以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の展開図が示されている。本実施形態のタイヤは、例えば、空気入りタイヤとして構成される。本実施形態では、好ましい態様として、乗用車やSUVに装着が意図されたオールシーズンタイヤが示されている。
図1に示されるように、タイヤは、トレッド部2を有する。トレッド部2は、路面と接地する部分であって、各種のトレッドパターンが形成される。本実施形態のタイヤ1は、左右非対称のトレッドパターンを有する。このトレッドパターンの特性を最大限発揮させるために、本実施形態のタイヤは、車両への装着の向きが指定されている。車両への装着の向きは、例えば、タイヤのサイドウォール部(図示省略)に文字や図形などで表示される。
トレッド部2には、タイヤ1が車両に装着されたときに、車両の車体中心側に位置する内側トレッド端Te1と、車体の外側に位置する外側トレッド端Te2と、複数の主溝3と、それらで区分された少なくとも一つの(この例では複数の)陸部とが形成されている。
内側トレッド端Te1及び外側トレッド端Te2は、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
主溝3は、路面上の水をタイヤ後方に排出するために、比較的大きな幅と深さでタイヤ周方向に連続して延びている。好ましい態様では、主溝3は、5mm以上、より好ましくは6mm以上の幅及び深さを有する。また、主溝3の幅は、例えば、トレッド幅の3.0%~5.0%である。トレッド幅は、前記正規状態における内側トレッド端Te1から外側トレッド端Te2までのタイヤ軸方向の距離である。各主溝3は、例えば、タイヤ周方向に沿って真っ直ぐに延びている。他の態様では、主溝3は、ジグザグや波状等の非直線状であっても良い。
本実施形態において、トレッド部2には、4本の主溝3が設けられている。4本の主溝3は、タイヤ赤道Cを挟むように配置された内側クラウン主溝3A及び外側クラウン主溝3Bを含む。また、主溝3は、内側クラウン主溝3Aと内側トレッド端Te1との間に配された内側ショルダー主溝3Cと、外側クラウン主溝3Bと外側トレッド端Te2との間に配された外側ショルダー主溝3Dとを含む。
タイヤ赤道Cから内側クラウン主溝3Aの溝中心線までのタイヤ軸方向の距離、及び、タイヤ赤道Cから外側クラウン主溝3Bの溝中心線までのタイヤ軸方向の距離は、それぞれ、トレッド幅の5%~15%であるのが望ましい。タイヤ赤道Cから内側ショルダー主溝3Cの溝中心線までのタイヤ軸方向の距離、及び、タイヤ赤道Cから外側ショルダー主溝3Dの溝中心線までのタイヤ軸方向の距離は、それぞれ、トレッド幅の20%~30%であるのが望ましい。
各主溝3により、トレッド部2には、例えば、2つのミドル陸部4がタイヤ赤道Cを挟むように設けられている。本実施形態のトレッド部2には、2本のミドル陸部4として、内側トレッド端Te1とタイヤ赤道Cとの間に位置する内側ミドル陸部6と、外側トレッド端Te2とタイヤ赤道Cとの間に位置する外側ミドル陸部7とが設けられている。本実施形態のトレッド部2は、これらに加え、クラウン陸部5、内側ショルダー陸部8及び外側ショルダー陸部9を含んでおり、5つの陸部に区分されている。但し、本発明のタイヤ1のトレッド部2は、このような態様に限定されず、例えば、3本の主溝3によって、2つのミドル陸部4と、2つのショルダー陸部8、9とからなる所謂4リブで構成されても良い。
クラウン陸部5は、内側クラウン主溝3A及び外側クラウン主溝3Bの間に区分されている。内側ミドル陸部6は、内側クラウン主溝3Aと内側ショルダー主溝3Cとの間に区分されている。外側ミドル陸部7は、外側クラウン主溝3Bと外側ショルダー主溝3Dとの間に区分されている。内側ショルダー陸部8は、内側ショルダー主溝3Cと内側トレッド端Te1との間に区分されている。外側ショルダー陸部9は、外側ショルダー主溝3Dと外側トレッド端Te2との間に区分されている。
ミドル陸部4は、第1端61と第2端62とを有する。第1端61は、ミドル陸部4の内側トレッド端Te1側の端である。第2端62は、ミドル陸部4の外側トレッド端Te2側の端である。このため、内側ミドル陸部6の第1端61は、内側ショルダー主溝3Cに面し、外側ミドル陸部7の第1端61は、外側クラウン主溝3Bに面している。内側ミドル陸部6の第2端62は、内側クラウン主溝3Aに面し、外側ミドル陸部7の第2端62は、外側ショルダー主溝3Dに面している。
図2には、内側ミドル陸部6の拡大図が示されている。以下、ミドル陸部4の構成が、内側ミドル陸部6を例にして説明されるが、これら内側ミドル陸部6の構成は、外側ミドル陸部7にも適用できる。
図2に示されるように、本実施形態では、ミドル陸部4に、ラグ溝10、第1サイプ11、第2サイプ12及び第3サイプ13が設けられている。これらの溝10及びサイプ11~13は、それぞれ複数形成されている。
本明細書において、「サイプ」とは、幅が2.0mm以下、好ましくは0.5~2.0mmの細い切り込みとして定義される。一方、「溝」は、少なくとも2.0mmよりも大きい幅の凹みとして定義される。
各ラグ溝10は、ミドル陸部4の第1端61からミドル陸部4を部分的に横切って延びており、かつ、ミドル陸部4内に途切れ端10aを有する。即ち、ラグ溝10は、ミドル陸部4の第2端62に到達していない。本実施形態において、ラグ溝10は、第1端61から途切れ端10aまで直線状に延びている。他の態様では、溝長さ及びエッジ成分をより大きくするために、ラグ溝10は、折れ曲がる部分を含むことができる。ラグ溝10は、雪上走行時、雪柱せん断力を生成しトラクションや制動力を高め、ひいては雪上性能を向上させる。また、ラグ溝10は、ミドル陸部4の剛性の低下を極力抑え、舗装路での操縦安定性の悪化を防止する。
各ラグ溝10の幅は、例えば、タイヤ周方向で隣り合うラグ溝10間の1ピッチ長さの5%~15%であるのが望ましい。より具体的には、各ラグ溝10の幅は8.0mm以下とされ、より好ましくは4.0~8.0mmとされ得る。本実施形態において、各溝の幅は、溝の長手方向と直交する向きに測定される。好ましい態様では、各ラグ溝10は、途切れ端10aに向かって溝幅が漸減する。この場合、幅が2.0mm以下になった部分が途切れ端10aとして認定される。
本実施形態において、各ラグ溝10の途切れ端10aは、ミドル陸部4のタイヤ軸方向の中心位置よりも第2端62側に位置している。これは、タイヤ軸方向のより広い範囲で雪柱せん断力を生成するのに役立つ。舗装路での操縦安定性の悪化を防止しながら雪柱せん断力をバランス良く得るために、ラグ溝10のタイヤ軸方向の長さL1は、ミドル陸部4のタイヤ軸方向の最大幅Lmの60%~80%であるのが望ましい。
ミドル陸部4の横剛性の低下を抑えながら、タイヤ軸方向に対する引っ掻き効果をも得るために、各ラグ溝10は、タイヤ軸方向に対して傾斜することが望ましい。より好ましい態様では、各ラグ溝10は、タイヤ軸方向に対して5~45°、より好ましく5~30°、さらに好ましくは5~20°で傾斜する。トラクションに関して、雪柱せん断力と路面引っ掻き効果を最大限に発揮させるためには、ラグ溝10は、タイヤ軸方向に沿って延びるものを含むことができる。
図3には、図2のA-A線断面図が示される。大きな雪柱せん断力を生成するために、ラグ溝10の深さ(深さが変化する場合には、最大の深さ)d1は、例えば、主溝3の最大深さDの25%以上かつ100%以下であるのが望ましい。より好ましい態様では、雪柱せん断力を生成しつつ内側ミドル陸部6の剛性低下をさらに抑制するために、前記深さd1は、主溝3の最大深さDの50%~70%であるのが望ましい。
好ましい態様では、ラグ溝10の第1端61側(即ち、主溝3に連通する側)には、深さが局部的に小さく形成された浅底部15が設けられるのが望ましい。この浅底部の深さd2は、例えば、ラグ溝10の最大の深さd1の40%~60%程度とされる。
図2に示されるように、第1サイプ11は、タイヤ周方向で隣接するラグ溝10、10間をタイヤ周方向に延びている。本実施形態において、第1サイプ11は、タイヤ周方向に沿って直線状に延びている。他の態様では、エッジ成分をより大きくするために、第1サイプ11は、屈曲する部分を含むことができる。
好ましい態様では、第1サイプ11の少なくとも一端がラグ溝10に接続される。特に好ましい態様では、第1サイプ11の両端がラグ溝10に接続される。第1サイプ11は、溝に比べて小さい幅を有するので、ミドル陸部4の剛性低下を防止しつつ、タイヤにスリップ角が与えられたときに路面引っ掻き効果を提供し、滑りやすい雪道での操縦安定性を高める。
好ましい態様では、第1サイプ11は、ミドル陸部4の最大幅Lmの中心位置上に設けられる。これにより、ミドル陸部4の剛性の偏り、ひいては、操縦安定性の悪化がさらに防止される。
図3には、第1サイプ11の断面図が示されている。ミドル陸部4の剛性低下を抑制するために、第1サイプ11の深さは、主溝3の最大深さDの100%未満とされるのが良く、さらに好ましくは40~90%、最も好ましくは40%~60%とされる。本実施形態の第1サイプ11は、ラグ溝10の最大の深さd1と同じ深さで形成されている。これは、第1サイプ11とラグ溝10との接続部分での偏摩耗の発生を防止するのに役立つ。
図2に示されるように、第2サイプ12は、ミドル陸部4の第1端61から第1サイプ11まで延びている。本実施形態において、複数の第2サイプ12が、タイヤ周方向で隣接するラグ溝10、10間に設けられている。また、第3サイプ13は、ミドル陸部4の第2端62から第1サイプ11まで延びている。本実施形態において、複数の第3サイプ13が、タイヤ周方向で隣接するラグ溝10、10間に設けられている。
好ましい態様では、第2サイプ12及び第3サイプ13は、隣接するラグ溝10間をタイヤ周方向にほぼ等しい長さ(例えば、長さの差が5%以内)で等分割するように配置される。このような配置は、ミドル陸部4の局部的な剛性低下を抑制し、舗装路での操縦安定性を向上させるのに役立つ。
第2サイプ12及び第3サイプ13は、少なくとも、本質的に第1サイプ11に接続される。なお、2つのサイプが、「本質的」に接続されるとは、2つのサイプが現実に接続(連通)されている態様のみならず、2つのサイプが現実には接続されていないが1mm以下の隙間を介して近接配置されている状態を含むものとする。本実施形態の第2サイプ12及び第3サイプ13は、第1サイプ11と現実に連通している。これにより、内側ミドル陸部6の第1端61から第2端62まで本質的に連続したエッジを提供し、路面引っ掻き効果をさらに高めることができる。
第2サイプ12及び第3サイプ13は、溝に比して幅が小さいため、ミドル陸部4の剛性低下を最小限に抑えつつ、陸部の広い範囲に亘って、雪路での路面引っ掻き効果を提供することができる。
また、第3サイプ13は、第2サイプ12とタイヤ周方向の同じ位置で第1サイプ11に連通している。これにより、第2サイプ12及び第3サイプ13は、第1サイプ11近傍においてより開き易くなるため、雪路でより大きな摩擦力を提供することができる。なお、「タイヤ周方向の同じ位置で連通する」とは、一方のサイプの端をタイヤ軸方向に沿って延長した第1領域と、他方のサイプの端をタイヤ軸方向に沿って延長した第2領域とのタイヤ周方向の最小の距離が2mm未満の態様を含む。より望ましい態様では、前記第1領域と前記第2領域とが、互いに交わるのが望ましい。さらに望ましい態様として、本実施形態では、第2サイプ12のエッジと第3サイプ13のエッジとが一直線状に配されている。
本実施形態では、第2サイプ12及び第3サイプ13は、ラグ溝10と交差することなく配置されている。溝及びサイプの交差部分は、陸部の剛性を局所的に低下させる傾向がある。本実施形態では、内側ミドル陸部6には、上述の交差部分が形成されないので、その剛性低下が抑えられ、舗装路での良好な操縦安定性が得られる。
本実施形態のタイヤ1は、上述の構成を有する内側ミドル陸部6及び外側ミドル陸部7を有しているため、良好な操縦安定性と雪上性能とを発揮することができる。
好ましい態様では、ミドル陸部4の横剛性の低下を抑えながら、タイヤ軸方向に対する引っ掻き効果を得るために、第2サイプ12及び第3サイプ13は、タイヤ軸方向に対して傾斜することが望ましく、好ましくは5~45°、より好ましく5~30°、さらに好ましくは5~20°で傾斜することが望ましい。より好ましい態様として、本実施形態のように、第2サイプ12及び第3サイプ13は、ラグ溝10とタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。
特に好ましい態様では、第2サイプ12、第3サイプ13及びラグ溝10は、互いに、本質的に平行に延びている。「本質的」に平行とは、トレッド部2が曲面であることや、タイヤがゴムの加硫成形品であることを考慮し、「平行」が厳密に数学的な意味として解釈されてはならないことを意図したものである。この意味において、当業者が一見して平行と視認し得るような態様は、本質的に平行であると解釈されるべきである。例えば、溝又はサイプにおいて、それらの両端を結んだ直線のタイヤ軸方向に対する角度を算出し、それらの差が10°以下程度、より好ましくは5°以下である態様は、少なくとも、本質的に平行であると解すべきである。一方、路面引っ掻き効果を最大限に発揮させる態様では、第2サイプ12及び第3サイプ13は、タイヤ軸方向に沿って延びても良い。
図4には、図2のB-B線断面図が示されている。図4に示されるように、本実施形態の第2サイプ12は、第1端61から第1サイプ11に向かって延び、第1サイプ11側の端部12a付近で深さd3が漸減している。この例では、第2サイプ12の端部12aは、第1サイプ11の第1端61側のエッジと一致している。同様に、第3サイプ13は、第2端62から第1サイプ11に向かって延び、第1サイプ11側の端部13a付近で深さd4が漸減している。この例では、第3サイプ13の端部13aは、第1サイプ11の第2端62側のエッジと一致している。このような態様では、内側ミドル陸部6は、その幅方向の中央部分の剛性を十分に維持しながら、第1端61から第2端62まで本質的に連続する長いエッジを提供し、路面引っ掻き効果をさらに向上させることができる。
舗装路での操縦安定性を向上させるために、第2サイプ12は、最も大きい深さd3を有し、そこから第1端61側の端部12b及び第1サイプ11側の端部12aに向かってそれぞれ深さが漸減している。本実施形態の第2サイプ12において、端部12bの深さは、端部12aでの深さよりも大きい。特に好ましくは、端部12aの深さは、上述のように、ゼロである。また、第2サイプ12において、端部12bでの深さは、第1サイプ11の深さよりも小さいことが望ましい。
同様に、第3サイプ13は、最も大きい深さd4を有し、そこから第2端62側の端部13b及び第1サイプ11側の端部13aに向かってそれぞれ深さが漸減している。本実施形態の第3サイプ13において、端部13bの深さは、端部13aでの深さよりも大きい。特に好ましくは、端部13aの深さは、上述のように、ゼロである。また、第3サイプ13において、端部13bでの深さは、第1サイプ11の深さよりも小さいことが望ましい。
さらに、第2サイプ12の前記深さd3及び第3サイプ13の前記深さd4は、第1サイプ11の深さよりも大きいのが望ましい。とりわけ、前記深さd3及びd4は、例えば、主溝3の最大深さDの50%以上かつ100%以下、より好ましくは60~80%であるのが望ましい。
本実施形態の構成によれば、タイヤ走行時、例えば、内側ミドル陸部6の第1端61、第2端及び第1サイプ11の各位置付近では、第2サイプ12及び第3サイプ13が接地したときの開口量を減らして舗装路での操縦安定性を高めることができる。また、圧雪路走行時には、第2サイプ12及び第3サイプ13のそれぞれの長さ方向の中央位置において、例えば、開口量を相対的に増加させ、路面引っ掻き効果をさらに高めることができる。
図1~図3に示されるように、好ましい態様では、ミドル陸部4には、さらに、複数の第4サイプ14が設けられる。
第4サイプ14は、ラグ溝10の途切れ端10aに接続されている。好ましい態様では、第4サイプ14は、第2端62まで延びている。このような態様では、外側ミドル陸部7の剛性低下を抑えながら、第1端61から第2端62まで延びる長いエッジが提供される。従って、舗装路での操縦安定性を損ねることなく、雪上性能がさらに高められる。特に、ラグ溝10の途切れ端10aは、溝幅が漸減しているため、第4サイプ14との接続位置での剛性変化を小さくすることができる。
本実施形態において、第4サイプ14は、直線状に延びている。他の態様では、エッジ成分をより大きくするために、第4サイプ14は、屈曲する部分を含むことができる。特に好ましい態様では、第4サイプ14は、第3サイプ13と、本質的に平行に延びている。「本質的」に平行とは、上で述べた通りである。一方、路面引っ掻き効果を最大限に発揮させる態様として、第4サイプ14は、タイヤ軸方向に沿って延びても良い。
第4サイプ14が提供される場合、図3に示されるように、その最大深さd5は、第1サイプ11、第2サイプ12及び第3サイプ13の各深さよりも小さく形成されるのが望ましい。本実施形態では、第4サイプ14の深さd5は、実質的に一定で構成されている。他の態様では、深さd5は、変化しても良い。
図5には内側ミドル陸部6のさらなる部分拡大図が示される。図5に示されるように、ミドル陸部4には、陸部の踏面及び側面のコーナ部分の一部が凹んだ面取り部17が設けられているのが望ましい。面取り部17は、第1端61側でラグ溝10と第2サイプ12との間を繋ぐ第1面取り部18を含む。第1面取り部18は、ラグ溝10とともに大きな雪柱を形成するとともに、ラグ溝10内の雪を排出し易くし、優れた雪上性能を持続して発揮することができる。望ましい態様では、面取り部18は、例えば、第2端62側で2本の第3サイプ13の間を繋ぐ第2面取り部19を含む。第2面取り部19は、第1面取り部18とともに、雪上性能をさらに高めることができる。
操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めるために、第1面取り部18のタイヤ周方向の長さは、ラグ溝10の1ピッチ長さの0.30~0.50倍であるのが望ましい。
図6(A)には、図5のA-A線断面図が示されている。図5及び図6(A)に示されるように、本実施形態では、面取り部17の深さd6は、例えば、主溝3の最大深さD(図3に示す)の30%~100%、好ましくは50%~100%とされるのが望ましい。同様に、面取り部17のタイヤ軸方向の幅Wは、例えば、0.5~5mmとされるのが望ましい。
図6(B)に示されるように、他の態様として、面取り部17は、例えば、直線状の斜面を含んで形成されても良い。
図3及び図4に示されるように、第1面取り部18及び第2面取り部19は、例えば、第1サイプ11よりも大きい深さを有しているのが望ましい。また、第1面取り部18及び第2面取り部19は、ラグ溝10よりも大きい深さを有しているのが望ましい。このような面取り部17は、大きな雪柱せん断力を提供できる。
図5に示されるように、トレッド平面視において、ラグ溝10と第1面取り部18との間の角度は、鈍角であるのが望ましい。これにより、雪上走行時、ラグ溝10及び第1面取り部18内の雪が一体となって排出され易くなり、優れた雪上性能が持続して発揮される。
第1面取り部18と、第2面取り部19とは、タイヤ周方向で異なる位置に設けられるのが望ましい。これにより、タイヤの走行時、内側ミドル陸部6の第1端61及び第2端62で、面取り部17が交互に路面に接地し、バランス良く雪柱せん断力を得ることができる。
第2面取り部19をタイヤ軸方向に沿って第1端61側に延長した領域は、第1面取り部18の一部と交わるのが望ましい。このような面取り部17の配置は、雪上性能をさらに高めることができる。
ミドル陸部4は、上述のラグ溝10及び各サイプが設けられることにより、複数の第1ブロック21と、複数の第2ブロック22とを含んでいる。
第1ブロック21は、タイヤ周方向で隣接する第2サイプ12及びラグ溝10の間に区分されている。第1ブロック21は、その踏面の第1端61側に、タイヤ周方向に延びるエッジe1を有する。第2ブロック22は、タイヤ周方向で隣接する第2サイプ12、12の間に区分されている。第2ブロック22は、その踏面の第1端61側に、タイヤ周方向に延びるエッジe2を有する。第1ブロック21のエッジe1は、第2ブロック22のエッジe2よりもミドル陸部4の幅方向内側に位置する。第1ブロック21のエッジe1は、例えば、第1面取り部18によって形成されている。
内側ミドル陸部6は、さらに、複数の第3ブロック23と、複数の第4ブロック24とを含んでいる。
第3ブロック23は、タイヤ周方向で隣接する第3サイプ13及びラグ溝10(及び第4サイプ14)の間に区分されている。第3ブロック23は、その踏面の第2端62側に、タイヤ周方向に延びるエッジe3を有する。第4ブロック24は、タイヤ周方向で隣接する第3サイプ13、13の間に区分されている。第4ブロック24は、その踏面の第2端62側に、タイヤ周方向に延びるエッジe4を有する。第4ブロック24のエッジe4は、第3ブロック23のエッジe3よりもミドル陸部4の幅方向内側に位置する。第4ブロック24のエッジe4は、例えば、第2面取り部19によって形成されている。
図1に示されるように、外側ミドル陸部7は、内側ミドル陸部6よりも大きいタイヤ軸方向の幅を有しているのが望ましい。外側ミドル陸部7のタイヤ軸方向の幅は、例えば、内側ミドル陸部のタイヤ軸方向の幅の1.05~1.10倍であるのが望ましい。このような外側ミドル陸部7は、高い剛性を有し、操縦安定性を高めることができる。
外側ミドル陸部7に配されたラグ溝10のタイヤ軸方向の長さは、内側ミドル陸部6に配されたラグ溝10のタイヤ軸方向の長さよりも大きいのが望ましい。
さらに望ましい態様では、外側ミドル陸部7に設けられたラグ溝10のタイヤ軸方向の長さの、外側ミドル陸部7のタイヤ軸方向の幅に対する寸法比は、内側ミドル陸部6に設けられたラグ溝10のタイヤ軸方向の長さの、内側ミドル陸部6のタイヤ軸方向の幅に対する寸法比の0.95~1.05倍であるのが望ましい。これにより、内側ミドル陸部6及び外側ミドル陸部7の偏摩耗が抑制される。
図7には、図1のクラウン陸部5の部分拡大図が示されている。クラウン陸部5には、複数のクラウンサイプ30が設けられている。本実施形態において、各クラウンサイプ30は、直線状に延びている。他の態様として、エッジ成分をより大きくするために、各クラウンサイプ30は、屈曲する部分を含んでも良い。
好ましい態様では、クラウン陸部5の横剛性の低下を抑えながら、タイヤ軸方向に対する引っ掻き効果を得るために、クラウンサイプ30は、タイヤ軸方向に対して傾斜することが望ましく、好ましくは5~45°、より好ましく5~30°、さらに好ましくは5~20°で傾斜している。より好ましい態様として、本実施形態のように、クラウンサイプ30は、第2サイプ12、第3サイプ13及びラグ溝10とタイヤ軸方向に対して逆向きに傾斜している。
好ましい態様では、各クラウンサイプ30は、クラウン陸部5の全幅に亘って延びている。これにより、クラウン陸部5は、クラウンブロック32に区分される。クラウン陸部5は、相対的に大きな接地圧が作用する傾向があるので、クラウンブロック32のタイヤ周方向の長さは、前述の内側ミドル陸部6の各ブロックのタイヤ周方向の長さの1.0倍よりも大きく、特に好ましくは、1.3倍以上、より好ましくは1.4倍以上とされる。
好ましい態様では、クラウン陸部5には、その踏面及び側面のコーナ部分の一部が凹んだ面取り部33が設けられるのが望ましい。面取り部33は、例えば、タイヤ軸方向の長さよりもタイヤ周方向の長さが大きい。本実施形態において、面取り部33は、クラウン陸部5のタイヤ軸方向の両端にそれぞれ設けられている。各面取り部33は、その部分で雪柱せん断力を生成し、雪上性能をさらに向上させることができる。なお、各面取り部33は、ミドル陸部4に設けられた面取り部17と同様の構成と好ましい範囲が適用される。
クラウン陸部5に設けられた面取り部33は、例えば、ミドル陸部4に設けられた面取り部17よりも小さいタイヤ周方向の長さを有しているのが望ましい。これにより、クラウン陸部5の偏摩耗が抑制される。
好ましい態様では、クラウン陸部5のタイヤ軸方向の両端側に、面取り部33が設けられる。この場合、面取り部33は、クラウンサイプ30に連通するように設けられるのが望ましい。
本実施形態では、クラウンサイプ30は、少なくとも一端(本実施形態では、両端)に面取り部33が接続された第1クラウンサイプ30Aと、両端に面取り部33が接続されていない第2クラウンサイプ30Bとを含む。好ましい態様では、第1クラウンサイプ30Aと第2クラウンサイプ30Bとは、タイヤ周方向に交互に設けられる。これにより、舗装路での操縦安定性の低下を抑えながら、雪上性能がさらに向上する。
図8(A)は、図7のA-A線断面図が示されている。図8(A)に示されるように、第1クラウンサイプ30Aは、例えば、一定の深さd7で形成されている。クラウン陸部5の剛性低下を防ぎながら雪上性能を向上させるために、第1クラウンサイプ30Aの深さd7は、例えば、面取り部33の深さよりも小さく形成されるのが望ましい。好ましい態様では、前記深さd7は、主溝3の最大深さDの30%以下、より好ましくは10~30%程度が望ましい。
図8(B)には、図7のB-B線断面図が示されている。図8(B)に示されるように、本実施形態の第2クラウンサイプ30Bは、深さが3段階で変化している。本実施形態の第2クラウンサイプ30Bは、深さが小さい順に、第1部分35、第2部分36及び第3部分37を含んでいる。
第1部分35は、第2クラウンサイプ30Bのタイヤ軸方向の両端部に形成されている。第1部分35の深さは、例えば、第1クラウンサイプ30Aの深さd7と一致している。第2部分36は、第2クラウンサイプ30Bのタイヤ軸方向の中央部に設けられている。第3部分37は、第1部分35と第2部分36との間に設けられている。クラウン陸部5の剛性低下を防ぎながら雪上性能を向上させるために、第2クラウンサイプ30Bの第3部分37の深さd8は、例えば、主溝3の最大深さDの50%以上、より好ましくは65~80%程度が望ましい。
図9には、内側ショルダー陸部8の拡大図が示されている。図9に示されるように、内側ショルダー陸部8には、例えば、複数の内側ショルダー横溝41と、陸部の踏面及び側面のコーナ部分の一部が凹んだ面取り部43と、複数の内側ショルダーサイプ45とが設けられている。
内側ショルダー横溝41は、例えば、内側ショルダー主溝3Cから内側トレッド端Te1まで延びているのが望ましい。本実施形態の内側ショルダー横溝41は、例えば、一定の溝幅で延びている。内側ショルダー横溝41の溝幅は、内側ミドル陸部6に設けられたラグ溝10の溝幅よりも大きいのが望ましい。
内側ショルダー横溝41は、例えば、内側ミドル陸部6に設けられたラグ溝10とタイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜しているのが望ましい。内側ショルダー横溝41は、例えば、タイヤ軸方向に対して5~15°の角度で配されている。
図10(A)には、図9のA-A線断面図が示されている。図10(A)に示されるように、内側ショルダー横溝41の内側ショルダー主溝3C側には、深さが局部的に小さく形成された浅底部41aが設けられているのが望ましい。この浅底部41aの深さd10は、例えば、内側ショルダー横溝41の最大の深さd9の40%~60%であるのが望ましい。
図9に示されるように、面取り部43は、例えば、タイヤ周方向に並んだ内側ショルダー横溝41の間に設けられている。本実施形態の面取り部43は、例えば、内側ミドル陸部6に配された面取り部17と実質的に同じ断面形状を有している。本実施形態の面取り部43は、タイヤ周方向の両側に位置する内側ショルダー横溝41のいずれにも接続していない。このような面取り部43は、雪上性能を高めることができる。
内側ショルダー陸部8に設けられた面取り部43のタイヤ周方向の長さは、内側ミドル陸部6に設けられた面取り部17のタイヤ周方向の長さよりも大きいのが望ましい。このような面取り部43は、内側ショルダー陸部8と内側ミドル陸部6との摩耗の進行を均一にし、優れた耐摩耗性能が得られる。
内側ショルダーサイプ45は、例えば、内側ショルダー陸部8を完全に横切る第1内側ショルダーサイプ46と、内側トレッド端Te1からタイヤ赤道C側に延びかつ前記内側ショルダー陸部8内で途切れる第2内側ショルダーサイプ47とを含んでいる。
第1内側ショルダーサイプ46は、例えば、面取り部43に連通しているのが望ましい。本実施形態では、タイヤ周方向で隣り合う内側ショルダー横溝41の間に、2本の第1内側ショルダーサイプ46が配され、面取り部43のタイヤ周方向の端部にそれぞれ連通している。このような第1内側ショルダーサイプ46は、雪上でのトラクションを高めるのに役立つ。
図10(B)には、図9のB-B線断面図が示されている。図10(B)に示されるように、第1内側ショルダーサイプ46は、例えば、面取り部43で溝底が***した浅底部46aを有しているのが望ましい。このような第1内側ショルダーサイプ46は、操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めることができる。
第2内側ショルダーサイプ47は、例えば、上述した2本の第1内側ショルダーサイプ46の間に設けられているのが望ましい。図10(C)には、図9のC-C線断面図が示されている。図10(C)に示されるように、第2内側ショルダーサイプ47は、途切れ端に向かって溝深さが部分的に漸減しているのが望ましい。
図11には、外側ショルダー陸部9の拡大図が示されている。図11に示されるように、外側ショルダー陸部9には、例えば、複数の外側ショルダー横溝51と、陸部の踏面及び側面のコーナ部分の一部が凹んだ面取り部53と、複数の外側ショルダーサイプ55とが設けられている。
外側ショルダー横溝51は、例えば、外側ショルダー主溝3Dから外側トレッド端Te2まで延びているのが望ましい。本実施形態の外側ショルダー横溝51は、例えば、外側トレッド端Te2側の外溝部51aと、外側ショルダー主溝3D側の内溝部51bとを含んでいる。内溝部51bは、外溝部51aよりも小さい溝幅及び溝深さを有している。このような外側ショルダー横溝51は、舗装路での操縦安定性を維持しつつ、雪上性能を高めることができる。
外側ショルダー陸部9に設けられた面取り部53は、例えば、ミドル陸部4に配された面取り部17と実質的に同じ断面形状を有している。また、外側ショルダー陸部9に設けられた面取り部53は、例えば、外側ショルダー主溝3Dの内溝部51bと連通しているのが望ましい。本実施形態の外側ショルダー陸部9に配された面取り部53は、例えば、ミドル陸部4に配された面取り部17よりも大きいタイヤ周方向の長さを有している。
外側ショルダーサイプ55は、例えば、外側トレッド端Te2から外側ショルダー主溝3Dまで延びている。外側ショルダーサイプ55は、例えば、面取り部53に連通しても良い。本実施形態の外側ショルダーサイプ55は、例えば、図10(B)で示される第1内側ショルダーサイプ46と実質的に同じ断面形状を有している。このような外側ショルダーサイプ55は、操縦安定性と雪上性能とをバランス良く高めることができる。
以上、本発明の実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく種々の態様で変更しうるのは言うまでもない。
図1の基本トレッドパターンを有するサイズ245/60R18の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。比較例として、図12に示されるトレッドパターンを有するタイヤが試作された。図12のトレッドパターンは、両側のミドル陸部aに、陸部を完全に横切る横溝b及びサイプcが設けられている。また、これらのミドル陸部aには、タイヤ周方向に延びるサイプが設けられていない。図12に示されるトレッドパターンは、両側のミドル陸部aの構成を除き、図1で示されるパターンと実質的に同じである。各テストタイヤの雪上性能及び操縦安定性がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
テスト車両:排気量3600cc、四輪駆動車
テストタイヤ装着位置:全輪
リム:18×7.5J
タイヤ内圧:240kPa
<雪上性能>
上記テスト車両で雪路を走行したときの走行性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、雪上性能が優れていることを示す。
<操縦安定性>
上記テスト車両でドライ状態の舗装路を走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、操縦安定性が優れていることを示す。
テストの結果が表1に示される。
テストの結果、実施例のタイヤは、舗装路での操縦安定性と雪上性能とがバランス良く向上していることが確認できた。