JP7092302B2 - 放射線遮蔽指サック - Google Patents

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Description

本発明は、放射線下で医療行為に従事する医療従事者の指先を放射線から保護する放射線遮蔽指サックに関するものである。
従来より、放射線を扱う医師や看護師、X線技術者等(以後「医療従事者と呼ぶ」)は、被ばくの機会が多い。例えば、X線写真を撮影する際には、対象が子供の場合や、動物の場合は、撮影時に動かないように押さえておく必要がある。また、近年では、IVR(Interventional Radiology:画像下治療)を行う局面も増えてきている。この治療では、放射線によって透視しながら治療を行うもので、少なくとも穿孔といった作業は行われる。
このような場合、患者の被ばく量は非許容量以下に抑えられるように努められる。しかし、医療従事者は日々このような作業を行うため、被ばく量が多くなる傾向にある。したがって、このような治療に従事する医療従事者は、放射線遮蔽手段を講じる必要がある。
胸部や下肢部は、鉛入りエプロンといった用具がある。また、眼の水晶体を防護するゴーグル、体幹部や甲状腺などを防護するため血管撮影装置で吊り下げ式鉛透明衝立や寝台に取り付けるドレープなどが使用されている。しかし、手先は直接作業を行っている部分であり、遮蔽しにくい部分である。したがって、手先の被ばく量は比較的多くなる。
手先の被ばくを抑制する方法として、放射線の遮蔽材として実績のある鉛を用いた手袋で、手指被ばくを44%低減したという報告がされている(非特許文献1)。しかし鉛を用いた手袋は、可撓性に乏しく作業効率が著しく阻害される。また、鉛は有害でもある。
そこで、より作業性に富む手先の保護用具として、特許文献1には、タングステン粉末を含有する天然ゴムラテックスの分散液を用いた浸漬法により60~100kVpの電圧で生じるX線の50~80%を吸収できる放射線保護手袋が開示されている。タングステン粉末は放射線を吸収することができ、指先の被ばくを緩和することができる。
特許文献2にもタングステンの含有割合を高くした手袋が開示されている。この手袋は粒状タングステンを含むシートを一対の手袋形状に切り出し、それを貼り合わせることで形成している。
特許文献3にもタングステンを含む手袋が開示されている。ここでは、タングステンの割合を高くすると、タングステン粒子の沈降が起こり、遮蔽性が劣化するという課題を取り上げている。そして、タングステン粉末を高粘度の樹脂エマルジョンに分散させるとタングステン粒子が沈降しないという知見を得て、タングステン含有量の高い手袋を完成させている。
米国特許第5001354号 特表平06-511315号公報 特開2001-124892号公報
Nickoloff, Edward L.; RADIATION DOSES DURING CT FLUOROSCOPY December 2000 - Volume 79 - Issue 6 - pp 675-681
特許文献1乃至3による放射線遮蔽手袋は手首より先を覆う形状をしているので、手全体を放射線から遮蔽することができる。しかし、指全体を覆っているので、穿孔を行う、糸を結ぶといった細かな作業は行いにくい。鉛含有手袋は、厚み自体が厚く、可撓性が乏しいためである。
また、医療用としては、一度患者の体液が付着した手袋を再利用することはできない。特に特許文献に開示された手袋はゴム中にタングステン粒子を分散させたものなので、基本的に呼吸を行う樹脂(ゴム)が基材となっている。したがって、一度付着したタンパク質を完全に除去することはできない。
一方、タングステンは決して廉価な材料ではないので、タングステン含有手袋を使い捨てにするのは経済的な観点から現実的ではない。
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたものであり、放射線の遮蔽範囲は手袋ほどではないにしても、細かい作業性を確保しつつ、指先の被ばく量を軽減させる指サックである。
より具体的に本発明に係る放射線遮蔽指サックは、
タングステン粉末が分散されたエラストマーの単層で構成され、
指先が挿入されるキャップ部と、
前記キャップ部に連続して延設され、前記キャップ部と同一組成で構成されたガード部を有することを特徴とする。
本発明に係る放射線遮蔽指サックは、キャップ部に指の末節(末節骨部分)が挿入され、キャップ部が基節に相当する部分にまで及ばないので、指の第1関節の動きを妨げることがない。結果、指の可動域が広く作業性が向上する。
また、本発明に係る放射線遮蔽指サックは、キャップ部にガード部を延設させることができるので、指の動きを妨げることなく、放射線遮蔽領域を広げることもできる。
また、本発明に係る放射線遮蔽指サックは、指の末節が挿入されるキャップ部の指腹に当たる部分に、厚みが薄い若しくは開口(貫通孔)が開いている増感部が形成されているので、手術用手袋を介しても指先の感覚を妨げにくい。したがって、放射線を遮蔽しつつ細かな作業を行うことができる。
また、本発明に係る放射線遮蔽指サックは、指先およびその周辺を遮蔽するので、その上に手術用手袋を装着することができる。結果、放射線遮蔽指サック自体が患者の体液に触れることがなく、長期間にわたって、再利用することができる。
また、放射線遮蔽指サックは手首から先全体を覆うものではないので、可動域が広く、指を動かすことに支障がない。
本発明に係る指サックを示す図である。 指サックの変形例を示す図である。 指サックの他の変形例を示す図である。 実施例で作製した指サックの外形と装着した状態を示す図である。 実施例で作製した指サックのX線遮蔽率を測定するための構成を示す図である。 実施例で作製した指サックのX線遮蔽率の測定結果を示すグラフである。 実施例で作製した指サックを実際のアンギオグラフィを用いた場合の放射線遮蔽能力について測定する構成を示す図である。 アンギオグラフィでの透視モードおよび撮影モードにおけるX線遮蔽率の測定結果を示すグラフである。
以下に本発明に係る放射線遮蔽指サックについて図面および実施例を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
図1(a)に本発明に係る放射線遮蔽指サック(以下単に「指サック」と呼ぶ。)の外観を示す。また、図1(b)には、図1(a)のA-A断面図を示す。指サック1は、キャップ部10(図2(a)参照)を有する。キャップ部10は、開口10aと、閉鎖された奥10bを有する袋形状に成型されている。キャップ部10は開口10aから、使用者の指の末節(ほぼ指頭から第1関節までの間)が挿入される。キャップ部10の側壁10cは、全て塞がっている。つまり、キャップ部10の外部から側壁10cを貫通してキャップ部10の内側には行けない。なお、後述する本発明のバリエーションでは、キャップ部10の側壁10cに貫通孔が設けられる場合もある。
指サック1は、このように指の末節が挿入されて利用される。したがって、指の第1関節の動きを拘束しない。結果、指先の動きがスムーズになり、細かい作業も行うことができる。
図1(b)には、図1(a)のA-A断面を示す。指サック1は、指腹の位置で厚みt1が他の部分t0よりも薄く成形されている若しくは開口(貫通孔)が開いている増感部12を有していてもよい。増感部12の範囲は、他の厚みの1/2乃至1/5の薄さが好適である。指腹の部分に増感部12が成型されているので、物に触れた時の感触が指先に伝わりやすく、細かい作業が容易になる。
このような指サック1は、以下のような工程で作製される。まず、基材となるエラストマー成分と、タングステン粉末およびタングステン化合物粉末の少なくとも一方の粉末(以下「タングステン粉末等」と呼ぶ。)を含む原料を混合分散して混合原料を得る。得られた混合原料を成型し、架橋することで、本発明に係る指サック1を得る。なお、混合原料を架橋したものを「放射線遮蔽材」と呼ぶ。本発明に係る指サック1は、指サック形状に成型された放射線遮蔽材と言ってもよい。
以下原料および各工程を説明する。
<原料>
原料は、タングステン粉末等と、エラストマー成分を含む。また、原料には、軟化剤と各種配合剤および添加剤が含められてもよい。
(1)タングステン粉末等
最終製品である指サック1の密度は、6.0Mg/mから12.0Mg/mに設定される。この範囲にあることで成型しやすく、且つ放射線吸収量を大きくし放射線遮蔽性能を高めることが可能である。このとき使用するタングステンは粉末形状とすることで、加工性や成型性が良好になる。
また、指サック1の密度を上記の範囲に調整するのは、密度が6.0Mg/m未満であると、X線やγ線の遮蔽能力が十分ではなく、必要な遮蔽能力を得るためには放射線遮蔽材(指サック1)の厚みを増やさなければならない。逆に放射線遮蔽材の密度が12.0Mg/mより高くしようとすると、タングステン粉末等の添加量を更に増加させる必要があり、このため混練り及び成型が困難になり、また適当な弾性を得ることができなくなる。
(2)エラストマー成分
エラストマー成分としては、天然ゴム、合成ゴムを含む加硫ゴム、またはスチレン系、オレフィン/アルケン系、塩ビ系、ウレタン系、アミド系といった熱可塑性エラストマーが好適に利用できる。合成ゴムとしては、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレンプロピレン三元共重合体、ブチルゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
(3)軟化剤
軟化剤は、成型物の硬度の低下を目的として使用される添加剤であり、この軟化剤には可塑剤も含まれる。軟化剤としては、例えば、鉱物油系軟化剤、植物油系軟化剤、合成可塑剤を挙げることができ、特に、鉱物油系軟化剤は、芳香族系、ナフテン系、パラフィン系のものがある。
(4)各種配合剤および添加剤
本発明に係る放射線遮蔽指サック1は原料として公知の劣化防止剤、架橋反応に必要な架橋剤や加硫促進剤、酸化亜鉛やステアリン酸などの架橋促進助剤、フェノール系やアミン系、キノン系などの老化防止剤、炭酸カルシウム系やクレー系、硫酸バリウム系などの充填剤、カーボンブラック系やシリカ系、表面処理炭酸カルシウム系などの補強剤、脂肪酸エステルなどの加工助剤、その他発泡剤、難燃剤、粘着付与剤を適宜配合剤若しくは添加剤として利用することができる。
<混合分散>
上記に説明した原料のうち、少なくともエラストマー成分と、軟化剤と、タングステン粉末等は、必須の原料である。したがって、少なくともエラストマー成分と、軟化剤と、タングステン粉末等は一度に混合分散される。なお混合分散の最初から配合剤を原料に含めてもよい。また、添加剤は混合分散の最後に添加してもよい。
混合分散は、二本ロール、ニーダー類、バンバリーミキサーといった公知の分散機をも用いることができる。また、これらを組み合わせて混合分散を行ってもよい。特に、好ましい方法は二本ロールである。混合分散された原料を「混合原料」と呼ぶ。
<成型および架橋>
本発明に係る放射線遮蔽指サック1は、混合原料を、金型に充填し所定の形状に形作ることで成型される。成型された遮蔽材は3次元的な構造を有している。これは確実な放射線遮蔽のためには遮蔽材はシームレスに成型するのが望ましいからである。なお、指サックは金型への1回の充填によって成型が完了するのが望ましい。しかし、指サック1を複数のパーツに分けて金型成型し、あとから繋ぎ合わせてもよい。なお、ここで金型への充填とは、インジェクション成型、トランスファー成型、コンプレッション成型のいずれであってもよい。
所定の形状に成型された指サック1は、温度範囲を120℃以上180℃以下とし、10分以上60分以下の熱処理によって架橋する。以上の材料および工程によって本発明に係る放射線遮蔽指サック1を得ることができる。
図2を参照する。図2には、本発明に係る放射線遮蔽指サック1の変形例を示す。図2(a)の指サック2には、キャップ部10から短冊状のガード部20が延設されている。ガード部20は、少なくとも、指において、手の甲側を覆う程度の幅20wを有する。また、ガード部20は、指の中節から基節に至る範囲までの長さ20Lを有する。
このように、指の背側にガード部20を設けることで、放射線遮蔽の範囲が広がる。ガード部20は、指の中節から基節にまでかかる大きさを有しているが、指サック2を指に装着したうえで、手術用手袋を装着すると、ガード部20は、指と密着し、指の動きに追従する。
なお、指サック2にも増感部12が形成されていてよい。指サック2の場合は、増感部12は、ガード部20側に設けられていてもよい(図2(b)参照)。IVRの場合は、放射線は下方から照射される場合もあるからである。
さらに、増感部12は、貫通孔としてもよい。指先の感触が必要な術式を行う場合は、膜厚を薄くすることでも足りない場合があるからである。なお、増感部12を貫通孔とするのは、前の図である図1および次の図である図3においても適用することができる。
図3は、指の腹側と背側の両方にガード部20およびガード部30が配置されている場合の指サック3を示す。指サック3では、ガード部20およびガード部30が指腹側と、背側に設けられている。なお、ガード部20およびガード部30は、キャップ部10とは連続しているが、互いに側部で接合されていない。ガード部20とガード部30の間には、隙間25がある。したがって、指サック3を装着しても指の動きを妨げることはない。
なお、ガード部20およびガード部30は同じ大きさでなくてもよく、同じ厚みでなくてもよい。また、増感部12は指サック3に設けられていてもよい。
以下に本発明に係る放射線遮蔽指サックの実施例について説明する。実施例は、以下の3点について行った。それぞれ実施例A、実施例B、実施例Cとする。
<実施例A> 放射線遮蔽指サックの放射線遮蔽能力。
<実施例B> アンギオグラフィ使用下での放射線遮蔽能力。
<実施例C> 実際のIVR検査での放射線遮蔽能力。
<実施例A>
以下の材料を原料として、放射線遮蔽指サックを作製した。
エラストマー成分
第1高分子成分 EPDM 80重量部
第2高分子成分 ブチルゴム 20重量部
タングステン粉末 1800重量部
軟化剤 30重量部
補強剤(カーボンブラック) 10重量部
酸化亜鉛 5重量部
ステアリン酸 1重量部
加工助剤 1重量部
老化防止剤 2重量部
紫外線吸収剤 1重量部
加硫剤 6.5重量部
合計 1956.5重量部
基材となるエラストマー成分として、第1高分子成分(EPDM)は、住友化学株式会社製のエスプレン505Aを用いた。第2高分子成分としては、JSR株式会社製ブチルゴムIIR#268を用いた。
タングステン粉末は日本新金属株式会社製のタングステン粉末W-6を用いた。
軟化剤は出光興産株式会社製AH-16(ゴムプロセスオイル)を用いた。
補強剤としてカーボンブラックを用いた。使用したカーボンブラックは、旭カーボン株式会社製の旭#70である。
架橋促進助剤として、酸化亜鉛、ステアリン酸を用いた。酸化亜鉛は、正同化学工業株式会社製の酸化亜鉛2種である。ステアリン酸は日油株式会社製のビーズステアリン酸つばきである。
加工助剤は、川口化学工業株式会社のエクストンK-1である。老化防止剤は、大内新興化学工業株式会社製のノクラック224およびノクラックADをそれぞれ1重量部ずつ、合計2重量部用いた。
紫外線吸収剤は、共同薬品の紫外線吸収剤バイオソープ100である。加硫剤は、鶴見化学工業株式会社のサルファックスPS及び、大内新興化学工業製のノクセラーシリーズから使用した。
これらの原料を二本ロール用いて混合分散させ、金型内に充填し、160℃、20分間加硫成型した。作製した放射線遮蔽指サックの形状と外観等を図4に示す。図4(a)は、放射線遮蔽指サックのサイズである。図4(a)の(ア)を平面図、(イ)を側面図とする。形状は図2に示したタイプである。ただし、この放射線遮蔽指サックには増感部12は形成されていない。以後、本実施例で用いる放射線遮蔽指サックを指サック2と呼ぶ。
指サック2は、全長65mm、ガード部20の長さは40mmである。したがって、キャップ部10の長さは25mmである。平面視した幅は20mmで、側面視の高さが15mmであるので、幾分扁平した形状をしている。
指サック2の厚みは、0.5mm、重量は、9.0g、密度は、7.6Mg/cm、硬さは、77(Type-Aデュロメータ測定値)、引張強さは、4.5MPa、伸びは、400%である。また上記の組成で作製した放射線遮蔽材の鉛当量については、ガンマ線で放射線遮蔽材が5.23mmの時、3.32mmである。
図4(b)は、ヒトの第2指に指サック2を装着した状態を平面視した写真である。ガード部20は、指腹方向になるように装着した状態を示している。図4(c)は、側面視した状態である。また、指を曲げている状態を示している。指サック2は、曲げた指に追従して変形しているのがわかる。ガード部20は、基節まで及んでいる。
図4(d)は、第4指に指サック2を装着した状態で、手術用手袋を装着した様子を示す写真である。本発明に係る指サック2は薄く、手術用手袋によって指に密着するので、指の動きを妨げることはない。
図5(a)に指サック2のX線遮蔽率の測定方法を示す。図5(b)は一部拡大図である。線源となるX線管球40は、診断領域で使用している(0.6/1.2P324DK-85,SHIMADZU,Kyoto,Japan)を使用した。また、線量計45は非接続形X線出力アナライザ(商品名Piranha,RTI Electronics社製,Molndal,Sweden)を使用した。以後の実施例においても線量計はこれを使用した。
この線量計45は、測定精度が基準測定器と同程度であるため、一般撮影領域の管電圧、線量、半価層について基準線量計の代用として安全、簡易に使用できる。また、この線量計45は、X線発生装置のX線管負荷が少なく不変性試験などの出力管理も行うことが可能である。測定プローブ46は最も高感度のDose probe線量プローブを使用した。
測定プローブ46をX線管球40の直下120cmの場所に配置した。また、指サック2を測定する際には、図5(b)に示すように、測定プローブ46に指サック2をかぶせて測定した。管電圧を60、80、100、120kVに変化させて、管電流200mA、照射時間40mA、の条件で、指サック2の有無について空気カーマ(mGy/m)を5回測定した。5回測定の平均値より指サック2の有無におけるX線遮蔽率(XSR:X-ray Shielding Rate)を次の(1)式より求めた。
Figure 0007092302000001
ここで、「D0」は防護具未使用時の空気カーマ(線量)であり、「D」は防護具使用時の空気カーマ(線量)である。また、市販の0.03鉛等量の医療用鉛手袋についても同様に計測を行い比較した。
測定結果を図6に示す。図6を参照して、横軸は管電圧(kV)であり、縦軸はX線遮蔽率(%)である。黒丸(●)は指サック2の場合であり、黒四角(■)は、市販の医療用鉛手袋である。
管電圧を60-120kVに変化させた時の指サック2のX線遮蔽率は、それぞれ98.0±0.03%、94.8±0.05%、92.3±0.12%、90.1±0.03%であった。また、市販の医療用鉛手袋のX線遮蔽率は、それぞれ69.8±0.39%、61.0±0.53%、52.3±0.52%、47.0±0.69%であった。
<実施例B>
実際のアンギオグラフィを用いた放射線遮蔽指サックの放射線遮蔽能力について調べた。実験の配置について、図7(a)に示す。図7(b)は、一部拡大図である。アンダーチューブ型のC-arm digital angiography system (AXIOM-Artis dFC , Siemens Erlangen , Germany)を使用し、透過モードと撮影モードの2モードで検討を行った。
図7(a)を参照して、カウチ(患者用ベッド)52の下方600mmにX線の線源54が配置されている。カウチ52の上には、患者と見立てるファントム56が載置される。また、カウチ52から300mmのところに、平面検出器58が配置されている。
患者を想定してカウチ52上に配置した4つの水等価ファントム56の個々のサイズは、300mm(length)×300mm(width)×50mm(height)であり、Totalの厚みは、200mmである。
線源54であるX線管球のフィルタは0.3mmCuであり、線源54-平面検出器58の距離は900mmである。カウチ52は、モンテカルロシミュレーションにおいて、0.86mmアルミニウム等量である。照射野サイズは、180×180mm、透視モードでは、15フレーム/秒で、1フレームあたりのパルス幅は3.9msである。また、撮影モードでは、15フレーム/秒で、1フレームあたりのパルス幅は7.5msである。
線量計45を用いて、空気カーマ(mGy/m)を5回測定し、その平均値より指サック2の有無においてX線遮蔽率(%)を求めた。また、測定位置については実際の作業者の手指位置と想定されるアイソセンター(isocenter:放射線の照射中心)から200mmの位置で測定を行った。また市販の医療用鉛手袋についても同様に計測を行った。手指被ばく線量のX線遮蔽率(%)については、(1)式を用いて求めた。表1に実験時の条件を示す。
Figure 0007092302000002
測定結果を図8に示す。図8を参照して、横軸は透視モードと撮影モードの違いを示し、縦軸はX線遮蔽率(%)である。黒丸(●)は指サック2の場合であり、黒四角(■)は、市販の医療用鉛手袋である。
透視モードにおけるアイソセンターから200mm離れた位置での指サック2と市販の医療用鉛手袋のX線遮蔽率は、それぞれ91.3±0.21%、56.5±0.58%であった。また、撮影モードにおけるアイソセンターから200mm離れた位置での指サック2と市販の医療用鉛手袋のX線遮蔽率は、それぞれ96.5±0.04%、67.6±0.33%であった。
<実施例C>
次に実際に術者が指サック2を装着して、X線遮蔽率を調べた。IVR検査装置として、Innova 4100 IQ (GE Healthcare, Buckinghamshire, England)を用いた。
IVR検査を行う放射線科医の左手の第4指に本発明に係る指サック2を装着して、防護されていない第3指と指サック2で防護されている第4指に線量計測用ガラスリング(千代田テクノル,Tokyo,Japan)を用いて術者皮膚の70μm線量当量(以下、「H70μm」とする。)を計測した。計測を行ったそれぞれの検査および透視時間、装置の表面吸収線量の値を表2に示す。また、測定結果を表3に示す。
Figure 0007092302000003
肝動脈塞栓療法(transcatheter arterial embolization;TAE)とは、多血性肝細胞癌を栄養する肝動脈内に経カテーテル的に塞栓物質を注入し、栄養動脈を塞栓することで腫瘍を阻血壊死に陥らせる手技である。
肝動脈化学塞栓療法(transcatheter arterial chemoembolization;TACE)とは、油性造影剤と抗癌剤の混合液の注入後に塞栓物質を注入する手法である。
CV(Central Venous)ポートとは、様々な薬剤を注入するために皮膚の下に完全に埋め込んで使用する医療器材である。X線透視を使用して、通常、左右どちらかの前胸部(胸)に埋め込む手技である。
腹部造影は、透視下で腹部に挿入したカテーテルに造影剤を注入し、腹部の血管を描写する手技である。
Figure 0007092302000004
指サック2で防護をされてない第3指のH70μmの値は、3.3mGyであり、指サック2で防護した第4指のH70μmの値は、2.0mGyであった。これより、指サック2による術者の手指被ばく線量の低減率は、39.4%であった。
以上のことから、本発明に係る放射線遮蔽指サックは一般撮影装置で使用される、管電圧を60-120kVにおいて、市販の医療用鉛手袋と比較して高いX線遮蔽効果を有していた(図6)。これは、診断領域で用いられる管電圧が60-120kVの範囲において、タングステンは、鉛よりも線減弱係数が高く、減衰が大きいことが関係している。
したがって、上記の実施例で用いた厚み(0.5mm)よりさらに薄くすることもできる。厚みを薄くするのは、放射線遮蔽指サックの柔軟性向上とともに、術者の指先の感覚を残すことに寄与する。結果、術者の作業性が向上すると考えられる。
血管撮影装置においても、放射線遮蔽指サックは、透視および撮影両モードともアイソセンターから200mm離れた位置でのX線遮蔽率が、市販の医療用鉛手袋より高いX線遮蔽効果を有していた(図8)。実際のIVR検査については、放射線遮蔽指サックで術者の手指を防護すると、術者の手指被ばく線量は、防護されていない時よりも39.4%低減された。
本発明に係る放射線遮蔽指サックはIVR等の処置を行う際の医師の指先の被ばくを好適に抑制することができる。
1、2、3 指サック(放射線遮蔽指サック)
10 キャップ部
10a 開口
10b 奥
10c 側壁
12 増感部
20 ガード部
20w 幅
20L 長さ
25 隙間
30 ガード部

Claims (3)

  1. タングステン粉末が分散されたエラストマーの単層で構成され、
    指先が挿入されるキャップ部と、
    前記キャップ部に連続して延設され、前記キャップ部と同一組成で構成されたガード部を有する放射線遮蔽指サック。
  2. 前記キャップ部の一部に厚みが薄い若しくは開口している増感部が形成されている請求項1に記載された放射線遮蔽指サック。
  3. 前記指サックの密度は、6.0Mg/mから12.0Mg/mである請求項1または2の何れかの請求項に記載された放射線遮蔽指サック。
JP2018105596A 2018-05-31 2018-05-31 放射線遮蔽指サック Active JP7092302B2 (ja)

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