JP7131004B2 - 水素製造触媒の製造方法及び水素の製造方法 - Google Patents
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Description
第一の課題は、反応ガスを800℃程度に加熱する必要があることである。炭化水素を水蒸気や二酸化炭素で水素と一酸化炭素に改質する反応は吸熱反応であり、高温条件下でなければ反応を進行させることが困難である。第二の課題は、プロセス全体で考えると二酸化炭素発生量が増大してしまうことである。化石燃料のメタンを改質して水素を製造した場合には、メタンをそのまま燃料として用いた場合に比べて、水素製造時に消費されるエネルギーの分だけ二酸化炭素の排出量が増大することとなる。
また、本発明者らの検討によれば、コークス炉ガスを対象として開発されたニッケル含有触媒はもちろんのこと、酸化セリウムを主体とする触媒についても、報告されている性能では、工業的に利用することが困難である。更には、酸化セリウムを主体とする触媒は、レアアースのみで構成されており、構成元素の価格が高価であるという課題があった。
かかる知見に基づき完成された本発明の要旨は、以下の通りである。
[2]
前記酸化物換算のモル比(CeO2/MgO)が、1/99~10/90である、[1]に記載の水素製造触媒。
[3]触媒中に含有される金、白金及びロジウムをそれぞれ金属換算した上で合計した質量と、触媒中に含有されるセリウム、マグネシウム及びニッケル以外の成分元素をそれぞれ酸化物換算した上で合計した質量と、を加算した、触媒の総換算質量をmAとし、触媒中に含有されるマグネシウムを酸化物換算したMgO換算質量をmBとし、触媒中に含有されるセリウムを含むランタノイド系列の成分元素をそれぞれ酸化物換算した上で合計したランタノイド系列の合計酸化物換算質量をmCとしたときに、以下の式(1)で表される関係が成立する、[1]又は[2]に記載の水素製造触媒。
{mB/(mA-mB-mC)}>1/8 ・・・式(1)
[4]酸化物換算の質量比で、酸化マグネシウム及び酸化セリウムの和と、残部との比率が、50/50以上である、[1]~[3]の何れか一つに記載の水素製造触媒。
[5][1]~[4]の何れか一つに記載の水素製造触媒を、クエン酸法を用いて製造する、水素製造触媒の製造方法。
[6][1]~[4]の何れか一つに記載の水素製造触媒を、酸化マグネシウム担体にセリウムを含浸担持させることで製造する、水素製造触媒の製造方法。
[7]セリウム試薬を分解し酸化セリウムとする際に、乾燥気流中で焼成することを特徴とする、[6]に記載の水素製造触媒の製造方法。
[8][1]~[4]の何れか一つに記載の水素製造触媒を、炭化水素を含む被処理ガスと接触させて、水蒸気改質反応とドライ改質反応の少なくともいずれか一方の反応を進行させる、水素の製造方法。
[9]前記被処理ガスは、硫化水素を含有する、[8]に記載の水素の製造方法。
[10]前記被処理ガス中の硫化水素濃度は、500ppm以上である、[8]又は[9]に記載の水素の製造方法。
[11]前記水蒸気改質反応を進行させる場合、前記被処理ガスのスチームカーボン比は、0.8以上3.0以下である、[8]~[10]の何れか一つに記載の水素の製造方法。
[12]
前記ドライ改質反応を進行させる場合、前記被処理ガスの二酸化炭素と、炭化水素として含まれる炭素原子と、のモル比が、1.0以上3.0以下である、[8]~[11]の何れか一つに記載の水素の製造方法。
[13]前記被処理ガスは、コークス炉ガスである、[8]~[12]の何れか一つに記載の水素の製造方法。
触媒の成分分析を行う際に、予め反応温度以上の温度で熱処理を行うことで、触媒の組成が反応装置内で変化してしまうことを抑制可能である。触媒の組成分析には、任意の方法が利用可能であるが、本発明を実施するうえで必要となる精度で成分分析を行うにあたっては、X線蛍光分析を用いることが簡便である。ただし、周期表の第二周期までの軽元素(水素、ヘリウム、窒素、酸素を除く。)が含まれる場合には、X線蛍光分析では正確な成分分析が困難となる。従って、より正確な濃度を知りたい場合には、ICP発光分析を行ってもよい。なお、分析方法の違いにより、測定値が異なった場合には、ICP発光分析の結果を正とする。
続いて、酸化セリウムと酸化マグネシウムとで構成される、本実施形態に係る水素製造触媒について、詳細に説明を行う。
本実施形態に係る水素製造触媒は、微細な酸化セリウムの粒子を高温まで安定化させることによって、酸化セリウムの量を削減しつつ、触媒活性を高く維持していると考えられる。このため、本実施形態に係る水素製造触媒では、酸化マグネシウムと酸化セリウムとを均一に混合させ、酸化セリウムを微細な粒子とすることが好ましい。具体的には、酸化セリウムの平均粒子径が、30nm以下であると好ましく、15nm以下であるとよい好ましく、10nm以下であるとより一層好ましい。
複数の元素を含む触媒を合成する手法には様々な方法が存在するが、酸化セリウムと酸化マグネシウムとで構成される触媒を合成する方法として適している手法は、クエン酸法に代表される有機酸法、及び、含浸法である。以下、これらの手法が他の手法に比べて好ましい理由について、詳細に説明する。
クエン酸法は、前駆体試薬の溶液に対して、クエン酸を溶解させ、金属錯体を形成させることで、金属元素が均一に含まれるゲルを合成し、得られたゲルを焼成して燃焼分解することにより、元素が均一に混合された触媒を合成する方法である。クエン酸の代わりに他の有機酸を利用することも可能であるが、クエン酸は、他の有機酸に比べて安価なため、低コストで触媒を合成することが可能となる。
含浸法は、前駆体試薬溶液を担体に滴下し、前駆体試薬を分解することで、触媒を合成する方法である。
本実施形態に係る水素製造触媒を合成する際には、酸化マグネシウムを担体とし、かかる担体に対してセリウム試薬溶液を滴下することが好ましい。
物理混合法は、酸化セリウムの粉体と酸化マグネシウムの粉体とを物理混合することで、触媒を合成する方法である。他の手法と比較して圧倒的に簡便であり、大型化も容易である。酸化マグネシウムの粉体の代わりに水酸化マグネシウムの粉体を用いても構わない。物理混合後に得られた試料は、焼成したうえで成型し反応に用いてもよく、焼成せずに成型して反応に用いてもよい。ただし、酸化マグネシウムの代わりに水酸化マグネシウムを用いた場合には、温度上昇中に水酸化マグネシウムの脱水反応が進行し、成型した試料が崩れる可能性があるため、あらかじめ焼成したうえで成型することが好ましい。
酸化マグネシウム及び酸化セリウム、並びに、水酸化マグネシウム及び水酸化セリウムは、溶解度が大きく異なっており、更には、その溶解度のpH依存性も異なっている。従って、前駆体溶液から目的の組成の沈殿物を得る手法は、本実施形態に係る水素製造触媒の製造方法には適していない。
本実施形態に係る水素製造触媒に含まれる酸化マグネシウムと酸化セリウムとの比率は、触媒に求める性能に応じて選択することが可能である。酸化セリウムの比率を高めるほど、同じ触媒質量に対する触媒活性は向上するが、一方でコストは増大する。また、酸化セリウムの比率を下げるほど、触媒活性は下がるものの、酸化セリウム単位質量あたりの触媒活性は大きく向上する。従って、触媒の量を少なくして、装置体積を小さくしたい場合には、酸化セリウムの比率を高く設定することが好ましく、触媒のコストを下げたい場合には、酸化セリウムの比率を低く設定することが好ましい。しかしながら、酸化セリウムの比率を高く設定しすぎると、酸化セリウム単体を購入して利用する場合よりも高コストとなり、また、酸化セリウムの比率を低くし過ぎると、触媒活性が低下し、必要となる触媒の総量が増大し、高コストとなる。
例えば、酸化ランタン、酸化プラセオジウム、酸化ネオジウム、酸化サマリウム、酸化ヨーロピウム、酸化ガドリウムなどのランタノイド系列の元素については、多量に混入しても問題なく、本発明者らの検討によれば、酸化セリウムに対し、金属元素のモル比で12.5%の酸化ランタンを混入した場合においても、高い触媒活性と安定性が得られた。また、硫化水素濃度500ppm未満の領域でメタン改質反応試験を行った報告では、酸化セリウムに対して、酸化プラセオジウム、酸化サマリウム、酸化ガドリウムを固溶させた場合においても、高いメタン改質活性が得られることが報告されている(上記非特許文献2を参照。)。以上より、ランタノイド系列の元素については、不純物として混入しても問題なく、触媒活性低下の原因とはなりにくいと考えられる。
{mB/(mA-mB-mC)}>1/8 ・・・式(1)
続いて、本実施形態に係る水素の製造方法における被処理ガスについて、詳細に説明する。本実施形態に係る水素製造触媒は、硫化水素を含まない被処理ガス中でも、水蒸気改質反応を進行させることが可能であるが、硫化水素濃度500ppm以上の領域において、より一層高い触媒活性を示す。また、そうした高濃度硫化水素存在下であっても、高い安定性を発揮することができる。そこで、適用可能な被処理ガスの詳細、及び、具体的な適用先のそれぞれについて、以下で説明を行う。
本実施形態に係る水素製造触媒および水素製造方法は、水蒸気改質反応と同様に、ドライ改質反応中の触媒上への炭素析出が少ないことを特徴の一つとしている。従って、一般に炭素析出量が増大しやすいドライ改質反応においても、炭素析出量を抑制しつつ、または、ほとんど炭素析出を起こすことなく、ドライ改質反応を進行させることが可能となる。本発明者は、二酸化炭素と、炭化水素として含まれる炭素原子と、のモル比である二酸化炭素カーボン比(以下、「CO2/C」と略記する場合がある。)で表したときに、メタン改質反応であればCO2/Cが1.0以上で炭素析出が生じず、また、1-メチルナフタレンを用いた場合にもCO2/Cが2.0以上とした場合に炭素析出量が少なくなり、安定した触媒活性が得られることを確認している。
続いて、以上説明したような水素製造触媒を用いた水素の製造方法について説明する。
本実施形態に係る水素の製造方法は、以上説明したような、酸化セリウム及び酸化マグネシウムを含有する水素製造触媒を、炭化水素を含む被処理ガスと接触させて水蒸気改質反応を進行させ、被処理ガス中の炭化水素を水蒸気改質して水素を製造する方法である。
(担体1:酸化マグネシウム担体)
逆共沈法にて、酸化マグネシウム担体を調製した。硝酸マグネシウム・6水和物(関東化学、純度>99.0%)を12.7458g秤取り、50mlの純水に溶解させた。得られた溶液を、アンモニア水(和光純薬、濃度28質量%)32mlに対して、攪拌をしながら全量滴下し、1時間更に攪拌を行った。30分間静置し、得られた沈殿を吸引濾過した。純水で洗浄し、大気中で1時間乾燥させ、水酸化マグネシウムを得た。得られた水酸化マグネシウムの一部をるつぼに移し、電気炉にて空気雰囲気下800℃で5時間焼成を行った。焼成後、得られた酸化マグネシウムを担体1とした。
水酸化マグネシウム(和光純薬、0.07μm、純度>99.9%)を5g秤取り、電気炉にて空気雰囲気下800℃で5時間焼成を行った。焼成後、得られた酸化マグネシウムを担体2とした。
水酸化マグネシウム(和光純薬、0.07μm、純度>99.9%)を5g秤取り、石英ガラス管に充填した。環状電気炉に設置し、ガスボンベから高純度酸素と高純度窒素を供給し、酸素21%窒素バランスのガスを100cc/分で流通させながら、800℃まで昇温し5時間焼成を行った。焼成後、得られた酸化マグネシウムを担体3とした。
3種類の酸化セリウム(触媒学会参照触媒:CEO-2、CEO-3、CEO-4)をそれぞれ10g秤取り、電気炉で空気雰囲気下900℃で5時間焼成を行った。室温まで冷却し、触媒A~Cを得た。
酸化セリウム(触媒学会参照触媒:CEO-2)を10g秤取り、電気炉で空気雰囲気下800℃で5時間焼成を行った。室温まで冷却し、触媒Dを得た。
クエン酸法にて触媒を調製した。硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)を5.0452g秤取り、純水50mlに溶解させた。得られた溶液に、クエン酸・1水和物(和光純薬、純度>99.5%)4.4655gを更に溶解させ、マグネチックスターラーで15分間攪拌した。このとき、セリウムイオンとクエン酸のモル比が、1/2となるようにした。溶液が透明となり、溶け残りがないことを確認したうえで、アンモニア水(和光純薬、濃度28質量%)を滴下し、pH7.0とした。更に1時間攪拌し、得られた溶液をロータリーエバポレーターにかけ、溶液の容積を減らしたうえで、アルミナるつぼへと移した。ホットプレートの上で100℃に加熱し、更に2時間かけて水分を蒸発させ、乾固させた。得られた固形物を、メノウ乳鉢上で潰し、粉状としたうえで、アルミナるつぼに戻した。試料を、アルミナるつぼごと電気炉に入れ、空気雰囲気下で焼成処理を行った。室温から30分かけて110℃まで昇温させ5時間乾燥させ、3時間かけて800℃まで昇温し、800℃にて5時間焼成処理を行った。その後、室温まで冷却し、1.7992gの触媒Eを得た。
酸化セリウム(触媒学会参照触媒:CEO-2)と、酸化アルミニウム(触媒学会参照触媒:ALO-8)とを、200℃で5時間焼成し、付着水分を除去した。乾燥後、酸化セリウム1.7212gと、酸化アルミニウム1.0196gを秤取り、ビーカーに入れた純水中に分散させた。ビーカーごと超音波洗浄機に入れ、10分間超音波を照射しながら攪拌を行った。デカンテーション法により、過剰な水分を除去し、触媒Eと同様の手順で乾燥と焼成を行った。焼成後、2.6983gの触媒Fを得た。触媒F中の、酸化セリウムと酸化アルミニウムのモル比は、金属イオンの比で50/50である。
逆共沈法にて触媒を調製した。硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)を3.1653g、硝酸アルミニウム・9水和物(関東化学、純度>98.0%)を2.7389g秤取り、純水22mlに溶解させた。過酸化水素(関東化学、純度30.0~35.5%)0.41mlを加え、30分間攪拌し、均一な前駆体溶液を得た。アンモニア水(和光純薬、濃度28質量%)を53ml秤取り、十分な攪拌を行いながら、前記前駆体溶液を全量滴下した。1時間攪拌し、30分間静置した。この時、前駆体溶液中の硝酸イオンと、アンモニアのモル比は1/7.2であった。得られた沈殿を、メンブレンフィルターを用いて吸引濾過し、純水で洗浄した。回収した沈殿を、触媒Eと同様の手順で電気炉にて焼成処理を行い、触媒Gを得た。前駆体のモル比から計算される、触媒G中に含まれる酸化セリウムと酸化アルミニウムのモル比は、金属イオンのモル比で1/2である。
触媒Eと同様にして、クエン酸法にて触媒を調製した。ただし、用いた試薬の量を、硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)を3.8055g、硝酸カルシウム・4水和物(関東化学、純度>98.5%)2.0722g、クエン酸・1水和物(和光純薬、純度>99.5%)6.7320gとした。それ以外の操作は、触媒Eと同様とした。溶液中の金属イオンとクエン酸のモル比も、同様に1/2である。焼成後、2.0212gの触媒Hを得た。触媒H中の、酸化セリウムと酸化カルシウムのモル比は、金属イオンの比で50/50である。
触媒Eと同様にして、クエン酸法にて触媒を調製した。ただし、用いた試薬の量を、硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)を2.6657g、硝酸バリウム(関東化学、純度>99.0%)1.6060g、クエン酸・1水和物(和光純薬、純度>99.5%)4.7231gとした。それ以外の操作は、触媒Eと同様とした。溶液中の金属イオンとクエン酸のモル比も、同様に1/2である。焼成後、2.0398gの触媒Iを得た。触媒I中の、酸化セリウムと酸化バリウムのモル比は、金属イオンの比で50/50である。
触媒Eと同様にして、クエン酸法にて触媒を調製した。ただし、用いた試薬の量を、硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)を1.7246g、硝酸鉄(III)・9水和物(関東化学、純度>99.0%)1.6032g、クエン酸・1水和物(和光純薬、純度>99.5%)3.3345gとした。それ以外の操作は、触媒Eと同様とした。溶液中の金属イオンとクエン酸のモル比も、同様に1/2である。焼成後、0.9860gの触媒Jを得た。触媒J中の、酸化セリウムと酸化鉄のモル比は、金属イオンの比で50/50である。
触媒Gと同様にして、逆共沈法にて触媒を調製した。ただし、硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)を2.9404g、硝酸酸化ジルコニウム・2水和物(関東化学、純度>99.0%)を1.8098g秤取り、純水13.5mlに溶解させた。また、過酸化水素(関東化学、純度30.0~35.5%)を0.77ml加えた。アンモニア水(和光純薬、濃度28質量%)の量は13mlとし、前駆体溶液中の硝酸イオンと、アンモニアのモル比は1/5とした。それ以外の操作は、触媒Gと同様とした。焼成処理後、得られた触媒を触媒Kとした。前駆体のモル比から計算される、触媒K中に含まれる酸化セリウムと酸化ジルコニウムのモル比は、1/1である。
含浸法にて触媒を調製した。硝酸マグネシウム・6水和物(関東化学、純度>99.0%)を1.0626g秤取り、純水5.0mlに溶解させた。得られた水溶液に、酸化アルミニウム(触媒学会参照触媒:ALO-8)1.3339gを含浸させ、室温で30分間攪拌したあと、攪拌を継続しながら昇温し、110℃で乾固させた。得られた固形物をスパチュラで突き崩したうえで、電気炉に入れ、大気雰囲気800℃で5時間焼成処理を行った。冷却後、酸化マグネシウム-酸化アルミニウム担体を1.4009g得た。得られた担体を0.9001g秤取り、硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)0.2521gのアセトン溶液4mlを滴下し、懸濁させた。得られた懸濁液を、室温で攪拌し、乾固させた。得られた固形物を、スパチュラで細かく砕いたうえで電気炉に入れ、大気雰囲気800℃で5時間焼成処理を行った。冷却後、得られた触媒を触媒Lとした。触媒Lは、質量比で、酸化セリウム10%、酸化マグネシウム10%、酸化アルミニウム80%とを含む。すなわち、酸化マグネシウムと、不純物である酸化アルミニウムとの比率は、質量比で1/8である。
触媒Eと同様にして、クエン酸法にて触媒を調製した。ただし、用いた試薬の量を、硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)を4.0876g、硝酸マグネシウム・6水和物(関東化学、純度>99.0%)を2.4153g、クエン酸・1水和物(和光純薬、純度>99.5%)を7.2356gとした。それ以外の操作は、触媒Eと同様とした。溶液中の金属イオンとクエン酸のモル比も、同様に1/2である。焼成後、1.9462gの触媒1を得た。触媒1中の、酸化セリウムと酸化マグネシウムのモル比は、50/50である。
触媒1と同様にして、クエン酸法にて触媒を調製した。ただし、硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)と、硝酸マグネシウム・6水和物(関東化学、純度>99.0%)のモル比を変えて実施し、酸化セリウムと酸化マグネシウムのモル比を、30/70、10/90、5/95、1/99とし、触媒2~5をそれぞれ約2.0g得た。それ以外の操作は、触媒1と同様である。
含浸法によって触媒を調製した。硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)を0.4696g秤取り、アセトン9mlに溶解させ、前駆体溶液を得た。担体1を0.8254g秤取り、前記前駆体溶液に全量投入し、室温で20分間攪拌して、蒸発乾固させた。得られた固形物をスパチュラで粉砕し、触媒Eと同様に電気炉にて800℃で焼成処理を行った。焼成後、0.9788gの触媒6を得た。触媒6中の、酸化セリウムと酸化マグネシウムのモル比は、5/95である。
触媒6と同様にして、含浸法によって触媒を調製した。ただし、硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)と担体1の質量比を変更した。焼成後得られた触媒を触媒7とした。触媒7中の、酸化セリウムと酸化マグネシウムのモル比は、1/99である。
触媒6と同様にして、含浸法によって触媒を調製した。ただし、酸化マグネシウム担体として担体2を利用した。焼成後得られた触媒を触媒8とした。触媒8中の、酸化セリウムと酸化マグネシウムのモル比は、5/95である。
触媒6と同様にして、含浸法によって触媒を調製した。ただし、酸化マグネシウム担体として担体2を利用し、硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)と担体との質量比を変更した。焼成後得られた触媒を触媒9とした。触媒9中の、酸化セリウムと酸化マグネシウムのモル比は、1/99である。
触媒Gと同様にして、逆共沈法にて触媒を調製した。ただし、硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)を0.2098g、硝酸マグネシウム・6水和物(関東化学、純度>99.0%)を12.1988g秤取り、純水30mlに溶解させた。また、過酸化水素は用いなかった。更に、アンモニア水(和光純薬、濃度28質量%)の量は31mlとし、前駆体溶液中の硝酸イオンと、アンモニアのモル比は1/5とした。焼成処理後、得られた触媒を触媒10とした。前駆体のモル比から計算される、触媒10中に含まれる酸化セリウムと酸化マグネシウムのモル比は、1/99である。
共沈法にて触媒を調製した。硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)を0.2088g、硝酸マグネシウム・6水和物(関東化学、純度>99.0%)を12.1982g秤取り、純水48.1mlに溶解させた。30分間攪拌し、均一となっていることを確認したうえで、攪拌を継続しながらアンモニア水(和光純薬、濃度28質量%)を滴下し、pH10.0とした。1時間攪拌し、30分間静置した。得られた沈殿を、メンブレンフィルターを用いて吸引濾過し、純水で洗浄した。得られた沈殿を、触媒Eと同様の手順で電気炉にて焼成処理を行い、触媒11を得た。前駆体のモル比から計算される、触媒11中に含まれる酸化セリウムと酸化マグネシウムのモル比は、1/99である。
触媒1と同様にして、クエン酸法にて触媒を調製した。ただし、硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)と、硝酸ランタン・6水和物(関東化学、純度>99.0%)と、硝酸マグネシウム・6水和物(関東化学、純度>99.0%)を用い、酸化セリウムと酸化ランタンと酸化マグネシウムのモル比を、8:1:1とした。焼成後、触媒12を約2.0g得た。なお、透過型電子顕微鏡(FEI製、TECNAIG2)で触媒1~12を明視野観察したところ、触媒12を除いて、酸化セリウムの粒子径を推定することができた。触媒1は、触媒1~11のなかで最も酸化セリウムの平均粒子径が大きく、25nmであった。なお、平均粒子径の決定には、透過型電子顕微鏡像を用い、各粒子の面積を球換算することで行った。
触媒Lと同様にして、含浸法にて触媒を調製した。ただし、硝酸マグネシウム・6水和物(関東化学、純度>99.0%)、酸化アルミニウム(触媒学会参照触媒:ALO-8)、硝酸セリウム(III)・6水和物(関東化学、純度>99.5%)の比率を変更した。触媒13は酸化物換算の質量比で、酸化セリウム20%、酸化マグネシウム20%、酸化アルミニウム60%を含み、触媒14は酸化物換算の質量比で、酸化セリウムと、酸化マグネシウムと、酸化アルミニウムとを等量ずつ含む。すなわち、酸化マグネシウムと、不純物である酸化アルミニウムとの酸化物換算の質量比は、触媒13で1/3であり、触媒14で1/1である。また、酸化物換算の質量比で、酸化マグネシウムと酸化セリウムの和と、残部との比率は、触媒Lが20/80であり、触媒13が40/60であり、触媒14が3/2である。更に、触媒L、触媒13、14は、いずれも酸化セリウムと酸化マグネシウムを質量比1/1の比率で含んでいるため、酸化セリウムと酸化マグネシウムで構成される同一組成の触媒を、酸化アルミニウムで希釈したものと解釈してもよい。
触媒6と同様にして、含浸法によって触媒を調製した。ただし、酸化マグネシウム担体として担体3を利用した。また、硝酸セリウムのアセトン溶液を含浸させた後、試料を石英ガラス管に充填したうえで環状電気炉に設置した。ガスボンベから高純度酸素と高純度窒素を供給し、酸素21%窒素バランスのガスを100cc/分で流通させながら、800℃まで昇温し5時間焼成を行った。焼成後得られた触媒を触媒15とした。触媒15中の、酸化セリウムと酸化マグネシウムのモル比は、5/95である。
酸化セリウム(触媒学会参照触媒:CEO-2)と、酸化マグネシウム(担体3)を、メノウ乳鉢を用いて物理混合した。物理混合後に得られた粉末を、大気雰囲気下で800℃まで昇温して焼成した。焼成後にえられた触媒を触媒16とした。触媒16中の、酸化セリウムと酸化マグネシウムのモル比は、5/95である。
(比較例:試験例1:酸化セリウム触媒)
触媒A~Eをそれぞれ、0.10g秤取り、石英ガラス製の反応管に充填した。窒素ガス50cm3/分を流通させながら、800℃まで30分で昇温した。その後、以下の表1に示す反応ガスを流通させて反応を開始した。ただし、硫化水素濃度は、反応開始後1時間までは0ppmとし、反応開始1時間後から2時間までは500ppmとし、反応開始2時間後から3時間までは1000ppmとし、反応開始3時間後から4時間までは2000ppmとし、各硫化水素濃度における反応の後半30分のメタン転化率を用いて、活性を評価した。反応ガスの分析にはガスクロマトグラフ(島津製作所、GC-2014)を用い、15分おきに分析を行った。
触媒として、触媒F~Lを用いたことを除いては、試験例1と同様にして反応試験を行った。各硫化水素濃度でのメタン転化率を、以下の表3にまとめて示した。
触媒として、担体1を用いたことを除いては、試験例1と同様にして反応試験を行った。水素の発生は全くみられず、担体1のみでは水蒸気改質反応は進行しないことが確認された。
触媒として、触媒1~12、15、16を用いたことを除いては、試験例1と同様にして反応試験を行った。反応試験の結果を、以下の表4にまとめて示した。
触媒として、触媒13、14を用いたことを除いては、試験例1と同様にして反応試験を行った。反応試験の結果を表4にまとめて示した。
(実施例:試験例6:酸化セリウム-酸化マグネシウム触媒)
触媒3を圧縮成型し、篩を用いて、粒子径1.0mmから2.0mmとした。メスシリンダーを用いて、各触媒を3.2cm3秤取り、反応管に充填した。窒素ガス50cm3/分を流通させながら、800℃まで30分で昇温し、その後、表2に示す反応ガスと、スチームカーボン比(S/C)=0.8、1.2、1.6とする量の水蒸気を導入し、それぞれ反応を開始した。反応ガス流量は、全体で80cm3とし、反応時間は6時間とした。空間速度(SV)は1500時間-1である。反応ガスの分析にはガスクロマトグラフ(島津製作所、GC-2014)を用い、15分おきに分析を行った。分析したガス成分は、水素、窒素、メタン、一酸化炭素、二酸化炭素、エチレン、エタン、プロピレン、プロパンである。反応前後で、窒素流量が変化しないと仮定して、窒素濃度との相対濃度を用いて反応後ガスの各成分流量を計算した。
各触媒を用いて、メタンのドライ改質反応試験をそれぞれ実施した。なお、いずれの触媒も、反応前にそれぞれ圧縮成型し、複数の篩を用いて粒度を揃え、粒径を1.0mm~2.0mmとしたうえで反応試験に用いた。詳細な実験条件等は、以下の通りである。
触媒として触媒A、D、Eを用い、被処理ガスとして表6に示すガスを流通させたことを除いて、試験例1と同様にして反応試験を実施した。被処理ガスの分析についても比較例1、2と同様に実施した。また、メタン転化率の計算には、以下の式(104)を用い、反応後ガスの各成分濃度で計算を行った。式(104)は、メタン濃度と、二酸化炭素濃度および一酸化炭素濃度の和、とを比較することによって、メタンが、二酸化炭素および一酸化炭素に変化した割合を計算するものである。各硫化水素濃度でのメタン転化率を、以下の表7にまとめて示した。いずれの触媒も、硫化水素濃度が上昇するのに合わせて触媒活性が向上した。触媒A、D、Eは焼成条件や作製条件に違いがあるものの、触媒活性はほぼ同等であり、単位重量あたりの活性でみても同程度となった。
触媒として成型後の触媒8、9、15を用いたことを除いては、試験例7と同様にして、反応試験を行った。各硫化水素濃度でのメタン転化率を、以下の表7にまとめて示した。いずれの触媒も、触媒A、D、Eと比較して、酸化セリウム単位重量当たりの活性が高い値を示した。これより、酸化セリウムを酸化マグネシウムに担持することで、少量の酸化セリウムでも高い触媒活性が発揮できることが改めて確認された。また、触媒9については、硫化水素濃度2000ppmでのメタン転化率が、硫化水素濃度1000ppmでのメタン転化率よりも低い値となった。反応後の触媒9は、炭素析出により触媒表面が黒く変化していることが確認されており、反応時間が長くなるにつれて、触媒活性が徐々に低下したものと考えられる。
以上のようにして生成した触媒を用いて、タールのドライ改質反応試験をそれぞれ実施した。なお、いずれの触媒も、反応前にそれぞれ圧縮成型し、複数の篩を用いて粒度を揃え、粒径を1.0mm~2.0mmとしたうえで反応試験に用いた。詳細な実験条件等は、以下の通りである。
成型後の触媒3を、メスシリンダーを用いて、3.2cm3秤取り、反応管に充填した。前処理は実施せず、窒素ガス50cm3/分を流通させながら、800℃まで30分で昇温した。その後、以下の表8に示す被処理ガスを導入し、反応を開始した。CO2/C比は1.0である。反応ガス流量は、全体で80cm3/分とし、反応時間は、6時間とした。なお、空間速度(Space Velocity:SV)は、1500時間-1である。反応ガスの分析は、試験例6と同様とした。
反応ガスとして表9に示す被処理ガスを導入したことを除いて、試験例9と同様にして試験を行った。CO2/C比は2.0である。反応ガス流量は、全体で80cm3/分とし、反応時間は、6時間とした。なお、空間速度(Space Velocity:SV)は、1500時間-1である。反応ガスの分析は、試験例6と同様とした。試験結果を表10に示す。CO2/C比を1.0とした試験例9と比較し、水素と一酸化炭素の総和の増加幅が大きくなり、また、反応時間5~6時間においても水素と一酸化炭素の総和が増加していることが確認された。さらに、炭素の析出量も少なくなった。試験例8では炭素の析出がほとんど見られなかったが、1-メチルナフタレンのようなタール成分を含むガスでは、炭素析出が発生してしまうことが分かる。
以上のようにして生成した触媒を用いて、タールの改質反応試験をそれぞれ実施した。なお、いずれの触媒も、反応前にそれぞれ圧縮成型し、複数の篩を用いて粒度を揃え、粒径を1.0mm~2.0mmとしたうえで反応試験に用いた。詳細な実験条件等は、以下の通りである。
成型後の触媒3を、メスシリンダーを用いて、3.2cm3秤取り、反応管に充填した。前処理は実施せず、窒素ガス50cm3/分を流通させながら、800℃まで30分で昇温した。その後、以下の表11に示す被処理ガスを導入し、反応を開始した。CO2/C比は1.0、スチームカーボン比は0.5である。水蒸気は、送水ポンプで反応管内に純水を導入したうえで、全量を気化させることによって実施した。反応ガス流量は、全体で80cm3/分とし、反応時間は、6時間とした。なお、空間速度(Space Velocity:SV)は、1500時間-1である。反応ガスの分析は、試験例6と同様とし、触媒活性の評価も同様に行った。試験結果を表12に示す。
Claims (12)
- 酸化セリウムと酸化マグネシウムとを含有し、
セリウム及びマグネシウムの酸化物換算のモル比(CeO2/MgO)が、1/99~80/20であり、
酸化ニッケルの含有量が、触媒全体に対する質量比で0.4%未満である、水蒸気改質反応またはドライ改質反応の少なくともいずれかで用いる水素製造触媒の製造方法であって、
クエン酸法を用いて製造する、または、酸化マグネシウム担体にセリウムを含浸担持させることで製造する、
水素製造触媒の製造方法。 - 前記酸化マグネシウム担体にセリウムを含浸担持させることで製造する水素製造触媒の製造方法であって、セリウム試薬を分解し酸化セリウムとする際に、乾燥気流中で焼成することを特徴とする、請求項1に記載の水素製造触媒の製造方法。
- 前記酸化物換算のモル比(CeO2/MgO)が、1/99~10/90である、請求項1又は2に記載の水素製造触媒の製造方法。
- 触媒中に含有される金、白金及びロジウムをそれぞれ金属換算した上で合計した質量と、触媒中に含有されるセリウム、マグネシウム及びニッケル以外の成分元素をそれぞれ酸化物換算した上で合計した質量と、を加算した、触媒の総換算質量をmAとし、
触媒中に含有されるマグネシウムを酸化物換算したMgO換算質量をmBとし、
触媒中に含有されるセリウムを含むランタノイド系列の成分元素をそれぞれ酸化物換算した上で合計したランタノイド系列の合計酸化物換算質量をmCとしたときに、
以下の式(1)で表される関係が成立する、請求項1~3の何れか一項に記載の水素製造触媒の製造方法。
{mB/(mA-mB-mC)}>1/8 ・・・式(1) - 酸化物換算の質量比で、酸化マグネシウム及び酸化セリウムの和と、残部との比率が、50/50以上である、請求項1~4の何れか一項に記載の水素製造触媒の製造方法。
- 酸化セリウムと酸化マグネシウムとを含有し、
セリウム及びマグネシウムの酸化物換算のモル比(CeO 2 /MgO)が、1/99~80/20であり、
酸化ニッケルの含有量が、触媒全体に対する質量比で0.4%未満である、水蒸気改質反応またはドライ改質反応の少なくともいずれかで用いる水素製造触媒を、
炭化水素を含み且つ硫化水素を含み硫化水素濃度が500ppm以上である被処理ガスと接触させて、水蒸気改質反応とドライ改質反応の少なくともいずれか一方の反応を進行させる、水素の製造方法。 - 請求項1~5の何れか一項に記載の水素製造触媒の製造方法で水素製造触媒を製造し、
前記水素製造触媒を、炭化水素を含む被処理ガスと接触させて、水蒸気改質反応とドライ改質反応の少なくともいずれか一方の反応を進行させる、水素の製造方法。 - 前記被処理ガスは、硫化水素を含有する、請求項7に記載の水素の製造方法。
- 前記被処理ガス中の硫化水素濃度は、500ppm以上である、請求項7又は8に記載の水素の製造方法。
- 前記水蒸気改質反応を進行させる場合、前記被処理ガスのスチームカーボン比は、0.8以上3.0以下である、請求項6~9の何れか一項に記載の水素の製造方法。
- 前記ドライ改質反応を進行させる場合、前記被処理ガスの二酸化炭素と、炭化水素として含まれる炭素原子と、のモル比が、1.0以上3.0以下である、請求項6~10の何れか一項に記載の水素の製造方法。
- 前記被処理ガスは、コークス炉ガスである、請求項6~11の何れか一項に記載の水素の製造方法。
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