JP6623011B2 - 炭素繊維強化炭素複合材および炭素繊維強化炭素複合材の製造方法 - Google Patents

炭素繊維強化炭素複合材および炭素繊維強化炭素複合材の製造方法 Download PDF

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本発明は、炭素繊維強化炭素複合材および炭素繊維強化炭素複合材の製造方法に関する。
炭素繊維は耐熱性および強度に優れ、さらに炭素質マトリックスと複合化することにより、炭素繊維強化炭素複合材(C/C複合材)として、耐熱性、強度および化学的安定性等を必要とする種々の分野において使用されており(特許文献1(特開2011−46543号公報)等参照)、例えば、表面に被焼成物を載置して焼成するための治具やセッター等の構成材料として使用されている。
通常、上記焼成用の治具やセッターは表面が平面状の平板形状を有しているが、上記焼成用の治具やセッターは、高温条件下で製造されたり使用されるものであるために、熱膨張および熱収縮に伴う変形(反り、ひび割れ、欠け等)を生じ易くなり、このために歩留りが低下したり被焼成物を均一に加熱することが困難になる。
特開2011−46543号公報
上記焼成用の治具やセッター変形(反り、ひび割れ、欠け等)の発生を抑制するために、焼成用の治具やセッターの厚みを増大させ、その重量や容量を増大させる対応も考えられるが、上記焼成用の治具やセッターの重量や容量が増大するために、高コスト化を招くとともに、焼結炉内で処理し得る被処理物量(製品量)が低減し、エネルギー原単価の高騰を招き易くなる。
そこで、上記焼成用の治具やセッターの表面形状を平面状ではなく、波状等の凹凸形状にすることにより、熱膨張および熱収縮する方向を分散させ、重量や容量を増大させることなく、反りの発生や、ひび割れ、欠け等の変形の発生を抑制することが考えられる。
しかしながら、上述したように、炭素繊維強化炭素複合材は、通常、表面が平面状の平板形状を有することから、表面を凹凸形状にするためには切削加工等の機械加工を施す必要がある。
一方、上記機械加工を施した場合には、炭素繊維と炭素質マトリックスとの界面(間隙)が表面に現れるために、強度が低下したり繊維のささくれによる発塵を引き起こし易くなる。
従って、本発明は、十分な強度を有するとともに、発塵を生じ難く、高温下で使用された場合であってもその重量や容量を増大させることなく変形(反り、ひび割れ、欠け等)の発生を高度に低減する炭素繊維強化炭素複合材を提供することを目的とするとともに、当該炭素繊維強化炭素複合材を、切削加工等の機械加工を施すことなく簡便かつ低コストに製造する方法を提供することを目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明者等が鋭意検討を行った結果、炭素繊維および炭素質マトリックスを含む炭素繊維強化炭素複合材であって、前記炭素繊維として織布炭素繊維または不織布炭素繊維を含む第一の炭素繊維強化炭素複合層の少なくとも一方の主表面上に、前記炭素繊維として一方向性炭素繊維を含む第二の炭素繊維強化炭素複合層を備え、前記第二の炭素繊維強化炭素複合層は、外側主表面上に、互いに離間して平行に配置された複数の凸条部と当該凸条部間に互いに離間して平行に配置された複数の凹条部とを有し、前記第二の炭素繊維強化炭素複合層を構成する一方向性炭素繊維の配向方向に前記複数の凸条部および凹条部が伸長している炭素繊維強化炭素複合材により、上記目的を達成し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)炭素繊維および炭素質マトリックスを含む炭素繊維強化炭素複合材であって、
前記炭素繊維として織布炭素繊維または不織布炭素繊維を含む第一の炭素繊維強化炭素複合層の少なくとも一方の主表面上に、
前記炭素繊維として一方向性炭素繊維を含む第二の炭素繊維強化炭素複合層を備え、
前記第二の炭素繊維強化炭素複合層は、外側主表面上に、互いに離間して平行に配置された複数の凸条部と当該凸条部間に互いに離間して平行に配置された複数の凹条部とを有し、
前記第二の炭素繊維強化炭素複合層を構成する一方向性炭素繊維の配向方向に前記複数の凸条部および凹条部が伸長している
ことを特徴とする炭素繊維強化炭素複合材、
(2)前記第一の炭素繊維強化炭素複合層の両主表面上に、前記第二の炭素繊維強化炭素複合層が各々積層され、
前記複数の第二の炭素繊維強化炭素複合層の外側主表面上に各々設けられた複数の凸条部および凹条部は、いずれも同一方向に伸長しており、
前記複数の第二の炭素繊維強化炭素複合層は、一方の炭素繊維強化炭素複合層の外側主表面上に設けられた複数の凸条部と他方の炭素繊維強化炭素複合層の外側主表面上に設けられた複数の凸条部とを、各々前記第一の炭素繊維強化炭素複合層を挟む対称位置に有するか、一方の炭素繊維強化炭素複合層の外側主表面上に設けられた複数の凸条部と他方の炭素繊維強化炭素複合層の外側主表面上に設けられた複数の凹条部とを、各々前記第一の炭素繊維強化炭素複合層を挟む対称位置に有している
上記(1)に記載の炭素繊維強化炭素複合材、
(3)前記凸条部の高さが0.5mm〜20mmである上記(1)または(2)に記載の炭素繊維強化炭素複合材、
(4)前記第二の炭素繊維強化炭素複合層上にさらに厚さ1〜100μmの熱分解炭素被膜を有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載の炭素繊維強化炭素複合材、
(5)上記(1)に記載の炭素繊維強化炭素複合材を製造する方法であって、
樹脂成分を含浸させた炭素繊維織布または炭素繊維不織布の少なくとも一方の主表面上に、樹脂成分を含浸させた一方向性炭素繊維織物を積層して積層物を形成し、
前記一方向性炭素繊維織物の外側表面に形成しようとする凹凸条形状と対応する形状が刻印された成形面を有する成形型内に、前記一方向性炭素繊維織物を構成する一方向性炭素繊維の配向方向と、前記成形型内に刻印された凸条部および凹条部の伸長方向とが一致するように前記積層物を配置した後、
熱圧成形する
ことを特徴とする炭素繊維強化炭素複合材の製造方法
を提供するものである。
本発明によれば、炭素繊維強化炭素複合材が、第一の炭素繊維強化炭素複合層上に第二の炭素繊維強化炭素複合層を備え、この第二の炭素繊維強化炭素複合層の外側主表面上に、互いに離間して平行に配置された複数の凸条部と凹条部とを有することにより、高温下で使用された場合であっても熱膨張および熱収縮する方向を分散させ、炭素繊維強化炭素複合材の重量や容量を増大させることなく反り、ひび割れ、欠け等の変形の発生を抑制することができる。
また、上記第二の炭素繊維強化炭素複合層が一方向性炭素繊維を含み、上記凸条部および凹条部を上記一方向性炭素繊維の配向方向に設けることにより、炭素繊維を切断することなく上記凸条部および凹条部を形成して、十分な強度を発揮するとともに、発塵等の発生を好適に抑制することができる。
加えて、本発明によれば、樹脂成分を含浸させた炭素繊維織布または炭素繊維不織布の少なくとも一方の主表面上に、樹脂成分を含浸させた一方向性炭素繊維織物を積層し、熱圧成形することにより、切削加工等の機械加工を施すことなく表面に凸条部および凹条部を形成し、簡便かつ低コストに炭素繊維強化炭素複合材を製造する方法を提供することができる。
このように、本発明によれば、十分な強度を有するとともに、発塵を生じ難く、高温下で使用された場合であってもその重量や容量を増大させることなく変形(反り、ひび割れ、欠け等)の発生を高度に低減する炭素繊維強化炭素複合材を提供することができるとともに、当該炭素繊維強化炭素複合材を、切削加工等の機械加工を施すことなく簡便かつ低コストに製造する方法を提供することができる。
一方向性炭素繊維織物の一例を示す図である。 本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材の一形態例を示す図である。 本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、第二の炭素繊維強化炭素複合層を構成する一方向性炭素繊維の形態を説明するための垂直断面図である。 本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材の一形態例を示す図(断面図)である。
先ず、本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材について説明する。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材は、炭素繊維および炭素質マトリックスを含む炭素繊維強化炭素複合材であって、前記炭素繊維として織布炭素繊維または不織布炭素繊維を含む第一の炭素繊維強化炭素複合層の少なくとも一方の主表面上に、前記炭素繊維として一方向性炭素繊維を含む第二の炭素繊維強化炭素複合層を備え、前記第二の炭素繊維強化炭素複合層は、外側主表面上に、互いに離間して平行に配置された複数の凸条部と当該凸条部間に互いに離間して平行に配置された複数の凹条部とを有し、前記第二の炭素繊維強化炭素複合層を構成する一方向性炭素繊維の配向方向に前記複数の凸条部および凹条部が伸長していることを特徴とするものである。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材は、炭素繊維および炭素質マトリックスを含む炭素繊維強化炭素複合材であって、上記炭素繊維として織布炭素繊維または不織布炭素繊維を含む第一の炭素繊維強化炭素複合層を備えるものである。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、織布炭素繊維または不織布炭素繊維を含む第一の炭素繊維強化炭素複合層を構成する炭素繊維としては、高弾性率で、炭素含有率が高く、複合材の化学的安定性を保持する上で、コールタール・ピッチ、石油タール・ピッチ等のピッチ系炭素繊維や、これらピッチ系炭素繊維と同程度の弾性率を有するPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維から選ばれる一種以上が好ましい。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、第一の炭素繊維強化炭素複合層を構成する炭素繊維は、引張強度が、3000〜6000MPaであることが好ましく、4000 〜6000MPaであることがより好ましく、4000〜5000MPaであることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、引張強度は、JIS R 7606により測定される値を意味する。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、第一の炭素繊維強化炭素複合層を構成する炭素繊維は、引張弾性率が、200〜1000GPaであることが好ましく、200〜800GPaであることがより好ましく、200〜400GPaであることがさらに好ましい。
なお、本出願書類において、引張弾性率は、JIS R 7606により測定される値を意味する。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、第一の炭素繊維強化炭素複合層を構成する炭素繊維は、室温(20℃)下における熱伝導率が、3〜800W/m・Kであることが好ましい。
なお、本出願書類において、熱伝導率は、JIS K8101により測定される値を意味する。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、第一の炭素繊維強化炭素複合層を構成する炭素繊維は、繊維径が、6〜20μmであることが好ましく、6〜15μmであることがより好ましく、6〜12μmであることがさらに好ましい。
第一の炭素繊維強化炭素複合層を構成する炭素繊維の繊維径が上記範囲内にあることにより、目的とする強度を容易に発揮することができる。
なお、本出願書類において、上記炭素繊維の繊維径は、電子顕微鏡により繊維断面を観察することにより測定した値を意味する。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、第一の炭素繊維強化炭素複合層を構成する炭素繊維は、織布炭素繊維または不織布炭素繊維であり、上記炭素繊維の織布または不織布に由来する炭素繊維として存在する。
上記炭素繊維の織布の形態としては特に制限はなく、従来公知の二次元織物を用いることができ、織物組織としては、平織、朱子織、綾織等から選ばれる一種状を挙げることができ、平織、朱子織等、経糸と緯糸が一定の法則に従って直角に交錯した二軸織物が好ましい。
織物組織を構成する炭素繊維束数は、3000〜24000本が好ましく、3000〜16000本がより好ましく、6000〜12000本がさらに好ましい。
上記炭素繊維の織布は、市販品であってもよく、例えば、東レ(株)製トレカクロス、三菱レイヨン(株)製パイロフィルクロス、ダイアリードファブリックFT3C224、東邦テナックス(株)製テナックス織物等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
上記炭素繊維の不織布の形態としても特に制限されず、炭素繊維前駆体繊維不織布を不活性ガス雰囲気下で加熱して炭化あるいは黒鉛化したウエブまたはシートであれば、公知のものを採用することができる。
ウエブとしては、乾式のパラレルレイドウエブまたはクロスレイドウエブ、エアレイドウエブ、湿式の抄造ウエブ、押出法のスパンボンドウエブ、メルトブローウエブ、エレクトロスピニングウエブ等が挙げられる。また、シートとしては、これらのウエブを機械的に交絡させたシート、加熱して融着させたシート、バインダーで接着させたシート等が挙げられる。
上記炭素繊維の不織布は、炭素繊維の織布に比較して炭素繊維が不規則に配向している為、気孔率が高くなる特徴があるため、熱伝導等を抑制したい場合に有利になる。
上記炭素繊維の不織布は、市販品であってもよく、例えば、東レ(株)製トレカマット、(株)クレハ製クレハペーパー等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、第一の炭素繊維強化炭素複合層の厚さは、0.5〜15mmであることが好ましく、0.5〜10mmであることが好ましい。
上記厚さは、必要とされる強度や弾性等に応じて適宜調整すればよく、上記炭素繊維の織布または不織布を所望枚数積層すること等によって容易に厚さを調整することができる。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、第一の炭素繊維強化炭素複合層の厚さが上記範囲内にあることにより、所望の強度を容易に発揮しつつ、高温下で使用された場合であっても、変形(反り、ひび割れ、欠け等)の発生を好適に抑制することができる。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材は、上記第一の炭素繊維強化炭素複合層の少なくとも一方の主表面上に、一方向性炭素繊維を含む第二の炭素繊維強化炭素複合層を備えている。
第二の炭素繊維強化炭素複合層を構成する一方向性炭素繊維とは、繊維束を平行に引き揃えること等により一定方向の方向性を持たせて配した炭素繊維を意味し、上記一方向性炭素繊維としては、高弾性率で、炭素含有率が高く、複合材の化学的安定性を保持する上で、コールタール・ピッチ、石油タール・ピッチ等のピッチ系炭素繊維や、これらピッチ系炭素繊維と同程度の弾性率を有するPAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維から選ばれる一種以上からなるものが好ましい。
上記第二の炭素繊維強化炭素複合層を構成する一方向性炭素繊維の引張強度、引張弾性率、室温(20℃)下における熱伝導率、繊維長、繊維径の好適な範囲は、上述した第一の炭素繊維強化炭素複合層を構成する炭素繊維と同様である。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、第二の炭素繊維強化炭素複合層を構成する一方向性炭素繊維は、一方向性炭素繊維織物(一方向性補強織物)の加熱処理物であることが好ましい。
本出願書類において、一方向性炭素繊維織物とは、縦方向に配列した一方向性炭素繊維に相当する炭素繊維の縦合糸(縦糸)の形状を保持するように、横方向に繊維糸(横糸)を配列したものを意味する。
図1は、一方向性炭素繊維織物の一例を示すものであって、縦方向に配列した炭素繊維縦合糸(縦糸)vの形状を保持するように、横方向に繊維糸(横糸)hを交絡されつつ配列されている。
一方向性炭素繊維織物において、縦合糸は横糸よりも密に配置されており、通常、縦合糸のピッチ(縦合糸の間隔)は横糸のピッチ(横糸の間隔)よりも小さく、縦合糸の繊度が高い。
一方向性炭素繊維織物を構成する炭素繊維縦合糸(縦糸)は、通常2〜5本の撚りのない炭素繊維糸を合糸して得られ、得られた合糸の繊度は1,000〜40,000デニールであることが好ましい。
また、縦合糸が横糸と製織された後、加熱加圧装置を通過して撚りのない扁平となったときの縦合糸は、幅が3〜16mm、厚みが0.1〜0.6mmであることが好ましい。
一本の縦糸を構成する複数の炭素繊維糸は、互いに分離独立していてもよいし、互いに境界を有さない一本の糸状になっていてもよい。例えば、通常炭素繊維糸はサイジング剤によって形状が保持された状態で流通しているが、この炭素繊維糸を単に複数引き揃えて結着した場合には、炭素繊維糸同士が互いに独立して存在する合糸が得られ、一方で、上記サイジング剤で結着した炭素繊維縦合糸をサイジング剤の融点以上の温度に加熱すると、各炭素繊維糸と隣接する他の炭素繊維糸との境界がなくなり、これを冷却すると一本の糸状に形成することができる。
一本の縦合糸を構成する炭素繊維糸同士が分離独立していると、炭素質マトリックスの原料となる樹脂成分が糸と糸との隙間を通って含浸しやくなり、炭素繊維糸同士が境界を有さず一本の糸状になっている場合には、炭素繊維糸の解れを生じ難くなる。
炭素繊維糸を結着するサイジング剤としては、硬化剤を含有しないエポキシ樹脂系サイジング剤であることが好ましい。
上記一方向性炭素繊維織物を構成する横糸は補助糸とも称され、縦糸がほぐれないように配列したものであれば何れの繊維からなるものであってもよい。
上記横糸は、縦糸が解れないように織物の形態を保持するために使用されるものであることから、後述する焼成処理等の加熱処理によって消失するものでよい。
横糸としては、例えば、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、絹糸、アクリル繊維、綿糸、麻糸等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
横糸の繊度は縦合糸の繊度より小さくかつ50〜600デニールの範囲にあることが好ましい。
また、一方向性炭素繊維織物を構成する横糸間のピッチは、0.5〜5cmであることが好ましい。
一方向性炭素繊維織物において、縦合糸と横糸は通常熱可塑性樹脂によって固着されているので、特に糸同士が独立して存在しつつ縦合糸を形成している場合に縦糸の目ずれを抑制し、織物の形状を容易に保持することができる。
縦合糸と横糸とを固着するには、熱可塑性樹脂を含む縦合糸を用いたり、熱可塑性樹脂を含む横糸を用いたり、その両者を用いる等の方法を挙げることができ、熱可塑性樹脂を含む横糸を熱可塑性樹脂を含まない縦合糸に固着することが好ましい。
上記熱可塑性樹脂の含ませ方は特に制限されないが、例えば横糸に熱可塑性樹脂を含浸させたり、横糸に熱可塑性樹脂を被覆したり、横糸に粉末状の熱可塑性樹脂を付着させたり、横糸に熱可塑性樹脂繊維を混繊したり絡ませたり若しくは平行に沿わせる等の態様を挙げることができる。
上記熱可塑性樹脂は、横糸を傷めない温度以下で溶融するものが好ましく、融点が横糸の融点以下であるものが好適であり、例えば、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
一方向性炭素繊維織物は、市販品であってもよく、例えば、東レ(株)製トレカクロス、三菱レイヨン(株)製パイロフィル等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、第二の炭素繊維強化炭素複合層は、外側主表面上に、互いに離間して平行に配置された複数の凸条部と当該凸条部間に互いに離間して平行に配置された複数の凹条部とを有し、第二の炭素繊維強化炭素複合層を構成する一方向性炭素繊維の配向方向に上記複数の凸条部および凹条部が伸長している。
図2に例示する斜視図に示すように、本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材1は、第一の炭素繊維強化炭素複合層2の少なくとも一方の主表面上に、一方向性炭素繊維を含む第二の炭素繊維強化炭素複合層3を備えており、この第二の炭素繊維強化炭素複合層3は、外側主表面上に、互いに離間して平行に配置された複数の凸条部と当該凸条部間に互いに離間して平行に配置された複数の凹条部とを有しており、図3に例示する垂直断面図に示すように、第二の炭素繊維強化炭素複合層3を構成する一方向性炭素繊維4の配向方向に上記複数の凸条部および凹条部が伸長している。
第二の炭素繊維強化炭素複合層の外側主表面上に設けられる凹条部および凸条部の形状としては、図2に示すような波形状であることが好ましい。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材によれば、炭素繊維強化炭素複合材が、第一の炭素繊維強化炭素複合層上に第二の炭素繊維強化炭素複合層を備え、この第二の炭素繊維強化炭素複合層の外側主表面上に、互いに離間して平行に配置された複数の凸条部と凹条部とを有することにより、熱膨張および熱収縮する方向を分散させ、炭素繊維強化炭素複合材の重量や容量を増大させることなく変形(反り、ひび割れ、欠け等)の発生を抑制することができる。
また、上記第二の炭素繊維強化炭素複合層が一方向性炭素繊維を含み、上記凸条部および凹条部を上記一方向性炭素繊維の配向方向に設けることにより、炭素繊維を切断することなく上記凸条部および凹条部を形成して、十分な強度を発揮するとともに、炭素繊維の切断面等形成せず炭素繊維と炭素質マトリックスとの界面(間隙)が表面に露出することを抑制して発塵等の発生を好適に抑制することができる。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材は、第一の炭素繊維強化炭素複合層の両主表面上に、第二の炭素繊維強化炭素複合層が各々積層されたものであってもよい。
この場合、第一の炭素繊維強化炭素複合層の両主表面上に設けられた上記複数の第二の炭素繊維強化炭素複合層は、図2に例示するように、一方の炭素繊維強化炭素複合層3の外側主表面上に設けられた複数の凸条部と他方の炭素繊維強化炭素複合層3’の外側主表面上に設けられた複数の凸条部とを、各々第一の炭素繊維強化炭素複合層を挟む対称位置(第一の炭素繊維強化炭素複合層を対称面とする面対称の位置)、すなわち表裏対応する位置に有するか、または、図4に例示する断面図に示すように、一方の炭素繊維強化炭素複合層3の外側主表面上に設けられた複数の凸条部と他方の炭素繊維強化炭素複合層3’の外側主表面上に設けられた複数の凹条部とを、各々第一の炭素繊維強化炭素複合層を挟む対称位置(第一の炭素繊維強化炭素複合層を対称面とする面対称の位置)、すなわち表裏対応する位置に有するものであることが好ましい。
このように、炭素繊維強化炭素複合材においては、第一の炭素繊維強化炭素複合層の両主表面上に、第二の炭素繊維強化炭素複合層が各々積層されたものであり、一方の外側主表面上に設けられた複数の凸条部と他方の外側主表面上に設けられた複数の凸条部とを、各々第一の炭素繊維強化炭素複合層を挟む対称位置(表裏対応する位置)に有するか、または、一方の外側主表面上に設けられた複数の凸条部と他方の外側主表面上に設けられた複数の凹条部とを、各々第一の炭素繊維強化炭素複合層を挟む対称位置(表裏対応する位置)に有するものであることにより、加熱雰囲気下で製造したり使用した場合であっても、炭素繊維強化炭素複合材の表裏両面において、熱膨張および熱収縮する方向を均等に分散させ、炭素繊維強化炭素複合材の重量や容量を増大させることなく変形(反り、ひび割れ、欠け等)の発生を好適に抑制することができる。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、上記凸条部の高さは、0.5mm〜20mmであることが好ましく、1〜15mmであることがより好ましく、1〜5mmであることがさらに好ましい。
上記凸条部の高さが0.5mm未満である場合には、凸条部の形成が困難になり、上記凸条部の高さが20mm超である場合には繊維の立て割れ等を生じ易くなる。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、上記凸条部の高さが上記範囲内にあることにより、炭素繊維強化炭素複合材の変形(反り、ひび割れ、欠け等)の発生を好適に抑制し得る凸条部を提供することができる。
なお、本出願書類において、上記凸条部の高さは、炭素繊維強化炭素複合材の垂直断面において、表面に形成された凹条部の最深部から凸条部頂部までの距離を意味する。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、第二の炭素繊維強化炭素複合層の厚さ(上記凸条部の頂部から第一の炭素繊維強化炭素複合層との界面までの距離)は、0.5〜10mmであることが好ましく、0.5〜5mmであることがより好ましく、0.5〜2mmであることがさらに好ましい。
上記厚さは、上記一方向性炭素繊維織物を所望枚数積層すること等によって容易に調整することができる。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、第二の炭素繊維強化炭素複合層の厚さが上記範囲内にあることにより、所望の強度を容易に発揮しつつ、高温下で使用された場合であっても、変形(反り、ひび割れ、欠け等)の発生を好適に抑制することができる。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材は、炭素繊維とともに炭素質マトリックスを含む。
炭素質マトリックスとしては、樹脂成分の炭化物または焼成化物を挙げることができ、熱硬化性樹脂の炭化物または焼成化物であることが好ましい。
炭素質マトリックスの原料となる樹脂成分が熱硬化性樹脂である場合、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂等から選ばれる一種以上を挙げることができ、炭化収率が高いことからフェノール樹脂が好ましい。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材において、炭素質マトリックスは、バインダーとして機能するものであり、炭素質マトリックスを含むことにより、第一の炭素繊維強化炭素複合層を構成する炭素繊維や第二の炭素繊維強化炭素複合層を構成する一方向性炭素繊維等の繊維分を好適に結着することができる。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材は、第二の炭素繊維強化炭素複合層上にさらに熱分解炭素被膜を有するものであってもよい。
本出願書類において、熱分解炭素被膜は、炭素繊維強化炭素複合材の表面に炭素質材料を熱分解して析出させた炭素膜を意味し、炭化水素ガスの熱分解物であることが好ましく、メタン、エタン、プロパン、ブタン等から選ばれる一種以上の炭化水素ガスの熱分解物であることがより好ましい。
熱分解炭素被膜の厚さは、1〜100μmが好ましく、1〜80μmがより好ましく、1〜50μmがさらに好ましい。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材は、第二の炭素繊維強化炭素複合層上にさらに熱分解炭素被膜を有するものであることにより、炭素繊維強化炭素複合材の保護膜として機能するだけでなく、内部からの発塵性を効果的に低減することができる。
本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材は、密度が、1.0〜1.8g/cmであることが好ましく、1.2〜1.7g/cmであることがより好ましく、1.3〜1.7g/cmであることがさらに好ましい。
本発明によれば、十分な強度を有するとともに、発塵を生じ難く、高温下で使用された場合であっても、その重量や容量を増大させることなく変形(反り、ひび割れ、欠け等)の発生を高度に低減する炭素繊維強化炭素複合材を提供することができる。
次に、本発明に係る炭素繊維強化複合材の製造方法について説明する。
本発明に係る炭素繊維強化複合材の製造方法は、本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材を製造する方法であって、樹脂成分を含浸させた炭素繊維織布または炭素繊維不織布の少なくとも一方の主表面上に、樹脂成分を含浸させた一方向性炭素繊維織物を積層して積層物を形成し、上記一方向性炭素繊維織物の外側表面に形成しようとする凹凸条形状と対応する形状が刻印された成形面を有する成形型内に、前記一方向性炭素繊維織物を構成する一方向性炭素繊維の配向方向と、前記成形型内に刻印された凸条部および凹条部の伸長方向とが一致するように上記積層物を配置した後、熱圧成形することを特徴とするものである。
本発明に係る炭素繊維強化複合材の製造方法においては、樹脂成分を含浸させた炭素繊維織布または炭素繊維不織布を使用する。
炭素繊維織布または炭素繊維不織布としては、上述したものと同様のものを挙げることができる。
炭素繊維織布または炭素繊維不織布は、所望厚みを有する第一の炭素繊維強化炭素複合層が得られるように、複数枚重ね合わせたものであってもよい。
炭素繊維織布または炭素繊維不織布に含浸させる樹脂成分としては、熱硬化性樹脂であることが好ましく、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂等から選ばれる一種以上を挙げることができ、炭化収率が高いことからフェノール樹脂が好ましい。
炭素繊維織布または炭素繊維不織布に対する樹脂成分の含浸は、樹脂成分に炭素繊維織布または炭素繊維不織布を浸漬したり、炭素繊維織布または炭素繊維不織布に樹脂成分を塗布することによって行うことができる。
本発明に係る炭素繊維強化複合材の製造方法において、樹脂成分を含浸させた炭素繊維織布または炭素繊維不織布は、目付が、100〜800g/mであることが好ましく、200〜600g/mであることがより好ましく、300〜500g/mであることがさらに好ましい。
樹脂成分を含浸させた炭素繊維織布または炭素繊維不織布は、50〜200℃程度の温度下で0.5〜10時間乾燥することにより、所定の硬度を有するプリプレグにした状態で取り扱うことが好ましい。
本発明に係る炭素繊維強化複合材の製造方法においては、樹脂成分を含浸させた炭素繊維織布または炭素繊維不織布の少なくとも一方の主表面上に、樹脂成分を含浸させた一方向性炭素繊維織物を積層する。
本発明に係る炭素繊維強化複合材の製造方法においては、樹脂成分を含浸させた一方向性炭素繊維織物を使用する。
一方向性炭素繊維織物としては、上述したものと同様のものを挙げることができる。
一方向性炭素繊維織物は、所望厚みを有する第二の炭素繊維強化炭素複合層が得られるように、複数枚重ね合わせたものであってもよいが、その場合は、一方向性炭素繊維織物を構成する一方向性炭素繊維が同一方向に配向するように重ね合わせる。
一方向性炭素繊維織物に含浸させる樹脂成分としては、熱硬化性樹脂であることが好ましく、熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂等から選ばれる一種以上を挙げることができ、炭化収率が高いことからフェノール樹脂が好ましい。
一方向性炭素繊維織物に対する樹脂成分の含浸は、樹脂成分に一方向性炭素繊維織物を浸漬したり、一方向性炭素繊維織物に樹脂成分を塗布することによって行うことができる。
本発明に係る炭素繊維強化複合材の製造方法において、樹脂成分を含浸させた一方向性炭素繊維織物は、目付が、100〜800g/mであることが好ましく、200〜600g/mであることがより好ましく、300〜500g/mであることがさらに好ましい。
樹脂成分を含浸させた一方向性炭素繊維織物は、プリプレグとして取り扱うことが好ましく、樹脂成分を含浸させた一方向性炭素繊維織物を、50〜200℃程度の温度下で0.5〜10時間乾燥することにより、所望のプリプレグを得ることができる。
本発明に係る炭素繊維強化複合材の製造方法においては、樹脂成分を含浸させた炭素繊維織布または炭素繊維不織布の少なくとも一方の主表面上に、樹脂成分を含浸させた一方向性炭素繊維織物を積層する。
この場合、樹脂成分を含浸させた炭素繊維織布もしくは炭素繊維不織布の片側主表面上に、樹脂成分を含浸させた一方向性炭素繊維織物を積層してもよいし、樹脂成分を含浸させた炭素繊維織布もしくは炭素繊維不織布の片側主表面上もしくは両側主表面上に、一方向性炭素繊維織物を積層してもよく、得ようとする炭素繊維強化複合材の形態に応じて適宜選択すればよい。
また、積層する一方向性炭素繊維織物は、1枚であってもよいし、複数枚であってもよく、得ようとする第二の炭素繊維強化炭素複合層の厚みに応じて適宜選択すればよい。
本発明に係る炭素繊維強化複合材の製造方法においては、樹脂成分を含浸させた炭素繊維織布または炭素繊維不織布の少なくとも一方の主表面上に、樹脂成分を含浸させた一方向性炭素繊維織物を積層して積層物を形成し、当該一方向性炭素繊維織物の外側表面に形成しようとする凹凸条形状と対応する形状が刻印された成形面を有する成形型内に、上記一方向性炭素繊維織物を構成する一方向性炭素繊維の配向方向と、上記成形型内に刻印された凸条部および凹条部の伸長方向とが一致するように上記積層物を配置した後、熱圧成形する。
第二の炭素繊維強化炭素複合層の外側主表面上に設けられる凹凸形状が、図2に示すような波形状である場合には、上記凹凸形状に対応する凸凹形状が刻印された成形面を有する成形型を使用する。
本発明に係る炭素繊維強化複合材の製造方法においては、一方向性炭素繊維織物を構成する一方向性炭素繊維の配向方向と、前記成形型内に刻印された凸条部および凹条部の伸長方向とが一致するようにプリプレグを配置するが、このように配置することにより、優れた強度を有する炭素繊維強化複合材を得ることができる。
上記プリプレグの熱圧成形時の温度は、80〜200℃が好ましく、100〜200℃がより好ましく、100〜150℃がさらに好ましい。
また、上記プリプレグの熱圧成形時の加圧力は、0.5〜20kgf/cmが好ましく、1〜20kgf/cmがより好ましく、5〜20kgf/cmがさらに好ましい。
さらに、上記プリプレグの熱圧成形時の加圧時間は、10〜200分間が好ましく、30〜200分間がより好ましく、60〜200分間がさらに好ましい。
上記熱圧成形処理により、得ようとする炭素繊維強化複合材の形状に対応する形状に加工することができる。
炭素繊維織布または炭素繊維不織布に含浸させた樹脂成分や、一方向性炭素繊維織物に含浸させた樹脂成分が熱硬化性樹脂である場合には、上記熱圧成形処理して得られた熱圧成形処理物に、さらに硬化処理を施すことが好ましい。
硬化処理時の処理温度は、150℃超300℃以下が好ましく、200〜300℃がより好ましく、250〜300℃がさらに好ましい。
硬化処理時の処理時間は、70〜200時間であることが好ましく、100〜200時間であることがより好ましく、150〜200時間であることがさらに好ましい。
上記熱圧成形処理物または上記硬化処理して得られた硬化処理物は、次いで炭化焼成処理(炭化、黒鉛化処理)を施すことが好ましい。
炭化焼成処理時の処理温度は、700℃〜2500℃が好ましく、1300〜2500℃がより好ましく、2000〜2500℃がさらに好ましい。
炭化処理時の処理時間は、50〜150時間が好ましく、60〜130時間がより好ましく、70〜110時間がさらに好ましい。
炭化焼成処理時の雰囲気は、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
本発明に係る炭素繊維強化複合材の製造方法においては、さらに純化処理を施すことが好ましい。
純化処理条件は、雰囲気ガスがハロゲンガスを含むことを除けば、炭化焼成処理条件と同様であり、このため、上記炭化焼成処理を、ハロゲンガスを含む不活性ガス雰囲気下で行うことにより、炭化焼成処理および純化処理を同時に行ってもよい。
得ようとする炭素繊維強化複合材が第二の炭素繊維強化炭素複合層上にさらに熱分解炭素被膜を有する場合には、上記熱圧成形処理物、硬化処理物、炭化焼成処理して得られた炭化焼成処理物および純化処理して得られた純化処理物のいずれかに対して、さらに熱分解炭素被膜の形成処理を行う。
熱分解炭素被膜は、気相熱分解法により形成することが好ましい。

気相熱分解法は、化学的気相蒸着法(CVD)や化学的気相浸透法(CVI)により、原料を気相で熱分解して空隙組織中に熱分解炭素を析出させ、析出した炭素を空隙組織中に沈着、充填して炭素繊維強化炭素複合被膜を形成する方法である。
上記気相熱分解反応により炭素を析出させる原料としては、メタン、プロパン、プロピレン、ベンゼンなどの易熱分解性の炭化水素ガスから選ばれる一種以上であることが好ましい。これらの炭化水素ガスを水素ガスと混合して、混合ガスをCVD装置やCVI装置に導入して気相で還元して熱分解させることにより炭素が析出し、目的とする熱分解炭素被膜を形成することができる。
本発明に係る炭素繊維強化複合材の製造方法において、得られる炭素繊維強化複合材の詳細は、上述したとおりである。
本発明によれば、本発明に係る炭素繊維強化炭素複合材を、切削加工等の機械加工を施すことなく簡便かつ低コストに製造する方法を提供することができる。
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例により何ら限定されるものではない。
(実施例1)
1.プリプレグの作製
平織りPAN系炭素繊維織布(炭素繊維束数12K)を、エタノール希釈したフェノール樹脂(固形分濃度40質量%)に浸漬した後、風乾して、樹脂含有量が48質量%である平織りPAN系炭素繊維織布プリプレグを作製した。
一方、一方向性炭素繊維織物を、エタノール希釈したフェノール樹脂(固形分濃度40質量%)に浸漬したのち、風乾して、樹脂含有量が49重量%である一方向性炭素繊織物プリプレグを作製した。
2.積層
表面に形成しようとする凹凸条形状に対応する凸凹条形状が各々刻印された上型および下型を有する金型内に、一方向性炭素繊維織物プリプレグの炭素繊維の長さ方向と下型の凹条または凸条の溝方向とが一致するように一方向性炭素繊維織物プリプレグ2層(2枚)を下型上に載置し、この上に平織りPAN系炭素繊維織布プリプレグを4層(4枚)積層し、更に、一方向性炭素繊維織物プリプレグの炭素繊維の長さ方向と上型の凹条または凸条の溝方向とが一致するように一方向性炭素繊維織物プリプレグ2層(2枚)を平織りPAN系炭素繊維織布プリプレグ上に積層した。
3.熱圧成形、硬化処理
内部にプリプレグを積層した上記金型を、130℃の温度条件下で20kg/cmの加圧下に2時間熱圧成形し、次いで、250℃で100時間加熱硬化して、上下両主表面に凹状部および凸条部を有するプリプレグ成形体を作製した。
4.炭化、焼成処理
3.で得られたプリプレグ成形体を窒素ガス雰囲気に保持された加熱炉に入れ、20℃/時間の昇温速度で1000℃に昇温して1時間保持した後、更に50℃/時間の昇温速度で2000℃に昇温して60分間加熱することにより、上下両主表面に図2に示すような、複数の凸条部が平織りPAN系炭素繊維織布からなる第一の炭素繊維強化炭素複合層を挟む対称位置に形成された炭素繊維強化炭素複合材を作製した。
得られた炭素繊維強化炭素複合材は、縦100mm、横100mm、厚さ2mmの外形サイズを有し、第一の炭素繊維強化炭素複合層の厚さが1mm、第二の炭素繊維強化炭素複合層の厚さが0.5mm、密度が1.4g/cmであり、外観観察したときに表面が大変滑らかで、割れ、欠け、反り等の変形が観察されないものであった。また、表面に形成された凸条部の高さは、長さ方向全体に亘って1.2mmであり、凸条部間の幅(凸条部の頂部間の距離)は、凸条部の長さ方向全体に亘って2.5mmであった。
(実施例2〜実施例6)
実施例1において、上金型および下金型として、成形面に刻印した凹凸条形状の高さや幅を変更して、表面に形成する凸条部の高さおよび幅を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様にして炭素繊維強化炭素複合材を作製した。
得られた各炭素繊維強化炭素複合材表面の凸条部の高さ、幅および該観察したときの表面状態を表1に示す。
実施例2〜実施例6で得られた炭素繊維強化炭素複合材は、いずれも、割れ、欠け、反り等の変形が観察されないものであって、表面が大変滑らかであるか滑らかなものであった、
(実施例7)
実施例1で得られた上下両主表面に図2に示すような凹凸状を有する炭素繊維強化炭素複合材を、化学気相浸透(CVI)反応装置内に載置して、表面に熱分解炭素被膜を形成した。
熱分解炭素被膜を形成する原料ガスとしてプロパンと水素の混合ガス(プロパン濃度15モル%)を用い、当該混合ガスを1.0リットル/分の流量で反応装置内に供給し、炉内圧力50torr、炉内温度1000℃の条件下で15時間処理することにより、熱分解炭素を析出、充填して表面に厚さ5μmの熱分解炭素被膜を有する炭素繊維強化炭素複合材を得た。
得られた熱分解炭素被膜を有する炭素繊維強化炭素複合材は、外観観察したときに、割れ、欠け、反り等の変形が観察されないものであって、表面が大変滑らかなものであった。
(比較例1)
実施例1において、上金型および下金型を有する金型内に、一方向性炭素繊維織物プリプレグを載置することなく、平織りPAN系炭素繊維織布プリプレグのみを2層(2枚)積層配置した以外は、実施例1と同様にして縦100mm、横100mm、厚さ2mmの外形サイズを有する、炭素繊維強化炭素複合材を得た。
得られた炭素繊維強化炭素複合材は、表面にひび割れおよび欠けを有するものであった。
(実施例8)
平織りPAN系炭素繊維織布プリプレグに代えて、炭素繊維紙(目付量110g/cm)にエタノール希釈したフェノール樹脂(固形分濃度40質量%)を浸漬した後、風乾して得られた、樹脂含有量が50質量%である炭素繊維紙プリフレグを4層積層した以外は、実施例1と同様にして縦100mm、横100mm、厚さ2mmの外形サイズを有する、炭素繊維強化炭素複合材を得た。
得られた熱分解炭素被膜を有する炭素繊維強化炭素複合材は、外観観察したときに表面が大変滑らかなものであった。
実施例1〜実施例8で得られた炭素繊維強化炭素複合材は、炭素繊維および炭素質マトリックスを含む炭素繊維強化炭素複合材であって、炭素繊維として織布炭素繊維または不織布炭素繊維を含む第一の炭素繊維強化炭素複合層の少なくとも一方の主表面上に、炭素繊維として一方向性炭素繊維を含む第二の炭素繊維強化炭素複合層を備え、上記第二の炭素繊維強化炭素複合層は、外側主表面上に、互いに離間して平行に配置された複数の凸条部と当該凸条部間に互いに離間して平行に配置された複数の凹条部とを有し、上記第二の炭素繊維強化炭素複合層を構成する一方向性炭素繊維の配向方向に複数の凸条部および凹条部が伸長しているものであることから、十分な強度を有するとともに、高温下で使用された場合であっても変形(反り、ひび割れ、欠け等)の発生を高度に低減し得るものであることが分かる。
また、実施例1〜実施例8で得られた炭素繊維強化炭素複合材は、切削加工等の機械加工を施すことなく製造されたものであることから、発塵の発生を抑制し、強度の低下を抑制し得るものであることが分かる。
これに対して、比較例1で得られた炭素繊維強化炭素複合材は、一方向性炭素繊維を含む第二の炭素繊維強化炭素複合層を有さないことから、製造時にひび割れおよび欠けを生じるものであることが分かる。
本発明によれば、十分な強度を有するとともに、発塵を生じ難く、高温下で使用された場合であってもその重量や容量を増大させることなく変形(反り、ひび割れ、欠け等)の発生を高度に低減する炭素繊維強化炭素複合材を提供することができるとともに、当該炭素繊維強化炭素複合材を、切削加工等の機械加工を施すことなく簡便かつ低コストに製造する方法を提供することができる。
1 炭素繊維強化炭素複合材
2 第一の炭素繊維強化炭素複合層
3、3’ 第二の炭素繊維強化炭素複合層
4 一方向性炭素繊維

Claims (5)

  1. 炭素繊維および炭素質マトリックスを含む炭素繊維強化炭素複合材であって、
    前記炭素繊維として織布炭素繊維または不織布炭素繊維を含む第一の炭素繊維強化炭素複合層の少なくとも一方の主表面上に、
    前記炭素繊維として一方向性炭素繊維を含む第二の炭素繊維強化炭素複合層を備え、
    前記第二の炭素繊維強化炭素複合層は、外側主表面上に、互いに離間して平行に配置された複数の凸条部と当該凸条部間に互いに離間して平行に配置された複数の凹条部とを有し、
    前記第二の炭素繊維強化炭素複合層を構成する一方向性炭素繊維の配向方向に前記複数の凸条部および凹条部が伸長しており、
    前記複数の凸条部および凹条部の伸長方向に対する垂直断面が波形状を成している
    ことを特徴とする炭素繊維強化炭素複合材。
  2. 前記第一の炭素繊維強化炭素複合層の両主表面上に、前記第二の炭素繊維強化炭素複合層が各々積層され、
    前記複数の第二の炭素繊維強化炭素複合層の外側主表面上に各々設けられた複数の凸条部および凹条部は、いずれも同一方向に伸長しており、
    前記複数の第二の炭素繊維強化炭素複合層は、一方の炭素繊維強化炭素複合層の外側主表面上に設けられた複数の凸条部と他方の炭素繊維強化炭素複合層の外側主表面上に設けられた複数の凸条部とを、各々前記第一の炭素繊維強化炭素複合層を挟む対称位置に有するか、一方の炭素繊維強化炭素複合層の外側主表面上に設けられた複数の凸条部と他方の炭素繊維強化炭素複合層の外側主表面上に設けられた複数の凹条部とを、各々前記第一の炭素繊維強化炭素複合層を挟む対称位置に有している
    請求項1に記載の炭素繊維強化炭素複合材。
  3. 前記凸条部の高さが0.5mm〜20mmである請求項1または請求項2に記載の炭素繊維強化炭素複合材。
  4. 前記第二の炭素繊維強化炭素複合層上にさらに厚さ1〜10μmの熱分解炭素被膜を有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の炭素繊維強化炭素複合材。
  5. 請求項1に記載の炭素繊維強化炭素複合材を製造する方法であって、
    樹脂成分を含浸させた炭素繊維織布または炭素繊維不織布の少なくとも一方の主表面上に、樹脂成分を含浸させた一方向性炭素繊維織物を積層して積層物を形成し、
    前記一方向性炭素繊維織物の外側表面に形成しようとする凹凸条形状と対応する形状を有する成形面として、互いに離間して平行に配置された複数の凸条部と当該凸条部間に互いに離間して平行に配置された複数の凹条部とを有し、当該複数の凸条部および凹条部の伸長方向に対する垂直断面が波形状を成すように刻印された成形面を有する成形型内に、前記一方向性炭素繊維織物を構成する一方向性炭素繊維の配向方向と、前記成形型内に刻印された凸条部および凹条部の伸長方向とが一致するように前記積層物を配置した後、
    熱圧成形する
    ことを特徴とする炭素繊維強化炭素複合材の製造方法。
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