以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、自動車のステアリングホイール等に搭載されるエアバッグ装置に好適に組み込まれるディスク型ガス発生器に本発明を適用したものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるディスク型ガス発生器の正面図であり、図2は、図1に示すディスク型ガス発生器の概略断面図である。まず、これら図1および図2を参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aの構成について説明する。
図1および図2に示すように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aは、軸方向の一端部および他端部が閉塞された短尺略円筒状のハウジングを有しており、このハウジングの内部に設けられた収容空間に、内部構成部品としての保持部30、点火器40、カップ状部材50、伝火薬56、ガス発生剤61、下部側支持部材70、上部側支持部材80、クッション材85およびフィルタ90等が収容されることで構成されている。また、ハウジングの内部に設けられた収容空間には、上述した内部構成部品のうちのガス発生剤61が主として収容された燃焼室60が位置している。
ハウジングは、シェル部材としての下部側シェル10および上部側シェル20を含んでいる。下部側シェル10および上部側シェル20の各々は、たとえば圧延された金属製の板状部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品からなる。下部側シェル10および上部側シェル20を構成する金属製の板状部材としては、たとえばステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等からなる金属板が利用され、好適には440[MPa]以上780[MPa]以下の引張応力が印加された場合にも破断等の破損が生じないいわゆる高張力鋼板が利用される。
下部側シェル10および上部側シェル20は、それぞれが有底略円筒状に形成されており、これらの開口面同士が向き合うように組み合わされて接合されることによってハウジングが構成されている。下部側シェル10は、底板部11と筒状部12とを有しており、上部側シェル20は、天板部21と筒状部22とフランジ部23とを有している。
下部側シェル10の筒状部12の上端は、上部側シェル20の筒状部22の下端に挿入されることで圧入されている。さらに、下部側シェル10の筒状部12と上部側シェル20の筒状部22とが、それらの当接部またはその近傍において接合されることにより、下部側シェル10と上部側シェル20とが固定されている。ここで、下部側シェル10と上部側シェル20との接合には、電子ビーム溶接やレーザ溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
これにより、ハウジングの周壁部のうちの底板部11寄りの部分は、下部側シェル10の筒状部12によって構成されており、ハウジングの周壁部のうちの天板部21寄りの部分は、上部側シェル20の筒状部22によって構成されている。また、ハウジングの軸方向の一端部および他端部は、それぞれ下部側シェル10の底板部11および上部側シェル20の天板部21によって閉塞されている。
上部側シェル20に設けられたフランジ部23は、上部側シェル20の筒状部22の軸方向の一端である下部側シェル10の底板部11側の端部から径方向外側に向けて連続して延びるように設けられている。これにより、フランジ部23は、ハウジングの周壁部の軸方向における途中位置から、径方向外側に向けて突出して位置している。
フランジ部23は、ディスク型ガス発生器1Aを外部の部材(たとえば、エアバッグ装置に設けられたリテーナ等)に固定するための部位である。フランジ部23の所定位置には、筒状部22の軸方向と平行な方向に沿って貫通するように貫通孔25(図3等参照)が設けられている。当該貫通孔25には、図示しないボルト等の締結部材が挿入されることになり、これによりディスク型ガス発生器1Aが外部の部材に対して固定されることになる。
図2に示すように、下部側シェル10の底板部11の中央部には、天板部21側に向かって突出する突状筒部13が設けられており、これにより下部側シェル10の底板部11の中央部には、窪み部14が形成されている。突状筒部13は、保持部30を介して点火器40が固定される部位であり、窪み部14は、保持部30に雌型コネクタ部34を設けるためのスペースとなる部位である。
突状筒部13は、有底略円筒状に形成されており、その天板部21側に位置する軸方向端部には、平面視した状態において非点対称形状(たとえばD字状、樽型形状、長円形状等)の開口部15が設けられている。当該開口部15は、点火器40の一対の端子ピン42が挿通される部位である。
点火器40は、火炎を発生させるためのものであり、点火部41と、上述した一対の端子ピン42とを備えている。点火部41は、その内部に、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬と、この点火薬を着火させるための抵抗体とを含んでいる。一対の端子ピン42は、点火薬を着火させるために点火部41に接続されている。
より詳細には、点火部41は、カップ状に形成されたスクイブカップと、当該スクイブカップの開口端を閉塞し、一対の端子ピン42が挿通されてこれを保持する基部とを備えており、スクイブカップ内に挿入された一対の端子ピン42の先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に近接するようにスクイブカップ内に点火薬が装填された構成を有している。
ここで、抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。なお、上述したスクイブカップおよび基部は、一般に金属製またはプラスチック製である。
衝突を検知した際には、端子ピン42を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器40が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合に一般に2[ms]以下である。
点火器40は、突状筒部13に設けられた開口部15に端子ピン42が挿通するように下部側シェル10の内側から挿入された状態で底板部11に取付けられている。具体的には、底板部11に設けられた突状筒部13の周囲には、樹脂成形部からなる保持部30が設けられており、点火器40は、当該保持部30によって保持されることにより、底板部11に固定されている。
保持部30は、型を用いた射出成形(より特定的にはインサート成形)によって形成されるものであり、下部側シェル10の底板部11に設けられた開口部15を経由して底板部11の内表面の一部から外表面の一部にまで達するように絶縁性の流動性樹脂材料を底板部11に付着させてこれを固化させることによって形成されている。
点火器40は、保持部30の成形の際に、開口部15に端子ピン42が挿通するように下部側シェル10の内側から挿入された状態とされ、この状態において点火器40と下部側シェル10との間の空間を充填するように上述した流動性樹脂材料が流し込まれることにより、保持部30を介して底板部11に固定される。
射出成形によって形成される保持部30の原料としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料が好適に選択されて利用される。その場合、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂に限られず、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂を利用することも可能である。これら熱可塑性樹脂を原材料として選択する場合には、成形後において保持部30の機械的強度を確保するためにこれら樹脂材料にガラス繊維等をフィラーとして含有させることが好ましい。しかしながら、熱可塑性樹脂のみで十分な機械的強度が確保できる場合には、上述の如くのフィラーを添加する必要はない。
保持部30は、下部側シェル10の底板部11の内表面の一部を覆う内側被覆部31と、下部側シェル10の底板部11の外表面の一部を覆う外側被覆部32と、下部側シェル10の底板部11に設けられた開口部15内に位置し、上記内側被覆部31および外側被覆部32にそれぞれ連続する連結部33とを有している。
保持部30は、内側被覆部31、外側被覆部32および連結部33のそれぞれの底板部11側の表面において底板部11に固着している。また、保持部30は、点火器40の点火部41の下方端寄りの部分の側面および下面と、点火器40の端子ピン42の上方端寄りの部分の表面とにそれぞれ固着している。
これにより、開口部15は、端子ピン42と保持部30とによって完全に埋め込まれた状態となり、当該部分におけるシール性が確保されることでハウジングの内部の空間の気密性が確保されている。なお、開口部15は、上述したように平面視非点対称形状に形成されているため、当該開口部15を連結部33で埋め込むことにより、これら開口部15および連結部33は、保持部30が底板部11に対して回転してしまうことを防止する回り止め機構としても機能する。
保持部30の外側被覆部32の外部に面する部分には、雌型コネクタ部34が形成されている。この雌型コネクタ部34は、点火器40とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れるための部位であり、下部側シェル10の底板部11に設けられた窪み部14内に位置している。
この雌型コネクタ部34内には、点火器40の端子ピン42の下方端寄りの部分が露出して配置されている。雌型コネクタ部34には、雄型コネクタが挿し込まれ、これによりハーネスの芯線と端子ピン42との電気的導通が実現される。
また、保持部30によって覆われることとなる部分の底板部11の表面の所定位置に予め接着剤層が設けられてなる下部側シェル10を用いて上述した射出成形を行なうこととしてもよい。当該接着剤層は、上記底板部11の所定位置に予め接着剤を塗布してこれを硬化させることにより、その形成が可能である。
このようにすれば、底板部11と保持部30との間に硬化した接着剤層が位置することになるため、樹脂成形部からなる保持部30をより強固に底板部11に固着させることが可能になる。したがって、底板部11に設けられた開口部15を囲うように上記接着剤層を周方向に沿って環状に設けることとすれば、当該部分においてより高いシール性を確保することが可能になる。
ここで、底板部11に予め塗布しておく接着剤としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料を原料として含むものが好適に利用され、たとえばシアノアクリレート系樹脂やシリコーン系樹脂を原料として含むものが特に好適に利用される。なお、上述の樹脂材料以外にも、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、アクリロニトリルスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタラート系樹脂、ポリエチレンテレフタラート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルファイド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、液晶ポリマー、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム等を原料として含むものが、上述した接着剤として利用可能である。
なお、ここでは、樹脂成形部からなる保持部30を射出成形することで下部側シェル10に対する点火器40の固定を可能にした場合の構成例を例示したが、下部側シェル10に対する点火器40の固定に他の代替手段を用いることも可能である。
底板部11には、突状筒部13、保持部30および点火器40を覆うようにカップ状部材50が組付けられている。カップ状部材50は、底板部11側の端部が開口した有底略円筒状の形状を有しており、内部に伝火薬56が収容された伝火室55を含んでいる。カップ状部材50は、その内部に設けられた伝火室55が点火器40の点火部41に面することとなるように、ガス発生剤61が収容された燃焼室60内に向けて突出して位置するように配置されている。
カップ状部材50は、上述した伝火室55を規定する頂壁部51および側壁部52と、側壁部52の開口端側の部分から径方向外側に向けて延設された延設部53とを有している。延設部53は、下部側シェル10の底板部11の内表面に沿って延びるように形成されている。具体的には、延設部53は、突状筒部13が設けられた部分およびその近傍における底板部11の内底面の形状に沿うように曲成された形状を有しており、その径方向外側の部分にフランジ状に延出する先端部54を含んでいる。
延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と下部側支持部材70との間に配置されており、これによりハウジングの軸方向に沿って底板部11と下部側支持部材70とによって挟み込まれている。ここで、下部側支持部材70は、その上方に配置されたガス発生剤61、クッション材85、上部側支持部材80および天板部21によって底板部11側に向けて押し付けられた状態にあるため、カップ状部材50は、その延設部53の先端部54が下部側支持部材70によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。これにより、カップ状部材50の固定にかしめ固定や圧入固定を利用せずとも、カップ状部材50が底板部11から脱落することが防止される。
カップ状部材50は、頂壁部51および側壁部52のいずれにも開口を有しておらず、その内部に設けられた伝火室55を取り囲んでいる。このカップ状部材50は、点火器40が作動することによって伝火薬56が着火された場合に伝火室55内の圧力上昇や発生した熱の伝導に伴って破裂または溶融するものであり、その機械的強度は比較的低いものが使用される。
そのため、カップ状部材50としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の部材や、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂等の樹脂製の部材からなるものが好適に利用される。
なお、カップ状部材50としては、このようなものの他にも、鉄や銅等に代表されるような機械的強度の高い金属製の部材からなり、その側壁部52に開口を有し、当該開口を閉鎖するようにシールテープが貼着されたもの等を利用することも可能である。また、カップ状部材50の固定方法も、上述した下部側支持部材70を用いた固定方法に限られず、他の固定方法を利用してもよい。
伝火室55に充填された伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬56としては、ガス発生剤61を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3、B/NaNO3、Sr(NO3)2等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物や、水素化チタン/過塩素酸カリウムからなる組成物、B/5-アミノテトラゾール/硝酸カリウム/三酸化モリブデンからなる組成物等が用いられる。
伝火薬56は、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成形されたもの等が利用される。バインダによって成形された伝火薬56の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
ハウジングの内部の空間のうち、上述したカップ状部材50が配置された部分を取り巻く空間には、ガス発生剤61が収容された燃焼室60が位置している。具体的には、上述したように、カップ状部材50は、ハウジングの内部に形成された燃焼室60内に突出して配置されており、このカップ状部材50の側壁部52の外表面に面する部分に設けられた空間ならびに頂壁部51の外表面に面する部分に設けられた空間が燃焼室60として構成されている。
また、ガス発生剤61が収容された燃焼室60をハウジングの径方向に取り巻く空間には、ハウジングの内周に沿ってフィルタ90が配置されている。フィルタ90は、円筒状の形状を有しており、その中心軸がハウジングの軸方向と実質的に合致するように配置されている。
ガス発生剤61は、点火器40が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。ガス発生剤61としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてガス発生剤61が形成される。
燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5-アミノテトラゾール等が好適に利用される。
酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。
添加剤としては、たとえばバインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては、たとえば窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、たとえば金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
ガス発生剤61の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、ディスク型ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤61の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤61の形状の他にもガス発生剤61の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
フィルタ90は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの等が利用できる。網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用できる。
また、フィルタ90として、孔あき金属板を巻き回したもの等を利用することもできる。この場合、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用される。この場合において、形成される孔の大きさや形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさや形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)やステンレス鋼板が好適に利用でき、またアルミニウム、銅、チタン、ニッケルまたはこれらの合金等の非鉄金属板を利用することもできる。
フィルタ90は、燃焼室60にて発生したガスがこのフィルタ90中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。したがって、ガスを十分に冷却しかつ残渣が外部に放出されないようにするためには、燃焼室60内にて発生したガスが確実にフィルタ90中を通過するようにすることが必要である。なお、フィルタ90は、ハウジングの周壁部を構成する上部側シェル20の筒状部22および下部側シェル10の筒状部12との間で所定の大きさの間隙部28が構成されることとなるように、当該筒状部12,22から離間して配置されている。
図1および図2に示すように、フィルタ90に対面する部分の上部側シェル20の筒状部22には、複数個のガス噴出口24が設けられている。この複数個のガス噴出口24は、フィルタ90を通過したガスをハウジングの外部に導出するためのものである。
また、図2に示すように、上部側シェル20の筒状部22の内周面には、上記複数個のガス噴出口24を閉鎖するようにシール部材としての金属製のシールテープ26が貼り付けられている。このシールテープ26としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が好適に利用でき、当該シールテープ26によって燃焼室60の気密性が確保されている。
ここで、図1に示すように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aにおいては、複数個のガス噴出口24が、それぞれ互いに開口面積の異なる3種類のガス噴出口(すなわち、複数個の第1ガス噴出口24a、複数個の第2ガス噴出口24bおよび複数個の第3ガス噴出口24c)を含んでいる。これら3種類のガス噴出口は、ディスク型ガス発生器1Aの作動時において、ガス発生剤61の燃焼に伴うハウジングの内部の空間である上述した収容空間の圧力上昇に伴って段階的に開放されることとなるように、互いに異なる開放圧を有するように構成されたものである。
なお、燃焼室60と複数個のガス噴出口24との間には、上述したようにフィルタ90と間隙部28とが位置しているが、フィルタ90のガスに対する流動抵抗は比較的小さいため、上記収容空間の圧力は、実質的には燃焼室60の内圧と等しくなる。そのため、以下の説明においては、収容空間の圧力に代えて、これを燃焼室60の内圧と称する場合もある。
上述した第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cは、その開口面積が互いに異なることによってそれらの開放圧が互いに異なることとなるように構成されている。このように、互いに異なる開放圧を有する複数種類のガス噴出口24を有することにより、特に低温環境下において、作動時に燃焼室60の内圧上昇に大幅な落ち込みが発生することが防止でき、意図した燃焼特性を得ることが可能になるが、その詳細ならびに当該複数種類のガス噴出口24のより詳細な構成については、後述することとする。
再び図2を参照して、燃焼室60のうち、底板部11側に位置する端部近傍には、下部側支持部材70が配置されている。下部側支持部材70は、環状の形状を有しており、フィルタ90と底板部11との境目部分を覆うように、これらフィルタ90と底板部11とに実質的に宛がわれて配置されている。これにより、下部側支持部材70は、燃焼室60の上記端部近傍において、底板部11とガス発生剤61との間に位置している。
下部側支持部材70は、フィルタ90の底板部11側に位置する軸方向端部の内周面に当接するように立設された当接部72と、当該当接部72から径方向内側に向けて延設された底部71とを有している。底部71は、下部側シェル10の底板部11の内底面に沿って延びるように形成されている。具体的には、底部71は、突状筒部13が設けられた部分を含む底板部11の内底面の形状に沿うように折り曲げられた形状を有しており、その径方向内側の部分に立設された先端部73を含んでいる。
当該下部側支持部材70は、作動時において、燃焼室60にて発生したガスが、フィルタ90の内部を経由することなくフィルタ90の下端と底板部11との間の隙間から流出してしまうことを防止するための流出防止手段として機能する。下部側支持部材70は、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
ここで、上述したカップ状部材50の延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と下部側支持部材70の底部71との間に配置されている。これにより、当該先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と底部71とによって挟み込まれて保持されている。このように構成することにより、カップ状部材50は、その延設部53の先端部54が下部側支持部材70の底部71によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。
燃焼室60のうち、天板部21側に位置する端部には、上部側支持部材80が配置されている。上部側支持部材80は、略円盤状の形状を有しており、フィルタ90と天板部21との境目部分を覆うように、これらフィルタ90と天板部21とに宛がわれて配置されている。これにより、上部側支持部材80は、燃焼室60の上記端部近傍において、天板部21とガス発生剤61との間に位置している。
上部側支持部材80は、天板部21に当接する底部81と、当該底部81の周縁から立設された当接部82とを有している。当接部82は、フィルタ90の天板部21側に位置する軸方向端部の内周面に当接している。
当該上部側支持部材80は、作動時において、燃焼室60にて発生したガスが、フィルタ90の内部を経由することなくフィルタ90の上端と天板部21との間の隙間から流出してしまうことを防止するための流出防止手段として機能する。上部側支持部材80は、下部側支持部材70と同様に、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
この上部側支持部材80の内部には、燃焼室60に収容されたガス発生剤61に接触するように環状形状のクッション材85が配置されている。これにより、クッション材85は、燃焼室60の天板部21側の部分において天板部21とガス発生剤61との間に位置することになり、ガス発生剤61を底板部11側に向けて押圧している。
クッション材85は、成形体からなるガス発生剤61が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、好適にはセラミックスファイバの成形体やロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン等)、クロロプレンおよびEPDMに代表されるゴム等からなる部材にて構成される。
次に、図2を参照して、上述した本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aの動作について説明する。
本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電によって点火器40が作動する。伝火室55に収容された伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。この伝火薬56の燃焼によってカップ状部材50は破裂または溶融し、上述の熱粒子が燃焼室60へと流れ込む。
流れ込んだ熱粒子により、燃焼室60に収容されたガス発生剤61が着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。燃焼室60にて発生したガスは、フィルタ90の内部を通過し、その際、フィルタ90によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ90によって除去されて間隙部28に流れ込む。
ハウジングの内部の空間の圧力上昇に伴い、上部側シェル20に設けられたガス噴出口24を閉鎖していたシールテープ26が開裂し、当該ガス噴出口24を介してガスがハウジングの外部へと噴出される。その際、複数個のガス噴出口24は、段階的に開放されることになり、噴出されたガスは、ディスク型ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、当該エアバッグを膨張および展開する。
図3は、図1および図2中に示すIII-III線に沿った上部側シェルの断面図であり、図4は、図1および図3に示す第1ないし第3ガス噴出口の拡大図である。次に、これら図3および図4ならびに前述の図1および図2を参照して、上部側シェル20のより詳細な構成ならびに上部側シェル20の筒状部22に設けられた第1ないし第3ガス噴出口24a~24cのより詳細な構成について説明する。
図3に示すように、上部側シェル20のフランジ部23は、上部側シェル20の筒状部22の軸線Oから当該フランジ部23の外縁までの距離が非一様となる形状を有している。より詳細には、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aにおいては、フランジ部23に上述した貫通孔25が周方向に沿って均等に4箇所設けられており、フランジ部23の貫通孔25が設けられた部分における上記距離が、フランジ部23の当該貫通孔25が設けられていない部分における上記距離よりも大きくなるように構成されている。
これにより、フランジ部23の外縁のうち、筒状部22の軸線Oから最も遠い位置である最大外形位置Aは、フランジ部23に設けられた貫通孔25に対応した位置にそれぞれ1箇所ずつ合計で4箇所設けられることになり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って90[°]間隔で均等に位置することになる。
一方、図1および図3に示すように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aにおいては、上述した第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cが、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って所定のルールに従って一列に並んで設けられている。より詳細には、複数個のガス噴出口24は、その総数が24個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って15[°]間隔で均等に配置されている。
第1ガス噴出口24aは、その数が4個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って90[°]ごとに配置されている。第2ガス噴出口24bは、その数が8個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って45[°]ごとに配置されている。第3ガス噴出口24cは、その数が12個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って15[°]、30[°]、45[°]、15[°]、30[°]、45[°]、・・・ごとに配置されている。
ここで、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cは、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24b、第3ガス噴出口24c、第3ガス噴出口24c、第2ガス噴出口24b、第3ガス噴出口24cの順でこれを1組として4組繰り返されるように配置されている。これにより、複数個のガス噴出口24は、上部側シェル20の筒状部22の周方向において互いに重ならないように配置されることになる。
図1および図4(A)に示すように、第1ガス噴出口24aは、互いに直交する方向における開口幅が異なる長孔形状を有しており、より詳細には、上部側シェル20の筒状部22の軸方向に沿った開口幅L1(以下、この筒状部22の軸方向に沿った開口幅L1を、長さL1とも称する)が、当該筒状部22の周方向に沿った開口幅W1(以下、この筒状部22の周方向に沿った開口幅W1を、単に幅W1とも称する)よりも大きい縦長孔形状を有している。厳密には、第1ガス噴出口24aは、筒状部22の軸方向に沿って並行して延在する一対の開口縁部を有するトラック孔にて構成されている。
図1および図4(B)に示すように、第2ガス噴出口24bは、互いに直交する方向における開口幅が異なる長孔形状を有しており、より詳細には、上部側シェル20の筒状部22の軸方向に沿った開口幅L2(以下、この筒状部22の軸方向に沿った開口幅L2を、長さL2とも称する)が、当該筒状部22の周方向に沿った開口幅W2(以下、この筒状部22の周方向に沿った開口幅W2を、単に幅W2とも称する)よりも大きい縦長孔形状を有している。厳密には、第2ガス噴出口24bは、筒状部22の軸方向に沿って並行して延在する一対の開口縁部を有するトラック孔にて構成されている。
図1および図4(C)に示すように、第3ガス噴出口24cは、互いに直交する方向における開口幅が異なる長孔形状を有しており、より詳細には、上部側シェル20の筒状部22の軸方向に沿った開口幅L3(以下、この筒状部22の軸方向に沿った開口幅L3を、長さL3とも称する)が、当該筒状部22の周方向に沿った開口幅W3(以下、この筒状部22の周方向に沿った開口幅W3を、単に幅W3とも称する)よりも大きい縦長孔形状を有している。厳密には、第3ガス噴出口24cは、筒状部22の軸方向に沿って並行して延在する一対の開口縁部を有するトラック孔にて構成されている。
すなわち、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cは、いずれも縦長孔形状を有しており、これによりすべてのガス噴出口24が縦長孔形状を有していることになる。
図4(A)ないし図4(C)を参照して、第1ガス噴出口24aの1個当たりの開口面積をS1とし、第2ガス噴出口24bの1個当たりの開口面積をS2とし、第3ガス噴出口24cの1個当たりの開口面積をS3とすると、これらS1~S3は、S1>S2>S3の条件を満たしている。すなわち、第2ガス噴出口24bの開口面積S2は、第1ガス噴出口24aの開口面積S1よりも小さく、第3ガス噴出口24cの開口面積S3は、第2ガス噴出口24bの開口面積S2よりも小さい。
ここで、図3に示すように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aにおいては、フランジ部23の上述した最大外形位置Aから筒状部22の軸線Oに対して垂線PLを引いた場合(図3においては、4箇所の最大外形位置Aのうちの1箇所から垂線PLを引いた場合を代表的に図示している)に、当該垂線PLに最も近い位置に配置されたガス噴出口24が、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cのうちの最も開口面積が大きい第1ガス噴出口24a以外のものとされている。
より具体的には、筒状部22の軸線Oに沿って見た場合に、筒状部22には、当該垂線PLに重なるように第3ガス噴出口24cが配置されている。これにより、当該垂線PLに最も近い位置に配置されたガス噴出口24は、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cのうちの最も開口面積が小さい第3ガス噴出口24cとされている。
このように構成することにより、小型軽量化のために耐圧容器であるハウジングの厚み(すなわち、上部側シェル20の厚み)を薄型化した場合にも、耐圧性能を高く確保することができることになるが、この点については後述することとする。
なお、図2を参照して、上部側シェル20の内周面には、上述したようにシールテープ26が貼り付けられており、当該シールテープ26によってこれら総数で24個のガス噴出口24の各々が閉鎖されている。この場合、シールテープ26の剪断強度(引張強度)をFとし、ガス噴出口24を閉鎖する部分のシールテープ26の厚みをtとし、ガス噴出口の周長をC(図4に示す周長C1~C3が、当該周長Cに該当する)とし、ガス噴出口24の開口面積をS(上述した開口面積S1~S3が、当該開口面積Sに該当する)とした場合に、当該ガス噴出口の開放圧は、F×t×C/Sで表わされる。
そのため、上述した周長C1~C3および開口面積S1~S3が適切に調節されることにより、本実施の形態においては、第1ガス噴出口24aの開放圧が最も低く、第2ガス噴出口24bの開放圧が次に低く、第3ガス噴出口24cの開放圧が最も高く設定されている。
当該開放圧の設定に際し、上記開放圧の式から理解されるように、開口面積Sが同じである場合にも周長Cを長く設定することにより、開放圧を高めることができる。換言すれば、本実施の形態のように、複数個のガス噴出口24のいずれもが縦長孔形状を有するように構成することにより、ハウジングの耐圧性能の低下を抑制するために隣り合うガス噴出口24同士の間の間隔を十分に確保しつつ開放圧を種々設定できることになり、単純に複数個のガス噴出口の一部を正円形状のまま相似形に大型化させて複数個のガス噴出口の総開口面積を増加させつつ、複数個のガス噴出口の開放圧を段階的に設定した場合に比べ、設計の自由度が大幅に増し、結果としてディスク型ガス発生器1Aの小型化が可能になる。
ここで、フィルタ90として、上述したステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたものを利用する場合においては、作動時においてガス噴出口24から噴き出されるガスの圧力により、当該ガス噴出口24に面する部分のフィルタ90に変形が生じて当該変形部分が外部に向けて押し遣られ、結果としてこれがガス噴出口24から外部に向けて食み出してしまう現象が生じることがある。
この現象は、ガス噴出口24の形状を正円形状とした場合に発生し易く、非正円形状とした場合に発生し難くなる。これは、ガス噴出口24の形状を非正円形状とした場合に、当該形状のガス噴出口24における角部や隅部等においてガスに対する流動抵抗が上昇し、ガス噴出口24の開口面積に比して実際に通流するガスの流量が全体として低く抑えられ、上述したフィルタ90を外部に向けて押し遣る力が軽減されるためと推察される。
当該観点に基づけば、ガス噴出口24の形状は、上述した縦長孔形状等に代表される如くの非正円形状とすることが好ましく、特に開放圧を低く設定するために開口面積が大きくとられたものほど、非正円形状とすることが好ましい。なお、ここで言う非正円形状には、様々な形状が含まれ、上述した縦長孔形状の他にも、横長孔形状、斜め長孔形状等が挙げられ、さらには十字状、V字状、T字状、アスタリスク状およびこれらを中心周りに回転させた形状等が挙げられる。
これを定量化して示した場合には、複数個の第1ガス噴出口24a、複数個の第2ガス噴出口24bおよび複数個の第3ガス噴出口24cのうちの少なくともいずれかは、1個のガス噴出口の開口面積をS[mm2]とし、当該1個のガス噴出口の周長をC[mm]とした場合に、これらSおよびCが、S/C≦0.27×S0.5の条件を満たす形状のガス噴出口にて構成されていることが好ましいことになり、さらにはS/C≦0.22×S0.5の条件を満たしていることがなお好ましいことになる。
図5は、本実施の形態におけるガス発生器の作動時において、ガス噴出口が段階的に開放される様子を模式的に表わした図である。次に、この図5を参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aにおいて、特に低温環境下において、作動時に内圧上昇に大幅な落ち込みが発生することが防止できる理由について説明する。なお、図5(A)、図5(B)および図5(C)は、それぞれ作動開始から所定時間が経過した時点での状態を模式的に表わしたものであり、図5(A)、図5(B)、図5(C)の順に経過時間が長くなっている。
本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aが作動すると、ガス発生剤61が燃焼を開始し、これに伴って燃焼室60の内圧が上昇し始める。本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aにおいては、当該燃焼室60の内圧が上昇する過程において、複数個のガス噴出口24が段階的に開放される。
作動開始後の第1段階においては、燃焼室60の内圧が、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cのいずれをも開放させることができる圧力にまで到達しておらず、これら第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cが開放されることはなく、内圧が上昇をし続ける。
作動開始後の第2段階においては、燃焼室60の内圧が、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cのうちで最も低い開放圧を有する4個の第1ガス噴出口24aを開放させることができる内圧P1に達し、これに伴い、図5(A)に示すように、当該4個の第1ガス噴出口24aを覆う部分のシールテープ26が開裂し、開放した4個の第1ガス噴出口24aを介してガスが噴出される。これにより、作動開始から比較的短時間のうちにガス出力が得られることになり、エアバッグの膨張および展開を早期に開始させることができる。
ここで、上記作動開始時後の第2段階においては、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cが未だ開放されていない状態にあるため、燃焼室60の内圧が適切な高圧状態に維持されることになり、燃焼室60の内圧が極端に落ち込むことがなくなる。したがって、ガス発生剤61の安定的な燃焼が継続されることになり、エアバッグの膨張および展開が持続できることになる。
作動開始後の第3段階においては、燃焼室60の内圧が、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cのうちで第1ガス噴出口24aの次に低い開放圧を有する8個の第2ガス噴出口24bを開放させることができる内圧P2に達し、これに伴い、図5(B)に示すように、当該8個の第2ガス噴出口24bを覆う部分のシールテープ26が開裂し、既に開放されている4個の第1ガス噴出口24aを含め、開放された合計12個の第1ガス噴出口24aおよび第2ガス噴出口24bを介してガスが噴出される。
ここで、上記作動開始時後の第3段階においては、第3ガス噴出口24cが未だ開放されていない状態にあるため、燃焼室60の内圧が適切な高圧状態に維持されることになり、燃焼室60の内圧が極端に落ち込むことがなくなる。したがって、ガス発生剤61の安定的な燃焼が継続されることになり、エアバッグの膨張および展開が持続できることになる。
作動開始後の第4段階においては、燃焼室60の内圧が、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cのうちで最も高い開放圧を有する12個の第3ガス噴出口24cを開放させることができる内圧P3に達し、これに伴い、図5(C)に示すように、当該12個の第3ガス噴出口24cを覆う部分のシールテープ26が開裂し、既に開放されている合計で12個の第1ガス噴出口24aおよび第2ガス噴出口24bを含め、開放された合計で24個すべての第1ガス噴出口24a,第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cを介してガスが噴出される。
ここで、この時点においては、既に燃焼室60の内圧が十分に高い高圧状態に達しているため、ガス発生剤61は安定的に燃焼を継続することになり、ガス発生剤61のすべてが燃え尽きるまで安定的に高いガス出力が得られることとなってエアバッグの持続的な展開がさらに継続できることになる。
作動開始後の第5段階においては、ガス発生剤61が完全に燃え尽きることでガスの出力が停止され、これによりディスク型ガス発生器1Aの作動が終了することでエアバッグの展開も終了する。
このように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aにおいては、ディスク型ガス発生器1Aの作動時において、ガス発生剤61の燃焼に伴うハウジングの内部の空間である上述した収容空間の圧力上昇に伴って複数個のガス噴出口24が段階的に開放されるように構成されているため、ハウジングの内部の空間の圧力上昇に伴って一斉にすべてのガス噴出口が開放されるように構成されたディスク型ガス発生器に比べ、特に低温環境下において、内圧上昇に大幅な落ち込みが発生することが防止できることになる。そのため、高温環境下から低温環境下までのいずれの温度環境下においてもガス発生剤61を持続的に燃焼させることが可能になり、結果として環境温度に起因したガス出力の性能差を低減することが可能になる。
なお、複数個のガス噴出口24が3段階に分けて開放されるように設定することにより、環境温度に起因するガス出力の性能差を低減する効果を確実に得るためには、複数個の第1ガス噴出口24aの開口面積の和をSA1とし、複数個の第2ガス噴出口24bの開口面積の和をSA2とし、複数個の第3ガス噴出口24cの開口面積の和をSA3とした場合(本実施の形態においては、SA1=4×S1,SA2=8×S2,SA3=12×S3)に、これらSA1~SA3が、SA1<SA2+SA3の条件を満たしていることが好ましい。すなわち、複数個の第1ガス噴出口24aの開口面積の和SA1は、複数個の第2ガス噴出口24bの開口面積の和SA2と複数個の第3ガス噴出口24cの開口面積の和SA3との総和よりも小さいことが好ましい。これは、複数個のガス噴出口24の開口面積の総和(すなわち、SA1+SA2+SA3)に占める、複数個の第1ガス噴出口24aの開口面積の和(SA1)が大きい場合に、燃焼室60の内圧を高圧状態に維持することが困難になるためである。
図6(A)は、比較例に係るディスク型ガス発生器の作動時におけるハウジングの要部の変形の程度を模式的に表わした図であり、図6(B)は、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器の作動時におけるハウジングの要部の変形の程度を模式的に表わした図である。次に、この図6と前述の図2とを参照して、比較例に係るディスク型ガス発生器1Xと、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aとの、作動時におけるハウジングの要部の変形の程度の違いについて説明することにより、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aにおいて、小型軽量化のために耐圧容器であるハウジングの厚みを薄型化した場合にも、耐圧性能を高く確保することができる理由について詳説する。なお、図6(B)に示す断面は、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aのハウジングのうちの、図3中に示すVIB-VIB線に沿った断面であり、図6(A)に示す断面は、比較例に係るディスク型ガス発生器1Xのハウジングのうちの、図6(B)に示す断面に対応した断面である。
一般に、ディスク型ガス発生器の作動時においては、ハウジングの内部の空間の圧力が上昇することに伴ってハウジングが外側に向けて膨らむように変形し、これに伴ってハウジングの所定部位に局所的に応力集中が発生する。その際、ハウジングの変形の程度が相対的に大きく、ハウジングの耐圧以上の応力が当該部位に発生することとなった場合には、当該部位を起点にハウジングに破断が生じてしまう。一方、ハウジングの変形の程度が相対的に小さく、ハウジングの耐圧以上の応力が当該部位に発生することがなければ、ハウジングに破断は生じず、正常にディスク型ガス発生器の動作が完了することになる。
ここで、図2を参照して、応力集中が発生し易い部位としては、上部側シェル20の筒状部22のうちのフランジ部23に接続する部分(図2中において領域Rで示す部分)が挙げられる。筒状部22自体は、ハウジングの内部の空間の圧力上昇に伴って相対的に変形し易い部位ではあるが、このうちのフランジ部23に接続する部分については、フランジ部23が容易には変形しないことに伴い、当該部分の変形がフランジ部23によって拘束されることになり、結果として上記領域Rに大きな応力が発生してしまう。
さらに、領域Rのうち、フランジ部23の最大外形位置A(図3参照)の近傍においては、フランジ部23の径方向外側に向けての突出量が特に大きく構成されているため、上述したフランジ部23による拘束力が強く働くことになり、結果として領域Rの他の部分よりも集中的に応力が発生する。そのため、フランジ部23の最大外形位置Aの近傍に位置する部分の領域Rにおいてハウジングの耐圧以上の応力が発生することがなければ、基本的にハウジングに破断は生じないことになる。
一方で、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aのように、互いに異なる開口面積を有するものが含まれた複数個のガス噴出口24を上部側シェル20の筒状部22に設けた場合には、より開口面積が大きいガス噴出口が設けられた部分の近傍において筒状部22の変形が相対的に大きくなり、より開口面積が小さいガス噴出口が設けられた部分の近傍において筒状部22の変形が相対的に小さくなる。これは、より開口面積が大きいガス噴出口が設けられた部分の近傍において筒状部22の機械的強度が相対的に低くなり、より開口面積が小さいガス噴出口が設けられた部分の近傍において筒状部22の機械的強度が相対的に高くなることに起因する。
図6(A)を参照して、比較例に係るディスク型ガス発生器1Xは、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aと比較した場合に、フランジ部23の最大外形位置Aから筒状部22の軸線に対して垂線を引いた場合に、当該垂線に最も近い位置に配置されたガス噴出口24が、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cのうちの最も開口面積が大きい第1ガス噴出口24aとされている点において相違している。
このように構成された比較例に係るディスク型ガス発生器1Xにおいては、筒状部22のうちのフランジ部23の最大外形位置Aに対応する部分の近傍に最も開口面積が大きい第1ガス噴出口24aが設けられていることに伴い、筒状部22のうちの機械的強度が相対的に低い部分と、筒状部22のうちのフランジ部23による拘束力が最も強く働く部分とが、ハウジングの周方向において重なって配置されることになる。
したがって、図6(A)に示すように、比較例に係るディスク型ガス発生器1Xの作動時においては、上述した領域Rのうちのフランジ部23の最大外形位置Aに対応する部分において、当該部分に対応する部分の筒状部22に相対的に大きな変形が生じる(すなわち、図中において符号D0で示す如くの大きな変形量が筒状部22に発生する)一方で、フランジ部23による拘束力が強く働くことになり、結果として領域Rの当該部分に集中的に応力が発生することになる。
そのため、比較例に係るディスク型ガス発生器1Xにおいては、当該部分において上部側シェル20に破断が生じることがないようにするために、相対的に上部側シェル20の厚みを厚くすることが必要になり、小型軽量化を阻害することとなってしまう。
これに対し、図6(B)に示すように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aにおいては、筒状部22のうちのフランジ部23の最大外形位置Aに対応する部分の近傍に最も開口面積が小さい第3ガス噴出口24cが設けられていることに伴い、筒状部22のうちの機械的強度が相対的に高い部分と、筒状部22のうちのフランジ部23による拘束力が最も強く働く部分とが、ハウジングの周方向において重なって配置されることになる。
したがって、図6(B)に示すように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aの作動時においては、上述した領域Rのうちのフランジ部23の最大外形位置Aに対応する部分において、フランジ部23による拘束力が強く働きつつも、当該部分に対応する部分の筒状部22には、相対的に小さな変形が生じる(すなわち、図中において符号D1で示す如くの小さい変形量(すなわちD1<D0)が筒状部22に発生する)に留まることになるため、結果として領域Rの当該部分において発生する応力集中が大幅に軽減できることになる。
そのため、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aにおいては、上述した比較例に係るディスク型ガス発生器1Xと比べた場合に、上部側シェル20の厚みを相対的に薄くすることが可能になり、結果として小型軽量化を実現することができる。
このように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aとすることにより、耐圧性能を確保しつつ小型軽量化が図られるとともに、環境温度に起因するガス出力の性能差を低減することができるガス発生器を実現することが可能になる。
ここで、図3を参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aにおいては、互いに同一の開放圧を有することとなるように同一の形状でかつ同一の開口面積を有するように構成されたガス噴出口に着目してそれらの形成位置に応じて一纏まりのガス噴出口群としてこれを捉えた場合に、以下の複数組のガス噴出口群のみによって上述した複数個のガス噴出口24が構成されていると見ることができる。なお、当該ガス噴出口群の決定に際しては、上述したように、可能な限り多くのガス噴出口によって1組のガス噴出口群が構成されるようにこれを決定している。
第1ガス噴出口群X:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24a
第2ガス噴出口群Y:45[°]間隔で配置された合計8個のガス噴出口24b
第3ガス噴出口群Z1:45[°]間隔で配置された合計8個のガス噴出口24c
第3ガス噴出口群Z2:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24c
すなわち、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aにおいては、複数個のガス噴出口24が、上部側シェル20の筒状部22の軸線Oを中心として120[°]以下の角度をもって回転対称性を有するように当該筒状部22の周方向に沿って均等に配置された互いに同一の開放圧を有する複数個のガス噴出口からなる合計で4組のガス噴出口群X,Y,Z1,Z2のみにて構成されている。
このように構成することにより、万が一、ディスク型ガス発生器1Aを固定する外部の部材(たとえばエアバッグ装置のリテーナ等)の固定力がハウジングの周方向における一部の位置においてのみ不足(たとえば経年劣化による固定力の低下等)していた場合等にも、ディスク型ガス発生器1Aに加わる推力のバランスが大きく崩れてしまうことが未然に防止できる。
より詳細には、上述した作動開始後の第2段階においては、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って均等に配置された4個の第1ガス噴出口24aが開放された状態にあるため、当該筒状部22の周方向に沿って等間隔である4箇所の位置においてガスが噴出されることになり、万が一、ディスク型ガス発生器1Aを固定する固定部材の固定力がハウジングの周方向における一部の位置においてのみ不足していた場合等にも、ディスク型ガス発生器1Aに加わる推力のバランスが比較的崩れ難くなる。
また、上述した作動開始後の第3段階においては、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って概ね均等に配置された合計で12個の第1ガス噴出口24aおよび第2ガス噴出口24bが開放された状態にあるため、当該筒状部22の周方向に沿って概ね等間隔である12箇所の位置においてガスが噴出されることになり、万が一、ディスク型ガス発生器1Aを固定する固定部材の固定力がハウジングの周方向における一部の位置においてのみ不足していた場合等にも、ディスク型ガス発生器1Aに加わる推力のバランスが相当程度に崩れ難くなる。
したがって、上記構成を採用することにより、特に作動開始後の初期段化において安全性がより高められたディスク型ガス発生器とすることができる。
加えて、上述した作動開始後の第2段階および第3段階においては、エアバッグが未だ十分には展開しておらず、そのため開放されたガス噴出口24とエアバッグとの間の距離とが非常に近い状態にあることになるが、その際にも、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って等間隔である4箇所の位置および概ね等間隔である12箇所の位置においてそれぞれガスが分散されて噴出されることになるため、エアバッグのうちの局所的な部分に集中して高温高圧のガスが噴き付けられてしまうことが回避できる。したがって、上記構成を採用することにより、エアバッグにダメージを与える可能性が低減できることにもなる。
これは、複数個のガス噴出口24のうち、第3ガス噴出口群Z1,Z2に含まれるガス噴出口24cを除いた残りのすべてのガス噴出口(すなわち、第1ガス噴出口24aおよび第2ガス噴出口24bのすべて)が、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って概ね均等に配置されていることによる。なお、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aにおいては、さらに複数個のガス噴出口24のすべて(すなわち、第1ガス噴出口24aおよび第2ガス噴出口24bに第3ガス噴出口24cを加えたすべて)が、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って均等に配置されているため、上述した作動開始後の第4段階においても、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って等間隔である24箇所の位置においてそれぞれガスが分散されて噴出されることにもなる。
また、上記構成を採用することにより、ハウジングに設けられる複数個のガス噴出口24の個々の開口面積を小さく抑えつつ、その数を増やした構成とできるため、作動時におけるハウジングの内部の空間の圧力をガス発生剤61が安定して持続的に燃焼することができる範囲で相当程度にまで下げることが可能になる。したがって、この意味においても、ハウジングの耐圧性能を確保しつつハウジングの厚みを薄型化することが可能になり、結果としてディスク型ガス発生器の大幅な小型軽量化が実現できる。
なお、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aは、標準的な大きさのエアバッグを膨張および展開させるタイプのものであり、上部側シェル20の筒状部22の外径は、たとえば60.4[mm]に設計され、当該筒状部22の厚み(板厚)は、たとえば1.1[mm]に設計される。
この場合においては、第1ガス噴出口24aの長さL1および幅W1は、たとえばそれぞれ4.0[mm]および1.9[mm]に設定され、第2ガス噴出口24bの長さL2および幅W2は、たとえばそれぞれ3.3[mm]および1.4[mm]に設定され、第3ガス噴出口24cの長さL3および幅W3は、たとえばそれぞれ2.5[mm]および1.3[mm]に設定される。
ここで、複数個のガス噴出口24の形成は、プレス機を用いた打抜き処理にて行なわれることが一般的であるが、上記のように設計した場合には、隣り合うガス噴出口24のピッチが小さくなるため、プレス機の制約上、これを一度の打抜き処理にて行なうことが事実上不可能となる。
しかしながら、製造コストを削減する観点からは、可能な限り少ない回数の打抜き処理にて複数個のガス噴出口24のすべてを形成することが好ましいため、上記構成のディスク型ガス発生器1Aを製造するに際しては、複数個のガス噴出口24を形成する工程において、筒状部22の周方向に沿って30[°]ごとに配置される合計で12個のガス噴出口を一度の打抜き処理にて形成するとともに、筒状部22の周方向に沿って30[°]ごとに配置される残る合計で12個のガス噴出口を一度の打抜き処理にて形成することが好ましい。このようにすれば、2回の打抜き処理にて複数個のガス噴出口24のすべてを形成することができ、製造コストを削減することができる。
上述した本実施の形態の如く、ガス噴出口24の形状を長孔形状とすることにより、環境温度の違い(すなわち、低温環境下にあるか、それとも常温環境下にあるか、はたまた高温環境下にあるか)に応じて、ガス噴出口24が開放された状態における実際の開口面積を異ならしめることが可能になり、特に低温環境下においてガス発生剤61の燃焼を促進させることが可能になる。そのため、環境温度に起因するガス出力の性能差を格段に軽減することができ、従来に比してより高性能のディスク型ガス発生器とすることができる。以下、この点について詳細に説明する。
図7は、本実施の形態におけるガス発生器の作動時のガス噴出口近傍の状態を模式的に表わした図である。なお、図7(A)は、常温環境下および高温環境下において当該ガス発生器を作動させた場合を示しており、図7(B)は、低温環境下において当該ガス発生器を作動させた場合を示している。
図7(A)に示すように、常温環境下および高温環境下において本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aを作動させた場合には、燃焼室60の内圧上昇に伴ってガス噴出口24を閉鎖する部分のシールテープ26が開裂するに際して、シールテープ26が長孔形状を有するガス噴出口24の開口縁部に沿って完全に破断し、ガス噴出口24の開口縁部に破断後のシールテープ26が付着することはない。そのため、ガス噴出口24の開口面積と、シールテープ26が開裂することでガス噴出口24が開放された状態における実際の開口面積とが同じになる。
一方、図7(B)に示すように、低温環境下において本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Aを作動させた場合には、燃焼室60の内圧上昇に伴ってガス噴出口24を閉鎖する部分のシールテープ26が開裂するに際して、シールテープ26が長孔形状を有するガス噴出口24の開口縁部に沿って破断するものの、当該開口縁部の全周に沿って完全に破断することはなく、筒状部22に沿って並行して延在する一対の開口縁部の一方において破断が生じず、ガス噴出口24の開口縁部に破断後のシールテープ26が付着した状態となる。そのため、ガス噴出口24の開口面積よりも、シールテープ26が開裂することでガス噴出口24が開放された状態における実際の開口面積の方が当該シールテープ26の断面積に相当する分だけ小さくなることになる。
そのため、常温環境下および高温環境下においては、ディスク型ガス発生器1Aの作動時におけるガス噴出口24の実際の開口面積の総和が相対的に大きく確保される反面、低温環境下においては、ディスク型ガス発生器1Aの作動時におけるガス噴出口24の実際の開口面積の総和が相対的に小さく減じられることになる。これにより、低温環境下において、常温環境下および高温環境下に比べて、ガス噴出口24が開放されることによって当該ガス噴出口24を介して排出されるガスの量が制限されることになり、その分だけ燃焼室60の内圧の上昇が促進されることになる。したがって、特に低温環境下においてガス発生剤61の燃焼を促進させることが可能になり、環境温度に起因するガス出力の性能差を格段に軽減することが可能となって、結果的に従来に比してより高性能のディスク型ガス発生器とすることができる。
ここで、本実施の形態の如くの構成を採用することにより、周囲温度に応じて、開裂したシールテープ26の一部がガス噴出口24の開口縁部に付着するか否かに差が生じる理由は、もっぱら、ガス噴出口24が非丸孔状の長孔形状であるためにガス噴出口24の中央から開口縁部までの距離が非一様となることにより、当該開口縁部に沿って一度にシールテープ26を破断させるために必要となる瞬間的なエネルギーが増大し、常温環境下および高温環境下においては燃焼室60の内圧の上昇速度が速いため、当該瞬間的なエネルギーが得られるのに対し、低温環境下において燃焼室60の内圧の上昇速度が遅いため、当該瞬間的なエネルギーが得られないためと推察される。
なお、本実施の形態においては、長孔形状の典型的な例として、ガス噴出口24をトラック孔にて構成した場合を例示して説明を行なったが、ガス噴出口24の開口形状はこれに限定されるものではなく、たとえば楕円形状としてもよいし長方形形状としてもよい。ここで、上述した効果をより確実に得るためには、長孔形状のガス噴出口24が、筒状部22に沿って並行して延在する一対の開口縁部を有していることが好ましく、上述したトラック形状や長方形形状の孔にて構成されていることがなお好ましい。
また、本実施の形態においては、複数個のガス噴出口24のすべてが縦長孔形状を有するように構成された場合を例示して説明を行なったが、複数個のガス噴出口24のうちの一部のみが縦長孔形状を有するように構成されている場合でも相当程度の効果を得ることができ、また、複数個のガス噴出口24のすべてまたはその一部が横長孔形状を有するように構成されている場合にも、上述した効果に準じた効果を得ることができる。ここで、横長孔形状とは、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿った開口幅が、当該筒状部22の軸方向に沿った開口幅よりも大きい長孔形状のことである。
また、本実施の形態においては、複数個のガス噴出口24が上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って一列に並んで配置された場合を例示して説明を行なったが、これらが千鳥状あるいは複数列にわたって配置されていてもよいし、他のレイアウトにて配置されていてもよい。
なお、上述した低温環境下、常温環境下、高温環境下とは、たとえばそれぞれ環境温度が-40[℃]前後の環境下、20[℃]前後の環境下、85[℃]前後の環境下を意味している。
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2におけるディスク型ガス発生器の正面図であり、図9は、図8中に示すIX-IX線に沿った上部側シェルの断面図である。まず、これら図8および図9を参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Bの構成について説明する。
本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Bは、上述した実施の形態1におけるディスク型ガス発生器1Aと同様に、標準的な大きさのエアバッグを膨張および展開させるタイプのものであり、図8および図9に示すように、上部側シェル20の筒状部22には、上述した実施の形態1におけるディスク型ガス発生器1Aと同様の形状および大きさの第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24c(図1および図4等参照)が設けられている。
本実施の形態においては、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cが、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って所定のルール(ただし、上述した実施の形態1において示したルールとは異なるルール)に従って一列に並んで設けられている。より詳細には、複数個のガス噴出口24は、その総数が24個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って所定の角度ごとに配置されている。
第1ガス噴出口24aは、その数が4個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って90[°]ごとに配置されている。第2ガス噴出口24bは、その数が8個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って39[°]、51[°]、39[°]、51[°]、・・・ごとに配置されている。第3ガス噴出口24cは、その数が12個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って21[°]、30[°]、39[°]、21[°]、30[°]、39[°]、・・・ごとに配置されている。
ここで、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cは、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24b、第3ガス噴出口24c、第3ガス噴出口24c、第2ガス噴出口24b、第3ガス噴出口24cの順でこれを1組として4組繰り返されるように配置されている。これにより、複数個のガス噴出口24は、上部側シェル20の筒状部22の周方向において互いに重ならないように配置されることになる。
なお、上述した第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24b、第3ガス噴出口24c、第3ガス噴出口24c、第2ガス噴出口24b、第3ガス噴出口24c、第1ガス噴出口24a、・・・の順で配置された各ガス噴出口24間の配置間隔は、図示するように順に21[°]、9[°]、21[°]、9[°]、21[°]、9[°]、・・・とされている。
ここで、図9を参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Bにおいては、互いに同一の開放圧を有することとなるように同一の形状でかつ同一の開口面積を有するように構成されたガス噴出口に着目してそれらの形成位置に応じて一纏まりのガス噴出口群としてこれを捉えた場合に、以下の複数組のガス噴出口群のみによって上述した複数個のガス噴出口24が構成されていると見ることができる。なお、当該ガス噴出口群の決定に際しては、上述したように、可能な限り多くのガス噴出口によって1組のガス噴出口群が構成されるようにこれを決定している。
第1ガス噴出口群X:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24a
第2ガス噴出口群Y1:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24b
第2ガス噴出口群Y2:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24b
第3ガス噴出口群Z1:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24c
第3ガス噴出口群Z2:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24c
第3ガス噴出口群Z3:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24c
すなわち、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Bにおいては、複数個のガス噴出口24が、上部側シェル20の筒状部22の軸線を中心として120[°]以下の角度をもって回転対称性を有するように当該筒状部22の周方向に沿って均等に配置された互いに同一の開放圧を有する複数個のガス噴出口からなる合計で6組のガス噴出口群X,Y1,Y2,Z1,Z2,Z3のみにて構成されている。
ここで、図9に示すように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Bにおいては、フランジ部23の最大外形位置Aから筒状部22の軸線Oに対して垂線PLを引いた場合(図9においては、4箇所の最大外形位置Aのうちの1箇所から垂線PLを引いた場合を代表的に図示している)に、当該垂線PLに最も近い位置に配置されたガス噴出口24が、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cのうちの最も開口面積が大きい第1ガス噴出口24a以外のものとされている。
より具体的には、筒状部22の軸線Oに沿って見た場合に、筒状部22には、当該垂線PLに重なる位置にガス噴出口24は設けられておらず(すなわち、当該垂線PLと筒状部22の軸線Oとを含む平面上の位置に、複数個のガス噴出口24a~24cのいずれもが配置されておらず)、これら筒状部22と垂線PLとの交点に最も近い位置には、第3ガス噴出口24cが配置されている。これにより、当該垂線PLに最も近い位置に配置されたガス噴出口24は、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cのうちの最も開口面積が小さい第3ガス噴出口24cとされている。
図10は、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器の作動時におけるハウジングの要部の変形の程度を模式的に表わした図である。次に、この図10を参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Bの作動時におけるハウジングの要部の変形の程度について説明する。なお、図10に示す断面は、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Bのハウジングのうちの、図9中に示すX-X線に沿った断面である。
図9を参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Bにおいては、複数個のガス噴出口24のうちのいずれもが配置されていない領域を筒状部22の周方向に沿って一定量だけ形成し、これが筒状部22と上記垂線PLとの交点を含むように配置されるとともに、当該垂線PLに最も近い位置に配置されたガス噴出口24が、最も開口面積が小さい第3ガス噴出口24cとなるように構成されている。そのため、筒状部22のうちの上記垂線PLとの交点近傍における部分においては、筒状部22の機械的強度が他の部分に比較して相対的に高いことになる。
したがって、図10に示すように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Bの作動時においては、領域Rのうちのフランジ部23の最大外形位置Aに対応する部分において、フランジ部23による拘束力が強く働きつつも、当該部分に対応する部分の筒状部22には、相対的に小さな変形が生じる(すなわち、図中において符号D2で示す如くの小さい変形量(すなわちD2<D1(D1については、図6(B)参照))が筒状部22に発生する)に留まることになるため、結果として領域Rの当該部分において発生する応力集中が飛躍的に軽減できることになる。
そのため、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Bにおいては、上述した実施の形態1におけるディスク型ガス発生器1Aと比べた場合に、さらに上部側シェル20の厚みを相対的に薄くすることが可能になり、結果としてさらなる小型軽量化を実現することができる。
ここで、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Bは、上述したように標準的な大きさのエアバッグを膨張および展開させるタイプのものであり、上部側シェル20の筒状部22の外径は、たとえば60.4[mm]に設計され、当該筒状部22の厚み(板厚)は、たとえば1.1[mm]に設計される。
この場合においては、第1ガス噴出口24aの長さL1および幅W1は、たとえばそれぞれ4.0[mm]および1.9[mm]に設定され、第2ガス噴出口24bの長さL2および幅W2は、たとえばそれぞれ3.3[mm]および1.4[mm]に設定され、第3ガス噴出口24cの長さL3および幅W3は、たとえばそれぞれ2.5[mm]および1.3[mm]に設定される。
なお、当該構成を採用した場合にも、1組の第1ガス噴出口群X、1組の第3ガス噴出口群Z1および1組の第2ガス噴出口群Y2に含まれる合計で12個のガス噴出口を一度の打抜き処理にて形成するとともに、1組の第2ガス噴出口群Y1、1組の第3ガス噴出口群Z2および1組の第3ガス噴出口群Z3に含まれる合計で12個のガス噴出口を一度の打抜き処理にて形成することにより、合計で2回の打抜き処理にて複数個のガス噴出口24のすべてを形成することが可能になり、プレス機の制約を加味した上での製造コストの最小化が実現できることになる。
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3におけるディスク型ガス発生器の上部側シェルの断面図であり、図12は、図11に示す第1ないし第3ガス噴出口の拡大図である。以下、これら図11および図12を参照して、本発明の実施の形態3におけるディスク型ガス発生器1Cについて説明する。
本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Cは、上述した実施の形態2におけるディスク型ガス発生器1Bとは異なり、標準的な大きさよりも小さい小型のエアバッグを膨張および展開させるタイプのものであり、図11に示すように、上部側シェル20の筒状部22には、上述した実施の形態2におけるディスク型ガス発生器1Bの場合よりも少ない数のガス噴出口24が設けられている。
具体的には、図11に示すように、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cは、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って所定のルール(ただし、上述した実施の形態2において示したルールとは異なるルール)に従って一列に並んで設けられている。より詳細には、複数個のガス噴出口24は、その総数が16個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って所定の角度ごとに配置されている。
第1ガス噴出口24aは、その数が4個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って90[°]ごとに配置されている。第2ガス噴出口24bは、その数が8個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って30[°]、60[°]、30[°]、60[°]、・・・ごとに配置されている。第3ガス噴出口24cは、その数が4個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って90[°]ごとに配置されている。
ここで、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cは、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って、第1ガス噴出口24a、第3ガス噴出口24c、第2ガス噴出口24b、第2ガス噴出口24bの順でこれを1組として4組繰り返されるように配置されている。これにより、複数個のガス噴出口24は、上部側シェル20の筒状部22の周方向において互いに重ならないように配置されることになる。
なお、上述した第1ガス噴出口24a、第3ガス噴出口24c、第2ガス噴出口24b、第2ガス噴出口24b、第1ガス噴出口24a、・・・の順で配置された各ガス噴出口24間の配置間隔は、図示するように順に21[°]、9[°]、30[°]、30[°]、・・・とされている。
ここで、図11を参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Cにおいては、互いに同一の開放圧を有することとなるように同一の形状でかつ同一の開口面積を有するように構成されたガス噴出口に着目してそれらの形成位置に応じて一纏まりのガス噴出口群としてこれを捉えた場合に、以下の複数組のガス噴出口群のみによって上述した複数個のガス噴出口24が構成されていると見ることができる。なお、当該ガス噴出口群の決定に際しては、上述したように、可能な限り多くのガス噴出口によって1組のガス噴出口群が構成されるようにこれを決定している。
第1ガス噴出口群X:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24a
第2ガス噴出口群Y1:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24b
第2ガス噴出口群Y2:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24b
第3ガス噴出口群Z:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24c
すなわち、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Cにおいては、複数個のガス噴出口24が、上部側シェル20の筒状部22の軸線を中心として120[°]以下の角度をもって回転対称性を有するように当該筒状部22の周方向に沿って均等に配置された互いに同一の開放圧を有する複数個のガス噴出口からなる合計で4組のガス噴出口群X,Y1,Y2,Zのみにて構成されている。
ここで、図11に示すように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Cにおいても、フランジ部23の最大外形位置Aから筒状部22の軸線Oに対して垂線PLを引いた場合(図11においては、4箇所の最大外形位置Aのうちの1箇所から垂線PLを引いた場合を代表的に図示している)に、当該垂線PLに最も近い位置に配置されたガス噴出口24が、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cのうちの最も開口面積が大きい第1ガス噴出口24a以外のものとされている。
より具体的には、筒状部22の軸線Oに沿って見た場合に、筒状部22には、当該垂線PLに重なる位置にガス噴出口24は設けられておらず(すなわち、当該垂線PLと筒状部22の軸線Oとを含む平面上の位置に、複数個のガス噴出口24a~24cのいずれもが配置されておらず)、これら筒状部22と垂線PLとの交点に最も近い位置には、第2ガス噴出口24bが配置されている。これにより、当該垂線PLに最も近い位置に配置されたガス噴出口24は、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cのうちの2番目に開口面積が小さい第2ガス噴出口24bとされている。
したがって、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Cとすることにより、上述した実施の形態2におけるディスク型ガス発生器1Bとした場合と同様に、その作動時において上部側シェル20の所定部位(特に、上述した領域Rのうちのフランジ部23の最大外形位置Aに対応する部分)に応力集中が発生することが飛躍的に軽減できることになる。そのため、当該構成を採用することにより、上部側シェル20の厚みを相対的に薄くすることが可能になり、結果として小型軽量化を実現することができる。
ここで、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Cは、上述したように、標準的な大きさよりも小さい小型のエアバッグを膨張および展開させるタイプのものであり、上部側シェル20の筒状部22の外径は、たとえば57.5[mm]に設計され、当該筒状部22の厚み(板厚)は、たとえば1.1[mm]に設計される。
この場合においては、図12を参照して、第1ガス噴出口24aの長さL1および幅W1は、たとえばそれぞれ3.5[mm]および2.1[mm]に設定され、第2ガス噴出口24bの長さL2および幅W2は、たとえばそれぞれ2.6[mm]および1.4[mm]に設定され、第3ガス噴出口24cの長さL3および幅W3は、たとえばそれぞれ2.4[mm]および1.2[mm]に設定される。
なお、当該構成を採用した場合にも、1組の第1ガス噴出口群Xと2組の第2ガス噴出口群Y1,Y2とに含まれる合計で12個のガス噴出口を一度の打抜き処理にて形成するとともに、1組の第3ガス噴出口群Zに含まれる合計で4個のガス噴出口を一度の打抜き処理にて形成することにより、合計で2回の打抜き処理にて複数個のガス噴出口24のすべてを形成することが可能になり、プレス機の制約を加味した上での製造コストの最小化が実現できることになる。
(実施の形態4)
図13は、本発明の実施の形態4におけるディスク型ガス発生器の上部側シェルの断面図であり、図14は、図13に示す第1ないし第3ガス噴出口の拡大図である。以下、これら図13および図14を参照して、本発明の実施の形態4におけるディスク型ガス発生器1Dについて説明する。
本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Dは、上述した実施の形態2におけるディスク型ガス発生器1Bとは異なり、標準的な大きさよりも大きい大型のエアバッグを膨張および展開させるタイプのものであり、図13に示すように、上部側シェル20の筒状部22には、上述した実施の形態2におけるディスク型ガス発生器1Bの場合よりも多い数のガス噴出口24が設けられている。
具体的には、図13に示すように、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cは、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って所定のルール(ただし、上述した実施の形態2において示したルールとは異なるルール)に従って一列に並んで設けられている。より詳細には、複数個のガス噴出口24は、その総数が32個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って所定の角度ごとに配置されている。
第1ガス噴出口24aは、その数が8個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って70[°]、20[°]、70[°]、20[°]、・・・ごとに配置されている。第2ガス噴出口24bは、その数が8個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って30[°]、60[°]、30[°]、60[°]、・・・ごとに配置されている。第3ガス噴出口24cは、その数が16個であり、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って20[°]、10[°]、20[°]、40[°]、20[°]、10[°]、20[°]、40[°]、・・・ごとに配置されている。
ここで、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cは、上部側シェル20の筒状部22の周方向に沿って、第1ガス噴出口24a、第3ガス噴出口24c、第2ガス噴出口24b、第3ガス噴出口24c、第3ガス噴出口24c、第2ガス噴出口24b、第3ガス噴出口24c、第1ガス噴出口24aの順でこれを1組として4組繰り返されるように配置されている。これにより、複数個のガス噴出口24は、上部側シェル20の筒状部22の周方向において互いに重ならないように配置されることになる。
なお、上述した第1ガス噴出口24a、第3ガス噴出口24c、第2ガス噴出口24b、第3ガス噴出口24c、第3ガス噴出口24c、第2ガス噴出口24b、第3ガス噴出口24c、第1ガス噴出口24a、第1ガス噴出口24a、・・・の順で配置された各ガス噴出口24間の配置間隔は、図示するように順に10[°]、10[°]、10[°]、10[°]、10[°]、10[°]、10[°]、20[°]、・・・とされている。
ここで、図13を参照して、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Dにおいては、互いに同一の開放圧を有することとなるように同一の形状でかつ同一の開口面積を有するように構成されたガス噴出口に着目してそれらの形成位置に応じて一纏まりのガス噴出口群としてこれを捉えた場合に、以下の複数組のガス噴出口群のみによって上述した複数個のガス噴出口24が構成されていると見ることができる。なお、当該ガス噴出口群の決定に際しては、上述したように、可能な限り多くのガス噴出口によって1組のガス噴出口群が構成されるようにこれを決定している。
第1ガス噴出口群X1:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24a
第1ガス噴出口群X2:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24a
第2ガス噴出口群Y1:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24b
第2ガス噴出口群Y2:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24b
第3ガス噴出口群Z1:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24c
第3ガス噴出口群Z2:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24c
第3ガス噴出口群Z3:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24c
第3ガス噴出口群Z4:90[°]間隔で配置された合計4個のガス噴出口24c
すなわち、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Dにおいては、複数個のガス噴出口24が、上部側シェル20の筒状部22の軸線を中心として120[°]以下の角度をもって回転対称性を有するように当該筒状部22の周方向に沿って均等に配置された互いに同一の開放圧を有する複数個のガス噴出口からなる合計で8組のガス噴出口群X1,X2,Y1,Y2,Z1,Z2,Z3,Z4のみにて構成されている。
ここで、図13に示すように、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Dにおいても、フランジ部23の最大外形位置Aから筒状部22の軸線Oに対して垂線PLを引いた場合(図13においては、4箇所の最大外形位置Aのうちの1箇所から垂線PLを引いた場合を代表的に図示している)に、当該垂線PLに最も近い位置に配置されたガス噴出口24が、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cのうちの最も開口面積が大きい第1ガス噴出口24a以外のものとされている。
より具体的には、筒状部22の軸線Oに沿って見た場合に、筒状部22には、当該垂線PLに重なる位置にガス噴出口24は設けられておらず(すなわち、当該垂線PLと筒状部22の軸線Oとを含む平面上の位置に、複数個のガス噴出口24a~24cのいずれもが配置されておらず)、これら筒状部22と垂線PLとの交点に最も近い位置には、第3ガス噴出口24cが配置されている。これにより、当該垂線PLに最も近い位置に配置されたガス噴出口24は、第1ガス噴出口24a、第2ガス噴出口24bおよび第3ガス噴出口24cのうちの最も開口面積が小さい第3ガス噴出口24cとされている。
したがって、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Dとすることにより、上述した実施の形態2におけるディスク型ガス発生器1Bとした場合と同様に、その作動時において上部側シェル20の所定部位(特に、上述した領域Rのうちのフランジ部23の最大外形位置Aに対応する部分)に応力集中が発生することが飛躍的に軽減できることになる。そのため、当該構成を採用することにより、上部側シェル20の厚みを相対的に薄くすることが可能になり、結果として小型軽量化を実現することができる。
ここで、本実施の形態におけるディスク型ガス発生器1Dは、上述したように、標準的な大きさよりも大きい大型のエアバッグを膨張および展開させるタイプのものであり、上部側シェル20の筒状部22の外径は、たとえば70.0[mm]に設計され、当該筒状部22の厚み(板厚)は、たとえば1.3[mm]に設計される。
この場合においては、図14を参照して、第1ガス噴出口24aの長さL1および幅W1は、たとえばそれぞれ3.7[mm]および2.0[mm]に設定され、第2ガス噴出口24bの長さL2および幅W2は、たとえばそれぞれ3.1[mm]および1.6[mm]に設定され、第3ガス噴出口24cの長さL3および幅W3は、たとえばそれぞれ2.5[mm]および1.4[mm]に設定される。
なお、当該構成を採用した場合にも、1組の第1ガス噴出口群X1と2組の第3ガス噴出口群Z2,Z4とに含まれる合計で12個のガス噴出口を一度の打抜き処理にて形成するとともに、2組の第3ガス噴出口群Z1,Z3と1組の第1ガス噴出口群X2とに含まれる合計で12個のガス噴出口を一度の打抜き処理にて形成し、さらには2組の第2ガス噴出口群Y1,Y2に含まれる合計で8個のガス噴出口を一度の打抜き処理にて形成することにより、合計で3回の打抜き処理にて複数個のガス噴出口24のすべてを形成することが可能になり、プレス機の制約を加味した上での製造コストの最小化が実現できることになる。
(他の実施の形態等)
上述した本発明の実施の形態1ないし4においては、上部側シェルに複数個のガス噴出口およびフランジ部を設ける構成とした場合を例示して説明を行なったが、下部側シェルにこれらを設けることとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1ないし4においては、ハウジングを上部側シェルおよび下部側シェルからなる一対のシェル部材にて構成した場合を例示して説明を行なったが、これを3つ以上のシェル部材にて構成することも当然に可能である。
また、上述した本発明の実施の形態1ないし4においては、互いに異なる開口面積を有するものが含まれた複数個のガス噴出口として、3種類のガス噴出口をハウジングに設けてなる場合を例示して説明を行なったが、これを2種類のガス噴出口にて構成することとしてもよいし、4種類以上のガス噴出口にて構成することとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1ないし4においては、所定の規則的なルールに従って複数個のガス噴出口をハウジングに設けた場合を例示して説明を行なったが、ハウジングに設けられる複数個のガス噴出口は、必ずしも規則的なルールに従って設けられている必要はない。
さらには、上述した本発明の実施の形態1ないし4において開示したガス噴出口の形状、大きさ、レイアウト等は、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々変更が可能である。
このように、今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。