以下に、図を用いて本発明の実施形態を説明する。なお、本発明はこれら実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる対応で実施しうる。
<実施形態1>
実施形態1は、主に請求項1、5、10~21に対応する釣り餌および釣り餌の製造方法の実施形態である。
<実施形態1 概要>
実施形態では、第一の動物の構成部位の発酵した発酵構成部位又は/及び前記発酵に際して産生される発酵時液体がまぶされ又は/及び浸透している第二の動物である貝類の身の構成部位からなる釣り餌である。
<実施形態1 構成の説明>
「動物」とは、哺乳類のみならず、爬虫類、鳥類、両生類、魚類といった脊椎動物はもちろん、貝類、昆虫、カイメンなど、幅広い種類の生物を含むものである。
「第一の動物の構成部位」とは、発酵時液体を産生するために用いられる動物の構成部位である。魚類であれ、その他の種類の動物であれ、からなずしも全体を発酵に用いる必要はなく、発酵時液体を産生するに適している動物の部位を採用することができる。要は、腐敗でなく、いかに腐敗を防止して発酵させるか、という点から選ばれる動物の部位である。魚類であれば身の部分の他に消化器系の内臓などを利用することができる。
さらに、発酵に供するものであるので、前処理として十分に清潔に処理し、腐敗菌が入り込むことを防止できるようにしなければならない。なお、第一の動物の構成部位は主に発酵によって発酵液を産生するために用いられるものであり、動物の種類は一種類に限定されるものではない。例えば、カツオ、マグロ、サバ、イワシなど複数種類の魚類の胃や腸を同時に利用して発酵液を産生するように構成することも可能である。
「発酵」とは、生物、特に微生物等が栄養素として取り込んだ有機物を嫌気的に代謝してエネルギーを得るとともに、代謝物を産生する過程であり、微生物が発酵食品など人間等に有益な有機物を生成する過程全般を指す。発酵は、その副産物として生成される有機物によって、アルコール発酵、乳酸発酵などに分類される。さらに発酵は微生物が増殖する過程をも一般に含む。従って、発酵によって特有の代謝物が産生されるとともに、発酵に寄与した微生物が増殖する結果となる。
「発酵構成部位」とは、前記動物の発酵に寄与した部位を言う。前述のとおり、微生物によって発酵構成部位は徐々に代謝され、それと同時に発酵に寄与した微生物で満たされる結果となる。
「発酵時液体」とは、前述のとおり微生物の発酵過程によって産生される代謝物であって液体状のものを指す。又は、発酵した第一の動物の構成部位単独で、又は発酵した第一の動物の構成部位と前記代謝物である液体状のものとを混合・撹拌し、発酵した第一の動物の構成部位に含まれている水分を用いて液体状となったものも含まれうる。必ずしも完全な液体のみをさすのでなく、液体に微小な個体状のものや、微小なゲル状のものが含まれている状態の全体を指すものであってもよい。一般には発酵によって産生される代謝物の大部分が液体状のものとなる。本明細書ではこの液体状のものを発酵時液体と称する。なお、この液体にも発酵に寄与した微生物が多く含まれる。そして、発酵に寄与した微生物の存在は腐敗菌などがそこに入り込んで生存することを防ぐという役割を果たす。
なお、発酵時液体は、魚類が一般に他の魚類を餌として生きている上に、その餌となる魚類としては生きているもののほか、何らかの理由で死んでいるものも該当する。魚類はすでに死んでいる魚体を餌とすることが多く、魚類は一般に魚類の死後に発生する腐敗臭や、発酵臭をかぎ分ける能力も高い。従って、発酵時液体の臭は、捕食活動をする魚類にとっては日常的に餌の存在を示唆するものであり、この点から発酵時液体は高い集魚効果を有する。また魚種によっては、その魚種の生息領域に分布する第一の動物の構成部位の発酵の際の臭に強い食欲を示す場合が多いので、魚種によっては適切に第一の動物の種類を選択することでより高い釣果につなげることができる。また釣りの対象となる魚種が全国的に生息領域が分布している場合には全国的に分布している第一の動物を発酵時液体の産生用の動物種として選択することができる。
本発明では従来になかった発酵という要素を取り込み、発酵菌によって餌を満たすことによって腐敗菌の侵入や、増殖を防止し、もって長期間の常温保存を可能にしたものである。ここで、防腐剤などの化学薬品を利用しないのは、防腐剤は自然界の敏感な生物からは忌避され、例え釣り餌が長期間保存可能となっても、釣り餌として役に立たない一方、自然発酵によって長期保存を可能にした場合には自然の成り行きであるから魚に忌避されないという自然の仕組みを応用したものである。
なお、発酵時液体には、発酵の結果残された個体がある場合に、これをミキサーなどで液体とともに粉砕して個体を微粒化した処理をしたものも含む。さらに発酵時液体の性質を調整するために添加剤(Ph調整剤、増粘剤等)が添加されたもの、濃度調整を水やアルコール、お茶、コーヒー等で行ったものも発酵時液体に含まれる。
「第二の動物である貝類の身の構成部位」とは、釣り餌の本体となる部位である。釣り餌の本体は基本的に形があって、釣り針にひっかけられるものでなければならない。原料としては、例えば、図1(A)(B)に示すように、貝類の身が使用され、あさりの身、ハマグリの身、赤貝の身、カラスガイの身、シジミの身(身が大きい場合は所定の大きさにカットする)などが使用できる。貝類の身は、殻から外された身の全体であるむき身が好ましい。また、貝のむき身とは別体の貝柱を利用することも考えられるが、貝柱を利用する場合には釣り餌として魚にかみ切りやすいように予め柔軟化処理をするとよい。柔軟化処理は、機械的に圧力を加えたり、たたいたり、剣山のようなもので刺したりすることで行われる。
大きな貝の場合は、所定の大きさにカットして使用しても良い。貝の身は、釣り餌用として使用するため、貝のむき身が良い。釣りで狙う対象魚としては、各種の魚が該当する。具体的には生餌しか捕食しない魚種を除くすべての魚種が対象となる。例えば貝類があさりの場合にはカワハギを対象魚種の一例として挙げることができる。貝類があさりの場合には、貝類の身の構成部位としては、あさりのむき身が好ましく、その大きさは、最大幅が2cm~3cm程度が良い。あさりよりも大きな貝の場合は、適宜カットして使用する。また、例えばボイルの貝類の身(例えば、あさり等)を原材料に使用する場合は、発酵時液体とのなじみを良くし、発酵時液体による香りや味が十分に素材に浸透するように、軟化剤を使用してボイルの貝類の身を軟化させる。
第二の動物である貝類は、アカガイ、アコヤガイ、アサリ、アメフラシ、アワビ、イモガイ、ウバガイ(ホッキ貝)、ウミウシ、エゾバイ科、カサガイ、カキ(牡蠣)、カタツムリ(陸に生息する巻貝の総称)、カモガイ、カラスガイ、サクラガイ、サザエ、サラガイ(皿貝、白貝、女郎貝、満珠貝、万寿貝)、シジミ、シャコガイ、スイジガイ、タイラギ、タカラガイ、タニシ、ツブ、ツメタガイ、トコブシ、トリガイ、ナメクジ、バイ、ハイガイ、パウア貝、バカガイ(アオヤギ)、ハマグリ、ヒオウギガイ、フナクイムシ、フルイガイ、ホタテガイ、ホラガイ、ホンビノスガイ、マテガイ、ミルクイ、ムール貝、夜光貝、ワスレガイのいずれか一以上を使用できる。上記貝類の身としては、貝殻から外された身の全体であるむき身であることが好ましい。
なお、第一の動物と第二の動物とは同じ種類の動物であってもよいし、それぞれが又は一方が複数種類の動物であり一方の動物種が他方の動物種を包含する関係にあってもよい。
<実施形態1 一般的製造方法>
実施形態1の釣り餌の一般的製造方法は次のとおりである。
「ステップ1」 第一の動物の構成部位を準備する。第一の動物に関してはすでに説明したとおりである。
「ステップ2」 準備した第一の動物の構成部位を洗浄する。この場合に第一の動物の構成部位として適している物はその部位に含まれる自己酵素にて自然発酵が生じる動物の部位である。従って脳、目、皮、舌などの部位は好ましくない。好ましい部位としては胃、腸、食道、肝臓、腎臓、膵臓などである。洗浄はきれいな水を使い、ブラッシングを繰り返し、場合によってスプーン状の道具を用いて表面をしごく等の清掃作業を行う。第一の動物の構成部位は発酵が効率的に起こるように全体を細かく細分化する。細分化は0.1cm2から5cm2程度に細分化することが好ましい。
「ステップ3」 清浄になった第一の動物の構成部位に適量の塩(動物の構成部位の全重量に対する重量%で10%以上30%以下が好ましい)をまぶし、また場合によって発酵に影響がない殺菌性のある野菜などを細切りにしたり粉末化したものを加えて冷暗所に長期間(1か月以上12か月以内)保存する。これによって発酵が起こり、発酵時液体が産生される。なお、発酵終了時点で第一の動物の構成部位が残存している場合には、発酵時液体とともにミキシングなどして細粒化することが好ましいが、除外する処理を行ってもよい。
「ステップ4」 第二の動物である貝類の身の構成部位を準備する。第二の動物もすでに説明したとおりである。第二の動物の貝類の身の構成部位として適しているのはある程度の硬さがあって釣り針にしっかりと固定できる程度の硬さを維持できる素材である。従って貝類の殻から外された身の全体であるむき身が好ましい。加熱されている(ボイルされた)貝の身のむき身を使用する場合は、軟化剤(例えばリン酸塩)を使用してボイルむき身を軟化させる。貝類のむき身は比較的表面組織が緻密であり、むき身内に発酵時液体を十分に浸透させることは難しい。これは、貝類はその身体(身や貝柱)が生息中に常時海水に露呈しており、いわば魚類の表層(例えば鱗や鱗の下地部分)と同様に海水の浸潤を防ぐように構成されているからである。つまり、貝類のむき身の全体をそのままの形で餌とする場合には加熱等(湯によるボイル、蒸気による蒸、電熱による加熱、オーブン加熱、レンジ加熱など)してむき身の表皮組織を変性させ、液体の浸潤が容易となるように処理することが好ましい。このような理由から貝のむき身全体でなく、貝の身を切断して切り身を利用する場合には加熱処理をしなくても発酵時液体の浸潤が十分できる。なお、むき身は貝類の体の足、えら、入水管、出水管、肛門、腸、心臓、消化腺、胃、***、などをすべて含む部分で、二枚貝の場合には貝柱は除かれる。
「ステップ5」 準備した第二の動物の貝類の身の構成部位と準備した発酵時液体とを混合する。この混合(貝類の身の構成部位と発酵時液体との接触、浸潤)の際には、塩をさらに添加することが好ましい。また混合の際には発酵時液体と塩を第二の動物の貝類の身の構成部位にすり込むように力を加えてしごく動作をするのが良い。なお、発酵時液体と塩とを同時に貝類の身の構成部位に接触、浸潤させるのではなく、最初に発酵時液体を接触浸潤させ、その後、塩を加えた発酵時液体を接触浸潤させるように二段階でこの工程を行ってもよい。一段階で行うと接触させる液体の濃度が塩分のために高くなるために貝類の身の構成部位に対する発酵時液体の浸潤が十分でなくなったり、長時間かかったりするためである。なお、塩分を利用するのは貝類の身の構成部位の少なくとも表面の塩分濃度を高め、腐敗菌の侵入や繁殖を防止するためである。
「ステップ6」 ステップ5が完了後、冷暗所にて所定期間保管する。この期間は1日から1週間程度である。貝類の種類や、貝類の身の構成部位の大きさは、その餌によって狙う魚種によりまちまちである。このため冷暗所での保管期間はこれら貝類の種類や、貝類の身の構成部位の大きさに応じて適宜選択される。貝類の種類によって身の表面から身の内部へ発酵時液体が浸潤する効率が異なり、またその大きさによっても発酵時液体が浸潤する身の表面からの浸潤深さを最適化しなければならないからである。例えば、カワハギを狙う場合は、およそ貝類(例えば、あさり等)のむき身の最大幅が2cm~3cm程度が適しているが、その程度の大きさのあさりであれば、冷暗所での保管期間は、1日程度が好ましい。あるいは鯛類、チヌ、グレ、メジナなどの場合には最大幅が3cmから7cm程度の比較的大型の貝類、例えば、はまぐり、ホッキ貝、ホンビノス貝、ムール貝、ホタテ貝などが適しており、冷暗所での保管期間は加熱されたもので2日から3日程度が好ましく、未加熱だと3日から4日程度が好ましい。これによって第二の動物の構成部位に発酵時液体が浸潤、浸透し、釣り餌が完成する。
「ステップ7」完成した釣り餌は発酵時液体とともにビニール袋等に清潔な環境で密封する。その後流通経路に乗せる。
<実施形態1 発酵時液体の 塩分含有(請求は17、請求項18対応)>
前記発酵時液体には、塩分が含有されている。この理由は、第一の動物構成部位を発酵させるに際して塩分(塩)を含有すると、第一動物構成部位の水分活性が下げられ、細菌の繁殖を抑え、腐敗を抑えるからである。前記塩分の含有は発酵時液体の対全重量に対する重量%で15%以上、25%以下が好ましい。食塩の量がこの範囲よりも少なすぎたり多すぎたりすると、自然発酵が適切に行われず、6か月から1年程度で発酵時液体(液状化酒盗)を得ることはできない。酒盗原料を用いて液状化し発酵時液体を作成する場合は、液状化酒盗という。
<実験>
<実験 総論>
釣り餌本体となるボイルあさり(むき身)を用いて最適な酒盗抽出液(液状化酒盗)の対ボイルあさり重量%、加える塩分の対あさり重量%、軟化剤としてのリン酸塩の対あさい重量%を決定するために、以下の実験1~実験5を行った。軟化実験1、酒盗抽出液添加実験2、食塩添加実験3、食塩+酒盗抽出液添加実験4、機械的強度実験5を行った。
軟化実験1の目的は、ボイルあさりを軟化させるためのリン酸塩の最適な対ボイルあさり重量%を得ることである。評価項目は、柔軟性である。
酒盗抽出液添加実験2の目的は、ボイルあさりを漬け込む酒盗抽出液(液状化酒盗)の最適な対ボイルあさり重量%を得るための予備実験である。評価項目は、常温保存性(非変質性)、変色性、匂いの程度、付着性である。
食塩添加実験3の目的は、ボイルあさりに添加する最適な食塩の対ボイルあさり重量%を得るための予備実験である。評価項目は、常温保存性(非変質性)、変色性、匂いの程度、付着性である。
食塩+酒盗抽出液添加実験4の目的は、ボイルあさりに添加する最適な食塩と酒盗抽出液の最適な対ボイルあさり重量%を得ることである。評価項目は、常温保存性(非変質性)、変色性、匂いの程度、付着性である。
機械的強度実験5の目的は、本発明の酒盗抽出液(液状化酒盗)入りボイルあさり釣り餌と、生あさり釣り餌と、ボイルあさり釣り餌とについての機械的強度(匂いの程度含む)の比較実験によって加熱の有無による相違を得ることである。評価項目は、機械的強度、匂いの程度である。
<実験 評価項目総論>
本実施形態の釣り餌は、長期間に常温保存可能で、取扱い容易で、集魚効果(液状化酒盗)を備えたものを実現したものであり、常温で保存できるかを示す「常温保存性(非変質性)」、釣り人の手指に付着して汚れの原因になりやすいかを示す「付着性」、海中でひらひらと動き、釣りの対象魚の喰いつきやすさを示す「柔軟性」、第二の動物である貝類の身の構成部位の暗くなることを示す「変色性」、釣りの対象魚の集魚性に影響を与える第二の動物である貝類の身の構成部位の「匂いの程度」という評価項目(観点)から釣り餌の評価をボイルあさりのむき身を用いて行った。ここで、暗くなるとは、貝類のむき身(例えば、あさりのむき身等)が茶色っぽくなる程度を示している。
<実験 評価項目:常温保存性(非変質性)>
「常温保存性(非変質性)」とは、常温(例えば、気温25℃から35℃程度)状態での保存できる性質のことをいい、釣り餌の変質(主に腐敗性の観点)の度合いで判断する。評価方法は、「×:全体的に変質、△:部分的に変質、〇:ほとんど変質なし、◎:変質なし」のように評価した。
<実験 評価項目:変色性>
「変色性」とは、釣り餌の貝類の身が暗くなる(茶色っぽくなる)度合いのことをいう。貝類の身が暗くなると釣り餌として使用したときに喰いつきが悪くなることが知られている。評価方法は、「×:暗く変色、△:やや暗く変色、〇:部分的に暗く変色、◎:変色なし」のように評価した。
<実験 評価項目:匂いの程度>
「匂いの程度」とは、人間(試験者)の嗅覚で感じる度合いをいう。釣り餌の匂いの程度により魚の集魚効果が変わるので、評価項目としている。
評価方法は、「×:ほとんど感じられない、△:僅かに感じる、〇:やや感じる、◎:強く感じる」のように評価した。
<実験 評価項目:付着性>
「付着性」とは、実験者の手指への付着の度合いをいう。後記する酒盗抽出液(液状化酒盗)を用いる場合は、付着性が高まると、釣り餌として使用したときに手指が汚れやすくなることと、それに伴い手指に匂いがつきやすいことにより使用感が悪くなる。釣り餌が手にベタベタつくと、使用感が悪いので、取扱い容易性の観点から評価項目としている。
評価方法は、「×:かなり付着、△:やや付着、〇:僅かに付着、◎:ほとんど付着しない」のように評価した。
<実験 評価項目:柔軟性>
「柔軟性」とは、釣り餌の固い柔らかいなどの柔軟性のことをいう。釣り餌として使用したとき、柔軟性が高いと釣り餌が海中でひらひらと動き、釣りの対象魚の喰いつき度合いが良くなる。評価方法は、「×:固い、△:やや硬い、〇:僅かに固い、◎:柔らかい」のように評価した。
<実験 評価項目:機械的強度>
「機械的強度」とは、釣り餌が釣り針に引っかかっているあさりの身のたれ(伸び)の外観状態をいう。釣り餌として使用したとき、釣り餌が針に引っかかっている時間が長いほど、釣果が期待できる。評価方法は、「×:かなり伸びる:、△:やや伸びる、〇:ほとんど伸びない、◎:変化なし」のように評価した。
この実験の際、水道の蛇口直下に釣り針を設置し、その釣り針に各種あさり(むき身)の釣り餌を引っ掛け流水がかかる実験環境(図22~図24参照)を構築した。そして、流水前と流水後を比較した。
<実験 利用する酒盗抽出液(液状化酒盗)>
実験2と実験4で利用する酒盗抽出液(液状化酒盗)は以下のように調整された。
すなわち、酒盗抽出液(液状化酒盗)である発酵時液体を産生するための投入原材料の成分割合は、図3(A)に示すように、カツオの胃:78.8%、食塩19.7%にて生成される酒盗抽出液(液状化酒盗)に、アルコール1%、増粘剤0.50%を加えて使用した。なお、酒盗の生成には、カツオなどの肉(胃を含む)の投入原材料全重量に対する割合が75%以上で85%以下に、食塩の投入原材料全重量に対する割合が15%以上で25%以下が好ましい。食塩の量がこの範囲よりも少なすぎたり多すぎたりすると、自然発酵が適切に行われず、6か月から1年程度で酒盗(発酵時液体)を得ることはできない。従って、実験で採用する酒盗抽出液(液状化酒盗)は、上記の最適範囲のほぼ中間値を用いて調整したものである。
<軟化実験1>
<軟化実験1の目的>
軟化実験1の目的は、ボイルあさりを軟化させるためのリン酸塩の最適な対ボイルあさり重量%を得ることである。
釣り餌には適度の柔軟性があることが好ましい。第二の動物である貝類の身の構成部位にボイルされた貝の身を使用した場合は身が締まっているので、身を軟化させてさらに発酵時液体への漬け込み時の浸透性を良くする。一例として軟化剤としてのリン酸塩を用いて、ボイルにより締まった貝の身を軟化させる。また軟化させることによって針につけて海中を漂わせた場合にひらひらと舞ってこれを見た魚に釣り餌を生きた捕食対象が回遊しているように見せる効果がある。
<軟化実験1の内容>
第二の動物の貝類の身の構成部位としてボイルあさり(貝のむき身)を用いてボイルあさりのむき身の軟化実験を行った。
ボイルあさり100gに、あさり総重量の1%,2%,6%,8%,10%のリン酸塩及び、あさり総重量と同量の水100gを加え、冷蔵庫(2.5℃)で24時間保管した。その後、冷蔵庫からボイルあさりを取り出し、あさり身の柔らかさを判断した。
<軟化実験1の評価結果>
図2に示すように、リン酸塩無添加区では、柔軟性は変化しなかった。
対ボイルあさり総重量のリン酸塩1%では、僅かに固い程度まで軟化した。
対ボイルあさり総重量のリン酸塩2%では、柔らかくなった。
対ボイルあさり総重量のリン酸塩6%~10%ではリン酸塩2%と同様の軟化度合いであった。
<軟化実験1の考察>
リン酸塩を使用することでボイルあさりの身を軟化させることができる。
リン酸塩2%以上では軟化度が変化しなかったため、リン酸塩の添加上限は2%であると思われる。
<酒盗抽出液添加実験2>
<酒盗抽出液添加実験2の目的>
酒盗抽出液添加実験2の目的は、ボイルあさりを漬け込む酒盗抽出液(液状化酒盗)の対ボイルあさり重量%とこれに加える塩分量の最適組合せ実験(「食塩+酒盗抽出液添加実験4」)の際にどの範囲で酒盗抽出液の対ボイルあさり重量%を振ればよいのかを見出すための予備実験である。
評価項目は、常温保存性(非変質性)、変色性、匂いの程度、付着性である。
<酒盗抽出液添加実験2の内容>
第二の動物である貝類の身の構成部位としてボイルあさりの身を用いて酒盗抽出液(液状化酒盗)について実験を行った。
まず、事前にボイルあさり100gは、あさり総重量の2%のリン酸塩(2g)をあさり重量と同量の水(100g)に溶かしたものに24時間漬け込んで液切したものを準備した。
ボイルあさり(むき身)100gに前記調整によって準備した酒盗抽出液(液状化酒盗)をボイルあさり100gの総重量に対する割合で、0~80%の範囲で適宜その割合を決めて漬込処理を行った。漬込処理後、酒盗抽出液(液状化酒盗)のあさりの身への浸潤を図るために24時間冷蔵保管した。その後、これを取り出して、平均気温25℃、湿度70%以下の条件で室内に72時間放置し、ボイルあさりの状態の変化を観察した。
<酒盗抽出液添加実験2の評価結果>
図3(B)に示すように、対ボイルあさり総重量の酒盗抽出液(液状化酒盗)10%では部分的に変質した。変色は部分的に見られた。
対ボイルあさり総重量の酒盗抽出液(液状化酒盗)20%ではほとんど変質が抑えられ、変色も抑えられた。
対ボイルあさり総重量の酒盗抽出液(液状化酒盗)30%以上では変質も変色も抑えられた。
匂いの程度については対ボイルあさり総重量の酒盗抽出液(液状化酒盗)20%以上で強く感じられた。
付着性については、酒盗抽出液(液状化酒盗)の割合が上がるにつれ、高くなった。
以上の結果から、総合的に判断すると、酒盗抽出液の対ボイルあさり重量%で最適化実験でパラメータとして振るのに適していると判断できる範囲は10%から概ね30%に近い範囲であると結論付けた。その理由は、付着性の評価結果が主に問題となるからである。図3(B)の評価結果では、付着性が大部分でやや付着の評価である。この傾向は当然ながら酒盗抽出液(液状化酒盗)の割合が高まるにつれて悪評価となる。しかし、次に注意すべき項目として常温保存性(非変質性)があり、これに関しては付着性とはトレードオフの関係にある。付着性のやや付着の評価結果は実は酒盗抽出液(液状化酒盗)の割合が上がってゆく中で同じ評価であっても徐々に悪化している。そこで、採用可能な酒盗抽出液(液状化酒盗)の割合は、10%から50%の範囲であるが、最適化実験の際には塩も添加されることから常温保存性(非変質性)が多少不利な側にパラメータ範囲を寄せて10%から50%の中で10%から30%程度と判断する。
<食塩添加実験3>
<食塩添加実験3の目的>
食塩添加実験3の目的は、ボイルあさりに添加する最適な食塩の対ボイルあさり重量%を得るための予備実験である。
評価項目は、常温保存性(非変質性)、変色性、匂いの程度、付着性である。
<食塩添加実験3の内容>
第二の動物である貝類の身の構成部位としてボイルあさり(貝のむき身)を用いて食塩添加について食塩添加実験を行った。
まず、事前にボイルあさり100gは、あさり総重量の2%のリン酸塩(2g)をあさり重量と同量の水(100g)に溶かしたものに24時間漬け込んで液切したものを準備した。
事前準備した軟化したボイルあさり100gに、あさり総重量の0%~80%の食塩を添加・塗布し、平均気温25℃、湿度70%以下の条件で室内に72時間放置し、ボイルあさりの状態の変化を観察した。
<食塩添加実験3の評価結果>
図4に示すように、対ボイルあさり総重量の食塩10%では常温保存性(非変質性)は向上するものの、部分的な変質が見られた。
対ボイルあさり総重量の食塩20%以上では変質は見られなかった。
対ボイルあさり総重量の柔軟性は食塩30%以上で低下していった。
<食塩添加実験3の考察>
以上の結果から、総合的に判断すると、食塩の対ボイルあさり重量%で最適化実験でパラメータとして振るのに適していると判断できる範囲は概ね20%から25%の範囲であると結論付けた。その理由は、常温保存性(非変質性)と柔軟性の評価結果の両方が重要だからである。
第二の動物である貝類の身(ボイルあさり)の重量に対して食塩を重量%で20%以上使用したとき、ボイルあさりの変質を防止することができる。10%では部分的な変質が見られた。
柔軟性については、柔軟性が高いほど餌として使用したときに魚の口に餌が入りやすくなるため、魚の喰いつきがよくなる。対ボイルあさり総重量の食塩30%以上で柔軟性が低下し対ボイルあさり総重量の食塩40%でやや固さを感じるようになった。
採用可能な範囲としては、食塩の対ボイルあさり重量%で10から30%の範囲であるが、常温保存性(非変質性)の値のパラメータを少し20%に近い値に寄せて、柔軟性の値のパラメータを30%より少ない値に寄せ、食塩の対ボイルあさり総重量の概ね20%~25%の範囲が採用に適した範囲であると判断する。
<食塩+酒盗抽出液添加実験4の目的>
食塩+酒盗抽出添加実験4の目的は、ボイルあさり添加する最適な食塩と酒盗抽出液の最適な対ボイルあさり重量%を得ることである。
評価項目は、常温保存性(非変質性)、変色性、匂いの程度、付着性である。
<食塩+酒盗抽出液添加実験4の内容>
第二の動物である貝類の身の構成部位としてボイルあさり(むき身)を用いて食塩と酒盗抽出液(液状化酒盗)とを合わせて実験を行った。その実験結果を図5から図12に示す。以下の説明では、酒盗抽出液と液状化酒盗は同じ意味で用いている。
まず、事前にボイルあさり100gは、あさり総重量の2%のリン酸塩(2g)をあさり重量と同量の水(100g)に溶かしたものに24時間漬け込んで液切したものを準備した。
事前準備した軟化したボイルあさり(むき身)100gに対あさり総重量の19%~26%の食塩と、対あさり総重量の13%~32%の酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加・撹拌し、平均気温25℃、湿度70%以下の条件で室内に72時間放置し、ボイルあさりの状態の変化を観察した。
<食塩+酒盗抽出液添加実験4の評価結果>
<食塩+酒盗抽出液添加実験4の評価結果 食塩添加量:19%+酒盗抽出液>
図5に示すように、対ボイルあさり総重量の19%の食塩に同じく対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加したところ、常温保存性(非変質性)については、すべての濃度で変質は見られなかった。変色性については対ボイルあさり総重量の13%~16酒盗抽出液(液状化酒盗)でやや暗く変色、対ボイルあさり総重量の17%、18%酒盗抽出液(液状化酒盗)で部分的に暗く変色となったが、対ボイルあさり総重量の19%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)では変色は抑えられた。匂いの程度については、対ボイルあさり総重量の13%,14%酒盗抽出液(液状化酒盗)でやや感じる程度であり対ボイルあさり総重量の15%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)では強く感じた。柔軟性については、いずれの濃度でも柔らかかった。付着性については、対ボイルあさり総重量の13%~28%酒盗抽出液(液状化酒盗)で僅かに付着、対ボイルあさり総重量の29%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)でやや付着となった。ここで、図5の実験は、上述した食塩+酒盗抽出液添加実験4の内容と同じ条件で行ったものである。
<食塩+酒盗抽出液添加実験4の評価結果 食塩添加量:20%+酒盗抽出液>
図6に示すように、対ボイルあさり総重量の20%の食塩に同じく対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・柔軟性については、対ボイルあさり総重量の19%の食塩に対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加したときと大きな差は見られなかった。変色性については対ボイルあさり総重量の13%、14%酒盗抽出液(液状化酒盗)でやや暗く変色、対ボイルあさり総重量の15%~18%酒盗抽出液(液状化酒盗)で部分的に暗く変色となったが、対ボイルあさり総重量の19%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)では変色は抑えられた。匂いの程度については、対ボイルあさり総重量の13%酒盗抽出液(液状化酒盗)で僅かに感じ、対ボイルあさり総重量の14%酒盗抽出液(液状化酒盗)でやや感じる、対ボイルあさり総重量の15%酒盗抽出液(液状化酒盗)以上で強く感じた。付着性については、対ボイルあさり総重量の13%~30%酒盗抽出液(液状化酒盗)では僅かに付着、対ボイルあさり総重量の31%、32%酒盗抽出液(液状化酒盗)ではやや付着となった。ここで、図6の実験は、上述した食塩+酒盗抽出液添加実験4の内容と同じ条件で行ったものである。
<食塩+酒盗抽出液添加実験4の評価結果 食塩添加量:21%+酒盗抽出液>
図7に示すように、対ボイルあさり総重量の21%の食塩に同じく対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・柔軟性・付着性については、対ボイルあさり総重量の20%の食塩に対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加したときと大きな差は見られなかった。ここで、図7の実験は、上述した食塩+酒盗抽出液添加実験4の内容と同じ条件で行ったものである。
<食塩+酒盗抽出液添加実験4の評価結果 食塩添加量:22%+酒盗抽出液>
図8に示すように、対ボイルあさり総重量の22%の食塩に同じく対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・柔軟性については、対ボイルあさり総重量の21%の食塩に対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加したときと大きな差は見られなかった。付着性については、対ボイルあさり総重量の13%~30%酒盗抽出液(液状化酒盗)で僅かに付着、対ボイルあさり総重量の31%、32%酒盗抽出液(液状化酒盗)ではやや付着となった。ここで、図8の実験は、上述した食塩+酒盗抽出液添加実験4の内容と同じ条件で行ったものである。
<食塩+酒盗抽出液添加実験4の評価結果 食塩添加量:23%+酒盗抽出液>
図9に示すように、対ボイルあさり総重量の23%の食塩に同じく対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・柔軟性・付着性については、対ボイルあさり総重量の22%の食塩に対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加したときと大きな差は見られなかった。ここで、図9の実験は、上述した食塩+酒盗抽出液添加実験4の内容と同じ条件で行ったものである。
<食塩+酒盗抽出液添加実験4の評価結果 食塩添加量:24%+酒盗抽出液>
図10に示すように、対ボイルあさり総重量の24%の食塩に同じく対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・柔軟性については、対ボイルあさり総重量の23%の食塩に対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加したときと大きな差は見られなかった。付着性については対ボイルあさり総重量の13%~31%酒盗抽出液(液状化酒盗)で僅かに付着、対ボイルあさり総重量の32%酒盗抽出液(液状化酒盗)でやや付着となった。ここで、図10の実験結果は、上述した食塩+酒盗抽出液添加実験4の内容と同じ条件で行ったものである。
<食塩+酒盗抽出液添加実験4の評価結果 食塩添加量:25%+酒盗抽出液>
図11に示すように、対ボイルあさり総重量の25%の食塩に同じく対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・変色性・匂いの程度・付着性については、対ボイルあさり総重量の24%の食塩に対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加したときと大きな差は見られなかった。柔軟性については、対ボイルあさり総重量の13%酒盗抽出液(液状化酒盗)で僅かに固くなり、対ボイルあさり総重量の14%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)で柔らかくなった。ここで、図11の実験結果は、上述した食塩+酒盗抽出液添加実験4の内容と同じ条件で行ったものである。
<食塩+酒盗抽出液添加実験4の評価結果 食塩添加量:26%+酒盗抽出液>
図12に示すように、対ボイルあさり総重量の26%の食塩に同じく対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加したところ、常温保存性(非変質性)・柔軟性については、対ボイルあさり総重量の25%の食塩に対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)を添加したときと大きな差は見られなかった。変色性については、対ボイルあさり総重量の13%、14%酒盗抽出液(液状化酒盗)ではやや暗く変色、対ボイルあさり総重量の15%酒盗抽出液(液状化酒盗)では部分的に暗く変色、対ボイルあさり総重量の16%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)では変色なしとなった。匂いの程度については、対ボイルあさり総重量の13%~17%酒盗抽出液(液状化酒盗)では僅かに感じる、対ボイルあさり総重量の18%、19%酒盗抽出液(液状化酒盗)ではやや感じる、対ボイルあさり総重量の20%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)でかなり感じた。柔軟性については対ボイルあさり総重量の13%、14%酒盗抽出液(液状化酒盗)で僅かに固い、対ボイルあさり総重量の15%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)で柔らかくなった。付着性については対ボイルあさり総重量の13%~32%酒盗抽出液(液状化酒盗)で僅かに付着となった。ここで、図12の実験結果は、上述した食塩+酒盗抽出液添加実験4の内容と同じ条件で行ったものである。
<食塩+酒盗抽出液添加実験4の考察>
以上の結果から、食塩と酒盗抽出液(液状化酒盗)をボイルあさりに添加することで、食塩の効果により常温での保存性が高まり、酒盗抽出液(液状化酒盗)の効果により変色が防止され、匂いが付加されることにより集魚力が向上する。食塩と酒盗抽出液(液状化酒盗)が混ざることにより、食塩が酒盗抽出液(液状化酒盗)の付着性を低下させ、酒盗抽出液(液状化酒盗)単体でボイルあさりを漬け込むときよりも使用感が向上する。
対ボイルあさり総重量の19%食塩では変色の発生が多く見られ、20%食塩では変色が改善され、対ボイルあさり総重量の26%食塩では変色が発生し、匂いの低下が多くなるため、対ボイルあさり総重量の20%~25%の間が最適な食塩重量%と考えられる。
対ボイルあさり重量に対する酒盗抽出液(液状化酒盗)の重量%は、対ボイルあさり重量に対する食塩重量%が20%~25%の値では、食塩重量%が20%のときに酒盗抽出液(液状化酒盗)の重量%が14%で変色の発生や匂いの低下が起こり、酒盗抽出液(液状化酒盗)の重量%が30%で付着性の悪化が見られることや、対ボイルあさり重量に対する食塩重量%が25%のときに酒盗抽出液(液状化酒盗)の重量%が14%で変色の発生、匂いの低下が見られるため、対ボイルあさり総重量の15%~30%が最適な酒盗抽出液(液状化酒盗)の重量%だと考えられる。
<機械的強度実験5>
第二の動物である貝類の身の構成部位としてあさり(むき身)を用いて生あさりとボイルあさりと本発明の酒盗抽出液(液状化酒盗)に浸漬したあさりの餌としての機械的強度について実験を行った。ここで、魚の集魚効果に与える匂いの程度も実験した。その実験結果を図13に示す。
<機械的強度実験5の目的>
機械的強度実験5の目的は、本発明の酒盗抽出液(液状化酒盗)入りボイルあさりと、生あさりと、ボイルあさりとについての機械的強度(匂いの程度含む)の比較実験によって加熱の有無による相違を得ることである。
評価項目は、機械的強度、匂いの程度である。
生のあさりをボイルすることによる、釣り餌としての機械的強度の変化を調べる。釣り餌として使用するためには、針に餌を引っかけてある程度の時間針についている必要がある。餌が針からすぐ外れてしまうようであれば、釣り餌の役目を果たさないからである。また、釣り餌として釣果を期待するためには、集魚効果も重要なので、流水にさらしたときの生あさり・ボイルあさり・酒盗抽出液(液状化酒盗)に浸漬したあさりの匂いの程度の変化を調べる。
<機械的強度実験5の内容>
図15の製造工程によって製造した本発明の対ボイルあさり総重量の20%酒盗抽出液(液状化酒盗)に浸漬した酒盗抽出液(液状化酒盗)入りボイルあさり(むき身)と、生あさり(貝殻から身を外したむき身)と、ボイルあさり(単にボイルしたあさりのむき身)とを使用して比較実験を行った。
図22~図24に示すような実験環境において、それぞれの餌を釣り針にかけ、水道の蛇口直下に釣り糸でぶら下げ固定し、30分間直接水があたるように流水を行った。そして、30分経過後の外観・匂いの程度を観察した。図22では、水道の蛇口直下に釣り餌を付ける釣り針をかけた状態を示し、図23では釣り針に生あさりをつけて流水を行った例を示し、図24ではボイルあさりをつけて流水を行った例を示している。
それぞれの釣り餌(検体)について5回ずつ実験を行った。ボイルあさりは、あさり重量の2%のリン酸塩をあさり重量と同量の水に溶かしたものに24時間漬け込んだものを使用した。
<機械的強度実験5の評価結果>
機械的強度については、生のあさりでは30分流水後に、2検体でかなり伸びる、3検体でやや伸びるという結果になった。ボイルあさりでは30分流水後に、2検体でほとんど伸びない、3検体で変化なしという結果になった。本発明のボイル+酒盗抽出液(液状化酒盗)のあさりでは30分流水後に、2検体でほとんど伸びない、3検体で変化なしという結果になった。
匂いの程度については、生のあさり、ボイルのあさりは30分流水後には、すべての検体でほとんど流水前の匂いが感じられなかった。本発明のボイル+酒盗抽出液(液状化酒盗)のあさりでは30分流水後に、酒盗の匂いをやや感じることができた。
<機械的強度実験5の考察>
以上のことから、生のあさりよりもボイルあさりの方がより機械的強度(強度)が高いため、餌として使用したときにボイルあさりの方が長く針に留まり餌持ちが良いと思われる。
本発明のボイル+酒盗抽出液(液状化酒盗)のあさりでは、酒盗抽出液(液状化酒盗)にボイルあさりを漬け込むことで、匂いが増強され、生のあさりやボイルあさりを使用したときよりも長く水中で匂いが発せられ、それにより集魚効果が持続すると思われる。
これらのことから、第二の動物である貝類の身の構成部位としてボイルあさりを用い、第二の動物である貝類の身の構成部位(あさりの身(むき身))の重量に対して所定重量%の発酵時液体(酒盗抽出液)と所定重量%の食塩を加えて釣り餌を製造することにより、常温で長期間保存でき、常温での流通経路に乗せられる釣り餌を実現することができる。上記実験では、気温25℃の環境で行ったが、実際に製造した釣り餌を釣りの現場で使用したところ、夏季の30度を超える気温下での釣り餌の変質が見られなかったので、特別な保管環境(冷凍庫や冷蔵庫)を整備することなく、通常の常温環境下で保管し、密封した容器(袋を含む)に入れて釣り餌の形態で釣具店や通販サイトで販売することができる。数か月の長期間でも、釣り餌として十分使用可能である。
なお、あさりの肉質から推定して、第二の動物である貝類の身の構成部位として、あさりの身(むき身)以外の貝類の身を利用した場合にも同様の結果が得られると考えられる。同様の結果が得られると考えらえる貝類の身としては、アカガイ、アコヤガイ、アサリ、アメフラシ、アワビ、イモガイ、ウバガイ(ホッキ貝)、ウミウシ、エゾバイ科、カサガイ、カキ(牡蠣)、カタツムリ(陸に生息する巻貝の総称)、カモガイ、カラスガイ、サクラガイ、サザエ、サラガイ(皿貝、白貝、女郎貝、満珠貝、万寿貝)、シジミ、シャコガイ、スイジガイ、タイラギ、タカラガイ、タニシ、ツブ、ツメタガイ、トコブシ、トリガイ、ナメクジ、バイ、ハイガイ、パウア貝、バカガイ(アオヤギ)、ハマグリ、ヒオウギガイ、フナクイムシ、フルイガイ、ホタテガイ、ホラガイ、ホンビノスガイ、マテガイ、ミルクイ、ムール貝、夜光貝、ワスレガイのいずれか一以上の貝殻から外された身の全体であるむき身などが使用できる。
<実施形態1 釣りの場面での利用形態>
釣りの場面では上記説明した釣り餌を釣り針へ差込み、水中(海中)へ投入してあたりを待つ。
「釣り針への差込」とは、釣り針を釣り餌の端部に差し込むことをいう。釣り針の先端が釣り餌から突出してもよいし、釣り餌の内部にとどまって外部に露出しないように差込を行ってもよい。また、一つの釣り針に対して複数の釣り餌を差込してもよく、さらに異なる種類の第二の動物の構成部位からなる釣り餌を差込してもよい。また釣り餌を差込する直前又は差込した直後に酒盗液を塗り付けて匂いを強くするようにしてもよい。さらに、釣り餌が着色されている場合には、異なる着色の釣り餌を一つの釣り針に差込してもよい。
<実施形態1 製造方法:基本(請求項10対応)>
本実施形態の釣り餌の製造方法は、図14に示すように、酒盗を準備する酒盗準備工程(工程1401)と、準備された酒盗を加熱・撹拌して酒盗の第一の動物構成部位を溶解して液状化して液状化酒盗とする加熱・撹拌工程(工程1402)と、加熱され液状化した液状化酒盗を冷却する冷却工程(工程1403)と、冷却された液状化酒盗に、加熱されたむき身となった第二の動物である貝類の身の構成部位を漬け込む漬込工程(工程1404)と、からなる第二の動物である貝類の身の構成部位からなる釣り餌の製造方法である。ここで、酒盗準備工程は、この製造工程とは別に予め、かつお、まぐろなどの内臓(胃や腸などであって、内面及び外面を十分に清浄にしたもの)に塩を加え、一定の温度管理の下、塩蔵で6ヶ月~1年程度熟成させ、自己消化酵素により自然発酵された酒盗を準備する。加熱・撹拌工程1402は、準備された酒盗を30分から1時間程度40~45℃以上で加熱・撹拌し完全に溶解させ、液状化した液状化酒盗を作る。冷却工程1403では、加熱された液状化酒盗を30℃以下まで冷却を行う。加熱された40~45℃以上の液状化酒盗を貝類の身の構成部位に漬け込むと、原料としての加熱されている貝類の身(貝類のむき身)が変質する恐れがあるからである。漬込工程1404では、貝類のむき身に冷却された液状化酒盗を漬け込む作業を行う。この漬込工程における漬け込み作業風景と漬け込み作業後の塩添加風景を図17(A)(B)に示す。
<実施形態1 製造方法:漬込工程に液状化酒盗と塩の混合工程を含む(請求項11対応)>
釣り餌の製造方法において、前記漬込工程1404は対第二の動物構成部位重量%で15%以上30%以下の酒盗と、対第二の動物構成部位重量%で20%以上25%以下の塩を混合する酒盗塩混合工程を含む釣り餌の製造方法である。ここで、漬込工程1404では、上述した実験4の結果から第二の動物構成部位(貝類の身やむき身)に対して重量%で15%以上30%以下の重量の液状化酒盗(酒盗)と対第二の動物構成部位(貝類の身やむき身)重量%で20%以上25%以下の塩を混合する酒盗塩混合工程を有する。酒盗塩混合工程は、漬け込み液としての発酵時液体(液状化酒盗)と塩を混合する工程である。この酒盗塩混合工程における作業風景を図17(A)(B)に示す。第二の動物構成部位としての貝類の身やむき身の水分活性を所定値以下に下げて常温保存性を向上させるためと釣りで狙う対象魚の集魚力を向上するために、液状化酒盗(酒盗抽出液)と塩(食塩)を混合する。これらの液状化酒盗と塩を合わせて原料としての貝類の身やむき身の漬け込み液を作成し、貝類の身(例えば、むき身)の漬け込みを行う。後記する図15、図16の製造方法のフローチャートでは、液状化酒盗(集魚剤)に貝類の身(むき身)に塩を加えないで漬け込むことでエキスをしっかり浸透させた後に、塩添加工程を行うようにしている。塩混合を液状化酒盗への浸漬と同時に行えば、貝類の身に液状化酒盗が浸透する度合が少なくなったり、所定量浸透させるために必要な時間が長くなったりする。
<実施形態1 製造方法:増粘剤等追加工程を含む(請求項12対応)>
釣り餌の製造方法において、前記冷却工程1403の後にアルコールを溶媒として増粘剤を液状化酒盗に加える増粘剤等追加工程をさらに有する釣り餌の製造方法を採用することができる。増粘剤等追加工程は、冷却された液状化酒盗にアルコールを溶媒として増粘剤を使用し、液状化酒盗の粘度を上げて漬け込み液(液状化酒盗のベースとなる)を作成した後に漬込工程1404の漬け込み作業を行う。ここで、酒盗原料の重量に対して増粘剤を約0.5%程度、酒盗原料の重量に対してアルコールを約1%程度使用する。このアルコールは増粘剤の溶媒として用いている。液状化酒盗を撹拌しながらアルコールに増粘剤を溶いたものを混合する。増粘剤を利用することで液状化酒盗の粘度が向上し、第二の動物である貝類の身の構成部位に対する付着性が向上する。従って集魚効果が向上する。
増粘剤の種類としては、カラギナン(加工ユーケマ藻類、精製カラギナン、ユーケマ藻末)、多糖類、キサンタンガム、ペクチンなどを挙げることができるがこれに限定されるものではない。
<実施形態1 製造方法:漬込工程の前に着色剤追加工程を有する(請求項13対応)>
釣り餌の製造方法において、前記漬込工程1404は、着色剤を加える着色剤追加工程を含む釣り餌の製造方法であってもよい。着色剤追加工程は漬け込み作業を行う前に着色剤を加えることが好ましい。着色剤は液状化して浸透させるので、漬け込み前に着色を行うと、浸透性が良くなるからである。ここで、使用される着色剤の詳細については後記するので、ここでは説明を省略する。着色を行う場合は、貝類の身(むき身)の全重量の0.05~1%の着色剤(着色料)を着色剤重量の約100倍程度の水に溶き、漬け込み液に混合する。レッド、ブルー、イエローなどの色分けする場合は、漬け込み用の容器を別々に分けて使用する。そうしないと、色が混じってしまうからである。
<実施形態1 製造方法:第二の動物構成部位は、貝類の身の構成部位(あさりの加熱済むき身又は未加熱むき身)である(請求項14対応)(請求項15対応)>
釣り餌の製造方法において、第二の動物構成部位は、貝類の身の構成部位である釣り餌の製造方法を採用することができる。ここで、貝類の身の構成部位としてはあさりの加熱済むき身又は未加熱むき身を用いる。釣り餌としてのあさりのむき身の大きさは狙う対象魚によって決定される。例えば、あさりはカワハギ用の釣り餌として良く用いられ、その場合は最大幅が2cm~3cmの大きさぐらいが好ましい。カワハギはおちょぼ口なので、なるべく小形の釣り餌の方が喰いつきが良いからである。あさりより大きな貝を釣り餌に使用する場合は、適度にカットして使用する。ボイル冷凍あさりは市場では大きさごとに販売されているので、小さいサイズを購入すれば、殻付きあさりを利用してむき身を選別する必要がないので、釣り餌の材料として無駄がない。
<実施形態1 製造方法:漬込後 冷蔵保存をする工程を含むもの(請求項16対応)>
釣り餌の製造方法において、漬込工程1404の後に漬込まれた状態で冷蔵保管をする冷蔵保管工程をさらに有する釣り餌の製造方法を採用することができる。冷蔵保管工程は酒盗抽出液(液状化酒盗)と塩を混合した漬け込み液を第二の動物の構成部位としての貝類の身(むき身)に浸透させる工程である。着色剤で着色する場合は、色分けした保管ケース(容器)を用いて別々に冷蔵保管する。所定温度以下で保管しないと、発酵時液体(液状化酒盗)が未浸透の第二の動物である貝類の身の構成部位に細菌等が侵入し繁殖する恐れがあるからである。通常は10度以下に保つ冷蔵庫などを利用する。作業現場が低温管理されていれば、必ずしも冷蔵庫に入れなくてもよい。
<実施形態1 製造方法:酒盗準備工程 塩分調整サブ工程を有する工程を含むもの(請求項19、20対応)>
釣り餌の製造法において、酒盗準備工程1401で使用される液状化酒盗は塩分を含有する釣り餌の製造方法である。酒盗準備工程1401は、前記液状化酒盗の塩分の含有は前記液状化酒盗の対全重量に対する重量%で15%以上、25%以下となるように酒盗を準備する塩分調整サブ工程を有する釣り餌の製造方法を採用することができる。釣り餌の常温保存性を考慮して塩分調整を行う。塩分調整の理由は、段落[0055]で説明したとおりである。
<実施形態1 製造方法:漬込工程 漬込サブ工程を含むもの(請求項21対応)>
釣り餌の製造方法において、漬込工程1404は対第二の動物構成部位重量%で15%以上30%以下の液状化酒盗に漬込む前漬込サブ工程と、前漬込サブ工程の後に対第二の動物構成部位重量%で20%以上25%以下の塩を混合する後漬込サブ工程を含む釣り餌の製造方法を採用することができる。これは、貝類の身(むき身)を液状化酒盗単体に漬け込んだ後に塩を混合させると、貝類の身(むき身)全体にしっかりとした浸透が行えるからである。
このようにして製造された釣り餌は、第一の動物の構成部位の発酵によって産生された発酵時液体(液状化酒盗)で特に食塩を含むものが第二の動物である貝類の身の構成部位に十分に浸透し、又は表面が前記発酵時液体(液状化酒盗)でおおわれるように構成されるので、常温で長期間保存ができる効果が表れる。従って、常温での流通経路に乗せられる。このような釣り餌および釣り餌の製造方法を提供することができる。
<実施形態2>
実施形態2は、主に請求項2に対応する釣り餌の実施形態である。
<実施形態2 概要>
本実施形態2は、実施形態1を基本としつつ、第一の動物は魚類であり、前記発酵は酒盗を製造するための発酵であるものである。
<実施形態2 構成の説明>
第一の構成部位として魚類が適している。釣り餌としては魚類が日常的に食している魚類の匂いを餌に加えることが好ましいからである。そして、第一の動物の構成部位である魚類の構成部位を用いて発酵時産生液体として酒盗を生成するとともに第二の動物である貝類の身の構成部位にその酒盗を浸透又は/及びまぶして用いる。
「魚類」とは、脊椎動物亜門から四肢動物を除外した動物群のことをいい、日常語で魚(さかな)と呼ばれる動物である。ここで、魚類の構成部位としては、カツオ、マグロの胃や腸など内臓や皮等を用い、清浄して使用する。骨のついたものでも良い。
「酒盗」とは、カツオ、マグロの胃や腸に食塩を追加し、一定温度で6ヶ月~1年塩蔵熟成させ、自己消化酵素により自然発酵させたものをいう。本実施形態では、この酒盗は液状化された状態の液状化酒盗を用いて釣り餌を製造する。
酒盗は、魚(うお)ホルモンと言える魚介の内臓を使った食品で脂肪分がほぼゼロである、魚介のホルモンを使った食品の一つである。酒盗は低脂肪でオルチニンが豊富なうまみ成分の宝庫であり、長期間に渡り塩蔵熟成する生産手法が特色で、100gの酒盗に天然のうまみ成分(アミノ酸)は約5700mg含まれている。
作り方としては、カツオ、マグロの胃や腸など内臓や皮等を塩水で洗い、30分から100分程度薄塩水に浸けて血を抜いてから取り出し、塩を軽く振ってザルなどに入れ、1時間から2時間程度置く。その後、ザルで水を切り、タオル等で水気を拭き、まんべんなく塩をまぶして塩蔵する。塩蔵は、食料保存方法であると共に、食材の風味を作り変える手段である。なお、好塩菌は、塩蔵状態の食品中でも活動を行い有機代謝することによって食品の発酵を行うことができる。酒盗の発酵は、この好塩菌によって行われ、この活動、並びに高塩分濃度環境により腐敗菌の侵入並びに活動を抑止する。塩蔵は、外気にできるだけさらされない密封容器などにて低温状態で行う。6か月から1年程度この状態で熟成させると、魚介類の内臓は当初サイズより発酵により湿った状態で軟化する。
「第一の動物と第二の動物の関係」は、本実施形態は釣り餌用であるので、第一の動物の構成部位を用いて産生された酒盗を第二の動物である貝類の身の構成部位に浸透又は/及びまぶして用いる。第一の動物の魚類の構成部位によって産生された発酵時液体(液状化酒盗)が第二の動物である貝類の身の構成部位が釣り餌本体を構成し、釣り餌に集魚効果を付与する機能を果たす関係である。
このように、実施形態2によれば、実施形態1に加え、集魚効果を有する液状化酒盗をベースとした釣り餌が実現できる。
<実施形態3>
実施形態3は、主に請求項3、4に対応する釣り餌の実施形態である。
<実施形態3 概要>
本実施形態3は、実施形態1、2を基本としつつ、第二の動物である貝類は、アサリ、アカガイ、カラスガイ等であり、第二の動物であるその貝類の身は、貝殻から外された身の全体であるむき身であるものである。
<実施形態3 構成の説明>
釣り餌本体を構成する貝類は昔から釣り餌として用いられてきた。この貝類を釣り餌として用いる場合は釣り針に引っかけられる必要があるので、貝類の身は、貝殻から外された身の全体であるむき身が適している。
「第二の動物である貝類」は、アカガイ、アコヤガイ、アサリ、アメフラシ、アワビ、イモガイ、ウバガイ(ホッキ貝)、ウミウシ、エゾバイ科、カサガイ、カキ(牡蠣)、カタツムリ(陸に生息する巻貝の総称)、カモガイ、カラスガイ、サクラガイ、サザエ、サラガイ(皿貝、白貝、女郎貝、満珠貝、万寿貝)、シジミ、シャコガイ、スイジガイ、タイラギ、タカラガイ、タニシ、ツブ、ツメタガイ、トコブシ、トリガイ、ナメクジ、バイ、ハイガイ、パウア貝、バカガイ(アオヤギ)、ハマグリ、ヒオウギガイ、フナクイムシ、フルイガイ、ホタテガイ、ホラガイ、ホンビノスガイ、マテガイ、ミルクイ、ムール貝、夜光貝、ワスレガイのいずれか一以上を釣り餌本体として使用できる。
「第二の動物である貝類の身」は、上記した第二の動物である貝類が、貝殻から外された身の全体がむき身である。詳細については、前述したとおりである。
これらの貝類の身(むき身)が釣り餌の本体として用いられる。これら本体となるものは、例えば、冷凍状態から解凍された加熱済(ボイル済)貝類のむき身(例えば、あさりのむき身)等、冷蔵された加熱済(ボイル)貝類のむき身等が用いられる。もちろん、生の貝類のむき身も使用しても良い。貝類は年中とれるものではないので、貝類のむき身等の入手容易性から冷凍のボイル済み(加熱されている)貝のむき身(あさりのむき身)が望ましい。
このように、実施形態3によれば、実施形態1、2に加え、液状化酒盗による集魚効果を有するむき身等をベースとした釣り餌が実現できる。
<実施形態4>
実施形態4は、主に請求項5に対応する釣り餌の実施形態である。
<実施形態4 概要>
本実施形態4は、実施形態1~3を基本としつつ、第二の動物の構成部位は、加熱されているものである。第二の動物である構成部位として、貝類の身の構成部位が釣り餌本体として用いられる。
<実施形態4 構成の説明>
釣り餌本体を構成する第二の動物の構成部位が加熱されているものが適している。第二の動物である貝類の身の構成部位の餌持ちが良くなるからである。液状化酒盗による常温常温保存性(非変質性)と集魚効果を備えた常温保存可能な釣り餌となり、釣りの釣果が期待できる。
「加熱されている第二の動物の構成部位」とは、第二の動物の構成部位である貝類の身の構成部位が加熱されていることをいい、釣り餌の本体として用いられる。特に、それらの貝類の身が貝殻から外されたむき身が適している。このむき身を加熱すると身が固くなるので、釣り餌に用いた場合に餌持ちが良い。
このように、実施形態4によれば、実施形態1~3に加え、液状化酒盗による集魚効果を有するボイル済貝のむき身等をベースとした釣り餌が実現できる。
<実施形態5>
本実施形態5は、主に請求項6に対応する。
<実施形態5 概要>
本実施形態5は、実施形態1~実施形態4を基本としつつ、第二の動物の構成部位は少なくとも表面が着色剤で着色されている釣り餌である。
<実施形態5 構成の説明>
釣りの対象魚の喰いつきをよくするため、着色剤を用い、第二の構成部位に対して表面などに着色剤を浸透させて色付けする。
<着色剤>
着色剤は、釣り餌をルアーのように色分けして魚の食いをよくする役割を果たす。例えば、レッド、ブルー、イエロー、グリーンなどの着色を行う。着色剤(着色料)としては、食用色素と食用色素でないもの (粘膜以外に使用する外用医薬品、医薬部外品及び化粧品用法定色素)が使用できる。食用色素の例としては、食用赤色3号、食用青色1号、食用黄色4号、食用赤色2号、食用赤色102号、食用赤色104号、食用赤色105号、食用赤色106号、食用黄色5号、食用緑色3号、食用青色2号、食用赤色40号などが挙げられる。
また、食用色素でないもの例としては、黄色202号(1)、黒色401号が挙げられる。
<着色剤で着色されている第二の動物の構成部位>
第二の動物の構成部位は、着色剤で着色されている。天候(晴天、雨、曇など)や海水や川の濁り具合、朝、昼、夜などの時間によってルアーのように釣り餌を使い分けすることができる。この着色は、魚の喰いつきに影響したり、釣り人の気分に応じて餌の色を変えることによって、釣りを楽しむことができる。
<表面>
第二の構成部位の表面は、着色剤により着色されているので、色がついている。生の釣り餌などでは、第二の動物の構成部位由来の色彩に制限されないで魚が興味を持つ各種の色を採択できる。構成部位が貝類のむき身の場合は、その素材では存在しない色の釣り餌が実現できる。何色も、例えば5色用意することにより、ルアーの置き換えのような使い方ができる。ルアーであると、プラスチックやシリコンなどの材料で作製されているため、魚が飲み込んでしまい、釣れなかった場合は、魚の体内にルアーが留まることになり、環境的にも良くない。しかし、本釣り餌は貝のむき身等に色づけしたので、魚が食べても安全であり、環境への影響も少ない。
このように、実施形態5によれば、実施形態1~4に加え、通常の生貝類のエサでは実現できないカラフルなルアーのような使いかたができ、常温保存可能な餌持ちが良い釣り餌なので、環境にも良い釣り餌を実現できる。
<実施形態6>
本実施形態6は、主に請求項7に対応する。
<実施形態6 概要>
本実施形態6は、実施形態1~実施形態5に記載の釣り餌を発酵時液体(液状化酒盗)とともに容器(袋も含む)に封入した釣り餌セットである。
<実施形態6 構成の説明>
釣り店や通販の流通に乗せるため、釣り餌は容器に密封した形態で釣り餌セットを構成する。
「容器」とは、製造された釣り餌を入れる(封入する)ものをいい、袋や箱状のものを指す。釣り餌の長期保存に供するために、封入は密封状態にするのが望ましい。さらに、釣り餌の常温保存性を向上させるため、真空パッケージ化してもよい。
このように、実施形態6によれば、密封した容器(袋を含む)に入れて釣り餌の形態で釣具店や通販サイトで販売することができる。数か月の長期間でも、釣り餌として十分使用可能である。
<実施形態7>
本実施形態7は、主に請求項8に対応する。
<実施形態7 概要>
本実施形態7は、実施形態1~実施形態5に記載の釣り餌を用いて集魚を行う集魚方法である。
<実施形態7 構成の説明>
釣り餌に集魚機能を持たせて利用する。
「集魚」とは、釣りのポイントに入れた釣り餌の近くに釣りの対象魚を集めることをいう。本発明に係る釣り餌は、通常の状態で釣り針に差し込んで釣りを行うだけでも、通常のまき餌や、籠内の寄せ餌のような効果を得られる。なぜなら、第二の動物である貝類の身の構成部位にしみ込んだ液状化酒盗が急速に海中に広がって魚の臭覚に訴えるからである。魚類は臭覚が敏感であり、特に液状化酒盗はにおいが強いので十分な集魚効果を得られる。
さらに、従来のまき餌として利用したり、籠に詰めて利用しても十分な集魚効果を得られる。
このように、実施形態7によれば、釣り餌に浸透した液状化酒盗(酒盗抽出液)による集魚効果により、釣りの対象魚の集魚力を向上させることができる。
<実施形態8>
本実施形態8は、主に請求項9に対応する。
<実施形態8 概要>
本実施形態8は、実施形態1~実施形態5に記載の釣り餌を用いて魚を釣り上げる釣り方法である。
<実施形態8 構成の説明>
本釣り餌を用いて釣りの対象魚の魚釣りを行う。
「魚釣り」とは、実施形態の釣り餌を用いて船釣り、磯釣り、川(湖を含む)釣り等を行うことをいう。釣り餌を釣りのポイントに入れたときは、液状化酒盗のにおいが釣り針に差し込んだ釣り餌の近くに広がり、釣りの対象魚の喰いつきをよくすることができる。
このように、実施形態8によれば、釣り餌に浸透した液状化酒盗(酒盗抽出液)による集魚効果により、釣りの対象魚の集魚力を向上させ、餌自体もボイルあさりでありながら生エサに近いので、釣り人にとっては釣果が期待できる。なお、巻き網漁法などで魚を一定の領域に集合させるために本発明の釣り餌を利用することも考えられ、本実施形態でいう「釣り上げる」には、巻き網漁法で魚を捕獲するものも含めて権利範囲を解釈することとする。
図15に従って貝類の身にボイルあさりのむき身を用いた釣り餌製造工程の実施例1について説明する。
まず、最大幅2cm~3cm程度の冷凍ボイルあさり(むき身)10kgを3時間~5時間程度かけて自然解凍する(工程1501)。この自然解凍時間は気温の影響を受けるので、季節によって変動する値である。例えば、夏季の気温が高いときは自然解凍時間が短くなり、冬季の気温が低いときは自然解凍時間が長くなる。
次に、解凍したボイルあさりには、水(水分)がついているので、水分を調整するため、10分~20分程度かけて液切りを行う(工程1502)。
次に軟化剤の使用量を計算し、水に溶解し、ボイルあさりの軟化剤漬け込みを行う(工程1503)。軟化剤としてはリン酸塩を用い、水に溶かして液状化してボイルあさりに漬け込む。軟化剤の使用量は液切り後のボイルあさりの全重量に対する重量割合で計算する。リン酸塩はボイルあさりの全重量に対して2~3%の値である。原材料費の関係で適宜選択される。
次に、ボイルあさりに液状化した軟化剤(軟化剤漬け込み液)を浸透させるため、20時間以上冷蔵保管する(工程1504)。漬け込み後冷蔵保管時間は、20時間以上あれば良く、例えば20時間~24時間程度あれば十分である。
次に、余分な水分を調整するため、10分から20分程度かけて容器に溜まった液切りを行う(工程1505)。この液切りは、釣り餌使用者の使用感を良くする役割もある。釣り餌がべたべたしていると、使用感が悪いからである。
次に、液切りを行った全ボイルあさりの計量を行う(工程1506)。後記の工程で液状化酒盗と食塩の加える量を計算するためである。後記の工程1507の液状化酒盗漬け込みは液状化酒盗単体で使用し、食塩は液状化酒盗漬け込み後に加える。これは、液状化酒盗をボイルあさり(むき身)全体にまんべんなく浸透させるためである。食塩を同時に加えると、ボイルあさりに食塩が付着し、液状化酒盗の浸透にムラができる可能性があるからである。この点は発明者が先にした出願発明である「釣り餌及び釣り餌の製造方法」(特願2018-163242号)とは異なる手順となっている。
一方、液状化酒盗(酒盗抽出液)の作成を行う。まず、6ヶ月~1年塩蔵で熟成させた酒盗原料の計量を行う(工程1508)。先に計量した液切り後のボイルあさりの全重量に対する重量%の割合で計算する。ボイルあさりの全重量に対して液状化酒盗(酒盗抽出液)は15%~30%の範囲で適宜選択し、食塩は20%~25%の範囲で適宜選択したものを使用する。例えば、ボイルあさりの全重量が10kgの場合、液状化酒盗は1.5kg~3kg、食塩は2kg~2.5kgの範囲で適宜選択して使用する。ここでは、酒盗原料30kgを使用する。
次に、酒盗原料30kgを容器に入れ、30分~1時間程度かけて40~45℃以上で加熱・撹拌する(工程1509)。ここで、加熱・撹拌は、酒盗原料につぶつぶが残っている状態から完全に液状化した液状化酒盗とするために行う。
次に、液状化した液状化酒盗はまだ暖かいので、1~1.5時間かけて冷却を行う(工程1510)。冷却は、液状化酒盗が30℃以下になるまで行う。冷却を行う理由は、余熱で水分が飛ぶのを抑えるために行う。また、あさりのむき身の劣化を防ぐ効果も奏する。
次に、1~1.5時間経過後、液状化酒盗の粘度を上げるため、液状化酒盗にアルコールを溶媒として増粘剤を混合する(工程1511)。これで、液状化酒盗(酒盗抽出液)が完成となる。
次に、上記工程(工程1508~1511)によって完成された液状化酒盗単体を使用し、ボイルあさり(むき身)への漬け込みを行う(工程1507)。この際、塩の添加は同時には行わないほうが好ましい。この漬け込みは、図17(A)に示すように、容器に所定個数のボイルあさりを入れ、作業者の手によって個々のボイルあさりに液状化酒盗をまぶして漬け込む。
次に、ボイルあさりに液状化酒盗を浸透させるため、20時間以上冷蔵保管する(工程1512)。漬け込み後冷蔵保管時間は、20時間以上あれば良く、例えば20時間~24時間程度あれば十分である。
次に、図17(B)に示すように、工程1512の冷蔵保管により、ボイルあさりに液状化酒盗が十分浸透した後に、先に計量した塩(食塩)添加を行う(工程1513)。
次に工程1513において、塩添加を行った後、ボイルあさりに塩をなじませるため、さらに塩を添加したボイルあさりを4~5時間程度冷蔵保管する(工程1514)。釣り餌となるあさりはボイルされたものであるので熱変成によって塩分があさり表面に浸透しやすくなっており、4~5時間程度の冷蔵保管で十分塩をなじませることができる。
次に、液状化酒盗漬け込みおよび塩添加によって冷蔵保管すると、塩分濃度の高さがあさりのむき身内部よりも液状化酒盗側の方が高くなるためにあさりのむき身内部の水分が浸透圧の作用でむき身外に染み出すために漬込みに用いていた液状化酒盗の濃さが薄まってしまうということとなる。このような薄まった状態の液状化酒盗とともにパッケージングするとパッケージング後の物流時間帯に液状化酒盗があさりのむき身にしみ込む作用が少なくなるので、あさりのむき身がまとっている液状化酒盗などの液体をいったん取り去る液切を行う。例えばざるに入れて自然流下によって液切を行う。液切は所定の単位に分けてざるに入れて行う。大きなざるを用いて5kg単位で行う場合には10分から20分程度で液切を終了する(工程1515)。
ボイルあさりと液状化酒盗場合により、さらに塩分を併せて所定量の重量単位(例えば、80g:この数字に限定されない)で袋詰めを行い(工程1516)、真空引きを行い、密封(シール)する(工程1517)。ここで、袋詰めを行っているが、プラスチックなどの容器で真空パッケージ化しても良い。また、できあがった釣り餌は真空パッケージ化されているので、かなりの長期保存が可能となっている。なお、真空パッケージ化しなくとも常温で長期間保存することが可能である。
真空パッケージ化された釣り餌セットにラベルを貼り、倉庫に入庫される(工程1518、1519)。
これにより、通常の釣具店や通販サイトで釣り餌セットを販売することができる。常温保存可能で特別な保管をする必要がなくなり、物流コストも安くなる。物流コストが安くなるのは倉庫での保管時に冷蔵、冷凍の倉庫を利用する必要がなく、また輸送も冷蔵、冷凍の機能を持ったトラック等を利用しなくて済むからである。また常温保存が可能なので釣り船などの船倉に常備しておくことも可能であり、釣り客の餌切れの場合でもその場で船員が釣り餌を提供できて便利である。またそもそも釣り船が釣り餌を提供できることを事前に釣り客にホームページ等で告知できれば釣り客がわざわざ釣り餌を準備し、持参する必要もなくなるので軽装で釣り船に向かうことが可能となり釣り客にとっての利便性も高まる。以上は、貝としてあさりを例にとって説明したが、むき身の大きさが同じ程度の貝類、例えば比較的大きなシジミ類、小形のはまぐり、などは上記と同様な処理にて釣り餌のパッケージを作ることができる。
図16に従って貝類の身にボイルあさりのむき身を用いた釣り餌製造工程の実施例2について説明する。図16の実施例2では、釣り餌に着色剤(着色料)を追加する工程等(工程1607~1609)を液状化酒盗漬け込み工程1610の前に有している点が異なるだけで、工程1601~1606、工程1610、工程1611~1614、工程1615~1622は実施例1と同様であるので、説明を省略する。
以下、一連の着色剤漬込みの工程等(工程1607~1609)について説明する。
工程1606において、液切り後のボイルあさりの計量が終わった後、図18に示すように、ボイルあさりのむき身に着色剤を漬け込む(工程1607)。着色剤漬け込み工程1607は、ボイルあさりのむき身の全重量の0.05~1%の着色剤(着色料)を着色剤重量の100倍の水に溶き、漬け込みを行う。図18の例では、着色剤の色がわからないが、実際は赤色、青色、黄色などの色をしている。
次に、ボイルあさりに液状化した着色剤(着色剤漬け込み液)を浸透させるため、漬け込んだボイルあさりを4~5時間程度冷蔵保管する(工程1608)。着色剤は浸透しやすいので、冷蔵保管期間は4~5時間あれば、十分である。
次に、冷蔵保管後、余分な水分を調整するため、10分から20分程度かけて液切りを行う(工程1609)。このように、着色剤を漬け込みを行ってから工程1610の漬け込みを行う。
このように、本実施形態等によれば、液状化酒盗と塩を配合したものに漬け込むことによってボイルあさりでありながら生エサに近い状態で常温長期保存可能な釣り餌となっている。また、本釣り餌は液状化酒盗を使用することで身の柔軟性を生エサに近い状態で保持することができる。本釣り餌は液状化酒盗を使用することで身の変色を防止し、生エサに近い状態を保持することができる。本釣り餌は液状化酒盗を使用することで集魚効果を付与することができる。本釣り餌は着色料を液状化酒盗と塩を混ぜたものに加え、それに漬け込むことによって色を浸透させ、時間や天候など海の状況に左右される魚の活性に合わせた色の使い分けを可能にしている。
このようにして製造された釣り餌の釣果実験を行ったので、以下では釣果実験結果について説明する。
<釣果実験>
<釣果実験の目的>
本発明の液状化酒盗入り常温ボイルあさり餌の有効性を調べるために、生あさり餌、ボイルあさり餌との釣果比較実験を実施した。カワハギを一番の狙いとした。
<釣果実験内容>
・場所:東京湾剣崎沖
・日時:2019年4月6日、7:00~13:00
・天候:晴れ
・潮:大潮
・水深:30~40m
・使用餌:液状化酒盗入り常温ボイルあさり餌、生あさり餌、ボイルあさり餌
・人数:6人
<使用餌について>
(1)液状化酒盗入り常温ボイルあさり餌(酒盗抽出液浸透)構成成分
大きさ:最大幅が平均2.5cm
ボイルあさり重量に対しての使用割合
・液状化酒盗(酒盗抽出液)・・・15%
・食塩・・・・・・20%
・アルコール・・・0.15%
・増粘剤・・・・・0.07%
※アルコールと増粘剤は酒盗抽出液に含まれる
(2)生あさり餌
大きさ:最大幅が平均2.5cm
生のあさりを殻剥きしたもの
(3)ボイルあさり餌
大きさ:最大幅が平均2.5cm
生のあさりをボイルしたもの
<釣果実験方法>
図20に示すように、釣り船を使用し、右舷に前方から順に使用者A,C,Eと並び、使用者Aが液状化酒盗入り(酒盗抽出液浸透)常温ボイルあさり餌を使用し、使用者Cが生あさり餌を使用、使用者Eがボイルあさり餌を使用した。左舷には前方から順に使用者B,D,Fと並び、Bが液状化酒盗入り常温ボイルあさり餌を使用、Dが生あさり餌を使用、Fがボイルあさり餌を使用した。計6人で釣果実験を行った。
<釣果実験結果>
図21(A)は本実施形態の液状化酒盗入り常温ボイルあさり餌を使用した使用者(A,B)の釣果を示し、図21(B)は生あさり餌を使用した使用者(C,D)の釣果を示し、図21(C)はボイルあさり餌を使用した使用者(E,F)の釣果を示し、図21(D)はそれらの釣果の比較検討結果を示す。ここで、船上のA,B,C,D,E,Fは使用者の釣り場を示す。
釣れた魚種はA,B,C,D,E,Fを合計して、カワハギ・ベラ・カサゴ・トラギス・ホウボウの計5種であった。
本実施形態の液状化酒盗入り常温ボイルあさり餌を使用した使用者(A,B)の釣果は、図21(A)に示すように、使用者Aは、カワハギ2匹、ベラ4匹、カサゴ3匹、計9匹という釣果であった。
使用者Bは、カワハギ4匹、ベラ1匹、トラギス3匹、計8匹という釣果であった。
使用者A+Bは、使用者AとBの釣果を合計して、カワハギ6匹、ベラ5匹、カサゴ3匹、トラギス3匹、計17匹という釣果であった。
生あさり餌を使用した使用者(C, D)の釣果は、図21(B)に示すように、使用者Cは、カワハギ4匹、ベラ1匹、カサゴ2匹、トラギス4匹、計11匹という釣果であった。
使用者Dは、カワハギ3匹、ベラ3匹、カサゴ1匹、計7匹という釣果であった。
使用者C+Dは、使用者CとDの釣果を合計して、カワハギ7匹、ベラ4匹、カサゴ3匹、トラギス4匹、計18匹という釣果であった。
ボイルあさり餌を使用した使用者(E,F)の釣果は、図21(C)に示すように、使用者Eは、カワハギ1匹、ベラ1匹、トラギス1匹、計3匹という釣果であった。
使用者Fは、ベラ2匹、カサゴ1匹、トラギス2匹、ホウボウ1匹、計6匹という釣果であった。
使用者E+Fは、使用者EとFの釣果を合計して、カワハギ1匹、ベラ3匹、カサゴ1匹、トラギス3匹、ホウボウ1匹、計9匹という釣果であった。
以上の釣果から、釣果合計匹数を比較すると、図21(D)に示すように、本実施形態の液状化酒盗入り常温ボイルあさり餌使用の使用者A,Bが17匹、生あさり餌使用の使用者C,Dが18匹となっており、両餌の釣果に大きな差は見られなかったため、液状化酒盗入り常温ボイルあさり餌は生あさり餌と遜色の無い餌であると思われる。
カワハギだけの釣果を比較しても、本実施形態の液状化酒盗入り常温ボイルあさり餌使用の使用者A,Bが6匹、生あさり餌使用の使用者C,Dが7匹となっており、このことからも液状化酒盗入り常温ボイルあさり餌は生あさり餌と遜色の無い餌であると思われる。
本実施形態の液状化酒盗入り常温ボイルあさり餌使用の使用者A,Bがとボイルあさり餌使用の使用者E,Fを比較すると、前者が17匹、後者が9匹となっており、本実施形態の液状化酒盗入り常温ボイルあさり餌の方が、釣果が良かったが、要因としてボイルあさり餌はボイルによりエキスが抜け出しているのに対して、本実施形態の液状化酒盗入り常温ボイルあさり餌は酒盗抽出液(液状化酒盗)に漬け込むことでボイルにより抜け出したエキスを補填しているため、魚の喰いつきが良かったことが考えられる。