JP7088165B2 - ヘテロファジックプロピレン重合材料及びプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
[1]下記成分(I-1)または下記成分(I-2)と、下記成分(II)とを含み、
下記要件(i)~(v)を満たすヘテロファジックプロピレン重合材料。
(i)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の含有量が、20重量%以上である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
(ii)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度[η]CXSが、5dL/g以上である。
(iii)温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定される、成分(I-1)または成分(I-2)のメルトフローレートが70g/10分以上である。
(iv)温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定される、ヘテロファジックプロピレン重合材料のメルトフローレートが5g/10分以上である。
(v)下記ゲル数測定用シート中に存在する直径100μm以上のゲルの数が、シートの面積100cm2当たり1000個以下である。
ゲル数測定用シート:ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、中和剤を0.05重量部、および酸化防止剤を0.2重量部混合し、得られた混合物を100メッシュのスクリーンパックを設置した40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行いペレット化した後、スクリュー直径20mmの単軸押出機により、樹脂温度230℃で、得られたペレットをシート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmに成形されたシート。
成分(I-1):プロピレン単独重合体
成分(I-2):プロピレンに由来する単量体単位と、エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含む共重合体であって、
エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以上20重量%未満である(但し、成分(I-2)の全重量を100重量%とする)プロピレン共重合体。
成分(II):エチレンに由来する単量体単位と、プロピレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含む共重合体であって、
エチレンに由来する単量体単位の含有量が20重量%以上80重量%以下である(但し、成分(II)の全重量を100重量%とする)
エチレン-α-オレフィン共重合体。
[2]フタル酸エステルの含有量が10ppm以下である[1]に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料。
[3]有効成分として[1]または[2]に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料を含むポリプロピレン改質材。
[4]ポリプロピレン改質材としての[1]または[2]に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料の使用。
[5]プロピレン系樹脂射出成形体上にフローマークが発生することを抑制させるための、[1]または[2]に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料の使用。
[6][1]または[2]に記載のヘテロファジックプロピレン重合材料、下記成分(A)、下記成分(B)、及び下記成分(C)を含有するプロピレン系樹脂組成物であって、
ヘテロファジックプロピレン重合材料、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の合計量100重量%に対して、
前記ヘテロファジックプロピレン重合材料の含有量が1~10重量%であり、成分(A)の含有量が30~97重量%であり、成分(B)の含有量が1~30重量%であり、成分(C)の含有量が1~30重量%であるプロピレン系樹脂組成物。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):オレフィン系エラストマー
成分(C):無機充填剤
[7] 有効成分として、下記成分(I-1)または下記成分(I-2)と、下記成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料を含み、
ヘテロファジックプロピレン重合材料が、下記要件(i)~(iv)を満たし、
下記(v)を満たすポリプロピレン改質材。
(i)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の含有量が、20重量%以上である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
(ii)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度[η]CXSが、5dL/g以上である。
(iii)温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定される、成分(I-1)または成分(I-2)のメルトフローレートが70g/10分以上である。
(iv)温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定される、ヘテロファジックプロピレン重合材料のメルトフローレートが5g/10分以上である。
(v)下記ゲル数測定用シート中に存在する直径100μm以上のゲルの数が、シートの面積100cm2当たり1000個以下である。
ゲル数測定用シート:100メッシュのスクリーンパックを設置した40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行いペレット化したポリプロピレン改質材を、スクリュー直径20mmの単軸押出機により、樹脂温度230℃で、シート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmに成形されたシート。
成分(I-1):プロピレン単独重合体
成分(I-2):プロピレンに由来する単量体単位と、エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含む共重合体成分であって、
エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以上20重量%未満である(但し、成分(I-2)の全重量を100重量%とする)プロピレン共重合体成分。
成分(II):エチレンに由来する単量体単位と、プロピレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含む共重合体成分であって、
エチレンに由来する単量体単位の含有量が20重量%以上80重量%以下である(但し、成分(II)の全重量を100重量%とする)
エチレン-α-オレフィン共重合体成分。
本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料は、成分(I-1)または成分(I-2)と、成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料である。成分(I-1)と成分(I-2)を併せて「成分(I)」と称する。
成分(I-2)に含有されるエチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量は、0.01重量%以上20重量%未満であり、好ましくは0.1重量%以上15重量%以下であり、より好ましくは0.1重量%以上15重量%未満であり、さらに好ましくは1重量%以上10重量%以下であり、特に好ましくは1重量%以上10重量%未満である(但し、成分(I-2)の全重量を100重量%とする)。
(1)プロピレンに由来する単量体単位の含有量が85重量%以上100重量%未満であり、エチレンに由来する単量体単位の含有量が0重量%を超え15重量%以下であるプロピレン-エチレン共重合体(但し、プロピレンに由来する単量体単位とエチレンに由来する単量体単位との含有量の合計を100重量%とする);
(2)プロピレンに由来する単量体単位の含有量が85重量%以上99.99重量%以下であり、エチレンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以上15重量%以下であるプロピレン-エチレン共重合体(但し、プロピレンに由来する単量体単位とエチレンに由来する単量体単位との含有量の合計を100重量%とする);
(3)プロピレンに由来する単量体単位の含有量が80重量%以上100重量%未満であり、エチレンに由来する単量体単位の含有量が0重量%を超え10重量%以下であり、炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量が0重量%を超え10重量%以下であるプロピレン-エチレン-α-オレフィン共重合体(但し、プロピレンに由来する単量体単位とエチレンに由来する単量体単位と炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンに由来する単量体単位との含有量の合計を100重量%とする);
(4)プロピレンに由来する単量体単位の含有量が80重量%以上99.99重量%以下であり、エチレンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以上10重量%以下であり、炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以上10重量%以下であるプロピレン-エチレン-α-オレフィン共重合体(但し、プロピレンに由来する単量体単位とエチレンに由来する単量体単位と炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンに由来する単量体単位との含有量の合計を100重量%とする); (5)プロピレンに由来する単量体単位の含有量が85重量%以上100重量%未満であり、炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量が0重量%を超え15重量%以下であるプロピレン-α-オレフィン共重合体(但し、プロピレンに由来する単量体単位と炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンに由来する単量体単位との含有量の合計を100重量%とする);および
(6)プロピレンに由来する単量体単位の含有量が85重量%以上99.99重量%未満であり、炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以6上15重量%以下であるプロピレン-α-オレフィン共重合体(但し、プロピレンに由来する単量体単位と炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンに由来する単量体単位との含有量の合計を100重量%とする)が挙げられる。
が挙げられる。
成分(II)に含有されるエチレンに由来する単量体単位の含有量は、20重量%以上80重量%以下であり、好ましくは20重量%以上75重量%以下であり、より好ましくは20重量%以上60重量%以下であり、さらに好ましくは25重量%以上50重量%以下である(但し、成分(II)の全重量を100重量%とする)。
ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の含有量が、20重量%以上である。(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。より少ない添加量でフローマークが発生する面積を減少させる効果を高めるために、前記キシレン可溶成分は、好ましくは22重量%以上45重量%以下である。
本明細書において、「キシレン可溶成分」は、溶媒をp-キシレンとし、ISO 16152に準拠して得られる25℃ キシレン可溶成分である。
ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の含有量は、成分(II)を重合する際の重合温度、重合圧力、または滞留時間を調整することにより制御することができる。重合温度は、50~100℃とすることが好ましい。重合圧力は、常圧~3MPaGとすることが好ましい。滞留時間は、0.5~5時間とすることが好ましい。
ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度[η]CXSは、好ましくは5dL/g以上20dL/g以下であり、より好ましくは5dL/g以上15dL/g以下であり、さらに好ましくは5L/g以上12dL/g以下である。
本発明における極限粘度は、温度135℃、テトラリン中で測定される極限粘度であり、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491項に記載の計算方法により求められる。すなわち、還元粘度を濃度に対してプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求められる粘度である。還元粘度は、温度135℃、テトラリン溶媒の条件で、ウベロ-デ型粘度計により、濃度0.1g/dL、0.2g/dL、および、0.5g/dLの3点を測定する。
ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度[η]CXSは、成分(II)を重合する際の重合槽の気相部の水素濃度を調整することによって制御することができる。重合槽の気相部の水素濃度は、例えば0.0~0.4mol%とすることが好ましく、0.0~0.1mol%であることがより好ましい(ただし、エチレンとα-オレフィンと水素との合計量を100mol%とする)。
成分(I-1)または成分(I-2)のMFRが70g/10分以上である。
成分(I-1)または成分(I-2)のMFRは、好ましくは70g/10分以上1000g/10分以下であり、より好ましくは100g/10分以上500g/10分以下であり、さらに好ましくは120g/10分以上300g/10分以下である。 成分(I-1)または成分(I-2)のMFRは、成分(I-1)または成分(I-2)を重合する際の重合槽の気相部の水素濃度を調整することにより制御することができる。重合槽の気相部の水素濃度は、例えば1~30mol%とすることが好ましく、3~30mol%であることがより好ましい(ただし、プロピレンと水素との合計量を100mol%とする)。
ヘテロファジックプロピレン重合材料のMFRは、好ましくは5g/10分以上50g/10分以下であり、より好ましくは5g/10分以上25g/50分以下であり、さらに好ましくは5g/10分以上20g/10分以下である。
ヘテロファジックプロピレン重合材料のMFRは、成分(I-1)または成分(I-2)を重合する際の重合槽の気相部の水素濃度、または成分(II)を重合する際の重合温度、重合圧力、滞留時間、または重合槽の気相部の水素濃度を調整することにより制御することができる。成分(I-1)または成分(I-2)を重合する際の重合槽の気相部の水素濃度、および成分(II)を重合する際の重合温度、重合圧力、滞留時間、重合槽の気相部の水素濃度は、それぞれ、要件(i)~(iii)で示した範囲の値とすることが好ましい。
ヘテロファジックプロピレン重合材料を含む下記ゲル数測定用シート中に存在する直径100μm以上のゲルの数が、シートの面積100cm2当たり1000個以下である。
ゲル数測定用シート:ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、中和剤を0.05重量部、酸化防止剤を0.2重量部混合し、得られた混合物を100メッシュのスクリーンパックが設置された40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行いペレット化する。スクリュー直径20mmの単軸押出機により、樹脂温度230℃で、得られたペレットをシート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmに成形されたシート。
ゲル数測定用シートの成形に用いられるペレットとしては、例えば、下記が挙げられる。ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、ステアリン酸カルシウム(日本油脂株式会社製)を0.05重量部、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザー(登録商標)GA80、住友化学株式会社製)を0.1重量部、2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f] [1,3,2]ジオキサホスフェピン(スミライザー(登録商標)GP、住友化学株式会社製)を0.1重量部混合する。得られた混合物を、100メッシュのスクリーンパックを設置した田辺プラスチックス機械株式会社製40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行ってペレット化したペレットが挙げられる。
シートの面積100cm2当たりのゲルの数は、好ましくは0個以上1000個以下、より好ましくは0個以上750個以下である。
要件(v)において、ゲルの数は、下記の方法により測定される。
シートの表面を、EPSON社製スキャナーGT-X970により観察し、シート表面の画像を得る。得られる画像を900dpi、8bitの条件でコンピューターに取り込み、閾値が120以上の部分を白、閾値が120未満の部分を黒とする2値化処理を行う。2値化処理は、旭エンジニアリング社製画像解析ソフト“A像君”を使用する。白部分がゲルである。ゲルの形状は不定形であるので、円相当径をゲルの大きさとする。シートの面積100cm2当たりの円相当径(直径)100μm以上であるゲルの数を求める。
要件(v)は、成分(I-1)または成分(I-2)を、後述の多段重合方法により重合することにより満足させることができる。多段重合方法における反応領域の数は、成分(I)の重合では6~10が好ましい。
ヘテロファジックプロピレン重合材料に含有される成分(II)の含有量は、好ましくは20重量%以上50重量%以下であり、より好ましくは20重量%以上45重量%以下である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
フタル酸エステルとしては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジノルマルブチル、フタル酸ジターシャリーブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジプロピル、イソフタル酸ジブチル、イソフタル酸ジペンチル、イソフタル酸ジヘキシル、イソフタル酸ジオクチル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジプロピル、テレフタル酸ジブチル、テレフタル酸ジペンチル、テレフタル酸ジヘキシルおよびテレフタル酸ジオクチルが挙げられる。
本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料が、成分(I-1)と成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料である場合、該ヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法としては、以下の方法が挙げられる。
<製造方法1>
下記工程(1-1)と下記工程(1-2)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
工程(1-1):プロピレン重合触媒の存在下、多段重合方法により、プロピレンを単独重合して、成分(I-1)を得る工程。
工程(1-2):前記成分(I-1)の存在下、多段重合方法により、プロピレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、エチレンとを共重合して、成分(I-1)と成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料を得る工程。
<製造方法2>
下記工程(2-1)と下記工程(2-2)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
工程(2-1):プロピレン重合触媒の存在下、多段重合方法により、プロピレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、エチレンとを共重合して、成分(II)を得る工程。
工程(2-2):前記成分(II)の存在下、多段重合方法により、プロピレンを単独重合して、成分(I-1)と成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料を得る工程。
<製造方法3>
下記工程(3-1)と下記工程(3-2)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
工程(3-1):プロピレン重合触媒の存在下、多段重合方法により、エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、プロピレンとを共重合して、成分(I-2)を得る工程。
工程(3-2):前記成分(I-2)の存在下、多段重合方法により、プロピレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、エチレンとを共重合して、成分(I-2)と成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料を得る工程。
<製造方法4>
下記工程(4-1)と下記工程(4-2)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料の製造方法。
工程(4-1):プロピレン重合触媒の存在下、多段重合方法により、プロピレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、エチレンとを共重合して、成分(II)を得る工程。
工程(4-2):前記成分(II)の存在下、多段重合方法により、エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンと、プロピレンとを共重合して、成分(I-2)と成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料を得る工程。
工程a:最上流の第1の反応領域へ、重合触媒とモノマーとを供給し、該モノマーを重合することにより、重合体を得る工程。
工程b:第1の反応領域で得られた重合体を、第1の反応領域に接続された第2の反応領域へ移送する工程
工程c:前記第2の反応領域へモノマーを供給し、前記第1の反応領域で得られた重合体の存在下、モノマーを重合することにより、重合体を得る工程
直列に接続された反応領域の数が3以上の場合、第3の反応領域以降の反応領域においても、前記工程bおよび前記工程cに相当する工程を行う。
多段重合は、
1つの反応器中に1つの反応領域を有する反応器が直列に複数接続されたシステム中で行う場合と、
1つの反応器中に複数の反応領域を有する反応器中で行う場合と、
1つの反応器中に1つの反応領域を有する反応器と、1つの反応器中に複数の反応領域を有する反応器とが接続されたシステム中で行う場合
とが挙げられる。
1つの反応器中に複数の反応領域を有する反応器としては、多段噴流層型反応器が挙げられる。
前記工程(1-1)、前記工程(2-2)、前記工程(3-1)または前記工程(4-2)では、多段重合方法の反応領域の数は、6~10が好ましい。前記工程(1-2)、前記工程(2-1)、前記工程(3-2)または前記工程(4-1)では、多段重合方法の反応領域の数は、2~5が好ましい。
一実施形態において、プロピレン重合触媒は、公知の方法によって、固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物とを接触させることによって得ることができる。得られたプロピレン重合触媒は、固体触媒成分および有機アルミニウム化合物を含むことがある。
別の実施形態において、プロピレン重合触媒は、固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、外部電子供与体とを接触させることによって得ることができる。得られたプロピレン重合触媒は、固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および外部電子供与体を含むことがある。
モノエステル化合物、ジカルボン酸エステル化合物、ジオールジエステル化合物、β-アルコキシエステル化合物およびジエーテル化合物からなる群から選択される少なくとも一種の内部電子供与体と、チタン原子と、マグネシウム原子と、ハロゲン原子とを含み、下記要件(I)~(IV)を満たす、固体触媒成分:
(I)規格ISO15901-1:2005に従い水銀圧入法により測定される全細孔容積が0.95~1.80mL/gであり、規格ISO15901-1:2005に従い水銀圧入法により測定される比表面積が60~170m2/gであること。
(II)規格ISO13320:2009に従い、レーザ回折・散乱法により測定される体積基準の粒子径分布において、10μm以下である成分の累積百分率が6.5%以下であること。
(III)規格ISO15472:2001に従い、X線光電子分光法により得られる酸素原子の1s軌道に帰属するピークを波形分離して、ピーク成分を得る。得られるピーク成分のうち、結合エネルギーが532eV以上534eV以下の範囲にピークトップを有するピーク成分の面積(F)に対する、結合エネルギーが529eV以上532eV未満の範囲にピークトップを有するピーク成分の面積(G)の比(G/F)が0.33以下であること。
(IV)チタン原子の含有量が1.50~3.40重量%であること。
製造方法:ハロゲン化チタン化合物および溶媒を含むハロゲン化チタン化合物溶液と、マグネシウム化合物とを接触させ、固体生成物を含む分散液を得る工程(I)を有し、工程(I)において、下記式(2)で表されるCに対する下記式(1)で表されるAの比(A/C)が、3以下である、固体触媒成分の製造方法。
A=a/b (1)
(式中、aは、ハロゲン化チタン化合物溶液に含まれるハロゲン化チタン化合物の体積(mL)を、bは、ハロゲン化チタン化合物溶液に含まれる溶媒の体積(mL)を表す。)
C=a/c (2)
(式中、aは、ハロゲン化チタン化合物溶液に含まれるハロゲン化チタン化合物の体積(mL)を、cは、固体生成物を含む分散液に含まれる溶媒の体積(mL)を表す。)
ハロゲン化チタン化合物は、ハロゲン原子およびチタン原子を含有し、少なくとも一つのハロゲン原子がチタン原子に結合している化合物を意味する。マグネシウム化合物は、マグネシウム原子を含有する化合物であればよい。
内部電子供与体として好ましくは、ジカルボン酸エステル化合物、ジオールジエステル化合物およびβ-アルコキシエステル化合物からなる群から選択される少なくとも一種の内部電子供与体である。内部電子供与体は、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記ベッセル型反応器内で得られたプロピレン重合体の存在下、下記気相反応器内でプロピレンを重合する工程と
を含む方法により製造することができる。
ベッセル型反応器は、通常、反応領域数が1である。ベッセル型反応器内での重合温度は、例えば、0~120℃とすることができる。ベッセル型反応器内での重合圧力は、例えば常圧~10MPaGとすることができる。
成分(II)を製造する工程において、重合温度は、例えば0~120℃とすることが好ましく、50~100℃とすることとがより好ましい。成分(II)を製造する工程において、重合圧力は、例えば常圧~10MPaGとすることが好ましく、常圧~3MPaGとすることがより好ましい。成分(II)を製造する工程において、重合槽内の水素濃度は例えば0.0~0.4mol%とすることが好ましく、より好ましくは0.0~0.1mol%である。
本明細書において、「ポリプロピレン改質材」とは、ポリプロピレンを含む成形体の外観を改良する材を意味する。例えば、ポリプロピレン改質材である本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料を含むポリプロピレンを含む成形体の外観は、ポリプロピレン改質材を含まないポリプロピレンを含む成形体の外観より優れる。
ポリプロピレン改質材は、ポリプロピレンを含む成形体の外観を改良する効果を損ねない限り、耐熱安定剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、中和剤、結晶核剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、難燃剤、石油樹脂、発泡剤、発泡助剤等の添加剤を含有していてもよい。
ポリプロピレン改質材としては、たとえば、有効成分として、成分(I-1)または成分(I-2)と、成分(II)とを含むヘテロファジックプロピレン重合材料を含み、ヘテロファジックプロピレン重合材料が、要件(i)~(iv)を満たし、下記(v)を満たすポリプロピレン改質材が挙げられる。
(v)下記ゲル数測定用シート中に存在する直径100μm以上の大きさのゲルの数が、シートの面積100cm2当たり1000個以下である。
ゲル数測定用シート:100メッシュのスクリーンパックを設置した40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行いペレット化したポリプロピレン改質材を、スクリュー直径20mmの単軸押出機により、樹脂温度230℃で、シート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmに成形されたシート。
ポリプロピレン改質材は、ヘテロファジックプロピレン重合材料の他に、酸化防止剤を含んでいてもよい。ポリプロピレン改質材は、ヘテロファジックプロピレン重合材100重量部に対して、中和剤を0重量部以上1重量部以下、および酸化防止剤を0重量部以上1重量部以下含んでいてもよい。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤またはリン系酸化防止剤が挙げられる。
具体的には、プロピレン系樹脂組成物100重量部に対し、本発明のヘテロファジックプロピレン重合材料を1~10重量部含むことにより、得られる射出成形体上にフローマークが発生する面積を減少させることができる。
本発明は、前記ヘテロファジックプロピレン重合材料、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)を含有するプロピレン系樹脂組成物であって、
ヘテロファジックプロピレン重合材料、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の合計量100重量%に対して、
ヘテロファジックプロピレン重合材料の含有量が1~10重量%であり、成分(A)の含有量が30~97重量%であり、成分(B)の含有量が1~30重量%であり、成分(C)の含有量が1~30重量%であるプロピレン系樹脂組成物を提供する。
プロピレン系樹脂組成物中、成分(A)の含有量は、好ましくは、35~97重量%である。
プロピレン系樹脂組成物中、成分(B)の含有量は、好ましくは、1~25重量%である。
プロピレン系樹脂組成物中、成分(C)の含有量は、好ましくは、1~25重量%である。
プロピレン系樹脂組成物の全重量100重量%に対して、ヘテロファジックプロピレン重合材料、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の合計量は、好ましくは70重量%以上である。
成分(A)とは、プロピレンに基づく単量体単位を有する重合体であって、重合体の全重量100重量%に対して、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が50重量%以上である重合体である。
成分(A)としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、およびヘテロファジックプロピレン重合材料が挙げられる。
但し、成分(A)としてのヘテロファジックプロピレン重合材料は、以下に定義される重合体(X)を除く。
重合体(X):成分(I-1)または成分(I-2)と、成分(II)とを含み、下記要件(i)~(v)を満たすヘテロファジックプロピレン重合材料。
(i)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の含有量が、20重量%以上である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
(ii)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度[η]CXSが、5dL/g以上である。
(iii)成分(I-1)または成分(I-2)のMFRが70g/10分以上である。
(iv)ヘテロファジックプロピレン重合材料のMFRが5g/10分以上である。
(v)ヘテロファジックプロピレン重合材料から得られる下記ゲル数測定用シート中に存在する100μm以上の大きさのゲルの数が、シートの面積100cm2当たり1000個以下である。
ゲル数測定用シート:ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、中和剤を0.05重量部、および酸化防止剤を0.2重量部混合し、得られた混合物を100メッシュのスクリーンパックを設置した40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行いペレット化した後、スクリュー直径20mmの単軸押出機により、樹脂温度230℃で、得られたペレットをシート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmに成形されたシート。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、成分(A)を1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。成分(A)は、好ましくは、プロピレン単独重合体、または、ヘテロファジックプロピレン重合材料である。
オレフィン系エラストマーとは、炭素原子数3~20のα-オレフィンに由来する単量体単位と、エチレンに由来する単量体単位とを有する重合体である。オレフィン系エラストマー中のエチレンに由来する単量体単位の含有量は、10~85重量%であることが好ましい(但し、成分(B)の全重量を100重量%とする)。炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、2-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、および1-ドデセン等が挙げられ、好ましくはプロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、または1-オクテンである。
成分(C)としては、例えば、タルク、マイカ、モンモリロナイト、ワラストナイト、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、ガラス繊維、炭素繊維、およびアラミド繊維が挙げられ、好ましくは、タルクである。本発明のプロピレン系樹脂組成物は、成分(C)を1種のみ含有してもよく、2種以上含有してもよい。
添加剤を加える場合には、(1)ヘテロファジックプロピレン重合材料、成分(A)と、成分(B)と、添加剤とを溶融混練した後に、成分(C)を加えて溶融混練する方法、(2)ヘテロファジックプロピレン重合材料と、成分(A)と、成分(B)と、成分(C)とを予め溶融混練した後に、添加剤を加えて溶融混練する方法が挙げられる。
成形体の製造方法としては、前記プロピレン系樹脂組成物を溶融し、成形して成形体を得る工程を有する成形体の製造方法が挙げられる。
成形方法としては、押出成形法、および射出成形法が挙げられる。押出成形により、例えばシート状の成形体が得られる。射出成形により、射出成形体が得られる。
射出成形法としては、例えば、一般的な射出成形法、射出発泡成形法、超臨界射出発泡成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、サンドイッチ発泡成形法、およびインサート・アウトサート成形法が挙げられる。
ヘテロファジックプロピレン重合材料の全体の極限粘度([η]whole)、および、ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度([η]CXS)
ウベロ-デ型粘度計により、濃度0.1g/dL、0.2g/dL、および、0.5g/dLの3点について、ヘテロファジックプロピレン重合材料およびヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の還元粘度をそれぞれ測定した。極限粘度は、参考文献「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491項に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対してプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定を行った。
溶媒をp-キシレンとし、ISO 16152に準拠して、25℃ キシレン可溶成分を得た。
MFRは、JIS K7210のA法に規定された方法に従い、温度230℃、荷重は2.16kgfの条件で測定した。
ゲル数測定用シートは、次の方法に従って作製した。スクリュー直径20mmの単軸押出機(田辺プラスチック機械株式会社製VS20-14型)により、樹脂温度230℃で、材料をシート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmのシートを作製した。
ヘテロファジックプロピレン重合材料を、前記(4)の方法により成形し、作製したシートの表面を、EPSON社製スキャナーGT-X970により観察し、シート表面の画像を得る。得られたシート表面の画像を900dpi、8bitの条件でコンピューターに取り込み、閾値が120以上の部分を白、閾値が120未満の部分を黒とする2値化処理を行った。2値化処理は、旭エンジニアリング社製画像解析ソフト“A像君”を用いた。白部分をゲルとした。ゲルの形状は不定形であるので、円相当径をゲルの大きさとした。シート100cm2当たりの直径100μm以上であるゲルの数を求めた。
プロピレン系樹脂組成物を、前記(4)の方法により成形し、作製したシートの表面を目視により観察し、100cm2当たりの直径200μm以上であるゲルの数を求めた。
フローマーク発生開始位置の評価用試験片である射出成形体は、次の方法に従って作製した。射出成形機として、住友重機械工業株式会社製 SE180D 型締力180トン、金型として、キャビティサイズ100mm×400mm×3.0mm(厚さ)、1点ゲートを用いて、成形温度220℃、金型温度50℃、射出時間15sec、冷却時間30secで射出成形を実施した。
前記(7)の方法で作製した射出成形体のフローマークの発生開始位置を、目視により観察した。図1に示すように、ゲート端面1からフローマーク2が発生し始める位置までの距離(単位:mm)を測定した。なお、図中の矢印方向は、金型への射出方向を示している。ゲート端面1からフローマーク2が発生し始める位置までの距離が長いほど、前記射出成形体中のフローマークが発生する面積が少なく、外観が良好である。
工程(1-1A):撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた100mLのフラスコ内を窒素で置換した。その後、該フラスコに、トルエン36.0mL、四塩化チタン22.5mLを投入し、撹拌した。フラスコ内の温度を0℃とした後、マグネシウムエトキシド1.88gを30分おきに4回投入した後、1.5時間撹拌した。次いで、2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル0.60mLをフラスコ内に投入した後でフラスコ内の温度を10℃に昇温した。その後、同温度で2時間撹拌し、トルエン9.8mLを投入した。次いで、フラスコ内の温度を1.2K/分の速度で昇温し、60℃の時点でフラスコ内に2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル3.15mLを投入し、110℃まで昇温した。同温度で3時間、フラスコ内に投入した成分を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄した。
工程(1-1B):洗浄後の固体にトルエン38.3mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mL、2-エトキシメチル-3,3-ジメチルブタン酸エチル0.75mLを投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を60℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン56.3mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥して固体触媒成分を得た。
この固体触媒成分について、チタン原子含有量は2.53重量%であり、エトキシ基含有量は0.44重量%であり、内部電子供与体含有量は13.7重量%であった。また、レーザ回折・散乱法による中心粒径は59.5μmであり、体積基準の粒子径分布において10μm以下である成分の累積百分率は5.3%であった。X線光電子分光法により得られる酸素原子の1s軌道に帰属されるピークを波形分離して得られるピーク成分のうち、結合エネルギーが532eV以上534eV以下の範囲にピークトップを有するピーク成分の面積(F)に対する、結合エネルギーが529eV以上532eV未満の範囲にピークトップを有するピーク成分の面積(G)の比(G/F)は0.176であった。水銀圧入法により測定される全細孔容積は1.434mL/gであり、細孔半径2~50nmの範囲の細孔容積は0.283mL/gであった。
(1-1a)予備重合
内容積3Lの撹拌機付きSUS製オートクレーブに、充分に脱水および脱気処理したn-ヘキサン0.8L、トリエチルアルミニウム(以下、「TEA」と称する。)20ミリモル、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン0.4ミリモルを添加した。その中に参考例で製造した固体触媒成分8.1gを添加し、オートクレーブ内の温度を約10℃に保ちながらプロピレン8.1gを約30分かけて連続的に供給して予備重合を行った。その後、予備重合スラリーを内容積260Lの攪拌機付きSUS316L製オートクレーブに移送し、液状ブタン135gを加えて、予備重合触媒成分のスラリーとした。
スラリー重合リアクターと、多段気相重合リアクターと、2つの噴流層型リアクターとが全て直列に接続された装置において、下記重合工程Iおよび下記重合工程IIにおいて成分(I)を製造し、生成ポリマーを失活することなく下流のリアクターに移送し、下記重合工程III-1および下記重合工程III-2において成分(II)を製造した。
攪拌機付きSUS304製ベッセルタイプのスラリー重合リアクターを用いて、プロピレン単独重合を行った。すなわち、プロピレン、水素、TEA、tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランおよび(1-1a)で製造した予備重合触媒成分のスラリーをスラリー重合リアクターに連続的に供給し、重合反応を行い、ポリプロピレン粒子および液状プロピレンを含むスラリーを得た。反応条件は以下の通りとした。
攪拌速度:150rpm、
リアクターの液レベル:18L、
プロピレンの供給量:11kg/時間、
水素の供給量:39.9NL/時間、
TEAの供給量:24.3ミリモル/時間、
tert-ブチル-n-プロピルジメトキシシランの供給量:1.21ミリモル/時間、
予備重合触媒成分のスラリーの供給量(固体触媒成分換算):0.51g/時間、
重合圧力:3.10MPa(ゲージ圧)。
鉛直方向に6段の反応領域を有し、その内最上段が流動層であり、残りの5段が噴流層である多段気相重合リアクターを準備した。
重合圧力:1.80MPa(ゲージ圧)
前記多段気相重合リアクターから排出されるポリプロピレン粒子を噴流層型リアクターに連続的に供給した。重合工程III-1の噴流層型リアクターは鉛直方向に2段の噴流層の反応領域を有しており、前記多段気相重合リアクターから噴流層型リアクター(1)へのポリプロピレン粒子の移送手段は、上記のダブル弁方式で行った。
重合圧力:1.77MPa(ゲージ圧)
重合工程III-1の噴流層型リアクター(1)から排出されるポリプロピレン粒子をさらに下流の噴流層型リアクター(2)に連続的に供給した。重合工程III-2の噴流層型リアクター(2)は、鉛直方向に1段の噴流層の反応領域を有しており、重合工程III-1の噴流層型リアクター(1)から重合工程III-2の噴流層型リアクター(2)へのポリプロピレン粒子の移送手段は、ダブル弁方式で行った。
重合圧力:1.74MPa(ゲージ圧)
X=1-(ΔHf)T/(ΔHf)P
(ΔHf)T:ヘテロファジックプロピレン重合材料全体の融解熱量(単位:J/g)
(ΔHf)P:成分(I)の融解熱量(単位:J/g)
実施例2ならびに実施例3については、表1に示す値以外は実施例1と同様の方法で製造した。
BCPP-4は、成分(I)と、成分(II)とからなり、多段重合により得られた重合材料である。
特開2004-182981号公報の実施例1記載の方法によって得られる重合触媒を
用いて、液相反応器と気相反応器3槽とを直列に配置した装置において、下記重合工程Iおよび下記重合工程IIにおいて成分(I)を製造し、生成ポリマーを失活することなく後段に移送し、下記重合工程IIIにおいて成分(II)を製造した。
プロピレンで十分置換されたSUS製液相重合反応器に、TEAおよびシクロヘキシルエチルジメトキシシランを供給した。該反応器の内温を65~75℃に調整し、該反応器の内圧(ゲージ圧力)をプロピレンおよび水素で4.5MPaに調整、特開2004-182981号公報の実施例1に記載された方法で合成した固体触媒成分を該反応器に連続供給して、液相中でプロピレンを単独重合させた。生成したプロピレン単独重合体を、後続の3槽で構成される気相重合反応器の第一槽へ連続的に移送した。
気相重合反応器の第一槽の重合温度:80℃および重合圧力(ゲージ圧力):2.1MPaを一定に保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を一定に保つように水素を供給しつつ、前記のループ型液相重合反応器から連続的に移送されたプロピレン単独重合体の存在下、気相中でプロピレンを単独重合させた。第一槽中のプロピレン単独重合体成分を、次の第二槽へ断続的に移送した。
気相重合反応器の第二槽の重合温度:80℃および重合圧力(ゲージ圧力):1.7MPaを一定に保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度を一定に保つように水素を供給しつつ、第一槽から断続的に移送されたプロピレン単独重合体成分の存在下、気相中でプロピレンを単独重合させて、実質上、第一槽から移送されたプロピレン単独重合体成分と、第二槽で生成したプロピレン単独重合体成分とを含む成分(I)を製造した。第二槽からサンプリングした成分(I)のメルトフローレートは250g/分であった。この成分(I)の全量を、次の第三槽へ断続的に移送した。
気相重合反応器の第三槽の重合温度:70℃および重合圧力(ゲージ圧力)を一定に保つようにプロピレンを連続的に供給し、気相部の水素濃度とエチレン濃度とを一定に保つように水素とエチレンとを供給しながら、第二槽から断続的に移送された重合体成分(I)の存在下、気相中でプロピレンとエチレンとを共重合して、成分(II)を生成させた。
第三槽中の粉末状の重合体成分を連続的に失活槽へ導き、水で触媒成分の失活処理を行った後、80℃の窒素により乾燥して、実質上、成分(I)と成分(II)とを含む、ヘテロファジック重合材料(BCPP-4))を得た。
各ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、ステアリン酸カルシウム(日本油脂製)を0.05重量部、3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}-1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(GA80、住友化学製)を0.1重量部、2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f] [1,3,2]ジオキサホスフェピン(スミライザーGP、住友化学製)を0.1重量部混合した。その後、得られた混合物を100メッシュのスクリーンパックを設置した田辺プラスチックス機械製40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行うことにより、ペレット状のポリプロピレン改質材を得た。得られたポリプロピレン改質材の物性、およびポリプロピレン改質材から得られるシート中のゲル数の評価結果を表3に示す。
下記の物性を有するプロピレン単独重合体。
極限粘度0.82dl/g
下記の物性を有するプロピレン単独重合体。
極限粘度0.51dl/g
下記の物性を有する(プロピレン)-(エチレン-プロピレン)ヘテロファジック重合材料。
極限粘度(プロピレン単独重合体成分)0.97dl/g
極限粘度(エチレンープロピレン共重合体成分)2.24dl/g
エチレンープロピレン共重合体中のエチレン含量49重量%
エチレンープロピレン共重合体成分含量15重量%
下記の物性を有するエチレン-1-オクテンランダム共重合体。
密度 0.857g/cm3
MFR(温度230℃、荷重2.16kgで測定) 1.0g/10分
下記の物性を有するエチレン-1-オクテンランダム共重合体。
密度 0.863g/cm3
MFR(温度230℃、荷重2.16kgで測定) 0.5g/10分
体積平均粒子径5μmのタルク
BCPP-1を4.0重量%、プロピレン系重合体である成分(A-1)を8.0重量%、プロピレン系重合体である成分(A-2)を11.0重量%、プロピレン系重合体である成分(A-3)を33.5重量%、オレフィン系エラストマー(B-1)を17.5重量%、オレフィン系エラストマー(B-2)を5.0重量%、無機充填材(C)を21.0重量%の組成割合で配合し、タンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製TEX44SS-30BW-2V型)を用いて、押し出し量50kg/hr、230℃、スクリュー回転数を350rpmで混練押出して、プロピレン系樹脂組成物を製造した。得られたプロピレン系樹脂組成物のMFR、射出成形体上のフローマーク発生開始位置、および押出シートの外観の評価結果を表4に示す。
BCPP-1の代わりに、BCPP-2(実施例5)またはBCPP-3(実施例6)を用いたこと以外は実施例4と同様の操作を行い、プロピレン系樹脂組成物を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物のMFR、射出成形体上のフローマーク発生開始位置、および押出シートの外観の評価結果を表4に示す。
BCPP-1の代わりに、BCPP-4(比較例1)またはBCPP-5(比較例2)を用いて実施例4と同様の操作を行い、表3に示す組成のプロピレン系樹脂組成物を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物のMFR、射出成形体上のフローマーク発生開始位置、および押出シートの外観の評価結果を表4に示す。
ヘテロファジック重合材料を用いなかった以外は、実施例4と同様の操作を行い、表3に示す組成のプロピレン系樹脂組成物を得た。得られたプロピレン系樹脂組成物のMFR、射出成形体上のフローマーク発生開始位置、および押出シートの外観の評価結果を表4に示す。
2 フローマーク発生開始位置
Claims (9)
- 下記成分(I-1)または下記成分(I-2)と、下記成分(II)とを含み、下記要件(i)~(v)を満たすヘテロファジックプロピレン重合材料、
下記成分(A)、
下記成分(B)、及び
下記成分(C)を含有するプロピレン系樹脂組成物であって、
ヘテロファジックプロピレン重合材料、成分(A)、成分(B)、及び成分(C)の合計量100重量%に対して、
前記ヘテロファジックプロピレン重合材料の含有量が1~10重量%であり、成分(A)の含有量が30~97重量%であり、成分(B)の含有量が1~30重量%であり、成分(C)の含有量が1~30重量%であるプロピレン系樹脂組成物。
(i)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の含有量が、20重量%以上である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
(ii)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度[η]CXSが、5dL/g以上である。
(iii)温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定される、成分(I-1)または成分(I-2)のメルトフローレートが70g/10分以上である。
(iv)温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定される、ヘテロファジックプロピレン重合材料のメルトフローレートが5g/10分以上である。
(v)下記ゲル数測定用シート中に存在する直径100μm以上のゲルの数が、シートの面積100cm2当たり1000個以下である。
ゲル数測定用シート:ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、中和剤を0.05重量部、および酸化防止剤を0.2重量部混合し、得られた混合物を100メッシュのスクリーンパックを設置した40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行いペレット化した後、スクリュー直径20mmの単軸押出機により、樹脂温度230℃で、得られたペレットをシート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmに成形されたシート。
成分(I-1):プロピレン単独重合体
成分(I-2):プロピレンに由来する単量体単位と、エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含む共重合体成分であって、
エチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位の含有量が0.01重量%以上20重量%未満である(但し、成分(I-2)の全重量を100重量%とする)プロピレン共重合体成分。
成分(II):エチレンに由来する単量体単位と、プロピレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンからなる群から選択される少なくとも一種のオレフィンに由来する単量体単位とを含む共重合体成分であって、
エチレンに由来する単量体単位の含有量が20重量%以上80重量%以下である(但し、成分(II)の全重量を100重量%とする)
エチレン-α-オレフィン共重合体成分。
成分(A):プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、およびヘテロファジックプロピレン重合材料からなる群より選ばれる少なくとも一種であるプロピレン系重合体(但し、成分(A)としてのヘテロファジックプロピレン重合材料は、以下に定義される重合体(X)を除く。
重合体(X):成分(I-1)または成分(I-2)と、成分(II)とを含み、下記要件(i)~(v)を満たすヘテロファジックプロピレン重合材料。
(i)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の含有量が、20重量%以上である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)。
(ii)ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分の極限粘度[η] CXS が、5dL/g以上である。
(iii)成分(I-1)または成分(I-2)のMFRが70g/10分以上である。
(iv)ヘテロファジックプロピレン重合材料のMFRが5g/10分以上である。
(v)ヘテロファジックプロピレン重合材料から得られる下記ゲル数測定用シート中に存在する100μm以上の大きさのゲルの数が、シートの面積100cm 2 当たり1000個以下である。
ゲル数測定用シート:ヘテロファジックプロピレン重合材料100重量部に対して、中和剤を0.05重量部、および酸化防止剤を0.2重量部混合し、得られた混合物を100メッシュのスクリーンパックを設置した40mm造粒機を用い、設定温度280℃、押出量10kg/hrで溶融押出を行いペレット化した後、スクリュー直径20mmの単軸押出機により、樹脂温度230℃で、得られたペレットをシート状に溶融押出し、溶融押出されたシート状物を、30℃の冷却水を通水した冷却ロールにより冷却して、厚さ50μmに成形されたシート。)
成分(B):オレフィン系エラストマー
成分(C):無機充填剤 - ヘテロファジックプロピレン重合材料のフタル酸エステルの含有量が10ppm以下である請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
- 成分(B)がエチレン-プロピレン共重合エラストマー、エチレン-1-ブテン共重合エラストマー、エチレン-1-ヘキセン共重合エラストマー、およびエチレン-1-オクテン共重合エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも一種のオレフィン系エラストマーである請求項1または2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
- 成分(B)がエチレン-1-オクテン共重合エラストマーを含む、請求項3に記載のプロピレン系樹脂組成物。
- ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン不溶成分の極限粘度[η] CXIS が0.8dL/g以上3.0dL/g以下である請求項1~4のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
- ヘテロファジックプロピレン重合材料のキシレン可溶成分中のエチレンおよび炭素原子数4以上12以下のα-オレフィンに由来する単量体単位の含有量が10重量%以上75重量%以下である(但し、キシレン可溶成分の全重量を100重量%とする)請求項1~5のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
- ヘテロファジックプロピレン重合材料の極限粘度[η] whole が1dL/g以上10dL/g以下である請求項1~6のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
- ヘテロファジックプロピレン重合材料に含有される成分(I)の含有量が50重量%以上80重量%以下である(但し、ヘテロファジックプロピレン重合材料の全重量を100重量%とする)請求項1~7のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
- 成分(C)が、タルク、マイカ、モンモリロナイト、ワラストナイト、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウム、塩基性硫酸マグネシウム、ガラス繊維、炭素繊維、およびアラミド繊維からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1~8のいずれか一項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
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