JP7143242B2 - ポリスチレン系樹脂発泡容器 - Google Patents
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Description
トレー容器等は、内容物を容器内に入れて、フィルムでラップをし、ラップをした状態で店頭に並べられる。この様なトレー容器の使用方法においては、トレー容器に大きな圧縮力が加わることから、トレー容器には、容易に折れ曲がらない座屈強度が求められる。
特許文献2には、残存発泡剤量が特定の値であり、シートの両面の表面から厚さ方向に100μmまでの部分の密度が特定の値であるポリスチレン系樹脂発泡シートが提案されている。特許文献2の発明では、シートをトレー容器等の形状に成形した成形体のリップ強度(座屈強度)の向上が図られている。
[1]発泡層を有する容器用のポリスチレン系樹脂発泡シートであって、前記発泡層の密度(D0)が0.045~0.165g/cm3であり、前記発泡層は、一方の面の表面から厚さ方向に200μmまでの領域の密度(D1)が0.085~0.446g/cm3であり、前記発泡層は、他方の面の表面から厚さ方向に200μmまでの領域の密度(D2)が0.050~0.349g/cm3であり、前記密度(D1)/前記密度(D0)で表される比が1.90~2.70であり、前記密度(D2)/前記密度(D0)で表される比が1.11~2.11であり、前記密度(D1)/前記密度(D2)で表される比が1.28~1.71である、ポリスチレン系樹脂発泡シート。
[2]前記発泡層は、前記一方の面の表面から厚さ方向に200~300μmの領域の密度(D3)が0.033~0.215g/cm3であり、前記密度(D3)/前記密度(D0)で表される比が0.75~1.30である、[1]に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
[3]前記発泡層は、前記他方の面の表面から厚さ方向に200~300μmの領域の密度(D4)が0.024~0.265g/cm3であり、前記密度(D4)/前記密度(D0)で表される比が0.54~1.61であり、前記密度(D3)/前記密度(D4)で表される比が0.81~1.38である、[2]に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
[4]前記発泡層の平均気泡径が250~340μmである、[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
[5]前記発泡層の片面又は両面に非発泡層を有する、[1]~[4]のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂発泡シート。
[6][1]~[5]のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂発泡シートの前記一方の面を容器の内側にして加熱成形してなる、ポリスチレン系樹脂発泡容器。
[7]食品用の容器である、[6]に記載のポリスチレン系樹脂発泡容器。
本発明のポリスチレン系樹脂発泡シート(以下、単に「発泡シート」ともいう。)は、ポリスチレン系樹脂を含有する発泡層を有する。
発泡シートは、発泡層のみからなる単層構造でもよいし、発泡層の片面又は両面に非発泡層を備える多層構造でもよい。
図1に示すように、発泡シート1は、容器用の発泡シートであり、一方の面A(以下、「第一の面A」ともいう。)と、他方の面B(以下、「第二の面B」ともいう。)とを有する。発泡シート1は、発泡層のみからなる単層構造である。
発泡シート1は、厚さ方向中央部から第一の面Aに向かうに従って気泡径が小さくなり、密度が高くなるように形成されている。
また、発泡シート1は、厚さ方向中央部から第二の面Bに向かうに従って気泡径が小さくなり、密度が高くなるように形成されている。
なお、発泡シート1の厚さT1は、以下の方法で求められる値である。発泡シート1のTD方向(幅方向)の任意の10点の厚さをマイクロゲージで測定する。10点の測定値を平均して、発泡シート1の厚さT1とする。
密度(D0)は、JIS K 7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に準拠して測定することによって求められる。
より具体的には、元のセル構造を変えないように切断した発泡シートの試験片について、その質量と見掛け体積を測定し、下記式(0)により算出する。
密度(D0)(g/cm3)=試験片の質量(g)/試験片の見掛け体積(cm3)・・・(0)
密度(D1)の求め方は、後述する。
密度(D2)の求め方は、後述する。
密度(D3)の求め方は、後述する。
密度(D4)の求め方は、後述する。
密度(D5)の求め方は、後述する。
第5領域a5の厚さは、特に限定されないが、発泡シート1の厚さT1から、第1領域a1から第4領域a4までの厚さの合計(すなわち、600μm)を引いた値となる。第5領域a5の厚さは、例えば、0~4400μmが好ましく、200~3400μmがより好ましく、400~2400μmがさらに好ましい。
第二の面Bの表面から厚さ方向に100μmまでの領域(以下、「第7領域a7」ともいう。)の密度(d2)は、例えば、0.073~0.453g/cm3が好ましい。
密度(d1)、密度(d2)の求め方は、後述する。
なお、密度(D0)、密度(d1)、密度(d2)、密度(D1)、密度(D2)、密度(D3)、密度(D4)及び密度(D5)は、見掛け密度である。
同様に、各領域の密度は、発泡シート1を第二の面Bの表面から、100μm、200μm、300μmの深さにてスライスした3枚のスライス片について、それぞれ体積と質量とを測定して求めることができる。
より具体的には、密度(d1)の値は、次のようにして求められる。まず、2cm×5cmの大きさに切り出した発泡シートを第一の面Aの表面から100μm深さの位置でスライスして厚さ100μmのスライス片(第1スライス片)を作製する。その第1スライス片から1cm×2cmの大きさに切り出した試料の見掛け体積(Vd1:cm3)と質量(Wd1:g)とから、下記式(1)を計算して求めることができる。
「d1」=Wd1/Vd1(g/cm3)・・・(1)
「D1」=WD1/VD1(g/cm3)・・・(2)
密度(D3)の値は、次のようにして求められる。まず、2cm×5cmの大きさに切り出した発泡シートを第一の面Aの表面から300μm深さの位置でスライスして厚さ300μmのスライス片(第3スライス片)を作製する。その第3スライス片から1cm×2cmの大きさに切り出した試料の見掛け体積(VD3:cm3)と質量(WD3:g)とから、下記式(3)を計算して求めることができる。
「D3」=(WD3-WD1)/(VD3-VD1)(g/cm3)・・・(3)
発泡シート1における発泡層の全体の平均気泡径は、本発明の効果を妨げない範囲で150~400μmであってもよい。
発泡シート1における発泡層の全体の平均気泡径は、発泡シート1の製造条件により調整できる。より具体的には、発泡シート1を冷却する際に吹き付けるエアーの温度、風量、マンドレルの冷却水の水温、流量、樹脂組成物中の気泡調整剤の種類、含有量等により調整できる。
発泡シート1における発泡層の全体の平均気泡径は、下記の方法により算出できる。
切り出した断面を走査電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、「S-3400N」又は「SU1510」)を用いて、20~100倍に拡大して撮影する。
このとき、横向きのA4用紙1枚に、縦横2画像ずつ合計4画像並んだ状態で印刷した際に、所定の倍率となるように顕微鏡画像を撮影する。
より具体的には、顕微鏡画像上に、MD方向、TD方向、VD方向の各方向にそれぞれ平行な長さ60mmの任意の直線を描いた際に、これらの直線上に存在する気泡の数が5~30個となるように走査電子顕微鏡での撮影倍率を調整する。
MD断面の2つの画像のそれぞれにMD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描くと共に、TD断面の2つの画像のそれぞれにTD方向に平行な3本の任意の直線(長さ60mm)を描く。
また、MD断面の1つの画像とTD断面の1つの画像とにVD方向に平行な3本の直線(60mm)を描く。こうして、MD方向、TD方向、及び、VD方向のそれぞれに平行な60mmの任意の直線を各方向6本ずつ描く。
なお、任意の直線はできる限り気泡が接点でのみ接しないようにし、接してしまう場合には、この接点も気泡の数に加えて気泡数を計数する。
気泡数を数えた画像倍率と、この気泡数とから気泡の平均弦長tを下記式(4)より算出する。
平均弦長t(mm)=60/(気泡数×画像倍率)・・・(4)
ただし、発泡シート1の厚さが薄く、VD方向に60mm長さ分の直線を描けない場合は、長さ60mmの直線の代わりに長さ30mm又は20mmの直線を描いて、これらの直線上の気泡数を数えて長さ60mmの直線上の気泡数に換算する(例えば、長さ30mmの直線上に気泡が5個あった場合には、長さ60mmの直線上に気泡が10個あったものとみなす)。
画像倍率=スケールバー実測値(mm)/スケールバーの表示値(mm)・・・(5)
DMD(mm)=t/0.616・・・(6)
TD方向における気泡径DTD(mm)、VD方向における気泡径DVD(mm)も、DMDと同様に算出できる。
D(mm)=(DMD×DTD×DVD)1/3・・・(7)
発泡シート1の幅方向の両端20mmを除き、幅方向に等間隔に、10cm×10cmの切片10個を切り出し、各切片の質量(g)を0.001g単位まで測定する。各切片の質量(g)の平均値を1m2当たりの質量に換算した値を、発泡シート1の全体の坪量(g/m2)とする。
発泡層は、ポリスチレン系樹脂と発泡剤とを含む樹脂組成物を発泡してなる層である。発泡シート1は、発泡層を有することで、断熱性と耐衝撃性とを発揮する。
スチレン系モノマーと重合可能なビニルモノマーは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレート、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート等の二官能性モノマー等である。これらのビニルモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ここで、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」の一方又は双方を表し、「(メタ)アクリロニトリル」は、「アクリロニトリル」と「メタクリロニトリル」の一方又は双方を表す。
ジエン系のゴム状重合体は、例えば、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン三次元共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体等である。
これらのポリスチレン系樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
リサイクル原料は、使用済みのポリスチレン系樹脂発泡成形体である。リサイクル原料は、食品包装用トレー、魚箱、家電緩衝材等を回収し、リモネン溶解方式や加熱減容方式によって再生したもの等である。また、使用できるリサイクル原料は、家電製品(例えば、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン等)や事務用機器(例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等)から分別回収された非発泡のポリスチレン系樹脂成形体を粉砕し、溶融混練してリペレット化したものでもよい。
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレン、プロピレン等のオレフィン系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体、オレフィン系モノマーを主成分とし、オレフィン系モノマーとこれに重合可能なビニルモノマーとの共重合体等が挙げられる。
ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、例えば、ポリ(2,6-ジメチルフェニレン-1,4-エーテル)、ポリ(2,6-ジエチルフェニレン-1,4-エーテル)、ポリ(2,6-ジクロルフェニレン-1,4-エーテル)等が挙げられる。
これらの発泡剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
発泡剤の配合量は、発泡剤の種類や、発泡シート1に求める全体の密度(D0)等を勘案して決定される。発泡剤の配合量は、発泡シート1における全樹脂成分100質量部に対して、1.0~7.0質量部が好ましい。
任意成分の種類は、発泡シート1に求められる物性等を勘案して決定される。任意成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
安定剤としては、例えば、カルシウム亜鉛系熱安定剤、スズ系熱安定剤、鉛系熱安定剤等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セシウム系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化セリウム/ジルコニア固溶体、水酸化セリウム、カーボン、カーボンナノチューブ、酸化チタン、及びフラーレン等が挙げられる。
着色剤としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、亜鉛華、沈降性シリカ、カドミウム赤等が挙げられる。
消臭剤としては、例えば、シリカ、ゼオライト、リン酸ジルコニウム、ハイドロタルサイト焼成物等が挙げられる。
非発泡層を構成する樹脂は、特に限定されず、発泡層を構成する樹脂と同様の樹脂が挙げられる。
非発泡層を構成する樹脂は、発泡層を構成する樹脂と同じでもよいし、異なってもよい。
加えて、非発泡層の表面に印刷層が設けられていてもよく、印刷層の表面にさらに非発泡層が設けられていてもよい。
これらの樹脂フィルムは、無延伸フィルム、弱延伸フィルム、1軸延伸フィルム、及び、
2軸延伸フィルムのいずれであってもよい。
また、上記のような積層フィルムとする場合、ドライラミネートするポリオレフィン系樹脂フィルムは、例えば、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)フィルム、ポリプロピレン系樹脂(PP)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、シクロオレフィンコポリマー(COC)フィルム等が挙げられる。その他の樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)フィルム、エチレンビニルアルコール樹脂(EVOH)フィルム等が挙げられる。
非発泡層は、単層構造でもよく、二層以上の多層構造でもよい。
非発泡層が多層構造の場合、例えば、ポリプロピレン系樹脂(PP)フィルムの外層と、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)フィルムの内層と、外層と内層とを接着する接着剤層と、を有する多層フィルムが好ましい。この多層フィルムは、外層が表面(露出面)に位置し、内層が発泡層側に位置する。
発泡シートは、従来公知の製造方法により製造される。
発泡シートの製造方法について、単層の発泡シート1の製造方法を例にして説明する。
図2の発泡シートの製造装置100は、押出成形により発泡シートを得る装置である。製造装置100は、押出機10と、発泡剤供給源18と、サーキュラーダイ20と、マンドレル30と、2つの巻取機40とを備える。
押出機10は、いわゆるタンデム型押出機である。押出機10は、第一の押出部11と、第一の押出部11に配管16で接続された第二の押出部12とを備える。第一の押出部11はホッパー14を備える。第一の押出部11には、発泡剤供給源18が接続されている。
第二の押出部12には、サーキュラーダイ20が接続されている。サーキュラーダイ20の下流には、カッター32を備えるマンドレル30が設けられている。サーキュラーダイ20とマンドレル30との間には、冷却用送風機(不図示)が設けられている。
第一の押出部11では、原料を任意の温度に加熱しながら混合して樹脂溶融物とし、発泡剤供給源18から発泡剤を第一の押出部11に供給し、樹脂溶融物に発泡剤を混合して樹脂組成物とする。
加熱温度は、樹脂の種類等を勘案して、樹脂が溶融しかつ任意成分が変性しない範囲で適宜決定される。加熱温度は、例えば、150~350℃が好ましく、170~330℃がより好ましい。
樹脂流路に導かれた樹脂組成物は、サーキュラーダイ20から押し出され、発泡剤が発泡して円筒状の発泡シート1aとなる。
サーキュラーダイ20から押し出される樹脂組成物の吐出量は、例えば、100~800kg/hが好ましく、150~700kg/hがより好ましい。樹脂組成物の吐出量が上記下限値以上であると、樹脂組成物が冷却され過ぎず、円筒状の発泡シート1aの密度が高くなり過ぎることを抑制できる。加えて、樹脂組成物の吐出量が上記下限値以上であると、円筒状の発泡シート1aの生産性を高められる。樹脂組成物の吐出量が上記上限値以下であると、樹脂組成物が充分に冷却され、所望の密度を有する円筒状の発泡シート1aが得られやすい。
マンドレル30の内部には、冷却水が通流し、円筒状の発泡シート1aの内周面を冷却できる機構となっている。
冷却水の温度は、例えば、10~60℃が好ましく、15~50℃がより好ましい。冷却水の温度が上記数値範囲内であると、所望の密度となるように円筒状の発泡シート1aの内周面を冷却できる。
冷却水の流量は、例えば、5~35L/minが好ましく、10~30L/minがより好ましい。冷却水の流量が上記数値範囲内であると、所望の密度となるように円筒状の発泡シート1aの内周面を冷却できる。
円筒状の発泡シート1aの外周面に冷却用のエアーを吹き付ける風量(以下、「風量2」ともいう。)は、例えば、0.1~4.5Nm3/minが好ましく、0.3~4.0Nm3/minがより好ましい。風量2が上記数値範囲内であると、所望の密度となるように円筒状の発泡シート1aの外周面を冷却できる。
円筒状の発泡シート1aに吹き付けられる冷却用のエアーの温度は、例えば、10~50℃が好ましく、15~40℃がより好ましい。冷却用のエアーの温度が上記下限値以上であると、円筒状の発泡シート1aが必要以上に冷却されることを抑制できる。加えて、冷却用のエアーの温度が上記下限値以上であると、エアーを冷却するエネルギーを節約できる。冷却用のエアーの温度が上記上限値以下であると、円筒状の発泡シート1aを充分に冷却できる。
発泡シート1は、各々ガイドロール42とガイドロール44とに掛け回され、巻取機40に巻き取られて発泡シートロール4となる。
こうして、単層構造である発泡シート1が得られる。
ここで説明した発泡シート1の発泡層は、単層の発泡層であるが、発泡シートの発泡層は、例えば、共押出によって2層以上の発泡層が積層されたものでもよく、熱融着又は接着によって2層以上の発泡層が積層されたものでもよい。
本発明のポリスチレン系樹脂発泡容器(単に「発泡容器」ともいう。)は、上述した本発明の発泡シートの一方の面を容器の内側にして加熱成形してなるものである。ここで、発泡シートの一方の面は、高密度層を形成する第1領域a1(密度(D1)である領域)側の面をいう。
発泡容器としては、例えば、平面視形状が真円形、楕円形、半円形、多角形、扇形等のトレー、丼形状の容器、有底円筒状又は有底角筒状等の容器、納豆用容器等の蓋付容器等の種々の容器;容器本体に装着される蓋体等が挙げられる。
これらの容器の用途としては、例えば、食品用が好ましい。
発泡容器における発泡層の全体密度は、用途等を勘案して決定され、発泡シートにおける発泡層の全体の密度(D0)と同様である。
発泡容器の一方の面の表面から厚さ方向に200μmまでの領域の発泡層の密度は、発泡シートにおける第1領域a1の密度(D1)と同様である。
発泡容器の他方の面の表面から厚さ方向に200μmまでの領域の発泡層の密度は、発泡シートにおける第2領域a2の密度(D2)と同様である。
発泡容器の一方の面の表面から厚さ方向に200~300μmの領域の発泡層の密度は、発泡シートにおける第3領域a3の密度(D3)と同様である。
発泡容器の他方の面の表面から厚さ方向に200~300μmの領域の発泡層の密度は、発泡シートにおける第4領域a4の密度(D4)と同様である。
発泡容器の一方の面の表面から厚さ方向に300μmから、発泡容器の他方の面の表面から厚さ方向に300μmまでの領域の発泡層の密度は、発泡シートにおける第5領域a5の密度(D5)と同様である。
発泡容器の一方の面の表面から厚さ方向に100μmまでの領域の発泡層の密度は、発泡シートにおける第6領域a6の密度(d1)と同様である。
発泡容器の他方の面の表面から厚さ方向に100μmまでの領域の発泡層の密度は、発泡シートにおける第7領域a7の密度(d2)と同様である。
この他、発泡容器における各領域の密度の比率は、発泡シートにおける各領域の密度の比率と同様である。
加えて、発泡層の一方の面の表面から厚さ方向に200~300μmの領域の密度(D3)を、極端な密度の低下がないように制御することで、局所的に弱い発泡層がないため、発泡容器の座屈強度をさらに高められる。
本実施例において使用した原料は下記の通りである。
・樹脂:ポリスチレン系樹脂、MW=323×103、DIC株式会社製、製品名「XC-515」。
・気泡調整剤:タルク含有樹脂組成物(タルク(平均比表面積10~40m2/g)を40質量%含有。東洋スチレン株式会社製、製品名「DSM1401A」)。
・発泡剤:ブタン(イソブタン:ノルマルブタン=68:32(質量比)の混合物)。
(発泡シートの製造)
図2の発泡シートの製造装置と同様の製造装置を用い、下記のようにして単層の発泡シートを得た。
表1の組成に従い、ポリスチレン系樹脂と、気泡調整剤と、を混合した。表中の組成は、質量部を表す。
原料の混合物をホッパーから第一の混合部(スクリュー径:115mm)に供給し、最高到達温度275℃で加熱し、溶融混練して樹脂溶融物とした。
第一の押出部に発泡剤(イソブタン:ノルマルブタン=68:32(質量比)の混合物)を供給し、樹脂溶融物と発泡剤とを混合して樹脂組成物とした。発泡剤の配合量は、ポリスチレン系樹脂100質量部対して、表1に示す質量部とした。
樹脂組成物を第一の混合部から第二の混合部(スクリュー径:180mm)に供給し、153℃に冷却し、サーキュラーダイ(口径175mm)から表1に記載の吐出量で押し出し、発泡させて円筒状の発泡シートを得た。この際、サーキュラーダイから押し出された直後に、円筒状の発泡シートの内周面及び外周面に表1に記載の風量の冷却用のエアー(30℃)を吹き付けて冷却した。加えて、冷却水を通流したマンドレルの外周面に円筒状の発泡シートの内周面を接触させ、通過させることにより円筒状の発泡シートを冷却した。実施例1~6及び比較例1~3は、円筒状の発泡シートの内周面が高密度層となるように冷却した。実施例7は、円筒状の発泡シートの外周面が高密度層となるように冷却した。マンドレルを通流する冷却水の温度は25℃、冷却水の流量は、25L/minであった。
冷却後の円筒状の発泡シートを押出方向に沿って切り裂いて、発泡倍率15.1倍、厚さ1.8mmの発泡シートを得た。各領域の密度は、この発泡シートをスライスすることにより求めた。また、この発泡シートを用いて、坪量と、平均気泡径とを測定した。表中の平均気泡径の単位は、μmである。
得られた発泡シートの両方の面に非発泡層として厚さが15μmのポリスチレン樹脂フィルムを160℃の熱ロールに接触させた。その後、ラミネート圧力0.5MPa、ラミネート速度8.0m/minで、25℃の発泡シートに積層し、発泡層の両面に非発泡層を有する積層発泡シートを得た。得られた積層発泡シートの発泡層における各領域の密度や密度の比率は、積層する前の発泡シートにおける各領域の密度や密度の比率と同様であった。
得られた積層発泡シートを単発成形機にて加熱成形した。加熱成形により、縦辺200mm、横辺200mm、深さ30mmの角形トレー(発泡容器)を得た。このとき、一方の面、すなわち、高密度層を形成する密度(D1)である領域側の面を容器の内側にして加熱成形して、発泡容器を得た。
得られた発泡容器(角型トレー)を測定用試料とした。テンシロン万能材料試験機((株)オリエンテック製、RTC-1310A)を用いて、各例の測定用試料について、対向する横辺同士を近づけるように、両方の横辺の中央部を400mm/minの速度で座屈が生じるまで圧縮し、最大荷重・変位を測定した。各例30個の測定用試料について最大荷重・変位を測定し、30個の算術平均値を求めた。次に、対向する縦辺同士を近づけるように、両方の縦辺の中央部を400mm/minの速度で座屈が生じるまで圧縮し、最大荷重・変位を測定した。各例30個の測定用試料について最大荷重・変位を測定し、30個の算術平均値を求めた。横辺について測定した算術平均値と、縦辺について測定した算術平均値とのうち、算術平均値が高い方を、発泡容器の座屈強度、発泡容器の座屈変位とした。発泡容器の座屈強度、発泡容器の座屈変位の値から、下記評価基準に基づいて容器強度を評価した。「◎」、「○」、「△」を合格とした。
《評価基準》
◎:座屈強度1.50kgf以上、かつ、座屈変位30mm以上。
○:座屈強度1.50kgf以上、かつ、座屈変位25mm以上30mm未満。
△:座屈強度1.40kgf以上1.50kgf未満、かつ、座屈変位25mm以上30mm未満。
×:座屈変位1.40kgf未満。
得られた発泡容器の表面の「気泡に由来する凹凸」を目視で観察し、下記評価基準に基づいて美麗性を評価した。「○」、「△」を合格とした。
《評価基準》
○:表面に「気泡に由来する凹凸」が認められない。
△:表面に「気泡に由来する凹凸」がわずかに認められる。
×:表面に「気泡に由来する凹凸」が明らかに認められる。
得られた発泡容器の表面の「成形に由来する変形皺」を目視で観察し、下記評価基準に基づいて成形性を評価した。「○」、「△」を合格とした。
《評価基準》
○:発泡容器の表面に「成形に由来する変形皺」が認められない。
△:発泡容器の表面に「成形に由来する変形皺」がわずかに認められる。
×:発泡容器の表面に「成形に由来する変形皺」が明らかに認められる。
容器強度、美麗性、成形性の上記評価結果から、下記評価基準に基づいて総合評価を行った。「A」、「B」、「C」を合格とした。
《評価基準》
A:容器強度の評価が「◎」、かつ、美麗性の評価及び成形性の評価が「○」。
B:容器強度の評価が「◎」又は「○」、かつ、美麗性の評価及び成形性の評価が「○」又は「△」。
C:容器強度の評価が「△」、かつ、美麗性の評価及び成形性の評価が「○」又は「△」。
D:いずれかの評価に「×」がある。
一方、D1/D0比及びD1/D2比が本発明の範囲外である比較例1~2は、総合評価が「D」だった。D1/D2比が本発明の範囲外である比較例3は、総合評価が「D」だった。
A 一方の面
B 他方の面
Claims (6)
- 発泡層を有する容器用のポリスチレン系樹脂発泡シートの一方の面を容器の内側にして加熱成形してなるポリスチレン系樹脂発泡容器であって、
前記発泡層の密度(D0)が0.045~0.165g/cm3であり、
前記発泡層は、前記一方の面の表面から厚さ方向に200μmまでの領域の密度(D1)が0.085~0.446g/cm3であり、
前記発泡層は、他方の面の表面から厚さ方向に200μmまでの領域の密度(D2)が0.050~0.349g/cm3であり、
前記密度(D1)/前記密度(D0)で表される比が1.90~2.70であり、
前記密度(D2)/前記密度(D0)で表される比が1.11~2.11であり、
前記密度(D1)/前記密度(D2)で表される比が1.28~1.71である、
ポリスチレン系樹脂発泡容器。 - 前記発泡層は、前記一方の面の表面から厚さ方向に200~300μmの領域の密度(D3)が0.033~0.215g/cm3であり、
前記密度(D3)/前記密度(D0)で表される比が0.75~1.30である、請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡容器。 - 前記発泡層は、前記他方の面の表面から厚さ方向に200~300μmの領域の密度(D4)が0.024~0.265g/cm3であり、
前記密度(D4)/前記密度(D0)で表される比が0.54~1.61であり、
前記密度(D3)/前記密度(D4)で表される比が0.81~1.38である、請求項2に記載のポリスチレン系樹脂発泡容器。 - 前記発泡層の平均気泡径が250~340μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂発泡容器。
- 前記発泡層の片面又は両面に非発泡層を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂発泡容器。
- 食品用の容器である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリスチレン系樹脂発泡容器。
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