以下、本開示による乗員姿勢制御方法及び乗員姿勢制御装置を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
実施の形態1の乗員姿勢制御方法及び乗員姿勢制御装置について説明する。
実施の形態1における乗員姿勢制御方法及び乗員姿勢制御装置は、自動運転モードを選択すると、生成された目標走行経路に沿って走行するように駆動や制動や舵角を自動制御する自動運転車両に適用したものである。
図1は実施の形態1の乗員姿勢制御方法を実行する乗員姿勢制御ユニットBが適用された自動運転制御システムAを示す。以下、図1に基づいて全体システムについて説明する。
自動運転制御システムAは、車載センサ1と、地図データ記憶部2と、自動運転制御ユニット4と、アクチュエータ5と、表示デバイス6と、入力デバイス7と、を備える。そして、自動運転制御システムAに、乗員姿勢制御方法を実行する乗員姿勢制御ユニットBが組み込まれている。この乗員姿勢制御ユニットBは、自動運転制御ユニット4と入力情報を共用し、かつ、自動運転制御ユニット4の制御情報を利用して乗員Pa(図2参照)姿勢制御を実行する。
車載センサ1は、第1カメラ11と、レーダー12と、GPS13と、車載データ通信器14と、を有する。また、車載センサ1により取得したセンサ情報は、自動運転制御ユニット4へ出力される。なお、車載センサ1は、上述の第1カメラ11、レーダー12等以外にも自車MVS(図7参照)の車両の旋回を含む運動を検出するセンサを含むもので、これらのセンサについては後述する。なお、車両の運動とは、車両の時間経過による変位をいい、具体的には、車両の加減速や旋回、それに伴う車両の姿勢変化等を指す。
第1カメラ11は、自動運転で求められる機能として、車線や先行車や歩行者等の自車MVSの周囲情報を画像データにより取得する機能を実現する周囲認識センサである。この第1カメラ11は、例えば、自車MVSの前方認識カメラ、後方認識カメラ、右方認識カメラ、左方認識カメラ等を組み合わせることにより構成される。なお、自車MVSは自動運転制御システムAを搭載した車両であり、制御対象の車両を指す。
カメラ画像から、自車走行路上物体・車線・自車走行路外物体(道路構造物、先行車、後続車、対向車、周囲車両、歩行者、自転車、二輪車)・自車走行路(道路白線、道路境界、停止線、横断歩道・道路標識(制限速度))等を検知できる。
レーダー12は、自動運転で求められる機能として、自車周囲の物体の存在を検知する機能と、自車周囲の物体までの距離を検知する機能とを実現する測距センサである。ここで、「レーダー12」とは、電波を用いたレーダーと、光を用いたライダーと、超音波を用いたソナーと、を含む総称をいう。レーダー12としては、例えば、レーザーレーダー、ミリ波レーダー、超音波レーダー、レーザーレンジファインダー等を用いることができる。このレーダー12は、例えば、自車MVSの前方レーダー、後方レーダー、右方レーダー、左方レーダー等を組み合わせることにより構成される。
レーダー12では、自車走行路上物体・自車走行路外物体(道路構造物、先行車、後続車、対向車、周囲車両、歩行者、自転車、二輪車)等の位置が検知されると共に、各物体までの距離が検知される。なお、視野角が不足すれば、適宜追加しても良い。
GPS13は、GNSSアンテナ13aを有し、衛星通信を利用することで停車中及び走行中の自車位置(緯度・経度)を検知する自車位置センサである。なお、「GNSS」は「Global Navigation Satellite System:全地球航法衛星システム」の略称であり、「GPS」は「Global Positioning System:グローバル・ポジショニング・システム」の略称である。
車載データ通信器14は、外部データ通信器10との間で送受信アンテナ3a,14aを介して無線通信を行うことで、自車MVSで取得することができない情報を外部から取得する外部データセンサである。
外部データ通信器10は、例えば、自車MVSの周辺を走行する他車に搭載されたデータ通信器の場合、自車MVSと他車の間で車車間通信を行う。この車車間通信により、他車が保有する様々な情報のうち、自車MVS(図6等参照)で必要な情報を車載データ通信器14からのリクエストにより取得することができる。
外部データ通信器10は、例えば、インフラストラクチャ設備に設けられたデータ通信器の場合、自車MVSとインフラストラクチャ設備の間でインフラ通信を行う。このインフラ通信により、インフラストラクチャ設備が保有する様々な情報のうち、自車MVSで必要な情報を車載データ通信器14からのリクエストにより取得することができる。例えば、地図データ記憶部2に保存されている地図データでは不足する情報や地図データから変更された情報がある場合、不足情報や変更情報を補うことができる。また、自車MVSが走行を予定している目標走行経路上での渋滞情報や走行規制情報等の交通情報を取得することもできる。
地図データ記憶部2は、緯度経度と地図情報が対応付けられた、いわゆる電子地図データが格納された車載メモリにより構成される。地図データ記憶部2に格納された地図データは、少なくとも複数車線を有する道路で各車線の認識ができるレベルの精度を持つ、高精度地図データである。この高精度地図データを用いることにより、自動運転において複数車線の中で自車MVSがどの車線を走るかという線状の目標走行経路を生成することができる。そして、GPS13にて検知される自車位置を自車位置情報として認識すると、自車位置を中心とする高精度地図データが自動運転制御ユニット4へと送られる。
高精度地図データには、各地点に対応づけられた道路情報を有し、道路情報は、ノードと、ノード間を接続するリンクにより定義される。道路情報は、道路の位置及び領域により道路を特定する情報と、道路ごとの道路種別、道路ごとの車線幅、道路の形状情報とを含む。道路情報は、各道路リンクの識別情報ごとに、交差点の位置、交差点の進入方向、交差点の種別その他の交差点に関する情報を対応づけて記憶されている。道路情報は、各道路リンクの識別情報ごとに、道路種別、車線幅、道路形状、直進の可否、進行の優先関係、追い越しの可否(隣接レーン進入の可否)、制限速度、標識、その他の道路に関する情報を対応付けて記憶されている。
自動運転制御ユニット4は、車載センサ1や地図データ記憶部2からの入力情報を統合処理し、目標走行経路と目標車速プロファイル(加速プロファイルや減速プロファイルを含む。)等を生成する機能を有する。すなわち、現在地から目的地までの走行車線レベルによる目標走行経路を、地図データ記憶部2からの高精度地図データや所定の経路検索手法等に基づいて生成すると共に、目標走行経路に沿った目標車速プロファイル等を生成する。さらに、目標走行経路に沿う自車MVSの停車中及び走行中、車載センサ1によるセンシング結果により自動運転を維持できないと判定されると、目標走行経路や目標車速プロファイル等を逐次修正する。
自動運転制御ユニット4は、目標走行経路が生成されると、自車MVSが目標走行経路に沿って走行するように駆動指令値、制動指令値、舵角指令値を演算し、演算した指令値をアクチュエータ5に出力する。具体的には、駆動指令値の演算結果を駆動アクチュエータ51へ出力し、制動指令値の演算結果を制動アクチュエータ52へ出力し、舵角指令値の演算結果を舵角アクチュエータ53へ出力する。
アクチュエータ5は、自車MVSを目標走行経路に沿って走行及び停止させる制御アクチュエータであり、駆動アクチュエータ51と、制動アクチュエータ52と、舵角アクチュエータ53と、を有する。
駆動アクチュエータ51は、自動運転制御ユニット4から駆動指令値を入力し、駆動輪へ出力する駆動力を制御するアクチュエータである。駆動アクチュエータ51としては、例えば、エンジン車の場合にエンジンを用い、ハイブリッド車の場合にエンジンとモータジェネレータ(力行)を用い、電気自動車の場合にモータジェネレータ(力行)を用いる。
制動アクチュエータ52は、自動運転制御ユニット4から制動指令値を入力し、駆動輪へ出力する制動力を制御するアクチュエータである。制動アクチュエータ52としては、例えば、油圧ブースタや電動ブースタやブレーキ液圧アクチュエータやブレーキモータアクチュエータやモータジェネレータ(回生)等を用いる。
舵角アクチュエータ53は、自動運転制御ユニット4から舵角指令値を入力し、操舵輪の転舵角を制御するアクチュエータである。なお、舵角アクチュエータ53としては、ステアリングシステムの操舵力伝達系に設けられる転舵モータ等を用いる。
表示デバイス6は、自動運転による停車中及び走行中に、自車MVSが地図上で何処を移動しているか等を画面表示し、運転手や同乗者等の乗員Pa(図6参照)に自車位置視覚情報を提供するデバイスである。この表示デバイス6は、自動運転制御ユニット4により生成された目標走行経路情報や自車位置情報や目的地情報等を入力し、表示画面に、地図と道路と目標走行経路(自車MVSの走行経路)と自車位置と目的地等を視認しやすく表示する。
入力デバイス7は、運転手の操作により種々の入力を行うデバイスであり、例えば、表示デバイス6のタッチパネル機能を用いてもよいし、他のダイヤルやスイッチ等を用いてもよい。なお、運転手による入力としては、目的地に関する情報の入力や、自動運転時の定速走行、追従走行等の設定の入力等を行う。
乗員姿勢制御ユニットBは、乗員Paの姿勢を自車MVSの旋回走行に応じた姿勢とする姿勢制御を行う。この乗員姿勢制御ユニットBは、押圧アクチュエータ100及びシートベルトアクチュエータ200と、これら押圧アクチュエータ100及びシートベルトアクチュエータ200の駆動を制御する乗員姿勢コントローラ40と、を備える。
まず、シートベルトアクチュエータ200及びシートベルト210について説明する。
シートベルト210は、乗員Paのそれぞれが装着可能に設けられており、図2に示すような独立タイプのシート60では、各シート60に独立して設けられている。また、図3に示す3人掛けのシート160では、乗員Paの着座位置に応じて3箇所に設けられている。各シートベルト210は、それぞれ、周知のように、一端がアンカに固定され、もう一端がピラーやシートバック内に設けられたシートベルト巻き取り装置201に巻き取り及び引き出し可能に連結されている。
シートベルトアクチュエータ200は、シートベルト巻き取り装置201に設けられており、乗員Paがシートベルト210を所定のテンションで装着した状態で、シートベルト210を所定量あるいは所定のテンションとなるまでさらに巻き取る。すなわち、シートベルトアクチュエータ200は、乗員Paがシートベルト210を装着した状態のときに、モータや流体圧を駆動源としてシートベルト210をさらに巻き取り、乗員Paに対するシートベルト210の拘束力を増すことができる。なお、図2に示した独立型のシート60も、図示は省略するが、シートベルト巻き取り装置201を備える。
次に、押圧アクチュエータ100について説明する。
押圧アクチュエータ100は、図2、図3に示すように、背面押圧アクチュエータ110と、腹面押圧アクチュエータ120とを備える。
背面押圧アクチュエータ110は、シートバック61、161において、乗員Paが背面を当接する背面支持部61a、161a、161b、161cのシートトリムの内側に設けられている。そして、背面押圧アクチュエータ110は、乗員Paがシートベルト210を装着した際の腰ベルト部210aと同程度の高さで、背面支持部61a、161a、161b、161cの左右に左背面側部押圧駆動部111と右背面側部押圧駆動部112とを備える。これら左背面側部押圧駆動部111及び右背面側部押圧駆動部112は、モータや流体圧の給排等により駆動し、押圧駆動時には、背面支持部61a、161a、161b、161cを車両前方に突出して乗員Paの背面BSの左右側部を押圧する。なお、非押圧駆動時には背面支持部61a、161a、161b、161cを平らな状態とし、乗員Paの背面BSの左右側部を押圧しない状態となる。
腹面押圧アクチュエータ120は、シートベルト210の腰ベルト部210aの内側に設けられ、左腹面側部押圧駆動部121と右腹面側部押圧駆動部122を備える。これら左腹面側部押圧駆動部121及び右腹面側部押圧駆動部122は、流体圧が給排される袋状に形成されたものや、モータ等により例えばカム状の物体を角度変位させて、腰ベルト部210aの厚さ方向に変位する。したがって、押圧駆動時には、車両後方に突出して乗員Paの腹面ABの左右側部を押圧する。一方、非押圧駆動時には、車両後方に突出することなく腹面ABの左右側部を押圧しない状態となる。
なお、図2では、独立タイプンのシートとして運転席用のシート60を示し、乗員Paとして運転手を示しているが、押圧アクチュエータ100は、助手席など運転席以外の独立タイプのシート60にも設けているものとする。
次に、乗員姿勢コントローラ40について説明する。
図4は、乗員姿勢コントローラ40を構成する各要素を示すブロック図である。乗員姿勢コントローラは、自車MVSの旋回に関連する情報に基づいて乗員Paの姿勢を制御するもので、自車位置検出部41、旋回走行箇所検出部42、旋回方向判定部43、旋回加速度発生予測部44、押圧制御部45、押圧停止制御部46を備える。また、車載センサ1には、旋回に関連する情報を取得するセンサとして第2カメラ15、舵角センサ16、加速度センサ17、車速センサ18が含まれる。また、自車位置検出部41には、イグニッションスイッチ19がオンかオフかの信号が入力される。なお、イグニッションスイッチ19は始動時にオン操作するスイッチである。なお、自車MVSの旋回に関する情報としては、道路の形状や、地図上の目標走行経路、自車位置などの地図上の情報や、車速、加速度、舵角などの自車MVSの旋回走行に関連する情報に加え、旋回に伴う乗員Paの姿勢や頭部Heの向きなども含まれる。
第2カメラ15は、乗員Paの上半身UB及び頭部Heを撮像するもので、少なくとも頭部Heを撮像する。舵角センサ16は、操舵角あるいは転舵角を検出する。加速度センサ17は、自車の左右方向及び前後方向の加速度を検出する。車速センサ18は、自車の車速を検出する。
次に、乗員姿勢コントローラ40による乗員姿勢制御の処理の流れを、図5のフローチャートに基づいて説明し、併せて、図4のブロック図に示す乗員姿勢制御を実行する各要素について説明する。
なお、この乗員姿勢制御は、シート60、160に着座した乗員Pa毎に乗員Paを対象として実行する。例えば、シートベルト210の装着の際にタングをバックルに差し込むとオフからオンに切り替わるシートベルトスイッチがオンとなったことや、シートクッション62,162への荷重の検出などにより、乗員Paが着座したシート60、160を検出する。そして、その着座を検出したシート60,160の乗員Paを対象に姿勢制御を実行する。したがって、図5に示す処理は、このような乗員Paの着座を検出したら開始し、その検出したシート60、160に設置された各アクチュエータ100、200に対して実行する。
ステップS101では、イグニッションスイッチ19がオンか否か判定し、オンであればステップS102に進み、オフであればステップS101の判定を繰り返す。
イグニッションスイッチ19がオンとなって、すなわち、自車MVSが走行可能となって進むステップS102では、自車MVSの目標走行経路の前方における、旋回走行箇所の検出を行う。ここで、旋回走行箇所としては、カーブ、交差点の右左折が含まれる。次のステップS103では、旋回走行箇所への到達を判定するとステップS104に進み、それまではステップS103を繰り返す。なお、この到達判定は、旋回走行箇所における旋回走行を開始するよりも前の時点(図7のt10時点、図8のt20の時点のような旋回走行の直前(例えば、1~数秒以下程度前))で行う。また、以下のステップS104、S105、S106の処理も、続けて旋回走行の直前に行う。
以上のステップS102~S103の処理は、図2に示す自車位置検出部41及び旋回走行箇所検出部42により行う。すなわち、自車位置検出部41は、GPS13の自車位置情報と、地図データ記憶部2から得られる地図情報に基づいて、地図上の自車位置を検出する。そして、旋回走行箇所検出部42は、自車の目標走行経路上に、自車MVSに旋回走行を行う箇所として、少なくとも、カーブ及び右左折を行う交差点の検出を行う。なお、運転手が、手動運転を行う場合は、例えば、ナビゲーション装置から目標走行経路を取得することができる。また、本実施の形態1のように自動運転制御が実行可能な車両の場合、自度運転制御の実行時には、運転スケジュールに関する情報から目標走行経路を取得することができる。
図5に戻り、ステップS103において、旋回走行箇所への到達と判定した場合に進むステップS104では、旋回方向が左右いずれの方向かを判定する。そして、旋回方向が右の場合はステップS105に進み、旋回方向が左の場合はステップS106に進む。なお、この旋回方向の判定は、図4に示す旋回方向判定部43において実行するもので、基本的には、運転スケジュールで設定された目標走行経路に基づいて行う。また、舵角センサ16や車速センサ18等の信号を監視し、実際の操舵方向を検出するようにしてもよい。
旋回方向が右の場合に進むステップS105では、右背面側部押圧駆動部112と左腹面側部押圧駆動部121とを押圧駆動させると共に、シートベルトアクチュエータ200の押圧アシスト駆動であるシートベルト巻き取り駆動を実行させる。
一方、旋回方向が左の場合に進むステップS106では、左背面側部押圧駆動部111と右腹面側部押圧駆動部122とを押圧駆動させると共に、シートベルトアクチュエータ200の押圧アシスト駆動であるシートベルト巻き取り駆動実行させる。
したがって、右旋回時には、右背面側部押圧駆動部112が車両前方に凸状となって乗員Paの背面BSの右側部を押圧すると共に、左腹面側部押圧駆動部121が膨らんで、乗員Paの腹面ABの左側部を押圧する。同時に、シートベルト210が巻き取られることで、右背面側部押圧駆動部112の押圧力が乗員Paの背面BSの右側部に確実に入力されると共に、腰ベルト部210aの左腹面側部押圧駆動部121の押圧力が乗員Paの腹面ABの左側部に確実に入力される。すなわち、乗員Paがシート60、160にしっかりと着座していない場合には、右背面側部押圧駆動部112の押圧力が乗員Paに十分に伝達されない。同様に、乗員Paがシート60、160にしっかりと着座していない場合には、左腹面側部押圧駆動部121の押圧力が乗員Paに十分伝達されない。それに対し、シートベルト210を巻き取ることで、上記の乗員Paがシート60、160にしっかりと着座した状態となることで、各押圧力を乗員Paに確実に入力することができる。
一方、左旋回時には、左背面側部押圧駆動部111が車両前方に凸状となって乗員Paの背面BSの左側部を押圧すると共に、右腹面側部押圧駆動部122が膨らんで、乗員Paの腹面ABの右側部を押圧する。同時に、シートベルト210が巻き取られることで、左背面側部押圧駆動部111の押圧力が乗員Paの背面BSの右側部に確実に入力されると共に、腰ベルト部210aの右腹面側部押圧駆動部122の押圧力が乗員Paの腹面ABの左側部に確実に入力される。
以上の処理は、旋回加速度発生予測部44及び押圧制御部45により行い、本実施の形態1では、押圧制御部45は、所定の閾値を越える旋回加速度の発生が予測される場合に、上記の押圧駆動の実行を制御する。そして、閾値以上の旋回加速度の発生が予測されない場合は、ステップS102に戻る。なお、旋回加速度は、舵角(地図上の目標走行経路に関するデータから求めた舵角を含む)や車速に基づいて算出する。
ここで、押圧駆動を実行するか否かの閾値は、乗員Paに乗り物酔いを招くおそれがある視覚刺激や横方向の姿勢の揺れが生じるおそれがある旋回加速度であることを判定することができる値であり、実験やシミュレーションに基づいて予め設定しておく。
また、押圧アクチュエータ100の押圧駆動及びシートベルトアクチュエータ200の巻き取り駆動は、図4に示す押圧制御部45が実行する。
図5に戻り、押圧アクチュエータ100の押圧駆動を行った後に進むステップS107では、第2カメラ15の撮像データに基づいて、乗員Paの頭部He及び上半身UBの向きを監視する。
そして、次のステップS108では、頭部Heの向きが旋回走行の出口の方向を向いたか否か判定し、出口方向を向いていれば、ステップS110に進み、出口方向を向いていなければ、ステップS109に進む。さらに、頭部Heの向きが旋回走行の出口方向を向いていない場合に進むステップS109では、ステアリングSTRの位置に基づいて、旋回終了の判定を行い、旋回終了であれば、ステップS110に進み、旋回非終了であれば、ステップS107に戻る。なお、旋回終了の判定は、ステアリングSTRが、直進走行を示す中立位置に戻ることで行う。
そして、旋回終了判定時に進むステップS109では、押圧アクチュエータ100の押圧駆動及びシートベルトアクチュエータ200の押圧アシスト駆動を終了する。これにより、押圧アクチュエータ100による乗員Paの背面の側部の押圧及びシートベルト210の巻き取りによる乗員Paの押圧が解除される。
以上の、ステップS107~S110の処理は、図4に示す押圧停止制御部46が行う。すなわち、押圧停止制御部46は、押圧終了条件が成立した場合に、乗員Paに押圧力を付加することによる姿勢制御を終了する。また、この押圧終了条件は、乗員Paの頭部Heの向きが旋回走行の出口方向を向くか、ステアリングSTRが中立位置となって直進走行状態となったかのいずれかで成立する。
その後、ステップS111に進み、イグニッションスイッチ19がオフか否か判定し、オフの場合は、姿勢制御を終了し、オンの場合は、ステップS102に戻って姿勢制御を継続する。
以下に、実施の形態1の作用を説明する。
この実施の形態1の作用の説明にあたり、まず、図6A、図6Bに基づいて、押圧アクチュエータ100を押圧駆動させた場合の、ハンガー反射による乗員Paの姿勢変化について説明する。
この押圧アクチュエータ100による押圧は、乗員Paに、いわゆるハンガー反射を生じさせる外力を与えるものである。一般に知られているハンガー反射は、人間の頭部の前頭部の左右の一方と、後頭部の左右のもう一方とをせん断方向に押圧すると、不随意的に頭部を左右方向に回す運動が生じるというものである。
また、人間の胴体部分の対向位置にせん断方向に押圧力を与えた場合にも、ハンガー反射が生じることが確認されている。すなわち、図6Aに示すように、胴部BDに対し、腹面ABの右側部と背面BSの左側部とに矢印PFR、PRLに示す方向の押圧力を付与すると、矢印TRL方向に胴部BDの向きを変える反射が生じることを確認した。また、図6Bに示すように、胴部BDに対し、腹面ABの右側部と背面BSの左側部とに矢印PFL、PRRに示す方向の押圧力を付与すると、矢印TRR方向に胴部BDの向きを変える反射が生じることを確認した。
したがって、図2に示す押圧アクチュエータ100において、左背面側部押圧駆動部111と右腹面側部押圧駆動部122とを同時に押圧駆動させた場合、乗員Paには、反射により上半身UBに、図6Aの矢印TRLに示すような左回りの姿勢変化が生じる。
また、押圧アクチュエータ100において、右背面側部押圧駆動部112と左腹面側部押圧駆動部121とを同時に押圧駆動させた場合、乗員Paに、反射により上半身UBに、図6Bの矢印TRRに示すような右回りの姿勢変化が生じる。
次に、自車MVSの走行時における乗員姿勢コントローラ40による制御と、それによる乗員Paの姿勢変化について説明する。
図7は、自車MVSがカーブCuを走行する場合を示している。自車MVSがこのようなカーブCuを走行する場合、乗り物酔いを抑制するには、乗員Paは、旋回走行中、カーブ出口Cuoutに視線LSを固定するのが望ましい。
図7では、カーブCuの走行時の理想的な視線DLS1、DLS2、DLS3の一例を示している。ことの理想的な視線DLS1、DLS2、DLS3は、例えば、手動運転を行っている運転手の視線に近い。すなわち、運転手は、走行目標が予め分かっているため、視線DLS1、DLS2、DLS3をこのようにカーブ出口Cuoutに固定する傾向が有る。なお、以下の説明において、乗員Paの視線LS、理想的な視線DLSは、図示した特定のものを指す場合には、符号LS、DLSの後に数字を表記するが、不特定のものを指す場合には、符号LS、DLSの後に数字を付けないものとする。
このように旋回走行時に、視線LSを固定すると、視覚刺激が少なく、乗り物酔いが生じにくい。例えば、フィギアスケートの選手やバレリーナ等がスピンを行う場合、視線LSを1個所に固定することが知られている。このように旋回時に視線LSを一箇所に固定すると、視覚内を像が水平方向に移動する刺激が少なくなり、いわゆる目が回る現象が生じにくいことが知られている。カーブ走行時にあっても、視線LSを1個所に固定すると、視覚内を像が横に移動する刺激が少なくなることで、乗り物酔いが生じにくいと言われている。
しかしながら、運転手以外の乗員Paや、自動運転制御中で実際には運転していない運転手などは、進行方向を注視する必要が無く、また、進行方向を予め把握しにくいいため、旋回走行時であっても、視線LSを自車MVSの正面に向けたままとしがちである。この場合、自車MVSの向きの変化に応じて視野内の像が水平方向へ移動することによる視覚刺激が多くなり、乗り物酔いを招きやすい。
図7においてカーブCuの外側に記載した領域E0は、乗員Paが、胴部BD及び頭部Heを、自車MVSの進行方向の正面を向いた状態を維持した場合の時間経過に伴う変化を示している。この場合、カーブCuの走行中の各時点t11、t12、t13、t14において、乗員Paの視線LS01~LS04は、頭部Heの正面方向を向いて、時々刻々と変化する。このように視線LS01~LS04の向きが変化すると、視界内における像の水平方向への移動量及び移動速度が高く、その分、乗員Paが受ける視覚刺激が強くなり、乗り物酔いを招きやすい
一方、領域E0の外側の領域E1は、カーブCuの走行時に、乗員姿勢コントローラ40が姿勢制御を実行した場合の、乗員Paの胴部BD及び頭部Heの姿勢変化を示している。
この場合、乗員姿勢コントローラ40は、予め自車MVSの目標走行経路においてカーブCuが存在することを検出する(S102)。そして、カーブ入口Cuinに到達すると(t10の時点)右旋回と判定し(S103、S104)、旋回走行の開始直前に、胴部BDの背面BSの右側部と腹面ABの左側部とに矢印PFL、PRRに示す押圧力を付与する(S105:t11の時点)。
すなわち、右背面側部押圧駆動部112と左腹面側部押圧駆動部121を押圧駆動させ、同時に、シートベルトアクチュエータ200に対して、シートベルト210を巻き取る押圧アシスト動作を実行する。
これにより、乗員Paは、上半身UBがシート60に拘束され、かつ、巻き取り量によっては、背面BSがシートバック61,161の背面支持部61a,161aに押し当てられる。
したがって、右背面側部押圧駆動部112により背面BSの右側部を押圧した際に、乗員Paがシート60、160にしっかりと着座した状態となり、押圧力が確実に背面BSの右側部に入力される。また、左腹面側部押圧駆動部121により腹面ABの左側部を押圧した際に、乗員Paがシート60、160にしっかりと着座した状態となり、反力を受け止めて押圧力が確実に腹面ABの左側部に入力される。
これにより、乗員Paは、せん断方向の押圧力(矢印PFL、PRR)を対向位置に受けることによるハンガー反射が生じ、胴部BDを矢印TRRの方向に向きを変える姿勢変化が生じる。そして、この姿勢変化により、視線LS1が自車MVSの正面方向を向いた状態(t10の時点)から、旋回内側である右方向を向き、t12の時点では、カーブ出口Cuoutの方向を向いた状態に変化する。
そして、このように視線LS2がカーブ出口Cuoutを向くと、押圧アクチュエータ100による押圧駆動及びシートベルトアクチュエータ200による押圧アシスト駆動を終了する。これにより、視線LS3は、カーブ出口Cuoutに維持される。この場合、視線LS3は、視覚刺激が少ない方向に維持されやすい。また、押圧力が無くなることによる姿勢の復帰と、自車MVSがカーブ出口Cuoutに向かうのに伴う姿勢変化とが合わさることにもよる。
次に、図8に基づいて、交差点ISの右左折時について説明する。
左折時の理想的な視線DLS21、DLS22、DLS23は、左折終了時点(t22)の位置近傍に固定した視線とする。また、右折時の理想的な視線DLS31、DLS32、DLS33は、右折終了時点(t23)の位置近傍に固定した視線とする。この場合も運転手の視線として表す。
まず、左折時について説明すると、道路ROの車線LA0を走行する自車MVSが、左折を開始する直前のt21の時点で、押圧アクチュエータ100による押圧駆動と、シートベルトアクチュエータ200による押圧アシスト駆動を行う(S106)。この場合、押圧アクチュエータ100では、左背面側部押圧駆動部111により背面BSの左側部を押圧し(矢印PRL)、右腹面側部押圧駆動部122により腹面ABの右側部を押圧する。
これにより、乗員Paは、矢印PFR、PRLに示すように対向して押圧力を受けたことによるハンガー反射により、胴部BDを左方向に向きを変え(矢印TRL)、視線LSが交差点ISの左折の出口である車線LA1の方向を向く。これにより、視線LSを車両に前方に維持した場合と比較して、視覚における像の水平方向の移動及び移動速度による刺激が抑えられ、乗り物酔いを抑制できる。
次に、右折時について説明する。
この場合、道路ROの車線LA0を走行する自車MVSが、右折を開始する直前のt21の時点で、右背面側部押圧駆動部112により背面BSの右側部を押圧し(矢印PRR)、左腹面側部押圧駆動部121により腹面ABの左側部を押圧する。また、同時に、シートベルトアクチュエータ200の押圧アシスト駆動を行う。
これにより、乗員Paは、矢印PFL、PRRに示す押圧力を受けたことによるハンガー反射により、矢印TRRに示すように胴部BDの向きを右方向に変え、視線が交差点ISの右折の出口である車線LA2の方向を向く。これにより、視線LSを車両に前方に維持した場合と比較して、視覚における像の水平方向の移動及び移動速度による刺激が抑えられ、乗り物酔いを抑制できる。
以下に、実施の形態1の乗員姿勢制御方法及び乗員姿勢制御装置の効果を列挙する。
(1)実施の形態1の乗員姿勢制御方法は、
乗員姿勢コントローラ40により押圧アクチュエータ100を駆動し乗員Paの背面BSの左右両側部と腹面ABの左右横側部とを押圧して乗員Paの姿勢を制御する乗員姿勢制御方法である。そして、乗員姿勢コントローラ40は、自車MVSの旋回走行時に、旋回内側の背面側部と、旋回外側の腹面側部とを、押圧する(S105、S106)。
したがって、自車MVSの旋回走行時に、乗員Paは、胴部BDをせん断方向に対向して押圧されることによるハンガー反射により、胴部BDが自車MVSの旋回内側方向を向く姿勢変化が生じ、同時に、視線LSが旋回の出口方向である旋回内側を向く。よって、乗員Paの視覚刺激(視覚内の水平方向への像の移動)を低減し、乗り物酔いを抑制できる。また、背面側部と腹面側部とは、押圧面積を確保しやすいため、ハンガー反射による姿勢変化を得やすく、様々な体形の乗員Paに対して、姿勢制御を行うことができる。
(2)実施の形態1の乗員姿勢制御方法は、乗員姿勢コントローラ40は、自車MVSの旋回走行を予測し、前記押圧を旋回走行の開始以前に実行する。
したがって、旋回走行を検出してから姿勢制御を開始する場合よりも、乗員Paのハンガー反射による姿勢変化を行うことができ、乗員Paの視線LSを適切なタイミングで移動させることが可能である。すなわち、旋回走行開始前から旋回出口方向に視線を移動させた方が、旋回走行の開始後に旋回出口に視線を移動させる場合よりも、酔いに繋がる視覚刺激が少なくて済む。このため、短時間に理想的な位置に視線を移動させることが可能である。又はンガー反射は、不随意運動の内でも、比較的緩やかな反射であるため、その点でも、早期に反射を開始した方が、視線を旋回出口の方向に向け易い。
(3)実施の形態1の乗員姿勢制御方法は、旋回走行時に、右旋回の場合は、右背面側部と左腹面側部とを同時に押圧し、左旋回の場合は、左背面側部と右腹面側部とを同時に押圧する。
したがって、旋回走行時には、乗員Paの胴部BDの斜め左右を対向して同時に押圧して、ハンガー反射が生じる刺激を与え、右旋回時には胴部BDを右方向に向かせ、左旋回時には胴部BDを左方向に向かせて、視線を旋回内側に向かせることができる。
(4)実施の形態1の乗員姿勢制御方法は、背面側部の押圧は、シートバック61,161に設置されて背面左側部、背面右側部を押圧する背面押圧アクチュエータ110の左背面側部押圧駆動部111及び右背面側部押圧駆動部112により行う。また、腹面側部の押圧は、シートベルト210の腰ベルト部210aに設置されて腹面左側部、腹面右側部を押圧する腹面押圧アクチュエータ120の左腹面側部押圧駆動部121及び右腹面側部押圧駆動部122により行う。
したがって、既存のシートバック61,161及びシートベルト210に、各押圧駆動部111,112,121,122を設置することができ、かつ、着座した乗員Paの胴部BDを押圧することができる。よって、本実施の形態1の姿勢制御方法の実施が容易で汎用性に優れる。加えて、押圧面積の確保も確実にでき、様々な体形の乗員Paに対して、より確実にハンガー反射を付与することができる。
(5)実施の形態1の乗員姿勢制御方法は、押圧アクチュエータ100の押圧駆動と同時に、シートベルト210のロックもしくは巻き取りによる押圧アシスト駆動を行う。
したがって、押圧アクチュエータ100による押圧力を、より確実に乗員Paに与えて、より確実にハンガー反射を生じさせることが可能である。しかも、既存のシートベルト巻き取り装置201を利用でき、安価に実施の形態1の乗員姿勢制御方法を実施することが可能である。
(6)実施の形態1の乗員姿勢制御方法は、押圧アクチュエータ100による押圧は、旋回走行の終了と、乗員Paの旋回方向への姿勢変化とのいずれかである押圧終了条件の成立により終了する。
したがって、旋回方向に頭部Heが向いたら、押圧を停止する場合、視覚刺激(視覚内の像の水平方向への移動量、移動速度)の少ない状態を維持する事ができ、乗り物酔いを抑制できる。また、旋回終了時点で、押圧を終了してハンガー効果を利用した姿勢変化を終了することで、直進走行時まで、継続して姿勢変化を付与することを回避できる。
(7)実施の形態1の姿勢制御装置は、乗員Paの背面BSの左右両側部と、腹面ABの左右横側部とを、押圧可能な押圧アクチュエータ100と、車載センサ1からの情報に基づき押圧アクチュエータ100を駆動させる乗員姿勢コントローラ40と、を備える。乗員姿勢コントローラ40は、旋回走行時に、背面BSの旋回内側の側部と腹面ABの旋回外側の側部とを押圧する押圧制御部45を有する。
したがって、自車MVSの旋回時に、胴部BDをせん断方向に対向して押圧されることによるハンガー反射により、乗員Paに、胴部BDが自車MVSの旋回出口方向を向く姿勢変化が生じる。よって、乗員Paの視覚刺激(視覚内の像における水平方向の早い動き)を低減し、乗り物酔いを抑制できる。
以上、本開示の乗員姿勢制御方法及び乗員姿勢制御装置を実施の形態に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施の形態に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
例えば、実施の形態では、自動運転制御を実行する自動運転車両を例示したが、自動運転車両以外の車両にも適用することができる。要は、旋回走行の検出や、旋回走行の予測が可能な車両であれば、適用可能である。また、運転手が手動で操舵を行っている場合、運転手の視線は、図7、図8に示す理想的な視線DLSを向きやすい。そこで、第2カメラ15等により、運転者の視線や頭部Heの向きを車両の旋回に関連する情報としてその方向を検出し、この運転者の視線の方向に他の乗員Paの視線が追従するように制御してもよい。
また、実施の形態では、押圧アクチュエータ100による押圧駆動時に、同時に、シートベルト210の巻き取りによる押圧アシストを行う例を示したが、これに限定されず、押圧アクチュエータ100による押圧駆動のみでもよい。また、押圧アシストとしては、シートベルト210の巻き取りに限定されず、シートベルト210の引き出しを禁止するロック状態としてもよい。この場合も、押圧アクチュエータ100の押圧反力をシートベルト210が受け止めることとなり、押圧アクチュエータ100による押圧刺激を確実に乗員に与えることができる。
また、実施の形態では、押圧アクチュエータ100をシート60、160及びシートベルト210に設けた例を示したが、これに限定されず、乗員Paの着座の際に乗員Paに、接触あるいは近接する押圧専用の装置を用いてもよい。
また、実施の形態では、旋回走行を予測して旋回開始あるいは旋回直前から姿勢制御を行う例を示したが、これに限定されない。すなわち、実際に旋回走行が開始されてから姿勢制御を行うものでも、このような姿勢制御を行わないものと比較して、所期の効果を得ることができる。