以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態は、本質的に好ましい例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
《発明の実施形態1》
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係る内周面加工装置1を示している。内周面加工装置1は、円柱状のシリンダボアBが形成されたワーク(工作物)Wの該シリンダボアBを囲むシリンダ部Cの内周面を加工するものである。なお、本実施形態1では、内周面加工装置1は、所謂NC工作機械であり、一列に並ぶ4つのシリンダボアBが形成されたエンジンブロックを上記ワークWとし、数値制御によって自動的にシリンダ部Cの内周面C0の研削加工とホーニング加工とを行うように構成されている。
ここで、シリンダ部Cは、シリンダブロックからなるワークWにおいて4つのシリンダボアBを囲む円筒状の周壁部分を指す。
なお、以下の説明において、図1に示すように、内周面加工装置1の幅方向(紙面右手前から左奥に向かう方向)をX軸方向、内周面加工装置1の奥行方向(紙面左手前から右奥に向かう方向)をY軸方向、内周面加工装置1の高さ方向(紙面上下方向)をZ軸方向と呼ぶ。また、X軸方向に沿って図1の紙面左側を「左側」、紙面右側を「右側」と呼ぶ。さらに、Y軸方向に沿って図1の紙面手前側を「前側」、紙面奥側を「後側」と呼ぶ。
-構成-
図1に示すように、内周面加工装置1は、ベッド2とコラム3とホーニングコラム4とを備えている。ベッド2は、X軸方向に延びる直方体形状の部材2aとY軸方向に延びる直方体形状の部材2bとによって略T字形状に構成され、水平な設置面に載置されている。コラム3は、Z軸方向に延びる直方体形状の部材によって構成され、ベッド2のY軸方向に延びる部材2b上に立設されている。ホーニングコラム4は、コラム3よりも幅狭で高さが低いZ軸方向に延びる直方体形状の部材によって構成され、コラム3によって荷重が支持されるように、コラム3の上部右側に固定されている。ベッド2とコラム3とホーニングコラム4とで内周面加工装置1の支持構造体が構成されている。
また、内周面加工装置1は、研削加工部10と、ホーニング加工部20と、ワーク搬送部(移動機構)30と、制御部40とを備えている。研削加工部10と、ホーニング加工部20と、ワーク搬送部30と、制御部40とは、内周面加工装置1の支持構造体に設けられている。具体的には、研削加工部10はコラム3に設置され、ホーニング加工部20はホーニングコラム4に設置され、ワーク搬送部30及び制御部40はベッド2に設置されている。
以下、各部の構成について詳述する。
〈研削加工部〉
図1に示すように、研削加工部10は、研削砥石11と、研削主軸12と、研削ホルダ13と、研削本体部14と、研削テーブル15と、Z軸ガイド16と、自転モータ17と、Z軸モータ18とを有している。
図2に示すように、研削砥石11は、外径がワークWのシリンダ部Cの内径よりも小さい円筒形状に形成されている。
研削主軸12は、Z軸方向に延びる断面が円柱形状の棒状部材によって構成されている。研削主軸12の先端(本実施形態では下端)には、中心線Z1が一致するように研削砥石11が取り付けられている(図2参照)。一方、研削主軸12の基端(本実施形態では上端)は、研削ホルダ13に回転自在に保持されている。
研削ホルダ13は、円筒状に形成され、研削本体部14に保持されている。また、研削ホルダ13は、研削主軸12が自転可能なように、研削主軸12の基端を回転自在に保持している。
研削本体部14は、直方体形状に形成され、前方に研削ホルダ13を保持する一方、後面が研削テーブル15に固定されている。
研削テーブル15は、直方体形状の箱状に形成され、前面に上述の研削本体部14が固定され、後面はZ軸ガイド16に噛み合う形状に形成されている。研削テーブル15は、Z軸ガイド16によってZ軸方向に移動可能に構成されている。研削テーブル15は、Z軸方向に往復移動することにより、研削本体部14、研削ホルダ13及び研削主軸12を介して研削砥石11をZ軸方向に上下動させる。
Z軸ガイド16は、コラム3の前面に設けられたZ軸方向に長く延びる長尺部材である。本実施形態では、Z軸ガイド16は、Z軸方向に長い矩形の板状体によって構成されている。Z軸ガイド16は、コラム3の上端部から下端部に亘って形成されている。なお、Z軸ガイド16は、研削テーブル15のZ軸方向への移動を案内するものであれば、いかなる形状であってもよい。Z軸ガイド16は、2本のレールによって形成されていてもよい。
自転モータ17は、研削ホルダ13の上部に設けられている。自転モータ17の駆動軸は、研削ホルダ13の内部において、該研削ホルダ13に保持された研削主軸12が自転するように研削主軸12に連結されている。自転モータ17が研削主軸12を自転させると、研削主軸12に取り付けられた研削砥石11が中心線Z1を中心に自転する。つまり、研削主軸12の中心線Z1は、研削砥石11の自転軸となる。
Z軸モータ18は、コラム3に設けられている。Z軸モータ18は、研削テーブル15がZ軸ガイド16に沿ってZ軸方向に往復移動するように研削テーブル15に連結されている。Z軸モータ18が研削テーブル15を上下動させると、研削本体部14、研削ホルダ13及び研削主軸12を介して研削砥石11が上下動することとなる。
〈ホーニング加工部〉
図1,図3及び図4に示すように、ホーニング加工部20は、複数のホーニング砥石21が取り付けられたホーニング主軸22と、拡張ロッド23と、フローティング機構24と、ホーニング本体部25と、Z軸ガイド26と、拡張モータ27と、回転モータ28と、Z軸モータ29とを有している。
ホーニング主軸22は、Z軸方向に延びる円筒状に形成されている。ホーニング主軸22は、主軸本体22aと中間軸部22bと砥石ホルダ22cとを有している。
主軸本体22aは、ホーニング本体部25内に設けられている。主軸本体22aは、基端(本実施形態では上端)がホーニング本体部25に回転自在に接続され、先端(本実施形態では下端)は、フローティング機構24に接続されている。
中間軸部22bは、円筒部材によって構成され、基端(本実施形態では上端)がフローティング機構24に接続され、先端(本実施形態では下端)には、砥石ホルダ22cが接続されている。
砥石ホルダ22cは、中間軸部22bよりも大径な円筒部材によって構成され、先端側にホーニング砥石21が装着されるスリット22dが複数(本実施形態では6つ)形成されている。砥石ホルダ22cの中心線Z2は、中間軸部22bの中心線Z2と一致するように形成されている。複数のスリット22dは、砥石ホルダ22cにおいてZ軸方向の同じ位置に形成され、また、砥石ホルダ22cの周方向に等間隔に並ぶように形成されている。複数のスリット22dには、ホーニング砥石21がそれぞれ1つずつ砥石ホルダ22cの径方向にスライド自在に装着されている。
各スリット22dに装着されるホーニング砥石21は、砥石片21aと、該砥石片21aを保持する板状の支持プレート21bとで構成されている。砥石片21aは、Z軸方向に長い矩形板状に形成されている。支持プレート21bは、スリット22dの幅より僅かに薄い厚さのZ軸方向に長い板状部材に構成され、外側面に砥石片21aが固定されている。支持プレート21bは、砥石ホルダ22cに装着された状態において、内側面のZ軸方向の2箇所が、砥石ホルダ22cの先端側(下側)に向かうほど径方向において内側に向かうように傾斜するテーパ面21cに構成されている。2つのテーパ面21cは、後述する拡張ロッド23のコーン部23bの外周面(コーン面)と傾斜角度が略等しい傾斜面に構成されている。
このような複数のホーニング砥石21は、拡張ロッド23が下側へ移動すると、コーン部23bの外周面(コーン面)に押され、各スリット22dにおいて径方向外側にスライドする。その結果、ホーニング加工部20の砥石径R(複数の砥石片21aの外接円の直径)が拡大される。なお、ホーニング加工部20は、砥石径Rの最小値がシリンダ部Cの内周面C0の直径よりも小さくなるように構成されている。
また、図示を省略しているが、複数のホーニング砥石21には、下側に移動した拡張ロッド23を上側に移動させたときに、各スリット22dにおいて径方向外側にスライドした各ホーニング砥石21が径方向内側に移動するような力を各ホーニング砥石21に作用する戻し機構が設けられている。戻し機構は、弾性体であってもよく、リンク部材であってもよい。
拡張ロッド23は、Z軸方向に延びる棒状に形成され、ホーニング主軸22の内部に収容されている。拡張ロッド23は、円柱状のロッド本体23aと、2つの円錐形状のコーン部23bとを有している。
ロッド本体23aは、中心線がホーニング主軸22の中間軸部22b及び砥石ホルダ22cの中心線Z2に一致するように中間軸部22b内に収容され、該中間軸部22bに対して軸方向にスライド自在に構成されている。
2つのコーン部23bは、同じ大きさの円錐形状に形成され、頂部がホーニング主軸22の先端側(本実施形態では下側)を向いた状態で中心線がロッド本体23aの中心線と一致するようにロッド本体23aの下端部に一体に形成されている。2つのコーン部23bは、外周面(コーン面)が2つのホーニング砥石21の支持プレート21bのテーパ面21cと傾斜角度が略等しくなるように形成され、上側のコーン部23bの外周面が上側のテーパ面21cに当接し、下側のコーン部23bの外周面が下側のテーパ面21cに当接するような間隔でロッド本体23aの軸方向に並んでいる。
この2つのコーン部23bが形成されたロッド本体23aの下端部と、上述のホーニング主軸22の下端部に形成された砥石ホルダ22cと、該砥石ホルダ22cに装着された複数のホーニング砥石21とによって、ホーニング加工部20においてホーニング加工を行うホーニングヘッド20aが構成される。
フローティング機構24は、アライメントの誤差やシリンダ部Cの熱変形等により、ホーニング加工を施すシリンダ部Cの内周面C0の中心線ZCと、該内周面C0を研磨するホーニング加工部20の複数の砥石片21aに外接する円筒の中心線であって砥石ホルダ22cの中心線Z2と一致する砥石中心線Z2との位置ずれ(数μm程度)を補正してシリンダ部Cの内周面C0の中心線ZCとホーニング加工部20の砥石中心線Z2とを一致させるものである。
フローティング機構24は、ホーニング主軸22の主軸本体22aと中間軸部22bとの間に設けられ、主軸本体22aと中間軸部22bとを連結している。フローティング機構24は、中間軸部22bを所定範囲内において水平方向に変位自在に保持しつつ、主軸本体22aの回転に連動して中間軸部22bが回転するように主軸本体22aの回転力を中間軸部22bに伝達するように構成されている。フローティング機構24は、2つの自在継手を設けることによって実現可能である。
このようなフローティング機構24により、シリンダ部Cの内周面C0のホーニング加工を行う際に、シリンダ部Cの内周面C0の中心線ZCとホーニング加工部20の砥石中心線Z2とがずれていても、ホーニング加工部20のホーニング砥石21をシリンダ部C内に挿入して砥石径Rを拡大する際に、中心線ZCに対して砥石中心線Z2がずれた方向に位置する砥石片21aが、シリンダ部Cの内周面C0に当接し、その反作用によってホーニング砥石21が装着された砥石ホルダ22cに、砥石中心線Z2が中心線ZCに一致する方向に力が作用する。これにより、上端がフローティング機構24に接続され、下端が砥石ホルダ22cに接続されたホーニング主軸22の中間軸部22bが、砥石ホルダ22cに作用した力の方向に変位し、砥石中心線Z2が中心線ZCに一致することとなる。
ホーニング本体部25は、Y軸方向に長い部材によって形成され、前端部の内部にホーニング主軸22の主軸本体22aを回転自在に保持する一方、後面はZ軸ガイド26に噛み合う形状に形成されている。ホーニング本体部25は、Z軸ガイド26によってZ軸方向に移動可能に構成されている。ホーニング本体部25は、Z軸方向に往復移動することにより、ホーニング主軸22をZ軸方向に上下動させる。ホーニング本体部25には、ホーニング主軸22の主軸本体22aを回転駆動する上述の回転モータ28が設けられている。
Z軸ガイド26は、ホーニングコラム4の前面に設けられたZ軸方向に長く延びる長尺部材であり、本実施形態では、Z軸方向に延びる2本のレール部材によって構成されている。Z軸ガイド26は、ホーニングコラム4の上端部から下端部に亘って形成されている。なお、Z軸ガイド26は、ホーニング本体部25のZ軸方向への移動を案内するものであれば、いかなる形状であってもよい。Z軸ガイド26は、Z軸ガイド16のような形状に形成されていてもよい。
拡張モータ27は、ホーニング本体部25の前端部に設けられている。拡張モータ27の駆動軸は、ホーニング本体部25の内部において、ホーニング主軸22内に収容された拡張ロッド23がZ軸方向に往復移動するように、拡張ロッド23のロッド本体23aに連結されている。拡張モータ27は、制御部40によって動作が制御される。
回転モータ28は、ホーニング本体部25に設けられている。回転モータ28は、ホーニング主軸22の主軸本体22aが自転するように該主軸本体22aに連結されている。回転モータ28がホーニング主軸22の主軸本体22aを回転駆動すると、フローティング機構24によってその回転力がホーニング主軸22の中間軸部22bに伝達され、中間軸部22bの下端部に形成された砥石ホルダ22cが中心線Z2周りに自転する。砥石ホルダ22cには、複数のホーニング砥石21が装着されている。そのため、砥石ホルダ22cの自転により、複数のホーニング砥石21が、砥石ホルダ22cの中心線Z2と一致する砥石中心線Z2周りに公転することとなる。
なお、上記砥石ホルダ22cの中心線Z2が、本発明に係る砥石ホルダ22cの自転軸を構成する。そして、本実施形態では、ホーニング加工部20は、砥石ホルダ22cの中心線Z2と研削加工部10の研削砥石11の中心線Z1とが平行に配置されるように構成されている。なお、本実施形態では、砥石ホルダ22cの中心線Z2と研削加工部10の研削砥石11の中心線Z1は、X軸方向に並び、Y軸方向の同じ位置に配置されている。また、砥石ホルダ22cの中心線Z2と研削加工部10の研削砥石11の中心線Z1とは、X軸方向の間隔が、ワークWにおいて等間隔に一列に並ぶ4つのシリンダ部Cの中心線間距離の2倍(後述する第1シリンダ部C1と第3シリンダ部C3の中心線間距離)に等しくなるように設けられている。
Z軸モータ29は、ホーニングコラム4に設けられている。Z軸モータ29は、ホーニング本体部25がZ軸ガイド26に沿ってZ軸方向に往復移動するようにホーニング本体部25に連結されている。Z軸モータ29がホーニング本体部25を上下動させると、ホーニング本体部25に回転自在に保持されたホーニング主軸22及び拡張ロッド23が上下動し、ホーニングヘッド20aが上下動することとなる。
〈ワーク搬送部〉
ワーク搬送部30は、X軸ガイド31と、X軸テーブル32と、Y軸ガイド33と、ワークテーブル34と、X軸モータ35と、Y軸モータ36とを有している。
X軸ガイド31は、ベッド2の上面に設けられたX軸方向に長く延びる長尺部材である。本実施形態では、X軸ガイド31は、X軸方向に長い矩形の板状体によって構成されている。X軸ガイド31は、ベッド2のX軸方向の一端部から他端部に亘って形成されている。なお、X軸ガイド31は、X軸テーブル32のX軸方向への移動を案内するものであれば、いかなる形状であってもよい。X軸ガイド31は、2本のレールによって形成されていてもよい。
X軸テーブル32は、直方体形状に形成され、X軸ガイド31の上方に設けられ、下面がX軸ガイド31に噛み合う形状に形成されている。X軸テーブル32は、X軸ガイド31によってX軸方向に移動可能に構成されている。X軸テーブル32には、ワークテーブル34を駆動するY軸モータ36が設けられている。
Y軸ガイド33は、X軸テーブル32の上面に設けられたY軸方向に長く延びる長尺部材である。本実施形態では、X軸ガイド31は、X軸方向に長い矩形の板状体によって構成されている。Y軸ガイド33は、X軸テーブル32のY軸方向の一端部から他端部に亘って形成されている。なお、Y軸ガイド33は、ワークテーブル34のY軸方向への移動を案内するものであれば、いかなる形状であってもよい。Y軸ガイド33は、2本のレールによって形成されていてもよい。
ワークテーブル34は、直方体形状に形成され、Y軸ガイド33の上方に設けられ、下面がY軸ガイド33に噛み合う形状に形成されている。ワークテーブル34は、Y軸ガイド33によってY軸方向に移動可能に構成されている。また、図示を省略するが、ワークテーブル34の上面は、ワークWを保持可能なように、ワークWの底部が嵌まり込む形状に構成されている。このような構成により、ワークテーブル34は、Y軸方向に往復移動することにより、ワークWをY軸方向に移動させる。
X軸モータ35は、ベッド2に設けられている。X軸モータ35は、X軸テーブル32がX軸方向に往復移動するようにX軸テーブル32に連結されている。X軸モータ35によってX軸テーブル32がX軸方向に移動することにより、X軸テーブル32上に設けられたワークテーブル34がX軸方向に移動し、ワークテーブル34に保持されたワークWがX軸方向に移動することとなる。
Y軸モータ36は、X軸テーブル32に設けられている。Y軸モータ36は、ワークテーブル34がY軸方向に往復移動するようにワークテーブル34に連結されている。Y軸モータ36によってワークテーブル34がY軸方向に移動することにより、ワークテーブル34に保持されたワークWがY軸方向に移動することとなる。
〈制御部〉
制御部40は、内周面加工装置1の各種機器の作動を制御するものであり、ベッド2の内部に収容されている。本実施形態では、制御部40は、研削加工部10の自転モータ17及びZ軸モータ18、ホーニング加工部20の拡張モータ27、回転モータ28及びZ軸モータ29、ワーク搬送部30のX軸モータ35及びY軸モータ36の動作を制御する。本実施形態では、制御部40は、ワークWの4つのシリンダ部Cの内周面C0に対し、シリンダ部Cの配列順に、研削加工を施した後にホーニング加工を施す内周面加工制御を実行するように構成されている。制御部40は、コンピュータやこれに実装されたプログラム等のソフトウェアで構成されている。制御部40は、研削加工部10、ホーニング加工部20及びワーク搬送部30の各モータと電気的に接続され、研削加工時、ホーニング加工時、ワークWを移動させる際に、上記各モータの速度や位置、作動タイミング等を数値制御する。
-内周面加工動作(内周面加工方法)-
次に、内周面加工装置1によるワークWへの内周面加工動作(内周面加工方法)について説明する。本実施形態では、内周面加工装置1が自動車等のエンジンに用いられるエンジンブロックの製造ラインで用いられ、等間隔で一列に並ぶ4つのシリンダ部Cを有するエンジンブロックを、加工対象(ワークW)とする場合について説明する。
なお、説明の便宜上、図5においてX軸方向に一列に並ぶ4つのシリンダ部Cを、X軸方向の右側から左側へ順に、第1シリンダ部C1、第2シリンダ部C2、第3シリンダ部C3、第4シリンダ部C4と呼ぶ。
内周面加工装置1には、ワークWが順次搬入される。制御部40は、研削加工部10、ホーニング加工部20及びワーク搬送部30の動作を制御することにより、搬入されたワークWの4つのシリンダ部Cの内周面C0に対し、シリンダ部Cの配列順、即ち、第1シリンダ部C1、第2シリンダ部C2、第3シリンダ部C3、第4シリンダ部C4の順に、研削加工とホーニング加工とを順に行う内周面加工制御を実行する。
〈内周面加工制御〉
制御部40は、ワーク搬送部30の各モータの動作を制御して、ワークテーブル34に保持されたワークWを、搬出入位置、第1加工位置、第2加工位置、第3加工位置、第4加工位置、第5加工位置、第6加工位置の順に移動させるワーク搬送動作を繰り返し行わせる。また、制御部40は、ワークWが第1~第4加工位置にあるときに、研削加工部10の各モータ及びワーク搬送部30の各モータの動作を制御して、ワークWの各シリンダ部Cに対して内周面C0を研削する研削加工動作を行わせる。さらに、制御部40は、ワークWが第3~第6加工位置にあるときに、ホーニング加工部20の各モータの動作を制御して、ワークWの各シリンダ部Cに対して内周面C0を研磨するホーニング加工動作を行わせる。以下、制御部40による詳細な制御について動作毎に説明する。
[ワーク搬送動作制御]
まず、制御部40は、ワーク搬送部30のX軸モータ35及びY軸モータ36の動作を制御して、ワークテーブル34に保持されたワークWを搬出入位置に移動させる(図5を参照)。搬出入位置は、図示しないワーク交換装置によってワークWが搬入、搬出される位置である。本実施形態では、図5に示すように、X軸テーブル32がX軸ガイド31の左側端部付近にあり、このX軸テーブル32上においてワークテーブル34がY軸ガイド33の前側端部付近にあるとき、ワークWが搬出入位置に配置される。この位置では、図示しないワーク交換装置によってワークテーブル34上の処理後のワークWが取り除かれ、ワークテーブル34上に未処理のワークWが供給される。
次に、制御部40は、ワーク搬送部30のX軸モータ35及びY軸モータ36の動作を制御して、ワークWを第1加工位置~第6加工位置に順に移動させる(図6~図11を参照)。
具体的には、制御部40は、まず、ワークWを搬出入位置から第1加工位置に移動させる(図5~図6を参照)。図6に示すように、第1加工位置は、第1シリンダ部C1が研削砥石11に対峙して第1シリンダ部C1の内周面C0に研削加工が施される第1シリンダ部C1の研削加工位置である。本実施形態では、第1加工位置では、第1シリンダ部C1の内周面C0の中心線ZCと研削砥石11の中心線Z1とが一致する。制御部40は、図5~図6に示すように、ワークテーブル34をY軸ガイド33に沿って後側へ移動させ、X軸テーブル32をX軸ガイド31に沿って右側へ移動させることにより、ワークWを搬出入位置から第1加工位置に移動させる。なお、制御部40は、ワークWを第1加工位置に搬送後、研削加工部10及びワーク搬送部30に研削加工動作を行わせて第1シリンダ部C1の内周面C0を研削する。
第1シリンダ部C1の内周面C0の研削加工が終了すると、制御部40は、ワークWを第1加工位置から第2加工位置に移動させる(図6~図7を参照)。図7に示すように、第2加工位置は、第2シリンダ部C2が研削砥石11に対峙して第2シリンダ部C2の内周面C0に研削加工が施される第2シリンダ部C2の研削加工位置である。本実施形態では、第2加工位置では、第2シリンダ部C2の内周面C0の中心線ZCと研削砥石11の中心線Z1とが一致する。制御部40は、図6~図7に示すように、X軸テーブル32をX軸ガイド31に沿って右側へ隣り合うシリンダ部Cの中心線間距離分だけ移動させることにより、ワークWを第1加工位置から第2加工位置に移動させる。なお、制御部40は、ワークWを第2加工位置に搬送後、研削加工部10及びワーク搬送部30に研削加工動作を行わせて第2シリンダ部C2の内周面C0を研削する。
第2シリンダ部C2の内周面C0の研削加工が終了すると、制御部40は、ワークWを第2加工位置から第3加工位置に移動させる(図7~図8を参照)。図8に示すように、第3加工位置は、第3シリンダ部C3が研削砥石11に対峙して第3シリンダ部C3の内周面C0に研削加工が施される第3シリンダ部C3の研削加工位置であり、第1シリンダ部C1が複数のホーニング砥石21が放射状に装着された砥石ホルダ22cに対峙して第1シリンダ部C1の内周面C0にホーニング加工が施される第1シリンダ部C1のホーニング加工位置である。本実施形態では、第3加工位置では、第3シリンダ部C3の内周面C0の中心線ZCと研削砥石11の中心線Z1とが一致し、第1シリンダ部C1の内周面C0の中心線ZCと主軸本体22aの中心線とが一致する。制御部40は、図7~図8に示すように、X軸テーブル32をX軸ガイド31に沿って右側へ隣り合うシリンダ部Cの中心線間距離分だけ移動させることにより、ワークテーブル34を第2加工位置から第3加工位置に移動させる。なお、制御部40は、ワークWを第3加工位置に搬送後、研削加工部10及びワーク搬送部30に研削加工動作を行わせて第3シリンダ部C3の内周面C0を研削し、ホーニング加工部20にホーニング加工動作を行わせて第1シリンダ部C1の内周面C0を研磨する。
第3シリンダ部C3の内周面C0の研削加工及び第1シリンダ部C1の内周面C0のホーニング加工が終了すると、制御部40は、ワークWを第3加工位置から第4加工位置に移動させる(図8~図9を参照)。図9に示すように、第4加工位置は、第4シリンダ部C4が研削砥石11に対峙して第4シリンダ部C4の内周面C0に研削加工が施される第4シリンダ部C4の研削加工位置であり、第2シリンダ部C2が複数のホーニング砥石21が放射状に装着された砥石ホルダ22cに対峙して第2シリンダ部C2の内周面C0にホーニング加工が施される第2シリンダ部C2のホーニング加工位置である。本実施形態では、第4加工位置では、第4シリンダ部C4の内周面C0の中心線ZCと研削砥石11の中心線Z1とが一致し、第2シリンダ部C2の内周面C0の中心線ZCと主軸本体22aの中心線とが一致する。制御部40は、図8~図9に示すように、X軸テーブル32をX軸ガイド31に沿って右側へ隣り合うシリンダ部Cの中心線間距離分だけ移動させることにより、ワークテーブル34を第3加工位置から第4加工位置に移動させる。なお、制御部40は、ワークWを第4加工位置に搬送後、研削加工部10及びワーク搬送部30に研削加工動作を行わせて第4シリンダ部C4の内周面C0を研削し、ホーニング加工部20にホーニング加工動作を行わせて第2シリンダ部C2の内周面C0を研磨する。
第4シリンダ部C4の内周面C0の研削加工及び第2シリンダ部C2の内周面C0のホーニング加工が終了すると、制御部40は、ワークWを第4加工位置から第5加工位置に移動させる(図9~図10を参照)。図10に示すように、第5加工位置は、第3シリンダ部C3が複数のホーニング砥石21が放射状に装着された砥石ホルダ22cに対峙して第3シリンダ部C3の内周面C0にホーニング加工が施される第3シリンダ部C3のホーニング加工位置である。本実施形態では、第5加工位置では、第3シリンダ部C3の内周面C0の中心線ZCと主軸本体22aの中心線とが一致する。制御部40は、図9~図10に示すように、X軸テーブル32をX軸ガイド31に沿って右側へ隣り合うシリンダ部Cの中心線間距離分だけ移動させることにより、ワークテーブル34を第4加工位置から第5加工位置に移動させる。なお、制御部40は、ワークWを第5加工位置に搬送後、ホーニング加工部20にホーニング加工動作を行わせて第3シリンダ部C3の内周面C0を研磨する。
第3シリンダ部C3の内周面C0のホーニング加工が終了すると、制御部40は、ワークWを第5加工位置から第6加工位置に移動させる(図10~図11を参照)。図11に示すように、第6加工位置は、第4シリンダ部C4が複数のホーニング砥石21が放射状に装着された砥石ホルダ22cに対峙して第4シリンダ部C4の内周面C0にホーニング加工が施される第4シリンダ部C4のホーニング加工位置である。本実施形態では、第6加工位置では、第4シリンダ部C4の内周面C0の中心線ZCと主軸本体22aの中心線とが一致する。制御部40は、図10~図11に示すように、X軸テーブル32をX軸ガイド31に沿って右側へ隣り合うシリンダ部Cの中心線間距離分だけ移動させることにより、ワークテーブル34を第5加工位置から第6加工位置に移動させる。なお、制御部40は、ワークWを第6加工位置に搬送後、ホーニング加工部20にホーニング加工動作を行わせて第4シリンダ部C4の内周面C0を研磨する。
第4シリンダ部C4の内周面C0のホーニング加工が終了すると、制御部40は、ワーク搬送部30のX軸モータ35及びY軸モータ36の動作を制御して、ワークテーブル34に保持されたワークWを搬出入位置に移動させる(図5を参照)。なお、本実施形態では、X軸テーブル32をX軸ガイド31に沿って左側端部付近まで移動させ、このX軸テーブル32上においてワークテーブル34をY軸ガイド33に沿って前側端部付近まで移動させることにより、ワークWを第6加工位置から搬出入位置に移動させる。
以上のようにして、制御部40によるワーク搬送部30の各モータの動作制御により、ワークテーブル34に保持されたワークWが、搬出入位置、第1加工位置、第2加工位置、第3加工位置、第4加工位置、第5加工位置、第6加工位置の順に移動するワーク搬送動作が繰り返し行われる。
[研削加工動作制御]
制御部40は、ワーク搬送部30によって研削加工位置に配置されて研削加工対象となるシリンダ部C(第1~第4シリンダ部C1~C4)に対し、研削加工部10の自転モータ17及びZ軸モータ18を動作させて研削砥石11を自転させながらシリンダ部Cの内部に進出させると共に、ワーク搬送部30のX軸モータ35及びY軸モータ36を動作させて、研削砥石11がシリンダ部Cの内周面C0に当接しながら相対的に回転移動するようにワークWを変位させてシリンダ部Cの内周面C0を研削する。
具体的には、制御部40は、自転モータ17を動作させて研削砥石11を中心線Z1周りに回転(自転)させると共に、Z軸モータ18を動作させて研削テーブル15を、研削砥石11がワークWの上面よりも上方にある所定の待機位置から研削砥石11がシリンダ部C内に位置する研削位置までZ軸方向の下側へ移動させる。つまり、研削砥石11を自転させながらシリンダ部C内に進出させる。
また、制御部40は、X軸モータ35及びY軸モータ36を動作させて、研削加工対象となるシリンダ部Cの内周面C0が研削砥石11の外周面に当接するようにワークWを変位させ、さらに、研削加工対象となるシリンダ部Cの中心線ZCが研削砥石11の中心線Z1周りに回転するようにワークWを変位させる。このようにワークWがX軸方向及びY軸方向に変位することにより、研削砥石11は、X軸方向及びY軸方向に変位しないが、見かけ上、シリンダ部Cの内部において、内周面C0に当接しながら該内周面C0に沿って回転移動することとなる。
さらに、制御部40は、自転モータ17と同時に、Z軸モータ18を動作させて研削テーブル15をZ軸ガイド16に沿ってZ軸方向に往復移動させる。その結果、研削砥石11が、Z軸方向に上下動する。
以上のような研削砥石11の自転動作、ワークWのX,Y軸方向変位、研削砥石11の上下動からなる研削加工動作により、研削砥石11が研削加工対象となるシリンダ部Cの内部において内周面C0に当接しながら自転し、また、見かけ上、研削砥石11が研削加工対象となるシリンダ部Cの内周面C0に沿って回転移動するようにワークWが変位して研削加工対象となるシリンダ部Cの内周面C0が研削砥石11によって研削される。
各研削加工位置において研削加工対象となるシリンダ部Cの内周面C0の研削が完了すると、制御部40は、X軸モータ35及びY軸モータ36を動作させてワークWを元の位置(各シリンダ部Cの内周面C0の中心線ZCと研削砥石11の中心線Z1とが一致する位置)に戻し、Z軸モータ18を動作させて研削テーブル15を研削位置から待機位置までZ軸方向の上側へ移動させる。
[ホーニング加工動作制御]
制御部40は、ワーク搬送部30によってホーニング加工位置に配置されてホーニング加工対象となるシリンダ部C(第1~第4シリンダ部C1~C4)に対し、ホーニング加工部20の拡張モータ27、回転モータ28及びZ軸モータ29を動作させて複数のホーニング砥石21が放射状に装着された砥石ホルダ22cをシリンダ部Cの内部に進出させて自転させることにより、シリンダ部Cの内周面C0を研磨する。
具体的には、制御部40は、まず、Z軸モータ29を動作させてホーニング本体部25を、ホーニングヘッド20aがワークWの上面よりも上方にある所定の待機位置からホーニングヘッド20aがシリンダ部C内に位置するホーニング位置までZ軸方向の下側へ移動させる。つまり、シリンダ部Cの内部に複数のホーニング砥石21が放射状に装着された砥石ホルダ22cを進出させる。なお、このとき、拡張モータ27は動作せず、ホーニング加工部20の砥石径R(複数の砥石片21aの外接円の直径)は、最小値になっている。
次に、制御部40は、ホーニング加工部20の砥石径R(複数の砥石片21aの外接円の直径)がシリンダ部Cの内周面C0の直径と等しくなるまで拡大するように拡張モータ27の動作を制御する。
このとき、アライメントの誤差やシリンダ部Cの熱変形等によってシリンダ部Cの内周面C0の中心線ZCとホーニング加工部20の砥石中心線Z2とがずれていても、ホーニング加工部20の砥石径Rが拡大する際に、フローティング機構24によって、中心線ZCに対して砥石中心線Z2がずれた方向に位置する砥石片21aが、シリンダ部Cの内周面C0に当接し、その反作用によってホーニング砥石21が装着された砥石ホルダ22cに、砥石中心線Z2が中心線ZCに一致する方向に力が作用する。これにより、ホーニング主軸22の中間軸部22bが、砥石ホルダ22cに作用した力の方向に変位し、砥石中心線Z2が中心線ZCに一致することとなる。
また、制御部40は、回転モータ28を動作させてホーニング主軸22の主軸本体22aを回転駆動する。回転モータ28がホーニング主軸22の主軸本体22aを回転駆動すると、フローティング機構24によってその回転力がホーニング主軸22の中間軸部22bに伝達されて該中間軸部22bが回転(自転)し、該中間軸部22bの下端部に接続された砥石ホルダ22cも回転(自転)する。これにより、砥石ホルダ22cに装着された複数のホーニング砥石21は、砥石中心線Z2周りに公転する。
さらに、制御部40は、Z軸モータ29を動作させてホーニング本体部25をZ軸ガイド26に沿ってZ軸方向に往復移動させる。その結果、ホーニング本体部25に回転自在に保持されたホーニング主軸22及び拡張ロッド23が上下動し、ロッド本体23aの下端部と砥石ホルダ22cと複数のホーニング砥石21とによって構成されるホーニングヘッド20aがZ軸方向に上下動する。
以上のような複数のホーニング砥石21の公転動作及びホーニング砥石21を含むホーニングヘッド20aの上下動からなるホーニング加工動作により、シリンダ部Cの内周面C0がホーニングヘッド20aの複数のホーニング砥石21によって研磨(ホーニング加工)される。
各ホーニング加工位置においてホーニング加工対象となるシリンダ部Cの内周面C0の研磨(ホーニング加工)が完了すると、制御部40は、Z軸モータ29を動作させてホーニング本体部25をホーニング位置から待機位置までZ軸方向の上側へ移動させる。
以上のような制御部40による内周面加工制御により、ワークWは、ワーク搬送部30によるワーク搬送動作により、搬出入位置、第1加工位置、第2加工位置、第3加工位置、第4加工位置、第5加工位置、第6加工位置の順に繰り返し配置される。
そして、ワークWが第1加工位置にあるときには、研削加工部10及びワーク搬送部30による研削加工動作によって第1シリンダ部C1の内周面C0に対する研削加工のみが行われる。また、ワークWが第2加工位置にあるときには、研削加工部10及びワーク搬送部30による研削加工動作によって第2シリンダ部C2の内周面C0に対する研削加工のみが行われる。
一方、ワークWが第3加工位置にあるときには、研削加工部10及びワーク搬送部30による研削加工動作によって第3シリンダ部C3の内周面C0に対する研削加工が行われると共に、ホーニング加工部20によるホーニング加工動作によって第1シリンダ部C1の内周面C0に対するホーニング加工が上記研削加工に並行して行われる。また、ワークWが第4加工位置にあるときにも、研削加工部10及びワーク搬送部30による研削加工動作によって第4シリンダ部C4の内周面C0に対する研削加工が行われると共に、ホーニング加工部20によるホーニング加工動作によって第2シリンダ部C2の内周面C0に対するホーニング加工が上記研削加工に並行して行われる。
そして、ワークWが第5加工位置にあるときには、ホーニング加工部20によるホーニング加工動作によって第3シリンダ部C3の内周面C0に対するホーニング加工のみが行われる。また、ワークWが第6加工位置にあるときにも、ホーニング加工部20によるによるホーニング加工動作によって第4シリンダ部C4の内周面C0に対するホーニング加工のみが行われる。
つまり、制御部40による上記内周面加工制御により、ワークWの4つのシリンダ部C1~C4がその配列順(第1シリンダ部C1、第2シリンダ部C2、第3シリンダ部C3、第4シリンダ部C4の順)に研削加工位置とホーニング加工位置とに順に配置され、4つのシリンダ部C1~C4の内周面C0に対してその配列順に研削加工とホーニング加工とが順に行われる。また、ワークWが第3加工位置にあるときには、第3シリンダ部C3の内周面C0に対する研削加工と第1シリンダ部C1の内周面C0に対する研削加工とが並行して行われ(図8を参照)、ワークWが第4加工位置にあるときには、第4シリンダ部C4の内周面C0に対する研削加工と第2シリンダ部C2の内周面C0に対する研削加工とが並行して行われる(図9を参照)。
なお、上述のように、ワークWが第3及び第4加工位置にあるときには、研削加工部10及びワーク搬送部30による研削加工動作とホーニング加工部20によるによるホーニング加工動作とが同時に行われる。
ここで、シリンダ部Cの内径よりも小径な研削砥石11を用いる研削加工動作では、見かけ上、研削砥石11がシリンダ部Cの内周面C0に当接しながら該内周面C0に沿って回転移動するようにワーク搬送部30によってワークWを変位させる必要があるが、ホーニング加工動作では、砥石ホルダ22cに装着された複数の砥石片21aがシリンダ部Cの内周面C0に当接した状態で砥石ホルダ22cを自転させるため、ワークWを変位させると、シリンダ部Cの中心線ZCとホーニング加工部20の砥石中心線Z2(複数の砥石片21aに外接する円筒の中心線)とがずれ、砥石片21aの偏摩耗を招くおそれがある。
しかしながら、本内周面加工装置1によれば、ホーニング加工部20にフローティング機構24を設けている。上述したように、フローティング機構24は、中間軸部22bを所定範囲内において水平方向に変位自在に保持しつつ、主軸本体22aの回転に連動して中間軸部22bが回転するように主軸本体22aの回転力を中間軸部22bに伝達するように構成されている。そのため、同一のワークWの異なるシリンダ部Cに対し、ワークWの変位を伴う研削加工動作とホーニング加工動作とを行う際に、ワークWの変位によってホーニング加工対象となるシリンダ部C(第1及び第2シリンダ部C1,C2)が変位しても、中間軸部22bの下端に連結された砥石ホルダ22cは、フローティング機構24によってシリンダ部Cの変位に追従することとなる。よって、本内周面加工装置1によれば、ホーニング加工対象となるシリンダ部Cの中心線ZCとホーニング加工部20の砥石中心線Z2(複数の砥石片21aに外接する円筒の中心線)とがずれず、砥石片21aの偏摩耗の発生を抑制することができる。
-実施形態1の効果-
以上のように、本実施形態1によれば、ワークWのシリンダ部Cの内周面C0を加工する内周面加工装置1が、研削砥石11を中心線Z1周りに回転させてシリンダ部Cの内周面C0を研削する研削加工部10と、複数のホーニング砥石21が放射状に装着された砥石ホルダ22cを中心線Z2周りに回転させてシリンダ部Cの内周面C0を研磨するホーニング加工部20と、各シリンダ部Cを研削砥石11に対峙する研削加工位置と砥石ホルダ22cに対峙するホーニング加工位置とに配置するワーク搬送部(移動機構)30と、研削加工部10とホーニング加工部20とワーク搬送部30の動作を制御する制御部40とを備えるように構成されている。この内周面加工装置1では、制御部40による内周面加工制御により、ワークWの各シリンダ部Cは、まず、ワーク搬送部30によって研削加工位置に配置されて内周面C0に研削加工が施された後、ワーク搬送部30によってホーニング加工位置に配置されて内周面C0にホーニング加工が施されることとなる。つまり、上記内周面加工装置1によれば、シリンダ部Cの内周面C0の研削加工とホーニング加工とを1台の加工装置で行うことができる。このように荒加工から仕上げ加工までを1台の加工装置で行うことができるように構成したため、研削装置とホーニング装置とを別々に設けた場合に比べてシリンダ部Cの内周面C0を加工する内周面加工システムを1台の加工装置でコンパクトに構成することができる。また、複数台の装置で内周面加工システムを構成した場合、研削加工の後、ホーニング加工を行うためにワークWを移動させる距離が長くなる分、内周面加工に要する加工時間が長くなるところ、上記内周面加工装置1によれば、研削加工とホーニング加工とを1台の加工装置で行えるため、研削加工からホーニング加工への移行が円滑になり、加工時間を短縮することができる。
また、本実施形態1の内周面加工装置1及び内周面加工方法では、ワークWのシリンダ部Cの内周面C0に対して従来行っていた切削加工の代わりに研削加工を行うこととしている。ここで、研削砥石11は、切削工具に比べて安価であり、難削材を加工して摩耗しても研削砥石自体が無くなるまで使い続けることができるため、切削工具に比べて寿命が長い。そのため、上記内周面加工装置1及び内周面加工方法によれば、従来行っていた切削加工の代わりに研削加工を施すことにより、内周面加工にかかる費用(特に、工具費)を低減することができる。また、上記内周面加工装置1及び内周面加工方法によれば、ホーニング加工の前に研削加工を施すことにより、ホーニング加工の前に切削加工を施す従来技術のように、切削工具の摩耗やチッピングによってシリンダ部Cの内径寸法管理が困難になることがない。そのため、ホーニング加工での取代が変動するために加工品質や加工時間にばらつきが生じることがなく、加工品質や歩留まりの低下を抑制することができる。
また、本実施形態では、研削砥石11の中心線Z1と砥石ホルダ22cの中心線Z2とが平行に配置されている。そして、研削加工部10及びホーニング加工部20とワークWとを相対的に移動させて各シリンダ部Cを研削砥石11に対峙する研削加工位置と砥石ホルダ22cに対峙するホーニング加工位置とに配置する移動機構を構成するワーク搬送部によってワークWを移動させることにより、各シリンダ部を上記研削加工位置と上記ホーニング加工位置とに搬送することとしている。このように、構成が複雑な研削加工部10及びホーニング加工部20を移動させるのではなくワークWを移動させるワーク搬送部30によって移動機構を構成することにより、移動機構を容易に構成することができる。
また、本実施形態では、ワーク搬送部30に、ワークWを複数のシリンダ部Cの配列方向に送り出して複数のシリンダ部Cを配列順に研削加工位置(第1~第4加工位置)とホーニング加工位置(第3~第6加工位置)とに順に配置し、複数のシリンダ部Cの内周面C0に対してその配列順に研削加工とホーニング加工とを順に行うようにしている。従って、上記内周面加工装置1によれば、シリンダ部Cを複数有するワークWであっても、複数のシリンダ部Cの内周面C0の研削加工とホーニング加工とを1台の加工装置で行うことができる。
また、本実施形態の内周面加工装置1では、等間隔で一列に並ぶ4つのシリンダ部C1~C4を有するワークWを加工対象とし、4つのシリンダ部C1~C4の配列順、即ち、第1シリンダ部C1、第2シリンダ部C2、第3シリンダ部C3、第4シリンダ部C4の順に内周面C0に対して研削加工とホーニング加工とを順に行うこととしている。また、上記内周面加工装置1では、ワークWが上記4つのシリンダ部C1~C4の配列方向に送られて第1シリンダ部C1が砥石ホルダ22cに対峙するホーニング加工位置に配置される際に、第3シリンダ部C3が研削砥石11に対峙する研削加工位置に配置されることとなり、同様に、ワークWが上記4つのシリンダ部C1~C4の配列方向に送られて第2シリンダ部C2が砥石ホルダ22cに対峙するホーニング加工位置に配置される際に、第4シリンダ部C4が研削砥石11に対峙する研削加工位置に配置されることとなる。
本実施形態では、このような構成に基づき、第3シリンダ部C3の内周面C0に対する研削加工と第1シリンダ部C1の内周面C0に対するホーニング加工とを並行させ、第4シリンダ部C4の内周面C0に対する研削加工と第2シリンダ部C2の内周面C0に対するホーニング加工とを並行させることとしている。このように、上記内周面加工装置1及び内周面加工方法によれば、4つのシリンダ部C1~C4の内周面C0に対し、研削加工が全て終了した後にホーニング加工を行うのではなく、一部のシリンダ部Cに対して研削加工とホーニング加工とを並行して行うことにより、4つのシリンダ部C1~C4の内周面C0の加工に要する時間を短縮することができる。
《発明の実施形態2》
実施形態2に係る内周面加工装置1は、実施形態1に係る内周面加工装置1の構成を一部変更したものである。実施形態2に係る内周面加工装置1において行われる内周面加工動作(内周面加工方法)も実施形態1に係る内周面加工装置1において行われる内周面加工動作(内周面加工方法)と一部異なる。詳細な構成については後述するが、実施形態
2に係る内周面加工装置1は、実施形態1に係る内周面加工装置1に設けられていたワークWをY軸方向に移動させる機構(X軸テーブル32、Y軸ガイド33及びY軸モータ36)を省略し、研削砥石11をX軸方向に移動させる機構(X軸テーブル51、X軸ガイド52及びX軸モータ53)と、研削砥石11をY軸方向に移動させる機構(Y軸テーブル61、Y軸ガイド62及びY軸モータ63)を加えたものである。
以下の説明において、図12に示すように、内周面加工装置1の幅方向(紙面左手前から右奥に向かう方向)をX軸方向、内周面加工装置1の奥行方向(紙面右手前から左奥に向かう方向)をY軸方向、内周面加工装置1の高さ方向(紙面上下方向)をZ軸方向と呼ぶ。また、X軸方向に沿って図12の紙面左側を「左側」、紙面右側を「右側」と呼ぶ。さらに、Y軸方向に沿って図12の紙面手前側を「前側」、紙面奥側を「後側」と呼ぶ。
-構成-
図12に示すように、実施形態2においても、実施形態1と同様に、内周面加工装置1は、ベッド2とコラム3とホーニングコラム4とを備えている。
ベッド2は、実施形態1と同様に、X軸方向に延びる直方体形状の部材2aとY軸方向に延びる直方体形状の部材2bとによって略T字形状に構成され、水平な設置面に載置されている。なお、実施形態1においてコラム3が立設されていたベッド2のY軸方向に延びる部材2bは、実施形態1よりも幅広に形成されている。
コラム3は、実施形態1と同様の部材によって構成される一方、ベッド2のY軸方向に延びる部材2b上にY軸方向に移動可能に設置されている。なお、コラム3は、研削加工部10の後述するY軸テーブル61とY軸ガイド62とY軸モータ63とによってY軸方向に移動可能に構成されている。
ホーニングコラム4は、実施形態1では、コラム3の上部右側に固定されていたが、実施形態2では、コラム3の右側においてベッド2のY軸方向に延びる部材2b上に移動不能に立設されている。つまり、実施形態2では、ホーニングコラム4は、コラム3によって荷重が支持されることなく自立している。
このような構成により、ベッド2とコラム3とホーニングコラム4とで内周面加工装置1の支持構造体が構成されている。また、内周面加工装置1は、実施形態1と同様に、研削加工部10と、ホーニング加工部20と、ワーク搬送部(移動機構)30と、制御部40とを備えている。以下、各部の構成について詳述する。
〈研削加工部〉
図12に示すように、研削加工部10は、実施形態1と同様の研削砥石11と、研削主軸12と、研削ホルダ13と、研削本体部14と、研削テーブル15と、Z軸ガイド16と、自転モータ17と、Z軸モータ18とを有し、さらに、X軸テーブル51と、X軸ガイド52と、X軸モータ53と、Y軸テーブル61と、Y軸ガイド62と、Y軸モータ63とを有している。なお、研削砥石11、研削主軸12、研削ホルダ13、Z軸ガイド16、自転モータ17及びZ軸モータ18は、実施形態1と同様に構成されているため、説明を省略する。
研削本体部14は、直方体形状に形成され、前方に研削ホルダ13を保持するように構成されている。実施形態2では、研削本体部14は、後面が研削テーブル15ではなく、X軸テーブル51の前面に固定されている。
研削テーブル15は、直方体形状の箱状に形成され、前面に上述のX軸ガイド52が固定されている。また、研削テーブル15は、実施形態1と同様に、Z軸ガイド16によってZ軸方向に移動可能に構成されている。
X軸テーブル51は、直方体形状の箱状に形成され、前面に上述の研削本体部14が固定され、後面はX軸ガイド52に噛み合う形状に形成されている。X軸テーブル51は、X軸ガイド52によってX軸方向に移動可能に構成されている。
X軸ガイド52は、研削テーブル15の前面に設けられたX軸方向に延びる部材である。本実施形態では、X軸ガイド52は、X軸方向に延びる矩形の板状体によって構成されている。X軸ガイド52は、研削テーブル15の左端部から右端部に亘って形成されている。なお、X軸ガイド52は、X軸テーブル51のX軸方向への移動を案内するものであれば、いかなる形状であってもよい。
X軸モータ53は、研削テーブル15に設けられている。X軸モータ53は、X軸テーブル51がX軸ガイド52に沿ってX軸方向に往復移動するようにX軸テーブル51に連結されている。X軸モータ53がX軸テーブル51をX軸方向に往復移動させると、研削本体部14、研削ホルダ13及び研削主軸12を介して研削砥石11がX軸方向に往復移動することとなる。
Y軸テーブル61は、直方体形状の箱状に形成され、上面に上述のコラム3が固定され、下面はY軸ガイド62に噛み合う形状に形成されている。Y軸テーブル61は、Y軸ガイド62によってY軸方向に移動可能に構成されている。
Y軸ガイド62は、ベッド2のY軸方向に延びる部材2bの上面に設けられたY軸方向に延びる部材である。本実施形態では、Y軸ガイド62は、Y軸方向に延びる矩形の板状体によって構成されている。Y軸ガイド62は、ベッド2のY軸方向に延びる部材2bの前端部から後端部に亘って形成されている。なお、Y軸ガイド62は、Y軸テーブル61のY軸方向への移動を案内するものであれば、いかなる形状であってもよい。
Y軸モータ63は、ベッド2に設けられている。Y軸モータ63は、Y軸テーブル61がY軸ガイド62に沿ってY軸方向に往復移動するようにY軸テーブル61に連結されている。Y軸モータ63がY軸テーブル61をY軸方向に往復移動させると、コラム3、X軸テーブル51、研削本体部14、研削ホルダ13及び研削主軸12を介して研削砥石11がY軸方向に往復移動することとなる。
〈ホーニング加工部〉
図12に示すように、ホーニング加工部20は、実施形態1と同様に、複数のホーニング砥石21が取り付けられたホーニング主軸22と、拡張ロッド23と、フローティング機構24と、ホーニング本体部25と、Z軸ガイド26と、拡張モータ27と、回転モータ28と、Z軸モータ29とを有している。なお、ホーニング加工部20は、実施形態1と同様に構成されているため、詳細な説明を省略する。
〈ワーク搬送部〉
実施形態2では、ワーク搬送部30は、実施形態1と同様のX軸ガイド31及びX軸モータ35を有する一方、Y軸ガイド33及びY軸モータ36を有さず、X軸ガイド31に噛み合うX軸テーブルが、ワークWを保持するワークテーブル34に構成されている。
具体的には、ワークテーブル34は、直方体形状に形成され、X軸ガイド31の上方に設けられ、下面がX軸ガイド31に噛み合う形状に形成されている。ワークテーブル34は、X軸ガイド31によってX軸方向に移動可能に構成されている。また、図示を省略するが、ワークテーブル34の上面は、ワークWを保持可能なように、ワークWの底部が嵌まり込む形状に構成されている。
X軸モータ35は、ベッド2に設けられている。X軸モータ35は、ワークテーブル34がX軸方向に往復移動するようにワークテーブル34に連結されている。X軸モータ35によってワークテーブル34がX軸方向に移動することにより、ワークテーブル34上に設けられたワークWがX軸方向に移動することとなる。
〈制御部〉
実施形態2においても、制御部40は、ベッド2の内部に収容されている。実施形態2では、制御部40は、研削加工部10の自転モータ17、Z軸モータ18、X軸モータ53及びY軸モータ63、ホーニング加工部20の拡張モータ27、回転モータ28及びZ軸モータ29、ワーク搬送部30のX軸モータ35の動作を制御して、ワークWの4つのシリンダ部Cの内周面C0に対し、シリンダ部Cの配列順に、研削加工を施した後にホーニング加工を施す内周面加工制御を実行するように構成されている。
-内周面加工動作(内周面加工方法)-
実施形態2においても、内周面加工装置1が自動車等のエンジンに用いられるエンジンブロックの製造ラインで用いられ、等間隔で一列に並ぶ4つのシリンダ部Cを有するエンジンブロックを加工対象(ワークW)とする場合について説明する。以下、図12においてX軸方向に一列に並ぶ4つのシリンダ部Cを、右側から左側へ順に、第1シリンダ部C1、第2シリンダ部C2、第3シリンダ部C3、第4シリンダ部C4と呼ぶ。
内周面加工装置1には、ワークWが順次搬入される。制御部40は、研削加工部10、ホーニング加工部20及びワーク搬送部30の動作を制御することにより、搬入されたワークWの4つのシリンダ部Cの内周面C0に対し、シリンダ部Cの配列順、即ち、第1シリンダ部C1、第2シリンダ部C2、第3シリンダ部C3、第4シリンダ部C4の順に、研削加工とホーニング加工とを順に行う内周面加工制御を実行する。
〈内周面加工制御〉
制御部40は、ワーク搬送部30の各モータの動作を制御して、ワークテーブル34に保持されたワークWを、搬出入位置、第1加工位置、第2加工位置、第3加工位置、第4加工位置、第5加工位置、第6加工位置の順に移動させるワーク搬送動作を繰り返し行わせる。また、制御部40は、ワークWが第1~第4加工位置にあるときに、研削加工部10の各モータの動作を制御して、ワークWの各シリンダ部Cに対して内周面C0を研削する研削加工動作を行わせる。さらに、制御部40は、ワークWが第3~第6加工位置にあるときに、ホーニング加工部20の各モータの動作を制御して、ワークWの各シリンダ部Cに対して内周面C0を研磨するホーニング加工動作を行わせる。以下、制御部40による詳細な制御について動作毎に説明する。
[ワーク搬送動作制御]
まず、制御部40は、ワーク搬送部30のX軸モータ35の動作を制御して、ワークテーブル34に保持されたワークWを搬出入位置に移動させる(図13を参照)。実施形態2では、図13に示すように、ワークテーブル34がX軸ガイド31の左側端部付近にあるとき、ワークWが搬出入位置に配置される。この位置において、図示しないワーク交換装置によってワークテーブル34上の処理後のワークWが取り除かれ、ワークテーブル34上に未処理のワークWが供給される。
次に、制御部40は、ワーク搬送部30のX軸モータ35の動作を制御して、ワークWを第1加工位置~第6加工位置に順に移動させる(図14~図19を参照)。第1加工位置~第6加工位置は、実施形態1と同様の要件を満たす位置である。
制御部40は、まず、X軸モータ35の動作を制御して、ワークテーブル34をX軸ガイド31に沿って右側へ移動させることにより、ワークWを搬出入位置から第1加工位置に移動させる(図13~図14を参照)。その後、制御部40は、実施形態1と同様にX軸モータ35の動作を制御してワークテーブル34をX軸ガイド31に沿って右側へ移動させることにより、ワークWを第1加工位置から第2加工位置に(図14~図15を参照)、第2加工位置から第3加工位置に(図15~図16を参照)、第3加工位置から第4加工位置に(図16~図17を参照)、第4加工位置から第5加工位置に(図17~図18を参照)、第5加工位置から第6加工位置に(図18~図19を参照)それぞれ移動させる。また、実施形態2では、制御部40は、実施形態1と同様にX軸モータ35の動作を制御してワークテーブル34をX軸ガイド31に沿って左側端部付近まで移動させることによってワークWを第6加工位置から搬出入位置に移動させる。
以上のようにして、制御部40によるワーク搬送部30のX軸モータ35の動作制御により、ワークテーブル34に保持されたワークWが、搬出入位置、第1加工位置、第2加工位置、第3加工位置、第4加工位置、第5加工位置、第6加工位置の順に移動するワーク搬送動作が繰り返し行われる。
[研削加工動作制御]
制御部40は、ワーク搬送部30によって研削加工位置に配置されて研削加工対象となるシリンダ部C(第1~第4シリンダ部C1~C4)に対し、研削加工部10の自転モータ17及びZ軸モータ18を動作させて研削砥石11を自転させながらシリンダ部Cの内部に進出させると共に、X軸モータ53及びY軸モータ63を動作させて、研削砥石11がシリンダ部Cの内周面C0に当接しながら回転移動するようにX軸テーブル51及びY軸テーブル61を変位させてシリンダ部Cの内周面C0を研削する。
具体的には、制御部40は、自転モータ17を動作させて研削砥石11を中心線Z1周りに回転(自転)させると共に、Z軸モータ18を動作させて研削テーブル15を、研削砥石11がワークWの上面よりも上方にある所定の待機位置から研削砥石11がシリンダ部C内に位置する研削位置までZ軸方向の下側へ移動させる。つまり、研削砥石11を自転させながらシリンダ部C内に進出させる。
また、制御部40は、X軸モータ53及びY軸モータ63を動作させて、研削砥石11の外周面が研削加工対象となるシリンダ部Cの内周面C0に当接するように研削砥石11を変位させ、さらに、研削砥石11がシリンダ部Cの内周面C0に当接しながら回転移動するように研削砥石11を変位させる。このようにX軸テーブル51をX軸方向に変位させると共にY軸テーブル61をY軸方向に変位させることにより、研削砥石11がシリンダ部Cの内部において内周面C0に当接しながら該内周面C0に沿って回転移動することとなる。
さらに、制御部40は、自転モータ17と同時に、Z軸モータ18を動作させて研削テーブル15をZ軸ガイド16に沿ってZ軸方向に往復移動させる。その結果、研削砥石11が、Z軸方向に上下動する。
以上のような研削砥石11の自転動作、研削砥石11のX,Y軸方向変位、研削砥石11の上下動からなる研削加工動作により、研削砥石11が研削加工対象となるシリンダ部Cの内部において内周面C0に自転しつつ、該シリンダ部Cの内周面C0に沿って回転移動し、研削加工対象となるシリンダ部Cの内周面C0が研削される。
各研削加工位置において研削加工対象となるシリンダ部Cの内周面C0の研削が完了すると、制御部40は、X軸モータ53及びY軸モータ63を動作させて研削砥石11を元の位置(中心線Z1が各シリンダ部Cの内周面C0の中心線ZCと一致する位置)に戻し、Z軸モータ18を動作させて研削テーブル15を研削位置から待機位置までZ軸方向の上側へ移動させる。
[ホーニング加工動作制御]
制御部40は、ワーク搬送部30によってホーニング加工位置に配置されてホーニング加工対象となるシリンダ部C(第1~第4シリンダ部C1~C4)に対し、ホーニング加工部20の拡張モータ27、回転モータ28及びZ軸モータ29を動作させて複数のホーニング砥石21が放射状に装着された砥石ホルダ22cをシリンダ部Cの内部に進出させて自転させることにより、シリンダ部Cの内周面C0を研磨する。なお、ホーニング加工動作制御は、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
以上のような制御部40による内周面加工制御により、実施形態2においても、ワークWは、ワーク搬送部30によるワーク搬送動作により、搬出入位置、第1加工位置、第2加工位置、第3加工位置、第4加工位置、第5加工位置、第6加工位置の順に繰り返し配置される。そして、研削加工部10による研削加工動作により、ワークWが第1~第4加工位置にあるときには、第1シリンダ部C1~第4シリンダ部C4の内周面C0に対する研削加工が行われる。また、ホーニング加工部20によるホーニング加工動作により、ワークWが第3~第6加工位置にあるときには、第1シリンダ部C1~第4シリンダ部C4の内周面C0に対するホーニング加工が行われる。
つまり、実施形態2においても、制御部40による上記内周面加工制御により、ワークWの4つのシリンダ部C1~C4がその配列順(第1シリンダ部C1、第2シリンダ部C2、第3シリンダ部C3、第4シリンダ部C4の順)に研削加工位置とホーニング加工位置とに順に配置され、4つのシリンダ部C1~C4の内周面C0に対してその配列順に研削加工とホーニング加工とが順に行われる。また、ワークWが第3加工位置にあるときには、第3シリンダ部C3の内周面C0に対する研削加工と第1シリンダ部C1の内周面C0に対する研削加工とが並行して行われ(図16を参照)、ワークWが第4加工位置にあるときには、第4シリンダ部C4の内周面C0に対する研削加工と第2シリンダ部C2の内周面C0に対する研削加工とが並行して行われる(図17を参照)。
以上のように、実施形態2においても、ワークWが第3及び第4加工位置にあるときには、研削加工部10による研削加工動作とホーニング加工部20によるによるホーニング加工動作とが同時に行われるが、本実施形態2では、研削加工動作中にワークWを変位させない。そのため、研削加工動作とホーニング加工動作とを並行して行う際に、ホーニング加工対象となるシリンダ部Cの中心線ZCとホーニング加工部20の砥石中心線Z2(複数の砥石片21aに外接する円筒の中心線)とが、研削加工動作に伴うワークWの変位によってずれてしまうことがなく、砥石片21aの偏摩耗の発生を抑制することができ、高精度なホーニング加工を行うことができる。
《その他の実施形態》
上記各実施形態では、ワークWを研削加工位置とホーニング加工位置に配置する移動機構を、ワークWを保持した状態で上記研削加工位置と上記ホーニング加工位置とに搬送するワーク搬送部30によって構成していた。しかしながら、移動機構は、ワーク搬送部30に限られず、ワークWを移動させるのではなく、研削加工部10及びホーニング加工部20を移動させるものであってもよい。また、移動機構は、研削加工部10とホーニング加工部20とワークWの全てを移動させるものであってもよい。
また、研削加工部10は、上記各実施形態で開示されたもの限られず、研削砥石11を自転させつつシリンダ部Cの内周面C0を研削するものであればいかなる構成であってもよい。
また、ホーニング加工部20も同様に、上記各実施形態で開示されたもの限られず、複数のホーニング砥石21が放射状に装着される砥石ホルダ22cを自転させてシリンダ部Cの内周面C0を研磨するものであればいかなる構成であってもよい。
さらに、上記各実施形態において、研削加工部10及びホーニング加工部20の少なくとも一方をX軸方向に移動可能に構成し、砥石ホルダ22cの中心線Z2と研削加工部10の研削砥石11の中心線Z1との間隔を変更できるように構成してもよい。そして、内周面加工制御において、第3シリンダ部C3の内周面C0の研削加工と第1シリンダ部C1の内周面C0のホーニング加工とを並行して行い、第4シリンダ部C4の内周面C0の研削加工と第2シリンダ部C2の内周面C0のホーニング加工とを並行して行うのではなく、第4シリンダ部C4の内周面C0の研削加工と第1シリンダ部C1の内周面C0のホーニング加工とを並行して行うようにしてもよい。また、ワークWが5つ以上のシリンダ部Cを有するものである場合、例えば、等間隔で一列に並ぶ6つのシリンダ部Cを有する場合には、内周面加工制御において、第4シリンダ部C4の内周面C0の研削加工と第1シリンダ部C1の内周面C0のホーニング加工とを並行して行い、第5シリンダ部C5の内周面C0の研削加工と第2シリンダ部C2の内周面C0のホーニング加工とを並行して行い、第6シリンダ部C6の内周面C0の研削加工と第3シリンダ部C3の内周面C0のホーニング加工とを並行して行うようにしてもよい。
また、上記各実施形態において、ワーク搬送部30を、ワークテーブル34の他にツールテーブルを搬送可能に構成し、該ツールテーブルに、例えば、砥石径Rの異なるホーニングヘッド20aを複数種類用意し、ホーニングヘッド20aを付け替えることにより、様々な直径のシリンダボアBに対応できるように構成してもよい。
さらに、上記実施形態1では、研削加工動作中にワークWがX,Y軸方向に変位可能に構成され、実施形態2では、研削加工動作中に研削砥石11がX,Y軸方向に変位可能に構成されている。そのため、上記各実施形態によれば、ワークWの複数のシリンダボアBの断面形状が円形でなくても、楕円形やその他複雑な形状であっても研削砥石11を内周面に沿って移動させて内周面を研削する所謂プロファイル研削が可能である。