JP7074333B2 - レーザ加工可能な農業用フィルム及び農業用フィルムのレーザ加工方法 - Google Patents
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Description
これに対して、本出願人は、レーザビームを照射することにより孔開けするレーザ加工の技術を開発している(特許文献1)。
そこで、本発明は、従来技術の問題点を解決するものであり、光線透過率が高くても、レーザ加工可能な農業用フィルム及び農業用フィルムのレーザ加工方法を提供することを課題とする。
(請求項1)
波長400~700nmの可視光波長域の光線透過率75%以上である光透過性の高い農業用フィルムであり、
前記農業用フィルムを構成するポリオレフィン系樹脂に、レーザ焦点反応を生起する無機物質を、4wt%以上10wt%以下配合してなる農業用フィルムに、
前記レーザ焦点反応を生起可能なレーザを照射する農業用フィルムのレーザ加工方法であり、
前記レーザ照射の際のスキャン速度が、900~1500mm/secの範囲であり、
かつ、前記レーザ照射の際のライン速度が、12~50m/minの範囲であることを特徴とする農業用フィルムのレーザ加工方法。
(請求項2)
前記ポリオレフィン系樹脂に、前記無機物質を、4wt%以上8wt%以下配合してなることを特徴とする請求項1記載の農業用フィルムのレーザ加工方法。
(請求項3)
前記無機物質が、珪酸塩鉱物、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩鉱物から選ばれる少なくとも1種であり、
前記珪酸塩鉱物が、カオリン、タルク、アルカリ長石、準長石から選ばれ、
前記金属酸化物が、アルミナ、シリカから選ばれ、
前記金属水酸化物が、消石灰であり、
前記炭酸塩鉱物が、ハイドロタルサイトであることを特徴とする請求項1又は2記載の農業用フィルムのレーザ加工方法。
(請求項4)
前記無機物質が、ネフェリン、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、タルク、アルミナ、消石灰の何れかから選ばれることを特徴とする請求項3記載の農業用フィルムのレーザ加工方法。
本発明者は、酸化チタンを用いて反射処理されたフィルム表面に、レーザ焦点反応や発熱が起きないかを調べた。反射処理なしのフィルム、反射処理したフィルム裏面、反射処理したフィルム表面のそれぞれで、レーザ焦点反応や発熱が起きないかを調べたところ、それほどの変化は認められなかった。
またアルミニウムのような反射剤を用いた場合も、チタンと同様に、レーザ焦点反応や発熱が起きないことがわかった。
本発明者は、無機物質について、透明フィルムに含有させた場合に、レーザ焦点反応を生起する無機物質の選定を行い、好適な無機物質を見出し、本発明に至った。
本発明では、わずかな着色顔料を含有していてもよい。
ここで、わずかな着色顔料を含有するというのは、長尺状の1枚のフィルムのままであり、フィルムを重ねないときには、無色透明に目視できる程度にわずかに含有していることを意味し、また、長尺状の1枚のフィルムを折りたたんで重ねた場合や、ロール状に巻いたりして重ねた場合には、わずかに色味が目視できる程度にわずかに含有していることを意味する。
この場合のわずかな顔料は、色調に関係ない顔料である。またわずかな色味としては、わずかな青み、わずかな黄味などが挙げられる。
金属酸化物としては、例えば、アルミナ、シリカ等が挙げられる。
金属水酸化物としては、例えば、消石灰等が挙げられる。
炭酸塩鉱物としては、例えば、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
搬送機構は、走行しているフィルムの表面に向けてレーザビームを照射すると共に、所定の孔形状となるようにレーザビームを走査し、フィルムの走行方向に沿って連続して加工を行なうように構成することができる。
断片回収機構は、レーザビームの走査位置の後段に設けられ、例えば、風力や重力を利用して、レーザビームによって切り取られたフィルム断片を回収できるように構成することができる。
所望の孔形状としては、小孔形状、三角形状、矩形状、楕円形状、星型、その他の多角形状、スリット群などを例示することができ、孔形状の目的によって任意に選択することができる。
例えば、農業用フィルムの層構成は、基層のみでもよいが、基層の少なくとも一方の面に、透明層や反射層を設けた態様でもよい。
透明層や反射層を形成する樹脂組成物におけるベース樹脂は、格別限定されず、ポリオレフィン系樹脂であってもよいし、その他の樹脂であってもよい。
基層と透明層や反射層とを、同種の樹脂で形成することが好ましい。透明層や反射層を構成するポリオレフィン系樹脂については、基層で例示したものを用いることができる。
二酸化チタンの結晶型は、ルチルとアナタースの2型があるが、アナタースはフィルム耐候性を大きく低下させるので、通常はルチル型を用いる。
二酸化チタンは、紫外光を吸収し、活性酸素を発生する特性があり、このためフィルム耐候性を低下させるので、TiO2粒子表面をAl、Siなどの金属酸化膜でコート処理することが好ましい。
1.農業用マルチフィルムの作製
下記の樹脂組成物を用いて、ダイラミ成形法により、基層のみからなる1層構成の農業用マルチフィルムを作製した。
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)(メルトインデックス1.0、密度0.920g/cc、無極性)に、無機物質である霞石(ユニミン社製「ミネックス(MINEX)7」)を4wt%配合して基層の樹脂組成物を得た。
得られた透明な農業用マルチフィルムを下記条件でレーザ加工に供し、定植孔を開口した。
レーザビーム:CO2ガスレーザ
レーザ出力:平均30W、最大75W
孔形状:図1(a)に示すような長孔楕円形状
レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を以下の基準で評価した。結果は、表1に示す。
○:良好:孔が開いて、花びらはついていない(図1(a)参照)、フィルムの白濁がほぼ従来品(無機物質の配合がない透明フィルム)と変わらない
△:孔開け良
フィルム外観不良:フィルムの白濁、濁りが大きくなる
フィルム強度が弱くなる
△×:孔は開くが安定しない、
フィルム強度が弱くなる
×:孔開け不良:
孔が開かない、又は孔開け加工時に図1(b)に示すように、花びらが付いたまま
実施例1において、無機物質の配合濃度を6wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表1に示す。
実施例1において、無機物質の配合濃度を8wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表1に示す。
実施例1において、無機物質の配合濃度を10wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表1に示す。
実施例1において、無機物質を配合しなかった以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表1に示す。
実施例1において、無機物質の配合濃度を0.5wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表1に示す。
実施例1において、無機物質の配合濃度を1wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表1に示す。
実施例1において、無機物質の配合濃度を2wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表1に示す。
表1より、無機物質を配合した実施例1~4のフィルムは、図1(a)に示すように、農業用マルチフィルム1に定植孔2を開口し、その開口時に、定植孔2に花びら3が付いておらず、レーザ加工が可能であることがわかる。
これに対して、無機物質を配合しないフィルム(比較例1)、無機物質を0.5wt%配合したフィルム(比較例2)、1.0wt%配合したフィルム(比較例3)、2.0wt%配合したフィルム(比較例4)では、図1(b)に示すように、定植孔2には花びら3が付いたままであり、レーザ加工ができないか不良であることがわかる。
実施例1において、波長550nmの光線透過率を75%に代えた農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
実施例5において、無機物質の配合濃度を6wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
実施例5において、無機物質の配合濃度を8wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
実施例5において、無機物質の配合濃度を10wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
実施例5において、無機物質を配合しなかった以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
実施例5において、無機物質の配合濃度を0.5wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
実施例5において、無機物質の配合濃度を1wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
実施例5において、無機物質の配合濃度を2wt%に代えた以外は、同様にして農業用マルチフィルムを作製し、レーザ加工されたフィルムについて、レーザ加工性を同様に評価し、その結果を表2に示す。
表2より、無機物質を配合した実施例5~8のフィルムは、図1(a)に示すように、農業用マルチフィルム1に定植孔2を開口し、その開口時に、定植孔2に花びら3が付いておらず、レーザ加工が可能であることがわかる。
これに対して、無機物質を配合しないフィルム(比較例5)、無機物質を0.5wt%配合したフィルム(比較例6)、1.0wt%配合したフィルム(比較例7)、2.0wt%配合したフィルム(比較例8)では、図1(b)に示すように、定植孔2には花びら3が付いたままであり、レーザ加工ができないか不良であることがわかる。
従来の透明フィルムのレーザ加工速度と比較して、孔開け加工ができるようになった実施例1~4の場合に、レーザ加工の際のスキャン速度(m/sec)、及びライン速度(m/min)が、どこまで向上するかを実験によって確認した。
従来の透明フィルム(無機物質の配合がない場合)のレーザ加工速度は以下の通りである。
スキャン速度:300(m/sec)
ライン速度 :3(m/min)
無機物質の配合濃度を、4wt%、6wt%、8wt%、10wt%とした場合に、実施例1~4でレーザ加工性が向上することは確認されたが、各々の場合に、レーザ加工速度が比較例5に比べ、向上するか否かを確認したところ、表3及び図2のような結果が得られた。
表3及び図2より、無機物質の配合濃度を、4wt%、6wt%、8wt%、10wt%としたフィルムは、レーザ加工速度が向上することが確認された。
従来の透明フィルムのレーザ加工速度と比較して、孔開け加工ができるようになった実施例5~8の場合に、レーザ加工の際のスキャン速度(m/sec)、及びライン速度(m/min)が、どこまで向上するかを実験によって確認した。
従来の透明フィルム(無機物質の配合がない場合)のレーザ加工速度は以下の通りである。
スキャン速度:300(m/sec)
ライン速度 :3(m/min)
無機物質の配合濃度を、4wt%、6wt%、8wt%、10wt%とした場合に、実施例でレーザ加工性が向上することは確認されたが、各々の場合に、レーザ加工速度が比較例10に比べ、向上するか否かを確認したところ、表4及び図3のような結果が得られた。
表4及び図3より、光線透過率75%の農業用マルチフィルムの場合でも、無機物質の配合濃度を、4wt%、6wt%、8wt%、10wt%としたフィルムは、レーザ加工速度が向上することが確認された。
実施例1~8で用いた無機物質を、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、タルク、アルミナ、消石灰の各々に代えても、実施例1~8と同様の効果が得られた。
2:定植孔
3:花びら
Claims (4)
- 波長400~700nmの可視光波長域における光線透過率が80%以上である光透過性の高い農業用フィルムであり、
前記農業用フィルムを構成するポリオレフィン系樹脂に、レーザ焦点反応を生起する無機物質を、4wt%以上10wt%以下配合して農業用フィルムに、前記レーザ焦点反応を生起可能なレーザを照射する農業用フィルムのレーザ加工方法であり、
前記レーザ照射の際のスキャン速度が、900~1500mm/secの範囲でありあり、かつ前記レーザ照射の際のライン速度が、20~50m/minの範囲であることを特徴とする農業用フィルムのレーザ加工方法。 - 前記ポリオレフィン系樹脂に、前記無機物質を、4wt%以上8wt%以下配合してなることを特徴とする請求項1記載の農業用フィルムのレーザ加工方法。
- 前記無機物質が、珪酸塩鉱物、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩鉱物から選ばれる少なくとも1種であり、
前記珪酸塩鉱物が、カオリン、タルク、アルカリ長石、準長石から選ばれ、
前記金属酸化物が、アルミナ、シリカから選ばれ、
前記金属水酸化物が、消石灰であり、
前記炭酸塩鉱物が、ハイドロタルサイトであることを特徴とする請求項1又は2記載の農業用フィルムのレーザ加工方法。 - 前記無機物質が、ネフェリン、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、タルク、アルミナ、消石灰の何れかから選ばれることを特徴とする請求項3記載の農業用フィルムのレーザ加工方法。
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