はじめに、冷却システムの一例について述べる。
図1は冷却システムの一例について説明する図である。図1(A)には、冷却システムの一例を模式的に示している。図1(B)には、冷却システムの稼働時の状態の一例を模式的に示している。図1(C)には、冷却システムの稼働時に生じる不具合の一例を模式的に示している。
図1(A)に示すように、冷却システム1は、蒸発器2、放熱器3及びポンプ4を備える。蒸発器2と放熱器3とは、配管5で接続される。放熱器3とポンプ4とは、配管6で接続される。ポンプ4と蒸発器2とは、配管7で接続される。蒸発器2、放熱器3及びポンプ4、並びに配管5、配管6及び配管7によって、冷却システム1の閉回路が形成されている。このような冷却システム1の閉回路内に、減圧状態で液相冷媒8が充填される。図1(A)には、冷却システム1の稼働前や、後述のような稼働時において蒸発器2での吸熱量が少ない場合等、放熱器3内に減圧空間9が存在している例を示している。
冷却システム1について、図1(B)を参照して更に説明する。冷却システム1において、蒸発器2は、冷却システム1の冷却対象である外部の発熱体から伝達される熱、例えば、電子装置からその動作に伴って発生する熱を、内部の液相冷媒8の沸騰現象を利用して吸熱し、それによって電子装置等の外部の発熱体を冷却する。放熱器3は、配管5を通じて、蒸発器2での吸熱によって温度上昇した、気相冷媒8aを含む液相冷媒8を取り込み、その熱を外部へ放熱することで、気相冷媒8aの凝縮、及び液相冷媒8の温度低下を行う。ポンプ4は、放熱器3で凝縮及び温度低下された液相冷媒8を、配管6を通じて取り込み、配管7を通じて蒸発器2へ送る。蒸発器2は、配管7を通じてポンプ4から送られる液相冷媒8を用いて、電子装置等の外部の発熱体からの吸熱(外部の発熱体の冷却)を行う。冷却システム1は、このように液相冷媒8の沸騰現象を利用する気液2相流の強制循環型冷却システムの一例である。尚、蒸発器2は、受熱器、冷却器等と称されることがある。また、放熱器3は、凝縮器等と称されることがある。
上記のような冷却システム1では、蒸発器2で液相冷媒8の沸騰、蒸発が生じ易い条件、即ち、液相冷媒8の沸騰によって気相冷媒8aが発生し易い条件を用いると、蒸発器2の冷却能力が高まる。図1(C)には、このような液相冷媒8の沸騰が生じ易い条件を用いた場合の冷却システム1の例を示している。液相冷媒8が沸騰し易いほど、熱による液相冷媒8から気相冷媒8aへの相変化が生じ易い。そのため、外部の発熱体からの吸熱が促進され、蒸発器2への熱伝達効率が高まり、それによって外部の発熱体が効率的に冷却され、蒸発器2の冷却能力が高まる。冷却システム1において、液相冷媒8の沸騰を生じ易くする場合には、その閉回路内の液相冷媒8の充填率、内圧等が調整される。
しかし、蒸発器2で液相冷媒8が沸騰し易い条件が用いられることで、蒸発器2での気相冷媒8aの発生量が増え、それによって蒸発器2からの気相冷媒8aの排出量が増えると、冷却システム1の閉回路内に存在する気相冷媒8aが増える。その結果、蒸発器2から排出され放熱器3へ送られた気相冷媒8aが、放熱器3で十分に凝縮されず、凝縮されずに残った気相冷媒8aがポンプ4に吸い込まれる可能性が高まる。また、気相冷媒8aが放熱器3で凝縮されて液相冷媒8となっても、ポンプ4の流量とのバランスによっては、ポンプ4の吸い込み側の減圧による再沸騰(キャビテーション)が生じ、それによって発生する気相冷媒8aがポンプ4に吸い込まれることも起こり得る。図1(C)は、このような不具合が生じる状況を模式的に示したものである。蒸発器2で発生して蒸発器2から排出された気相冷媒8aが、ポンプ4に吸い込まれ、いわゆるポンプ4の噛み込みが生じると、ポンプ4から蒸発器2への液相冷媒8の送液が滞ってしまう。その結果、液相冷媒8が少ない状態で加熱が継続されて蒸発器2の機能が低下したり、蒸発器2で発生して排出される気相冷媒8aが更に増大したり、ポンプ4の気相冷媒8aの噛み込みが更に生じ易くなったりするといった不具合が生じてしまう。
このように、冷却システム1の構成によっては、蒸発器2の冷却能力を高めるために液相冷媒8の沸騰が生じ易い条件を用いると、ポンプ4による液相冷媒8の安定な循環が行えなくなる恐れがある。それにより、蒸発器2の機能が低下し、電子装置等の外部の発熱体を十分に冷却することができずに、その過熱、更には過熱による破損や性能劣化を招く恐れがある。
冷却システム1において、ポンプ4による液相冷媒8の安定な循環を行うためには、蒸発器2での気相冷媒8aの発生量を抑えて蒸発器2からの気相冷媒8aの排出量が抑えられる条件、例えば、図1(B)のような状態が得られる条件が用いられる。しかし、このような条件では、蒸発器2での気相冷媒8aの発生が抑えられるため、蒸発器2での吸熱量が減り、蒸発器2について十分な冷却能力が得られない場合がある。例えば、冷却システム1の冷却対象となる発熱体の一例である電子装置の1つにプロセッサがあるが、近年のプロセッサは、その高性能化に伴って発熱量が増大しており、発熱密度では原子炉の燃料棒表面温度に匹敵するところにまで迫っている。このようなプロセッサに冷却システム1を適用する場合、その蒸発器2の冷却能力が十分でないと、プロセッサの過熱、更には過熱による破損や性能劣化を招く可能性が高まる。
以上述べたように、冷却システム1では、蒸発器2の冷却能力を高めるために蒸発器2での気相冷媒8aの発生量を増やせば、蒸発器2からの気相冷媒8aの排出量が増え、ポンプ4による液相冷媒8の安定な循環が行えないことが起こり得る(図1(C))。一方、冷却システム1では、ポンプ4による液相冷媒8の安定な循環を行うために蒸発器2での気相冷媒8aの発生量を抑えれば、蒸発器2について十分な冷却能力が得られないことが起こり得る(図1(B))。
以上のような点に鑑みると、冷却システムにおいて、蒸発器での気相冷媒の発生量は増やしつつ、蒸発器からの気相冷媒の排出量は抑えるようにすることが、蒸発器の高い冷却能力を実現しつつ、安定なポンプ循環を実現することに有効になると考えられる。以下では、実施の形態として、これを可能にする蒸発器、及びそのような蒸発器を備える冷却システム等について説明する。尚、以下の説明では、重力方向Gを「下」、重力方向Gと反対の方向を「上」とする。
[第1の実施の形態]
図2は第1の実施の形態に係る蒸発器の第1の例について説明する図である。図2には、蒸発器の一例の要部断面図を模式的に示している。
図2に示す蒸発器10Aは、容器11と、容器11内に液相冷媒20を供給する供給部12と、容器11内の液相冷媒20が外部から吸熱する吸熱部13と、液相冷媒20が貯留される貯留部14と、容器11内の液相冷媒20を排出する排出部15とを含む。蒸発器10Aは更に、容器11の表面に沿って液相冷媒20を供給する供給部16と、その液相冷媒20を排出する排出部17とを含む。
容器11は、その内部11aに一定量の液相冷媒20及びその沸騰(又は蒸発)によって発生する気相冷媒21を貯留可能な空間を有する。容器11は、このように内部11aに一定の空間を有していて液相冷媒20等を貯留可能であれば、箱型の本体とそれを覆う蓋、或いは底板とそれを覆う箱型の本体といったように、複数の部材から形成されるものでもよい。ここでは一例として直方体型の容器11を図示するが、容器11の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、ドーム型や釣鐘型、太鼓型、鼓型、球体型等、各種形状の容器11を用いることができる。容器11には、熱伝導性の良好な材料が用いられる。例えば、容器11には、銅、アルミニウム、真鍮、ステンレス等の金属材料や合金材料が用いられる。このほか、容器11には、グラファイト等のカーボン材料や、窒化アルミニウム、炭化ケイ素等のセラミック材料が用いられてもよい。
供給部12は、容器11の内部11aに液相冷媒20を供給する。例えば、供給部12は、蒸発器10Aが用いられる冷却システムの放熱器に繋がるポンプに接続される。放熱器で凝縮されてポンプで送液される比較的低温の液相冷媒20が、供給部12へと導かれ、供給部12によって容器11の内部11aに供給される。例えば、ポンプで送液される液相冷媒20が分流され、分流された一部が供給部12へと導かれ、容器11の内部11aに供給される。供給部12には、例えば、容器11の上部から下部に向かって延びる管が用いられる。供給部12は、その出口12aが、吸熱部13に達するか又は吸熱部13の近傍に位置するように、設けられる。
吸熱部13は、供給部12によって容器11の内部11aに供給された液相冷媒20が外部から主として吸熱する(又は受熱する若しくは加熱される)部位である。例えば、吸熱部13は、蒸発器10Aの冷却対象である電子装置等の外部の発熱体と直接に又は間接に熱的に接続され、その発熱体から発生する熱が、吸熱部13において、容器11の内部11aに供給された液相冷媒20に吸収される。吸熱部13は、図2に示す容器11の下部であって、容器11の内部11aに貯留される液相冷媒20の下層部に位置するように、設けられる。例えば、吸熱部13は、容器11の内面11bから内部11aに向かって突出する複数のフィン13aによって形成される。
貯留部14は、吸熱部13で吸熱した液相冷媒20、及び吸熱部13で吸熱して蒸発した後に冷却されて凝縮された液相冷媒20が貯留される(又は集液される)部位である。貯留部14には、一定量の液相冷媒20が貯留される。貯留部14に貯留される液相冷媒20中には、吸熱部13での吸熱により発生した気相冷媒21が含まれ得る。図2に示す容器11の内部11aにおいて、貯留部14に貯留される液相冷媒20の液面20aよりも上には、吸熱した液相冷媒20から発生する気相冷媒21を含むか又は真空の空間11cが存在する。この空間の体積は、蒸発器10Aが用いられる冷却システムの閉回路(密閉空間)内に減圧状態で液相冷媒20が充填される際の、その量及び圧力に基づいて設定される。貯留部14には、設定された体積の空間11cが容器11の内部11aに残るような一定量の液相冷媒20が貯留される。
排出部15は、貯留部14に貯留される液相冷媒20又は気相冷媒21を含む液相冷媒20を、容器11の内部11aからその外部へ排出する。例えば、排出部15は、蒸発器10Aが用いられる冷却システムの放熱器に接続される。蒸発器10Aで比較的高温となった液相冷媒20又は気相冷媒21を含む液相冷媒20が、排出部15を通じて排出され、放熱器へと送られる。排出部15には、例えば、容器11の上部から貯留部14の液相冷媒20中に延びる管が用いられる。排出部15は、その入口15aが、液相冷媒20の液面20aよりも下に位置するように、設けられる。
供給部16は、容器11の外面11d(表面)に沿って液相冷媒20を供給する。例えば、供給部16は、蒸発器10Aが用いられる冷却システムの放熱器に繋がるポンプに接続される。放熱器で凝縮されてポンプで送液される比較的低温の液相冷媒20が、供給部16へと導かれ、供給部16によって容器11の外面11dに沿って供給される。例えば、ポンプで送液される液相冷媒20が分流され、分流された一部が供給部12へと導かれて容器11の内部11aに供給され、分流された別の一部が供給部16へと導かれて容器11の外面11dに沿って供給される。供給部16によって供給される液相冷媒20は、容器11の外面11dに沿って、例えば、図2の例では、容器11の上部から下部に向かって、流通される。流通される液相冷媒20は、このように上部から下部に向かって流通される間に、容器11の内部11aと熱交換され、温度が上昇していく。容器11の外面11dに沿って液相冷媒20を流通させる供給部16は、外面11dと熱的に接続されていれば、必ずしも外面11dに直接接触していることを要しない。例えば、容器11の外面11dと供給部16との間には、熱伝導性の層が介在されてもよい。
排出部17は、供給部16によって容器11の外面11dに沿って供給、流通された液相冷媒20を、蒸発器10Aの外部へ排出する。例えば、排出部17は、蒸発器10Aが用いられる冷却システムの放熱器に接続される。容器11の外面11dに沿って流通された液相冷媒20が、排出部15を通じて排出され、放熱器へと送られる。例えば、容器11の外面11dに沿って流通された後に排出部17を通じて排出される液相冷媒20は、容器11の内部11aから排出部15を通じて排出される液相冷媒20と合流され、放熱器へと送られる。
上記のような構成を有する蒸発器10Aでは、例えば、これが用いられる冷却システムの放熱器に繋がるポンプから送液される比較的低温の液相冷媒20が、供給部12から容器11の内部11aに供給され、貯留部14に貯留される。貯留部14に貯留される液相冷媒20は、その下層部に位置する吸熱部13によって、冷却対象である電子装置等の発熱体で発生する熱を吸収する。供給部12の出口12aが、吸熱部13に達するか又はその近傍に位置することで、吸熱部13には、放熱器からポンプで送液される比較的低温の液相冷媒20が継続的に供給される。吸熱部13で吸熱した液相冷媒20は、その熱で沸騰する。液相冷媒20に熱を吸収されることで、外部の電子装置等の発熱体が冷却される。吸熱した液相冷媒20の沸騰により、液相冷媒20が蒸発(気化)し、気相冷媒21が発生する。気相冷媒21は、容器11の内部11aの、貯留部14内又は空間11c内に移動(流動又は拡散)する。
蒸発器10Aでは、放熱器からポンプで送液される比較的低温の液相冷媒20が、供給部16によって、容器11の外面11dに沿って供給される。蒸発器10Aでは、このように供給部16によって容器11の外面11dに沿って比較的低温の液相冷媒20が供給されることで、容器11の壁部(発熱体が熱的に接続される吸熱部13に対応する部位を除く)が冷却される。これにより、吸熱部13で吸熱した液相冷媒20の沸騰によって発生し、容器11の内面11b又はその付近に移動(流動又は拡散)した気相冷媒21が、冷却されて凝縮される。この気相冷媒21の冷却及びそれによる凝縮は、容器11の、貯留部14の液相冷媒20中、及び内面11b又はその付近、及び空間11c内の内面11b又はその付近の、少なくともいずれかで起こる。気相冷媒21が、液相冷媒20中、及び内面11b又はその付近で冷却されて凝縮されると、その凝縮によって生成された液相冷媒20が、貯留部14の液相冷媒20に混入し、貯留部14に貯留される。気相冷媒21が、空間11c内の内面11b又はその付近で冷却されて凝縮されると、その凝縮によって生成された液相冷媒20が、貯留部14に落下したり内面11bに付着して流下したりして、貯留部14の液相冷媒20に混入し、貯留部14に貯留される。
尚、蒸発器10Aでは、必ずしも、液相冷媒20の吸熱によって発生する気相冷媒21の全てが、蒸発器10A内で冷却されて凝縮されることを要しない。液相冷媒20の吸熱によって発生する気相冷媒21の一部が、蒸発器10A内で凝縮されずに残存する場合があってもよい。貯留部14に貯留される液相冷媒20中には、液相冷媒20の吸熱によって発生する気相冷媒21が含まれ得る。
発熱体からの吸熱で比較的高温となった貯留部14の液相冷媒20又は気相冷媒21を含む液相冷媒20は、その液面20aよりも下に入口15aが位置する排出部15を通じて蒸発器10Aの外部へ排出される。排出部15は、その入口15aが液相冷媒20の液面20aよりも下に位置するため、空間11c内に存在し得る気相冷媒21の外部への排出が抑えられる。供給部16によって容器11の外面11dに沿って供給され、内部11aとの熱交換で比較的高温となった液相冷媒20は、排出部17を通じて蒸発器10Aの外部へ排出される。排出部15及び排出部17を通じて排出された液相冷媒20は、例えば、冷却システムの放熱器へと送られる。そして、放熱器による放熱によって凝縮、低温化された液相冷媒20が、ポンプによって再び蒸発器10Aの供給部12及び供給部16へと送られる。
このように蒸発器10Aでは、吸熱部13で吸熱した液相冷媒20の沸騰によって容器11の内部11aで発生した気相冷媒21が、供給部16によって容器11の外面11dに沿って供給される液相冷媒20を用いて凝縮される。即ち、蒸発器10Aは、外部の発熱体から発生する熱を液相冷媒20で吸熱して発熱体を冷却する冷却機能と、その吸熱による液相冷媒20の沸騰によって発生する気相冷媒21を凝縮させて液相冷媒20に戻す凝縮機能とを兼ね備えている。蒸発器10Aでは、その凝縮機能により、排出部15から液相冷媒20と共に多量の気相冷媒21が排出されることが抑えられる。蒸発器10Aからの多量の気相冷媒21の排出が抑えられるため、蒸発器10Aを用いる冷却システムにおいて、ポンプによる液相冷媒20の安定な循環を行うことができる。蒸発器10Aでは、その凝縮機能によって気相冷媒21の排出を抑えて液相冷媒20の安定な循環を行うことができるため、液相冷媒20の沸騰が生じ易い条件を用いることができ、それにより、蒸発器10Aの冷却能力を高めることができる。
図2に示すような蒸発器10Aによれば、液相冷媒20の吸熱による気相冷媒21の発生量は増やしつつ、外部への気相冷媒21の排出量は抑えて、蒸発器10Aの高い冷却能力を実現しつつ、安定なポンプ循環を実現することができる。
尚、蒸発器10Aでは、必ずしも、液相冷媒20の吸熱によって発生する気相冷媒21の全てが、蒸発器10A内で冷却されて凝縮されることを要しない。液相冷媒20の吸熱によって発生する気相冷媒21の全てが、蒸発器10A内で凝縮されない場合であっても、蒸発器10Aでは、その外部への気相冷媒21の排出量が低減され、多量の気相冷媒21の排出が抑えられ、安定なポンプ循環が実現される。
図3は第1の実施の形態に係る蒸発器の第2の例について説明する図である。図3には、蒸発器の一例の要部断面図を模式的に示している。
図3に示す蒸発器10Bは、供給部16によって容器11の外面11dに沿って供給される液相冷媒20が、容器11の下部から上部に向かって流通される点で、上記図2に示した蒸発器10Aと相違する。
容器11の下部(貯留部14の液相冷媒20の下層部)には、液相冷媒20が外部の発熱体から吸熱する吸熱部13が設けられる。そのため、貯留部14の液相冷媒20は、吸熱部13が設けられる下層部の方が、空間11c側の上層部に比べて、温度が上昇し易く、その沸騰が生じ易い。即ち、貯留部14に貯留される液相冷媒20の下層部で気相冷媒21が発生し易い。
図3に示す蒸発器10Bでは、容器11の下部から上部に向かって、その外面11dに沿って液相冷媒20が流通される。液相冷媒20は、このように下部から上部に向かって流通される間に、容器11の内部11aと熱交換され、温度が上昇していく。そのため、蒸発器10Bでは、気相冷媒21が発生し易い、貯留部14の液相冷媒20の下層部に近い外面11dほど、より低温の液相冷媒20が流通される。これにより、蒸発器10Bでは、吸熱部13での吸熱によって発生する気相冷媒21を素早く凝縮させ(例えば液相冷媒20中で凝縮させ)、液相冷媒20に戻すことが可能になる。
図3に示すような蒸発器10Bによっても、液相冷媒20の吸熱による気相冷媒21の発生量は増やしつつ、外部への気相冷媒21の排出量は抑えて、蒸発器10Bの高い冷却能力を実現しつつ、安定なポンプ循環を実現することができる。
[第2の実施の形態]
ここでは、上記のような構成を採用した蒸発器の例を、第2の実施の形態として説明する。
図4~図6は第2の実施の形態に係る蒸発器の一例について説明する図である。図4には、蒸発器の一例の要部断面図を模式的に示している。図5には、図4に示す蒸発器を下側から見た時の要部平面図を模式的に示している。図6(A)には、図4に示す蒸発器の容器の外観図を模式的に示し、図6(B)には、図6(A)のVI-VI断面図を模式的に示している。
図4に示す蒸発器100Aは、容器110と、容器110内に液相冷媒200を供給する供給部120と、容器110内の液相冷媒200が外部の発熱体300から吸熱する吸熱部130と、液相冷媒200が貯留される貯留部140とを含む。蒸発器100Aは更に、容器110の表面に沿って液相冷媒200を供給する供給部160と、容器110内の液相冷媒200及び供給部160によって容器110の表面に供給された液相冷媒200を排出する排出部150とを含む。蒸発器100Aはまた、貯留部140に貯留される液相冷媒200中に位置し吸熱部130を覆うように設けられたガイド180と、容器110に設けられた複数のフィン190とを含む。
容器110は、その内部110aに一定量の液相冷媒200及びその沸騰(又は蒸発)によって発生する気相冷媒210を貯留可能な空間を有する。容器110は、底板111と、底板111を覆うドーム型の本体112と、底板111と本体112との間に介在されてこれらを連結する連結部113とを有する。連結部113を介して連結された底板111と本体112とで囲まれた内部110aに、液相冷媒200及びその沸騰によって発生する気相冷媒210が貯留される。容器110の底板111及び本体112には、比較的高い熱伝導性を有する材料が用いられる。例えば、底板111及び本体112には、銅、アルミニウム、真鍮、ステンレス等の金属材料や合金材料が用いられる。このほか、底板111及び本体112には、グラファイト等のカーボン材料や、窒化アルミニウム、炭化ケイ素等のセラミック材料が用いられてもよい。容器110の連結部113には、比較的低い熱伝導性を有する材料が用いられる。例えば、連結部113には、無機系又は有機系の断熱材料が用いられる。連結部113に断熱材料が用いられることで、蒸発器100Aの冷却対象である電子装置等の外部の発熱体300から底板111に伝達される熱が、本体112に直接的に伝達されることが抑えられる。容器110の本体112の内面110bには、図4及び図5に示すように、内部110aに向かって突出する複数のフィン190が設けられる。
供給部120は、容器110の内部110aに液相冷媒200を供給する。例えば、供給部120は、蒸発器100Aが用いられる冷却システムの放熱器に繋がるポンプに接続される。放熱器で凝縮されてポンプで送液される比較的低温の液相冷媒200が、供給部120へと導かれ、供給部120から容器110の内部110aに供給される。例えば、ポンプで送液される液相冷媒200が分流され、分流された一部が供給部120へと導かれ、容器110の内部110aに供給される。供給部120には、例えば、容器110の上部から下部に向かって延びる管が用いられる。供給部120は、吸熱部130を覆うガイド180を貫通するように設けられ、その出口120aが、吸熱部130に達するか又は吸熱部130の近傍に位置するように、設けられる。液相冷媒200は、図4に示すように、供給部120の出口120aから、容器110の底板111とガイド180との間に供給され、ガイド180に誘導されて、図4及び図5に示すように、容器110の本体112の内面110bに向かって移動(流動又は拡散)する。
吸熱部130は、供給部120によって供給された液相冷媒200が外部の発熱体300から主として吸熱する部位である。例えば、吸熱部130は、発熱体300と熱的に接続され、発熱体300から発生する熱が、吸熱部130で液相冷媒200に吸収される。吸熱部130は、図4に示す容器110の下部の、貯留部140の液相冷媒200の下層部であって、容器110の底板111とガイド180との間に設けられる。例えば、吸熱部130は、容器110の底板111に、内部110aに向かって突出するように設けられた、複数のフィン130aによって形成される。尚、容器110の底板111を、吸熱部130又はその一部としてもよい。
ガイド180は、供給部120によって吸熱部130又はその近傍に供給されて吸熱部130で吸熱した液相冷媒200及びその吸熱によって発生した気相冷媒210の、容器110の本体112の内面110bに向かう移動を誘導する。ガイド180により、吸熱部130での吸熱によって発生した気相冷媒210が、本体112の内面110b又はその付近に到達する前に、ガイド180よりも上の貯留部140の液相冷媒200中に混入すること、排出部150から排出されることが抑えられる。ガイド180には、比較的低い熱伝導性を有する材料が用いられる。例えば、ガイド180には、無機系又は有機系の断熱材料が用いられる。ガイド180に断熱材料が用いられることで、ガイド180よりも下の吸熱部130の熱が、ガイド180よりも上の貯留部140の液相冷媒200に伝達されることが抑えられる。
貯留部140は、吸熱部130で吸熱した液相冷媒200、及び吸熱部130で吸熱して蒸発した後に冷却されて凝縮された液相冷媒200が貯留される部位である。貯留部140には、一定量の液相冷媒200が貯留される。貯留部140に貯留される液相冷媒200中には、吸熱部130での吸熱により発生した気相冷媒210が含まれ得る。図4に示す容器110の内部110aにおいて、貯留部140の液相冷媒200の液面200aよりも上には、吸熱した液相冷媒200から発生する気相冷媒210を含むか又は真空の空間110cが存在する。この空間の体積は、蒸発器100Aが用いられる冷却システムの閉回路(密閉空間)内に減圧状態で液相冷媒200が充填される際の、その量及び圧力に基づいて設定される。貯留部140には、設定された体積の空間110cが容器110の内部110aに残るような一定量の液相冷媒200が貯留される。
排出部150は、図4に示すように、貯留部140に貯留される液相冷媒200又は気相冷媒210を含む液相冷媒200を、容器110の内部110aからその外部へ排出する。例えば、排出部150は、蒸発器100Aが用いられる冷却システムの放熱器に接続される。蒸発器100Aで比較的高温となった液相冷媒200又は気相冷媒210を含む液相冷媒200が、排出部150を通じて排出され、放熱器へと送られる。排出部150には、例えば、容器110の上部から、貯留部140の液相冷媒200中に延びる管が用いられる。排出部150は、その入口150aが、液相冷媒200の液面200aよりも下に位置するように、設けられる。
供給部160は、容器110の外面110d(表面)に沿って液相冷媒200を供給する。例えば、供給部160には、容器110の内部110aに液相冷媒200を供給する供給部120から容器110の手前(内部110aへの導入前)で分流された液相冷媒200が供給される。供給部160は、図4及び図6に示すように、液相冷媒200が容器110の上部から下部に向かって流通される流路161と、液相冷媒200が容器110の下部で折り返して上部に向かって流通される流路162とを有する。流路161は、容器110の外面110d寄りに設けられたジャケット型の流路であり、容器110の手前の供給部120からの分流点からその周囲に分配される液相冷媒200を外面110dに沿って流通させる。流路161から折り返す流路162は、流路161の外側に設けられたジャケット型の流路であり、流路161を流通された液相冷媒200を流路161の外側に沿って流通させる。供給部160の内側の流路161は、外面110dと熱的に接続されていれば、必ずしも外面110dに直接接触していることを要しない。例えば、容器110の外面110dと供給部160の内側の流路161との間には、熱伝導性の層が介在されてもよい。
供給部160の流路162は、容器110の内部110aから液相冷媒200を排出する排出部150に接続される。流路162を流通された液相冷媒200は、容器110の内部110aから排出される液相冷媒200と合流され、排出部150を通じて外部に排出される。
上記のような構成を有する蒸発器100A(図4)では、例えば、これが用いられる冷却システムの放熱器に繋がるポンプから送液される比較的低温の液相冷媒200が、供給部120によって容器110の内部110aに供給され、貯留部140に貯留される。貯留部140の液相冷媒200は、その下層部に位置する吸熱部130によって、発熱体300で発生する熱を吸収する。供給部120が、吸熱部130を覆うガイド180を貫通し、その出口120aが、吸熱部130に達するか又はその近傍に位置することで、ガイド180の下の吸熱部130に対し、放熱器からポンプで送液される比較的低温の液相冷媒200が継続的に供給される。吸熱部130で吸熱した液相冷媒200は、その熱で沸騰する。液相冷媒200に熱を吸収されることで、発熱体300が冷却される。吸熱した液相冷媒200の沸騰により、液相冷媒200が蒸発し、気相冷媒210が発生する。気相冷媒210及びそれを含む液相冷媒200は、吸熱部130の上のガイド180で誘導され、容器110の本体112の内面110bに向かって移動し、更に内面110bに沿って上方に向かって移動する。
蒸発器100Aでは、放熱器からポンプで送液される比較的低温の液相冷媒200が、供給部160によって容器110の外面110dに沿って供給され、容器110の上部から下部へ、更に折り返して下部から上部へと流通される。蒸発器100Aでは、このように供給部160(その流路161及び流路162、特に内側の流路161)によって容器110の外面110dに沿って比較的低温の液相冷媒200が供給されることで、容器110の本体112が冷却される。これにより、吸熱部130で吸熱した液相冷媒200の沸騰によって発生して容器110の本体112の内面110b(貯留部140の液相冷媒200の内外の内面110b)又はその付近に移動した気相冷媒210が、冷却されて凝縮される。蒸発器100Aでは、本体112の内面110bにフィン190が設けられて表面積が増大されていることで、このような気相冷媒210の冷却及びそれによる凝縮が促進される。この気相冷媒210の冷却及びそれによる凝縮は、容器110の、貯留部140の液相冷媒200中、及び内面110b又はその付近、及び空間110c内の内面110b又はその付近の、少なくともいずれかで起こる。気相冷媒210が、液相冷媒200中、及び内面110b又はその付近で冷却されて凝縮されると、その凝縮によって生成された液相冷媒200が、貯留部140の液相冷媒200に混入し、貯留部140に貯留される。気相冷媒210が、空間110c内の内面110b又はその付近で冷却されて凝縮されると、その凝縮によって生成された液相冷媒200が、貯留部140に落下したり内面110bに付着して流下したりして、貯留部140の液相冷媒200に混入し、貯留部140に貯留される。
尚、蒸発器100Aでは、必ずしも、液相冷媒200の吸熱によって発生する気相冷媒210の全てが、蒸発器100A内で冷却されて凝縮されることを要しない。液相冷媒200の吸熱によって発生する気相冷媒210の一部が、蒸発器100A内で凝縮されずに残存する場合があってもよい。貯留部140に貯留される液相冷媒200中には、液相冷媒200の吸熱によって発生する気相冷媒210が含まれ得る。
発熱体300からの吸熱で比較的高温となった貯留部140の液相冷媒200又は気相冷媒210を含む液相冷媒200は、その液面200aよりも下に入口150aが位置する排出部150を通じて蒸発器100Aの外部へ排出される。排出部150は、その入口150aが液相冷媒200の液面200aよりも下に位置するため、空間110c内に存在し得る気相冷媒210の排出が抑えられる。供給部160によって容器110の外面110dに沿って供給され、内部110aとの熱交換で比較的高温となった液相冷媒200は、排出部150を通じて排出される液相冷媒200と合流され、蒸発器100Aの外部へ排出される。排出部150を通じて排出された液相冷媒200又は気相冷媒210を含む液相冷媒200は、冷却システムの放熱器へと送られる。そして、放熱器による放熱によって凝縮、低温化された液相冷媒200が、ポンプによって再び蒸発器100Aの供給部120及び供給部160へと送られる。
このように蒸発器100Aでは、吸熱部130で吸熱した液相冷媒200の沸騰によって容器110の内部110aで発生した気相冷媒210が、供給部160によって容器110の外面110dに沿って供給される液相冷媒200を用いて凝縮される。即ち、蒸発器100Aは、外部の発熱体300から発生する熱を液相冷媒200で吸熱して発熱体300を冷却する冷却機能と、その吸熱による液相冷媒200の沸騰によって発生する気相冷媒210を凝縮させて液相冷媒200に戻す凝縮機能とを兼ね備えている。蒸発器100Aでは、その凝縮機能により、排出部150から液相冷媒200と共に多量の気相冷媒210が排出されることが抑えられる。蒸発器100Aからの多量の気相冷媒210の排出が抑えられるため、蒸発器100Aを用いる冷却システムにおいて、ポンプによる液相冷媒200の安定な循環を行うことができる。蒸発器100Aでは、その凝縮機能によって気相冷媒210の排出を抑えて液相冷媒200の安定な循環を行うことができるため、液相冷媒200の沸騰が生じ易い条件を用いることができ、それにより、蒸発器100Aの冷却能力を高めることができる。
蒸発器100Aによれば、液相冷媒200の吸熱による気相冷媒210の発生量は増やしつつ、外部への気相冷媒210の排出量は抑えて、蒸発器100Aの高い冷却能力を実現しつつ、安定なポンプ循環を実現することができる。更に、蒸発器100Aが用いられる冷却システムにおいて、例えば、蒸発器100Aから放熱器に繋がる配管が細い場合には、そのような配管への気相冷媒210の排出が抑えられることで、スチームハンマ等による配管へのダメージを抑えることができる。
尚、蒸発器100Aでは、必ずしも、液相冷媒200の吸熱によって発生する気相冷媒210の全てが、蒸発器100A内で冷却されて凝縮されることを要しない。液相冷媒200の吸熱によって発生する気相冷媒210の全てが、蒸発器100A内で凝縮されない場合であっても、蒸発器100Aでは、その外部への気相冷媒210の排出量が低減され、多量の気相冷媒210の排出が抑えられ、安定なポンプ循環が実現される。
ところで、上記のような蒸発器100Aが用いられる冷却システムは密閉構造とされ、減圧状態で液相冷媒200が充填される。このような冷却システムでは、液相冷媒200の蒸発により発生する気相冷媒210を含むか又は真空に近い空間は一定容積である。そこで、蒸発器100Aの容器110を、気相冷媒210への相変化時の体積膨張を考慮して上記一定容積の2倍超の容積であって、且つ、蒸発器100Aを任意の設置姿勢にしても排出部150の入口150aを覆える程度の液相冷媒200が貯留される容積に設定する。このようにすることで、蒸発器100Aの設置姿勢によらず、排出部150の入口150aが常に液相冷媒200中に没している状態を得ることができ、それにより、排出部150から気相冷媒210が排出されることを抑えることができる。
図7及び図8は第2の実施の形態に係る蒸発器の設置姿勢を変えた例について説明する図である。図7及び図8にはそれぞれ、蒸発器の一例の要部断面図を模式的に示している。
図7は、上記図4に示した蒸発器100Aを、天地逆さまに設置した時の例である。この例では、ガイド180よりも上に出口120aが位置する供給部120によって、液相冷媒200が吸熱部130又はその付近に供給される。ガイド180の上方の吸熱部130による発熱体300からの吸熱で発生した気相冷媒210及びそれを含む液相冷媒200は、ガイド180と容器110の本体112の内面110bとの間から流出する。容器110の本体112は、供給部160で外面110dに沿って流通される液相冷媒200によって冷却され、それにより、内面110b又はその付近の気相冷媒210或いは液相冷媒200中の気相冷媒210が、凝縮される。容器110の内部110aの液相冷媒200又は気相冷媒210を含む液相冷媒200、及び外面110dに沿って流通された液相冷媒200は、排出部150を通じて蒸発器100Aの外部に排出される。蒸発器100Aは、その容器110を上記のような所定の容積に設定することで、例えば、この図7に示すように、天地逆さまに設置することもできる。容器110を所定の容積に設定することで、このように蒸発器100Aを天地逆さまに設置しても、排出部150の入口150aは、液相冷媒200の液面200aよりも下に位置するため、排出部150からの気相冷媒210の排出が抑えられる。
また、図8は、上記図4に示した蒸発器100Aを、横向きに設置した時の例である。この例では、ガイド180よりも吸熱部130側に出口120aが位置する供給部120によって、液相冷媒200が吸熱部130又はその付近に供給される。ガイド180の側方の吸熱部130による発熱体300からの吸熱で発生した気相冷媒210及びそれを含む液相冷媒200は、ガイド180と容器110の本体112の内面110bとの間から流出する。容器110の本体112は、供給部160で外面110dに沿って流通される液相冷媒200によって冷却され、それにより、内面110b又はその付近の気相冷媒210或いは液相冷媒200中の気相冷媒210が、凝縮される。容器110の内部110aの液相冷媒200又は気相冷媒210を含む液相冷媒200、及び外面110dに沿って流通された液相冷媒200は、排出部150を通じて蒸発器100Aの外部に排出される。蒸発器100Aは、その容器110を上記のような所定の容積に設定することで、例えば、この図8に示すように、横向きに設置することもできる。容器110を所定の容積に設定することで、このように蒸発器100Aを横向きに設置しても、排出部150の入口150aは、液相冷媒200の液面200aよりも下に位置するため、排出部150からの気相冷媒210の排出が抑えられる。
このように蒸発器100Aでは、任意の設置姿勢において、排出部150の入口150aを液相冷媒200の液面200aよりも下に位置させ、排出部150からの気相冷媒210の排出を抑えることができる。これにより、気相冷媒210の排出を抑えて液相冷媒200の安定な循環を行うことができ、また、液相冷媒200の沸騰が生じ易い条件を用いて冷却能力を高めることができる。更に、蒸発器100Aに接続される配管が細い場合でも、そのような配管への気相冷媒210の排出を抑え、スチームハンマ等による配管へのダメージを抑えることができる。
以上の説明では、蒸発器100Aの容器110の外面110dに沿って液相冷媒200を供給する供給部160として、容器110を覆う、外面110d寄りのジャケット型の流路161と、その外側のジャケット型の流路162とを有する構造のものを示した。供給部160の構造は、このようなものには限定されない。
図9は第2の実施の形態に係る蒸発器の変形例について説明する図である。図9(A)及び図9(B)にはそれぞれ、蒸発器の容器及びその外面に設けられる供給部の一例の外観図を模式的に示している。
蒸発器100Aには、その容器110の外面110dに沿って液相冷媒200を供給する供給部として、例えば、図9(A)に示すような、複数の折り返し型の配管163を有する供給部160Aが設けられてもよい。例えば、容器110の内部110aに通じる供給部120の液相冷媒200が、調整器164で複数の配管163へ分流されて供給され、複数の配管163の戻りの液相冷媒200が、調整器164で合流され、排出部150の液相冷媒200に合流されて排出される。このような配管163によっても、これを流通される液相冷媒200により、容器110の外面110dが冷却され、それによって内部110aが冷却されて、気相冷媒210が凝縮される。
また、蒸発器100Aには、その容器110の外面110dに沿って液相冷媒200を供給する供給部として、例えば、図9(B)に示すような、容器110に巻回されたらせん状の配管165を有する供給部160Bが設けられてもよい。例えば、容器110の内部110aに通じる供給部120の液相冷媒200が、調整器166で配管165へ分流されて供給され、配管165の戻りの液相冷媒200が、調整器166で排出部150の液相冷媒200に合流されて排出される。このような配管165によっても、これを流通される液相冷媒200により、容器110の外面110dが冷却され、それによって内部110aが冷却されて、気相冷媒210が凝縮される。
[第3の実施の形態]
図10は第3の実施の形態に係る蒸発器の一例について説明する図である。図10には、蒸発器の一例の要部断面図を模式的に示している。
図10に示す蒸発器100Bは、吸熱部130を覆い且つ容器110の本体112の内面110bに沿って供給部120及び排出部150の付近まで延長されたガイド180Bを有する。蒸発器100Bは更に、供給部120及び排出部150の、容器110の内部110aであって貯留部140の液相冷媒200の液面200a又はそれよりも上に位置するように設けられたバリア181Bを有する。蒸発器100Bは、このような点で、上記第2の実施の形態で述べた蒸発器100A(図4~図8)と相違する。
ガイド180Bの、容器110の本体112の内面110bに沿って供給部120及び排出部150の付近まで延長された部分は、内面110bから突出するフィン190の内側に設けられる。ガイド180Bは、供給部120によって吸熱部130又はその近傍に供給されて吸熱部130で吸熱した液相冷媒200及びその吸熱によって発生した気相冷媒210の、容器110の本体112の内面110bに向かう移動、内面110bに沿った移動を誘導する。ガイド180Bにより、吸熱部130での吸熱によって発生した気相冷媒210が、本体112の内面110b又はその付近に到達する前に、ガイド180Bの内側の貯留部140の液相冷媒200中に混入すること、排出部150から排出されることが抑えられる。ガイド180Bには、比較的低い熱伝導性を有する材料、例えば、無機系又は有機系の断熱材料が用いられる。断熱材料が用いられることで、ガイド180Bの内側と外側との間の熱交換が抑えられる。
蒸発器100Bでは、ガイド180Bの吸熱部130を覆う部分よりも下に出口120aが位置する供給部120によって、液相冷媒200が吸熱部130又はその付近に供給される。吸熱部130による発熱体300からの吸熱で発生した気相冷媒210及びそれを含む液相冷媒200は、ガイド180Bの吸熱部130を覆う部分で誘導され、容器110の本体112の内面110bに向かって移動する。容器110の本体112の内面110bに向かって移動した気相冷媒210及びそれを含む液相冷媒200は更に、本体112の内面110bとガイド180Bとの間を、供給部120及び排出部150の付近まで移動する。
容器110の本体112の内面110b又はその付近に移動した気相冷媒210、本体112の内面110bとガイド180Bとの間を移動する気相冷媒210が、供給部160で外面110dに沿って流通される液相冷媒200によって冷却されて凝縮される。気相冷媒210が凝縮された液相冷媒200、又は気相冷媒210を含む液相冷媒200は、ガイド180Bの、供給部120及び排出部150の付近に設けられた開口180Baから、空間110c、貯留部140へと流下する。貯留部140の液相冷媒200又は気相冷媒210を含む液相冷媒200、及び外面110dに沿って流通された液相冷媒200は、排出部150を通じて蒸発器100Bの外部に排出される。
バリア181Bは、ガイド180Bの開口180Baから流下する液相冷媒200の、流れ込む先に設けられる。ガイド180Bの開口180Baから流下する液相冷媒200に含まれる気相冷媒210の混入、空間110cへの気相冷媒210の混入、流下時の貯留部140の液相冷媒200の波打ちに伴う気相冷媒210の混入が、バリア181Bによって抑えられる。
このように蒸発器100Bでは、吸熱部130で吸熱した液相冷媒200の沸騰によって発生した気相冷媒210が、ガイド180Bにより、容器110の本体112の内面110bに沿って移動される。気相冷媒210は、このように容器110の本体112の内面110bに沿って移動されることで、供給部160によって容器110の本体112の外面110dに沿って供給される液相冷媒200を用いて、効果的に冷却されて凝縮される。
蒸発器100Bによっても、吸熱による気相冷媒210の発生量を増やしつつ、外部への気相冷媒210の排出量を抑えることができる。これにより、蒸発器100Bの高い冷却能力を実現しつつ、安定なポンプ循環を実現することができる。
尚、蒸発器100Bでは、必ずしも、液相冷媒200の吸熱によって発生する気相冷媒210の全てが、蒸発器100B内で冷却されて凝縮されることを要しない。液相冷媒200の吸熱によって発生する気相冷媒210の全てが、蒸発器100B内で凝縮されない場合であっても、蒸発器100Bでは、その外部への気相冷媒210の排出量が低減され、安定なポンプ循環が実現される。
また、蒸発器100Bでも、その容器110を所定の容積に設定することで、任意の設置姿勢とすることができる。
図11及び図12は第3の実施の形態に係る蒸発器の設置姿勢を変えた例について説明する図である。図11及び図12にはそれぞれ、蒸発器の一例の要部断面図を模式的に示している。
図11は、上記図10に示した蒸発器100Bを、天地逆さまに設置した時の例である。この例では、ガイド180Bよりも上に出口120aが位置する供給部120によって、液相冷媒200が吸熱部130又はその付近に供給される。吸熱部130による発熱体300からの吸熱で発生した気相冷媒210及びそれを含む液相冷媒200は、ガイド180Bに誘導され、容器110の本体112の内面110bに向かって、更に内面110bに沿って移動し、開口180Baから流出する。容器110の本体112は、供給部160で外面110dに沿って流通される液相冷媒200によって冷却され、それにより、内面110b又はその付近の気相冷媒210、内面110bに沿って移動する気相冷媒210が、凝縮される。容器110の内部110aの液相冷媒200又は気相冷媒210を含む液相冷媒200、及び外面110dに沿って流通された液相冷媒200は、排出部150を通じて蒸発器100Bの外部に排出される。蒸発器100Bは、その容器110を所定の容積に設定することで、例えば、この図11に示すように、天地逆さまに設置することもできる。容器110を所定の容積に設定することで、蒸発器100Bを天地逆さまに設置しても、排出部150の入口150aは、液相冷媒200の液面200aよりも下に位置し、排出部150からの気相冷媒210の排出が抑えられる。
また、図12は、上記図10に示した蒸発器100Bを、横向きに設置した時の例である。この例では、ガイド180Bよりも吸熱部130側に出口120aが位置する供給部120によって、液相冷媒200が吸熱部130又はその付近に供給される。吸熱部130による発熱体300からの吸熱で発生した気相冷媒210及びそれを含む液相冷媒200は、ガイド180Bに誘導され、容器110の本体112の内面110bに向かって、更に内面110bに沿って移動し、開口180Baから流出する。容器110の本体112は、供給部160で外面110dに沿って流通される液相冷媒200によって冷却され、それにより、内面110b又はその付近の気相冷媒210、内面110bに沿って移動する気相冷媒210が、凝縮される。容器110の内部110aの液相冷媒200又は気相冷媒210を含む液相冷媒200、及び外面110dに沿って流通された液相冷媒200は、排出部150を通じて蒸発器100Bの外部に排出される。蒸発器100Bは、その容器110を所定の容積に設定することで、例えば、この図12に示すように、横向きに設置することもできる。容器110を所定の容積に設定することで、蒸発器100Bを横向きに設置しても、排出部150の入口150aは、液相冷媒200の液面200aよりも下に位置し、排出部150からの気相冷媒210の排出が抑えられる。
[第4の実施の形態]
図13は第4の実施の形態に係る蒸発器の一例について説明する図である。図13には、蒸発器の一例の要部断面図を模式的に示している。
図13に示す蒸発器100Cは、底板111と、底板111を覆う本体112と、本体112の内側に設けられた副本体114と、底板111と本体112及び副本体114との間に介在されてこれらを連結する連結部113とを有する容器110Cを含む。本体112と副本体114との間には、それらに沿って液相冷媒200が流通される流路167が設けられ、この流路167が、容器110Cの表面に沿って液相冷媒200を供給する供給部160(又はその一部)として機能する。流路167には、例えば、供給部120によって容器110Cの内部110aに供給される液相冷媒200が分流されて供給される。容器110Cの副本体114には、これを貫通し、流路167と連通する複数の孔114aが設けられる。容器110の上部から下部に向かって流路167を流通される液相冷媒200は、容器110Cの副本体114に設けられた複数の孔114aから、容器110Cの内部110aに導入される。容器110Cの副本体114には、流路167を流通される液相冷媒200と容器110Cの内部110aとの熱交換を抑えるため、断熱材料が用いられることが好ましい。尚、蒸発器100Cでは、上記のようなフィン190は設けられない。蒸発器100Cは、このような点で、上記第2の実施の形態で述べた蒸発器100A(図4~図8)と相違する。
蒸発器100Cでは、ガイド180よりも下に出口120aが位置する供給部120によって、液相冷媒200が吸熱部130又はその付近に供給される。吸熱部130による発熱体300からの吸熱で発生した気相冷媒210及びそれを含む液相冷媒200は、容器110C(その副本体114)の内面110bに向かって移動する。容器110Cの内面110bに向かって移動した気相冷媒210及びそれを含む液相冷媒200は更に、副本体114に沿って上方に向かって移動する。
容器110Cの内部110aには、流路167を流通される液相冷媒200が、副本体114の孔114aから導入される。例えば、流路167を流通される液相冷媒200が、副本体114の孔114aから内部110aに噴出される。副本体114の孔114aから導入される液相冷媒200により、内部110a(空間110c内及び貯留部140内)の気相冷媒210及びそれを含む液相冷媒200が冷却され、気相冷媒210が凝縮される。流路167には、例えば、蒸発器100Cが用いられる冷却システムの放熱器に繋がるポンプから送液される比較的低温の液相冷媒200が、供給部120から分流されて供給される。このような比較的低温の液相冷媒200が、容器110Cの副本体114の孔114aを通じて内部110aに直接導入されることで、内部110aの気相冷媒210及びそれを含む液相冷媒200が急激に冷却され、気相冷媒210が効果的に凝縮される。凝縮によって生成された液相冷媒200は、貯留部140に貯留される。貯留部140の液相冷媒200又は気相冷媒210を含む液相冷媒200は、排出部150を通じて蒸発器100Cの外部に排出される。
蒸発器100Cによっても、吸熱による気相冷媒210の発生量を増やしつつ、外部への気相冷媒210の排出量を抑えることができる。これにより、蒸発器100Cの高い冷却能力を実現しつつ、安定なポンプ循環を実現することができる。
尚、蒸発器100Cでは、必ずしも、液相冷媒200の吸熱によって発生する気相冷媒210の全てが、蒸発器100C内で冷却されて凝縮されることを要しない。液相冷媒200の吸熱によって発生する気相冷媒210の全てが、蒸発器100C内で凝縮されない場合であっても、蒸発器100Cでは、その外部への気相冷媒210の排出量が低減され、安定なポンプ循環が実現される。
また、蒸発器100Cでは、上記蒸発器100A等について述べたのと同様に、容器110Cを所定の容積に設定することで、任意の設置姿勢で排出部150の入口150aを液相冷媒200の液面200aよりも下に位置させることができる。これにより、任意の設置姿勢とした蒸発器100Cにおいて、排出部150からの気相冷媒210の排出を抑えることができる。
[第5の実施の形態]
図14は第5の実施の形態に係る蒸発器の一例について説明する図である。図14には、蒸発器の一例の要部断面図を模式的に示している。
図14に示す蒸発器100Dは、容器110の外面110dに沿って液相冷媒200を供給する供給部160の外側に、それと熱的に接続されるように設けられた複数のフィン191を有する。蒸発器100Dは、このような点で、上記第2の実施の形態で述べた蒸発器100A(図4~図8)と相違する。
供給部160に供給される液相冷媒200は、容器110の上部から下部に向かって内側の流路161を流通される間に、内部110aとの熱交換によって温度が上昇していく。内側の流路161を流通された液相冷媒200は、折り返して容器110の下部から上部に向かって外側の流路162を流通される間に、内部110aや内側の流路161との熱交換によって更に温度が上昇していく。蒸発器100Dのように、供給部160の外側に、それと熱的に接続される複数のフィン191が設けられることで、供給部160の表面積が増加され、供給部160からの放熱効率が高められる。これにより、供給部160を流通される液相冷媒200の温度上昇が抑えられ、例えば、排出部150を通じて冷却システムの放熱器に送られる液相冷媒200の温度を低下させ、放熱器での放熱効率が高められる。また、供給部160を流通される液相冷媒200の沸騰及びそれによる気相冷媒210の発生が抑えられる。
蒸発器100Dによっても、吸熱による気相冷媒210の発生量を増やしつつ、外部への気相冷媒210の排出量を抑えることができる。これにより、蒸発器100Dの高い冷却能力を実現しつつ、安定なポンプ循環を実現することができる。
尚、この蒸発器100Dのように、供給部160の外側にそれと熱的に接続される複数のフィン191を設ける手法は、上記第3の実施の形態で述べた蒸発器100B(図10~図12)にも同様に適用することができる。また、このように複数のフィン191を設ける手法は、上記第4の実施の形態で述べた蒸発器100C(図13)の容器110の本体112に対しても同様に適用することができる。
[第6の実施の形態]
図15は第6の実施の形態に係る蒸発器の一例について説明する図である。図15には、蒸発器の一例の要部断面図を模式的に示している。
図15に示す蒸発器100Eは、内側の流路161と外側の流路162とを有しそれらの間に断熱層168が介在された供給部160Eを含む。蒸発器100Eは、このような点で、上記第2の実施の形態で述べた蒸発器100A(図4~図8)と相違する。
供給部160Eに供給される液相冷媒200は、容器110の上部から下部に向かって内側の流路161を流通される間に、内部110aとの熱交換によって温度が上昇していく。内側の流路161を流通された液相冷媒200は、折り返して容器110の下部から上部に向かって外側の流路162を流通される間に、内部110aや内側の流路161との熱交換によって更に温度が上昇していく。蒸発器100Eのように、内側の流路161と外側の流路162との間に断熱層168が介在されることで、外側の流路162と内側の流路161との熱交換、外側の流路162と内部110aとの熱交換が抑えられる。これにより、外側の流路162を流通される液相冷媒200の温度上昇が抑えられ、それによって内側の流路161を流通される液相冷媒200の温度上昇が抑えられ、このようにして温度上昇が抑えられる液相冷媒200が外側の流路162に流れ込むようになる。蒸発器100Eによれば、供給部160Eを流通される液相冷媒200の温度上昇が抑えられる。蒸発器100Eでは、例えば、排出部150を通じて冷却システムの放熱器に送られる液相冷媒200の温度を低下させ、放熱器での放熱効率が高められる。また、蒸発器100Eでは、供給部160Eを流通される液相冷媒200の沸騰及びそれによる気相冷媒210の発生が効果的に抑えられる。
蒸発器100Eによっても、吸熱による気相冷媒210の発生量を増やしつつ、外部への気相冷媒210の排出量を抑えることができる。これにより、蒸発器100Eの高い冷却能力を実現しつつ、安定なポンプ循環を実現することができる。
尚、この蒸発器100Eのように、供給部160Eの内側の流路161と外側の流路162との間に断熱層168を介在させる手法は、上記第3の実施の形態で述べた蒸発器100B(図10~図12)にも同様に適用することができる。また、このように内側の流路161と外側の流路162との間に断熱層168を介在させる手法は、上記第5の実施の形態で述べた蒸発器100D(図14)にも同様に適用することができる。
[第7の実施の形態]
図16は第7の実施の形態に係る蒸発器の一例について説明する図である。図16には、蒸発器の一例の要部断面図を模式的に示している。
図16に示す蒸発器100Fでは、容器110の外面110dに沿って液相冷媒200を供給する供給部160の入口160bが、容器110の内部110aに液相冷媒200を供給する供給部120の入口120bとは分離されて設けられる。蒸発器100Fでは更に、容器110の外面110dに沿って供給された液相冷媒200を排出する排出部170の出口170bが、容器110の内部110aの液相冷媒200を排出する排出部150の出口150bとは分離されて設けられる。蒸発器100Fは、このような点で、上記第2の実施の形態で述べた蒸発器100A(図4~図8)と相違する。
蒸発器100Fでは、例えば、供給部160の入口160bと供給部120の入口120bとに、冷却システムの放熱器に繋がるポンプから延びる2本の配管、又はポンプから延びる1本の配管から分岐された2本の配管が、それぞれ接続される。また、蒸発器100Fでは、例えば、排出部170の出口170bと排出部150の出口150bとにそれぞれ配管が接続され、その2本の配管がそれぞれ放熱器まで延びて接続され、又は放熱器の手前で1本の配管に連結されて放熱器に接続される。
容器110の外面110d及び内部110aに液相冷媒200を供給することができ、容器110の外面110d及び内部110aから液相冷媒200を排出することができれば、液相冷媒の出入口、分流点、合流点の構成は限定されない。
尚、この蒸発器100Fのように、供給部120,160の入口120b,160b、排出部150,170の出口150b,170bを設ける手法は、上記第3の実施の形態で述べた蒸発器100B(図10~図12)にも同様に適用することができる。また、このような手法は、上記第5及び第6の実施の形態で述べた蒸発器100D(図14)及び蒸発器100E(図15)にも同様に適用することができる。
[第8の実施の形態]
図17は第8の実施の形態に係る蒸発器の一例について説明する図である。図17には、蒸発器の一例の要部断面図を模式的に示している。
図17に示す蒸発器100Gでは、容器110の外面110dに沿って供給される液相冷媒200が、容器110の下部から上部に向かって内側の流路161を流通され、折り返して上部から下部に向かって外側の流路162を流通される。流路162を流通された液相冷媒200は、排出部170から排出される。蒸発器100Gは、このような点で、上記第2の実施の形態で述べた蒸発器100Aと相違する。
容器110の下部(貯留部140の液相冷媒200の下層部)には、液相冷媒200が外部の発熱体300から吸熱する吸熱部130が設けられる。そのため、貯留部140の液相冷媒200は、吸熱部130が設けられる下層部の方が、空間110c側の上層部に比べて、温度が上昇し易く、その沸騰が生じ易い。即ち、貯留部140に貯留される液相冷媒200の下層部で気相冷媒210が発生し易い。
蒸発器100Gでは、供給部160の内側の流路161に、容器110の下部から上部に向かって外面110dに沿って液相冷媒200が流通される。液相冷媒200は、このように下部から上部に向かって流通される間に、内部110aと熱交換され、温度が上昇していく。そのため、蒸発器100Gでは、気相冷媒210が発生し易い、貯留部140の液相冷媒200の下層部に近い外面110dほど、より低温の液相冷媒200が流通される。これにより、蒸発器100Gでは、吸熱部130での吸熱によって発生する気相冷媒210を素早く凝縮させ(例えば液相冷媒200中で凝縮させ)、液相冷媒200に戻すことができる。
蒸発器100Gによっても、吸熱による気相冷媒210の発生量を増やしつつ、外部への気相冷媒210の排出量を抑えることができる。これにより、蒸発器100Gの高い冷却能力を実現しつつ、安定なポンプ循環を実現することができる。
尚、この蒸発器100Gのように、容器110の下部から上部に向かって外面110dに沿って液相冷媒200を流通させる手法は、上記第3の実施の形態で述べた蒸発器100B(図10~図12)にも同様に適用することができる。また、このような手法は、上記第5及び第6の実施の形態で述べた蒸発器100D(図14)及び蒸発器100E(図15)にも同様に適用することができる。
[第9の実施の形態]
図18は第9の実施の形態に係る蒸発器の一例について説明する図である。図18には、蒸発器の一例の要部断面図を模式的に示している。
図18に示す蒸発器100Hでは、容器110の外面110dに沿って液相冷媒200を供給する供給部160の入口160bが、容器110の下部に設けられ、その液相冷媒200を排出する排出部170の出口170bが、容器110の上部に設けられる。蒸発器100Hでは、液相冷媒200が容器110の下部から供給されて上部に向かって流通され、容器110の上部から排出される。蒸発器100Hは、このような点で、上記第2の実施の形態で述べた蒸発器100Aと相違する。
容器110の下部(貯留部140の液相冷媒200の下層部)には、液相冷媒200が外部の発熱体300から吸熱する吸熱部130が設けられる。そのため、貯留部140の液相冷媒200は、吸熱部130が設けられる下層部の方が、空間110c側の上層部に比べて、温度が上昇し易く、その沸騰が生じ易い。即ち、貯留部140に貯留される液相冷媒200の下層部で気相冷媒210が発生し易い。
蒸発器100Hでは、供給部160により、容器110の下部から上部に向かって外面110dに沿って液相冷媒200が流通される。液相冷媒200は、このように下部から上部に向かって流通される間に、内部110aと熱交換され、温度が上昇していく。そのため、蒸発器100Hでは、気相冷媒210が発生し易い、貯留部140の液相冷媒200の下層部に近い外面110dほど、より低温の液相冷媒200が流通される。これにより、蒸発器100Hでは、吸熱部130での吸熱によって発生する気相冷媒210を素早く凝縮させ(例えば液相冷媒200中で凝縮させ)、液相冷媒200に戻すことができる。
更に、蒸発器100Hでは、容器110の下部から上部に向かって外面110dに沿って流通された液相冷媒200が、折り返されず、そのまま容器110の上部から排出部170を通じて排出される。そのため、容器110の下部から上部に向かって流通される間の内部110aとの熱交換で温度が上昇した液相冷媒200が、後から流通されてくる後続の液相冷媒200の温度上昇に関与することがない。容器110の下部から上部に向かって外面110dに沿って流通される液相冷媒200により、容器110の内部を冷却し、気相冷媒210を効率的に凝縮させることができる。
蒸発器100Hによっても、吸熱による気相冷媒210の発生量を増やしつつ、外部への気相冷媒210の排出量を抑えることができる。これにより、蒸発器100Hの高い冷却能力を実現しつつ、安定なポンプ循環を実現することができる。
尚、この蒸発器100Hのように、容器110の下部から上部に向かって外面110dに沿って液相冷媒200を流通させる手法は、上記第3の実施の形態で述べた蒸発器100B(図10~図12)にも同様に適用することができる。また、このような手法は、上記第5及び第6の実施の形態で述べた蒸発器100D(図14)及び蒸発器100E(図15)にも同様に適用することができる。
[第10の実施の形態]
上記第1~第9の実施の形態で述べた蒸発器10A,10B,100A,100B,100C,100D,100E,100F,100G,100H等は、冷却システムに用いることができる。
図19は第10の実施の形態に係る冷却システムの一例について説明する図である。
図19には一例として、上記第2の実施の形態で述べたような蒸発器100Aを用いた冷却システム1000を示している。図19に示す冷却システム1000は、蒸発器100A、放熱器400及びポンプ500を備える。蒸発器100Aと放熱器400とは、配管610で接続される。放熱器400とポンプ500とは、配管620で接続される。ポンプ500と蒸発器100Aとは、配管630で接続される。蒸発器100A、放熱器400及びポンプ500、並びに配管610、配管620及び配管630によって、冷却システム1000の閉回路が形成されている。このような冷却システム1000の閉回路内に、減圧状態で液相冷媒200が充填される。
蒸発器100Aは、冷却システム1000の冷却対象である電子装置等の外部の発熱体300と、直接又は間接に熱的に接続される。蒸発器100Aは、発熱体300から伝達される熱を、内部の液相冷媒200の沸騰現象を利用して吸熱し、それによって発熱体300を冷却する。放熱器400は、配管610を通じて、蒸発器100Aから排出される液相冷媒200又は気相冷媒210を含む液相冷媒200を取り込む。放熱器400は、取り込んだ液相冷媒200又は気相冷媒210を含む液相冷媒200の熱を、外気を利用して外部へ放熱し、液相冷媒200の温度低下を行い、気相冷媒210を含む場合はその凝縮と液相冷媒200の温度低下を行う。ポンプ500は、放熱器400で凝縮、低温化された液相冷媒200を、配管620を通じて取り込み、配管630を通じて蒸発器100Aへ送る。蒸発器100Aは、ポンプ500から配管630を通じて送られる液相冷媒200を用いて、発熱体300からの吸熱(発熱体300の冷却)を行う。冷却システム1000は、このように液相冷媒200の沸騰現象を利用する循環型冷却システムの一例である。
蒸発器100Aでは、上記のように、放熱器400に繋がるポンプ500から送液される比較的低温の液相冷媒200が、供給部120によって容器110の内部110aに供給され、貯留部140に貯留される。貯留部140の液相冷媒200は、吸熱部130によって発熱体300の熱を吸収する。その吸熱による液相冷媒200の沸騰によって発生する気相冷媒210を含む液相冷媒200は、ガイド180で誘導され、容器110の内面110bに向かって、更に内面110bに沿って上方に向かって、移動する。蒸発器100Aでは、供給部160によって容器110の外面110dに沿って比較的低温の液相冷媒200が流通されることで、容器110及びフィン190が冷却され、発生した気相冷媒210が蒸発器100A内で冷却されて凝縮され、貯留部140に貯留される。尚、必ずしも発生した気相冷媒210の全てが凝縮されることを要しない。貯留部140の液相冷媒200又は気相冷媒210を含む液相冷媒200は、排出部150を通じて蒸発器100Aの外部へ排出され、配管610を通じて放熱器400に送られる。そして、放熱器400による放熱によって凝縮、低温化された液相冷媒200が、配管620を通じてポンプ500に取り込まれ、ポンプ500から配管630を通じて再び蒸発器100Aの供給部120及び供給部160へと送られる。
蒸発器100Aでは、供給部160によって容器110の外面110dに沿って供給される液相冷媒200を用いた気相冷媒210の凝縮機能により、気相冷媒210の排出量が抑えられる。これにより、ポンプ500による気相冷媒210の噛み込みの発生が抑えられ、ポンプ500によって液相冷媒200が安定に循環される。更に、このように液相冷媒200が安定に循環されるため、液相冷媒200の沸騰が生じ易い条件が用いられてもよく、それにより、蒸発器100Aの冷却能力が高められる。冷却能力の高い蒸発器100Aを備え、且つ、ポンプ500によって液相冷媒200が安定に循環される冷却システム1000が実現される。
ここでは、上記第2の実施の形態で述べたような蒸発器100Aを用いた冷却システム1000を例示した。このほか、上記第1,第3~第9の実施の形態で述べたような蒸発器10A,10B,100B,100C,100D,100E,100F,100G,100H等を用いた冷却システムも同様に実現される。
[第11の実施の形態]
上記第10の実施の形態で述べたような冷却システム1000等は、電子機器に適用することができる。
図20は第11の実施の形態に係る電子機器の一例について説明する図である。
図20には一例として、上記第10の実施の形態で述べたような冷却システム1000を用いた電子機器2000を示している。図20に示す電子機器2000は、冷却システム1000と、その冷却対象の発熱体であって冷却システム1000と熱的に接続された電子装置300aとを備える。例えば、このように熱的に接続された冷却システム1000及び電子装置300aが、電子機器2000の筐体の内部に搭載(内蔵)される。或いは、熱的に接続された冷却システム1000及び電子装置300aが、電子機器2000のスロットやラック等に搭載される。
冷却システム1000に用いられる蒸発器100Aでは、供給部160によって容器110の外面110dに沿って供給される液相冷媒200を用いた気相冷媒210の凝縮機能により、気相冷媒210の排出量が抑えられる。これにより、ポンプ500による気相冷媒210の噛み込みの発生が抑えられ、ポンプ500によって液相冷媒200が安定に循環される。更に、このように液相冷媒200が安定に循環されるため、液相冷媒200の沸騰が生じ易い条件が用いられてもよく、それにより、蒸発器100Aの冷却能力が高められる。冷却能力の高い蒸発器100Aを備え、且つ、ポンプ500によって液相冷媒200が安定に循環される冷却システム1000が実現される。電子機器2000では、このような冷却システム1000が用いられることで、電子装置300aが効率的に、且つ、安定に冷却され、その過熱、それによる破損や性能劣化が抑えられる。これにより、性能及び信頼性に優れた電子機器2000が実現される。
ここでは、上記第10の実施の形態で述べたような冷却システム1000を用いた電子機器2000を例示した。このほか、上記第1,第3~第9の実施の形態で述べたような蒸発器10A,10B,100B,100C,100D,100E,100F,100G,100H等を用いた冷却システムを電子装置300aと熱的に接続した電子機器も同様に実現される。
以上説明した実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1) 容器と、
前記容器の内部に液相冷媒を供給する第1供給部と、
前記容器の表面に沿って液相冷媒を供給する第2供給部と、
前記内部に設けられ、前記第1供給部によって前記内部に供給される液相冷媒が、前記容器の外部から供給される熱を吸熱する吸熱部と、
前記内部に設けられ、前記吸熱部で吸熱した液相冷媒が貯留され、前記吸熱部で吸熱して蒸発した気相冷媒が前記第2供給部によって前記表面に沿って供給される液相冷媒を用いて冷却されて凝縮して得られる液相冷媒が、貯留される貯留部と、
前記貯留部に貯留される液相冷媒を排出する排出部と
を含むことを特徴とする蒸発器。
(付記2) 前記第1供給部の液相冷媒の出口は、前記吸熱部に達するか又は前記吸熱部の近傍に位置することを特徴とする付記1に記載の蒸発器。
(付記3) 前記排出部の液相冷媒の入口は、前記貯留部に貯留される液相冷媒の液面よりも下に位置することを特徴とする付記1又は2に記載の蒸発器。
(付記4) 前記容器の内面に設けられ、前記第2供給部によって前記表面に沿って供給される液相冷媒と熱的に接続される第1フィンを含むことを特徴とする付記1乃至3のいずれかに記載の蒸発器。
(付記5) 前記内部に設けられ、前記吸熱部で吸熱した液相冷媒、及び前記吸熱部で吸熱して蒸発されることで生成される気相冷媒を、前記容器の内面に誘導するガイドを含むことを特徴とする付記1乃至4のいずれかに記載の蒸発器。
(付記6) 前記第2供給部によって前記表面に沿って供給される液相冷媒は、前記表面の一箇所から当該一箇所の周囲に分配され、前記表面に沿って流通されることを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の蒸発器。
(付記7) 前記第2供給部は、
前記表面に沿って設けられ、液相冷媒を前記表面に沿って流通させる第1流路と、
前記第1流路から折り返して前記第1流路の外側に設けられ、前記第1流路を流通された液相冷媒を前記第1流路の外側に沿って流通させる第2流路と
を有することを特徴とする付記1乃至6のいずれかに記載の蒸発器。
(付記8) 前記第1流路と前記第2流路との間に介在される断熱層を有することを特徴とする付記7に記載の蒸発器。
(付記9) 前記容器は、
熱伝導性の底板と、
前記底板を覆う、熱伝導性の容器本体と、
前記底板と前記容器本体との間に介在され、前記底板と前記容器本体とを連結する断熱性の連結部と
を有することを特徴とする付記1乃至8のいずれかに記載の蒸発器。
(付記10) 前記容器は、前記第2供給部によって前記表面に沿って供給される液相冷媒が前記内部に導入される孔を有することを特徴とする付記1乃至6のいずれかに記載の蒸発器。
(付記11) 前記第2供給部は、前記第2供給部によって前記表面に沿って供給される液相冷媒と熱的に接続される第2フィンを有することを特徴とする付記1乃至10のいずれかに記載の蒸発器。
(付記12) 供給される液相冷媒が外部から吸熱して蒸発される蒸発器と、
前記蒸発器から排出される液相冷媒の熱を放熱する放熱器と、
前記放熱器によって放熱されて冷却された液相冷媒を前記蒸発器へ供給するポンプと
を備え、
前記蒸発器は、
容器と、
前記容器の内部に液相冷媒を供給する第1供給部と、
前記容器の表面に沿って液相冷媒を供給する第2供給部と、
前記内部に設けられ、前記第1供給部によって前記内部に供給される液相冷媒が、前記容器の外部から供給される熱を吸熱する吸熱部と、
前記内部に設けられ、前記吸熱部で吸熱した液相冷媒が貯留され、前記吸熱部で吸熱して蒸発した気相冷媒が前記第2供給部によって前記表面に沿って供給される液相冷媒を用いて冷却されて凝縮して得られる液相冷媒が、貯留される貯留部と、
前記貯留部に貯留される液相冷媒を排出する排出部と
を含むことを特徴とする冷却システム。
(付記13) 電子装置と、
前記電子装置を冷却する冷却システムと
を備え、
前記冷却システムは、
前記電子装置と接続され、供給される液相冷媒が前記電子装置から吸熱して蒸発される蒸発器と、
前記蒸発器から排出される液相冷媒の熱を外部へ放熱する放熱器と、
前記放熱器によって放熱されて冷却された液相冷媒を前記蒸発器へ供給するポンプと
を備え、
前記蒸発器は、
容器と、
前記容器の内部に液相冷媒を供給する第1供給部と、
前記容器の表面に沿って液相冷媒を供給する第2供給部と、
前記内部に設けられ、前記第1供給部によって前記内部に供給される液相冷媒が、前記容器の外部から供給される熱を吸熱する吸熱部と、
前記内部に設けられ、前記吸熱部で吸熱した液相冷媒が貯留され、前記吸熱部で吸熱して蒸発した気相冷媒が前記第2供給部によって前記表面に沿って供給される液相冷媒を用いて冷却されて凝縮して得られる液相冷媒が、貯留される貯留部と、
前記貯留部に貯留される液相冷媒を排出する排出部と
を含むことを特徴とする電子機器。