JP7167578B2 - 珪化バリウム系バルク多結晶体及びその用途 - Google Patents

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本発明は、特定の組成を有する珪化バリウムバルク多結晶体及びその用途に関するものである。
シリコンを含有するワイドギャップ半導体は非常に特異的な特性を示すため、太陽電池材料等の環境エネルギー分野で広く利用されている。中でも、バリウム(Ba)とシリコン(Si)からなる珪化バリウムは、BaSi組成でバンドギャップが1.3eVと、シリコンの1.1eVよりも大きいため、注目されている(非特許文献1)。さらにSrを添加することでバンドギャップを1.4eVまで調整する事が可能である(特許文献1、非特許文献2)。
珪化バリウムの利用形態としては、膜として用いることが有効である。例えば、特許文献2にはn型とn+型珪化バリウム膜を積層した太陽電池がその例として挙げられている。膜の作製方法として以前より知られているのは、シリコン(111)上へMBE法(分子線エピタキシー法)にて製膜する方法で、各元素を精密に製膜することが可能であるが、成膜速度が遅く、特殊な装置であることから、量産には向いていない。そこで、量産向きの膜の作製方法が求められる。
量産に向いている膜の作製方法としてスパッタリング法が挙げられる。スパッタリング法は陰極に設置したターゲットにArイオンなどの正イオンを物理的に衝突させ、その衝突エネルギーでターゲットを構成する材料を放出させて、対面に設置した基板上にターゲット材料とほぼ同組成の膜を堆積する方法であり、直流スパッタリング法(DCスパッタリング法)と高周波スパッタリング法(RFスパッタリング法)がある。この方法を用いることで、例えばMBE法では困難な大面積への高速成膜が可能となる。
また、近年ハーフメタルと呼ばれる材料が注目されている。この材料は半導体特性と導体としての特性を併せ持つ磁性体であり、MRAMに利用された際に高い特性を示す可能性がある。(特許文献2)その材料候補として、理論計算の結果のみであるが、珪化バリウムにコバルト等を添加した系が提案されている(非特許文献3)しかし、実際に合成された例や製膜された例はなく、そうした検討もなされていなかった。
特開2005-294810号公報 特開2008-156703号公報
Japanese Journal of Applied Physics Vol.49 04DP05-01-04DP05-05(2010) Japanese Journal of Applied Physics Vol.45 No.14 L390-392(2006) Journal of Magnetism and Magnetic Materials Vol.344 P25(2013)
本発明の目的は、珪化バリウム系バルク多結晶体及びその用途を提供することである。
すなわち、本発明は以下の(1)乃至(10)に存する。
(1) クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の元素からなる群の少なくとも1種の元素を含有する珪化バリウムバルク多結晶体。
(2) 元素の総含有量が2atm%以上10atm%以下である上記(1)に記載の珪化バリウムバルク多結晶体。
(3) 元素がMn,Fe,Co,Niからなる群の少なくとも1種である上記(1)又は(2)に記載の珪化バリウムバルク多結晶体。
(4) 多結晶体の重量が10g以上である上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の珪化バリウムバルク多結晶体。
(5) 元素金属の結晶相が検出されないことを特徴とする上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の珪化バリウムバルク多結晶体。
(6) 密度が3.0g/cm以上である上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の珪化バリウムバルク多結晶体。
(7) クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の元素からなる群の少なくとも1種の元素を含む珪化バリウム合金の粉末を600℃以上110℃以下でホットプレス処理するホットプレス工程を有する上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の珪化バリウムバルク多結晶体の製造方法。
(8) 上記(1)乃至(6)のいずれかに記載の珪化バリウムバルク多結晶体からなるスパッタリングターゲット。
本発明の珪化バリウムバルク多結晶体は、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の元素からなる群の少なくとも1種の元素が含有した状態で安定的に多結晶体の形状を保つことが可能であり、MRAM(不揮発性メモリ)などに代表される磁気メモリデバイス用スパッタリングターゲットに使用することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の珪化バリウムバルク多結晶体(以下、「本発明のバルク多結晶体」という。)は、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の元素からなる群の少なくとも1種の元素からなる群の少なくとも1種の元素を含有する。前記元素を含有することで当該珪化バリウムが、磁性体として利用可能となる。
本発明のバルク多結晶体は、バルク体である。ここでバルク体とは厚さが0.100mm以上の構造体である。ここで構造体における厚さとは当該構造体において最も薄い部分の長さをいう。構造体として珪化バリウムの塊状体、成形体、焼結体を例示することができる。
本発明のバルク多結晶体の、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の元素からなる群の少なくとも1種の元素の総含有量(以下、「ドープ元素含有量」という。)はは、2atm%以上10atm%以下とすることが好ましく、更に好ましくは3atm%以上8atm%以下、特に好ましくは3atm%以上6atm%以下である。この範囲とすることで珪化バリウム中に含有する元素が固溶しやすくなり割れを抑制することが可能となる。ここでドープ元素含有量は、珪素の含有量を(A)、バリウムの含有量を(B)、ドープ元素の総含有量を(C)とし、以下の式(1)により算出することができる。
含有率(atm%)=(C)/((A)+(B)+(C)) (1)
なお、ドープ元素含有量はICP-AES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)やEDS(エネルギー分散型X線分析)を用いて測定する。
本発明のバルク多結晶体の含有する元素の種類については、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)からなる群の少なくとも1種である。特にFe、Co、Niからなる群の少なくとも1種であることが好ましい。さらにコバルト(Co)が好ましい。これにより、スパッタリングターゲットとして利用した場合、作製した薄膜が常温磁性を示す可能性が高い。
本発明のバルク多結晶体中の含有酸素量は20atm%以下であることが好ましく、10atm%以下であることがさらに好ましく、5atm%以下であることがまた更に好ましく、3atm%以下であることがより好ましい。この範囲とすることにより、バルク多結晶体中の酸素が偏析する部分が少なくなり、強度が向上する。特に、元素の含有による珪化バリウム多結晶体の酸化が抑制され、珪化バリウムの結晶性の維持が可能となる。
ここで含有酸素量は、当該バルク多結晶体を熱分解させ、炭素・窒素・水素分析装置を用いて熱伝導度法により酸素量を測定することで求める。
本発明のバルク多結晶体は、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の元素からなる群の少なくとも1種の金属の結晶相が検出されないことが好ましい。これにより、割れのなく、より強度の高い珪化バリウム系バルク多結晶体を得ることができる。クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の元素からなる群の少なくとも1種の金属の熱膨張率は、珪化バリウムに対し大きいため(例えば、該金属としてさらに好ましく用いられるコバルト(Co)の熱膨張率は15W/mKであり、珪化バリウムの熱膨張率8W/mKより大きい)、該金属相が存在すると焼成後、冷却時に金属と珪化バリウムの熱膨張率の違いにより割れが生じる。そのため、バルク多結晶体中の金属ではなく、珪化バリウムに固溶する、もしくは珪化化合物である必要がある。
ここで元素金属相を有さないことは、XRD回折試験において以下のように確認することができる。すなわち、斜方晶系の結晶構造に帰属されるピークとは、Cuを線源とするXRDの2Θ=20~80°の範囲内に検出される回折ピークが、JCPDS(Joint Committee for Powder Diffraction Standards)カードの含有金属元素に帰属されるピークパターンまたはそれに類似したピークパターン(シフトしたピークパターン)に指数付けできるものであることを指す。
本発明のバルク多結晶体は、放電の安定性や表層から起きる酸化の防止の観点からその密度が3.0g/cm以上であることが好ましく、3.2g/cm以上であることが更に好ましい。この範囲とすることにより、バルク体中に開気孔が少なくなり、表面の酸化が進みにくくなる。ここで密度とはかさ密度のことであり、寸法計測による方法、アルキメデス法により計測することができる。
多結晶体の重量が10g以上である事が好ましい。スパッタリングターゲットとして利用する場合、その特徴である大面積への成膜を可能とするにはバルク多結晶体も一定の重量を持つ必要がある。また、体積が大きいほど比表面積が小さくなり、バルク多結晶体の酸化の進行を抑制することができる。
本発明のバルク多結晶体は、10-5~10Ωcmの抵抗率であることが好ましい。この範囲とすることにより、本発明のバルク多結晶体をスパッタリングターゲットとして使用した際、DCスパッタにより製膜することが可能となる。
次に、本発明のバルク多結晶体の製造方法について説明する。
本発明のバルク多結晶体の製造方法は、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の元素からなる群の少なくとも1種を含む珪化バリウム合金の粉末を600℃以上1100℃以下でホットプレス処理するホットプレス工程を有する製造方法である。
本発明の製造方法は、前記元素を含む珪化バリウム合金(以下、「ドープ元素含有合金」という。)の粉末を600℃以上1100℃以下、でホットプレス処理するホットプレス工程を有する。ホットプレス法は粉末を加圧しながら温度を与えることで焼結を進める装置であり、加熱時に一軸加圧を行なうことで焼成時の被処理物内の元素の拡散を補助するため、拡散係数が低い元素を含有する場合、又は金属など粒子径が大きい粉末を処理する場合など、焼結しにくい材料でも焼結できる焼成法である。ホットプレス法により焼成を行なうことで従来よりも密度が向上し、例えば3.0g/cm以上の高い密度を有する珪化バリウム多結晶体を得ることが可能となる。
ホットプレス工程に供する、ドープ元素含有合金の粉末は、バリウム源、珪素源、及び、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の元素からなる群の少なくとも1種の元素を含むドープ元素源、を含む原料を後述するアーク溶解により処理することで得られた珪化バリウム合金であることが好ましい。
バリウム源はバリウムの単体金属、バリウム合金の少なくともいずれかであることが好ましく、特に好ましいバリウム合金として、珪化バリウム合金をあげることができる。
珪素源はシリコンの単体金属、シリコン合金の少なくともいずれかであることが好ましく、特に好ましいシリコン合金として、珪化バリウム合金をあげることができる。
ここで、原料に珪化バリウム合金を含む場合、当該珪化バリウム合金はバリウム源、及び珪素源とすることもできる。
クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の元素からなる群の少なくとも1種の元素を含むドープ元素源(以下、「ドープ元素源」という。)は、ドープ元素の単体金属、又は合金の少なくともいずれかをあげることができ、好ましくは単体金属である。これにより、焼結時の組織が一様となり、割れなどが発生しにくい。また、原料におけるドープ元素含有量は、2atm%以上10atm%以下とすることが好ましく、更に好ましくは3atm%以上8atm%以下、特に好ましくは3atm%以上6atm%以下である。ここで、原料におけるドープ元素含有量は、前述の式(1)を用いて算出することができる。
ホットプレス工程に供するドープ元素含有合金の粉末の酸素含有量は20atm%以下であることが好ましい。この範囲とすることにより、得られるバルク多結晶体の含有酸素量がより低下する。また、当該粉末の平均粒径は100μm以上であることが好ましい。この範囲とすることにより、酸化が抑制され、安定してバルク多結晶体中の酸素量を低下させる効果が得られる。
ホットプレス処理における焼成温度は600℃以上1100℃以下であり、好ましくは、850℃以上950℃以下である。600℃より低い温度では焼結が進まず、密度が成形体密度と同程度にしか向上しない。また、1100℃よりも高い温度にて焼成を行なうと融点が近いために珪化バリウムが溶融する可能性がある。
ホットプレス処理における圧力は10MPa以上100MPa以下であることが好ましい。この範囲とすることにより、多結晶体の密度をより向上させることができ、なおかつ、一般的に用いられるカーボン製の金型でも使用に耐えうるからである。
ホットプレス処理における雰囲気は酸素を含まない雰囲気で行なう事が好ましく、真空、窒素、アルゴン雰囲気の少なくともいずれかであることが好ましい。
ホットプレス処理の焼成温度における保持時間は30分以上であることが好ましく、さらには1時間以上であることが好ましい。保持時間が短いと内部まで均一に加熱できず多結晶体として保形が難しい。
合金化工程
本発明の製造方法は、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の元素からなる群の少なくとも1種の元素を含む珪化バリウム合金の粉末を製造する際には、バリウム源、珪素源、及び、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)の元素からなる群の少なくとも1種の元素を含むドープ元素源を含む原料を合金化する合金化工程を有する方法が好ましい。合金化方法は特に限定はなく、極力酸素を含有させないような方法が好ましく、そのためには容器などに酸素を含有する機材をなるべく使用しない装置であるアーク溶解法が好ましい。アーク溶解法とは電極から放電させることで被処理物質を局所的に加熱し溶融する手法である。この方法は簡便に高温処理が可能となり、合金化工程として優れている。また、雰囲気制御もできるために、不活性ガス雰囲気中などで処理が可能であり、得られる合金の含有する酸素量をより低酸素量とすることが可能となる。例えば、バリウム源に金属バリウム、珪素源にシリコンを用いた場合、バリウムの融点が約700℃、シリコンの融点が約1400℃であることから、双方を均一に溶融するためにも、高速で昇温が可能であるアーク溶解炉は有効である。さらに、アーク溶解は高速でドープ元素も含めて溶融させる効果を有する。そのため、溶融状態で珪化バリウムのシリコン部分をドープ元素に置き換えることができ、キャリアを発生するようになる、すなわち、伝導率を向上させることが可能となる。
合金化工程において、バリウム源、珪素源、及び、ドープ元素源を混合しアーク溶解処理を行う、アーク溶解処理を一段階行う方法、又は、まずバリウム源、珪素源に対してアーク溶解処理を行い珪化バリウム合金(以下、「珪化バリウム合金」という。)を得て、次に得られた珪化バリウム合金にドープ元素源を添加、混合し、アーク溶解処理を行う、アーク溶解処理を二段階行う方法のいずれでもよく、前述のアーク溶解処理を二段階行う方法が好ましい。これにより、まず、本発明のバルク多結晶体において、ドープ元素が十分に拡散する、すなわち、珪化バリウムへの固溶が十分におきるため、より低い抵抗率や、十分な半導体特性を有するバルク多結晶体を得ることができる。また、ドープ元素を大量に添加することである程度の量拡散させることも可能だが、固溶していない添加元素が多く残るため、焼結体強度が低下するという問題を解決することもできる。次に、バリウムの融点が700℃程度と低いため、ドープ金属、特にCoのような高融点の物質を溶解させるエネルギーを与えると、その沸点が約1600℃であるバリウムが一部揮発し、所望の元素比を有する珪素化バリウム合金を得ることが困難となるが、これを解決することができる。また、ここでドープ元素の合金相とすることで熱膨張、収縮を一様とすることができる。
合金化工程においてアーク溶解法を用いる場合、材料重量当たりのアークの出力の強さが重要となる。それにより、高融点の材料を合金化できるかどうかが決まる。例えば珪化バリウムのみにおいては10A/g程度の出力で溶解が可能であるが、例えばCoのような高融点材料を溶解させるには20A/g以上の高い出力が必要となる。
ここで、前述のアーク溶解処理を二段階行う方法において、一段階目の処理で得られた珪化バリウム合金を粉砕してもよく、当該合金にドープ元素源を添加して粉砕してもよい。粉砕方法は後述の粉砕工程と同様の方法が例示できる。
また、前述のアーク溶解を二段階行う方法では、先にドープ元素源を単独で溶融させ、当該溶融物に珪化バリウム合金を加えることが好ましい。これにより、珪化バリウム合金に対し添加元素をより均一に混合することが可能となる。例えば、ドープ元素源としてCoを添加する場合においては、その融点が約1500℃と高いため、後のホットプレス工程では、珪化バリウムと反応が不十分になる可能性がある。しかしながら、より高温での処理が可能であるアーク溶解処理の段階で、ドープ元素を含む珪化バリウムの合金において、予めドープ金属を十分に拡散させておくことが好ましい。
珪素源は粉末であることが好ましく、粉末の平均粒径は10mm以下であることが好ましい、更には5mm以下であることが好ましい。平均粒径とは粉末もしくは粉砕後の破砕物の平均粒子径を示しており、その粒径は例えば粒度分布計、粒子寸法計測などで測定される粒径における平均粒径を指す。平均粒径が10mmより大きいとなると、溶解時に未溶解や未反応のシリコンの残渣が残ることで珪化バリウム合金体中に発生するシリコン粗粒によって割れが生じるため、珪化バリウムバルク多結晶体を製造する事が困難となる。また、粒径が0.1mmよりも小さいとアーク溶解法を利用する際に放電のエネルギーによりシリコン粉末が溶融する前に飛散し、安定的、かつ必要な組成比に溶解することが困難となる可能性があるため、シリコン粉末の平均粒径は0.1mm以上のものを使うことが好ましい。
また、原料であるバリウム源及び珪素源の酸素含有量は極力少ないことが好ましく、具体的には20atm%以下であることが好ましく、10atm%以下であることがより好ましい。原料中の酸素含有量を少なくすることで、多結晶体に残留する酸素が減少し、成膜した珪化バリウム膜の酸素量も減少することで純度も向上する。例えば、バリウム源としてバリウムを用いる場合、バリウムは空気に触れると速やかに酸化が進行するため、酸素量を軽減するためには、空気に触れないように溶解装置に設置する必要がある。手法の一つとして、気化しやすい有機溶媒に浸漬したまま装置に投入するという方法がある。その場合の溶媒としては、水を含みにくい非極性溶媒が好ましく、また、20℃における蒸気圧が0.4kPa以上30kPa以下、さらに1kPa以上20kPa以下であることが好ましい。この範囲とすることで、投入時に完全に揮発しにくく、かつ装置利用時に溶媒が気化する。具体的な非極性溶媒としてはn-ヘキサンやn-ヘプタンなどが好ましい。
粉砕工程
本発明の製造方法は、合金化工程で得られたドープ元素含有合金を粉砕する粉砕工程を有することが好ましい。この工程では、粉砕して粉末状とする。当該合金の酸素含有量を増加させないため、合金化工程から粉砕工程の間において、珪化バリウム合金、及びドープ元素含有合金は、不活性ガス、又は乾燥ガス雰囲気化に曝した状態であることが好ましく、粉砕も窒素、アルゴン等の不活性ガス、乾燥ガス雰囲気で行うことが好ましい。ドープ元素含有合金の粉末表面の酸化を防ぎ、酸素含有量を低く抑えることができるからである。粉砕は、乳鉢を使用する方法、ボールミルを使用する方法、ビーズミルを使用する方法を例示することができる。
本発明のバルク多結晶体は、所定の寸法に加工してもよい。加工方法は特に限定はなく、平面研削法、ロータリー研削法または円筒研削法等を用いることができる。水と反応するために加工時の水の取扱には注意を要する。
本発明のバルク多結晶体は、必要に応じて平板状または円筒状の支持体にハンダ材等の接着剤により固定(ボンディング)してスパッタリングターゲットとすることもできる。支持体の材質は、熱伝導率が高く成型物を支持できる強度があれば特に限定はなく、熱伝導率が高く強度が高いことからCu、SUSまたはTiなどの金属が好ましい。支持体の形状は平板形状の成形物には平板形状の支持体を用い、円筒形状の成形物には円筒形状の支持体を用いる。成形物と支持体を接着する接着材(ボンディング材)は、支持するために十分な接着強度があれば特に限定はなく、導電性の樹脂、スズ系ハンダ材またはインジウム系のハンダ材を使用することが出来る。導電性、熱伝導性が高く、かつ柔らかく変形しやすいことからインジウムハンダが好ましい。その理由は、ターゲット表面の熱を効率的に冷却でき、熱膨張により発生した多結晶体と支持体の間の応力を吸収し多結晶体の割れを防止することができるためである。
以下、本発明の実施例をもって説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(結晶性の確認方法)
XRD装置一般的な粉末X線回折装置(装置名:UltimaIII、リガク社製)を用いた。XRD測定の条件は以下のとおりである。
線源 : CuKα線(λ=0.15418nm)
測定モード : 2θ/θスキャン
測定間隔 : 0.01°
発散スリット: 0.5deg
散乱スリット: 0.5deg
受光スリット: 0.3mm
計測時間 : 1.0秒
測定範囲 : 2θ=20°~80°
XRDパターンの同定分析には、XRD解析ソフトウェア(商品名:JADE7、MID社製)を用いた。
(添加元素量の確認方法)
ICP-AESを用いて、元素分析を実施し、添加元素の含有率を計算した。
(酸素含有量の確認方法)
対象物を抽出炉に仕込み、ヘリウム気流中で直流電流をかけて3000℃まで昇温することで熱分解させ、酸素・窒素・水素分析装置(Leco社製)を用いて酸素量を熱伝導度法により測定した
(かさ密度の測定方法)
多結晶体の重量並びに寸法を測定することで密度を測定した。
(実施例1)
まず先にバリウム、シリコンのみの当該混合物をアーク溶解し、珪化バリウム合金を作製した。すなわち、バリウム(純度99.9%)とシリコン粉末(純度5N 平均粒径2mm)を原子量比が1:2になるように混合し、当該混合物を100g秤量した。そして、銅製の水冷鋳型に混合物を約10gずつ投入し、真空処理後、アルゴンを封入し、100Aで3分間、アーク放電することで珪化バリウム合金を作製した。次に金属コバルトをバリウム、シリコン、コバルトの原子量の合計に対し4atm%となるように秤量し珪化バリウム合金に添加した後、放電を200mAの条件にしたこと以外は先と同じ条件で3分間アーク溶解を行なった。得られたコバルト含有珪化バリウム合金を、窒素ガス雰囲気下でメノウ乳鉢を用いて粉砕した。
次に、作製したコバルト含有珪化バリウム合金粉末35gを50mmφのカーボン製の金型を用いてホットプレス処理を行なった。加熱前の真空度は0.1Paであった。200℃/hにて昇温し、最終的に900℃まで温度を増加させ、その際の加圧条件は900℃保持の際に40MPaまで上昇させ、保持時間1時間にてホットプレス処理を行った。降温は5時間で約50℃まで降温し、金型を取り出し、バルク多結晶体の回収を行なった。
その後、前記多結晶体を50mmφ×4mmtの形状に加工した。多結晶体の組成、酸素含有量、かさ密度、結晶相、半導体の伝導型及び抵抗率を表1に示す。
ボンディング材料としてインジウムハンダを用いて、Cu製のバッキングプレート上に前記多結晶体をボンディングして、珪化バリウムスパッタリングターゲットを得た。
(実施例2、3)
Coの添加量を変更した以外は実施例1と同様の方法で珪化バリウムバルク多結晶体を作製した。多結晶体の組成、酸素含有量、かさ密度、結晶相を表1に示す。
(実施例4~6)
添加物をFeに変更し添加量を変更した以外は実施例1と同様の方法で珪化バリウムバルク多結晶体を作製した。多結晶体の組成、酸素含有量、かさ密度、結晶相を表1に示す。
(比較例1)
添加元素を加えない以外は実施例1と同様の方法で珪化バリウムバルク多結晶体を作製した。多結晶体の組成、酸素含有量、かさ密度、結晶相を表1に示す。
(参考例1)
実施例1と同様の方法で作製したコバルト含有珪化バリウム粉末30gを50mmΦの金属製金型を用いて30MPaにて成型を行い、得られた珪化バリウム成型体を更に300MPaにて1分間CIP装置により加圧することによって得られたCIP成型体を、電気炉を用いて900℃1時間大気雰囲気焼成を行った以外は実施例1と同様の方法で作製した。割れのある多結晶体が得られ、多結晶体の組成、酸素含有量、結晶性のみ測定した。結果を表1に示す。
(参考例2)
バリウム、シリコンのみの当該混合物をアーク溶解し、珪化バリウム合金を作製した。すなわち、バリウム(純度99.9%)とシリコン粉末(純度5N 平均粒径2mm)を原子量比が1:2になるように混合し、当該混合物を100g秤量した。そして、銅製の水冷鋳型に混合物を約10gずつ投入し、真空処理後、アルゴンを封入し、100Aで3分間、アーク放電することで珪化バリウム合金を作製した。その後、珪化バリウム合金を窒素ガス雰囲気下でメノウ乳鉢を用いて粉砕後、コバルト(100メッシュ品)をバリウム、シリコン、コバルトの原子量の合計に対し4atm%となるように秤量した後に混合し作製したコバルト含有珪化バリウム合金粉末35gを50mmφのカーボン製の金型を用いてホットプレス処理を行なった。加熱前の真空度は0.1Paであった。200℃/hにて昇温し、最終的に900℃まで温度を増加させ、その際の加圧条件は900℃保持の際に40MPaまで上昇させ、保持時間1時間にてホットプレス処理を行った。降温は5時間で約50℃まで降温し、金型を取り出し、バルク多結晶体の回収を行なった。割れのある多結晶体が得られ、多結晶体の組成、酸素含有量、結晶性のみ測定した。結果を表1に示す。
Figure 0007167578000001

Claims (5)

  1. 鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)の元素からなる群の少なくとも1種の元素を含有し、バリウムとシリコンの原子量比が1:2であることを特徴とする珪化バリウムバルク多結晶体。
  2. 元素の総含有量が2atm%以上10atm%以下であることを特徴とする請求項1に記載の珪化バリウムバルク多結晶体。
  3. 密度が3.0g/cm以上であることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の珪化バリウムバルク多結晶体。
  4. 鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)の元素からなる群の少なくとも1種の元素を含む珪化バリウム合金の粉末を600℃以上1100℃以下でホットプレス処理するホットプレス工程を有すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の珪化バリウムバルク多結晶体の製造方法。
  5. 請求項1乃至3のいずれかに記載の珪化バリウムバルク多結晶体からなるスパッタリングターゲット。
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