JP7156455B2 - プロピレン及び直鎖ブテンの製造方法 - Google Patents

プロピレン及び直鎖ブテンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、メタノール及びジメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種の原料を触媒と接触させてプロピレン及び直鎖ブテンを製造する方法に関するものである。
従来、プロピレンや、ブタジエン製造原料として有用な直鎖ブテン(1‐ブテン、trans‐2‐ブテン、cis‐2‐ブテン)等のオレフィン類を製造する方法としては、ナフサのスチームクラッキング法や減圧軽油の流動接触分解法が挙げられ、主にナフサのスチームクラッキング法が実施されている。しかし、スチームクラッキング法では、エチレンが大量に生産される上、目的とするプロピレンや直鎖ブテン等のオレフィン類の製造割合を大きく変えることが難しい。そのため各オレフィンの需給バランスの変化に対応するのは困難であった。またスチームクラッキング法で得られるブテン類中には、イソブテンを多量に含むため、直鎖ブテンを得る際には、分離・精製の負荷が大きくなるという問題があった。また、近年ではメタノールおよび/またはジメチルエーテルを原料としたMTO(メタノール to オレフィン)プロセスが知られている。
メタノールやジメチルエーテルを原料として、低級オレフィンを製造する方法としては、以下の方法が提案されている。
例えば特許文献1では、10員環細孔のMFI型アルミノケイ酸塩を触媒に用いて、低級オレフィンを製造する方法を開示している。
また、特許文献2では、8員環細孔のCHA型シリコアルミノリン酸塩(SAPO-34)を活性成分とする触媒を用いて、エチレン及びプロピレンを主成分とする低級オレフィンを高収率で製造する方法を開示している。
特許文献3では、12員環細孔のMSE型構造のアルミノケイ酸塩を触媒に用いて、炭素数3以上のオレフィン収率を高めた低級オレフィンの製造方法を開示している。
特許文献4では、比較的低シリカ組成の8員環細孔のAEI型構造のアルミノケイ酸塩を触媒に用いて、低級オレフィンを製造する方法を開示している。
一方、特許文献5では、フッ化水素を添加して合成した高シリカ組成のAEI型構造のアルミノケイ酸塩を触媒に用いて、低級オレフィンを高収率で得られることが記載されている。
非特許文献1では、AEI型構造のアルミノケイ酸塩を水蒸気処理した触媒を用いて、低級オレフィンを高収率で得られることが記載されている。
しかしながら、上記の公知の方法には諸種の問題があり、必ずしも満足する結果は得られていない。
特許文献1の方法では、エチレンや芳香族化合物の生成量が多く、プロピレンとC4(ブテン/ブタン)成分の合計収率は35%程度であり、プロピレン及び直鎖ブテンの生産面で実用に耐えるものではない。
特許文献2の方法では、CHA型シリコアルミノリン酸塩(SAPO-34)を触媒として、反応温度350~425℃の条件で、エチレンとプロピレンが主生成物となり、かつエチレンがプロピレンと同量程度(それぞれ40%前後)生成するため、プロピレン及び直鎖ブテンの併産という面で実用に耐えるものではない。
特許文献3の方法では、MSE型アルミノケイ酸塩(MCM-68)を触媒として、反応温度350~400℃の条件で、プロピレンとブテン類を生成するが、プロピレンの収率が35%程度、C4成分の収率が25%程度であり、これらの合計収率は60%程度で
ある。また、生成するC4成分中の直鎖ブテンの割合については記載がなく、追試してみたところ、C4成分中にイソブテンが半分程度含まれることから、プロピレン及び直鎖ブテンの生産面で実用に耐えるものではない。
特許文献4の方法では、SiO/Al比14.7のH型のAEI型アルミノケイ酸塩を触媒として、反応温度400℃の条件で、プロピレンとブテン類を生成するが、プロピレン選択率が35%、C4(ブテン/ブタン)選択率が14%であり、これらの合計選択率は50%に満たない。また、生成するC4成分中の直鎖ブテンの割合についても不明であり、さらにプロパン副生量が多く(22%)、プロピレン及び直鎖ブテンの生産面で実用に耐えるものではない。
特許文献5の方法では、フッ化水素を添加して合成したSi/Al比532のH型のAEI型アルミノケイ酸塩を触媒として、反応温度450~540℃の条件で、プロピレン選択率が48~51%、C4(ブテン/ブタン)選択率が17~23%で得られる。C4成分中の直鎖ブテンの割合については不明である。高Si/Al組成の触媒ゆえに活性点が少ないため、高温条件下での反応により反応速度を高める必要があるものと推測される。触媒寿命についての記載はないが、エチレン選択率が高く(27~19%)、プロピレン及び直鎖ブテンの製造という点で、実用には耐えるものではない。さらに、AEI型構造のアルミノケイ酸塩は、フッ化水素を用い、かつ非常に水量の少ない高濃度条件(HO/Si<5)で合成されているものであり、触媒の工業的な製造という点では、実用に耐えるものではない。
非特許文献1の方法では、AEI型アルミノケイ酸塩をNH型の状態から水蒸気にて処理し、反応温度400℃、メタノール濃度10モル%、WHSV1.3hr-1の条件で反応させることで、プロピレン選択率が48%、ブテン選択率が20%で得られるが、エチレン選択率が17%と高く、メタノール転化率が520分で80%まで低下するほど触媒寿命は短い。また、生成するブテン中の直鎖ブテンの割合については不明である。エチレン選択率が高く、触媒寿命が短いため、プロピレン及び直鎖ブテンの安定製造という点で、実用に耐えるものではない。
一方で、エチレンを製造する方法としては、天然ガスに含まれるエタンを原料としたスチームクラッキング(以下、エタンクラッキング)が知られている。近年の天然ガス価格低下によって、エタンクラッキングは、ナフサのスチームクラッキングに対して著しくエチレン製造コストが低下してきていることから、エタンクラッキングによるエチレン生産が急激に拡大している。しかしながら、エタンクラッキングではナフサのスチームクラッキングとは異なり、炭素数3以上の炭化水素であるプロピレン、ブタジエンやブテン等がほとんど生成しないことから、炭素数3以上の炭化水素、特にプロピレンとブタジエンが不足するという状況が顕在化しつつある。
そこで、エチレンよりも、プロピレン及び直鎖ブテンを高収率、かつ長時間にわたって安定して製造する方法が求められている。
米国特許第4148835号公報 特開昭59‐084829号公報 特開2012‐92063号公報 米国特許第5958370号公報 米国特許第7008610号公報
ACS Catal.5,(2015),6078‐6085
本発明は、メタノール及びジメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種の原料から、プロピレン及び直鎖ブテンを効率的に製造するにあたり、とりわけ直鎖ブテンを高い収率、かつ長時間にわたって安定して製造する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、メタノール及びジメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種の原料を触媒と接触させてプロピレン及び直鎖ブテンを製造する方法であって、前記触媒の活性成分として、下記(1)~(3)を満たすメタロケイ酸塩を含み、かつ、前記原料を前記触媒と接触させてプロピレン及び直鎖ブテンを含む混合物を得る工程の反応温度が380℃以下である場合に、プロピレンと直鎖ブテンを同時に効率よく、長時間にわたって安定に製造できることを見出し、本発明に至った。
(1)その構造がInternational Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでAEIである。
(2)アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Mを含む。
(3)前記メタロケイ酸塩中に含まれるSiと前記Mの量比が、SiO/Mモル比換算で5以上100未満である。(ただし、前記モル比の分母はAl、Ga、BおよびFeの合計量を表す)
すなわち本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]メタノール及びジメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種の原料を触媒と接触させてプロピレン及び直鎖ブテンを製造する方法であって、前記触媒の活性成分として、下記(1)~(3)を満たすメタロケイ酸塩を含み、かつ、前記原料を前記触媒と接触させてプロピレン及び直鎖ブテンを含む混合物を得る工程の反応温度が380℃以下であることを特徴とするプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
(1)その構造がInternational Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでAEIである。
(2)アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Mを含む。
(3)前記メタロケイ酸塩中に含まれるSiと前記Mの量比が、SiO/Mモル比換算で5以上100未満である。(ただし、前記モル比の分母はAl、Ga、BおよびFeの合計量を表す)
[2]前記メタノール及びジメチルエーテルの合計の分圧が0.005MPa以上3MPa以下であることを特徴とする[1]に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
[3]前記プロピレン及び直鎖ブテンを含む混合物を得る工程における、エチレンに対する直鎖ブテンの質量比(直鎖ブテン/エチレン)が1.5以上であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
[4]前記メタロケイ酸塩が、水蒸気処理、熱処理、酸処理、及びイオン交換からなる群より選ばれる少なくとも1つの処理をされたものであることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
[5]前記メタロケイ酸塩が、少なくともアルミニウムを含むアルミノケイ酸塩であることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
[6]前記メタロケイ酸塩の平均一次粒子径が、0.03μm以上5μm以下であることを特徴とする[1]~[5]のいずれかに記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。[7]前記メタロケイ酸塩が、アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することを特徴とする[1]~[6]のいずれかに記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
[8]前記メタロケイ酸塩中のアルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の合計の含有量が、0.005質量%以上10質量%以下であることを特徴とする[7]に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
[9]前記アルカリ金属元素として、少なくともナトリウムを含有することを特徴とする[7]又は[8]に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
[10]前記メタロケイ酸塩のアンモニア昇温脱離スペクトルにおける高温脱離量から求められる全酸量が0.001mmol/g以上0.80mmol/g以下であることを特徴とする[1]~[9]のいずれかに記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
[11]前記メタロケイ酸塩がシリル化処理されていることを特徴とする[1]~[10]のいずれかに記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
[12]前記触媒のアンモニア昇温脱離スペクトルにおける高温脱離量から求められる全酸量が0.001mmol/g以上0.80mmol/g以下であることを特徴とする[1]~[11]のいずれかに記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
[13]下記(1)~(5)を満たすメタロケイ酸塩。
(1)その構造がInternational Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでAEIである。
(2)アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Mを含む。
(3)前記メタロケイ酸塩中に含まれるSiと前記Mの量比が、SiO/Mモル比換算で5以上100未満である。(ただし、前記モル比の分母はAl、Ga、BおよびFeの合計量を表す)
(4)アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する。
(5)アンモニア昇温脱離スペクトルにおける高温脱離量から求められる全酸量が0.001mmol/g以上0.80mmol/g以下である。
[14]アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の合計の含有量が、0.005質量%以上10質量%以下である[13]に記載のメタロケイ酸塩。
[15]アルカリ金属元素として、少なくともナトリウムを含有することを特徴とする[13]又は[14]に記載のメタロケイ酸塩。
[16]平均一次粒子径が、0.03μm以上5μm以下であることを特徴とする[13]~[15]いずれかに記載のメタロケイ酸塩。
[17]下記(1)~(5)を満たすメタロケイ酸塩。
(1)その構造がInternational Zeolite Association(IZA)で規定されるコード
でAEIである。
(2)アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Mを含む。
(3)前記メタロケイ酸塩中に含まれるSiと前記Mの量比が、SiO/Mモル比換算で5以上100未満である。(ただし、前記モル比の分母はAl、Ga、BおよびFeの合計量を表す)
(4)平均一次粒子径が、0.03μm以上0.60μm以下である。
(5)アンモニア昇温脱離スペクトルにおける高温脱離量から求められる全酸量が0.001mmol/g以上0.80mmol/g以下である。
本発明によれば、メタノール及び/又はジメチルエーテルを原料として、プロピレン及び直鎖ブテンを同時に、高収率で製造することができる。特に、直鎖ブテンを高い収率、かつ長時間にわたって安定して製造することができる。また、イソブテンの副生を抑制し、直鎖ブテンを選択的に製造することができるため、直鎖ブテンとイソブテンとを分離精製する工程における負荷を大幅に低減することが可能となる。
実施例1及び比較例1における経過時間に対する直鎖ブテン収率を示す図である。
以下に本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の態様に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
本発明は、メタノール及びジメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種の原料を触媒と接触させてプロピレン及び直鎖ブテンを製造する方法であって、前記触媒の活性成分として、下記(1)~(3)を満たすメタロケイ酸塩を含み、かつ、前記原料を前記触媒と接触させてプロピレン及び直鎖ブテンを含む混合物を得る工程の反応温度が380℃以下であることを特徴。
(1)その構造がInternational Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでAEIである。
(2)アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Mを含む。
(3)前記メタロケイ酸塩中に含まれるSiと前記Mの量比が、SiO/Mモル比換算で5以上100未満である。(ただし、前記モル比の分母はAl、Ga、BおよびFeの合計量を表す)
なお、前記メタロケイ酸塩を、以下「本発明のメタロケイ酸塩」という。
以下、本発明について詳細に説明する。
1.触媒
本発明で用いられる触媒は、活性成分として下記のメタロケイ酸塩を含む。
[本発明のメタロケイ酸塩]
(構造)
本発明のメタロケイ酸塩は、通常、結晶性を有する。メタロケイ酸塩は、通常、ゼオライトと呼ばれる開かれた規則的なミクロ細孔(以下、単に「細孔」ということがある)を形成している多孔質結晶性化合物であり、四面体構造をもつTO単位(Tは、ゼオライトを構成する酸素以外の元素をいう)が酸素原子を共有して三次元的に連結した構造を有している。
本発明のメタロケイ酸塩は、AEI型構造を有する。
AEI型構造を有するメタロケイ酸塩は、3種類の3.8×3.8Åの8員環細孔から構成される3次元細孔を有する。8員環細孔が交差することで、その構造内に広い空洞(ケージ)が存在する。また、AEI型構造のユニットセル(単位胞)は空間座標の定まっている原子で表した場合、その組成はT4896であり、単斜晶系である。
AEI型構造を有するメタロケイ酸塩のフレームワーク密度は、通常14.8T/nmである。
なおフレームワーク密度(単位:T/nm)とは、ゼオライトの単位体積(1nm)当たりに存在する骨格を形成する酸素以外の原子Tの個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。なお、フレームワーク密度とゼオライトの構造との関係は、IZAの構造委員会(Structure Commission)により編纂されたゼオライトに関するデータ集(Atlas of Zeolite Framework Types,Sixth Revised Edition 2007, ELSEVIER)に示されている。
(構成成分)
本発明のメタロケイ酸塩は、ケイ素と酸素以外に、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄から選ばれる少なくとも1種の元素Mを含む。本発明のメタロケイ酸塩は、T原子中にケイ素原子を70mol%以上含む。
前記メタロケイ酸塩中にアルミニウム、ガリウム、または鉄を含むものは、これらの原子がメタロケイ酸塩のT原子としてその骨格内に取り込まれ、比較的強い酸点となり、メタノール転化反応の活性点として働くため、触媒活性に優れる。具体的には、構成元素としてアルミニウムを含有するアルミノケイ酸塩や、ガリウムを含有するガロケイ酸塩、ホウ素を含有するボロケイ酸塩、鉄を含有するフェリケイ酸塩等が挙げられる。
また、前記メタロケイ酸塩中にホウ素を含むものは、ホウ素原子がメタロケイ酸塩のT原子としてその骨格内に取り込まれることで比較的弱い酸点となる。そのためホウ素は、好ましくはアルミニウムやガリウムなどの強い酸性質を発現する他の構成元素と共存させることで、メタロケイ酸塩の酸性質や酸量を適宜調整することができる。具体的には、構成元素としてアルミニウムとホウ素を含むボロアルミノケイ酸塩や、ガリウムとホウ素を含むガロボロケイ酸塩等が挙げられる。
本発明のメタロケイ酸塩中には、少なくともアルミニウムを含むことが、とりわけ強い酸性質によりメタノール転化反応が促進される点、骨格からの脱離が抑制されるため触媒長期寿命の点で好ましい。
本発明のメタロケイ酸塩としては、好ましくは、アルミノケイ酸塩、ボロアルミノケイ酸塩、ガロケイ酸塩、ガロボロケイ酸塩、フェリケイ酸塩であり、より好ましくはアルミノケイ酸塩、ボロアルミノケイ酸塩であり、さらに好ましくはアルミノケイ酸塩である。
また、本発明のメタロケイ酸塩は、前記の元素以外に、その他の元素を含んでいてもよい。その他の元素としては、特に限定されないが、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、錫(Sn)等が挙げられる。これらの構成元素は1種類でも2種類以上でもよい。
本発明のメタロケイ酸塩のSiO/M(ただし、前記モル比の分母はAl、Ga、BおよびFeの合計量を表す)モル比は5以上であり、好ましくは10以上、より好ましくは12以上、さらに好ましくは15以上であり、100未満、好ましくは60以下、より好ましくは40以下であり、さらに好ましくは30以下である。なお、前記の比率は、メタロケイ酸塩中のSi原子が全てSiOとして含まれ、メタロケイ酸塩中に含まれる前記MがすべてMとして含まれると仮定して求める値である。SiO/Mモル比が上記範囲にあることで、強酸点及び弱酸点由来の酸量が十分得られ、高いメタノール吸着能、高いメタノール転化活性及びオレフィン相互変換活性が得られる。またコーク付着による触媒の失活、ケイ素以外のT原子の骨格からの脱離、酸点当たりの酸強度の低下といった現象を防ぐことができる。本発明のメタロケイ酸塩のSiO/Mモル比は、通常、ICP元素分析や蛍光X線分析で測定でき
る。蛍光X線分析は、標準試料中の分析元素の蛍光X線強度と分析元素の原子濃度との検量線を作成し、この検量線により、蛍光X線分析法(XRF)でメタロケイ酸塩試料中の
ケイ素原子、アルミニウム、ガリウム、鉄原子の含有量を求めることができる。なお、ホウ素元素の蛍光X線強度は比較的小さいため、ホウ素原子の含有量はICP元素分析で測定することが好ましい。
本発明のメタロケイ酸塩の結晶内に含まれるリン含有量は、特に限定されるものではないが、少ない方が好ましく、通常500ppm以下、好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは0ppmである。メタロケイ酸塩の結晶内に含まれるリン含有量を上記の範囲とすることで、十分な比表面積が得られ、また、炭化水素成分の高い結晶内拡散性が得られ、メタノール転化活性が高くなる。リン由来の酸点での副反応が抑制されるため、プロピレン及び直鎖ブテンの収率が向上させることができる。尚、本発明のメタロケイ酸塩は、メタロケイ酸塩の骨格内および/または骨格外にリンが一部含有されていてもよいが、好ましくは骨格外にのみ含有されるものであり、より好ましくは含有されないものである。
(全酸量)
本発明のメタロケイ酸塩の全酸量(以下、全酸量という)は、前記メタロケイ酸塩の結晶細孔内に存在する酸点の量と、前記メタロケイ酸塩の結晶外表面酸点の量(以下、外表面酸量という)の総和である。全酸量は、特に限定されるものではないが、通常0.001mmol/g以上、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.03mmol/g以上、さらに好ましくは0.05mmol/g以上、特に好ましくは0.07mmol/g以上である。また、通常1.2mmol/g以下、好ましくは0.80mmol/g以下、より好ましくは0.50mmol/g以下、さらに好ましくは0.30mmol/g以下、特に好ましくは0.20mmol/g以下である。全酸量を上記の範囲とすることで、メタノールの転化活性が担保されるとともに、メタロケイ酸塩の細孔内部におけるコーク生成が抑制され、分子の結晶内拡散性が上昇することで、プロピレンと直鎖ブテンの生成を促進することができる点で好ましい。
なお、ここでの全酸量は、アンモニア昇温脱離(NH-TPD)における脱離量から算出される。具体的には、前処理としてメタロケイ酸塩を真空下500℃で30分間乾燥させた後、前処理したメタロケイ酸塩を100℃で過剰量のアンモニアと接触させて、メタロケイ酸塩にアンモニアを吸着させる。得られたメタロケイ酸塩を100℃で真空乾燥する(または、100℃で水蒸気と接触させる)ことにより、該メタロケイ酸塩から余剰アンモニアを除く。次いでアンモニアの吸着したメタロケイ酸塩を、ヘリウム雰囲気下、昇温速度10℃/分で加熱して、100-600℃におけるアンモニア脱離量を質量分析法で測定する。メタロケイ酸塩当たりのアンモニア脱離量を全酸量とする。但し、本発明における全酸量は、TPDプロファイルをガウス関数によって波形分離し、そのピークトップを240℃以上に有する波形の面積の合計とする。この「240℃」は、ピークトップの位置の判断のみに用いる指標であって、240℃以上の部分の面積を求めるという趣旨ではない。ピークトップが240℃以上の波形である限り、当該「波形の面積」は、240℃以外の部分も含む全面積を求める。240℃以上にピークトップを有する波形が複数ある場合には、それぞれの面積の和とする。
本発明の全酸量には、ピークトップを240℃未満に有する弱酸点由来の酸量は含めないものとする。これは、TPDプロファイルにおいて、弱酸点由来の吸着と物理吸着との区別が容易ではないためである。
(外表面酸量)
本発明のメタロケイ酸塩の結晶外表面酸量は、特に限定されるものではないが、通常、メタロケイ酸塩の全酸量に対して5%以下であるものが好ましく、3%以下であるものがより好ましく、0%であるものが最も好ましい。
外表面酸量が大きすぎる場合には、外表面酸点で起こる副反応によりプロピレンや直鎖
ブテンの選択性が低下する傾向がある。これは、外表面酸点で目的物以外の炭化水素を生成する反応が進行するためと推測される。また、前記メタロケイ酸塩の細孔内で生成したプロピレンや直鎖ブテンが外表面酸点で更に反応してしまうことも選択率低下の一因であると推測される。
なお本発明のメタロケイ酸塩の外表面酸量の値は、国際公開2010/128644号パンフレットに記載の方法で測定することができる。
前記メタロケイ酸塩の外表面酸量を、上記範囲に調整する方法としては、特に限定はされないが、通常、前記メタロケイ酸塩の外表面のシリル化、水蒸気処理、熱処理等の方法が挙げられる。また、メタロケイ酸塩を成形する際にバインダーと前記メタロケイ酸塩の外表面酸点を結合させる、といった方法が挙げられる。
(弱酸量)
本発明において、前記メタロケイ酸塩の全酸量だけでなく、メタロケイ酸塩中に含まれるアルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄の由来の弱酸点が、メタノール吸着、メタノール転化やオレフィン相互変換に効果的に作用する。よって、その弱酸点由来の弱酸量の指標として、前記メタロケイ酸塩に含まれるアルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄の合計量(mmol/g)から前記全酸量(mmol/g)を差し引いた値(mmol/g)、を用いる。この値は、通常0.10mmol/g以上、好ましくは0.30mmol/g以上、より好ましくは0.50mmol/g以上、さらに好ましくは1.0mmol/g以上であり、通常5.0mmol/g以下、好ましくは4.0mmol/g以下、より好ましくは3.0mmol/g以下、さらに好ましくは2.0mmol/g以下である。この値を上記範囲とすることで、メタノール吸着、メタノール転化を促進することができ、高い触媒活性を得ることができる。
なお、前記メタロケイ酸塩に含まれるアルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄の合計量(mmol/g)は、ICP元素分析またはXRF分析等より算出する。
(イオン交換サイト)
本発明のメタロケイ酸塩のイオン交換サイトは、特に限定されない。通常、プロトン型(以下、H型ともいう)、一部がナトリウム(Na)、カリウム(K)やセシウム(Cs)等のアルカリ金属;マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)やバリウム(Ba)等のアルカリ土類金属;等の金属イオンである。イオン交換サイトは、好ましくはプロトン、ナトリウム、カリウム、カルシウムであり、より好ましくはプロトン、ナトリウム、カリウムであり、さらに好ましくはナトリウム、カリウムであり、特に好ましくはナトリウムである。以下、例えばNaイオンで交換されているものを「Na型」ということがある。なお、アンモニウム(NH)でイオン交換されたものは、反応条件の高温下でアンモニアが脱離するため、通常プロトン型と同等に扱う。
本発明のメタロケイ酸塩中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計の含有量としては、特に限定されないが、通常0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、特に好ましくは1質量%以上であり、通常10質量%以下、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計の含有量を上記の範囲とすることで、メタロケイ酸塩の酸量やケージ空間容積を調整することができるため、反応時のコーク蓄積を抑制することができる点で好ましい。また熱的/水熱的安定性が高くなり脱アルミによる劣化を抑
制することができる点でも好ましい。
(含有金属)
これらイオン交換サイト以外に、Na、K等のアルカリ金属;Mg、Ca等のアルカリ
土類金属;Cr、Cu、Ni、Fe、Mo、W、Pt、Re等の遷移金属に金属担持されていてもよい。ここで、金属担持は、通常、平衡吸着法、蒸発乾固法、ポアフィリング法等の含浸法で行うことができる。
本発明のメタロケイ酸塩中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計量としては、イオン交換サイト以外にも含有する場合も、上記の含有量の範囲であることが好ましい。
(平均一次粒子径)
本発明のメタロケイ酸塩の平均一次粒子径は、特に限定されるものではないが、通常0.03μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.15μm以上、特に好ましくは0.20μm以上であり、通常5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.60μm以下、特に好ましくは0.40μm以下である。上記範囲とすることで、触媒反応におけるゼオライト結晶内の拡散性及び触媒有効係数が十分高くなり、ゼオライト結晶性が十分なものとなり、耐水熱安定性が高い点で好ましい。
なお、本発明における平均一次粒子径とは、一次粒子の粒子径に相当する。したがって、光散乱法などで測定される凝集体の粒子径とは異なる。平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(以降、「SEM」と略記する。)又は透過型電子顕微鏡(以降、「TEM」と略記する。)による粒子の観察において、粒子を任意に20個以上測定し、その一次粒子の粒子径を平均して求められる。粒子が長方形の場合、粒子の長辺・短辺を計測して(奥行は計測せず)、その和の平均(つまり(長辺+短辺)÷2)を算出して、その粒子の粒子径とする。
(BET比表面積)
本発明のメタロケイ酸塩のBET比表面積は、特に限定されるものではないが、通常300m/g以上、好ましくは400m/g以上、より好ましくは500m/g以上であり、通常1000m/g以下、好ましくは800m/g以下、より好ましくは750m/g以下である。上記範囲にあることで、細孔内表面に存在する活性点が十分多く、触媒活性が高くなるため好ましい。なお、BET比表面積は、JIS8830(ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)に準じた測定方法によって測定できる。吸着ガスとして窒素を使用し、1点法(相対圧:p/p0=0.30)でBET比表面積を求められる。
(細孔容積)
本発明のメタロケイ酸塩の細孔容積は、特に限定されるものではないが、通常0.1ml/g以上、好ましくは0.2ml/g以上であり、通常3ml/g以下、好ましくは2ml/g以下である。上記範囲にあることで、細孔内表面に存在する活性点が十分多く、触媒活性が高くなるため好ましい。細孔容積は相対圧法により得られる窒素の吸着等温線から求める値であることが好ましい。
(製造方法)
本発明のメタロケイ酸塩の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、米国特許第5958370号公報に記載の方法等の公知の方法で製造することができる。
本発明のメタロケイ酸塩は、一般的に水熱合成法により調製することが可能である。例えば水にアルミニウム源、ガリウム源、ホウ素源、及び鉄源から選ばれる少なくとも1種類と、ケイ素源やアルカリ水溶液等を加えて均一なゲルを生成させ、これに必要に応じて構造規定剤を加えて攪拌し、原料ゲルを調製する。得られた前記原料ゲルを、密閉容器中で加熱し、自圧下反応させることにより、結晶化させる。このときの反応温度は特に限定されないが、通常100~200℃に保持して結晶化させる。結晶化の際に、必要に応じて種結晶を添加してもよく、製造性の面では種結晶を添加する方が、反応時間を短縮できる点や結晶粒子を微粒子化できる点で好ましい。次いで結晶化した固形成分を濾過および
洗浄した後、固形分を乾燥し、引き続き焼成することによって、アルカリ(土類)金属型のメタロケイ酸塩として得ることができる。前記の乾燥温度は限定されないが、通常100~200℃である。また前記の焼成温度は限定されないが、通常400~700℃である。その後、酸性溶液やアンモニウム塩溶液でイオン交換し、焼成することにより、H型のメタロケイ酸塩を得ることができる。
また、水熱合成の後に、イオン交換や含浸、酸処理等の処理を加え、メタロケイ酸塩の組成を変えたものも使用できる。イオン交換や含浸処理は、アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素源を含む水溶液を用いて行うことができ、上記元素の含有量を増やすことができる。また、酸処理は、無機酸や有機酸等の酸性水溶液を用いて行うことができ、上記元素の含有量を減らすことができる。
前記メタロケイ酸塩の製造には、通常、構造規定剤が用いられ、米国特許第5958370号公報に記載の構造規定剤が好ましい。具体的には、N,N-ジアルキルピペリジンから誘導されるカチオン、N,N‐ジアルキル‐9‐アゾニアビシクロ[3.3.1]ノナンから誘導されるカチオン、2-アゾニアビシクロ[3.2.1]オクタンから誘導されるカチオン、N,N-ジアルキル-2,5-ジヒドロピロールから誘導されるカチオン等が挙げられる。
N,N-ジアルキルピペリジン及びN,N-ジアルキル-2,5-ジヒドロピロールの2つの独立したアルキル基は、AEI型構造の形成に寄与する構造規定剤となるものであれば特に限定はされず、通常低級アルキル基であり、好ましくは炭素数4以下のアルキル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基である。また前記アルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよく、2つのアルキル基が互いに結合して環を形成してもよい。2つのアルキル基が互いに結合して環を形成する場合は、2つのアルキル基で、通常炭素4~6のメチレン鎖を形成し、好ましくは炭素数4のメチレン鎖を形成する。
また前記N,N-ジアルキルピペリジンのピペリジン環は、置換基を有していてもよい。置換基は、通常低級アルキル基であり、好ましくは炭素数4以下のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基である。置換基の数は2以上でもよい。
上記のうち好ましくは、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジウムカチオン、N,N‐ジエチル‐2,6‐ジメチルピペリジウムカチオン、N,N‐ジメチル‐9‐アゾニアビシクロ[3.3.1]ノナンカチオン等である。
前記構造規定剤として用いられるカチオンは、本発明のメタロシリケートの形成を阻害しないアニオンを伴うものである。前記アニオンは、特に限定はされないが、具体的には、Cl-、Br-、I-などのハロゲンイオンや水酸化物イオン、酢酸塩、硫酸塩、カルボ
ン酸塩が含まれる。中でも、水酸化物イオンは特に好適に用いられる。
また、リン含有系構造規定剤として、テトラエチルホスホニウム水酸化物、テトラエチルホスホニウムブロミドのような物質を使用することもできる。
しかし、リン化合物は、合成メタロケイ酸塩から焼成により構造規定剤を除去する際に、有害物質である五酸化二リン等を発生する可能性があるため、好ましくは窒素系構造規定剤である。
AEI型メタロケイ酸塩の合成方法としては、アルカリ源の代わりにフッ酸等のフッ素源を添加して合成する方法も公知の技術としてはあるが、フッ酸は非常に危険な酸であり、ましてや高温下での水熱合成時に使用することは、工業的には現実的ではない。また、フッ酸を添加して合成されるAEI型メタロケイ酸塩は、プロピレン及び直鎖ブテン製造用の触媒として用いるには以下の点で好ましくない。
(1)高シリカ組成(Si/M比>100)となり、強酸点が少なく、また弱酸点も少なくなる傾向があり、メタノールの吸着およびオレフィンへの転化活性が低くなりやすい。
(2)粒子径が大きく、触媒の有効係数が小さくなりやすい。
(3)構造規定剤を除去するための焼成を行っても、フッ素は除かれず、比表面積や細孔容積が小さくなる傾向があり、オレフィンへの転化活性が低くなりやすい。
本発明のAEI型構造のメタロケイ酸塩は、上述の焼成後、適宜、水蒸気処理、熱処理、酸処理及びイオン交換から選ばれる少なくとも1つの処理をされたものであることが好ましい。このうち、好ましくは水蒸気処理、熱処理、イオン交換から選ばれる少なくとも1つの処理を施したものであり、より好ましくは水蒸気処理、イオン交換から選ばれる少なくとも1つの処理を施したものであり、さらに好ましくは水蒸気処理を施したものである。これらの処理に加えて、シリル化処理を施して用いてもよい。好ましくは水蒸気処理、イオン交換から選ばれる少なくとも1つの処理とシリル化処理を併用したものであり、より好ましくは水蒸気処理とシリル化処理を併用したものである。
以下、これらの処理方法について述べる。
<水蒸気処理>
本発明のAEI型構造のメタロケイ酸塩の水蒸気処理方法は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を損なわない範囲において水蒸気を含む気体に接触させることができる。具体的には水蒸気、空気又は不活性ガスで希釈した水蒸気、メタノールおよび/またはジメチルエーテルとともに水蒸気を含む反応雰囲気、または水蒸気を生成する反応雰囲気等に接触させる方法などが挙げられる。水蒸気を生成する反応とは、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの脱水反応のように脱水が起こって水蒸気を生成する反応のことである。なお、条件によって水蒸気が部分的に液体の水として存在しても構わないが、前記メタロケイ酸塩に一様な水蒸気処理効果を与えるために、全体が水蒸気の状態で存在していることが好ましい。
前記メタロケイ酸塩は水蒸気処理により、その骨格を形成するヘテロ金属原子の脱離が結晶全体で起こるため、前記の外表面酸量だけでなく、前記全酸量も減少すると考えられる。この全酸量の減少により、メタロケイ酸塩の細孔内部におけるコーク生成が抑制され、分子の結晶内拡散性が向上する。このため、プロピレンよりも大きい分子の直鎖ブテンの生成が相対的に促進されるものと推測される。
なお、過度な水蒸気処理を行うと、分子の結晶内拡散性が必要以上に上昇し、ペンテンやヘキセン等の炭素数5以上の炭化水素分子の生成量が増加する傾向がある。
前記メタロケイ酸塩の水蒸気処理温度は、特に限定されるものではないが、通常600℃以上であり、好ましくは700℃以上、より好ましくは750℃以上、さらに好ましくは800℃以上である。また通常1000℃以下であり、好ましくは950℃以下、より好ましくは900℃以下、さらに好ましくは850℃以下である。水蒸気処理温度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を起こさずに、短い処理時間で効率的にヘテロ金属原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
水蒸気処理に用いる水蒸気(スチーム)は、空気や、ヘリウム、窒素等の不活性ガスで希釈して使用することができる。その際の水蒸気濃度は、特に限定されるものではないが、前記メタロケイ酸塩を水蒸気処理する際に用いる気体全体に対して通常5体積%以上、好ましくは20体積%以上、より好ましくは35体積%以上であり、さらに好ましくは50体積%以上であり、通常100体積%以下、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは70体積%以下である。
水蒸気濃度を上記範囲にすることで、短い処理時間で効率的に前記T原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
水蒸気処理の圧力(希釈ガスを含む全圧)は特に制限されるものではないが、通常50kPa(絶対圧、以下同様)以上、好ましくは75kPa以上、より好ましくは100kPa以上であり、通常2MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下である。水蒸気処理の圧力を上記圧力範囲にすることで、短時間で効率的に前記T原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
水蒸気の分圧は特に制限されるものではないが、通常0.01MPa以上(絶対圧、以下同様)、好ましくは0.03MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上、さらに好ましくは0.06MPa以上、特に好ましくは0.07MPa以上であり、通常3MPa以下、好ましくは2MPa以下、より好ましくは1MPa以下、さらに好ましくは0.2MPa以下、特に好ましくは0.1MPa以下である。水蒸気の分圧を上記圧力範囲にすることで、短時間で効率的に前記T原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
前記メタロケイ酸塩の水蒸気処理時間は、特に限定されるものではないが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上であり、より好ましくは1時間以上である。また触媒活性を著しく阻害しない限りにおいては処理時間の上限はない。水蒸気処理温度及び水蒸気濃度により、処理時間は適宜調整することができる。
前記メタロケイ酸塩の水蒸気処理は、その細孔内部に有機物が存在している状態で行ってもよい。有機物が細孔内部に存在することで、特に強い水蒸気処理を行なった場合に、細孔内部の酸点の極端な減少を防ぎつつ、外表面酸点の大幅な減少をはかることができる。
前記有機物としては、特に限定されないが、メタロケイ酸塩の水熱合成時に使用する構造規定剤、及び反応によって生成するコーク等が挙げられる。これら有機物は、水熱合成後のメタロケイ酸塩(以下、焼成前メタロケイ酸塩ということがある)に水蒸気処理を行った後、空気焼成等の燃焼工程を経て除去することもでき、または空気等の酸素含有ガスで希釈した水蒸気で処理することにより、有機物を除去しながら水蒸気処理することもできる。
前記メタロケイ酸塩を水蒸気処理に供する前に、アルカリ土類金属を含む化合物と物理混合することも可能である。アルカリ土類金属を添加することにより、メタロケイ酸塩の強酸点を中和し、強酸点で生成するコークの生成を抑制できることがある。アルカリ土類金属を含む化合物としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウムが挙げられ、中でも炭酸カルシウムが好ましい。
アルカリ土類金属を含む化合物の量は、特に限定されないが、前記メタロケイ酸塩に対して通常、0.5質量%以上、好ましくは3質量%以上、通常30質量%以下、好ましくは10質量%以下である。
<熱処理>
本発明のAEI型構造のメタロケイ酸塩を熱処理する方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、前記メタロケイ酸塩を、空気及び不活性ガスから選ばれる少なくとも1つの雰囲気下で高温処理する方法や、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを含む混合ガス雰囲気下で高温処理する方法などが挙げられる。
前記メタロケイ酸塩の熱処理では、水蒸気処理と同様、その骨格内のヘテロ金属原子の脱離による全酸量を減少させることができる。
熱処理温度は特に限定されるものではないが、通常600℃以上、好ましくは700℃
以上、より好ましくは800℃以上、さらに好ましくは900℃以上であり、通常1200℃以下、好ましくは1100℃以下、より好ましくは1000℃以下、さらに好ましくは950℃以下である。熱処理温度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を起こさずに、短い処理時間で効率的に前記T原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
熱処理の際に使用するガス種としては、ヘリウム、窒素、空気等を使用することができる。
熱処理も水蒸気処理同様に、細孔内部に有機物が存在している状態で行っても良い。ヘリウムや窒素等の不活性ガスを用いた場合、熱処理により有機物が炭化する場合があるが、空気での焼成により、除去することができる。
なお、前記熱処理は上記のメタロケイ酸塩を製造する際に行われる焼成と同時に行っても別個に分けて行ってもよい。前記熱処理は骨格内の前記T原子の脱離等を目的とするため比較的高温で行われ、特に限定はされないが、具体的には、上記の焼成と熱処理を別個に行なう場合であれば、前記熱処理は、通常、前記焼成よりも高い温度で行なわれる。
熱処理の時間は、特に限定されるものではないが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1.0時間以上である。また触媒活性を著しく阻害しない限りにおいては処理時間の上限はなく、熱処理温度により、処理時間は適宜調整することができる。
<酸処理>
本発明のAEI型構造のメタロケイ酸塩の酸処理の方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、酸性水溶液を用いる方法が挙げられる。
前記酸性水溶液に用いる酸の種類としては、特に限定されるものではないが、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸、シュウ酸、マロン酸などのジカルボン酸などを使用することができる。これらのうち好ましいのは、硫酸、硝酸、塩酸である。
前記酸性水溶液の酸の濃度としては、特に限定されるものではないが、通常0.01M以上、好ましくは0.1M以上、より好ましくは1M以上であり、通常10M以下であり、好ましくは8M以下であり、より好ましくは6M以下である。酸の濃度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を起こさずに、短い処理時間で効率的に前記T原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
メタロケイ酸塩に対する酸性水溶液の量としては、特に制限されるものではないが、メタロケイ酸塩1gに対して、酸性水溶液の総量で通常3g以上、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上であり、通常100g以下、好ましくは80g以下、より好ましくは50g以下である。酸性水溶液の量を上記の範囲とすることで、スラリーの十分な撹拌効率を得るとともに、一定の生産性を確保することができる点で好ましい。
酸処理の温度としては、特に限定されるものではないが、常圧においては通常室温から100℃、耐圧容器内では100℃以上で行うことも可能であり、通常40℃以上、好ましく60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下である。酸処理の温度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を抑制しながら、短時間で効率的にヘテロ金属原子を骨格から除去することができる。
酸処理の処理時間は、特に限定されるものではなく、酸の濃度や反応温度にもよるが、通常0.01時間以上、好ましくは0.1時間以上であり、触媒の性能を阻害しない限り
において処理時間の上限は特にない。酸の濃度や反応温度により、処理時間は適宜調整することができる。
酸性水溶液中に、シリル化剤を添加することにより、酸処理とシリル化処理を同時に行うこともできる。その際に用いるシリル化剤は、前記シリル化剤と同じである。
<イオン交換>
メタロケイ酸塩のヘテロ金属原子のカウンターカチオンは、通常、ナトリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム(NH)あるいはプロトン(H)である。これらのカウンターカチオンはイオン交換可能であり、適宜、金属イオン交換して使用することができる。
交換する金属としては、特に限定されるものではないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。好ましくはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムであり、より好ましくはナトリウム、カリウム、カルシウムであり、さらに好ましくはナトリウム、カリウムである。イオン交換することで、メタロケイ酸塩の酸量やケージ空間容積を調整することができるため、反応時のコーク蓄積を抑制することができる点で好ましい。また熱的/水熱的安定性が高くなり脱アルミによる劣化
を抑制することができる点でも好ましい。
金属イオン交換の方法は、特に限定されるものではないが、既知のイオン交換法によって行うことができる。イオン交換法に用いる際の、メタロケイ酸塩のカチオンは特に限定されず、通常、ナトリウム型、アンモニウム型、あるいはプロトン型が用いられる。
金属源としては、通常、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩等が用いられ、好ましくは硝酸塩、硫酸塩、塩化物塩であり、より好ましくは硝酸塩である。
用いる溶媒としては、金属源が溶解するものであれば、特に限定されるものではないが、通常、水が用いられる。
金属源溶液の濃度は、特に限定されるものではないが、通常0.1M以上、好ましくは0.5M以上、より好ましくは1M以上であり、また上限は、通常10M以下、好ましくは8M以下、より好ましくは6M以下である。金属源の溶解度見合いで濃度を調整することが望ましい。
イオン交換を行う温度は、室温から溶媒の沸点程度である。処理時間は、イオン交換が十分平衡に達する時間であればよく、通常1~6時間程度である。金属の交換率を高めるため、イオン交換を複数回繰り返すことも可能である。
所定の時間処理した懸濁液からのメタロケイ酸塩の分離は、通常の固液分離操作、例えば濾過や遠心分離によって行う。
イオン交換後のメタロケイ酸塩を乾燥する際の雰囲気は特に限定されず、例えば空気中、不活性ガス中、真空中などで行われる。乾燥温度は、通常、室温から溶媒の沸点程度である。
イオン交換後のメタロケイ酸塩は、適宜焼成を行って使用する。焼成温度は金属源の分解温度よりも高温であればよく、通常200℃~600℃、好ましくは300℃~500℃である。焼成温度が低すぎると金属源が残留しやすく、焼成温度が高すぎるとメタロケイ酸塩の構造崩壊や、金属のシンタリングが進行し易くなる。
<シリル化処理>
AEI型構造のメタロケイ酸塩をシリル化処理する方法は、特に限定されるものではな
く、公知の方法を適宜用いることができ、具体的には液相シリル化や気相シリル化等を行うことができる。
AEI型構造のメタロケイ酸塩は、シリル化処理により、通常、外表面の酸点が被覆され、不活性化されることにより、外表面酸量が低下するものと考えられる。外表面酸量が低下すると、前記メタロケイ酸塩の外表面で起こる副反応が抑制される。具体的には、有機化合物原料や、メタロケイ酸塩の細孔内で生成した低級オレフィンがメタロケイ酸塩の外表面の酸点と接触することで、目的物以外の成分が生成する反応を抑制する効果があると考えられる。また、外表面酸点のシリル化では、前記メタロケイ酸塩が有する細孔を構成する酸点にもシリル基が結合するため、外表面開口部の細孔径が僅かに縮小し、結晶外への分子拡散を抑制する効果もあると考えられる。これにより、より大きい分子である炭素数5以上の炭化水素の生成を抑制することができ、低級オレフィンの選択率が向上するものと考える。
以下、シリル化処理を、液相シリル化を例に取り、具体的に説明する。
シリル化剤としては、特に限定されるものではなく、通常はメタロケイ酸塩の外表面をシリル化することができ、かつメタロケイ酸塩の細孔内をシリル化することができないものを使用する。具体的には、シリコーン類、クロロシラン類、アルコキシシラン類、シロキサン類、シラザン類などが使用できる。これらのうち、気相シリル化には通常クロロシラン類、液相シリル化には通常アルコキシシラン類が用いられ、より好ましいシリル化剤は、反応性が高く、取り扱いが比較的容易であるという点で、アルコキシシラン類である。
シリコーン類としては、具体的にはジメチルシリコーン、ジエチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、エチルハイドロジェンシリコーン、フェニルハイドロジェンシリコーン、メチルエチルシリコーン、フェニルエチルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルトリフルオロプロピルシリコーン、エチルトリフルオロプロピルシリコーン、テトラクロロフェニルメチルシリコーン、テトラクロロフェニルエチルシリコーン、テトラクロロフェニルハイドロジェンシリコーン、テトラクロロフェニルシリコーン、メチルビニルシリコーン及びエチルビニルシリコーン等が用いられる。
クロロシラン類としては、具体的には、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、トリクロロメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、トリクロロエチルシラン、ジクロロジエチルシラン、クロロトリエチルシラン等が用いられる。
アルコキシシラン類としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等;の4級アルコキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン等;の3級アルコキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン等;の2級アルコキシシラン、メトキシトリメチルシラン、メトキシトリエチルシラン、エトキシトリメチルシラン、エトキシトリエチルシラン等;の1級アルコキシシランが用いられる。好ましくは2級以上のアルコキシシランであり、より好ましくは3級以上のアルコキシシランであり、さらに好ましくは4級アルコキシシランである。
シロキサン類としては、具体的には、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ペンタメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン等が挙げられ、ヘキサメチルジシロキサンが好ましい。
シラザン類としては、具体的には、ヘキサメチルジシラザン、ジプロピルテトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン、テトラフェニルジメチルジシラザン等が挙げられ、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
前記メタロケイ酸塩に対するシリル化剤の量は、特に限定されるものではないが、前記メタロケイ酸塩1モルに対して、通常0.001モル以上、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上である。また、通常5モル以下であり、好ましくは3モル以下、より好ましくは1モル以下である。シリル化剤の量を上記の範囲とすることで、外表面酸点のシリル化被覆が効率的に進行し、かつ過度なシリル化被覆による触媒活性低下を抑制できる点で好ましい。なお、上記シリル化剤の量は、シリル化剤に含まれるSi原子のモル数で表すこととし、分子内に複数のSi原子を有するシリル化剤では、そのSi原子の合計のモル数をシリル化剤のモル数として扱うことにする。
液相シリル化を行う場合、溶媒を使用することができ、溶媒としては、特に限定されないが、へキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素や水を使用することができる。また、水溶媒で液相シリル化を行なう場合は、シリル化反応を促進するために、硫酸や硝酸等の酸を添加した酸性水溶液を使用することができる。
液相シリル化を行う場合、前記液相シリル化反応を行なう溶液中のシリル化剤の濃度は、特に限定されるものではないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、通常80質量%以下であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下である。シリル化剤の濃度を上記の範囲とすることで、シリル化剤同士の縮合を抑制し、かつシリル化速度を維持できる点で好ましい。
液相シリル化を行なう場合の前記メタロケイ酸塩に対する溶媒の量は、特に制限されるものではないが、前記メタロケイ酸塩1gに対して、通常1g以上、好ましくは3g以上、より好ましくは5g以上である。また、通常100g以下、好ましくは80g以下、より好ましくは50g以下である。溶媒の量を上記の範囲とすることで、スラリーの十分な撹拌効率を得るとともに、一定の生産性を確保することができる点で好ましい。
液相シリル化を行う場合、シリル化処理に供するメタロケイ酸塩に特定の範囲の水分を付与しておいても良い。前記のメタロケイ酸塩が含有する水分は、メタロケイ酸塩が元々含有しているものであっても、人為的に水分を供給して、特定の範囲に調整してもよい。通常、本発明のメタロケイ酸塩は水熱合成により得られたものを焼成し、さらに必要に応じてアンモニウム型へ変換してから焼成することによりプロトン型に変換したものを使用する。したがって、通常シリル化処理前のメタロケイ酸塩の水分含有量は、通常非常に少ないと想定され、そのままシリル化処理に供してもよいし、メタロケイ酸塩に特定の水分含有量となるように水分を供給し、水分含有量を調整して使用してもよい(以下、調湿処理ということがある)。
前記水分含有量は、特に制限されるものではないが、メタロケイ酸塩中に含まれる水分重量を乾燥メタロケイ酸塩の重量に対する質量%で表し、通常30質量%以下、好ましくは25質量%以下であり、下限としては完全乾燥状態の0質量%である。水分含有量を上記の範囲とすることで、外表面酸点のシリル化被覆が効率的に進行し、かつ過度なシリル化による細孔閉塞を防ぐことができる点で好ましい。
前記調湿処理方法は、所定の水分量に調整することができれば、特に限定されるものではない。例えば、メタロケイ酸塩を適当な相対湿度を有する大気中に放置する方法、メタロケイ酸塩を、密閉容器(デシケーター等)中に、水または無機塩の飽和水溶液とともに共存させ、飽和水蒸気雰囲気下で放置する方法、メタロケイ酸塩に、適当な水蒸気圧のガスを流通させる方法等が挙げられる。なお、前記の方法においては、より均一な調湿を行
うために、メタロケイ酸塩を混合または攪拌しながら調湿処理を行ってもよい。
シリル化処理をする温度は、使用するシリル化剤や溶媒の種類により適宜調整され、特に限定されるものではないが、通常20℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上である。また、通常140℃以下、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。シリル化処理温度を上記の範囲とすることで、前記メタロケイ酸塩細孔内の水分の吐出が抑制されるため、外表面酸点のシリル化被覆が効率的に進行し、かつシリル化速度を維持できる点で好ましい。
シリル化剤を添加してからシリル化温度まで昇温するのに要する時間は、特に限定されるものではなく、シリル化温度にてシリル化剤を添加してもよいが、通常0.01時間以上、好ましくは0.05時間以上、より好ましくは0.1時間以上であり、昇温に要する時間の上限は特にない。シリル化温度が高い場合、昇温に要する時間を上記の範囲とすることで、前記メタロケイ酸塩の細孔内からの水分の吐出が抑制されるため、溶液中のシリル化剤の加水分解及び重合反応が抑制され、前記メタロケイ酸塩のシリル化が効率的に進行する点で好ましい。
シリル化の処理時間は、反応温度にもよるが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上であり、より好ましくは1時間以上であり、触媒の性能を阻害しない限りにおいて処理時間の上限は特にない。処理時間を上記の範囲とすることで、前記メタロケイ酸塩の外表面酸点のシリル化被覆が進行し、外表面酸量が十分に減少する点で好ましい。
[他の活性成分]
本発明の触媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のメタロケイ酸塩以外の他の活性成分を含んでいてもよい。他の活性成分としては、例えばシリコアルミノリン酸塩等のアルミノリン酸塩等が挙げられる。本発明の触媒中に含まれるアルミノリン酸塩の含有量は、通常20%質量以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%である。また、本発明の触媒中に含まれるメタロケイ酸塩の含有量は、通常80質量%以上、好ましくは90%質量以上、より好ましくは100質量%である。シリコアルミノリン酸塩は、高温条件や水蒸気条件に対する安定性が低いため、メタロケイ酸塩の含有量が高い方が好ましい。他の活性成分は、本発明のメタロケイ酸塩中に混晶の形で含有させてもよいが、通常は、各活性成分を各々合成した後に混合する。
[触媒の成型]
上記した触媒活性成分のメタロケイ酸塩は、そのまま触媒として反応に用いてよいし、反応に不活性な物質やバインダーを混合して触媒とし、これを反応に用いてもよい。
該反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナまたはアルミナゾル、シリカ、シリカゾル、石英、およびこれらの混合物等が挙げられる。
[触媒の酸量]
触媒の全酸量及び外表面酸量は、上述のメタロケイ酸塩の全酸量及び外表面酸量と同様の方法にて測定することができる。触媒の全酸量は、特に限定されるものではないが、通常0.001mmol/g以上、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.03mmol/g以上、さらに好ましくは0.05mmol/g以上、特に好ましくは0.07mmol/g以上である。また、通常1.2mmol/g以下、好ましくは0.80mmol/g以下、より好ましくは0.50mmol/g以下、さらに好ましくは0.30mmol/g以下、特に好ましくは0.20mmol/g以下である。触媒全酸量を上記の範囲とすることで、メタノールの転化活性が担保されるとともに、メタロケイ酸塩の細孔内部におけるコーク生成が抑制され、プロピレンと直鎖ブテンの生成を促進す
ることができる点で好ましい。
触媒の外表面酸量は、特に限定されるものではないが、通常、触媒の全酸量に対して5%以下であるものが好ましく、3%以下であるものがより好ましく、0%であるものが最も好ましい。外表面酸量が大きすぎる場合には、外表面酸点で起こる副反応によりプロピレンや直鎖ブテンの選択性が低下する傾向がある。
メタロケイ酸塩に、反応に不活性な物質やバインダーを混合したものを触媒として使用する場合、触媒の全酸量及び外表面酸量を上記範囲に調整するには、酸点を有さないシリカやシリカゾル等をバインダーとして用いることが好ましい。
なお、アルミナ等の、酸点を有するバインダーを使用した場合には、触媒の全酸量及び外表面酸量の測定方法では、メタロケイ酸塩の酸量と共にバインダーの酸量も含んだ合計値として測定される。その場合はバインダー由来の酸量を別法により求め、触媒の酸量からその値を差し引くことによって、バインダー由来の酸量を含まないメタロケイ酸塩のみの酸量を求めることが可能である。前記バインダーの酸量は、27Al-NMRにおいてメタロケイ酸塩の酸点に由来する4配位Alのピーク強度からメタロケイ酸塩の酸量を求め、アンモニア昇温脱離法により求まる触媒の酸量からその値を差し引く方法で求められる。
[粒径]
触媒の粒子径は、メタロケイ酸塩の合成条件や造粒・成型条件により異なるが、通常、平均粒子径として、通常0.01μm~500μmであり、好ましくは0.1~100μmである。触媒の粒子径が大きくなり過ぎると、触媒の有効係数が低下する傾向があり、小さすぎると取り扱い性が劣るものとなる。この平均粒子径は、SEM観察等により求めることができる。
2.プロピレン及び直鎖ブテンの製造方法
(メタノール、ジメチルエーテル)
本発明の原料であるメタノール、ジメチルエーテルの製造由来は特に限定されない。例えば、石炭および天然ガス、ならびに製鉄業における副生物由来のCO/水素の混合ガスの水素化反応により得られるもの、植物由来のアルコール類の改質反応により得られるもの、発酵法により得られるもの、再循環プラスチックや都市廃棄物等の有機物質から得られるもの等が挙げられる。このとき各製造方法に起因するメタノールおよびジメチルエーテル以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したものを用いても良い。
なお、反応原料としては、メタノールのみを用いてもよく、ジメチルエーテルのみを用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。メタノールとジメチルエーテルを混合して用いる場合、その混合割合に制限はない。
(反応器)
本発明における反応様式としては、メタノールおよび/またはジメチルエーテル供給原料が反応域において気相であれば特に限定されないが、固定床反応器、移動床反応器や流動床反応器が選ばれる。プロピレンと直鎖ブテンを併産する場合は、転化率の変動に伴い、プロピレン及び直鎖ブテンの選択率が変動する傾向にあるため、プロピレンと直鎖ブテンを一定の割合で製造するためには、流動床反応器が好ましい。
また、バッチ式、半連続式または連続式のいずれの形態でも行われ得るが、連続式で行うのが好ましく、その方法は、単一の反応器を用いた方法でも良いし、直列または並列に配置された複数の反応器を用いた方法でもよい。
なお、流動床反応器に前述の触媒を充填する際、触媒層の温度分布を小さく抑えるため
に、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量には特に限定されない。なお、粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
また、反応器には、反応に伴う発熱を分散させることを目的に、反応基質(反応原料)を分割して供給しても良い。
(基質濃度)
反応器に供給する全供給成分中の、メタノールとジメチルエーテルの合計濃度(基質濃度)に関して特に制限はないが、メタノールとジメチルエーテルの和は、全供給成分中、通常5モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さら好ましくは30モル%以上、特に好ましくは50モル%以上であり、通常95モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下である。基質濃度を上記範囲にすることで、芳香族化合物やパラフィン類の生成を抑制することができ、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる。また反応速度を維持できるため、触媒量を抑制することができ、反応器の大きさも抑制可能となる。
従って、このような好ましい基質濃度となるように、必要に応じて以下に記載する希釈剤で反応基質を希釈することが好ましい。
(希釈剤)
反応器内には、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの他に、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水、パラフィン類、メタン等の炭化水素類、芳香族化合物類、および、それらの混合物など、反応に不活性な気体を存在させることができるが、この中でもヘリウム、窒素、水(水蒸気)が共存しているのが、分離が良好であることから好ましい。
このような希釈剤としては、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用しても良いし、別途調製した希釈剤を反応原料と混合して用いても良い。
また、希釈剤は反応器に入れる前に反応原料と混合しても良いし、反応原料とは別に反応器に供給しても良い。
(重量空間速度)
ここで言う重量空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料であるメタノールおよび/またはジメチルエーテルの流量であり、ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成形に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。また、流量はメタノールおよび/またはジメチルエーテルの合計の流量(重量/時間)である。
重量空間速度は、特に限定されるものではないが、通常0.01Hr-1以上、好ましくは0.1Hr-1以上、より好ましくは0.3Hr-1以上、さらに好ましくは0.5Hr-1以上であり、通常50Hr-1以下、好ましくは20Hr-1以下、より好ましくは10Hr-1以下、さらに好ましくは5.0Hr-1以下である。重量空間速度を前記範囲に設定することで、反応器出口ガス中の未反応のメタノールおよび/またはジメチルエーテルの割合を減らすことができ、芳香族化合物やパラフィン類等の副生成物を減らすことができるため、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる点で好ましい。また、一定の生産量を得るのに必要な触媒量を抑えることができ、反応器の大きさを抑えられるため好ましい。
(反応温度)
反応温度は、メタノールおよび/またはジメチルエーテルが触媒と接触してプロピレン及び直鎖ブテンを生成する温度であれば、特に制限されるものではないが、通常250℃
以上、好ましくは280℃以上、より好ましくは310℃以上、さらに好ましくは330℃以上、特に好ましくは350℃以上であり、380℃以下、好ましくは375℃以下、より好ましくは370℃以下、さらに好ましくは365℃以下、特に好ましくは360℃以下である。反応温度を上記範囲にすることで、エチレン、芳香族化合物やパラフィン類の生成を抑制することができるため、プロピレン及び直鎖ブテンの収率、とりわけ直鎖ブテン収率を向上させることができる。また、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化活性を高いレベルで維持することができるため、長時間にわたって高いプロピレン及び直鎖ブテン収率で製造することができる。さらに、ゼオライト骨格からの脱アルミニウムが抑制されるため、触媒寿命を維持できる点で好ましい。なお、ここでの反応温度とは、触媒層出口の温度をさす。
(反応圧力)
反応圧力は特に制限されるものではないが、通常0.01MPa(絶対圧、以下同様)以上、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上であり、通常5MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.7MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下である。反応圧力を上記範囲にすることで芳香族化合物やパラフィン類等の副生成物の生成を抑制することができ、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる。また反応速度も維持できる。
(原料分圧)
メタノール及びジメチルエーテルの合計の分圧は特に制限されるものではないが、通常0.005MPa以上(絶対圧、以下同様)、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.03MPa以上、さらに好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.07MPa以上であり、通常3MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下、さらに好ましくは0.3MPa以下、特に好ましくは0.1MPa以下である。原料の分圧を上記範囲にすることで芳香族化合物やパラフィン類等の副生成物の生成を抑制することができ、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる。また反応速度も維持できる。
(転化率)
本発明において、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化率は特に制限されるものではないが、通常転化率は90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.5%以上であり、通常100%以下である。本発明は、転化率が上記範囲になるように調整することで、芳香族化合物やパラフィン類の副生、および細孔内へのコークの蓄積を抑制することができ、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができ、かつ高い直鎖ブテン/プロピレン比で製造することができる。また、生成物中からのメタノールおよび/またはジメチルエーテルの分離効率を高めることができる。
通常、反応時間の経過とともにコークの蓄積が進行し、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化率は、低下する傾向にあるため、一定時間反応させた触媒は、再生処理に供する必要がある。上記の転化率の範囲で運転する方法としては、特に制限されない。
例えば、固定床反応器で反応を行う場合には、複数個の反応器を並列に備え、転化率が上記の好ましい範囲から低下した際には、触媒と反応原料との接触を停止し、該触媒を再生工程に供する。固定床反応器においては、反応時間及び再生時間を適宜調整する、すなわち、運転における反応工程と再生工程とを切り替える時間を適宜調整することにより、上記の好ましい範囲の転化率で連続的に運転することができる。
また、流動床反応器で反応を行う場合には、反応器に対して触媒の再生器を付設し、反
応器から抜き出した触媒を連続的に再生器に送り、再生器において再生された触媒を連続的に反応器に戻しながら、反応を行うことが好ましい。触媒の反応器内での滞留時間と再生器内での滞留時間を適宜調整することにより、上記の好ましい範囲の転化率で連続的に運転することができる。
メタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化率が低下した触媒は、各種公知の触媒の再生方法を使用して再生することができる。
再生方法は特に限定されるものではないが、具体的には例えば、空気、窒素、水蒸気、水素等を用いて再生することができ、空気、水素を用いて再生することが好ましい。
(コーク)
メタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化によって、その一部が結晶の内部/外表面にコークとして蓄積する。コーク量は、メタノールおよび/またはジメチルエーテルが転化して、プロピレン及び直鎖ブテンを生成する量であれば、特に制限されるものではないが、メタロケイ酸塩に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは8.0質量%以下である。コーク量を上記範囲になるように調整することで、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化活性を保ちつつ、エチレンやパラフィン類の副生を抑制することができ、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる。なお、ここでのコーク量は、例えば熱重量分析(TG)により求めることができる。具体的には、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化反応によりコークが蓄積したメタロケイ酸塩を、ヘリウム等の不活性ガス流通下(50cc/min)、550℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、30分間保持することで、吸着水や軽沸炭化水素成分を除去する。続いて、空気流通に切り替え(50cc/min)、550℃から600℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、60分間保持する。このときの550℃以上の温度領域での酸化燃焼による重量減少をコーク量とする。
(反応生成物)
反応器出口ガス(反応器流出物)としては、反応生成物である、エチレン、プロピレン及び直鎖ブテン等の低級オレフィン、副生成物及び希釈剤を含む混合ガスが得られる。前記混合ガス中のプロピレン及び直鎖ブテンの濃度は、特に限定されないが、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下である。
反応条件によっては反応生成物中に未反応原料としてメタノールおよび/またはジメチルエーテルが含まれるが、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化率が100%になるような反応条件で反応を行うのが好ましい。それにより、反応生成物と未反応原料との分離が容易に、好ましくは不要になる。副生成物としてはエチレン、炭素数が4以上のオレフィン類、パラフィン類、芳香族化合物および水が挙げられる。本発明では、所望により、プロピレンや直鎖ブテン以外の成分をも分離・回収してもよい。特に、エチレンは、市場価格が高く、需要が大きい場合には、プロピレンや直鎖ブテンとともに、分離・回収することが望ましい。所望の成分を分離・回収した残分には、軽質パラフィン、エチレン、C5以上のオレフィン、芳香族化合物、スチーム等を含む。この残分の少なくとも一部を、前述した原料ガスの一部に混合して、いわゆるリサイクルガスとして用いることができる。
本発明において、プロピレン及び直鎖ブテンの合計の収率は特に制限されるものではないが、通常50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%、さらに好ましくは80%以上であり、上限は特に制限されないが、通常100%である。プロピレン及び直鎖ブテンの合計の収率が上記範囲にあることで、反応器出口における目的生成物の収率
が十分なものとなり、原料コスト及び分離・精製の負荷を低減することができる点で好ましい。
本発明において、直鎖ブテンの収率は特に制限されるものではないが、通常20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは30%、さらに好ましくは35%以上であり、上限は特に制限されないが、通常90%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下である。直鎖ブテンの収率が上記範囲にあることで、反応器出口における目的生成物の収率が十分なものとなり、原料コスト及び分離・精製の負荷を低減することができる点で好ましい。反応条件としては、反応温度をより下げることで、直鎖ブテンの収率を上げることができる。
本発明において、エチレンに対するプロピレンと直鎖ブテンの合計の質量比(以下、(プロピレン+直鎖ブテン)/エチレン)は、特に制限されるものではないが、通常1.0以上、好ましくは3.0以上、より好ましくは6.0以上、さらに好ましくは9.0以上であり、上限は特に制限されないが、通常30以下、好ましくは20、より好ましくは15以下である。反応条件としては、反応温度をより下げることで、(プロピレン+直鎖ブテン)/エチレン比を向上させることができる。
本発明において、エチレンに対する直鎖ブテンの質量比(以下、直鎖ブテン/エチレン)は、特に制限されるものではないが、通常1.0以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは3.0以上、特に好ましくは4.0以上であり、上限は特に制限されないが、通常10以下、好ましくは8.0以下、より好ましくは7.0以下、特に好ましくは6.0以下である。反応条件としては、反応温度をより下げることで、直鎖ブテン/エチレン比を向上させることができる。
本発明において、プロピレンに対する直鎖ブテンの質量比(以下、直鎖ブテン/プロピレン)は、特に制限されるものではないが、通常0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.4以上であり、上限は特に制限されないが、通常2.0以下、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下である。反応条件としては、反応温度をより下げることで、直鎖ブテン/プロピレン比を向上させることができる。
本発明において、全ブテン中の直鎖ブテンの比率(以下、直鎖ブテン/全ブテン)は、特に制限されるものではないが、通常60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であり、最も好ましくは100%である。直鎖ブテン/全ブテン比率が、上記範囲にあることで、目的とする直鎖ブテンの収率が十分なものとなり、また、直鎖ブテンの分離・精製工程における負荷を低減することができる点で好ましい。
転化率は次の式により算出される値である。
メタノール転化率(%)=〔[反応器入口メタノール(mol/Hr)-反応器出口メタノール(mol/Hr)]/反応器入口メタノール(mol/Hr)〕×100
ジメチルエーテル転化率(%)=〔[反応器入口ジメチルエーテル(mol/Hr)-反応器出口ジメチルエーテル(mol/Hr)-反応器出口メタノール(mol/Hr)÷2]/反応器入口ジメチルエーテル(mol/Hr)〕×100
本明細書における選択率とは、以下の各式により算出される値である。下記の各式において、エチレン、プロピレン、ブテン、C5+、パラフィンおよび芳香族化合物等の炭化水素の「由来カーボン流量(mol/Hr)」とは、各炭化水素を構成する炭素原子のモル流量を意味する。原料にジメチルエーテルを用いた場合には、次の式の反応器出口原料由来カーボンモル流量に、ジメチルエーテルとメタノールの合計カーボンモル流量を用いて算出する。
尚、パラフィンは炭素数1から4のパラフィンの合計、芳香族化合物はベンゼン、トルエン、キシレンの合計、C5+は前記芳香族化合物を除いた炭素数5以上の炭化水素の合計である。
・エチレン選択率(%)=〔反応器出口エチレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)-反応器出口メタノール由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・プロピレン選択率(%)=〔反応器出口プロピレン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)-反応器出口メタノール由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・ブテン選択率(%)=〔反応器出口ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)-反応器出口メタノール由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・C5+選択率(%)=〔反応器出口C5+由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)-反応器出口メタノール由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・パラフィン選択率(%)=〔反応器出口パラフィン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)-反応器出口メタノール由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・芳香族化合物選択率(%)=〔反応器出口芳香族化合物由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)-反応器出口メタノール由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100
・ジメチルエーテル選択率(%)=〔反応器出口ジメチルエーテル由来カーボンモル流量(mol/Hr)/[反応器出口総カーボンモル流量(mol/Hr)-反応器出口メタノール由来カーボンモル流量(mol/Hr)]〕×100(ただし、原料にメタノールを用いた場合のみ使用)
ブテン類中の各異性体の比率は、下記の各式により算出される。
・1‐ブテン比率(%)=〔反応器出口1‐ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器出口ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)〕×100
・trans‐2‐ブテン比率(%)=〔反応器出口trans‐2‐ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器出口ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)〕×100
・cis‐2‐ブテン比率(%)=〔反応器出口cis‐2‐ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器出口ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)〕×100
・イソブテン比率(%)=〔反応器出口イソブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)/反応器出口ブテン由来カーボンモル流量(mol/Hr)〕×100
なお、本明細書における収率とは、前記原料転化率と、生成した各成分の選択率の積により求められ、具体的にプロピレン収率、直鎖ブテン収率は、それぞれ次の式で表される。ここでの直鎖ブテン選択率とは、ブテン選択率と、ブテン類中の1-ブテン、trans‐2‐ブテン及びcis‐2‐ブテンの比率の合計との積で表される。
・プロピレン収率(%)=原料転化率(%)×プロピレン選択率(%)/100
・直鎖ブテン収率(%)=原料転化率(%)×直鎖ブテン選択率(%)/100
・直鎖ブテン選択率(%)=ブテン選択率(%)×〔1‐ブテン比率+trans‐2‐ブテン比率+cis‐2‐ブテン比率(%)〕/100
(生成物の分離)
反応器出口ガスとしての、反応生成物であるプロピレン及び直鎖ブテン、未反応原料、副生成物及び希釈剤を含む混合ガスは、公知の分離・精製設備に導入し、それぞれの成分
に応じて回収、精製、リサイクル、排出の処理を行えば良い。
この分離・精製方法の一つの態様として、反応器出口のガスを冷却・圧縮し、凝縮した大部分の水分を除去する工程を含み、水分を除去した後の一部水分を含んだ炭化水素流体をモレキュラーシーブ等で乾燥し、その後蒸留により各オレフィンおよびパラフィンを精製する工程を含む方法が適用される。上記方法において、圧縮した炭化水素流体を一つの蒸留塔に供給しても良いが、多段階の圧縮機を設置し、凝縮しやすい炭化水素と凝縮しにくい炭化水素を粗分離し、これらを別々の蒸留塔に供給して蒸留を行っても良い。
プロピレン及び直鎖ブテン以外の成分(オレフィン、パラフィン等)、特に炭素数5以上の炭化水素の一部または全ては、上記分離・精製された後に反応原料と混合するか、または直接反応器に供給することでリサイクルしても良い。また、副生成物のうち、反応に不活性な成分は希釈剤として再利用することができる。
(プロピレンの用途)
本発明の製造方法によって得られたプロピレンは、これを重合することによりポリプロピレンを製造することができる。プロピレンの重合の方法は特に限定されないが、本発明により得られたプロピレンを直接、原料モノマーとして重合反応器に導入して使用することができる。また、本発明により得られたプロピレンは、ポリプロピレン以外にも、後述する各種反応を経てプロピレン誘導品の原料としても利用できる。例えば、アンモニア酸化によりアクリロニトリル、選択酸化によりアクロレイン、アクリル酸及びアクリル酸エステル、オキソ反応によりノルマルブチルアルコール、選択酸化によりプロピレンオキサイド及びプロピレングリコール等が製造できる。またプロピレンは、ワッカー反応によりアセトンが製造でき、更に得られたアセトンよりメチルイソブチルケトンが製造できる。またアセトンからは、アセトンシアンヒドリンを経てメチルメタクリレートを製造することができる。またプロピレンは、水和反応によりイソプロピルアルコールを製造することができる。またプロピレンは、ベンゼンと反応させて得られる、キュメンを原料にフェノール、ビスフェノールA、またはポリカーボネート樹脂を製造することができる。
(直鎖ブテンの用途)
本発明の製造方法によって得られた直鎖ブテンは、脱水素化することによりブタジエンを製造することができる。さらに、ブタジエンは、単独重合によりポリブタジエン(BR)、スチレンとの重合によりスチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルとスチレンとの重合によりアクリロニトリル‐スチレン‐ブタジエン樹脂(ABS樹脂)等を製造することができる。また直鎖ブテンは、その他のブテン誘導品の原料としても利用できる。例えば、直鎖ブテンは、間接水和法によりsec-ブチルアルコールを経て、続く脱水素化反応によりメチルエチルケトンを製造することができる。1-ブテンは、重合によりポリブテン-1や、オキソ反応によりアミルアルコール等が製造できる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、以下の調製例において、合成で得られたゼオライトの結晶のX線回折(XRD)パターンは、PANalytical社製のX’Pert Pro MPDを用いて得た。X線源はCuKαであり(X線出力:40kV、30mA)、読込幅は0.016°である。
また、合成したゼオライトのSi、Al組成は、蛍光X線分析により測定した。測定には、島津製作所社製Rayny EDX‐700を用いた。また、Na分析にはHF分解処理後、酸で処理し定容後、原子吸光分析装置(AAS)にて定量を行った。AASにはアジレント テクノロジーズ社製SpectrAA-220を用いた。
ゼオライト粒子の形状は、日立ハイテク社製の走査電子顕微鏡(S‐4100)を用いて、導電処理を行った試料を、加速電圧15kVで観察を行った。
メタロケイ酸塩の全酸量の測定は、NH‐TPDにて測定した。測定には、キヤノンアネルバ社製AGS7000を用い、以下の通りに行った。試料のメタロケイ酸塩50mgをPtボートに秤量し、石英管にセットし、前処理として真空下500℃で30分間乾燥させた。その後、100℃で過剰量のアンモニアと15分間接触させて、メタロケイ酸塩にアンモニアを吸着させた。引き続き、100℃で真空乾燥することで、余剰アンモニアを除くことで、アンモニアの吸着したメタロケイ酸塩を得た。次いで、アンモニアの吸着したメタロケイ酸塩を、ヘリウム雰囲気下、昇温速度10℃/分で加熱して、100-600℃におけるアンモニアの脱離量を質量分析法で測定した。得られたTPDプロファイルをガウス関数によって波形分離し、ピークトップを240℃以上に有する波形の面積の合計から、メタロケイ酸塩の質量当たりの全酸量を算出した。
(調製例1)
1M水酸化ナトリウム水溶液123g、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジウムハイドロキサイド水溶液(21.8質量%)32.9gを順に、水8.2gに溶解し、Y型ゼオライトCBV720(SiO/Al比 30、ZEOLYST社製)14.4gを加えて、30分間撹拌した。さらに、コロイダルシリカSI-30(SiO 30質量%、Na 0.3質量%、日揮触媒化成社製)14.8gを加え、ゲル状反応液(以下、原料ゲルということがある)とし、2時間撹拌した。前記原料ゲルを1000mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、150rpmで撹拌しながら、135℃で7日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させた。
生成物のXRDパターンから、得られた生成物はAEI型構造を有するアルミノケイ酸塩であることを確認した。蛍光X線分析より、SiO/Al比は17であった。また、走査電子顕微鏡より、平均一次粒子径はおよそ800nmであった。
水熱合成により得られたアルミノケイ酸塩(焼成前アルミノケイ酸塩)を、空気流通下580℃で6時間焼成を行い、Na型のアルミノケイ酸塩を得た。元素分析の結果、アルミノケイ酸塩中のナトリウムの含有量は1.0質量%であった。
得られたAEI型構造のアルミノケイ酸塩1.0gを800℃で、常圧にて50%水蒸気(水蒸気/空気=50/50(体積/体積))流通下、5時間処理することにより、水蒸気処理されたNa型のAEI型構造のアルミノケイ酸塩を得た。水蒸気処理による結晶全体のSi及びAlの含有量に変化はなく、SiO/Al比は17であった。元素分析の結果、アルミノケイ酸塩中のナトリウムの含有量は1.0質量%であった。このアルミノケイ酸塩の全酸量は、NH‐TPDより、0.08mmol/gであった。(触媒1)
(調製例2)
水酸化ナトリウム1.60g、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジウムハイドロキサイド水溶液(21.8重量%)205gを順に、水56.6gに溶解し、Y型ゼオライトCBV720(SiO/Al比 30、ZEOLYST社製)51.2gを加えて2時間撹拌した。さらにシリカの重量に対して5質量%に相当するCHA型ゼオライト(SiO/Al比25、平均粒子径200nm、有機構造規定剤含まない)2.40gを種結晶として加えて、撹拌することにより混合物を得た。前記混合物を1000mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、150rpmで回転させながら、160℃で7日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末41.0gを得た。
生成物のXRDパターンから、得られた生成物はAEI型構造を有するアルミノケイ酸塩であることを確認した。蛍光X線分析より、SiO/Al比は22であった。また、走査電子顕微鏡より、平均一次粒子径はおよそ100~200nmであった。水熱
合成により得られたアルミノケイ酸塩(焼成前アルミノケイ酸塩)を、空気流通下580℃で6時間焼成を行い、Na型のアルミノケイ酸塩を得た(アルミノケイ酸塩(A))。
得られたAEI型構造のアルミノケイ酸塩(A)1.0gを800℃で、常圧にて50%水蒸気(水蒸気/空気=50/50(体積/体積))流通下、5時間処理することにより、水蒸気処理された微粒子のNa型のAEI型構造のアルミノケイ酸塩を得た。水蒸気処理による結晶全体のSi及びAlの含有量に変化はなく、SiO/Al比は22であった。元素分析の結果、ゼオライト中のNa濃度は1.0重量%であった。(触媒2)
(調製例3)
調製例2のアルミノケイ酸塩(A)1.0gを1Mの硝酸アンモニウム水溶液で80℃、1時間のイオン交換を2回行い、100℃で乾燥した後、空気流通下、500℃で6時間焼成し、H型のアルミノケイ酸塩を得た。得られたAEI型構造のアルミノケイ酸塩1gを750℃で、常圧にて50%水蒸気(水蒸気/空気=50/50(体積/体積))流通下、5時間処理することにより、水蒸気処理されたH型のAEI型構造のアルミノケイ酸塩を得た。水蒸気処理による結晶全体のSi及びAlの含有量に変化はなく、SiO/Al比は22であった。(触媒3)
(調製例4)
調製例2のアルミノケイ酸塩(A)1.0gを5Mの硝酸カルシウム水溶液で80℃、5時間のイオン交換を1回行い、100℃で乾燥した後、得られたAEI型構造のアルミノケイ酸塩を900℃で、常圧にて空気流通下、6時間処理することにより、熱処理されたCa,Na型のAEI型構造のアルミノケイ酸塩を得た。水蒸気処理による結晶全体のSi及びAlの含有量に変化はなく、SiO/Al比は22であった。(触媒4)
(実施例1、2)
触媒1、2を用いて、メタノールを原料とする、プロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を行った。反応には、常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英反応管に、上記触媒200mgと石英砂300mgの混合物を充填した。メタノール及び窒素を、メタノールの重量空間速度が0.50Hr‐1で、メタノール50体積%と窒素50体積%となるように反応器に供給し、350℃、0.1MPa(絶対圧)でプロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を実施し、反応器出口ガスをガスクロマトグラフィーにより分析を行った。反応成績を表1に示した。
(比較例1)
触媒1を用いて、メタノール及び窒素を、メタノールの重量空間速度が1.3Hr‐1で、メタノール10体積%と窒素90体積%となるように反応器に供給し、400℃、0.1MPa(絶対圧)とする以外は実施例1,2と同様の操作を行い、プロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を実施した。反応成績を表1に示した。
Figure 0007156455000001
実施例1は、SiO/Alモル比17、平均一次粒子径約800nm、全酸量0.08mmol/gであるAEI型構造のアルミノケイ酸塩(触媒1)を触媒として、350℃、メタノール濃度50体積%、メタノール分圧0.05MPa(絶対圧)、重量
空間速度0.50Hr‐1の条件で、メタノールと接触させてプロピレンと直鎖ブテンを合成した反応例である。反応開始1.83時間後のプロピレン収率は34.2%、直鎖ブテン収率は29.0%であった。反応開始4.17時間後には、プロピレン収率は46.0%、直鎖ブテン収率は27.5%であり、プロピレン、直鎖ブテンともに高い収率が維持された。
また実施例2は、SiO/Alモル比22、平均一次粒子径100~200nmであるAEI型構造のアルミノケイ酸塩(触媒2)を触媒として、350℃、メタノール濃度50体積%、メタノール分圧0.05MPa(絶対圧)、重量空間速度0.50Hr‐1の条件で、メタノールと接触させてプロピレンと直鎖ブテンを合成した反応例である。反応開始1.83時間後のプロピレン収率は37.6%、直鎖ブテン収率は34.2%であった。反応開始4.17時間後には、プロピレン収率は45.2%、直鎖ブテン収率は31.1%であり、プロピレン、直鎖ブテンともに高い収率が維持された。
一方、比較例は、触媒1を用いて、400℃、メタノール濃度10体積%、メタノール分圧0.01MPa(絶対圧)、重量空間速度1.3Hr‐1の条件で、メタノールと接触させてプロピレンと直鎖ブテンを合成した反応例である。反応開始1.92時間後のプロピレン収率は48.6%、直鎖ブテン収率は22.3%であった。しかし、反応開始4.25時間後には、プロピレン収率は41.7%、直鎖ブテン収率は19.1まで低下した。
実施例1及び2から分かるように、反応を350℃のような低温下で行うことにより、高いプロピレン及び直鎖ブテン収率を達成し、かつ、コーク蓄積による活性低下を抑制し、長時間わたって安定して高い収率で合成することができる。
(実施例3)
触媒2を用いて、反応温度が335℃とする以外は実施例2と同様の操作を行い、プロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を実施した。反応成績を表2に示した。
(実施例4)
触媒2を用いて、反応温度が365℃とする以外は実施例2と同様の操作を行い、プロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を実施した。反応成績を表2に示した。
(実施例5)
触媒2を用いて、反応温度が380℃とする以外は実施例2と同様の操作を行い、プロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を実施した。反応成績を表2に示した。
(実施例6)
触媒2を用いて、メタノール及び窒素を、メタノール30体積%と窒素70体積%となるように反応器に供給する以外は実施例2と同様の操作を行い、プロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を実施した。反応成績を表3に示した。
(実施例7)
触媒2を用いて、メタノール及び窒素を、メタノール75体積%と窒素25体積%となるように反応器に供給する以外は実施例2と同様の操作を行い、プロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を実施した。反応成績を表3に示した。
(実施例8)
触媒3を用いる以外は実施例1と同様の操作を行い、プロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を実施した。反応成績を表3に示した。
(実施例9)
触媒4を用いる以外は実施例1と同様の操作を行い、プロピレン及び直鎖ブテンの合成
反応を実施した。反応成績を表3に示した。
Figure 0007156455000002
実施例3、実施例4、実施例5は、AEI型構造のアルミノケイ酸塩(触媒2)を触媒として、メタノール濃度50体積%、メタノール分圧0.05MPa(絶対圧)、重量空間速度0.50Hr‐1の条件で、それぞれ反応温度335℃、365℃、380℃において、メタノールと接触させてプロピレンと直鎖ブテンを合成した反応例である。380℃以下の反応温度においては、反応開始4.17時間後でも、プロピレン収率44.6~47.5%、直鎖ブテン選択率26.0%~29.8%となり、プロピレン、直鎖ブテンともに高い収率が維持された。
Figure 0007156455000003
実施例6、実施例7は、AEI型構造のアルミノケイ酸塩(触媒2)を触媒として、350℃、重量空間速度0.50Hr‐1の条件で、それぞれメタノール濃度30体積%(メタノール分圧0.03MPa(絶対圧))、75体積%(0.075MPa(絶対圧))において、メタノールと接触させてプロピレンと直鎖ブテンを合成した反応例である。幅広いメタノール濃度領域において、反応開始4.17時間後には、直鎖ブテン収率30%以上となり、プロピレン及び直鎖ブテンを収率良く製造することができる。
Figure 0007156455000004
実施例8、実施例9は、それぞれ触媒として、H型のAEI型アルミノケイ酸塩を水蒸気処理した触媒(触媒3)、カルシウムイオン交換後に熱処理した触媒(触媒4)を用いて、350℃、メタノール濃度50体積%、メタノール分圧0.05MPa(絶対圧)、重量空間速度0.50Hr‐1の条件で、メタノールと接触させてプロピレンと直鎖ブテンを合成した反応例である。いずれの触媒においても、プロピレン、直鎖ブテンを収率良く製造することができる。
本発明の製造方法により、メタノールおよび/またはジメチルエーテルからプロピレンと直鎖ブテンを同時に高い収率で製造することができる。また、イソブテンの副生を抑制し、直鎖ブテンを選択的に製造することができるため、ブテン類からの直鎖ブテンの分離・精製の負荷を大幅に低減することができる。

Claims (5)

  1. 下記(1)~(6)を満たすメタロケイ酸塩。
    (1)その構造がInternational Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでAEIである。
    (2)アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Mを含む。
    (3)前記メタロケイ酸塩中に含まれるSiと前記Mの量比が、SiO/Mモル比換算で5以上100未満である。(ただし、前記モル比の分母はAl、Ga、BおよびFeの合計量を表す)
    (4)アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する。
    (5)アンモニア昇温脱離スペクトルにおける高温脱離量から求められる全酸量が0.001mmol/g以上0.80mmol/g以下である。
    (6)リンの含有量が500ppm以下である。
  2. アルカリ金属元素及びアルカリ土類金属元素の合計の含有量が、0.005質量%以上10質量%以下である請求項1に記載のメタロケイ酸塩。
  3. アルカリ金属元素として、少なくともナトリウムを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のメタロケイ酸塩。
  4. 平均一次粒子径が、0.03μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載のメタロケイ酸塩。
  5. 下記(1)~(6)を満たすメタロケイ酸塩。
    (1)その構造がInternational Zeolite Association(IZA)で規定されるコードでAEIである。
    (2)アルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Mを含む。
    (3)前記メタロケイ酸塩中に含まれるSiと前記Mの量比が、SiO/Mモル
    比換算で5以上100未満である。(ただし、前記モル比の分母はAl、Ga、BおよびFeの合計量を表す)
    (4)平均一次粒子径が、0.03μm以上0.60μm以下である。
    (5)アンモニア昇温脱離スペクトルにおける高温脱離量から求められる全酸量が0.001mmol/g以上0.80mmol/g以下である。
    (6)リンの含有量が500ppm以下である。
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