以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1~図14を参照して、第1実施形態に係るスクリュードライバ1について説明する。スクリュードライバ1は、先端工具を回転駆動する作業工具の一例であって、より詳細には、スピンドル3に装着されたドライバビット9を回転駆動することで、ネジ締め作業やネジ緩め作業を遂行可能なネジ締め工具の一例である。
まず、スクリュードライバ1の概略構成について説明する。図1および図2に示すように、スクリュードライバ1は、モータ2、スピンドル3等を含む本体部10と、把持部171を含むハンドル部17とを備えている。本体部10は、全体としては、所定の駆動軸A1に沿って延在する長尺状に形成されている。本体部10の長軸方向(駆動軸A1の延在方向)の一端部に、ドライバビット9が取り外し可能に装着される。ハンドル部17は、全体としてはC字状に形成されており、本体部10の長軸方向における他端部にループ状に連結されている。ハンドル部17のうち、本体部10から離間して、駆動軸A1に概ね直交する方向に直線状に延在する部分が、使用者によって把持される把持部171を構成する。なお、把持部171の長軸方向における一端部は駆動軸A1上に配置されており、この一端部には、使用者による引き操作が可能なトリガ173が設けられている。また、把持部171の他端部には、外部の交流電源に接続可能な電源ケーブル179が接続されている。
本実施形態のスクリュードライバ1では、使用者によってトリガ173が引き操作されると、モータ2が駆動される。また、スピンドル3が後方へ押し込まれると、モータ2の動力がスピンドル3に伝達され、ドライバビット9が回転駆動される。これによりネジ締め作業やネジ緩め作業が遂行される。
以下、スクリュードライバ1の詳細構成について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、駆動軸A1の延在方向を、スクリュードライバ1の前後方向と規定し、ドライバビット9が着脱される側を前側、把持部171が配置されている側を後側と規定する。また、駆動軸A1に直交する方向であって、把持部171の延在方向に対応する方向を上下方向と規定し、トリガ173が配置されている側を上側、電源ケーブル179が接続されている側を下側と規定する。また、前後方向および上下方向に直交する方向を左右方向と規定する。
まず、本体部10およびハンドル部17について簡単に説明する。図2に示すように、本体部10の外郭は、主として本体ハウジング11によって形成されている。本体ハウジング11は、モータ2を収容する筒状の後部ハウジング12と、スピンドル3を収容する筒状の前部ハウジング13と、後部ハウジング12および前部ハウジング13の間に配置された中央ハウジング14を含む。なお、中央ハウジング14の前端部は、駆動軸A1に概ね直交するように配置された区画壁141を有する。中央ハウジング14および前部ハウジング13がネジによって後部ハウジング12に固定されることで、3つのハウジングが本体ハウジング11として一体化されている。なお、本体部10の内部構造を含む詳細については後述する。
また、前部ハウジング13の前端部には、前端部を覆うように、筒状のロケータ15が取り外し可能に連結されている。なお、ロケータ15は、前部ハウジング13に対して前後方向に相対移動可能であり、使用者によって任意の位置に固定される。これにより、ロケータ15からのドライバビット9の突出量、つまり、ネジ締めの深さが設定される。
図2に示すように、ハンドル部17の外郭は、主としてハンドルハウジング18によって形成されている。ハンドルハウジング18は、左右の半割体によって構成されている。なお、左側の半割体は、後部ハウジング12と一体形成されている。ハンドルハウジング18には、メインスイッチ174と、回転方向スイッチ176と、コントローラ178とが収容されている。
メインスイッチ174は、モータ2の起動用のスイッチであって、トリガ173の後側で把持部171内に配置されている。メインスイッチ174は、常時にはオフ状態で維持され、トリガ173の引き操作に応じてオン状態に切り替えられる。メインスイッチ174は、図示しない配線を介して、オン状態またはオフ状態を示す信号をコントローラ178に出力する。
ハンドルハウジング18のうち、把持部171の下端部と本体部10(後部ハウジング12)の下後端部に接続する部分には、ドライバビット9の回転方向(詳細には、モータシャフト23の回転方向)を切り替えるための切替レバー175が設けられている。使用者は、切替レバー175の操作により、モータシャフト23の回転方向を、ドライバビット9がネジ90を締める方向(正方向、ネジ締め方向ともいう)、または、ドライバビット9がネジ90を緩める方向(逆方向、ネジ緩め方向ともいう)のうち一方に設定することができる。回転方向スイッチ176は、図示しない配線を介して、切替レバー175を介して設定された回転方向に応じた信号をコントローラ178に出力する。
制御回路を含むコントローラ178は、メインスイッチ174の下方に配置されている。コントローラ178は、メインスイッチ174からの信号がオン状態を示す場合、回転方向スイッチ176からの信号が示す回転方向に従って、モータ2を駆動するように構成されている。
以下、本体部10の内部構造を含む詳細構成について説明する。
図2に示すように、後部ハウジング12には、モータ2が収容されている。本実施形態では、モータ2として、交流モータが採用されている。モータ2のロータ21から延設されたモータシャフト23は、駆動軸A1の下側で、駆動軸A1と平行に(前後方向に)延在している。モータシャフト23は、前端部と後端部において、ベアリング231、233によって回転可能に支持されている。なお、前側のベアリング231は、中央ハウジング14の区画壁141に支持され、後側のベアリング233は後部ハウジング12の後端部に支持されている。また、モータシャフト23のロータ21よりも前側の部分には、モータ2の冷却用のファン25が固定され、中央ハウジング14内に収容されている。モータシャフト23の前端部は、区画壁141に設けられた貫通孔を通して前部ハウジング13内に突出している。モータシャフト23の前端部には、ピニオンギア24が形成されている。
図3および図4に示すように、前部ハウジング13には、スピンドル3と、動力伝達機構4と、位置切替機構5とが収容されている。以下、これらの詳細構成について順に説明する。
図3および図4に示すように、スピンドル3は、略円柱状の長尺部材であって、駆動軸A1に沿って、前後方向に延在している。本実施形態では、スピンドル3は、別個に形成された前側シャフト31と後側シャフト32とが固定状に連結され、一体化されることで構成されている。しかしながら、スピンドル3は、単一のシャフトのみによって構成されていてもよい。スピンドル3は、前後方向における中央部(詳細には、前側シャフト31の後端部)に、径方向外側に突出するフランジ34を有する。
スピンドル3は、中央ハウジング14の区画壁141に支持されたベアリング(詳細には、オイルレスベアリング)301と、前部ハウジング13の前端部に支持されたベアリング(詳細には、ボールベアリング)302によって、駆動軸A1周りに回転可能、且つ、駆動軸A1に沿って前後方向に移動可能に支持されている。なお、スピンドル3は、常時には、後述する付勢バネ49の付勢力によって前方へ付勢され、フランジ34の前端面が前部ハウジング13内に設けられたストッパ部135に当接する位置で保持されている。このときのスピンドル3の位置が、スピンドル3の移動可能範囲における最前方位置(初期位置ともいう)である。また、スピンドル3(前側シャフト31)の前端部は、前部ハウジング13からロケータ15内に突出している。スピンドル3(前側シャフト31)の前端部には、駆動軸A1に沿ってビット挿入孔311が設けられている。ビット挿入孔311に挿入されたドライバビット9の小径部に対し、リーフスプリングで付勢されたスチール製のボールが係合することによって、ドライバビット9が取り外し可能に保持される。
以下、動力伝達機構4について説明する。図3および図4に示すように、本実施形態の動力伝達機構4は、テーパスリーブ41と、リテーナ43と、複数のローラ45と、ギアスリーブ47とを含む遊星機構を主体として構成されている。テーパスリーブ41、リテーナ43、およびギアスリーブ47は、スピンドル3(駆動軸A1)と同軸状に配置されている。テーパスリーブ41、リテーナ43、ローラ45、およびギアスリーブ47は、夫々、遊星機構における太陽部材、キャリア部材、遊星部材、およびリング部材に相当する。なお、本実施形態では、動力伝達機構4は、太陽部材としてのテーパスリーブ41が固定され、リング部材としてのギアスリーブ47が入力部材、キャリア部材としてのリテーナ43が出力部材として動作する、いわゆるソーラ型の遊星減速機構として構成されており、ギアスリーブ47とリテーナ43(スピンドル3)は同一方向に回転する。
また、動力伝達機構4は、モータ2の動力をスピンドル3に伝達する、または、動力の伝達を遮断するように構成されている。具体的には、動力伝達機構4は、前後方向において、ギアスリーブ47が、テーパスリーブ41、リテーナ43およびローラ45に対して近接あるいは離間する方向に相対移動するのに伴って、ローラ45が、テーパスリーブ41およびギアスリーブ47と摩擦接触状態あるいは非摩擦接触状態とされるように構成されている。これにより、動力伝達機構4は、モータ2の動力をスピンドル3に伝達可能な伝達可能状態と、モータ2の動力をスピンドル3に伝達不能な遮断状態との間で切り替えられる。つまり、本実施形態の動力伝達機構4は、遊星ローラ式の摩擦クラッチ機構として構成されているということができる。
以下に、動力伝達機構4の各部材の詳細構成および配置について説明する。
まず、テーパスリーブ41について説明する。図5~図7に示すように、太陽部材に相当するテーパスリーブ41は、筒状部材として構成されている。テーパスリーブ41は、ベース143を介して、駆動軸A1周りに回転不能に本体ハウジング11(詳細には区画壁141)に固定されている。なお、ベース143は、スピンドル3(後側シャフト32)の後端部を支持するベアリング301の前側で、区画壁141に固定され、本体ハウジング11に一体化されている。スピンドル3(詳細には、後側シャフト32)は、テーパスリーブ41に遊嵌状に挿通されており、テーパスリーブ41に対して前後方向に移動可能、且つ、回転可能である。
テーパスリーブ41の外周面は、駆動軸A1に対して所定角度で傾斜するテーパ面411として構成されている。より詳細には、テーパスリーブ41の外形は、前方へ向かって細くなる(直径が小さくなる)円錐台状であって、テーパ面411は前方へ向かって駆動軸A1に近づく方向に傾斜する円錐面として構成されている。なお、本実施形態では、駆動軸A1に対するテーパ面411の傾斜角は概ね4度(円錐の断面でみた場合、概ね8度)に設定されている。
次に、リテーナ43について説明する。キャリア部材としてのリテーナ43は、遊星部材としてのローラ45を自転可能に保持する部材である。図5~図7に示すように、リテーナ43は、貫通孔を有する略円形の底壁431と、底壁431の外縁から突出する複数の保持アーム434とを有する。保持アーム434は、周方向に互いから離間して配置されている。なお、本実施形態では、リテーナ43は10本の保持アーム434を有するが、保持アーム434の数(およびローラ45の数)は、適宜変更が可能である。リテーナ43は、底壁431が前側に位置する向きで(後方に保持アーム434が突出するように)、径方向においてテーパスリーブ41に保持アーム434の一部が重なった状態で、スピンドル3に対して回転不能、且つ、前後方向に移動可能にスピンドル3に支持されている。各保持アーム434は、駆動軸A1に対してテーパスリーブ41のテーパ面411と同じ傾斜角をなすように(つまり、テーパ面411に平行に)、底壁431の外縁から後方へ突出している。
図6および図7に示すように、スピンドル3の後側シャフト32の後端部の前側部分には、駆動軸A1を挟んで一対の溝321が形成されている。各溝321は、断面U字状であって、前後方向に直線状に延在している。各溝321には、スチール製のボール36が転動可能に配置されている。また、リテーナ43の底壁431の後面(保持アーム434側の面)には、駆動軸A1を挟んで一対の凹部432が形成されている。溝321内に配置されたボール36の一部は、凹部432に係合している。更に、テーパスリーブ41の前端面の中央部には、環状の凹部414が形成されている。詳細は後述するが、リテーナ43は、付勢バネ49によって後方に付勢されており、ボール36が凹部414、432で規定される空間内に配置され、底壁431の後面がテーパスリーブ41の前端面に当接した状態で保持されている。なお、保持アーム434の後端は、ベース143から前側に離間した位置に配置されている。
このような構成により、リテーナ43は、スピンドル3の径方向および周方向において、ボール36を介してスピンドル3と係合しており、スピンドル3と一体的に回転可能とされている。なお、ボール36はテーパスリーブ41の環状の凹部414内を転動可能であり、リテーナ43はスピンドル3と共にテーパスリーブ41に対して駆動軸A1周りに回転可能である。一方、スピンドル3は、ボール36が溝321内を転動可能な範囲で、リテーナ43に対して前後方向に移動可能である。
図5~図7に示すように、遊星部材に相当するローラ45は、円柱状の部材である。本実施形態では、各ローラ45は、一定の径を有し、隣接する保持アーム434の間に、テーパ面411に概ね平行な回転軸周りに自転可能に保持されている。なお、ローラ45の長さは、保持アーム434よりも長く設定されている。また、図8に示すように、保持アーム434に保持された状態において、ローラ45の外周面の一部は、リテーナ43の径方向において、保持アーム434の内面および外面よりも僅かに突出している。
次に、ギアスリーブ47について説明する。図5~図7に示すように、リング部材に相当するギアスリーブ47は、テーパスリーブ41およびリテーナ43の外径よりも大きい内径を有する略カップ状の部材として構成されている。
ギアスリーブ47は、貫通孔を有する底壁471と、底壁471に接続する筒状の周壁474とを有する。周壁474の内周面のうち、底壁471の近傍の部分には、ベアリング(詳細には、ボールベアリング)48の外輪481が固定されている。ギアスリーブ47は、底壁471が前側に位置する向きで(後方に開口するように)、リテーナ43よりも前側で、スピンドル3に対して回転可能、且つ、前後方向に移動可能にスピンドル3に支持されている。より詳細には、スピンドル3の後側シャフト32が、底壁471の貫通孔に遊嵌状に挿通されるとともに、前後方向に摺動可能にベアリング48の内輪483に挿通されている。これにより、ベアリング48の後側では、スピンドル3と周壁474との間に筒状の内部空間が形成されている。この内部空間には、テーパスリーブ41、リテーナ43およびローラ45の一部と、後述の付勢バネ49とが配置されている。また、ギアスリーブ47(詳細には周壁474)の外周には、ピニオンギア24に常に噛合するギア歯470が一体的に形成されており、ギアスリーブ47はモータシャフト23の回転に伴って回転駆動される。
ギアスリーブ47の周壁474のうち、ベアリング48よりも後側の部分(開口端側の部分)の内周面は、駆動軸A1に対してテーパスリーブ41のテーパ面411と同じ角度で傾斜する(つまり、テーパ面411に平行な)テーパ面475を含む。つまり、テーパ面475は、後方(ギアスリーブ47の開口端)へ向かって駆動軸A1から離れる方向に傾斜する円錐面として形成されている。リテーナ43に保持されたローラ45は、スピンドル3の径方向(駆動軸A1に直交する方向)において、その少なくとも一部(詳細には前部)がテーパ面411とテーパ面475の間に位置するように保持されている。
また、本実施形態では、動力伝達機構4は、前後方向において、ギアスリーブ47とリテーナ43およびローラ45との間に介在する付勢バネ49を含む。本実施形態では、付勢バネ49は、円錐コイルバネとして構成されており、大径側の端部が後側、小径側の端部が前側となるように配置されている。より詳細には、大径側の端部は大径のワッシャ491に当接し、小径側の端部は小径のワッシャ493に当接している。ワッシャ491は、リテーナ43の保持アーム434の前端面に当接するように配置されている。ワッシャ493は、ギアスリーブ47内に取り付けられたベアリング48の内輪483に当接するが、外輪481には当接しないように配置されている。つまり、付勢バネ49は、リテーナ43と共に回転可能であるが、ギアスリーブ47の回転からは遮断されている。
付勢バネ49は、ワッシャ491、493を介して、常に、リテーナ43とギアスリーブ47とを互いに離れる方向、つまり、後方および前方に夫々付勢している。これにより、リテーナ43は、付勢バネ49の付勢力で、底壁431の後面がテーパスリーブ41の前端面に当接する位置で保持され、その前後方向への移動が規制される。また、ローラ45は、ワッシャ491と本体ハウジング11に固定されたベース143の前端面の間で保持され、その前後方向への移動が規制される。なお、ここでいう「移動が規制されている」とは、移動が完全に禁止されていることを意味するものではなく、僅かな移動は許容されてよい。本実施形態では、ワッシャ491とベース143の前端面の間の距離は、ローラ45よりも僅かに長く設定されており(つまり、遊びが設けられており)、この遊び分のローラ45の移動は許容されている。なお、付勢バネ49は、ワッシャ491、493を介さずに、リテーナ43および内輪483に直接当接していてもよい。
また、付勢バネ49の付勢力でギアスリーブ47が前方へ付勢されることで、後述のスラストベアリング53、リードスリーブ500およびボール508を介してスピンドル3も前方へ付勢され、フランジ34がストッパ部135に当接する初期位置に保持される。
なお、スピンドル3が初期位置に配置されているときには、図5および図8に示すように、ローラ45は、テーパスリーブ41のテーパ面411と、ギアスリーブ47のテーパ面475の間に遊嵌状に配置されており(より詳細には、テーパ面475から離間しており)、テーパスリーブ41およびギアスリーブ47と非摩擦接触状態にある。つまり、動力伝達機構4は遮断状態にある。一方、図9に示すように、ギアスリーブ47が本体ハウジング11に対して後方へ移動し(テーパスリーブ41、リテーナ43およびローラ45に近接し)、テーパスリーブ41のテーパ面411とギアスリーブ47のテーパ面475との間隔が狭められると、ローラ45は、図10に示すように、テーパ面411とテーパ面475の間に挟まれ、テーパスリーブ41およびギアスリーブ47と摩擦接触状態とされる。これにより、動力伝達機構4は伝達可能状態に移行する。なお、動力伝達機構4の動作については後で詳述する。
以下、位置切替機構5について説明する。位置切替機構5は、ギアスリーブ47が逆方向(ネジ緩め方向)に回転駆動された場合、ギアスリーブ47とスピンドル3の前端部とを、前後方向に互いから離れる方向に相対的に移動させる機構である。かかる構成により、位置切替機構5は、スピンドル3が初期位置に配置された状態でギアスリーブ47が逆方向(ネジ緩め方向)に回転駆動された場合、ギアスリーブ47をスピンドル3に対して後方に移動させ、リテーナ43およびローラ45に近接させる。以下、位置切替機構5の詳細について説明する。
図5~図7に示すように、本実施形態では、位置切替機構5は、ワンウェイクラッチ50と、リード溝507を有するリードスリーブ500と、ボール508とを主体として構成されている。
本実施形態では、ワンウェイクラッチ50は、ギアスリーブ47の前端部に形成されたカム溝501と、ボール502とを含み、ギアスリーブ47が逆方向に回転駆動された場合にのみ、リードスリーブ500をギアスリーブ47と一体的に回転させるように構成されている。
図7および図11に示すように、カム溝501は、ギアスリーブ47の前端部の周壁474の外周面からギアスリーブ47の径方向内側に窪む溝であって、外周面からの径方向の深さが、図に矢印Aで示すギアスリーブ47の正方向(ネジ締め方向)において、上流側から下流側に向かって小さくなる(図に矢印Bで示すギアスリーブ47の逆方向(ネジ緩め方向)において、上流側から下流側に向かって大きくなる)ように形成されている。本実施形態では、4つのカム溝501が、駆動軸A1周りの周方向に等間隔で設けられている。各カム溝501内には、スチール製のボール502が配置されている。なお、図11に示すように、ボール502の径は、カム溝501のうち最深部(つまり、正方向における上流側端部)の深さよりも僅かに大きく設定されている。
図5~図7に示すように、リードスリーブ500は、略カッブ状の部材として形成されており、貫通孔を有する底壁505と、底壁505の外縁から突出する筒状の周壁504とを有する。リードスリーブ500は、底壁505が前側に配置され、底壁505の貫通孔にスピンドル3の後側シャフト32が遊嵌状に挿通された状態で、ギアスリーブ47とスピンドル3のフランジ34の間に配置されている。底壁505の後面と、ギアスリーブ47の底壁471の前端面の間には、ギアスリーブ47に対するリードスリーブ500の回転を許容しつつスラスト荷重を受けるスラストベアリング(詳細には、スラストボールベアリング)53が配置されている。なお、底壁505の後面および底壁471の前端面には、夫々、断面U字状の環状の凹部が形成されている。スラストベアリング53の転動体としてのボールは、これらの凹部によって規定される環状の軌道内を転動可能である。
周壁504の内径は、カム溝501が形成されたギアスリーブ47の前端部の外径よりも僅かに大きく設定されており、周壁504は、ギアスリーブ47の前端部の外周面を取り巻くように配置されている。なお、図11に示すように、カム溝501のうち最深部では、カム溝501の壁面と周壁504の内周面との間の径方向の距離は、ボール502の径よりも僅かに大きく設定されている。
このような構成により、ワンウェイクラッチ50は、ギアスリーブ47が逆方向に回転駆動された場合にのみ、リードスリーブ500をギアスリーブ47と一体的に回転させる。具体的には、図11に示すように、ギアスリーブ47が正方向(図の矢印A方向)に回転駆動された場合、ボール502は、カム溝501の最深部(正方向(矢印A方向)における上流側端部)へ相対的に移動する。ボール502は、カム溝501の壁面と周壁504の内周面の間に遊嵌状に配置された状態で、ギアスリーブ47と共に駆動軸A1を中心として回転する。つまり、ワンウェイクラッチ50は遮断状態にあり、ギアスリーブ47の回転力はリードスリーブ500に伝達されない。
一方、図12に示すように、ギアスリーブ47が逆方向(図の矢印B方向)に回転駆動された場合、ボール502は、カム溝501の最深部から、より浅い部分(逆方向(矢印B方向)における上流側)へ相対的に移動する。これにより、ボール502はカム溝501の壁面と周壁504の内周面の間で挟まれ、楔作用による摩擦力で、ギアスリーブ47とリードスリーブ500とがボール502を介して一体化される。つまり、ワンウェイクラッチ50は伝達可能状態に移行し、ギアスリーブ47と共にリードスリーブ500が逆方向に回転される。
リード溝507およびボール508は、リードスリーブ500の駆動軸A1周りの回転に伴って、リードスリーブ500をスピンドル3に対して前後方向に相対的に移動させ、これによって、ギアスリーブ47もリテーナ43およびローラ45に対して前後方向に相対移動させるように構成されている。図5~図7に示すように、本実施形態では、リード溝507は、リードスリーブ500の底壁505の前端面に形成された螺旋状の溝(厳密には、螺旋の一部に対応する形状の溝)として形成され、互いに離間して周方向に等間隔で3本設けられている。より詳細には、リード溝507は、前端面からの前後方向の深さが、図7に矢印Aで示すギアスリーブ47の正方向(ネジ締め方向)において、上流側から下流側に向かって小さくなる(図7に矢印Bで示すギアスリーブ47の逆方向(ネジ緩め方向)において、上流側から下流側に向かって大きくなる)ように構成されている。各リード溝507内には、スチール製のボール508が配置されている。
上述のように、リテーナ43とギアスリーブ47(詳細にはベアリング48)の間に配置された付勢バネ49によって、ギアスリーブ47は常に前方に付勢されている。このため、図5および図6に示すように、スラストベアリング53、リードスリーブ500、およびボール508も前方へ付勢され、ボール508はフランジ34の後面に当接している。フランジ34を介してスピンドル3も前方へ付勢され、常時には初期位置に保持されている。
このような構成により、スピンドル3と、リードスリーブ500との前後方向における相対的な位置関係は、リード溝507内のボール508の位置に応じて変化する。より詳細には、図4に示すように、ボール508がリード溝507のうち最深部(つまり、正方向における上流側端部)に配置されている場合、前後方向におけるフランジ34とリードスリーブ500の距離は最小となる。つまり、リードスリーブ500はスピンドル3に対して移動可能範囲内の最前方位置に配置される。スピンドル3が初期位置に配置された状態では、ギアスリーブ47は、前後方向においてリテーナ43およびローラ45から最も離間した最離間位置に配置される。
これに対し、上述のようにワンウェイクラッチ50が作動し、ギアスリーブ47と共にリードスリーブ500が逆方向に回転されると、ボール508は、リード溝507の最深部から、最浅部(逆方向における上流側)へ相対的に移動する。ボール508はフランジ34の後面に当接しているため、リードスリーブ500は、図13に示すように、ボール508の相対的な移動に応じて、付勢力に抗してフランジ34から離間する方向に(スピンドル3に対して後方へ)移動する。これにより、リードスリーブ500は、ギアスリーブ47を、付勢バネ49の付勢力に抗してスピンドル3に対して後方、つまり、リテーナ43およびローラ45に近接する方向に移動させる。ボール508が最浅部に配置されると、前後方向におけるフランジ34とリードスリーブ500の距離は最大となる。スピンドル3が初期位置に配置された状態では、ギアスリーブ47は、最離間位置に配置された場合よりもリテーナ43およびローラ45に近接した中間位置に配置される。つまり、ギアスリーブ47、リテーナ43、ローラ45の相対位置が、最離間位置から中間位置に切り替えられる。
以下に、モータ2の駆動およびスピンドル3の移動に伴う動力伝達機構4および位置切替機構5の動作について説明する。
まず、モータ2が駆動されておらず、スピンドル3に対して後方へ向かう外力が作用していない初期状態では、付勢バネ49の付勢力によって、スピンドル3は初期位置に配置されている。上述した通り、このときには、図5および図8に示すように、ローラ45はテーパスリーブ41およびギアスリーブ47とは非摩擦接触状態にある。つまり、動力伝達機構4は遮断状態にある。
切替レバー175を介してモータシャフト23の回転方向として正方向(ネジ締め方向)が設定されている場合には、スクリュードライバ1は次のように動作し、ネジ締め作業を遂行する。
スピンドル3が初期位置に配置された状態で、使用者によってトリガ173が引き操作され、メインスイッチ174がオン状態とされると、コントローラ178はモータ2の駆動を開始する。図11に矢印Aで示すように、ギアスリーブ47は、正方向(ネジ締め方向)に回転駆動される。上述のように、このときにはワンウェイクラッチ50は作動しないため、ギアスリーブ47の回転力はリードスリーブ500に伝達されない。よって、ギアスリーブ47、リテーナ43、ローラ45は、最離間位置に維持される。また、動力伝達機構4は遮断状態にあるため、ギアスリーブ47の回転力はスピンドル3にも伝達されず、ギアスリーブ47は正方向に空転する。
なお、図12に示すように、ボール502がカム溝501の壁面と周壁504の内周面の間で挟持された状態(つまり、ギアスリーブ47、リテーナ43、ローラ45が中間位置に配置された状態)で、後述のネジ緩め作業が終了する場合がありうる。この場合は、ギアスリーブ47の正方向への回転に応じてボール502の挟持が解除され、付勢バネ49の付勢力とリード溝507およびボール508の作用で、リードスリーブ500は最前方位置に復帰する。これにより、ギアスリーブ47、リテーナ43、ローラ45は中間位置から最離間位置に復帰する。
ギアスリーブ47の空転状態において、使用者がスクリュードライバ1を前方(被加工物900の方)へ移動させ、ドライバビット9に係合したネジ90を被加工物900に押し付けると、スピンドル3は、付勢バネ49の付勢力に抗して本体ハウジング11に対して相対的に後方へ押し込まれる。フランジ34に押され、ボール508、リードスリーブ500、スラストベアリング53、およびギアスリーブ47も、スピンドル3と一体的に本体ハウジング11に対して後方へ移動する。これに対し、テーパスリーブ41は本体ハウジング11に固定されており、リテーナ43およびローラ45は本体ハウジング11に対する前後方向の移動が規制された状態で保持されている。よって、ギアスリーブ47は、後方への移動に伴ってテーパスリーブ41、リテーナ43およびローラ45に近接し、テーパスリーブ41のテーパ面411とギアスリーブ47のテーパ面475との径方向の間隔は徐々に狭まっていく。
これに伴い、図9および図10に示すように、リテーナ43に保持されたローラ45が、テーパ面411とテーパ面475の間に挟まれて摩擦接触状態とされる(ローラ45とテーパ面411、475との接触部分に楔作用による摩擦力が発生する)。つまり、ギアスリーブ47、リテーナ43、ローラ45は、ローラ45を介してギアスリーブ47からリテーナ43への回転力が伝達可能な伝達位置に配置される。ローラ45は、ギアスリーブ47の回転を受けてテーパスリーブ41のテーパ面411上を自転しつつ公転し、リテーナ43を駆動軸A1周りに回転させる。リテーナ43は駆動軸A1周りの周方向においてスピンドル3と一体化されているため、リテーナ43と共にスピンドル3も回転される。このようにして、スピンドル3が初期位置から後方に移動するのに応じて動力伝達機構4が遮断状態から伝達可能状態に移行し、被加工物900に対するネジ90の締め込みが開始される。なお、スピンドル3は、ギアスリーブ47の回転速度よりも遅い速度で、ギアスリーブ47と同一方向に回転する。
ネジ90の被加工物900への締め込みが進行し、図14に示すようにロケータ15の先端部が被加工物900に当接すると、押圧力を受ける部位は、スピンドル3からロケータ15へ移行していくため、スピンドル3に対する押圧力は徐々に低下する。このため、テーパスリーブ41のテーパ面411とギアスリーブ47のテーパ面475によるローラ45を挟む力(スピンドル3の押圧力と、付勢バネ49によるスピンドル3を前方へ付勢する力の和に対応する)、ひいてはギアスリーブ47からスピンドル3へ伝達される回転力も徐々に低下する。そして、ギアスリーブ47からスピンドル3へ伝達される回転力がネジ90の締め付けに必要な回転力を下回ると、ネジ90の回転が停止され、ネジ締め作業が終了する。
一方、切替レバー175を介してモータシャフト23の回転方向として逆方向(ネジ緩め方向)が設定されている場合には、スクリュードライバ1は、次のように動作し、ネジ緩め作業を遂行する。
スピンドル3が初期位置に配置された状態で、使用者によってトリガ173が引き操作され、メインスイッチ174がオン状態とされると、コントローラ178はモータ2の駆動を開始する。図12に矢印Bで示すように、ギアスリーブ47が逆方向(ネジ緩め方向)に回転駆動される。これにより、上述のようにワンウェイクラッチ50が作動してリードスリーブ500を逆方向に回転させ、図13に示すように、リード溝507およびボール508の作用によって、ギアスリーブ47は、付勢バネ49の付勢力に抗してスピンドル3に対して後方に、リテーナ43およびローラ45に近接する方向に移動される。つまり、ネジ緩め作業においては、スピンドル3の後方への移動の有無にかかわりなく(スピンドル3が初期位置に配置された状態で)、ギアスリーブ47の逆方向への回転駆動に応じて、ギアスリーブ47、リテーナ43およびローラ45の相対位置が最離間位置から中間位置へ切り替えられる。
なお、図13に示すように、ギアスリーブ47、リテーナ43、ローラ45が中間位置に配置された場合も、最離間位置に配置された場合と同様、ローラ45は、テーパ面475から離間しており、テーパスリーブ41およびギアスリーブ47と非摩擦接触状態にある。よって、ギアスリーブ47の回転力はスピンドル3には伝達されない。つまり、動力伝達機構4は遮断状態にあり、ギアスリーブ47は逆方向に空転する。
ギアスリーブ47の空転状態において、使用者がスクリュードライバ1を前方へ移動させ、ドライバビット9を被加工物900に締め込まれたネジ90に押し付けて係合させると、スピンドル3は、付勢バネ49の付勢力に抗して本体ハウジング11に対して相対的に後方へ押し込まれる。ギアスリーブ47は、テーパスリーブ41、リテーナ43およびローラ45に対して近接し、ギアスリーブ47、リテーナ43およびローラ45が伝達位置に配置される。ローラ45はテーパ面411とテーパ面475の間に挟まれて摩擦接触状態とされ、動力伝達機構4が遮断状態から伝達可能状態に移行し、ネジ90が緩められ、被加工物900から外される。
上述のように、ネジ緩め作業時には、位置切替機構5によってギアスリーブ47がネジ締め作業時よりもスピンドル3に対して後方へ移動され、ギアスリーブ47とリテーナ43およびローラ45との前後方向の距離が小さくされている。よって、ギアスリーブ47、リテーナ43およびローラ45が中間位置から伝達位置へ相対移動するまでのスピンドル3の前後方向の移動距離(言い換えると、ネジ緩め作業時に動力伝達機構4が遮断状態から伝達可能状態に移行するまでのスピンドル3の移動量あるいは押し込み量)は、ギアスリーブ47、リテーナ43およびローラ45が最離間位置から伝達位置へ相対移動するまでの移動距離(ネジ締め作業時に動力伝達機構4が遮断状態から伝達可能状態に移行するまでのスピンドル3の移動量あるいは押し込み量)よりも小さい。なお、本実施形態では、ネジ緩め作業時の移動距離は、ネジ締め作業時のスピンドル3の移動距離よりも約1ミリメートル短くなるように設定されている。これにより、使用者は、ロケータ15を前部ハウジング13から取り外すことなく被加工物900に締め込まれたネジ90を緩めることができる。
なお、以上の説明では、モータ2の駆動開始後にスピンドル3が後方に押し込まれた場合の動作を例示したが、スピンドル3が後方に押し込まれ、動力伝達機構4が伝達可能状態に移行する前にモータ2の駆動が開始された場合の動作も基本的に同様である。なお、ネジ緩め作業の場合には、スピンドル3の位置によっては、モータ2の駆動開始に応じて位置切替機構5によってギアスリーブ47後方へ移動されることで、動力伝達機構4が伝達状態に移行する場合がある。また、スピンドル3が後方に押し込まれ、動力伝達機構4が伝達可能状態に移行した後にモータ2の駆動が開始された場合には、モータ2の駆動開始に応じてスピンドル3の回転駆動が開始されることになる。
[第2実施形態]
以下、図15~図19を参照して、第2実施形態に係るスクリュードライバ100について説明する。なお、本実施形態のスクリュードライバ100は、第1実施形態の動力伝達機構4および位置切替機構5(図5~図7参照)とは異なる動力伝達機構6および位置切替機構7を備えているが、その他の構成はスクリュードライバ1と実質的に同一である。よって、以下では、第1実施形態と実質的に同一の構成については、同じ符号を付して説明を省略または簡略化し、主に異なる構成について説明する。
図15~図17に示すように、本実施形態の動力伝達機構6は、同軸状に配置されたテーパスリーブ41と、リテーナ43と、複数のローラ45と、ギアスリーブ67とを含む遊星機構を主体として構成されている。ギアスリーブ67以外の動力伝達機構6の構成は、第1実施形態の動力伝達機構4の構成と実質的に同一である。
本実施形態のギアスリーブ67は、テーパスリーブ41およびリテーナ43の外径よりも大きい内径を有する略カップ状の部材として構成されており、前端部の構成以外は第1実施形態のギアスリーブ47と同様の構成を有する。より詳細には、ギアスリーブ67は、貫通孔を有する底壁671と、底壁671に接続する筒状の周壁674とを有し、リテーナ43よりも前側で、スピンドル3に対して回転可能、且つ、前後方向に移動可能にスピンドル3に支持されている。ギアスリーブ67の内部空間には、テーパスリーブ41、リテーナ43およびローラ45の一部と、付勢バネ49とが配置されている。また、ギアスリーブ67(詳細には周壁674)の外周には、ピニオンギア24に常に噛合するギア歯670が一体的に形成されている。第1実施形態の周壁474と同様、周壁674の内周面は、駆動軸A1に対してテーパスリーブ41のテーパ面411と同じ角度で傾斜する(つまり、テーパ面411に平行な)テーパ面675を含む。
また、本実施形態のギアスリーブ67は、第1実施形態のギアスリーブ47とは異なり、前端部(詳細には底壁671の前端面)に形成されたリード溝707を有する。リード溝707は、第1実施形態のリードスリーブ500のリード溝507と同様の構成を有する。つまり、リード溝707は、螺旋状の溝(厳密には、螺旋の一部に対応する形状の溝)として形成され、互いに離間して周方向に等間隔で3本設けられている。リード溝707は、前端面からの前後方向の深さが、図17に矢印Aで示すギアスリーブ67の正方向(ネジ締め方向)において、上流側から下流側に向かって小さくなる(図17に矢印Bで示すギアスリーブ67の逆方向(ネジ緩め方向)において、上流側から下流側に向かって大きくなる)ように構成されている。
本実施形態の位置切替機構7も、第1実施形態の位置切替機構5と同様、ギアスリーブ67が逆方向(ネジ緩め方向)に回転駆動された場合、ギアスリーブ67とスピンドル3の前端部とを、前後方向に互いから離れる方向に相対的に移動させる機構である。かかる構成により、位置切替機構7は、スピンドル3が初期位置に配置された状態でギアスリーブ67が逆方向(ネジ緩め方向)に回転駆動された場合、ギアスリーブ67をスピンドル3に対して後方に移動させ、リテーナ43およびローラ45に近接させる。
図15~図17に示すように、本実施形態では、位置切替機構7は、ワンウェイクラッチ70と、フランジスリーブ700と、ギアスリーブ67に形成されたリード溝707と、ボール708とを主体として構成されている。
本実施形態では、ワンウェイクラッチ70として、周知の汎用のワンウェイクラッチが採用されている。ワンウェイクラッチ70は、円筒状に形成されており、スピンドル3のフランジ34の後側で、後側シャフト32に外装されている。ワンウェイクラッチ70は、スピンドル3に対して正方向には回転可能である一方、逆方向には回転不能に構成されている。フランジスリーブ700は、円筒状の周壁701と、周壁701の前端部から径方向外側に突出するフランジ703を有する。フランジ703の後面の外縁部には、ボール708が当接する環状の凹部が形成されている。周壁701は、ワンウェイクラッチ70の外周に固定されている。前後方向において、スピンドル3のフランジ34の後面と、フランジスリーブ700のフランジ703の前面の間には、スピンドル3に対するフランジスリーブ700の回転を許容しつつスラスト荷重を受けるスラストベアリング(詳細には、スラストボールベアリング)53が配置されている。なお、フランジ34の後面およびフランジ703の前面には、夫々、断面U字状の環状の凹部が形成されている。スラストベアリング53の転動体としてのボールは、これらの凹部によって規定される環状の軌道内を転動可能である。
リード溝707およびボール708は、フランジスリーブ700に対してギアスリーブ67が駆動軸A1周りに回転するのに伴って、ギアスリーブ67をスピンドル3に対して前後方向に相対的に移動させることで、ギアスリーブ67をリテーナ43およびローラ45に対して前後方向に相対移動させるように構成されている。上述のように、本実施形態では、リード溝707は、ギアスリーブ67の底壁671の前端面に形成されている。各リード溝707内には、スチール製のボール708が配置されている。
また、上述のように、リテーナ43とギアスリーブ67(詳細にはベアリング48)の間に配置された付勢バネ49によって、ギアスリーブ67は常に前方に付勢されている。このため、図15および図16に示すように、ボール708、フランジスリーブ700、スラストベアリング53を介してスピンドル3も前方へ付勢され、常時には初期位置に保持されている。
このような構成により、スピンドル3およびフランジスリーブ700と、ギアスリーブ67との前後方向における相対的な位置関係は、リード溝707内のボール708の位置に応じて変化する。より詳細には、図15および図16に示すように、ボール708がリード溝707のうち最深部(つまり、正方向における上流側端部)に配置されている場合、前後方向におけるフランジ703とギアスリーブ67の距離は最小となる。つまり、ギアスリーブ67はスピンドル3に対して移動可能範囲内の最前方位置に配置される。スピンドル3が初期位置に配置された状態では、ギアスリーブ67は、前後方向においてリテーナ43およびローラ45から最も離間した最離間位置に配置される。
このとき、付勢バネ49の付勢力によって、リード溝707内に配置されたボール708は、フランジ703の後面の外縁部に形成された環状の凹部に押し付けられて係合している。上述のように、ワンウェイクラッチ70およびフランジスリーブ700は、スピンドル3に対して正方向には回転可能である。このため、ギアスリーブ67が正方向に回転駆動された場合、フランジ703とリード溝707の最深部に保持されたボール708の間の摩擦力によって、フランジスリーブ700はギアスリーブ67と共に正方向に回転される。つまり、ギアスリーブ67が正方向に回転駆動された場合、ワンウェイクラッチ70は、フランジスリーブ700がギアスリーブ67と一体的に回転することを許容する。
一方、上述のように、ワンウェイクラッチ70はスピンドル3に対して逆方向には回転不能であるため、ギアスリーブ67が逆方向に回転駆動された場合、ワンウェイクラッチ70によって、フランジスリーブ700がスピンドル3に対して逆方向に回転することが禁止される。つまり、フランジスリーブ700がスピンドル3と一体化される。このため、ギアスリーブ67がフランジスリーブ700に対して逆方向に相対的に回転することになる。これに伴い、ボール708は、リード溝707の最深部から、最浅部(逆方向における上流側)へ相対的に移動する。ボール708はフランジ703の後面に当接しているため、ギアスリーブ67は、図18および図19に示すように、ボール708の相対的な移動に応じて、逆方向に回転しつつ、付勢バネ49の付勢力に抗してフランジ703から離間する方向に(スピンドル3に対して後方へ)、つまり、リテーナ43およびローラ45に近接する方向に移動することになる。ボール708が最浅部に配置されると、前後方向におけるフランジ703とギアスリーブ67の距離は最大となる。スピンドル3が初期位置に配置された状態では、ギアスリーブ67は、最離間位置に配置された場合よりもリテーナ43およびローラ45に近接した中間位置に配置される。つまり、ギアスリーブ67、リテーナ43、ローラ45の相対位置が、最離間位置から中間位置に切り替えられる。
[第3実施形態]
以下、図20~図23を参照して、第3実施形態に係るスクリュードライバ110について説明する。なお、本実施形態のスクリュードライバ110は、第2実施形態のスクリュードライバ100(図15~図17参照)とは異なる動力伝達機構8を備えているが、動力伝達機構8以外の構成はスクリュードライバ100と実質的に同一である。よって、以下では、スクリュードライバ100と実質的に同一の構成については、同じ符号を付して説明を省略または簡略化し、主に異なる構成について説明する。
図20~図22に示すように、本実施形態の動力伝達機構8は、同軸状に配置されたテーパスリーブ41と、リテーナ83と、複数のローラ45と、ギアスリーブ87とを含む遊星機構を主体として構成されている。リテーナ83およびギアスリーブ87以外の動力伝達機構8の構成は、動力伝達機構6(図15~図17参照)の構成と実質的に同一である。
本実施形態のリテーナ83は、第2実施形態のリテーナ43(図15~図17参照)と同じく、遊星機構におけるキャリア部材に相当し、ローラ45を自転可能に保持するように構成されている。リテーナ83は、前端部の構成以外はリテーナ43と同様の構成を有する。より詳細には、リテーナ83は、中央部に貫通孔を有する略円筒状の底壁831と、底壁831の前端部から径方向外側に突出する環状のフランジ部832と、フランジ部832の周縁部の後面から後方へ突出する複数の保持アーム834とを有する。なお、底壁831および保持アーム834は、リテーナ43の底壁431および保持アーム434と実質的に同一の構成を有する。このような構成により、周方向に隣接する保持アーム45間に形成されるローラ45の保持空間の前端は、フランジ部832によって閉塞されている。本実施形態では、ワッシャ491(図15~図17参照)が省略される代わりに、フランジ部832の前面が、付勢バネ49の後方への付勢力を受けるバネ受け部として機能する。また、フランジ部832の後面がローラ45の前端に当接し、ローラ45の前方への移動を規制する規制面として機能する。
リテーナ83は、リテーナ43と同じく、底壁831が前側に位置する向きで(後方に保持アーム834が突出するように)、径方向においてテーパスリーブ41に保持アーム834の一部が重なった状態で、スピンドル3に対して回転不能、且つ、前後方向に移動可能にスピンドル3に支持されている。また、各保持アーム834は、駆動軸A1に対してテーパスリーブ41のテーパ面411と同じ傾斜角をなすように、フランジ部832の周縁部の後面から後方へ突出している。
本実施形態のギアスリーブ87は、第2実施形態のギアスリーブ67(図15~図17参照)と概ね同一の構成を有する略カップ状の部材として構成されている。より詳細には、ギアスリーブ87は、中央部に貫通孔を有する略円形の底壁871と、底壁871に接続する筒状の周壁874とを有する。なお、底壁871は、ギアスリーブ67の底壁671と実質的に同一の構成を有する。周壁874の基本的な構成は、後述する連通孔878を有する点以外、ギアスリーブ67の周壁674と同一である。具体的には、周壁874の前端部内には、ベアリング48の外輪481が固定されている。また、ギアスリーブ87(詳細には周壁874)の外周には、ピニオンギア24に常に噛合するギア歯870が一体的に形成されている。
図23に示すように、周壁874の内周面のうち、ベアリング48の後端よりも後側部分は、テーパ面875と、円柱面876とを含む。テーパ面875は、駆動軸A1に対してテーパスリーブ41のテーパ面411と同じ角度で傾斜する円錐面である。テーパ面875は、周壁874の内周面の後半部分を占めている。円柱面876は、テーパ面875の前端に接続し、駆動軸A1に沿って、概ね円柱状に延在する。
連通孔878は、径方向に周壁874を貫通する貫通孔であって、ギアスリーブ87の内側(内部空間)と外側とを連通させている。なお、本実施形態では、連通孔878は、周壁874の後端からベアリング48の後端までの間の領域R1(つまり、ギアスリーブ87の内部空間を規定する領域)のうち、テーパ面875に対応する領域R2とは異なる領域、つまり、円柱面876に対応する領域R3に設けられている。言い換えると、連通孔878は、径方向において通常はローラ45とは重ならない領域に配置されている。また、本実施形態では、4つの連通孔878が、周方向において等間隔で設けられている。
図21および図22に示すように、本実施形態においても、ギアスリーブ87は、リテーナ83よりも前側で、スピンドル3に対して回転可能、且つ、前後方向に移動可能にスピンドル3に支持されている。また、ギアスリーブ87の内部空間には、テーパスリーブ41、リテーナ83およびローラ45の一部と、付勢バネ49とが配置されている。
本実施形態では、付勢バネ49の小径側の端部(前端部)は、ベアリング48の内輪483に当接するワッシャ493に当接する一方、大径側の端部(後端部)は、リテーナ83のフランジ部832の前面に当接している。付勢バネ49は、常に、リテーナ83とギアスリーブ87とを互いに離れる方向、つまり、後方および前方に夫々付勢している。これにより、リテーナ83は、付勢バネ49の付勢力で、底壁831の後面がテーパスリーブ41の前端面に当接する位置で保持され、その前後方向への移動が規制される。また、ローラ45は、リテーナ83のフランジ部832の後面とベース143の前端面の間で保持され、その前後方向への移動が規制される。なお、第1実施形態で説明した通り、ここでいう「移動が規制されている」とは、移動が完全に禁止されていることを意味するものではなく、僅かな移動は許容されてよい。また、付勢バネ49の付勢力でギアスリーブ87が前方へ付勢されることで、スピンドル3も前方へ付勢され、初期位置に保持される。
以上のように構成された動力伝達機構8の動作は、第1、第2実施形態の動力伝達機構4、6と実質的に同一である。具体的には、初期状態では、付勢バネ49の付勢力によって、スピンドル3は初期位置に配置され、ローラ45はテーパスリーブ41のテーパ面411およびギアスリーブ87のテーパ面875とは非摩擦接触状態にある。つまり、動力伝達機構8は遮断状態にある。その後、スピンドル3が付勢バネ49の付勢力に抗して後方へ押し込まれるのに伴って、ギアスリーブ87がテーパスリーブ41、リテーナ83およびローラ45に近接する。そして、リテーナ83に保持されたローラ45が、テーパ面411とテーパ面875の間に挟まれて摩擦接触状態とされる。これにより、動力伝達機構8が遮断状態から伝達可能状態に移行する。
以上に説明したように、上記第1~第3実施形態のスクリュードライバ1、100、110は、いわゆる遊星ローラ式の動力伝達機構4、6、8を備えている。動力伝達機構4、6、8では、遊星部材としてのローラ45は、スピンドル3の駆動軸A1に対する径方向(駆動軸A1に直交する方向)において、太陽部材としてのテーパスリーブ41のテーパ面411と、リング部材としてのギアスリーブ47、67、87のテーパ面475、675、875の間に少なくとも一部が配置されている。ギアスリーブ47、67、87は、テーパスリーブ41に対し、スピンドル3と一体的に前後方向に移動する。これに対し、ローラ45は、付勢バネ49(およびワッシャ491またはリテーナ83)によって、本体ハウジング11に対して前後方向に移動することが規制されている。よって、ギアスリーブ47、67、87とテーパスリーブ41の相対移動に伴ってローラ45が前後方向に移動してしまい、ローラ45とテーパ面411およびテーパ面475、675、875との摩擦接触が不安定になる可能性を低減することができる。なお、第3実施形態では、ワッシャ491ではなくリテーナ83を介してローラ45の前後方向の移動が規制されている。これにより、部品数を低減し、組立性を向上することができる。
また、上記第1~第3実施形態では、キャリア部材としてのリテーナ43、83は、スピンドル3に対して前後方向に移動可能にスピンドル3に保持されている。言い換えると、前後方向の移動に関して、リテーナ43、83はスピンドル3から独立している。リテーナ43、83は、テーパ面411とテーパ面475、675、875の間からローラ45が外れないように保持可能な位置に配置される必要がある。これに対し、上記実施形態では、スピンドル3の移動にかかわらず、リテーナ43、83を適切な位置に維持することが可能となる。これにより、リテーナ43、83がスピンドル3と一体的に前後方向に移動する構成に比べて、スピンドル3の前後方向の移動量に関する制約を減らすことができる。特に、ローラ45やテーパ面411、475、675、875が摩耗すると、安定した摩擦接触を確立するためには、テーパスリーブ41とギアスリーブ47、67、87が互いにより近接する位置まで(つまり、より後方へ)スピンドル3が押し込まれる必要が生じる。つまり、スピンドル3の前後方向の移動量を増加させる必要があるが、上記実施形態の動力伝達機構4、6、8によれば、かかるニーズにも適切に対応することができる。
更に、上記第1~第3実施形態では、リテーナ43、83は、スピンドル3に対して駆動軸A1周りに回転不能に保持され、ローラ45を介して伝達された動力によって、スピンドル3と一体的に回転するように構成されている。つまり、上記実施形態では、リテーナ43、83を出力部材とする合理的な遊星ローラ式の動力伝達機構4、6、8が実現されている。
また、上記第1~第3実施形態では、付勢バネ49は、ローラ45に加え、リテーナ43、83が本体ハウジング11に対して前後方向に移動することも規制している。これにより、ローラ45とリテーナ43、83との適切な位置関係をより確実に維持することができる。更に、上記実施形態では、付勢バネ49は、スピンドル3とリテーナ43、83とを、互いから離間するように前方および後方へ夫々付勢している。そして、スピンドル3は、常時には、付勢バネ49の付勢力によって、最前方位置(つまり、初期位置)に保持される。このような構成により、リテーナ43、83の移動を規制しつつ、スピンドル3の押込みが解除された場合、スピンドル3を初期位置に復帰させることができる。
また、上記第1~第3実施形態では、ギアスリーブ47、67、87は、スピンドル3と一体的に前後方向に移動可能、且つ、駆動軸A1周りに回転可能にスピンドル3に支持されている。付勢バネ49は、前後方向においてリテーナ43、83とギアスリーブ47、67、87(より詳細には、ギアスリーブ47、67、87内に配置されたベアリング48)の間に配置されているが、ギアスリーブ47、67、87側の端部は、ギアスリーブ47、67、87の回転から遮断されたワッシャ493によって受けられている。よって、付勢バネ49がギアスリーブ47、67、87と共に回転してしまうこと(いわゆる共回り)や、付勢バネ49とギアスリーブ47、67、87の摺動部分が発熱したりすることを防止可能となる。
また、上記第1~第3実施形態では、付勢バネ49は、ギアスリーブ47、67、87とリテーナ43、83とを、互いから離間するように後方および前方へ付勢している。言い換えると、付勢バネ49は、動力伝達機構4、6、8における駆動側部材としてのギアスリーブ47、67、87と、被動側部材としてのリテーナ43、83とを、伝達を遮断する方向に付勢する機能も有する。このように、付勢バネ49を利用することで、部品点数を増やすことなく、リテーナ43、83の前後方向の移動規制と、動力伝達の遮断という複数の機能を実現することができる。
また、上記第3実施形態では、ギアスリーブ87の周壁874には、ギアスリーブ87の内側と外側を連通させる連通孔878が設けられている。このため、ギアスリーブ87の回転に伴う遠心力により、連通孔878を介した空気の流れを生じさせることができる。これにより、局所的な温度上昇の抑制や、前部ハウジング13内に配された潤滑剤(例えばグリス)のより円滑な循環を実現することができる。その結果、ローラ45やテーパ面411、475、675、875の摩耗を効果的に低減し、耐久性を向上することができる。また、摩耗粉が生じた場合であっても、空気の流れとともに連通孔878を通じてギアスリーブ87の外部に効果的に排出することができるため、ベアリング48の保護にもつながる。
上記実施形態は単なる例示であり、本発明に係る作業工具は、例示されたスクリュードライバ1、100、110の構成に限定されるものではない。例えば、下記に例示される変更を加えることができる。なお、これらの変更は、これらのうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、独立して、または実施形態に示すスクリュードライバ1、100、110、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
上記実施形態では、ネジ締め工具としてのスクリュードライバ1、100、110を例示したが、本発明は、先端工具を回転駆動するように構成されたその他の作業工具にも適用可能である。例えば、ドリルビットを回転駆動することで穿孔作業を行う穿孔工具(例えば、電動ドリル)や、研摩材(サンドペーパ等)を回転駆動することで研磨作業を行う研磨工具(例えば、電動サンダ)等にも適用可能である。
遊星ローラ式の摩擦クラッチ機構としての動力伝達機構4、6、8において、太陽部材、リング部材、キャリア部材、および遊星ローラの構成および配置は、適宜変更されてよい。例えば、動力伝達機構4、6、8は、上記実施形態のように、太陽部材が本体ハウジング11に対して回転不能に固定された、いわゆるソーラ型の構成を有する必要はなく、リング部材が固定されたいわゆるプラネタリ型、あるいはキャリア部材が固定されたいわゆるスター型の構成を有していてもよい。また、上記実施形態は、太陽部材としてのテーパスリーブ41に対して、リング部材としてのギアスリーブ47、67、87が前後方向に移動する構成例であるが、太陽部材およびリング部材が、駆動軸A1に対して傾斜した互いに平行なテーパ面を有し、前後方向に相対移動可能であれば、どちらがスピンドル3と一体的に移動してもよい。また、太陽部材およびリング部材のうち、スピンドル3と一体的に移動する一方は、出力部材としてスピンドル3と一体的に形成されていてもよい。
また、上記実施形態では、付勢バネ49は、遊星部材としてのローラ45の前後方向の移動を規制する機能に加え、キャリア部材としてのリテーナ43の前後方向の移動を規制する機能、スピンドル3を初期位置に向けて付勢する機能、および動力伝達機構4、6、8における駆動側部材としてのギアスリーブ47、67、87と被動側部材としてのリテーナ43、83を、動力伝達を遮断する方向に付勢する機能を有する。つまり、単一の付勢バネ49が、複数の機能を発揮している。しかしながら、これらの機能は、夫々に別個の部材(例えば、バネ部材)によって実現されてもよい。
連通孔878が設けられる場合には、その数、配置位置、形状、大きさ等は、第3実施形態の例示に限られるものではなく、適宜変更されてよい。例えば、連通孔878は、周壁874の後端からベアリング48の後端までの間の領域R1(図23参照)の何れかの位置に、少なくとも1つが設けられればよい。また、連通孔878は、径方向に対して斜めに延在してもよいし、直線状ではなく湾曲状に延在してもよい。
動力伝達機構4、6、8のほか、本体ハウジング11、モータ2、スピンドル3、および位置切替機構5、7の構成も適宜変更されうる。例えば、モータ2として、充電式のバッテリを電源とする直流ブラシレスモータが採用されてもよい。位置切替機構5、7は省略されてもよい。
上記実施形態および変形例の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。スクリュードライバ1、100、110は、本発明の「作業工具」の一例である。ドライバビット9は、本発明の「先端工具」の一例である。本体ハウジング11は、本発明の「ハウジング」の一例である。スピンドル3は、本発明の「スピンドル」の一例である。駆動軸A1は、本発明の「駆動軸」の一例である。モータ2は、本発明の「モータ」の一例である。動力伝達機構4、6、8は、本発明の「動力伝達機構」の一例である。テーパスリーブ41は、本発明の「太陽部材」の一例である。ギアスリーブ47、67、87は、本発明の「リング部材」の一例である。リテーナ43、83は、本発明の「キャリア部材」の一例である。ローラ45は本発明の「遊星ローラ」の一例である。テーパ面411は、本発明の「第1テーパ面」の一例である。テーパ面475、675、875は本発明の「第2テーパ面」の一例である。付勢バネ49は、本発明の「規制部材」および「バネ部材」の一例である。ワッシャ493は、本発明の「受け部材」の一例である。連通孔878は、本発明の「連通孔」の一例である。領域R2は、本発明の「第2テーパ面に対応する領域」の一例である。領域R3は、本発明の「第2テーパ面に対応する領域とは異なる領域」の一例である。
更に、本発明および上記実施形態の趣旨に鑑み、以下の構成(態様)が構築される。以下の構成のうちいずれか1つのみ、あるいは複数が、実施形態のスクリュードライバ1、100、110およびその変形例、あるいは各請求項に記載された発明と組み合わされて採用されうる。
[態様1]
前記リング部材は、前記スピンドルを前記駆動軸周りの周方向に取り巻くとともに、前記第2テーパ面を含む内周面を有する筒状の周壁を備え、
前記キャリア部材の少なくとも一部は、前記スピンドルと前記内周面によって規定される前記リング部材の内部空間に配置されており、
前記バネ部材は、前記キャリア部材の前側で前記内部空間に配置されていてもよい。
本態様によれば、リング部材の内部空間を有効活用してバネ部材を配置することができ、動力伝達機構をコンパクトに保つことができる。
[態様2]
態様1において、
前記リング部材は、前記バネ部材の前側に配置されたストッパ部を有し、
前記バネ部材は、前記前後方向において前記キャリア部材と前記ストッパ部との間に介在していてもよい。
[態様3]
態様2において、
前記ストッパ部は、前記スピンドルに回転可能に支持された内輪と、前記内周面に固定された外輪とを有するベアリングであってもよい。
態様2および3によれば、バネ部材を前後方向においてキャリア部材とリング部材の間に合理的に介在させることができる。なお、ベアリング48は、態様1および2における「ストッパ部」および「ベアリング」の一例である。
[態様4]
前記リング部材は、前記駆動軸を中心とする筒状の周壁部を有し、
前記連通孔は、前記周壁部を貫通する貫通孔であってもよい。
[態様5]
前記リング部材の内周面は、前記第2テーパ面と、前記駆動軸に沿った円柱面とを含み、
前記連通孔は、前記リング部材のうち、前記円柱面に対応する領域に設けられていてもよい。