1.三次元成形用転写フィルム
本発明の三次元成形用転写フィルムは、転写用基材上に、少なくとも表面保護層とプライマー層をこの順に有する三次元成形用転写フィルムであって、表面保護層が、ポリカーボネート(メタ)アクリレート及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含む電離放射線硬化性樹脂組成物により形成されていることを特徴とする。本発明の三次元成形用転写フィルムでは、このような構成を有することにより、成形後における端部の剥離を抑制し、さらに、優れた耐薬品性を樹脂成形品に付与することができる。なお、後述の通り、本発明の三次元成形用転写フィルムは、装飾層などを有していなくてもよく、例えば透明であってもよい。以下、本発明の三次元成形用転写フィルムについて詳述する。
本明細書において、「以上」、「以下」と明記している箇所を除き、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。
三次元成形用転写フィルムの積層構造
本発明の三次元成形用転写フィルムは、転写用基材1上に、少なくとも表面保護層及びプライマー層4をこの順に有する。また、転写用基材1と表面保護層3との間には、転写用基材1と表面保護層3との剥離性を高めることなどを目的として、必要に応じて、離型層2を設けてもよい。本発明の三次元成形用転写フィルムにおいては、転写用基材1及び必要に応じて設けられる離型層2が、支持体10を構成しており、当該支持体10は、三次元成形用転写フィルムを成形樹脂層8に積層させた後に、剥離除去される。
本発明の三次元成形用転写フィルムは、三次元成形用転写フィルムに装飾性を付与することなどを目的として、プライマー層4の前記表面保護層3とは反対側に、必要に応じて、装飾層5を設けてもよい。また、成形樹脂層8の密着性を高めることなどを目的として、プライマー層4の前記表面保護層3とは反対側に、必要に応じて、接着層6を有していてもよい。また、プライマー層4と接着層6との密着性を向上させることなどを目的として、必要に応じて、透明樹脂層7を設けてもよい。本発明の三次元成形用転写フィルムにおいて、表面保護層3、プライマー層4、必要に応じてさらに設けられる装飾層5、接着層6、透明樹脂層7などが、転写層9を構成しており、転写層9が成形樹脂層8に転写されて本発明の樹脂成形品となる。
本発明の三次元成形用転写フィルムの積層構造として、転写用基材/表面保護層/プライマー層がこの順に積層された積層構造;転写用基材/離型層/表面保護層/プライマー層がこの順に積層された積層構造;転写用基材/離型層/表面保護層/プライマー層/装飾層がこの順に積層された積層構造;転写用基材/離型層/表面保護層/プライマー層/装飾層/接着層がこの順に積層された積層構造;転写用基材/離型層/表面保護層/プライマー層/透明樹脂層/接着層がこの順に積層された積層構造などが挙げられる。図1に、本発明の三次元成形用転写フィルムの積層構造の一態様として、転写用基材/離型層/表面保護層/プライマー層/装飾層/接着層がこの順に積層された三次元成形用転写フィルムの一形態の断面構造の模式図を示す。また、図2に、本発明の三次元成形用転写フィルムの積層構造の一態様として、転写用基材/離型層/表面保護層/プライマー層/透明樹脂層/接着層がこの順に積層された三次元成形用転写フィルムの一形態の断面構造の模式図を示す。
三次元成形用転写フィルムを形成する各層の組成
[支持体10]
本発明の三次元成形用転写フィルムは、支持体10として、転写用基材1、必要に応じて離型層2を有する。転写用基材1の上に形成された表面保護層3、プライマー層4、必要に応じてさらに形成される装飾層5、接着層6、透明樹脂層7などが、転写層9を構成している。本発明においては、三次元成形用転写フィルムと成形樹脂を一体成形した後に、支持体10と転写層9の界面が引き剥がされ、支持体10が剥離除去されて樹脂成形品が得られる。
(転写用基材1)
本発明において、転写用基材1は、三次元成形用転写フィルムにおいて支持部材としての役割を果たす支持体10として用いられる。本発明で用いられる転写用基材1は、真空成形適性を考慮して選定され、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂シートが使用される。該熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂);塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
本発明においては、転写用基材1として、ポリエステルシートを用いることが、耐熱性、寸法安定性、成形性、及び汎用性の点で好ましい。ポリエステルシートを構成するポリエステル樹脂とは、多価カルボン酸と、多価アルコールとから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを示し、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などを好ましく挙げることができ、ポリエチレンテレフタレート(PET)が、耐熱性や寸法安定性の点で特に好ましい。
転写用基材1は、後述の表面保護層3の表面に凹凸形状を付与することなどを目的として、必要に応じて少なくとも一方の表面に凹凸形状を有していてもよい。転写用基材1の凹凸形状を有する表面上に直接表面保護層3を積層することにより、表面保護層3の表面に、転写用基材1の凹凸形状に対応した凹凸形状を形成することができる。例えば、表面に微細な凹凸形状を有する転写用基材1の直上に表面保護層3を積層することにより、表面保護層3の表面に当該凹凸形状が転写され、表面保護層3の表面にマットな意匠を付与することができる。
転写用基材1の表面に凹凸形状を形成する方法としては、サンドブラスト加工、ヘアライン加工、レーザ加工、エンボス加工などの物理的な方法、又は薬品や溶剤による腐食処理などの化学的な方法のほか、転写用基材1に微粒子を含有させることにより、当該微粒子の形状を転写用基材1の表面に表出させる方法が例示される。これらの中でも、表面保護層3に微細な凹凸形状を転写してマットな意匠を表現する上では、転写用基材1に微粒子を含有させる方法が好適に用いられる。
微粒子としては、合成樹脂粒子や無機粒子が代表的に挙げられるが、三次元成形性を良好とする観点からは合成樹脂粒子を用いることが特に好ましい。合成樹脂粒子としては、合成樹脂により形成された粒子であれば、特に制限されず、例えば、アクリルビーズ、ウレタンビーズ、シリコーンビーズ、ナイロンビーズ、スチレンビーズ、メラミンビーズ、ウレタンアクリルビーズ、ポリエステルビーズ、ポリエチレンビーズなどが挙げられる。これらの合成樹脂粒子の中でも、凹凸形状を好適に表面保護層3に形成する観点からは、好ましくはアクリルビーズ、ウレタンビーズ、シリコーンビーズが挙げられる。また、無機粒子としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、カオリンなどが挙げられる。これらの微粒子は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。微粒子の粒子径としては、好ましくは0.3~25μm程度、より好ましくは0.5~5μm程度が挙げられる。なお、本発明における微粒子の粒子径は、島津レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2100-WJA1を使用し、圧縮空気を利用してノズルから測定対象となる粉体を噴射し、空気中に分散させて測定する噴射型乾式測定方式によるものを指す。
転写用基材1に含まれる微粒子の含有量としては、表面保護層3に所望の凹凸形状が形成されれば特に制限されず、例えば、転写用基材1に含まれる樹脂100質量部に対して、好ましくは1~100質量部程度、より好ましくは5~80質量部程度が挙げられる。また、転写用基材1には、必要に応じて各種安定剤、潤滑剤、酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤、蛍光増白剤などを配合することもできる。
本発明で転写用基材1として好適に用いられるポリエステルシートは、例えば以下のように製造される。まず上記のポリエステル系樹脂とその他の原料をエクストルーダーなどの周知の溶融押出装置に供給し、当該ポリエステル系樹脂の融点以上の温度に加熱し溶融する。次いで溶融ポリマーを押出しながら、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるよう急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。このシートを2軸方向に延伸してシート化し、熱固定を施すことで得られる。この場合、延伸方法は逐次2軸延伸でも同時2軸延伸でもよい。また、必要に応じ、熱固定を施す前又は後に再度縦及び/又は横方向に延伸してもよい。本発明においては十分な寸法安定性を得るため延伸倍率を面積倍率として7倍以下が好ましく、5倍以下がより好ましく、3倍以下がさらに好ましい。この範囲内であれば、得られるポリエステルシートを三次元成形用転写フィルムに用いた場合、該三次元成形用転写フィルムが成形樹脂を射出する際の温度域で再び収縮せず、当該温度域で必要なシート強度を得ることができる。なお、ポリエステルシートは、上記のように製造してもよいし、市販のものを用いてもよい。
また、転写用基材1は、後述する離型層2を設ける場合、当該離型層2との密着性を向上させる目的で、所望により、片面又は両面に酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、転写用基材1の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。また、転写用基材1は、転写用基材1とその上に設けられる層との層間密着性の強化などを目的として、易接着層を形成するなどの処理を施してもよい。なお、ポリエステルシートとして市販のものを用いる場合には、該市販品は予め上記したような表面処理が施されたものや、易接着剤層が設けられたものも用いることができる。
転写用基材1の厚みは、通常10~150μmであり、10~125μmが好ましく、10~80μmがより好ましい。また、転写用基材1としては、これら樹脂の単層シート、あるいは同種又は異種樹脂による複層シートを用いることができる。
(離型層2)
離型層2は、転写用基材1と表面保護層3との剥離性を高めることなどを目的として、必要に応じて、転写用基材1の表面保護層3が積層される側の表面に設けられる。離型層2は、全面を被覆(全面ベタ状)しているベタ離型層であってもよいし、一部に設けられるものであってもよい。通常は、剥離性を考慮して、ベタ離型層が好ましい。
離型層2は、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル-メラミン系樹脂が含まれる。)、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体、電離放射線硬化性樹脂、あるいはこれらの樹脂を(メタ)アクリル酸やウレタンで変性したものを、単独で又は複数を混合した樹脂組成物を用いて形成することができる。なかでも、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、これらの樹脂を形成するモノマーの共重合体、及びこれらをウレタン変性したものが好ましく、より具体的には、アクリル-メラミン系樹脂単独、アクリル-メラミン系樹脂含有組成物、ポリエステル系樹脂とエチレン及びアクリル酸の共重合体をウレタン変性したものとを混合した樹脂組成物、アクリル系樹脂とスチレン及びアクリルとの共重合体のエマルションとを混合した樹脂組成物などが挙げられる。これらの内、アクリル-メラミン系樹脂単独又はアクリル-メラミン系樹脂を50質量%以上含有する組成物で離型層2を構成することが特に好ましい。
離型層2は、後述の表面保護層3の表面に凹凸形状を付与することなどを目的として、表面保護層3側の表面に凹凸形状を有していてもよい。離型層2の凹凸形状を有する表面上に直接表面保護層3を積層することにより、表面保護層3の表面に、離型層2の凹凸形状に対応した凹凸形状を形成することができる。
離型層2の表面に凹凸形状を形成する方法としては、前述の(転写用基材1)の欄と同じものが例示できる。これらの方法の中でも、表面保護層3に微細な凹凸形状を転写してマットな意匠を表現する観点から離型層2に微粒子を含ませる方法が好ましく、三次元成形性を良好とする観点から合成樹脂粒子を含ませる方法が特に好ましい。
離型層2に含まれる微粒子の含有量としては、表面保護層3に所望の凹凸形状が形成されれば特に制限されず、例えば、離型層2に含まれる樹脂100質量部に対して、1~100質量部程度、好ましくは5~80質量部程度が挙げられる。
離型層2が微粒子を含む場合、離型層2は、微粒子と電離放射線硬化性樹脂とを含む樹脂組成物の硬化物により形成されていることが好ましい。
(電離放射線硬化性樹脂)
離型層2の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで、電離放射線とは、後述の[表面保護層3]の欄に記載の通りである。
電離放射線硬化性樹脂として使用される上記モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートモノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)、好ましくは3個以上(3官能以上)有する(メタ)アクリレートモノマーであればよい。多官能性(メタ)アクリレートとして、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、電離放射線硬化性樹脂として使用される上記オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレートオリゴマーが好適であり、中でも分子内に重合性不飽和結合を2個以上(2官能以上)有する多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリルシリコーン(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリブタジエン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー(例えば、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等)等が挙げられる。ここで、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。アクリルシリコーン(メタ)アクリレートは、シリコーンマクロモノマーを(メタ)アクリレートモノマーとラジカル共重合させることにより得ることができる。ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールやカプロラクトン系ポリオールとポリイソシアネート化合物の反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレートは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレートを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレートは、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、或いは多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリブタジエン(メタ)アクリレートは、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。シリコーン(メタ)アクリレートは、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーンの末端又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加することにより得ることができる。これらの中でも、多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどが特に好ましい。これらのオリゴマーは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電離放射線硬化性樹脂を用いて離型層2を形成する場合、離型層2の形成は、例えば、微粒子と電離放射線硬化性樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
本発明においては、調製された塗布液を、前記厚みとなるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて離型層2を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70~300kV程度が挙げられる。
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、離型層2の下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと離型層2の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより、離型層2の下に位置する層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による各層の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、離型層2の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5~300kGy(0.5~30Mrad)、好ましくは10~50kGy(1~5Mrad)の範囲で選定される。
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190~380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈、紫外線発光ダイオード(LED-UV)等が挙げられる。
離型層2の厚みは、通常、0.01~5μm程度であり、好ましくは、0.05~3μm程度である。
(転写層9)
本発明の三次元成形用転写フィルムにおいては、支持体10の上に形成された、表面保護層3、プライマー層4、必要に応じてさらに形成される装飾層5、接着層6、透明樹脂層7などが転写層9を構成している。本発明においては、三次元成形用転写フィルムと成形樹脂を一体成形した後に、支持体10と転写層9の界面が引き剥がされ、三次元成形用転写フィルムの転写層9が成形樹脂層8に転写された樹脂成形品が得られる。以下、これらの各層について詳述する。
[表面保護層3]
表面保護層3は、樹脂成形品の耐傷性、耐候性、耐薬品性などを高めることを目的として、樹脂成形品の最表面に位置するようにして、三次元成形用転写フィルムに設けられる層である。
本発明の三次元成形用転写フィルムにおいては、表面保護層3が、ポリカーボネート(メタ)アクリレート及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含む電離放射線硬化性樹脂組成物により形成されていることを特徴とする。本発明の三次元成形用転写フィルムは、表面保護層3がこのような構成を備えていることにより、成形後における三次元成形用転写フィルムの端部の剥離が抑制され、さらに、優れた耐薬品性を樹脂成形品に付与することが可能となる。本発明の三次元成形用転写フィルムがこのような優れた特性を有する機序の詳細は明らかではないが、例えば次のように考えることができる。すなわち、前記の通り、三次元成形用転写フィルムの端部は、成形時に大きく引き伸ばされることがあり、表面保護層とプライマー層との密着性は低下する傾向にあるが、本発明の三次元成形用転写フィルムにおいては、表面保護層3を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物中に、ポリカーボネート(メタ)アクリレートに加えて、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体が含まれていることにより、表面保護層3とプライマー層4を形成する接着性成分との親和性が向上し、密着力が高められている結果、端部における剥離が効果的に抑制されていると考えられる。より具体的には、本発明者らが検討を重ねたところ、酢酸ビニルの添加が接着性の向上に寄与するという知見を得た。ところが、酢酸ビニルは、その高い可塑性により、表面保護層に添加された場合、耐薬品性を低下させることが明らかとなった。一方、本発明者らは、塩化ビニルが皮膜を強靭にする効果を発揮することを確認した。そして、本発明においては、表面保護層3に、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと共に、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を配合することにより、端部における高い密着力と耐薬品性の両立が可能となっている。
<電離放射線硬化性樹脂>
表面保護層3の形成に使用される電離放射線硬化性樹脂とは、電離放射線を照射することにより、架橋、硬化する樹脂であり、具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基を有する、プレポリマー、オリゴマー、及びモノマーなどのうち少なくとも1種を適宜混合したものが挙げられる。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線も含むものである。電離放射線硬化性樹脂の中でも、電子線硬化性樹脂は、無溶剤化が可能であり、光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるため、表面保護層3の形成において好適に使用される。
表面保護層3は、電離放射線硬化性樹脂としてのポリカーボネート(メタ)アクリレート及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含む電離放射線硬化性樹脂組成物により形成されている。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味し、他の類似するものも同様の意である。
本発明に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、かつ末端または側鎖に(メタ)アクリレート基を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリカーボネートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。この(メタ)アクリレートは、架橋、硬化する観点から、2官能以上有することが好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートなどであってもよい。ポリカーボネート骨格を有するウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールと、多価イソシアネート化合物と、ヒドロキシ(メタ)アクリレートとを反応させることにより得られる。
上記のポリカーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、ポリカーボネートポリオールの水酸基の一部又は全てを(メタ)アクリレート(アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル)に変換して得られる。このエステル化反応は、通常のエステル化反応によって行うことができる。例えば、1)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸ハライド又はメタクリル酸ハライドとを、塩基存在下に縮合させる方法、2)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸無水物又はメタクリル酸無水物とを、触媒存在下に縮合させる方法、あるいは3)ポリカーボネートポリオールとアクリル酸又はメタクリル酸とを、酸触媒存在下に縮合させる方法などが挙げられる。
上記のポリカーボネートポリオールは、ポリマー主鎖にカーボネート結合を有し、末端あるいは側鎖に2個以上、好ましくは2~50個の、より好ましくは3~50個の水酸基を有する重合体である。このポリカーボネートポリオールの代表的な製造方法は、ジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とから重縮合反応による方法である。原料として用いられるジオール化合物(A)は、一般式 HO-R1-OHで表される。ここで、R1は、炭素数2~20の2価炭化水素基であって、基中にエーテル結合を含んでいてもよい。例えば、直鎖、又は分岐状のアルキレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基である。
ジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。これらジオールは、それを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
また、3価以上の多価アルコール(B)の例としては、トリメチロールプルパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトールなどのアルコール類を挙げることができる。さらに、これらの多価アルコールの水酸基に対して、1~5当量のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、あるいはその他のアルキレンオキシドを付加させた水酸基を有するアルコール類であってもよい。多価アルコールは、これらを単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
カルボニル成分となる化合物(C)は、炭酸ジエステル、ホスゲン、又はこれらの等価体の中から選ばれるいずれかの化合物である。その具体例としては、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジフェニル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの炭酸ジエステル類、ホスゲン、あるいはクロロギ酸メチル、クロロギ酸エチル、クロロギ酸フェニルなどのハロゲン化ギ酸エステル類などが挙げられる。これらは、単独で用いても、あるいは2種以上を混合して用いてもよい。
ポリカーボネートポリオールは、前記したジオール化合物(A)、3価以上の多価アルコール(B)、及びカルボニル成分となる化合物(C)とを、一般的な条件下で重縮合反応することにより合成される。例えば、ジオール化合物(A)と多価アルコール(B)との仕込みモル比は、50:50~99:1の範囲にあることが好ましく、また、カルボニル成分となる化合物(C)のジオール化合物(A)と多価アルコール(B)に対する仕込みモル比は、ジオール化合物及び多価アルコールの持つ水酸基に対して、0.2~2当量であることが好ましい。
前記の仕込み割合で重縮合反応した後のポリカーボネートポリオール中に存在する水酸基の当量数(eq./mol)は、1分子中に平均して3以上、好ましくは3~50、より好ましくは3~20である。この範囲であると、後述するエステル化反応によって必要な量の(メタ)アクリレート基が形成され、またポリカーボネート(メタ)アクリレート樹脂に適度な可撓性が付与される。なお、このポリカーボネートポリオールの末端官能基は、通常はOH基であるが、その一部がカーボネート基であってもよい。
以上説明したポリカーボネートポリオールの製造方法は、例えば、特開昭64-1726号公報に記載されている。また、このポリカーボネートポリオールは、特開平3-181517号公報に記載されているように、ポリカーボネートジオールと3価以上の多価アルコールとのエステル交換反応によっても製造することができる。
本発明に用いられるポリカーボネート(メタ)アクリレートの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析によって測定され、かつ標準ポリスチレンで換算された重量平均分子量が、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましく、2,000以上であることがさらに好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートの重量平均分子量の上限は特に制限されないが、粘度が高くなり過ぎないように制御する観点から100,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましい。本発明の三次元成形用転写フィルムの成形後における表面保護層の端部の剥離を効果的に抑制しつつ、樹脂成形品の耐薬品性をさらに向上させる観点から、さらに好ましくは、2,000以上50,000以下であり、特に好ましくは、5,000~20,000である。
電離放射線硬化性樹脂組成物においては、ポリカーボネート(メタ)アクリレートは、多官能(メタ)アクリレートと共に用いることが好ましい。すなわち、電離放射線硬化性樹脂組成物は、多官能(メタ)アクリレートをさらに含むことが好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートと該多官能(メタ)アクリレートの質量比としては、ポリカーボネート(メタ)アクリレート:多官能(メタ)アクリレート=98:2~50:50であることがより好ましい。ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が98:2より小さくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が、2成分の合計量に対して98質量%以下であると)、耐薬品性がさらに向上する。一方、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が50:50より大きくなると(即ち、ポリカーボネート(メタ)アクリレートの量が、2成分の合計量に対して50質量%以上となると)、三次元成形性がさらに向上する。好ましくは、ポリカーボネート(メタ)アクリレートと多官能(メタ)アクリレートの質量比が95:5~60:40である。
本発明に用いられる多官能(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。ただし、硬化性の観点から3官能以上の(メタ)アクリレートが好ましい。ここで、2官能とは、分子内にエチレン性不飽和結合{(メタ)アクリロイル基}を2個有することをいう。
また、多官能(メタ)アクリレートは、オリゴマー及びモノマーのいずれでもよいが、三次元成形性向上の観点から多官能(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましい。
上記の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えばウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。ここで、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
さらに、他の多官能(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマーなどが挙げられる。
また、上記の多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。以上述べた多官能性(メタ)アクリレートオリゴマー及び多官能性(メタ)アクリレートモノマーは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
表面保護層3を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物中におけるポリカーボネート(メタ)アクリレートの含有量(固形分)としては、特に制限されないが、本発明の三次元成形用転写フィルムの成形後における表面保護層の端部の剥離を効果的に抑制しつつ、樹脂成形品の耐薬品性をさらに向上させる観点からは、好ましくは98~50質量%程度、より好ましくは90~65質量%程度が挙げられる。
<塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体>
また、本発明において、表面保護層3を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体としては、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体であれば、特に制限されない。
本発明の三次元成形用転写フィルムの成形後における表面保護層の端部の剥離を効果的に抑制しつつ、樹脂成形品の耐薬品性をさらに向上させる観点から、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体において、塩化ビニルと酢酸ビニルの質量比(塩化ビニル:酢酸ビニル)としては、好ましくは95:5~5:95程度、より好ましくは95:5~50:50程度、さらに好ましくは95:5~70:30程度、特に好ましくは95:5~85:25程度が挙げられる。
また、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体には、塩化ビニルと酢酸ビニルに加えて、他の単量体が共重合されていてもよい。他の単量体としては、例えば、ビニルアルコール、ヒドロキシアルキルアクリレート、ジカルボン酸等が挙げられるが、この限りではない。塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に占める塩化ビニルと酢酸ビニル合計割合としては、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であり、100質量%であってもよい。また、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に他の単量体が共重合されている場合、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に占める他の単量体の割合としては、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下が挙げられる。
塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量としては、特に制限されないが、本発明の三次元成形用転写フィルムの成形後における表面保護層の端部の剥離を効果的に抑制しつつ、樹脂成形品の耐薬品性をさらに向上させる観点から、好ましくは20,000~95,000程度、より好ましくは30,000~60,000程度、さらに好ましくは35,000~50,000程度が挙げられる。本明細書における塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
また、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の平均重合度としては、特に制限されないが、本発明の三次元成形用転写フィルムの成形後における表面保護層の端部の剥離を効果的に抑制しつつ、樹脂成形品の耐薬品性をさらに向上させる観点から、好ましくは200~800程度、より好ましくは300~600程度、さらに好ましくは350~450程度が挙げられる。本明細書における塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の平均重合度は、JIS K 6720-2:1999の規定に準拠して測定した値である。
また、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体のK値としては、特に制限されないが、本発明の三次元成形用転写フィルムの成形後における表面保護層の端部の剥離を効果的に抑制しつつ、樹脂成形品の耐薬品性をさらに向上させる観点から、好ましくは30~95程度、より好ましくは35~70程度、さらに好ましくは40~60程度が挙げられる。本明細書における塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体のK値は、JIS K 7367-2:1999の規定に準拠して測定した値である。
表面保護層3を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物中における塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の含有量としては、特に制限されないが、本発明の三次元成形用転写フィルムの成形後における表面保護層の端部の剥離を効果的に抑制しつつ、樹脂成形品の耐薬品性をさらに向上させる観点から、好ましくは0.01~1.0質量%程度、より好ましくは0.03~0.7質量%程度、さらに好ましくは0.05~0.4質量%程度、さらに好ましくは0.05~0.3質量%程度、さらに好ましくは0.05~0.2質量%程度、特に好ましくは0.05~0.15質量%程度が挙げられる。
<アクリル樹脂>
本発明において、表面保護層3を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物には、ポリカーボネート(メタ)アクリレート及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体に加えて、アクリル樹脂がさらに含まれていてもよい。アクリル樹脂としては、特に制限されないが、本発明の三次元成形用転写フィルムの成形後における表面保護層の端部の剥離を効果的に抑制しつつ、樹脂成形品の耐薬品性をさらに向上させる観点から、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられ、具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステルを含む単独又は共重合体からなる(メタ)アクリル樹脂が好適に用いられる。これらの中でも、前記の観点から、ポリ(メタ)アクリル酸メチルが特に好ましい。
アクリル樹脂の重量平均分子量としては、特に制限されないが、本発明の三次元成形用転写フィルムの成形後における表面保護層の端部の剥離を効果的に抑制しつつ、樹脂成形品の耐薬品性をさらに向上させる観点からは、好ましくは10,000~150,000程度、より好ましくは10,000~40,000程度が挙げられる。
なお、本明細書におけるアクリル樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法により、ポリスチレンを標準物質として測定した値である。
また、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、前記の観点から、好ましくは40~160℃程度、より好ましくは80~120℃程度、が挙げられる。
なお、本明細書におけるアクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計(DSC)で測定した値である。
表面保護層3を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物中におけるアクリル樹脂の含有量としては、特に制限されないが、前記の観点からは、好ましくは電離放射線硬化性樹脂組成物中のアクリル樹脂以外の固形分100質量部に対して25質量部以下、より好ましくは0.5~25質量部程度、さらに好ましくは1~8質量部程度が挙げられる。
<硬化剤>
また、本発明において、表面保護層3を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、硬化剤がさらに含まれていてもよい。硬化剤が含まれることにより、表面保護層3の耐薬品性をより一層高めることができる。
硬化剤としては、特に制限されないが、好ましくはイソシアネート化合物が挙げられる。イソシアネート化合物としては、イソシアネート基を有する化合物であれば、特に制限されないが、好ましくはイソシアネート基を2個以上有する多官能イソシアネート化合物が挙げられる。多官能イソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ナフタレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、あるいは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、メチレンジイソシアネート(MDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(ないしは脂環式)イソシアネート等のポリイソシアネートが挙げられる。また、これら各種イソシアネートの付加体又は多量体、例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等や、ブロック化されたイソシアネート化合物等も挙げられる。イソシアネート化合物は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
表面保護層3を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物中に硬化剤が含まれる場合、その含有量としては、特に制限されないが、本発明の三次元成形用転写フィルムの成形後における表面保護層の端部の剥離を効果的に抑制しつつ、樹脂成形品の耐薬品性をさらに向上させる観点からは、好ましくは電離放射線硬化性樹脂組成物中の硬化剤以外の固形分100質量部に対して0.1~20質量部程度、より好ましくは1~10質量部程度、さらに好ましくは1~7質量部程度が挙げられる。
<他の添加成分>
表面保護層3を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物には、表面保護層3に備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、マット剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができ、例えばマット剤としてはシリカ粒子や水酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
<表面保護層3の厚み>
表面保護層3の硬化後の厚みについては、特に制限されないが、例えば、1~1000μm、好ましくは1~50μm、更に好ましくは1~30μmが挙げられる。このような範囲の厚みを満たすと、耐薬品性等の表面保護層としての十分な物性が得られると共に、電離放射線を均一に照射することが可能であるため、均一に硬化することが可能となり、経済的にも有利になる。また、表面保護層3の硬化後の厚みが前記範囲を充足することによって、成形後における表面保護層の端部の剥離がより効果的に抑制される。
<表面保護層3の形成>
表面保護層3の形成は、例えば、ポリカーボネート(メタ)アクリレート及びアクリル樹脂を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を調製し、これを塗布し、架橋硬化することにより行われる。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物の粘度は、後述の塗布方式により、転写用基材1または離型層2の表面上に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であればよい。
従来、三次元成形フィルムは、その表面保護層を、三次元成形フィルムの状態で既に電離放射線により硬化させたものと、成形加工により樹脂成形品とした後に硬化させたものと大別されるが、成形加工後の工程を簡便にして生産性を高める観点からは前者が好ましいと考えられている。しかしながら、三次元成形フィルムの段階で表面保護層が硬化されると、三次元成形フィルムの柔軟性が低下しており、成形加工の過程で表面保護層の端部に剥離が生じやすいため、成形性に優れた樹脂組成物を選択する必要が生じる。本発明の三次元成形用転写フィルムにおいては、表面保護層が、ポリカーボネート(メタ)アクリレート及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含む電離放射線硬化性樹脂組成物により形成されており、これにより、成形加工の過程で表面保護層の端部に剥離が生じることが効果的に抑制されている。従って、本発明の三次元成形用転写フィルムにおいて、電離放射線硬化性樹脂組成物は未硬化物であっても硬化物であってもよいが、生産性を高める等の観点から、硬化物であることが好ましい。
本発明においては、調製された塗布液を、前記厚みとなるように、転写用基材1または離型層2の表面上に、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗布し、未硬化樹脂層を形成させる。
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させて表面保護層3を形成する。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70~300kV程度が挙げられる。
なお、電子線の照射において、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、表面保護層3の下に電子線照射によって劣化しやすい樹脂を使用する場合には、電子線の透過深さと表面保護層3の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定する。これにより、表面保護層3の下に位置する層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による各層の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、表面保護層3の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5~300kGy(0.5~30Mrad)、好ましくは10~50kGy(1~5Mrad)の範囲で選定される。
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190~380nmの紫外線を含む光線を放射すればよい。紫外線源としては、特に制限されないが、例えば、高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈、紫外線発光ダイオード(LED-UV)等が挙げられる。
かくして形成された表面保護層3には、各種の添加剤を添加することにより、ハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能等の機能を付与する処理を行ってもよい。
[プライマー層4]
プライマー層4は、表面保護層3とその下(支持体10とは反対側)に位置する層との密着性を高めることなどを目的として設けられる層である。プライマー層4は、表面保護層3に接面するように設けられる。プライマー層4は、プライマー層形成用樹脂組成物により形成することができる。
プライマー層形成用樹脂組成物に用いる樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、(メタ)アクリル-ウレタン共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらの樹脂の中でも、好ましくは、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、及び(メタ)アクリル-ウレタン共重合体樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ウレタン樹脂としては、ポリオール(多価アルコール)を主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするポリウレタンを使用できる。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であればよく、具体的には、ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール等が挙げられる。上記イソシアネートとしては、具体的には、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート;4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(又は脂環族)イソシアネートが挙げられる。イソシアネートを硬化剤として用いる場合、プライマー層形成用樹脂組成物におけるイソシアネートの含有量は特に制限されないが、密着性の観点や、後述の装飾層5などを積層する際の印刷適正の観点からは、上記のポリオール100質量部に対して3~45質量部が好ましく、3~25質量部がより好ましい。
上記ウレタン樹脂の中でも、架橋後の密着性の向上等の観点から、好ましくは、ポリオールとしてアクリルポリオール、又はポリエステルポリオールと、架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートとから組み合わせ;さらに好ましくは、アクリルポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを組み合わせが挙げられる。
上記アクリル樹脂としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、2種以上の異なる(メタ)アクリル酸エステルモノマーの共重合体、又は(メタ)アクリル酸エステルと他のモノマーとの共重合体が挙げられる。(メタ)アクリル樹脂として、より具体的には、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、(メタ)アクリル酸エチル-(メタ)アクリル酸ブチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体等の(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
(メタ)アクリル-ウレタン共重合体樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル-ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂が挙げられる。また、硬化剤としては、前述する各種イソシアネートが用いられる。アクリル-ウレタン(ポリエステルウレタン)ブロック共重合系樹脂におけるアクリルとウレタン比の比率については、特に制限されないが、例えば、アクリル/ウレタン比(質量比)として、9/1~1/9、好ましくは8/2~2/8が挙げられる。
プライマー層4の厚みについては、特に制限されないが、例えば0.1~10μm程度、好ましくは1~10μm程度(すなわち、塗布量が例えば0.1~10g/m2程度、好ましくは1~10g/m2)が挙げられる。プライマー層4がこのような厚みを充足することにより、表面保護層3の剥離等を効果的に抑制することができる。
プライマー層4を形成する組成物には、備えさせる所望の物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、マット剤等が挙げられる。これらの添加剤は、常用されるものから適宜選択して用いることができ、例えばマット剤としてはシリカ粒子や水酸化アルミニウム粒子等が挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
プライマー層4は、プライマー層形成用樹脂組成物を用いて、グラビアコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート、コンマコート、かけ流しコート、刷毛塗り、スプレーコート等の通常の塗布方法や転写コーティング法により形成される。ここで、転写コーティング法とは、薄いシート(フィルム基材)にプライマー層や接着層の塗膜を形成し、その後に三次元成形用転写フィルム中の対象となる層表面に被覆する方法である。
プライマー層4は、硬化後の表面保護層3の上に形成してもよい。また、表面保護層3を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物の層の上にプライマー層形成用組成物からなる層を積層してプライマー層4を形成した後、電離放射線硬化性樹脂からなる層に電離放射線を照射し、電離放射線硬化性樹脂からなる層を硬化させて表面保護層3を形成してもよい。
[装飾層5]
装飾層5は、樹脂成形品に装飾性を付与するために、必要に応じて設けられる層である。装飾層5は、通常、絵柄層及び/又は隠蔽層により構成される。ここで、絵柄層は、模様や文字等とパターン状の絵柄を表現するために設けられる層であり、隠蔽層は、通常全面ベタ層であり成形樹脂等の着色等を隠蔽するために設けられる層である。隠蔽層は、絵柄層の絵柄を引き立てるために絵柄層の内側に設けてもよく、また隠蔽層単独で装飾層5を形成してもよい。
絵柄層の絵柄については、特に制限されないが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字等からなる絵柄が挙げられる。
装飾層5は、着色剤、バインダー樹脂、及び溶剤又は分散媒を含む印刷インキを用いて形成される。
装飾層5の形成に用いられる印刷インキの着色剤としては、特に制限されないが、例えば、アルミニウム、クロム、ニッケル、錫、チタン、リン化鉄、銅、金、銀、真鍮等の金属、合金、又は金属化合物の鱗片状箔粉からなるメタリック顔料;マイカ状酸化鉄、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、二酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、着色二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料;アルミン酸ストロンチウム、アルミン酸カルシウム、アルミン酸バリウム、硫化亜鉛、硫化カルシウム等の蛍光顔料;二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色無機顔料;亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料;イソインドリノンイエロー、ハンザイエローA、キナクリドンレッド、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(染料も含む)等が挙げられる。これらの着色剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、装飾層5の形成に用いられる印刷インキのバインダー樹脂としては、特に制限されないが、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、装飾層5の形成に用いられる印刷インキの溶剤又は分散媒としては、特に制限されないが、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸-2-メトキシエチル、酢酸-2-エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等が挙げられる。これらの溶剤又は分散媒は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、装飾層5の形成に使用される印刷インキには、必要に応じて、沈降防止剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、増粘剤、消泡剤、滑剤等が含まれていてもよい。
装飾層5は、例えば表面保護層3やプライマー層4上など隣接する層の上に、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の印刷法によって形成することができる。また、装飾層5を絵柄層及び隠蔽層の組み合わせとする場合には、一方の層を積層させて乾燥させた後に、もう一方の層を積層させて乾燥させればよい。
装飾層5の厚さについては、特に制限されないが、例えば、1~40μm、好ましくは3~30μmが挙げられる。
装飾層5は金属薄膜層であってもよい。金属薄膜層を形成する金属としては、例えば、スズ、インジウム、クロム、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、金、白金、亜鉛、及びこれらのうち少なくとも1種を含む合金などが挙げられる。金属薄膜層の形成方法は特に制限されず、例えば上記の金属を用いた、真空蒸着法などの蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。また、隣接する層との密着性を向上させるため、金属薄膜層の表面や裏面には公知の樹脂を用いたプライマー層を設けてもよい。
[接着層6]
接着層6は、三次元成形用転写フィルムと成形樹脂層8との密着性を向上させることなどを目的として、装飾層5、透明樹脂層7などの裏面(成形樹脂層8側)に必要に応じて設けられる層である。接着層6を形成する樹脂としては、これらの層間の密着性や接着性を向上させることができるものであれば、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
接着層6は必ずしも必要な層ではないが、本発明の三次元成形用転写フィルムを、例えば後述する真空圧着法など、予め用意された樹脂成形体上へ貼着による加飾方法に適用することを想定した場合は、設けられていることが好ましい。真空圧着法に用いる場合、上記した各種の樹脂のうち、加圧又は加熱により接着性を発現する樹脂として慣用のものを使用して接着層6を形成することが好ましい。
接着層6の厚みは、特に制限されないが、例えば、0.1~30μm程度、好ましくは0.5~20μm程度、さらに好ましくは1~8μm程度が挙げられる。
[透明樹脂層7]
本発明の三次元成形用転写フィルムにおいては、プライマー層4と接着層6との密着性を向上させることなどを目的として、必要に応じて、透明樹脂層7を設けてもよい。透明樹脂層7は、本発明の三次元成形用転写フィルムが装飾層5を有さない態様において、プライマー層4と接着層6との密着性を向上させることができるので、本発明の三次元成形用転写フィルムを透明性が要求される樹脂成形品の製造に供する場合において設けることが特に有用である。透明樹脂層7は、透明性のものであれば特に限定されず、無色透明、着色透明、半透明等のいずれも含む。透明樹脂層7を形成する樹脂成分としては、装飾層5で例示したバインダー樹脂などが挙げられる。
透明樹脂層7には、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていてもよい。
透明樹脂層7は、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の印刷法によって形成することができる。
透明樹脂層7の厚みとしては、特に限定されないが、一般的には0.1~10μm程度、好ましくは1~10μm程度が挙げられる。
本発明の三次元成形用転写フィルムは、例えば以下の工程を備える製造方法により製造することができる。
転写用基材上に、ポリカーボネート(メタ)アクリレート及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含む電離放射線硬化性樹脂組成物からなる層を積層する工程
前記電離放射線硬化性樹脂組成物からなる層の上に、プライマー層を積層する工程
前述の通り、本発明の三次元成形用転写フィルムにおいては、表面保護層3を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物は、成形前において未硬化物であってもよいし、硬化物であってもよい。硬化物とする場合、電離放射線硬化性樹脂組成物に電離放射線を照射し、前記電離放射線硬化性樹脂組成物からなる層を硬化させる工程を行う。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる層の硬化は、プライマー層を積層する工程の前に行ってもよいし、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる層の上にプライマー層形成用組成物からなる層を積層した後、前記電離放射線硬化性樹脂組成物に電離放射線を照射し、前記電離放射線硬化性樹脂組成物からなる層を硬化させて前記転写用基材上に表面保護層3を形成する工程を行ってもよい。
2.樹脂成形品及びその製造方法
本発明の樹脂成形品は、本発明の三次元成形用転写フィルムと成形樹脂とを一体化させることにより成形されてなるものである。具体的には、当該三次元成形用転写フィルムの支持体10とは反対側に成形樹脂層8を積層することにより、少なくとも成形樹脂層8と、プライマー層4と、表面保護層3と、支持体10とがこの順に積層された、支持体付き樹脂成形品が得られる(例えば図3を参照)。次に、支持体付き樹脂成形品から支持体10を剥離することにより、少なくとも成形樹脂層8とプライマー層4と表面保護層3とがこの順に積層された本発明の樹脂成形品が得られる(例えば図4を参照)。図4に示されるように、本発明の樹脂成形品では、必要に応じて、上述の装飾層5、接着層6、透明樹脂層7などの少なくとも1層がさらに設けられていてもよい。
本発明の樹脂成形品は、以下の工程を備える製造方法により製造することができる。
三次元成形用転写フィルムの転写用基材とは反対側に成形樹脂層を積層する工程、
転写用基材を前記表面保護層から剥離する工程
三次元成形用転写フィルムを例えば射出成形同時転写加飾法に適用する場合、本発明の樹脂成形品の製造方法としては、例えば以下の工程(1)~(5)を含む方法が挙げられる。
(1)まず、上記転写用三次元成形用転写フィルムのプライマー層4側(支持体と反対側)を金型内に向けて、熱盤によってプライマー層4側から三次元成形用転写フィルムを加熱する工程、
(2)該三次元成形用転写フィルムを金型内形状に沿うように予備成形(真空成形)して金型内面に密着させて型締する工程、
(3)樹脂を金型内に射出する工程、
(4)該射出樹脂を冷却した後に金型から樹脂成形品(支持体付き樹脂成形品)を取り出す工程、及び
(5)樹脂成形品の表面保護層から支持体を剥離する工程。
上記両工程(1)及び(2)において、三次元成形用転写フィルムを加熱する温度は、転写用基材1のガラス転移温度近傍以上で、かつ、溶融温度(又は融点)未満の範囲であることが好ましい。通常はガラス転移温度近傍の温度で行うことが、より好ましい。なお、上記のガラス転移温度近傍とは、ガラス転移温度±5℃程度の範囲を指し、転写用基材1として好適なポリエステルフィルムを使用する場合には、一般に70~130℃程度である。なお、あまり複雑でない形状の金型を用いる場合は、三次元成形用転写フィルムを加熱する工程や、三次元成形用転写フィルムを予備成形する工程を省略し、後記する工程(3)において、射出樹脂の熱と圧力によって三次元成形用転写フィルムを金型の形状に成形してもよい。
上記両工程(3)において、後述する成形用樹脂を溶融させて、キャビティ内に射出して該三次元成形用転写フィルムと成形用樹脂とを一体化させる。成形用樹脂が熱可塑性樹脂の場合は、加熱溶融によって流動状態にして、また、成形用樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、未硬化の液状組成物を室温又は適宜加熱して流動状態で射出して、冷却して固化させる。これによって、三次元成形用転写フィルムが、形成された樹脂成形体と一体化して貼り付き、支持体付き樹脂成形品となる。成形用樹脂の加熱温度は、成形用樹脂の種類によるが、一般に180~320℃程度である。
このようにして得られた支持体付き樹脂成形品は、工程(4)において冷却した後に金型から取り出した後、工程(5)において支持体10を表面保護層3から剥離することにより樹脂成形品を得る。また、支持体10を表面保護層3から剥離する工程は、加飾樹脂成形品を金型から取り出す工程と同時に行われてもよい。すなわち、工程(5)は工程(4)に含まれるものであってもよい。
さらに、樹脂成形品の製造は、真空圧着法により行うこともできる。真空圧着法では、まず、上側に位置する第1真空室及び下側に位置する第2真空室からなる真空圧着機内に、本発明の三次元成形用転写フィルム及び樹脂成形体を、三次元成形用転写フィルムが第1真空室側、樹脂成形体が第2真空室側となるように、且つ三次元成形用転写フィルムの成形樹脂層8を積層する側が樹脂成形体側に向くように真空圧着機内に設置し、2つの真空室を真空状態とする。樹脂成形体は、第2真空室側に備えられた、上下に昇降可能な昇降台上に設置される。次いで、第1の真空室を加圧すると共に、昇降台を用いて成形体を三次元成形用転写フィルムに押し当て、2つの真空室間の圧力差を利用して、三次元成形用転写フィルムを延伸しながら樹脂成形体の表面に貼着する。最後に2つの真空室を大気圧に開放し、支持体10を剥離し、必要に応じて三次元成形用転写フィルムの余分な部分をトリミングすることにより、本発明の樹脂成形品を得ることができる。
真空圧着法においては、上記の成形体を三次元成形用転写フィルムに押し当てる工程の前に、三次元成形用転写フィルムを軟化させて成形性を高めるため、三次元成形用転写フィルムを加熱する工程を備えることが好ましい。当該工程を備える真空圧着法は、特に真空加熱圧着法と呼ばれることがある。当該工程における加熱温度は、三次元成形用転写フィルムを構成する樹脂の種類や、三次元成形用転写フィルムの厚みなどによって適宜選択すればよいが、例えば転写用基材1としてポリエステル樹脂フィルムやアクリル樹脂フィルムを使用する場合であれば、通常60~200℃程度とすることができる。
本発明の樹脂成形品において、成形樹脂層8は、用途に応じた樹脂を選択して形成すればよい。成形樹脂層8を形成する成形用樹脂としては、熱可塑性樹脂であってもよく、また熱硬化性樹脂であってもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ABS樹脂、スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
なお、支持体付き樹脂成形品において、支持体10は、樹脂成形品の保護シートとしての役割を果たすので、支持体付き樹脂成形品の製造後に剥離させずにそのまま保管しておき、用時に支持体10を剥がしてもよい。このような態様で使用することにより、輸送時の擦れ等によって樹脂成形品に傷付きが生じるのを防止することができる。
本発明の樹脂成形品は、優れた耐薬品性を有するため、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材;窓枠、扉枠等の建具;壁、床、天井等の建築物の内装材;テレビ受像機、空調機等の家電製品の筐体;容器等として利用することができる。
以下に実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。但し本発明は実施例に限定されるものではない。
(実施例1~5及び比較例1~3)
[三次元成形用転写フィルムの製造]
転写用基材として、一方面に易接着剤層が形成されたポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)を用いた。ポリエチレンテレフタレートフィルムの易接着剤層の面に、メラミン系樹脂を主成分とする塗工液をグラビア印刷にて印刷して離型層(厚さ1μm)を形成した。次いで、離型層の上に、電離放射線硬化性樹脂組成物を、硬化後の厚さが3μm(すなわち、表面保護層の厚さが3μm)となるようにバーコーダーにより塗工し、表面保護層形成用塗布膜を形成した。
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性樹脂(ポリカーボネート骨格を有する2官能のウレタンアクリレート(重量平均分子量:10,000))と、表1に記載の添加成分と、アクリル樹脂(アクリルポリマー(アクリル樹脂、メタクリル酸メチルとメタクリル酸との共重合体、Tg105℃、重量平均分子量:約20,000))と硬化剤(ヘキサメチレンジイソシアネート)とを含んでいる。添加成分の種類と含有量(固形分)は、表1に記載の通りである。また、電離放射線硬化性樹脂とアクリル樹脂の割合(質量比)は、97.5:2.5であり、電離放射線硬化性樹脂組成物中の固形分のうち、添加成分以外が、電離放射線硬化性樹脂とアクリル樹脂と硬化剤である。なお、硬化剤は、電離放射線硬化性樹脂組成物中の硬化剤以外の固形分100質量部に対して、0.4質量部使用した。
次に、この塗膜上から加速電圧165kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、表面保護層形成用塗布膜を硬化させて表面保護層を形成した。この表面保護層の上に、プライマー層形成用の樹脂組成物(アクリルポリオール)をグラビア印刷により塗工し、プライマー層(厚み1.5μm)を形成した。更に、プライマー層上に、バインダー樹脂(アクリル樹脂50質量%、塩化ビニル-酢酸ビニル系共重合体樹脂50質量%)を含む装飾層形成用黒色系インキ組成物(成形樹脂の表面保護層側のグロス値(60°)が、85以上となる)を用いて、ヘアライン柄の装飾層(厚さ5μm)をグラビア印刷により形成した。更に、装飾層上に、アクリル系樹脂(軟化温度:125℃)を含む接着層形成用の樹脂組成物を用いて、接着層(厚さ4μm)をグラビア印刷により形成することにより、転写用基材/離型層/表面保護層/プライマー層/装飾層/接着層が順に積層された三次元成形用転写フィルムを製造した。
[樹脂成形品の製造]
得られた各三次元成形用転写フィルムを金型に入れて、赤外線ヒーターで350℃、7秒間加熱し、真空成形で金型内の形状(板状)に沿うように予備成形して型締した(最大延伸倍率50%)。その後、射出樹脂を金型のキャビティ内に射出し、該三次元成形用転写フィルムと射出樹脂とを一体化成形し、金型から取り出すと同時に支持体(転写用基材及び離型層)を剥離除去することにより、樹脂成形品を得た。なお、板状に成形されている樹脂成形品において、三次元成形用転写フィルムが積層された側とは反対側の表面は、射出樹脂が固化した成形樹脂層が露出している。また、三次元成形用転写フィルムの端部は成形樹脂層の角部に沿うようにして積層され、成形樹脂層の側面の位置に三次元成形用転写フィルムの端面が位置している。
端部の白化評価
得られた各樹脂成形品(表面保護層側のグロス値(60°)が、85以上)の三次元成形用転写フィルム部分(転写層)の端部を目視で観察して、端部の白化について、以下の基準により評価した。結果を表1に示す。
〇:一般的なオフィスの蛍光灯下、及び、樹脂成形品から5~15cm程度離れた場所からLED光源を端部に照射した場合の何れにおいても、樹脂成形品から5~15cm程度離れた目視観察では、白化を認識することができない。
△:一般的なオフィスの蛍光灯下、樹脂成形品から5~15cm程度離れた目視観察では白化を認識することができないため、実用上は問題無いが、樹脂成形品から5~15cm程度離れた場所からLED光源を端部に照射して、樹脂成形品から5~15cm程度離れて目視観察すると、白化を認識することができる。
×:一般的なオフィスの蛍光灯下で、樹脂成形品から30cm程度離れた目視で白化を認識することができる。
端部の密着性評価
得られた各樹脂成形品の三次元成形用転写フィルム部分(転写層)の端部にセロハンテープ(ニチバン社製のセロテープ(No.405-1P))を張り付け、それを剥がす作業を1回の作業とし、この作業を1秒間当たりに1.5~2回の速さで行い、20秒間繰り返して、三次元成形用転写フィルムの端部における表面保護層の密着性を、以下の基準により評価した。結果を表1に示す。
○:端部における表面保護層の剥離の進展が、1mm未満であり、表面保護層の剥離が好適に抑制されている。
△:端部における表面保護層の剥離の進展が、1mm以上5mm未満であり、表面保護層の剥離が抑制され、実用上は問題がない。
×:端部における表面保護層の剥離の進展が、5mm以上であり、剥離が十分に抑制されておらず、実用上問題が生じる。特に、転写された三次元成形用転写フィルム(転写層)の端部を処理する作業において、表面保護層の端部が剥離しやすい。
耐薬品性の評価
得られた各樹脂成形品の表面保護層の表面に、室温(25℃)下において、95%のエタノール水溶液をスポイトで1滴垂らし、10分間そのまま放置した。次に、樹脂成形品を60℃のオーブン内で30分間乾燥させ、表面保護層の表面の変化を目視及び光沢計(BYK-Gardner社製の製品名「micro-tri-gross」)で観察し、以下の基準に従い耐薬品性を評価した。結果を表1に示す。
○:表面保護層の表面の艶変化が目視で認識されず、表面保護層にエタノール水溶液を垂らす前と比較して、グロス値(60°)が95%以上維持されている。
△:表面保護層の表面に若干の白化が見られるが、実用上問題のない程度である。また、表面保護層にエタノール水溶液を垂らす前と比較して、グロス値(60°)が90%以上95%未満の範囲で維持されている。
×:表面保護層の表面に白化が見られ、表面保護層にエタノール水溶液を垂らす前と比較して、グロス値(60°)が90%未満に低下している。
表1中、添加成分として用いた塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体において、塩化ビニルと酢酸ビニルの質量比(塩化ビニル:酢酸ビニル)は90:10である。また、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体の重量平均分子量は42,000、平均重合度は370、K値は49である。
表1に示されるように、表面保護層がポリカーボネート(メタ)アクリレート及び塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体を含む電離放射線硬化性樹脂組成物により形成されている実施例1~5の三次元成形用転写フィルムでは、成形後における端部の剥離が抑制され、表面保護層の密着性に優れており、さらに、耐薬品性にも優れていた。