JP7099123B2 - 抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品、ならびに抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シート - Google Patents

抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品、ならびに抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シート Download PDF

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Description

本開示は、抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する性物品、ならびに抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シートに関する。
家具、家電製品、調理用機器、医療機器、食品包装材等の物品、建築物の内外装用資材、車両内装材等、様々な分野においては、清潔な環境を保つために、物品表面に対し、細菌等の付着や増殖を防ぐ抗菌性の付与、およびカビ等の繁殖を防ぐ抗カビ性の付与が求められている。
物品表面に抗菌機能を付与する手段として、例えば表面に微細凹凸形状を賦形することが知られている。例えば特許文献1では、表面の少なくとも一部に延びる経路であって、該経路が、表面の少なくとも一部の上または中に配置された複数の離間した特徴部によって画成された物品が開示されている。特徴部は、複数の集団で設けられており、上記集団内では、特徴部は所定の平均距離で離間されて、複数の特徴部を横断する経路を画成している。また、各特徴部は、隣接する特徴部上の表面に対して実質的に平行の表面を有し、その隣接する特徴部から隔てられている。すなわち、上記集団内では、特徴部が凸であり、隣接する特徴部間が凹である微細凹凸が形成されている。特許文献1によれば、物品表面に、上記のような特徴部の集合が形成されていることで、細菌細胞の移動を制御することができる。
また、特許文献2では、平面視が略四角形状の複数の突起部がシート表面に形成されることで凹凸群を形成してなる微細凹凸表面を含む非電導性抗菌シートが開示されている。上記凹凸群は、所定の高さおよび裾幅を有する突起部が、X方向およびY方向にそれぞれX方向スペースおよびY方向スペースを空けて規則的に形成されており、突起部の裾幅とX方向スペースの幅とが同一幅になっている。特許文献2によれば、上記凹凸群がこのような構造を有することで、微細凹凸表面に静的に接している細菌がX方向スペースにトラップされるのを抑制することができる。
また、従来、各種物品に抗カビ性を付与するために、例えば防カビ剤を用いる方法が提案されている。例えば本出願人は、特許文献3において、基材上に防カビ剤を含有する発泡剤含有樹脂層を有する積層シートを開示している。
特表2017-523851号公報 国際公開2015-072364号 特開2014-188940号公報
物品表面に賦形された微細凹凸形状の凹部および凸部の大きさや形状、配置間隔によっては、菌やカビの増殖抑制効果が十分に得られない場合がある。例えば上記特許文献1および2に開示される微細凹凸は、特徴部や突起部の頂部に所望の大きさの平坦領域が存在するため、微細凹凸に付着した菌やカビが上記平坦領域で増殖しやすくなると推量される。
また、防カビ剤等の抗微生物薬の使用量が増大していくにつれ、その薬剤が効かない微生物が発生するという問題が生じており、防カビ剤等の抗微生物薬を用いずにカビの繁殖を抑制する手段が求められている。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、表面抗菌性および/または抗カビ性に優れた抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品、ならびに抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シートを提供することを主目的とする。
本開示の1実施形態は、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続して形成された凹凸周期構造を表面に有し、上記凸部の頂角が110°以下であり、上記凹部の頂角が120°以下であり、上記凸部および上記凹部の高低差が0.035μm以上100μm以下である、抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品を提供する。
また、本開示の1実施形態は、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続して形成された賦形用凹凸周期構造を表面に有し、上記凹部の頂角が110°以下であり、上記凸部の頂角が120°以下であり、上記凸部および上記凹部の高低差が0.035μm以上100μm以下である、抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シートを提供する。
本開示によれば、表面抗菌性および/または抗カビ性に優れた抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品を提供することができるという効果を奏する。
本開示の1実施形態である抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品の一例を示す概略斜視図である。 図1のX-X線断面図である。 図1および図2中の領域Aの概略平面図である。 図1および図2中の領域Aの概略断面図である。 凹凸周期構造の一例を示す概略断面図である。 凹凸周期構造の一例を示す概略平面図および斜視図である。 凹凸周期構造の一例を示す概略斜視図および断面図である。 凹凸周期構造の一例を示す説明図である。 本開示の1実施形態である抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品の一例を示す概略斜断面図である。 本開示の1実施形態である抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品の一例を示す概略断面図である。 本開示の1実施形態である抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品の一例を示す概略断面図である。 本開示の1実施形態である抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シートの一例を示す概略斜視図である。 図12のX-X線断面図である。 図12および図13中の領域Aの概略平面図である。 図12および図13中の領域Aの概略断面図である。 賦形用凹凸周期構造の一例を示す概略断面図である。 賦形用凹凸周期構造の一例を示す概略平面図および斜視図である。 賦形用凹凸周期構造の一例を示す概略断面図である。 実施例10Bのカビ抵抗性試験後の顕微鏡写真である。 実施例11Bのカビ抵抗性試験後の顕微鏡写真である。 比較例5のカビ抵抗性試験後の顕微鏡写真である。
以下、本開示の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。また、説明の便宜上、上方又は下方という語句を用いて説明する場合があるが、上下方向が逆転してもよい。
また、本明細書において、ある部材又はある領域等のある構成が、他の部材又は他の領域等の他の構成の「上に(又は下に)」あるとする場合、特段の限定がない限り、これは他の構成の直上(又は直下)にある場合のみでなく、他の構成の上方(又は下方)にある場合を含み、すなわち、他の構成の上方(又は下方)において間に別の構成要素が含まれている場合も含む。
以下、本開示の抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品、ならびに抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シートについて、それぞれ説明する。なお、本開示においては、「シート」および「フィルム」を同義として用いる場合がある。
A.抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品
本開示の1実施形態である抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品(以下、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品とする。)は、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続して形成された凹凸周期構造を表面に有し、上記凸部の頂角が110°以下であり、上記凹部の頂角が120°以下であり、上記凸部および上記凹部の高低差が0.035μm以上100μm以下である。
図1は、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品の一例を示す概略斜視図であり、図2は図1のX-X線断面図である。また、図3および図4は、図1および図2中の領域Aの概略平面図および断面図である。本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品10は、複数の凸部2および複数の凹部3が交互に連続して形成された凹凸周期構造1を表面に有する。凹凸周期構造1は、凸部2の頂角θ、凹部3の頂角θ、凸部2および凹部3の高低差Hが、それぞれ所定の範囲にある。
本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品において、凹凸周期構造の凸部の頂角および凹部の頂角、ならびに凸部および凹部の高低差とは、別段の断りが無い限り、隣接する2以上の凸部の頂部を通る凹凸周期構造の厚さ方向の断面における凸部の頂角および凹部の頂角、ならびに凸部および凹部の高低差をいう。詳しくは、図1~図3で例示するように、凸部が頂部稜線を有さない場合、隣接する2以上の凸部の頂部を通る凹凸周期構造の厚さ方向の断面とは、別段の断りが無い限り、隣接する2以上の凸部の頂部を、凸部の配列方向と平行する方向で切断したときの凹凸周期構造の厚さ方向の断面とする。また、後述する図6で例示するように、凸部が頂部稜線を有する場合、隣接する2以上の凸部の頂部を通る凹凸周期構造の厚さ方向の断面とは、別段の断りが無い限り、隣接する2以上の凸部の頂部を、稜線方向と直交する方向で切断したときの凹凸周期構造の厚さ方向の断面とする。なお、隣接する2以上の凸部の頂部を通る凹凸周期構造の厚さ方向の断面のことを、凹凸周期構造の縦断面とする場合がある。また、凹凸周期構造の縦断面における凸部の断面形状および凹部の断面形状のことを、それぞれ凸部の縦断面形状および凹部の縦断面形状とする場合がある。
また、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品において、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続するとは、凹凸周期構造の縦断面において、隣接する2つの凸部間に、底部が先鋭である凹部が位置し、隣接する2つの凹部間に、頂部が先鋭である凸部が位置することをいう。
本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品によれば、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続し、凸部の頂角および凹部の頂角、ならびに凸部および凹部の高低差が、それぞれ所定の範囲にある凹凸周期構造(以下、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品において、特定の凹凸周期構造とする場合がある。)を有することで、菌の増殖が抑制され、優れた表面抗菌性を発揮することができる。
上記特定の凹凸周期構造を有することで菌の増殖が抑制される理由については、確かではないが、上記特定の凹凸周期構造において、上記特定の凹凸周期構造の厚み方向と直交する仮想面(以下、単に仮想面と称する場合がある。)と平行または略平行な位置に、菌が増殖するのに十分な面積の平坦領域が少ないためと推量される。すなわち、上記凸部は、所定の頂角を有することで、根元(凹部の底部)から頂部に向かって先細りし、頂部が先鋭な形状となるため、頂部には、菌が増殖するのに十分な面積を有する上記平坦領域が形成されにくい。よって、凸部に菌が付着しても、上記凸部の頂部には十分な面積の平坦領域が無いため、凸部の頂部上での菌の動きが制限されて各凸部の頂部で菌が留まると推量される。このように凸部の頂部によるピン止め効果が発揮される結果、菌の増殖やコロニーの形成が抑制されると推量される。また、上記凸部は、先鋭な頂部を有することで、凸部に付着した菌を上記頂部で突き刺して死滅させることができる。その結果、菌の増殖が抑制されると推量される。同様に、上記凹部は、所定値以下の頂角を有することで、凹部の開口から底部に向かって先細りし、底部が先鋭な形状となるため、底部には、菌が増殖するのに十分な面積を有する平坦領域が形成されにくい。よって、凹部に菌が付着しても、上記凹部の底部には十分な面積の平坦領域が無いため、上記凹部の底部での菌の動きが制限されて各凹部の底部に菌が留まる結果、菌の増殖やコロニーの形成が抑制されると推量される。また、上記凹凸周期構造において、上記凸部および凹部の高低差が所定の範囲にあることで、凹部に入った菌が凸部を超えて増殖しにくくなると推量される。なお、仮想面と平行または略平行に位置する平坦領域には、曲率半径が大きい凸部頂部や凹部底部の曲面も含まれる。
また、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品によれば、特定の凹凸周期構造を有することで、カビの繁殖が抑制され、優れた抗カビ性を発揮することができる。
上記特定の凹凸周期構造を有することでカビの繁殖が抑制される理由については、確かではないが、上記特定の凹凸周期構造において、仮想面と平行または略平行な位置に、カビが繁殖するのに十分な面積の平坦領域が少ないためと推量される。
ここで、通常、カビの胞子が、基材等に付着すると、発芽して菌糸を発生する。菌糸は、通常直径1μm~10μm程度の太さの糸状の構造を有し、基材表面を分枝しながら先端成長によって伸長する。菌糸が先端を伸ばす際には、菌糸先端でのアクチンの重合化、酵素の分泌、細胞の伸長等が周期的に起きており、菌糸がいくつかの段階的なステップを周期的に繰り返すことで徐々に成長することが近年明らかにされた。菌糸が十分に成長すると、多数ある先端のうち、一部の先端が生殖にかかわる構造、すなわち胞子嚢柄や分生子柄を形成する。そして、上記構造から胞子が形成されて、カビが増殖する。
本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品の表面に付着した胞子は、発芽して菌糸を発生するものの、菌糸の成長が阻害され、特に菌糸の分岐が抑制されると推量される。ここで、菌糸は、湿潤環境下で成長しやすく、より湿潤した環境を求めて伸長する傾向がある。本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品が有する凹凸周期構造においては、上記凸部が、所定の頂角を有することで、根元(凹部の底部)から頂部に向かって先細りし、頂部が先鋭な形状となるため、頂部には、上記平坦領域が形成されにくい。よって、凸部に付着した水滴は、上記凸部の頂部には十分な面積の平坦領域が無いため、凹部に流れ込みやすく、凸部の頂部の水はけが良いため、凸部の頂部に比べ、凹部がより湿潤した環境下となりやすい。そのため、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品の表面で発生した菌糸は、凹部に入り込みやすい。しかし、凹部に入り込んだ菌糸は、凸部に衝突する物理的刺激により、菌糸が先端を伸ばす際に周期的に起きる各ステップが妨げられることによって、菌糸の成長が阻害されると推量される。また、凸部の頂部では、十分な面積の平坦領域が無いことから、十分な水分が得られないため菌糸が成長し難いと推量される。また、上記凹凸周期構造において、上記凸部および凹部の高低差が所定の範囲にあることで、凹部に入り込んだ菌糸が、凸部の壁面に衝突することによる物理的刺激により、菌糸が先端を伸ばす際に周期的に起きる各ステップが妨げられやすくなり、凹部に入り込んだ菌糸の成長が阻害されやすくなると推量される。さらに、上記凸部および凹部の高低差が所定の範囲にあることで、水はけ効果が向上し、菌糸の成長が阻害されやすくなると推量される。このようなことから、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品においては、菌糸の成長、特に、菌糸の分枝が抑制されることにより、菌糸の先端の数が増大せず、菌糸の先端において上記生殖にかかわる構造を形成することが抑制されることから、カビの繁殖が抑制されると推量される。
本開示の抗菌性および/または抗カビ性は、一般にカビの繁殖に適するとされる条件(例えば、温度20℃以上30℃以下、湿度80%RH以上)においてもカビの繁殖を抑制する効果を発揮することができる。
また、従来、防カビ剤により抗カビ効果を得ようとする技術があるが、本開示によれば、防カビ剤等の抗微生物薬を用いずにカビの繁殖を抑制することができる。
以下、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品の構造や態様について、詳細に説明する。
1.凹凸周期構造
本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品における凹凸周期構造は、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続して形成された構造である。上記凹凸周期構造は、抗菌性および/または抗カビ性物品の表面に形成されている。
上記凹凸周期構造において、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続するとは、上記凹凸周期構造の縦断面において、隣接する2つの凸部間に、底部が先鋭である凹部が位置し、隣接する2つの凹部間に、頂部が先鋭である凸部が位置することをいう。上記凹凸周期構造の縦断面において、隣接する2つの凸部の斜辺に囲まれた領域が凹部であり、隣接する2つの凸部の根本が連結する部分に上記凹部の底部先端が位置し、また、隣接する2つの凹部の斜辺に囲まれた領域が凸部であり、隣接する2つの凹部の開口が接する部分に上記凸部の頂部先端が位置する。なお、凸部の根本とは、上記凹凸周期構造の厚み方向と直交する仮想面を想定した場合に、上記仮想面における上記凸部の断面積が最大となる位置である。
ここで、上記凸部の頂部が先鋭であるとは、図1~図4で例示するように、凸部2の縦断面形状において、凸部2の頂部先端に、凸部2の頂部を形成する一対の斜辺の交点C1が位置する場合、すなわち頂部がピン角である場合のみならず、図5(a)で例示するように、凸部2の縦断面形状において、凸部2の頂部先端が所望の曲率半径を有する曲面である場合や、図5(b)で例示するように、凸部2の縦断面形状において、凸部2の頂部先端が所望の幅を有する平坦面である場合も含む。具体的には、凸部の頂部先端が曲面である場合、上記凸部の頂部が先鋭であるとは、上記曲面の曲率半径が10μm以下であることをいい、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。また、凸部の頂部先端が平坦面である場合、上記凸部の頂部が先鋭であるとは、上記平坦面の幅が1μm以下であることをいい、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。凸部の頂部先端が曲面や平坦面であっても、曲面の曲率半径や平坦面の幅が上記範囲にあることで、菌が増殖しにくく、頂部がピン角である場合と同様の効果を発揮することができる。また、凸部の頂部先端が曲面や平坦面であっても、曲面の曲率半径や平坦面の幅が上記範囲にあることで、水はけが良く、凸部の頂部での菌糸の成長を抑制しやすく、頂部がピン角である場合と同様の効果を発揮することができる。なお、上記凸部の頂部先端の曲率半径は、凸部の縦断面形状から求めることができる。また、上記凸部の頂部先端の平坦面の幅とは、上記凸部が頂部稜線を有する場合であれば、上記平坦面の稜線方向と直交方向の幅をいい、上記凸部が頂部稜線を有さない場合であれば、上記平坦面の最大辺をいい、これらは凸部の縦断面形状または平面視形状から求めることができる。図5(a)、(b)は、凹凸周期構造の一例を示す概略断面図である。
また、上記凹部の底部が先鋭であるとは、図1~図4で例示するように、凹部3の縦断面形状において、凹部3の底部先端に、凹部3の底部を形成する一対の斜辺の交点C2が位置する場合、すなわち凹部の底部がピン角の場合のみならず、図5(a)で例示するように、凹部3の縦断面形状において、凹部3の底部先端が所望の曲率半径を有する曲面である場合や、図5(b)で例示するように、凹部3の縦断面形状において、凹部3の底部先端が所望の幅を有する平坦面である場合も含む。具体的には、凹部の底部先端が曲面である場合、上記凹部の底部が先鋭であるとは、上記曲面の曲率半径が10μm以下であることをいい、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。また、凹部の底部先端が平坦面である場合、上記凹部の底部が先鋭であるとは、上記平坦面の幅が1μm以下であることをいい、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。凹部の底部先端が曲面や平坦面であっても、曲面の曲率半径や平坦面の幅が上記範囲にあることで、菌が増殖しにくく、底部がピン角である場合と同様の効果を発揮することができる。なお、上記凹部の底部先端の曲率半径は、凹部の縦断面形状から求めることができる。また、上記凹部の底部先端の平坦面の幅とは、上記凹部が底部稜線を有する場合であれば、上記平坦面の稜線方向と直交方向の幅をいい、上記凹部が底部稜線を有さない場合であれば、上記平坦面の最大辺をいい、これらは縦断面形状または平面視形状から求めることができる。
上記凸部の頂角は、110°以下であればよく、中でも100°以下であることが好ましく、90°以下であることがより好ましい。上記凸部は、頂角が上記範囲にあることで、根本から頂部に向かって先細りし、頂部が先鋭な形状となる。換言すれば、上記凸部は、上記凹凸周期構造の厚み方向と直交する仮想面における断面積が、根本から頂部に向かって連続的または非連続的に減少する形状となる。このため、凸部の頂部には、上記仮想面と平行または略平行し、かつ、菌やカビの増殖に十分な面積の平坦領域が形成されにくい。そして、このような形状の凸部に菌が付着した場合、上記凸部の頂部での菌の動きが制限されて菌が各凸部の頂部に留まるため、菌の増殖やコロニーの形成を抑制することができる。また、凸部の頂部が先鋭であるため、付着した菌を上記頂部で突き刺して菌を死滅させることができる。一方、このような形状の凸部にカビの胞子が付着した場合、菌糸が発生するものの、上記凸部の頂部では水はけが良く、菌糸の成長が阻害されるため、カビの繁殖を抑制することができる。なお、上記凸部の頂角が上記範囲よりも大きいと、凸部の側面の傾斜が小さくなり、上記斜面と上記仮想面とが平行または略平行に近い状態になるため、菌やカビの増殖が可能となる平坦領域が存在する場合や、凸部の頂部によるピン止め効果や突き刺し効果、水はけ効果が得られにくい場合がある。
上記凸部の頂角は小さいほど好ましく、その下限値は、凹凸周期構造を形成する際の賦形限界に応じて適宜設定することができる。凸部の頂角は、例えば20°以上とすることができ、中でも30°以上であることが好ましく、45°以上であることがより好ましい。
上記凸部の頂角とは、凸部の縦断面形状において頂部先端で交差する一対の斜辺のなす角度をいう。凸部の頂部先端が曲面や平坦面である場合、上記凸部の頂角とは、凸部の縦断面形状において頂部先端の曲面や平坦面と連続する一対の斜辺を延長し、その延長線が交差する点において一対の上記延長線がなす角度をいう。具体的には図4、図5(a)~(b)および後述する図7(b)~(c)においてθで示す部分である。
上記凸部の頂角は、SEMによる断面観察やレーザー顕微鏡によるプロファイル計測により測定することができる。以下、凸部の寸法、凹部の頂角や寸法、隣接する凹部間や凸部間の間隔等も、上記の方法により測定することができる。
一方、上記凹部の頂角は、120°以下であればよく、中でも110°以下であることが好ましく、100°以下であることがより好ましい。上記凹部は、頂角が上記範囲にあることで、開口から底部に向かって先細りし、底部が先鋭な形状となる。換言すれば、上記凹部は、上記凹凸周期構造の厚み方向と直交する仮想面における断面積が、開口から底部に向かって連続的または非連続的に減少する形状となる。このため、凹部の底部には、上記仮想面と平行または略平行し、かつ、菌の増殖に十分な面積の平坦領域が形成されにくい。そして、このような形状の凹部に菌が付着した場合、上記凹部の底部での菌の動きが制限されて菌が各凹部の底部に留まるため、菌の増殖やコロニーの形成を抑制することができる。なお、上記凹部の頂角が上記範囲よりも大きいと、凸部の立ち上がり角度が小さくなるため、凹部に入った菌が凸部を乗り越えやすくなり、凹凸表面で菌が増殖する場合がある。また、凹部の表面積が大きくなり菌が移動可能となることで、上記凹部内で菌が増殖しやすくなる場合がある。
上記凹部の頂角は小さいほど好ましく、その下限値は、凹凸周期構造を形成する際の賦形限界に応じて適宜設定することができる。凹部の頂角は、例えば20°以上とすることができ、中でも30°以上であることが好ましく、45°以上であることがより好ましい。
上記凹部の頂角とは、凹部の縦断面形状において底部先端で交差する一対の斜辺のなす角度をいう。凹部の底部先端が曲面や平坦面である場合、上記凹部の頂角とは、凹部の縦断面形状において底部先端の曲面や平坦面と連続する一対の斜辺を延長し、その延長線が交差する点において一対の上記延長線がなす角度をいう。具体的には図4、図5(a)~(b)および後述する図7(b)~(c)においてθで示す部分である。
上記凹部の頂角は、その凹部と連続する凸部の頂角と同一であってもよく、凸部の頂角よりも大きくてもよく、凸部の頂角よりも小さくてもよい。中でも、上記凹部の頂角は、その凹部と連続する凸部の頂角よりも大きいことが好ましい。凹部の頂角と凸部の頂角とが上記の関係を有することで、凸部の頂部によるピン止め効果や突き刺し効果および凹部による菌の動きの抑制効果が、それぞれ高まるからである。
上記凸部の縦断面形状は、所定の頂角を有すれば、頂部先端を通る上記凹凸周期構造の厚さ方向の軸に対して対称であってもよく、非対称であってもよい。また、上記凹部の縦断面形状は、所定の頂角を有すれば、底部先端を通る上記凹凸周期構造の厚さ方向の軸に対して対称であってもよく、非対称であってもよい。
上記凹凸周期構造の縦断面において、凸部および凹部の高低差(以下、凹凸高低差とする場合がある。)は、0.035μm以上100μm以下であればよく、中でも0.5μm以上75μm以下であることが好ましく、1μm以上50μm以下であることがより好ましい。凹凸高低差が上記範囲にあることで、凸部により発揮される菌の増殖抑制機能と凹部により発揮される菌の増殖抑制効果とのバランスが良好となり、表面抗菌性をより高めることができるからである。また、凹凸高低差が上記範囲にあることで、凸部により発揮される水はけ効果が向上し、カビ繁殖抑制効果が向上して、抗カビ性をより高めることができるからである。また、物品表面において、凹凸周期構造が視認されにくくなり、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品の用途に応じて、意匠性を高めることができるからである。なお、凹凸高低差が上記範囲を超えると、凹部の表面積が増加して、凹部内で菌の動きが制限されず菌が増殖しやすくなる場合がある。一方、上記凹凸高低差が上記範囲を満たないと、凸部の頂部によるピン止め効果や突き刺し効果、水はけ効果が発揮されにくくなり、菌やカビが増殖しやすくなる場合がある。また、凹部に入った菌が凸部を越えて増殖しやすくなる場合がある。また、凹部に入り込んだカビの菌糸が成長しやすくなるおそれがある。凹凸高低差は、上記範囲内であれば、規則的であってもよく、不規則であってもよいが、規則的であることが好ましい。凹凸高低差が不規則であるとは、凹凸周期構造において凹凸高低差が部分的に異なることをいう。
上記凹凸高低差とは、上記凹凸周期構造の縦断面において、上記凸部の最頂部から上記凹部の最底部までの鉛直方向の長さをいい、図4、図5(a)~(b)においてHで示す部分である。
上記凹凸周期構造において、隣接する2つの凹部間の間隔(以下、隣接凹部間距離とする場合がある。)は、隣接する2つの凹部間に、上記2つの凹部と連続する所定の頂角を有する凸部が位置することが可能となる大きさであればよく、例えば、0.05μm以上100μm以下とすることができ、中でも0.5μm以上75μm以下であることが好ましく、1μm以上50μm以下であることがより好ましい。隣接凹部間距離が上記範囲にあることで、凸部により発揮される菌の増殖抑制機能と凹部により発揮される菌の増殖抑制効果とのバランスが良好となり、表面抗菌性をより高めることができるからである。また、隣接凹部間距離が上記範囲にあることで、水はけが良く、凸部の頂部を乾燥状態にしやすく、凸部の頂部での菌糸の成長を抑制しやすく、抗カビ性を高めることができるからである。さらに、凹部において、凸部に衝突する物理的刺激により菌糸が先端を伸ばす際に周期的に起きる各ステップが妨げられ易いことにより、菌糸の成長が抑制されやすく、抗カビ性を高めることができるからである。なお、隣接凹部間距離が上記下限を満たないと、隣接する凸部の頂部が接近して頂部によるピン止め効果や突き刺し効果、水はけ効果が発揮されにくくなり、菌やカビが増殖しやすくなる場合がある。一方、隣接凹部間距離が上記上限を超えると、凹部の表面積が増加して、凹部内で菌の動きが制限されず菌が増殖しやすくなる場合がある。上記隣接凹部間距離は、規則的であってもよく、不規則であってもよいが、規則的であることが好ましい。隣接凹部間距離が不規則であるとは、凹凸周期構造において隣接凹部間距離の大きさが部分的に異なることをいう。
上記隣接凹部間距離とは、凹凸周期構造の縦断面において、一方の凹部の底部先端と、上記一方の凹部と1つの凸部を介して連続する他方の凹部の底部先端と、の間の長さをいい、図4、図5(a)~(b)においてDで示す部分である。凹部の底部先端が曲面や平坦面である場合、隣接凹部間距離は、凹部の縦断面形状において、一方の凹部の底部先端の曲面や平坦面と連続する一対の斜辺を延長したときに一対の延長線が交差する点と、他方の凹部の底部先端の曲面や平坦面と連続する一対の斜辺を延長したときに一対の延長線が交差する点と、を結んだ長さとすることができる。
また、上記凹凸周期構造において、隣接する2つの凸部間の間隔(以下、隣接凸部間距離とする場合がある。)は、隣接する2つの凸部間に、上記2つの凸部と連続する所定の頂角を有する凹部が位置することが可能となる大きさであればよく、上述した隣接凹部間距離の好ましい範囲と同様とすることができる。上記隣接凸部間距離は、規則的であってもよく、不規則であってもよいが、規則的であることが好ましい。隣接凸部間距離が不規則であるとは、凹凸周期構造において隣接凸部間距離の大きさが部分的に異なることをいう。
上記隣接凸部間距離とは、凹凸周期構造の縦断面において、一方の凸部の頂部先端と、上記一方の凸部と1つの凹部を介して連続する他方の凸部の頂部先端との間の長さをいい、図4、図5(a)~(b)においてDで示す部分である。凸部の頂部先端が曲面や平坦面である場合、隣接凸部間距離は、凸部の縦断面形状において、一方の凸部の頂部先端の曲面や平坦面と連続する一対の斜辺を延長したときに一対の延長線が交差する点と、他方の凸部の頂部先端の曲面や平坦面と連続する一対の斜辺を延長したときに一対の延長線が交差する点と、を結んだ長さとすることができる。
上記凹凸周期構造の凹凸形状としては、凹凸周期構造の縦断面において凸部および凹部がそれぞれ所定の頂角を有する形状であれば特に限定されず、例えば、四角錐、三角錐、六角錐等の角錐状乃至これに類似した形状(疑似角錐状)の凸部が形成された凹凸形状;頂部稜線を有する三角柱状乃至これに類似した形状(疑似三角柱状)の凸部が形成された凹凸形状等が挙げられる。図1~図3で例示した凹凸周期構造は、正四角錐状の凸部が形成された凹凸形状であり、図6に例示する凹凸周期構造は、頂部稜線を有する三角柱状の凸部が形成された凹凸形状である。なお、図6の左図は凹凸周期構造の概略平面図であり、右図は凹凸周期構造の概略斜視図である。上記凸部の縦断面形状としては、三角形等が挙げられる。
また、上記凹凸周期構造の凹凸形状は、側面の傾きが変化する箇所を少なくとも1箇所以上有する凸部が形成された形状であってもよい。具体的には、図7(a)~(c)で例示するように、凹凸周期構造1は、凸部2が、側面の傾きが変化する箇所よりも凸部2の頂部側の第1領域2aと、側面の傾きが変化する箇所よりも凸部2の根本側の第2領域2bとを有し、凹部3が、側面の傾きが変化する箇所よりも凹部3の底部側(凸部2の根本側)の第1領域3aと、側面の傾きが変化する箇所よりも凹部3の開口側(凸部2の頂部側)の第2領域3bとを有する形状とすることができる。このような形状とすることで、凸部の頂角と凹部の頂角とを異なる大きさに設定することができる。上記凹凸周期構造の凸部が第1領域および第2領域を有する場合、第1領域の頂角は、第2領域の頂角よりも小さくてもよく(図7(b))、大きくてもよい(図7(c))が、第2領域の頂角よりも小さいことが好ましい。第1領域の頂角と第2領域の頂角との大小関係を上記の関係とすることで、凸部の頂部によるピン止め効果や突き刺し効果、水はけ効果、および凹部による菌の動きの抑制効果をそれぞれ高めることができるからである。また、凹部は流路として機能すると考えられ、第1領域の頂角と第2領域の頂角との大小関係を上記の関係とすることで、凹部に流れ込んだ水滴は、この凹部により形成される流路により、凹凸周期構造の外部に排出されやすく、良好な水はけが得られると推量される。なお、図7(a)~(c)は凹凸周期構造の一例を示す概略斜視図および断面図である。
上記凹凸周期構造の凹凸パターンは特に限定されない。上記凹凸周期構造では、平面視上、凸部および凹部が一次元格子状に形成されていてもよく、二次元格子状に形成されていてもよい。一次元格子状とは、凸部および凹部がそれぞれ一方向に配列された構造である。また、二次元格子状とは、凸部および凹部がそれぞれ少なくとも二方向に配列された構造であり、凸部および凹部の平面視形状に応じて例えば、正方格子状、長方格子状、三角格子状、六方格子配列、その他任意の格子配列が挙げられる。図6に例示した凹凸周期構造1では、平面視上、凸部2および凹部3が一次元格子状に形成されている。また、図1~図3、図7(a)に例示した凹凸周期構造1では、平面視上、凸部2および凹部3が二次元格子状(正方格子状)に形成されている。
また、上記凹凸周期構造は、平面視上、第1の方向に頂部稜線を有する上記複数の凸部と、上記第1の方向に底部稜線を有する複数の第1凹部と、上記第1の方向に交差する第2の方向に底部稜線を有する複数の第2凹部と、上記第1の方向および上記第2の方向に交差する第3の方向に底部稜線を有する複数の第3凹部と、が形成された凹凸パターン(以下、三方向凹部形成パターンとする場合がある。)を有していていてもよい。単位面積当たりの凸部および凹部の数が多くなり、菌の増殖抑制効果を高めることができるからである。
図8は、三方向凹部形成パターンの凹凸周期構造1の一例を示す説明図である。図8に示す凹凸周期構造1は、平面視上、第1の方向(α方向)に頂部稜線を有する複数の凸部と、第1の方向(α方向)に底部稜線を有する複数の第1凹部と、第1の方向(α方向)に交差する第2の方向(β方向)に底部稜線を有する複数の第2凹部と、第1の方向(α方向)および第2の方向(β方向)に交差する第3の方向(γ方向)に底部稜線を有する複数の第3凹部と、が形成された凹凸パターンを有する。図8において第3の方向(γ方向)は、第1の方向(α方向)および第2の方向(β方向)の交点Pを通る。図8におけるX-X線縦断面の形状は、図4に示した形状と同様となる。また、上記三方向凹部形成パターンにおいて凸部は、頂部稜線を有し、台形状の底面と、対向する三角形状の2つの側面と、対向する台形状の2つの側面と、を有する多面体形状とすることができる。
本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品が上記三方向凹部形成パターンを有する場合、凸部の頂角および第1凹部の頂角とは、隣接する2つの凸部の頂部を第1の方向と直交する方向で切断したときの縦断面形状における凸部の頂角および第1凹部の頂角とする。また、第2凹部および第3凹部の頂角とは、隣接する2つの凸部の頂部を第1の方向で切断したときの縦断面形状における第2凹部および第3凹部の頂角とする。
上記第1の方向(α方向)と上記第2の方向(β方向)との交差角度、および上記第1の方向(α方向)と上記第3の方向(γ方向)との交差角度は、それぞれ特に限定されず、適宜設定することができる。
上記第3の方向は、上記第1の方向および上記第2の方向に交差すればよいが、中でも上記第1の方向および上記第2の方向の交点を通ることが好ましい。上記三方向凹部形成パターンが、平面視上、第1の方向、第2の方向、および第3の方向の交点で囲まれた単位格子(図8中の3つの交点Pで囲まれた符号Qで示す領域)を有することができるからである。単位格子Qの第2の方向(β方向)の辺の長さおよび第3の方向(γ方向)の辺の長さ(以下、単位格子の斜め方向の辺の長さとする場合がある。)は、5μm以上200μm以下であることが好ましく、中でも10μm以上50μm以下であることが好ましい。単位格子の斜め方向の辺の長さを上記範囲とすることで、凹部の数を多くすることができ、凹部により発揮される菌の増殖抑制効果を高めることができるからである。なお、単位格子の斜め方向の辺の長さが上記範囲に満たないと、十分な数の凹部を形成することができず、凹部により発揮される菌の増殖抑制効果が得られにくい場合があり、一方、上記範囲を超えると、線状方向に菌がコロニーを形成しやすくなる場合がある。単位格子の第2の方向の辺の長さおよび第3の方向の辺の長さは、等しくてもよく、異なっていてもよい。
2.抗菌性および/または抗カビ性物品の具体的な態様
本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、抗菌性物品であってもよく、抗カビ性物品であってもよく、抗菌性および抗カビ性物品であってもよい。
本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、上記「1.凹凸周期構造」の項で説明した特定の凹凸周期構造を表面に有する物品であれば特に限定されず、抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれか一方が求められるあらゆる用途に用いることができる。本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品の用途としては、例えば、抗菌性および/または抗カビ性皮革様シート、抗菌性および/または抗カビ性化粧シート、抗菌性および/または抗カビ性化粧板等が挙げられるが、これらに限定されない。また、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品の用途としては、例えば、植物栽培施設、空調機器、家電製品、調理用機器、医療設備、電子機器等が挙げられる。これら各種機器においては、具体的には、これら各種機器に内蔵されるフィルター、およびこれら各種物品が備える電子表示部やタッチパネル等の保護フィルム、筐体、ならびに窓ガラス用フィルム等を挙げることができる。その他、容器または包装材について、その内側、外側、または内外両側の表面に、特定の凹凸周期構造を有する形態とすることもできる。
本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、その用途に応じて特定の凹凸周期構造を表面に有する層の材料や層構成等を適宜設定することができる。以下、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品の具体的な態様として、抗菌性および/または抗カビ性皮革様シート、抗菌性および/または抗カビ性化粧シート、および抗菌性および/または抗カビ性化粧板についてそれぞれ説明する。
(1)抗菌性および/または抗カビ性皮革様シート
本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、特定の凹凸周期構造を表面に有する抗菌性および/または抗カビ性皮革様シートとすることができる。詳しくは、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、特定の凹凸周期構造を表面に有する表皮層と、上記表皮層の上記特定の凹凸周期構造を有する面とは反対側の面に配置された基材とを有する抗菌性および/または抗カビ性皮革様シートとすることができる。
図9は、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品が抗菌性および/または抗カビ性皮革様シートである例を示す概略断面図である。抗菌性および/または抗カビ性皮革様シート10Aは、特定の凹凸周期構造1を表面に有する表皮層11と、表皮層11の特定の凹凸周期構造1を有する面とは反対側の面に配置された基材12とを有する。
上記表皮層は、特定の凹凸周期構造を表面に有する。上記表皮層の材料は、合成皮革や人工皮革の材料として用いられる公知の樹脂を適宜選定して、用いることができる。上記表皮層は、熱可塑性樹脂で形成された熱可塑性樹脂層であってもよく、熱硬化性樹脂や放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂を硬化して形成された硬化樹脂層であってもよい。上記樹脂として具体的には、ナイロン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。上記樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記表皮層は、樹脂の他に、可塑剤、発泡剤、安定剤、着色剤等の添加剤を含むことができる。
上記表皮層の厚さは、表面に特定の凹凸周期構造を有することが可能であれば特に限定されず、適宜設定することができる。上記厚さとしては、耐久性の観点から例えば10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。また、抗菌性および/または抗カビ性皮革様シートの風合いを損ねないようにするため、上記厚さとしては、例えば200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。
上記基材は、公知の合成皮革や人工皮革の基材に用いられるものであれば特に制限なく用いることができ、例えば、基布、紙、樹脂シート、上記樹脂シートで被覆された構造物等が挙げられる。基布としては、例えば、木綿、麻、羊毛等の天然繊維;レーヨン、アセテート等の再生又は半合成繊維;ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリオレフィン等の合成繊維等の繊維からなる織布、不織布、網布等が挙げられる。また、樹脂シートを構成する樹脂としては、例えば、塩化ビニル、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アクリル-ウレタン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、アクリルアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
上記基材の厚さは、特に限定されず、抗菌性および/または抗カビ性皮革様シートの用途に応じて適宜設定することができる。
上記表皮層は、基材の表面上に直接形成されていてもよく、接着層等を介して基材と貼合されていてもよい。
上記抗菌性および/または抗カビ性皮革様シートは、合成皮革や人工皮革の一般的な用途に用いることができ、また、天然皮革の代用品として用いることもできる。用途としては、例えば、衣料、鞄、靴、財布、スマートフォンカバー表皮材、インテリア資材、インスツルメントパネル材、カーシート表皮材、ステアリングホイール表皮材等の車両用内装材や自動二輪車のシート材等が挙げられる。
(2)抗菌性および/または抗カビ性化粧シート
本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、特定の凹凸周期構造を表面に有する抗菌性および/または抗カビ性化粧シートとすることができる。上記抗菌性および/または抗カビ性化粧シートは、表面に特定の凹凸周期構造を有する限り、その具体的な層構成については限定されないが、例えば、図10に例示するように、抗菌性および/または抗カビ性化粧シート10Bは、表面保護層21、熱可塑性樹脂層22、装飾層23、基材24をこの順に有し、少なくとも表面保護層21の熱可塑性樹脂層22とは反対側の面に特定の凹凸周期構造1を有する層構成とすることができる。また、図示しないが、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、表面保護層、熱可塑性樹脂層、装飾層、および基材をこの順に有し、上記表面保護層の上記熱可塑性樹脂層とは反対側の面に凸部の頂部が位置し、上記熱可塑性樹脂層の上記表面保護層側の面よりも装飾層側に凹部の底部が位置するように特定の凹凸周期構造が形成された層構成とすることができる。上記層構成の場合、凸部は表面保護層と熱可塑性樹脂層との積層構造を有する。
(a)表面保護層
上記表面保護層は、表面に特定の凹凸周期構造を有する層である。上記表面保護層の材料は、通常、樹脂が用いられ、例えば、硬化樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられる。硬化樹脂とは、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化型樹脂等の硬化性樹脂が硬化してなる樹脂をいう。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、上記硬化樹脂の前駆体である熱硬化性樹脂としては、例えばシリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ケトン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、炭化水素樹脂(芳香族系及び脂肪族系)、ゴム系樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。また、上記硬化樹脂の前駆体である電離放射線硬化型樹脂としては、例えば単官能(メタ)アクリレート、多官能(メタ)アクリレートなどの重合性モノマーや、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーなどの重合性オリゴマー、ないしはプレポリマー等が挙げられる。上記樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。中でも耐擦傷性の観点から、上記表面保護層は、硬化樹脂で形成されていることが好ましく、上記硬化樹脂の前駆体が電離放射線硬化型樹脂であることがより好ましい。
上記表面保護層は、必要に応じて紫外線吸収剤や光安定剤等の耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤、マット剤等の添加剤を含んでいてもよい。
上記表面保護層の厚さは、表面に特定の凹凸周期構造を有することが可能であれば特に限定されず、適宜設定することができる。耐擦傷性、耐候性等の観点から、上記厚さとしては、例えば1μm以上200μm以下が好ましく、中でも1μm以上100μm以下がより好ましい。
(b)熱可塑性樹脂層
上記熱可塑性樹脂層は、基材または装飾層と表面保護層との間に配置される。上記熱可塑性樹脂層は、基材や装飾層を保護し、これらの層が露出することによる耐汚染性、耐擦傷性の低下を防止する層である。
上記熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂が好適であり、中でもポリプロピレン樹脂が好ましく、ランダムポリプロピレン樹脂がより好ましい。
上記熱可塑性樹脂層は、必要に応じて着色剤、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。
上記熱可塑性樹脂層の厚さは、所望の機能を発揮することが可能であれば特に限定されず、適宜設定することができる。
(c)装飾層
上記装飾層は、基材と熱可塑性樹脂層との間に配置される。上記装飾層は、化粧シートに装飾性を与えるものであり、均一に着色が施された隠蔽層(ベタ印刷層)でもよく、種々の模様が印刷形成されてなる絵柄層であってもよく、隠蔽層と絵柄層とを組み合わせたものであってもよい。
上記隠蔽層は、基材や化粧板に用いられる基板等の下地を隠蔽し、または意図した色彩を与えて表面の色を整えることができる。隠蔽層は、通常、不透明色で形成されるが、着色透明色で形成してもよい。
上記絵柄層は、模様を抗菌性および/または抗カビ性化粧シートに付与することができる。上記模様は、特に限定されないが、例えば木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)などの岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様など、あるいはこれらを複合した寄木、パッチワーク等が挙げられる。上記絵柄層は、平面状であってもよく、凹凸状であってもよく、凸状であってもよい。
上記装飾層を形成するインキ組成物としては、樹脂(バインダー樹脂)に、顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。
上記装飾層の厚さは、所望の機能を発揮することが可能であれば特に限定されず、適宜設定することができる。
(d)基材
上記基材は、公知の化粧シートに用いられる基材を特に制限なく用いることができる。上記基材としては、樹脂シートが好ましく用いることができる。上記樹脂シートを構成する樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
上記基材は、必要に応じて着色剤、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、滑剤、発泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。
上記基材の厚さは、特に限定されず、適宜設定することができる。
(e)その他
上記抗菌性および/または抗カビ性化粧シートは、基材または装飾層と熱可塑性樹脂層との間に接着層を有していてもよい。接着層に用いられる接着剤は、基材または装飾層、あるいは熱可塑性樹脂層を構成する材料に応じて適宜選択することができ、例えばポリエチレン、ポリプロピレンエラストマー等のα-ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記抗菌性および/または抗カビ性化粧シートは、例えば熱可塑性樹脂層と表面保護層との間、基材と表面保護層との間にプライマー層を有していてもよい。また、上記抗菌性および/または抗カビ性化粧シートは、基材の表面保護層側とは反対側の面に裏面プライマー層を有していてもよい。プライマー層または裏面プライマー層を形成する材料は、公知の化粧シートにおけるプライマー層または裏面プライマー層の材料と同様とすることができる。
(3)抗菌性および/または抗カビ性化粧板
本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、特定の凹凸周期構造を表面に有する抗菌性および/または抗カビ性化粧板とすることができる。詳しくは、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、上記「(2)抗菌性および/または抗カビ性化粧シート」の項で説明した抗菌性および/または抗カビ性化粧シートの特定の凹凸周期構造を有する面が最表面となるように、上記抗菌性および/または抗カビ性化粧シートが基板上に配置された抗菌性および/または抗カビ性化粧板とすることができる。
図11に例示する抗菌性および/または抗カビ性化粧板10Cは、基板31と、基板31の一方の面に形成された接着層32と、接着層32の基板31とは反対側に配置された抗菌性および/または抗カビ性化粧シート10Bとを有する。抗菌性および/または抗カビ性化粧シート10Bは、図10で例示した構成を有し、抗菌性および/または抗カビ性化粧シート10Bの表面のうち、表面保護層21側の表面とは反対側の表面が基板31側となるように配置される。抗菌性および/または抗カビ性化粧板10Cの表面には、表面保護層21の特定の凹凸周期構造1を有する。
上記抗菌性および/または抗カビ性化粧シートについては、上記「(2)抗菌性および/または抗カビ性化粧シート」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。
上記基板は、特に限定されず、公知の化粧板における基板と同様のものを用いることができる。例えば、木質板、金属板、セラミックス板、プラスチックス板、ガラス板等が挙げられる。各種基板の具体例については、例えば特開2016-203639号公報に開示される化粧板の基板を参照することができる。
上記抗菌性および/または抗カビ性化粧シートと基板とは、接着剤により貼合される。上記接着剤は、特に限定されず、公知の化粧板に用いられる接着剤や粘着剤を用いることができる。
上記抗菌性および/または抗カビ性化粧板は、例えば、壁、天井、床等の建築物の内外装用部材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具の他、キッチン、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内外装用部材として用いることができる。
(4)その他の用途
本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、例えば、容器または包装材に用いることができる。
具体的には、液状体を保存するための容器、いわゆるパウチ容器の場合、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、例えば包装材の内側、つまり液体を収容する空間側の表面に、特定の凹凸周期構造を有する容器とすることができる。この場合、液状体中での細菌やカビの増殖を抑制することができる。また、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、例えば包装材の外側の表面に、特定の凹凸周期構造を有する容器としてもよい。
また、食品を保存するための包装材、いわゆるラッピングフィルムの場合、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、包装材の内面、つまり食品を収容する空間側の表面に、特定の凹凸周期構造を有する包装材とすることができる。この場合、包装材内に収容される食品等の収容物は、包装材と接触する部分から細菌やカビが増殖し始め、その後、収容物全体に広がって細菌やカビが増殖しやすい。これに対し、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品を包装材として用いることにより、包装材表面における細菌やカビの増殖が抑制されるため、食品等の収容物において、包装材と接触した部分の細菌やカビの増殖を抑制することができる。そのため、収容物全体においても細菌やカビの増殖を抑制することができる。本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品を包装材として用いる場合、抗菌性や抗カビ性を向上する点から、包装材の内面の少なくとも一部が特定の凹凸周期構造を有する面であることが好ましく、収容物を収容する空間の内面が特定の凹凸周期構造を有する面であることがより好ましい。
また、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、農業用途に用いることができる。少なくとも一部の表面に特定の凹凸周期構造を有する農業用の抗菌性および/または抗カビ性物品は、植物病原菌とも呼ばれる細菌類やカビ類の繁殖を抑制することができ、農作物の安定した育成が可能となり、また、収穫量を高めることも可能となる。なお、植物病原菌の具体例としては、養液栽培のすべて-植物工場を支える基本技術 日本施設園芸協会(編集)、日本養液栽培研究会(編集)に記載のものが挙げられる。
具体的には、ビニールハウスの場合、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、天井部や壁面部の内面に特定の凹凸周期構造を有するものであってもよく、土壌面上に設けられた反射シートの表面に特定の凹凸周期構造を有するものであってもよい。また、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、それ自体がビニールハウスの天井部や壁面部を構成するようなシート状または板状のものであってもよく、天井部や壁面部の内面に貼り合わせて用いられるフィルム状のものであってもよい。
また、工場栽培における植物栽培ユニット(LEDハウスともいう)の場合、本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、光源光を効率よく利用し、また、温度、湿度条件を維持するための反射シートの内面に特定の凹凸周期構造を有するものであってもよく、棚を構成する棚板や天板の表面に凹凸周期構造を有するものであってもよい。
本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品を用いることにより、農薬の使用量を削減することができ、農作物の収穫量を向上し、安定的な生産が可能となる。
3.その他
本開示の抗菌性および/または抗カビ性物品は、後述する「B.抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シート」の項で説明する抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シートを用いて製造することができる。
例えば、抗菌性および/または抗カビ性皮革様シートであれば、上記抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シートを用い、表皮層の表面に抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シートの賦形用凹凸周期構造を有する面を押し当てて、特定の凹凸周期構造を賦形し、乾燥及び熟成した後、上記抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シートを剥離することで得られる。抗菌性および/または抗カビ性皮革様シートの製造方法は、上記抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シートを用いる方法であれば特に限定されない。
また、抗菌性および/または抗カビ性化粧シートであれば、公知の方法で化粧シートを製造する過程で、上記化粧シートの表面保護層側の表面に上記抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シートの賦形用凹凸周期構造を押し当てて特定の凹凸周期構造を賦形することで得られる。
B.抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シート
本開示の1実施形態である抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シート(以下、本開示の離型シートとする。)は、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続して形成された賦形用凹凸周期構造を表面に有し、上記凹部の頂角が110°以下であり、上記凸部の頂角が120°以下であり、上記凸部および上記凹部の高低差が0.035μm以上100μm以下である。
図12は、本開示の離型シートの一例を示す概略斜視図であり、図13は図12のX-X線断面図である。また、図14および図15は、図12および図13中の領域Aの拡大平面図および断面図である。本開示の離型シート110は、複数の凸部102および複数の凹部103が交互に連続して形成された賦形用凹凸周期構造101を表面に有する賦形層111と、賦形層111の賦形用凹凸周期構造101を有する面とは反対側の面に配置された基材112と、を有する。賦形用凹凸周期構造101は、凹部103の頂角θ、凸部102の頂角θ、凸部102および凹部103の高低差Hが、それぞれ所定の範囲にある。
本開示の離型シートにおいて、賦形用凹凸周期構造の凸部の頂角および凹部の頂角、ならびに凸部および凹部の高低差とは、別段の断りが無い限り、隣接する2以上の凹部の底部を通る賦形用凹凸周期構造の厚さ方向の断面における凸部の頂角および凹部の頂角、ならびに凸部および凹部の高低差をいう。詳しくは、図12~図14で例示するように、凹部が底部稜線を有さない場合、隣接する2以上の凹部の底部を通る賦形用凹凸周期構造の厚さ方向の断面とは、別段の断りが無い限り、隣接する2以上の凹部の底部を、凹部の配列方向と平行する方向で切断したときの賦形用凹凸周期構造の厚さ方向の断面とする。また、後述する図17で例示するように、凹部が底部稜線を有する場合、隣接する2以上の凹部の底部を通る賦形用凹凸周期構造の厚さ方向の断面とは、別段の断りが無い限り、隣接する2以上の凹部の底部を、稜線方向と直交する方向で切断したときの賦形用凹凸周期構造の厚さ方向の断面とする。なお、隣接する2以上の凹部の底部を通る賦形用凹凸周期構造の厚さ方向の断面のことを、賦形用凹凸周期構造の縦断面とする場合がある。また、賦形用凹凸周期構造の縦断面における凸部の断面形状および凹部の断面形状のことを、それぞれ凸部の縦断面形状および凹部の縦断面形状とする場合がある。
また、本開示の離型シートにおいて、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続するとは、賦形用凹凸周期構造の縦断面において、隣接する2つの凹部間に、頂部が先鋭である凸部が位置し、隣接する2つの凸部間に、底部が先鋭である凹部が位置することをいう。
本開示の離型シートによれば、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続し、凹部の頂角および凸部の頂角、ならびに凸部および凹部の高低差が、それぞれ所定の範囲にある賦形用凹凸周期構造(以下、本開示の離型シートにおいて、特定の賦形用凹凸周期構造とする場合がある。)を有することで、上記離型シートを用いて形成された物品表面に、上記特定の賦形用凹凸周期構造の反転形状、すなわち、上記「A.抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品」の項で説明した特定の凹凸周期構造を賦すことができる。これにより、上記「A.抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品」の項で説明した抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品を容易に製造することができる。
以下、本開示の離型シートの構造について、詳細に説明する。
1.賦形用凹凸周期構造
本開示の離型シートにおける賦形用凹凸周期構造は、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続して形成された構造である。上記賦形用凹凸周期構造は、本開示の離型シートの表面に形成されている。
上記賦形用凹凸周期構造において、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続するとは、上記賦形用凹凸周期構造の縦断面において、隣接する2つの凹部間に、頂部が先鋭である凸部が位置し、隣接する2つの凸部間に、底部が先鋭である凹部が位置することをいう。上記賦形用凹凸周期構造の縦断面において、隣接する2つの凹部の斜辺に囲まれた領域が凸部であり、隣接する2つの凹部の開口が接する部分に上記凸部の頂部先端が位置し、また、隣接する2つの凸部の斜辺に囲まれた領域が凹部であり、隣接する2つの凸部の根本が連結する部分に上記凹部の底部先端が位置する。なお、凹部の開口とは、上記賦形用凹凸周期構造の厚み方向と直交する仮想面を想定した場合に、上記仮想面における上記凹部の断面積が最大となる位置である。
ここで、上記凹部の底部が先鋭であるとは、図12~図15で例示するように、凹部103の縦断面形状において、凹部103の底部先端に、凹部103の底部を形成する一対の斜辺の交点C3が位置する場合、すなわち凹部の底部がピン角の場合のみならず、図16(a)で例示するように、凹部103の縦断面形状において、凹部103の底部先端が所望の曲率半径を有する曲面である場合や、図16(b)で例示するように、凹部103の縦断面形状において、凹部103の底部先端が所望の幅を有する平坦面である場合も含む。具体的には、凹部の底部先端が曲面である場合、上記凹部の底部が先鋭であるとは、上記曲面の曲率半径が10μm以下であることをいい、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。また、凹部の底部先端が平坦面である場合、上記凹部の底部が先鋭であるとは、上記平坦面の幅が1μm以下であることをいい、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。凹部の底部先端が曲面や平坦面であっても、曲面の曲率半径や平坦面の幅が上記範囲にあることで、本開示の離型シートを用いて物品表面に特定の凹凸周期構造を賦形する際に、物品表面に頂部が先鋭な凸部を賦形することができるからである。なお、上記凹部の底部先端の曲率半径は、凹部の縦断面形状から求めることができる。また、上記凹部の底部先端の平坦面の幅とは、上記凹部が底部稜線を有する場合であれば、上記平坦面の稜線方向と直交方向の幅をいい、上記凹部が底部稜線を有さない場合であれば、上記平坦面の最大辺をいい、これらは縦断面形状または平面視形状から求めることができる。図16(a)、(b)は、賦形用凹凸周期構造の一例を示す概略断面図である。
また、上記凸部の頂部が先鋭であるとは、図12~図15で例示するように、凸部102の縦断面形状において、凸部102の頂部先端に、凸部102の頂部を形成する一対の斜辺の交点C4が位置する場合、すなわち頂部がピン角である場合のみならず、図16(a)で例示するように、凸部102の縦断面形状において、凸部102の頂部先端が所望の曲率半径を有する曲面である場合や、図16(b)で例示するように、凸部102の縦断面形状において、凸部102の頂部先端が所望の幅を有する平坦面である場合も含む。具体的には、凸部の頂部先端が曲面である場合、上記凸部の頂部が先鋭であるとは、上記曲面の曲率半径が10μm以下であることをいい、好ましくは5μm以下、より好ましくは2μm以下である。また、凸部の頂部先端が平坦面である場合、上記凸部の頂部が先鋭であるとは、上記平坦面の幅が1μm以下であることをいい、好ましくは0.5μm以下、より好ましくは0.1μm以下である。凸部の頂部先端が曲面や平坦面であっても、曲面の曲率半径や平坦面の幅が上記範囲にあることで、本開示の離型シートを用いて物品表面に特定の凹凸周期構造を賦形する際に、物品表面に底部が先鋭な凹部を賦形することができるからである。なお、上記凸部の頂部先端の曲率半径は、凸部の縦断面形状から求めることができる。また、上記凸部の頂部先端の平坦面の幅とは、上記凸部が頂部稜線を有する場合であれば、上記平坦面の稜線方向と直交方向の幅をいい、上記凸部が頂部稜線を有さない場合であれば、上記平坦面の最大辺をいい、これらは凸部の縦断面形状または平面視形状から求めることができる。
上記賦形用凹凸周期構造において、上記凹部は、上記「A.抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品」の項で説明した特定の凹凸周期構造における凸部の反転形状に相当する。また、上記凸部は、上記「A.抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品」の項で説明した特定の凹凸周期構造における凹部の反転形状に相当する。
上記凹部の頂角は、110°以下であればよく、中でも100°以下であることが好ましく、90°以下であることがより好ましい。上記凹部は、頂角が上記範囲内にあることで、開口から底部に向かって先細りし、底部が先鋭な形状となる。換言すれば、上記凹部は、上記賦形用凹凸周期構造の厚み方向と直交する仮想面における断面積が、開口から底部に向かって連続的または非連続的に減少する形状となる。このため、凹部の底部には、上記仮想面と平行または略平行し、かつ、菌やカビの増殖に十分な面積の平坦領域が形成されにくく、上記凹部により、本開示の離型シートを用いて物品表面に上記「A.抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品」の項で説明した凸部を賦形することができる。
上記凹部の頂角は小さいほど好ましく、その下限値は、上記賦形用凹凸周期構造を形成する際の賦形限界に応じて適宜設定することができる。具体的には、凹部の頂角は、例えば20°以上とすることができ、中でも30°以上であることが好ましく、45°以上であることがより好ましい。
凹部の頂角とは、凹部の縦断面形状において底部先端で交差する一対の斜辺のなす角度をいう。凹部の底部先端が曲面や平坦面である場合の凹部の頂角とは、上記「A.抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品」の項で説明した方法で規定される角度をいう。具体的には図15、図16(a)~(b)および後述する図18(a)~(b)においてθで示す部分である。
上記凹部の頂角は、SEMによる断面観察やレーザー顕微鏡によるプロファイル計測により測定することができる。以下、凹部の寸法、凸部の頂角や寸法、隣接する凹部間や凸部間の間隔等も、上記の方法により測定することができる。
一方、上記凸部の頂角は、120°以下であればよく、中でも110°以下であることが好ましく、100°以下であることがより好ましい。上記凸部は、頂角が上記範囲内にあることで、根本(凹部の底部)から頂部に向かって先細りし、頂部が先鋭な形状となる。換言すれば、上記凸部は、上記賦形用凹凸周期構造の厚み方向と直交する仮想面における断面積が、根本から頂部に向かって連続的または非連続的に減少する形状となる。このため、凸部の頂部には、上記仮想面と平行または略平行し、かつ、菌の増殖に十分な面積の平坦領域が形成されにくく、上記凸部により、本開示の離型シートを用いて物品表面に上記「A.抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品」の項で説明した凹部を賦形することができる。
上記凸部の頂角は小さいほど好ましく、その下限値は、上記賦形用凹凸周期構造を形成する際の賦形限界に応じて適宜設定することができる。具体的には、凸部の頂角は、例えば20°以上とすることができ、中でも30°以上であることが好ましく、45°以上であることがより好ましい。
凸部の頂角とは、凸部の縦断面形状において頂部先端で交差する一対の斜辺のなす角度をいう。凸部の頂部先端が曲面や平坦面である場合の上記凸部の頂角とは、上記「A.抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品」の項で説明した方法で規定される角度をいう。具体的には図15、図16(a)~(b)および後述する図18(a)~(b)においてθで示す部分である。
上記凹部の頂角は、その凹部と連続する凸部の頂角と同一であってもよく、凸部の頂角よりも大きくてもよく、凸部の頂角よりも小さくてもよい。中でも、上記凹部の頂角は、その凹部と連続する凸部の頂角よりも小さいことが好ましい。凹部の頂角と凸部の頂角とが上記の関係を有することで、本開示の離型シートを用いて、凸部の頂部によるピン止め効果や突き刺し効果および凹部による菌の動きの抑制効果が高い特定の凹凸周期構造を物品表面に賦形することができるからである。
上記凸部の縦断面形状は、所定の凸部の頂角を有すれば、頂部先端を通る上記賦形用凹凸周期構造の厚さ方向の軸に対して対称であってもよく、非対称であってもよい。また、上記凹部の縦断面形状は、所定の凹部の頂角を有すれば、底部先端を通る上記賦形用凹凸周期構造の厚さ方向の軸に対して対称であってもよく、非対称であってもよい。
上記賦形用凹凸周期構造の縦断面において、凸部および凹部の高低差(以下、凹凸高低差とする場合がある。)は、0.035μm以上100μm以下であればよく、中でも0.5μm以上75μm以下であることが好ましく、1μm以上50μm以下であることがより好ましい。凹凸高低差が上記範囲にあることで、本開示の離型シートを用いて、物品表面に、凸部により発揮される菌の増殖抑制機能と凹部により発揮される菌の増殖抑制機能とのバランスが良好な特定の凹凸周期構造を賦形することが可能となるからである。また、凹凸高低差が上記範囲にあることで、本開示の離型シートを用いて、物品表面に、凸部により発揮される水はけ効果が高く、カビ繁殖抑制効果の高い特定の凹凸周期構造を賦形することが可能となるからである。上記凹凸高低差は、上記範囲内であれば、規則的であってもよく、不規則であってもよいが、規則的であることが好ましい。凹凸高低差が不規則であるとは、賦形用凹凸周期構造において凹凸高低差が部分的に異なることをいう。
上記凹凸高低差とは、上記賦形用凹凸周期構造の縦断面において、上記凸部の最頂部から上記凹部の最底部までの鉛直方向の長さをいい、図15、図16(a)~(b)においてHで示す部分である。
上記賦形用凹凸周期構造において、隣接する2つの凸部間の間隔(以下、隣接凸部間距離とする場合がある。)は、規則的であってもよく、不規則であってもよいが、規則的であることが好ましい。上記隣接凸部間距離は、隣接する2つの凸部間に、上記2つの凸部と連続する所定の頂角を有する凹部が位置することが可能となる大きさであればよく、例えば、0.05μm以上100μm以下とすることができ、中でも0.5μm以上75μm以下であることが好ましく、1μm以上50μm以下であることがより好ましい。隣接凸部間距離を上記範囲とすることで、本開示の離型シートを用いて物品表面に賦形する際に、凸部により発揮される菌の増殖抑制機能と凹部により発揮される菌の増殖抑制機能とのバランスが良好な特定の凹凸周期構造を賦形することが可能となるからである。また、隣接凹部間距離を上記範囲とすることで、本開示の離型シートを用いて物品表面に賦形する際に、水はけ効果が高く、カビ繁殖抑制効果が高い特定の凹凸周期構造を賦形することが可能となるからである。
上記隣接凸部間距離とは、賦形用凹凸周期構造の縦断面において、一方の凸部の頂部先端と、上記一方の凸部と1つの凹部を介して連続する他方の凸部の頂部先端と、の間の長さをいい、図15、図16(a)~(b)においてDで示す部分である。凸部の頂部先端が曲面や平坦面の場合の隣接凸部間距離とは、上記「A.抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品」の項で説明した方法で規定される長さとすることができる。
上記賦形用凹凸周期構造において、隣接する2つの凹部間の間隔(以下、隣接凹部間距離とする場合がある。)は、隣接する2つの凹部間に、上記2つの凹部と連続する所定の頂角を有する凸部が位置することが可能となる大きさであればよく、上述した上記賦形用凹凸周期構造における隣接凸部間距離の好ましい範囲と同様とすることができる。上記隣接凹部間距離は、規則的であってもよく、不規則であってもよいが、規則的であることが好ましい。隣接凹部間距離が不規則であるとは、賦形用凹凸周期構造において隣接凹部間距離の大きさが部分的に異なることをいう。
上記隣接凹部間距離とは、賦形用凹凸周期構造の縦断面において、一方の凹部の底部先端と、上記一方の凹部と1つの凸部を介して連続する他方の凹部の底部先端との間の長さをいい、図15、図16(a)~(b)においてDで示す部分である。凹部の底部先端が曲面や平坦面である場合の隣接凹部間距離とは、上記「A.抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品」の項で説明した方法で規定される長さとすることができる。
上記賦形用凹凸周期構造の凹凸形状としては、賦形用凹凸周期構造の縦断面において凸部および凹部がそれぞれ所定の頂角を有する形状であれば特に限定されず、例えば四角錐、三角錐、六角錐等の角錐状乃至これに類似した形状(疑似角錐状)の凹部が形成された凹凸形状;頂部稜線を有する三角柱状乃至これに類似した形状(疑似三角柱状)の凹部が形成された凹凸形状等が挙げられる。図12~図14で例示した賦形用凹凸周期構造は、正四角錐状の凹部が形成された凹凸形状であり、図17に例示する賦形用凹凸周期構造は、底部稜線を有する三角柱状の凹部が形成された凹凸形状である。なお、図17の左図は賦形用凹凸周期構造の概略平面図であり、右図は賦形用凹凸周期構造の概略斜視図である。上記凹部の縦断面形状としては、三角形等が挙げられる。
また、上記賦形用凹凸周期構造の凹凸形状は、側面の傾きが変化する箇所を少なくとも1箇所以上有する凹部が形成された形状であってもよい。具体的には、図18(a)~(b)で例示するように、賦形用凹凸周期構造101は、凹部103が、側面の傾きが変化する箇所よりも凹部の底部側の第1領域103aと、側面の傾きが変化する箇所よりも凹部の開口側の第2領域103bとを有し、凸部102が、側面の傾きが変化する箇所よりも凹部103の開口側(凸部101の頂部側)の第1領域102aと、側面の傾きが変化する箇所よりも凹部の底部側(凸部101の根本側)の第2領域102bとを有する形状とすることができる。このような形状とすることで、本開示の離型シートを用いて物品表面に特定の凹凸周期構造を賦形したときに、凸部の頂角と凹部の頂角とを異なる大きさに設定することができる。上記賦形用凹凸周期構造の凹部が第1領域および第2領域を有する場合、第1領域の頂角は、第2領域の頂角よりも小さくてもよく(図18(a))、大きくてもよい(図18(b))が、第2領域の頂角よりも小さいことが好ましい。第1領域の頂角が第2領域の頂角よりも小さい凸部を有する特定の凹凸周期構造を転写することができるからである。なお、図18(a)、(b)は、賦形用凹凸周期構造の一例を示す概略断面図である。
上記賦形用凹凸周期構造の凹凸パターンは特に限定されない。上記賦形用凹凸周期構造では、平面視上、凸部および凹部が一次元格子状に形成されていてもよく、二次元格子状に形成されていてもよい。一次元格子状および二次元格子状については、上記「A.抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品」の項で説明したため、ここでの説明は省略する。図17に例示した賦形用凹凸周期構造101では、平面視上、凸部102および凹部103が一次元格子状に形成されている。また、図12~図14に例示した賦形用凹凸周期構造101では、平面視上、凸部102および凹部103が二次元格子状(正方格子状)に形成されている。
また、上記賦形用凹凸周期構造は、平面視上、第1の方向に底部稜線を有する上記複数の凹部と、上記第1の方向に頂部稜線を有する複数の第1凸部と、上記第1の方向に交差する第2の方向に頂部稜線を有する複数の第2凸部と、上記第1の方向および上記第2の方向に交差する第3の方向に頂部稜線を有する複数の第3凸部と、が形成された凹凸パターン(以下、三方向凸部形成パターンとする場合がある。)を有していていてもよい。単位面積当たりの凸部および凹部の数が多くなり、本開示の離型シートを用いて物品表面に賦形される凹部および凸部の数を多くすることができるからである。
上記三方向凸部形成パターン賦形用凹凸周期構造は、図8に例示した抗菌性および/または抗カビ性物品における三方向凹部形成パターンの特定の凹凸周期構造1の反転形状と同様とすることができる。
本開示の離型シートが上記三方向凸部形成パターンを有する場合、凹部の頂角および第1凸部の頂角とは、隣接する2つの凹部の底部を第1の方向と直交する方向で切断したときの縦断面形状における凹部の頂角および第1凸部の頂角とする。また、第2凸部および第3凸部の頂角とは、隣接する2つの凹部の底部を第1の方向で切断したときの縦断面形状における第2凹部および第3凹部の頂角とする。
上記第1の方向と上記第2の方向との交差角度、および上記第1の方向と上記第3の方向との交差角度は、それぞれ特に限定されず、適宜設定することができる。
また、上記第3の方向は、上記第1の方向および上記第2の方向に交差すればよいが、中でも上記第1の方向および上記第2の方向の交点を通ることが好ましい。上記三方向凸部形成パターンが、平面視上、第1の方向、第2の方向、および第3の方向の交点で囲まれた単位格子を有することができるからである。上記単位格子の第2の方向の辺の長さおよび第3の方向の辺の長さ(以下、単位格子の斜め方向の辺の長さとする場合がある。)は、5μm以上200μm以下であることが好ましく、中でも10μm以上50μm以下であることが好ましい。単位格子の斜め方向の辺の長さを上記範囲とすることで、凸部の数を多くすることができ、本開示の離型シートを用いて物品表面に賦形される凹部の数を多くすることができるからである。なお、単位格子の斜め方向の辺の長さが上記範囲に満たないと、十分な数の凸部を形成することができず、本開示の離型シートを用いて物品表面に賦形される凹部により発揮される菌の増殖抑制効果が得られにくい場合がある。一方、単位格子の斜め方向の辺の長さが上記範囲を超えると、本開示の離型シートを用いて物品表面に賦形される特定の凹凸周期構造において、線状方向に菌がコロニーを形成しやすくなる場合がある。単位格子の第2の方向の辺の長さおよび第3の方向の辺の長さは、等しくてもよく、異なっていてもよい。
2.構成
本開示の離型シートは、上述した特定の賦形用凹凸周期構造を表面に有する構成であればよく、通常、基材および上記基材の一方の面に配置された賦形層を有し、上記賦形層の基材とは反対側の面に特定の賦形用凹凸周期構造を有する層構成とすることができる。なお、上記離型シートは、賦形層のみを有する単層構造であってもよい。
(1)賦形層
上記賦形層は、特定の賦形用凹凸周期構造を表面に有する層である。上記賦形層の材料は、公知の賦形シートの賦形層に用いられる材料を適宜使用することができ、例えば樹脂が挙げられる。上記樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、硬化樹脂であってもよい。硬化樹脂とは、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂が硬化してなる樹脂をいう。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、プリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂;ポリカーボネート樹脂;シリコーン樹脂;ポリビニルアルコール等の従来公知の樹脂が挙げられる。
また硬化樹脂の前駆体である硬化性樹脂としては、熱硬化性樹脂であってもよく、電離放射線硬化性樹脂であってもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル、メラミン、エポキシ、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン系アクリレート等が挙げられる。電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、エステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
これらの樹脂は、一種を単独で用いてもよいし二種以上を組み合わせて用いてよい。
中でも、上記賦形層は、熱可塑性樹脂で形成されていることが好ましく、ポリプロピレンで形成されていることが好ましい。賦形層表面に特定の賦形用凹凸周期構造を精度よく形成することができ、また、本開示の離型シートを用いて物品表面に特定の凹凸周期構造を賦形する際に、物品からの剥離性が良好となるからである。
上記賦形層は、上記樹脂の他に、任意の添加剤を含むことができる。また、上記賦形層は、賦形用凹凸周期構造が形成されている面に、剥離膜が賦形用凹凸周期構造の凹凸形状に追従して形成されていてもよい。離型シートの剥離性をより向上させることができるからである。上記剥離膜の材料としては、例えばシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。上記剥離膜は、賦形用凹凸周期構造の機能を損なわない程度の厚さとすることができ、例えば、0.01μm以上0.5μm以下程度に設定することができる。
上記賦形層の厚さは、表面に特定の賦形用凹凸周期構造を有することが可能な大きさであれば特に限定されず、使用する材料やその強度等を考慮して適宜その厚さを設定することができる。上記賦形層の厚さとしては、例えば1μm以上200μm以下とすることができる。
(2)基材
上記基材は、賦形層を支持する部材である。上記基材は、公知の賦形シートや工程紙に用いられる基材を適宜選定して用いることができる。上記基材としては、例えばクラフト紙、上質紙、各種コート紙、キャストコート紙等の紙;ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、各種ナイロン等のポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の樹脂フィルム;合成紙、金属箔、織布、不織布等を使用することができる。これらは単独、または適宜積層して使用することができる。中でも本開示の離型シートを、抗菌性および/または抗カビ性皮革様シートの製造に用いる場合、上記基材は、耐久性及び耐熱性に優れる点で、紙が好ましい。
上記基材の厚さは特に限定されず、使用する材料とその強度等を考慮して適宜設定することができる。
3.その他
本開示の離型シートは、抗菌性物品製造用離型シートであってもよく、抗カビ性物品製造用離型シートであってもよく、抗菌性および抗カビ性物品製造用離型シートであってもよい。
本開示の離型シートの製造方法は特に限定されないが、例えば、基材の表面に熱可塑性樹脂または硬化性樹脂を含む賦形層形成用組成物を塗布し、塗布膜の表面に上記賦形用凹凸周期構造の反転形状が賦形された金属版を押し当てて、賦形用凹凸周期構造を表面に有する賦形層を形成して得ることができる。
本開示の離型シートは、上記「A.抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品」の項で説明した各種抗菌性および/または抗カビ性物品の製造に用いることができる。
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
[実施例1A~9A、比較例1A~3A]
1.銅版の製造
機械切削により表面に下記表1に示す転写パターンを賦形した銅版1~12を製造した。なお、表1中の凸部断面頂角および凹部断面頂角とは、隣接する2以上の凸部の頂部先端を通る転写パターンの厚さ方向の断面における凸部の頂角および凹部の頂角をいう。銅版1~3における転写パターンは、平面視上、第1の方向に頂部稜線を有する複数の凸部と、第1の方向に底部稜線を有する複数の第1凹部と、第1の方向に交差する第2の方向に底部稜線を有する複数の第2凹部と、第1の方向および第2の方向の交点を通る第3の方向に底部稜線を有する複数の第3凹部と、が形成された三方向凹部形成パターンとした。また、銅版12では、台形状の凸部が形成された凹凸形状を有し、凸部の頂部先端が平坦面であり該平坦面の幅が5.0μmであり、凹部の底部先端が平坦面であり該平坦面の幅が4.8μmであり、縦断面において隣接する2つの凸部間に位置する凹部の底部および隣接する2つの凹部間に位置する凸部の頂部がそれぞれ先鋭でなかった。そのため、銅版12における凹凸形状は、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続していなかった。
Figure 0007099123000001
2.離型シートの製造
厚さ150μmの紙製の基材の第1面上にポリプロピレン樹脂を塗布して厚さ50μmの樹脂層を形成した。熱プレス装置に銅版1~12をそれぞれ取り付け、上記樹脂層の表面に銅版の転写パターンが賦形された面を押し当てて熱エンボス転写し、樹脂層表面に下記表2に示す凹凸パターンおよび凹凸形状が賦形された賦形層を形成し、離型シートをそれぞれ得た。熱エンボス転写条件は、シリンダー温度120℃、圧力150kgf/cm、搬送速度5m/minとした。実施例1A~9Aおよび比較例1A~2Aの離型シートは、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続して形成された賦形用凹凸周期構造を有していた。一方、比較例3Aの離型シートは、台形状の凹部が形成された凹凸形状を有し、凸部の頂部先端が平坦面であり該平坦面の幅が4.8μmであり、凹部の底部先端が平坦面であり該平坦面の幅が5.0μmであり、縦断面において隣接する2つの凸部間に位置する凹部の底部および隣接する2つの凹部間に位置する凸部の頂部がそれぞれ先鋭でなかった。そのため、比較例3Aの離型シートでは、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続しておらず、賦形用凹凸周期構造を有していなかった。なお、表2中の凸部断面頂角および凹部断面頂角とは、隣接する2以上の凹部の底部先端を通る凹凸形状(賦形用凹凸周期構造)の厚さ方向の断面における凸部の頂角および凹部の頂角をいう。
Figure 0007099123000002
[実施例1B~9B、比較例1B~3B]
3.皮革様シートの製造
実施例1A~9A、および比較例1A~3Aで得た離型シートの賦形面上に、バーコート法により下記の配合で調製した表皮層形成用組成物を塗布し、温度100℃~120℃で2分の条件で加熱乾燥した。
(表皮層形成用組成物)
・ポリウレタン(レザミンNE-8811 大日精化工業(株)製) … 100質量部
・着色剤(セイカセブンNET-5794ブラック 大日精化工業(株)製)… 15質量部
・トルエン … 25質量部
・イソプロピルアルコール(IPA) … 25質量部
次に、表皮層形成用組成物を塗布面上に接着剤を用いて基布(基材)を貼り合わせ、乾燥し、熟成し、離型シートを剥がした。これにより、表皮層表面に下記表3に示す凹凸パターンおよび凹凸形状を有する皮革様シートを得た。実施例1B~9Bおよび比較例1B~2Bの皮革様シートは、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続して形成された凹凸周期構造を有していた。一方、比較例3Bの皮革様シートは、台形状の凸部が形成された凹凸形状を有し、凸部は頂部先端が平坦面であり該平坦面の幅が5.0μmであり、凹部の底部先端が平坦面であり該平坦面の幅が4.8μmであり、縦断面において隣接する2つの凸部間に位置する凹部の底部および隣接する2つの凹部間に位置する凸部の頂部がそれぞれ先鋭でなかった。そのため、比較例3Bの皮革様シートでは、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続しておらず、凹凸周期構造を有していなかった。なお、表3中の凸部断面頂角および凹部断面頂角とは、隣接する2以上の凸部の頂部を通る凹凸形状(凹凸周期構造)の厚さ方向の断面における凸部の頂角および凹部の頂角をいう。
Figure 0007099123000003
[比較例4B]
滅菌された、凹凸のない平坦面のエナメル合成皮革を用いた。
[評価]
1.試験菌液の調製
黄色ブドウ球菌を普通寒天培地に接種し、温度35℃±1℃で18時間培養を2回行った。これを100倍に希釈した普通ブイヨン(1/100NB)を用いて、2.5×10/mL~10×10/mLに調製したものを試験菌液とした。
2.試験菌液の接種および培養
実施例1B~9B、および比較例1B~3Bで得た皮革様シートの凹凸周期構造が賦形された面、および比較例4Bのエナメル合成皮革の表面を消毒用エタノールで拭き取り、上記試験菌液を接種して被覆フィルムを被せた後、シャーレに入れて温度35℃±1℃、相対湿度90%RH以上の環境下で24時間培養した。
3.生菌数の測定
比較例4Bのエナメル合成皮革は接種直後および24時間培養後、実施例1B~9B、および比較例1B~3Bで得た皮革様シートは24時間培養後、それぞれSCDLP培地で洗い出し、得られた試験液の10倍希釈液を作製した。上記希釈液をSCDLP寒天培地に接種し、温度35℃±1℃で48時間培養した後、形成された集落をカウントして生菌数を換算し、下記式(1)により抗菌活性値を算出した。抗菌活性値が2.0以上を、抗菌効果があると判断した。結果を下記表4に示す。
抗菌活性値=log(比較例4Bでの生菌数)-log(実施例1B~9Bまたは比較例1B~4Bでの生菌数) … (1)
Figure 0007099123000004
表4の結果から、皮革様シートの表面に特定の凹凸周期構造を有することで、皮革様シートの表面抗菌性が高くなることが示唆された(実施例1B~9B)。
[実施例10A~11A]
1.銅版の製造
機械切削により表面に下記表5に示す転写パターンを賦形した銅版13~14を製造した。なお、表5中の凸部断面頂角および凹部断面頂角とは、隣接する2以上の凸部の頂部先端を通る転写パターンの厚さ方向の断面における凸部の頂角および凹部の頂角をいう。
Figure 0007099123000005
2.離型シートの製造
銅版13~14をそれぞれ用いたこと以外は、実施例1A~9Aと同様にして、離型シートをそれぞれ得た。実施例10A~11Aの離型シートは、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続して形成された賦形用凹凸周期構造を有していた。なお、表6中の凸部断面頂角および凹部断面頂角とは、隣接する2以上の凹部の底部先端を通る凹凸形状(賦形用凹凸周期構造)の厚さ方向の断面における凸部の頂角および凹部の頂角をいう。
Figure 0007099123000006
[実施例10B~11B]
3.皮革様シートの製造
実施例10A~11Aの離形シートをそれぞれ用いたこと以外は、実施例1B~9Bと同様にして、表皮層表面に下記表7に示す凹凸パターンおよび凹凸形状を有する皮革様シートをそれぞれ得た。実施例10B~11Bの皮革様シートは、複数の凸部および複数の凹部が交互に連続して形成された凹凸周期構造を有していた。なお、表7中の凸部断面頂角および凹部断面頂角とは、隣接する2以上の凸部の頂部を通る凹凸形状(凹凸周期構造)の厚さ方向の断面における凸部の頂角および凹部の頂角をいう。
Figure 0007099123000007
[比較例5]
PET基材(東レ(株)製、ルミラー50 U34)を比較例5の物品とした。
[評価]
(カビ抵抗性試験)
実施例10B~11Bで得られた皮革様シートおよび比較例5のPET基材について、JIS Z 2911:2010(かび抵抗性試験方法)の「プラスチック製品の試験」に準じて、下記手順によりカビ抵抗性試験を行った。試験カビとしては、下記の5種を用いた。
・Aspergillus niger NBRC105649(アスペルギルスニゲル NBRC105649)
・Penicillium citrinum NBRC6352(ペニシリウムシトリナム NBRC6352)
・Rhizopus oryzae NBRC31005(リゾープスオリゼ NBRC31005)
・Cladosporium cladosporioides NBRC6348(クラドスポリウム クラドスポリオイデス NBRC6348)
・Chaetomium globosum NBRC6347(ケトミウムグロボスム NBRC6347)
具体的には、試験カビをポテトデキストロース寒天培地に接種し、26±2℃で7日~14日間培養後、湿潤剤添加滅菌水を用いて、各試験カビの10CFU/mLの単一胞子懸濁液を調製した。上記5種の試験カビの単一胞子懸濁液をそれぞれ等容量ずつ入れて混合し、上記5種の試験カビの混合胞子懸濁液を調製した。
実施例10B~11Bで得られた皮革様シートにおいては凹凸形状を有する表面を、比較例5のPET基材においては一方の表面を、エタノール消毒し、50mm角に切断することにより試験試料を作製した。
試験試料の上記表面全体に、上記混合胞子懸濁液0.5mLを噴霧接種し、シャーレに入れ、上記表面が鉛直方向となるように静置して、温度26±2℃、湿度95%RH以上99%RH以下の条件で、4週間培養した。
培養開始から2週間後と4週間後に、試験試料の上記表面を肉眼および実体顕微鏡にて観察し、下記基準により判定した。
0:菌糸の発育が認められない
1:菌糸の発育が認められるが、発育部分の面積は試料の全面積の1/3未満
2:菌糸の発育が認められ、発育部分の面積が試料の全面積の1/3以上
Figure 0007099123000008
また、上記カビ抵抗性試験において、培養4週間後の実施例10Bで得られた皮革様シートの表面の平面視顕微鏡写真を図19に示し、培養4週間後の実施例11Bで得られた皮革様シートの表面の平面視顕微鏡写真を図20に示し、培養4週間後の比較例5の物品の表面の平面視顕微鏡写真を図21示す。
物品の表面に特定の凹凸周期構造を有することで、試験に用いた全種類のカビにおいて、湿潤状態で、カビの繁殖を抑制できることが明らかにされた。
1 … 凹凸周期構造
2 … 凸部
3 … 凹部
θ… 凸部2の頂角
θ… 凹部3の頂角
… 凸部2および凹部3の高低差
10 … 抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品
101 … 賦形用凹凸周期構造
102 … 凸部
103 … 凹部
110… 抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シート
θ… 凹部103の頂角
θ … 凸部102の頂角
… 凸部102および凹部103の高低差

Claims (4)

  1. 複数の凸部および複数の凹部が交互に連続して形成された凹凸周期構造を表面に有し、
    前記凸部の頂角が110°以下であり、
    前記凹部の頂角が120°以下であり、
    前記凸部および前記凹部の高低差が0.035μm以上100μm以下であり、
    前記凹凸周期構造は、平面視上、第1の方向に頂部稜線を有する前記複数の凸部と、前記第1の方向に底部稜線を有する複数の第1凹部と、前記第1の方向に交差する第2の方向に底部稜線を有する複数の第2凹部と、前記第1の方向および前記第2の方向に交差する第3の方向に底部稜線を有する複数の第3凹部と、が形成された凹凸パターンを有する、抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品。
  2. 隣接する2つの前記凹部間の間隔が0.05μm以上100μm以下である、請求項1に記載の抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品。
  3. 複数の凸部および複数の凹部が交互に連続して形成された賦形用凹凸周期構造を表面に有し、
    前記凹部の頂角が110°以下であり、
    前記凸部の頂角が120°以下であり、
    前記凸部および前記凹部の高低差が0.035μm以上100μm以下であり、
    前記賦形用凹凸周期構造は、平面視上、第1の方向に底部稜線を有する前記複数の凹部と、前記第1の方向に頂部稜線を有する複数の第1凸部と、前記第1の方向に交差する第2の方向に頂部稜線を有する複数の第2凸部と、前記第1の方向および前記第2の方向に交差する第3の方向に頂部稜線を有する複数の第3凸部と、が形成された凹凸パターンを有する、抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シート。
  4. 隣接する2つの前記凸部間の間隔が0.05μm以上100μm以下である、請求項3に記載の抗菌性および抗カビ性の少なくともいずれかを有する物品製造用離型シート。
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