JP2023031526A - 保護膜形成フィルム、保護膜形成用複合シート、保護膜付きワークの製造方法、及び、保護膜付きワーク加工物の製造方法 - Google Patents

保護膜形成フィルム、保護膜形成用複合シート、保護膜付きワークの製造方法、及び、保護膜付きワーク加工物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】熱硬化性の保護膜形成フィルムであって、保護膜形成フィルムの表面にキズ痕が形成されたときであっても、保護膜形成フィルムを熱硬化させた後の保護膜の表面のキズ痕を目立たなくすることができる、保護膜形成フィルム、前記保護膜形成フィルムを備える保護膜形成用複合シート、前記保護膜形成フィルム又は保護膜形成用複合シートを用いた保護膜付きワークの製造方法、並びに、保護膜付きワーク加工物の製造方法の提供。【解決手段】熱硬化性の保護膜形成フィルム13であって、幅4mmの試験片を、20mmの間隔を空けて2箇所で保持し、引張モードにより、周波数11Hz、昇温速度3℃/min、等速昇温の条件で、-50℃から150℃まで前記試験片を昇温しながら、前記試験片の貯蔵弾性率E’を測定したとき、90℃における前記試験片の貯蔵弾性率E’(90)が5MPa以下である、保護膜形成フィルム13。【選択図】図1

Description

本発明は、保護膜形成フィルム、保護膜形成用複合シート、保護膜付きワークの製造方法、及び、保護膜付きワーク加工物の製造方法に関する。
半導体ウエハや絶縁体ウエハ等のウエハには、その一方の面(回路面)に回路が形成されており、さらにその面(回路面)上にバンプ等の突状電極を有するものがある。このようなウエハは、分割によりチップとされ、その突状電極が回路基板上の接続パッドに接続されることにより、前記回路基板に搭載される。
このようなウエハやチップにおいては、クラックの発生等の破損を抑制するために、回路面とは反対側の面(裏面)を、保護膜で保護することがある。
このような保護膜を形成するためには、ウエハの裏面に、保護膜を形成するための保護膜形成フィルムを貼付する。保護膜形成フィルムは、これを支持するための支持シート上に積層され、保護膜形成用複合シートの状態で使用されることもあるし、支持シート上に積層されずに使用されることもある(特許文献1参照)。次いで、裏面に保護膜形成フィルムを備えるウエハ(保護膜形成フィルム付きウエハ)は、その後の各種工程を経て、裏面に保護膜を備えるチップ(保護膜付きチップ)へと加工される。その間、保護膜形成フィルム付きウエハは、次工程を行う場所や、保管される場所など、目的とする場所へ搬送する必要がある。
前記保護膜付きチップは、例えば、上記の保護膜形成フィルム付きウエハを作製した後、ウエハを分割してチップを作製し、保護膜形成フィルムを切断することにより、切断後の保護膜形成フィルムを裏面に備えるチップ(保護膜形成フィルム付きチップ)を作製し、保護膜形成フィルム付きチップをピックアップした後に、さらに、切断後の保護膜形成フィルムを硬化させて、保護膜を形成することにより、作製できる。切断後の保護膜形成フィルムを硬化させて、保護膜付きチップを形成した後に、保護膜付きチップをピックアップすることもできる。
また、前記保護膜付きチップは、例えば、上記の保護膜形成フィルム付きウエハを作製した後、その中の保護膜形成フィルムを硬化させて保護膜を形成し、次いで、ウエハを分割してチップを作製し、保護膜を切断することでも作製できる。
国際公開第2015/111632号
前記保護膜形成フィルムとしては、これを加熱して熱硬化させることにより保護膜を形成可能な、熱硬化性の保護膜形成フィルムが広く利用されている。熱硬化性の保護膜形成フィルムをワークの裏面に貼付するときには、保護膜形成フィルムのワーク側とは反対側から剥離フィルム又は支持シートを介してラミネートロールなどの押圧手段で押圧する。この際に、例えば、剥離フィルム又は支持シートとラミネートロールとの間に粒子状の異物が混入すると、粒子状の異物の押圧痕が保護膜形成フィルムのワーク側とは反対側の表面に形成されることがある。
保護膜形成フィルム付きウエハを一例とする、保護膜形成フィルム付きワークを搬送するときには、保護膜形成フィルムのワーク側とは反対側の露出面に、搬送手段を接触させ、前記搬送手段によって前記保護膜形成フィルム付きワークを固定した状態で搬送する。
前記搬送手段としては、例えば、保護膜形成フィルム付きワークとの接触部において、保護膜形成フィルム付きワークを吸着することによって固定するものが知られているが、これは一例である。
このような搬送手段を用いて、保護膜形成フィルム付きワークを搬送すると、保護膜形成フィルムの搬送手段による固定箇所、より具体的には、搬送手段中の固定部位の接触箇所に、搬送手段(前記固定部位)の接触痕が形成されることがある。例えば、前記固定部位が、平面形状が円形の吸着盤である場合には、円形の吸着痕が保護膜形成フィルムの露出面に形成されることがある。
また、保護膜形成フィルム付きチップを、突き上げニードルピンなどの突き上げ手段を用いてピックアップすると、保護膜形成フィルムの突き上げ手段による突き上げ箇所に、へこみ痕(ニードル痕)が形成されることがある。
保護膜形成フィルムの表面に、押圧痕、接触痕、吸着痕、へこみ痕などのキズ痕が形成されるのは、保護膜形成フィルムが、比較的柔らかいためである。このようなキズ痕が明確に視認可能となっている保護膜形成フィルム付きワークは、外観上の問題点があるとともに、レーザー印字性の低下の懸念がある。保護膜形成フィルムが熱硬化して保護膜と形成した後も、キズ痕が明確に視認可能となっている保護膜付きワークは、外観上の問題点及びレーザー印字性の低下の懸念を有する。そして、特許文献1で開示されている保護膜形成フィルムは、このような問題点を必ずしも解決できるものではない。
本発明は、熱硬化性の保護膜形成フィルムであって、保護膜形成フィルムの表面にキズ痕が形成されたときであっても、保護膜形成フィルムを熱硬化させた後の保護膜の表面のキズ痕を目立たなくすることができる、保護膜形成フィルム、前記保護膜形成フィルムを備える保護膜形成用複合シート、前記保護膜形成フィルム又は保護膜形成用複合シートを用いた保護膜付きワークの製造方法、並びに、保護膜付きワーク加工物の製造方法、を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を含む。
[1] 熱硬化性の保護膜形成フィルムであって、
前記保護膜形成フィルムの幅4mmの試験片を、20mmの間隔を空けて2箇所で保持し、引張モードにより、周波数11Hz、昇温速度3℃/min、等速昇温の条件で、-50℃から150℃まで前記試験片を昇温しながら、前記試験片の貯蔵弾性率E’を測定したとき、90℃における前記試験片の貯蔵弾性率E’(90)が5MPa以下である、保護膜形成フィルム。
[2] 前記保護膜形成フィルムの幅4mmの試験片を、20mmの間隔を空けて2箇所で保持し、引張モードにより、周波数11Hz、昇温速度3℃/min、等速昇温の条件で、-50℃から150℃まで前記試験片を昇温しながら、前記試験片のtanδを測定したとき、90℃における前記試験片のtanδ(90)が0.34以上である、[1]に記載の保護膜形成フィルム。
[3] 前記保護膜形成フィルムを加熱硬化させた熱硬化物の幅5mmの試験片を、20mmの間隔を空けて2箇所で保持し、引張モードにより、周波数11Hz、昇温速度3℃/min、等速昇温の条件で、-60℃から300℃まで前記試験片を昇温しながら、前記試験片の貯蔵弾性率E’を測定したとき、23℃における前記試験片の貯蔵弾性率E’(23)が100MPa以上である、[1]又は[2]に記載の保護膜形成フィルム。
[4] アクリル樹脂を含む重合体成分(A)を含有し、
前記アクリル樹脂のガラス転移温度が10℃未満である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルム。
[5] 充填材(D)を含有し、
前記保護膜形成フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合が、50質量%未満である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルム。
[6] 支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムと、を備え、
前記保護膜形成フィルムが、[1]~[5]のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルムである、保護膜形成用複合シート。
[7] 保護膜付きワークの製造方法であって、
前記保護膜付きワークは、ワークと、前記ワークのいずれかの箇所に設けられた保護膜と、を備えており、
前記製造方法は、[1]~[5]のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルム、又は[6]に記載の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワーク及び保護膜形成フィルムを備える保護膜形成フィルム付きワークを作製する貼付工程と、
前記貼付工程後に、前記保護膜形成フィルムを熱硬化させ、前記保護膜を形成することにより、前記保護膜付きワークを作製する熱硬化工程と、を有する、保護膜付きワークの製造方法。
[8] 保護膜付きワーク加工物の製造方法であって、
前記保護膜付きワーク加工物は、ワークを加工することにより得られたワーク加工物と、前記ワーク加工物のいずれかの箇所に設けられた保護膜と、を備えており、
前記製造方法は、[1]~[5]のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルム、又は[6]に記載の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワーク及び保護膜形成フィルムを備える保護膜形成フィルム付きワークを作製する貼付工程と、
前記貼付工程後に、前記ワークを加工することにより、前記ワーク加工物を作製する加工工程と、
前記貼付工程後に、前記保護膜形成フィルムを熱硬化させることにより、前記保護膜を形成する熱硬化工程と、を有する、保護膜付きワーク加工物の製造方法。
本発明によれば、熱硬化性の保護膜形成フィルムであって、保護膜形成フィルムの表面にキズ痕が形成されたときであっても、保護膜形成フィルムを熱硬化させた後の保護膜の表面のキズ痕を目立たなくすることができる、保護膜形成フィルム、前記保護膜形成フィルムを備える保護膜形成用複合シート、前記保護膜形成フィルム又は保護膜形成用複合シートを用いた保護膜付きワークの製造方法、並びに、保護膜付きワーク加工物の製造方法、が提供される。
本発明の一実施形態に係る保護膜形成フィルムの一例を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る保護膜付きウエハの製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。 本発明の一実施形態に係る保護膜付きウエハの製造方法の他の例を模式的に説明するための断面図である。 本発明の一実施形態に係る保護膜付きチップの製造方法の一例を模式的に説明するための断面図である。 本発明の一実施形態に係る保護膜付きチップの製造方法の他の例を模式的に説明するための断面図である。
◇保護膜形成フィルム
本発明の一実施形態に係る保護膜形成フィルムは、熱硬化性の保護膜形成フィルムであって、前記保護膜形成フィルムの幅4mmの試験片を、20mmの間隔を空けて2箇所で保持し、引張モードにより、周波数11Hz、昇温速度3℃/min、等速昇温の条件で、-50℃から150℃まで前記試験片を昇温しながら、前記試験片の貯蔵弾性率E’を測定したとき、90℃における前記試験片の貯蔵弾性率E’(90)が5MPa以下である。
本実施形態の保護膜形成フィルムは、例えば、後述するように、支持シートと積層することで、保護膜形成用複合シートを構成できる。
本実施形態の保護膜形成フィルム、又はこれを備える保護膜形成用複合シートを用いることにより、ワークと、前記ワークのいずれかの箇所に設けられた保護膜と、を備える保護膜付きワークを製造できる。また、ワーク加工物と、前記ワーク加工物のいずれかの箇所に設けられた保護膜と、を備える保護膜付きワーク加工物を製造できる。例えば、ワークがウエハである場合、前記保護膜形成フィルム又は保護膜形成用複合シートを用いることにより、チップと、前記チップの裏面に設けられた保護膜と、を備える保護膜付きチップを製造できる。
本実施形態において、ワークとしては、例えば、半導体ウエハ等のウエハ、半導体装置パネル等が挙げられる。半導体装置パネルとは、半導体装置の製造過程で取り扱うものであり、その具体例としては、1個又は2個以上の電子部品が封止樹脂によって封止された状態の半導体装置を用い、複数個のこれら半導体装置が、円形、矩形等の形状の領域内に、平面的に配置されて構成されたものが挙げられる。
本明細書においては、ワークを加工したものを「ワーク加工物」と称する。例えば、ワークが半導体ウエハである場合、ワーク加工物としては半導体チップが挙げられる。
本明細書において、「ウエハ」としては、シリコン、ゲルマニウム、セレン等の元素半導体や、GaAs、GaP、InP、CdTe、ZnSe、SiC等の化合物半導体、で構成される半導体ウエハ;サファイア、ガラス、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の絶縁体で構成される絶縁体ウエハが挙げられる。
これらウエハの一方の面上には、回路が形成されており、本明細書においては、このように回路が形成されている側のウエハの面を「回路面」と称する。そして、ウエハの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ウエハは、ダイシング等の手段により加工(分割)され、チップとなる。本明細書においては、ウエハの場合と同様に、回路が形成されている側のチップの面を「回路面」と称し、チップの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ウエハの回路面とチップの回路面には、いずれもバンプ、ピラー等の突状電極が設けられていることが好ましい。突状電極は、はんだで構成されていることが好ましい。
さらに、前記保護膜付きチップを用いることにより、基板装置を製造できる。
本明細書において、「基板装置」とは、保護膜付きワーク加工物が、その回路面上の突状電極において、回路基板上の接続パッドにフリップチップ接続されて、構成されたものを意味する。例えば、ワークとして半導体ウエハを用いた場合であれば、基板装置としては保護膜付き半導体チップがフリップチップ接続されて成る半導体装置が挙げられる。
本実施形態の保護膜形成フィルムは、90℃における前記試験片の貯蔵弾性率E’(90)が5MPa以下であることによって、本実施形態の保護膜形成フィルムを用いて、前記保護膜付きワーク又は前記保護膜付きワーク加工物を製造する工程中に、熱硬化性の保護膜形成フィルムの表面にキズ痕が形成されたときであっても、保護膜形成フィルムを熱硬化させた後の保護膜の表面のキズ痕を目立たなくすることができる。本実施形態の保護膜形成フィルムは、90℃における前記試験片の貯蔵弾性率E’(90)が5MPa以下であることによって、保護膜形成フィルムを加熱硬化させて保護膜とする際、加熱硬化する前の90℃において保護膜形成フィルムの流動性が常温時よりも増大し、保護膜形成フィルムの表面に生じたキズ痕を修復することができた、すなわち、本実施形態の保護膜形成フィルムは自己修復性に優れるため、結果、保護膜の表面のキズ痕を目立たなくすることができたと考えられる。本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
本実施形態の保護膜形成フィルムは、90℃における前記試験片の貯蔵弾性率E’(90)が5MPa以下であり、3MPa以下であることが好ましく、2MPa以下であることがより好ましく、0.4MPa以下であることがさらに好ましく、0.2MPa以下であることが特に好ましい。
本実施形態の保護膜形成フィルムは、熱硬化性を有し、その熱硬化によって保護膜として機能する。常温の保護膜形成フィルムを、100℃以上の温度になるまで加熱し、次いで常温になるまで冷却することにより、加熱・冷却後の保護膜形成フィルムとし、加熱・冷却後の保護膜形成フィルムの硬さと、加熱前の保護膜形成フィルムの硬さと、を同じ温度で比較したとき、加熱・冷却後の保護膜形成フィルムの方が硬い場合には、この保護膜形成フィルムは、熱硬化性である。
本実施形態の保護膜形成フィルムは、90℃においては硬化せず、かえって、軟化する性質を有することが好ましい。すなわち、前記保護膜形成フィルムの幅4mmの試験片を、20mmの間隔を空けて2箇所で保持し、引張モードにより、周波数11Hz、昇温速度3℃/min、等速昇温の条件で、-50℃から150℃まで前記試験片を昇温しながら、前記試験片の貯蔵弾性率E’を測定したとき、前記試験片の貯蔵弾性率E’(90)は、70℃における前記試験片の貯蔵弾性率E’(70)よりも、小さいことが好ましい。
本実施形態の保護膜形成フィルムは、70℃における前記試験片の貯蔵弾性率E’(70)が、8MPa以下であることが好ましく、3.5MPa以下であることがより好ましく、3MPa以下であることがさらに好ましく、2MPa以下であることが特に好ましい。
本実施形態の保護膜形成フィルムは、前記保護膜形成フィルムの幅4mmの試験片を、20mmの間隔を空けて2箇所で保持し、引張モードにより、周波数11Hz、昇温速度3℃/min、等速昇温の条件で、-50℃から150℃まで前記試験片を昇温しながら、前記試験片のtanδを測定したとき、90℃における前記試験片のtanδ(90)が0.20以上であることが好ましく、0.24以上であることがより好ましく、0.34以上であることがさらに好ましい。90℃における前記試験片のtanδ(90)の値が、前記下限値以上であることで、保護膜形成フィルムの自己修復性が優れる傾向にある。これは、90℃において保護膜形成フィルムの粘性成分の寄与が大きくなるためであると推測される。
本実施形態の保護膜形成フィルムは、前記保護膜形成フィルムの幅4mmの試験片を、20mmの間隔を空けて2箇所で保持し、引張モードにより、周波数11Hz、昇温速度3℃/min、等速昇温の条件で、-50℃から150℃まで前記試験片を昇温しながら、前記試験片のtanδを測定したとき、70℃における前記試験片のtanδ(70)が0.35以上であることが好ましく、0.40以上であることがより好ましく、0.50以上であることがさらに好ましい。70℃における前記試験片のtanδ(70)の値が、前記下限値以上であることで、保護膜形成フィルムの自己修復性が優れる傾向にある。これは、70℃において保護膜形成フィルムの粘性成分の寄与が大きくなるためであると推測される。
本実施形態の保護膜形成フィルムを加熱硬化させた熱硬化物の幅5mmの試験片を、20mmの間隔を空けて2箇所で保持し、引張モードにより、周波数11Hz、昇温速度3℃/min、等速昇温の条件で、-60℃から300℃まで前記試験片を昇温しながら、前記試験片の貯蔵弾性率E’を測定したとき、23℃における前記試験片の貯蔵弾性率E’(23)は、100MPa以上であることが好ましく、200MPa以上であることがより好ましく、300MPa以上であることがさらに好ましい。熱硬化後の保護膜の貯蔵弾性率E’(23)が低すぎる場合、保護膜付きチップなどの保護膜付きワーク加工物をキャリアテープに梱包し、搬送した場合に、軟らかい保護膜が、キャリアテープの内壁にぶつかって、傷や凹みを発生するおそれがある。また、硬化後に保護膜付きチップをピックアップする工程では、熱硬化後の保護膜の貯蔵弾性率E’(23)が高い方が、ピックアップ時のニードル痕を低減することができる。
保護膜形成フィルムは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。保護膜形成フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。保護膜形成フィルムは、貯蔵弾性率E’の制御の容易性および製造コストの面から1層(単層)からなることが好ましい。
本明細書においては、保護膜形成フィルムの場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよいし、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なる」ことを意味する。
保護膜形成フィルムの試験片の貯蔵弾性率E’は、複数枚の前記保護膜形成フィルムを積層して切り出すことにより、幅4mmの積層物を作製し、この積層物を試験片として測定することができる。
保護膜の試験片の貯蔵弾性率E’は、複数枚の前記保護膜形成フィルムを積層して切り出すことにより、幅5mmの積層物を作製し、この積層物を加熱硬化させて保護膜の積層物としてから、保護膜の積層物を試験片として測定することができる。保護膜の貯蔵弾性率E’は、複数枚の前記保護膜形成フィルムを積層して加熱硬化させて保護膜としてから、切り出すことにより、幅4mmの積層物を作製し、この積層物を試験片として測定してもよい。
より具体的には、前記試験片を20mmの間隔を空けて2箇所で保持し、この状態で試験片を昇温速度3℃/minで-10℃から170℃まで等速昇温しながら、周波数11Hzの条件下で、試験片の貯蔵弾性率E’を測定する。試験片を20mmの間隔を空けて2箇所で保持する、ということは、試験片の貯蔵弾性率E’の測定対象部分の長さが20mmであることを意味する。
前記試験片の前記2箇所での保持は、例えば、公知のつかみ具等の保持手段を用いて行うことができる。
前記試験片(積層物)の厚さは、前記試験の実施を妨げず、前記貯蔵弾性率E’の測定精度を損なわない限り、特に限定されない。
通常、前記試験片の厚さは、190~210μmであることが好ましく、195~205μmであることがより好ましく、200μmであることが特に好ましい。
前記試験片を構成する保護膜形成フィルムの枚数は、特に限定されず、それぞれの保護膜形成フィルムの厚さに応じて、任意に選択できる。
例えば、厚さが40μmである5枚の保護膜形成フィルム又は保護膜を用いることで、前記試験片を作製できる。ただし、これは一例であり、用いる保護膜形成フィルム又は保護膜の枚数と厚さは、これに限定されない。
前記試験片の貯蔵弾性率E’(90)及び貯蔵弾性率E’(70)は、前記保護膜形成フィルムの含有成分の種類と、その含有量と、を調節することで調節できる。
例えば、保護膜形成フィルムが、後述する重合体成分(A)を含有する場合には、重合体成分(A)が有する構成単位の種類とその量を調節することで、試験片の貯蔵弾性率E’をより容易に調節できる。より具体的には、例えば、アクリル酸2-エチルへキシルから誘導された構成単位を一定量以上有するアクリル樹脂を、重合体成分(A)として用い、その含有量を調節することで、試験片の貯蔵弾性率E’をより容易に調節できる。
重合体成分(A)がアクリル樹脂を含む場合には、アクリル樹脂のガラス転移温度を調節することで、試験片の貯蔵弾性率E’をより容易に調節できる。アクリル樹脂のガラス転移温度が低いほど、試験片の貯蔵弾性率E’(90)及び貯蔵弾性率E’(70)は小さくなる傾向にある。
また、例えば、保護膜形成フィルムが、後述する充填材(D)を含有する場合には、表面修飾された球状の充填材(D)を用い、平均粒子径及び含有量を調節することで、試験片の貯蔵弾性率E’(90)及び貯蔵弾性率E’(70)をより容易に調節できる。典型的には、充填材(D)の平均粒子径が大きいほど、試験片の貯蔵弾性率E’(90)及び貯蔵弾性率E’(70)は小さくなる傾向にある。
保護膜形成フィルムの厚さは、50μm未満であることが好ましく、45μm未満であることがより好ましい。
保護膜形成フィルムの厚さは、保護性能がより高い保護膜を形成できる点では、10μm以上であることが好ましく、15μm以上であることがより好ましく、例えば、20μm以上であってもよい。
保護膜形成フィルムの厚さは、上述のいずれかの上限値と、下限値と、を任意に組み合わせて設定される範囲内に、適宜調節できる。例えば、一実施形態において、保護膜形成フィルムの厚さは、5μm以上50μm未満、及び5μm以上45μm未満のいずれかであってもよい。
本明細書において、「保護膜形成フィルムの厚さ」とは、保護膜形成フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる保護膜形成フィルムの厚さとは、保護膜形成フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
本明細書においては、保護膜形成フィルムの場合に限らず「厚さ」とは、特に断りのない限り、対象物において無作為に選出された5箇所で測定した厚さの平均で表される値であり、JIS K7130に準じて、定圧厚さ測定器を用いて取得できる。
本実施形態において、前記保護膜形成フィルムを、加熱することにより得られた熱硬化物は、保護膜として機能するものであることが好ましい。
前記保護膜形成フィルムをウエハの目的とする箇所に貼付し、熱硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り、特に限定されず、保護膜形成フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、保護膜形成フィルムの熱硬化時の加熱温度は、100~180℃であることが好ましく、110~160℃であることがより好ましく、120~140℃であることが特に好ましい。そして、前記熱硬化時の加熱時間は、0.5~5hであることが好ましく、0.5~4hであることがより好ましく、1~3hであることが特に好ましい。
<<保護膜形成用組成物>>
前記保護膜形成フィルムは、その構成材料を含有する保護膜形成用組成物(より具体的には熱硬化性保護膜形成用組成物)を用いて形成できる。例えば、保護膜形成フィルムは、その形成対象面に保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、形成できる。
前記保護膜形成フィルムは、熱硬化性に加え、エネルギー線硬化性を有していてもよい。
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
保護膜形成用組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
保護膜形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されない。ただし、保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する保護膜形成用組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で、加熱乾燥させることが好ましい。ただし、保護膜形成用組成物は、熱硬化性であるため、この組成物自体と、この組成物から形成された熱硬化性の保護膜形成フィルムと、が熱硬化しないように、加熱乾燥させることが好ましい。
好ましい保護膜形成フィルムとしては、例えば、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)及び充填材(D)を含有するものが挙げられる。重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、本明細書において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
以下、保護膜形成用組成物の組成について、詳細に説明する。
<保護膜形成用組成物(III)>
好ましい保護膜形成用組成物としては、例えば、前記重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)及び充填材(D)を含有する保護膜形成用組成物(III)(本明細書においては、単に「組成物(III)」と略記することがある)等が挙げられる。
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、保護膜形成フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物である。なお、本明細書において重合体化合物には、重縮合反応の生成物も含まれる。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、アクリル樹脂が好ましい。
重合体成分(A)における前記アクリル樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~2000000であることが好ましく、100000~1500000であることがより好ましく、200000~1200000であることがさらに好ましく、300000~1000000であることが特に好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、造膜性を付与することがより容易となる。アクリル樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、前記貯蔵弾性率E’(90)及び前記貯蔵弾性率E’(70)をより小さくし易くなる。
本明細書において、「重量平均分子量」とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-80℃以上10℃未満であることが好ましく、-70℃以上5℃以下であることがより好ましく、-60℃以上0℃以下であることがさらに好ましく、-60℃以上-5℃以下であることが特に好ましい。アクリル樹脂のTgが前記下限値以上であることで、例えば、保護膜形成フィルムの熱硬化物と支持シートとの密着性が抑制されて、支持シートの剥離性が適度に向上する。アクリル樹脂のTgが前記上限値以下であることで、前記貯蔵弾性率E’(90)及び前記貯蔵弾性率E’(70)をより小さくし易くなる。
アクリル樹脂がm種(mは2以上の整数である。)の構成単位を有し、これら構成単位を誘導するm種のモノマーに対して、それぞれ1からmまでのいずれかの重複しない番号を順次割り当てて、「モノマーm」と名付けた場合、アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、以下に示すFoxの式を用いて算出できる。
Figure 2023031526000002
(式中、Tgはアクリル樹脂のガラス転移温度であり;mは2以上の整数であり;Tgはモノマーmのホモポリマーのガラス転移温度であり;Wはアクリル樹脂における、モノマーmから誘導された構成単位mの質量分率であり、ただし、Wは下記式を満たす。)
Figure 2023031526000003
(式中、m及びWは、前記と同じである。)
前記Tgとしては、高分子データ・ハンドブック、粘着ハンドブック又はPolymer Handbook等に記載されている値を使用できる。例えば、アクリル酸メチルのホモポリマーのTgは10℃であり、メタクリル酸メチルのホモポリマーのTgは105℃であり、アクリル酸2-ヒドロキシエチルのホモポリマーのTgは-15℃であり、メタクリル酸グリシジルのホモポリマーのTgは41℃であり、アクリル酸2-エチルヘキシルのホモポリマーのTgは-70℃であり、アクリル酸のホモポリマーのTgは103℃であり、アクリロニトリルのホモポリマーのTgは97℃であり、アクリル酸n-ブチルのホモポリマーのTgは-54℃であり、メタクリル酸2-エチルへキシルのホモポリマーのTgは-10℃であり、アクリル酸エチルのホモポリマーのTgは-24℃である。
アクリル樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;前記(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN-メチロールアクリルアミド等から選択される2種以上のモノマーの共重合体等が挙げられる。アクリル樹脂を構成するモノマーが2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
アクリル樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec-ブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1~18の鎖状構造である、(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N-メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換された構造を有する基を意味する。
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念である。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
アクリル樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(F)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(F)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。
好ましいアクリル樹脂の一例としては、アクリル酸2-エチルへキシルから誘導された構成単位を有するアクリル樹脂(α)が挙げられる。
前記アクリル樹脂(α)において、アクリル樹脂(α)を構成する構成単位の全量に対する、前記アクリル酸2-エチルへキシルから誘導された構成単位の割合(含有量)は、10~90質量%であることが好ましく、例えば、25~85質量%、40~80質量%、及び50~75質量%のいずれかであってもよい。
本発明においては、重合体成分(A)として、アクリル樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、保護膜の支持シートからの剥離性が向上したり、被着体の凹凸面へ保護膜形成フィルムが追従し易くなることがある。
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000~100000であることが好ましく、3000~80000であることがより好ましい。
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、-30~150℃であることが好ましく、-20~120℃であることがより好ましい。
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(III)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(A)の含有量の割合は、重合体成分(A)の種類によらず、10~85質量%であることが好ましく、15~70質量%であることがより好ましく、例えば、15~45質量%、及び15~35質量%のいずれかであってもよいし、20~70質量%、及び25~70質量%のいずれかであってもよい。
この内容は、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、重合体成分(A)の含有量の割合が、重合体成分(A)の種類によらず、10~85質量%であることが好ましく、15~70質量%であることがより好ましく、例えば、15~45質量%、及び15~35質量%のいずれかであってもよいし、20~70質量%、及び25~70質量%のいずれかであってもよい、ことと同義である。
これは、溶媒を含有する樹脂組成物から溶媒を除去して、樹脂膜を形成する過程では、溶媒以外の成分の量は、通常、変化しないことに基づいており、樹脂組成物と樹脂膜とでは、溶媒以外の成分同士の含有量の比率は同じである。そこで、本明細書においては、以降、保護膜形成フィルムの場合に限らず、溶媒以外の成分の含有量については、樹脂組成物から溶媒を除去した樹脂膜での含有量のみ記載する。
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明においては、組成物(III)が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、組成物(III)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するとみなす。
[熱硬化性成分(B)]
熱硬化性成分(B)は、保護膜形成フィルムを硬化させるための成分である。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する熱硬化性成分(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
本明細書において、熱硬化性ポリイミド樹脂とは、熱硬化することによってポリイミド樹脂を形成する、ポリイミド前駆体と、熱硬化性ポリイミドと、の総称である。
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
・エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、保護膜形成フィルムの硬化性、並びに、保護膜の強度及び耐熱性の点から、300~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましく、300~3000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は、100~1000g/eqであることが好ましく、150~950g/eqであることがより好ましい。
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
・熱硬化剤(B2)
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有していてもよい。
熱硬化剤(B2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、保護膜の支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(B2)は、軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300~30000であることが好ましく、400~10000であることがより好ましく、500~3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60~500であることが好ましい。
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
保護膜形成フィルムにおける、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、0.1~100質量部であることが好ましく、0.5~50質量部であることがより好ましく、例えば、0.5~25質量部、0.5~10質量部、及び0.5~5質量部のいずれかであってもよい。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、保護膜形成フィルムの硬化がより進行し易くなる。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、保護膜形成フィルムの吸湿率が低減されて、保護膜形成フィルムを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
保護膜形成フィルムにおける、熱硬化性成分(B)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、10~100質量部であることが好ましく、20~70質量部であることがより好ましく、25~55質量部であることがさらに好ましく、30~45質量部であることが特に好ましい。熱硬化性成分(B)の前記含有量が前記下限値以上であることで、例えば、熱硬化後の保護膜の貯蔵弾性率E’(23)をより大きくし易くなる。熱硬化性成分(B)の前記含有量が前記上限値以下であることで、例えば、前記貯蔵弾性率E’(90)をより小さくし易くなる。
[充填材(D)]
組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、充填材(D)を含有していることが好ましい。保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有することにより、前記試験片の貯蔵弾性率E’をより容易に調節できる。より具体的には、保護膜形成フィルムが含有する充填材(D)の平均粒子径と、保護膜形成フィルムの充填材(D)の含有量を調節することで、前記試験片の貯蔵弾性率E’をより容易に調節できる。また、保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有することにより、保護膜形成フィルムと保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となり、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きチップの信頼性がより向上する。また、保護膜形成フィルムが充填材(D)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれであってもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましく、シリカであることがより好ましい。
保護膜形成用組成物における、充填材(D)のそれ以外の成分に対する分散性が向上する点では、前記シリカは、有機基で表面修飾されたシリカであることが好ましく、ビニル基、エポキシ基、フェニル基又はメタクリル基で表面修飾されたシリカであることがより好ましく、ビニル基又はエポキシ基で表面修飾されたシリカであることが特に好ましい。
保護膜形成用組成物における、充填材(D)のそれ以外の成分に対する分散性が向上する点では、充填材(D)の平均粒子径は、0.05~2μmであることが好ましく、0.2~0.9μmであることがより好ましく、0.4~0.7μmであることが特に好ましい。充填材(D)の平均粒子径が前記下限値以上であることで、前記貯蔵弾性率E’(90)及び貯蔵弾性率E’(70)をより小さくできる傾向にある。
本明細書において「平均粒子径」とは、特に断りのない限り、レーザー回折散乱法によって求められた粒度分布曲線における、積算値50%での粒子径(D50)の値を意味する。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する充填材(D)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
充填材(D)を用いる場合、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合は、30質量%以上70質量%以下であることが好ましく、例えば、35質量%以上70質量%以下、35質量%以上65質量%以下、及び35質量%以上59質量%以下のいずれかであってもよいし、35質量%以上50質量%未満であってもよい。前記割合がこのような範囲であることで、上記の、 前記貯蔵弾性率E’(90)、前記貯蔵弾性率E’(70)、及び熱硬化後の保護膜の貯蔵弾性率E’(23)を上述の範囲にする調節がより容易となる。保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、充填材(D)の含有量の割合は、40質量%以上70質量%以下であることが好ましく、例えば、45質量%以上70質量%以下、45質量%以上65質量%以下、及び45質量%以上59質量%以下のいずれかであってもよいし、45質量%以上50質量%未満であってもよい。
[硬化促進剤(C)]
組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。硬化促進剤(C)は、組成物(III)の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する硬化促進剤(C)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
硬化促進剤(C)を用いる場合、保護膜形成フィルムにおける、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.1~7質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られ、熱硬化後の保護膜の貯蔵弾性率E’(23)をより大きくし易くなる。硬化促進剤(C)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で保護膜形成フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなる。その結果、保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きチップの信頼性がより向上する。
[カップリング剤(E)]
組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、カップリング剤(E)を含有していてもよい。カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、保護膜形成フィルムから形成された保護膜の被着体に対する接着性を向上させることができる。また、カップリング剤(E)を用いることで、前記保護膜は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
カップリング剤(E)は、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
好ましい前記シランカップリング剤としては、1分子中に複数個のアルコキシシリル基を有するオリゴマー型シランカップリング剤も挙げられる。
前記オリゴマー型シランカップリング剤は、揮発しにくく、1分子中に複数個のアルコキシシリル基を有することから、耐久性向上に効果的である点で好ましい。
前記オリゴマー型シランカップリング剤としては、例えば、エポキシ基含有オリゴマー型シランカップリング剤である「X-41-1053」、「X-41-1059A」、「X-41-1056」及び「X-40-2651」(いずれも信越化学社製);メルカプト基含有オリゴマー型シランカップリング剤である「X-41-1818」、「X-41-1810」及び「X-41-1805」(いずれも信越化学社製)等が挙げられる。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有するカップリング剤(E)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
カップリング剤(E)を用いる場合、保護膜形成フィルムにおける、カップリング剤(E)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、0.03~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましく、0.1~2質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(E)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(D)の樹脂への分散性の向上や、保護膜形成フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(E)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。カップリング剤(E)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
[架橋剤(F)]
重合体成分(A)として、上述のアクリル樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、架橋剤(F)を含有していてもよい。架橋剤(F)は、重合体成分(A)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、保護膜形成フィルムの粘着力及び凝集力を調節できる。
架橋剤(F)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する架橋剤(F)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記貯蔵弾性率E’(90)及び前記貯蔵弾性率E’(70)を小さくする点では、組成物(III)が架橋剤(F)を含有しないか、又は、組成物(III)において、架橋剤(F)の含有量が、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、例えば、0.01質量部未満であるなど、架橋剤(F)の含有量が少ないことが好ましい。
これに対して、一定量以上の架橋剤(F)を用いる場合、組成物(III)において、架橋剤(F)の含有量は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~10質量部であることがより好ましく、0.5~5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(F)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(F)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。架橋剤(F)の前記含有量が前記上限値以下であることで、前記貯蔵弾性率E’(90)及び前記貯蔵弾性率E’(70)をより小さくし易くなる。
[エネルギー線硬化性樹脂(G)]
組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していてもよい。保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
エネルギー線硬化性樹脂(G)は、エネルギー線硬化性化合物、又はエネルギー線硬化性化合物から合成されたと見做せるオリゴマー若しくはポリマー(重合体)である。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
前記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
前記エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、100~30000であることが好ましく、300~10000であることがより好ましい。
前記オリゴマー若しくはポリマーの合成に用いる前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有するエネルギー線硬化性樹脂(G)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
エネルギー線硬化性樹脂(G)を用いる場合、組成物(III)において、組成物(III)の総質量に対する、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量の割合は、1~30質量%であることが好ましく、5~25質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることが特に好ましい。
[光重合開始剤(H)]
組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(G)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(H)を含有していてもよい。
組成物(III)における光重合開始剤(H)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジル-1-ブタノン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα-ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4-ジエチルチオキサントン;1,2-ジフェニルメタン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン;1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン等のキノン化合物が挙げられる。
また、光重合開始剤(H)としては、例えば、アミン等の光増感剤等も挙げられる。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する光重合開始剤(H)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
光重合開始剤(H)を用いる場合、組成物(III)において、光重合開始剤(H)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量100質量部に対して、0.1~20質量部であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましく、2~5質量部であることが特に好ましい。
[着色剤(I)]
組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、着色剤(I)を含有していることが好ましい。着色剤(I)を含有させることにより、保護膜形成フィルム及び保護膜の光透過性を容易に調節できる。
着色剤(I)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色素等が挙げられる。
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する着色剤(I)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
着色剤(I)を用いる場合、保護膜形成フィルムの着色剤(I)の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、保護膜形成フィルムの着色剤(I)の含有量を調節し、保護膜形成フィルムの光透過性を調節することにより、保護膜形成フィルム又は保護膜に対してレーザー印字を行った場合の印字視認性を調節できる。また、保護膜形成フィルムの着色剤(I)の含有量を調節することで、保護膜の意匠性を向上させたり、ウエハの裏面の研削痕を見え難くすることもできる。これらの点を考慮すると、保護膜形成フィルムにおける、保護膜形成フィルムの総質量に対する、着色剤(I)の含有量の割合は、0.1~10質量%であることが好ましく、0.1~7.5質量%であることがより好ましく、0.1~5質量%であることが特に好ましい。前記割合が前記下限値以上であることで、着色剤(I)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。例えば、被着体から保護膜形成フィルムを剥離したときに、保護膜形成フィルムの被着体における残存の有無を、目視によって容易に確認できる。前記割合が前記上限値以下であることで、着色剤(I)の過剰使用が抑制される。
[汎用添加剤(J)]
組成物(III)及び保護膜形成フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、汎用添加剤(J)を含有していてもよい。
汎用添加剤(J)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムが含有する汎用添加剤(J)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(III)及び保護膜形成フィルムの汎用添加剤(J)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
[溶媒]
組成物(III)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する組成物(III)は、取り扱い性が良好となる。
本明細書において、「溶媒」とは、特に断りのない限り、対象成分を溶解させるものだけでなく、対象成分を分散させる分散媒も含む概念とする。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
組成物(III)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(III)が含有する溶媒で、より好ましいものとしては、例えば、組成物(III)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン、トルエン、酢酸エチル等が挙げられる。
組成物(III)の溶媒の含有量は、特に限定されず、例えば、溶媒以外の成分の種類に応じて適宜選択すればよい。
<保護膜形成用組成物(III)の製造方法>
組成物(III)は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
◎保護膜形成フィルムの例
図1は、本実施形態の保護膜形成フィルムの一例を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
ここに示す保護膜形成フィルム13は、その一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13a上に第1剥離フィルム151を備え、前記第1面13aとは反対側の他方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13b上に第2剥離フィルム152を備えている。
このような保護膜形成フィルム13は、例えば、ロール状として保存するのに好適である。
保護膜形成フィルム13を用いて作製した前記試験片の貯蔵弾性率E’を測定したとき、90℃における前記試験片の貯蔵弾性率E’(90)が5MPa以下となる。
保護膜形成フィルム13は、上述の保護膜形成用組成物を用いて形成できる。
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、いずれも公知のものでよい。
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、互いに同じものであってもよいし、例えば、保護膜形成フィルム13から剥離させるときに必要な剥離力が互いに異なるなど、互いに異なるものであってもよい。
図1に示す保護膜形成フィルム13は、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152のいずれか一方が取り除かれ、生じた露出面が、ワーク(図示略)のいずれかの箇所への貼付面となる。そして、後述する支持シート又はダイシングシートを用いる場合には、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152の残りの他方が取り除かれ、生じた保護膜形成フィルム13の露出面が、前記支持シート又はダイシングシートの貼付面となる。
図1においては、剥離フィルムが保護膜形成フィルム13の両面(第1面13a、第2面13b)に設けられている例を示しているが、剥離フィルムは、保護膜形成フィルム13のいずれか一方の面のみ、すなわち、第1面13aのみ、又は第2面13bのみに、設けられていてもよい。
本実施形態の保護膜形成フィルムは、後述する支持シートと併用することで、保護膜の形成とワークの加工(例えば、ダイシング)を共に行うことができる、保護膜形成用複合シートを構成可能である。以下、このような保護膜形成用複合シートについて、説明する。
◇保護膜形成用複合シート
本発明の一実施形態に係る保護膜形成用複合シートは、支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムと、を備えており、前記保護膜形成フィルムが、上述の本発明の一実施形態に係る保護膜形成フィルムである。
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、その中の保護膜形成フィルムによって、ワークの目的とする箇所(例えば、ウエハの裏面)に貼付できる。
本明細書においては、保護膜形成フィルムが硬化した後であっても、支持シートと、保護膜形成フィルムの熱硬化物と、の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「保護膜形成用複合シート」と称する。
以下、前記保護膜形成用複合シートを構成する各層について、詳細に説明する。
◎支持シート
前記支持シートは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。支持シートが複数層からなる場合、これら複数層の構成材料及び厚さは、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
支持シートは、透明及び非透明のいずれであってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、支持シートはエネルギー線を透過させるものが好ましい。
支持シートとしては、例えば、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えるもの;基材のみからなるもの;等が挙げられる。支持シートが粘着剤層を備えている場合、粘着剤層は、保護膜形成用複合シートにおいては、基材と保護膜形成フィルムとの間に配置される。
基材及び粘着剤層を備える支持シートを用いた場合には、保護膜形成用複合シートにおいて、支持シートと保護膜形成フィルムとの間の、密着性及び剥離性を容易に調節できる。
基材のみからなる支持シートを用いた場合には、低コストで保護膜形成用複合シートを製造できる。
本実施形態の保護膜形成用複合シートの例を、このような支持シートの種類ごとに、以下、図面を参照しながら説明する。
◎保護膜形成用複合シートの一例
図2は、本実施形態の保護膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
なお、図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
ここに示す保護膜形成用複合シート101は、支持シート10と、支持シート10の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10a上に設けられた保護膜形成フィルム13と、を備えて構成されている。
支持シート10は、基材11と、基材11の一方の面(第1面)11a上に設けられた粘着剤層12と、を備えて構成されている。保護膜形成用複合シート101中、粘着剤層12は、基材11と保護膜形成フィルム13との間に配置されている。
すなわち、保護膜形成用複合シート101は、基材11、粘着剤層12及び保護膜形成フィルム13がこの順に、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
支持シート10の第1面10aは、粘着剤層12の基材11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aと同じである。
保護膜形成用複合シート101は、さらに保護膜形成フィルム13上に、治具用接着剤層16及び剥離フィルム15を備えている。
保護膜形成用複合シート101においては、粘着剤層12の第1面12aの全面又はほぼ全面に、保護膜形成フィルム13が積層され、保護膜形成フィルム13の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用接着剤層16が積層されている。さらに、保護膜形成フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層16が積層されていない領域と、治具用接着剤層16の保護膜形成フィルム13側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)16aに、剥離フィルム15が積層されている。保護膜形成フィルム13の第1面13aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13bには、支持シート10が設けられている。
保護膜形成用複合シート101の場合に限らず、本実施形態の保護膜形成用複合シートにおいては、剥離フィルム(例えば、図2に示す剥離フィルム15)は任意の構成であり、本実施形態の保護膜形成用複合シートは、剥離フィルムを備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
治具用接着剤層16は、リングフレーム等の治具に、保護膜形成用複合シート101を固定するために用いる。
治具用接着剤層16は、例えば、接着剤成分又は粘着剤成分を含有する単層構造を有していてもよいし、芯材となるシートと、前記シートの両面に設けられた、接着剤成分又は粘着剤成分を含有する層と、を備える複数層構造を有していてもよい。
保護膜形成用複合シート101は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成フィルム13の第1面13aにワークの目的とする箇所が貼付され、さらに、治具用接着剤層16の第1面16aが、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
上記のとおり、保護膜形成フィルム13を備える保護膜形成用複合シート101を用いて、前記保護膜付きワーク又は前記保護膜付きワーク加工物を製造する工程中に、熱硬化性の保護膜形成フィルムの表面にキズ痕が形成されたときであっても、保護膜形成フィルム13を熱硬化させた後の保護膜の表面のキズ痕を目立たなくすることができる。
図3は、本実施形態の保護膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート102は、保護膜形成フィルムの形状及び大きさが異なり、治具用接着剤層が保護膜形成フィルムの第1面ではなく、粘着剤層の第1面に積層されている点以外は、図2に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
より具体的には、保護膜形成用複合シート102において、保護膜形成フィルム23は、粘着剤層12の第1面12aの一部の領域、すなわち、粘着剤層12の幅方向(図3における左右方向)における中央側の領域に、積層されている。さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成フィルム23が積層されていない領域に、保護膜形成フィルム23をその幅方向の外側から非接触で取り囲むように、治具用接着剤層16が積層されている。そして、保護膜形成フィルム23の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)23aと、治具用接着剤層16の第1面16aとに、剥離フィルム15が積層されている。保護膜形成フィルム23の第1面23aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)23bには、支持シート10が設けられている。
図4は、本実施形態の保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート103は、治具用接着剤層16を備えていない点以外は、図3に示す保護膜形成用複合シート102と同じである。
図5は、本実施形態の保護膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート104は、支持シート10に代えて支持シート20を備えて構成されている点以外は、図2に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。
支持シート20は、基材11のみからなる。
すなわち、保護膜形成用複合シート104は、基材11及び保護膜形成フィルム13が、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
支持シート20の保護膜形成フィルム13側の面(一方の面)20aは、基材11の第1面11aと同じである。
本実施形態の保護膜形成用複合シートは、図1~図5に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、図1~図5に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
次に、支持シートを構成する各層について、さらに詳細に説明する。
○基材
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
前記樹脂は、耐熱性に優れる点では、ポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートであることが好ましい。
基材を構成する樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
基材の厚さは、50~300μmであることが好ましく、60~100μmであることがより好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、保護膜形成用複合シートの可撓性と、ウエハへの貼付適性がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
基材は、透明及び非透明のいずれであってもよく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、基材はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
基材は、その上に設けられる層(例えば、粘着剤層、保護膜形成フィルム、又は前記他の層)との密着性を調節するために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理;親油処理;親水処理等が表面に施されていてもよい。また、基材は、表面がプライマー処理されていてもよい。
基材は、特定範囲の成分(例えば、樹脂等)を含有することで、少なくとも一方の面において、粘着性を有するものであってもよい。
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
○粘着剤層
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着剤を含有する。
前記粘着剤としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等の粘着性樹脂が挙げられる。
粘着剤層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであることが好ましく、1~60μmであることがより好ましく、1~30μmであることが特に好ましい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
粘着剤層は、透明及び非透明のいずれであってもよく、目的に応じて着色されていてもよい。
保護膜形成フィルムがエネルギー線硬化性を有する場合には、粘着剤層はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
粘着剤層は、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであってもよい。エネルギー線硬化性粘着剤層は、その硬化前及び硬化後での物性を調節できる。例えば、後述する保護膜付きチップのピックアップ前に、エネルギー線硬化性粘着剤層を硬化させることにより、この保護膜付きチップをより容易にピックアップできる。
本明細書においては、エネルギー線硬化性粘着剤層がエネルギー線硬化した後であっても、基材と、エネルギー線硬化性粘着剤層の硬化物と、の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「支持シート」と称する。
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
粘着剤組成物の塗工及び乾燥は、例えば、上述の保護膜形成用組成物の塗工及び乾燥の場合と同じ方法で行うことができる。
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
粘着剤層が非エネルギー線硬化性である場合、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、前記非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着剤組成物(I-4)等が挙げられる。
[非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)]
前記粘着性樹脂(I-1a)は、アクリル樹脂であることが好ましい。
前記アクリル樹脂としては、例えば、少なくとも(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル重合体が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるのものが挙げられ、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
前記アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することで架橋の起点となるものが挙げられる。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
前記アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
前記粘着剤組成物(I-1)、粘着剤組成物(I-2)、粘着剤組成物(I-3)及び粘着剤組成物(I-4)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-4)」と略記する)において、前記アクリル重合体等の前記アクリル樹脂が有する構成単位は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記アクリル重合体において、構成単位の全量に対する、官能基含有モノマー由来の構成単位の量の割合は、1~35質量%であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)から形成される粘着剤層において、前記粘着剤層の総質量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましい。
[エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)]
前記粘着性樹脂(I-2a)は、例えば、粘着性樹脂(I-1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と反応することで、粘着性樹脂(I-1a)と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2-プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)が含有する粘着性樹脂(I-2a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)から形成される粘着剤層において、前記粘着剤層の総質量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましい。
[エネルギー線硬化性化合物]
前記粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーの重合体であるオリゴマー等が挙げられる。
粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)から形成される粘着剤層において、前記粘着剤層の総質量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましい。
[架橋剤]
粘着性樹脂(I-1a)として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-1)又は(I-4)は、さらに架橋剤を含有することが好ましい。
また、粘着性樹脂(I-2a)として、例えば、粘着性樹脂(I-1a)におけるものと同様の、官能基含有モノマー由来の構成単位を有する前記アクリル重合体を用いる場合、粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)は、さらに架橋剤を含有していてもよい。
前記架橋剤は、例えば、前記官能基と反応して、粘着性樹脂(I-1a)同士又は粘着性樹脂(I-2a)同士を架橋する。
架橋剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、これらジイソシアネートのアダクト体等のイソシアネート系架橋剤(イソシアネート基を有する架橋剤);エチレングリコールグリシジルエーテル等のエポキシ系架橋剤(グリシジル基を有する架橋剤);ヘキサ[1-(2-メチル)-アジリジニル]トリフオスファトリアジン等のアジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤);アルミニウムキレート等の金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤);イソシアヌレート系架橋剤(イソシアヌル酸骨格を有する架橋剤)等が挙げられる。
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有する架橋剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
前記粘着剤組成物(I-1)又は(I-4)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましい。
前記粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましい。
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-3)」と略記する)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-1)~(I-3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
前記光重合開始剤としては、例えば、上述の光重合開始剤(H)と同様のものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)が含有する光重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-1)において、光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I-1)~(I-4)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I-1)~(I-4)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制する成分である。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有するその他の添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)のその他の添加剤の含有量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
[溶媒]
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していることで、その塗工対象面への塗工適性が向上する。
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、前記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル(カルボン酸エステル);テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
○粘着剤組成物の製造方法
粘着剤組成物は、例えば、配合成分の種類が異なる点以外は、先に説明した保護膜形成用組成物の場合と同じ方法で製造できる。
◇保護膜形成用複合シートの製造方法
前記保護膜形成用複合シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように積層し、必要に応じて、一部又はすべての層の形状を調節することで、製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
例えば、支持シートを製造するときに、基材上に粘着剤層を積層する場合には、基材上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。
また、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせる方法でも、基材上に粘着剤層を積層できる。このとき、粘着剤組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。また、この場合の剥離フィルムは、保護膜形成用複合シートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
ここまでは、基材上に粘着剤層を積層する場合を例に挙げたが、上述の方法は、例えば、基材上に粘着剤層以外の他の層を積層する場合にも適用できる。
一方、例えば、基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらに保護膜形成フィルムを積層する場合には、粘着剤層上に保護膜形成用組成物を塗工して、保護膜形成フィルムを直接形成することが可能である。保護膜形成フィルム以外の層も、この層を形成するための組成物を用いて、同様の方法で、粘着剤層の上にこの層を積層できる。このように、基材上に積層済みのいずれかの層(以下、「第1層」と略記する)上に、新たな層(以下、「第2層」と略記する)を形成して、連続する2層の積層構造(換言すると、第1層及び第2層の積層構造)を形成する場合には、前記第1層上に、前記第2層を形成するための組成物を塗工して、必要に応じて乾燥させる方法が適用できる。
ただし、第2層は、これを形成するための組成物を用いて、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、この形成済みの第2層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、第1層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
ここでは、粘着剤層上に保護膜形成フィルムを積層する場合を例に挙げたが、例えば、粘着剤層上に保護膜形成フィルム以外の層(フィルム)を積層する場合など、対象となる積層構造は、任意に選択できる。
このように、保護膜形成用複合シートを構成する基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、保護膜形成用複合シートを製造すればよい。
なお、保護膜形成用複合シートは、通常、その支持シートとは反対側の最表層(例えば、保護膜形成フィルム)の表面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、この剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、保護膜形成用組成物等の、最表層を構成する層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成する層を形成しておき、この層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることで、剥離フィルム付きの保護膜形成用複合シートが得られる。
◇保護膜付きワークの製造方法(保護膜形成フィルム及び保護膜形成用複合シートの使用方法)
前記保護膜形成フィルム及び保護膜形成用複合シートは、ワークと、前記ワークのいずれかの箇所に設けられた保護膜と、を備える保護膜付きワークの製造に用いることができる。
本実施形態の保護膜付きワークの製造方法は、前記保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成フィルム、又は前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワーク及び保護膜形成フィルムを備える保護膜形成フィルム付きワークを作製する貼付工程と、
前記貼付工程後に、前記保護膜形成フィルムを熱硬化させ、前記保護膜を形成することにより、前記保護膜付きワークを作製する熱硬化工程と、を有する。
ワークがウエハである場合には、前記保護膜付きワークとしては、ウエハと、前記ウエハの裏面に設けられた保護膜と、を備える保護膜付きウエハが挙げられる。
前記保護膜付きウエハの製造方法は、前記保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成フィルム、又は前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを、前記ウエハの裏面に貼付することにより、前記ウエハ、及び、前記ウエハの裏面に設けられた前記保護膜形成フィルムを備える保護膜形成フィルム付きワークを作製する貼付工程と、
前記貼付工程後に、前記保護膜形成フィルムを熱硬化させ、前記保護膜を形成することにより、前記保護膜付きワークを作製する熱硬化工程と、を有する。
<<保護膜付きウエハの製造方法(製造方法(1-1))>>
以下、保護膜付きワークの製造方法として、保護膜付きウエハの製造方法を例に挙げて、図面を引用しながら説明する。
図6は、本実施形態の保護膜付きウエハの製造方法のうち、保護膜形成フィルムを用いた場合の製造方法の一例(本明細書においては、「製造方法(1-1)」と称することがある)を模式的に説明するための断面図である。ここでは、図1に示す保護膜形成フィルム13を用いた場合について、説明する。
前記製造方法(1-1)の前記貼付工程においては、まず、図6(a)に示すように、第1剥離フィルム151が取り除かれ、一方の面(ここでは第2面13b)に第2剥離フィルム152を備え、他方の面(ここでは第1面13a)が露出している保護膜形成フィルム13を用い、その第1面13aをウエハ9の裏面9bに貼付することにより、図6(c)に示すように、保護膜形成フィルム付きウエハ901を作製する。
図6(a)中の矢印は、保護膜形成フィルム13のウエハ9への貼付方向を示している。
このとき、ウエハ9は、例えば、ここに示すように、自身の温度調節が可能となっているテーブル8上に設置し、テーブル8の加熱によって、ウエハ9を加熱しておき、この加熱されている状態のウエハ9に保護膜形成フィルム13を貼付することが好ましい。
ウエハ9は、その裏面9bに保護膜形成フィルム13を貼付するために、その突状電極90を備えている回路面9a側をテーブル8へ向けて、テーブル8上に設置する。なお、ここでは、ウエハ9の回路の図示は省略している。
保護膜形成フィルム13をウエハ9の裏面に貼付するときには、保護膜形成フィルム13のウエハ9側とは反対側から第2剥離フィルム152を介してラミネートロール16などの押圧手段で押圧する。
保護膜形成フィルム13のウエハ9への貼付条件は、特に限定されない。通常、貼付時の保護膜形成フィルム13の温度(貼付温度)は20~100℃であることが好ましく、保護膜形成フィルム13を貼付する速度(貼付速度)は0.1~2m/minであることが好ましく、貼付時に保護膜形成フィルム13に加える圧力(貼付圧力)は0.1~0.6MPaであることが好ましい。
図6(b)及び図6(c)に示すように、ウエハ9へ貼付後の保護膜形成フィルム13から、第2剥離フィルム152を取り除く。例えば、保護膜形成フィルム13のウエハ9側とは反対側から第2剥離フィルム152を介してラミネートロール16で押圧する際に、第2剥離フィルム152とラミネートロール16との間に粒子状の異物17が混入することがあり、粒子状の異物17の押圧痕18が保護膜形成フィルム13のウエハ9側とは反対側の表面13bに形成されることがある。
前記製造方法(1-1)の前記貼付工程後、前記熱硬化工程においては、ウエハ9へ貼付後の保護膜形成フィルム13を熱硬化させ、保護膜13’を形成することにより、図6(d)に示すように、保護膜付きウエハ902を作製する。
熱硬化工程における保護膜形成フィルムの加熱条件は、保護膜形成フィルムを熱硬化させて保護膜を形成し、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り、特に限定されない。熱硬化工程における保護膜形成フィルムの加熱温度は、100~180℃であることが好ましく、110~160℃であることがより好ましく、120~140℃であることが特に好ましい。熱硬化工程における保護膜形成フィルムの加熱時間は、0.5~5hであることが好ましく、0.5~4hであることがより好ましく、1~3hであることが特に好ましい。
従来の保護膜形成フィルムを用いた場合には、押圧痕18が保護膜形成フィルム13のウエハ9側とは反対側の表面13bに形成された場合、熱硬化工程を経ても押圧痕18が残ってしまい、不良品が作製されてしまう。
これに対して、本実施形態の保護膜形成フィルムを用いた製造方法(1-1)の場合には、仮に、保護膜形成フィルム13の表面に、押圧痕18等のキズ痕が形成された場合であっても、熱硬化工程を行うことによって、加熱による自己修復性の効果によりキズ痕が小さくなって、保護膜13’の表面のキズ痕を目立たなくすることができる。
前記製造方法(1-1)は、前記貼付工程後、かつ前記熱硬化工程前に、保護膜形成フィルム13が熱硬化しない条件で保護膜形成フィルム13を加熱する加熱工程を有することが好ましい。保護膜形成フィルム13が熱硬化しない条件で保護膜形成フィルム13を加熱することにより、保護膜形成フィルム13の表面のキズ痕を小さくすることができ、保護膜13’の表面のキズ痕をより目立たなくすることができる。
加熱工程における保護膜形成フィルムの加熱条件は、保護膜形成フィルム13を熱硬化させず、保護膜形成フィルム13の表面のキズ痕を小さくすることができる限り、特に限定されない。加熱工程における保護膜形成フィルムの加熱温度は、75~105℃であることが好ましく、80~100℃であることがより好ましく、85~95℃であることが特に好ましい。加熱工程における保護膜形成フィルムの加熱時間は、0.5~5hであることが好ましく、0.5~4hであることがより好ましく、1~3hであることが特に好ましい。
上記で得られた保護膜付きウエハ902を用いて、ウエハ9を分割し、保護膜13’を切断することにより、保護膜付きチップ(図示略)を作製できる。
ここまでは、製造方法(1-1)として、保護膜形成フィルムを用いた場合の保護膜付きウエハの製造方法について説明したが、保護膜形成フィルムに代えて、保護膜形成フィルムを備える保護膜形成用複合シートを用いても、保護膜付きウエハを製造できる。
<<保護膜付きウエハの製造方法(製造方法(1-2))>>
図7は、本実施形態の保護膜付きウエハの製造方法のうち、保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成フィルムを用いて、さらに、搬送工程を有する場合の製造方法の一例(本明細書においては、「製造方法(1-2)」と称することがある)を模式的に説明するための断面図である。ここでは、図1に示す保護膜形成フィルム13を用いた場合について、説明する。
製造方法(1-2)の前記貼付工程は、ラミネートロールを用いる方法等、製造方法(1-1)の前記貼付工程と同じ方法で行うことができる。
前記製造方法(1-2)の前記貼付工程により、図7(a)に示すように、保護膜形成フィルム付きウエハ901を作製する。
図7(a)においても、図6(c)と同様、図示しない押圧痕18等のキズ痕が保護膜形成フィルム13のウエハ9側とは反対側の表面13bに形成されることがある。
前記搬送工程においては、次いで、図7(b)に示すように、保護膜形成フィルム付きウエハ901中の保護膜形成フィルム13の露出面(ここでは第2面13b)に、保護膜形成フィルム付きウエハ901を搬送するために用いる搬送手段7を接触させ、搬送手段7によって、保護膜形成フィルム付きウエハ901を固定する。
搬送手段7は、公知のものでよく、例えば、搬送対象物(ここでは保護膜形成フィルム付きウエハ901)との接触部において、搬送対象物を吸着することによって固定する手段(例えば、所謂吸着アーム等)を、搬送手段7として使用できる。この場合の前記接触部としては、吸着盤が挙げられる。ただし、搬送手段7はこれに限定されず、搬送対象物を吸着以外によって固定するものであってもよい。
なお、ここでは搬送手段7のみ、断面表示を省略している。
前記搬送工程においては、次いで、図7(c)に示すように、搬送手段7によって固定した状態の保護膜形成フィルム付きウエハ901を、テーブル8から引き離す。
図7(c)中の矢印は、保護膜形成フィルム付きウエハ901のテーブル8からの引き離し方向を示している。
そして、さらにこのまま、図7(d)に示すように、保護膜形成フィルム付きウエハ901を搬送手段7によって固定した状態で搬送する。なお、図7(d)中では、保護膜形成フィルム付きウエハ901の搬送方向を矢印で示しているが、これは搬送方向の一例であり、搬送方向がこの方向だけに限定される訳ではない。
前記搬送工程においては、次いで、図7(e)に示すように、目的とする場所へ搬送後の保護膜形成フィルム付きウエハ901において、搬送手段7による固定状態を解消し、搬送手段7を保護膜形成フィルム付きウエハ901から引き離す。
以上により、前記搬送工程が終了する。
前記搬送工程終了後の、保護膜形成フィルム付きウエハ901中の保護膜形成フィルム13、より具体的には、保護膜形成フィルム13の第2面13bのうち、搬送手段7中の固定部位の接触箇所に、搬送手段7の接触に起因する接触痕19が形成されることがある。例えば、前記固定部位が、平面形状が円形の吸着盤である場合には、円形の接触痕19が保護膜形成フィルム13の露出面に形成されることがある。
前記製造方法(1-2)の前記搬送工程後、前記熱硬化工程においては、ウエハ9へ貼付後の保護膜形成フィルム13を熱硬化させ、保護膜13’を形成することにより、図7(f)に示すように、保護膜付きウエハ902を作製する。
製造方法(1-2)の熱硬化工程は、製造方法(1-1)の熱硬化工程の場合と同じ方法で行うことができる。
従来の保護膜形成フィルムを用いた場合には、押圧痕18、接触痕19等のキズ痕が保護膜形成フィルム13のウエハ9側とは反対側の表面13bに形成された場合、熱硬化工程を経てもキズ痕が残ってしまい、不良品が作製されてしまう。
これに対して、本実施形態の保護膜形成フィルムを用いた製造方法(1-2)の場合には、仮に、保護膜形成フィルム13の表面に、キズ痕が形成された場合であっても、熱硬化工程を行うことによって、加熱による自己修復性の効果によりキズ痕が小さくなって、保護膜13’の表面のキズ痕を目立たなくすることができる。
前記製造方法(1-2)は、前記搬送工程後、かつ前記熱硬化工程前に、保護膜形成フィルム13が熱硬化しない条件で保護膜形成フィルム13を加熱する加熱工程を有することが好ましい。保護膜形成フィルム13が熱硬化しない条件で保護膜形成フィルム13を加熱することにより、保護膜形成フィルム13の表面のキズ痕を小さくすることができ、保護膜13’の表面のキズ痕をより目立たなくすることができる。
製造方法(1-2)の加熱工程は、製造方法(1-1)の加熱工程の場合と同じ方法で行うことができる。
上記で得られた保護膜付きウエハ902を用いて、ウエハ9を分割し、保護膜13’を切断することにより、保護膜付きチップ(図示略)を作製できる。
<<保護膜付きワークの製造方法の変形例>>
本実施形態の保護膜付きワークの製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記貼付工程と、前記搬送工程と、前記加熱工程と、前記熱硬化工程と、のいずれにも該当しない、他の工程を有していてもよい。
前記他の工程は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
前記他の工程を行うタイミングは、前記他の工程の内容に応じて、適宜選択できる。
前記保護膜付きウエハの製造方法における前記他の工程の一例としては、前記ウエハとして、その回路面にバックグラインドテープが設けられているものを用いる場合であれば、前記貼付工程前に、前記ウエハの回路面からバックグラインドテープを取り除くバックグラインドテープ除去工程が挙げられる。
前記バックグラインドテープは公知のものでよく、前記バックグラインドテープの、ウエハの回路面への貼付と、ウエハの回路面からの除去は、公知の方法で行うことができる。
ここまでは、前記製造方法(1-1)及び前記製造方法(1-2)として、図1に示す保護膜形成フィルム13を用いた場合について説明してきたが、本実施形態の保護膜付きワークの製造方法においては、図2に示す保護膜形成用複合シート101、図3に示す保護膜形成用複合シート102、図4に示す保護膜形成用複合シート103、図5に示す保護膜形成用複合シート104等をはじめとする、保護膜形成用複合シートを用いてもよい。
前記保護膜形成用複合シートを用いる場合には、前記保護膜形成用複合シートと、図1に示す保護膜形成フィルム13と、の構成の相違に基づいて、本実施形態の保護膜付きワークの製造方法は、いずれかのタイミングで行う前記他の工程を有していてもよい。
◇保護膜付きワーク加工物の製造方法(保護膜形成フィルム及び保護膜形成用複合シートの使用方法)
前記保護膜形成フィルム及び保護膜形成用複合シートは、ワークを加工することにより得られたワーク加工物と、前記ワーク加工物のいずれかの箇所に設けられた保護膜と、を備える保護膜付きワーク加工物の製造に用いることができる。
本実施形態の保護膜付きワーク加工物の製造方法は、ワークを加工することによりワーク加工物を作製する工程を有する点で、上述の保護膜付きワークの製造方法とは相違する。
本実施形態の保護膜付きワーク加工物の製造方法は、前記保護膜形成用複合シートを構成していない前記保護膜形成フィルム、又は前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワーク及び保護膜形成フィルムを備える保護膜形成フィルム付きワークを作製する貼付工程と、前記貼付工程後に、前記ワークを加工することにより、前記ワーク加工物を作製する加工工程と、前記貼付工程後に、前記保護膜形成フィルムを熱硬化させることにより、前記保護膜を形成する熱硬化工程と、を有する。
ワークがウエハである場合には、前記保護膜付きワーク加工物としては、チップと、前記チップの裏面に設けられた保護膜と、を備える保護膜付きチップが挙げられる。
前記保護膜付きチップの製造方法は、前記保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成フィルム、又は前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを、ウエハの裏面に貼付することにより、前記ウエハと、前記ウエハの裏面に設けられた前記保護膜形成フィルムと、を備える保護膜形成フィルム付きウエハを作製する貼付工程と、前記貼付工程後に、前記ウエハを分割することにより、チップを作製する加工工程(「分割工程」ということもできる)と、前記貼付工程後に、前記保護膜形成フィルムを熱硬化させることにより、前記保護膜を形成する熱硬化工程と、を有する。
<<保護膜付きチップの製造方法(製造方法(2-1))>>
以下、保護膜付きワーク加工物の製造方法として、保護膜付きチップの製造方法を例に挙げて、図面を引用しながら説明する。
図8は、本実施形態の保護膜付きチップの製造方法のうち、保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成フィルムを用いた場合の製造方法の一例(本明細書においては、「製造方法(2-1)」と称することがある)を模式的に説明するための断面図である。ここでは、図1に示す保護膜形成フィルム13を用いた場合について、説明する。
前記製造方法(2-1)の前記貼付工程においては、図8(a)に示すように、第1剥離フィルム151を取り除いた保護膜形成フィルム13の表面13aを、ウエハ9の裏面9bに貼付することにより、保護膜形成フィルム付きウエハ901を作製する。
製造方法(2-1)の前記貼付工程は、ラミネートロールを用いる方法等、製造方法(1-1)の前記貼付工程と同じ方法で行うことができる。
製造方法(2-1)の前記貼付工程においても、製造方法(1-1)の前記貼付工程と同様に、図示しない押圧痕18等のキズ痕が保護膜形成フィルム13のウエハ9側とは反対側の表面13bに形成されることがある。
前記製造方法(2-1)の前記貼付工程後、かつ前記加工工程前に、図8(b)に示すように、保護膜形成フィルム付きウエハ901から、第2剥離フィルム152を取り除き、これにより新たに生じた露出面、すなわち保護膜形成フィルム13の第2面13bに、ダイシングシート80を貼付する。ダイシングシート80は、基材81と、その一方の面に設けられた粘着剤層82と、を備えている。本工程においては、粘着剤層82の基材81側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)82aを保護膜形成フィルム13の第2面13bに貼付する。粘着剤層82の第1面82aは、ダイシングシート80の第1面80aと同じである。
このように、前記製造方法(2-1)は、前記貼付工程と前記加工工程との間に、前記保護膜形成フィルム付きウエハ中の前記保護膜形成フィルムの前記ウエハ側とは反対側の面に、ダイシングシートを貼付するダイシングシート貼付工程を有する。
ダイシングシート80は、保護膜形成用複合シート101中の支持シート10と、同様の構成を有するものであってよい。
ここでは、ダイシングシート80を用いた場合について示しているが、製造方法(2-1)においては、例えば、基材のみからなるダイシングシート等、ダイシングシート80以外の公知のダイシングシートを用いてもよい。
ダイシングシート80の保護膜形成フィルム13への貼付は、公知の方法で行うことができ、例えば、製造方法(1-1)の前記貼付工程における、保護膜形成フィルム13のウエハ9への貼付の場合と同じ方法で行うことができる。
ダイシングシート80を保護膜形成フィルム13の表面13bに貼付する際に、例えば、ダイシングシート80とラミネートロール16との間に粒子状の異物17が混入することがあり、図示しない押圧痕18等のキズ痕が保護膜形成フィルム13のウエハ9側とは反対側の表面13bに形成されることがある。
前記製造方法(2-1)の前記貼付工程後、前記加工工程においては、ウエハ9を分割することにより、チップ90を作製する。
また、前記貼付工程後、切断工程においては、保護膜形成フィルム13を切断する。
前記加工工程及び切断工程を行うことにより、図8(c)に示すように、チップ90と、その裏面90bに設けられた切断後の保護膜形成フィルム130と、を備える保護膜形成フィルム付きチップ913を作製するとともに、支持シート10上で、複数個のこれら保護膜形成フィルム付きチップ913が整列した状態で保持されて構成された、保護膜形成フィルム付きチップ群903を作製する。
図8(c)中、符号130aは、切断後の保護膜形成フィルム130の第1面を示しており、保護膜形成フィルム13の第1面13aに対応している。また、符号130bは、切断後の保護膜形成フィルム130の第2面を示しており、保護膜形成フィルム13の第2面13bに対応している。
製造方法(2-1)においては、前記貼付工程後、前記加工工程と前記切断工程を同時に行うか、又は前記加工工程を行ってから前記切断工程を行うことが好ましい。
製造方法(2-1)においては、ウエハの加工(分割)と、保護膜形成フィルムの切断とを、その順序によらず、中断することなく同じ操作によって連続的に行った場合には、加工工程及び切断工程を同時に行ったものとみなす。
前記加工工程及び切断工程は、いずれも、これらを行う順番に応じて、公知の方法で行うことができる。
例えば、加工工程及び切断工程を同時に行う場合には、ブレードを用いるブレードダイシング、レーザー照射によるレーザーダイシング、又は研磨剤を含む水の吹き付けによるウォーターダイシング等の各種ダイシングによって、ウエハ9の分割と、保護膜形成フィルム13の切断と、を同時に行ことができる。
また、ステルスダイシング(登録商標)により改質層を形成し、かつ分割を行っていないウエハ9と、保護膜形成フィルム13と、をともに、これらの表面に対して平行な方向に引っ張る、所謂エキスパンドを行うことでも、ウエハ9の分割と、保護膜形成フィルム13の切断と、を同時に行ことができる。このようなエキスパンドは、-20~5℃等の低温下において、行うことが好ましい。
ステルスダイシング(登録商標)とは、以下のような方法である。すなわち、まず、ウエハの内部において、分割予定箇所を設定し、この箇所を焦点として、この焦点に集束するように、レーザー光を照射することにより、ウエハの内部に改質層を形成する。ウエハの改質層は、ウエハの他の箇所とは異なり、レーザー光の照射によって変質しており、強度が弱くなっている。そのため、ウエハに力が加えられることにより、ウエハの内部の改質層において、ウエハの両面方向に延びる亀裂が発生し、ウエハの分割の起点となる。次いで、ウエハに力を加えて、前記改質層の部位においてウエハを分割し、チップを作製する。
例えば、製造方法(2-1)において、前記加工工程及び切断工程を行うことにより、図8(c)に示すように、保護膜形成フィルム付きチップ913を作製するとともに、ダイシングシート80上で、複数個のこれら保護膜形成フィルム付きチップ913が整列した状態で保持されて構成された、保護膜形成フィルム付きチップ群903を作製する。
製造方法(2-1)の前記加工工程及び切断工程後、前記熱硬化工程を行うことにより、図8(d)に示すように、保護膜付きチップ913’を作製するとともに、ダイシングシート80上で、複数個のこれら保護膜付きチップ913’が整列した状態で保持されて構成された、保護膜付きチップ群904を作製する。
図8(d)中、符号130a’は、保護膜130’の第1面を示しており、切断後の保護膜形成フィルム130の第1面130aに対応している。また、符号130b’は、保護膜130’の第2面を示しており、切断後の保護膜形成フィルム130の第2面130bに対応している。
製造方法(2-1)の熱硬化工程は、製造方法(1-1)の熱硬化工程の場合と同じ方法で行うことができる。
製造方法(2-1)の場合にも、上述の実施形態の保護膜形成フィルムを用いているので、製造方法(1-1)の場合と同様に、仮に、保護膜形成フィルム13の表面に、押圧痕18等のキズ痕が形成された場合であっても、熱硬化工程を行うことによって、加熱による自己修復性の効果によりキズ痕が小さくなって、保護膜13’の表面のキズ痕を目立たなくすることができる。
前記製造方法(2-1)は、前記貼付工程後かつ前記加工工程前に、又は、前記加工工程後かつ前記熱硬化工程前に、保護膜形成フィルム130が熱硬化しない条件で保護膜形成フィルム130を加熱する加熱工程を有することが好ましい。保護膜形成フィルム130が熱硬化しない条件で保護膜形成フィルム130を加熱することにより、保護膜形成フィルム130の表面のキズ痕を小さくすることができ、保護膜130’の表面のキズ痕をより目立たなくすることができる。
製造方法(2-1)の加熱工程は、製造方法(1-1)の加熱工程の場合と同じ方法で行うことができる。
前記加熱工程及び前記熱硬化工程においては、保護膜形成フィルム付きチップ群903を、その表面(例えば、切断後の保護膜形成フィルム130の第1面130a、チップ90の裏面90b)が、水平方向に対して平行となるように配置(所謂「横置き」に)して、保護膜形成フィルム130を加熱することができ、熱硬化させることができる。
一方、前記加熱工程及び前記熱硬化工程においては、保護膜形成フィルム付きチップ群903を、その表面(上記と同じ)が、水平方向に対して直交する(換言すると、鉛直方向に対して平行となる)ように配置(所謂「縦置き」に)して、保護膜形成フィルム130を加熱してもよく、熱硬化させてもよい。このように保護膜形成フィルム付きチップ群902を縦置きにして加熱した場合には、横置きにして加熱した場合よりも、ダイシングシート80の、保護膜付きチップ913’を保持している領域における、弛みの発生を抑制できる。
製造方法(2-1)の前記熱硬化工程後は、図8(e)に示すように、保護膜付きチップ群904中の保護膜付きチップ913’をダイシングシート80から引き離してピックアップするピックアップ工程を行うことにより、目的とする保護膜付きチップ913’を取り出すことができる。
製造方法(2-1)の前記ピックアップ工程においては、保護膜付きチップ913’中の保護膜130’の第2面130b’と、ダイシングシート80中の粘着剤層82の第1面82aと、の間で剥離が生じる。
保護膜付きチップ913’は、公知の方法でピックアップできる。
保護膜付きチップ913’を、突き上げニードルピンなどの突き上げ手段を用いてピックアップできる。ここでは、真空コレット等の引き離し手段8を用いて、保護膜付きチップ913’を矢印P方向に引き離す場合を示している。
なお、ここでは引き離し手段8のみ、断面表示を省略している。
<<保護膜付きチップの製造方法(製造方法(2-2))>>
図9は、本実施形態の保護膜付きチップの製造方法のうち、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを用いた場合の製造方法の一例(本明細書においては、「製造方法(2-2)」と称することがある)を模式的に説明するための断面図である。ここでは、図2に示す保護膜形成用複合シート101を用いた場合について、説明する。
前記製造方法(2-2)の前記貼付工程においては、図9(a)に示すように、保護膜形成用複合シート101中の保護膜形成フィルム13、より具体的には、剥離フィルム15を取り除いた保護膜形成フィルム13を、ウエハ9の裏面9bに貼付することにより、保護膜形成フィルム付きウエハ901を作製する。
製造方法(2-2)においては、前記貼付工程以降、上述の、ダイシングシート80を備えている保護膜形成フィルム付きウエハ901に代えて、支持シート10を備えている保護膜形成フィルム付きウエハ901を用いる点、及び、熱硬化工程の前にピックアップ工程を行う点を除けば、製造方法(2-1)の場合と同じ方法で、加工工程及び切断工程を行うことができる。
例えば、製造方法(2-2)において、前記加工工程及び切断工程を行うことにより、図9(b)に示すように、保護膜形成フィルム付きチップ913を作製するとともに、支持シート10上で、複数個のこれら保護膜形成フィルム付きチップ913が整列した状態で保持されて構成された、保護膜形成フィルム付きチップ群905を作製する。
保護膜形成フィルム付きチップ群905は、ダイシングシート80に代えて支持シート10を備えている点以外は、製造方法(2-1)における保護膜形成フィルム付きチップ群903と同じである。
ウエハ9の分割方法は、例えば、製造方法(2-1)の前記加工工程におけるウエハ9の分割方法と、同じであってよい。
製造方法(2-2)において、保護膜形成フィルム13の切断は、公知の方法でよく、例えば、製造方法(2-1)の前記切断工程における保護膜形成フィルム13の切断方法と、同じであってよい。
得られた前記保護膜形成フィルム付きチップ913を用いて、保護膜形成フィルム付きチップ913を支持シート10から引き離してピックアップすることにより、図9(c)に示すように、保護膜形成フィルム付きチップ913を取り出すことができる。このときの工程は、製造方法(2-1)において説明したピックアップ工程と同様であってよい。
製造方法(2-2)の前記ピックアップ工程においては、保護膜形成フィルム付きチップ913中の保護膜形成フィルム130の第2面130bと、支持シート10中の粘着剤層12の第1面12aと、の間で剥離が生じる。
保護膜形成フィルム付きチップ913を、突き上げニードルピンなどの突き上げ手段を用いてピックアップすると、保護膜形成フィルム130の突き上げ手段による突き上げ箇所に、へこみ痕(ニードル痕)等のキズ痕が形成されることがある。
前記製造方法(2-2)のピックアップ工程の後、前記熱硬化工程においては、保護膜形成フィルム付きチップ913における保護膜形成フィルム130を熱硬化させ、保護膜130’を形成することにより、保護膜付きチップ913’を作製する。
図9(d)中、符号130a’は、保護膜130’の第1面を示しており、切断後の保護膜形成フィルム130の第1面130aに対応している。また、符号130b’は、保護膜130’の第2面を示しており、切断後の保護膜形成フィルム130の第2面130bに対応している。
製造方法(2-2)の熱硬化工程は、製造方法(1-1)の熱硬化工程の場合と同じ方法で行うことができる。
従来の保護膜形成フィルムを用いた場合には、図示しないへこみ痕などのキズ痕が保護膜形成フィルム13のウエハ9側とは反対側の表面130bに形成された場合、熱硬化工程を経てもキズ痕が残ってしまい、不良品が作製されてしまう。
これに対して、本実施形態の保護膜形成フィルムを用いた製造方法(2-2)の場合には、仮に、保護膜形成フィルム13の表面に、キズ痕が形成された場合であっても、熱硬化工程を行うことによって、加熱による自己修復性の効果によりキズ痕が小さくなって、保護膜13’の表面のキズ痕を目立たなくすることができる。
前記製造方法(2-2)は、前記ピックアップ工程後かつ前記熱硬化工程前に、保護膜形成フィルム130が熱硬化しない条件で保護膜形成フィルム130を加熱する加熱工程を有することが好ましい。保護膜形成フィルム130が熱硬化しない条件で保護膜形成フィルム130を加熱することにより、保護膜形成フィルム130の表面のキズ痕を小さくすることができ、保護膜130’の表面のキズ痕をより目立たなくすることができる。
製造方法(2-2)の加熱工程は、製造方法(1-1)の加熱工程の場合と同じ方法で行うことができる。
ここまでは、前記製造方法(2-2)として、図2に示す保護膜形成用複合シート101を用いた場合について説明してきたが、本実施形態の保護膜付きワーク加工物の製造方法においては、図3に示す保護膜形成用複合シート102、図4に示す保護膜形成用複合シート103、図5に示す保護膜形成用複合シート104等をはじめとする、他の保護膜形成用複合シートを用いてもよい。
前記他の保護膜形成用複合シートを用いる場合には、前記他の保護膜形成用複合シートと、図2に示す保護膜形成用複合シート101と、の構成の相違に基づいて、本実施形態の保護膜付きワーク加工物の製造方法は、いずれかのタイミングで行う前記他の工程を有していてもよい。
ここまでは、前記製造方法(2-2)として、保護膜形成用複合シートを用いた場合の保護膜付きチップの製造方法について説明したが、保護膜形成用複合シートに代えて、保護膜形成用複合シートを構成していない保護膜形成フィルムを用いても、保護膜付きチップを製造できる。
<<保護膜付きワーク加工物の製造方法の変形例>>
本実施形態の保護膜付きワーク加工物の製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲内において、前記貼付工程と、前記加工工程と、前記切断工程と、前記加熱工程と、前記熱硬化工程と、前記ピックアップ工程と、前記ダイシングシート貼付工程と、のいずれにも該当しない、他の工程を有していてもよい。
前記他の工程は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
前記他の工程を行うタイミングは、前記他の工程の内容に応じて、適宜選択できる。
前記保護膜付きチップの製造方法における前記他の工程の一例としては、前記貼付工程前に、前記ウエハの回路面にバックグラインドテープを貼付するバックグラインドテープ貼付工程と、前記バックグラインドテープ貼付工程後で、前記加工工程前及び前記切断工程前に、前記ウエハの回路面からバックグラインドテープを取り除くバックグラインドテープ除去工程と、が挙げられる。
前記バックグラインドテープは公知のものでよく、前記バックグラインドテープの、ウエハの回路面への貼付と、ウエハの回路面からの除去は、公知の方法で行うことができる。
本明細書においては、単なる「貼付工程」との記載は、「ダイシングシート貼付工程」と、「バックグラインドテープ貼付工程」と、のいずれにも該当しない、上述の、前記保護膜形成フィルム、又は前記保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを、ワークの目的とする箇所(例えば、ウエハの裏面)に貼付する工程を意味する。
前記保護膜付きチップの製造方法における前記他の工程の他の例としては、前記貼付工程後で、前記ピックアップ工程前に、前記保護膜形成フィルム又は保護膜の、前記ウエハ側とは反対側、又は前記チップ側とは反対側の面に、レーザー印字を行う印字工程が挙げられる。
保護膜形成フィルム又は保護膜に対するレーザー印字は、公知の方法で行うことができる。
◇基板装置の製造方法(保護膜付きワーク加工物の使用方法)
上述の製造方法により保護膜付きワーク加工物を得た後は、従来の保護膜付きワーク加工物に代えて、この保護膜付きワーク加工物を用いる点を除けば、従来の基板装置の製造方法と同じ方法で、基板装置を製造できる。
このような基板装置の製造方法としては、例えば、前記保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きワーク加工物上の突状電極を、回路基板上の接続パッドに接触させることにより、前記突状電極と、前記回路基板上の接続パッドと、を電気的に接続するフリップチップ接続工程を有する製造方法が挙げられる。
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
<樹脂の製造原料>
本実施例及び比較例において略記している、樹脂の製造原料の正式名称を、以下に示す。
MA:アクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
2EHA:アクリル酸2-エチルへキシル
2EHMA:メタクリル酸2-エチルへキシル
GMA:メタクリル酸グリシジル
MMA:メタクリル酸メチル
BA:アクリル酸n-ブチル
EA:アクリル酸エチル
<保護膜形成用組成物の製造原料>
保護膜形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
[重合体成分(A)]
(A)-1:2EHA(65質量部)、MMA(25質量部)及びHEA(10質量部)を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量:50万、ガラス転移温度:-38℃)
(A)-2:BA(40質量部)、EA(25質量部)、MMA(30質量部)及びGMA(5質量部)を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量:50万、ガラス転移温度:-9℃)
(A)-3:2EHA(30質量部)、EA(35質量部)、MMA(30質量部)及びGMA(5質量部)を共重合してなるアクリル系重合体(重量平均分子量:50万、ガラス転移温度:-12℃)
(A)-4:2EHA(73質量部)、MA(12質量部)、GMA(3質量部)及びHEA(12質量部)を共重合してなる共重合体(重量平均分子量:55万,ガラス転移温度:-55℃)
(A)-5:2EHA(12質量部)、MA(73質量部)、GMA(3質量部)及びHEA(12質量部)を共重合してなる共重合体(重量平均分子量:55万,ガラス転移温度:-5℃)
(A)-6:2EHMA(85質量部)、MA(7質量部)及びHEA(8質量部)を共重合してなる共重合体(重量平均分子量:65万,ガラス転移温度:-9℃)
(A)-7:BA(60質量部)、MA(10質量部)、GMA(17質量部)及びHEA(13質量部)を共重合してなる共重合体(重量平均分子量:50万,ガラス転移温度:-31℃)
(A)-8:MA(87質量部)及びHEA(13質量部)を共重合してなる共重合体(重量平均分子量:45万,ガラス転移温度:6℃)
[エポキシ樹脂(B1)]
(B1)-1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER828」、エポキシ当量:184~194g/eq)
(B1)-2:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「エピクロンHP-7200」、エポキシ当量:254~264g/eq)
(B1)-3:ビスフェノール型エポキシ樹脂(三菱化学社製「jER1055」、エポキシ当量:800~900g/eq)
(B1)-4:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(日本化薬社製「XD-1000」、エポキシ当量:248g/eq)
(B1)-5:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「エピクロンHP-7200HH」、エポキシ当量:274~286g/eq)
[熱硬化剤(B2)]
(B2)-1:ジシアンジアミド(熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤、三菱化学社製「DICY7」)
[硬化促進剤(C)]
(C)-1:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ」)
[充填材(D)]
(D)-1:シリカフィラー(アドマテックス社製「SC2050MA」、エポキシ基で表面修飾された球状シリカフィラー、平均粒子径:0.5μm)
(D)-2:シリカフィラー(株式会社龍森製「SV-10」(平均粒子径:10μmの球状シリカフィラー)を粉砕したもの、粉砕後の平均粒子径:2.0μm)
(D)-3:シリカフィラー(アドマテックス社製「SC105G-MMQ」、ビニル基で表面修飾された球状シリカフィラー、平均粒子径:0.3μm)
(E)-1:エポキシ基、メチル基及びメトキシ基を有するオリゴマー型シランカップリング剤(信越化学工業社製「X-41-1056」、エポキシ当量280g/eq)
[着色剤(I)]
(I)-1:有機系黒色顔料(大日精化工業社製「6377ブラック」)
(I)-2:カーボンブラック(三菱ケミカル社製「MA-600」)
[実施例1]
<<保護膜形成フィルムの製造>>
<保護膜形成用組成物(III)-1の製造>
重合体成分(A)-1(30.1質量部)、エポキシ樹脂(B1)-1(12.0質量部)、エポキシ樹脂(B1)-2(6.0質量部)、熱硬化剤(B2)-1(0.4質量部)、硬化促進剤(C)-1(0.4質量部)、充填材(D)-1(48.1質量部)、カップリング剤(E)-1(0.4質量部)及び着色剤(I)-1(2.5質量部)を、メチルエチルケトンに溶解又は分散させて、23℃で撹拌することで、溶媒以外のすべての成分の合計濃度が60質量%である熱硬化性の保護膜形成用組成物(III)-1を得た。ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の配合量はすべて、溶媒を含まない目的物の配合量である。
<保護膜形成フィルムの製造>
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理された剥離フィルム(第2剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET502150」、厚さ50μm)を用い、その前記剥離処理面に、上記で得られた保護膜形成用組成物(III)-1を塗工し、100℃で2分乾燥させることにより、厚さ40μmの熱硬化性の保護膜形成フィルムを製造した。
さらに、得られた保護膜形成フィルムの、第2剥離フィルムを備えていない側の露出面に、貼付速度2m/min、貼付温度60℃、貼付圧力0.5MPaの条件で、剥離フィルム(第1剥離フィルム、リンテック社製「SP-PET381031」、厚さ38μm)の剥離処理面を貼り合わせることにより、保護膜形成フィルムと、前記保護膜形成フィルムの一方の面に設けられた第1剥離フィルムと、前記保護膜形成フィルムの他方の面に設けられた第2剥離フィルムと、を備えて構成された剥離フィルム付き保護膜形成フィルムを製造した。
<<保護膜形成フィルムの評価>>
<保護膜形成フィルムの貯蔵弾性率E’(70)及びE’(90)の測定>
上記で得られた5枚の剥離フィルム付き保護膜形成フィルムを用いて、これらの第1剥離フィルム又は第2剥離フィルムを取り除きながら、保護膜形成フィルムの露出面同士を順次貼り合わせていくことにより、第2剥離フィルムと、5枚の保護膜形成フィルム(合計の厚さ200μm)と、第2剥離フィルムと、がこの順に積層されて構成された積層物を作製した。そして、この積層物から、長さ方向が保護膜形成フィルムのMD方向になるように、幅が4mmで長さが30mmの切片を切り出した。
次いで、この切片から最表面の2枚の第2剥離フィルムを取り除いて、得られたものを試験片とした。
次いで、動的粘弾性自動測定装置(エー・アンド・ディー社製「レオバイブロンDDV-01FP」)を用いて、引張法(引張モード)により、チャック間距離20mm、周波数11Hz、昇温速度3℃/min、等速昇温の測定条件で、-50℃から150℃までの温度域において、前記試験片の貯蔵弾性率E’を測定した。そのうち、70℃における貯蔵弾性率E’(70)及び90℃における貯蔵弾性率E’(90)を表1に示した。また、このとき、70℃におけるtanδ(70)及び90℃におけるtanδ(90)を表1に示した。
<保護膜の貯蔵弾性率E’(23)の測定>
上記と同様に、第2剥離フィルムと、5枚の保護膜形成フィルム(合計の厚さ200μm)と、第2剥離フィルムと、がこの順に積層されて構成された積層物を作製し、この積層物から、長さ方向が保護膜形成フィルムのMD方向になるように、幅が5mmで長さが30mmの切片を切り出した。
この切片を、90℃、2hの加熱後、さらに、130℃、2hの2段階加熱し、次いで、この切片から最表面の2枚の第2剥離フィルムを取り除いて、得られたものを試験片とした。
次いで、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製「DMAQ800」)を用いて、引張法(引張モード)により、チャック間距離20mm、周波数11Hz、昇温速度3℃/min、等速昇温の測定条件で、-60℃から300℃までの温度域において、前記試験片の貯蔵弾性率E’を測定した。そのうち、23℃における貯蔵弾性率E’(23)を表1に示した。
<自己修復性(A)の評価>
テープラミネーター(リンテック株式会社製、RAD-3600F/12)を用いて、上記で得られた剥離フィルム付き保護膜形成フィルムから第1剥離フィルムを取り除き、第2剥離フィルムの側から厚さ40μm、縦0.25mm、横0.25mmのゴミ(極小のシリコン異物)を挟んでラミネートロールを押圧することにより、露出している保護膜形成フィルムを、シリコンウエハ(直径8インチ、厚さ350μm、♯2000研削)の研削面に貼付することで、シリコンウエハ、保護膜形成フィルム及び第2剥離フィルムが、この順に積層された積層物を作製した。第2剥離フィルムを剥離して、保護膜形成フィルムの表面をレーザー顕微鏡(キーエンス社、VK-9700)にて観察したところ、ゴミの噛みこみにより、保護膜形成フィルムの表面に、深さ約2.03μm(すなわち、加熱前のキズ痕の深さ)のキズ痕が観察された。
表面にキズ痕が形成されている保護膜形成フィルムを、90℃、2h加熱した。同様に、加熱後の保護膜形成フィルムの表面をレーザー顕微鏡にて観察したところ、保護膜形成フィルムの表面に、深さ約0.26μm(すなわち、加熱後のキズ痕の深さ)のキズ痕が観察された。
以下の式を用いて、90℃、2h加熱による自己修復率(A)[%]を、小数点以下1桁目の値を四捨五入して整数で算出した。
自己修復率(A)[%]={(加熱前のキズ痕の深さ-加熱後の傷の深さ)/加熱前のキズ痕の深さ}×100
また、自己修復率(A)[%]、及び、次の基準での評価結果を表1に示した。
A:100~80%
B:79~60%
C:59~35%
D:34~15%
E:14~0%
<自己修復性(C)の評価>
上記と同じ、表面に、加熱前のキズ痕の深さ2.07μmのキズ痕が形成されている保護膜形成フィルムを、90℃、2h加熱し、その後、130℃、2h加熱して保護膜とした。同様に、保護膜の表面をレーザー顕微鏡にて観察したところ、保護膜の表面に、深さ約0.18μm(すなわち、90℃加熱した後、さらに加熱硬化後のキズ痕の深さ)のキズ痕が観察された。
以下の式を用いて、130℃、2h加熱による自己修復率(C)[%]を、小数点以下1桁目の値を四捨五入して整数で算出した。
自己修復率(C)[%]={(加熱前のキズ痕の深さ-90℃加熱した後、さらに加熱硬化後のキズ痕の深さ)/加熱前のキズ痕の深さ}×100
自己修復率(C)[%]、及び、次の基準での評価結果を表1に示した。
A:100~80%
B:79~60%
C:59~35%
D:34~15%
E:14~0%
<自己修復性(B)の評価>
上記と同じ、表面に、加熱前のキズ痕の深さ2.01μmのキズ痕が形成されている保護膜形成フィルムを、130℃、2h加熱して保護膜とした。同様に、保護膜の表面をレーザー顕微鏡にて観察したところ、保護膜の表面に、深さ約0.80μm(すなわち、加熱硬化後のキズ痕の深さ)のキズ痕が観察された。
以下の式を用いて、130℃、2h加熱による自己修復率(B)[%]を、小数点以下1桁目の値を四捨五入して整数で算出した。
自己修復率(B)[%]={(加熱前のキズ痕の深さ-加熱硬化後の傷の深さ)/加熱前のキズ痕の深さ}×100
自己修復率(B)[%]、及び、次の基準での評価結果を表1に示した。
(評価基準)
A:100~80%
B:79~60%
C:59~35%
D:34~15%
E:14~0%
<<保護膜形成フィルムの製造、及び保護膜形成フィルムの評価>>
[実施例2~7、比較例1~2]
保護膜形成フィルムの含有成分と含有量が、表1又は表2に示すとおりとなるように、配合成分の種類を変更した点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、保護膜形成フィルム及び保護膜形成用複合シートを製造し、保護膜形成フィルムを評価した。結果を表1又は表2に示す。
Figure 2023031526000004
Figure 2023031526000005
上記結果から明らかなように、比較例1~2の保護膜形成フィルムは、90℃、2hの加熱で、自己修復性の効果が観測されなかった。また、比較例1~2の保護膜形成フィルムは、通常の加熱硬化条件の130℃、2hの加熱により、自己修復性の効果が観測されなかった。90℃、2hの加熱、及び、130℃、2hの加熱によっても、自己修復性の効果が観測されなかった。
これらに対して、実施例1~7の保護膜形成フィルムは、90℃、2hの加熱により、自己修復性の効果が観測された。また、実施例1~7の保護膜形成フィルムは、通常の加熱硬化条件の130℃、2hの加熱により、自己修復性の効果が観測された。さらに、通常の加熱硬化条件の130℃、2hの加熱よりも、90℃、2hの加熱、及び、130℃、2hの加熱により、優れた自己修復性の効果が観測された。したがって、本発明の保護膜形成フィルムは、本発明の保護膜形成フィルム、又は、本発明の保護膜形成フィルムを備える保護膜形成用複合シートを用いて、保護膜付きワーク又は保護膜付きワーク加工物を製造する工程中に、保護膜形成フィルムの表面にキズ痕が形成されたときであっても、保護膜形成フィルムを熱硬化させた後の保護膜の表面のキズ痕を目立たなくすることができる。
本発明は、半導体装置をはじめとする各種基板装置の製造に利用可能である。
10,20・・・支持シート、10a,20a・・・支持シートの一方の面(第1面)、
11・・・基材、
12・・・粘着剤層、
13,23・・・保護膜形成フィルム、
130・・・切断後の保護膜形成フィルム、
13’,130’・・・保護膜、
15,151,152・・・剥離フィルム、
16・・・ラミネートロール、
17・・・異物、
18・・・押圧痕、19・・・接触痕
101,102,103,104・・・保護膜形成用複合シート、
9・・・ウエハ、9b・・・ウエハの裏面、
90・・・チップ、90b・・・チップの裏面、
901・・・保護膜形成フィルム付きウエハ、
902・・・保護膜付きウエハ、
903・・・保護膜形成フィルム付きチップ群、
904・・・保護膜付きチップ群、
905・・・保護膜形成フィルム付きチップ群、
913・・・保護膜形成フィルム付きチップ
913’・・・保護膜付きチップ

Claims (8)

  1. 熱硬化性の保護膜形成フィルムであって、
    前記保護膜形成フィルムの幅4mmの試験片を、20mmの間隔を空けて2箇所で保持し、引張モードにより、周波数11Hz、昇温速度3℃/min、等速昇温の条件で、-50℃から150℃まで前記試験片を昇温しながら、前記試験片の貯蔵弾性率E’を測定したとき、90℃における前記試験片の貯蔵弾性率E’(90)が5MPa以下である、保護膜形成フィルム。
  2. 前記保護膜形成フィルムの幅4mmの試験片を、20mmの間隔を空けて2箇所で保持し、引張モードにより、周波数11Hz、昇温速度3℃/min、等速昇温の条件で、-50℃から150℃まで前記試験片を昇温しながら、前記試験片のtanδを測定したとき、90℃における前記試験片のtanδ(90)が0.34以上である、請求項1に記載の保護膜形成フィルム。
  3. 前記保護膜形成フィルムを加熱硬化させた熱硬化物の幅5mmの試験片を、20mmの間隔を空けて2箇所で保持し、引張モードにより、周波数11Hz、昇温速度3℃/min、等速昇温の条件で、-60℃から300℃まで前記試験片を昇温しながら、前記試験片の貯蔵弾性率E’を測定したとき、23℃における前記試験片の貯蔵弾性率E’(23)が100MPa以上である、請求項1又は2に記載の保護膜形成フィルム。
  4. アクリル樹脂を含む重合体成分(A)を含有し、
    前記アクリル樹脂のガラス転移温度が10℃未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルム。
  5. 充填材(D)を含有し、
    前記保護膜形成フィルムの総質量に対する、前記充填材(D)の含有量の割合が、50質量%未満である、請求項1~4のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルム。
  6. 支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた保護膜形成フィルムと、を備え、
    前記保護膜形成フィルムが、請求項1~5のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルムである、保護膜形成用複合シート。
  7. 保護膜付きワークの製造方法であって、
    前記保護膜付きワークは、ワークと、前記ワークのいずれかの箇所に設けられた保護膜と、を備えており、
    前記製造方法は、請求項1~5のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルム、又は請求項6に記載の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワーク及び保護膜形成フィルムを備える保護膜形成フィルム付きワークを作製する貼付工程と、
    前記貼付工程後に、前記保護膜形成フィルムを熱硬化させ、前記保護膜を形成することにより、前記保護膜付きワークを作製する熱硬化工程と、を有する、保護膜付きワークの製造方法。
  8. 保護膜付きワーク加工物の製造方法であって、
    前記保護膜付きワーク加工物は、ワークを加工することにより得られたワーク加工物と、前記ワーク加工物のいずれかの箇所に設けられた保護膜と、を備えており、
    前記製造方法は、請求項1~5のいずれか一項に記載の保護膜形成フィルム、又は請求項6に記載の保護膜形成用複合シート中の保護膜形成フィルムを、前記ワークの目的とする箇所に貼付することにより、前記ワーク及び保護膜形成フィルムを備える保護膜形成フィルム付きワークを作製する貼付工程と、
    前記貼付工程後に、前記ワークを加工することにより、前記ワーク加工物を作製する加工工程と、
    前記貼付工程後に、前記保護膜形成フィルムを熱硬化させることにより、前記保護膜を形成する熱硬化工程と、を有する、保護膜付きワーク加工物の製造方法。
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