JP7085757B2 - 加熱調理器及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、加熱調理器に関し、詳しくは炭素材料を用いた加熱調理器に関する。
直接火の上にかけて使用する加熱調理器としては、鉄、アルミニウム、ホーロー等を用いたものや、土鍋等が使用されている。
しかしながら、鉄、ホーロー、土鍋は重量が重く、内部に多くの食品を入れるとさらに重くなってしまい、使い勝手性が十分でない。また、アルミニウムは軽量であるものの強度が低く、特に底面が変形しやすいという問題があった。
また、遠赤外線効果のある炭素材料を使用した加熱調理器も市販されている。しかしながら、炭素材料を使用した加熱調理器は大きな炭素塊から削りだして成形する必要があるため、加工が難しいという問題がある。また、衝撃によって割れやすいため厚みを大きくする必要があり、その分重くなってしまうという問題があった。
このような中、特許文献1は、軽量で高強度な炭素繊維を用いた加熱調理器を提案している。
特許第6322658号
特許文献1は、炭素繊維強化炭素複合材料を主成分、結合材樹脂を副成分とした混合物を型成形し、1200~2000℃の焼成温度で結合材樹脂を残すように混合物を焼成して成形した加熱調理器具を開示している。
しかしながら、この技術では、2度の焼成を必要とするために製造コストや時間が大きくなるという問題があった。また、この技術では結合材樹脂を残すように焼成することが不可欠であるが、この残した結合材樹脂が使用(調理)時の加熱によって分解、揮発などして、食品や加熱調理器具の性能に悪影響を及ぼすおそれもある。
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、軽量で強度、熱伝導率が高く、しかも製造が容易な加熱調理器を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための加熱調理器にかかる本発明は、次のように構成されている。加熱対象物が収容される調理器本体を有し、少なくとも前記調理器本体の底部分が加熱される加熱調理器において、前記調理器本体は、炭素質のみからなる基体を有し、前記基体は、加熱対象物が収容される形状であって、底部と、当該底部よりも立ち上がった縁部とを有する形状にシームレスで一体的に成形された、炭素繊維シートに炭素マトリクスが含浸された炭素繊維強化炭素複合材料を備え、前記炭素繊維シートは、2枚以上の炭素繊維不織布を重ねた積層物からなり、その積層界面が前記基体の縁部にのみ表れるように2枚以上の前記炭素繊維不織布が積層されている
ここで基体とは、調理器本体のコア部分を意味し、調理器本体に取り付けられる取手や持ち手などはもちろん、調理器本体となすために必要な表面コートや塗装なども含まれない。そして、基体が炭素質のみからなるとは、炭素繊維シートにより構成される構造体の内部に、炭素以外の成分が存在していないことを意味する。このため、加熱調理器使用の際に基体が変質することがなく、安全に使用できる。
また、炭素質のみで構成された調理器本体の基体は、従来使用されていた鉄に比べて軽量で且つ熱伝導率が高い。また、炭素繊維強化炭素複合材料は、削りだしの炭素材料などよりも強度が高く、厚みを薄くしても使用により変形したり割れたりすることがない。また、炭素材料は加熱によって遠赤外線が発生するため、食品を内側から温めることができるという効果も生じる。よって、軽量で熱伝導率の高い、使い勝手の良い加熱調理器が得られる。
炭素繊維シートには、炭素繊維不織布を用いる。これは、UDクロス、2次元織クロス、多次元織では、可撓性を有する範囲が限定されるが、不織布はあらゆる方向に可撓性を有し成形性に優れるためである。更に、炭素繊維不織布の作製には短繊維を使用することができ、炭素繊維シートの作製工程が容易であるとともにコストも低減できる。
本発明にかかる加熱調理器は、ガスコンロやIH調理器などの熱源上において使用される各種調理鍋、フライパン、窯等に適用することができ、またIHヒーターやシーズヒーターと着脱可能に一体化された、ホットプレートや炊飯器などの内鍋やプレート等に適用できる。なお、内鍋の場合、調理器本体の側面も加熱される可能性がある。
炭素繊維シートを構成する炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維、異方性ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などの公知の炭素繊維を用いることができるが、中でも強度の高いポリアクリロニトリル系炭素繊維を主成分(炭素繊維全質量の50%以上)とすることが好ましい。ポリアクリロニトリル系炭素繊維は、炭素繊維全質量の70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100%であることが最も好ましい。
また、炭素マトリクスは合成樹脂の炭素化物からなることが好ましく、熱硬化性樹脂の炭素化物からなることがより好ましい。このような樹脂は炭素化前後において複雑に絡まり合った炭素繊維を結着保持するため、好ましい。
基体はさらに、熱分解炭素及び/又は黒鉛粒子を含む構成とすることができる。基体に黒鉛粒子をさらに含ませると基体のかさ密度を大きくでき、熱伝導率や強度をさらに高めることができる。黒鉛粒子は天然黒鉛、人造黒鉛のいずれでもよいが、熱伝導率を高める観点からは天然黒鉛であることが好ましい。また、基体に熱分解炭素を含ませると、熱分解炭素がなめらかに基体をコートするので、加熱調理器としての使い勝手が良くなるとともに、その後の表面コートなどの工程が行い易くなる。
基体の表面にセラミックスコートを施すと、耐熱性が高まるため好ましい。また、基体の表面にフッ素樹脂コートを施すと、基体の撥水性が高まり、焦げ付きを防止できるため好ましい。このため、セラミックスコートは少なくとも基体の被加熱面側、フッ素樹脂コートは少なくとも基体の加熱対象物収容面側にそれぞれ設けることが好ましい。なお、これらのコート層は、基体の内部には設けられないものである。
上記課題を解決するための加熱調理器の製造方法にかかる本発明は、次のように構成されている。
加熱対象物が収容される調理器本体を有し、少なくとも前記調理器本体の底部分が加熱される加熱調理器の製造方法において、炭素繊維不織布に樹脂成分を添加してプリプレグとなすプリプレグ作製工程と、前記プリプレグを2枚以上重ねて積層し、この積層物を加熱対象物が収容される調理器本体の形状であって、底部と、当該底部よりも立ち上がった縁部とを有する形状で、且つ前記プリプレグ積層体の積層界面が前記縁部にのみ表れるようにシームレスで一体的に成形する成形工程と、成形されたプリプレグを1000~2500℃で熱処理して、前記樹脂成分を炭素化させて炭素繊維強化炭素複合材料からなる前記調理器本体の基体を得る炭素化工程と、を備える。
このような製造方法により、上述した加熱調理器を製造できる。
また、基体に黒鉛粉末を含ませる場合、プリプレグ作製工程において、炭素繊維不織布に樹脂成分とともに黒鉛粉末を添加することが好ましい。
プリプレグを炭素化する際、炭素以外の成分がガスとなって外部に脱離するが、この際に型崩れが起きるおそれがある。ここで、プリプレグを型で挟み込んだ状態で熱処理すると、このような型崩れを効果的に防止できる。炭素化工程でも使用できる型は、1000~2500℃での熱処理に対する耐熱性を有する必要があり、且つ、熱膨張率が製造される基体のものと近い値であることも必要である。ここで、黒鉛は耐熱性に優れ、且つ炭素質の基体との熱膨張率が近い値であるため、上記の製造方法を採用すると、基体の型崩れを効果的に防止できる。
以上に説明したように、本発明によると、軽量で熱伝導率が高く、しかも製造が容易な加熱調理器を実現することができる。
図1(a)は実施の形態1にかかる加熱調理器の調理器本体の斜視図であり、図1(b)は図1(a)のA-A’線矢視切断部端面図である。 図2は、実施の形態1にかかる加熱調理器の製造に用いる型の斜視図である。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1(a)は実施の形態1にかかる加熱調理器の調理器本体の斜視図であり、図1(b)は図1(a)のA-A’線矢視切断部端面図である。
(調理器本体)
本発明に用いられる加熱調理器の調理器本体1は、図1(a)に示すように、加熱対象物が収容されるものであり、少なくともその底部が加熱されるように構成されている。この調理器本体1は、図1(b)に示すように、加熱対象物が収容される形状であって、底部と、前記底部よりも立ち上がった縁部とを有する形状にシームレスで一体的にされた基体2を有し、この基体2は炭素質のみからなる。この基体2は、炭素繊維シートに、炭素マトリクスが含浸された炭素繊維強化炭素複合材料を備えている。
図1(b)に示すように、基体2の下面(熱源側の面)にはセラミックスコート層3が設けられ、基体2の上面(加熱対象物を収容する面)にはフッ素樹脂コート層4が設けられている。セラミックスコート層3は、耐熱性を高める作用を有し、フッ素樹脂コート層4は、表面の撥水性を高めて焦げ付きを防止する作用を有する。セラミックスコートやフッ素樹脂コートは、公知の方法により行うことができる。なお、図示しないが、この調理器本体1に持ち手等が取り付けられたり、IHヒーターやシーズヒーター等を備えた外側容器と着脱可能に一体化されたりして、加熱調理器となる。
次に、このような調理器本体の製造方法について説明する。
(炭素繊維)
炭素繊維強化炭素複合材料(以下、C/C複合材と称することもある)の炭素繊維は、市販品を使用することができる。たとえば、ポリアクリロニトリル系炭素繊維(PAN系炭素繊維)、異方性ピッチ系炭素繊維、等方性ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維等を使用することができる。なお、炭素繊維はリサイクル品を使用してもよい。これらの炭素繊維を単体で用いてもよく、2種以上の炭素繊維を混合して使用してもよいが、高い強度を得る観点からPAN系炭素繊維を含むことが好ましい。
炭素繊維の径は特に限定されず、市販品のサイズを用いればよい。市販品の炭素繊維の径はその種類によって異なるが、たとえば、PAN系炭素繊維の場合、5~8μmのものを用いることができる。また、炭素繊維は、曲状のものであっても直線状のものであってもよい。これらの要件は、炭素繊維シートに求められる強度などから適宜決定すればよい。
(炭素繊維シート)
炭素繊維シートとしては製作には短繊維を使用することができ、作製も容易でありコストも低減できるため、炭素繊維不織布が好ましい。また、炭素繊維不織布はあらゆる方向に可撓性を有するため、曲線形状や複雑な形状に成形することも容易となる。
ここで、炭素繊維不織布とは、炭素繊維を織らずにランダムに絡み合わせたシート状のもので、紙状やフェルト状とすることができる。このような炭素繊維不織布は、公知の方法で作製できる。例えば、チョップ状や綿状の炭素繊維に、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエステル樹脂などのバインダー短繊維を必要に応じて添加して加熱して不織布を得ることができる。また、チョップや綿状の炭素繊維にエポキシ樹脂などの接着剤を添加して水を用いてスラリー状にした後、抄紙する方法を採用してもよい。また、チョップや綿状の炭素繊維にニードルパンチを施す方法や、チョップ状や綿状の炭素繊維に必要に応じてバインダー短繊維を添加したものを空気の流れに乗せて均一分散させ、金網上に堆積させる方法であってもよい。バインダー成分は、その後の加熱によって炭素化又は消失するため、炭素以外の成分が基体に残ることはない。
(炭素マトリクス)
炭素マトリクスは炭素繊維シートに含浸された炭素成分である。炭素マトリクスは、好ましくは合成樹脂の炭素化物とし、より好ましくは熱硬化性樹脂の炭素化物とする。合成樹脂としては、ピッチ、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等が挙げられる。これらの合成樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。また、合成樹脂は熱処理によって炭素になる割合、すなわち炭素化収率が高いものを用いることが好ましい。
(基体)
基体のかさ密度は、好ましくは0.5~1.5g/cm3とし、より好ましくは0.6~1.3g/cm3とし、さらに好ましくは0.7~1.2g/cm3とする。また、基体の厚みは、好ましくは、1~12mmとし、より好ましくは、2~8mmとし、さらに好ましくは、2~6mmとする。また、基体の引張り強度は、好ましくは、10~100MPaとし、より好ましくは、20~100MPaとし、さらに好ましくは、40~100MPaとする。
基体全質量に占める炭素繊維質量の割合は、好ましくは25~90%とし、より好ましくは35~80%とし、さらに好ましくは40~70%とする。また、基体全質量に占める炭素マトリクス質量の割合は、好ましくは10~75%とし、より好ましくは20~65%とし、さらに好ましくは30~60%とする。また、基体に黒鉛粒子を含ませることができるが、この場合、基体全質量に占める黒鉛粒子質量の割合は、好ましくは3~40%とし、より好ましくは5~30%とし、さらに好ましくは7~25%とする。また、基体に熱分解炭素を含ませる場合、基体全質量に占める熱分解炭素質量の割合は、好ましくは5~60%とし、より好ましくは7~50%とし、さらに好ましくは10~40%とする。なお、基体に黒鉛粒子や熱分解炭素を含ませることによって、熱伝導性を高めたり、引張り強度などの機械的強度をより高めたりすることができる。
(製造方法)
次に、本実施の形態にかかる調理器本体の基体の製造方法について説明する。
(炭素繊維シートの準備)
炭素繊維シートとしては、市販のものを使用できる。炭素繊維フェルトを用いる場合、フェルトの厚みは、好ましくは3~100mm、より好ましくは5~50mm、さらに好ましくは5~30mmとする。炭素繊維フェルトの目付は、好ましくは200~2000g/m2、より好ましくは300~1300g/m2、さらに好ましくは、400~1000g/m2とする。
(プリプレグの作製)
樹脂成分として粉末状の合成樹脂を用いる場合、炭素繊維シートの表面に塗布や空隙に押し込んでプリプレグとなす方法を採用できる。液体状の合成樹脂あるいは溶媒に溶かした合成樹脂を用いる場合、炭素繊維シートに浸み込ませてプリプレグとなす方法を採用することができる。炭素化収率や作製の容易さの観点から、好ましくは、液状のレゾール型フェノール樹脂を用いる。溶媒に溶かした合成樹脂を用いる場合、炭素繊維シートに合成樹脂を含浸した後、必要に応じて100℃前後の温度をかけて溶媒を揮発させて合成樹脂が流れ出さないように安定させてもよい。
また、基体のかさ密度を高めるために、合成樹脂とともに黒鉛粉末を炭素繊維シートに含ませてもよい。黒鉛粉末としては、熱伝導率の向上には鱗状の天然黒鉛が好ましいが、人造黒鉛であってもよい。黒鉛粉末の粒径は特に限定されず、市販されている範囲のものを使用でき、例えば、10~500μm程度とすることができる。黒鉛粉末の添加量は適宜、必要に応じて決めることができる。合成樹脂100質量部に対して、20~200質量部とすると、プリプレグを作製しやすいため、好ましい。
(成形工程)
図2は、実施の形態1にかかる加熱調理器の製造に用いる型の斜視図である。プリプレグは、所望の形状となるように、上下の型11・12で挟んで加圧して成形する。このとき所望の厚みにするために2枚以上を重ねる。プリプレグを上下の型11・12に挟んだ状態で加圧して所望の厚みにする。なお、上下の型の材質は、特に限定されず鋼材、ステンレス、アルミニウムなどの金属、人造黒鉛、C/C複合材などの炭素材料などであってもよい。
合成樹脂として熱硬化性樹脂を用いる場合、プリプレグを加圧とともに熱硬化温度以上に加熱し、熱硬化性樹脂を熱硬化させてもよい。加圧及び加熱の簡便な方法として市販のホットプレス機を用いて行うことができる。また、真空バックによる方法を採用してもよい。なお、加圧後に別途加熱を行ってもよく、加熱を行わなくともよい。例えば、レゾール型フェノール樹脂を用いる場合、150~230℃程度に加熱する。
(炭素化工程)
後のプリプレグを、不活性雰囲気で、1000~2500℃で高温熱処理を行う。これにより合成樹脂が炭素化されて、炭素繊維強化炭素複合材料(C/C複合材)からなる基体が得られる。熱処理の温度は、より好ましくは1500~2500℃、さらに好ましくは1800~2500℃である。たとえばガスバーナーを使用する場合、ガスバーナーにおける青から青緑の明るい炎の表面では1800℃程度ともいわれており、この温度以上に加熱することが好ましい。加熱時間は好ましくは1~18時間、より好ましくは2~15時間、さらに好ましくは3~10時間とする。
なお、炭素化工程は、成後のプリプレグを型材から外して行ってもよく、上下の型に挟んだままでもよい。上下の型に挟んだままの場合には、上下の型が処理温度における耐熱性を有する必要があり、黒鉛からなる型を用いることが好ましい。
合成樹脂の含浸と炭素化は、1回のみ行う構成であってもよく、2回以上行う構成であってもよい。複数回の処理を行うことにより、マトリクスの量が増加して強度や熱伝導率を高くできる。1回のみの場合には、製造工程を低コスト化できる。なお、C/C複合材のかさ密度を上げる方法としては、この方法以外に、黒鉛粒子を含ませる量を増やす、熱分解炭素のコート量を増やす、成形工程での炭素繊維シートの圧縮率を高める、などがある。
炭素化工程が終了した後、基体に熱分解炭素を含浸及び/又は基体表面に熱分解炭素をコートしてもよい。熱分解炭素の含浸や表面コートは、公知の方法で実施すればよく、たとえばメタンやプロパンガスなどの炭化水素ガスを水素等のキャリアガス中で熱分解する方法を採用できる。
このようにして得られる基体は、成形によって加熱調理器の調理器本体の形状、あるいはそれに近い形状になっているが、必要に応じてさらなる加工を行ってもよい。たとえば、基体表面に必要に応じて、セラミックス及び/又はフッ素樹脂コートを施すことができる。これらのコートは、公知の方法を採用できる。また、基体には、取手や持ち手などを取り付けもよい。
(実施例1)
長さが約60mmのPAN系炭素繊維チョップ(株式会社東レ製、繊維径7μm)を使用して、ニードルパンチ法によって略正方形の炭素繊維フェルトを作製した。この炭素繊維フェルトは、その一辺の長さが1000mm、厚み5mm、目付500g/m2であった。
(プリプレグ作製工程)
この炭素繊維フェルトを、長さ約210mmの略正方形に切断した。切断したフェルトをメチルアルコールで希釈したレゾール型フェノール樹脂(液体状)に浸漬することにより含浸し、プリプレグを作製した。このとき、炭素化後における基体全質量に占める炭素マトリックスの割合が、33質量%になるように樹脂を含浸した。
(成形工程)
略正方形に切断したプリプレグを2枚重ねて、図2に示すような人造黒鉛を素材とする一対の型に挟んだ。これをホットプレス機に配置し、プリプレグの厚みが約3mmになるように加圧、加熱して、メチルアルコールを揮発させつつレゾール型フェノール樹脂を熱硬化させて、プリプレグを成形した。このとき、加熱温度は150℃であり、その温度で40分間保持した。
(炭素化工程)
この成形されたプリプレグを、黒鉛製の型に挟んだままの状態で、黒鉛ヒーター加熱方式による高温加熱炉に配置し、不活性ガス雰囲気中2000℃で5時間保持して熱処理を行った。これによって、硬化後のレゾール型フェノール樹脂が炭素化される。これらの工程を経て、実施例1にかかる厚み約2mmの調理器本体の基体を得た。この基体のかさ密度は0.75g/cm3であった。
(実施例2)
成形工程において、プリプレグを6枚重ね、プリプレグの厚みが約9mmになるように加圧、加熱したこと以外は上記実施例1と同様にして、実施例2にかかる厚み約6mmの調理器本体の基体を得た。この基体のかさ密度は0.75g/cm3であった。
(引張り試験)
略正方形に切断したプリプレグを3枚重ねて、平板の黒鉛に挟んでプリプレグの厚みが約4.5mmになるように加圧、加熱し、厚み3mmの平板状の基体を得た。この基体のかさ密度は0.75g/cm3であった。なお、プリプレグの作製や炭素化等の条件は、上記実施例1と同様とした。
上記の平板状の基体を用いて引張り試験を行った。引張り試験の方法は、JIS K7161を参照して行った。まず、この基体を加工して、ダンベル形引張り試験片を5本得た。本試験片の幅の狭い平行部分の長さは80mm、幅の狭い平行部分の幅は10mm、厚み3mmとした。
市販の材料試験装置を用いて当該試験片が破断する荷重を求めた。破断した際の荷重を、破壊が生じる幅の狭い平行部分の面積(10mm×3mm=30mm2)で除した値を引張り強度とみなした。5本の試験片の引張り強度の平均値は、50MPaであった。
以上のことから、実施例1、2ともに、高強度で軽量な調理器本体の基体を得ることができた。
上記の実施例では、平面視長方形状の調理器本体を作製したが、この形状に限定されることはなく、フライパン、中華鍋、寸胴鍋など、所望の形状の調理器本体を作製できる。
本発明に係る加熱調理器は、軽量で熱伝導率が高く、遠赤外線による効果も得られる。よって、その産業上の意義は大きい。
1 調理器本体
2 基体
3 セラミックコート層
4 フッ素樹脂コート層
11 上型
12 下型

Claims (7)

  1. 加熱対象物が収容される調理器本体を有し、少なくとも前記調理器本体の底部分が加熱される加熱調理器において、
    前記調理器本体は、炭素質のみからなる基体を有し、
    前記基体は、加熱対象物が収容される形状であって、底部と、当該底部よりも立ち上がった縁部とを有する形状にシームレスで一体的に成形された、炭素繊維シートに炭素マトリクスが含浸された炭素繊維強化炭素複合材料を備え、
    前記炭素繊維シートは、2枚以上の炭素繊維不織布を重ねた積層物からなり、その積層界面が前記基体の縁部にのみ表れるように2枚以上の前記炭素繊維不織布が積層されている、
    ことを特徴とする加熱調理器。
  2. 前記炭素繊維不織布は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維を主成分とし、
    前記炭素マトリクスは合成樹脂の炭素化物からなる、
    ことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
  3. 前記基体はさらに、熱分解炭素及び/又は黒鉛粒子を含む、
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱調理器。
  4. 前記基体の表面に、セラミックス及び/又はフッ素樹脂コートが施されている、
    ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の加熱調理器。
  5. 加熱対象物が収容される調理器本体を有し、少なくとも前記調理器本体の底部分が加熱される加熱調理器の製造方法において、
    炭素繊維不織布に樹脂成分を添加してプリプレグとなすプリプレグ作製工程と、
    前記プリプレグを2枚以上重ねて積層し、この積層物を加熱対象物が収容される調理器本体の形状であって、底部と、当該底部よりも立ち上がった縁部とを有する形状で、且つ前記プリプレグ積層体の積層界面が前記縁部にのみ表れるようにシームレスで一体的に成形する成形工程と、
    成形されたプリプレグを1000~2500℃で熱処理して、前記樹脂成分を炭素化させて炭素繊維強化炭素複合材料からなる前記調理器本体の基体を得る炭素化工程と、
    を備えることを特徴とする加熱調理器の製造方法。
  6. 前記プリプレグ作製工程において、前記炭素繊維不織布に前記樹脂成分とともに天然黒鉛粉末を添加する
    ことを特徴とする請求項5に記載の加熱調理器の製造方法。
  7. 前記成形工程は、黒鉛製の一対の型を用いて前記プリプレグの積層物を挟みこんで成形する工程であり、
    前記炭素化工程は、前記黒鉛製の一対の型を用いて前記プリプレグの積層物を挟み込んだ状態で熱処理する工程である、
    ことを特徴とする請求項5又は6に記載の加熱調理器の製造方法。
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