JP7147003B2 - 精製油脂の製造方法 - Google Patents
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Description
したがって、本発明の課題は、飽和炭化水素含有量が高い油脂の粗油から、飽和炭化水素含有量が低減された精製油脂、並びに当該精製油脂を得る製造方法を提供することにある。
本発明の別の課題は、芳香環を有する炭化水素含有量が低減された、食用に適した精製油脂、並びに当該精製油脂を得る製造方法を提供することにある。
本発明のさらなる別の課題は、グリシドール類含有量及び/又はモノクロロプロパノール類含有量が低減された精製油脂、並びに当該精製油脂を得る製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、以下の態様を含み得る。
を含む、精製油脂の製造方法であって、
前記精製油脂中の20~35の炭素数を有する飽和炭化水素の含有量が、10質量ppm以下である、精製油脂の製造方法。
〔2〕前記工程Bの水蒸気蒸留が、0.5~9時間行われる、前記〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕前記工程Bの後に、
工程C:前記工程Bで得られた油脂を加熱処理する工程、
をさらに含む、前記〔1〕又は〔2〕に記載の精製油脂の製造方法であって、前記精製油脂中のグリシドール類の含有量が、1質量ppm以下である、精製油脂の製造方法。
〔4〕前記工程Cの加熱処理の工程が、
工程C2:前記工程Bで得られた油脂を180~220℃で水蒸気蒸留する工程、
である、前記〔3〕に記載の製造方法。
〔5〕前記工程Cの加熱処理の工程が、
工程C1:前記工程Bで得られた油脂を酸性物質と接触させる工程、及び、
工程C2:前記接触させた油脂を180~220℃で水蒸気蒸留する工程、
を含む、前記〔3〕に記載の製造方法。
〔6〕前記工程C2の水蒸気蒸留が、0.5~9時間行われる、前記〔4〕又は〔5〕に記載の製造方法。
〔7〕前記工程Bの前に、
工程A:モノクロロプロパノール類の含有量が2質量ppm以下の原料油脂を準備する工程、
をさらに含む、前記〔1〕~〔6〕の何れか1項に記載の製造方法。
〔8〕前記工程Aの原料油脂が、
工程A1:油脂を脱塩素する工程、
により得られる、前記〔7〕に記載の製造方法。
〔9〕前記工程A1の脱塩素の工程が、
工程A1-1:油脂を脱塩素水で洗浄する工程、及び/又は
工程A1-2:油脂をアルカリ性物質に接触させる工程、
である、前記〔8〕に記載の製造方法。
〔10〕前記工程Aの原料油脂が、前記工程A1の脱塩素の工程の後に実施される、
工程A2:前記工程A1で脱塩素した油脂を210~260℃で水蒸気蒸留する工程、
により得られる、前記〔8〕又は〔9〕に記載の製造方法。
〔11〕20~35の炭素数を有する飽和炭化水素を有する炭化水素1~10質量ppm、グリシドール類0.01~2質量ppm、及びモノクロロプロパノール類0.1~2質量ppmを含有する精製油脂。
本発明は、工程B:240℃以上で原料油脂を水蒸気蒸留する工程、を含む、精製油脂の製造方法であって、前記精製油脂中の20~35の炭素数を有する飽和炭化水素の含有量が、10質量ppm以下である、精製油脂の製造方法、に関する。また、本発明は、以下の工程を含む、精製油脂の製造方法であり得る。
工程A:モノクロロプロパノール類の含有量が2質量ppm以下の原料油脂を準備する任意の工程、
工程B:240℃以上で原料油脂を水蒸気蒸留する必須の工程、及び
工程C:上記工程Bで得られた油脂を加熱処理する任意の工程。
以下、本発明の精製油脂の製造方法を詳細に説明する。
工程Aは、モノクロロプロパノール類の含有量が2質量ppm以下の原料油脂を準備する工程であり、本発明の精製油脂の製造方法の任意工程である。工程Aは、任意に工程Bの前に実施されてもよい。工程Aで準備される原料油脂は、公知の天然又は合成原料であってもよく、市場で入手できる原料を、公知の方法によってモノクロロプロパノール類の含有量を2質量ppm以下として入手してもよい。例えば、以下の工程A1:
工程A1:油脂を脱塩素する工程、
によって入手してもよい。この工程A1は、
工程A1-1:油脂を脱塩素水で洗浄する工程、及び/又は
工程A1-2:油脂をアルカリ性物質に接触させる工程、
を含んでいてもよい。さらに、工程A1で脱塩素した油脂は、以下の工程A2:
工程A2:前記工程A1で脱塩素した油脂を210~260℃で水蒸気蒸留する工程、
で処理されてもよい。
本発明の工程A1、A1-1及びA1-2を含む工程Aで出発材料として使用される油脂としては、特に、パーム油が適している。パーム油とは、アブラヤシ(パーム椰子、ヤシ科アブラヤシ属)からとれるパーム果実を圧搾又は抽出して得た油であり、カロテンを多く含む油として知られる。パーム油は、パーム種子から採取されるパーム核油とは区別される。
本発明において、飽和炭化水素(SH)とは、鉱物油に代表されるような炭素数10~56程度の飽和炭化水素を意味する。分子量が大きい飽和炭化水素は、体内に吸収され難いと考えられる。また、分子量が小さい炭化水素は、体内から排出され易いと考えられる。したがって、20~35の炭素数を有する飽和炭化水素の含有量が、体内での代謝蓄積という意味で重要であると考えられる。飽和炭化水素の分子量は、例えば、70~1000程度であり、より重要なのは100~800程度であり、さらに重要なのは200~600程度である。飽和炭化水素は、直鎖及び/又は分岐鎖及び/又は環状で有り得る。
油脂とアルカリ性物質との接触方法としては、例えば、油脂に水酸化ナトリウム水溶液を、油脂に含まれる遊離脂肪酸の中和当量の0.8~1.2倍量を添加攪拌する方法が挙げられる。その後、遠心分離により、油脂からフーツ(foots)を除去する。さらに油脂に水を添加攪拌し、その後、遠心分離により、水層を除去する。油脂は、必要に応じて、減圧下で脱水する、などの処理が行われてもよい。また別の、油脂とアルカリ性物質との接触方法としては、例えば、100質量部の接触前の油脂に、好ましくは0.5~5質量部程度、より好ましくは1~3質量部程度のアルカリ性白土(白土を分散させた水が好ましくはpH8.0以上を呈する)を添加し、80~130℃(好ましくは90~120℃)で5~60分間(好ましくは10~40分間)攪拌する方法が挙げられる。その後、ろ過により、アルカリ性白土は除去されてもよい。
工程A2において水蒸気蒸留する油脂の温度は、好ましくは215℃~250℃であり、より好ましくは220~235℃である。また、油脂を210~260℃で水蒸気蒸留する時間は特に限定されない。油脂に含まれるモノクロロプロパノール類の含有量が2質量ppmを超えない範囲で、水蒸気蒸留する時間は継続され得るが、当該水蒸気蒸留する時間は、好ましくは0.3~3時間であり、より好ましくは0.5~2時間である。水蒸気蒸留は、連続して行われてもよいし、バッチ処理のように、不連続に複数回行われてもよい。不連続に行われる場合、水蒸気蒸留された正味の時間の合計を、水蒸気蒸留に供された時間とすればよい。
工程Bは、240℃以上で原料油脂を水蒸気蒸留する工程であり、本発明の精製油脂の製造方法の必須工程である。油脂を240℃以上で水蒸気蒸留に供することにより、油脂に含まれる20~35の炭素数を有する飽和炭化水素の含有量を、10質量ppm以下に低減できる。
ここで、原料油脂は、好ましくは、上記工程A(工程A1-1及び工程A1-2等を任意で含む)で出発材料として使用される油脂、又は工程Aを経て得られた油脂である。上記工程Bに供される原料油脂は、20~35の炭素数を有する飽和炭化水素(SH)を、好ましくは10質量ppmを超える濃度で含有する。工程Bに供される原料油脂に含まれる20~35の炭素数を有する飽和炭化水素(SH)の含有量は、より好ましくは10.5~100ppmであり、さらに好ましくは10.5~50ppmである。上記油脂を240℃以上で水蒸気蒸留する工程Bを経ることにより、油脂に含まれる20~35の炭素数を有する飽和炭化水素の含有量が低減する。工程Bを経ることにより、油脂に含まれる20~35の炭素数を有する飽和炭化水素の含有量は、10質量ppm以下に低減され、好ましくは7質量ppm以下に低減され、より好ましくは5質量ppm以下に低減され、さらに好ましくは3質量ppm以下に低減される。工程Bを経た油脂に含まれる20~35の炭素数を有する飽和炭化水素の含有量の下限は特に限定されないが、好ましくは1質量ppm以上であり、より好ましくは1.5ppm以上である。工程Bを経た油脂に含まれる20~35の炭素数を有する飽和炭化水素の含有量の下限と上限は、任意に組み合せ得る。
また、上記油脂を240℃以上で水蒸気蒸留する工程Bを経ることにより、油脂に含まれる20~35の炭素数を有する芳香環を有する炭化水素(以下、AHとも表す)の含有量も低減し得るという副次効果が期待される。工程Bに供される油脂は、20~35の炭素数を有する芳香環を有する炭化水素(AH)を、好ましくは10質量ppmを超える濃度で含有し、より好ましくは10.5~100ppmで含有し、さらに好ましくは10.5~50ppmで含有する。工程Bを経ることにより、油脂に含まれる20~35の炭素数を有する芳香環を有する炭化水素の含有量は、好ましくは10質量ppm以下に低減され、より好ましくは7質量ppm以下に低減され、さらに好ましくは5質量ppm以下に低減され、ことさらに好ましくは3質量ppm以下に低減される。工程Bを経た油脂に含まれる20~35の炭素数を有する芳香環を有する炭化水素の含有量の下限は特に限定されないが、好ましくは1質量ppm以上であり、より好ましくは1.5ppm以上である。工程Bを経た油脂に含まれる20~35の炭素数を有する芳香環を有する炭化水素の含有量の下限と上限は、任意に組み合せ得る。なお、上記飽和炭化水素(SH)及び芳香環を有する炭化水素(AH)の濃度は、工程Bに加え、更に別工程を含む場合であっても目標とされ、かつ、達成される数値である。
水蒸気蒸留時の水蒸気の吹き込み量は、十分に原料油脂を蒸留できる量であれば特に制限はないが、例えば原料油脂100質量部に対して、水蒸気を0.1~10質量部であり、より好ましくは0.5~7質量部であり、さらに好ましくは1~5質量部であり、特に好ましくは2.5質量部±1,5質量部程度であることが適当である。水蒸気蒸留時の圧力は、特に限定されるものではないが、好ましくは13.33~1333Pa(0.1~10torr)であり、より好ましくは66.67~666.7Pa(0.5~5torr)であり、さらに好ましくは133.3~533.3Pa(1~4torr)である。
工程Cは、上記工程Bで得られた油脂を加熱処理する工程であり、本発明の精製油脂の製造方法の任意工程である。
上記工程Bで得られた油脂を精製油脂としてもよいが、さらに上記工程Cによって加熱処理を行ってもよい。工程Cを実施することにより、飽和炭化水素の含有量だけではなく、グリシドール類の含有量も低減された食用油脂が得られるという副次効果を有する。
ここで加熱処理は、工程Bで得られた油脂を、例えば180~230℃、好ましくは190℃~220℃、より好ましくは195~210℃、さらに好ましくは200℃±5℃の温度で行われることが適当である。また、加熱工程は、グリシドール類の含有量が2質量ppm以下に低減できる十分な時間であればよいが、加熱工程時間の下限は、例えば、0.5時間以上、1時間以上、1.5時間以上、2時間以上、2.5時間以上、3時間以上であり得、加熱工程時間の上限は、9時間以下、8.5時間以下、8時間以下、7.5時間以下、6時間以下、5.5時間以下であり得、例えば0.5~9時間、好ましくは0.75~5時間、より好ましくは1~2時間、更に好ましくは1.5時間(±5~10分)で行われる。
工程Cは連続式(CSTR)で行っても不連続(バッチ式)で行ってもよいが、バッチ式で行う場合は、工程Cの上記加熱工程を1回のサイクル(1バッチ)とすると、例えば1~5回繰り返し(1~5バッチ)、好ましくは2~4回繰り返し(2~4バッチ)、より好ましくは3回繰り返し(3バッチ)を行うことが適当である。バッチ式に行われる場合、加熱処理された正味の時間の合計を、加熱処理に供された時間とすればよい。加熱処理は、水蒸気の吹き込み量及び圧力が工程Bと同様である水蒸気蒸留であってもよい。
工程C1:前記工程Bで得られた油脂を酸性物質と接触させる工程。
工程C2:前記接触させた油脂或いは工程Bで得られた油脂を180~220℃で水蒸気蒸留する工程。
上記工程C1及びC2は、工程C2のみを工程Cとして行ってもよいし、工程C1の後に工程C2を行ってもよい。工程C2のみを行う場合、工程C2の原料は「工程Bで得られた油脂」となる。
上述のようにして得られた本発明の精製油脂は、20~35の炭素数を有する飽和炭化水素の含有量が、10質量ppm以下である精製油脂であることが適当である。
ここで、上記精製油脂中の20~35の炭素数を有する飽和炭化水素(SH)の含有量は、例えば10質量ppm以下であり、好ましくは7質量ppm以下であり、より好ましくは5質量ppm以下であり、更に好ましくは3質量ppm以下である。また、上記精製油脂中の20~35の炭素数を有する飽和炭化水素(SH)の含有量は、少なければ少ないほどよく、0質量ppmであることが最も好ましいが、例えば1.5質量ppm以上であり、好ましくは1質量ppm以上であり、より好ましくは0.5質量ppm以上であり、更に好ましくは0.1質量ppm以上であり、特に好ましくは0.01質量ppm以上である。上記上限値及び下限値は適宜組み合わせて好ましい範囲としてもよい。
飽和炭化水素(SH)含有量および芳香族環を有する炭化水素(AH)含有量は、以下の方法に従って測定した。
(1)200mgの油脂サンプルに飽和炭化水素の内部標準物質のBicyclohexyl3ppmと芳香族炭化水素の内部標準物質の1,3,5-Tri-tert-butylbenzene3ppmを加え、1mLのヘキサンで溶解させる。
(2)ヘキサンでコンディショニングした2gシリカ固相抽出カラムに(1)の試料を入れて吸着させる。
(3)溶離液A(ヘキサン100容量%)と溶離液B(ヘキサン85容量%、ジクロロメタン15容量%)で飽和炭化水素と芳香族炭化水素を溶出させる。最初溶離液Aを入れ、1mLを捨てる。その後の2mLの溶離液Aと1mLの溶離液Bを回収し、飽和炭化水素画分とする。次に溶離液Bを入れ、8mLを回収し、芳香族炭化水素画分とする。
(4)それぞれの画分を300μL程度に濃縮し、ガスクロマトグラフィー(オンカラムインジェクション)にて測定する。
(5)ガスクロマトグラフィー測定条件
1.カラム
プレカラム:不活性化ヒューズドシリカカラム、長さ10m、内径0.53mm
分析カラム:100%ジメチルポリシロキサン、長さ15m、内径0.32mm、膜厚0.1μm
2.注入
キャリアガス:ヘリウム
注入量:40μL
注入口温度条件:60℃(4分保持)→20℃/分昇温→380℃(15.5分保持)
圧力条件:60kPa(4分保持)→70kPa/分昇圧→130kPa(30.5分保持)
カラム流量:3.55mL/分
3.オーブン
温度:50℃(4分保持)→20℃/分昇温→380℃(15分保持)
4.FID検出器
温度:380℃
(6)上記ガスクロマトグラフィー測定にて得られたクロマトグラムを用い、それぞれの内部標準物質の面積と炭化水素の面積(ベースラインから盛り上がるハンプの面積)を比較することで、飽和炭化水素含有量と芳香族炭化水素含有量を換算する。
アメリカ油化学会公定法(AOCS Official Method Cd29a-13)に準拠して測定した。なお、グリシドール類としては、グリシドール及びグリシドール脂肪酸エステルを検出対象とした。グリシドール類の含有量は、グリシドール及びグリシドール脂肪酸エステルの量を、遊離のグリシドールの量で換算して求めた。また、モノクロロプロパノール類については、3-モノクロロプロパノール類としては、3-モノクロロプロパノール及び3-モノクロロプロパノール脂肪酸エステルを検出対象とし、3-モノクロロプロパノール類の含有量は、3-モノクロロプロパノール及び3-モノクロロプロパノール脂肪酸エステルの量を、遊離のモノクロロプロパノールの量で換算して求めた。2-モノクロロプロパノール類としては、2-モノクロロプロパノール及び2-モノクロロプロパノール脂肪酸エステルを検出対象とし、2-モノクロロプロパノール類の含有量は、2-モノクロロプロパノール及び2-モノクロロプロパノール脂肪酸エステルの量を、遊離のモノクロロプロパノールの量で換算して求めた。モノクロロプロパノール類の含有量は、3-モノクロロプロパノール類と2-モノクロロプロパノール類との合計量を、遊離のモノクロロプロパノールの量で換算して求めた。
市販のパーム粗油を、常法に従って、100質量部の粗油に対して10質量部の脱イオン水を用いて洗浄後(工程A1-1)、0.05質量部の85%リン酸を添加攪拌し、リン酸脱ガムを行った。得られた100質量部のリン酸脱ガム油に対して1質量部の白土(pH8.2)を添加して、110℃で0.5時間、十分に攪拌した(脱色処理:工程A1-2)。ろ過により白土を除去し、脱色油を得た。230℃、約266.7Pa(2torr)の条件で、100質量部の脱色油に対して5質量部の蒸気を1.5時間かけて吹き込むことにより、水蒸気蒸留した(脱臭処理:工程A2)。得られたパーム油を、2段階で乾式分別することにより、ヨウ素価が63であるパームスーパーオレイン(RBD_PL63)を得た。
上記で得られたRBD_PL63を用いて、バッチ式の水蒸気蒸留(260℃、約266.7Pa(2torr)、油脂100質量部に対する水蒸気吹込み5質量部、時間1.5時間)を、3バッチ繰り返して、RBD3D_PL63を得た。水蒸気蒸留前および各バッチの終了時に、SH含有量およびAH含有量を測定した。また、同様に、モノクロロプロパノール類およびグリシドール類の含有量も測定した。結果を表1に示す。上記水蒸気蒸留の各バッチ処理ないしバッチの連続処理は、工程Bに該当する。
上記の連続したバッチ式水蒸気蒸留により得られた100質量部のRBD3D_PL63に対して2質量部の活性白土(pH6)を添加して、110℃で0.5時間、十分に攪拌した(脱色処理:工程C1)。ろ過により活性白土を除去し、脱色油を得た。200℃、約266.7Pa(2torr)の条件で、100質量部の脱色油に対して5質量部の蒸気を1.5時間かけて吹き込むことにより、水蒸気蒸留し(脱臭処理:工程C2)、RBD3DBD_PL63を得た。得られたRBD3DBD_PL63のSH含有量およびAH含有量を測定した。また、同様に、モノクロロプロパノール類およびグリシドール類の含有量も測定した。結果を表1に示す。
市販のパーム粗油を、常法に従って、0.05質量部の85%リン酸を添加攪拌し、リン酸脱ガムを行った。得られた100質量部のリン酸脱ガム油に対して1質量部の白土(pH8.7)を添加して、110℃で0.5時間、十分に攪拌した(脱色処理(アルカリ性吸着剤処理):工程A1-2)。ろ過により白土を除去し、脱色油を得た。半連続式脱臭装置を用いて、230℃、約266.7Pa(2torr)の条件で、100質量部の脱色油に対して3質量部の蒸気を1.5時間かけて吹き込むことにより、水蒸気蒸留した(脱臭処理:工程A2)。得られたパーム油を、2段階で乾式分別することにより、ヨウ素価が63であるパームスーパーオレイン(RBD_PL63)を得た。
上記で得られた50トンのRBD_PL63を用いて、半連続式脱臭塔により水蒸気蒸留(270℃、約266.7Pa(2torr)、油脂100質量部に対する水蒸気吹込み3質量部、時間1.5時間)を行い、RBDD_PL63を得た。水蒸気蒸留前および終了後に、SH含有量およびAH含有量を測定した。また、同様に、モノクロロプロパノール類およびグリシドール類の含有量も測定した。結果を表2に示す。上記水蒸気蒸留は、工程Bに該当する。
上記の半連続脱臭装置による水蒸気蒸留により得られた100質量部のRBDD__PL63に対して2.5質量部の活性白土(pH5.0)を添加して、110℃で0.5時間、十分に攪拌した(脱色処理:工程C1)。ろ過により活性白土を除去し、脱色油を得た。200℃、約266.7Pa(2torr)の条件で、100質量部の脱色油に対して3質量部の蒸気を1.5時間かけて吹き込むことにより、水蒸気蒸留し(脱臭処理:工程C2)、RBDDBD_PL63を得た。得られたRBDDBD_PL63のSH含有量およびAH含有量を測定した。また、同様に、モノクロロプロパノール類およびグリシドール類の含有量も測定した。結果を表2に示す。
市販のパーム粗油を、常法に従って、0.05質量部の85%リン酸を添加攪拌し、リン酸脱ガムを行った。得られた100質量部のリン酸脱ガム油に対して1質量部の白土(pH8.7)を添加して、110℃で0.5時間、十分に攪拌した(脱色処理(アルカリ性吸着剤処理):工程A1-2)。ろ過により白土を除去し、脱色油を得た。半連続式脱臭装置を用いて、230℃、約266.7Pa(2torr)の条件で、100質量部の脱色油に対して3質量部の蒸気を1.5時間かけて吹き込むことにより、水蒸気蒸留した(脱臭処理:工程A2)。得られたパーム油を、2段階で乾式分別することにより、ヨウ素価が63であるパームスーパーオレイン(RBD_PL63)を得た。
上記で得られた500トンのRBD_PL63を用いて、半連続式脱臭塔により水蒸気蒸留(265℃、約266.7Pa(2torr)、油脂100質量部に対する水蒸気吹込み3質量部、時間1.5時間)を行い、RBDD_PL63を得た。水蒸気蒸留前および終了後に、SH含有量およびAH含有量を測定した。また、同様に、モノクロロプロパノール類およびグリシドール類の含有量も測定した。結果を表3に示す。上記水蒸気蒸留は、工程Bに該当する。
上記の半連続脱臭装置による水蒸気蒸留により得られた100質量部のRBDD_PL63に対して2.0質量部の活性白土(pH5.0)を添加して、110℃で0.5時間、十分に攪拌した(脱色処理:工程C1)。ろ過により活性白土を除去し、脱色油を得た。195℃、約266.7Pa(2torr)の条件で、100質量部の脱色油に対して3質量部の蒸気を1.5時間かけて吹き込むことにより、水蒸気蒸留し(脱臭処理:工程C2)、RBDDBD_PL63を得た。得られたRBDDBD_PL63のSH含有量およびAH含有量を測定した。また、同様に、モノクロロプロパノール類およびグリシドール類の含有量も測定した。結果を表3に示す。
市販のパームオレイン(RBD_PL56)を、常法に従って、化学的エステル交換した。すなわち、パームオレインを十分に乾燥させ、100質量部のパームオレインに対して0.15質量部のナトリウムメトキシドを添加した後、減圧下、100℃で20分間、攪拌しながらエステル交換反応を行った(アルカリ性物質接触処理:工程A1-2)。その後、100質量部の反応油脂(エステル交換油脂)に対して1質量部の飽和クエン酸水を添加し、反応を停止した。反応停止後のエステル交換油脂を6倍量の温水(90℃のイオン交換水)で洗浄し(工程A1-1)、減圧乾燥した。得られた100質量部のエステル交換油脂に対して2質量部の白土(pH8.7)を添加して、110℃で0.5時間、十分に攪拌した(脱色処理(アルカリ性吸着剤処理):工程A1-2)。ろ過により白土を除去し、エステル交換油脂の脱色油(RBDIEB_PL56)を得た。
上記で得られたRBDIEB-PL56を用いて、バッチ式の水蒸気蒸留(260℃、約266.7Pa(2torr)、油脂100質量部に対する水蒸気吹込み5質量部、時間1.5時間)を行い、RBDIEBD_PL56を得た。水蒸気蒸留前および終了後に、SH含有量およびAH含有量を測定した。また、同様に、モノクロロプロパノール類およびグリシドール類の含有量も測定した。結果を表4に示す。上記水蒸気蒸留は、工程Bに該当する。
上記の水蒸気蒸留により得られた100質量部のRBDIEBD_PL56に対して2質量部の活性白土(pH5.0)を添加して、110℃で0.5時間、十分に攪拌した(脱色処理:工程C1)。ろ過により活性白土を除去し、脱色油を得た。200℃、約266.7Pa(2torr)の条件で、100質量部の脱色油に対して5質量部の蒸気を1.5時間かけて吹き込むことにより、水蒸気蒸留し(脱臭処理:工程C2)、RBDIEBDBD_PL56を得た。得られたRBDIEBDBD_PL56のSH含有量およびAH含有量を測定した。また、同様に、モノクロロプロパノール類およびグリシドール類の含有量も測定した。結果を表4に示す。
Claims (10)
- 工程B:255℃以上で原料油脂を水蒸気蒸留する工程、
を含む、精製油脂の製造方法であって、
前記工程Bに供される原料油脂が、20~35の炭素数を有する飽和炭化水素を、10質量ppmを超える濃度で含有し、前記精製油脂中の20~35の炭素数を有する飽和炭化水素の含有量が、10質量ppm以下である、精製油脂の製造方法。 - 前記工程Bの水蒸気蒸留が、0.5~9時間行われる、請求項1に記載の方法。
- 前記工程Bの後に、
工程C:前記工程Bで得られた油脂を加熱処理する工程、
をさらに含む、請求項1又は2に記載の精製油脂の製造方法であって、前記精製油脂中のグリシドール類の含有量が、1質量ppm以下である、精製油脂の製造方法。 - 前記工程Cの加熱処理の工程が、
工程C2:前記工程Bで得られた油脂を180~220℃で水蒸気蒸留する工程、
である、請求項3に記載の方法。 - 前記工程Cの加熱処理の工程が、
工程C1:前記工程Bで得られた油脂を酸性物質と接触させる工程、及び、
工程C2:前記接触させた油脂を180~220℃で水蒸気蒸留する工程、
を含む、請求項3に記載の方法。 - 前記工程C2の水蒸気蒸留が、0.5~9時間行われる、請求項4又は5に記載の方法。
- 前記工程Bの前に、
工程A:モノクロロプロパノール類の含有量が2質量ppm以下の原料油脂を準備する工程、
をさらに含む、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。 - 前記工程Aの原料油脂が、
工程A1:油脂を脱塩素する工程、
により得られる、請求項7に記載の方法。 - 前記工程A1の脱塩素の工程が、
工程A1-1:油脂を脱塩素水で洗浄する工程、及び/又は
工程A1-2:油脂をアルカリ性物質に接触させる工程、
である、請求項8に記載の方法。 - 前記工程Aの原料油脂が、前記工程A1の脱塩素の工程の後に実施される、
工程A2:前記工程A1で脱塩素した油脂を210~260℃で水蒸気蒸留する工程、
により得られる、請求項8又は9に記載の方法。
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