP7188105 B2 JP 7188105B2 JP 2019005126 A JP2019005126 A JP 2019005126A JP 2019005126 A JP2019005126 A JP 2019005126A JP 7188105 B2 JP7188105 B2 JP 7188105B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
less
steel sheet
based coating
silicon steel
oxide film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019005126A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020111812A (ja
Inventor
義行 牛神
史明 高橋
一郎 田中
宣郷 森重
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2019005126A priority Critical patent/JP7188105B2/ja
Publication of JP2020111812A publication Critical patent/JP2020111812A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7188105B2 publication Critical patent/JP7188105B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)

Description

本発明は、方向性電磁鋼板に関する。特に、鉄損が好適に低減された方向性電磁鋼板に関する。
一方向性電磁鋼板は、磁気鉄芯材料として多用されており、特にエネルギーロスを少なくするために、鉄損の少ない材料が求められている。鉄損の低減には、鋼板に張力を付与することが有効である。
鋼板に張力を付与するためには、鋼板より熱膨張係数の小さく、ヤング率の高い材質からなる被膜を高温で形成することが有効である。すなわち、鋼板と被膜との間の熱膨張係数差によって生じる熱応力を利用して鋼板に張力を付与する。通常の一方向性電磁鋼板の表面には、脱炭焼鈍工程で生じるSiOを主体とする酸化膜と焼鈍分離剤として通常用いられるMgOとが、仕上げ焼鈍中に反応して形成されたフォルステライト(MgSiO)を主体とする被膜(以下、仕上焼鈍被膜と称する)が存在する。この仕上げ焼鈍被膜は、鋼板に与える張力が大きく、鉄損低減に効果がある。
さらに、特許文献1(特開昭48-39338号公報)に記載された、コロイド状シリカと燐酸塩とを主体とするコーティング液を塗布して焼き付けることによって得られる絶縁被膜(張力被膜)は、鋼板に対して張力付与の効果が大きく、鉄損低減に有効である。従って、仕上げ焼鈍工程で生じた被膜を残した上で絶縁被膜を施すことが、一般的な一方向性電磁鋼板の製造方法となっている。
また、絶縁被膜による鋼板への張力を増大させる試みもなされている。例えば、特許文献2(特開平6-306628号公報)に記載されている、アルミナゾルと硼酸とを主体とするコーティング液を塗布し焼き付けることで得られるAl-B系の被膜は、同一膜厚の場合、コロイド状シリカと燐酸塩とを主体とする絶縁被膜に比べて、1.5~2倍の被膜張力を得ることができる。
一方、上記した絶縁被膜の改善とは異なる方法による鉄損低減も試みられている。例えば、フォルステライト被膜の存在によって仕上げ焼鈍被膜と地鉄との界面構造が乱れると、絶縁被膜が付与する張力によって得られる鉄損改善効果がある程度相殺されることが明らかとなっている。そこで、特許文献3(特開昭49-96920号公報)や特許文献4(特開平4-131326号公報)に記載されている如く、仕上げ焼鈍工程で生じる仕上げ焼鈍被膜を研磨・研削等の機械的手段あるいは酸洗等の化学的手段等により除き、さらにその後に化学研磨や再焼鈍によって鏡面化仕上げを行った後に張力被膜を形成することにより、さらなる鉄損低減を試みる技術が開発されている。あるいは仕上げ焼鈍における仕上げ焼鈍被膜の形成を防止することによって実質的に仕上げ焼鈍被膜が無い状態もしくは鏡面状態にした後に張力被膜を形成することにより、さらなる鉄損低減を試みる技術が開発されている。
しかしながら、上記した技術はそれぞれに鉄損改善効果が得られるが、上記した技術を組み合わせても、鉄損改善に対して組合せ効果が得られないことが判明している。例えば、鏡面化仕上げを行った方向性電磁鋼板に対して、ホウ酸・アルミナ系の高張力被膜を形成しても、鉄損改善効果が小さいことが判明している。
特開昭48-39338号公報 特開平6-306628号公報 特開昭49-96920号公報 特開平4-131326号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、鉄損が好適に低減された方向性電磁鋼板を提供することを課題とする。
本発明の要旨は次の通りである。
(1)本発明の一態様にかかる方向性電磁鋼板は、母材鋼板である珪素鋼板と、珪素鋼板上に接して配された中間層と、中間層上に接して配された絶縁被膜とを有する方向性電磁鋼板であって、上記中間層が酸化膜であり、この酸化膜が酸化珪素を含み、且つ上記酸化膜の平均膜厚が2nm以上500nm以下であり、上記絶縁被膜がホウ酸アルミニウム系被膜であり、このホウ酸アルミニウム系被膜がアルミニウム・ホウ素酸化物を含み、且つ上記ホウ酸アルミニウム系被膜の平均膜厚が0.5μm超8μm以下であり、切断方向が板厚方向と平行となる切断面で見たとき、上記ホウ酸アルミニウム系被膜中の空隙が面積率で0%以上2.3%以下であり、上記切断面で見たとき、上記珪素鋼板と上記酸化膜との界面に酸化領域が存在し、上記界面から上記珪素鋼板に向かって最大深さで0.2μm以上嵌入している酸化領域の上記界面に対する線分率が0.1%以上12%以下である。
(2)上記(1)に記載の方向性電磁鋼板では、上記アルミニウム・ホウ素酸化物として、Al1833またはAlの少なくとも1つが含まれてもよい。
(3)上記(1)または(2)に記載の方向性電磁鋼板では、上記ホウ酸アルミニウム系被膜が酸化アルミニウムをさらに含んでもよい。
(4)上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の方向性電磁鋼板では、上記ホウ酸アルミニウム系被膜上に接して配されたリン酸系被膜をさらに有し、上記リン酸系被膜がリン珪素複合酸化物を含んでもよい。
(5)上記(1)~(4)のいずれか1つに記載の方向性電磁鋼板では、上記珪素鋼板が、化学成分として、質量%で、Si:0.8%以上7.0%以下、Mn:0以上1.00%以下、Cr:0以上0.30%以下、Cu:0以上0.40%以下、P:0以上0.50%以下、Sn:0以上0.30%以下、Sb:0以上0.30%以下、Ni:0以上1.00%以下、B:0以上0.008%以下、V:0以上0.15%以下、Nb:0以上0.2%以下、Mo:0以上0.10%以下、Ti:0以上0.015%以下、Bi:0以上0.010%以下、Al:0以上0.005%以下、C+Nの合計:0以上0.005%以下、及びS+Seの合計:0以上0.005%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、上記珪素鋼板が、{110}<001>方位に発達した集合組織を有してもよい。
(6)上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の方向性電磁鋼板では、上記珪素鋼板が、化学成分として、質量%で、Mn:0.05%以上1.00%以下、Cr:0.02%以上0.30%以下、Cu:0.05%以上0.40%以下、P:0.005%以上0.50%以下、Sn:0.02%以上0.30%以下、Sb:0.01%以上0.30%以下、Ni:0.01%以上1.00%以下、B:0.0005%以上0.008%以下、V:0.002%以上0.15%以下、Nb:0.005%以上0.2%以下、Mo:0.005%以上0.10%以下、Ti:0.002%以上0.015%以下、及びBi:0.001%以上0.010%以下からなる群から選択される少なくとも1種を含有してもよい。


本発明の上記態様によれば、鉄損が好適に低減された方向性電磁鋼板を提供できる。
本発明の一実施形態に係る方向性電磁鋼板の断面模式図である。 同実施形態に係る方向性電磁鋼板の酸化領域の線分率を示す断面模式図である。 同実施形態に係る方向性電磁鋼板の断面写真である。
例えば、鉄損のさらなる低減を目的として、フォルステライト被膜を有さない母材鋼板(珪素鋼板)に、シリカを含む中間層(酸化膜)と、絶縁被膜(ホウ酸アルミニウム系被膜)とを積層した方向性電磁鋼板を製造する。この方向性電磁鋼板は、フォルステライト被膜ではなく酸化膜を有するので界面が平滑であり、且つホウ酸アルミニウム系被膜を有するので被膜張力が高まり、そのため、鉄損をこれまで以上に低減できると期待される。しかし実際には、期待されるほど鉄損を低減できない。
本発明者らが、鉄損が低減しない理由を鋭意調査したところ、酸化膜と珪素鋼板との界面に、珪素鋼板側に嵌入する内部酸化領域が存在し、また、ホウ酸アルミニウム系被膜中に空隙が存在していることが観察された。鉄損が低減しない理由としては、珪素鋼板と酸化膜との界面に内部酸化領域が存在することで、珪素鋼板表面の平滑性が失われ、また、ホウ酸アルミニウム系被膜中に空隙が存在することで、珪素鋼板に対する張力付与効果が低下し、その結果、鉄損低減を阻害していると考えられる。
鋼板に内部酸化領域が形成され、被膜中に空隙が形成される原因を調査したところ、被膜形成のための均熱および冷却の際に、ホウ酸アルミニウム系被膜に含まれるアルミニウム・ホウ素酸化物の一部が分解することによって被膜中に空隙が生じるとともに、分解の際に発生した水蒸気または酸素によって鋼板が内部酸化されると考えられた。
そこで、本発明者らが鋭意検討し、被膜形成工程で均熱条件と冷却条件とを最適に制御することによって、ホウ酸アルミニウム系被膜中の空隙の形成と鋼板中の内部酸化領域の形成とを同時に抑制でき、その結果、鉄損をより一層低減した方向性電磁鋼板が得られることを知見するに至った。
以下、本発明の一実施形態に係る方向性電磁鋼板について詳細に説明する。ただ、本発明は本実施形態に開示の構成のみに限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。また、下記する数値限定範囲には、下限値及び上限値がその範囲に含まれる。「超」または「未満」と示す数値は、その値が数値範囲に含まれない。各元素の含有量に関する「%」は、「質量%」を意味する。
本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、Siを含有する母材鋼板である珪素鋼板と、珪素鋼板上に形成された中間層である酸化膜と、酸化膜上に形成され、空隙の断面面積率が5.0%以下となる絶縁被膜であるホウ酸アルミニウム系被膜と、を有し、鋼板内部に存在する酸化領域の線分率が0.1%以上15%以下である。図1に、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の断面模式図を示す。図1では、符号1が母材鋼板(珪素鋼板)、符号2が中間層(酸化膜)、符号3が絶縁被膜(ホウ酸アルミニウム系被膜)、符号4が酸化領域(内部酸化領域)、符号5が空隙、符号6が珪素鋼板と酸化膜との界面である。なお、図1は模式図であり、図1によって各膜の膜厚や、酸化領域の大きさや、空隙の大きさなどが限定解釈されない。
(珪素鋼板)
本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、母材鋼板として珪素鋼板を有する。この珪素鋼板は、化学成分として、基本元素を含み、必要に応じて選択元素を含み、残部がFe及び不純物からなることが好ましい。
本実施形態では、珪素鋼板が、基本元素(主要な合金元素)としてSiを含有すればよい。
Si:0.8%以上7.0%以下
Si(シリコン)は、珪素鋼板の化学成分として、電気抵抗を高め、鉄損を下げるのに有効な元素である。Si含有量が7.0%を超えると、冷間圧延時に材料が割れ易くなり、圧延し難くなることがある。一方、Si含有量が0.8%未満では、電気抵抗が小さくなり、製品における鉄損が増加してしまうことがある。従って、Siを0.8%以上7.0%以下の範囲で含有させてもよい。Si含有量の下限は、2.0%であることが好ましく、2.5%であることがより好ましく、2.8%であることがさらに好ましい。Si含有量の上限は、5.0%であることが好ましく、3.5%であることがより好ましい。
本実施形態では、珪素鋼板が、不純物を含有してもよい。なお、「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、原料としての鉱石やスクラップから、または製造環境等から混入するものを指す。
また、本実施形態では、珪素鋼板が、上記した基本元素および不純物に加えて、選択元素を含有してもよい。例えば、上記した残部であるFeの一部に代えて、選択元素として、Mn、Cr、Cu、P、Sn、Sb、Ni、B、V、Nb、Mo、Ti、Bi、Al、C、N、S、Seを含有してもよい。これらの選択元素は、その目的に応じて含有させればよい。よって、これらの選択元素の下限値を限定する必要がなく、下限値が0%でもよい。また、これらの選択元素が不純物として含有されても、上記効果は損なわれない。
Mn:0以上1.00%以下
Mn(マンガン)は、Siと同様に、電気抵抗を高めて鉄損を低減するのに有効な元素である。また、SまたはSeと結合してインヒビターとして機能する。従って、Mnを1.00%以下の範囲で含有させてもよい。Mn含有量の下限は、0.05%であることが好ましく、0.08%であることがより好ましく、0.09%であることがさらに好ましい。Mn含有量の上限は、0.50%であることが好ましく、0.20%であることがより好ましい。
Cr:0以上0.30%以下
Cr(クロム)は、Siと同様に、電気抵抗を高めて鉄損を低減するのに有効な元素である。従って、Crを0.30%以下の範囲で含有させてもよい。Cr含有量の下限は、0.02%であることが好ましく、0.05%であることがより好ましい。Cr含有量の上限は、0.20%であることが好ましく、0.12%であることがより好ましい。
Cu:0以上0.40%以下
Cu(銅)も、電気抵抗を高めて鉄損を低減するのに有効な元素である。従って、Cuを0.40%以下の範囲で含有させてもよい。Cu含有量が0.40%を超えると、鉄損低減効果が飽和してしまうとともに、熱間圧延時に“カッパーヘゲ”なる表面疵の原因になることがある。Cu含有量の下限は、0.05%であることが好ましく、0.10%であることがより好ましい。Cu含有量の上限は、0.30%であることが好ましく、0.20%であることがより好ましい。
P:0以上0.50%以下
P(燐)も、電気抵抗を高めて鉄損を低減するのに有効な元素である。従って、Pを0.50%以下の範囲で含有させてもよい。P含有量が0.50%を超えると、珪素鋼板の圧延性に問題が生じることがある。P含有量の下限は、0.005%であることが好ましく、0.01%であることがより好ましい。P含有量の上限は、0.20%であることが好ましく、0.15%であることがより好ましい。
Sn:0以上0.30%以下
Sb:0以上0.30%以下
Sn(スズ)およびSb(アンチモン)は、二次再結晶を安定化させ、{110}<001>方位を発達させるのに有効な元素である。従って、Snを0.30%以下、またSbを0.30%以下の範囲で含有させてもよい。SnまたはSbの含有量が、それぞれ0.30%を超えると、磁気特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
Sn含有量の下限は、0.02%であることが好ましく、0.05%であることがより好ましい。Sn含有量の上限は、0.15%であることが好ましく、0.10%であることがより好ましい。
Sb含有量の下限は、0.01%であることが好ましく、0.03%であることがより好ましい。Sb含有量の上限は、0.15%であることが好ましく、0.10%であることがより好ましい。
Ni:0以上1.00%以下
Ni(ニッケル)も、電気抵抗を高めて鉄損を低減するのに有効な元素である。また、Niは、熱延板の金属組織を制御して、磁気特性を高めるうえで有効な元素である。従って、Niを1.00%以下の範囲で含有させてもよい。Ni含有量が1.00%を超えると、二次再結晶が不安定になることがある。Ni含有量の下限は、0.01%であることが好ましく、0.02%であることがより好ましい。Ni含有量の上限は、0.20%であることが好ましく、0.10%であることがより好ましい。
B:0以上0.008%以下
B(ホウ素)は、BNとしてインヒビター効果を発揮するのに有効な元素である。従って、Bを0.008%以下の範囲で含有させてもよい。B含有量が0.008%を超えると、磁気特性に悪影響を及ぼすおそれがある。B含有量の下限は、0.0005%であることが好ましく、0.001%であることがより好ましい。B含有量の上限は、0.005%であることが好ましく、0.003%であることがより好ましい。
V:0以上0.15%以下
Nb:0以上0.2%以下
Ti:0以上0.015%以下
V(バナジウム)、Nb(ニオブ)、及びTi(チタン)は、NやCと結合してインヒビターとして機能するのに有効な元素である。従って、Vを0.15%以下、Nbを0.2%以下、Tiを0.015%以下の範囲で含有させてもよい。これらの元素が最終製品に残留して、V含有量が0.15%を超え、Nb含有量が0.2%を超え、またはTi含有量が0.015%を超えると、磁気特性を劣化させるおそれがある。
V含有量の下限は、0.002%であることが好ましく、0.01%であることがより好ましい。V含有量の上限は、0.10%以下であることが好ましく、0.05%であることがより好ましい。
Nb含有量の下限は、0.005%であることが好ましく、0.02%であることがより好ましい。Nb含有量の上限は、0.1%であることが好ましく、0.08%であることがより好ましい。
Ti含有量の下限は、0.002%であることが好ましく、0.004%であることがより好ましい。Ti含有量の上限は、0.010%であることが好ましく、0.008%であることがより好ましい。
Mo:0以上0.10%以下
Mo(モリブデン)も、電気抵抗を高めて鉄損を低減するのに有効な元素である。従って、Moを0.10%以下の範囲で含有させてもよい。Mo含有量が0.10%を超えると、鋼板の圧延性に問題が生じることがある。Mo含有量の下限は、0.005%であることが好ましく、0.01%であることがより好ましい。Mo含有量の上限は、0.08%であることが好ましく、0.05%であることがより好ましい。
Bi:0以上0.010%以下
Bi(ビスマス)は、硫化物等の析出物を安定化してインヒビターとしての機能を強化するのに有効な元素である。従って、Biを0.010%以下の範囲で含有させてもよい。Bi含有量が0.010%を超えると、磁気特性に悪影響が及ぼすことがある。Bi含有量の下限は、0.001%であることが好ましく、0.002%であることがより好ましい。Bi含有量の上限は、0.008%であることが好ましく、0.006%であることがより好ましい。
Al:0以上0.005%以下
Al(アルミニウム)は、Nと結合してのインヒビター効果を発揮するのに有効な元素である。従って、仕上げ焼鈍前、例えばスラブの段階でAlを0.01~0.065%の範囲で含有させてもよい。しかしながらAlが最終製品(電磁鋼板)に不純物として残留して、Al含有量が0.005%を超えると、磁気特性に悪影響を及ぼすことがある。従って、最終製品のAl含有量は0.005%以下であることが好ましい。最終製品のAl含有量の上限は、0.004%であることが好ましく、0.003%であることがより好ましい。なお、最終製品のAl含有量は、不純物であり、下限は特に制限されず、少ないほど好ましい。ただ、最終製品のAl含有量を0%にすることは工業的に容易ではないので、最終製品のAl含有量の下限を0.0005%としてもよい。なお、Al含有量は、酸可溶性Alの含有量を示す。
C+Nの合計:0以上0.005%以下
C(炭素)は、一次再結晶集合組織を調整して磁気特性を高めるうえで有効な元素である。また、N(窒素)はAlやBなどと結合してインヒビター効果を発揮するうえで有効な元素である。従って、Cは脱炭焼鈍前、例えばスラブの段階で0.02~0.10%の範囲で含有させても良い。また、Nは仕上げ焼鈍前、例えば窒化焼鈍後の段階で0.01~0.05%の範囲で含有させてもよい。しかしながら、これらの元素が最終製品に不純物として残留して、CおよびNの合計含有量が0.005%を超えると、磁気特性に悪影響を及ぼすことがある。従って、最終製品のCおよびNの合計含有量は0.005%以下であることが好ましい。最終製品のC+N合計含有量の上限は、0.004%であることが好ましく、0.003%であることがより好ましい。なお、最終製品のCおよびNの合計含有量の下限は、不純物であり、特に制限されず、少ないほど好ましい。ただ、最終製品のCおよびNの合計含有量を0%にすることは工業的に容易ではないので、最終製品のCおよびNの合計含有量の下限を0.0005%としてもよい。
S+Seの合計:0以上0.005%以下
S(硫黄)およびSe(セレン)は、Mnなどと結合してインヒビター効果を発揮するうえで有効な元素である。従って、SおよびSeを仕上げ焼鈍前、例えばスラブの段階で合計で0.005~0.050%の範囲で含有させてもよい。しかしながら、これらの元素が最終製品に不純物として残留して、SおよびSeの合計含有量が0.005%を超えると、磁気特性に悪影響を及ぼすことがある。従って、最終製品のSおよびSeの合計含有量は0.005%以下であることが好ましい。最終製品のS+Se合計含有量の上限は、0.004%であることが好ましく、0.003%であることがより好ましい。なお、最終製品のSおよびSeの合計含有量の下限は、不純物であり、特に制限されず、少ないほど好ましい。ただ、最終製品のSおよびSeの合計含有量を0%にすることは工業的に容易ではないので、最終製品のSおよびSeの合計含有量の下限を0.0005%としてもよい。
本実施形態では、珪素鋼板が、選択元素として、質量%で、Mn:0.05%以上1.00%以下、Cr:0.02%以上0.30%以下、Cu:0.05%以上0.40%以下、P:0.005%以上0.50%以下、Sn:0.02%以上0.30%以下、Sb:0.01%以上0.30%以下、Ni:0.01%以上1.00%以下、B:0.0005%以上0.008%以下、V:0.002%以上0.15%以下、Nb:0.005%以上0.2%以下、Mo:0.005%以上0.10%以下、Ti:0.002%以上0.015%以下、及びBi:0.001%以上0.010%以下、からなる群から選択される少なくとも1種を含有してもよい。
上記した珪素鋼板の化学成分は、一般的な分析方法によって測定すればよい。例えば、鋼成分は、ICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いて測定すればよい。なお、CおよびSは燃焼-赤外線吸収法を用い、Nは不活性ガス融解-熱伝導度法を用い、Oは不活性ガス融解-非分散型赤外線吸収法を用いて測定すればよい。
また、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の珪素鋼板は、{110}<001>方位に発達した集合組織を有することが好ましい。{110}<001>方位とは、鋼板面に平行に{110}面が揃い、かつ圧延方向に〈100〉軸が揃った結晶方位(ゴス方位)を意味する。珪素鋼板がゴス方位に制御されることで、磁気特性が好ましく向上する。
上記した珪素鋼板の集合組織は、一般的な分析方法によって測定すればよい。例えば、X線回折法(ラウエ法)により測定すればよい。ラウエ法とは、鋼板にX線ビームを垂直に照射して、透過または反射した回折斑点を解析する方法である。回折斑点を解析することによって、X線ビームを照射した場所の結晶方位を同定することができる。照射位置を変えて複数箇所で回折斑点の解析を行えば、各照射位置の結晶方位分布を測定することができる。ラウエ法は、粗大な結晶粒を有する金属組織の結晶方位を測定するのに適した手法である。
(酸化膜)
本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、中間層として、珪素鋼板上に接して配された酸化膜を有する。
この酸化膜は、酸化珪素を主成分として含み、その膜厚が2nm以上500nm以下である。この酸化膜は、珪素鋼板の表面に沿って連続して広がっている。酸化膜を珪素鋼板とホウ酸アルミニウム系被膜との間に形成することで、珪素鋼板とホウ酸アルミニウム系被膜との密着性が向上して、珪素鋼板に応力を付与することができる。本実施形態では、酸化膜は、フォルステライト被膜ではなく、酸化珪素を主体とする酸化膜である。
酸化膜は、仕上げ焼鈍時にフォルステライト被膜の生成が抑制された又は仕上げ焼鈍後にフォルステライト被膜が除去された珪素鋼板を、所定の酸化度に調整された雰囲気ガス中で熱処理することにより形成される。本実施形態では、酸化膜が、外部酸化によって形成された外部酸化膜であることが好ましい。
ここで、外部酸化膜とは、低酸化度雰囲気ガス中で形成される酸化膜であり、鋼板中の合金元素(Si)が鋼板表面まで拡散した後に、鋼板表面で膜状に形成される酸化物をいう。
酸化膜は、シリカ(酸化珪素)を主成分として含む。酸化膜は、酸化珪素以外に、珪素鋼板に含まれる合金元素の酸化物を含む場合もある。すなわち、Fe、Mn、Cr、Cu、Sn、Sb、Ni、V、Nb、Mo、Ti、Bi、Alの何れかの酸化物、またはこれらの複合酸化物を含む場合がある。加えて、Fe等の金属粒を含む場合もある。また、効果を損なわない範囲で不純物を含んでもよい。
酸化膜の平均厚みは、2nm以上500nm以下が好ましい。平均厚みが2nm未満または500nmを超えると、珪素鋼板とホウ酸アルミニウム系被膜との密着性が低下し、珪素鋼板に十分な応力を付与できなくなり、鉄損が増大してしまうので好ましくない。酸化膜の平均膜厚の下限は、5nmであることが好ましい。酸化膜の平均膜厚の上限は、300nmであることが好ましく、100nmであることがより好ましく、50nmであることがさらに好ましい。
酸化膜の結晶構造は、特に制限されない。ただ、酸化膜は、母相が非晶質であることが好ましい。酸化膜の母相が非晶質であると、珪素鋼板とホウ酸アルミニウム系被膜との密着性を好ましく向上できる。
(酸化領域)
本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、珪素鋼板と酸化膜との界面に酸化領域(内部酸化領域)が存在する。
この酸化領域は、切断方向が板厚方向と平行となる切断面で見たとき、珪素鋼板と酸化膜との界面から珪素鋼板側に向かって嵌入した形態を有する。この酸化領域は、酸化膜を起点にして珪素鋼板の深さ方向に向けて成長したことにより形成されたものであり、界面にて酸化膜に接する形態になっている。
この酸化領域が形成されると、珪素鋼板の表面の平滑性が損なわれて鉄損が増大してしまう。従って、酸化領域は、少なければ少ないほどよい。特に、上記界面から珪素鋼板に向かって最大深さが0.2μm以上の酸化領域は、珪素鋼板の表面の平滑性を大きく損ねて鉄損を悪化させる。そのため、最大深さが0.2μm以上の酸化領域を低減することが好ましい。本実施形態では、最大深さが0.2μm以上である酸化領域を制御する。なお、酸化領域は、製造条件に応じて最大深さが0.5μm程度まで成長することがある。従って、酸化領域の最大深さは、上限を0.5μmとしてもよい。
酸化領域が形成される原因は定かではないが、ホウ酸アルミニウム系被膜を形成する際に、この被膜中に含まれるアルミニウム・ホウ素酸化物の一部が分解し、分解の際に発生した水蒸気または酸素が鋼板を内部酸化させることで生じると推測される。すなわち、酸化領域は、内部酸化領域であると考えられる。
ここで、内部酸化領域とは、比較的高い酸化度雰囲気ガス中で形成される酸化領域であり、鋼板中の合金元素が殆ど表面に拡散することなく、雰囲気の酸素が鋼板内部に拡散した後に、鋼板内部で島状に分散して形成される酸化領域をいう。
酸化領域は、酸化膜と同様に、シリカ(酸化珪素)を主成分として含む。酸化領域は、酸化珪素以外に、珪素鋼板に含まれる合金元素の酸化物を含む場合もある。すなわち、Fe、Mn、Cr、Cu、Sn、Sb、Ni、V、Nb、Mo、Ti、Bi、Alの何れかの酸化物、またはこれらの複合酸化物を含む場合がある。加えて、Fe等の金属粒を含む場合もある。また、効果を損なわない範囲で不純物を含んでもよい。
なお、酸化膜と酸化領域とでは、化学成分や構成相などが一致する場合もあれば、一致しない場合もある。本実施形態では、酸化膜と酸化領域とで、化学成分や構成相などが一致するか否かは特に制限されない。
上述のように、酸化領域は少ないほど好ましい。しかし、酸化領域をゼロにすることは工業的に困難である。本発明者らは、最大深さで0.2μm以上嵌入している酸化領域が上記界面に対して線分率で15%以下に制御されれば、鉄損の低下を好ましく抑制できることを見出した。そのため、本実施形態では、上記の切断面で見て、この酸化領域を上記界面に対して線分率で15%以下に制限する。なお、上記の酸化領域を上記界面に対して線分率0.1%未満に制御することは工業的に容易ではないので、線分率の下限は0.1%とすればよい。
図2に、本実施形態に係る方向性電磁鋼板の酸化領域の線分率を例示する断面模式図を示す。図2に示すように、酸化領域の線分率は、切断面で見たときに、界面6の長さに対する酸化領域4の合計長さの割合と定義する。具体的には、酸化領域の線分率は、酸化領域4の長さdの合計値Σdを界面6の長さLで割った値の百分率で定義する。すなわち、線分率(%)=Σd/L×100である。なお、酸化領域4の長さdは、界面6から深さ方向へ0.02μmだけ等間隔に離れた線上での酸化領域4の長さとする。また、計測対象とする酸化領域は、界面からの最大深さが0.2μm以上の酸化領域とする。
(ホウ酸アルミニウム系被膜)
本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、絶縁被膜として、酸化膜上に接して配されたホウ酸アルミニウム系被膜を有する。
このホウ酸アルミニウム系被膜は、アルミニウム・ホウ素酸化物を含む。このアルミニウム・ホウ素酸化物は、ヤング率が大きいと考えられ、そのため、ホウ酸アルミニウム系被膜として、珪素鋼板に大きな張力を付与できると考えられる。
ホウ酸アルミニウム系被膜に含まれるアルミニウム・ホウ素酸化物の結晶構造は、特に制限されない。アルミニウム・ホウ素酸化物は非晶質または結晶質であればよい。本実施形態では、アルミニウム・ホウ素酸化物が主に非晶質である。ただ、アルミニウム・ホウ素酸化物として、結晶質であるAl1833またはAlの少なくとも1つが含まれることが好ましい。これら結晶質であるAl1833またはAlが、ホウ酸アルミニウム系被膜に含まれることで、珪素鋼板に与える張力がより一層大きくなる。
また、ホウ酸アルミニウム系被膜は、アルミニウム・ホウ素酸化物のほかに、結晶質である酸化アルミニウムを含んでもよい。酸化アルミニウムは、珪素鋼板との熱膨張係数差(約4×10-6-1)がそれほど大きくないが、ヤング率(3~4×10kgf・mm-2)が大きい。そのため、ホウ酸アルミニウム系被膜として、珪素鋼板に大きな張力を付与できる。例えば、ホウ酸アルミニウム系被膜中に、酸化アルミニウムが、面積率で、0.01%以上1%以下含まれてもよい。
また、ホウ酸アルミニウム系被膜は、酸化アルミニウムおよびアルミニウム・ホウ素酸化物のほかに、結晶質である酸化ホウ素(B)を含んでもよい。酸化ホウ素は、珪素鋼板との熱膨張係数差が大きい。そのため、ホウ酸アルミニウム系被膜として、珪素鋼板に付与する張力がより大きくなる。また、酸化ホウ素は、被膜の焼き付け時に酸化アルミニウムの焼成温度を低下させて焼成を容易にし、更に、被膜密着性を高める働きがある。しかしながら、酸化ホウ素が単独で過剰に存在すると耐水性などを劣化させることがある。例えば、ホウ酸アルミニウム系被膜中に含まれる酸化ホウ素は、面積率で、20%以下であればよく、5%以下であればよい。
ホウ酸アルミニウム系被膜中の空隙は、少ない方がよい。本発明者らは、切断方向が板厚方向と平行となる切断面で見たとき、ホウ酸アルミニウム系被膜中の空隙が5.0面積%以下に制御されれば、鉄損の低下を好ましく抑制できることを見出した。例えば、ホウ酸アルミニウム系被膜中の空隙が5.0面積%超では、珪素鋼板に付与される張力が低下し、また内部酸化領域の形成を助長し、その結果、鉄損を増大させてしまう。この空隙の上限は、4.0%であることが好ましく、3.0%であることがより好ましい。また、ホウ酸アルミニウム系被膜中の空隙は少ないほど好ましいので、その下限は特に制限されず、下限が0面積%でもよい。ただ、この空隙を0面積%に制御することは容易ではないので、この空隙の下限は、0.1%であってもよく、0.5%であってもよい。
ホウ酸アルミニウム系被膜の平均厚さは、0.5μm超8μm以下が好ましい。被膜が厚すぎる場合には、張力付与による鉄損改善効果が飽和するとともに占積率が著しく低下する。そのため、ホウ酸アルミニウム系被膜の平均厚さの上限は、8μmが好ましく、6μmがより好ましく、4μmがさらに好ましい。一方、被膜が薄すぎる場合には、珪素鋼板に十分な張力を付与できなくなる。そのため、ホウ酸アルミニウム系被膜の平均厚さの下限は、0.5μm超が好ましく、1μmがより好ましく、2μmがさらに好ましい。
ホウ酸アルミニウム系被膜は、仕上げ焼鈍時にフォルステライト被膜の生成が抑制された又は仕上げ焼鈍後にフォルステライト被膜が除去された珪素鋼板に、酸化膜を形成した後、アルミナゾルとホウ酸とを含む微粒子分散液を塗布し、熱処理することにより形成される。このように形成されたホウ酸アルミニウム系被膜は、アルミニウム・ホウ素酸化物を含み、必要に応じて酸化アルミニウムまたは酸化ホウ素を含む。また、効果を損なわない範囲で不純物を含んでもよい。
(リン酸系被膜)
本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、ホウ酸アルミニウム系被膜上に接して配されたリン酸系被膜をさらに有してもよい。
このリン酸系被膜は、リン珪素複合酸化物(リンおよび珪素を含む複合酸化物)を含む。リン酸系被膜は、コロイダルシリカの混合物と、金属リン酸塩のようなリン酸塩と、水とを含む絶縁被膜形成用組成物を、ホウ酸アルミニウム系被膜上に塗布して焼き付けることにより形成される。絶縁被膜形成用組成物は、無水換算で、25~75質量%のリン酸塩と、75~25質量%のコロイダルシリカとを含めばよい。リン酸塩は、リン酸のアルミニウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩、マンガン塩などであればよい。リン酸系被膜を形成することで、方向性電磁鋼板に更なる張力を付与して鉄損を好ましく低減させることができる。
リン酸系被膜の平均厚さは、0.1μm以上10μm以下が好ましい。リン酸系被膜の平均厚さの上限は、5μmであることが好ましく、3μmであることがより好ましい。リン酸系被膜の平均厚さの下限は、0.5μmであることが好ましく、1μmであることがより好ましい。
上記した本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、次のように観察し、測定する。
各層を形成した方向性電磁鋼板から試験片を切り出し、試験片の層構造を、走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)又は透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)で観察する。例えば、厚さが300nm以上の層はSEMで観察し、厚さが300nm未満の層はTEMで観察すればよい。
具体的には、まず初めに、切断方向が板厚方向と平行となるように試験片を切り出し(詳細には、切断面が板厚方向と平行かつ圧延方向と垂直となるように試験片を切り出し)、この切断面の断面構造を、観察視野中に各層が入る倍率にてSEMで観察する。例えば、反射電子組成像(COMPO像)で観察すれば、断面構造が何層から構成されているかを類推できる。例えば、COMPO像において、珪素鋼板は淡色、酸化膜および酸化領域は濃色、ホウ酸アルミニウム系被膜およびリン酸系被膜は中間色として判別できる。
断面構造中の各層を特定するために、SEM-EDS(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)を用いて、板厚方向に沿って線分析を行い、各層の化学成分の定量分析を行う。定量分析する元素は、Fe、P、Si、O、Mg、Alの6元素とする。使用する装置は特に限定されないが、本実施形態では、例えば、SEM(日立ハイテクノロジーズ社製のNB5000)、EDS(ブルカーエイエックスエス社製のXFlash(r)6│30)、EDS解析ソフトウエア(ブルカーエイエックスエス社製のESPRIT1.9)を用いればよい。
上記したCOMPO像での観察結果およびSEM-EDSの定量分析結果から、板厚方向で最も深い位置に存在している層状の領域であり、且つ測定ノイズを除いてFe含有量が80原子%以上およびO含有量が30原子%未満となる領域であり、且つこの領域に対応する線分析の走査線上の線分(厚さ)が300nm以上であるならば、この領域を珪素鋼板であると判断し、この珪素鋼板を除く領域を、酸化膜、酸化領域、ホウ酸アルミニウム系被膜、およびリン酸系被膜であると判断する。
上記で特定した珪素鋼板を除く領域に関して、COMPO像での観察結果およびSEM-EDSの定量分析結果から、測定ノイズを除いて、Fe含有量が80原子%未満、P含有量が5原子%以上、O含有量が30原子%以上となる領域であり、且つこの領域に対応する線分析の走査線上の線分(厚さ)が300nm以上であるならば、この領域をリン酸系被膜であると判断する。なお、リン酸系被膜を特定するための判断元素である上記3つの元素以外に、リン酸系被膜には、リン酸塩に由来するアルミニウム、マグネシウム、ニッケル、マンガンなどが含まれてもよい。また、コロイダルシリカに由来するシリコンが含まれていてもよい。また、本実施形態では、リン酸系被膜が存在しない場合もある。
上記で特定した珪素鋼板およびリン酸系被膜を除く領域に関して、COMPO像での観察結果およびSEM-EDSの定量分析結果から、測定ノイズを除いて、Fe含有量が80原子%未満、P含有量が5原子%未満、Si含有量が20原子%未満、O含有量が20原子%以上、Al含有量が10原子%以上となる領域であり、且つこの領域に対応する線分析の走査線上の線分(厚さ)が300nm以上であるならば、この領域をホウ酸アルミニウム系被膜であると判断する。なお、ホウ酸アルミニウム系被膜を特定するための判断元素である上記5つの元素以外に、ホウ酸アルミニウム系被膜にはホウ素が含まれる。ただ、ホウ素は、炭素などの影響を受けてEDS定量分析で含有量を精度よく分析することが難しい場合がある。そのため、必要に応じて、ホウ酸アルミニウム系被膜にホウ素が含まれるか否かをEDS定性分析すればよい。
上記のホウ酸アルミニウム系被膜またはリン酸系被膜である領域を判断する際には、各被膜中に含まれる析出物、介在物、および空孔などを判断の対象に入れず、母相として上記の定量分析結果を満足する領域をホウ酸アルミニウム系被膜またはリン酸系被膜であると判断する。例えば、線分析の走査線上に析出物、介在物、および空孔などが存在することがCOMPO像や線分析結果から確認されれば、この領域を対象に入れないで母相としての定量分析結果によって判断する。なお、析出物、介在物、および空孔は、COMPO像ではコントラストによって母相と区別でき、定量分析結果では構成元素の存在量によって母相と区別できる。なお、ホウ酸アルミニウム系被膜またはリン酸系被膜を特定する際には、線分析の走査線上に析出物、介在物、および空孔が含まれない位置にて特定することが好ましい。
上記で特定した珪素鋼板、ホウ酸アルミニウム系被膜、およびリン酸系被膜を除く領域であり、且つこの領域に対応する線分析の走査線上の線分(厚さ)が300nm以上であるならば、この領域を酸化膜および酸化領域であると判断する。この酸化膜および酸化領域は、全体の平均として、Fe含有量が平均で80原子%未満、P含有量が平均で5原子%未満、Si含有量が平均で20原子%以上、O含有量が平均で30原子%以上を満足すればよい。また、本実施形態では、酸化膜がフォルステライト被膜ではなく酸化珪素を主体とする酸化膜であるので、酸化膜および酸化領域では、Mg含有量が平均で20原子%未満を満足すればよい。なお、酸化膜および酸化領域の定量分析結果は、酸化膜および酸化領域に含まれる析出物、介在物、および空孔などの分析結果を含まない、母相としての定量分析結果である。なお、酸化膜および酸化領域を特定する際には、線分析の走査線上に析出物、介在物、および空孔が含まれない位置にて特定することが好ましい。
上記のCOMPO像観察およびSEM-EDS定量分析による各層の特定および厚さの測定を、観察視野を変えて5カ所以上で実施する。計5カ所以上で求めた各層の厚さについて、最大値および最小値を除いた値から平均値を求めて、この平均値を各層の平均厚さとする。ただ、酸化膜の厚さは、組織形態を観察しながら外部酸化領域であって内部酸化領域ではないと判断できる箇所で厚さを測定して平均値を求める。
なお、上記した5カ所以上の観察視野の少なくとも1つに、線分析の走査線上の線分(厚さ)が300nm未満となる層が存在するならば、該当する層をTEMにて詳細に観察し、TEMによって該当する層の特定および厚さの測定を行う。
TEMを用いて詳細に観察すべき層を含む試験片を、FIB(Focused Ion Beam)加工によって、切断方向が板厚方向と平行となるように切り出し(詳細には、切断面が板厚方向と平行かつ圧延方向と垂直となるように試験片を切り出し)、この切断面の断面構造を、観察視野中に該当する層が入る倍率にてSTEM(Scanning-TEM)で観察(明視野像)する。観察視野中に各層が入らない場合には、連続した複数視野にて断面構造を観察する。
断面構造中の各層を特定するために、TEM-EDSを用いて、板厚方向に沿って線分析を行い、各層の化学成分の定量分析を行う。定量分析する元素は、Fe、P、Si、O、Mg、Alの6元素とする。使用する装置は特に限定されないが、本実施形態では、例えば、TEM(日本電子社製のJEM-2100F)、EDS(日本電子社製のJED-2300T)、EDS解析ソフトウエア(日本電子社製のAnalysisStation)を用いればよい。
上記したTEMでの明視野像観察結果およびTEM-EDSの定量分析結果から、各層を特定して、各層の厚さの測定を行う。TEMを用いた各層の特定方法および各層の厚さの測定方法は、上記したSEMを用いた方法に準じて行えばよい。
なお、TEMで特定した各層の厚さが5nm以下であるときは、空間分解能の観点から球面収差補正機能を有するTEMを用いることが好ましい。また、各層の厚さが5nm以下であるときは、板厚方向に沿って例えば2nm以下の間隔で点分析を行い、各層の線分(厚さ)を測定し、この線分を各層の厚さとして採用してもよい。例えば、球面収差補正機能を有するTEMを用いれば、0.2nm程度の空間分解能でEDS分析が可能である。
上記した各層の特定方法では、まず全領域中で珪素鋼板を特定し、次にその残部中でのリン酸系被膜を特定し、さらにその残部中でのホウ酸アルミニウム系被膜を特定し、最後にその残部を酸化膜および酸化領域と判断するので、本実施形態の構成を満たす方向性電磁鋼板の場合には、全領域中に上記各層以外の未特定領域が存在しない。
なお、上記方法で特定したホウ酸アルミニウム系被膜の化学成分の定量分析結果が、Fe含有量が80原子%未満、P含有量が5原子%未満、Si含有量が20原子%未満、O含有量が20原子%以上、Al含有量が10原子%以上であり、且つ定性分析でホウ素が検出されれば、ホウ酸アルミニウム系被膜が、アルミニウム・ホウ素酸化物を主体として含むと判断する。
同様に、上記方法で特定した酸化膜および酸化領域の化学成分の定量分析結果が、Fe含有量が平均で80原子%未満、P含有量が平均で5原子%未満、Si含有量が平均で20原子%以上、O含有量が平均で30原子%以上であり、且つMg含有量が平均で20原子%未満ならば、酸化膜および酸化領域が、酸化珪素を主体として含むと判断する。
同様に、上記方法で特定したリン酸系被膜の化学成分の定量分析結果が、Fe含有量が80原子%未満、P含有量が5原子%以上、O含有量が30原子%以上ならば、リン酸系被膜が、リン珪素複合酸化物を主体として含むと判断する。
また、上記方法で特定した酸化膜および酸化領域のうち、最大深さが0.2μm以上である酸化領域は、以下の方法によって特定する。上記で測定した酸化膜の平均厚さをDaveとしたとき、上記方法で特定した酸化膜および酸化領域のうちで、板厚方向に沿う線分(厚さ)が2×Dave以上となる領域に酸化領域が存在すると判断する。この酸化領域は、酸化珪素と酸化膜との界面に沿って離散して(島状に)存在する。離散して存在する酸化領域のそれぞれで、最大厚さを、具体的には、酸化膜および酸化領域を含む板厚方向の線分の最大値を測定する。この最大値がDave+0.2μm以上であれば、その酸化領域は最大深さが0.2μm以上であると判断する。
最大深さが0.2μm以上である酸化領域の線分率は、以下の方法によって特定する。まず、上記方法で特定した酸化膜および酸化領域のうち、2×Dave以上となる領域を除いて、珪素鋼板と酸化膜との界面を特定する。この特定した界面は、観察視野上で、2×Dave以上となる領域が欠落した破線状の界面となっている。この欠落領域を直線で結び、観察視野上で連続した一つの界面(推定界面)を特定する。この推定界面から深さ方向へ0.02μmだけ等間隔に離れた線を観察視野上で作図し、この線を酸化領域の線分率を測定するための基準線とする。この基準線上に存在する最大深さが0.2μm以上である酸化領域を特定し、その線分率を求める。具体的には、最大深さが0.2μm以上である酸化領域の推定界面上の長さdの合計値Σdを、推定界面の長さLで割った値の百分率を、酸化領域の線分率とする。酸化領域の線分率は、少なくとも推定界面の総長さLが50μm以上となる領域から求める。
ホウ酸アルミニウム系被膜中の空隙の面積率は、以下の方法によって特定する。上記方法で特定したホウ酸アルミニウム系被膜を、TEMで観察(明視野像)する。この明視野像中では、白色領域が空隙となる。なお、TEM試験片は薄膜であるので、ホウ酸アルミニウム系被膜中の空隙は、TEM試験片上で完全な空孔となっている。そのため、明視野像中の白色領域が空隙であるか否かは、この白色領域をEDS分析することによって空隙であるか否かを明確に判別できる。観察視野上でホウ酸アルミニウム系被膜中の空隙である領域と空隙ではない領域とを二値化し、画像解析によって空隙の面積率を求める。空隙の面積率は、少なくともホウ酸アルミニウム系被膜の総面積が4μm以上となる領域から求める。なお、画像解析を行うための画像の二値化は、上記した空隙の判別結果に基づき、組織写真に対して手作業で空隙の色付けを行って画像を二値化してもよい。
ホウ酸アルミニウム系被膜に、結晶質である、酸化アルミニウム、Al1833、Al、酸化ホウ素などが含まれるか否かは、以下の方法によって特定する。方向性電磁鋼板から試料を切り出し、板面と平行な面が測定面となるように、必要に応じて研磨してホウ酸アルミニウム系被膜を露出させ、X線回折測定を行う。例えば、CoKα線(Kα1)を入射X線として使用してX線回折を行えばよい。X線回折パターンから、酸化アルミニウム、Al1833、Al、酸化ホウ素などが存在するか否かを同定する。この同定は、ICDD(International Centre for Diffraction Data)のPDF(Powder Diffraction File)を用いて行えばよい。酸化アルミニウムの同定は、PDF:No.00-047-1770、または00-056-1186に基づいて行えばよい。Al1833の同定は、PDF:No.00-029-0009、00-053-1233、または00-032-0003に基づいて行えばよい。Alの同定は、PDF:No.00-029-0010に基づいて行えばよい。酸化ホウ素の同定は、PDF:No.00-044-1085、00-024-0160、または00-006-0634に基づいて行えばよい。
次に、本実施形態に係る方向性電磁鋼板を製造する方法を説明する。
なお、本実施形態に係る方向性電磁鋼板を製造する方法は、下記の方法に限定されない。下記の製造方法は、本実施形態に係る方向性電磁鋼板を製造するための一つの例である。
本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、仕上げ焼鈍時にフォルステライト被膜の生成が抑制された又は仕上げ焼鈍後にフォルステライト被膜が除去された珪素鋼板に対して、酸化膜を形成し、その後にホウ酸アルミニウム系被膜を形成することによって製造すればよい。
具体的には、本実施形態に係る方向性電磁鋼板を製造する方法は、
{110}<001>方位に発達した集合組織を有し、且つフォルステライト被膜の生成が抑制された又はフォルステライト被膜が除去された珪素鋼板を出発材料とし、
この珪素鋼板に、酸化膜を形成する酸化膜形成工程と、
酸化膜が形成された珪素鋼板に、ホウ酸アルミニウム系被膜を形成する被膜形成工程と、を備え、
酸化膜形成工程では、
珪素鋼板を、水素を含有し且つ酸化度PHO/PHが0.00008以上0.012以下に調整された雰囲気ガス中で、600℃以上1150℃以下の温度範囲で、10秒以上100秒以下の均熱を行い、
被膜形成工程では、
酸化膜が形成された珪素鋼板に、アルミナゾルとホウ酸とを含む微粒子分散液を塗布して乾燥し、
微粒子分散液が塗布され乾燥された珪素鋼板を、水素を含有し且つ酸化度PHO/PHが0.0002以上0.04以下に調整された雰囲気ガス中で、750℃以上1350℃以下の温度範囲で、10秒以上100秒以下の均熱を行い、
上記の温度範囲で均熱された珪素鋼板を、水素を含有し且つ酸化度PHO/PHが0.00002以上0.02以下の範囲内で上記した均熱時の酸化度よりも低い酸化度に変更された雰囲気ガス中で、600℃以下まで冷却すればよい。
酸化膜形成工程に供する珪素鋼板の製造方法は、特に限定されない。方向性電磁鋼板を製造する通常の条件を適用して、{110}<001>方位に発達した集合組織を有する珪素鋼板を製造すればよい。また、フォルステライト被膜の生成が抑制された珪素鋼板を製造するには、例えば、アルミナ(Al)を主成分とする焼鈍分離剤を用いて仕上げ焼鈍を行って珪素鋼板を製造すればよい。また、フォルステライト被膜が除去された珪素鋼板を製造するには、例えば、マグネシア(MgO)を主成分とする焼鈍分離剤を用いて仕上げ焼鈍を行い、仕上げ焼鈍後にフォルステライト被膜を機械的または化学的に除去して珪素鋼板を製造すればよい。なお、フォルステライト被膜の生成が抑制された珪素鋼板、またはフォルステライト被膜が除去された珪素鋼板の何れの場合も、酸化膜形成工程前に珪素鋼板の表面を鏡面化仕上げしてもよい。
(酸化膜形成工程)
酸化膜形成工程では、集合組織が制御され且つフォルステライト被膜を有さない珪素鋼板に対して焼鈍を施し、珪素鋼板上に接して配された酸化膜を形成する。
酸化膜形成工程での均熱時の酸化度(PHO/PH)は、0.00008~0.012の範囲が好ましい。均熱時に、水素を含有する雰囲気の酸化度(PHO/PH)が0.012を超えると、珪素鋼板の表面にて内部酸化が起きやすくなり、酸化領域が多く形成し、鋼板表面の平滑性が低減して鉄損が増大してしまう。一方、この雰囲気の酸化度(PHO/PH)が0.00008未満であると、酸化膜を形成するための焼鈍に長時間を要するようになる。なお、PHOは雰囲気中のHOの分圧であり、PHは水素の分圧である。
また、酸化膜形成工程での均熱温度は、600~1150℃の範囲が好ましい。均熱温度が600℃未満では酸化膜を形成できなくなるので好ましくない。一方、均熱温度が1150℃を超えると酸化領域が増大し、また、酸化膜の膜厚が増大してしまうので好ましくない。
酸化膜形成工程での均熱時間は、10~100秒の範囲が好ましい。均熱時間が10秒以上であれば酸化膜を安定して形成することができ、また、均熱時間が100秒以下であれば生産性も良く、また、酸化膜の膜厚を好ましい厚みに制御できる。
(被膜形成工程)
被膜形成工程では、酸化膜が形成された珪素鋼板に対して微粒子分散液の塗布と焼鈍とを施し、酸化膜上に接して配されたホウ酸アルミニウム系被膜を形成する。
酸化膜を形成した珪素鋼板に塗布する微粒子分散液は、アルミナゾルとホウ酸とを含めばよい。この微粒子分散液は、水を溶媒とするものが好ましい。微粒子分散液の一部に有機溶媒が含まれると、ホウ酸アルミニウム系被膜の空隙が増加し、更には酸化領域も増加することがある。
なお、アルミナゾルとホウ酸とを含む微粒子分散液を珪素鋼板に塗布するために、酸化膜形成のための均熱が終了後に、珪素鋼板を50℃以下まで冷却するとよい。
微粒子分散液中のアルミナゾルとホウ酸との組成比率は、アルミニウムとホウ素との原子比率(Al/B)が1.25~1.81であることが好ましい。アルミナゾルは、分散性の良い均一なアルミナ微粒子からなるものであれば如何なるゾルでも利用可能である。アルミナ微粒子は、珪素鋼板に均一に塗布するためには細かい微粒子が良く、粒径が数nmから数十nmのサイズが好ましい。100nmを顕著に超えると、焼き付け後の被膜が不均一になることがあるので、アルミナ微粒子は粒径が100nm以下であることが好ましい。
被膜形成工程での均熱時の酸化度(PHO/PH)は、0.0002~0.04の範囲が好ましい。均熱時に、水素を含有する雰囲気の酸化度(PHO/PH)が0.04を超えると、珪素鋼板の表面にて内部酸化が進み、酸化領域が多く形成し、鋼板表面の平滑性が低減して鉄損が増大してしまう。一方、この雰囲気の酸化度(PHO/PH)が0.0002未満であると、被膜を形成するための焼鈍に長時間を要することがある。なお、PHOは雰囲気中のHOの分圧であり、PHは水素の分圧である。
また、被膜形成工程での均熱温度は、750~1350℃の範囲が好ましい。均熱温度が750℃未満ではホウ酸アルミニウム系被膜を形成できなくなるので好ましくない。一方、均熱温度が、1350℃を超えると酸化領域が増大し、また、酸化膜の膜厚の増大してしまうので好ましくない。
なお、被膜形成工程で、均熱温度が1000℃以上になると、非晶質が主体であるホウ酸アルミニウム系被膜中に、結晶質であるAl1833またはAlの少なくとも1つが含まれるようになる。なお、ホウ酸アルミニウム系被膜中に含まれることがある酸化アルミニウムや酸化ホウ素は、微粒子分散液のアルミナゾルとホウ酸との成分比率の影響を受ける。微粒子分散液のアルミナゾルの比率が高い場合は、酸化アルミニウムが生成しやすく、微粒子分散液のホウ酸の比率が高いは場合には、酸化ホウ素が生成しやすい。
被膜形成工程での均熱時間は、10~100秒の範囲が好ましい。均熱時間が10秒以上であればホウ酸アルミニウム系被膜を安定して形成することができ、また、均熱時間が100秒以下であれば生産性も良く、また、酸化膜の膜厚を好ましい厚みに制御できる。
上記条件で均熱された珪素鋼板を、均熱時の酸化度よりも低い酸化度に変更された雰囲気ガス中で600℃以下まで冷却する。
本実施形態に係る方向性電磁鋼板は、被膜形成工程での均熱条件および冷却条件を制御することで、酸化領域の線分率、酸化膜の厚み、及びホウ酸アルミニウム系被膜の空隙率を、本実施形態で規定する範囲に安定して作り込むことができる。
具体的には、被膜形成工程での均熱条件を制御し、且つ均熱後の冷却条件を制御することで、ホウ酸アルミニウム系被膜中に含まれるアルミニウム・ホウ素酸化物の分解を抑制し、それに伴う珪素鋼板の内部酸化を抑制することが可能となる。均熱条件および冷却条件の両方を制御しなければ、酸化領域の線分率、及びホウ酸アルミニウム系被膜の空隙率を満足できない。
被膜形成工程での冷却時の酸化度(PHO/PH)は、均熱時の酸化度よりも低い酸化度に変更した上で、0.00002~0.02の範囲であることが好ましい。冷却時に、均熱時の酸化度よりも低い酸化度に変更しないと、珪素鋼板の内部酸化が進行して酸化領域が多く形成し、鋼板表面の平滑性が低減して鉄損が増大してしまう。また、冷却時に、水素を含有する雰囲気ガスの酸化度(PHO/PH)が0.02を超えると、珪素鋼板の内部酸化が進行して酸化領域が多く形成し、鋼板表面の平滑性が低減して鉄損が増大してしまうので好ましくない。酸化度(PHO/PH)の下限は、特に制限されないが、0.00002であればよい。
被膜形成工程では、上記の雰囲気中で600℃以下まで冷却することが好ましい。冷却終了温度が600℃を超えると、酸化領域が増大するおそれがある。
(リン酸系被膜形成工程)
本実施形態に係る方向性電磁鋼板を製造する際には、被膜形成工程後に、リン酸系被膜形成工程をさらに有してもよい。
リン酸系被膜形成工程では、コロイダルシリカの混合物と、金属リン酸塩のようなリン酸塩と、水とを含む絶縁被膜形成用組成物を、ホウ酸アルミニウム系被膜上に塗布して焼き付けることにより形成すればよい。絶縁被膜形成用組成物は、無水換算で、25~75質量%のリン酸塩と、75~25質量%のコロイダルシリカとを含めばよい。リン酸塩は、リン酸のアルミニウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩、マンガン塩などであればよい。
リン酸系被膜形成工程での焼き付けの条件は、酸化領域の増大やホウ酸アルミニウム系被膜中の空隙の増大を抑制できる条件とすることが好ましい。例えば、水素、窒素、および水蒸気からなる酸化度(PHO/PH)が0.15以下の雰囲気中で、5℃/秒以上の昇温速度で350~900℃まで加熱し、10~100秒間均熱するとよい。
次に、実施例により本発明の一態様の効果を更に具体的に詳細に説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
表1および表2に示す鋼成分が鋼A~鋼Nの珪素鋼板を出発材料として、酸化膜形成工程および被膜形成工程を実施した。また、必要に応じて、リン酸系被膜形成工程を実施した。また、製造した方向性電磁鋼板に対して、レーザーを照射して磁区細分化処理を行った。なお、表中で、珪素鋼板の成分組成の「-」は、合金元素を意図的に添加していないか、または含有量が測定検出下限以下であることを示す。
表1および表2に示す鋼成分が鋼A~鋼Nの珪素鋼板は、成分が調整されたスラブを1150℃に加熱し、板厚2.6mmまで熱間圧延し、1120℃+900℃の二段階で熱延板焼鈍し、熱延板焼鈍後に急冷し、酸洗し、板厚0.23mmまで冷間圧延し、水素-窒素-水蒸気を含む雰囲気中にて均熱温度820℃で脱炭焼鈍し、水素-窒素-アンモニアを含む雰囲気中にて窒素量200ppmとなるように窒化焼鈍し、アルミナ(Al)またはマグネシア(MgO)を主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、水素-窒素を含む雰囲気中にて1200℃まで加熱し、加熱後に水素雰囲気に切り替えて1200℃にて20時間の仕上げ焼鈍を行い、必要に応じてフォルステライト被膜を除去して製造した。
上記のスラブには、質量%で、酸可溶性Al:0.03%、C:0.056%、N:0.008%、S+Se合計:0.005%が含まれていた。
また、上記の珪素鋼板は、{110}<001>方位に発達した集合組織を有しているが、フォルステライト被膜を有さなかった。
酸化膜形成工程として、上記の珪素鋼板を、水素を含有し且つ表3および表4に示す酸化度(PHO/PH)に調整された雰囲気ガス中にて、表3および表4に示す温度および時間の均熱条件で焼鈍した。
被膜形成工程として、酸化膜形成後の珪素鋼板に、アルミナゾルとホウ酸とを含む微粒子分散液を塗布した。この珪素鋼板を、水素を含有し且つ表3および表4に示す酸化度(PHO/PH)に調整された雰囲気ガス中にて、表3および表4に示す温度および時間の均熱条件で焼鈍した。また、均熱後の珪素鋼板を、水素を含有し且つ表3および表4に示す酸化度(PHO/PH)に調整された雰囲気ガス中にて、表3および表4に示す冷却条件で冷却した。なお、試験No.37の微粒子分散液はアルミナゾルの比率が高く、試験No.38の微粒子分散液はホウ酸の比率が高かった。
なお、鋼B~鋼Nの珪素鋼板は、酸化膜形成工程および被膜形成工程の後に、リン酸系被膜形成工程を実施した。リン酸系被膜形成工程では、製造した方向性電磁鋼板に、コロイダルシリカの混合物と、アルミニウム塩またはマグネシウム塩のリン酸塩と、水とを含む絶縁被膜形成用組成物を塗布して、通常条件で焼鈍した。形成したリン酸系被膜は、リン珪素複合酸化物(リンおよび珪素を含む複合酸化物)を含んでいた。このリン酸系被膜の平均厚さは、いずれも1μmであった。
表5および表6に製造結果を示す。なお、表中のホウ酸アルミニウム系被膜の構成相は、「a」がアルミニウム・ホウ素酸化物であることを示し、「b1」がAl1833であることを示し、「b2」がAlであることを示し、「c」が酸化アルミニウムであることを示し、「d」が酸化ホウ素であることを示す。また、酸化膜の構成相、酸化膜の平均膜厚、酸化領域の線分率、ホウ酸アルミニウム系被膜の構成相、ホウ酸アルミニウム系被膜の平均膜厚、およびホウ酸アルミニウム系被膜の空隙面積率は、上記の方法に基づいて測定した。
表5および表6に評価結果を示す。密着性は、180度曲げ試験によって評価した。製造した方向性電磁を直径20mmのロールに巻き付け、ロールに接触した鋼板面積に対する被膜の剥離面の面積率を算出した。ロールに接触した鋼板面積は、計算で求めた。剥離面の面積は、試験後の鋼板の写真を撮影し、写真画像に対して画像解析を行うことによって求めた。ロールに接触した鋼板面積に対する剥離した面積の割合を、剥離面積率(%)と定義した。表中では、剥離面積率が10%以下の場合を「good」、剥離面積率が10%超50%未満の場合を「no good」、剥離面積率が50%以上の場合を「bad」と示す。剥離面積率が「good」であるとき、密着性が良好であると判断した。
鉄損は、Single Sheet Tester(SST)によって評価した。製造した方向性電磁鋼板から幅60mm×長さ300mmの試料を採取し、W17/50(鋼板を50Hzで磁束密度1.7Tに磁化した時の鉄損)を測定した。W17/50が0.68W/kg以下であるとき、鉄損が良好であると判断した。
表1~表6に示すように、本発明例は、酸化膜およびホウ酸アルミニウム系被膜が好ましく制御されているので、方向性電磁鋼板として密着性に優れ鉄損特性に優れていた。
一方、比較例は、酸化膜またはホウ酸アルミニウム系被膜の少なくとも一方が好ましく制御されていないので、方向性電磁鋼板として密着性が満足できず鉄損特性が満足できなかった。なお、表中で下線を付した数値は、本発明の範囲外にあることを示す。
Figure 0007188105000001
Figure 0007188105000002
Figure 0007188105000003
Figure 0007188105000004
Figure 0007188105000005
Figure 0007188105000006
本発明の上記態様によれば、鉄損が好適に低減された方向性電磁鋼板及びその製造方法を提供できる。従って、産業上の利用可能性が高い。
1 母材鋼板(珪素鋼板)、
2 中間層(酸化膜)、
3 絶縁被膜(ホウ酸アルミニウム系被膜)、
4 酸化領域(内部酸化領域)、
5 空隙、
6 珪素鋼板と酸化膜との界面
L 界面の長さ
d 酸化領域の長さ

Claims (6)

  1. 母材鋼板である珪素鋼板と、前記珪素鋼板上に接して配された中間層と、前記中間層上に接して配された絶縁被膜とを有する方向性電磁鋼板において、
    前記中間層が酸化膜であり、前記酸化膜が酸化珪素を含み、且つ前記酸化膜の平均膜厚が2nm以上500nm以下であり
    前記絶縁被膜がホウ酸アルミニウム系被膜であり、前記ホウ酸アルミニウム系被膜がアルミニウム・ホウ素酸化物を含み、且つ前記ホウ酸アルミニウム系被膜の平均膜厚が0.5μm超8μm以下であり、
    切断方向が板厚方向と平行となる切断面で見たとき、前記ホウ酸アルミニウム系被膜中の空隙が面積率で0%以上2.3%以下であり、
    前記切断面で見たとき、前記珪素鋼板と前記酸化膜との界面に酸化領域が存在し、前記界面から前記珪素鋼板に向かって最大深さで0.2μm以上嵌入している酸化領域の前記界面に対する線分率が0.1%以上12%以下である、
    ことを特徴とする方向性電磁鋼板。
  2. 前記アルミニウム・ホウ素酸化物として、Al1833またはAlの少なくとも1つが含まれることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板。
  3. 前記ホウ酸アルミニウム系被膜が酸化アルミニウムをさらに含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方向性電磁鋼板。
  4. 前記ホウ酸アルミニウム系被膜上に接して配されたリン酸系被膜をさらに有し、
    前記リン酸系被膜がリン珪素複合酸化物を含む
    ことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板。
  5. 前記珪素鋼板が、化学成分として、質量%で、
    Si:0.8%以上7.0%以下、
    Mn:0以上1.00%以下、
    Cr:0以上0.30%以下、
    Cu:0以上0.40%以下、
    P:0以上0.50%以下、
    Sn:0以上0.30%以下、
    Sb:0以上0.30%以下、
    Ni:0以上1.00%以下、
    B:0以上0.008%以下、
    V:0以上0.15%以下、
    Nb:0以上0.2%以下、
    Mo:0以上0.10%以下、
    Ti:0以上0.015%以下、
    Bi:0以上0.010%以下、
    Al:0以上0.005%以下、
    C+Nの合計:0以上0.005%以下、及び
    S+Seの合計:0以上0.005%以下、
    を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
    前記珪素鋼板が、{110}<001>方位に発達した集合組織を有する
    ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板。
  6. 前記珪素鋼板が、化学成分として、質量%で、
    Mn:0.05%以上1.00%以下、
    Cr:0.02%以上0.30%以下、
    Cu:0.05%以上0.40%以下、
    P:0.005%以上0.50%以下、
    Sn:0.02%以上0.30%以下、
    Sb:0.01%以上0.30%以下、
    Ni:0.01%以上1.00%以下、
    B:0.0005%以上0.008%以下、
    V:0.002%以上0.15%以下、
    Nb:0.005%以上0.2%以下、
    Mo:0.005%以上0.10%以下、
    Ti:0.002%以上0.015%以下、及び
    Bi:0.001%以上0.010%以下、
    からなる群から選択される少なくとも1種を含有する
    ことを特徴とする請求項5に記載の方向性電磁鋼板。
JP2019005126A 2019-01-16 2019-01-16 方向性電磁鋼板 Active JP7188105B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019005126A JP7188105B2 (ja) 2019-01-16 2019-01-16 方向性電磁鋼板

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019005126A JP7188105B2 (ja) 2019-01-16 2019-01-16 方向性電磁鋼板

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020111812A JP2020111812A (ja) 2020-07-27
JP7188105B2 true JP7188105B2 (ja) 2022-12-13

Family

ID=71667654

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019005126A Active JP7188105B2 (ja) 2019-01-16 2019-01-16 方向性電磁鋼板

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7188105B2 (ja)

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001247944A (ja) 1999-12-27 2001-09-14 Sumitomo Metal Ind Ltd 低磁歪二方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2002309381A (ja) 2001-04-13 2002-10-23 Nippon Steel Corp 方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方法
JP2002322566A (ja) 2001-04-23 2002-11-08 Nippon Steel Corp 張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性に優れる一方向性珪素鋼板とその製造方法
JP2018053346A (ja) 2016-09-30 2018-04-05 新日鐵住金株式会社 一方向性電磁鋼板及びその製造方法

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3209850B2 (ja) * 1994-02-17 2001-09-17 新日本製鐵株式会社 方向性電磁鋼板の絶縁被覆剤、絶縁被膜形成方法及び方向性電磁鋼板
JP3162570B2 (ja) * 1994-04-13 2001-05-08 新日本製鐵株式会社 低鉄損一方向性珪素鋼板およびその製造方法
JP3065909B2 (ja) * 1995-04-12 2000-07-17 新日本製鐵株式会社 低鉄損一方向性珪素鋼板の製造方法
JP3065908B2 (ja) * 1995-04-12 2000-07-17 新日本製鐵株式会社 低鉄損一方向性珪素鋼板
JP3415379B2 (ja) * 1996-11-21 2003-06-09 Jfeスチール株式会社 方向性けい素鋼板の絶縁被膜及びその形成方法
JP3552501B2 (ja) * 1997-10-28 2004-08-11 Jfeスチール株式会社 鉄損が極めて低い方向性電磁鋼板およびその製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001247944A (ja) 1999-12-27 2001-09-14 Sumitomo Metal Ind Ltd 低磁歪二方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP2002309381A (ja) 2001-04-13 2002-10-23 Nippon Steel Corp 方向性電磁鋼板の絶縁皮膜形成方法
JP2002322566A (ja) 2001-04-23 2002-11-08 Nippon Steel Corp 張力付与性絶縁皮膜の皮膜密着性に優れる一方向性珪素鋼板とその製造方法
JP2018053346A (ja) 2016-09-30 2018-04-05 新日鐵住金株式会社 一方向性電磁鋼板及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020111812A (ja) 2020-07-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
EP3913092B1 (en) Grain-oriented electrical steel sheet and method of producing the same
RU2730822C1 (ru) Электротехнический стальной лист с ориентированной зеренной структурой и способ производства электротехнического стального листа с ориентированной зеренной структурой
RU2725943C1 (ru) Лист анизотропной электротехнической стали
WO2020149319A1 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP7188105B2 (ja) 方向性電磁鋼板
WO2020149330A1 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
RU2776382C1 (ru) Лист анизотропной электротехнической стали и способ его производства
JP7188104B2 (ja) 方向性電磁鋼板
WO2022250163A1 (ja) 方向性電磁鋼板
WO2023204269A1 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
WO2022250168A1 (ja) 方向性電磁鋼板
RU2821534C2 (ru) Лист анизотропной электротехнической стали
WO2023204266A1 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
RU2779944C1 (ru) Способ производства листа анизотропной электротехнической стали
WO2023204267A1 (ja) 方向性電磁鋼板およびその製造方法
RU2771129C1 (ru) Лист электротехнической стали с ориентированной зеренной структурой и способ его получения

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210903

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220613

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220614

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220804

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20221101

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20221114

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 7188105

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151