JP7108496B2 - 内燃機関始動制御方法及び内燃機関駆動制御装置 - Google Patents
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Description
例えば、クランクセンサ信号の取得に用いられるクランクセンサが故障した場合に、カムセンサによって検出されたカムセンサ信号を基にしてクランクセンサ信号の1歯分に対応するインクリメント信号を擬似的に生成することで非常運転を可能とした技術等が縷々提案、実用化されている(例えば、特許文献1等参照)。
クランクセンサの故障時における内燃機関の始動を支援する内燃機関始動制御方法であって、
カムセンサによって検出されたカムセンサ信号の周期であるカムセンサ信号周期を計測すると共に、前記内燃機関の気筒に配設されたピストンの上死点の検出信号であるTDC信号の周期であるTDC信号周期を計測し、
前記クランクセンサによって検出されるクランクセンサ信号の疑似信号としてのインクリメント信号の周期を、前記カムセンサ信号周期と前記TDC信号周期を用いて所定の演算式により算出し、
前記インクリメント信号の周期に基づいて算出した前記内燃機関の回転数を、前記内燃機関の始動制御に供することで前記内燃機関の始動確保を図ったものである。
また、上記本発明の目的を達成するため、本発明に係る内燃機関駆動制御装置は、
内燃機関の動作制御がクランクセンサ信号及びカムセンサ信号に基づいて実行可能に構成されてなる電子制御ユニットを具備してなる内燃機関駆動制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
カムセンサによって検出されたカムセンサ信号の周期であるカムセンサ信号周期を計測すると共に、前記内燃機関の気筒に配設されたピストンの上死点の検出信号であるTDC信号の周期であるTDC信号周期を計測し、
前記クランクセンサによって検出されるクランクセンサ信号の疑似信号としてのインクリメント信号の周期を、前記カムセンサ信号周期と前記TDC信号周期を用いて所定の演算式により算出し、
前記インクリメント信号の周期に基づいて算出した前記内燃機関の回転数を用いて前記内燃機関の始動制御を実行可能に構成されてなるものである。
なお、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
最初に、本発明の実施の形態における内燃機関駆動制御装置の構成例について、図1を参照しつつ説明する。
本発明の実施の形態における内燃機関駆動制御装置は、自動車両に搭載された電子制御ユニット100と、カムセンサ1と、クランクセンサ2とを主たる構成要素として構成されてなるものである。
かかる電子制御ユニット100は、例えば、公知・周知の構成を有してなるマイクロコンピュータ(図示せず)を中心に、RAMやROM等の揮発性の記憶素子、また、不揮発性の記憶素子(図示せず)を備えると共に、入出力インターフェイス回路(図示せず)を主たる構成要素として構成されたものとなっている。
そして、クランクホイール4が2回転する間に、4つの気筒(図示せず)において、それぞれ吸気行程、圧縮行程、膨張行程、及び、排気行程の1機関サイクルが実行されるようになっている。
クランクセンサ2は、クランク歯4aが近傍を通過する適宜な位置に設けられており、クランク歯4aが通過することに対応してパルス信号であるクランク信号が出力されるようになっている。
すなわち、イグニッションキー6をキーホールに挿入し、エンジンスタート位置まで回すことで、リレー7を介してスタータ5にバッテリ8からの電源電圧が供給される。これによって、スタータ5が回転開始することでエンジン始動が行われる。
最初に、本発明の実施の形態における内燃機関始動制御処理の全体の概略手順について、図2を参照しつつ説明する。
電子制御ユニット100による処理が開始されると、クランキングが開始されてエンジン始動が行われ(図2のステップS100参照)、次いで、クランクセンサ信号が正常であるか否かが判定される(図2のステップS200参照)。
なお、クランクセンサ信号が正常か否かは、例えば、一定時間の間に取得されるクランクセンサ信号の積算値が所定の閾値を超えているか否かによって判定する方法がある。
判定方法自体は、従来から用いられるもので良く、特定の手法に限定される必要は無い。
次いで、エンジン始動が正常になされたか否かが判定され(図2のステップS400参照)、正常に始動されたと判定された場合(YESの場合)には、一連の処理は終了されて、一旦、図示されないメインルーチンへ戻ることとなる。
一方、ステップS400において、エンジン始動が正常になされていないと判定された場合(NOの場合)、先のステップ200へ戻り、一連の処理が繰り返されることとなる。
低温始動に該当するか否かの判断は、外気温度やエンジン冷却水温、バッテリ8の容量、エンジンの仕様等によって異なり、特定の判断条件に限定されるものではない。
したがって、低温始動に該当するか否かの具体的な判断条件は、上述の判断要因を考慮して、試験結果やシミュレーション結果に基づいて定めるのが好適である。なお、低温始動の判断要素の一つである外気温度の目安としては、大凡0度前後である。
すなわち、この通常エンジン始動バックアップ処理は、クランクセンサ信号が故障した状態にあって、かつ、低温始動ではない場合に、エンジンの始動を可能とする制御である。
この低温エンジン始動バックアップ処理は、特に、クランクセンサ信号が故障した状態にあって、かつ、低温始動の場合におけるエンジンの始動を従来に比して確実に確保可能とした制御である(詳細は後述)。
ステップS600又はステップS700の処理実行後は、先に説明したステップS400の処理へ進むこととなる。
最初に、本発明の実施の形態における低温エンジン始動バックアップ処理について概括的に説明する。
電子制御ユニット100による処理が開始されると、最初に入力信号判別が行われる(図3のステップS610参照)。
すなわち、カムセンサ信号又はTDC信号のいずれが入力されたか否かが判定される。
本発明の実施の形態において、カムホイール3は、先に述べたように4つのカム歯3a~3dと一つの基準用カム歯3eを有している。
カムセンサ1は、4つのカム歯3a~3dと基準用カム歯3eが、カムセンサ1の近傍を通過すると、例えば、図5(A)に示されたように、その通過に応じて一つのパルス信号がクランクセンサ信号として出力されるよう構成されている。
このような入力信号の周期計測は、従前から良く知られている方法を用いることができる。具体的には、ソフトウェアにより計時動作を行うカウンタを用いるのが好適である。
なお、このように、最新のカムセンサ信号周期に基づいて、算出されるインクリメント信号を、説明の便宜上、”センサインクリメント信号”と称する。
まず、本発明の実施の形態においては、先に述べたようにクランクホイール4の2回転(720度)に対して、カムホイール3は1回転(360度)する構成となっている。
本発明の実施の形態におけるカムホイール3のカム歯3a~3dは90度間隔で設けられているため、ステップS620において計測されるカムセンサ信号の1周期の時間は、カムホイール3の90度回転の時間に対応する。
また、上述の式中、Tbat(n-1)は、図5(A)及び図5(B)に示されたように、カムセンサ信号周期Tcas(n)が計測された時点より以前において計測された直近のTDC信号の1周期の値である。
また、Nsimは、先に述べたようにクランクホイール4の180度間のクランク歯数である。
インクリメント信号は、カムセンサ信号の新たな1周期の計測値が得られる度毎に更新されるのが本来である。
しかしながら、低温始動が要因でカムセンサ信号の新たな周期計測ができなかった場合、従来、インクリメント信号は、直近に計測されたカムセンサ信号の周期に基づいて求められたものが維持されるようになっていた。
TDC信号は、先に述べたように、図示されない気筒に配設されたピストンの上死点の検出信号で、バッテリ電圧の変動に基づいて検出されるものとなっている。
ここで、このバッテリ電圧の変動に基づくTDC信号の検出方法について、図4に示されたサブルーチンフローチャート及び図6に示されたバッテリ電圧の変化例を模式的に示した模式図を参照しつつ説明する。
以下、具体的に説明する。
まず、前提として、電子制御ユニット100により、バッテリ電圧は所定時間間隔で計測されて、その計測電圧は逐次、電子制御ユニット100内の適宜な記憶領域に一次的に記憶されるようになっているものとする。
ステップS680において、バッテリ電Vbatt(t-1)は最新の計測電圧であり、バッテリ電圧Vbatt(t-2)は、最新の計測電圧より以前の直近の計測電圧である。
このステップS680は、最新の計測電圧Vbatt(t-1)が、直近の計測電圧Vbatt(t-2)よりも小さいと判定(YESの場合)されるまで繰り返される。
ステップS682においては、新たな計測電圧Vbatt(t)が読み込まれ、先の計測電圧Vbatt(t-1)が直近の計測電圧として計測電圧Vbatt(t)と大小比較が行われる。
すなわち、新たな計測電圧Vbatt(t)が直近の計測電圧Vbatt(t-1)より大{Vbatt(t)>Vbatt(t-1)}か否かが判定される。
図6には、この計測例におけるバッテリ電圧の変化例が模式図として示されており、図中における各バッテリ電圧の表記は、図4におけるバッテリ電圧の表記と同一である。
ステップS640においては、上述のように生成されたTDC信号の周期計測が行われる。
この周期計測は、先にステップS620で説明したカムセンサ信号の周期計測と基本的に同一であるので、ここでの再度の詳細な説明は省略する。
ここで、TDC信号の周期に基づいて算出されるインクリメント信号を、先のセンサインクリメント信号と区別するため、説明の便宜上、以後、”電圧インクリメント信号”と称する。
さらに、c及びdは、重み付け係数であって、c+d=1となるように定められたものである。
なお、重み付け係数c,dを具体的に如何なる値に設定するかは、具体的な車両の仕様等を考慮して、試験結果やシミュレーション結果に基づいて選定するのが好適である。
次いで、更新されたインクリメント信号に基づいてエンジン回転数が算出されて新たなエンジン回転数の取得が行われる(図3のステップS670参照)。
したがって、クランクセンサ2が故障した場合において低温始動の際にも、従来と異なり、信頼性、安定性の高いエンジン始動の確保による始動制御の支援が可能となる。
また、2つの図において、実線はエンジン回転数の変化を示す特性線である。
図7において、実線で表されたエンジン回転数の変化を示す特性線上の×印が付された箇所は、センサインクリメント信号が取得された時点、すなわち、先の第1の式に基づいてインクリメント信号が更新された時点を表している。また、同特性線上の丸印が付された箇所は、電圧インクリメント信号が取得された時点、すなわち、先の第2の式に基づいてインクリメント信号が更新された時点を表している。
これに対して、従来の場合、複数回インクリメント信号の更新が繰り返された後、エンジン回転数は上下に変動し、エンジン回転数の円滑な上昇を確保し難いことが理解できる。
2-クランクセンサ
100…電子制御ユニット
Claims (8)
- クランクセンサの故障時における内燃機関の始動を支援する内燃機関始動制御方法であって、
カムセンサによって検出されたカムセンサ信号の周期であるカムセンサ信号周期を計測すると共に、前記内燃機関の気筒に配設されたピストンの上死点の検出信号であるTDC信号の周期であるTDC信号周期を計測し、
前記クランクセンサによって検出されるクランクセンサ信号の疑似信号としてのインクリメント信号の周期を、前記カムセンサ信号周期と前記TDC信号周期を用いて所定の演算式により算出し、
前記インクリメント信号の周期に基づいて算出した前記内燃機関の回転数を、前記内燃機関の始動制御に供することで前記内燃機関の始動確保を図ったことを特徴とする内燃機関始動制御方法。 - 前記所定の演算式は、
前記カムセンサ信号周期の最新の値Tcas(n)が計測された際に用いられる第1の式と、前記TDC信号周期の最新の値Tbat(n)が計測された際に用いられる第2の式とからなり、
前記第1の式は、算出されるインクリメント信号の周期をScas(n)とすると、Scas(n)={a×Tcas(n)+b×Tbat(n-1)}/Nsimと定義され、前記第1の式中、前記Tbat(n-1)は、前記Tcas(n)の計測直前に計測された直近のTDC信号周期であり、前記a及び前記bは、a+b=1の関係を有する重み付け係数であって、前記Nsimは、前記カムセンサ信号の1周期の期間に前記クランクセンサによって検出されるクランク信号数であり、
前記第2の式は、算出されるインクリメント信号の周期をSbat(n)とすると、Sbat(n)={c×Tcas(n)+d×Tbat(n)}/Nsimと定義され、前記第2の式中、前記Tcas(n)は、前記Tbat(n)の計測直前に計測された直近のカムセンサ信号周期であり、前記c及び前記dは、c+d=1の関係を有する重み付け係数であって、前記Nsimは、前記カムセンサ信号の1周期の期間に前記クランクセンサによって検出されるクランク信号数であることを特徴とする請求項1記載の内燃機関始動制御方法。 - 前記重み付け係数a及びbはa>bであり、前記重み付け係数c及びdはd>cであることを特徴とする請求項2記載の内燃機関始動制御方法。
- 前記TDC信号は、バッテリ電圧の変動に基づいて検出されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれか記載の内燃機関始動制御方法。
- 内燃機関の動作制御がクランクセンサ信号及びカムセンサ信号に基づいて実行可能に構成されてなる電子制御ユニットを具備してなる内燃機関駆動制御装置であって、
前記電子制御ユニットは、
カムセンサによって検出されたカムセンサ信号の周期であるカムセンサ信号周期を計測すると共に、前記内燃機関の気筒に配設されたピストンの上死点の検出信号であるTDC信号の周期であるTDC信号周期を計測し、
前記クランクセンサによって検出されるクランクセンサ信号の疑似信号としてのインクリメント信号の周期を、前記カムセンサ信号周期と前記TDC信号周期を用いて所定の演算式により算出し、
前記インクリメント信号の周期に基づいて算出した前記内燃機関の回転数を用いて前記内燃機関の始動制御を実行可能に構成されてなることを特徴とする内燃機関駆動制御装置。 - 前記電子制御ユニットは、
記所定の演算式として、前記カムセンサ信号周期の最新の値Tcas(n)が計測された際に第1の式を用い、前記TDC信号周期の最新の値Tbat(n)が計測された際に第2の式を用い、それぞれインクリメント信号の周期を算出し、
前記第1の式は、算出されるインクリメント信号の周期をScas(n)とすると、Scas(n)={a×Tcas(n)+b×Tbat(n-1)}/Nsimと定義され、前記第1の式中、前記Tbat(n-1)は、前記Tcas(n)の計測直前に計測された直近のTDC信号周期であり、前記a及び前記bは、a+b=1の関係を有する重み付け係数であって、前記Nsimは、前記カムセンサ信号の1周期の期間に前記クランクセンサによって検出されるクランク信号数であり、
前記第2の式は、算出されるインクリメント信号の周期をSbat(n)とすると、Sbat(n)={c×Tcas(n)+d×Tbat(n)}/Nsimと定義され、前記第2の式中、前記Tcas(n)は、前記Tbat(n)の計測直前に計測された直近のカムセンサ信号信号周期であり、前記c及び前記dは、c+d=1の関係を有する重み付け係数であって、前記Nsimは、前記カムセンサ信号の1周期の期間に前記クランクセンサによって検出されるクランク信号数であることを特徴とする請求項5記載の内燃機関駆動制御装置。 - 前記重み付け係数a及びbはa>bであり、前記重み付け係数c及びdはd>cであることを特徴とする請求項6記載の内燃機関駆動制御装置。
- 前記電子制御ユニットは、バッテリ電圧の変動に基づいて前記TDC信号を検出可能に構成されてなることを特徴とする請求項5乃至請求項7いずれか記載の内燃機関始動制御方法。
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