JP7182435B2 - Al-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材 - Google Patents

Al-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材 Download PDF

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Description

本発明は、耐食性と耐衝撃特性に優れたAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材に関する。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「シャルピー衝撃値」は、JIS Z2242-2005の「金属材料のシャルピー衝撃試験方法」に準拠して測定して得られたシャルピー衝撃強度を意味するものである。試験片としては、Uノッチ試験片を使用して測定するものとする。
Al-Mg-Si系(6000系)アルミニウム合金は、強度を有しながら耐食性やリサイクル性に優れる点で実用的な合金であることから、高強度と耐食性が要求される車両、船舶、自動車、自動二輪車等の輸送機の構造材として用いられている。
Al-Mg-Si系アルミニウム合金の中では、特に6061が多用されているが、車体構造の軽量化による輸送効率向上のために、更なる軽量化が求められており、そのために材料としての高強度化を図ることが要求されている。このような高強度化を図るべくアルミニウム合金の添加金属種及びその含有率の変更等による改良が検討されている。
一方、アルミニウム合金を高強度化すると、耐食性が低下しやすいという問題があった。例えば、Al-Zn-Mg系(7000系)アルミニウム合金では、高強度化により応力腐食割れの発生の恐れがあり、適切な表面処理を施さなければ、腐食環境下での使用は困難である。また、6000系アルミニウム合金では、Al-Zn-Mg系と比較すると応力腐食割れは生じ難いと言えるが、しかし高強度化の実現のために添加元素量を多くすると耐食性が低下することが知られている。ここでの耐食性とは、腐食環境下での腐食量が少ないことを意味するものである。例えば腐食による減量が大きいと構造材としての耐久性に問題を生じ得る。従って、耐食性の向上に関しては、応力腐食割れの抑制と共に、腐食減量をいかに低減または抑制するかが重要となってくる。
また、Al-Mg-Si系アルミニウム合金では、金属組織を繊維状組織にすることで高強度化を実現する方策が考えられているが、高強度とトレードオフの関係で耐衝撃特性が低下する点が課題である。輸送機用の構造部材として適用する場合、高強度化による軽量化を実現するだけでなく、耐衝撃特性を向上させることで、構造部材としての性能(靱性や耐久性)を高めることが求められている。
自動車等の輸送機の構造部材に用いられるAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出材としては、特許文献1、2に記載のものが知られている。特許文献1には、熱間押出方向と平行な断面における繊維状組織の面積比率が95%以上である構成とすることで、耐力350MPa以上の高強度を実現することが記載されている。特許文献2には、熱間押出材を溶体化処理および時効処理した合金押出材の断面の肉厚中心部は平均結晶粒径10μm以下の亜結晶粒組織を備え、亜結晶粒組織が前記断面に占める割合が70%以上とすることで、耐力400MPa以上、25J/cm2以上のシャルピー衝撃値を有する押出材が得られることが記載されている。
特許第6022882号公報 特許第4757022号公報
特許文献1に記載のアルミニウム合金押出材は、耐力350MPa以上の高強度を実現しているが、耐衝撃特性に関しては開示がなされておらず、更に構造部材としての性能を十分に向上させるにはいかなる構成にすればよいかについての知見は、特許文献1からは得られない。また、耐食性に関して、特許文献1には腐食減量に関して開示がなく、従って腐食減量を低減または抑制するにはいかなる構成にすればよいかについての知見は、特許文献1からは得られない。
特許文献2に記載のアルミニウム合金押出材は、熱間押出後に約530℃付近の温度で再加熱する溶体化処理を実施している。押出加工後の後工程で溶体化処理を行うので、加工歪みが駆動力となって、押出材の表層部や内部で再結晶を引き起こしやすい傾向がある。再結晶、特に粗大再結晶は、強度の低下、強度のばらつき、耐食性の低下を引き起こす可能性がある。特許文献2では、粒界腐食試験を実施して耐食性を評価しているが、腐食減量に関して開示がなく、従って腐食減量を低減または抑制するにはいかなる構成にすればよいかについての知見は、特許文献2からは得られない。
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、腐食減量が少なくて耐食性に優れると共に、耐力および衝撃強度に優れたAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材およびその製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
[1]Si:0.95質量%~1.25質量%、Mg:0.80質量%~1.20質量%、Cu:0.30質量%~0.50質量%、Mn:0.40質量%~0.60質量%、Fe:0.15質量%~0.30質量%、Cr:0.09質量%~0.21質量%、B:0.0001質量%~0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金押出引抜材であって、該押出引抜材の0.2%耐力が380MPa以上であり、シャルピー衝撃値が25J/cm2以上であることを特徴とするAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材。
[2]Si:0.95質量%~1.25質量%、Mg:0.80質量%~1.20質量%、Cu:0.30質量%~0.50質量%、Mn:0.40質量%~0.60質量%、Fe:0.15質量%~0.30質量%、Cr:0.09質量%~0.21質量%、B:0.0001質量%~0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金の溶湯を得る溶湯形成工程と、
前記得られた溶湯を鋳造加工することによってビレットを得る鋳造工程と、
前記ビレットに均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、
前記均質化熱処理後のビレットに冷却処理を行った後に熱間押出加工を行って押出材を得る押出工程と、
前記熱間押出加工後に前記押出材の急冷を行う急冷行程と、
前記急冷工程を経た押出材に対し、引抜減面率が10%~31%の範囲になるように引抜加工を行って引抜材を得る引抜工程と、
前記引抜材を加熱して時効処理を行う時効処理工程と、を含むことを特徴とするAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材の製造方法。
[3]Si:0.95質量%~1.25質量%、Mg:0.80質量%~1.20質量%、Cu:0.30質量%~0.50質量%、Mn:0.40質量%~0.60質量%、Fe:0.15質量%~0.30質量%、Cr:0.09質量%~0.21質量%、B:0.0001質量%~0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金の溶湯を得る溶湯形成工程と、
前記得られた溶湯を鋳造加工することによってビレットを得る鋳造工程と、
前記ビレットを480℃~530℃の温度で2時間~10時間保持する均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、
前記均質化熱処理後のビレットを150℃/時間以上の平均冷却速度で200℃以下まで冷却する冷却工程と、
前記冷却工程を経たビレットを500℃~560℃にした状態で5m/分~30m/分の押出速度で熱間押出加工を行って押出材を得る押出工程と、
前記得られた押出材の温度を500℃~570℃にした状態から、前記熱間押出加工後から30秒以内に、100℃/秒以上の冷却速度で150℃以下まで急冷する急冷工程と、
前記急冷工程を経た押出材に対し、引抜減面率が10%~31%の範囲になるように引抜加工を行って引抜材を得る引抜工程と、
前記引抜材を140℃~180℃の温度で1時間~24時間加熱する時効処理工程と、を含むことを特徴とするAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材の製造方法。
[4]Si:0.95質量%~1.25質量%、Mg:0.80質量%~1.20質量%、Cu:0.30質量%~0.50質量%、Mn:0.40質量%~0.60質量%、Fe:0.15質量%~0.30質量%、Cr:0.09質量%~0.21質量%、B:0.0001質量%~0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金の溶湯を得る溶湯形成工程と、
前記得られた溶湯を鋳造加工することによってビレットを得る鋳造工程と、
前記ビレットに均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、
前記均質化熱処理後のビレットに冷却処理を行った後に熱間押出加工を行って押出材を得る押出工程と、
前記押出材に溶体化処理を行う溶体化処理工程と、
前記溶体化処理を経た押出材に対し、引抜減面率が10%~31%の範囲になるように引抜加工を行って引抜材を得る引抜工程と、
前記引抜材を加熱して時効処理を行う時効処理工程と、を含むことを特徴とするAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材の製造方法。
[5]Si:0.95質量%~1.25質量%、Mg:0.80質量%~1.20質量%、Cu:0.30質量%~0.50質量%、Mn:0.40質量%~0.60質量%、Fe:0.15質量%~0.30質量%、Cr:0.09質量%~0.21質量%、B:0.0001質量%~0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金の溶湯を得る溶湯形成工程と、
前記得られた溶湯を鋳造加工することによってビレットを得る鋳造工程と、
前記ビレットを480℃~530℃の温度で2時間~10時間保持する均質化熱処理を行う均質化熱処理工程と、
前記均質化熱処理後のビレットを150℃/時間以上の平均冷却速度で200℃以下まで冷却する冷却工程と、
前記冷却工程を経たビレットを500℃~560℃にした状態で5m/分~30m/分の押出速度で熱間押出加工を行って押出材を得る押出工程と、
前記押出材を溶体化温度500℃~560℃で0.5時間~4時間保持した後、該保持直後の30秒以内に100℃/秒以上の冷却速度で150℃以下まで急冷する溶体化処理工程と、
前記溶体化処理工程を経た押出材に対し、引抜減面率が10%~31%の範囲になるように引抜加工を行って引抜材を得る引抜工程と、
前記引抜材を140℃~180℃の温度で1時間~24時間加熱する時効処理工程と、を含むことを特徴とするAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材の製造方法。
[1]の発明では、腐食減量が少なくて耐食性に優れ、耐力および耐衝撃特性に優れたAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材を提供できる。
[2]の発明では、腐食減量が少なくて耐食性に優れ、耐力および耐衝撃特性に優れたAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材を製造できる。
[3]の発明では、腐食減量が少なくて耐食性に優れ、耐力および耐衝撃特性により一層優れたAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材を製造できる。
[4]の発明では、腐食減量が少なくて耐食性に優れ、耐力および耐衝撃特性に優れたAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材を製造できる。
[5]の発明では、腐食減量が少なくて耐食性に優れ、耐力および耐衝撃特性により一層優れたAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材を製造できる。
本発明に係るAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材の一実施形態を示す斜視図である。
本発明に係るアルミニウム合金押出引抜材1は、Si:0.95質量%~1.25質量%、Mg:0.80質量%~1.20質量%、Cu:0.30質量%~0.50質量%、Mn:0.40質量%~0.60質量%、Fe:0.15質量%~0.30質量%、Cr:0.09質量%~0.21質量%、B:0.0001質量%~0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金押出引抜材であって、該押出引抜材の0.2%耐力が380MPa以上であり、シャルピー衝撃値が25J/cm2以上であることを特徴とする。前記アルミニウム合金押出引抜材としては、アルミニウム合金中実押出引抜材(丸棒等)またはアルミニウム合金中空押出引抜材(パイプ材)等が挙げられる。
上記構成のアルミニウム合金押出引抜材は、腐食減量が少なくて耐食性に優れ、高強度であり、耐衝撃特性に優れているので、例えば、自動車、自動二輪車、鉄道等の輸送機の車体の構造部材(フレーム等)として好適である。
なお、アルミニウム合金の組成(各成分の含有率範囲の限定意義等)については、本発明の製造方法を説明した後の段落においてまとめて詳細に説明する。
次に、本発明に係る、アルミニウム合金押出引抜材1の製造方法について説明する。本製造方法は、Si:0.95質量%~1.25質量%、Mg:0.80質量%~1.20質量%、Cu:0.30質量%~0.50質量%、Mn:0.40質量%~0.60質量%、Fe:0.15質量%~0.30質量%、Cr:0.09質量%~0.21質量%、B:0.0001質量%~0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金の溶湯を得る溶湯形成工程と、前記得られた溶湯を鋳造加工することによってビレットを得る鋳造工程と、を含む。
(溶湯形成工程)
前記溶湯形成工程では、Si:0.95質量%~1.25質量%、Mg:0.80質量%~1.20質量%、Cu:0.30質量%~0.50質量%、Mn:0.40質量%~0.60質量%、Fe:0.15質量%~0.30質量%、Cr:0.09質量%~0.21質量%、B:0.0001質量%~0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなる組成となるように溶解調製されたアルミニウム合金溶湯を得る。
(鋳造工程)
次に、前記得られた溶湯を鋳造加工することによって鋳造材を得る(鋳造工程)。鋳造方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよく、例えば、連続鋳造圧延法、ホットトップ鋳造法、フロート鋳造法、半連続鋳造法(DC鋳造法)等が挙げられる。この鋳造工程において、冷却速度の速い鋳造加工を行うことによって鋳塊(ビレット)中に形成される金属組織や晶出物の結晶粒径を小さくするのが好ましい。
以下、順に、均質化熱処理工程、冷却工程、押出工程、急冷工程、時効処理工程を実施するのがよい。
(均質化熱処理工程)
得られたビレットに対して均質化熱処理を行う。即ち、ビレットを480℃~530℃の温度で2時間~15時間保持する均質化熱処理を行うのがよい。480℃未満では、鋳塊ビレットの軟化が不十分となり、熱間押出加工時の圧力が著しく高くなって、外観品質が低下するし、生産性も低下する。一方、530℃を超えると、MnとCrの析出物が粗大化することで再結晶を抑制する効果が低下し、再結晶の発生により、押出材の靱性が低下するし、高強度も得られ難い。中でも、均質化熱処理の温度は、485℃~525℃に設定するのが好ましい。
また、均質化熱処理の時間が2時間未満では、鋳塊ビレットの軟化が不十分となり、熱間押出加工時の圧力が著しく高くなって、外観品質が低下するし、生産性も低下する。また、2時間未満では、鋳塊組織中の結晶粒内の偏析を無くして均質化することが不十分になり、押出材の靱性が低下するし、高強度も得られ難い。一方、均質化熱処理の時間が15時間を超えると、均質化熱処理によるそれ以上の効果は得られず、かえって生産性を低下させるものとなる。
(冷却工程)
次に、前記均質化熱処理後のビレットを150℃/時間以上の平均冷却速度で200℃以下の温度まで冷却する。平均冷却速度は、大きい方がより好ましい。この冷却工程における冷却方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ファン冷却、ミスト冷却などが挙げられる。このようにビレットを150℃/時間以上の平均冷却速度で強制冷却する理由は、均質化熱処理後の冷却過程で固溶元素の析出物が粗大に成長するのを抑制するためである。粗大成長を抑制することで、後の時効処理による強度向上を十分に実現できると共に、押出引抜材の靱性を十分に確保できる。
(押出工程)
前記冷却工程を経たビレットを500℃~560℃にした状態で5m/分~30m/分の押出速度で熱間押出加工を行って押出材を得る。加熱温度が500℃未満では、鋳塊に添加されている元素がマトリックス中に溶けずに残留することで時効処理による強度向上を実現できない。一方、加熱温度が560℃を超えると、押出加工後の加工発熱により押出材に局所的に共晶融解(バーニング)が発生する恐れがある。従って、熱間押出加工時の加熱温度は500℃~560℃に設定する。中でも、熱間押出加工時の加熱温度は510℃~550℃に設定するのが好ましい。なお、ビレットの加熱時間は、特に限定されるものではないが、加熱装置が押出工程のオンライン上に設置されていることを考慮して、良好な生産性を確保できる時間に設定されるが、30分以内に設定されるのが好ましく、15分以内に設定されるのが特に好ましい。
前記熱間押出加工の際の押出速度は、5m/分~30m/分に設定する。押出速度は、生産性を考慮すると、速ければ速いほど好ましいものの、押出速度が30m/分を超えると、押出材の表面に剥離や割れが生じる恐れがある。一方、押出速度が5m/分未満では、生産性が低下するので好ましくない。
(急冷工程)
前記熱間押出加工後から0.01秒~30秒以内に前記押出材を急冷する。このとき、前記熱間押出加工後の押出材を500℃~570℃の状態から100℃/秒以上の冷却速度で150℃以下まで急冷するのが好ましい。前記押出材の温度は、金型から排出された直後の押出材の温度を非接触温度計または接触温度計で計測する。この計測温度が500℃未満では、鋳塊に添加されている元素がマトリックス中に溶けずに残留することで時効処理による強度向上を実現できない。前記計測温度が570℃を超えている場合には、押出材に局所的に共晶融解(バーニング)が発生する恐れがある。中でも、前記熱間押出加工後の押出材の温度が510℃~560℃になっているのが好ましい。また、前記熱間押出加工後から0.01秒~15秒以内に前記押出材を急冷するのが好ましく、前記熱間押出加工後から0.01秒~10秒以内に前記押出材を急冷するのが特に好ましい。
このように前記熱間押出加工直後の500℃~570℃の温度の押出材を100℃/秒以上の冷却速度で150℃以下まで急冷する。このような急冷は、例えば、押出出口側に設置してある冷却装置を用いて実施することができる。このような条件での急冷は、押出材の金属組織が繊維状組織を有し、かつ押出材の断面の全体面積に占める繊維状組織の面積の割合が90%以上である金属組織を形成させる上で重要な工程である。この急冷工程において、冷却速度が100℃/秒未満では、冷却時の焼き入れが不十分となって、押出材の靱性が低下するし、高強度も得られ難い。前記冷却速度は500℃/秒以下であるのが好ましく、この場合には肉厚の厚い部分と薄い部分で熱収縮差による変形が生じ難く寸法精度が良い。この急冷工程での冷却速度は、200℃/秒~400℃/秒であるのが好ましい。
前記急冷工程における冷却方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、ファン空冷、ミスト冷却、シャワー冷却、液体窒素冷却、水冷等の方法が挙げられる。また、前記例示の冷却方法を適宜組み合わせて急冷を実施するようにしてもよい。
(引抜工程)
次に、前記急冷工程を経た押出材に引抜加工を行う。急冷工程を経た押出材の先端部を口付け加工する。口付け加工とは、押出材の先端部への絞り加工である。絞り加工後の先端を掴んでダイス穴を通して引っ張り、所望の寸法や形状に引抜加工を行う。再結晶を抑制するために、引抜加工は冷間加工で実施するのが好ましい。引抜ダイスには潤滑油を塗布して、表面の割れや焼き付き、ちぎれの発生を防止する。引抜工程では、引抜減面率(%)が重要なパラメーターとなる。
引抜減面率(%)=(1-引抜後の断面積÷引抜前の断面積)×100
引抜減面率は、10~31%の範囲に設定するのが好ましい。10%未満では高強度と耐衝撃特性が得られない恐れがある。引抜減面率が31%を超えると、引抜加工時にちぎれや割れ等が発生する恐れがある。より高強度及びより優れた耐衝撃特性を得る観点から、引抜減面率は、21~31%の範囲に設定するのがより好ましい。引抜加工速度は、20m/分~40m/分に設定するのが好ましい。20m/分未満では生産性が低下するので好ましくない。一方、引抜加工速度が40m/分を超えると、加工速度が速くなりすぎて、ちぎれや割れ等の不具合が発生する恐れがあるので好ましくない。中でも、引抜加工速度は、25m/分~35m/分に設定するのがより好ましい。引抜加工時に塗布した潤滑油は、後工程での取り扱いを考慮すると、引抜加工後に灯油等で洗浄して落としておくのが好ましい。
(時効処理工程)
次に、前記急冷工程を経た押出引抜材を140℃~180℃の温度で1時間~24時間加熱して時効処理を行う。時効処理温度が140℃未満では、析出物が微細になりすぎて時効硬化が十分になされず、高強度の押出引抜材が得られなくなる。一方、時効処理温度が180℃を超えると、過時効処理となって析出物が粗大化して、高強度の押出引抜材が得られなくなる。また、時効処理時間が1時間未満では、亜時効処理となって高強度の押出引抜材が得られなくなる。時効処理時間が24時間を超えると、過時効処理となって高強度の押出引抜材が得られなくなる。中でも、前記時効処理温度を150℃~170℃に設定するのが好ましい。また、前記時効処理時間は、生産性を考慮すると1時間~12時間に設定するのが好ましい。
(溶体化処理工程について)
前記押出工程と前記引抜工程の間に溶体化処理工程を設けてもよい。即ち、前記冷却工程を経たビレットを500℃~560℃にした状態で5m/分~30m/分の押出速度で熱間押出加工を行って押出材を得る押出工程と、前記押出材を溶体化温度500℃~560℃で0.5時間~4時間保持した後、該保持直後の30秒以内(好ましくは0.01秒~30秒以内)に100℃/秒以上の冷却速度で150℃以下まで急冷する溶体化処理工程と、前記溶体化処理工程を経た押出材に対し、引抜減面率が10%~31%の範囲になるように引抜加工を行って引抜材を得る引抜工程と、前記引抜材を140℃~180℃の温度で1時間~24時間加熱する時効処理工程と、を含む製法としてもよい。
本発明では、引抜加工を行うことによって、押出工程及び溶体化処理工程で発生した再結晶組織が潰されることで微細な加工組織となり、耐衝撃特性や耐食性(腐食減量抑制)を向上させることができる。
また、本発明の上記製造方法において、例えば、自動車、自動二輪車、鉄道等の輸送機の車両の構造部材(フレーム等)等として適用するために、必要に応じて、時効処理工程以降に、切削加工、曲げ加工、潰し加工、溶接加工、機械締結加工等のうちの1種又は2種以上の加工を実施してもよい。
次に、上述した本発明に係るアルミニウム合金押出引抜材および本発明に係るアルミニウム合金押出引抜材の製造方法における「アルミニウム合金」の組成について、以下詳述する。前記アルミニウム合金は、Si:0.95質量%~1.25質量%、Mg:0.80質量%~1.20質量%、Cu:0.30質量%~0.50質量%、Mn:0.40質量%~0.60質量%、Fe:0.15質量%~0.30質量%、Cr:0.09質量%~0.21質量%、B:0.0001質量%~0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金である。
前記Siは、Mgと共存してMg2Si系析出物を形成し、押出引抜材の強度向上に寄与する。Siは、上述したとおりMgの含有量に対してMg2Siを生成する量を超えて過剰に添加することにより、時効処理による強度向上を十分に実現できることから、Si含有率は、0.95質量%以上に設定する。一方、Si含有率が1.25質量%を超えると、Siの粒界析出が多くなり、押出引抜材の靱性が低下するし、熱間押出加工時の押出性が悪くなる。従って、Si含有率は、0.95質量%~1.25質量%に設定する。中でも、Si含有率は、1.00質量%~1.20質量%に設定するのが好ましく、1.05質量%~1.15質量%に設定するのがより好ましい。
前記Mgは、Siと共存してMg2Si系析出物を形成し、押出引抜材の強度向上に寄与する。Mg含有率が0.80質量%より小さいと、析出強化の効果が十分に得られず高強度を確保することができない。一方、Mg含有率が1.20質量%を超えると、Mg2Si系析出物が増加し過ぎることによって、押出引抜材の靱性を低下させるし、熱間押出加工時の押出圧力が著しく高くなることにより外観品質を悪化させ、生産性も低下させる。従って、Mg含有率は、0.80質量%~1.20質量%に設定する。中でも、Mg含有率は、0.85質量%~1.05質量%に設定するのが好ましく、0.90質量%~1.00質量%に設定するのがより好ましい。
前記Feは、AlFeSi相として晶出することで結晶粒の粗大化を防止する効果がある。Fe含有率が0.15質量%より小さいと、結晶粒の粗大化防止効果が十分に得られない。一方、Fe含有率が0.30質量%を超えると、粗大な金属間化合物を生成し、押出引抜材の靱性を低下させるし、熱間押出加工時にピックアップと呼ばれる外観不良が発生する恐れがある。従って、Fe含有率は、0.15質量%~0.30質量%に設定する。中でも、Fe含有率は、0.15質量%~0.25質量%に設定するのが好ましい。
前記Mnは、AlMnSi相として晶出し、晶出しないMnは析出して再結晶を抑制する効果がある。この再結晶を抑制する作用により、熱間押出加工後の組織を繊維状組織化できることで高強度を実現できる。Mn含有率が0.40質量%より小さいと、上記の再結晶抑制効果が得られなくなり、再結晶組織が粗大化して成長することで強度が低下する(高強度を確保できない)上に、組織制御が困難になり繊維状組織と再結晶組織とが混合した組織状態になって靱性が低下する。一方、Mn含有率が0.60質量%を超えると、粗大な金属間化合物を生成し、押出引抜材の靱性を低下させる。従って、Mn含有率は、0.40質量%~0.60質量%に設定する。中でも、Mn含有率は、0.44質量%~0.56質量%に設定するのが好ましい。なお、Mnは、同様の効果を有するCrと複合的に添加することにより、上記の効果を相乗的に向上させることができる。
前記Cuは、Mg2Si系析出物の見かけの過飽和量を増加させ、Mg2Si析出量を増加させることによって最終製品の押出引抜材の時効硬化を著しく促進させる。Cu含有率が0.30質量%より小さいと、時効硬化が十分に得られない。一方、Cu含有率が0.50質量%を超えると、押出引抜材の靱性が低下するし、熱間押出加工時の押出性が悪くなる。また、過度に添加量を増やし過ぎると、耐食性を低下させ、粒界腐食の感受性を高め、応力腐食割れを引き起こす恐れがある。従って、Cu含有率は、0.30質量%~0.50質量%に設定する。中でも、Cu含有率は、0.35質量%~0.50質量%に設定するのが好ましく、0.40質量%~0.50質量%に設定するのがより好ましい。
前記Crは、AlCrSi相として晶出し、晶出しないCrは析出して再結晶を抑制する効果がある。この再結晶を抑制する作用により、熱間押出加工後の組織を繊維状組織化できることで高強度を実現できる。Cr含有率が0.09質量%より小さいと、上記の再結晶抑制効果が得られなくなり、再結晶組織が粗大化して成長することで強度が低下する(高強度を確保できない)上に、組織制御が困難になり繊維状組織と再結晶組織とが混合した組織状態になって靱性が低下する。一方、Cr含有率が0.21質量%を超えると、粗大な金属間化合物を生成し、押出引抜材の靱性を低下させる。従って、Cr含有率は、0.09質量%~0.21質量%に設定する。中でも、Cr含有率は、0.11質量%~0.19質量%に設定するのが好ましい。なお、Crは、同様の効果を有するMnと複合的に添加することにより、上記の効果を相乗的に向上させることができる。
前記B(硼素)は、Tiとの共存により結晶粒の微細化を図る上で有効な元素である。B含有率が0.0001質量%より小さいと、結晶粒の微細化の効果が十分に得られない恐れがある。一方、B含有率が0.03質量%を超えると、TiB2が過剰に生成されて切削加工性が低下する恐れがある。従って、B含有率は、0.0001質量%~0.03質量%に設定する。
前記Tiは、結晶粒の微細化を図る上で有効な元素であり、鋳造棒(ビレット)に鋳塊割れが発生することを防止することに寄与する。Ti含有率が0.10質量%を超えると、粗大なTi化合物が晶出し、押出引抜材の靱性を低下させる。従って、Ti含有率は0.10質量%以下(Ti非含有;即ちTi含有率0質量%を含む)に設定する。
前記Zrは、MnやCrと同様に再結晶を抑制する効果を有する元素であるが、このZrの含有率は0.05質量%以下に設定する。Zr含有率が0.05質量%を超えると、上述したTiの結晶粒微細化効果を阻害する上に、押出引抜材の靱性を低下させる。従って、Zr含有率は0.05質量%以下に設定する。Zr非含有であってもよい(Zr含有率は0質量%であってもよい)。中でも、Zr含有率は0.01質量%以下(0質量%を含む;即ちZr非含有を含む)に設定するのが好ましい。
前記Znは、鋳造性の向上を図る上で有効な元素であるが、Zn含有率が0.25質量%を超えると、耐食性や靱性を低下させる恐れがある。従って、Zn含有率は0.25質量%以下(Zn非含有;即ちZn含有率0質量%を含む)に設定する。
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
<実施例1>
Si:1.10質量%、Fe:0.20質量%、Cu:0.40質量%、Mn:0.50質量%、Mg:0.95質量%、Cr:0.15質量%、B:0.004質量%、Zn:0.03質量%、Zr:0.01質量%、Ti:0.02質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金を加熱してアルミニウム合金溶湯を得た後、該アルミニウム合金溶湯を用いてホットトップ鋳造法により直径156mm、長さ450mmの鋳塊ビレットを作製した。
次に、前記鋳塊ビレットに対して500℃で8時間の均質化熱処理を行った(均質化熱処理工程)。前記均質化熱処理工程を経た後の鋳塊ビレットを250℃/時間の鋳塊冷却速度で鋳塊が150℃以下の温度になるまで強制冷却を行った(冷却工程)。次に、前記冷却工程を経た鋳塊ビレットに、鋳塊加熱温度535℃、押出速度20m/分の条件で熱間押出加工を行うことによって、外径17mmの断面円形の棒状の押出材を得た(押出工程)。次いで、前記熱間押出加工直後の(熱間押出加工後から2秒以内の540℃の)押出材(押出ダイス出口での押出材の温度を接触温度計で測定した)を400℃/秒の冷却速度で100℃以下の温度になるまで急冷した(急冷工程)。前記急冷工程を経た押出材に対して外径16mmになるように30m/分の加工速度で引抜加工を行って引抜材を得た(引抜工程)。この際の引抜減面率は11.4%である。得られた引抜材を300mmの長さに切断した後、160℃で6時間加熱して時効処理を行った(時効処理工程)。こうして図1に示すAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材1を得た。
<実施例2>
外径15mmになるように引抜減面率22.1%で引抜加工を行った以外は、実施例1と同様にして、図1に示すAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材1を得た。
<実施例3>
外径14.2mmになるように引抜減面率30.2%で引抜加工を行った以外は、実施例1と同様にして、図1に示すAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材1を得た。
<実施例4~15>
前記アルミニウム合金溶湯として、表1に示すアルミニウム合金組成(表1に示す元素を表に記載の含有率で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金)からなるアルミニウム合金溶湯を用いた以外は、実施例3と同様にして、図1に示すAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材1を得た。
<実施例16>
Si:1.10質量%、Fe:0.20質量%、Cu:0.40質量%、Mn:0.50質量%、Mg:0.95質量%、Cr:0.21質量%、B:0.004質量%、Zn:0.03質量%、Zr:0.01質量%、Ti:0.02質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金を加熱してアルミニウム合金溶湯を得た後、該アルミニウム合金溶湯を用いてホットトップ鋳造法により直径156mm、長さ450mmの鋳塊ビレットを作製した。
次に、前記鋳塊ビレットに対して500℃で8時間の均質化熱処理を行った(均質化熱処理工程)。前記均質化熱処理工程を経た後の鋳塊ビレットを250℃/時間の鋳塊冷却速度で鋳塊が150℃以下の温度になるまで強制冷却を行った(冷却工程)。次に、前記冷却工程を経た鋳塊ビレットに、鋳塊加熱温度535℃、押出速度20m/分の条件で熱間押出加工を行うことによって、
次に、前記鋳塊ビレットに対して500℃で8時間の均質化熱処理を行った(均質化熱処理工程)。前記均質化熱処理工程を経た後の鋳塊ビレットを250℃/時間の鋳塊冷却速度で鋳塊が150℃以下の温度になるまで強制冷却を行った(冷却工程)。次に、前記冷却工程を経た鋳塊ビレットに、鋳塊加熱温度535℃、押出速度20m/分の条件で熱間押出加工を行うことによって、外径17mmの断面円形の棒状の押出材を得た(押出工程)。次いで、前記熱間押出加工直後の(熱間押出加工後から2秒以内の)押出材を530℃の温度で1時間加熱した後、400℃/秒の冷却速度で100℃以下の温度になるまで急冷した(溶体化処理工程)。前記急冷工程を経た押出材に対して外径16mmになるように30m/分の加工速度で引抜加工を行って引抜材を得た(引抜工程)。この際の引抜減面率は11.4%である。得られた引抜材を300mmの長さに切断した後、160℃で6時間加熱して時効処理を行った(時効処理工程)。こうして図1に示すAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材1を得た。
<実施例17>
外径15mmになるように引抜減面率22.1%で引抜加工を行った以外は、実施例16と同様にして、図1に示すAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材1を得た。
<実施例18>
外径14.2mmになるように引抜減面率30.2%で引抜加工を行った以外は、実施例16と同様にして、図1に示すAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材1を得た。
<比較例1>
外径16.5mmになるように引抜減面率5.8%で引抜加工を行った以外は、実施例1と同様にして、Al-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材を得た。
<比較例2>
前記アルミニウム合金溶湯として、表2に示すアルミニウム合金組成(表2に示す元素を表に記載の含有率で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金)からなるアルミニウム合金溶湯を用い、外径13.7mmになるように引抜減面率35.1%で引抜加工を行った以外は、実施例1と同様にして、Al-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材を得た。
<比較例3>
押出後に引抜加工を行うことなく180℃で6時間加熱して時効処理を行った以外は、比較例2と同様にして、Al-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材を得た。
<比較例4>
押出後に530℃の温度で1時間加熱した後に水冷で急冷して溶体化処理を施し、引抜加工を行うことなく180℃で6時間加熱して時効処理を行った以外は、比較例1と同様にして、Al-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材を得た。
<比較例5~15>
前記アルミニウム合金溶湯として、表2に示すアルミニウム合金組成(表2に示す元素を表に記載の含有率で含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金)からなるアルミニウム合金溶湯を用いた以外は、実施例3と同様にして、Al-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材を得た。
Figure 0007182435000001
Figure 0007182435000002
Figure 0007182435000003
Figure 0007182435000004
上記のようにして得られた各アルミニウム合金押出引抜材について、下記評価法に基づいて各種評価を行った。
<引抜加工性評価法>
引抜途中から引抜終了までの間において引抜されている押出材にちぎれ等の引抜加工不良が発生したものを「×」と表記し、発生しなかったもの(即ち引抜加工性が良好であったもの)を「○」と表記した。なお、引抜加工性が「×」の評価であったものについては下記のその他の評価は行わないものとした(表4参照)。
<引張特性評価法(引張強さ及び0.2%耐力の測定法)>
JIS Z2241-2011に準拠して室温(25℃)で引張試験を行うことによって、押出引抜材(又は押出材)の引張強さ(MPa)および0.2%耐力(MPa)を測定した。即ち、押出引抜材(又は押出材)からJIS Z2201-1998に記載の方法によりJIS10号試験片を採取した。このJIS10号試験片の大きさは、平行部の外径12.5mm×平行部の長さ60mmとした。また、試験片において標点間距離を50mmに設定した。前記試験片についてインストロン型引張試験機を用いて引張試験を行った。引張試験速度は、2mm/分に設定し、耐力測定以降は10mm/分に設定した。JIS10号試験片のn数を3個として、その平均値を「引張強さ」、「0.2%耐力」とした(表3、4参照)。なお、表3、4において、0.2%耐力が380MPa以上であるものを「○」と表記し、0.2%耐力が375MPa以上380MPa未満であるものを「△」と表記し、0.2%耐力が375MPa未満であるものを「×」と表記した。
<シャルピー衝撃値測定法(シャルピー衝撃試験法)>
押出引抜材からJIS3号シャルピー衝撃試験片を採取し、JIS Z2242-2005の「金属材料のシャルピー衝撃試験方法」に準拠して25℃でシャルピー衝撃試験を実施して、シャルピー衝撃値を求めた。試験片のn数は3個とし、その平均値を「シャルピー衝撃値」とした。
<耐食性評価法(腐食環境下での腐食減量の測定法)>
押出引抜材(又は押出材)を長さ100mmに切断して評価用試験片とした。腐食減量の評価は、自動車部品外観腐食試験方法(JASO M610-92)に記載されているCCT試験で実施した。このCCT試験は、塩水噴霧(5%NaCl水溶液、35℃)×2時間、60℃で乾燥×4時間、湿潤(50℃、98%RH)×2時間の合計8時間を1サイクルとして、360サイクル(2880時間)で腐食試験を行うものである。360サイクルの腐食試験後に評価用試験片を取り出した後、この評価用試験片に対してリン酸クロム酸液で洗浄を行うことによって腐食生成物を取り除き、次いで腐食による質量減少量(腐食試験前の試験片の質量-腐食試験後の試験片の質量)を求めた。評価用試験片のn数を3個として平均値を算出した。CCT試験後で腐食減量(減少量)が0.80mg/cm2以下であったものを「○」と表記し、0.80mg/cm2を超えて0.90mg/cm2以下であったものを「△」と表記し、0.90mg/cm2を超えたものを「×」と表記した。
<総合評価>
「引抜加工性」、「0.2%耐力」、「耐衝撃特性(シャルピー衝撃値)」、「耐食性」の4つの評価項目のうち、1項目以上に「×」の評価結果があったものを「不合格」とし、4つの評価項目全てにおいて「×」の評価結果が無かったものを「合格」とした。
表から明らかなように、本発明に係る実施例1~18のAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材は、引抜加工性が良好であり、0.2%耐力が380MPa以上であって高強度であり、耐衝撃特性に優れると共に、360サイクルのCCT試験後の腐食減量が十分に抑制されていた。
これに対し、本発明の範囲を逸脱する比較例1~15では、総合評価が不合格であった。
本発明に係るAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材および本発明の製造方法で得られるAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材は、高強度であり、かつ耐衝撃に優れると共に、腐食環境下等で使用されても腐食減量が十分に抑制されるので、従来の鉄系材料の代替材として好適に使用できる。例えば、車両、船舶、自動車、自動二輪車等の輸送機の車体の構造部材(フレーム等)として使用することで車体の軽量化に貢献できる。
1…アルミニウム合金押出引抜材

Claims (1)

  1. Si:0.95質量%~1.25質量%、Mg:0.80質量%~1.20質量%、Cu:0.30質量%~0.50質量%、Mn:0.40質量%~0.60質量%、Fe:0.15質量%~0.30質量%、Cr:0.09質量%~0.21質量%、B:0.0001質量%~0.03質量%を含有し、Znの含有率が0.25質量%以下、Zrの含有率が0.05質量%以下、Tiの含有率が0.10質量%以下であり、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金押出引抜材であって、該押出引抜材の0.2%耐力が380MPa以上であり、シャルピー衝撃値が25J/cm2以上であることを特徴とするAl-Mg-Si系アルミニウム合金押出引抜材。
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