JP7164367B2 - 静電荷像現像用トナーの製造方法 - Google Patents
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Description
一方で、優れた低温定着性を示しながら、優れた耐ホットオフセット性を示す静電荷像現像用トナーは得られにくく、非オフセット温度幅を広げることが求められていた。
本発明は、低温定着性に優れ、且つ、広い非オフセット温度幅を示す静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
本発明は、非晶性ポリエステル系樹脂Aを含有する樹脂粒子Xを水系媒体中で凝集させて凝集粒子を得る第1凝集工程、及び、
得られた凝集粒子を、融着させる融着工程を含み、
前記第1凝集工程において、1価のカチオン(a)、及び2価以上の金属カチオン(b)を添加し、
前記カチオン(b)の添加量が、前記カチオン(a)及び前記カチオン(b)の合計量に対して、0.5モル%以上5モル%以下である、静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
本発明の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)の製造方法は、
非晶性ポリエステル系樹脂A(以下、単に「樹脂A」ともいう)を含有する樹脂粒子X(以下、単に「樹脂粒子X」ともいう)を水系媒体中で凝集させて凝集粒子を得る第1凝集工程、及び、
得られた凝集粒子を、融着させる融着工程を含む。
そして、第1凝集工程において、1価のカチオン(a)(以下、単に「カチオン(a)」ともいう)、及び2価以上の金属カチオン(b)(以下、単に「カチオン(b)」ともいう)を添加する。
カチオン(b)の添加量は、カチオン(a)及びカチオン(b)の合計量に対して、0.5モル%以上5モル%以下である。
以上の方法により、低温定着性に優れ、且つ、広い非オフセット温度幅を示すトナーが得られる。
発明者は、低温定着性に優れ、且つ、広い非オフセット温度幅を示すトナーを得るため、ケミカルトナーの弾性を向上させる方法に着目した。その結果、ポリエステル系樹脂を高分子量化することや架橋剤を添加するような従来示された手法ではなく、凝集工程において、1価のカチオン(a)と所定量の2価以上の金属カチオン(b)を添加することで、低温定着性に優れ、且つ、広い非オフセット温度幅を示すトナーが得られることを見出した。これは、トナー中において2価以上の金属カチオン(b)とポリエステルとをイオン結合的に複合化することで弾性を向上させることで得られた効果と推測される。
金属カチオン(b)は、トナー中でポリエステル系樹脂の末端カルボキシ基と結合するが、この時に2価以上の金属カチオン(b)を用いることでポリエステル系樹脂を橋かけ結合することとなり、実質的に架橋を形成する。しかし、その結合は、共有結合とは異なり、イオン結合であるため、その結合力はやや弱い。更に凝集時にカチオンとして添加するため、水中で解離したポリエステル系樹脂のカルボキシ基とのみ結合を形成することとなるため、結合部位は限定的であり、且つ、水中での自由度の高いカルボキシ末端、すなわちポリエステル系樹脂の低分子量部位が優先的に結合を形成することとなる。
トナーの定着において、高温オフセットを引き起こすのは、高温時に低粘度になってしまった部分、すなわち低分子量成分であるため、凝集時に所定量の2価以上の金属カチオン(b)を添加することで架橋構造を導入した場合には低分子量部分を架橋し低粘度化を抑制することで高温オフセットが抑制されたと考えられる。更に、共有結合のような強固な結合ではないことから、低温定着性への影響を抑制した状態での架橋となっていると考えられる。
樹脂が結晶性であるか非晶性であるかについては、結晶性指数により判定される。結晶性指数は、後述する実施例に記載の測定方法における、樹脂の軟化点と吸熱の最大ピーク温度との比(軟化点(℃)/吸熱の最大ピーク温度(℃))で定義される。結晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6以上1.4以下のものである。非晶性樹脂とは、結晶性指数が0.6未満又は1.4超のものである。結晶性指数は、原料モノマーの種類及びその比率、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができる。
明細書中、ポリエステル樹脂のカルボン酸成分には、その化合物のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及び各カルボン酸のアルキルエステル(アルキル基の炭素数1以上3以下)も含まれる。
「体積中位粒径(D50)」とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径である。
粒径分布の変動係数(以下、単に「CV値」ともいう)は、下記式で表される値である。下記式における体積平均粒径とは、体積基準で測定された粒径に、その粒径値を持つ粒子の割合を掛け、それにより得られた値を粒子数で除して得られる粒径である。
CV値(%)=[粒径分布の標準偏差(μm)/体積平均粒径(μm)]×100
本製造方法では、第1凝集工程において、1価のカチオン(a)、及び2価以上の金属カチオン(b)を添加する。カチオン(a)は、樹脂粒子Xの凝集を制御する観点から添加する。そして、カチオン(b)は、得られるトナーの非オフセット温度幅を広げる観点から添加する。
なお、低温定着性に優れ、且つ、広い非オフセット温度幅を示すトナーを得る観点から、カチオン(b)の添加量は、モル量基準で、カチオン(a)の添加量よりも少ない。
カチオン(b)の添加量は、低温定着性をより向上させ、且つ、非オフセット温度幅をより広げる観点から、カチオン(a)及びカチオン(b)の合計量に対して、0.5モル%以上、好ましくは0.8モル%以上、より好ましくは1モル%以上であり、そして、5モル%以下、好ましくは4モル%以下、更に好ましくは3モル%以下、更に好ましくは2モル%以下である。
第1凝集工程では、例えば、樹脂粒子Xを含む混合分散液に、カチオン(a)及びカチオン(b)を添加し、樹脂粒子Xを水系媒体中で凝集させて、凝集粒子1を得る。更に、凝集を促進させる観点から、凝集剤を添加した後に分散液の温度を上げることが好ましい。
カチオン(a)及びカチオン(b)を添加する形態としては、例えば、
(i)カチオン(a)を含む塩、及びカチオン(b)を含む塩を添加する形態、
(ii)カチオン(a)及び金属カチオン(b)を含む塩を添加する形態、
(iii)カチオン(a)を含む塩、カチオン(b)を含む塩、並びに、カチオン(a)及び金属カチオン(b)を含む塩を添加する形態、
が挙げられる。
カチオン(a)としては、例えば、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオンが挙げられる。これらの中でも、アンモニウムイオンが好ましい。
カチオン(a)の原料物質としては、例えば、カチオン(a)を含む塩、その他のpH調整剤が挙げられる。
カチオン(a)を含む塩としては、例えば、凝集剤、イオン性界面活性剤が挙げられる。
凝集剤としては、例えば、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム等の無機アンモニウム塩;硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウム、塩化カリウム等の1価の無機金属塩が挙げられる。これらの中でも、無機アンモニウム塩が好ましく、硫酸アンモニウムがより好ましい。
イオン性界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシル硫酸塩、ラウリルエーテル硫酸塩、アルケニルコハク酸塩が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムが挙げられる。
その他のpH調整剤としては、例えば、塩基性物質、酸性物質が挙げられる。塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、ジエタノールアミン等の含窒素塩基性物質が挙げられる。酸性物質としては、硫酸、硝酸、塩酸が挙げられる。
これらの中でも、凝集剤が好ましい。
添加するカチオン(a)において、凝集剤のカチオン(a)の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、そして、好ましくは100モル%以下、より好ましくは99モル%以下、更に好ましくは98モル%以下である。
カチオン(a)の添加モル量は、低温定着性をより向上させ、且つ、非オフセット温度幅をより広げる観点から、樹脂100gに対して、好ましくは200mmol以上、より好ましくは300mmol以上、更に好ましくは400mmol以上であり、そして、好ましくは800mmol以下、より好ましくは700mmol以下、更に好ましくは600mmol以下である。
カチオン(a)の原料物質の水溶液の濃度は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
カチオン(a)の原料物質の水溶液のpHは、好ましくは7.0以上、より好ましくは7.5以上、更に好ましくは8.0以上であり、そして、好ましくは10.0以下、より好ましくは9.5以下、更に好ましくは9.0以下である。
カチオン(b)としては、例えば、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アルミニウムイオン、鉄(II)イオン、鉄(III)イオンが挙げられる。これらの中でも、アルミニウムイオン、鉄(III)イオンが好ましく、鉄(III)イオンがより好ましい。
カチオン(b)を含む塩としては、例えば、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、塩化鉄(III)が挙げられる。これらの中でも、硫酸アルミニウム、塩化鉄(III)、硫酸マグネシウムが好ましく、非オフセット温度幅をより広げる観点から、硫酸アルミニウム、塩化鉄(III)がより好ましく、塩化鉄(III)が更に好ましい。
カチオン(b)の添加モル量は、非オフセット温度幅をより広げる観点から、樹脂100gに対して、好ましくは1mmol以上、より好ましくは3mmol以上、更に好ましくは4mmol以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは30mmol以下、より好ましくは20mmol以下、更に好ましくは10mmol以下である。
0.2 < (B×C)/A < 1 (1)
〔式中、Bは、カチオン(b)の価数であり、Cは、カチオン(b)の添加モル数(単位:mol)であり、Aは、樹脂粒子Xの非晶性ポリエステル系樹脂A中のカルボキシ基のモル数(単位:mol)である。〕
前述の式(1)において、「B×C」は、カチオン(b)の価数と添加モル数の乗数であるため、ポリエステル系樹脂Aとイオン的な複合化が可能なモル数を示している。これをA、すなわちポリエステル系樹脂Aのカルボキシ基で除した数はカルボキシ基に対する量であるため、(B×C)/Aはカルボキシ基に対するイオン的複合化が可能な塩の割合となる。(B×C)/Aが1より小さいことで効果的にイオン結合を形成し高温オフセット改善につながると考えられる。
樹脂Aの酸価は、実施例に記載の方法により測定された値である。なお、ここで樹脂Aの酸価は、樹脂Aが中和されている場合、中和される前の酸価である。
カチオン(b)を含む塩の水溶液の濃度は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。
これらのカチオン(a)及びカチオン(b)を含む塩を用いる場合、カチオン(a)を含む塩、又は、カチオン(b)を含む塩を更に添加して、カチオン(b)の添加量、添加濃度を調整することが好ましい。
カチオン(a)及びカチオン(b)の添加順序は、好ましくはカチオン(a)を全量添加した後に、カチオン(b)を添加する。
カチオン(a)及びカチオン(b)を添加する際の混合分散液の温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上であり、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下、更に好ましくは30℃以下である。
なお、凝集を促進させる観点から、カチオン(a)及びカチオン(b)を添加した後に、分散液の温度を上げることが好ましい。その際、温度は、カチオン(a)及びカチオン(b)を添加する際の温度よりも、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上、そして、好ましくは50℃以下、より好ましくは45℃以下、更に好ましくは40℃以下昇温する。
非晶性ポリエステル系樹脂Aを含有する樹脂粒子Xを水系媒体中で、カチオン(a)及びカチオン(b)を添加して、凝集させて凝集粒子1を得る第1凝集工程(以下、「工程(1)」ともいう)、
非晶性ポリエステル系樹脂B(以下、単に「樹脂B」ともいう)を含む樹脂粒子Y(以下、単に「樹脂粒子Y」ともいう)を凝集粒子1に付着させて凝集粒子2を得る第2凝集工程(以下、「工程(2)」ともいう)、及び、
得られた凝集粒子を、融着させる融着工程(以下、「工程(3)」ともいう)を含む。
なお、第2凝集工程は、任意であり、第2凝集工程を経ることで、コアシェル構造を有するトナー粒子が得られる。この際、第1凝集工程で凝集させた樹脂がコアに含まれ、第2凝集工程で凝集させた樹脂がシェルに含まれることになる。
以下、当該実施態様を例にとり、本発明について説明する。
工程(1)では、非晶性ポリエステル系樹脂Aを含有する樹脂粒子Xを水系媒体中で、カチオン(a)及びカチオン(b)を添加して、凝集させて凝集粒子1を得る。
樹脂粒子Xは、非晶性ポリエステル系樹脂Aを含有する。
樹脂粒子Xは、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは、非晶性ポリエステル系樹脂A及び結晶性ポリエステル樹脂Cを同一又は異なる樹脂粒子中に含み、より好ましくは、非晶性ポリエステル系樹脂A及び結晶性ポリエステル樹脂Cを同一樹脂粒子中に含む。
非晶性ポリエステル系樹脂Aは、例えば、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物を含む。
非晶性ポリエステル系樹脂Aは、好ましくは、アルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物であるポリエステル樹脂セグメントと、スチレン系化合物を含む原料モノマーの付加重合物であるビニル系樹脂セグメントとを含む複合樹脂である。
芳香族ジオールは、好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であり、より好ましくは式(I):
(式中、OR1及びR2Oはオキシアルキレン基であり、R1及びR2はそれぞれ独立にエチレン基又はプロピレン基であり、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、それぞれ正の数であり、xとyの和の値は、1以上、好ましくは1.5以上であり、16以下、好ましくは8以下、より好ましくは4以下である)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、例えば、ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン〕のプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。これらの中でも、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物が好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
脂環式ジオールとしては、例えば、水素添加ビスフェノールA〔2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン〕、水素添加ビスフェノールAの炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイド付加物(平均付加モル数2以上12以下)が挙げられる。
3価以上の多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールが挙げられる。
これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
ジカルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸、及び、直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸が挙げられる。これらの中でも、イソフタル酸、テレフタル酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。
芳香族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上であり、そして、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下、更に好ましくは80モル%以下である。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、アゼライン酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸が挙げられる。炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸としては、例えば、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸が挙げられる。これらの中でも、フマル酸、セバシン酸、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基で置換されたコハク酸が好ましい。
直鎖又は分岐の脂肪族ジカルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは1モル%以上、より好ましくは3モル%以上、更に好ましくは5モル%以上であり、そして、好ましくは80モル%以下、より好ましくは50モル%以下、更に好ましくは30モル%以下である。
3価以上の多価カルボン酸を含む場合、3価以上の多価カルボン酸の量は、カルボン酸成分中、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは8モル%以上であり、そして、好ましくは30モル%以下、より好ましくは25モル%以下、更に好ましくは20モル%以下である。
これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
スチレン系化合物としては、例えば、無置換又は置換スチレンが挙げられる。スチレンに置換される置換基としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1以上5以下のアルコキシ基、スルホン酸基又はその塩が挙げられる。
スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、tert-ブチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、メトキシスチレン、スチレンスルホン酸又はその塩が挙げられる。これらの中でも、スチレンが好ましい。
付加重合樹脂セグメントの原料モノマー中、スチレン系化合物の含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは75質量%以上であり、そして、100質量%以下、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。
(メタ)アクリル酸アルキルにおけるアルキル基の炭素数は、好ましくは1以上、より好ましくは6以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは24以下、より好ましくは22以下、更に好ましくは20以下である。
(メタ)アクリル酸アルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸(イソ)プロピル、(メタ)アクリル酸(イソ又はターシャリー)ブチル、(メタ)アクリル酸(イソ)アミル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸(イソ)オクチル、(メタ)アクリル酸(イソ)デシル、(メタ)アクリル酸(イソ)ドデシル、(メタ)アクリル酸(イソ)パルミチル、(メタ)アクリル酸(イソ)ステアリル、(メタ)アクリル酸(イソ)ベヘニル等が挙げられ、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル又は(メタ)アクリル酸ステアリルが好ましく、(メタ)アクリル酸ステアリルがより好ましい。
なお、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの接頭辞が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの接頭辞が存在しない場合には、ノルマルを示す。また、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を示す。
「両反応性モノマー由来の構成単位」とは、両反応性モノマーの官能基、付加重合性基が反応した単位を意味する。
付加重合性基としては、例えば、炭素-炭素不飽和結合が挙げられる。
両反応性モノマーとしては、例えば、分子内に、水酸基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する付加重合性モノマーが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点から、水酸基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する付加重合性モノマーが好ましく、カルボキシ基を有する付加重合性モノマーがより好ましい。
カルボキシ基を有する付加重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸が挙げられる。これらの中でも、重縮合反応と付加重合反応の双方の反応性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
両反応性モノマー由来の構成単位の量は、複合樹脂Aのポリエステル樹脂セグメントのアルコール成分100モル部に対して、好ましくは1モル部以上、より好ましくは5モル部以上、更に好ましくは8モル部以上であり、そして、好ましくは30モル部以下、より好ましくは25モル部以下、更に好ましくは20モル部以下である。
また、重縮合にフマル酸等の不飽和結合を有するモノマーを使用する際には、必要に応じてアルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上0.5質量部以下のラジカル重合禁止剤を用いてもよい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、4-tert-ブチルカテコールが挙げられる。
重縮合反応の温度は、好ましくは120℃以上、より好ましくは160℃以上、更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下である。なお、重縮合は、不活性ガス雰囲気中にて行ってもよい。
工程Aの後に工程Bを行ってもよいし、工程Bの後に工程Aを行ってもよく、工程Aと工程Bを同時に行ってもよい。
工程Aにおいて、カルボン酸成分の一部を重縮合反応に供し、次いで工程Bを実施した後に、カルボン酸成分の残部を重合系に添加し、工程Aの重縮合反応及び必要に応じて両反応性モノマーとの反応を更に進める方法が好ましい。
工程Aの条件は、前述のとおりである。
ラジカル重合開始剤の使用量は、付加重合樹脂セグメントの原料モノマー100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下である。
付加重合の温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは230℃以下、より好ましくは220℃以下、更に好ましくは210℃以下である。
樹脂Aの軟化点は、非オフセット温度幅をより広げる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下、更に好ましくは125℃以下である。
樹脂Aのガラス転移温度は、非オフセット温度幅をより広げる観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下、更に好ましくは60℃以下である。
樹脂Aの軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
なお、樹脂Aを2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂Cは、アルコール成分とカルボン酸成分との重縮合物である。
アルコール成分としては、α,ω-脂肪族ジオールが好ましい。
α,ω-脂肪族ジオールの炭素数は、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは16以下、より好ましくは14以下、更に好ましくは12以下である。
α,ω-脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオールが挙げられる。これらの中でも、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオールが好ましく、1,10-デカンジオールがより好ましい。
脂肪族ジカルボン酸の炭素数は、好ましくは4以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは12以下である。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸が挙げられる。これらの中でも、セバシン酸、ドデカン二酸が好ましく、セバシン酸がより好ましい。これらのカルボン酸成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
樹脂Cの軟化点は、非オフセット温度幅をより広げる観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上、更に好ましくは80℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
樹脂粒子Xの分散液は、樹脂Aを水系媒体中に分散させることで得られる。なお、樹脂Cを同時に分散して、樹脂A及び樹脂Cを含有する樹脂粒子Xとしてもよいし、樹脂Aを含有する樹脂粒子Xa及び樹脂Cを含有する樹脂粒子Xbを使用してもよい。
水系媒体としては、水を主成分とするものが好ましく、樹脂粒子の分散液の分散安定性を向上させる観点、及び環境性の観点から、水系媒体中の水の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、更に好ましくは98質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、更に好ましくは100質量%である。水としては、脱イオン水又は蒸留水が好ましい。水系媒体に含まれうる水以外の成分としては、例えば、炭素数1以上5以下のアルキルアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の炭素数3以上5以下のジアルキルケトン;テトラヒドロフラン等の環状エーテル等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒溶液には、中和剤を添加することが好ましい。中和剤としては、例えば、塩基性物質が挙げられる。塩基性物質としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アンモニア、トリメチルアミン、ジエタノールアミン等の含窒素塩基性物質が挙げられる。
樹脂粒子Xに含まれる樹脂の酸基に対する中和剤の使用当量(モル%)は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは30モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下である。
なお、中和剤の使用当量(モル%)は、下記式によって求めることができる。中和剤の使用当量は、100モル%以下の場合、中和度と同義である。
中和剤の使用当量(モル%)=〔{中和剤の添加質量(g)/中和剤の当量}/[{樹脂粒子Xを構成する樹脂の加重平均酸価(mgKOH/g)×樹脂粒子Xを構成する樹脂の質量(g)}/(56×1000)]〕×100
水系媒体を添加する際の有機溶媒溶液温度は、樹脂粒子Xの分散安定性を向上させる観点から、好ましくは樹脂粒子Xを構成する樹脂のガラス転移温度以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上であり、そして、好ましくは85℃以下、より好ましくは80℃以下である。
複合樹脂A及び結晶性ポリエステル樹脂Cの含有量は、前述のとおりである。
分散液中の樹脂粒子XのCV値は、高画質の画像が得られるトナーを得る観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、更に好ましくは30%以下である。
樹脂粒子の体積中位粒径(D50),CV値は、後述の実施例に記載の方法で求められる。
樹脂粒子Xa、樹脂粒子Xbの添加量は、前述の樹脂A及び樹脂Cの含有量となる量が好ましい。
工程(1)では、樹脂粒子Xと共に、離型剤を含む離型剤粒子を凝集させてもよい。
離型剤としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス;マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス又はそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス又はそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を用いてもよい。
離型剤の含有量は、トナー中、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
離型剤は、離型剤粒子の分散液として、樹脂粒子Xと混合し、凝集させることで、凝集粒子1に含有させることが好ましい。
離型剤粒子の分散液は、界面活性剤を用いて得ることも可能であるが、離型剤と後述する樹脂粒子Zとを混合して得ることが好ましい。離型剤と樹脂粒子Zを用いて離型剤粒子を調製することで、樹脂粒子Zにより離型剤粒子が安定化され、界面活性剤を使用しなくても離型剤を水系媒体中に分散させることが可能となる。離型剤粒子の分散液中では、離型剤粒子の表面に樹脂粒子Zが多数付着した構造を有していると考えられる。
樹脂粒子Zの体積中位粒径(D50)は、離型剤粒子の分散安定性の観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上であり、そして、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。
樹脂粒子ZのCV値は、離型剤粒子の分散安定性の観点から、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、更に好ましくは30%以下である。
分散時の加熱温度は、好ましくは離型剤の融点以上且つ80℃以上、より好ましくは85℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、そして、好ましくは、樹脂粒子Zに含まれる樹脂の軟化点より10℃高い温度未満且つ100℃以下、より好ましくは98℃以下、更に好ましくは95℃以下である。
離型剤粒子のCV値は、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上であり、そして、好ましくは40%以下、より好ましくは35%以下、更に好ましくは30%以下である。
離型剤粒子の体積中位粒径(D50)及びCV値の測定方法は、実施例に記載の方法による。
工程(1)では、樹脂粒子Xと共に、着色剤を含む着色剤粒子を凝集させてもよい。
着色剤としては、トナー用着色剤として用いられている染料、顔料等のすべてを使用することができる。
着色剤としては、例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントブラウンFG、ブリリアントファーストスカーレット、ピグメントグリーンB、ローダミン-Bベース、ソルベントレッド49、ソルベントレッド146、ソルベントブルー35、キナクリドン、カーミン6B、ジスアゾエローが挙げられる。トナーは、黒トナー、黒以外のカラートナーのいずれであってもよい。
着色剤は、着色剤粒子の分散液として、樹脂粒子Xと混合し、凝集させることで、凝集粒子1に含有させることが好ましい。
着色剤粒子の分散液は、着色剤と水系媒体とを、ホモジナイザー、超音波分散機等の分散機を用いて分散して得ることが好ましい。当該分散は、着色剤の分散安定性を向上させる観点から、界面活性剤の存在下で行うことが好ましい。当該界面活性剤としては、例えば、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤が挙げられ、着色剤粒子の分散安定性を向上させる観点から、好ましくはアニオン性界面活性剤である。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシル硫酸塩、ラウリルエーテル硫酸塩、アルケニルコハク酸塩が挙げられる。これらの中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。
着色剤粒子の体積中位粒径(D50)の測定方法は実施例に記載の方法による。
工程(1)では、混合分散液を調製した後に樹脂粒子Xを凝集させることが好ましい。
混合分散液を調製する際、樹脂粒子X及び必要に応じて添加される離型剤粒子等の任意成分の分散安定性を向上させる観点から、界面活性剤の存在下で行ってもよい。界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル類等の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤を使用する場合、その使用量は、樹脂粒子X 100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、そして、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。
前述の樹脂粒子Xの分散液、及び任意成分の混合は、常法により行われる。
カチオン(a)及びカチオン(b)の添加条件は前述のとおりである。
工程(2)では、非晶性ポリエステル系樹脂Bを含有する樹脂粒子Yを凝集粒子1に付着させて凝集粒子2を得る。
〔樹脂粒子Y〕
樹脂粒子Yの分散液は、前述の樹脂粒子Xの分散液の製造方法と同様の方法で得られる。
工程(2)では、例えば、30℃以上80℃以下の凝集粒子1を含む分散液に樹脂粒子Yの分散液を添加することで凝集粒子1に、樹脂粒子Yを水系媒体中で付着させて、凝集粒子2を得る。
樹脂Bとしては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエステル樹脂セグメントと付加重合樹脂セグメントとを含む複合樹脂が挙げられる。これらの中でも、好ましくはアルコール成分及びカルボン酸成分の重縮合物であるポリエステル樹脂である。
以下、共通する例示については省略し、樹脂Bとして好ましい態様について説明する。
アルコール成分は、好ましくは芳香族ジオールであり、より好ましくはビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物であり、更に好ましくは式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物である。ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物としては、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物が好ましい。
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、更に好ましくは95モル%以上であり、そして、100モル%以下であり、更に好ましくは100モル%である。
樹脂Bの軟化点は、好ましくは70℃以上、より好ましくは90℃以上、更に好ましくは100℃以上であり、そして、低温定着性をより向上させる観点から、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは125℃以下である。
樹脂Bの軟化点、ガラス転移温度、及び酸価は、原料モノマーの種類及びその使用量、並びに反応温度、反応時間、冷却速度等の製造条件により適宜調整することができ、また、それらの値は、実施例に記載の方法により求められる。
なお、樹脂Bを2種以上組み合わせて使用する場合は、それらの混合物として得られた軟化点、ガラス転移温度及び酸価の値がそれぞれ前述の範囲内であることが好ましい。
樹脂Bと、樹脂A及び樹脂Cの合計量との質量比〔樹脂B/樹脂A及び樹脂Cの合計量〕は、好ましくは5/95以上、より好ましくは10/90以上、更に好ましくは15/85以上であり、そして、好ましくは30/70以下、より好ましくは25/75以下、更に好ましくは20/80以下である。
凝集を停止させる方法としては、例えば、分散液を冷却する方法、凝集停止剤を添加する方法、分散液を希釈する方法、pHを変化させる方法が挙げられる。不必要な凝集を確実に防止する観点からは、凝集停止剤を添加して凝集を停止させる方法が好ましい。
凝集停止剤としては、界面活性剤が好ましく、アニオン性界面活性剤がより好ましい。アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。これらの凝集停止剤は、1種又は2種以上を用いてもよい。凝集停止剤は、水溶液で添加してもよい。
凝集停止剤の添加量は、不必要な凝集を確実に防止する観点から、樹脂A、樹脂C及び樹脂Bの合計量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、そして、トナーへの残留を低減する観点から、好ましくは30質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。
工程(3)では、凝集粒子2を、融着させる。なお、融着は、通常、水系媒体中で行なう。
融着温度は、好ましくは樹脂Aのガラス転移温度以上であり、より好ましくは樹脂Aのガラス転移温度より5℃高い温度以上、更に好ましくは樹脂Aのガラス転移温度より10℃高い温度以上、更に好ましくは樹脂Aのガラス転移温度より20℃高い温度以上であり、そして、好ましくは樹脂Aのガラス転移温度より50℃高い温度以下、より好ましくは樹脂Aのガラス転移温度より40℃高い温度以下、更に好ましくは樹脂Aのガラス転移温度より30℃高い温度以下である。
融着は、後述の融着粒子の円形度をモニターし、適度な範囲となった時点で終了することが好ましい。
〔酸性物質〕
酸性物質としては、例えば、無機酸、有機酸が挙げられる。
無機酸としては、例えば、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸が挙げられる。
有機酸としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸等のカルボン酸化合物、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のスルホン酸化合物、アスコルビン酸、フェノール、クレゾールが挙げられる。これらの中でもカルボン酸化合物が好ましい。
カルボン酸化合物としては、例えば、酢酸、乳酸、酒石酸、プロピオン酸、安息香酸、シュウ酸、テレフタル酸、フマル酸、コハク酸、アクリル酸、アジピン酸が挙げられる。
これらの中でも、無機酸が好ましく、硫酸がより好ましい。
酸性物質の水溶液として添加する場合、酸性物質の濃度は、酸性物質の水溶液中、好ましくは0.01mol/L以上、より好ましくは0.03mol/L以上、更に好ましくは0.05mol/L以上であり、そして、好ましくは1mol/L以下、より好ましくは0.8mol/L以下、更に好ましくは0.5mol/L以下である。
融着粒子の円形度は、好ましくは0.945以上、より好ましくは0.950以上、更に好ましくは0.955以上であり、そして、好ましくは0.990以下、より好ましくは0.980以下、更に好ましくは0.975以下である。
融着粒子の円形度は、実施例に記載の方法による。
工程(3)の後に後処理工程を行ってもよく、融着粒子を単離することによってトナー粒子が得られる。工程(3)で得られた融着粒子は、水系媒体中に存在するため、まず、固液分離を行うことが好ましい。固液分離には、例えば、吸引濾過法、加圧濾過法、遠心濾過法が挙げられ、吸引濾過法が好ましく用いられる。
固液分離後に洗浄を行うことが好ましい。このとき、添加した界面活性剤も除去することが好ましいため、界面活性剤の曇点以下で水系媒体により洗浄することが好ましい。洗浄は複数回行うことが好ましい。
次に乾燥を行うことが好ましい。乾燥方法としては、例えば、真空低温乾燥法、振動型流動乾燥法、スプレードライ法、冷凍乾燥法、気流乾燥法が挙げられる。
トナー粒子は、トナーとしてそのまま用いることもできるが、後述のようにトナー粒子の表面を処理したものをトナーとして用いることが好ましい。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、高画質の画像を得る観点、トナーのクリーニング性をより向上させる観点から、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上、更に好ましくは4μm以上であり、そして、好ましくは10μm以下、より好ましくは8μm以下、更に好ましくは6μm以下である。
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、実施例に記載の方法により測定できる。
トナー粒子をトナーとしてそのまま用いることもできるが、流動化剤等を外添剤としてトナー粒子表面に添加処理したものをトナーとして使用することが好ましい。
外添剤としては、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化セリウム、カーボンブラック等の無機材料微粒子、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子が挙げられる。これらの中でも、疎水性シリカが好ましい。
外添剤を用いてトナー粒子の表面処理を行う場合、外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、そして、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4.5質量部以下、更に好ましくは4質量部以下である。
〔樹脂の酸価〕
樹脂の酸価は、JIS K0070:1992に従って測定した。但し、測定溶媒をアセトンとトルエンの混合溶媒〔アセトン:トルエン=1:1(容量比)〕とした。
(1)軟化点
フローテスター「CFT-500D」(株式会社島津製作所製)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/minで加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とした。
(2)結晶性指数
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01gをアルミパンに計量し、降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで試料をそのまま1分間静止させ、その後、昇温速度10℃/minで180℃まで昇温し熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピークの温度を吸熱の最大ピーク温度(1)として、(軟化点(℃))/(吸熱の最大ピーク温度(1)(℃))により、結晶性指数を求めた。
(3)融点及びガラス転移温度
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。その後、昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定した。観測される吸熱ピークのうち、ピーク面積が最大のピーク温度を吸熱の最大ピーク温度(2)とした。結晶性樹脂の時には該ピーク温度を融点とした。非晶性樹脂の時には、吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線と、該ピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移温度とした。
示差走査熱量計「Q-100」(ティー エイ インスツルメント ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温した後、200℃から降温速度10℃/minで0℃まで冷却した。次いで、試料を昇温速度10℃/minで昇温し、熱量を測定し、吸熱の最大ピーク温度を融点とした。
(1)測定装置:レーザー回折型粒径測定機「LA-920」(堀場製作所株式会社製)
(2)測定条件:測定用セルに試料分散液をとり、蒸留水を加え、吸光度を適正範囲になる温度で体積中位粒径(D50)及び体積平均粒径を測定した。また、CV値は次の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
赤外線水分計「FD-230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、測定試料5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分、変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、分散液の水分(質量%)を測定した。固形分濃度は次の式に従って算出した。
固形分濃度(質量%)=100-水分(質量%)
凝集粒子の体積中位粒径(D50)は次のとおり測定した。
・測定機:「コールターマルチサイザー(登録商標)III」(ベックマンコールター株式会社製)
・アパチャー径:50μm
・解析ソフト:「マルチサイザー(登録商標)IIIバージョン3.51」(ベックマンコールター株式会社製)
・電解液:「アイソトン(登録商標)II」(ベックマンコールター株式会社製)
・測定条件:試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、改めて3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)を求めた。
次の条件でトナー粒子(融着粒子)の円形度を測定した。
・測定装置:フロー式粒子像分析装置「FPIA-3000」(シスメックス株式会社製)
・分散液の調製:トナー粒子の分散液を固形分濃度が0.001~0.05質量%になるように脱イオン水で希釈して調製した。
・測定モード:HPF測定モード
トナー粒子の体積中位粒径(D50)は、次のとおり測定した。
測定装置、アパチャー径、解析ソフト、電解液は、前述の凝集粒子の体積中位粒径(D50)の測定で用いたものと同様のものを用いた。
・分散液:ポリオキシエチレンラウリルエーテル「エマルゲン(登録商標)109P」(花王株式会社製、HLB(Hydrophile-Lipophile Balance)=13.6)を前記電解液に溶解させ、濃度5質量%の分散液を得た。
・分散条件:前記分散液5mLに乾燥後のトナー粒子の測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mLを添加し、更に、超音波分散機にて1分間分散させて、試料分散液を調製した。
・測定条件:前記試料分散液を前記電解液100mLに加えることにより、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度に調整した後、3万個の粒子を測定し、その粒径分布から体積中位粒径(D50)及び体積平均粒径を求めた。
また、CV値(%)は次の式に従って算出した。
CV値(%)=(粒径分布の標準偏差/体積平均粒径)×100
〔トナーの低温定着性〕
上質紙「J紙A4サイズ」(富士ゼロックス株式会社製)に市販のプリンタ「Microline(登録商標)5400」(株式会社沖データ製)を用いて、トナーの紙上の付着量が1.49~1.51mg/cm2となるベタ画像をA4紙の上端から5mmの余白部分を残し、50mmの長さで定着させずに出力した。次に、定着器を温度可変に改造した同プリンタを用意し、定着器の温度を100℃にし、A4縦方向に1枚あたり1.3秒の速度でトナーを定着させ、印刷物を得た。
同様の方法で定着器の温度を5℃ずつ上げて、トナーを定着させ、印刷物を得た。
印刷物の画像上の上端の余白部分からベタ画像にかけて、メンディングテープ「Scotch(登録商標)メンディングテープ810」(住友スリーエム株式会社製、幅18mm)を長さ50mmに切ったものを軽く貼り付けた後、500gのおもり(接触面積1963mm2)を載せ、速さ10mm/sで1往復押し当てた。その後、貼付したテープを下端側から剥離角度180°、速さ10mm/sで剥がし、テープ剥離後の印刷物を得た。テープ貼付前及び剥離後の印刷物の下に上質紙「エクセレントホワイト紙A4サイズ」(株式会社沖データ製)を30枚敷き、各印刷物のテープ貼付前及び剥離後の定着画像部分の反射画像濃度を、測色計「SpectroEye」(GretagMacbeth社製、光射条件;標準光源D50、観察視野2°、濃度基準DINNB、絶対白基準)を用いて測定し、各反射画像濃度から次の式に従って定着率を算出した。
定着率(%)=(テープ剥離後の反射画像濃度/テープ貼付前の反射画像濃度)×100
定着率が90%以上となる最低の温度を最低定着温度とした。本試験における最低定着温度が低いほど低温定着性に優れることを表す。
低温定着性の評価と同様の方法で定着器の温度を5℃ずつ200℃まで上げて、トナーを定着させ、印刷物を得た。印刷物の画像を目視により確認し、高温オフセットが発生した温度を確認し、その温度より5℃低い温度を非オフセットの最高温度とした。次式に従って、トナーの非オフセット温度幅を算出した。
非オフセット温度幅(℃)=(非オフセット最高温度)-(最低定着温度)
製造例A1(非晶性樹脂A-1の製造)
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2.2)付加物4200g、テレフタル酸1355g、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)31g、及び没食子酸(3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸)3gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で5時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、160℃まで冷却し、160℃に保持した状態で、スチレン1819g、メタクリル酸ステアリル455g、アクリル酸138g、及びジブチルパーオキサイド227gの混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、190℃まで冷却し、フマル酸223g、トリメリット酸無水物230g、及び4-tert-ブチルカテコール2.5gを加え、210℃まで10℃/hrで昇温し、その後、4kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂A-1を得た。樹脂の各種物性を測定し、表1に示した。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(2.2)付加物5363g、テレフタル酸1780g、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)40g、及び没食子酸4gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で8時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、180℃まで冷却し、フマル酸287g、ドデセニルコハク酸無水物221g、トリメリット酸無水物380g、及び4-tert-ブチルカテコール2.5gを加え、220℃まで10℃/hrで昇温し、その後、フラスコ内の圧力を下げ、10kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂B-1を得た。樹脂の各種物性を測定し、表1に示した。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(2.2)付加物4313g、テレフタル酸818g、コハク酸727g、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)30g、及び没食子酸3gを入れ、窒素雰囲気下、撹拌しながら、235℃に昇温し、235℃で5時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて1時間保持した。その後、大気圧に戻した後、160℃まで冷却し、160℃に保持した状態で、スチレン2755g、メタクリル酸ステアリル689g、アクリル酸142g、及びジブチルパーオキサイド413gの混合物を1時間かけて滴下した。その後、30分間160℃に保持した後、200℃まで昇温し、更にフラスコ内の圧力を下げ、8kPaにて所望の軟化点まで反応を行って、非晶性樹脂D-1を得た。樹脂の各種物性を測定し、表1に示した。
窒素導入管、脱水管、撹拌機、及び熱電対を装備した内容積10Lの四つ口フラスコの内部を窒素置換し、1,10-デカンジオール3416g及びセバシン酸4084gを入れた。撹拌しながら、135℃に昇温し、135℃で3時間保持した後、135℃から200℃まで10時間かけて昇温した。その後、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)23gを加え、更に200℃にて1時間保持した後、フラスコ内の圧力を下げ、8.3kPaにて1時間保持し、結晶性ポリエステル樹脂C-1を得た。樹脂の各種物性を測定し、表2に示した。
製造例X1(樹脂粒子分散液X-1の製造)
撹拌器「スリーワンモーターBL300」(新東科学株式会社製)、還流冷却器、滴下ロート、温度計及び窒素導入管を備えた内容積3Lの容器に、非晶性樹脂A-1を210g、結晶性ポリエステル樹脂C-1を90g、及びメチルエチルケトン300gを入れ、73℃にて2時間かけて樹脂を溶解させた。得られた溶液に、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を、樹脂の酸価に対して中和度60モル%になるように添加し60分撹拌した。
次いで、73℃に保持したまま、200r/min(周速度63m/min)で撹拌しながら、脱イオン水600gを60分かけて添加し、転相乳化した。継続して73℃に保持したまま、メチルエチルケトンを減圧下で留去し水系分散液を得た。その後、撹拌を行いながら水系分散液を30℃に冷却した後、固形分濃度が30質量%になるように脱イオン水を加えて調整したのち、150メッシュ金網でろ過し、樹脂粒子分散液X-1を得た。得られた樹脂粒子の体積中位粒径(D50)及びCV値を表3に示す。
使用する非晶性樹脂と結晶性ポリエステル樹脂を表3の組み合わせとした以外は製造例X1と同様にして樹脂粒子分散液Y-1,Z-1を得た。得られた樹脂粒子の体積中位粒径(D50)及びCV値を表3に示す。
製造例W1(離型剤粒子分散液W-1の製造)
内容積1Lのビーカーに、脱イオン水120g、樹脂粒子分散液Z-1 53g、パラフィンワックス「HNP-9」(日本精蝋株式会社製、融点75℃)40gを添加し、90~95℃に温度を保持して溶融させて撹拌し、溶融混合物を得た。90~95℃に温度を保持しながら、超音波ホモジナイザー「US-600T」(株式会社日本精機製作所製)を用いて20分間分散処理を行った後に、室温まで冷却した。得られた分散物に脱イオン水を加え、固形分濃度を20質量%に調整し、離型剤粒子分散液W-1を得た。体積中位粒径(D50)は0.45μm、CV値は26%であった。
製造例P1(着色剤粒子分散液P-1の製造)
内容積1Lのビーカーに、銅フタロシアニン顔料「ECB-301」(大日精化工業株式会社製)136.0g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックス(登録商標)G-15」(花王株式会社製、15質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液)181.3g及び脱イオン水340gを混合し、ホモジナイザーを用いて室温で3時間分散させた後、固形分濃度が24質量%になるように脱イオン水を加えることにより着色剤粒子分散液P-1を得た。分散液中の着色剤粒子の体積中位粒径(D50)は0.12μmであった。
実施例1(トナー1の作製)
脱水管、撹拌装置及び熱電対を装備した内容積2Lの4つ口フラスコに、樹脂粒子分散液X-1を300g、離型剤粒子分散液W-1を50.6g、着色剤粒子分散液P-1を33.8g、非イオン性界面活性剤「エマルゲン(登録商標)150」(花王株式会社製、ポリオキシエチレン(平均付加モル数50)ラウリルエーテル)の10質量%水溶液9g、アニオン性界面活性剤「ネオペレックスG-15」(花王株式会社製、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、有効濃度15質量%)を6g(系中の樹脂100gに対して、ナトリウムイオンとして3mmol)、脱イオン水150.0gを温度25℃で混合した。次に、該混合物を撹拌しながら、硫酸アンモニウム31.0g(系中の樹脂100gに対して、アンモニウムイオンとして420mmol)を脱イオン水449gに溶解した水溶液に4.8質量%水酸化カリウム水溶液22.4g(系中の樹脂100gに対して、カリウムイオンとして17mmol)を添加してpH8.4に調整した溶液を、25℃で15分かけて滴下した。次に、10質量%硫酸アルミニウム水溶液10.8g(系中の樹脂100gに対して、アルミニウムイオンとして5.7mmol)を、25℃で3分かけて滴下した。その後、62℃まで2時間かけて昇温し、凝集粒子の体積中位粒径(D50)が5.1μmになるまで、62℃で保持し、凝集粒子分散液を得た。
凝集粒子分散液を55℃に冷却し、55℃で保持しながら、樹脂粒子分散液Y-1 60.0gと脱イオン水18.3gの混合液を120分かけて添加し、凝集粒子に樹脂粒子が凝集した凝集粒子分散液を得た。
前記凝集粒子分散液に、アニオン性界面活性剤「エマール(登録商標)E-27C」(花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、有効濃度27質量%)17.4g、脱イオン水590.1g、を混合した水溶液を添加した。その後、75℃まで1時間かけて昇温した。75℃に到達後、0.1mol/L硫酸水溶液98.0gを添加した。75℃を保持しながら円形度を測定し、円形度が0.965~0.975の範囲に到達するまで75℃を保持することによって、凝集粒子が融着した融着粒子の分散液を得た。
得られた融着粒子の分散液を30℃に冷却し、吸引濾過して固形分を分離した後、25℃の脱イオン水で洗浄した後、35℃で48時間真空乾燥を行って、トナー粒子を得た。該トナー粒子100質量部、疎水性シリカ「RY50」(日本アエロジル株式会社製、個数平均粒径;0.04μm)2.5質量部、及び疎水性シリカ「キャボシル(登録商標)TS720」(キャボットジャパン株式会社製、個数平均粒径;0.012μm)1.0質量部をヘンシェルミキサーに入れて撹拌し、150メッシュの篩を通過させてトナー1を得た。得られたトナーの評価を行い、その結果を表4に示した。
実施例1において、10質量%硫酸アルミニウム水溶液10.8gを、10質量%塩化鉄(III)水溶液10.8g(系中の樹脂100gに対して、鉄(III)イオンとして6.0mmol)へ変更した以外は同様にしてトナー2を得た。得られたトナーの評価を行い、その結果を表4に示した。
実施例1において、10質量%硫酸アルミニウム水溶液10.8gを、10質量%硫酸マグネシウム水溶液10.8g(系中の樹脂100gに対して、マグネシウムイオンとして8.1mmol)へ変更した以外は同様にしてトナー3を得た。得られたトナーの評価を行い、その結果を表4に示した。
実施例1において、10質量%硫酸アルミニウム水溶液10.8gを、6.5g(系中の樹脂100gに対して、アルミニウムイオンとして3.4mmol)へ変更した以外は同様にしてトナー4を得た。得られたトナーの評価を行い、その結果を表4に示した。
実施例1において、10質量%硫酸アルミニウム水溶液10.8gを、19.4g(系中の樹脂100gに対して、アルミニウムイオンとして10.2mmol)へ変更した以外は同様にしてトナー5を得た。得られたトナーの評価を行い、その結果を表4に示した。
実施例1において、10質量%硫酸アルミニウム水溶液10.8gを、27.0g(系中の樹脂100gに対して、アルミニウムイオンとして14.2mmol)へ変更した以外は同様にしてトナー6を得た。得られたトナーの評価を行い、その結果を表4に示した。
実施例1において、10質量%硫酸アルミニウム水溶液10.8gを、10質量%硫酸アンモニウム水溶液10.8g(系中の樹脂100gに対して、アンモニウムイオンとして14.7mmol)へ変更した以外は同様にしてトナー81を得た。得られたトナーの評価を行い、その結果を表4に示した。
実施例1において、10質量%硫酸アルミニウム水溶液10.8gを、10質量%塩化カリウム水溶液16.2gへ(系中の樹脂100gに対して、カリウムイオンとして19.5mmol)変更した以外は同様にしてトナー82を得た。得られたトナーの評価を行い、その結果を表4に示した。
実施例1において、10質量%硫酸アルミニウム水溶液10.8gを添加しなかったこと以外は同様にしてトナー83を得た。得られたトナーの評価を行い、その結果を表4に示した。
実施例1において、10質量%硫酸アルミニウム水溶液10.8gを、2.2g(系中の樹脂100gに対して、アルミニウムイオンとして1.2mmol)へ変更した以外は同様にしてトナー84を得た。得られたトナーの評価を行い、その結果を表4に示した。
Claims (5)
- 非晶性ポリエステル系樹脂Aを含有する樹脂粒子Xを水系媒体中で凝集させて凝集粒子を得る第1凝集工程、及び、
得られた凝集粒子を、融着させる融着工程を含み、
前記第1凝集工程において、1価のカチオン(a)、及び2価以上の金属カチオン(b)を添加し、
前記カチオン(b)の添加量が、前記カチオン(a)及び前記カチオン(b)の合計量に対して、0.5モル%以上5モル%以下であり、
前記カチオン(b)の価数Bと、前記カチオン(b)の添加モル数Cと、系内の全ポリエステル系樹脂中のカルボキシ基のモル数Aとが、下記式(1)の関係を有する、
0.2 < (B×C)/A < 1 (1)
静電荷像現像用トナーの製造方法。 - 前記第1凝集工程後、前記樹脂粒子Xを水系媒体中で凝集させた後に、更に、非晶性ポリエステル系樹脂Bを含む樹脂粒子Yを凝集粒子に付着させて凝集粒子を得る第2凝集工程を更に有する、請求項1に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 前記第1凝集工程において、カチオン(a)を含む塩、及びカチオン(b)を含む塩を添加する、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 前記カチオン(a)を含む塩が、硫酸アンモニウム塩である、請求項3に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
- 前記カチオン(b)を含む塩が、硫酸アルミニウム、塩化鉄(III)、及び硫酸マグネシウムから選ばれる少なくとも1種である、請求項3又は4に記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
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