JP6699336B2 - Aei型アルミノケイ酸塩の製造方法、該aei型アルミノケイ酸塩を用いたプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法 - Google Patents

Aei型アルミノケイ酸塩の製造方法、該aei型アルミノケイ酸塩を用いたプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、少なくともアルミニウムを含有するAEI型アルミノケイ酸塩の効率的な製造方法、および該方法で製造されたアルミノケイ酸塩を触媒として用いるプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法に関するものである。
AEI型アルミノケイ酸塩は、酸素8員環の細孔を有する合成ゼオライトの一つであり、International Zeolite Association(以下これを、「IZA」と略称することがある。)が定める構造コードでAEIに分類されるトポロジーを有する。
ゼオライトは、触媒、吸着材、分離材等の諸種の用途に用いられている。特に、AEI型ゼオライトは、細孔径が小さく、酸強度が大きく、エチレン、プロピレンや直鎖ブテンといった低級オレフィン製造用の触媒として期待されている。
AEI型の構造を有するゼオライトとして、アルミノケイ酸塩であるSSZ−39が報告されている(特許文献1)。特許文献1には、構造規定剤にN,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムカチオン等の四級アンモニウムカチオン、アルミニウム源にFAU型ゼオライト、アルカリ金属元素源にナトリウムカチオンを用いた合成方法が開示されている。AEI型ゼオライトの製造方法として、特許文献1の改良方法を含めて諸種の提案がなされている(特許文献2,特許文献3、非特許文献1)。
例えば、特許文献2には、N,N‐ジエチル‐2,6‐ジメチルピペリジニウムカチオンを構造規定剤とし、フッ化水素を添加したフッ化物法による高SiO/Alモル比のAEI型ゼオライトの合成方法が開示されている。
特許文献3には、構造規定剤としてテトラエチルホスホニウムカチオンを用いて、FAU型ゼオライトを原料とする、リン含有AEI型ゼオライトの合成方法が開示されている。
非特許文献1には、アルミニウム源にFAU型ゼオライト、アルカリ金属元素源にナトリウムカチオンを用い、各種合成組成を変えた条件での合成方法が開示されている。
しかしながら、上記の公知の方法には諸種の問題があり、必ずしも満足する結果は得られていない。
すなわち、特許文献1に記載の方法では、ケイ素とアルミニウムを構成成分とするFAU型ゼオライトを原料とし、アルカリ金属源としてナトリウムカチオンのみを含有するアルカリ性条件下で水熱合成することで、AEI型アルミノケイ酸塩が得られるが、水熱合成反応に供される混合物中のNa/SiOモル比率が高い条件(実施例ではNa/SiOモル比約0.48−0.58)で合成する必要があるため、合成収率は低くなり、副生物が生成し易い傾向にある。実施例を追試したところ、ANA相やMOR相、FAU相(原料含む)が生成し易く、AEI単一相として得られた条件での合成収率は40−45%程度であった。特許文献1に記載の方法は、触媒の工業的な製造という点では、実用に耐えるものではない。
特許文献2では、アルミニウム源に硝酸アルミニウムを用い、硬化剤としてアルカリ金属源ではなく、フッ化水素を用いた水熱合成(フッ化物法)により、AEI型アルミノケイ酸塩を得ている。しかし、この方法では、SiO/Alモル比が100以上の組成での合成に限定される。また、危険性の非常に高いフッ化水素を使用するという面で
、工業的には現実的な方法ではない。
特許文献3では、アルミニウム源に格子定数24.30Å以上のFAU型ゼオライトを用い、構造規定剤としてリンを含有するテトラエチルホスホニウムカチオンを用いて、リン含有AEI型アルミノケイ酸塩を得ている。しかし、この方法では、構造規定剤として用いるホスホニウム塩がゼオライト合成後の焼成処理等により除去されにくく、ゼオライトの表面積やミクロ細孔容積が小さくなる。
非特許文献1では、特許文献1と同様、FAU型ゼオライトを原料とし、アルカリ金属源としてナトリウムカチオンのみを含有する条件下で水熱合成することで、AEI型アルミノケイ酸塩を得ている。しかし、合成収率は19〜45%であり、触媒の工業的な製造という点では、実用に耐えるものではない。また、多くの合成条件で、AEI相とともに、GIS相やANA相等の不純物が検出されていて、AEI単相で製造することが容易でないことが予想される。
米国特許第5958370号公報 米国特許第7008610号公報 国際公開WO2015/005369号パンフレット
Chem.Mater.27,(2015),2695‐2702
本発明は、副生物が生成し難く、合成収率が高い、且つ安全で製造コストが低減された、AEI型アルミノケイ酸塩の製造方法の提供を課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、水熱合成の混合物中の、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計に対する、カリウム原子、セシウム原子、ストロンチウム原子、及びバリウム原子の合計のモル比を所定値以上とし、且つ、ケイ素原子に対する、四級アンモニウム塩、カリウム原子、セシウム原子、ストロンチウム原子、及びバリウム原子の合計のモル比を所定値以上とすることにより、AEI型アルミノケイ酸塩を単一成分として、かつ高収率で製造できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1](a)ケイ素源と、(b)Framework densityが16.0T/1000A以下であるゼオライトを含むアルミニウム源と、(c)カリウム源、セシウム源、ストロンチウム源、及びバリウム源からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属元素源又は/及びアルカリ土類元素源、(d)四級アンモニウム塩と、(e)水を含有する混合物の水熱合成によりAEI型アルミノケイ酸塩を製造する方法であって、前記混合物中の、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計に対する、カリウム原子、セシウム原子、ストロンチウム原子、及びバリウム原子の合計のモル比が、0.05以上であり、前記混合物中の、ケイ素原子に対する、四級アンモニウム塩、カリウム原子、セシウム原子、ストロンチウム原子、及びバリウム原子の合計のモル比が、0.12以上であり、前記混合物中の、ケイ素原子に対する、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計のモル比が0.25以上であることを特徴とするAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
[2]前記(c)が、カリウム源及びセシウム源から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属元素源であることを特徴とする[1]に記載のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
[3]前記混合物中の、ケイ素原子に対する、四級アンモニウム塩、カリウム原子、セシウム原子、ストロンチウム原子、及びバリウム原子の合計のモル比が、0.60以下であることを特徴とする[1]又は[2]に記載のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
[4]前記ゼオライトが、AEI型、AFX型、BEA型、CHA型、ERI型、FAU型、LTA型、LEV型、OFF型及びRHO型からなる群より選ばれる少なくとも1種
の構造を有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
[5]前記ゼオライト中の、アルミニウム原子に対するケイ素原子のモル比が2.0以上25以下であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
[6]前記混合物中のケイ素原子に対する前記四級アンモニウム塩のモル比が0.20以下であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれかに記載のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
[7]前記混合物中のアルミニウム原子に対する、前記四級アンモニウム塩と前記アルカリ金属原子と前記アルカリ土類金属原子の合計のモル比が8.0以下であることを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
[8]前記混合物が、種結晶として、International Zeolite Association(IZA)
がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含むゼオライトを含有し、
且つ、前記種結晶を、前記混合物の前記種結晶以外の成分に含まれるケイ素原子のシリカ換算重量に対して、0.1質量%以上含有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
[9]前記種結晶が、AEI型、AFX型、CHA型、ERI型、FAU型、及びLEV型からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有するゼオライトであることを特徴と
する[8]に記載のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
[10]有機化合物原料を、[1]〜[9]のいずれかに記載の製造方法で製造されたAEI型アルミノケイ酸塩に接触させることを特徴とするプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
[11]前記有機化合物原料がエチレンであることを特徴とする[10]に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
[12]前記有機化合物原料がメタノール及びジメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする[10]に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
本発明によれば、反応器の腐食の問題となるフッ化水素を添加することなく、また、AEI型アルミノケイ酸塩の細孔内からの除去が容易でないホスホニウム塩を使用することなく、AEI型アルミノケイ酸塩を高収率で製造することができ、製造コストを低減することができる。また、AEI型以外の副生物の生成を抑制することができる。本発明により、AEI型アルミノケイ酸塩の用途の拡大が可能となる。
実施例1で得られたAEI型アルミノケイ酸塩のXRDパターンである。
以下に本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の態様に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
1.AEI型アルミノケイ酸塩
以下に、本発明の製造方法で得られるAEI型アルミノケイ酸塩(以下、「本発明のアルミノケイ酸塩」ということがある)について説明する。
(構造)
本発明のアルミノケイ酸塩は、通常、結晶性を有する。アルミノケイ酸塩は、通常、ゼオライトと呼ばれる開かれた規則的なミクロ細孔(以下、単に「細孔」ということがある)を形成している多孔質結晶性化合物であり、四面体構造をもつTO単位(Tは、ゼオライトを構成する酸素以外の元素をいう)が酸素原子を共有して三次元的に連結した構造を有している。
本発明のアルミノケイ酸塩は、AEI型構造を有する。
AEI型構造を有するアルミノケイ酸塩は、3種類の3.8×3.8Åの8員環細孔から構成される3次元細孔を有する。8員環細孔が交差することで、その構造内に広い空洞(ケージ)が存在する。また、AEI型構造のユニットセル(単位胞)は空間座標の定まっている原子で表した場合、その組成はT4896であり、単斜晶系である。
AEI型構造を有するアルミノケイ酸塩のフレームワーク密度は、通常14.8T/1000A以下である。
なおフレームワーク密度(単位:T/1000A)とは、ゼオライトの単位体積(1000A)当たりに存在する骨格を形成する酸素以外の原子Tの個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。なお、フレームワーク密度とゼオライトの構造との関係は、IZAの構造委員会(Structure Commission)により編纂されたゼオライトに関するデータ集(Atlas of Zeolite Framework Types,Sixth Revised Edition 2007, ELSEVIER)に示されている。
(構成成分)
本発明のアルミノケイ酸塩は、ケイ素と酸素以外に、少なくともアルミニウムを含む。本発明のアルミノケイ酸塩は、T原子中にケイ素原子を70mol%以上含む。
本発明のAEI型アルミノケイ酸塩は、カリウム、セシウム、ストロンチウム、及びバリウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属元素又は/及びアルカリ土類金属元素を一定量以上含有するため、アルミノケイ酸塩の酸量及びケージ空間容積が制御され、形状選択性が発現し易く、エチレンやメタノール等の有機化合物原料の転換反応において高いプロピレン及び直鎖ブテン選択率が得られる。
本発明のアルミノケイ酸塩は、その他に、ホウ素、ガリウム、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Mを含有していてもよい。元素Mがアルミノケイ酸塩のT原子としてその骨格内に取り込まれ、中程度の酸強度の活性点となり、メタノールやエチレン等の有機化合物の転化反応の活性点として機能する。中でも、ホウ素が好ましい。水熱合成時の混合物にホウ素が存在すると、不純物を生成することなく、AEI型を指向し易くなる。
本発明のアルミノケイ酸塩としては、好ましくはT原子がケイ素とアルミニウムからなるアルミノケイ酸塩、ボロアルミノケイ酸塩、ガロアルミノケイ酸塩、フェリアルミノケイ酸塩、ボロガロアルミノケイ酸塩、ボロフェリアルミノケイ酸塩であり、より好ましく
はアルミノケイ酸塩、ボロアルミノケイ酸塩、フェリアルミノケイ酸塩であり、さらに好ましくはT原子がケイ素とアルミニウムからなるアルミノケイ酸塩である。
また、本発明のアルミノケイ酸塩は、前記の元素以外に、その他の元素を含んでいてもよい。その他の元素としては、特に限定されないが、亜鉛(Zn)、ゲルマニウム(Ge)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、錫(Sn)等が挙げられる。これらの構成元素は1種類でも2種類以上でもよい。
(ケイ素に対するアルミニウムのモル比)
本発明のアルミノケイ酸塩のケイ素に対するアルミニウムのモル比(Al/Si)は、特に限定されるものではないが、通常0.02以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.066以上、さらに好ましくは0.1以上であり、通常0.4以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.17以下、さらに好ましくは0.14以下である。ケイ素に対するアルミニウムのモル比を上記の範囲とすることで、触媒として用いた場合に、Al由来の酸強度の強い酸点により、エチレンやメタノール等の有機化合物原料を効率的に転換することができるため好ましい。またコーク付着による触媒の失活、ケイ素以外のT原子の骨格からの脱離、酸点当たりの酸強度の低下といった現象を防ぐことができる。
(ケイ素に対する元素Mの合計のモル比)
本発明のアルミノケイ酸塩のケイ素に対する前記元素Mの合計のモル比(M/Si)は、通常0以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.04以上、通常0.2以下、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.067以下、さらに好ましくは0.05以下である。前記M/Siモル比が上記の範囲にあることで、コーク付着による触媒の失活、ケイ素以外のT原子の骨格からの脱離を抑制することができる。
本発明のアルミノケイ酸塩のSi、Al、その他元素M(B,Fe,Ga)の含有量は、通常、ICP元素分析や蛍光X線分析で測定できる。蛍光X線分析は、標準試料中の分析元素の蛍光X線強度と分析元素の原子濃度との検量線を作成し、この検量線により、蛍光X線分析法(XRF)でアルミノケイ酸塩試料中のケイ素原子、アルミニウム、ガリウム、鉄原子の含有量を求めることができる。なお、ホウ素元素の蛍光X線強度は比較的小さいため、ホウ素原子の含有量はICP元素分析で測定することが好ましい。
(リン含有量)
本発明のアルミノケイ酸塩の結晶内に含まれるリン含有量は、特に限定されるものではないが、少ない方が好ましく、通常500ppm以下、好ましくは300ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは0ppmである。アルミノケイ酸塩の結晶内に含まれるリン含有量を上記の範囲とすることで、十分な比表面積が得られ、また、炭化水素成分の高い結晶内拡散性が得られ、有機化合物原料の転化活性が高くなる。リン由来の酸点での副反応が抑制されるため、プロピレン及び直鎖ブテンの収率が向上させることができる。尚、本発明のアルミノケイ酸塩は、アルミノケイ酸塩の骨格内および/または骨格外にリンが一部含有されていてもよいが、好ましくは骨格外にのみ含有されるものであり、より好ましくは含有されないものである。
(全酸量)
本発明のアルミノケイ酸塩の全酸量(以下、全酸量という)は、前記アルミノケイ酸塩の結晶細孔内に存在する酸点の量と、前記アルミノケイ酸塩の結晶外表面酸点の量(以下、外表面酸量という)の総和である。全酸量は、特に限定されるものではないが、通常0.001mmol/g以上、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.10mmol/g以上、さらに好ましくは0.20mmol/g以上である。また、通常
2.0mmol/g以下、好ましくは1.2mmol/g以下、より好ましくは0.80mmol/g以下、さらに好ましくは0.60mmol/g以下である。全酸量を上記の範囲とすることで、有機化合物原料の転化活性が担保され易く、アルミノケイ酸塩の細孔内部におけるコーク生成が抑制され、分子の結晶内拡散性が上昇することで、プロピレンと直鎖ブテンの生成を促進することができる点で好ましい。
なお、ここでの全酸量は、アンモニア昇温脱離(NH−TPD)における脱離量から算出される。具体的には、前処理としてアルミノケイ酸塩を真空下500℃で30分間乾燥させた後、前処理したアルミノケイ酸塩を100℃で過剰量のアンモニアと接触させて、アルミノケイ酸塩にアンモニアを吸着させる。得られたアルミノケイ酸塩を100℃で真空乾燥する(または、100℃で水蒸気と接触させる)ことにより、該アルミノケイ酸塩から余剰アンモニアを除く。次いでアンモニアが吸着したアルミノケイ酸塩を、ヘリウム雰囲気下、昇温速度10℃/分で加熱して、100−600℃におけるアンモニア脱離量を質量分析法で測定する。アルミノケイ酸塩当たりのアンモニア脱離量を全酸量とする。但し、本発明における全酸量は、TPDプロファイルをガウス関数によって波形分離し、そのピークトップを240℃以上に有する波形の面積の合計とする。この「240℃」は、ピークトップの位置の判断のみに用いる指標であって、240℃以上の部分の面積を求めるという趣旨ではない。ピークトップが240℃以上の波形である限り、当該「波形の面積」は、240℃以外の部分も含む全面積を求める。240℃以上にピークトップを有する波形が複数ある場合には、それぞれの面積の和とする。
本発明の全酸量には、ピークトップを240℃未満に有する弱酸点由来の酸量は含めないものとする。これは、TPDプロファイルにおいて、弱酸点由来の吸着と物理吸着との区別が容易ではないためである。
(外表面酸量)
本発明のアルミノケイ酸塩の結晶外表面酸量は、特に限定されるものではないが、アルミノケイ酸塩の全酸量に対して、通常8%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、さらに好ましくは1%以下、最も好ましくは0%である。外表面酸量が大きすぎる場合には、外表面酸点で起こる副反応によりプロピレンや直鎖ブテンの選択性が低下する傾向がある。これは、外表面酸点で目的物以外の炭化水素を生成する反応が進行するためと推測される。また、前記アルミノケイ酸塩の細孔内で生成したプロピレンや直鎖ブテンが外表面酸点で更に反応してしまうことも選択率低下の一因であると推測される。
なお本発明のアルミノケイ酸塩の外表面酸量の値は、国際公開2010/128644号パンフレットに記載の方法で測定することができる。
前記アルミノケイ酸塩の外表面酸量を、上記範囲に調整する方法としては、特に限定はされないが、通常、前記アルミノケイ酸塩の外表面のシリル化、水蒸気処理、熱処理等の方法が挙げられる。また、アルミノケイ酸塩を成形する際にバインダーと前記アルミノケイ酸塩の外表面酸点を結合させる、といった方法が挙げられる。
(弱酸量)
本発明において、前記アルミノケイ酸塩の全酸量だけでなく、アルミノケイ酸塩中に含まれるアルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄に由来する弱酸点が、メタノール吸着、メタノール転化やオレフィン相互変換に効果的に作用する。よって、その弱酸点由来の弱酸量の指標として、前記アルミノケイ酸塩に含まれるアルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄の合計量(mmol/g)から前記全酸量(mmol/g)を差し引いた値(mmol/g)、を用いる。この値は、通常0.10mmol/g以上、好ましくは0.30mmol/g以上、より好ましくは0.50mmol/g以上、さらに好ましくは1.0mmol/g以上であり、通常5.0mmol/g以下、好ましくは4.0mmol/g以下、より好ましくは3.0mmol/g以下、さらに好ましくは2.0mmol/g以
下である。この値を上記範囲とすることで、メタノール吸着、メタノール転化を促進することができ、高い触媒活性を得ることができる。
なお、前記アルミノケイ酸塩に含まれるアルミニウム、ガリウム、ホウ素、及び鉄の合計量(mmol/g)は、ICP元素分析またはXRF分析等より算出する。
(イオン交換サイト)
本発明のアルミノケイ酸塩のイオン交換サイトは、特に限定されない。通常、プロトンであるか(以下、「プロトン型」「H型」ともいう)、一部がリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属;マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等のアルカリ土類金属;等の金属イオンである。イオン交換サイトは、ケージ空間における金属占有容積低減による分子拡散性向上の観点からは、好ましくはプロトン、ナトリウム、カリウム、カルシウムであり、より好ましくはプロトン、ナトリウム、カリウムであり、さらに好ましくはプロトン、ナトリウムであり、特に好ましくはプロトンである。以下、例えばNaイオンで交換されているものを「Na型」ということがある。なお、アンモニウム(NH)でイオン交換されたものは、反応条件の高温下でアンモニアが脱離するため、通常プロトン型と同等に扱う。
本発明のアルミノケイ酸塩中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計の含有量としては、特に限定されないが、通常0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。アルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計の含有量を上記の範囲とすることで、アルミノケイ酸塩の酸量やケージ空間容積を調整することができるため、反応時のコーク蓄積を抑制することができる点で好ましい。また熱的/水熱的安定性が高くなり
、劣化を抑制することができる点でも好ましい。
また、本発明のアルミノケイ酸塩のイオン交換サイトには、骨格のT原子の脱離を抑制することができる点では、カリウム、セシウム等が含まれていることが好ましい。また、後述するアルミノケイ酸塩の製造方法においても、カリウム、セシウムが含まれていることが、AEI型アルミノケイ酸塩の結晶化が進行し易いため、好ましい。
本発明のアルミノケイ酸塩中のケイ素に対するカリウムのモル比としては、特に限定されないが、通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、通常0.4以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.1以下である。
本発明のアルミノケイ酸塩のケイ素に対するセシウムのモル比としては、特に限定されないが、通常0以上、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、通常0.1以下、好ましくは0.05以下、より好ましくは0.02以下である。
ケイ素に対するカリウム、セシウムのモル比を上記の範囲とすることで、アルミノケイ酸塩の酸量及びケージ空間を調整することができるため、好ましい。
(含有金属)
これらイオン交換サイト以外に、Na、K等のアルカリ金属;Mg、Ca等のアルカリ土類金属;Cr、Cu、Ni、Fe、Mo、W、Pt、Re等の遷移金属が担持されていてもよい。ここで、金属担持は、通常、平衡吸着法、蒸発乾固法、ポアフィリング法等の含浸法で行うことができる。
本発明のアルミノケイ酸塩中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の合計量としては、イオン交換サイト以外にも含有する場合も、上記の含有量の範囲であることが好ましい。
(平均一次粒子径)
本発明のアルミノケイ酸塩の平均一次粒子径は、特に限定されるものではないが、通常
0.03μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.15μm以上、特に好ましくは0.20μm以上であり、通常5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.60μm以下、特に好ましくは0.40μm以下である。上記範囲とすることで、触媒反応におけるゼオライト結晶内の拡散性及び触媒有効係数が十分高くなり、ゼオライト結晶性が十分なものとなり、耐水熱安定性が高い点で好ましい。
なお、本発明における平均一次粒子径とは、一次粒子の粒子径に相当する。したがって、光散乱法などで測定される凝集体の粒子径とは異なる。平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(以降、「SEM」と略記する。)又は透過型電子顕微鏡(以降、「TEM」と略記する。)による粒子の観察において、粒子を任意に50個以上測定し、その一次粒子の粒子径を平均して求められる。粒子が長方形の場合、粒子の長辺・短辺を計測して(奥行は計
測せず)、その和の平均(つまり(長辺+短辺)÷2)を算出して、その粒子の粒子径とする。
(BET比表面積)
本発明のアルミノケイ酸塩のBET比表面積は、特に限定されるものではないが、通常300m/g以上、好ましくは400m/g以上、より好ましくは500m/g以上であり、通常1000m/g以下、好ましくは800m/g以下、より好ましくは750m/g以下である。上記範囲にあることで、細孔内表面に存在する活性点が十分多く、触媒活性が高くなるため好ましい。なお、BET比表面積は、JIS8830(ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)に準じた測定方法によって測定できる。吸着ガスとして窒素を使用し、1点法(相対圧:p/p=0.30)でBET比表面積を求められる。
2.AEI型アルミノケイ酸塩の製造方法
本発明のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法は、(a)ケイ素源と、(b)Framework densityが16.0T/1000A以下であるゼオライトを含むアルミニウム源と、
(c)カリウム源、セシウム源、ストロンチウム源、及びバリウム源からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属元素源又は/及びアルカリ土類元素源、(d)四級アンモニウム塩と、(e)水を含有する混合物の水熱合成によりAEI型アルミノケイ酸塩を製造する方法であって、前記混合物中の、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計に対する、カリウム原子、セシウム原子、ストロンチウム原子、及びバリウム原子の合計のモル比が、0.05以上であり、前記混合物中の、ケイ素原子に対する、四級アンモニウム塩、カリウム原子、セシウム原子、ストロンチウム原子、及びバリウム原子の合計のモル比が、0.12以上であることを特徴とする。
本発明のAEI型アルミノケイ酸塩は、上記の特徴を除いてはゼオライトの水熱合成の常法に従って製造することができる。すなわち、シリカ源、アルミニウム源、元素M源、アルカリ金属元素源及び/またはアルカリ土類金属元素源、および四級アンモニウム塩、水、必要に応じて種結晶、を含む結晶前駆体の混合物を調製し、これを水熱合成する方法で合成することができる。
以下、製造方法の一例を記載する。
(混合物の成分)
(a)ケイ素源
本発明で用いるシリカ源は特に限定されず、微粉シリカ、シリカゾル、シリカゲル、二酸化珪素、水ガラスなどのシリケート、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン等の珪素のアルコキシド、珪素のハロゲン化物などが挙げられる。また、FAU型ゼオライトやCHA型ゼオライトなどのシリカ含有ゼオライトをシリカ源として用いてもよい。
これらシリカ源は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのシリカ原料のうち、コスト面の有利さ、取り扱いの容易さの面で、好ましくは、微粉シリカ、シリカゾル、水ガラス、シリカ含有ゼオライトなどが用いられ、より好ましくは反応性の面で、シリカゾル、水ガラス、シリカ含有ゼオライトが用いられる。
(b)Framework densityが16.0T/1000A以下であるゼオライトを含むア
ルミニウム源
アルミニウム源として、少なくとも、Framework densityが16.0T/1000A
以下であるゼオライトを含む。
Framework densityが16.0T/1000A以下のゼオライトとしては、AEI(
14.8)、AFG(15.9)、AFX(14.7)、BEA(15.1)、BEC(13.9)、BOG(15.6)、CHA(14.5)、EAB(15.5)、EMT(12.9)、ERI(15.7)、ETR(14.7)、FAR(15.8)、FAU(12.7)、FRA(15.6)、GIS(15.3)、GIU(15.9)、GME(14.6)、ISV(15.4)、IWR(15.5)、IWV(15.7)、KFI(14.6)、LIO(15.6)、LOS(15.8)、LTA(12.9)、LEV(15.2)、LTN(15.2)、MAR(15.8)、MEI(14.3)、MER(16.0)OBW(13.1)、OFF(15.5)、OSO(13.4)、PAU(15.5)、PHI(15.8)、RHO(14.1)、SAS(15.3)、SAV(14.4)、TOL(15.9)、TSC(12.1)、UFI(15.4)、UTL(15.2)等が挙げられる。なお、括弧内の数値は、各構造のFramework densityを表す。
これらのゼオライトのうち、汎用性や溶解性の点で、好ましくはAEI型、AFX型、BEA型、CHA型、ERI型、FAU型、LTA型、LEV型、OFF型、RHO型であり、より好ましくはAEI型、AFX型、CHA型、ERI型、FAU型、LEV型であり、さらに好ましくはAEI型、CHA型、FAU型であり、特に好ましくはFAU型である。また、上記アルミニウム含有ゼオライトは、アルミニウム源であると同時に、後述する種結晶としての機能を有するものもある。
前記ゼオライトのSi/Alモル比としては、特に限定されるものではないが、通常1.0以上、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.5以上、特に好ましくは4.0以上であり、通常40以下、好ましくは25以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは8.0以下である。前記ゼオライトのSi/Alモル比を上記の範囲とすることで、AEI型以外の構造のゼオライトの生成を抑制することができる点で好ましい。
前記ゼオライトとしては、アルミニウムを含有するものであれば、特に限定されず、X型ゼオライトまたはY型ゼオライトの少なくともいずれかであることが好ましく、Y型ゼオライトであることがより好ましい。
前記ゼオライトの格子定数は、特に限定されるものではないが、通常24.20Å以上、好ましくは24.30Å以上、より好ましくは24.35Å以上、さらに好ましくは24.40Å以上、特に好ましくは24.45Å以上であり、通常24.70Å以下、好ましくは24.65Å以下、より好ましくは24.60Å以下、さらに好ましくは24.55Å以下、特に好ましくは24.50Å以下である。前記ゼオライトの格子定数が上記の範囲であることで、前記ゼオライトの溶解速度が大きいため、混合物中のcomposite building unitであるd6rの濃度が高まるため、AEI型構造の結晶化が効率的に進行す
るため好ましい。
また、前記ゼオライトとともに、通常、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アモルファスの水酸化アルミニウム、結晶性の水酸化アルミニウム、アルミ
ン酸ナトリウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミナゾル、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシド、アルミニウム含有ゼオライトなどを併用することができる。
これらのアルミニウム源のうち、反応性の面で、好ましくは硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、アモルファスの水酸化アルミニウム、アルミニウム含有ゼオライトであり、より好ましくはアモルファスの水酸化アルミニウム、アルミニウム含有ゼオライトである。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(c)カリウム源、セシウム源、ストロンチウム源、及びバリウム源からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属元素源又は/及びアルカリ土類金属元素源
本発明のアルミノケイ酸塩の製造方法では、水熱合成に供する混合物中に、アルカリ金属元素源又は/及びアルカリ土類金属元素源として、カリウム源、セシウム源、ストロンチウム源、及びバリウム源からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。
カリウム源としては、水酸化カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは水酸化カリウム、塩化カリウム、炭酸カリウムであり、より好ましくは水酸化カリウム、炭酸カリウムであり、さらに好ましくは水酸化カリウムである。
セシウム源としては、水酸化セシウム、塩化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウム、炭酸水素セシウム、炭酸セシウムなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは水酸化セシウム、塩化セシウム、炭酸セシウムであり、より好ましくは水酸化セシウム、炭酸セシウムであり、さらに好ましくは水酸化セシウムである。
ストロンチウム源としては、水酸化ストロンチウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、炭酸水素ストロンチウム、炭酸ストロンチウムなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは水酸化ストロンチウム、塩化ストロンチウム、炭酸ストロンチウムであり、より好ましくは水酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウムであり、さらに好ましくは水酸化ストロンチウムである。
バリウム源としては、水酸化バリウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、炭酸水素バリウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは水酸化バリウム、塩化バリウム、炭酸バリウムであり、より好ましくは水酸化バリウム、炭酸バリウムであり、さらに好ましくは水酸化バリウムである。
カリウム、セシウム、ストロンチウム、バリウムは、イオン半径が比較的大きいため、カウンターカチオンとして構造規定剤のように作用し、AEI構造のケージ空間を安定化することができ、AEI相の結晶化を促進することができるため好ましい。
さらに、前記混合物中にカリウム源を含むことで、AEI構造を構成するcomposite building unitであるd6rの形成を促し、AEI型アルミノケイ酸塩の結晶化を促進す
ることができる点で好ましい。前記混合物中にセシウム源を含むことで、AEI構造のケージ空間を安定化することができ、さらにアルカリ金属原子及び/又はアルカリ土類金属原子をカウンターカチオンとするアルミニウム原子の局所的な取り込みを抑制することができる点で好ましい。従って、前記混合物中には、カリウム源及びセシウム源から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
混合物中には、カリウム源、セシウム源、ストロンチウム源、及びバリウム源以外の、他のアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素を併用してもよい。
他のアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素としては特に限定されず、公知のゼオライト合成に使用されるものを用いることができる。アルカリ金属元素としては、リチウム、ナトリウム、ルビジウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。これらは1種が単独に含まれていても、2
種以上が含まれていてもよいが、アルカリ性が高く、結晶化を促進し易いアルカリ金属元素を含むことが好ましい。好ましくはリチウム、ナトリウム、カルシウム、であり、より好ましくはリチウム、ナトリウムであり、さらに好ましくはナトリウムである。
他のアルカリ金属元素源、アルカリ土類金属元素源としては、その水酸化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸水素塩、炭酸塩などが挙げられる。具体的には、水酸化リチウム、炭酸水素リチウム、炭酸リチウム、塩化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウムなどが挙げられる。これらのうち、アルカリ性が高く、シリカ原料及びアルミニウム原料の溶解、続くアルミノケイ酸塩の結晶化を促進させる効果がある点で、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウムなどの水酸化物が好ましく、より好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウムであり、さらに好ましくは水酸化ナトリウムである。
(d)四級アンモニウム塩
四級アンモニウム塩は、有機構造規定剤(「テンプレート」とも呼称される。以下、有機構造規定剤を「SDA」と称す場合がある。)である。四級アンモニウム塩としては、AEI型構造の形成に寄与する構造規定剤となるものであれば特に限定はされず、例えば、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド(TMAOH)、テトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド(TEAOH)、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド(TPAOH)、N,N‐ジエチル‐2,6‐ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N‐ジメチル‐9‐アゾニアビシクロ[3.3.1]ノナン、N,N‐ジメチル‐2,6‐ジメチルピペリジニウムカチオン、N‐エチル‐N‐メチル‐2,6‐ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N‐ジエチル‐2‐エチルピペリジニウムカチオン、N,N‐ジメチル‐2‐(2‐ヒドロキシエチル)ピペリジニウムカチオン、N,N‐ジメチル‐2‐エチルピペリジニウムカチオン、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムカチオン、N‐エチル‐N‐メチル‐2‐エチルピペリジニウムカチオン、2,6‐ジメチル‐1‐アゾニウム[5.4]デカンカチオン、N‐エチル‐N‐プロピル‐2,6‐ジメチルピペリジニウムカチオン等が挙げられる。これらのうち、好ましくはN,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N‐ジエチル‐2,6‐ジメチルピペリジニウムカチオン、N,N‐ジメチル‐9‐アゾニアビシクロ[3.3.1]ノナンカチオンであり、特に好ましくはN,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムカチオンである。なお、置換基の配置によるシス-トランス異性体が存在する場合、これらの異
性体のいずれを用いてもよく、異性体混合物として用いてもよい。
また、本発明のアルミノケイ酸塩中にリンを含む場合は、リン含有系有機構造規定剤として、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、ジフェニルジメチルホスホニウムのような物質を使用することができる。
しかし、リン含有系有機構造規定剤は、合成されたゼオライトを焼成してSDAを除去するときに、有害物質である五酸化二リンを発生する可能性がある。そのため、有機構造規定剤としては、好ましくは窒素含有系有機構造規定剤である。
四級アンモニウム塩として用いられる四級アンモニウムカチオンは、本発明のAEI型ゼオライトの形成を阻害しないアニオンをともなうものである。前記アニオンは、特に限定はされないが、具体的には、Cl、Br、Iなどのハロゲンイオンや水酸化物イオン、酢酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩等が用いられる。中でも、水酸化物イオンは特に好適に用いられる。
四級アンモニウム塩は、1種のみを使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
(e)水
通常は、イオン交換水を用いる。
(f)種結晶
本発明において、水熱合成に供する混合物中に種結晶を添加してもよい。この種結晶としては、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含むゼオライトが好ましく、AEI型、AFX型、CHA型、ERI型、FAU型、LEV型がより好ましく、AEI型、CHA型、FAU型がさらに好ましい。
種結晶は、1種のみを用いてもよく、構造や組成の異なるものを組み合わせて用いてもよい。種結晶として用いるゼオライトの組成は、混合物の組成に大きく影響を与えるものでなければ、特に限定されるものではない。
種結晶として用いるゼオライトの粒子径は、特に限定されるものではないが、平均一次粒子径として、通常0.03μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.2μm以上、通常5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.60μm以下である。種結晶の平均一次粒子径を上記範囲とすることで、前記混合物中での種結晶の溶解性が高くなり、副生物の生成を抑制し、AEI型相の結晶化を効率的に促進することができる。
また、種結晶としては、水熱合成後に焼成を行っていない構造規定剤を含むゼオライト、焼成を行って構造規定剤を含まないゼオライトのいずれを用いてもよい。結晶核として効果的に作用するためには、結晶化初期段階で溶解し過ぎない方が好適であるため、構造規定剤を含むゼオライトを用いることが好ましい。ただし、アルカリ濃度が低い条件や、合成温度が低い条件などでは、構造規定剤を含むゼオライトの溶解性が十分でない場合があり、その場合には、構造規定剤を含まないゼオライトを用いることが好ましい。
種結晶は、適当な溶媒、例えば水に分散させて混合物に添加してもよいし、分散させずに直接添加してもよい。
(g)その他の金属源
水熱合成時の混合物中には、元素M源を含んでいてもよい。元素M源としては特に限定されず、例えば、これらの元素の硫酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物、アルコキシド、元素M含有ゼオライトなどから選ばれる。
これらの元素M源のうち、反応性の面で硫酸塩、硝酸塩、水酸化物、アルコキシドが好ましく、コスト面、作業面で硫酸塩、硝酸塩、水酸化物がより好ましい。
ホウ素源としては、通常、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、酸化ホウ素、ホウ素含有ゼオライトなどが用いられ、好ましくはホウ酸、ホウ酸ナトリウムであり、より好ましくはホウ酸である。
また、ガリウム源としては、通常、硫酸ガリウム、硝酸ガリウム、酸化ガリウム、塩化ガリウム、リン酸ガリウム、水酸化ガリウム、ガリウム含有ゼオライトなどが用いられ、好ましくは硫酸ガリウム、硝酸ガリウムであり、より好ましくは硫酸ガリウムである。
鉄源としては、通常、硝酸鉄、硫酸鉄、酸化鉄、塩化鉄、水酸化鉄、鉄含有ゼオライトなどが用いられ、好ましくは硫酸鉄、硝酸鉄であり、より好ましくは硫酸鉄である。
これらの元素M源は、1種を単独で用いてもよく、同一の元素のものの2種以上を組み合わせて用いてよく、また、異なる元素のものの1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、混合物中に、その他の金属(鉛、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、錫、クロム、コバルトなど)源を含んでいてもよい。これらは混合物中に1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
(混合物の組成)
本発明において、水熱合成に供される混合物(スラリーないしゲル)の好適な組成は次の通りである。
なお、以下の組成は、種結晶を添加する場合には、種結晶に含まれるケイ素、アルミニウム、元素M、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、水(吸着水)は含めずに算出される値であり、種結晶に含まれる四級アンモニウム塩は含めて算出される値である。
前記アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計に対する、カリウム原子、セシウム原子、ストロンチウム原子、及びバリウム原子の合計のモル比は、0.05以上、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.30以上、さらに好ましくは0.50以上、特に好ましくは0.70以上であり、通常1.0以下、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.85以下、特に好ましくは0.80以下である。上記範囲とすることで、AEI構造のケージ空間の十分な安定化効果が得られ、AEI型のアルミノケイ酸塩の結晶化を促進することができる。
混合物中のケイ素原子に対する、四級アンモニウム塩、カリウム原子、セシウム原子、ストロンチウム原子、及びバリウム原子の合計のモル比は、0.12以上であり、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.25以上、特に好ましくは0.30以上であり、通常0.80以下、好ましくは0.60以下、より好ましくは0.55以下、さらに好ましくは0.50以下、特に好ましくは0.45以下である。上記の比率を上記の範囲とすることで、結晶化時におけるAEI構造のケージ空間の十分な安定化効果が得られ、AEI型のアルミノケイ酸塩の結晶化を促進することができる。また、高いpH条件での結晶化となるため、結晶化速度が十分大きくなり、AEI型アルミノケイ酸塩が得られやすい点で好ましい。
混合物中のケイ素原子に対するアルミニウム原子のモル比(Al/Si)は、特に限定されるものではないが、通常0.02以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.066以上、さらに好ましくは0.1以上であり、通常0.4以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.17以下、さらに好ましくは0.14以下である。ケイ素原子に対するアルミニウム原子のモル比を上記の範囲とすることで、AEI型を指向し易くなり、合成収率が向上する。また、触媒として用いた場合に、Al由来の酸点により有機化合物原料を効率的に転換することができるため好ましい。
混合物中のケイ素原子に対する前記元素M(ホウ素、ガリウム、及び鉄からなる群より選ばれる少なくとも1種)の合計のモル比(M/Si)は、特に限定されるものではないが、通常0.02以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.066以上、さらに好ましくは0.1以上であり、通常0.4以下、好ましくは0.2以下、より好ましくは0.17以下、さらに好ましくは0.14以下である。M/Siを上記範囲とすることで、アルミノケイ酸塩の骨格内に取り込まれ、AEI型アルミノケイ酸塩の結晶化が促進される。
混合物中のケイ素原子(Si)が全てSiOになっているとした時のSiOに対する前記ゼオライト由来のSiOのモル比は、特に限定されるものではないが、通常1.0以下、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.60以下、さらに好ましくは0.50以下であり、通常0.01以上、好ましくは0.10以上、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.30以上である。ゼオライト由来のSiOのモル比を上記の範囲とすることで、混合物中のゼオライト由来のbuilding unit(ナノパーツ)の濃度が十分に高くなり、AEI型構造の結晶化が効率的に進行するため好ましい。
混合物中のケイ素原子に対するアルカリ金属原子とアルカリ土類金属原子の合計のモル
比[(アルカリ金属原子+アルカリ土類金属原子)/Si]は、特に限定されるものではないが、通常0.10以上、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.25以上、さらに好ましくは0.30以上、特に好ましくは0.35以上であり、通常0.60以下、好ましくは0.55以下、より好ましくは0.50以下、さらに好ましくは0.45以下、特に好ましくは0.40以下である。上記の比率を上記の範囲とすることで、アルミニウムのAEI型アルミノケイ酸塩骨格への取り込みが十分なものとなり、合成収率が向上する。また、副生成物の生成を抑制することができ、またAEI相への結晶化速度を高めることができる点で好ましい。
混合物中のアルミニウム原子に対する前記アルカリ金属原子と前記アルカリ土類金属原子の合計のモル比[(アルカリ金属原子+アルカリ土類金属原子)/Al]は、特に限定されるものではないが、通常0.5以上、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、通常15以下、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下である。上記の比率を上記の範囲とすることで、結晶化時のアルミニウムに対するアルカリ金属、アルカリ土類金属の相互作用が効果的なものとなり、AEI型アルミノケイ酸塩が得られやすい点で好ましい。
前記アルカリ金属原子と前記アルカリ土類金属原子の合計に対するナトリウム原子のモル比は、通常0以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.30以上であり、通常1.0以下、好ましくは0.80以下、より好ましくは0.60以下、さらに好ましくは0.50以下である。ナトリウム原子の含有量を上記範囲とすることで、アルミニウム原料であるFAU型ゼオライトの溶解を促進し、混合物中におけるcomposite building unitであるd6rの
濃度を高めることができるため好ましい。
前記アルカリ金属原子と前記アルカリ土類金属原子の合計に対するカリウム原子のモル比は、通常0以上、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.40以上、特に好ましくは0.60以上であり、通常1.0以下、好ましくは0.95以下、より好ましくは0.90以下、さらに好ましくは0.85以下、特に好ましくは0.80以下である。カリウム原子の含有量を上記範囲とすることで、AEI構造を構成するcomposite building unitであるd6rの形成を促し、AEI型のアルミノ
ケイ酸塩の結晶化を促進することができる。
前記アルカリ金属原子と前記アルカリ土類金属原子の合計に対するセシウム原子のモル比は、特に限定されるものではないが、通常0以上、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.05以上、さらに好ましくは0.10以上、特に好ましくは0.15以上であり、通常0.80以下、好ましくは0.50以下、より好ましくは0.30以下、さらに好ましくは0.25以下、特に好ましくは0.20以下である。セシウム原子の含有量を上記範囲とすることで、カウンターカチオンとして構造規定剤のように作用し、AEI構造のケージ空間を安定化することができると考えられる。
混合物中の構造規定剤として用いる四級アンモニウム塩の割合は、特に限定されるものではないが、ケイ素原子に対する四級アンモニウム塩のモル比(四級アンモニウム塩/Si)は、通常0.001以上、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.02以上、さらに好ましくは0.03以上、特に好ましくは0.04以上であり、通常0.40以下、好ましくは0.20以下、より好ましくは0.15以下、さらに好ましくは0.10以下、特に好ましくは0.07以下である。混合物中の四級アンモニウム塩を上記の範囲とすることで、混合物中での核発生を促し、AEI型アルミノケイ酸塩の結晶化が促進され、収率良く合成できる点で好ましい。また、高価な四級アンモニウム塩の使用量を抑えられ、アルミノケイ酸塩の製造コストを低減できる点で好ましい。
混合物中のアルミニウム原子に対する、前記四級アンモニウム塩、前記アルカリ金属原子と前記アルカリ土類金属原子の合計のモル比[(四級アンモニウム塩+アルカリ金属+アルカリ土類金属)/Al]は、特に限定されるものではないが、通常1.0以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは2.5以上であり、通常10以下、好ましくは8.0以下、より好ましくは6.0以下、さらに好ましくは5.0以下である。上記の比率を上記の範囲とすることで、結晶化時のアルミニウムと四級アンモニウム塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属の相互作用が効果的なものとなり、AEI型アルミノケイ酸塩が得られやすい点で好ましい。
混合物中の水の割合は、特に限定されるものではないが、ケイ素に対するHOのモル比(HO/Si)として、通常5以上、好ましくは7以上、より好ましくは9以上、さらに好ましくは10以上であり、通常50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、さらに好ましくは25以下である。混合物中の水の割合を上記の範囲とすることで、結晶化を促進することができる。また、反応器当たりの生産性を高めることができる。反応時の粘度上昇による撹拌混合性の低下や廃液処理コストを抑えることができる点で好ましい。
混合物中に添加する種結晶の量は、特に限定されないが、本発明で添加する種結晶以外の混合物に含まれるケイ素(Si)がすべてSiOであるとした時のSiOに対して、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、特に好ましくは4質量%以上であり、また、上限は特に限定されないが、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは8質量%以下、特に好ましくは6質量%以下である。種結晶の量を上記の範囲とすることで、AEI型構造を指向する前駆体量が十分なものとなり、結晶化を促進することができる。また、生成物中に含まれる種結晶由来の成分量が抑えられ、生産性を高めることができるため、生産コストを低減することができる。
(水熱合成工程)
上記混合物を、反応容器中で加熱することにより(水熱合成)、AEI型アルミノケイ酸塩を製造することができる。
加熱温度(反応温度)は特に限定されず、通常120℃以上、好ましくは140℃以上、より好ましくは160℃以上、さらに好ましくは170℃以上であり、通常220℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは190℃以下、さらに好ましくは185℃以下である。反応温度を上記の範囲とすることで、AEI型アルミノケイ酸塩の結晶化時間を短縮することができ、アルミノケイ酸塩の収率が向上する。また、異なる構造のアルミノケイ酸塩の副生を抑制できる点で好ましい。
加熱温度(反応温度)まで昇温するのに要する時間は、特に限定されるものではなく、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1時間以上であり、昇温に要する時間の上限は特にない。
加熱時間(反応時間)は、通常1時間以上、好ましくは5時間以上、より好ましくは10時間以上であり、また上限は、通常14日間以下、好ましくは7日間以下、より好ましくは3日以下である。反応時間を上記の範囲とすることで、AEI型アルミノケイ酸塩の収率を向上させることができ、また、異なる構造のアルミノケイ酸塩の副生を抑制できる点で好ましい。
反応時の圧力は特に限定されず、密閉容器中に入れた混合物を上記温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分であるが、必要に応じて、窒素などの不活性ガスを加えてもよい。
(分離・精製工程)
水熱合成により得られたAEI型アルミノケイ酸塩は、水洗した後、該アルミノケイ酸塩中に含まれる構造規定剤を除去することが望ましい。
構造規定剤の除去方法は特に限定されず、焼成や溶媒抽出等のそれ自体既知の通常用いられる方法で行えばよいが、焼成が望ましい。
焼成温度は、通常350℃以上、好ましくは400℃以上、より好ましくは450℃であり、また上限は、通常900℃以下、好ましくは850℃以下、より好ましくは800℃以下である。焼成温度を上記の範囲とすることで、構造規定剤を効率的に除去することができ、アルミノケイ酸塩の細孔容積が十分に大きくなる。また、アルミノケイ酸塩の骨格崩壊や結晶性の低下を抑制することができる。
焼成時間は、構造規定剤が十分に取り除かれれば特に限定されないが、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上であり、また上限は、通常24時間以内である。
焼成は、酸素が含まれている雰囲気で行うのが好ましく、通常、空気雰囲気で行われる。
3.プロピレン及び直鎖ブテンの製造方法
(AEI型アルミノケイ酸塩の処理方法)
本発明のAEI型アルミノケイ酸塩は、上述の焼成後、適宜、水蒸気処理、熱処理、酸処理、脱ホウ素処理及びイオン交換から選ばれる少なくとも1つの処理を施してもよい。このうち、好ましくは水蒸気処理、熱処理、イオン交換から選ばれる少なくとも1つの処理を施したものであり、より好ましくは水蒸気処理、イオン交換から選ばれる少なくとも1つの処理を施したものであり、さらに好ましくは水蒸気処理を施したものである。これらの処理に加えて、シリル化処理を施して用いてもよい。好ましくは水蒸気処理、イオン交換から選ばれる少なくとも1つの処理とシリル化処理を併用したものであり、より好ましくは水蒸気処理とシリル化処理を併用したものである。
以下、これらの処理方法について述べる。
<水蒸気処理>
本発明のAEI型アルミノケイ酸塩の水蒸気処理方法は、特に限定されるものではないが、本発明の効果を損なわない範囲において水蒸気を含む気体に接触させることができる。具体的には水蒸気、空気又は不活性ガスで希釈した水蒸気、メタノールおよび/またはジメチルエーテルとともに水蒸気を含む反応雰囲気、または水蒸気を生成する反応雰囲気等に接触させる方法などが挙げられる。水蒸気を生成する反応とは、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの脱水反応のように脱水が起こって水蒸気を生成する反応のことである。なお、条件によって水蒸気が部分的に液体の水として存在しても構わないが、前記アルミノケイ酸塩に一様な水蒸気処理効果を与えるために、全体が水蒸気の状態で存在していることが好ましい。
前記アルミノケイ酸塩は水蒸気処理により、その骨格を形成するT原子の脱離が結晶全体で起こるため、前記の外表面酸量だけでなく、前記全酸量も減少すると考えられる。この全酸量の減少により、アルミノケイ酸塩の細孔内部におけるコーク生成が抑制され、分子の結晶内拡散性が向上する。このため、プロピレンよりも大きい分子の直鎖ブテンの生成が相対的に促進されるものと推測される。
なお、過度な水蒸気処理を行うと、分子の結晶内拡散性が必要以上に上昇し、ペンテンやヘキセン等の炭素数5以上の炭化水素分子の生成量が増加する傾向がある。
前記アルミノケイ酸塩の水蒸気処理温度は、特に限定されるものではないが、通常600℃以上であり、好ましくは700℃以上、より好ましくは750℃以上、さらに好ましくは800℃以上である。また通常1000℃以下であり、好ましくは950℃以下、よ
り好ましくは900℃以下、さらに好ましくは850℃以下である。水蒸気処理温度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を起こさずに、短い処理時間で効率的にT原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
水蒸気処理に用いる水蒸気(スチーム)は、空気や、ヘリウム、窒素等の不活性ガスで希釈して使用することができる。その際の水蒸気濃度は、特に限定されるものではないが、前記アルミノケイ酸塩を水蒸気処理する際に用いる気体全体に対して通常5体積%以上、好ましくは20体積%以上、より好ましくは35体積%以上であり、さらに好ましくは50体積%以上であり、通常100体積%以下、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、さらに好ましくは70体積%以下である。水蒸気濃度を上記範囲にすることで、短い処理時間で効率的にT原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
水蒸気処理の圧力(希釈ガスを含む全圧)は特に制限されるものではないが、通常50kPa(絶対圧、以下同様)以上、好ましくは75kPa以上、より好ましくは100kPa以上であり、通常2MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下である。水蒸気処理の圧力を上記圧力範囲にすることで、短時間で効率的にT原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
水蒸気の分圧は特に制限されるものではないが、通常0.01MPa以上(絶対圧、以下同様)、好ましくは0.03MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上、さらに好ましくは0.06MPa以上、特に好ましくは0.07MPa以上であり、通常3MPa以下、好ましくは2MPa以下、より好ましくは1MPa以下、さらに好ましくは0.2MPa以下、特に好ましくは0.1MPa以下である。水蒸気の分圧を上記圧力範囲にすることで、短時間で効率的にT原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
前記アルミノケイ酸塩の水蒸気処理時間は、特に限定されるものではないが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上であり、より好ましくは1時間以上である。また触媒活性を著しく阻害しない限りにおいては処理時間の上限はない。水蒸気処理温度及び水蒸気濃度により、処理時間は適宜調整することができる。
前記アルミノケイ酸塩の水蒸気処理は、その細孔内部に有機物が存在している状態で行ってもよい。有機物が細孔内部に存在することで、特に強い水蒸気処理を行なった場合に、細孔内部の酸点の極端な減少を防ぎつつ、外表面酸点の大幅な減少をはかることができる。
前記有機物としては、特に限定されないが、アルミノケイ酸塩の水熱合成時に使用する構造規定剤、及び反応によって生成するコーク等が挙げられる。これら有機物は、水熱合成後のアルミノケイ酸塩(以下、焼成前アルミノケイ酸塩ということがある)に水蒸気処理を行った後、空気焼成等の燃焼工程を経て除去することもでき、または空気等の酸素含有ガスで希釈した水蒸気で処理することにより、有機物を除去しながら水蒸気処理することもできる。
前記アルミノケイ酸塩を水蒸気処理に供する前に、アルカリ土類金属を含む化合物と物理混合することも可能である。アルカリ土類金属を添加することにより、アルミノケイ酸塩の強酸点を中和し、強酸点で生成するコークの生成を抑制できることがある。アルカリ土類金属を含む化合物としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸マグネシウムが挙げられ、中でも炭酸カルシウムが好ましい。
アルカリ土類金属を含む化合物の量は、特に限定されないが、前記アルミノケイ酸塩に対して通常、0.5質量%以上、好ましくは3質量%以上、通常30質量%以下、好ましくは10質量%以下である。
<熱処理>
本発明のAEI型構造のアルミノケイ酸塩を熱処理する方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、前記アルミノケイ酸塩を、空気及び不活性ガスから選ばれる少なくとも1つの雰囲気下で高温処理する方法や、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを含む混合ガス雰囲気下で高温処理する方法などが挙げられる。
前記アルミノケイ酸塩の熱処理では、水蒸気処理と同様、その骨格内のT原子の脱離による全酸量を減少させることができる。
熱処理温度は特に限定されるものではないが、通常600℃以上、好ましくは700℃以上、より好ましくは800℃以上、さらに好ましくは900℃以上であり、通常1200℃以下、好ましくは1100℃以下、より好ましくは1000℃以下、さらに好ましくは950℃以下である。熱処理温度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を起こさずに、短い処理時間で効率的にT原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
熱処理の際に使用するガス種としては、ヘリウム、窒素、空気等を使用することができる。
熱処理も水蒸気処理同様に、細孔内部に有機物が存在している状態で行っても良い。ヘリウムや窒素等の不活性ガスを用いた場合、熱処理により有機物が炭化する場合があるが、空気での焼成により、除去することができる。
なお、前記熱処理は上記のアルミノケイ酸塩を製造する際に行われる焼成と同時に行っても別個に分けて行ってもよい。前記熱処理は骨格内のT原子の脱離等を目的とするため比較的高温で行われ、特に限定はされないが、具体的には、上記の焼成と熱処理を別個に行なう場合であれば、前記熱処理は、通常、前記焼成よりも高い温度で行なわれる。
熱処理の時間は、特に限定されるものではないが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1.0時間以上である。また触媒活性を著しく阻害しない限りにおいては処理時間の上限はなく、熱処理温度により、処理時間は適宜調整することができる。
<酸処理>
本発明のAEI型構造のアルミノケイ酸塩の酸処理の方法は、特に限定されるものではないが、具体的には、酸性水溶液を用いる方法が挙げられる。
前記酸性水溶液に用いる酸の種類としては、特に限定されるものではないが、硫酸、硝酸、塩酸、リン酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸、シュウ酸、マロン酸などのジカルボン酸などを使用することができる。これらのうち好ましいのは、硫酸、硝酸、塩酸である。
前記酸性水溶液の酸の濃度としては、特に限定されるものではないが、通常0.01M以上、好ましくは0.1M以上、より好ましくは1M以上であり、通常10M以下であり、好ましくは8M以下であり、より好ましくは6M以下である。酸の濃度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を起こさずに、短い処理時間で効率的にT原子を骨格から除去することができる点で好ましい。
アルミノケイ酸塩に対する酸性水溶液の量としては、特に制限されるものではないが、アルミノケイ酸塩1gに対して、酸性水溶液の総量で通常3g以上、好ましくは5g以上、より好ましくは10g以上であり、通常100g以下、好ましくは80g以下、より好ましくは50g以下である。酸性水溶液の量を上記の範囲とすることで、スラリーの十分な撹拌効率を得るとともに、一定の生産性を確保することができる点で好ましい。
酸処理の温度としては、特に限定されるものではないが、常圧においては通常室温から
100℃、耐圧容器内では100℃以上で行うことも可能であり、通常40℃以上、好ましく60℃以上、より好ましくは80℃以上であり、通常200℃以下、好ましくは180℃以下、より好ましくは160℃以下である。酸処理の温度を上記の範囲とすることで、骨格構造の崩壊を抑制しながら、短時間で効率的にT原子を骨格から除去することができる。
酸処理の処理時間は、特に限定されるものではなく、酸の濃度や反応温度にもよるが、通常0.01時間以上、好ましくは0.1時間以上であり、触媒の性能を阻害しない限りにおいて処理時間の上限は特にない。酸の濃度や反応温度により、処理時間は適宜調整することができる。
酸性水溶液中に、シリル化剤を添加することにより、酸処理とシリル化処理を同時に行うこともできる。その際に用いるシリル化剤は、前記シリル化剤と同じである。
<イオン交換>
アルミノケイ酸塩のT原子のカウンターカチオンは、通常、ナトリウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム(NH)あるいはプロトン(H)である。これらのカウンターカチオンはイオン交換可能であり、適宜、金属イオン交換して使用することができる。
交換する金属としては、特に限定されるものではないが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等のアルカリ土類金属が挙げられる。好ましくはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムであり、より好ましくはナトリウム、カリウム、カルシウムであり、さらに好ましくはナトリウム、カルシウムである。イオン交換することで、アルミノケイ酸塩の酸量やケージ空間容積を調整することができるため、反応時のコーク蓄積を抑制することができる点で好ましい。また熱的/水熱的安定性が高くなり脱アルミによる
劣化を抑制することができる点でも好ましい。
金属イオン交換の方法は、特に限定されるものではないが、既知のイオン交換法によって行うことができる。イオン交換法に用いる際の、アルミノケイ酸塩のカチオンは特に限定されず、通常、ナトリウム型、アンモニウム型、あるいはプロトン型が用いられる。
金属源としては、通常、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、炭酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩等が用いられ、好ましくは硝酸塩、硫酸塩、塩化物塩であり、より好ましくは硝酸塩である。
用いる溶媒としては、金属源が溶解するものであれば、特に限定されるものではないが、通常、水が用いられる。
金属源溶液の濃度は、特に限定されるものではないが、通常0.1M以上、好ましくは0.5M以上、より好ましくは1M以上であり、また上限は、通常10M以下、好ましくは8M以下、より好ましくは6M以下である。金属源の溶解度見合いで濃度を調整することが望ましい。
イオン交換を行う温度は、室温から溶媒の沸点程度である。処理時間は、イオン交換が十分平衡に達する時間であればよく、通常1〜6時間程度である。金属の交換率を高めるため、イオン交換を複数回繰り返すことも可能である。
所定の時間処理した懸濁液からのアルミノケイ酸塩の分離は、通常の固液分離操作、例えば濾過や遠心分離によって行う。
イオン交換後のアルミノケイ酸塩を乾燥する際の雰囲気は特に限定されず、例えば空気中、不活性ガス中、真空中などで行われる。乾燥温度は、通常、室温から溶媒の沸点程度である。
イオン交換後のアルミノケイ酸塩は、適宜焼成を行って使用する。焼成温度は金属源の分解温度よりも高温であればよく、通常200℃〜600℃、好ましくは300℃〜500℃である。焼成温度が低すぎると金属源が残留しやすく、焼成温度が高すぎるとアルミノケイ酸塩の構造崩壊や、金属のシンタリングが進行し易くなる。
<シリル化処理>
AEI型構造のアルミノケイ酸塩をシリル化処理する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜用いることができ、具体的には液相シリル化や気相シリル化等を行うことができる。
AEI型構造のアルミノケイ酸塩は、シリル化処理により、通常、外表面の酸点が被覆され、不活性化されることにより、外表面酸量が低下するものと考えられる。外表面酸量が低下すると、前記アルミノケイ酸塩の外表面で起こる副反応が抑制される。具体的には、有機化合物原料や、アルミノケイ酸塩の細孔内で生成した低級オレフィンがアルミノケイ酸塩の外表面の酸点と接触することで、目的物以外の成分が生成する反応を抑制する効果があると考えられる。また、外表面酸点のシリル化では、前記アルミノケイ酸塩が有する細孔を構成する酸点にもシリル基が結合するため、外表面開口部の細孔径が僅かに縮小し、結晶外への分子拡散を抑制する効果もあると考えられる。これにより、より大きい分子である炭素数5以上の炭化水素の生成を抑制することができ、低級オレフィンの選択率が向上するものと考える。
以下、シリル化処理を、液相シリル化を例に取り、具体的に説明する。
シリル化剤としては、特に限定されるものではなく、通常はアルミノケイ酸塩の外表面をシリル化することができ、かつアルミノケイ酸塩の細孔内をシリル化することができないものを使用する。具体的には、シリコーン類、クロロシラン類、アルコキシシラン類、シロキサン類、シラザン類などが使用できる。これらのうち、気相シリル化には通常クロロシラン類、液相シリル化には通常アルコキシシラン類が用いられ、より好ましいシリル化剤は、反応性が高く、取り扱いが比較的容易であるという点で、アルコキシシラン類である。
シリコーン類としては、具体的にはジメチルシリコーン、ジエチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーン、エチルハイドロジェンシリコーン、フェニルハイドロジェンシリコーン、メチルエチルシリコーン、フェニルエチルシリコーン、ジフェニルシリコーン、メチルトリフルオロプロピルシリコーン、エチルトリフルオロプロピルシリコーン、テトラクロロフェニルメチルシリコーン、テトラクロロフェニルエチルシリコーン、テトラクロロフェニルハイドロジェンシリコーン、テトラクロロフェニルシリコーン、メチルビニルシリコーン及びエチルビニルシリコーン等が用いられる。
クロロシラン類としては、具体的には、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、トリクロロメチルシラン、ジクロロジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、トリクロロエチルシラン、ジクロロジエチルシラン、クロロトリエチルシラン等が用いられる。
アルコキシシラン類としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等;の4級アルコキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン等;の3級アルコキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、ジエトキシジエチルシラン等;の2級アルコキシシラン、メトキシトリメチルシラン、メトキシトリエチルシラン、エトキシトリメチルシラン、エトキシトリエチルシラン等;の1級アルコキシシランが用いられる。好ましくは2級以上のアルコキシシランであり、よ
り好ましくは3級以上のアルコキシシランであり、さらに好ましくは4級アルコキシシランである。
シロキサン類としては、具体的には、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ペンタメチルジシロキサン、テトラメチルジシロキサン等が挙げられ、ヘキサメチルジシロキサンが好ましい。
シラザン類としては、具体的には、ヘキサメチルジシラザン、ジプロピルテトラメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン、テトラフェニルジメチルジシラザン等が挙げられ、ヘキサメチルジシラザンが好ましい。
前記アルミノケイ酸塩に対するシリル化剤の量は、特に限定されるものではないが、前記アルミノケイ酸塩1モルに対して、通常0.001モル以上、好ましくは0.01モル以上、より好ましくは0.1モル以上である。また、通常5モル以下であり、好ましくは3モル以下、より好ましくは1モル以下である。シリル化剤の量を上記の範囲とすることで、外表面酸点のシリル化被覆が効率的に進行し、かつ過度なシリル化被覆による触媒活性低下を抑制できる点で好ましい。なお、上記シリル化剤の量は、シリル化剤に含まれるSi原子のモル数で表すこととし、分子内に複数のSi原子を有するシリル化剤では、そのSi原子の合計のモル数をシリル化剤のモル数として扱うことにする。
液相シリル化を行う場合、溶媒を使用することができ、溶媒としては、特に限定されないが、へキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素や水を使用することができる。また、水溶媒で液相シリル化を行なう場合は、シリル化反応を促進するために、硫酸や硝酸等の酸を添加した酸性水溶液を使用することができる。
液相シリル化を行う場合、前記液相シリル化反応を行なう溶液中のシリル化剤の濃度は、特に限定されるものではないが、通常0.01質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。また、通常80質量%以下であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下である。シリル化剤の濃度を上記の範囲とすることで、シリル化剤同士の縮合を抑制し、かつシリル化速度を維持できる点で好ましい。
液相シリル化を行なう場合の前記アルミノケイ酸塩に対する溶媒の量は、特に制限されるものではないが、前記アルミノケイ酸塩1gに対して、通常1g以上、好ましくは3g以上、より好ましくは5g以上である。また、通常100g以下、好ましくは80g以下、より好ましくは50g以下である。溶媒の量を上記の範囲とすることで、スラリーの十分な撹拌効率を得るとともに、一定の生産性を確保することができる点で好ましい。
液相シリル化を行う場合、シリル化処理に供するアルミノケイ酸塩に特定の範囲の水分を付与しておいても良い。前記のアルミノケイ酸塩が含有する水分は、アルミノケイ酸塩が元々含有しているものであっても、人為的に水分を供給して、特定の範囲に調整してもよい。通常、本発明のアルミノケイ酸塩は水熱合成により得られたものを焼成し、さらに必要に応じてアンモニウム型へ変換してから焼成することによりプロトン型に変換したものを使用する。したがって、通常シリル化処理前のアルミノケイ酸塩の水分含有量は、通常非常に少ないと想定され、そのままシリル化処理に供してもよいし、アルミノケイ酸塩に特定の水分含有量となるように水分を供給し、水分含有量を調整して使用してもよい(以下、調湿処理ということがある)。
前記水分含有量は、特に制限されるものではないが、アルミノケイ酸塩中に含まれる水分重量を乾燥アルミノケイ酸塩の重量に対する質量%で表し、通常30質量%以下、好ま
しくは25質量%以下であり、下限としては完全乾燥状態の0質量%である。水分含有量を上記の範囲とすることで、外表面酸点のシリル化被覆が効率的に進行し、かつ過度なシリル化による細孔閉塞を防ぐことができる点で好ましい。
前記調湿処理方法は、所定の水分量に調整することができれば、特に限定されるものではない。例えば、アルミノケイ酸塩を適当な相対湿度を有する大気中に放置する方法、アルミノケイ酸塩を、密閉容器(デシケーター等)中に、水または無機塩の飽和水溶液とともに共存させ、飽和水蒸気雰囲気下で放置する方法、アルミノケイ酸塩に、適当な水蒸気圧のガスを流通させる方法等が挙げられる。なお、前記の方法においては、より均一な調湿を行うために、アルミノケイ酸塩を混合または攪拌しながら調湿処理を行ってもよい。
シリル化処理をする温度は、使用するシリル化剤や溶媒の種類により適宜調整され、特に限定されるものではないが、通常20℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上である。また、通常140℃以下、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは100℃以下である。シリル化処理温度を上記の範囲とすることで、前記アルミノケイ酸塩細孔内の水分の吐出が抑制されるため、外表面酸点のシリル化被覆が効率的に進行し、かつシリル化速度を維持できる点で好ましい。
シリル化剤を添加してからシリル化温度まで昇温するのに要する時間は、特に限定されるものではなく、シリル化温度にてシリル化剤を添加してもよいが、通常0.01時間以上、好ましくは0.05時間以上、より好ましくは0.1時間以上であり、昇温に要する時間の上限は特にない。シリル化温度が高い場合、昇温に要する時間を上記の範囲とすることで、前記アルミノケイ酸塩の細孔内からの水分の吐出が抑制されるため、溶液中のシリル化剤の加水分解及び重合反応が抑制され、前記アルミノケイ酸塩のシリル化が効率的に進行する点で好ましい。
シリル化の処理時間は、反応温度にもよるが、通常0.1時間以上、好ましくは0.5時間以上であり、より好ましくは1時間以上であり、触媒の性能を阻害しない限りにおいて処理時間の上限は特にない。処理時間を上記の範囲とすることで、前記アルミノケイ酸塩の外表面酸点のシリル化被覆が進行し、外表面酸量が十分に減少する点で好ましい。
(触媒)
<他の活性成分>
本発明の触媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、本発明のアルミノケイ酸塩以外の他の活性成分を含んでいてもよい。他の活性成分としては、例えばシリコアルミノリン酸塩等のアルミノリン酸塩等が挙げられる。本発明の触媒中に含まれるアルミノリン酸塩の含有量は、通常20%質量以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは0質量%である。また、本発明の触媒中に含まれるアルミノケイ酸塩の含有量は、通常80質量%以上、好ましくは90%質量以上、より好ましくは100質量%である。シリコアルミノリン酸塩は、高温条件や水蒸気条件に対する安定性が低いため、アルミノケイ酸塩の含有量が高い方が好ましい。他の活性成分は、本発明のアルミノケイ酸塩中に混晶の形で含有させてもよいが、通常は、各活性成分を各々合成した後に混合する。
<触媒の成型>
上記した触媒活性成分のアルミノケイ酸塩は、そのまま触媒として反応に用いてよいし、反応に不活性な物質やバインダーを混合して触媒とし、これを反応に用いてもよい。
該反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナまたはアルミナゾル、シリカ、シリカゾル、石英、およびこれらの混合物等が挙げられる。
<触媒の酸量>
触媒の全酸量及び外表面酸量は、上述のアルミノケイ酸塩の全酸量及び外表面酸量と同様の方法にて測定することができる。触媒の全酸量は、特に限定されるものではないが、通常0.001mmol/g以上、好ましくは0.01mmol/g以上、より好ましくは0.03mmol/g以上、さらに好ましくは0.05mmol/g以上、特に好ましくは0.10mmol/g以上である。また、通常1.5mmol/g以下、好ましくは0.80mmol/g以下、より好ましくは0.50mmol/g以下、さらに好ましくは0.30mmol/g以下、特に好ましくは0.20mmol/g以下である。触媒全酸量を上記の範囲とすることで、触媒活性が担保されるとともに、アルミノケイ酸塩の細孔内部におけるコーク生成が抑制され、プロピレンと直鎖ブテンの生成を促進することができる点で好ましい。
触媒の外表面酸量は、特に限定されるものではないが、通常、触媒の全酸量に対して5%以下であるものが好ましく、3%以下であるものがより好ましく、0%であるものが最も好ましい。外表面酸量が大きすぎる場合には、外表面酸点で起こる副反応によりプロピレンや直鎖ブテンの選択性が低下する傾向がある。
アルミノケイ酸塩に、反応に不活性な物質やバインダーを混合したものを触媒として使用する場合、触媒の全酸量及び外表面酸量を上記範囲に調整するには、酸点を有さないシリカやシリカゾル等をバインダーとして用いることが好ましい。
なお、アルミナ等の、酸点を有するバインダーを使用した場合には、触媒の全酸量及び外表面酸量の測定方法では、アルミノケイ酸塩の酸量と共にバインダーの酸量も含んだ合計値として測定される。その場合はバインダー由来の酸量を別法により求め、触媒の酸量からその値を差し引くことによって、バインダー由来の酸量を含まないアルミノケイ酸塩のみの酸量を求めることが可能である。前記バインダーの酸量は、27Al−NMRにおいてアルミノケイ酸塩の酸点に由来する4配位Alのピーク強度からアルミノケイ酸塩の酸量を求め、アンモニア昇温脱離法により求まる触媒の酸量からその値を差し引く方法で求められる。
<粒径>
触媒の粒子径は、アルミノケイ酸塩の合成条件や造粒・成型条件により異なるが、通常、平均粒子径として、通常0.01μm〜500μmであり、好ましくは0.1〜100μmである。触媒の粒子径が大きくなり過ぎると、触媒の有効係数が低下する傾向があり、小さすぎると取り扱い性が劣るものとなる。この平均粒子径は、SEM観察等により求めることができる。
(メタノール、ジメチルエーテル)
本発明の原料であるメタノール、ジメチルエーテルの製造由来は特に限定されない。例えば、石炭および天然ガス、ならびに製鉄業における副生物由来のCO/水素の混合ガスの水素化反応により得られるもの、植物由来のアルコール類の改質反応により得られるもの、発酵法により得られるもの、再循環プラスチックや都市廃棄物等の有機物質から得られるもの等が挙げられる。このとき各製造方法に起因するメタノールおよびジメチルエーテル以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したものを用いても良い。
なお、反応原料としては、メタノールのみを用いてもよく、ジメチルエーテルのみを用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。メタノールとジメチルエーテルを混合して用いる場合、その混合割合に制限はない。
(エチレン)
本発明の原料であるエチレンは特に限定されるものではない。例えば、石油供給源から
接触分解法または蒸気分解法により製造されるエチレン、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてフィッシャートロプシュ合成を行うことにより得られるエチレン、エタンの脱水素または酸化脱水素で得られるエチレン、メタセシス反応およびホモロゲーション反応により得られるエチレン、MTO(Methanol to Olefin)反応によって得られるエチレン、エタノールの脱水反応から得られるエチレン、メタンの酸化カップリングで得られるエチレン、その他の公知の各種方法により得られるエチレンを任意に用いることができる。このとき各種製造方法に起因するエチレン以外の化合物を任意に混合した状態のものをそのまま用いてもよいし、精製したエチレンを用いてもよいが、好ましくは精製したエチレンである。また、エタノールは脱水により直ちにエチレン変換されるため、エタノールをそのまま原料として用いてもよい。
反応原料としては、エチレンとともに、メタノール及びジメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種を混合していてもよい。これらを混合して用いる場合、その混合割合に制限はない。
(反応器)
本発明における反応様式としては、有機化合物原料が反応域において気相であれば特に限定されないが、固定床反応器、移動床反応器や流動床反応器が選ばれる。プロピレンと直鎖ブテンを併産する場合は、転化率の変動に伴い、プロピレン及び直鎖ブテンの選択率が変動する傾向にあるため、プロピレンと直鎖ブテンを一定の割合で製造するためには、流動床反応器が好ましい。
また、バッチ式、半連続式または連続式のいずれの形態でも行われ得るが、連続式で行うのが好ましく、その方法は、単一の反応器を用いた方法でも良いし、直列または並列に配置された複数の反応器を用いた方法でもよい。
なお、流動床反応器に前述の触媒を充填する際、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と
混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量には特に限定されない。なお、粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
また、反応器には、反応に伴う発熱を分散させることを目的に、反応基質(反応原料)を分割して供給しても良い。
(基質濃度)
反応器に供給する全供給成分中の、有機化合物原料の合計濃度(基質濃度)に関して特に制限はないが、全供給成分中、通常5モル%以上、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さら好ましくは30モル%以上、特に好ましくは50モル%以上であり、通常95モル%以下、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下である。基質濃度を上記範囲にすることで、芳香族化合物やパラフィン類の生成を抑制することができ、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる。また反応速度を維持できるため、触媒量を抑制することができ、反応器の大きさも抑制可能となる。
従って、このような好ましい基質濃度となるように、必要に応じて以下に記載する希釈剤で反応基質を希釈することが好ましい。
(希釈剤)
反応器内には、有機化合物原料の他に、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水、パラフィン類、メタン等の炭化水素類、芳香族化合物類、および、それらの混合物など、反応に不活性な気体を存在させることができるが、この中でもヘリウム、窒素、水(水蒸気)が共存しているのが、分離が良好であることから好ましい。
このような希釈剤としては、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用しても良い
し、別途調製した希釈剤を反応原料と混合して用いても良い。
また、希釈剤は反応器に入れる前に反応原料と混合しても良いし、反応原料とは別に反応器に供給しても良い。
(重量空間速度)
ここで言う重量空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料である有機化合物の流量であり、ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成形に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。また、流量は有機化合物原料(メタノールおよび/またはジメチルエーテルおよび/またはエチレン)の合計の流量(重量/時間)である。
重量空間速度は、特に限定されるものではないが、通常0.01Hr−1以上、好ましくは0.1Hr−1以上、より好ましくは0.3Hr−1以上、さらに好ましくは0.5Hr−1以上であり、通常50Hr−1以下、好ましくは20Hr−1以下、より好ましくは10Hr−1以下、さらに好ましくは5.0Hr−1以下である。重量空間速度を前記範囲に設定することで、反応器出口ガス中の未反応の有機化合物原料の割合を減らすことができ、芳香族化合物やパラフィン類等の副生成物を減らすことができるため、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる点で好ましい。また、一定の生産量を得るのに必要な触媒量を抑えることができ、反応器の大きさを抑えられるため好ましい。
(反応温度)
反応温度は、有機化合物原料(メタノールおよび/またはジメチルエーテルおよび/またはエチレン)が触媒と接触してプロピレン及び直鎖ブテンを生成する温度であれば、特に制限されるものではないが、通常250℃以上、好ましくは275℃以上、より好ましくは300℃以上、さらに好ましくは325℃以上、特に好ましくは350℃以上であり、通常600℃以下、好ましくは550℃以下、より好ましくは500℃以下、さらに好ましくは450℃以下、特に好ましくは400℃以下である。反応温度を上記範囲にすることで、芳香族化合物やパラフィン類の生成を抑制することができるため、プロピレン及び直鎖ブテンの収率、とりわけ直鎖ブテン収率を向上させることができる。また、有機化合物原料の転化活性を高いレベルで維持することができるため、長時間にわたって高いプロピレン及び直鎖ブテン収率で製造することができる。さらに、ゼオライト骨格からの脱アルミニウムが抑制されるため、触媒寿命を維持できる点で好ましい。なお、ここでの反応温度とは、触媒層出口の温度をさす。
(反応圧力)
反応圧力は特に制限されるものではないが、通常0.01MPa(絶対圧、以下同様)以上、好ましくは0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上であり、通常5MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.7MPa以下、さらに好ましくは0.5MPa以下である。反応圧力を上記範囲にすることで芳香族化合物やパラフィン類等の副生成物の生成を抑制することができ、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる。また反応速度も維持できる。
(原料分圧)
有機化合物原料(メタノールおよび/またはジメチルエーテルおよび/またはエチレン)の合計の分圧は特に制限されるものではないが、通常0.005MPa以上(絶対圧、以下同様)、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.03MPa以上、さらに好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.07MPa以上であり、通常3MPa以下、好ましくは1MPa以下、より好ましくは0.5MPa以下、さらに好ましくは0.3MPa以下、特に好ましくは0.1MPa以下である。原料の分圧を上記範囲に
することで芳香族化合物やパラフィン類等の副生成物の生成を抑制することができ、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる。また反応速度も維持できる。
(転化率)
本発明において、メタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化率は特に制限されるものではないが、通常転化率は90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上、さらに好ましくは99.5%以上であり、通常100%以下である。また、エチレンの転化率は特に制限されるものではないが、通常転化率は50%以上であり、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上であり、通常100%未満、好ましくは95%以下、より好ましくは90%以下である。転化率が上記範囲になるように調整することで、芳香族化合物やパラフィン類の副生、および細孔内へのコークの蓄積を抑制することができ、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができ、かつ高い直鎖ブテン/プロピレン比で製造することができる。また、生成物中からの未反応原料の分離効率を高めることができる。
通常、反応時間の経過とともにコークの蓄積が進行し、有機化合物原料の転化率は、低下する傾向にあるため、一定時間反応させた触媒は、再生処理に供する必要がある。上記の転化率の範囲で運転する方法としては、特に制限されない。
例えば、固定床反応器で反応を行う場合には、複数個の反応器を並列に備え、転化率が上記の好ましい範囲から低下した際には、触媒と反応原料との接触を停止し、該触媒を再生工程に供する。固定床反応器においては、反応時間及び再生時間を適宜調整する、すなわち、運転における反応工程と再生工程とを切り替える時間を適宜調整することにより、上記の好ましい範囲の転化率で連続的に運転することができる。
また、流動床反応器で反応を行う場合には、反応器に対して触媒の再生器を付設し、反応器から抜き出した触媒を連続的に再生器に送り、再生器において再生された触媒を連続的に反応器に戻しながら、反応を行うことが好ましい。触媒の反応器内での滞留時間と再生器内での滞留時間を適宜調整することにより、上記の好ましい範囲の転化率で連続的に運転することができる。
有機化合物原料の転化率が低下した触媒は、各種公知の触媒の再生方法を使用して再生することができる。
再生方法は特に限定されるものではないが、具体的には例えば、空気、窒素、水蒸気、水素等を用いて再生することができ、空気、水素を用いて再生することが好ましい。
(コーク)
有機化合物原料の転化によって、その一部が結晶の内部/外表面にコークとして蓄積する。コーク量は、有機化合物原料が転化して、プロピレン及び直鎖ブテンを生成する量であれば、特に制限されるものではないが、アルミノケイ酸塩に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上であり、通常20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であり、さらに好ましくは8.0質量%以下である。コーク量を上記範囲になるように調整することで、有機化合物原料の転化活性を保ちつつ、パラフィン類の副生を抑制することができ、プロピレン及び直鎖ブテンの収率を向上させることができる。なお、ここでのコーク量は、例えば熱重量分析(TG)により求めることができる。具体的には、有機化合物原料の転化反応によりコークが蓄積したアルミノケイ酸塩を、ヘリウム等の不活性ガス流通下(50cc/min)、550℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、30分間保持することで、吸着水や軽沸炭化水素成分を除去する。続いて、空気流通に切り替え(50cc/min)、550℃から600℃まで昇温速度10℃/分で加熱し、60分間保持する。このときの550℃以上の温度領域での酸化燃焼による重
量減少をコーク量とする。
(反応生成物)
反応器出口ガス(反応器流出物)としては、反応生成物である、エチレン、プロピレン及び直鎖ブテン等の低級オレフィン、副生成物及び希釈剤を含む混合ガスが得られる。前記混合ガス中のプロピレン及び直鎖ブテンの濃度は、特に限定されないが、通常5質量%以上、好ましくは10質量%以上であり、通常95質量%以下、好ましくは90質量%以下である。
反応条件によっては反応生成物中に未反応原料が含まれるが、未反応の原料が少なくなるような反応条件で反応を行うのが好ましい。それにより、反応生成物と未反応原料との分離が容易に、好ましくは不要になる。副生成物としては、炭素数が4以上のオレフィン類、パラフィン類、芳香族化合物および水が挙げられる。本発明では、所望により、プロピレンや直鎖ブテン以外の成分をも分離・回収してもよい。特に、エチレンは、市場価格が高く、需要が大きい場合には、プロピレンや直鎖ブテンとともに、分離・回収することが望ましい。所望の成分を分離・回収した残分には、軽質パラフィン、エチレン、炭素数5以上のオレフィン、芳香族化合物、スチーム等を含む。この残分の少なくとも一部を、前述した原料ガスの一部に混合して、いわゆるリサイクルガスとして用いることができる。
プロピレン及び直鎖ブテンの合計の収率は特に制限されるものではないが、通常50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%、さらに好ましくは80%以上であり、上限は特に制限されないが、通常100%である。プロピレン及び直鎖ブテンの合計の収率が上記範囲にあることで、反応器出口における目的生成物の収率が十分なものとなり、原料コスト及び分離・精製の負荷を低減することができる点で好ましい。
直鎖ブテンの収率は特に制限されるものではないが、通常20%以上、好ましくは25%以上、より好ましくは30%、さらに好ましくは35%以上であり、上限は特に制限されないが、通常90%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下である。直鎖ブテンの収率が上記範囲にあることで、反応器出口における目的生成物の収率が十分なものとなり、原料コスト及び分離・精製の負荷を低減することができる点で好ましい。反応条件としては、反応温度をより下げることで、直鎖ブテンの収率を上げることができる。
全ブテン中の直鎖ブテンの比率(以下、直鎖ブテン/全ブテン)は、特に制限されるものではないが、通常60%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であり、最も好ましくは100%である。直鎖ブテン/全ブテン比率が、上記範囲にあることで、目的とする直鎖ブテンの収率が十分なものとなり、また、直鎖ブテンの分離・精製工程における負荷を低減することができる点で好ましい。
(生成物の分離)
反応器出口ガスとしての、反応生成物であるプロピレン及び直鎖ブテン、未反応原料、副生成物及び希釈剤を含む混合ガスは、公知の分離・精製設備に導入し、それぞれの成分に応じて回収、精製、リサイクル、排出の処理を行えば良い。
この分離・精製方法の一つの態様として、反応器出口のガスを冷却・圧縮し、凝縮した大部分の水分を除去する工程を含み、水分を除去した後の一部水分を含んだ炭化水素流体をモレキュラーシーブ等で乾燥し、その後蒸留により各オレフィンおよびパラフィンを精製する工程を含む方法が適用される。上記方法において、圧縮した炭化水素流体を一つの蒸留塔に供給しても良いが、多段階の圧縮機を設置し、凝縮しやすい炭化水素と凝縮しに
くい炭化水素を粗分離し、これらを別々の蒸留塔に供給して蒸留を行っても良い。
プロピレン及び直鎖ブテン以外の成分(オレフィン、パラフィン等)、特に炭素数5以上の炭化水素の一部または全ては、上記分離・精製された後に反応原料と混合するか、または直接反応器に供給することでリサイクルしても良い。また、副生成物のうち、反応に不活性な成分は希釈剤として再利用することができる。
(プロピレンの用途)
本発明の製造方法によって得られたプロピレンは、これを重合することによりポリプロピレンを製造することができる。プロピレンの重合の方法は特に限定されないが、本発明により得られたプロピレンを直接、原料モノマーとして重合反応器に導入して使用することができる。また、本発明により得られたプロピレンは、ポリプロピレン以外にも、後述する各種反応を経てプロピレン誘導品の原料としても利用できる。例えば、アンモニア酸化によりアクリロニトリル、選択酸化によりアクロレイン、アクリル酸及びアクリル酸エステル、オキソ反応によりノルマルブチルアルコール、選択酸化によりプロピレンオキサイド及びプロピレングリコール等が製造できる。またプロピレンは、ワッカー反応によりアセトンが製造でき、更に得られたアセトンよりメチルイソブチルケトンが製造できる。またアセトンからは、アセトンシアンヒドリンを経てメチルメタクリレートを製造することができる。またプロピレンは、水和反応によりイソプロピルアルコールを製造することができる。またプロピレンは、ベンゼンと反応させて得られる、キュメンを原料にフェノール、ビスフェノールA、またはポリカーボネート樹脂を製造することができる。
(直鎖ブテンの用途)
本発明の製造方法によって得られた直鎖ブテンは、脱水素化することによりブタジエンを製造することができる。さらに、ブタジエンは、単独重合によりポリブタジエン(BR)、スチレンとの重合によりスチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルとスチレンとの重合によりアクリロニトリル‐スチレン‐ブタジエン樹脂(ABS樹脂)等を製造することができる。また直鎖ブテンは、その他のブテン誘導品の原料としても利用できる。例えば、直鎖ブテンは、間接水和法によりsec−ブチルアルコールを経て、続く脱水素化反応によりメチルエチルケトンを製造することができる。1−ブテンは、重合によりポリブテン−1や、オキソ反応によりアミルアルコール等が製造できる。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
なお、以下の調製例において、合成で得られたゼオライトの結晶のX線回折(XRD)パターンは、PANalytical社製のX’Pert Pro MPDを用いて得た。X線源はCuKαであり(X線出力:40kV、30mA)、読込幅は0.016°である。また、合成したゼオライトの組成は、蛍光X線分析により測定した。測定には、島津製作所社製Rayny EDX‐700を用いた。粒子の形状は、日立ハイテク社製の走査電子顕微鏡(S‐4100)を用いて、導電処理を行った試料を、加速電圧15kVで観察を行った。
<実施例1>
水酸化ナトリウム(キシダ化学製)0.060g、水酸化カリウム(85質量%,キシダ化学製)0.099g、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド水溶液(20.1質量%,セイケム製)1.19gを順に、水1.74gに溶解し、H-Y型ゼオライト(SiO2/Al23比 15、ZEOLYST製)0.679gを加えた。さらに加えたSiOに対して5質量%のAEI型ゼオライト(SiO/Al比22、平均一次粒子径100‐200nm、四級アンモニウム塩(N,N‐ジ
メチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド由来)15質量%含む)0.030gを種結晶として加えてさらに撹拌することにより混合物を得た。前記混合物を100mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、15rpmで回転させながら、160℃で4日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末0.55gを得た(収率79%)。生成物のXRDパターン(図1)から、得られた生成物がAEI相であることを確認した。XRF分析より、SiO/Al比は10であった。
<実施例2>
水酸化ナトリウム0.020g、水酸化カリウム0.132gとした以外は、実施例1と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例1と同様の方法で行い、白色粉末0.62gを得た(収率89%)。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI相であることを確認した。
<実施例3>
水酸化ナトリウム0.020g、水酸化カリウム0.165gとした以外は、実施例1と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例1と同様の方法で行い、白色粉末0.58gを得た(収率83%)。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI相であることを確認した。
<実施例4>
水酸化カリウムを添加せずに、水酸化ナトリウム0.100g、水酸化セシウム一水和物(三津和化学薬品製)0.088gを添加した以外は、実施例1と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例1と同様の方法で行い、白色粉末0.56gを得た(収率80%)。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI相であることを確認した。
<実施例5>
水酸化ナトリウムを添加せずに、水酸化カリウム0.165g、水酸化セシウム一水和物0.088gを添加した以外は、実施例1と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例1と同様の方法で行い、白色粉末0.54gを得た(収率77%)。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI相であることを確認した。
<実施例6>
水酸化ナトリウム0.040g、水酸化カリウム0.132g、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド水溶液0.792g、水2.05gとした以外は、実施例1と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例1と同様の方法で行い、白色粉末0.61gを得た(収率87%)。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI相であることを確認した。
<実施例7>
水酸化ナトリウム0.020g、水酸化カリウム0.165g、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド水溶液0.792g、水2.04gとした以外は、実施例1と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例1と同様の方法で行い、白色粉末0.63gを得た(収率90%)。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI相であることを確認した。
<実施例8>
水酸化ナトリウムを添加せずに、水酸化カリウム0.231g、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド水溶液0.396g、水2.35gとした以外は、実施例1と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例1と同様の方法で行い、白色粉末0.57gを得た(収率82%)。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI相であることを確認した。
<実施例9>
水酸化ナトリウムを添加せずに、水酸化カリウム0.198g、水酸化セシウム一水和物0.088gを添加し、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド水溶液0.396g、水2.36gとした以外は、実施例1と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例1と同様の方法で行い、白色粉末0.60gを得た(収率86%)。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI相であることを確認した。
<実施例10>
水酸化カリウム0.165g、水酸化セシウム一水和物0.088g、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド水溶液(20.1質量%,セイケム製)1.19gを順に、水1.25gに溶解し、H-Y型ゼオライト(SiO2/Al2
3比 7、触媒化成製)0.359gを加えた。次いで、シリカ源としてスノーテック
ス40(SiO2:40質量%、Na2O:0.45質量%、日産化学製)0.801gを添加した。さらに加えたSiOに対して5質量%のAEI型ゼオライト(SiO/Al比22、平均一次粒子径100‐200nm、四級アンモニウム塩(N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド由来)15質量%含む)0.030gを種結晶として加えてさらに撹拌することにより混合物を得た。前記混合物を100mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、15rpmで回転させながら、170℃で4日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末0.47gを得た(収率67%)。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI相であることを確認した。
<実施例11>
水酸化カリウム0.198g、水酸化セシウム一水和物0.088g、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド水溶液(20.1質量%,セイケム製)1.19gを順に、水1.13gに溶解し、H-Y型ゼオライト(SiO2/Al2
3比 5、触媒化成製)0.279gを加えた。次いで、シリカ源としてスノーテック
ス40(SiO2:40質量%、Na2O:0.45質量%、日産化学製)1.00gを添加した。さらに加えたSiOに対して5質量%のAEI型ゼオライト(SiO/Al比22、平均一次粒子径100‐200nm、四級アンモニウム塩(N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド由来)15質量%含む)0.030gを種結晶として加えてさらに撹拌することにより混合物を得た。前記混合物を100mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、15rpmで回転させながら、185℃で2日間、水熱合成反応に供した。得られた生成物を濾過、水洗した後、100℃で乾燥させ、白色粉末0.46gを得た(収率66%)。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI相であることを確認した。
<実施例12>
175℃で2日間合成した以外は、実施例11と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例11と同様の方法で行い、白色粉末0.52gを得た(収率74%)。生成物のXRDパターンから、得られた生
成物がAEI相であることを確認した。XRF分析より、SiO/Al比は11であった。
<実施例13>
N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド水溶液0.792g、水1.44gとし、185℃で2日間合成した以外は、実施例11と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例11と同様の方法で行い、白色粉末0.50gを得た(収率72%)。生成物のXRDパターンから、得られた生成物がAEI相であることを確認した。XRF分析より、SiO/Al比は9であった。
<実施例14>
水酸化カリウム0.231g、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド水溶液0.396g、水0.855gとし、170℃で4日間合成した以外は、実施例11と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例11と同様の方法で行い、白色粉末0.49gを得た(収率70%)。
<比較例1>
水酸化カリウムを添加せずに、水酸化ナトリウム0.120gとした以外は、実施例1と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例1と同様の方法で行い、白色粉末0.54gを得た(収率77%)。生成物のXRDパターンから、得られた生成物が、僅かにAEI相やFAU相が含まれる非晶質相であることを確認した。
<比較例2>
水酸化カリウムを添加せずに、水酸化ナトリウム0.140gとした以外は、実施例1と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例1と同様の方法で行い、白色粉末0.53gを得た(収率76%)。生成物のXRDパターンから、得られた生成物が、AEI相/ANA相の混合物であることを確認した。
<比較例3>
水酸化カリウムを添加せずに、水酸化ナトリウム0.120g、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド水溶液0.792g、水2.07gとした以外は、実施例1と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例1と同様の方法で行い、白色粉末0.61gを得た(収率87%)。生成物のXRDパターンから、得られた生成物が、僅かにAEI相やFAU相が含まれる非晶質相であることを確認した。
<比較例4>
水酸化カリウムを添加せずに、水酸化ナトリウム0.120g、水酸化セシウム一水和物0.088g、N,N‐ジメチル‐3,5‐ジメチルピペリジニウムハイドロキサイド水溶液(20.1質量%,セイケム製)0.396g、水2.39gとした以外は、実施例1と同様の方法と条件で、混合物を調製し、水熱合成反応に供した。後処理(濾過、水洗、乾燥)を実施例1と同様の方法で行い、白色粉末0.64gを得た(収率92%)。生成物のXRDパターンから、得られた生成物が、MOR相とAEI相の混合物であることを確認した。
Figure 0006699336
Figure 0006699336
<実施例15>
実施例13で得られたAEI型ゼオライトを、空気流通下580℃で6時間焼成を行い、Na型のアルミノケイ酸塩を得た。これを触媒として、エチレンを原料として、プロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を行った。前記の反応には、常圧固定床流通反応装置を用い、内径6mmの石英反応管に、上記触媒100mgと石英砂400mgの混合物を充填した。エチレン及び窒素を、エチレンの空間速度が0.36Hr-1で、エチレン30体積%と窒素70体積%となるように反応器に供給し、350℃、0.1MPaでプロピレン及び直鎖ブテンの合成反応を実施し、反応器出口ガスをガスクロマトグラフィーにより分析を行った。その反応結果を表3に示した。
Figure 0006699336
本発明は、AEI型アルミノケイ酸塩の製造及びその使用に係わる分野に好適に用いることができる。特に、本発明の製造方法では、AEI型アルミノケイ酸塩を高い収率で効率的に製造することができる。また、フッ化水素等の腐食性物質を使用しないため、反応器の制約が低減される。

Claims (12)

  1. (a)ケイ素源と、(b)Framework densityが16.0T/1000A以下であるゼオライトを含むアルミニウム源と、(c)カリウム源、セシウム源、ストロンチウム源、及びバリウム源からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属元素源又は/及びアルカリ土類元素源、(d)四級アンモニウム塩と、(e)水を含有する混合物の水熱合成によりAEI型アルミノケイ酸塩を製造する方法であって、
    前記混合物中の、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計に対する、カリウム原子、セシウム原子、ストロンチウム原子、及びバリウム原子の合計のモル比が、0.05以上であり、
    前記混合物中の、ケイ素原子に対する、四級アンモニウム塩、カリウム原子、セシウム原子、ストロンチウム原子、及びバリウム原子の合計のモル比が、0.12以上であり、
    前記混合物中の、ケイ素原子に対する、アルカリ金属原子及びアルカリ土類金属原子の合計のモル比が0.25以上であることを特徴とするAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
  2. 前記(c)が、カリウム源及びセシウム源から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属元素源であることを特徴とする請求項1に記載のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
  3. 前記混合物中の、ケイ素原子に対する、四級アンモニウム塩、カリウム原子、セシウム原子、ストロンチウム原子、及びバリウム原子の合計のモル比が、0.60以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
  4. 前記ゼオライトが、AEI型、AFX型、BEA型、CHA型、ERI型、FAU型、LTA型、LEV型、OFF型及びRHO型からなる群より選ばれる少なくとも1種の構
    造を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
  5. 前記ゼオライト中の、アルミニウム原子に対するケイ素原子のモル比が2.0以上25以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のAEI型アルミノケイ
    酸塩の製造方法。
  6. 前記混合物中のケイ素原子に対する前記四級アンモニウム塩のモル比が0.20以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
  7. 前記混合物中のアルミニウム原子に対する、前記四級アンモニウム塩と前記アルカリ金属原子と前記アルカリ土類金属原子の合計のモル比が8.0以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
  8. 前記混合物が、種結晶として、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含むゼオライトを含有し、且つ、前記種結晶を、前記混合物の前記種結晶以外の成分に含まれるケイ素原子のシリカ換算重量に対して、0.1質量%以上含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
  9. 前記種結晶が、AEI型、AFX型、CHA型、ERI型、FAU型、及びLEV型からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有するゼオライトであることを特徴とする
    請求項8に記載のAEI型アルミノケイ酸塩の製造方法。
  10. 有機化合物原料を、請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法で製造されたAEI型アルミノケイ酸塩に接触させることを特徴とするプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法
  11. 前記有機化合物原料がエチレンであることを特徴とする請求項10に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
  12. 前記有機化合物原料がメタノール及びジメチルエーテルから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項10に記載のプロピレン及び直鎖ブテンの製造方法。
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