JP7180821B1 - 溶鋼の精錬方法 - Google Patents

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Abstract

製鋼工程において、取鍋内の溶鋼へ水素プラズマを付与した際の脱酸、脱窒、脱硫の精錬反応を迅速に進行させ、不純物の少ない高純度溶鋼を効率良く溶製する。溶鋼の精錬方法であって、取鍋内に収容された溶鋼9に攪拌用ガスを吹き込んで溶鋼を攪拌する工程において、攪拌処理によって流動状態にある溶鋼の表面に、取鍋内溶鋼の上方に設置されたプラズマ発生装置11、12から、水素ガスまたは水素ガスを含む不活性ガスをプラズマガスとして下記の(1)式を満たす条件で照射するプラズマ処理を行ない、溶鋼中に含まれる酸素、窒素、硫黄のうちから選ばれる1種または2種以上の元素の含有量を低減する。(1)式において、GPはプラズマガスの流量(Nm3/min)、(H2)はプラズマガス中の水素ガス濃度(体積%)、Qは溶鋼循環流量(ton/min)である。(GP×(H2)/Q)≧0.05…(1)

Description

本発明は、不純物元素である酸素、窒素、硫黄の含有量が少ない溶鋼を製造する精錬方法に関し、詳しくは、水素ガスまたは水素ガスを含む不活性ガスをプラズマガスとして取鍋内の溶鋼表面に照射し、プラズマガスによって不純物を除去する、溶鋼の精錬方法に関する。
鉄鋼材料中の非金属介在物は、一般的に、材料特性や品質に悪影響を及ぼすことが知られている。また、酸化物系の非金属介在物は、連続鋳造において浸漬ノズルの閉塞を引き起こし、鋳造速度の減少による生産性低下や、最悪の場合には鋳造を中断せざるを得なくなる。非金属介在物としては、溶鋼の脱酸時に生成する酸化物系の脱酸生成物や鋼中合金元素の硫化物、窒化物などが挙げられる。これらの非金属介在物(以下、単に「介在物」とも記す)の量を低減するには、溶鋼中の酸素、窒素及び硫黄を極力低減することが重要であり、従来、様々な取り組みがなされてきた。
溶鋼中の酸素については、アルミニウム(Al)や珪素(Si)のような脱酸材を添加することで、溶鋼中の溶存酸素をAlやSiOとして固定している。生成した酸化物系介在物は、溶鋼との比重差を利用して、溶鋼のガス攪拌処理やRH真空脱ガス装置での環流処理などによって浮上除去が図られている。しかしながら、現状では全ての酸化物系介在物の分離除去は不可能であり、酸化物系介在物の溶鋼中への残留は避けられない。
溶鋼中の窒素については、真空脱ガス設備における真空処理により低減が図られる。しかしながら、溶鋼中の窒素は、界面活性元素である酸素や硫黄の影響を受けるほか、真空系外からの大気巻き込みによる吸窒を避けることが難しく、安定的に低濃度の窒素レベルを達成できていないのが現状である。
溶鋼中の硫黄については、CaO系フラックスやCaO-Al系フラックスの添加(脱硫剤添加)により低減が図られる。例えば、取鍋精錬炉における取鍋精錬では、取鍋底からアルゴンガスを溶鋼中に吹き込んで攪拌することで、取鍋内の溶鋼とCaO-Al系フラックスとの反応を促進させ、フラックス側(スラグ側)に硫黄を移動させて、溶鋼中硫黄の低減を図っている。しかしながら、このような取鍋精錬炉での処理では、黒鉛電極によるアーク加熱を行うことから、溶鋼中への炭素の溶け込みが発生し、極低炭素鋼のような鋼種には適用し難い。
また、RH真空脱ガス装置において、真空槽内を環流する溶鋼へのCaO系フラックスまたはCaO-Al系フラックスを添加することによって脱硫を行う方法がある。さらに、アルゴンガスのような不活性ガスを搬送用ガスとして上吹きランスから真空槽内を環流する溶鋼へCaO系フラックスまたはCaO-Al系フラックスを投射(吹き付ける)することで脱硫を行う方法もある。しかしながら、これらの方法では、溶鋼とフラックスとの反応時間が十分ではなく、効率的に低位の硫黄濃度の溶鋼を得ることは難しい。
ところで、金属中の不純物を低減する精錬技術として、水素プラズマの利用が知られている。プラズマ内の温度は数千度以上にも達するために、プラズマガス中の水素ガスが原子またはイオン状態となり、非常に活性な状態となる。これを溶鋼表面に照射することで、通常の水素ガス照射だけでは成し得ない優れた精錬効果が期待できる。即ち、下記に示す(6)式から(8)式の反応により、溶鋼中の酸素、窒素、硫黄を迅速に除去することができる。
2H+[O]=HO ……(6)
xH+[N]=NH ……(7)
yH+[S]=HS ……(8)
ここで、[O]は溶鋼中の酸素、[N]は溶鋼中の窒素、[S]は溶鋼中の硫黄を表す。
溶鋼中の酸素、窒素及び硫黄を、HO、NH及びHSとして、それぞれガスとして系外へ除去できることに加え、酸素除去時(脱酸時)に介在物を生じないので清浄性の高い鋼が得られる。
このような水素プラズマを利用した高純度金属の精製技術として、特許文献1には、水素プラズマを用いて金属の溶融を行うに際し、金属中の酸素、窒素または炭素を低減するためのプラズマガス中の水素濃度や炉内圧力の好適範囲が開示されている。
特許第4305792号公報
しかしながら、上記特許文献1の技術を工業規模の製鋼工程に適用するには、以下の問題点がある。
特許文献1に記載の実施例では、数十gから数十kgレベルの金属をプラズマ溶解炉で処理した場合の精錬効果が記載されている。しかしながら、工業規模の製鋼工程では100トンを超える溶鋼を処理する必要があり、プラズマガスを溶鋼全体へ照射することが難しい。そのために、特許文献1の開示技術では迅速な不純物除去効果を得られないことが懸念される。迅速な不純物除去効果を得るためには、プラズマ条件だけでなく、溶鋼側の流動条件を適切にし、効率良く水素プラズマ処理を行うことが重要である。
また、特許文献1の開示技術には、水素プラズマを付与する対象の金属量や、金属量とプラズマガス流量との関係が規定されていない。そのため、プラズマガス組成や雰囲気圧力を適切に制御しても、金属量に対するプラズマガス流量や水素量が不足し、十分な不純物低減効果を得られないケースが想定される。更には、特許文献1は、すでに溶融している鉄に水素プラズマを付与する技術ではなく、プラズマによる対象金属の加熱溶融の役割も有している。そのため、製鋼工程のように、すでに溶融している鋼に対して開示されるプラズマガス条件を適用しても、同様の期待効果が得られない可能性も懸念される。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、製鋼工程において、取鍋内の溶鋼へ水素プラズマを付与した際の脱酸、脱窒、脱硫の精錬反応を迅速に進行させ、不純物の少ない高純度溶鋼を効率良く溶製する、溶鋼の精錬方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]取鍋内に収容された溶鋼に攪拌用ガスを吹き込んで取鍋内の溶鋼を攪拌するガス攪拌処理を行う工程において、
前記ガス攪拌処理によって流動状態にある取鍋内溶鋼の表面に、当該取鍋内溶鋼の上方に設置されたプラズマ発生装置から、水素ガスまたは水素ガスを含む不活性ガスをプラズマガスとして下記の(1)式を満たす条件で照射するプラズマ処理を行ない、当該プラズマ処理によって溶鋼中に含まれる酸素、窒素、硫黄のうちから選ばれる1種または2種以上の元素の含有量を低減する、溶鋼の精錬方法。
Figure 0007180821000001

ここで、Gはプラズマガスの流量(Nm/min)、(H)はプラズマガス中の水素ガス濃度(体積%)、Qは取鍋内溶鋼の溶鋼循環流量(ton/min)である。
[2]前記取鍋内溶鋼の溶鋼循環流量を、下記の(2)式、(3)式、(4)式を用いて算出する、上記[1]に記載の溶鋼の精錬方法。
Figure 0007180821000002

ここで、Qは取鍋内溶鋼の溶鋼循環流量(ton/min)、Wは取鍋内溶鋼の質量(ton)、tは取鍋内溶鋼の溶鋼循環時間(min)、Dは取鍋内溶鋼浴の平均直径(m)、Hは取鍋内溶鋼浴の深さ(m)、εは攪拌動力(W/ton)、Gは取鍋内溶鋼への合計攪拌用ガス吹き込み流量(Nm/min)、Tは取鍋内溶鋼の溶鋼温度(K)、Pはプラズマ照射領域の雰囲気圧力(torr)である。
[3]前記ガス攪拌処理は、前記取鍋の底部に1箇所または2箇所以上のガス吹き込み部を設置し、当該ガス吹き込み部から前記取鍋内溶鋼中に攪拌用ガスを吹き込むことで行われ、そのときの(4)式で算出される攪拌動力(ε)が、25W/ton以上である、上記[1]または上記[2]に記載の溶鋼の精錬方法。
[4]前記ガス吹き込み部のうちの少なくとも1箇所の鉛直上方の溶鋼表面直上を中心とし、下記の(5)式で算出されるプラズマ照射範囲半径(r)以内の範囲に前記プラズマガスを照射する、上記[3]に記載の溶鋼の精錬方法。
Figure 0007180821000003

ここで、rはプラズマ照射範囲半径(m)、gは攪拌用ガスの吹き込み流量(Nm/min/ガス吹き込み部1箇所)である。
[5]前記取鍋内溶鋼にプラズマガスを照射する際の雰囲気圧力が150torr以下である、上記[1]から上記[4]のいずれかに記載の溶鋼の精錬方法。
[6]取鍋内に収容した溶鋼の表面に浮遊するスラグは、鉄酸化物の濃度とマンガン酸化物の濃度との合計が5質量%以下である、上記[1]から上記[5]のいずれかに記載の溶鋼の精錬方法。
[7]前記プラズマ処理により、溶鋼に含まれる酸素、窒素、硫黄の3元素の含有量を同時に低減する、上記[1]から上記[6]のいずれかに記載の溶鋼の精錬方法。
本発明によれば、取鍋に収容された溶鋼に、水素プラズマ処理を適切に実施することができ、その結果、不純物の少ない高純度鋼を迅速に溶製することができ、工業上有益な効果がもたらされる。
一般的な取鍋精錬炉の一例を示す概略縦断面図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明に係る溶鋼の精錬方法は、取鍋内に収容された溶鋼に攪拌用ガスを吹き込んで取鍋内の溶鋼を攪拌するガス攪拌処理を行う工程において、ガス攪拌処理によって流動状態にある取鍋内溶鋼の表面に、取鍋内溶鋼の上方に設置されたプラズマ発生装置から、プラズマ化した水素ガス、または、プラズマ化した水素ガスと不活性ガスとの混合ガスをプラズマガスとして照射し、このプラズマガスの照射によって溶鋼中の酸素、窒素、硫黄のうちから選ばれる1種または2種以上の元素を除去し、その含有量を低減する溶製方法である。本明細書では、水素ガスまたは水素ガスを含む不活性ガスをプラズマガスとして溶鋼表面に照射することを「プラズマ処理」または「水素プラズマ処理」と称す。
本発明を実施可能な精錬設備は、攪拌用ガスを取鍋内の溶鋼に吹き込んで溶鋼を攪拌することのできる二次精錬炉であり、例えば、取鍋精錬炉(LF:Ladle Furnace)、VOD炉(Vacuum OxygenDecarburization 炉)、VAD炉(Vacuum Arc Decarburization 炉)、REDA(Revolutionary Degassing Activator)真空脱ガス装置などがある。
図1に、一般的な取鍋精錬炉の一例を概略縦断面図で示す。図1において、符号1は取鍋精錬炉、2は取鍋、3は上蓋、4は黒煙電極、5は鉄皮、6は内張り耐火物、7は永久耐火物、8、8aは底吹きプラグ、9は溶鋼、10はスラグ、11、12はプラズマトーチ、13は攪拌用ガス気泡である。溶鋼9を収容する取鍋2は、外殻を鉄皮5とし、鉄皮5の内側に、永久耐火物7、内張り耐火物6の順で耐火物が施工されており、内張り耐火物6の少なくとも一部(主にスラグライン)はMgO系耐火物で施工されている。また、取鍋2の底部には、ガス吹き込み部として、希ガスなどの攪拌用ガスを吹き込むための底吹きプラグ8、8aが設置されている。プラズマトーチ11、12は、プラズマ発生装置の一部分を構成する装置であって、その先端部から取鍋内の溶鋼9の表面にプラズマガスを照射して水素プラズマ処理を実施する装置であり、上蓋3を貫通して設置されており、取鍋2と上蓋3とで囲まれる空間内での上下移動が可能となっている。図1では、プラズマトーチが2基設置されているが、プラズマトーチは1基でも、また、3基以上でも構わない。また、図1では、底吹きプラグが2箇所に設置されているが、底吹きプラグは1箇所でも、また、3箇所以上でも構わない。
取鍋精錬炉1は、取鍋内の溶鋼9に対して、底吹きプラグ8、8aからアルゴンガスなどの攪拌用ガスを吹き込み、溶鋼9を攪拌しながら、精錬用フラックス及び合金材を添加する設備である。並びに、取鍋精錬炉1は、黒鉛電極4による通電加熱を施し、溶鋼9の成分及び温度を目標値に調整する設備でもある。尚、交流電源により通電加熱を行なう設備では、黒鉛電極4が3本設置される場合が多いが、図1では、3本の黒鉛電極4のうち2本の記載を省略し、黒鉛電極4が1本記載された図となっている。また、取鍋精錬炉1では、添加した精錬用フラックスが溶融して所望する組成のスラグ10が形成され、このスラグ10と溶鋼9との反応により、溶鋼中介在物の形態制御や溶鋼の脱硫反応が行われる。取鍋2のスラグラインの内張り耐火物6をMgO系耐火物とする理由は、MgO系耐火物はスラグ10に対する耐蝕性が高いことに基づく。取鍋精錬炉1では、取鍋2と上蓋3とで囲まれる空間内雰囲気の圧力は大気圧と同等である。つまり、取鍋精錬炉1では、減圧下の精錬は実施できない。
VOD炉(図示せず)及びVAD炉(図示せず)は、排気装置に連結された真空チャンバーを備え、溶鋼9を収容した取鍋2を真空チャンバーの内部に配置する。そして、真空チャンバーの内部を減圧し、取鍋2の底部に配置した底吹きプラグ8、8aから攪拌用の希ガスまたは非酸化性ガスを吹き込むように構成されている。こうして取鍋内の溶鋼9を攪拌させながら、真空チャンバーを貫通させて設置した上吹きランスから酸素ガス或いは搬送用ガスとともに脱硫剤などの精錬剤を取鍋内の溶鋼9に吹き付けて精錬する設備である。VAD炉は、取鍋精錬炉1と同様に、溶鋼9を加熱するための黒煙電極を備えている。VOD炉及びVAD炉では、通常、減圧下で精錬が行われる。プラズマトーチを、真空チャンバーの上部に真空チャンバーを貫通させて設置することで、本発明を実施することができる。
REDA真空脱ガス装置(図示せず)は、攪拌用ガスによる取鍋内溶鋼の底吹き攪拌と、取鍋内溶鋼に先端部を浸漬させた、内部が減圧される大径浸漬槽とを組み合わせた脱ガス炉であり、底吹き攪拌しながら、大径浸漬槽内に溶鋼を上昇させて精錬する装置である。REDA真空脱ガス装置では、通常、減圧下で精錬が行われる。プラズマトーチを、大径浸漬槽の上部に大径浸漬槽を貫通させて設置することで、本発明を実施することができる。
本実施形態に係る溶鋼の精錬方法では、取鍋精錬炉1やVOD炉などの二次精錬炉での溶鋼9の精錬中、アルゴンガスなどの攪拌用ガスによって攪拌されている溶鋼9の表面へ、プラズマトーチ11、12から、水素ガスまたは水素ガスを含む不活性ガスをプラズマガスとして照射する。プラズマ内の温度は数千度以上にも達するので、プラズマガス中の水素ガスが原子またはイオン状態となり、非常に活性な状態となる。原子またはイオン状態の活性な水素を溶鋼表面に照射することで、下記に示す(6)式、(7)式、(8)式の反応が形成され、溶鋼中の酸素、窒素、硫黄を迅速に除去することができる。
2H+[O]=HO ……(6)
xH+[N]=NH ……(7)
yH+[S]=HS ……(8)
(6)式、(7)式、(8)式において、[O]は溶鋼中の酸素、[N]は溶鋼中の窒素、[S]は溶鋼中の硫黄を表す。
図1では、底吹きプラグ8、8aから攪拌用ガスを吹き込んでいるが、溶鋼9にインジェクションランス(図示せず)を浸漬させ、インジェクションランスの先端部から攪拌用ガスを溶鋼9に吹き込んでもよい。攪拌用ガスとしては、不活性ガスであるアルゴンや、還元ガスである水素ガスやプロパンを用いることができる。水素プラズマ処理において、脱窒反応を目的としない場合は、攪拌用ガスとして窒素ガスを用いることもできる。また、不活性ガスや窒素ガスを混合して用いたり、水素プラズマ処理中に適宜切り替えて使用したりすることができる。
プラズマを発生させるには様々な方式があるが、図1に示すように、プラズマトーチ11、12を用いてプラズマを発生させる方式が一般的である。プラズマトーチ11、12は、主に直流電流を用い、気流や水冷ノズルなどの作用で、アークプラズマを各種用途に適した形態で、安定的に且つ制御良く発生させる装置の一つである。
前述した直流電源を用いたプラズマトーチには非移行型と移行型がある。非移行型のプラズマトーチでは、溶鋼側に電極を設ける必要が無いために、設備制約が少なく、また、設置費用が安価であり、この観点から、直流アーク放電による非移行型のプラズマトーチを用いることが好ましい。
尚、プラズマ発生装置は、溶鋼9の上方に設置でき、且つ、水素プラズマを溶鋼表面へ安定的に供給可能な形態であるならば、特に、方式は制限されない。例えば、取鍋精錬炉1で水素プラズマ処理を行う場合、黒鉛電極4より生成するアーク中に水素ガスまたは水素を含む不活性ガスを供給し、水素ガスまたは水素ガスを含む不活性ガスをプラズマ化させる方式でもよい。また、VOD炉のような加熱用の電極をもたないプロセスについては、溶鋼9の上方に交流アークを発生させる電極を設け、この電極間に水素ガスまたは水素ガスを含む不活性ガスを供給することで、水素プラズマ処理を行うことができる。
プラズマガスとしては、水素ガス、または、水素ガスと不活性ガスとを混合した混合ガスを使用する。水素ガスを用いる理由は、前述したように、水素ガスをプラズマ化させることで、直接的に溶鋼中の不純物を除去できるからである。迅速な不純物除去効果を得るためには、プラズマガス中に水素ガスを0.5体積%以上混合することが好ましい。水素プラズマガス中の水素ガス濃度が高い程、不純物除去効果が上昇するので、水素プラズマガス中の水素ガス濃度の上限は特に設けない。不活性ガスとしては、アルゴンガスやヘリウムガスを使用することができる。
溶鋼中の酸素、窒素及び硫黄のような不純物を迅速に低減するには、プラズマガスの流量、プラズマガス中の水素ガス濃度、及び、取鍋内溶鋼の溶鋼循環流量の3つの要素を、適切な範囲に制御する必要がある。
即ち、迅速な不純物除去効果を得るためには、プラズマガス中の水素ガス濃度を高めるだけではなく、底吹きガス攪拌によって取鍋内溶鋼浴内を循環する溶鋼循環流量に対して適切な水素ガス量を供給することが必要である。具体的には、下記の(1)式に示すように、プラズマガスの流量(G)、プラズマガス中の水素濃度(H)、及び、取鍋内溶鋼の溶鋼循環流量(Q)の3つの要素が、下記の(1)式の関係を満たす条件であることが必要である。また、好ましくは、3つの要素の関係(G×(H)/Q)を0.1以上とすることであり、より好ましくは、0.5以上とすることである。一方、(G×(H)/Q)が3.0より大きくなると、プラズマガス中の水素を解離あるいは電離するために大きな出力を要するようになる。さらには、それに伴うプラズマトーチの損耗が顕著になってくるため、(G×(H)/Q)を3.0以下とすることがより好ましい。
Figure 0007180821000004
(1)式において、Gは、プラズマガスの流量(Nm/min)、(H)は、プラズマガス中の水素ガス濃度(体積%)、Qは、取鍋内溶鋼の溶鋼循環流量(ton/min)である。尚、プラズマガスの流量の「Nm/min」は、プラズマガスの体積流量を示す単位であり、「Nm」は、標準状態におけるプラズマガスの体積を意味する。本明細書では、プラズマガスの標準状態を0℃、1atm(101325Pa)とする。
取鍋内溶鋼の溶鋼循環流量(Q)は、取鍋内の溶鋼質量及び底吹きガスによる攪拌動力に影響される。そのため、これらの条件毎に、取鍋内溶鋼における溶鋼循環時間を実機の取鍋2において測定し、取鍋内の溶鋼質量を、測定された溶鋼循環時間で除算することで、取鍋内における溶鋼9の溶鋼循環流量(Q)を求めることができる。
ここで、取鍋内の溶鋼9に、トレーサー元素(例えば、銅、ニッケルなど)を添加し、取鍋内から時系列に採取した成分分析用試料のトレーサー元素濃度の変動が±5%以内になるのに要する時間を均一混合時間とすると、溶鋼循環時間は均一混合時間の約1/3となることから、得られた均一混合時間の1/3となる時間を溶鋼循環時間として用いることができる。
また、取鍋内溶鋼における溶鋼循環時間は、下記の(3)式で示される、経験的な回帰式で求めることができ、更に、下記の(3)式における攪拌動力(ε)は、下記の(4)式で示される、経験的な回帰式で求めることができることが周知である。したがって、下記の(2)式、(3)式、(4)式を用いて取鍋内溶鋼の溶鋼循環流量(Q)を求めることが好ましい。
Figure 0007180821000005
(2)式ないし(4)式において、Qは取鍋内溶鋼の溶鋼循環流量(ton/min)、Wは取鍋内溶鋼の質量(ton)、tは取鍋内溶鋼の溶鋼循環時間(min)、Dは取鍋内溶鋼浴の平均直径(m)、Hは取鍋内溶鋼浴の深さ(m)、εは攪拌動力(W/ton)、Gは取鍋内溶鋼への合計攪拌用ガス吹き込み流量(Nm/min)、Tは取鍋内溶鋼の溶鋼温度(K)、Pはプラズマ照射領域の雰囲気圧力(torr)である。尚、取鍋内溶鋼への合計攪拌用ガス吹き込み流量(G)についても、「Nm」は、標準状態における合計攪拌用ガスの体積を意味し、0℃、1atm(101325Pa)を標準状態とする。また、「torr」は、圧力単位であり、1torrが133.32Paとなる。また更に、取鍋2の側壁は上広がりに傾斜している形状であることがあり、したがって、取鍋内溶鋼浴の平均直径とは、取鍋内溶鋼浴の下端部の直径と上端部の直径との平均値である。
取鍋内に収容され、水素プラズマ処理を行う前の溶鋼9は、転炉または電気炉から取鍋2に出鋼され、例えば、RH真空脱ガス装置のような真空脱ガス設備での真空脱ガス精錬工程を経て、攪拌用ガスを吹き込んで取鍋内の溶鋼を攪拌するガス攪拌処理工程に搬送されたものであってもよい。
水素プラズマ処理を行う前の溶鋼9は未脱酸状態であってもよいが、水素プラズマ処理を行う前に、水素ガスやプロパンのような還元ガスを溶鋼9へ供給して、溶鋼9を予備脱酸してもよい。プラズマ処理前の還元ガスによる予備脱酸により、溶鋼中酸素濃度が或る程度低下した状態からプラズマ処理を開始できるので、上記の(6)式による反応の負荷が軽減され、プラズマ処理時間を短時間化できる。
また、溶鋼中の窒素及び硫黄の除去を重点的に行う場合は、プラズマ処理前にアルミニウムや珪素のような脱酸材を添加して溶鋼9を脱酸し、溶鋼中酸素濃度を予め低減してもよい。この場合には、溶鋼中酸素濃度がすでに低いので、プラズマ処理による脱酸効果は限定的である。溶鋼中酸素は界面活性元素として機能しており、脱酸によって溶鋼中酸素濃度を低減することで、溶鋼表面からの窒素ガス、窒化水素、硫化水素の気相(取鍋内雰囲気)への離脱を阻害し得る。しかしながら、アルミニウムや珪素による脱酸処理によって溶鋼中酸素濃度を低位にしておくことで、速やかに水素プラズマによる溶鋼中の酸素、窒素、硫黄などの除去効果を得ることができる。また、溶鋼9を脱酸しておくことで、水素プラズマ処理による直接的な硫黄除去効果だけでなく、溶鋼-スラグ間反応による脱硫反応促進も期待できる。
プラズマ出力(E)は下記の(9)式を満たすことがより好ましい。水素ガスを高割合で原子状態へ解離させるためには一定以上の出力が必要となるが、導入するプラズマガスの流量あるいはプラズマガス中の水素濃度によって必要となる出力は異なる。それらを調査した結果、プラズマ出力は(9)式の関係を満たすと良いことが分かった。出力を増加させると、水素原子への解離だけでなく、水素イオンへの電離割合が増加するため、より不純物除去効果が顕著となる。一方で、出力増加に伴い電力コストが増加するため、求める品質とコストのバランスによりプラズマ出力を選択すれば良い。
E ≧ G×{1.5×(H)+11.5) …(9)
(9)式において、Eは、プラズマ出力(kW)である。
プラズマ処理の際、取鍋内の溶鋼9に一定以上の流動を与えることで、更に効率良く不純物を低減することができる。即ち、プラズマの照射は溶鋼表面の比較的局所的な領域となるために、溶鋼攪拌によりプラズマ照射部へ新しい溶鋼9を送り続けることで、取鍋内溶鋼全体の不純物濃度を迅速に低減できる。
溶鋼表面の流動は上記の(4)式で表される攪拌動力(ε)と相関関係にあることがわかっており、攪拌動力(ε)が大きくなるほど溶鋼表面の流動は大きくなる。したがって、プラズマ処理を効率化する観点から、攪拌動力(ε)は25W/ton以上とすることが好ましい。攪拌動力(ε)が25W/tonより小さい場合は、プラズマ照射部である溶鋼表面とバルク溶鋼との循環、混合が停滞し、迅速な不純物低減効果が得られない。攪拌動力(ε)の上限は特に設けないが、攪拌動力(ε)が大きすぎる場合はガスの吹き抜けや溶鋼飛散が増大するので、150W/ton以下とすることが望ましい。
また、プラズマを照射する位置には好適な範囲がある。即ち、底吹きプラグ8、8aから吹き込まれた攪拌用ガスが、攪拌用ガス気泡13となって溶鋼表面に浮上する位置またはその近傍に水素プラズマを照射することが好ましい。図1では、底吹きプラグ8の鉛直上方にプラズマトーチ11が設置され、また、底吹きプラグ8aの鉛直上方にプラズマトーチ12が設置されている。つまり、本発明においては、ガス吹き込み部(底吹きプラグ)のうちの少なくとも1箇所の鉛直上方の溶鋼表面直上を中心とし、下記の(5)式で算出されるプラズマ照射範囲半径(r)以内の範囲に、プラズマガスを照射することが好ましい。
Figure 0007180821000006
(5)式において、rはプラズマ照射範囲半径(m)、gは攪拌用ガスの吹き込み流量(Nm/min/ガス吹き込み部1箇所)である。尚、攪拌用ガス吹込み流量(g)についても、「Nm」は、標準状態における攪拌用ガスの体積を意味し、0℃、1atm(101325Pa)を標準状態とする。
プラズマ照射範囲半径(r)の領域内は、取鍋内溶鋼表面のなかで最も流動が速い(激しい)領域であり、そこにプラズマを照射することで、水素プラズマと取鍋内溶鋼との反応が迅速に進行する。また、プラズマ照射範囲半径(r)に該当する領域は、攪拌用ガス気泡13とともに上昇する溶鋼9がスラグ10を押しのけて溶鋼湯面が露出しているか、または、スラグ厚みが比較的薄い領域であるので、スラグ10に阻害されることなく、溶鋼表面へプラズマ処理を行うことができる。
一方、プラズマ照射範囲半径(r)の領域外にプラズマを照射した場合には、溶鋼流動の遅い範囲であるため、押しのけられたスラグ10が堆積しスラグ厚みが大きくなっており、プラズマが溶鋼9まで到達できないおそれがある。
取鍋内の溶鋼表面へプラズマ照射を行う際、その雰囲気は減圧下、具体的には150torr以下であることが好ましい。150torr以下の減圧下でプラズマガスを照射することで、プラズマジェットの流速増加、更には水素ガス分子の原子やイオンへの解離促進が期待できるため、大気圧下でプラズマ処理するよりも、溶鋼中不純物低減効果が大きくなる。雰囲気圧力が150torrよりも高い場合は、上記の効果が小さいために、減圧による効果は得られない。
減圧下で水素プラズマ処理を行うための具体例を以下に示す。例えば、VOD炉のように溶鋼9を収納した取鍋2ごと真空チャンバー内に入れ、真空チャンバーの上部に設置したプラズマ発生装置から取鍋内の溶鋼表面へ水素プラズマの照射を行う。または、REDA真空脱ガス装置のように大径浸漬槽を取鍋内溶鋼に浸漬し、大径浸漬槽内を真空排気して減圧雰囲気とした上で、大径浸漬槽の上部に備えたプラズマ発生装置から大径浸漬槽内に吸い上げられた溶鋼の表面へのプラズマ照射を行う。これらは、減圧下での処理の一例であり、これらの方法に限定されるものではない。尚、プラズマ照射を行う際の雰囲気圧力は、より好ましくは100torr以下であり、更に好ましくは50torr以下である。
取鍋内の溶鋼9の表面に浮遊するスラグ10の成分のうち、特に、スラグ中の鉄酸化物及びマンガン酸化物は、溶鋼9への酸素供給源と成り得る。このため、スラグ10の鉄酸化物の濃度とマンガン酸化物の濃度との合計を5質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは1質量%以下とする。鉄酸化物濃度とマンガン酸化物濃度との合計濃度が5質量%よりも高い場合には、プラズマ処理中にスラグ10から溶鋼9への酸素供給が同時に進行し、不純物低減効果を十分に得ることができない。
スラグ10の鉄酸化物やマンガン酸化物を低減する方法としては、プラズマ処理前に、溶鋼上に浮遊するスラグ10に対して、金属アルミニウムやアルミニウムドロスを添加して、アルミニウムで鉄酸化物やマンガン酸化物の還元を行うことが有効である。また、スラグ10を取鍋2から除去し、その後、取鍋内に造滓剤を添加して、鉄酸化物やマンガン酸化物の少ないスラグを新たに造ることも有効である。また、スラグ10に対して水素プラズマガスを照射することで、スラグ中の鉄酸化物及びマンガン酸化物の還元処理を行うこともできる。
水素プラズマ処理後、アルミニウムや珪素のような脱酸材の添加時期は特には限定されない。例えば、水素プラズマの停止後、大気、スラグ10または取鍋耐火物から酸素が溶鋼9に供給され、溶鋼中の酸素濃度が上昇するので、水素プラズマ処理後、溶鋼9に、速やかにアルミニウムや珪素のような脱酸材を添加し、水素プラズマ処理によって低減された溶鋼中酸素濃度を低位に保持することが好ましい。アルミニウムや珪素のような脱酸材以外にも溶鋼成分を調整する必要がある場合には、水素プラズマ処理後、所定の合金鉄や純金属を取鍋内の溶鋼9に添加する。
また、水素プラズマ処理によって溶鋼中の水素濃度は数質量ppm以上に上昇するので、水素プラズマ処理後、10torr以下の減圧下で5分間以上、脱水素処理を実施することが好ましい。例えば、プラズマ処理を取鍋精錬炉1で行う場合には、後工程にRH真空脱ガス装置などの真空脱ガス設備での精錬を設け、真空脱ガス設備で脱水素処理を行う。脱ガス機能を有するVOD炉やREDA真空脱ガス装置でプラズマ処理を行う場合には、プラズマ処理の後、脱水素処理を継続して行う。
以上のような水素プラズマ処理を用いた精錬方法により、溶鋼中の酸素、窒素及び硫黄をそれぞれ30質量ppm以下までに迅速に低減することができる。
1チャージの溶鋼量が200トン以上350トン以下の規模の実機において、取鍋精錬炉(LF)を用いて、転炉から出鋼した溶鋼に対して大気圧下で水素プラズマ処理を実施する試験を行った(本発明例1ないし9、比較例1ないし3)。また、減圧下での雰囲気の影響を評価する試験では、1チャージの溶鋼量が200トン以上350トン以下規模の実機にて、VOD炉を用いて、転炉から出鋼した溶鋼に対して減圧下で水素プラズマ処理を実施する試験を行った(本発明例10ないし19、比較例4、5)。
取鍋精錬炉では炉蓋の上部に、直流アーク放電による非移行型のプラズマトーチを設置した。また、VOD炉では真空チャンバーの上部に、直流アーク放電による非移行型のプラズマトーチを設置し、これらのプラズマトーチから、プラズマガス流量やプラズマガス中の水素ガス濃度を変化させて、取鍋内溶鋼の表面に水素プラズマを照射した。更に、取鍋精錬炉やVOD炉における操業条件や溶鋼組成(酸素濃度、窒素濃度、硫黄濃度など)を変化させた。尚、取鍋精錬炉における水素プラズマ処理は、黒煙電極によるアーク加熱を停止した状態で行った。
水素プラズマ処理の前後に、成分分析用試料を取鍋内の溶鋼から採取し、溶鋼中酸素濃度、窒素濃度、硫黄濃度の分析を行い、プラズマ処理による効果の確認を行った。プラズマ処理時間は15分間に統一した。尚、転炉出鋼後からプラズマ処理までの間、アルミニウムなどの脱酸材の添加は行っていない。取鍋内スラグの鉄酸化物濃度及びマンガン酸化物濃度は、取鍋精錬炉またはVOD炉での処理開始前に、取鍋内のスラグにアルミニウムドロスを添加して調整した。
表1に各試験の試験条件を示し、表2に評価結果を示す。
Figure 0007180821000007
Figure 0007180821000008

本発明例においては、15分間の水素プラズマ処理を行うことにより、溶鋼中の酸素濃度、窒素濃度及び硫黄濃度は、同時に且つ速やかに30質量ppm以下まで低減した。プラズマ処理の開始前から終了後までのそれぞれの元素の除去率は、溶鋼中酸素が94%以上、溶鋼中窒素が33%以上、溶鋼中硫黄が20%以上であった。
一方、本発明の条件を満たさない比較例においては、水素プラズマ処理後も溶鋼中の酸素、窒素及び硫黄の低減は不十分であり、プラズマ処理の開始前から終了後までのそれぞれの元素の除去率は、溶鋼中酸素が90%以下、溶鋼中窒素が19%以下、溶鋼中硫黄が15%以下であり、いずれも低位であった。
1 取鍋精錬炉
2 取鍋
3 上蓋
4 黒煙電極
5 鉄皮
6 内張り耐火物
7 永久耐火物
8 底吹きプラグ
9 溶鋼
10 スラグ
11 プラズマトーチ
12 プラズマトーチ
13 攪拌用ガス気泡

Claims (14)

  1. 取鍋内に収容された溶鋼に攪拌用ガスを吹き込んで取鍋内の溶鋼を攪拌するガス攪拌処理を行う工程において、
    前記ガス攪拌処理によって流動状態にある取鍋内溶鋼の表面に、当該取鍋内溶鋼の上方に設置されたプラズマ発生装置から、水素ガスまたは水素ガスを含む不活性ガスをプラズマガスとして下記の(1)式を満たす条件で照射するプラズマ処理を行ない、当該プラズマ処理によって溶鋼中に含まれる酸素、窒素、硫黄のうちから選ばれる1種または2種以上の元素の含有量を低減する、溶鋼の精錬方法。
    Figure 0007180821000009
    ここで、Gはプラズマガスの流量(Nm/min)、(H)は
    プラズマガス中の水素ガス濃度(体積%)、Qは取鍋内溶鋼の溶鋼循
    環流量(ton/min)である。
  2. 前記取鍋内溶鋼の溶鋼循環流量を、下記の(2)式、(3)式、(4)式を用いて算出する、請求項1に記載の溶鋼の精錬方法。
    Figure 0007180821000010
    ここで、Qは取鍋内溶鋼の溶鋼循環流量(ton/min)、Wは取鍋内溶鋼の質量(ton)、tは取鍋内溶鋼の溶鋼循環時間(min)、Dは取鍋内溶鋼浴の平均直径(m)、Hは取鍋内溶鋼浴の深さ(m)、εは攪拌動力(W/ton)、Gは取鍋内溶鋼への合計攪拌用ガス吹き込み流量(Nm/min)、Tは取鍋内溶鋼の溶鋼温度(K)、Pはプラズマ照射領域の雰囲気圧力(torr)である。
  3. 前記ガス攪拌処理は、前記取鍋の底部に1箇所または2箇所以上のガス吹き込み部を設置し、当該ガス吹き込み部から前記取鍋内溶鋼中に攪拌用ガスを吹き込むことで行われ、そのときの(4)式で算出される攪拌動力(ε)が、25W/ton以上である、請求項1または請求項2に記載の溶鋼の精錬方法。
  4. 前記ガス吹き込み部のうちの少なくとも1箇所の鉛直上方の溶鋼表面直上を中心とし、下記の(5)式で算出されるプラズマ照射範囲半径(r)以内の範囲に前記プラズマガスを照射する、請求項3に記載の溶鋼の精錬方法。
    Figure 0007180821000011
    ここで、rはプラズマ照射範囲半径(m)、gは攪拌用ガスの吹き込み流量(Nm/min/ガス吹き込み部1箇所)である。
  5. 前記取鍋内溶鋼にプラズマガスを照射する際の雰囲気圧力が150torr以下である、請求項1又は請求項2に記載の溶鋼の精錬方法。
  6. 前記取鍋内溶鋼にプラズマガスを照射する際の雰囲気圧力が150torr以下である、請求項3に記載の溶鋼の精錬方法。
  7. 前記取鍋内溶鋼にプラズマガスを照射する際の雰囲気圧力が150torr以下である、請求項4に記載の溶鋼の精錬方法。
  8. 取鍋内に収容した溶鋼の表面に浮遊するスラグは、鉄酸化物の濃度とマンガン酸化物の濃度との合計が5質量%以下である、請求項1又は請求項2に記載の溶鋼の精錬方法。
  9. 取鍋内に収容した溶鋼の表面に浮遊するスラグは、鉄酸化物の濃度とマンガン酸化物の濃度との合計が5質量%以下である、請求項3に記載の溶鋼の精錬方法。
  10. 取鍋内に収容した溶鋼の表面に浮遊するスラグは、鉄酸化物の濃度とマンガン酸化物の濃度との合計が5質量%以下である、請求項4に記載の溶鋼の精錬方法。
  11. 取鍋内に収容した溶鋼の表面に浮遊するスラグは、鉄酸化物の濃度とマンガン酸化物の濃度との合計が5質量%以下である、請求項5に記載の溶鋼の精錬方法。
  12. 取鍋内に収容した溶鋼の表面に浮遊するスラグは、鉄酸化物の濃度とマンガン酸化物の濃度との合計が5質量%以下である、請求項6に記載の溶鋼の精錬方法。
  13. 取鍋内に収容した溶鋼の表面に浮遊するスラグは、鉄酸化物の濃度とマンガン酸化物の濃度との合計が5質量%以下である、請求項7に記載の溶鋼の精錬方法。
  14. 前記プラズマ処理により、溶鋼に含まれる酸素、窒素、硫黄の3元素の含有量を同時に低減する、請求項1又は請求項2に記載の溶鋼の精錬方法。
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