JP7172258B2 - 編地 - Google Patents

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Description

本発明は、軽量性や染色堅牢度に優れ、汗などによる編地のシミを抑制する効果を有し、さらにその効果の洗濯耐久性に優れる編地に関するものである。
編地は通気性や伸縮性に優れるため、衣料用製品の素材として好適に採用されており、インナーやスポーツウエアなどの肌に接触する用途にも好ましく用いられる。しかし、肌に接触する用途に用いられる場合は発汗によって編地が濡れることで、編地おもて面の色が濃色化してシミになってしまい、審美性の悪化や心理的な不快さを感じてしまうといった課題がある。前記のシミを簡便的に解決する手法として、編地おもて面のみに撥水剤を塗布する方法が挙げられる。しかし撥水剤の塗布では、編地が硬化傾向になることや洗濯や着用での摩耗により性能が低下するといった問題がある。
撥水剤の塗布に代わる手法としては、編地を疎水性の繊維で構成することが挙げられ、特許文献1では鞘をポリプロピレン樹脂とし、芯部に分散染料可染系の樹脂を配した芯鞘複合繊維によって染色性を有するポリプロピレン系繊維が提案されている。
また、疎水性の繊維と親水性の繊維を交編する方法も提案されており、例えば特許文献2ではポリプロピレンマルチフィラメントを編地の片面に配置することで編地おもて面に水分を局在化させる方法が提案されている。さらに、特許文献3では編地おもて面に撥水性のポリエステル系繊維を用い、編地裏面に親水性の繊維を用いることでシミを防止する手法が提案されている。
また、衣料用として用いる場合、特にインナーやスポーツウエアなどには、更なる軽量化も求められている。
特開2008-261070号公報 特開2006-161182号公報 特開2015-86489号公報
しかしながら、上記特許文献1では該芯鞘複合糸のみで編地を構成した場合、軽量性は良好であるが、汗を肌面に局在化させることができないため十分なシミの抑制ができない。また他の繊維と交編した場合でも芯鞘形態のため複合界面が少なく界面での反射が少なくなり防透け性も乏しいため、汗によって濃色化した編地裏面が透けて見えるといった問題点がある。
特許文献2の方法では特許文献1同様に編地は軽量化されるが、汗を編地おもて面に積極的に排出するため編地おもて面がより濃色化してシミになってしまう。また、単に該ポリプロピレンマルチフィラメントを編地おもて面に配しても、ポリプロピレンマルチフィラメントの染色性や反射特性が考慮されていないため濃色化した編地裏面が透けてしまい、十分なシミ防止性が得られないといった問題がある。
さらに、特許文献3の手法では撥水加工されたポリエステル繊維を用いることで汗を肌面に局在化させることができるが、洗濯や着用中の摩耗によって撥水剤が脱落するため耐久性が問題である。またポリエステル繊維を用いるため軽量性も得られない。
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解決し、軽量性や染色堅牢度に優れ、汗などによる編地おもて面の変色を抑制する効果を有し、さらにその効果の洗濯耐久性に優れる編地を提供することにある。
上記本発明の課題は、ポリオレフィン繊維と少なくとも一種以上の親水性繊維からなり、前記ポリオレフィン繊維が、ポリオレフィン(A)を海成分、ポリエステル(B)を島成分とする海島構造からなるポリマーアロイ繊維であって、当該ポリオレフィン繊維のクリンプ率が10%以上であり、編地おもて面におけるポリオレフィン繊維の面積占有率が60%以上100%以下であり、編地裏面におけるポリオレフィン繊維の面積占有率が0%以上40%以下である編地によって解決することができる。
さらに、前記ポリオレフィン繊維が、伸度が10~80%であり、ラマン分光法により求めたポリオレフィン繊維中のポリエステル(B)の配向パラメータが1.0~10.0であることが好ましく、ポリオレフィン繊維中のポリエステル(B)の結晶化度が1~40%であることが好ましい。
本発明によれば、軽量性や染色堅牢度に優れ、汗などによる編地おもて面の変色を抑制する効果を有し、さらにその効果の洗濯耐久性に優れる編地を提供することができる。本発明により得られる編地は、衣料用素材ならびに軽量性や発色性が求められる幅広い用途に好適に用いることができる。
本発明の編地は、ポリオレフィン繊維とポリオレフィンよりも親水性の高い繊維の少なくとも1種以上とからなり、前記ポリオレフィン繊維が、ポリオレフィン(A)を海成分、ポリエステル(B)を島成分とする海島構造からなるポリマーアロイ繊維であって、編地おもて面におけるポリオレフィン繊維の面積占有率が60%以上100%以下であり、編地裏面における面積占有率が0%以上40%以下である。
本発明者らは従来の編地の課題であった、軽量性とシミ防止性の両立といった課題を達成するため鋭意検討した結果、編地おもて面にポリオレフィン繊維を局在化させ、編地裏面に親水性の高い繊維を局在化させることで、編地が軽量化し、肌面からの汗が編地おもて面に染み出すことを抑制した。さらに、該ポリオレフィン繊維がポリオレフィン(A)を海成分、ポリエステル(B)を島成分とする海島構造からなるポリマーアロイ繊維であることによって、染色性を得るとともに、ポリオレフィン(A)とポリエステル(B)の屈折率差によって散乱が起こり未染色の場合でも防透け性が高いため、シミ防止性に特に優れる編地を得ることを可能にした。
本発明の編地は、編地おもて面におけるポリオレフィン繊維の面積占有率が60%以上100%以下であり、編地裏面における面積占有率が0%以上40%以下であることが好ましい。本発明における面積占有率とは、実施例の欄に記載の方法で示されるものである。編地おもて面におけるポリオレフィン繊維の面積占有率が60%以上であり編地裏面におけるポリオレフィン繊維の面積占有率が40%以下であれば肌から発生した汗を編地裏面に偏在化することができ、編地裏面が汗で濡れて変色してもおもて面の変色が抑えられるため、シミ防止性が得られる。編地おもて面におけるポリオレフィン繊維の面積占有率は75%以上であることがより好ましく、85%以上であることが更に好ましい。また、編地裏面のポリオレフィン繊維の面積占有率は30%以下がより好ましく、15%以下が更に好ましい。
本発明の編地におけるポリオレフィン繊維の混率は編地おもて面に十分にポリオレフィン繊維を配するために25wt%以上であることが好ましい。また、ポリオレフィン繊維の混率が高すぎると肌面の汗を十分に吸水することができず、ポリオレフィン繊維側にも染みだしてくるため、ポリオレフィン繊維の混率は80wt%以下が好ましい。本発明におけるポリオレフィン繊維の混率とは編地重量中のポリオレフィン繊維の重量比率を百分率で示したものである。
本発明の編地は表裏拡散面積比が3.0以上であることが好ましい。本発明の表裏拡散面積比とは実施例の欄に記載の方法で示されるものである。表裏拡散面積比は、編地に用いる繊維の疎水性、親水性の程度や編地の構造によって調整することができる。表裏拡散面積比が3.0以上であれば汗などの水分を編地の片面に偏在させることができ、シミ防止性が向上する。表裏拡散面積比は5.0以上がより好ましい。
本発明の編地は防透け性が70%以上であることが好ましい。本発明の防透け性とは実施例の欄に記載の方法で示されるものである。編地の防透け性が70%以上であれば、汗などを吸水して濃色化した面の色がおもて面まで透けにくいため、良好なシミ防止性が得られる。防透け性は80%以上がより好ましい。なお、本発明における防透け性は評価方法上、100%が上限である。
本発明の編地の編成方法は特に制限がなく、横編、丸編、経編など公知の方法を用途や要求特性に応じて適宜選択することができる。
本発明の編地の組織は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができる。横編および丸編では、平編、ゴム編、パール編およびこれらを適宜組み合わせた変化組織を適宜選択することができる。変化組織の具体例としては鹿の子編、片あぜ編、両あぜ編、針抜き編、両面編、振り編、透し編、浮き編、添え糸編、パイル編、ミラノリブ、ダブルピケ、エイトロック、三段両面編、スムース、モックロワイヤル、カーディガン編、緯入り編などが挙げられるが、これらに限定されない。また、経編の組織の具体例としては、シングルデンビー、シングルバンダイク、ふさ編、アイドルスイング、ブラインドラップ、二目編、ノックオフなどの基本組織に加え、プレーントリコット、アトラス編、ダブルバーコード、ハーフトリコット、サテンバック、逆ハーフ、シャークスキン、つづれ編、ブリーツ、疑似パール編などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明における編地の目付は、編地の強度を保持するために30g/m以上であることが好ましく、80g/m以上であることがより好ましい。本発明における目付とは編地1m当たりの重量である。また、目付が大きすぎると本発明の編地を着用した際に、重さを感じるため800g/m以下であることが好ましく、500g/m以下であることがより好ましい。
本発明の編地は、本発明の効果に影響を与えない範囲で、機能や審美性の向上を目的とした後加工を行ってもよい。後加工の具体例としては、起毛加工、カレンダー加工、シワ加工、シルケット加工、毛焼加工、サンフォライズ加工、エンボス加工、抗菌加工、消臭加工、柔軟加工、蛍光増白加工、UVカット加工などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明におけるポリオレフィン繊維とは、繊維中にポリオレフィンを50wt%以上含む繊維のことである。ポリオレフィンを50wt%以上含むことで、ポリオレフィンの疎水性や軽量性が発揮される。さらに、本発明におけるポリオレフィン繊維はポリマーアロイ繊維である。
本発明におけるポリマーアロイ繊維とは、島成分が不連続に分散して存在する繊維のことである。ここで、島成分が不連続とは、島成分が繊維長手方向に適度な長さを有して存在しており、その長さは数十nm~数十万nmであり、同一単繊維内の任意の間隔において、繊維軸に対して垂直な断面、すなわち繊維横断面における海島構造の形状が異なる状態である。本発明における島成分の不連続性は、実施例の欄に記載の方法で確認することができる。島成分が不連続に分散して存在する場合、島成分は紡錘形であるため、染色した場合には、島成分へ透過した光による発色効率が向上し、鮮明性が向上し、深みのある発色が得られる。以上より、本発明におけるポリマーアロイ繊維は、1つの島成分が繊維軸方向に連続かつ繊維横断面における構造が同一形状に形成される芯鞘複合繊維や、複数の島が繊維軸方向に連続かつ繊維横断面における構造が同一形状に形成される海島複合繊維とは本質的に異なるものである。かかるポリマーアロイ繊維は、例えば、溶融紡糸が完結する以前の任意の段階において、ポリオレフィン(A)、ポリエステル(B)を混練して形成したポリマーアロイ組成物から成形することで得ることができる。
本発明のポリオレフィン繊維の繊維横断面におけるポリエステル(B)の島成分の分散径は、1~1000nmである。本発明において、繊維横断面における島成分の分散径とは、実施例の欄に記載の方法で測定される値を指す。繊維横断面における島成分の分散径は製糸性や工程通過性、力学特性、耐摩耗性などの観点から小さいほど好ましいが、相溶性の低いポリオレフィン(A)とポリエステル(B)とのポリマーアロイ繊維においては、製造可能な範囲として1nmが下限である。一方、ポリマーアロイ繊維の繊維横断面における島成分の分散径が1000nm以下であれば、海島界面の比界面積を大きくすることができるため、界面剥離やこれに起因した摩耗を抑制することができ、力学特性や耐摩耗性に優れるとともに、染色した場合に界面剥離に起因する散乱光の増加に伴う発色性の低下を抑制できる。さらに、未染色の場合、海島界面でポリマーの屈折率差によって適度な散乱が生じるため防透け性が向上し編地裏面が透けにくく、シミ防止性が特に良好となる。ポリオレフィン繊維の繊維横断面における島成分の分散径は500nm以下であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。
本発明におけるポリオレフィン(A)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリメチルペンテンなどが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、ポリプロピレンは成形加工性が良好であり、力学特性に優れるため好ましく、ポリメチルペンテンは融点が高く、耐熱性に優れるとともに、ポリオレフィンの中で最も低比重であり、軽量性に優れるため好ましい。衣料用途においては、ポリプロピレンが特に好適に採用できる。
本発明のポリオレフィン(A)は、単独重合体であっても、他のα-オレフィンとの共重合体であってもよい。他のα-オレフィン(以下、単にα-オレフィンと称する場合もある)は、1種または2種以上を共重合してもよい。
α-オレフィンの炭素数は2~20であることが好ましく、α-オレフィンの分子鎖は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。α-オレフィンの具体例として、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ヘキセンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
α-オレフィンの共重合率は20mol%以下であることが好ましい。α-オレフィンの共重合率が20mol%以下であれば、力学特性や耐熱性が良好なポリオレフィン繊維が得られるため好ましい。α-オレフィンの共重合率は10mol%以下であることがより好ましい。
本発明のポリエステル(B)の主たる構成成分は、ジカルボン酸成分(B1)とジオール成分(B2)であり、脂肪族ジカルボン酸(B1-1)、脂環族ジカルボン酸(B1-2)、芳香族ジカルボン酸(B1-3)から選択される少なくとも1つのジカルボン酸成分(B1)であることが好ましく、脂肪族ジオール(B2-1)、脂環族ジオール(B2-2)、芳香族ジオール(B2-3)から選択される少なくとも1つのジオール成分(B2)であることが好ましい。もしくは、本発明のポリエステル(B)の主たる構成成分は、脂肪族オキシカルボン酸、脂環族オキシカルボン酸、芳香族オキシカルボン酸から選択されるいずれか1種であることが好ましい。
本発明における脂肪族ジカルボン酸(B1-1)の具体例として、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸、ダイマー酸など、脂環族ジカルボン酸(B1-2)の具体例として、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、デカリン-2,6-ジカルボン酸など、芳香族ジカルボン酸(B1-3)の具体例として、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,2’-ビフェニルジカルボン酸、3,3’-ビフェニルジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。また、脂肪族ジオール(B2-1)の具体例として、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなど、脂環族ジオール(B2-2)の具体例として、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、イソソルビドなど、芳香族ジオール(B2-3)の具体例として、カテコール、ナフタレンジオール、ビスフェノールなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、脂肪族オキシカルボン酸の具体例として、乳酸、グリコール酸、α-オキシイソ酪酸、β-オキシイソ酪酸、オキシピバル酸など、芳香族オキシカルボン酸の具体例として、サリチル酸、m-オキシ安息香酸、p-オキシ安息香酸、マンデル酸、アトロラクチン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のポリエステル(B)の具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリプロピレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンセバケート、ポリプロピレンセバケート、ポリブチレンセバケート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のポリエステル(B)は、共重合ポリエステルであることも好ましい。共重合成分の種類や共重合成分の共重合率によって、ポリオレフィン繊維中におけるポリエステル(B)の屈折率や後述するポリオレフィン繊維中におけるポリエステル(B)の分子配向や結晶化度を制御することができ、発色性や染色堅牢度に優れた繊維ならびに繊維構造体を得ることができるため好ましい。共重合成分の具体例として、上記に示した脂肪族ジカルボン酸(B1-1)、脂環族ジカルボン酸(B1-2)、芳香族ジカルボン酸(B1-3)、脂肪族ジオール(B2-1)、脂環族ジオール(B2-2)、芳香族ジオール(B2-3)、脂肪族オキシカルボン酸、脂環族オキシカルボン酸、芳香族オキシカルボン酸などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの共重合成分は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、共重合成分の共重合率は、特に制限がなく、得られるポリオレフィン繊維の発色性や染色堅牢度に応じて適宜選択することができる。
本発明のポリエステル(B)は屈折率が1.40~1.58であることが好ましい。本発明における屈折率とは、実施例の欄に記載の方法で測定される値を指す。ポリエステル(B)の屈折率は、1.40以上であればポリオレフィン(A)との屈折率差による光散乱によって防透け性が向上し、1.58以下にすることで染色後の発色性を高く維持できる。本発明のポリエステル(B)の屈折率は、1.50~1.57であることがより好ましい。
本発明のポリオレフィン繊維では、海成分であるポリオレフィン(A)の溶融粘度(ηA)と、島成分であるポリエステル(B)の溶融粘度(ηB)との溶融粘度比(ηB/ηA)が0.2~5.0であることが好ましい。本発明における溶融粘度比(ηB/ηA)とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。ポリマーアロイの紡糸のように、異なるポリマーを混合して溶融紡糸する場合、溶融紡糸時に海成分、島成分それぞれにかかる紡糸応力は、海成分と島成分の溶融粘度比に応じて変化する。そのため、後述するポリオレフィン繊維中におけるポリエステル(B)の分子配向もまた、海成分と島成分の溶融粘度比に応じて変化する。本発明のポリオレフィン繊維は、ポリエステル(B)が島を形成し、ポリエステル(B)の分子配向の高低に応じて、繊維の発色性や染色堅牢度を制御することができる。そのため、本発明において海成分と島成分の溶融粘度比は重要である。ηB/ηAが0.2以上であれば、溶融紡糸時にポリエステル(B)にかかる紡糸応力が低下するものの、ポリオレフィン繊維中においてポリエステル(B)の分子配向が低くなり過ぎないため、ポリオレフィン繊維を染色後の還元洗浄やソーピングにおける、ポリエステル(B)からの染料の脱落が抑制されており、発色性や均染性に優れた繊維ならびに繊維構造体を得ることができるため好ましい。また、使用時の摩擦や洗濯においても染料の脱落が抑制されており、染色堅牢度に優れた繊維構造体を得ることができるため好ましい。ηB/ηAは0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることが更に好ましく、0.7以上であることが特に好ましい。一方、ηB/ηAが5.0以下であれば、溶融紡糸時に島成分のポリエステル(B)にかかる紡糸応力が高くなり過ぎず、ポリオレフィン繊維中においてポリエステル(B)の分子配向が抑制されているため、染料が十分に染着し、発色性に優れた繊維ならびに繊維構造体を得ることができるため好ましい。ηB/ηAは3.3以下であることがより好ましく、2.0以下であることが更に好ましく、1.4以下であることが特に好ましい。
本発明においては、上記のとおり、ポリエステル(B)の共重合成分の種類や共重合成分の共重合率によって、ポリオレフィン繊維中におけるポリエステル(B)の分子配向や結晶化度を制御することができる。そのため、ポリエステル(B)の共重合成分の種類や共重合成分の共重合率に応じて、海成分であるポリオレフィン(A)の溶融粘度(ηA)と、島成分であるポリエステル(B)の溶融粘度(ηB)との溶融粘度比(ηB/ηA)の好ましい範囲が変化する。例えば、ポリエチレンテレフタレートの場合、0.2~0.9であることが好ましく、0.4~0.7であることがより好ましい。また、イソフタル酸(IPA)を30mol%共重合したポリエチレンテレフタレートの場合、ηB/ηAは、0.2~5.0であることが好ましく、0.5~2.0であることがより好ましい。
本発明のポリオレフィン繊維は、ポリオレフィン(A)、ポリエステル(B)の合計100重量部に対し、ポリエステル(B)を3.0~30.0重量部含有することが好ましい。ポリエステル(B)の含有量が3.0重量部以上であれば、ポリエステル(B)が、ポリオレフィン(A)中に分散しており、鮮やかで深みのある発色性が付与された繊維構造体を得ることができるため好ましい。また、溶融紡糸時にポリエステル(B)にかかる紡糸応力が高くなり過ぎないため、後述するポリオレフィン繊維中におけるポリエステル(B)の分子配向を抑制することができる。ポリオレフィン繊維中においてポリエステル(B)の分子配向が抑制されているため、染料が十分に染着し、発色性に優れた繊維構造体を得ることができるため好ましい。一方、ポリエステル(B)の含有量が30.0重量部以下であれば、溶融紡糸時に島成分のポリエステル(B)にかかる紡糸応力が低下するものの、ポリオレフィン繊維中においてポリエステル(B)の分子配向が低くなり過ぎないため、ポリオレフィン繊維を染色後の還元洗浄やソーピングにおいて、ポリエステル(B)からの染料の脱落が抑制されており、発色性や均染性に優れた繊維構造体を得ることができるため好ましい。また、使用時の摩擦や洗濯においても染料の脱落が抑制されており、染色堅牢度に優れた繊維構造体を得ることができるため好ましい。ポリエステル(B)の含有量は、25.0重量部以下であることが更に好ましく、20.0重量部以下であることがより好ましい。
本発明のポリオレフィン繊維は、添加物を加えて種々の改質が行われたものであってもよい。添加剤の具体例として、相溶化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、離型剤、抗菌剤、核形成剤、熱安定剤、帯電防止剤、着色防止剤、調整剤、艶消し剤、消泡剤、防腐剤、ゲル化剤、ラテックス、フィラー、インク、着色料、染料、顔料、香料などが挙げられるが、これらに限定されない。これらの添加物は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリオレフィン繊維は、繊維の形態に関して特に制限がなく、延伸糸、紡績糸、エア加工糸、仮撚糸、撚糸、カバリング糸などのいずれの形態であってもよいが、2本以上の繊維から構成されるマルチフィラメントであることが好ましい。
本発明のポリオレフィン繊維のマルチフィラメントとしての繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、10~500dtexであることが好ましい。本発明における繊度とは、実施例の欄に記載の方法で測定される値を指す。ポリオレフィン繊維の繊度が10dtex以上であれば、編成工程での糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。ポリオレフィン繊維の繊度は、30dtex以上であることがより好ましい。一方、ポリオレフィン繊維の繊度が500dtex以下であれば、編地の柔軟性を損なうことがないためより好ましい。ポリオレフィン繊維の繊度は、300dtex以下であることがより好ましい。
本発明のポリオレフィン繊維の単繊維繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、0.5~20dtexであることが好ましい。本発明における単繊維繊度とは、実施例の欄に記載の方法で測定される繊度を単繊維数で除した値を指す。ポリオレフィン繊維の単繊維繊度が0.5dtex以上であれば、編成工程での糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。また、溶融紡糸時に島成分のポリエステル(B)にかかる紡糸応力が高くなり過ぎないため、後述するポリオレフィン繊維中におけるポリエステル(B)の分子配向を抑制することができる。ポリオレフィン繊維中においてポリエステル(B)の分子配向が抑制されているため、染料が十分に染着し、発色性に優れた繊維構造体を得ることができるため好ましい。ポリオレフィン繊維の単繊維繊度は、0.6dtex以上であることがより好ましい。一方、ポリオレフィン繊維の単繊維繊度が20dtex以下であれば、繊維構造体の柔軟性を損なうことがないため好ましい。ポリオレフィン繊維の単繊維繊度は、12dtex以下であることがより好ましい。
本発明のポリオレフィン繊維を構成するフィラメント数は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、3~250本であることが好ましい。ポリオレフィン繊維のフィラメント数が3本以上であれば、編地の柔軟性を損なうことがないため好ましい。ポリオレフィン繊維のフィラメント数は、10本以上であることがより好ましく、15本以上であることが更に好ましく、20本以上であることが特に好ましい。一方、ポリオレフィン繊維のフィラメント数が250本以下であれば、溶融紡糸時に均一に冷却できるため均一性に優れたマルチフィラメントを得ることができる。ポリオレフィン繊維のフィラメント数は、200本以下であることがより好ましく、150本以下であることが更に好ましく、100本以下であることが特に好ましい。
本発明のポリオレフィン繊維の強度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、力学特性の観点から1.0~6.0cN/dtexであることが好ましい。本発明における強度とは、実施例の欄に記載の方法で測定される値を指す。ポリオレフィン繊維の強度が1.0cN/dtex以上であれば、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。ポリオレフィン繊維の強度は2.0cN/dtex以上であることがより好ましく、3.0cN/dtex以上であることが更に好ましい。一方、ポリオレフィン繊維の強度が6.0cN/dtex以下であれば、編地の柔軟性が適度に保たれ好ましい。
本発明のポリオレフィン繊維の伸度は、10~80%である。本発明における伸度とは、実施例の欄に記載の方法で測定される値を指す。ポリオレフィン繊維の伸度が10%以上であれば、ポリオレフィン繊維中において染色可能なポリエステル(B)の分子配向が抑制されているため、染料が十分に染着し、発色性に優れた繊維ならびに繊維構造体を得ることができる。また、繊維ならびに繊維構造体の耐摩耗性が良好となり、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性が良好となる。ポリオレフィン繊維の伸度は、20%以上であることがより好ましい。一方、ポリオレフィン繊維の伸度が80%以下であれば、ポリオレフィン繊維中において染色可能なポリエステル(B)の分子配向が低くなり過ぎないため、ポリオレフィン繊維を染色後の還元洗浄やソーピングにおける、ポリエステル(B)からの染料の脱落が抑制されており、発色性や均染性に優れた繊維ならびに繊維構造体を得ることができる。また、使用時の摩擦や洗濯においても染料の脱落が抑制されており、染色堅牢度に優れた繊維ならびに繊維構造体を得ることができる。ポリオレフィン繊維の伸度は70%以下であることがより好ましい。
本発明のポリオレフィン繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができ、真円状の円形断面であってもよく、非真円形断面であってもよい。非真円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形、C字形、H字形、S字形、T字形、W字形、X字形、Y字形、田字形、井桁形、中空形などが挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの断面は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のポリオレフィン繊維は、編地から抜き出した際のクリンプ率が10%以上であることが好ましい。本発明におけるクリンプ率とは実施例の欄に記載の方法で測定されるものである。ポリオレフィン繊維のクリンプ率が10%以上であると嵩高性が向上して編地の空隙がポリオレフィン繊維で埋められて防透け性が向上する。更にシミ防止性が良好となる。ポリオレフィン繊維のクリンプ率は20%以上であることがより好ましく、30%以上であると更に好ましい。
本発明のポリオレフィン繊維にクリンプを付与する方法は、エア加工、仮撚加工、スタッフィング法、擦過法、壁加工、ギア加工、ニットデニットなどが挙げられるが、これらに限定されない。特に仮撚加工はクリンプの付与が容易であり生産性にも優れるため好ましい。
仮撚加工を行う場合には、加撚部のみにヒーターを使用する、いわゆるウーリー加工以外に、さらに解撚部にもヒーターを使用する、いわゆるブレリア加工を適宜選択することができる。
仮撚加工に用いる装置として、ここではFR(フィードローラー)、1DR(1ドローローラー)ヒーター、冷却板、仮撚装置、2DR(2ドローローラー)、3DR(3ドローローラー)、交絡ノズル、4DR(4ドローローラー)、ワインダーを備えた仮撚加工装置を例示する。
FR-1DR間の加工倍率は、仮撚加工に用いる繊維の伸度や、仮撚加工後の繊維の伸度に応じて適宜選択できるが、1.0~2.0倍であることが好ましい。
ヒーターの加熱方法は、接触式、非接触式のいずれであってもよい。ヒーター温度は、ポリオレフィン(A)、ポリエステル(B)の融点や、仮撚加工後の繊維の強度、伸度などに応じて適宜選択することができるが、接触式の場合のヒーター温度は90℃以上、非接触式の場合のヒーター温度は150℃以上であることが好ましい。接触式の場合のヒーター温度が90℃以上、または非接触式の場合のヒーター温度が150℃以上であれば、仮撚加工に供給される糸条の予熱が充分に行われ、延伸に伴う熱変形が均一となり、毛羽や繊度斑の発生を抑制することができ、繊維長手方向の均一性に優れ、均染性に優れる高品位の繊維ならびに繊維構造体を得ることができるため好ましい。接触式の場合のヒーター温度は100℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることが更に好ましい。非接触式の場合のヒーター温度は200℃以上であることがより好ましく、250℃以上であることが更に好ましい。ヒーター温度の上限は、仮撚加工に用いる未延伸糸または延伸糸がヒーター内で融着しない温度であればよい。
仮撚装置は、摩擦仮撚型が好ましく、フリクションディスク型、ベルトニップ型などが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、フリクションディスク型が長時間操業した場合においても、安定して仮撚加工することができるため好ましい。2DR-3DR間および3DR-4DR間の倍率は、仮撚加工後の繊維の強度や伸度などに応じて適宜選択できるが、0.9~1.0倍であることが好ましい。3DR-4DR間では、仮撚加工後の繊維の工程通過性を向上させるため、交絡ノズルによる交絡付与、もしくは給油ガイドによる追油を行ってもよい。
仮撚加工を行う場合の加工速度は、適宜選択することができるが、200~1000m/分であることが好ましい。加工速度が200m/分以上であれば、走行糸条が安定し、糸切れが抑制できるため好ましい。加工速度は300m/分以上であることがより好ましく、400m/分以上であることが更に好ましい。一方、加工速度が1000m/分以下であれば、仮撚加工時の糸切れが抑制され、安定した仮撚加工を行うことができるため好ましい。加工速度は900m/分以下であることがより好ましく、800m/分以下であることが更に好ましい。
本発明のポリオレフィン繊維は、ラマン分光法により求めたポリオレフィン繊維中のポリエステル(B)の配向パラメータが1.0~10.0である。本発明におけるラマン分光法により求めたポリオレフィン繊維中のポリエステル(B)の配向パラメータとは、実施例の欄に記載の方法で測定される値を指す。配向パラメータとは、ポリマーの分子配向の指標であり、最小値が1.0で無配向であることを示し、値が大きいほど、分子配向が高いことを表す。ポリオレフィン繊維中のポリエステル(B)の配向パラメータが2.5以上であれば、染色後の還元洗浄やソーピングにおいて、ポリエステル(B)からの染料の脱落が抑制されており、発色性や均染性に優れた繊維構造体を得ることができ好ましい。また、使用時の摩擦や洗濯においても染料の脱落が抑制されており、染色堅牢度に優れた繊維構造体を得ることができる。一方、ポリオレフィン繊維中のポリエステル(B)の配向パラメータが10.0以下であれば、ポリオレフィン繊維中において染色可能なポリエステル(B)の分子配向が抑制されているため、染料が十分に染着し、発色性に優れた繊維構造体を得ることができる。ポリオレフィン繊維中のポリエステル(B)の配向パラメータは7.0以下であることがより好ましい。
本発明のポリオレフィン繊維は、ラマン分光法により求めたポリオレフィン繊維中のポリエステル(B)の結晶化度が1~40%であることが好ましい。本発明におけるラマン分光法により求めたポリオレフィン繊維中のポリエステル(B)の結晶化度とは、実施例の欄に記載の方法で測定される値を指す。ポリオレフィン繊維中のポリエステル(B)の結晶化度が1%以上であれば、ポリオレフィン繊維を染色後の還元洗浄やソーピングにおいて、ポリエステル(B)からの染料の脱落が抑制されており、発色性や均染性に優れた繊維ならびに繊維構造体を得ることができるため好ましい。また、使用時の摩擦や洗濯においても染料の脱落が抑制されており、染色堅牢度に優れた繊維ならびに繊維構造体を得ることができるため好ましい。ポリオレフィン繊維中のポリエステル(B)の結晶化度は10%以上であることがより好ましく、15%以上であることが更に好ましい。一方、ポリオレフィン繊維中のポリエステル(B)の結晶化度が40%以下であれば、ポリオレフィン繊維中においてポリエステル(B)の非晶部分へ染料が十分に染着し、発色性に優れた繊維構造体を得ることができるため好ましい。ポリオレフィン繊維中のポリエステル(B)の結晶化度は35%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更に好ましい。
本発明のポリオレフィンよりも親水性の高い繊維(以後、親水性繊維ともいう)とは、水に対する接触角が0~90°の繊維のことである。本発明における接触角とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。水に対する接触角が0~90°であれば親水性に優れるため、該繊維を編地肌面に配することで汗を編地肌面に局在化させ、編地おもて面のシミを防止することができる。水に対する接触角は0~60°であることがより好ましく、0~30°であることがさらに好ましい。
本発明の親水性繊維は、素材に関して特に制限がなく、ポリエステル、ナイロン、アクリル、改質ポリオレフィン、ポリウレタンなどの合成繊維が挙げられ、共重合、グラフト重合、プラズマ処理などによる改質が行われていても何ら問題ない。また、綿、麻、ウール、絹、再生セルロース繊維などの天然由来の素材をもちいることも何ら問題なく、公知の手法で改質されていてもよい。これらの繊維は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の親水性繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、非真円形断面であると、繊維の比表面積が増え、繊維間の微細な空隙も得られるため、より吸水性が向上するため好ましい。非真円形断面の具体例として、多葉形、多角形、扁平形、楕円形、C字形、H字形、S字形、T字形、W字形、X字形、Y字形、田字形、井桁形、中空形などが挙げられるが、これらに限定されない。また、非真円形断面は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の親水性繊維は、繊維の形態に関して特に制限がなく、延伸糸、紡績糸、エア加工糸、仮撚糸、撚糸、カバリング糸などのいずれの形態であってもよいが、2本以上の繊維で構成されるマルチフィラメントであることが好ましい。
本発明の親水性繊維のマルチフィラメントとしての繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、10~2000dtexであることが好ましい。本発明における繊度とは、実施例記載の方法で測定される値を指す。親水性繊維の繊度が10dtex以上であれば、編成工程での糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。親水性繊維の繊度は、30dtex以上であることがより好ましい。一方、親水性繊維の繊度が1000dtex以下であれば、編地の柔軟性を損なうことがないため好ましい。ポリオレフィン繊維の繊度より親水性の高い繊維は、1000dtex以下であることがより好ましく、500dtex以下であることが更に好ましい。
本発明の親水性繊維の単繊維繊度は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、0.3~20dtexであることが好ましい。本発明における単繊維繊度とは、実施例の欄に記載の方法で測定される繊度を単繊維数で除した値を指す。親水性繊維の単繊維繊度が0.3dtex以上であれば、編成工程での糸切れが少なく、工程通過性が良好であることに加え、使用時に毛羽の発生が少なく、耐久性に優れるため好ましい。親水性繊維の単繊維繊度は、0.6dtex以上であることがより好ましい。一方、親水性繊維の単繊維繊度が20dtex以下であれば、繊維構造体の柔軟性が適度に保たれ好ましい。親水性繊維の単繊維繊度は、5dtex以下であることがより好ましい。
本発明の親水性繊維を構成するフィラメント数は、特に制限がなく、用途や要求特性に応じて適宜選択することができるが、ポリオレフィン繊維からなるマルチフィラメントとできるだけ本数を揃える方がよく、3~250本であることが好ましい。親水性繊維のフィラメント数が3本以上であれば、編地の柔軟性を損なうことがなく、繊維間隙の毛細管現象により吸水性が向上するため好ましい。親水性繊維のフィラメント数は、10本以上であることがより好ましく、15本以上であることが更に好ましく、20本以上であることが特に好ましい。一方、親水性繊維のフィラメント数は適宜、ポリオレフィン繊維からなるマルチフィラメント数にバランス良く合わせ、250本以下にすることで柔軟性が保たれた繊維構造体が得られる。親水性繊維のフィラメント数は、200本以下であることがより好ましく、150本以下であることが更に好ましく、100本以下であることが特に好ましい。
本発明の編地を染色する場合には、分散染料、カチオン染料を好適に採用することができ、親水性繊維の染料としては素材に合わせて適宜染料を選択することができる。本発明における染色方法は、特に制限がなく、公知の方法に従い、チーズ染色機、液流染色機、ドラム染色機、ビーム染色機、ジッガー、高圧ジッガーなどを好適に採用することができる。また、本発明では、染料濃度や染色温度に関して特に制限がなく、公知の方法を好適に採用できる。さらには、必要に応じて精練、染色加工後の還元洗浄を行なう。
本発明の編地は軽量性や染色堅牢度に優れ、汗などによるシミを抑制する効果を有し、さらにその効果の洗濯耐久性に優れるものである。本発明により得られる編地は、衣料用素材ならびに軽量性や発色性が求められる幅広い用途に好適に用いることができる。具体的には、婦人服、紳士服、裏地、下着、ダウン、ベスト、インナー、パット、アウターなどの一般衣料、ウインドブレーカー、アウトドアウェア、スキーウェア、ゴルフウェア、Tシャツ、水着などのスポーツ衣料、寝具、資材などの用途が挙げられるが、これらに限定されない。また、用途に応じて編地の表裏は適宜選択することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。なお、実施例中の各特性値は、以下の方法で求めたものである。
A.編地おもて面におけるポリオレフィン繊維の面積占有率
キーエンス社製マイクロスコープVHX-6000を用いて一定倍率、好ましくは500倍に拡大した編地おもて面の写真を撮影し、5cmの一定範囲(A)について、ポリオレフィン繊維の露出面積(S)を三谷商事社製winROOFで計測し、下記百分率の式で算出した。
編地おもて面におけるポリオレフィン繊維の面積占有率=(S/A)×100
B.繊度
温度20℃、湿度65%RHの環境下において、INTEC製電動検尺機を用いて、実施例・比較例で用いた繊維100mをかせ取りした。得られたかせの重量を測定し、下記式を用いて繊度(dtex)を算出した。
繊度(dtex)=繊維100mの重量(g)×100
なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を繊度とした。
C.強度、伸度
強度および伸度は、実施例・比較例で用いた繊維を試料とし、JIS L1013:2010(化学繊維フィラメント糸試験方法)8.5.1に準じて算出した。温度20℃、湿度65%RHの環境下において、オリエンテック社製テンシロンUTM-III-100型を用いて、初期試料長20cm、引張速度20cm/分の条件で引張試験を行った。最大荷重を示す点の応力(cN)を繊度(dtex)で除して強度(cN/dtex)を算出し、最大荷重を示す点の伸び(L1)と初期試料長(L0)を用いて下記式によって伸度(%)を算出した。
伸度(%)={(L1-L0)/L0}×100
なお、測定は1試料につき10回行い、その平均値を強度および伸度とした。
D.複合比率
ポリオレフィン繊維の原料として用いたポリオレフィン(A)、ポリエステル(B)の合計を100重量部とし、複合比率としてA/B[重量部]を算出した。
E.溶融粘度比
事前に真空乾燥したポリオレフィン(A)およびポリエステル(B)について、東洋精機製キャピログラフ1Bにて、孔径1.0mm、孔長10mmのキャピラリーを使用して窒素雰囲気下で5分間滞留させた後に測定を行った。なお、測定温度は後述する試作例中の紡糸温度と同様とし、剪断速度1216sec-1での見掛け粘度(Pa・s)を溶融粘度(Pa・s)とした。測定は1試料につき3回行い、その平均値を溶融粘度とした。ポリオレフィン(A)、ポリエステル(B)の溶融粘度をそれぞれηA、ηBとし、下記式を用いて溶融粘度比を算出した。
溶融粘度比(ηB/ηA)=ηB/ηA
F.島成分の不連続性
試作例によって得られたポリオレフィン繊維をエポキシ樹脂で包埋した後、LKB製ウルトラミクロトームLKB-2088を用いてエポキシ樹脂ごと、繊維軸に対して垂直方向に繊維を切断し、厚さ約100nmの超薄切片を得た。得られた超薄切片を固体の四酸化ルテニウムの気相中に常温で約4時間保持して染色した後、染色された面をウルトラミクロトームで切断し、四酸化ルテニウムで染色された超薄切片を作製した。染色された超薄切片について、日立製透過型電子顕微鏡(TEM)H-7100FA型を用いて、加速電圧100kVの条件で繊維軸に対して垂直な断面、すなわち繊維横断面を観察し、繊維横断面の顕微鏡写真を撮影した。観察は300倍、500倍、1000倍、3000倍、5000倍、10000倍、30000倍、50000倍の各倍率で行い、顕微鏡写真を撮影する際には100個以上の島成分が観察できる最も低い倍率を選択した。
島成分の不連続性については、同一単繊維内において単繊維直径の少なくとも10000倍以上の任意の間隔で、繊維横断面の顕微鏡写真を5枚撮影し、それぞれの繊維横断面における島成分の数および海島構造の形状が異なる場合、島成分が不連続であるとし、島成分が不連続である場合を「○」、島成分が不連続でない場合を「×」とした。
G.島成分の分散径
試作例によって得られたポリオレフィン繊維をエポキシ樹脂で包埋した後、LKB製ウルトラミクロトームLKB-2088を用いてエポキシ樹脂ごと、繊維軸に対して垂直方向に繊維を切断し、厚さ約100nmの超薄切片を得た。得られた超薄切片を固体の四酸化ルテニウムの気相中に常温で約4時間保持して染色した後、染色された面をウルトラミクロトームで切断し、四酸化ルテニウムで染色された超薄切片を作製した。染色された超薄切片について、日立製透過型電子顕微鏡(TEM)H-7100FA型を用いて、加速電圧100kVの条件で繊維軸に対して垂直な断面、すなわち繊維横断面を観察し、繊維横断面の顕微鏡写真を撮影した。観察は300倍、500倍、1000倍、3000倍、5000倍、10000倍、30000倍、50000倍の各倍率で行い、顕微鏡写真を撮影する際には100個以上の島成分が観察できる最も低い倍率を選択した。撮影された写真について、同一の写真から無作為に抽出した100個の島成分の直径を画像処理ソフト(三谷商事製WINROOF)で測定し、その平均値を島成分の分散径(nm)とした。繊維横断面に存在する島成分は必ずしも真円とは限らないため、真円ではない場合には外接円の直径を島成分の分散径として採用した。単繊維の繊維横断面に存在する島成分が100個未満の場合には、同条件で製造した複数の単繊維を試料として繊維横断面を観察し、顕微鏡写真を撮影する際には単繊維の全体像が観察できる最も高い倍率を選択した。撮影された写真について、各単繊維の繊維横断面に存在する島成分の分散径を測定し、合計100個の島成分の分散径の平均値を島成分の分散径とした。
H.配向パラメータ
試作例によって得られたポリオレフィン繊維を試料とし、下記条件にて測定を行い、偏光方向が繊維軸と一致する場合を平行条件、直行する場合を垂直条件として、それぞれの偏光ラマンスペクトルを得た。ポリエステル(B)のC=C伸縮振動に帰属される1615cm-1付近のラマンバンドが存在する場合には、平行条件におけるラマンバンド強度をI1615平行、垂直条件におけるラマンバンド強度をI1615垂直とし、下記式を用いて配向パラメータを算出した。ポリエステル(B)のC=C伸縮振動に帰属される1615cm-1付近のラマンバンドが存在しない場合には、ポリエステル(B)のC=O伸縮振動に帰属される1730cm-1付近のラマンバンドにおいて、平行条件におけるラマンバンド強度をI1730平行、垂直条件におけるラマンバンド強度をI1730垂直とし、下記式を用いて配向パラメータを算出した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を配向パラメータとした。
配向パラメータ=I1615平行/I1615垂直、または配向パラメータ=I1730平行/I1730垂直
装置 :RENISHAW製inVia
測定モード :顕微ラマン
対物レンズ :×20
ビーム径 :5μm
光源 :YAG 2nd 532nm Line
レーザーパワー:100mW
回折格子 :Single -3000gr/mm
スリット :65μm
検出器 :CCD 1024×256pixels 。
I.結晶化度
上記Hにおいて、繊維軸に平行に偏光したレーザー光を入射し、散乱光には検光子を入れずに測定した以外は同様に測定を行い、偏光ラマンスペクトルを得た。ポリエステル(B)のC=O伸縮振動に帰属される1730cm-1付近のラマンバンドの半値全幅をΔν1730とし、下記式を用いて結晶化度を算出した。下記式における換算密度ρは、種々のPET試料の半値幅から経験的に導出されたものである。
換算密度ρ(g/cm)=(305-Δν1730)/209
結晶化度(%)=100×(ρ-1.335)/(1.455-1.335)
なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を結晶化度とした。
J.繊維の接触角
黒色板に各単繊維を間隔空けずに200本平行に並べた糸サンプルを作製し、糸サンプルを炭酸ナトリウム1.5g/L、明成化学工業製グランアップUS-20 0.5g/Lを含む水溶液中、80℃で20分間精練後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥器内で60分間乾燥した。精練後の筒編みを、協和界面科学製接触角計を用いて試料に水滴1.0μLを滴下し、接触角を測定した。なお、測定は1試料につき5回行い、その平均値を接触角とした。なお、水滴が繊維に吸水されてしまった場合が接触角0°とした。
K.クリンプ率
編地から抜き出した繊維を、編構造による屈曲がなくなる程度の張力で試料台に接着した状態にてキーエンス社製マイクロスコープVHX-6000を用いて一定倍率、好ましくは500倍に 拡大した編地おもて面の写真を撮影し、クリンプ間隔D(mm)、及び、クリンプ長L(mm)を求めた。クリンプ間隔Dとはクリンプの頂点間を直線で結んだ長さであり、クリンプ長Lとはクリンプの山-谷-山を折れ線で結んだ長さである。クリンプ間隔Dおよびクリンプ長Lを、それぞれ20カ所について測定し次式
クリンプ率(C)=(L/D-1)×100(%)
によってクリンプ率(C)を求め、その平均を算出した。
L.防透け性
後段に記載する実施例・比較例の染色工程において染料を使用せずに同条件で加工することで白色の編地を作製し、得られた編地を5cm四方にカットして、コニカミノルタ製のL*a*b*表色系分光測色計CM-3600dを用い、D65光源6、視野角10度、およびSEC方式(正反射光除去条件)の条件で、測定した。測定手順としては、まず、防透け性測定サンプルを5cm四方にカットする。次に、白板として、丸断面セミダルポリエステルフィラメント使いの100%タフタ(L*=90~91)を使用し、使用タフタのL*値(Lw)を測定する。また黒板として、丸断面セミダルフィラメント100%使いタフタ(L*=19~20)を使用し、使用タフタのL*値(Lb)を測定する。さらに、本発明の編地の裏面に白板を4重にして重ね測色機に装着し、おもて面のL*値(Lfw)を測定する。次に、同一編地の裏面に黒板を4重にして重ねて測色機に装着し、おもて面のL*値(Lfb)を測定する。測定は5回行い、その平均値を求めた。そしてその測定値を、下記式に当てはめて、防透け性を求めた。
防透け性(%)=100-(Lfw-Lfb)/(Lw-Lb)×100
防透け性の指標は、100(%)に近いほど、透けない。
M.L*値(仕上げセット後):鮮明性、ΔE(工程での色落ち)
染色後および還元洗浄後の編地を試料とし、コニカミノルタ製分光測色計CM-3700d型を用いてD65光源、視野角度10°、光学条件をSCE(正反射光除去法)として、色調(L*値、a*値、b*値)を測定した。なお、測定は1試料につき3回行い、その平均値を採用した。また、色調測定結果を基に、下記式
ΔL*=L*(還元洗浄後)-L*(染色後)
Δa*=a*(還元洗浄後)-a*(染色後)
Δb*=b*(還元洗浄後)-b*(染色後)
ΔE={(ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)0.5
を用いてΔEを算出した。
N.均染性
仕上げセット後の編地について、5年以上の品位判定の経験を有する検査員5名の合議によって、◎、○、△、×の4段階で均染性を評価した。評価は、◎が最も良く、○、△の順に悪くなり、×が最も劣ることを示す。
◎:非常に均一に染色されており、全く染め斑が認められない
○:ほぼ均一に染色されており、ほとんど染め斑が認められない
△:ほとんど均一に染色されておらず、うっすらと染め斑が認められる
×:均一に染色されておらず、はっきりと染め斑が認められる。
O. 摩擦堅牢度
摩擦堅牢度の評価は、JIS L0849:2013(摩擦に対する染色堅ろう度試験方法)9.2 摩擦試験機II形(学振形)法の乾燥試験に準じて行った。大栄科学精機製学振型摩擦試験機RT-200を用いて、JIS L0803:2011に規定の白綿布(綿3-1号)で編地へ摩擦処理を施した後、白綿布の汚染の度合いをJIS L0805:2005に規定の汚染用グレースケールを用いて級判定することによって、摩擦堅牢度(汚染)を評価した。
P.洗濯堅牢度
洗濯堅牢度の評価は、JIS L0844:2011(洗濯に対する染色堅ろう度試験方法)A-2号に準じて行った。大栄科学製作所製ラウンダメーターを用いて、JIS L0803:2011に規定の添付白布(綿3-1号、ナイロン7-1号)とともに編地を洗濯処理した後、試料の変退色の度合いをJIS L0804:2004に規定の変退色用グレースケールを用いて級判定することによって、洗濯堅牢度(変退色)を評価した。また、添付白布の汚染の度合いをJIS L0805:2005に規定の汚染用グレースケールを用いて級判定することによって、洗濯堅牢度(汚染)を評価した。さらに、洗濯処理後の洗液の汚染の度合いをJIS L0805:2005に規定の汚染用グレースケールを用いて級判定することによって、洗濯堅牢度(液汚染)を評価した。
Q.表裏拡散面積比
ガラス板上に、市販の万年筆用インク(PILOT製INK-350-B)を2倍に水で希釈したインク液を0.1cc滴下し、その上に編地を、ポリオレフィン繊維の面積占有率が0~40%の面(以後、裏面)がインク液に接する下側を向くように載置した。60秒間放置しインク液を吸収させた後、この編地を別のガラス板上に移し、ここでも裏面を下にして3分間放置した。サンプル編地のポリオレフィン繊維の面積占有率が0~40%の面(以後、おもて面)、裏面のインク液の拡散面積をデジタルプラ二メーター(内田洋行製 KP-90)で測定し、表裏拡散面積比(裏面の拡散面積/おもて面の拡散面積)を算出した。
R.シミ防止性
ガラス板上に、水を1.0cc滴下し、その上に編地を、ポリオレフィン繊維の面積占有率が0~40%の面(以後、裏面)が水に接する下側を向くように載置した。60秒間放置し水を吸収させた後、この編地を別のガラス板上に移し、ここでも裏面を下にして3分間放置した。ここで水を吸収させた前後の編地おもて面の変化を5年以上の級判定の経験を有する検査員5名の合議によって◎、○、△、×、××の5段階でシミ防止性を評価した。評価は◎が最もよく、○、△、×の順にわるくなり、××が最も劣ることを示す。
◎:吸水前後の変色が全く認められない。
○:吸水前後の変色がほとんど認められない。
△:吸水前後の変色がうっすらと認められる。
×:吸水前後の変色がはっきりと認められる。
××:吸水前後の変色がさらにはっきりと認められる。
さらに洗濯100回後についても、同様にシミ防止性を評価した。洗濯方法は、JIS L0217:1995の103法に準拠する。即ち、JISC9606に規定する遠心式脱水装置付きの家庭用電気洗濯機を用い、水槽の標準水量を示す水位線まで液温40℃の水を入れ、標準使用量となる割合でJIS K3303:2000に規定する無添剤の洗濯用合成洗剤を添加して溶解し、洗濯液とする。この洗濯液に浴比が1対30になるように試料および必要に応じて負荷布を投入して運転を開始する。5分間処理した後、運転を止め、試料及び負荷布を脱水機で脱水し、次に洗濯液を30℃以下の新しい水に替えて、同一の浴比で2分間すすぎ洗いを行う。2分間のすすぎ洗いを行った後、運転を止め、試料と負荷布を脱水し、再び2分間すすぎ洗いを行い、脱水し、直接日光の影響を受けない状態でつり干しを行う。
つづいて、ポリオレフィン繊維の試作例を以下に示す。
試作例1
ポリオレフィン(A)としてポリプロピレン(PP)(日本ポリプロ製ノバテックMA2)を90重量部、ポリエステル(B)としてポリエチレンテレフタレートを10重量部添加して、二軸エクストルーダーを用いて混練温度280℃で混練を行った。二軸エクストルーダーより吐出されたストランドを水冷した後、ペレタイザーにて5mm長程度にカットして、ペレットを得た。得られたペレットを150℃で12時間真空乾燥した後、エクストルーダー型溶融紡糸機へ供給して溶融させ、紡糸温度285℃、吐出量32.5g/分で紡糸口金(吐出孔径0.18mm、吐出孔長0.23mm、孔数48、丸孔)から吐出させて紡出糸条を得た。この紡出糸条を風温20℃、風速25m/分の冷却風で冷却し、給油装置で油剤を付与して収束させ、1250m/分で回転する第1ゴデットローラーで引き取った後、1250m/分で回転する第2ゴデットローラーを介して、1250m/分で回転するワインダーで巻き取って、260dtex-48fの未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を第1ホットローラー温度30℃、第2ホットローラー温度30℃、第3ホットローラー温度130℃の条件で2段延伸とし、総延伸倍率3.1倍の条件で延伸し、84dtex-48fの延伸糸を得た。得られた繊維の繊維特性を表1に示す。
試作例2
芯成分として150℃で12時間真空乾燥したポリエチレンテレフタレート、鞘成分としてポリプロピレン(PP)(日本ポリプロ製ノバテックMA2)を用いて、各成分を各々エクストルーダーに供給して溶融させ、紡糸温度285℃、芯成分吐出量3.25g/分、鞘成分吐出量26.0g/分で芯鞘複合紡糸口金(吐出孔径0.18mm、吐出孔長0.23mm、孔数48、丸孔)から吐出させて紡出糸条を得た以外は試作例1と同様の条件にて延伸糸を得た。得られた繊維の繊維特性を表1に示す。
試作例3、4
試作例1において、二軸エクストルーダーでの混練強度を変更することでポリエチレンテレフタレートの分散径を変更した延伸糸を得た。得られた繊維の繊維特性を表1に示す。
試作例5~7
試作例1にてポリプロピレン(PP)(日本ポリプロ製ノバテックMA2)とポリエチレンテレフタレートの複合比を表1のとおり変更した延伸糸を得た。得られた繊維の繊維特性を表1に示す。
試作例8~10
試作例1においてポリエステル(B)をジカルボン酸成分としてイソフタル酸(IPA)を30mol%共重合したポリエチレンテレフタレートとし、ポリオレフィン(A)の溶融粘度(η)とポリエステル(B)の溶融粘度(η)との溶融粘度比(η/η)を表1に示すとおり変更した以外は試作例1と同様の条件にて延伸糸を得た。得られた繊維の繊維特性および布帛特性の評価結果を表1に示す。
試作例11
試作例1においてポリエステル(B)をジカルボン酸成分としてアジピン酸(AA)を15mol%共重合したポリエチレンテレフタレートとした以外は試作例1と同様の条件にて延伸糸を得た。得られた延伸糸の繊維特性および布帛特性の評価結果を表1に示す。
さらに試作例にて示したポリオレフィン繊維を用いた実施例および比較例を以下に示す。
Figure 0007172258000001
実施例1
試作例1で得られたポリオレフィン繊維がニードル面に、84dtex-48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸がシンカー面に配されるように28Gのシングル丸編機を用いて、リバーシブル天竺組織の編地を編成した。次に染色工程として、得られた編地を炭酸ナトリウム1.5G/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS-20 0.5G/Lを含む水溶液中、80℃で20分間精練後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。精練後の筒編みを135℃で1分間乾熱セットし、乾熱セット後の筒編みに対して、分散染料として日本化薬製Kayalon Polyester Blue UT-YAを1.3重量%加え、pHを5.0に調整した染色液中、浴比1:100、130℃で45分間染色後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。染色後の筒編みを、水酸化ナトリウム2g/L、亜ジチオン酸ナトリウム2g/L、明成化学工業製界面活性剤グランアップUS-20 0.5g/Lを含む水溶液中、浴比1:100、80℃で20分間還元洗浄後、流水で30分水洗し、60℃の熱風乾燥機内で60分間乾燥した。還元洗浄後の筒編みを135℃で1分間乾熱セットし、仕上げセットを行った。得られた編地の特性を表2に示す。
比較例1
実施例1において、ポリオレフィン繊維を試作例2の延伸糸に変更した以外は、実施例1と同様に編地を作製した。得られた編地はポリオレフィン繊維が芯にポリエチレンテレフタレートを配した芯鞘糸であるため、防透け性が低く、シミ防止性に劣るものであった。得られた編地の特性を表2に示す。
比較例2
実施例1において、ポリオレフィン繊維の代わりに撥水性ポリエチレンテレフタレート繊維を使用した以外は、実施例1と同様に編地を作製した。ここで撥水性ポリエチレンテレフタレート繊維とは、公知の方法で撥水加工されたポリエチレンテレフタレート繊維であり、撥水剤としては環境面に配慮したパーフルオロオクタン酸およびパーフルオロオクタンスルホン酸の濃度が0~5ng/g以下のフッ素系撥水剤が2.0wt%塗布されたものを使用した。得られた編地はポリエステル繊維で構成されているため軽量性が得られず、さらに洗濯処理によって撥水剤が脱落するため洗濯後のシミ防止性に劣るものであった。得られた編地の特性を表2に示す。
実施例2~
実施例1において、ポリオレフィン繊維の給糸位置を調整して、編地におけるポリオレフィン繊維の面積占有率を表2に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様に編地を作製した
実施例4
実施例1において、親水性繊維の繊度を変えて編地中の繊維の混率を表2に示す通り変更した以外は、実施例1と同様に編地を作製した。得られた編地の特性を表2に示す。
比較例4
実施例1においてシンカー面にもポリオレフィン繊維を用いた以外は、実施例1と同様に編地を作製した。得られた編地はポリオレフィン繊維のみからなるため、シミ防止性に劣るものであった。得られた編地の特性を表3に示す。
実施例5
試作例1で得られたポリオレフィン繊維を地糸とし、84dtex-48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸を挿入糸として28Gのシングル丸編機を用いて、インレー天竺組織の編地を編成した。染色工程は実施例1と同様に実施し、得られた編地の特性を表3に示す。
実施例6
試作例1で得られたポリオレフィン繊維をニードル面、84dtex-48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸がシンカー面に配されるように28Gのダブル丸編機を用いて、リバーシブル(8口)組織の編地を得た。染色工程は実施例1と同様に実施し、得られた編地の特性を表3に示す。
実施例7
試作例1で得られたポリオレフィン繊維をフロント筬、84dtex-48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸をバック筬に配して、シングルトリコット編機を用いてハーフトリコット組織の編地を編成した。染色工程は実施例1と同様に実施し、得られた編地の特性を表3に示す。
実施例8、9
実施例1において、ポリオレフィン繊維を実施例8では試作例3、実施例9では試作例4で得られた延伸糸に変更した以外は実施例1と同様に編地を作製した。特に、実施例8で得られた編地はポリエステル(B)の分散径が小さいため、適度な光散乱と耐摩耗性の向上によって、シミ防止性と染色堅牢度に優れるものであった。得られた編地の特性を表3に示す。
実施例1012
実施例1において、ポリオレフィン繊維を実施例10では試作例5実施定12では試作例7で得られた延伸糸に変更した以外は、実施例1と同様に編地を作製した。得られた編地の特性を表3に示す。
実施例13
実施例1において、84dtex-48fのポリエチレンテレフタレート仮撚糸を綿番手40番手の綿紡績糸とした以外は実施例1と同様に編地を作製した。得られた編地の特性を表4に示す。
実施例14
試作例1にて得られた延伸糸を38mmにカットしOHARA製混打綿機を用いて開綿した。その後、開綿した繊維を、石川製作所製カード機を用いてカードスライバーとし、石川製作所製練条機に2回通して、2.95g/100cmのスライバーを作成した。更に、豊田自動織機製粗紡機に通して0.47g/100cmの粗糸(繊維束A)を作成した。その後、豊田自動織機製リング精紡機を用いてドラフト32倍で紡出し、トラベラ回転数9000rpmで綿番手40番手のポリオレフィン系繊維からなる紡績糸を得た。実施例1においてポリオレフィン繊維を上記紡績糸とした以外は実施例1と同様に編地を作製した。得られた編地の特性を表4に示す。
実施例15
試作例1で得られた延伸糸を用いて、下記条件で仮撚加工して仮撚加工糸を作製した。FR(フィードローラー)、1DR(1ドローローラー)、1stヒーター、冷却板、仮撚装置、2DR(2ドローローラー)、交絡ノズル、3DR(3ドローローラー)、2ndヒーター、4DR(4ドローローラー)、ワインダーを備えた延伸仮撚加工装置を用いて、FR速度:350m/分、FR-1DR間の加工倍率1.13倍、熱板型の接触式1stヒーター(長さ110mm):145℃、冷却板長さ:65mm、フリクションディスク型摩擦仮撚装置、2DR-3DR間倍率:0.98倍、3DR-4DR間倍率:0.94倍、熱板型の接触式2ndヒーター(長さ80mm):120℃、2DR-3DR間において交絡ノズルによる交絡付与、4DR-ワインダー倍率:0.98倍で仮撚加工し、82dtex-48fの仮撚加工糸を得た。実施例1において、ポリオレフィン繊維を上記仮撚糸とした以外は同様に編地を作製した。得られた編地の特性を表4に示す。
実施例16
実施例15において、仮撚加工を3DR-4DR間倍率:0.98倍、4DR-ワインダー倍率:0.94倍、2ndヒーター:室温(25℃)とした以外は実施例12と同様に編地を作製した。得られた編地の特性を表4に示す。
実施例17~19
実施例1において、ポリオレフィン繊維を実施例17では試作例8、実施例18では試作例9、実施例19では試作例10で得られた延伸糸に変更した以外は実施例1と同様に編地を作製した。得られた編地の特性を表4に示す。
実施例20~21
実施例16において、ポリオレフィン繊維を実施例20では試作例9、実施例21では試作例11で得られた延伸糸とした以外は実施例16と同様に仮撚加工および編成した編地を得た。得られた編地の特性を表4に示す。
Figure 0007172258000002
Figure 0007172258000003
Figure 0007172258000004
本発明の編地は、軽量性や染色堅牢度に優れ、汗などによる編地おもて面の変色を抑制する効果を有し、さらにその効果が洗濯などへの耐久性に優れており、衣料用素材ならびに軽量性や発色性が求められる幅広い用途に好適に用いることができる。

Claims (3)

  1. ポリオレフィン繊維とポリオレフィン繊維よりも親水性の高い少なくとも一種以上の繊維からなり、
    前記ポリオレフィン繊維が、ポリオレフィン(A)を海成分、ポリエステル(B)を島成分とする海島構造からなるポリマーアロイ繊維であって、当該ポリオレフィン繊維のクリンプ率が10%以上であり、
    編地おもて面におけるポリオレフィン繊維の面積占有率が60%以上100%以下であり、編地裏面におけるポリオレフィン繊維の面積占有率が0%以上40%以下である編地。
  2. 前記ポリオレフィン繊維が、伸度が10~80%であり、ラマン分光法により求めたポリオレフィン繊維中のポリエステル(B)の配向パラメータが1.0~10.0であることを特徴とする請求項1記載の編地。
  3. ラマン分光法により求めたポリオレフィン繊維中のポリエステル(B)の結晶化度が1~40%であることを特徴とする請求項1または2に記載の編地。
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