JP7114013B1 - 治具固定用粘着シート、保護膜形成用複合シート、及び保護膜付きチップの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本願は、2021年3月22日に、日本に出願された特願2021-047594号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
第1粘着剤層と、芯材フィルムと、第2粘着剤層とが、この順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されており、
前記治具固定用粘着シートは、130℃、2h加熱後の試験片において引張試験から求められる破断強度(Ah)の、130℃、2h加熱後の試験片の、SUS304に対する180°引き離し粘着力(Bh)に対する比(Ah/Bh)が1.25以上である、治具固定用粘着シート。
[2] 前記180°引き離し粘着力(Bh)が2.0~12N/10mmである、請求項1に記載の治具固定用粘着シート。
[3] 前記破断強度(Ah)が6N/10mm以上である、[1]又は[2]に記載の治具固定用粘着シート。
[4] 前記第1粘着剤層及び第2粘着剤層は、アクリル樹脂を含有する治具用粘着剤組成物から形成され、前記アクリル樹脂の重量平均分子量が70万以上である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の治具固定用粘着シート。
[5] 前記アクリル樹脂が(メタ)アクリル酸由来の構成単位を有さない、[1]~[4]に記載の治具固定用粘着シート。
[7] 前記治具固定用粘着シートは、130℃、2h加熱後の試験片において引張試験から求められる破断伸度(Xh)が100%以上である、[1]~[6]のいずれか一項に記載の治具固定用粘着シート。
[8] 前記治具固定用粘着シートは、130℃、2h加熱後の試験片において引張試験から求められる破断伸度(Xh)の、加熱前の試験片において引張試験から求められる破断伸度(X0)に対する比(Xh/X0)が、0.10~1.50である、[1]~[7]のいずれか一項に記載の治具固定用粘着シート。
前記治具用粘着剤層が、[1]~[8]のいずれか一項に記載の治具固定用粘着シートを用いて形成された、保護膜形成用複合シート。
[10] 前記保護膜形成フィルムが、熱硬化性である、[9]に記載の保護膜形成用複合シート。
固定用治具に前記保護膜形成用複合シート中の治具用粘着剤層を貼付するとともに、ワークの裏面に、[9]又は[10]に記載の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを貼付することにより、前記支持シート上に、前記保護膜形成フィルム及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シートを作製する工程と、
前記支持シート上で、前記ワークを分割し、前記保護膜形成フィルム若しくは前記保護膜形成フィルムを硬化させて得られる保護膜を切断することにより、複数個の保護膜形成フィルム付きチップ若しくは保護膜付きチップが前記支持シート上で固定されている第3積層複合シートを作製する工程と、
前記第3積層複合シート中の前記保護膜形成フィルム付きチップ若しくは前記保護膜付きチップを前記支持シートから引き離すことによりピックアップする工程と、を有する保護膜付きチップの製造方法。
固定用治具に前記保護膜形成用複合シート中の治具用粘着剤層を貼付するとともに、ワークの裏面に、[10]に記載の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを貼付することにより、前記支持シート上に、前記保護膜形成フィルム及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シートを作製する工程と、
前記第1積層複合シートの周縁部を前記固定用治具に貼付した状態で、前記第1積層複合シートを加熱して、前記保護膜形成フィルムを硬化させ前記保護膜を形成することにより、前記支持シート上に、前記保護膜及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第2積層複合シートを作製する工程と、
前記支持シート上で、前記第2積層複合シート中の前記ワークを分割し、前記保護膜を切断することにより、複数個の保護膜付きチップが前記支持シート上で固定されている第3積層複合シートを作製する工程と、
前記第3積層複合シート中の前記保護膜付きチップを前記支持シートから引き離すことによりピックアップする工程と、を有する保護膜付きチップの製造方法。
本発明の実施形態に係る治具固定用粘着シートは、保護膜形成フィルムを備える保護膜形成用複合シートに用いられる治具固定用粘着シートであって、第1粘着剤層と、芯材フィルムと、第2粘着剤層とが、この順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている。
治具固定用粘着シートを、幅10mm、長さ80mmの短冊形状に切断し、130℃、2h加熱し、放冷する。治具固定用粘着シートが、第1剥離フィルム151と、第1粘着剤層161と、芯材フィルム162と、第2粘着剤層163と、第2剥離フィルム152とが、この順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されているときには、第2粘着剤層163から第2剥離フィルム152を剥離し、さらに、第1粘着剤層161から第1剥離フィルム151を剥離する。第1粘着剤層161と、芯材フィルム162と、第2粘着剤層163とが、この順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている治具固定用粘着シートの試験片について、23℃、チャック間距離50mm、引張速度200mm/minの条件で引張試験を実施し、破断強度(Ah)[N/10mm]、及び、破断伸度(Xh)[%]を求める。
治具固定用粘着シートを、幅10mm、長さ250mmの短冊形状に切断し、固定用治具に貼付する側の第1粘着剤層161を露出させ、露出した治具固定用粘着シートの第1粘着剤層161を、♯1200HL(ヘアライン)研磨仕上げされたSUS304の板の♯1200HL研磨仕上げされた面に2kgローラーを1往復することにより貼付する。130℃、2h加熱し、放冷し、23℃、50%RHの環境下で、JIS Z0237に準拠して、180°引き離し粘着力(Bh)を300mm/minの速さで測定する。
130℃、2h加熱後の試験片において引張試験から求められる破断強度(Ah)の、130℃、2h加熱後の試験片の、SUS304に対する180°引き離し粘着力(Bh)に対する比(Ah/Bh)は、前記破断強度(Ah)を前記180°引き離し粘着力(Bh)で割り算することにより計算することができる。
治具固定用粘着シートを、幅10mm、長さ80mmの短冊形状に切断する。治具固定用粘着シートが、第1剥離フィルム151と、第1粘着剤層161と、芯材フィルム162と、第2粘着剤層163と、第2剥離フィルム152とが、この順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されているときには、第2粘着剤層163から第2剥離フィルム152を剥離し、さらに、第1粘着剤層161から第1剥離フィルム151を剥離する。第1粘着剤層161と、芯材フィルム162と、第2粘着剤層163とが、この順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている治具固定用粘着シートの試験片について、23℃、チャック間距離50mm、引張速度200mm/minの条件で引張試験を実施し、加熱前の破断伸度(X0)[%]を求める。
130℃、2h加熱後の試験片において引張試験から求められる破断伸度(Xh)の、加熱前の試験片において引張試験から求められる破断伸度(X0)に対する比(Xh/X0)は、前記破断伸度(Xh)を前記破断伸度(X0)で割り算することにより計算することができる。
前記芯材フィルムの構成材料としては、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-プロピレンゴム等のポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン;ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
芯材フィルムは、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
芯材フィルムは、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する芯材フィルムは、前記芯材フィルムを含有する樹脂組成物を成形することにより製造できる。
第1粘着剤層及び第2粘着剤層は、前記引き離し粘着力の条件を満たすものであり、非エネルギー線硬化性であってもよく、エネルギー線硬化性であってもよく、非エネルギー線硬化性であることが好ましい。
本明細書において、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。これとは逆にエネルギー線を照射することにより硬化する性質を「エネルギー線硬化性」と称する。
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味する。エネルギー線の例としては、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることにより照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
前記粘着性樹脂(i)の中でも、リングフレーム等の固定用治具18との密着性が高く、ダイシング工程等にて固定用治具18から保護膜形成用複合シートが剥がれることを効果的に抑制することのできるアクリル樹脂が好ましい。
粘着性樹脂(i)における前記アクリル樹脂としては、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル重合体が挙げられる。
前記アクリル樹脂が有する構成単位は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、より具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸イコシル等が挙げられる。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することにより架橋の起点となったり、前記官能基が不飽和基含有化合物中のイソシアネート基、グリシジル基等の官能基と反応したりすることにより、アクリル重合体の側鎖に不飽和基の導入を可能とするものが挙げられる。
すなわち、官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+…+(Wm/Tgm)(式中、Tgはアクリル樹脂のガラス転移温度であり、Tg1,Tg2,…Tgmはアクリル樹脂の原料となる各単量体のホモポリマーのガラス転移温度であり、W1、W2、…Wmは各単量体の質量分率である。ただし、W1+W2+…+Wm=1である。)
前記Foxの式における各単量体のホモポリマーのガラス転移温度は、高分子データ・ハンドブック、粘着ハンドブック又はPolymer Handbook等に記載の値を用いることができる。例えば、メチルアクリレートホモポリマーのTgは10℃、2-ヒドロキシエチルアクリレートホモポリマーのTgは-15℃、n-ブチルアクリレートホモポリマーのTgは-54℃、エチルアクリレートホモポリマーのTgは-24℃、4-ヒドロキシブチルアクリレートホモポリマーのTgは-32℃、N,N-ジメチルアクリルアミドホモポリマーのTgは119℃、アクリロイルモルホリンホモポリマーのTgは145℃、グリシジルメタクリレートホモポリマーのTgは41℃である。
治具用粘着剤組成物は、架橋剤(ii)を含有することが好ましい。
架橋剤(ii)は、例えば、前記官能基と反応して、粘着性樹脂(i)同士を架橋するものである。
架橋剤(ii)としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
粘着剤の凝集力を向上させて前記治具固定用粘着シートの前記180°引き離し粘着力(Bh)を、前記数値範囲に調整することがより容易になる点、及び入手が容易である等の点から、架橋剤(ii)はイソシアネート系架橋剤であることが好ましい。
治具用粘着剤組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
なお、反応遅延剤とは、例えば、治具用粘着剤組成物中に混入している触媒の作用によって、保存中の治具用粘着剤組成物において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制するものである。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
治具用粘着剤組成物は、溶媒を含有していてもよい。治具用粘着剤組成物は、溶媒を含有していることにより、塗工対象面への塗工適性が向上する。
治具用粘着剤組成物は、これを構成するための各成分を配合することにより得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことにより用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することにより用いてもよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
前記治具固定用粘着シートは、第1粘着剤層及び第2粘着剤層の外側の両面に、第1剥離フィルム及び第2剥離フィルムが積層されている形態で、供給することができる。
第1剥離フィルムの第1粘着剤層に接する面及び第2剥離フィルムの第2粘着剤層に接する面の表面粗さ(Ra)は同じであってもよく、異なっていてもよい。
治具固定用粘着シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように順次積層することにより製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
本発明の実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムと、前記支持シートの前記一方の面上又は前記保護膜形成フィルムの前記支持シートとは反対側の第1面上の周縁部近傍に設けられた治具用粘着剤層と、を備える保護膜形成用複合シートであって、前記治具用粘着剤層が、上述の本発明の実施形態に係る治具固定用粘着シートを用いて形成されている。
本実施形態の保護膜形成用複合シートの例を、以下、図面を参照しながら説明する。
なお、図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
支持シート10は、基材11と、基材11の一方の面(第1面)11a上に設けられた粘着剤層12と、を備えて構成されている。保護膜形成用複合シート101中、粘着剤層12は、基材11と保護膜形成フィルム13との間に配置されている。
すなわち、基材11及び粘着剤層12からなる支持シート10と、支持シート10の粘着剤層12の面上に設けられた保護膜形成フィルム13と、保護膜形成フィルム13の支持シート10とは反対側の第1面上の周縁部近傍に設けられた治具用粘着剤層16と、を備える。
支持シート10の第1面10aは、粘着剤層12の基材11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aと同じである。
保護膜形成用複合シート101においては、粘着剤層12の第1面12aの全面又はほぼ全面に、保護膜形成フィルム13が積層され、保護膜形成フィルム13の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用粘着剤層16が積層されている。さらに、保護膜形成フィルム13の第1面13aのうち、治具用粘着剤層16が積層されていない領域と、治具用粘着剤層16の保護膜形成フィルム13側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)16aに、剥離フィルム15が積層されている。保護膜形成フィルム13の第1面13aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13bには、支持シート10が設けられている。
ここに示す保護膜形成用複合シート102は、保護膜形成フィルムの形状及び大きさが異なり、治具用粘着剤層が保護膜形成フィルムの第1面ではなく、粘着剤層の第1面に積層されている点以外は、図2に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
ここに示す保護膜形成用複合シート104は、支持シート10に代えて支持シート20を備えて構成されている点以外は、図2に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
すなわち、保護膜形成用複合シート104は、基材11及び保護膜形成フィルム13が、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。基材11のみからなる支持シート20と、支持シート20の一方の面上に設けられた保護膜形成フィルム13と、支持シート10の前記一方の面上の周縁部近傍に設けられた治具用粘着剤層16と、を備える
支持シート20の保護膜形成フィルム13側の面(第1面)20aは、基材11の第1面11aと同じである。
前記支持シートは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。支持シートが複数層からなる場合、これら複数層の構成材料及び厚さは、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性を有するとき、支持シートはエネルギー線を透過させるものが好ましい。
基材のみからなる支持シートを用いた場合には、低コストで保護膜形成用複合シートを製造できる。
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられる。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性を有するとき、粘着剤層はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
前記粘着性樹脂(I-1a)は、水酸基を有するアクリル樹脂である。
前記アクリル樹脂としては、例えば、水酸基含有モノマー由来の構成単位、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル重合体が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるのものが挙げられ、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
水酸基含有モノマーを含めて官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することにより架橋の起点となったり、前記官能基が後述する不飽和基含有化合物中のイソシアネート基、グリシジル基等の官能基と反応したりすることにより、アクリル重合体の側鎖に不飽和基の導入を可能とするものが挙げられる。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
前記粘着性樹脂(I-2a)は、例えば、前記粘着性樹脂(I-1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることにより得られる。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2-プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
前記粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーの重合体であるオリゴマー等が挙げられる。
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、さらに、イソシアネート系架橋剤を含有してもよい。
粘着剤組成物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-3)」と略記する)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-1)~(I-3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
粘着剤組成物(I-2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I-1)~(I-4)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I-1)~(I-4)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制する成分である。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していることにより、その塗工対象面への塗工適性が向上する。
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)等の粘着剤組成物は、前記粘着剤と、必要に応じて前記粘着剤以外の成分等の、粘着剤組成物を構成するための各成分を配合することにより得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
基材上に粘着剤層を設けるときには、例えば、基材上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。また、例えば、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることにより、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼合することにより、基材上に粘着剤層を積層してもよい。この場合の剥離フィルムは、保護膜形成用複合シートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
前記保護膜形成フィルムは、保護膜付きチップの製造方法において、半導体ウエハ等のワークの裏面に貼付して用いられるものである。保護膜形成フィルムは、ワーク又は前記ワークを分割して得られるチップの裏面を保護するために用いられる。
本明細書において、「基板装置」とは、保護膜付きチップが、その回路面上の突状電極において、回路基板上の接続パッドにフリップチップ接続されて、構成されたものを意味する。例えば、ワークとして半導体ウエハを用いた場合であれば、基板装置としては、保護膜付き半導体チップを搭載した半導体装置が挙げられる。
前記保護膜形成フィルムが硬化性であるとき、前記保護膜形成フィルムは、熱硬化性保護膜形成フィルムであってもよく、エネルギー線硬化性保護膜形成フィルムであってもよい。前記保護膜形成フィルムは、熱硬化性保護膜形成フィルムであることがより好ましい。
本明細書において、常温の保護膜形成フィルムを、常温を超える温度になるまで加熱し、次いで常温になるまで冷却することにより、加熱・冷却後の保護膜形成フィルムとし、加熱・冷却後の樹脂膜形成フィルムの硬さと、加熱前の樹脂膜形成フィルムの硬さと、を同じ温度で比較したとき、加熱・冷却後の樹脂膜形成フィルムの方が硬い場合には、この保護膜形成フィルムは、熱硬化性である。
保護膜形成フィルムが非硬化性であるとき、半導体ウエハ等のワークを分割して得られたチップを、チップに貼付された保護膜形成フィルムと共にピックアップすることにより、保護膜形成フィルムは保護膜になったものとみなす。
熱硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する熱硬化性保護膜形成用組成物(III-1)(本明細書においては、「保護膜形成用組成物(III-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
重合体成分(A)は、熱硬化性保護膜形成フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物である。
保護膜形成用組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様である。
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることにより、熱硬化性保護膜形成フィルムの形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。また、アクリル樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることにより、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制される。
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
熱硬化性成分(B)は、熱硬化性を有し、熱硬化性保護膜形成フィルムを硬化させて、硬質の保護膜を形成するための成分である。
保護膜形成用組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する熱硬化性成分(B)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
保護膜形成用組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
エポキシ樹脂(B1)としては、分子内にエポキシ基を有するものであってよく、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、分子内に2以上のエポキシ基を有する2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(以下、「DICY」と略記することがある)等が挙げられる。
前記熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤は、常温では熱硬化性保護膜形成フィルムにおいて、エポキシ樹脂(B1)中に安定して分散しているが、加熱によってエポキシ樹脂(B1)と相溶し、エポキシ樹脂(B1)と反応する。前記熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤を用いることにより、保護膜形成用複合シートの保存安定性が顕著に向上する。例えば、熱硬化性保護膜形成フィルムから隣接する支持シート又は治具用粘着剤層へのこの硬化剤の移動が抑制され、熱硬化性保護膜形成フィルムの熱硬化性の低下が効果的に抑制される。そして、熱硬化性保護膜形成フィルムの加熱による熱硬化性がより高くなるため、後述する保護膜付きチップのピックアップ性がより向上する。
保護膜形成用組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。硬化促進剤(C)は、保護膜形成用組成物(III-1)の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
保護膜形成用組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、充填材(D)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有することにより、熱硬化性保護膜形成フィルムを硬化して得られた保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することにより、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。また、熱硬化性保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
保護膜形成用組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、カップリング剤(E)を含有していてもよい。カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、熱硬化性保護膜形成フィルムの被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(E)を用いることにより、熱硬化性保護膜形成フィルムを硬化して得られた保護膜は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
重合体成分(A)として、上述のアクリル樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、保護膜形成用組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための架橋剤(F)を含有していてもよい。架橋剤(F)を用いて架橋することにより、熱硬化性保護膜形成フィルムの貯蔵弾性率E’を、好適な範囲へと容易に調整可能である。
保護膜形成用組成物(III-1)は、エネルギー線硬化性化合物(G)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性化合物(G)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
保護膜形成用組成物(III-1)は、エネルギー線硬化性化合物(G)を含有する場合、エネルギー線硬化性化合物(G)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(H)を含有していてもよい。
保護膜形成用組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、着色剤(I)を含有していてもよい。
着色剤(I)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
保護膜形成用組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、汎用添加剤(J)を含有していてもよい。
汎用添加剤(J)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤等が挙げられる。
保護膜形成用組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成フィルムの汎用添加剤(I)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
保護膜形成用組成物(III-1)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する保護膜形成用組成物(III-1)は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
保護膜形成用組成物(III-1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
保護膜形成用組成物(III-1)等の保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することにより得られる。
治具用粘着剤層16は、リングフレーム等の固定用治具18に、保護膜形成用複合シート101を固定するために用いる。
治具用粘着剤層16は、上述の本発明の実施形態に係る治具固定用粘着シートを用いて形成されており、第1粘着剤層161と、芯材フィルム162と、第2粘着剤層163とが、この順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている。
リング形状の第1粘着剤層161、芯材フィルム162及び第2粘着剤層163からなる治具用粘着剤層16は、例えば、図1に示される治具固定用粘着シートを用いて、次の様に作製することができる。
これにより、第1剥離フィルム151上に、リング形状の第1粘着剤層161、芯材フィルム162及び第2粘着剤層163がこの順に積層して構成される、治具用粘着剤層16を作製することができる。
前記保護膜形成用複合シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように積層し、必要に応じて、一部又はすべての層の形状を調節することにより、製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
ただし、第2層は、これを形成するための組成物を用いて、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、この形成済みの第2層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、第1層の露出面と貼合することにより、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
基材11上に積層済みの粘着剤層12を備える支持シート10、及び、剥離フィルム上に保護膜形成フィルム13を作製し、支持シート10の粘着剤層12と、保護膜形成フィルム13とを貼合して、基材11及び粘着剤層12からなる支持シート10と、保護膜形成フィルム13と、剥離フィルムとを備える第3積層体を作製する。
前記第3積層体から、剥離フィルムを取り除く。
前述の治具用粘着剤層の製造方法に沿って、第1剥離フィルム151上に、リング形状の第1粘着剤層161、芯材フィルム162及び第2粘着剤層163がこの順に積層して構成される治具用粘着剤層16を作製し、剥離フィルムが取り除かれた前記第3積層体の保護膜形成フィルム13と、治具用粘着剤層16とを貼合する。
基材11及び粘着剤層12からなる支持シート10と、保護膜形成フィルム13と、剥離フィルムとを備える第3積層体を作製する。
図1に示される治具固定用粘着シート1から第2剥離フィルム152を剥離して取り除く。次に、第2粘着剤層163の側から円形の抜き刃を当てて、第1剥離フィルム151を残して、第1粘着剤層161、芯材フィルム162及び第2粘着剤層163の内周縁をカットし、内側の円形部分を除去して、第1剥離フィルム151上に、内側の円形部分が除去された第1粘着剤層161、芯材フィルム162及び第2粘着剤層163が、この順に積層された第4積層体を作製する。
第3積層体から剥離フィルムを剥離し、露出した保護膜形成フィルム13と、第4積層体の、内側の円形部分が除去されて、露出している第2粘着剤層163とを、貼合する。その後、基材11の側から、内側の円形と同心円状に外側に円形の抜き刃を当てて、第1剥離フィルム151を残して、基材11及び粘着剤層12からなる支持シート10、保護膜形成フィルム13、第2粘着剤層163、芯材フィルム162、並びに、第1粘着剤層161の外周縁をカットし、外側の部分を除去する。
上述の本発明の実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、チップと、前記チップの裏面に設けられた保護膜と、を備える保護膜付きチップの製造方法に用いることができる。
「ウエハ」としては、シリコン、ゲルマニウム、セレン等の元素半導体や、GaAs、GaP、InP、CdTe、ZnSe、SiC等の化合物半導体、で構成される半導体ウエハ;サファイア、ガラス等の絶縁体で構成される絶縁体ウエハが挙げられる。
「半導体装置パネル」とは、少なくとも一個の電子部品が封止樹脂層で封止された複数の半導体装置が、平面的に並んで配置された集合体を云う。
これらワークの一方の面上には、回路が形成されており、本明細書においては、このように回路が形成されている側のワークの面を「回路面」と称する。そして、ワークの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ワークは、ダイシング等の手段により分割され、チップとなる。本明細書においては、ワークの場合と同様に、回路が形成されている側のチップの面を「回路面」と称し、チップの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ワークの回路面とチップの回路面には、いずれもバンプ、ピラー等の突状電極が設けられていることが好ましい。突状電極は、はんだで構成されていることが好ましい。
図5A~図5Hは、第一実施形態に係る保護膜付きチップの製造方法を模式的に説明するための断面図である。ここでは、保護膜形成フィルム13が熱硬化性であるときの、図2に示す保護膜形成用複合シート101を用いた場合を例に挙げて、保護膜付きチップの製造方法について説明する。
固定用治具18に保護膜形成用複合シート101中の治具用粘着剤層16を貼付するとともに、ワーク9の裏面9bに、保護膜形成用複合シート101中の保護膜形成フィルム13を貼付することにより、支持シート10上に、保護膜形成フィルム13及びワーク9がこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シート501を作製する工程と、
第1積層複合シート501の周縁部を固定用治具18に貼付した状態で、第1積層複合シート501を加熱して、保護膜形成フィルム13を硬化させ保護膜13’を形成することにより、支持シート10上に、保護膜13’及びワーク9がこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第2積層複合シート502を作製する工程と、
支持シート10上で、第2積層複合シート502中のワーク9を分割し、保護膜13’を切断することにより、複数個の保護膜付きチップ901が支持シート10上で固定されている第3積層複合シート503を作製する工程と、
第3積層複合シート503中の保護膜付きチップ901を支持シート10から引き離すことによりピックアップする工程と、を有する。
保護膜13’は、その切断方法によらず、チップ90の外周に沿って切断される。
保護膜付きチップ901は、公知の方法でピックアップできる。
図5A~図5B、図6A~図6B、図5G~図5Hを用いて、図2に示す保護膜形成用複合シート101の保護膜形成フィルム13が非硬化性であるときの、第二実施形態に係る保護膜付きチップの製造方法について説明する。
固定用治具18に保護膜形成用複合シート101中の治具用粘着剤層16を貼付するとともに、ワーク9の裏面9bに、保護膜形成用複合シート101中の保護膜形成フィルム13を貼付することにより、支持シート10上に、保護膜形成フィルム13及びワーク9がこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シート501を作製する工程と、
支持シート10上で、ワーク9を分割し、保護膜形成フィルム13を切断することにより、複数個の保護膜形成フィルム付きチップ902が支持シート10上で固定されている第3積層複合シート503を作製する工程と、
第3積層複合シート503中の保護膜形成フィルム付きチップ902を支持シート10から引き離すことによりピックアップする工程と、を有する。
保護膜形成フィルム13は、その切断方法によらず、チップ90の外周に沿って切断される。
上述の製造方法により保護膜付きチップを得た後は、従来の保護膜付きチップに代えて、この保護膜付きチップを用いる点を除けば、従来の基板装置の製造方法と同じ方法で、基板装置を製造できる。
粘着性樹脂(i)として、アクリル酸ブチル(BA、88質量部)、アクリル酸エチル(EA、10質量部)及びアクリル酸-4-ヒドロキシブチル(4HBA、2質量部)を共重合してなるアクリル重合体(重量平均分子量1300000、ガラス転移温度Tg:-51℃)(15質量部)と、架橋剤(ii)として、キシリレンジイソシアナート(XDI)系架橋剤(綜研化学株式会社製、商品名「TD-75」)(0.01質量部)と、顔料としてカーボンブラック含有樹脂(「マルチラック(登録商標)A-903ブラック」、トーヨーカラー株式会社製、2.82質量部(うち顔料0.704質量部))と、溶媒としてメチルエチルケトンとを撹拌し、固形分濃度20質量%の治具用粘着剤組成物1を調製した。
粘着性樹脂(i)として、アクリル酸ブチル(BA、89質量部)、アクリル酸-4-ヒドロキシブチル(4HBA、1質量部)及びアクリロイルモルホリン(ACMO、10質量部)を共重合してなるアクリル重合体(重量平均分子量800000、ガラス転移温度Tg:-43℃)(34.3質量部)と、架橋剤(ii)として、トリレンジイソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製、商品名「コロネートL」、0.05質量部)と、顔料としてカーボンブラック含有樹脂(「マルチラック(登録商標)A-903ブラック」、トーヨーカラー株式会社製、2.82質量部(うち顔料0.704質量部))と、溶媒としてメチルエチルケトンとを撹拌し、固形分濃度20質量%の治具用粘着剤組成物2を調製した。
粘着性樹脂(i)として、アクリル酸ブチル(BA、95質量部)及びアクリル酸-4-ヒドロキシブチル(4HBA、5質量部)を共重合してなるアクリル重合体(重量平均分子量900000、ガラス転移温度Tg:-53℃)(33.4質量部)と、架橋剤(ii)として、キシリレンジイソシアナート(XDI)系架橋剤(綜研化学株式会社製、商品名「TD-75」)(0.13質量部)と、顔料としてカーボンブラック含有樹脂(「マルチラック(登録商標)A-903ブラック」、トーヨーカラー株式会社製、2.82質量部(うち顔料0.704質量部))と、溶媒としてメチルエチルケトンとを撹拌し、固形分濃度20質量%の治具用粘着剤組成物3を調製した。
粘着性樹脂(i)として、アクリル酸ブチル(BA、89質量部)、アクリル酸-4-ヒドロキシブチル(4HBA、1質量部)及びジメチルアクリルアミド(10質量部)を共重合してなるアクリル重合体(重量平均分子量900000、ガラス転移温度Tg:-44℃)(37.4質量部)と、架橋剤(ii)として、キシリレンジイソシアナート(XDI)系架橋剤(綜研化学株式会社製、商品名「TD-75」)(0.13質量部)と、顔料としてカーボンブラック含有樹脂(「マルチラック(登録商標)A-903ブラック」、トーヨーカラー株式会社製、2.82質量部(うち顔料0.704質量部))と、溶媒としてメチルエチルケトンとを撹拌し、固形分濃度20質量%の治具用粘着剤組成物4を調製した。
粘着性樹脂(i)として、アクリル酸ブチル(BA、69.5質量部)、アクリル酸メチル(MA、30質量部)及びアクリル酸-2-ヒドロキシエチル(2HEA、0.5質量部)を共重合してなるアクリル重合体(重量平均分子量500000、ガラス転移温度Tg:-38℃)(100質量部)と、架橋剤(ii)として、トリレンジイソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製「コロネートL」、5質量部)と、溶媒としてメチルエチルケトンとを撹拌し、固形分濃度20質量%の治具用粘着剤組成物5を調製した。
実施例1では、以下のようにして、図1に示す治具固定用粘着シート1、及び、図2に示す保護膜形成フィルムを備える保護膜形成用複合シート101を製造した。
第1剥離フィルムとして、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離フィルム(リンテック株式会社製SP-PET381031)の剥離処理面に、上記で得られた治具用粘着剤組成物1を塗工し、115℃で3分間加熱乾燥させることにより、第1剥離フィルムの剥離処理面上に厚さ5μmの第1粘着剤層を形成した。芯材フィルムとして両面コロナ処理を施した無延伸ポリプロピレン製フィルム(サン・トックス株式会社製、商品名「TP02」、厚さ40μm、以下、「芯材フィルムA」という。)の一方の第1面に第1粘着剤層の露出面を貼合した。その後、第2剥離フィルムとして、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離フィルム(リンテック株式会社製,製品名「SP-PET381130」)の剥離処理面に同じく上記で得られた治具用粘着剤組成物1を塗工し、115℃で3分間加熱乾燥させることにより、第2剥離フィルムの剥離処理面上に厚さ5μmの第2粘着剤層を形成した。芯材フィルムAの他方の第2面に第2粘着剤層の露出面を貼合することにより、第1粘着剤層と、芯材フィルムと、第2粘着剤層とが、この順に、これらの厚さ方向に積層されて構成された実施例1の治具固定用粘着シートを作製した。実施例1の治具固定用粘着シートは、第1剥離フィルム、第1粘着剤層、芯材フィルムA、第2粘着剤層及び第2剥離フィルムがこの順に積層されて形成されている。
次の(a)~(g)の成分を混合し、固形分濃度が50質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、保護膜形成用組成物を調製した。
(b-1)熱硬化性成分:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製,製品名「jER828」,エポキシ当量184~194g/eq)75質量部
(b-2)熱硬化性成分:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製,製品名「jER1055」,エポキシ当量800~900g/eq)25質量部
(c)熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤:ジシアンジアミド(株式会社ADEKA製:アデカハ-ドナーEH3636AS,活性水素量21g/eq)3質量部
(d)硬化促進剤:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製,製品名「キュアゾール2PHZ」)3質量部
(e)フィラー:シリカフィラー(株式会社アドマテックス製,製品名「SC2050MA」平均粒径:0.5μm)290質量部
(f)着色剤:カーボンブラック(三菱化学株式会社製,製品名「#MA650」,平均粒径:28nm)1.2質量部
(g)シランカップリング剤:(信越化学工業株式会社製,製品名「KBM-403」)2質量部
次の(h)および(i)の成分を混合し、固形分濃度が25質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、粘着剤組成物を調製した。
(i)架橋剤:トリメチロールプロパンのキシレンジイソシアネート付加物(三井武田ケミカル株式会社製,製品名「タケネートD110N」)20質量部
上記(2)で得られた第1積層体から第4剥離フィルムを剥離し、保護膜形成フィルムを露出させた。一方、上記(3)で得られた第2積層体から第5剥離フィルムを剥離して、粘着剤層を露出させた。露出した粘着剤層に、露出した保護膜形成フィルムが接触するように、第1積層体と第2積層体とを、0.5m/minで貼合し、基材及び粘着剤層からなる支持シートと、保護膜形成フィルムと、第3剥離フィルムとが積層されてなる第3積層体を得た。
実施例1の治具固定用粘着シート1から第2剥離フィルム152を剥離して取り除いた。次に、第2粘着剤層163の側から円形の抜き刃を当てて、第1剥離フィルム151を残して、第1粘着剤層161、芯材フィルム162及び第2粘着剤層163の内周縁をカットし、内側の円形部分を除去して、第1剥離フィルム151上に、内側の円形部分が除去された第1粘着剤層161、芯材フィルム162及び第2粘着剤層163が、この順に積層された第4積層体を作製した。このとき、第1粘着剤層161、芯材フィルム162及び第2粘着剤層163の内周縁の直径は185mmとした。
実施例1の治具固定用粘着シートにおいて、芯材フィルムを、両面コロナ処理を施した直鎖低密度ポリエチレン製フィルム(株式会社アイセロ製、商品名「N-606」、厚さ40μm、以下、「芯材フィルムB」という。)に変更したこと以外は、実施例1の治具固定用粘着シートと同様にして、実施例2の治具固定用粘着シートを作製した。
実施例1の治具固定用粘着シートにおいて、芯材フィルムを、両面コロナ処理を施した無延伸ポリプロピレン製フィルム(日本マタイ株式会社製、商品名「MK12」、厚さ40μm、以下、「芯材フィルムC」という。)に変更したこと以外は、実施例1の治具固定用粘着シートと同様にして、実施例3の治具固定用粘着シートを作製した。
実施例1の治具固定用粘着シートにおいて、芯材フィルムを、両面コロナ処理を施した無延伸ポリプロピレン製フィルム(厚さ50μm、23℃におけるヤング率460MPa及びF-5値(5%引っ張り時の応力)20MPaのフィルム、以下、「芯材フィルムD」という。)に変更したこと以外は、実施例1の治具固定用粘着シートと同様にして、実施例4の治具固定用粘着シートを作製した。
実施例1の治具固定用粘着シートにおいて、芯材フィルムを、ポリ塩化ビニル製フィルム(オカモト株式会社製、商品名「OSGP42B-D23」、厚さ50μm、以下、「芯材フィルムE」という。)に変更したこと以外は、実施例1の治具固定用粘着シートと同様にして、実施例5の治具固定用粘着シートを作製した。
実施例5の治具固定用粘着シートにおいて、治具用粘着剤組成物1を、治具用粘着剤組成物2に変更したこと以外は、実施例5の治具固定用粘着シートと同様にして、実施例6の治具固定用粘着シートを作製した。
実施例5の治具固定用粘着シートにおいて、治具用粘着剤組成物1を、治具用粘着剤組成物3に変更したこと以外は、実施例5の治具固定用粘着シートと同様にして、実施例7の治具固定用粘着シートを作製した。
実施例4の治具固定用粘着シートにおいて、治具用粘着剤組成物1を、治具用粘着剤組成物4に変更したこと以外は、実施例2の治具固定用粘着シートと同様にして、比較例1の治具固定用粘着シートを作製した。
比較例1の治具固定用粘着シートにおいて、芯材フィルムを、前記芯材フィルムBに変更したこと以外は、比較例1の治具固定用粘着シートと同様にして、比較例2の治具固定用粘着シートを作製した。
比較例1の治具固定用粘着シートにおいて、芯材フィルムを、前記芯材フィルムEに変更したこと以外は、比較例1の治具固定用粘着シートと同様にして、比較例3の治具固定用粘着シートを作製した。
比較例1の治具固定用粘着シートにおいて、治具用粘着剤組成物4を、治具用粘着剤組成物5に変更し、芯材フィルムを、芯材フィルムEとは可塑剤種が異なるポリ塩化ビニル製フィルム(オカモト株式会社製、商品名「OSGP42B」、厚さ50μm、以下、「芯材フィルムI」という。)に変更したこと以外は、比較例1の治具固定用粘着シートと同様にして、比較例4の治具固定用粘着シートを作製した。
実施例1~7、及び比較例1~4の治具固定用粘着シートを、幅10mm、長さ80mmの短冊形状に切断した。第2粘着剤層163から第2剥離フィルム152を剥離し、さらに、第1粘着剤層161から第1剥離フィルム151を剥離した。第1粘着剤層161と、芯材フィルム162と、第2粘着剤層163とが、この順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている治具固定用粘着シートの加熱前の試験片について、万能引張試験機(島津製作所社製「オートグラフ」)を用いて、23℃、50%RHの環境下で、チャック間距離50mm、引張速度200mm/minの条件で引張試験を実施し、加熱前の破断伸度(X0)[%]を求めた。結果を表1に示す。
実施例1~7、及び比較例1~4の治具固定用粘着シートを、幅10mm、長さ80mmの短冊形状に切断し、130℃、2h加熱し、放冷した。第2粘着剤層163から第2剥離フィルム152を剥離し、さらに、第1粘着剤層161から第1剥離フィルム151を剥離した。第1粘着剤層161と、芯材フィルム162と、第2粘着剤層163とが、この順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている治具固定用粘着シートの加熱後の試験片について、万能引張試験機(島津製作所社製「オートグラフ」)を用いて、23℃、50%RHの環境下で、チャック間距離50mm、引張速度200mm/minの条件で引張試験を実施し、加熱後の破断強度(Ah)[N/10mm]、及び、加熱後の破断伸度(Xh)[%]を求めた。結果を表1に示す。
実施例1~7、及び比較例1~4の治具固定用粘着シートを、幅10mm、長さ250mmの短冊形状に切断し、固定用治具に貼付する側の第1粘着剤層161を露出させた。SUS304の板(パルテック社製「SUS304 ♯1200HL(ヘアライン)、厚さ1000μm、サイズ70mm×150mm」)の♯1200HL研磨仕上げされた面に、それぞれ、実施例1~7、及び比較例1~4の加熱前の試験片の露出した第1粘着剤層を、2kgローラーを1往復することにより貼合し、130℃、2h加熱した。室温(23℃)になるまで、放冷した後に、万能引張試験機(島津製作所社製「オートグラフ」)を用いて、23℃、50%RHの環境下で、加熱前の試験片の第1粘着剤層及びSUS304の互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、剥離速度300mm/minでSUS304から加熱前の試験片を引き剥がし、このときの、加熱前の試験片の第1粘着剤層及びSUS304の間の剥離力を測定した。加熱前の試験片を長さ50mmに渡って剥がしたときの測定値のうち、最初に長さ5mm分だけ剥がしたとき、及び、最後に長さ5mm分だけ剥がしたときを、それぞれの除外した測定値の平均を、加熱後のSUSに対する180°引き離し粘着力(Bh)(N/10mm)とした。結果を表1に示す。
実施例1~7、及び比較例1~4の治具固定用粘着シートについて、比(Ah/Bh)を、前記破断強度(Ah)を前記180°引き離し粘着力(Bh)で割り算することにより計算して求めた。結果を表1に示す。
実施例1~7、及び比較例1~4の治具固定用粘着シートについて、比(Xh/X0)を、前記破断伸度(Xh)を前記破断伸度(X0)で割り算することにより計算して求めた。結果を表1に示す。
実施例1~7、及び比較例1~4の保護膜形成用複合シートから、それぞれ、第1剥離フィルムを剥がし、露出した保護膜形成フィルムの中央部をシリコンウエハ(直径6インチ、厚さ350μm、♯2000)に貼付するとともに、露出した治具固定用粘着シートの第1粘着剤層を、ダイシング用リングフレームに載せ、ラミネーターに、70℃、0.3m/minで通して圧着し、20分間放置した。
治具固定用粘着シートの第1粘着剤層がダイシング用リングフレームに貼付された状態で、130℃、2h加熱し、熱硬化性保護膜形成フィルムを硬化させ、その後、室温(23℃)になるまで放冷した。次いで、シリコンウエハ及びシリコンウエハに接着した部分の保護膜を支持シートから剥がすことで除去し、実施例1~7、及び比較例1~4の保護膜形成用複合シートを、リングフレームから、互いに接触していた面同士が180°の角度を為すように、剥離速度11mm/s及び23mm/sの条件で剥離した。
剥離した後の、治具固定用粘着シートの様子を観察した。次の基準で、治具固定用粘着シートの剥離性を評価した。結果を表1に示す。
A:剥離時に、治具用粘着剤層の破断がなかった。
B:剥離時に、治具用粘着剤層の破断がなかったが、亀裂が発生した。
C:剥離時に、治具用粘着剤層が破断した。
実施例1~7の治具固定用粘着シートは、130℃、2h加熱後の試験片において、破断強度(Ah)、180°引き離し粘着力(Bh)、及び、比(Ah/Bh)が、所定の数値範囲内にあるので、保護膜形成フィルムが熱硬化性のときに加熱工程を経た後だけでなく、保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性のときにも、保護膜形成フィルムが非硬化性のときにも、保護膜付きチップの製造に用いたとき、治具用粘着剤層が破断することなく固定用治具から容易に剥離できる。さらに、保護膜形成用複合シートのワークへの貼り付け不具合があった場合に、ワークを剥がして、ワークを再度使えるようにする(リワーク)の工程の際にも、治具用粘着剤層が破断することなく固定用治具から容易に剥離できる。
10,20…支持シート、10a…支持シートの一方の面(第1面)、11…基材、12…粘着剤層、13,23…保護膜形成フィルム、13’…保護膜、13a’…保護膜の一方の面(第1面)、13b’…保護膜の他方の面(第2面)、130’…切断後の保護膜、
101,102,104…保護膜形成用複合シート、15…剥離フィルム、151…第1剥離フィルム、152…第2剥離フィルム、16…治具用粘着剤層、161…第1粘着剤層、163…第2粘着剤層、162…芯材フィルム、18…固定用治具、
501…第1積層複合シート、502…第2積層複合シート、503…第3積層複合シート、504…第4積層複合シート、
9…ワーク、9b…ワークの裏面、90…チップ、90b…チップの裏面、901…保護膜付きチップ、902…保護膜形成フィルム付きチップ
Claims (12)
- 保護膜形成フィルムを備える保護膜形成用複合シートに用いられる治具固定用粘着シートであって、
第1粘着剤層と、芯材フィルムと、第2粘着剤層とが、この順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されており、
前記治具固定用粘着シートは、130℃、2h加熱後の試験片において引張試験から求められる破断強度(Ah)の、130℃、2h加熱後の試験片の、SUS304に対する180°引き離し粘着力(Bh)に対する比(Ah/Bh)が1.25以上である、治具固定用粘着シート。 - 前記180°引き離し粘着力(Bh)が2.0~12N/10mmである、請求項1に記載の治具固定用粘着シート。
- 前記破断強度(Ah)が6N/10mm以上である、請求項1又は2に記載の治具固定用粘着シート。
- 前記第1粘着剤層及び第2粘着剤層は、アクリル樹脂を含有する治具用粘着剤組成物から形成され、前記アクリル樹脂の重量平均分子量が70万以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の治具固定用粘着シート。
- 前記アクリル樹脂が(メタ)アクリル酸由来の構成単位を有さない、請求項4に記載の治具固定用粘着シート。
- 前記芯材フィルムの構成材料が直鎖低密度ポリエチレン、無延伸ポリプロピレン又はポリ塩化ビニルを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の治具固定用粘着シート。
- 前記治具固定用粘着シートは、130℃、2h加熱後の試験片において引張試験から求められる破断伸度(Xh)が100%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の治具固定用粘着シート。
- 前記治具固定用粘着シートは、130℃、2h加熱後の試験片において引張試験から求められる破断伸度(Xh)の、加熱前の試験片において引張試験から求められる破断伸度(X0)に対する比(Xh/X0)が、0.10~1.50である、請求項1~7のいずれか一項に記載の治具固定用粘着シート。
- 支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムと、前記支持シートの前記一方の面上又は前記保護膜形成フィルムの前記支持シートとは反対側の第1面上の周縁部近傍に設けられた治具用粘着剤層と、を備える保護膜形成用複合シートであって、
前記治具用粘着剤層が、請求項1~8のいずれか一項に記載の治具固定用粘着シートを用いて形成された、保護膜形成用複合シート。 - 前記保護膜形成フィルムが、熱硬化性である、請求項9に記載の保護膜形成用複合シート。
- チップと、前記チップの裏面に設けられた保護膜と、を備える保護膜付きチップの製造方法であって、
固定用治具に前記保護膜形成用複合シート中の治具用粘着剤層を貼付するとともに、ワークの裏面に、請求項9又は10に記載の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを貼付することにより、前記支持シート上に、前記保護膜形成フィルム及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シートを作製する工程と、
前記支持シート上で、前記ワークを分割し、前記保護膜形成フィルム若しくは前記保護膜形成フィルムを硬化させて得られる保護膜を切断することにより、複数個の保護膜形成フィルム付きチップ若しくは保護膜付きチップが前記支持シート上で固定されている第3積層複合シートを作製する工程と、
前記第3積層複合シート中の前記保護膜形成フィルム付きチップ若しくは前記保護膜付きチップを前記支持シートから引き離すことによりピックアップする工程と、を有する保護膜付きチップの製造方法。 - チップと、前記チップの裏面に設けられた保護膜と、を備える保護膜付きチップの製造方法であって、
固定用治具に前記保護膜形成用複合シート中の治具用粘着剤層を貼付するとともに、ワークの裏面に、請求項10に記載の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを貼付することにより、前記支持シート上に、前記保護膜形成フィルム及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シートを作製する工程と、
前記第1積層複合シートの周縁部を前記固定用治具に貼付した状態で、前記第1積層複合シートを加熱して、前記保護膜形成フィルムを硬化させ前記保護膜を形成することにより、前記支持シート上に、前記保護膜及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第2積層複合シートを作製する工程と、
前記支持シート上で、前記第2積層複合シート中の前記ワークを分割し、前記保護膜を切断することにより、複数個の保護膜付きチップが前記支持シート上で固定されている第3積層複合シートを作製する工程と、
前記第3積層複合シート中の前記保護膜付きチップを前記支持シートから引き離すことによりピックアップする工程と、を有する保護膜付きチップの製造方法。
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