以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態は、自動車のステアリングホイール等に搭載されるエアバッグ装置に組み込まれるディスク型ガス発生器に本発明を適用したものである。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるガス発生器の概略図であり、図2は、図1に示すガス発生器の図1中に示す領域IIの要部拡大模式断面図である。図3は、図1に示すガス発生器の下部側シェルの平面図であり、図4は、当該下部側シェルの図3中に示すIV−IV線に沿った断面図である。また、図5は、図1に示すガス発生器のカップ状部材の斜視図である。まず、これら図1ないし図5を参照して、本発明の実施の形態1におけるガス発生器1Aの構造について説明する。
図1に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Aは、軸方向の両端が閉塞された短尺略円筒状のハウジングを有しており、このハウジングの内部に構成部品としての保持部30、点火器40、カップ状部材50、伝火薬56、ガス発生剤61、第1宛がい部材70、第2宛がい部材80、フィルタ90等が収容されることで構成されている。また、ハウジングの内部には、上述した構成部品のうちのガス発生剤61が主として収容された燃焼室60が位置している。
短尺略円筒状のハウジングは、下部側シェル10と上部側シェル20とを含んでいる。下部側シェル10および上部側シェル20のそれぞれは、金属製の部材をプレス加工することによって形成されたプレス成形品からなる。
下部側シェル10および上部側シェル20は、それぞれが有底略円筒状に形成されており、これらの開口面同士が向き合うように組み合わされて接合されることによってハウジングが構成されている。下部側シェル10は、底板部11と周壁部12とを有しており、上部側シェル20は、天板部21と周壁部22とを有している。これにより、ハウジングの軸方向の端部は、天板部21と底板部11とによって閉塞されている。なお、下部側シェル10と上部側シェル20との接合には、電子ビーム溶接やレーザー溶接、摩擦圧接等が好適に利用できる。
図1、図3および図4に示すように、下部側シェル10の底板部11の中央部には、天板部21側に向かって突出する突状筒部13が設けられており、これにより下部側シェル10の底板部11の中央部には、窪み部14が形成されている。突状筒部13は、上述した保持部30を介して点火器40が固定される部位であり、窪み部14は、保持部30に雌型コネクタ部34を設けるためのスペースとなる部位である。
突状筒部13は、有底略円筒状に形成されており、その天板部21側に位置する軸方向端部には、平面視円形状の開口部15が設けられている。当該開口部15は、点火器40の一対の端子ピン42が挿通される部位である。また、突状筒部13の天板部21側に位置する軸方向端部には、上述した開口部15を取り囲むように天板部21側に向けて複数の凸部13aが突設されている。
下部側シェル10は、上述したように金属製の部材をプレス加工することによって製作されている。具体的には、下部側シェル10は、たとえば上型および下型からなる一対の金型を用いて一枚の金属製の板状部材を上下方向からプレスすることにより、図示する如くの形状に成形されることで製作される。
ここで、下部側シェル10を構成する金属製の板状部材としては、たとえばプレス前の板厚が概ね1.5mm以上3.0mm以下のステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等からなる金属板が利用され、好適には440MPa以上780MPa以下の引張応力が印加された場合にも破断等の破損が生じないいわゆる高張力鋼板が好適に利用される。なお、プレス後の板厚としては、その最も薄肉の部分の厚みが概ね1.0mm以上とされることが好ましい。また、プレス加工としては、熱間鍛造で行なわれてもよいし冷間鍛造で行なわれてもよいが、寸法精度の向上の観点から、より好適には冷間鍛造で行われる。
上部側シェル20は、上述したように金属製の部材をプレス加工することによって製作されている。具体的には、上部側シェル20は、たとえば上型および下型からなる一対の金型を用いて一枚の金属製の板状部材を上下方向からプレスすることにより、図示する如くの形状に成形されることで製作される。ここで、上部側シェル20を構成する金属製の板状部材としては、上述した下部側シェル10の場合と同様に、ステンレス鋼や鉄鋼、アルミニウム合金、ステンレス合金等からなる金属板が利用可能である。
図1に示すように、点火器40は、火炎を発生させるための点火装置であり、点火部41と、上述した一対の端子ピン42とを備えている。点火部41は、その内部に、作動時において着火して燃焼することで火炎を発生する点火薬と、この点火薬を着火させるための抵抗体とを含んでいる。一対の端子ピン42は、点火薬を着火させるために点火部41に接続されている。
より詳細には、点火部41は、カップ状に形成されたスクイブカップと、当該スクイブカップの開口端を閉塞し、一対の端子ピン42が挿通されてこれを保持する基部とを備えており、スクイブカップ内に挿入された一対の端子ピン42の先端を連結するように抵抗体(ブリッジワイヤ)が取付けられ、この抵抗体を取り囲むようにまたはこの抵抗体に近接するようにスクイブカップ内に点火薬が装填された構成を有している。
ここで、抵抗体としては一般にニクロム線等が利用され、点火薬としては一般にZPP(ジルコニウム・過塩素酸カリウム)、ZWPP(ジルコニウム・タングステン・過塩素酸カリウム)、鉛トリシネート等が利用される。なお、上述したスクイブカップおよび基部は、一般に金属製またはプラスチック製である。
衝突を検知した際には、端子ピン42を介して抵抗体に所定量の電流が流れる。抵抗体に所定量の電流が流れることにより、抵抗体においてジュール熱が発生し、点火薬が燃焼を開始する。燃焼により生じた高温の火炎は、点火薬を収納しているスクイブカップを破裂させる。抵抗体に電流が流れてから点火器40が作動するまでの時間は、抵抗体にニクロム線を利用した場合には一般に2ミリ秒以下である。
点火器40は、突状筒部13に設けられた開口部15に端子ピン42が挿通するように下部側シェル10の内側から挿入された状態で底板部11に取付けられている。具体的には、底板部11に設けられた突状筒部13の周囲には、樹脂成形部からなる保持部30が設けられており、点火器40は、当該保持部30によって保持されることにより、底板部11に固定されている。
ここで、突状筒部13に設けられた開口部15の大きさは、点火器40の最大外形部分である点火部41の外形よりも小さく構成されている。このように構成することにより、万が一保持部30に予期せぬ破損が生じた場合であっても、後述する燃焼室60の内圧の上昇を受けて点火器40が当該開口部15を通過してハウジングの外部に飛び出てしまうことが防止でき、ガス発生器1Aの安全な動作が確保されることになる。
保持部30は、型を用いた射出成形(より特定的にはインサート成形)によって形成されるものであり、下部側シェル10の底板部11に設けられた開口部15を経由して底板部11の内面の一部から外面の一部にまで達するように絶縁性の流動性樹脂材料を底板部11に付着させてこれを固化させることによって形成されている。
点火器40は、保持部30の成形の際に、開口部15に端子ピン42が挿通するように下部側シェル10の内側から挿入された状態とされ、この状態において点火器40と下部側シェル10との間の空間を充填するように上述した流動性樹脂材料が流し込まれることにより、保持部30を介して底板部11に固定される。
射出成形によって形成される保持部30の原料としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料が好適に選択されて利用される。その場合、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂に限られず、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂を利用することも可能である。これら熱可塑性樹脂を原材料として選択する場合には、成形後において保持部30の機械的強度を確保するためにこれら樹脂材料にガラス繊維等をフィラーとして含有させることが好ましい。しかしながら、熱可塑性樹脂のみで十分な機械的強度が確保できる場合には、上述の如くのフィラーを添加する必要はない。
保持部30は、下部側シェル10の底板部11の内面の一部を覆う内側被覆部31と、下部側シェル10の底板部11の外面の一部を覆う外側被覆部32と、下部側シェル10の底板部11に設けられた開口部15内に位置し、上記内側被覆部31および外側被覆部32にそれぞれ連続する連結部33とを有している。
保持部30は、内側被覆部31、外側被覆部32および連結部33のそれぞれの底板部11側の表面において底板部11に固着している。また、保持部30は、点火器40の点火部41の下方端寄りの部分の側面および下面と、点火器40の端子ピン42の上方端寄りの部分の表面とにそれぞれ固着している。これにより、開口部15は、端子ピン42と保持部30とによって完全に埋め込まれた状態となり、当該部分におけるシール性が確保されることで燃焼室60の気密性が確保されている。
なお、保持部30の内側被覆部31は、底板部11に設けられた突状筒部13の軸方向端部のみを覆うように設けられており、これにより突状筒部13のハウジングの内部に位置する外周面は、保持部30によって覆われずに露出した状態となっている。
保持部30の外側被覆部32の外部に面する部分には、雌型コネクタ部34が形成されている。この雌型コネクタ部34は、点火器40とコントロールユニット(不図示)とを結線するためのハーネスの雄型コネクタ(図示せず)を受け入れるための部位であり、下部側シェル10の底板部11に設けられた窪み部14内に位置している。この雌型コネクタ部34内には、点火器40の端子ピン42の下方端寄りの部分が露出して配置されている。雌型コネクタ部34には、雄型コネクタが挿し込まれ、これによりハーネスの芯線と端子ピン42との電気的導通が実現される。
ここで、保持部30は、上述した突状筒部13に設けられた複数の凸部13aを覆うように形成されている。具体的には、複数の凸部13aは、保持部30の内側被覆部31によって覆われることにより、保持部30の内部に埋設された状態とされている。これにより、射出成形後において、底板部11に対して保持部30が相対的に回転してしまうことが未然に防止できることになり、上述した突状筒部13に設けられた複数の凸部13aは、回転防止用凸部として機能することになる。
なお、回転防止用凸部としての複数の凸部13aが設けられる位置は、上記に限定されるものではなく、保持部30によって覆われることとなる底板部11の表面であれば、どの位置に設けられていてもよい。また、回転防止用凸部としての凸部13aは、必ずしも複数設けられている必要はなく、1つであってもよい。
また、保持部30によって覆われることとなる部分の底板部11の表面の所定位置に予め接着剤層が設けられてなる下部側シェル10を用いて上述した射出成形を行なうこととしてもよい。当該接着剤層は、上記底板部11の所定位置に予め接着剤を塗布してこれを硬化させておくことにより、その形成が可能である。
このようにすれば、底板部11と保持部30との間に硬化した接着剤層が位置することになるため、樹脂成形部からなる保持部30をより強固に底板部11に固着させることが可能になる。したがって、射出成形後において、底板部11に対して保持部30が相対的に回転してしまうことが未然に防止可能となる。また、底板部11に設けられた開口部15を囲うように上記接着剤層を周方向に沿って環状に設けることとすれば、当該部分においてより高いシール性を確保することも可能になる。
ここで、底板部11に予め塗布しておく接着剤としては、硬化後において耐熱性や耐久性、耐腐食性等に優れた樹脂材料を原料として含むものが好適に利用され、たとえばシアノアクリレート系樹脂やシリコーン系樹脂を原料として含むものが特に好適に利用される。なお、上述の樹脂材料以外にも、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂、アクリロニトリルスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネイト系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタラート系樹脂、ポリエチレンテレフタラート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンスルファイド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、液晶ポリマー、スチレン系ゴム、オレフィン系ゴム等を含むものが、上述した接着剤として利用可能である。
また、接着剤を塗布する位置は特に限定されるものではないが、たとえば底板部11の突状筒部13が形成された部分における外面(すなわち、保持部30の外側被覆部32によって覆われる部分の底板部11の表面)の全面あるいはその一部のみとしたり、底板部11の突状筒部13が形成された部分における内面(すなわち、保持部30の内側被覆部31によって覆われる部分の底板部11の表面)の全面あるいはその一部のみとしたりすることができ、さらには保持部30によって覆われる部分の底板部11の表面の全面とすることもできる。
なお、点火器40として、点火部41を構成するスクイブカップおよび基部が、金属製の部材にて構成されたものを使用する場合には、保持部30によって覆われることとなる部分の点火器40の表面の所定位置に予め接着剤を塗布することで接着剤層を設けておいてもよい。このように構成すれば、上述した底板部11に接着剤層を予め設けた場合と同様に、点火器40を保持部30により強固に固着させることが可能になり、当該部分においてより高いシール性を確保することが可能になる。
また、本実施の形態においては、保持部30の成形に際して、保持部30が点火器40と下部側シェル10と一体化されるように構成した場合を例示したが、保持部30の成形に際して、保持部30が下部側シェル10とのみ一体化されるようにし、成形後の保持部30に対して点火器40がたとえば嵌め込み等によって組付けられるように構成してもよい。その場合には、保持部30が下部側シェル10に対してのみ固着することになるため、保持部30と点火器40との間のシール性がこれのみでは確保されないことになるが、当該部分にOリングを配置する等、適宜のシール処理を施せば、十分なシール性を確保することが可能になる。
底板部11には、突状筒部13、保持部30および点火器40を覆うようにカップ状部材50が組付けられている。カップ状部材50は、底板部11側の端部が開口した略円筒形状を有しており、内部に伝火薬56が収容された伝火室55を含んでいる。カップ状部材50は、その内部に設けられた伝火室55が点火器40の点火部41に面することとなるように、ガス発生剤61が収容された燃焼室60内に向けて突出して位置するように配置されている。
図1、図2および図5に示すように、カップ状部材50は、上述した伝火室55を規定する頂壁部51および側壁部52と、側壁部52の開口端側の部分から径方向外側に向けて延設された第1延設部53とを有している。第1延設部53は、下部側シェル10の底板部11の内底面に沿って延びるように形成されている。具体的には、第1延設部53は、突状筒部13が設けられた部分およびその近傍における底板部11の内底面の形状に沿うように曲成された形状を有しており、その径方向外側の部分にフランジ状に延出する先端部54を含んでいる。
カップ状部材50は、頂壁部51および側壁部52のいずれにも開口を有しておらず、その内部に設けられた伝火室55を取り囲んでいる。このカップ状部材50は、点火器40が作動することによって伝火薬56が着火された場合に伝火室55内の圧力上昇や発生した熱の伝導に伴って破裂または溶融するものであり、その機械的強度は比較的低いものが使用される。
そのため、カップ状部材50としては、アルミニウム、アルミニウム合金等の金属製の部材や、エポキシ樹脂等に代表される熱硬化性樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂(たとえばナイロン6やナイロン66等)、ポリプロピレンスルフィド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂等に代表される熱可塑性樹脂等の樹脂製の部材からなるものが好適に利用される。
なお、カップ状部材50としては、このようなものの他にも、鉄や銅等に代表されるような機械的強度の高い金属製の部材からなり、その側壁部52に開口を有し、当該開口を閉塞するようにシールテープが貼着されたもの等を利用することも可能である。
ここで、本実施の形態においては、図示するようにカップ状部材50が主として第1宛がい部材70によって底板部11に固定されることになるが、その詳細な組付構造については、後述することとする。
伝火室55に充填された伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火され、燃焼することによって熱粒子を発生する。伝火薬56としては、ガス発生剤61を確実に燃焼開始させることができるものであることが必要であり、一般的には、B/KNO3等に代表される金属粉/酸化剤からなる組成物などが用いられる。伝火薬56は、粉状のものや、バインダによって所定の形状に成型されたもの等が利用される。バインダによって成型された伝火薬56の形状としては、たとえば顆粒状、円柱状、シート状、球状、単孔円筒状、多孔円筒状、タブレット状など種々の形状がある。
下部側シェル10および上部側シェル20からなるハウジングの内部の空間のうち、上述のカップ状部材50が配置された部分を取り巻く空間には、ガス発生剤61が収容される燃焼室60が位置している。具体的には、上述したように、カップ状部材50は、ハウジングの内部に形成された燃焼室60内に突出して配置されており、このカップ状部材50の側壁部52の外表面に面する部分に設けられた空間が燃焼室60として構成されている。
また、燃焼室60をハウジングの径方向に取り巻く空間には、ハウジングの内周に沿ってフィルタ90が配置されている。フィルタ90は、円筒状の形状を有しており、その中心軸がハウジングの軸方向と実質的に合致するように配置されることにより、ガス発生剤61が収容された燃焼室60を径方向において取り囲んでいる。
ガス発生剤61は、点火器40が作動することによって生じた熱粒子によって着火され、燃焼することによってガスを発生させる薬剤である。ガス発生剤61としては、非アジド系ガス発生剤を用いることが好ましく、一般に燃料と酸化剤と添加剤とを含む成形体としてガス発生剤61が形成される。燃料としては、たとえばトリアゾール誘導体、テトラゾール誘導体、グアニジン誘導体、アゾジカルボンアミド誘導体、ヒドラジン誘導体等またはこれらの組み合わせが利用される。具体的には、たとえばニトログアニジンや硝酸グアニジン、シアノグアニジン、5−アミノテトラゾール等が好適に利用される。また、酸化剤としては、たとえば塩基性硝酸銅等の塩基性硝酸塩や、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、アンモニアから選ばれたカチオンを含む硝酸塩等が利用される。硝酸塩としては、たとえば硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が好適に利用される。また、添加剤としては、バインダやスラグ形成剤、燃焼調整剤等が挙げられる。バインダとしては、たとえばカルボキシメチルセルロースの金属塩、ステアリン酸塩等の有機バインダや、合成ヒドロキシタルサイト、酸性白土等の無機バインダが好適に利用可能である。スラグ形成剤としては窒化珪素、シリカ、酸性白土等が好適に利用可能である。また、燃焼調整剤としては、金属酸化物、フェロシリコン、活性炭、グラファイト等が好適に利用可能である。
ガス発生剤61の成形体の形状には、顆粒状、ペレット状、円柱状等の粒状のもの、ディスク状のものなど様々な形状のものがある。また、円柱状のものでは、成形体内部に貫通孔を有する有孔状(たとえば単孔筒形状や多孔筒形状等)の成形体も利用される。これらの形状は、ガス発生器1Aが組み込まれるエアバッグ装置の仕様に応じて適宜選択されることが好ましく、たとえばガス発生剤61の燃焼時においてガスの生成速度が時間的に変化する形状を選択するなど、仕様に応じた最適な形状を選択することが好ましい。また、ガス発生剤61の形状の他にもガス発生剤61の線燃焼速度、圧力指数などを考慮に入れて成形体のサイズや充填量を適宜選択することが好ましい。
フィルタ90は、たとえばステンレス鋼や鉄鋼等の金属線材を巻き回して焼結したものや、金属線材を編み込んだ網材をプレス加工することによって押し固めたもの、あるいは孔あき金属板を巻き回したもの等が利用される。ここで、網材としては、具体的にはメリヤス編みの金網や平織りの金網、クリンプ織りの金属線材の集合体等が利用される。また、孔あき金属板としては、たとえば、金属板に千鳥状に切れ目を入れるとともにこれを押し広げて孔を形成して網目状に加工したエキスパンドメタルや、金属板に孔を穿つとともにその際に孔の周縁に生じるバリを潰すことでこれを平坦化したフックメタル等が利用される。この場合において、形成される孔の大きさや形状は、必要に応じて適宜変更が可能であり、同一金属板上において異なる大きさや形状の孔が含まれていてもよい。なお、金属板としては、たとえば鋼板(マイルドスチール)やステンレス鋼板が好適に利用でき、またアルミニウム、銅、チタン、ニッケルまたはこれらの合金等の非鉄金属板を利用することもできる。
フィルタ90は、燃焼室60にて発生したガスがこのフィルタ90中を通過する際に、ガスが有する高温の熱を奪い取ることによってガスを冷却する冷却手段として機能するとともに、ガス中に含まれる残渣(スラグ)等を除去する除去手段としても機能する。したがって、ガスを十分に冷却し、かつ残渣が外部に放出されないようにするためには、燃焼室60内にて発生したガスが確実にフィルタ90中を通過するようにすることが必要である。
フィルタ90に対面する部分の上部側シェル20の周壁部22には、ガス噴出口23が複数設けられている。このガス噴出口23は、フィルタ90を通過したガスをハウジングの外部に導出するためのものである。上部側シェル20の周壁部22のフィルタ90側に位置する主面には、上記ガス噴出口23を閉塞するようにシールテープ24が貼付されている。このシールテープ24としては、片面に粘着部材が塗布されたアルミニウム箔等が利用される。これにより、燃焼室60の気密性が確保されている。
燃焼室60のうち、底板部11側に位置する端部近傍には、第1宛がい部材70が配置されている。第1宛がい部材70は、環状の形状を有しており、フィルタ90と底板部11との境目部分を覆うように、これらフィルタ90と底板部11とに実質的に宛がわれて配置されている。これにより、第1宛がい部材70は、燃焼室60の上記端部近傍において、底板部11とガス発生剤61との間に位置している。
第1宛がい部材70は、フィルタ90の底板部11側に位置する軸方向端部の内周面に当接するように立設された当接部72と、当該当接部72から径方向内側に向けて延設された第2延設部71とを有している。第2延設部71は、下部側シェル10の底板部11の内底面に沿って延びるように形成されている。具体的には、第2延設部71は、突状筒部13が設けられた部分を含む底板部11の内底面の形状に沿うように折り曲げられた形状を有しており、その径方向内側の部分に立設された先端部73を含んでいる。
当該第1宛がい部材70は、作動時において、燃焼室60にて発生したガスが、フィルタ90の下端と底板部11との間の隙間からフィルタ90の内部を経由することなく流出してしまうことを防止するための流出防止手段である。第1宛がい部材70は、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
燃焼室60のうち、天板部21側に位置する端部には、第2宛がい部材80が配置されている。第2宛がい部材80は、略円盤状の形状を有しており、フィルタ90と天板部21との境目部分を覆うように、これらフィルタ90と天板部21とに宛がわれて配置されている。これにより、第2宛がい部材80は、燃焼室60の上記端部近傍において、天板部21とガス発生剤61との間に位置している。
第2宛がい部材80は、天板部21に当接する底部81と、当該底部81の周縁から立設された当接部82とを有している。当接部82は、フィルタ90の天板部21側に位置する軸方向端部の内周面に当接している。
当該第2宛がい部材80は、作動時において、燃焼室60にて発生したガスが、フィルタ90の上端と天板部21との間の隙間からフィルタ90の内部を経由することなく流出してしまうことを防止するための流出防止手段である。第2宛がい部材80は、第1宛がい部材70と同様に、たとえば金属製の板状部材をプレス加工等することによって形成されたものであり、好適には普通鋼や特殊鋼等の鋼板(たとえば、冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等)からなる部材にて構成される。
この第2宛がい部材80の内部には、燃焼室60に収容されたガス発生剤61に接触するように環状形状のクッション材85が配置されている。これにより、クッション材85は、燃焼室60の天板部21側の部分において天板部21とガス発生剤61との間に位置することになり、ガス発生剤61を底板部11側に向けて押圧している。このクッション材85は、成形体からなるガス発生剤61が振動等によって粉砕されてしまうことを防止する目的で設けられるものであり、好適にはセラミックスファイバの成形体やロックウール、発泡樹脂(たとえば発泡シリコーン等)からなる部材にて構成される。
上述したように、本実施の形態においては、カップ状部材50が主として第1宛がい部材70によって底板部11に固定されている。以下、その組付構造について詳細に説明する。
図1および図2に示すように、カップ状部材50に設けられた第1延設部53は、側壁部52の開口端側から断面視略S字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部54が底板部11の突状筒部13が形成されていない部分にまで達している。一方、第1宛がい部材70に設けられた第2延設部71は、当接部72の下端側から断面視略L字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部73が底板部11の突状筒部13が形成された部分(より詳細には、突状筒部13のハウジング内部に位置する外周面)にまで達している。
第1延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71との間に配置されており、これによりハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71とによって挟み込まれて保持されている。そのため、カップ状部材50は、その第1延設部53の先端部54が第1宛がい部材70の第2延設部71によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。
ここで、第1宛がい部材70は、その上方に配置されたガス発生剤61、クッション材85、第2宛がい部材80および天板部21によって底板部11側に向けて押し付けられた状態にあるため、当該第1宛がい部材70もハウジングの内部において固定されることになり、カップ状部材50の固定にかしめ固定や圧入固定を利用せずとも、カップ状部材50が底板部11から脱落することが防止される。したがって、カップ状部材50を底板部11に対して確実に固定することが可能になる。
なお、本実施の形態においては、カップ状部材50の側壁部52の開口端側の部分が、保持部30のハウジングの内部に位置する部分である内側被覆部31に外挿されることで当該保持部30に対して圧入固定されている。当該圧入固定は、ハウジングに対するカップ状部材50の組付けの際に、その組付作業がより容易に行えることとなるようにカップ状部材50を仮固定するためのものであり、組付強度を厳格に管理する必要のある上述した従来行なわれていた圧入固定とは異なるものである。
図6および図7は、本実施の形態におけるガス発生器の組立手順を説明するための模式断面図である。次に、これら図6および図7を参照して、本実施の形態におけるガス発生器1Aの組立手順について説明する。
ガス発生器1Aの組立に際しては、プレス成形することで製造された下部側シェル10と予め製造された点火器40とを射出成形用の型にセットし、この状態において射出成形を行なうことで下部側シェル10の底板部11に樹脂成形部としての保持部30を形成し、これにより点火器40を下部側シェル10の突状筒部13に固定する。
次に、図6に示すように、予めプレス成形することで製造されたカップ状部材50の内部に所定量の伝火薬56を充填した状態とし、点火器40が固定された状態にある下部側シェル10の突状筒部13近傍の部分を、カップ状部材50の開口端側から当該カップ状部材50の内部に向けて挿入する。ここで、当該挿入作業は、伝火薬56が零れ落ちることを防止するために、カップ状部材50および下部側シェル10のいずれもがその天地が逆とされた状態で行なう。
その際、カップ状部材50の側壁部52の開口端側の部分が、保持部30の内側被覆部31に圧入されるようにする。これにより、カップ状部材50は、保持部30によって軽保持されることで下部側シェル10に対して仮固定された状態となる。
次に、図7に示すように、カップ状部材50が軽保持された状態にある下部側シェル10の天地が逆にされ、この状態において下部側シェル10上にフィルタ90を載置し、さらにその後に、当該下部側シェル10とフィルタ90とによって規定される空間に第1宛がい部材70を挿入する。
これにより、カップ状部材50の第1延設部53の先端部54上に第1宛がい部材70の第2延設部71が配置されることになり、当該第1延設部53の先端部54が、ハウジングの軸方向に沿って第2延設部71と底板部11とによって挟まれた状態となる。
ここで、上述したように、カップ状部材50を保持部30に圧入することで軽保持させておくことにより、下部側シェル10の天地を逆にする際にカップ状部材50が脱落することが未然に防止可能となり、その作業がより容易に行なえるようになる。
次に、下部側シェル10とフィルタ90とによって規定される空間であってかつ第1宛がい部材70上に位置する空間にガス発生剤61を所定量充填し、その後に、クッション材85が嵌め込まれた第2宛がい部材80を当該ガス発生剤61上に配置し、さらにその後に、下部側シェル10を覆うように上部側シェル20を組付けてこれを下部側シェル10に接合することにより、ガス発生器1Aの製造が完了する。
このように、本実施の形態におけるガス発生器1Aとすることにより、カップ状部材50が下部側シェル10に対して確実に固定されることになるとともに、簡便な組付作業で容易にカップ状部材50を下部側シェル10に対して固定することが可能になる。
次に、図1を参照して、上述した本実施の形態におけるガス発生器1Aの動作について説明する。
本実施の形態におけるガス発生器1Aが搭載された車両が衝突した場合には、車両に別途設けられた衝突検知手段によって衝突が検知され、これに基づいて車両に別途設けられたコントロールユニットからの通電によって点火器40が作動する。伝火室55に収容された伝火薬56は、点火器40が作動することによって生じた火炎によって点火されて燃焼し、多量の熱粒子を発生させる。この伝火薬56の燃焼によってカップ状部材50は破裂または溶融し、上述の熱粒子が燃焼室60へと流れ込む。
流れ込んだ熱粒子により、燃焼室60に収容されたガス発生剤61が着火されて燃焼し、多量のガスを発生させる。燃焼室60にて発生したガスは、フィルタ90の内部を通過し、その際、フィルタ90によって熱が奪われて冷却されるとともに、ガス中に含まれるスラグがフィルタ90によって除去されてハウジングの外周縁部に流れ込む。
ハウジングの内圧の上昇に伴い、上部側シェル20のガス噴出口23を閉塞していたシールテープ24による封止が破られ、ガス噴出口23を介してガスがハウジングの外部へと噴出される。噴出されたガスは、ガス発生器1Aに隣接して設けられたエアバッグの内部に導入され、エアバッグを膨張および展開する。
以上において説明したように、本実施の形態におけるガス発生器1Aとすることにより、かしめ固定を利用せずとも、伝火薬56が収容されたカップ状部材50をハウジングに対して確実にかつ容易に組付けることが可能になる。そのため、かしめ用の鍔部をハウジングに設けたり、当該かしめ固定を行なうための作業が別途必要になったりすることがなく、安価にガス発生器1Aを製造することができる。
また、本実施の形態におけるガス発生器1Aとすることにより、厳格にその組付強度の管理が必要な圧入固定を利用せずとも、伝火薬56が収容されたカップ状部材50をハウジングに対して確実にかつ容易に組付けることが可能になる。そのため、厳格な組付強度の管理を行なう必要が生じたり、カップ状部材50として機械的強度が低いエンハンサカップを利用した場合の座屈等の問題が発生したりすることもなく、安価にガス発生器1Aを製造することができる。
ここで、本実施の形態におけるガス発生器1Aとした場合には、図2に示すように、第1宛がい部材70の第2延設部71と下部側シェル10の底板部11との間に、カップ状部材50の第1延設部53の先端部54が介在することとなるため、当該第1延設部53の径方向に沿った長さを適宜調節することにより、第2延設部71と底板部11との間に、第1延設部53が位置しない空間62が形成されることになる。すなわち、本実施の形態におけるガス発生器1Aとした場合には、燃焼室60の底板部11側の端部に、空気層からなる空間62が形成可能になる。
当該空間62は、オートイグニッション動作時において、断熱層として機能するものとなるため、安全性の面において重要な役割を果たし得るものとなる。以下、この点について詳細に説明する。
オートイグニッション動作とは、点火器が作動することなくガス発生剤が燃焼していしまう、本来予定されていない動作のことを意味する。すなわち、ガス発生器が組み込まれたエアバッグ装置が装備された車両等において火災が発生した場合等には、ガス発生器が外部から加熱されることにより、ガス発生器の内部の温度が数百度程度にまで昇温されてしまうケースがある。その場合において、ガス発生剤や伝火薬の温度がその自然発火温度に達してしまうと、点火器が作動することなくガス発生剤が燃焼を開始してしまうことになり、このような動作がオートイグニッション動作である。
当該オートイグニッション動作が誘発された場合には、ガス発生器自体が既に外部からの加熱によって高温の状態にあるため、ガス発生剤の燃焼によりハウジングの内部の圧力が上述した点火器の作動時において必要になる圧力よりもはるかに高い圧力にまで上昇してしまうことになり、これによりハウジングに破損が生じてしまうことが懸念される。ハウジングにこのような破損が生じた場合には、ハウジングの破片や内部構成部品が周囲に飛散してしまうことになり、安全性の面において大きな問題が生じてしまうことになる。
そのため、オートイグニッション動作が誘発された場合にも、当該オートイグニッション動作が安全に実行されるようにガス発生器を構成することが重要となる。その一つの手法として、車両等の火災時においてガス発生剤よりも先に伝火薬が比較的低温のうちに自然発火して燃焼が開始するようにガス発生器を構成することが考えられる。このように構成すれば、車両等の火災時において、問題となる高温の状態に達するまでにオートイグニッション動作が開始することになり、ハウジングの破損を未然に防止することが可能になる。
本実施の形態におけるガス発生器1Aにあっては、上述したように、燃焼室60の底板部11側の端部に、空気層からなる空間62が形成されることになるため、当該部分が断熱層としての機能を果たすことになり、外部の熱がガス発生剤61に伝熱されることが抑制されることになる。その一方で、カップ状部材50については、特にこれを金属製の部材にて構成した場合には、これが下部側シェル10の底板部11に接触した状態にあるため、外部の熱は当該カップ状部材50を介して伝火薬56により素早く伝熱されるようになる。
したがって、当該構成を採用することにより、車両等の火災時においてガス発生剤61よりも伝火薬56に外部の熱が伝熱され易くなるため、ガス発生剤61よりも先に伝火薬56が比較的低温のうちに自然発火して燃焼が開始するようになる。そのため、オートイグニッション動作が誘発された場合にも、より安全に当該動作が実行されるようになり、安全性の面において優れたガス発生器1Aとすることができる。
なお、本実施の形態においては、カップ状部材50の先端部54がフィルタ90の内周面にまで達しないように構成することで上記空間62が形成されるように構成した場合を例示したが、当該空間62が形成されないように、カップ状部材50の先端部54がフィルタ90の内周面にまで達するように構成してもよい。そのように構成した場合には、上記空間62による断熱機能が得られないことになるが、たとえばカップ状部材50を樹脂製の部材にて構成することとすれば、当該カップ状部材50自体が断熱材としての機能を発揮することになり、安全性の面において向上が図られたガス発生器とすることができる。
<第1変形例>
図8は、本発明の実施の形態1に基づいた第1変形例に係るガス発生器の要部拡大模式断面図である。次に、この図8を参照して、本第1変形例に係るガス発生器1Bについて説明する。
図8に示すように、本第1変形例に係るガス発生器1Bは、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと比較した場合に、第1宛がい部材70の形状においてのみ相違している。
具体的には、ガス発生器1Bにおいては、第1宛がい部材70の第2延設部71が、上述した実施の形態1における場合に比べてさらに径方向内側に向けて延設されている。これにより、第2延設部71は、底板部11の突状筒部13の外周面に対向して位置する先端部73と、当該先端部73よりもさらに径方向内側の部分にまで達するように曲成された先端曲成部74とを有している。当該先端曲成部74は、底板部11の突状筒部13の軸方向端部近傍の位置にまで達しており、当該部分においても、カップ状部材50の第1延設部53が、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71とによって挟まれた状態となっている。
したがって、本第1変形例に係るガス発生器1Bとした場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
<第2変形例>
図9は、本発明の実施の形態1に基づいた第2変形例に係るガス発生器の要部拡大模式断面図である。次に、この図9を参照して、本第2変形例に係るガス発生器1Cについて説明する。
図9に示すように、本第2変形例に係るガス発生器1Cは、上述した第1変形例に係るガス発生器1Bと比較した場合に、カップ状部材50の形状においてのみ相違している。
具体的には、ガス発生器1Cにおいては、カップ状部材50の第1延設部53が、上述した第1変形例の場合に比べて径方向において短く構成されており、底板部11の突状筒部13の外周面の上端寄りの位置にまでしか達していない。しかしながら、この場合にも、第1延設部53は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11の突状筒部13と第1宛がい部材70の先端曲成部74との間に配置されることになるため、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71とによって挟み込まれて保持された状態となる。
したがって、本第2変形例に係るガス発生器1Cとした場合にも、上述した第1変形例に係るガス発生器1Bとした場合と、同様の効果を得ることができる。
ここで、本第2変形例に係るガス発生器1Cとした場合には、突状筒部13が形成されていない部分の底板部11と、第1宛がい部材70の第2延設部71とが当接した状態となるため、これらの間には、上述した空間62(図2および図8等参照)が形成されないことになる。しかしながら、突状筒部13が形成された部分の底板部11と第1宛がい部材70の先端部73との間に空間63が形成されることになるため、当該空間63が断熱層として機能することになり、オートイグニッション動作時における安全性の向上も図られることになる。
<第3変形例>
図10は、本発明の実施の形態1に基づいた第3変形例に係るガス発生器の要部拡大模式断面図である。次に、この図10を参照して、本第3変形例に係るガス発生器1Dについて説明する。
図10に示すように、本第3変形例に係るガス発生器1Dは、上述した第2変形例に係るガス発生器1Cと比較した場合に、第1宛がい部材70の先端曲成部74がカップ状部材50の第1延設部53に当接していない点においてのみ相違している。すなわち、本第3変形例においては、先端曲成部74と第1延設部53との間に隙間が形成されている。
しかしながら、この場合にも、第1延設部53は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11の突状筒部13と第1宛がい部材70の先端曲成部74との間に配置されることになるため、これによりカップ状部材50のハウジングの軸方向に沿った移動が先端曲成部74と突状筒部13とによって規制されることになる。したがって、当該隙間の大きさを適宜調節しておくことにより、カップ状部材50を底板部11に対して完全に固定することはないものの、カップ状部材50が底板部11から脱落してしまうことが十分に防止できることになる。そのため、当該構成を採用した場合にも、カップ状部材50を底板部11に対して確実に組付けることが可能になる。
したがって、本第3変形例に係るガス発生器1Dとした場合にも、上述した第2変形例に係るガス発生器1Cとした場合と、同様の効果を得ることができる。
<第4変形例>
図11は、本発明の実施の形態1に基づいた第4変形例に係るガス発生器の要部拡大模式断面図である。次に、この図11を参照して、本第4変形例に係るガス発生器1Eについて説明する。
図11に示すように、本第4変形例に係るガス発生器1Eは、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと比較した場合に、保持部30の内側被覆部31の形状においてのみ相違している。
具体的には、ガス発生器1Eにおいては、保持部30のハウジングの内部に位置する部分である内側被覆部31の外周面に第1突起部31aが設けられており、当該第1突起部31aが設けられた部分においてカップ状部材50の保持部30に対する圧入が行なわれている。
ここで、第1突起部31aは、略円柱形状を有する内側被覆部31の外周面上において周方向に沿って連続するように設けられていてもよいし、当該周方向に沿って分断するように複数設けられていてもよい。ただし、第1突起部31aを複数に分断して設ける場合には、カップ状部材50の内周面と第1突起部31aが形成されていない部分の内側被覆部31の外周面との間に生じる隙間を介して伝火薬56が零れ落ちないように、当該隙間の大きさを適宜調節することが好ましい。たとえば、伝火薬56としてその外形が長尺略円柱状のものを使用する場合には、当該隙間の大きさが、伝火薬56の軸方向長さよりも小さくなるように構成されることが好ましく、より好適には伝火薬56の直径よりも小さくなるように構成される。
本第4変形例に係るガス発生器1Eとした場合には、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られるばかりでなく、カップ状部材50を保持部30に対して圧入する際の抵抗が軽減されることになるため、よりスムーズにカップ状部材50を保持部30に対して圧入することが可能になり、組付作業のさらなる容易化が図られることになる。
<第5変形例>
図12は、本発明の実施の形態1に基づいた第5変形例に係るガス発生器の要部拡大模式断面図である。次に、この図12を参照して、本第5変形例に係るガス発生器1Fについて説明する。
図12に示すように、本第5変形例に係るガス発生器1Fは、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと比較した場合に、カップ状部材50の側壁部52の形状においてのみ相違している。
具体的には、ガス発生器1Fにおいては、カップ状部材50の側壁部52の所定位置に周方向に沿って内側に向けて突設された第1突起部52aが設けられており、当該第1突起部52aが設けられた部分においてカップ状部材50の保持部30に対する圧入が行なわれている。
ここで、第1突起部52aは、略円筒形状を有する側壁部52の内周面上において周方向に沿って連続するように設けられていてもよいし、当該周方向に沿って分断するように複数設けられていてもよい。ただし、第1突起部52aを複数に分断して設ける場合には、側壁部52の第1突起部52aが設けられていない内周面と保持部30の内側被覆部31の外周面との間に生じる隙間を介して伝火薬56が零れ落ちないように、当該隙間の大きさを適宜調節することが好ましい。
本第5変形例に係るガス発生器1Fとした場合には、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果が得られるばかりでなく、カップ状部材50を保持部30に対して圧入する際の抵抗が軽減されることになるため、よりスムーズにカップ状部材50を保持部30に対して圧入することが可能になり、組付作業のさらなる容易化が図られることになる。
(実施の形態2)
図13は、本発明の実施の形態2におけるガス発生器の概略図であり、図14は、図13に示すガス発生器の図13中に示す領域XIVの要部拡大模式断面図である。以下、これら図13および図14を参照して、本発明の実施の形態2におけるガス発生器1Gについて説明する。
図13および図14に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Gは、カップ状部材50および第1宛がい部材70を含む各種構成部品に関して、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aのそれらとほぼ同様の構成を有しており、カップ状部材50が保持部30に圧入固定されておらず、下部側シェル10の底板部11に設けられた突状筒部13に圧入固定されている点においてのみ、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと相違している。
具体的には、ガス発生器1Gにおいては、カップ状部材50の第1延設部53が、底板部11の突状筒部13に外挿されることで当該突状筒部13に対して圧入固定されている。当該圧入固定は、ハウジングに対するカップ状部材50の組付けの際に、その組付作業がより容易に行えることとなるようにカップ状部材50を仮固定するためのものであり、組付強度を厳格に管理する必要のある上述した従来行なわれていた圧入固定とは異なるものである。
ここで、本実施の形態におけるガス発生器1Gにあっても、カップ状部材50に設けられた第1延設部53が、側壁部52の開口端側から断面視略S字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部54が底板部11の突状筒部13が形成されていない部分にまで達している。一方、第1宛がい部材70に設けられた第2延設部71は、当接部72の下端側から断面視略L字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部73が底板部11の突状筒部13が形成された部分(より詳細には、突状筒部13のハウジング内部に位置する外周面)にまで達している。
第1延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71との間に配置されており、これによりハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71とによって挟み込まれて保持されている。そのため、カップ状部材50は、その第1延設部53の先端部54が第1宛がい部材70の第2延設部71によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。
したがって、本実施の形態におけるガス発生器1Gとした場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができ、かしめ固定や厳格にその組付強度の管理が必要な圧入固定を利用せずとも、伝火薬56が収容されたカップ状部材50をハウジングに対して確実にかつ容易に組付けることが可能になり、安価にガス発生器1Gを製造できることになる。
<第6変形例>
図15は、本発明の実施の形態2に基づいた第6変形例に係るガス発生器の要部拡大模式断面図である。次に、この図15を参照して、本第6変形例に係るガス発生器1Hについて説明する。
図15に示すように、本第6変形例に係るガス発生器1Hは、上述した実施の形態2におけるガス発生器1Gと比較した場合に、第1宛がい部材70の形状においてのみ相違している。
具体的には、ガス発生器1Hにおいては、第1宛がい部材70の第2延設部71が、上述した実施の形態2における場合に比べてさらに径方向内側に向けて延設されている。これにより、第2延設部71は、底板部11の突状筒部13の外周面に対向して位置する先端部73と、当該先端部73よりもさらに径方向内側の部分にまで達するように曲成された先端曲成部74とを有している。当該先端曲成部74は、底板部11の突状筒部13の軸方向端部近傍の位置にまで達しており、当該部分においても、カップ状部材50の第1延設部53が、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71とによって挟まれた状態となっている。
したがって、本第6変形例に係るガス発生器1Hとした場合にも、上述した実施の形態2において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
<第7変形例>
図16は、本発明の実施の形態2に基づいた第7変形例に係るガス発生器の要部拡大模式断面図である。次に、この図16を参照して、本第7変形例に係るガス発生器1Iについて説明する。
図16に示すように、本第7変形例に係るガス発生器1Iにあっては、上述した実施の形態2におけるガス発生器1Gと比較した場合に、下部側シェル10の突状筒部13の形状においてのみ相違している。
具体的には、ガス発生器1Iにおいては、底板部11に設けられた突状筒部13の外周面に第2突起部13cが設けられており、当該第2突起部13cが設けられた部分においてカップ状部材50の突状筒部13に対する圧入が行なわれている。
ここで、第2突起部13cは、略円柱形状を有する突状筒部13の外周面上において周方向に沿って連続するように設けられていてもよいし、当該周方向に沿って分断するように複数設けられていてもよい。ただし、第2突起部13cを複数に分断して設ける場合には、カップ状部材50の第1延設部53の内周面と第2突起部13cが形成されていない部分の突状筒部13の外周面との間に生じる隙間を介して伝火薬56が零れ落ちないように、当該隙間の大きさを適宜調節することが好ましい。たとえば、伝火薬56としてその外形が長尺略円柱状のものを使用する場合には、当該隙間の大きさが、伝火薬56の軸方向長さよりも小さくなるように構成されることが好ましく、より好適には伝火薬56の直径よりも小さくなるように構成される。
本第7変形例に係るガス発生器1Iとした場合には、上述した実施の形態2において説明した効果と同様の効果が得られるばかりでなく、カップ状部材50を保持部30に対して圧入する際の抵抗が軽減されることになるため、よりスムーズにカップ状部材50を保持部30に対して圧入することが可能になり、組付作業のさらなる容易化が図られることになる。
<第8変形例>
図17は、本発明の実施の形態2に基づいた第8変形例に係るガス発生器の要部拡大模式断面図である。次に、この図17を参照して、本第8変形例に係るガス発生器1Jについて説明する。
図17に示すように、本第8変形例に係るガス発生器1Jにあっては、上述した実施の形態2におけるガス発生器1Gと比較した場合に、カップ状部材50の第1延設部53の形状においてのみ相違している。
具体的には、ガス発生器1Jにおいては、カップ状部材50の第1延設部53の所定位置に周方向に沿って内側に向けて突設された第2突起部53aが設けられており、当該第2突起部53aが設けられた部分においてカップ状部材50の突状筒部13に対する圧入が行なわれている。
ここで、第2突起部53aは、略円筒形状を有する第1延設部53の内周面上において周方向に沿って連続するように設けられていてもよいし、当該周方向に沿って分断するように複数設けられていてもよい。ただし、第2突起部53aを複数に分断して設ける場合には、第1延設部53の第2突起部53aが設けられていない内周面と突状筒部13の外周面との間に生じる隙間を介して伝火薬56が零れ落ちないように、当該隙間の大きさを適宜調節することが好ましい。
本第8変形例に係るガス発生器1Jとした場合には、上述した実施の形態2において説明した効果と同様の効果が得られるばかりでなく、カップ状部材50を保持部30に対して圧入する際の抵抗が軽減されることになるため、よりスムーズにカップ状部材50を保持部30に対して圧入することが可能になり、組付作業のさらなる容易化が図られることになる。
(実施の形態3)
図18は、本発明の実施の形態3におけるガス発生器の概略図であり、図19は、図18に示すガス発生器の図18中に示す領域XIXの要部拡大模式断面図である。以下、これら図18および図19を参照して、本発明の実施の形態3におけるガス発生器1Kについて説明する。
図18および図19に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Kは、カップ状部材50および第1宛がい部材70を含む各種構成部品に関して、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aのそれらとほぼ同様の構成を有しており、カップ状部材50が保持部30に圧入固定されているのみならず、下部側シェル10に設けられた突状筒部13にも圧入固定されている点においてのみ、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと相違している。
具体的には、ガス発生器1Kにおいては、カップ状部材50の側壁部52の開口端側の部分が、保持部30のハウジングの内部に位置する部分である内側被覆部31に外挿されることで当該保持部30に対して圧入固定されているとともに、カップ状部材50の第1延設部53が、底板部11の突状筒部13に外挿されることで当該突状筒部13に対して圧入固定されている。当該圧入固定は、いずれも、ハウジングに対するカップ状部材50の組付けの際に、その組付作業がより容易に行えることとなるようにカップ状部材50を仮固定するためのものであり、組付強度を厳格に管理する必要のある上述した従来行なわれていた圧入固定とは異なるものである。
ここで、本実施の形態におけるガス発生器1Kにあっても、カップ状部材50に設けられた第1延設部53が、側壁部52の開口端側から断面視略S字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部54が底板部11の突状筒部13が形成されていない部分にまで達している。一方、第1宛がい部材70に設けられた第2延設部71は、当接部72の下端側から断面視略L字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部73が底板部11の突状筒部13が形成された部分(より詳細には、突状筒部13のハウジング内部に位置する外周面)にまで達している。
第1延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71との間に配置されており、これによりハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71とによって挟み込まれて保持されている。そのため、カップ状部材50は、その第1延設部53の先端部54が第1宛がい部材70の第2延設部71によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。
したがって、本実施の形態におけるガス発生器1Kとした場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができ、かしめ固定や厳格にその組付強度の管理が必要な圧入固定を利用せずとも、伝火薬56が収容されたカップ状部材50をハウジングに対して確実にかつ容易に組付けることが可能になり、安価にガス発生器1Kを製造できることになる。
<第9変形例>
図20は、本発明の実施の形態3に基づいた第9変形例に係るガス発生器の要部拡大模式断面図である。次に、この図20を参照して、本第9変形例に係るガス発生器1Lについて説明する。
図20に示すように、本第9変形例に係るガス発生器1Lは、上述した実施の形態3におけるガス発生器1Kと比較した場合に、第1宛がい部材70の形状においてのみ相違している。
具体的には、ガス発生器1Lにおいては、第1宛がい部材70の第2延設部71が、上述した実施の形態3における場合に比べてさらに径方向内側に向けて延設されている。これにより、第2延設部71は、底板部11の突状筒部13の外周面に対向して位置する先端部73と、当該先端部73よりもさらに径方向内側の部分にまで達するように曲成された先端曲成部74とを有している。当該先端曲成部74は、底板部11の突状筒部13の軸方向端部近傍の位置にまで達しており、当該部分においても、カップ状部材50の第1延設部53が、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71とによって挟まれた状態となっている。
したがって、本第9変形例に係るガス発生器1Lとした場合にも、上述した実施の形態3において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態4)
図21は、本発明の実施の形態4におけるガス発生器の概略図であり、図22は、図21に示すガス発生器の図21中に示す領域XXIIの要部拡大模式断面図である。以下、これら図21および図22を参照して、本発明の実施の形態4におけるガス発生器1Mについて説明する。
図21および図22に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Mは、カップ状部材50および第1宛がい部材70を含む各種構成部品に関して、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aのそれらとほぼ同様の構成を有しており、カップ状部材50が保持部30に圧入固定されていない点においてのみ、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと相違している。
ここで、本実施の形態におけるガス発生器1Mにあっても、カップ状部材50に設けられた第1延設部53が、側壁部52の開口端側から断面視略S字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部54が底板部11の突状筒部13が形成されていない部分にまで達している。一方、第1宛がい部材70に設けられた第2延設部71は、当接部72の下端側から断面視略L字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部73が底板部11の突状筒部13が形成された部分(より詳細には、突状筒部13のハウジング内部に位置する外周面)にまで達している。
第1延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71との間に配置されており、これによりハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71とによって挟み込まれて保持されている。そのため、カップ状部材50は、その第1延設部53の先端部54が第1宛がい部材70の第2延設部71によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。
したがって、本実施の形態におけるガス発生器1Mとした場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができ、かしめ固定や厳格にその組付強度の管理が必要な圧入固定を利用せずとも、伝火薬56が収容されたカップ状部材50をハウジングに対して確実にかつ容易に組付けることが可能になり、安価にガス発生器1Mを製造できることになる。
なお、本実施の形態におけるガス発生器1Mとした場合には、カップ状部材50の組付時において、当該カップ状部材50を保持部30および下部側シェル10のいずれにも圧入しない構成であるため、圧入による仮固定ができないこととなってしまうが、治具等を用いてこれを下部側シェル10に対して押圧した状態とすれば、伝火薬56が零れることなく容易に下部側シェル10の天地を逆にすることが可能であり、このようにすれば製造が煩雑化することもない。
<第10変形例>
図23は、本発明の実施の形態4に基づいた第10変形例に係るガス発生器の要部拡大模式断面図である。次に、この図23を参照して、本第10変形例に係るガス発生器1Nについて説明する。
図23に示すように、本第10変形例に係るガス発生器1Nは、上述した実施の形態4におけるガス発生器1Mと比較した場合に、第1宛がい部材70の形状においてのみ相違している。
具体的には、ガス発生器1Nにおいては、第1宛がい部材70の第2延設部71が、上述した実施の形態4における場合に比べてさらに径方向内側に向けて延設されている。これにより、第2延設部71は、底板部11の突状筒部13の外周面に対向して位置する先端部73と、当該先端部73よりもさらに径方向内側の部分にまで達するように曲成された先端曲成部74とを有している。当該先端曲成部74は、底板部11の突状筒部13の軸方向端部近傍の位置にまで達しており、当該部分においても、カップ状部材50の第1延設部53が、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71とによって挟まれた状態となっている。
したがって、本第10変形例に係るガス発生器1Nとした場合にも、上述した実施の形態4において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
(実施の形態5)
図24は、本発明の実施の形態5におけるガス発生器の概略図である。以下、この図24を参照して、本発明の実施の形態5におけるガス発生器1Oについて説明する。
図24に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Oは、上述した実施の形態4におけるガス発生器1Mとほぼ同様の構成を有しており、燃焼室60の天板部21側に配置されたクッション材85により、カップ状部材50が底板部11に対してさらに固定されている点においてのみ、上述した実施の形態4におけるガス発生器1Mと相違している。
具体的には、ガス発生器1Oにおいては、クッション材85が円盤状の形状を有するように構成されており、当該クッション材85がガス発生剤61が収容された燃焼室60の天板部21側の端部のみならず、カップ状部材50の頂壁部51をも覆うように配置されている。ここで、クッション材85は、カップ状部材50の頂壁部51に当接することで圧縮されており、これによってカップ状部材50が底板部11側に向けて押圧されて固定されている。
ここで、本実施の形態におけるガス発生器1Oにあっても、カップ状部材50に設けられた第1延設部53が、側壁部52の開口端側から断面視略S字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部54が底板部11の突状筒部13が形成されていない部分にまで達している。一方、第1宛がい部材70に設けられた第2延設部71は、当接部72の下端側から断面視略L字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部73が底板部11の突状筒部13が形成された部分(より詳細には、突状筒部13のハウジング内部に位置する外周面)にまで達している。
第1延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71との間に配置されており、これによりハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71とによって挟み込まれて保持されている。そのため、カップ状部材50は、その第1延設部53の先端部54が第1宛がい部材70の第2延設部71によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。
したがって、本実施の形態におけるガス発生器1Oとした場合にも、上述した実施の形態4において説明した効果と同様の効果を得ることができ、かしめ固定や厳格にその組付強度の管理が必要な圧入固定を利用せずとも、伝火薬56が収容されたカップ状部材50をハウジングに対して確実にかつ容易に組付けることが可能になり、安価にガス発生器1Oを製造できることになる。また、カップ状部材50が、クッション材85によっても底板部11に対して固定されることになるため、より安定的にこれを固定することが可能になる。
(実施の形態6)
図25は、本発明の実施の形態6におけるガス発生器の概略図である。以下、この図25を参照して、本発明の実施の形態6におけるガス発生器1Pについて説明する。
図25に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Pは、上述した実施の形態4におけるガス発生器1Mとほぼ同様の構成を有しており、燃焼室60の天板部21側に配置された第2宛がい部材80により、カップ状部材50が底板部11に対してさらに固定されている点においてのみ、上述した実施の形態4におけるガス発生器1Mと相違している。
具体的には、ガス発生器1Pにおいては、第2宛がい部材80の底部81がカップ状部材50の頂壁部51に当接するように配置されており、これによってカップ状部材50が底板部11側に向けて押圧されて固定されている。
ここで、本実施の形態におけるガス発生器1Pにあっても、カップ状部材50に設けられた第1延設部53が、側壁部52の開口端側から断面視略S字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部54が底板部11の突状筒部13が形成されていない部分にまで達している。一方、第1宛がい部材70に設けられた第2延設部71は、当接部72の下端側から断面視略L字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部73が底板部11の突状筒部13が形成された部分(より詳細には、突状筒部13のハウジング内部に位置する外周面)にまで達している。
第1延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71との間に配置されており、これによりハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71とによって挟み込まれて保持されている。そのため、カップ状部材50は、その第1延設部53の先端部54が第1宛がい部材70の第2延設部71によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。
したがって、本実施の形態におけるガス発生器1Pとした場合にも、上述した実施の形態4において説明した効果と同様の効果を得ることができ、かしめ固定や厳格にその組付強度の管理が必要な圧入固定を利用せずとも、伝火薬56が収容されたカップ状部材50をハウジングに対して確実にかつ容易に組付けることが可能になり、安価にガス発生器1Pを製造できることになる。また、カップ状部材50が、第2宛がい部材80によっても底板部11に対して固定されることになるため、より安定的にこれを固定することが可能になる。
(実施の形態7)
図26は、本発明の実施の形態7におけるガス発生器の概略図である。以下、この図26を参照して、本発明の実施の形態7におけるガス発生器1Qについて説明する。
図26に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Qは、上述した実施の形態4におけるガス発生器1Mと比較した場合に、流出防止手段の構成およびクッション材の配置位置において相違しており、加えて、カップ状部材50が天板部21によって底板部11に対してさらに固定されている点において相違している。
具体的には、ガス発生器1Qにおいては、燃焼室60のうちの底板部11側に位置する端部近傍にのみ、フィルタ90とハウジングとの間の隙間を介してガスが流出してしまうことを防止するための流出防止手段としての第1宛がい部材70が配置されており、燃焼室60のうちの天板部21側に位置する端部には、流出防止手段が特に設けられていない。
また、ガス発生器1Qにおいては、ガス発生剤61の粉砕を防止するためのクッション材75が、燃焼室60のうちの底板部11側に位置する端部近傍に設けられた第1宛がい部材70の内部に配置されており、燃焼室60のうちの天板部21側に位置する端部には、これが設けられていない。
さらに、ガス発生器1Qにおいては、上部側シェル20の天板部21がカップ状部材50の頂壁部51に当接するように配置されており、これによってカップ状部材50が底板部11側に向けて押圧されて固定されている。
ここで、本実施の形態におけるガス発生器1Qにあっても、カップ状部材50に設けられた第1延設部53が、側壁部52の開口端側から断面視略S字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部54が底板部11の突状筒部13が形成されていない部分にまで達している。一方、第1宛がい部材70に設けられた第2延設部71は、当接部72の下端側から断面視略L字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部73が底板部11の突状筒部13が形成された部分(より詳細には、突状筒部13のハウジング内部に位置する外周面)にまで達している。
第1延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71との間に配置されており、これによりハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71とによって挟み込まれて保持されている。そのため、カップ状部材50は、その第1延設部53の先端部54が第1宛がい部材70の第2延設部71によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。
したがって、本実施の形態におけるガス発生器1Qとした場合にも、上述した実施の形態4において説明した効果と同様の効果を得ることができ、かしめ固定や厳格にその組付強度の管理が必要な圧入固定を利用せずとも、伝火薬56が収容されたカップ状部材50をハウジングに対して確実にかつ容易に組付けることが可能になり、安価にガス発生器1Qを製造できることになる。また、カップ状部材50が、天板部21によっても底板部11に対して固定されることになるため、より安定的にこれを固定することが可能になる。
(実施の形態8)
図27は、本発明の実施の形態8におけるガス発生器の概略図である。また、図28は、図27に示すガス発生器の下部側シェルの平面図であり、図29は、当該下部側シェルの図28中に示すXXIX−XXIX線に沿った断面図である。以下、これら図27ないし図29を参照して、本発明の実施の形態8におけるガス発生器1Rについて説明する。
図27ないし図29に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Rは、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aと比較した場合に、下部側シェル10および保持部30の形状において僅かに相違している。
具体的には、上述した実施の形態1におけるガス発生器1Aにおいては、下部側シェル10の所定位置に回転防止用の複数の凸部13aを設け、当該複数の凸部13aを覆うように樹脂成形部からなる保持部30を形成することで、射出成形後における保持部30の底板部11に対する回転を防止するように構成した場合を例示したものであったが、本実施の形態におけるガス発生器1Rにおいては、下部側シェル10の所定位置に回転防止用の複数の凹部13bを設け、当該複数の凹部13bを覆うように樹脂成形部からなる保持部30を形成することで、射出成形後における保持部30の底板部11に対する回転を防止するように構成したものである。
より詳細には、ガス発生器1Rにおいては、突状筒部13の軸方向端部に設けられた開口部15を挟み込むように、当該軸方向端部に溝状の複数の凹部13bが設けられており、当該複数の凹部13bを覆うように保持部30が形成されている。これにより、複数の凹部13bは、保持部30の内側被覆部31によって覆われることになり、保持部30の内部に埋設された状態とされている。このように構成することで、射出成形後において、底板部11に対して保持部30が相対的に回転してしまうことが未然に防止できることになり、上述した突状筒部13に設けられた複数の凹部13bが、回転防止用凹部として機能することになる。
なお、回転防止用凹部としての複数の凹部13bが設けられる位置は、上記に限定されるものではなく、保持部30によって覆われることとなる底板部11の表面であれば、どの位置に設けられていてもよい。また、回転防止用凹部としての凹部13bは、必ずしも複数設けられている必要はなく、1つであってもよい。
ここで、本実施の形態におけるガス発生器1Rにあっても、カップ状部材50に設けられた第1延設部53が、側壁部52の開口端側から断面視略S字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部54が底板部11の突状筒部13が形成されていない部分にまで達している。一方、第1宛がい部材70に設けられた第2延設部71は、当接部72の下端側から断面視略L字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部73が底板部11の突状筒部13が形成された部分(より詳細には、突状筒部13のハウジング内部に位置する外周面)にまで達している。
第1延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71との間に配置されており、これによりハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71とによって挟み込まれて保持されている。そのため、カップ状部材50は、その第1延設部53の先端部54が第1宛がい部材70の第2延設部71によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。
したがって、本実施の形態におけるガス発生器1Rとした場合にも、上述した実施の形態1において説明した効果と同様の効果を得ることができ、かしめ固定や厳格にその組付強度の管理が必要な圧入固定を利用せずとも、伝火薬56が収容されたカップ状部材50をハウジングに対して確実にかつ容易に組付けることが可能になり、安価にガス発生器1Rを製造できることになる。
(実施の形態9)
図30は、本発明の実施の形態9におけるガス発生器の概略図であり、図31は、図30に示すガス発生器の図30中に示す領域XXXIの要部拡大模式断面図である。また、図32および図33は、図30に示すガス発生器の組立手順を説明するための模式断面図である。以下、これら図30ないし図33を参照して、本発明の実施の形態9におけるガス発生器1Sについて説明する。
図30および図31に示すように、本実施の形態におけるガス発生器1Sは、カップ状部材50および第1宛がい部材70を含む各種構成部品に関して、上述した実施の形態2におけるガス発生器1Gのそれらとほぼ同様の構成を有しており、カップ状部材50が突状筒部13に対して圧入固定される代わりに、これが突状筒部13に対して圧接固定されている点においてのみ、上述した実施の形態2におけるガス発生器1Gと相違している。
ここで、圧接固定とは、金属部材間の固定を行なう場合の接合方法の一種であり、金属部材同士をプレス圧接等することによりある程度の塑性変形を生じさせて固体の状態のまま加圧して接合するものである。当該圧接固定を利用すれば、比較的高い接合力をもって金属部材同士を接合することができる。
具体的には、ガス発生器1Sにおいては、カップ状部材50の第1延設部53が、底板部11の突状筒部13に外挿されるとともに、後述する押し型100(図32等参照)を用いてプレス圧接されることで当該突状筒部13に対して圧接固定されている。当該圧接固定は、ハウジングに対するカップ状部材50の組付けの際に、その組付作業がより容易に行えることとなるようにカップ状部材50を仮固定するためのものである。
このようにしてカップ状部材50が突状筒部13に対して圧接固定されたガス発生器1Sにおいては、カップ状部材50の第1延設部53が突状筒部13に対して密着した状態にあり、主としてこれら第1延設部53の内周面と突状筒部13のハウジング内部に位置する外周面とが接合することでカップ状部材50が底板部11に対して固定されることになる。
ここで、本実施の形態におけるガス発生器1Sにあっても、カップ状部材50に設けられた第1延設部53が、側壁部52の開口端側から断面視略S字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部54が底板部11の突状筒部13が形成されていない部分にまで達している。一方、第1宛がい部材70に設けられた第2延設部71は、当接部72の下端側から断面視略L字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されており、その先端部73が底板部11の突状筒部13が形成された部分(より詳細には、突状筒部13のハウジング内部に位置する外周面)にまで達している。
第1延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71との間に配置されており、これによりハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71とによって挟み込まれて保持されている。そのため、カップ状部材50は、その第1延設部53の先端部54が第1宛がい部材70の第2延設部71によって底板部11側に向けて押し付けられた状態となり、底板部11に対して固定されることになる。
ガス発生器1Sの組立に際しては、プレス成形することで製造された下部側シェル10と予め製造された点火器40とを射出成形用の型にセットし、この状態において射出成形を行なうことで下部側シェル10の底板部11に樹脂成形部としての保持部30を形成し、これにより点火器40を下部側シェル10の突状筒部13に固定する。
次に、図32に示すように、予めプレス成形することで製造されたカップ状部材50の内部に所定量の伝火薬56を充填した状態とし、点火器40が固定された状態にある下部側シェル10の突状筒部13近傍の部分を、カップ状部材50の開口端側から当該カップ状部材50の内部に向けて挿入する。ここで、当該挿入作業は、伝火薬56が零れ落ちることを防止するために、カップ状部材50および下部側シェル10のいずれもがその天地が逆とされた状態で行なう。
その際、カップ状部材50には、上述したプレス成形により、側壁部52の開口端側の部分から連続する部分(当該部分は、後述する圧接固定の際に成形されることで第1延設部53となる部分である)に外側に向かって広がるテーパ部58が予め形成されており、当該テーパ部58が下部側シェル10の突状筒部13近傍の部分を覆うように配置される。
次に、所定形状の押し型100を用い、カップ状部材50が当該押し型100と下部側シェル10とによって挟み込まれることとなるように、押し型100を下部側シェル10に向けて押し付けることでカップ状部材50をプレスする。これにより、図33に示すように、カップ状部材50の上述したテーパ部58が押し型100および下部側シェル10の突状筒部13によって挟み込まれて塑性変形することで成形されて第1延設部53となるとともに、カップ状部材50の下部側シェル10に対するカップ状部材50の圧接固定が行なわれる。
なお、その際、図示するように、突状筒部13をプレス成形等によって形成する際に底板部13に生じることとなる断面視湾曲状の裾部13dおよび肩部13e(図31参照)のハウジング内部に位置する外周面が、いずれも保持部30の内側被覆部31によって覆われずに露出した状態となるように構成しておくことにより、突状筒部13のハウジング内部に位置する外周面のみならず、これら裾部13dおよび肩部13eのハウジング内部に位置する外周面についても、これらがカップ状部材50の第1延設部53の内周面に対して接合されることになるため、高い接合力をもってカップ状部材50を下部側シェル10に対して固定することができる。
上述したカップ状部材50の下部側シェル10に対する圧接固定が終了した後は、押し型100が取り除かれ、上述した実施の形態1の場合と同様に、下部側シェル10の天地が逆にされ、この状態において下部側シェル10上にフィルタ90が載置され、さらにその後に、当該下部側シェル10とフィルタ90とによって規定される空間に第1宛がい部材70が挿入される。その後、ガス発生剤61やクッション材85、第2宛がい部材80が組付けられ、さらに下部側シェル10を覆うように上部側シェル20が組付けられて接合されることにより、ガス発生器1Sの製造が完了する。
なお、上記においては、カップ状部材50の内部に、予め点火器40が固定された状態にある下部側シェル10の突状筒部13近傍の部分を挿入し、その後に、押し型100を用いてカップ状部材50と下部側シェル10との圧接固定を行なうようにした場合の組付手順を例示して説明を行なったが、先に押し型100にカップ状部材50をセットし、当該カップ状部材50がセットされた押し型100を下部側シェル10の突状筒部13近傍の部分に向けて移動させてこれに押し付けることにより、カップ状部材50と下部側シェル10との圧接固定を行なうようにしてもよい。
このように、本実施の形態におけるガス発生器1Sとした場合にも、上述した実施の形態2において説明した効果と同様の効果を得ることができ、かしめ固定や厳格にその組付強度の管理が必要な圧入固定を利用せずとも、伝火薬56が収容されたカップ状部材50をハウジングに対して確実にかつ容易に組付けることが可能になり、安価にガス発生器1Sを製造できることになる。さらには、カップ状部材50に予め所定形状の第1延設部53を設けておかずとも、圧接固定の際にこれが成形されることになるため、さらなる製造の容易化と低コスト化とが図られることになる。
(関連技術)
図34は、本発明に関連する関連技術に係るガス発生器の概略図であり、図35は、図34に示すガス発生器の図34中に示す領域XXXVの要部拡大模式断面図である。以下、これら図34および図35を参照して、本発明に関連する関連技術に係るガス発生器1Tについて説明する。
上述した実施の形態9において説明した圧接固定を利用してカップ状部材50を下部側シェル10に接合することとした場合には、その接合力が比較的高く維持できることになるため、当該接合力をもってカップ状部材50を下部側シェル10に対して安定的に固定することが可能になる。したがって、当該圧接固定を利用した場合には、必ずしも第1宛がい部材70を用いてカップ状部材50を下部側シェル10との間で挟み込まずとも、カップ状部材50の脱落を防止することができ、伝火薬56とガス発生剤61とが混ざり合うことが防止可能となる。
そのため、本関連技術においては、伝火薬56が収容されたカップ状部材50をハウジングに対して確実にかつ容易に組付けることができ、これによって製造コストの削減が図られたガス発生器1Tとするために、カップ状部材50を下部側シェル10に対して圧接固定することを特徴としている。
具体的には、図34および図35に示すように、本関連技術に係るガス発生器1Tは、第1宛がい部材70を除く各種構成部品に関して、上述した実施の形態9におけるガス発生器1Sのそれらとほぼ同様の構成を有しており、カップ状部材50が第1宛がい部材70と下部側シェル10とによって挟み込まれて保持されていない点においてのみ、上述した実施の形態9におけるガス発生器1Sと相違している。
より詳細には、ガス発生器1Tにおいては、カップ状部材50の第1延設部53が、底板部11の突状筒部13に外挿されるとともに、押し型を用いてプレス圧接されることで当該突状筒部13に対して圧接固定されている。当該圧接固定は、振動等によってカップ状部材50がハウジングから脱落してしまうことが防止できることとなるように、カップ状部材50をハウジングに対して安定的に固定するためのものである。
このようにしてカップ状部材50が突状筒部13に対して圧接固定されたガス発生器1Tにおいては、カップ状部材50の第1延設部53が突状筒部13に対して密着した状態にあり、主としてこれら第1延設部53の内周面と突状筒部13のハウジング内部に位置する外周面とが接合することでカップ状部材50が底板部11に対して固定されることになる。
一方、第1宛がい部材70に設けられた第2延設部71は、当接部72の下端側から断面視略L字状となるように底板部11の内底面に沿って延設されているものの、底板部11の突状筒部13が形成された部分(より詳細には、突状筒部13のハウジング内部に位置する外周面)には達していない。そのため、第1延設部53の先端部54は、ハウジングの軸方向に沿って第2延設部71によって覆われておらず、ハウジング内部の空間に向けて露出した状態とされている。
なお、ここでは、その説明は繰り返しとなるため省略するが、本関連技術に係るガス発生器1Tを組立てる際の組付手順については、上述した実施の形態9におけるガス発生器1Sを組立てる際の組付手順に準じている。
このような本関連技術に係るガス発生器1Tとした場合には、カップ状部材50の第1延設部53がハウジングの軸方向に沿って底板部11と第1宛がい部材70の第2延設部71とによって挟み込まれることはないものの、カップ状部材50を下部側シェル10に圧接固定することによる接合力をもってしてカップ状部材50が下部側シェル10に対して安定的に固定されることになる。
したがって、かしめ固定や厳格にその組付強度の管理が必要な圧入固定を利用せずとも、伝火薬56が収容されたカップ状部材50をハウジングに対して確実にかつ容易に組付けることが可能になり、安価にガス発生器1Tを製造できることになる。さらには、カップ状部材50に予め所定形状の第1延設部53を設けておかずとも、圧接固定の際にこれが成形されることになるため、さらなる製造の容易化と低コスト化とが図られることになる。
上述した本発明の実施の形態1ないし9およびその変形例においては、金属製の部材をプレス加工することによって成形されたプレス成形品にて上部側シェルおよび下部側シェルを構成した場合を例示したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、プレス加工と他の加工(鍛造加工や絞り加工、切削加工等)との組み合わせによって形成された上部側シェルおよび下部側シェルを使用することとしてもよいし、上記他の加工のみによって形成された上部側シェルおよび下部側シェルを使用することとしてもよい。
また、上述した本発明の実施の形態1ないし9およびその変形例においては、下部側シェルに突状筒部を設けた場合を例示したが、当該突状筒部が設けられない構成のガス発生器に本発明を適用することも当然に可能である。
また、上述した本発明の実施の形態1ないし9およびその変形例においては、樹脂成形部からなる保持部を射出成形することで下部側シェルに対する点火器の固定を可能にした場合を例示したが、下部側シェルに対する点火器の固定を他の代替手段にて実現したガス発生器にも当然に本発明の適用が可能である。
さらには、上述した本発明の実施の形態1ないし9およびその変形例において示した特徴的な構成は、本発明の趣旨に照らして許容される範囲で当然に相互に組み合わせることが可能である。また、ハウジングや点火器、保持部、カップ状部材、第1宛がい部材等の各種構成部品の具体的な形状等についても、当然に適宜その変更が可能である。
このように、今回開示した上記各実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。