JP7104383B2 - 防護体 - Google Patents
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Description
そのため、切羽崩落のおそれがある地山では、切羽に対して鏡吹付けコンクリートや鏡止ボルト等の切羽防護対策を講じることで安全性を確保するのが一般的である。ところが、事前の切羽防護対策を講じている場合や、切羽崩落の危険性がないと予想された場合であっても、予期せぬ切羽崩落が生じるおそれがある。
そのため、特許文献2には、切羽の直下で作業する作業員の上方に配設される肌落ち災害防止装置が開示されている。この肌落ち災害防止装置は、ドリルジャンボによって張り渡された2本のワイヤと、作業員の移動に伴ってワイヤに沿ってスライドする衝撃吸収体とを備えている。衝撃吸収体は、腰ひもを介して作業員と連結されていることで、作業員の移動に追従する。
このような観点から、本発明は、コンパクトで取り扱い易く、かつ作業の妨げになり難く、なおかつ、作業員の安全性を確保することを可能とした防護体を提案することを課題とする。
かかる防護体によれば、肌落ち等が生じた場合であっても、落石等は衝撃吸収部材によって受け止められるため、切羽の直下で作業を行う作業員の安全性を確保することができる。しかも、作業員は、防護体の下方において自由に移動することができるため、作業性に優れている。また、衝撃吸収部材は、横張材と補強材とによって下方から支持されているため、衝撃吸収部材の撓みが防止されている。そのため、衝撃吸収部材の厚みを小さくすることができる。衝撃吸収部材の厚みが小さければ、収納時のコンパクト化が可能であるとともに、着脱時に取り扱い易い。
なお、前記張設材は、前記2本の横張材と2本の縦張材とが前記衝撃吸収部材の下面の前後左右に配設された枠状の部材であることが望ましい。また、前記補強材は、枠状の前記張設材の内側空間に配設された格子状部材であるのが望ましい。
また、前記張設材の端部には、ドリルジャンボのガイドシェルに取り付けるための取付部が形成されているのが望ましい。
さらに、前記衝撃吸収部材が、静電気防止材により構成されていれば、静電気によるダイナマイトへの引火を防止することができる。
本実施形態では、トンネル工事における切羽Kでの作業時に使用する防護体1について説明する。防護体1は、切羽崩落時の落下物を受け止めることで、作業員の安全性を確保するものである。
防護体1は、図1に示すように、切羽Kの前面に、ドリルジャンボのブームBを利用してトンネル横断方向に横架されている。本実施形態の防護体1は、トンネルのスプリングライン(SL)付近において、トンネル断面の略全幅に横架されている。なお、防護体1の幅(左右の長さ)は限定されるものではない。例えば、防護体1の幅をトンネル中心から左右のいずれか一方のみに横架され得る長さとしてもよい。また、防護体1の高さ位置も作業員の上方であれば限定されるものではない。
衝撃吸収部材2は、保持部材3を介して切羽Kの前面に複数並設されている。衝撃吸収部材2は、落下物(例えば、重量30kg程度の岩塊)を受け止めることが可能な吸収性と耐力とを備えている。衝撃吸収部材2は、図3に示すように、板状部材21と、板状部材21の表面を覆う一対の被覆シート22とにより構成されている。
板状部材21は、厚さが40mmの高発泡ポリエチレン製の板材である。板状部材21は、長方形状を呈していて、長手方向がトンネル軸方向と平行となるように配置されている。板状部材21の形状寸法は、切羽崩落時の落下物を受け止めることが可能であれば限定されるものではなく、板状部材21の材質や強度等に応じて適宜決定すればよい。さらに板状部材21を構成する材料は、高発泡ポリエチレンに限定されるものではない。本実施形態の衝撃吸収部材2は、被覆シート22により板状部材21を覆うことにより防水性が確保されている。
隣り合う衝撃吸収部材2同士は、保持部材3によって連結されている。なお、衝撃吸収部材2同士は、互いの被覆シート22同士を接合することにより連結してもよい。また、衝撃吸収部材2同士は、保持部材3以外の連結部材を介して連結してもよい。
本実施形態では、衝撃吸収部材2として、圧縮試験による圧縮硬さ(80%圧縮)が0.50~0.56Mpaの範囲内、曲げ試験による降伏点応力が0.14Mpa以上、硬球落下試験における反発高さが55~60%の範囲内の高発泡ポリエチレン板材を使用する。なお、圧縮硬さの80%圧縮とは、衝撃吸収部材2の厚さを80%にするために要する圧縮力である。
張設材4は、2本の横張材41,41と2本の縦張材42,42とにより枠状に形成されている。なお、張設材4は、少なくとも2本の横張材41,41を備えていればよく、必ずしも枠状である必要はない。また、張設材4は、3本以上の横張材41,41,…が並設されたものであってもよい。
2本の縦張材42,42は、横張材41と直交している。すなわち、縦張材42は、トンネル軸方向と略平行となるように、2本の横張材41,41の端部に横架されている。横張材41と縦張材42は、互いに縫い付けられていることで、一体に固定されている。なお、各縦張材42は、衝撃吸収部材2の下面左端または下面右端に固定してもよい。
補強材5は、2本の横張材41,41の間に横架された複数の縦材51,51,…と、2本の縦張材42,42の間に横架された横材52,52とからなる。補強材5の周縁(縦材51および横材52の端部)は張設材4に縫い付けられている。また、縦材51と横材52は、両者の交差部において互いに縫い付けられている。なお、補強材5は、少なくとも縦材51を備えていれば良く、格子状である必要はない。補強材5は、必要に応じて衝撃吸収部材2の下面に固定する。このとき、補強材5の衝撃吸収部材2への固定方法は限定されるものではなく、例えば、接着あるいや融着等すればよい。また、補強材5(縦材51または横材52)には、必要に応じて変形を抑制するための板材を添設してもよい。衝撃吸収部材2は、隣り合う縦材51同士の間に配設されている。縦材51は、衝撃吸収部材2同士の隙間の下側を遮蔽している。衝撃吸収部材2の縁部は、縦材51に上載されているとともに、必要に応じて縦材51に固定されている。なお、縦材51は、衝撃吸収部材2の幅方向中央部に配設されていてもよく、縦材51の配設ピッチおよび本数は限定されるものではない。
分割防護体11のトンネル中央側端部には、各横張材41,41にそれぞれ2つの連結部44,44が間隔をあけて形成しておく。連結部44は、横張材41の端部を環状に折り介して縫い付けることにより形成してもよいし、他の帯状材(ポリエステルベルト等)により形成された環状部分(いわゆるアイであって、例えば、スリングベルトの端部等)を横張材41に縫い付けることにより形成してもよい。なお、連結部44の数は限定されるものではなく、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、連結部44の形成方法は限定されるものではない。トンネル中央部では、トンネル中央に配設されたガイドシェル(ブームB)の上で、分割防護体11の連結部44同士をフック状の治具等(例えば、カラビナ45)を介して連結する。このとき、カラビナ45を係止する連結部44を選択することにより、防護体1の長さ(分割防護体11,11を連結した際の長さ)を調節する。また、カラビナ45を連結する連結部44の位置を移動させた際(防護体1の全長を短くした際)には、必要に応じて分割防護体11の端部に設置された衝撃吸収部材2を撤去する。なお、図5では、分割防護体11同士の接合部を表現するため、当該接合部における衝撃吸収部材2同士の間隔(ブームBと衝撃吸収部材2との間隔)が大きく表示されているが、分割防護体11同士の間隔は、切羽崩落時の落石がすり抜けることがない大きさとする。ここで、分割防護体11同士の連結方法は限定されるものではない。
防護体1は、張設材4の端部(取付部43)をドリルジャンボのガイドシェル(ブームB)に取り付けることで設置が完了するため、着脱が容易である。そのため、トンネル工事の施工工程に大きな影響を与えることなく、切羽Kへの防護体1の設置を行うことができる。また、防護体1によれば、作業員は、防護体1の下方において自由に移動することができるため、作業性に優れている。
衝撃吸収部材2および保持部材3を比較的軽量な材料を組み合わせることにより形成しているため、取り扱いやすい。また、衝撃吸収部材2が、静電気防止材であるため、静電気によるダイナマイトへの引火を防止することができ、安全である。また、衝撃吸収部材2が防水性を備えているため、水分を吸収して重量が大きくなることがない。したがって、湧水の多い場所においても取り扱い性に優れている。
さらに、保持部材3として、ポリエステルベルトを使用しているため、落石等の衝撃や、工時に使用する機器設備と接触した場合であっても、衝撃吸収部材2が破損し難い。
第二の実施形態の防護体1は、第一の実施形態の防護体1と同様に、切羽Kの前面に、ドリルジャンボのブームBを利用してトンネル横断方向(左右方向)に横架する(図1参照)。
防護体1は、図6(a)に示すように、衝撃吸収部材2と保持部材3とを備えている。衝撃吸収部材2は、保持部材3を介して切羽Kの前面に複数並設されている。なお、衝撃吸収部材2の詳細は、第一の実施形態の衝撃吸収部材2と同様なため、詳細な説明は省略する。
張設材4は、切羽面と平行に並設された2本の横張材41,41からなる。2本の横張材41,41は、切羽面と平行に並設されている。すなわち、2本の横張材41,41は、トンネルのSL(スプリングライン)と略平行で、かつ、横張材41同士は、トンネル軸方向に間隔をあけて配設されている。また、各横張材41は、衝撃吸収部材2の下面前端または下面後端に配設されている。すなわち、衝撃吸収部材2は、2本の横張材41,41の上面に横架されている。本実施形態の横張材41は、衝撃吸収部材2の下面に固定する。なお、横張材41と衝撃吸収部材2との固定方法は限定されるものではなく、例えば、接着してもよいし、縫い付けてもよい。また、横張材41は、必ずしも衝撃吸収部材2に固定する必要はない。
また、防護体1によれば、作業員は、防護体1の下方において自由に移動することができるため、作業性に優れている。
補強材5は、内部に補強板53が挿入された縦材51により形成されているため、折れることがない。そのため、防護体1がトンネル軸方向に対して撓むことが防止されて、防護体1によって前後方向の保護範囲が狭まることがない。なお、補強板53は、軽量な材料により形成されているため、補強板53を使用しても、防護体1の取り扱い性が低下することはない。
この他の第二の実施形態に係る防護体1の作用効果は、第一の実施形態の防護体1と同様なため、詳細な説明は省略する。
前記実施形態では、切羽Kに防護体1を設置する場合について説明したが、防護体1の設置個所は限定されるものではなく、例えば、側壁に沿って設置してもよい。
また、防護体1は、必ずしもドリルジャンボを利用して設置する必要はなく、例えば、設置済の支保工や、ロックボルトの端部等に固定してもよい。
また、図示は省略するが、複数の衝撃吸収部材2を積層していてもよい。また、衝撃吸収部材2として、複数の板状部材21が積層されたものを使用してもよい。
さらに、一対の保持部材3,3によって、衝撃吸収部材2を挟んでもよい。
また、補強板53は、補強材5(縦材51)に設けるのではなく、衝撃吸収部材2の下面に直接添設してもよい。
2 衝撃吸収部材
21 板状部材
22 被覆シート
3 保持部材
4 張設材
41 横張材
42 縦張材
43 取付部
5 補強材
51 縦材
52 横材
53 補強板
6 収納袋
B ブーム
K 切羽
Claims (4)
- トンネル横断方向に横架された防護体であって、
落下物を受け止める複数の衝撃吸収部材と、前記衝撃吸収部材を保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は、少なくとも切羽面と平行に並設された2本の横張材を備える張設材と、前記2本の横張材の間に横架されて前記衝撃吸収部材の下面を支持する補強材と、を備えていて、
複数の前記衝撃吸収部材は、前記保持部材を介して切羽の前面において並設されていることを特徴とする、防護体。 - 前記張設材は、前記2本の横張材と2本の縦張材とにより枠状に形成されており、
前記2本の横張材は、前記衝撃吸収部材の下面前端および下面後端に配設されていて、
前記補強材が、枠状の前記張設材の内側空間に配設された格子状部材であることを特徴とする、請求項1に記載の防護体。 - 前記張設材の端部に、ドリルジャンボのガイドシェルに取り付け可能な取付部が形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の防護体。
- 前記衝撃吸収部材が、静電気防止材からなることを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の防護体。
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