生物学的配列の簡単な説明
配列番号1は、配列番号2のバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)パラ-ニトロベンジルエステラーゼ(p-NBE)をコードする核酸配列である。
配列番号2は、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)パラ-ニトロベンジルエステラーゼのアミノ酸配列である。
配列番号3は、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)DSM20215由来の細胞外ラクターゼをコードする核酸配列である。
配列番号4は、配列番号3によってコードされるB.ビフィダム(B.bifidum)DSM20215由来の細胞外ラクターゼのアミノ酸配列である。
配列番号5は、配列番号6のトランケート型B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(本明細書では「BIF_917」と呼ぶ)をコードする核酸配列である。
配列番号6は、配列番号5の核酸によってコードされるタンパク質BIF_917、すなわち配列番号4の887アミノ酸トランケート断片である。
配列番号7は、配列番号8のトランケート型B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(本明細書では「BIF_955」と呼ぶ)をコードする核酸配列である。
配列番号8は、配列番号7の核酸によってコードされるタンパク質BIF_955、すなわち配列番号4の965アミノ酸トランケート断片である。
配列番号9は、配列番号10のトランケート型B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(本明細書では「BIF_1068」と呼ぶ)をコードする核酸配列である。
配列番号10は、配列番号9の核酸によってコードされるタンパク質BIF_1068、すなわち配列番号4の1,038アミノ酸トランケート断片である。
配列番号11は、配列番号12のトランケート型B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(本明細書では「BIF_1172」と呼ぶ)をコードする核酸配列である。
配列番号12は、配列番号11の核酸によってコードされるタンパク質BIF_1172、すなわち配列番号4の1,142アミノ酸トランケート断片である。
配列番号13は、配列番号14のトランケート型B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(本明細書では「BIF_1241」と呼ぶ)をコードする核酸配列である。
配列番号14は、配列番号13の核酸によってコードされるタンパク質BIF_1241、すなわち配列番号4の1,211アミノ酸トランケート断片である。
配列番号15は、配列番号16のトランケート型B.ビフィダム(B.bifidum)ラクターゼ(本明細書では「BIF_1326」と呼ぶ)をコードする核酸配列である。
配列番号16は、配列番号15の核酸によってコードされるタンパク質BIF_1326、すなわち配列番号4の1,296アミノ酸トランケート断片である。
配列番号17は、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)由来のラクターゼのアミノ酸配列である。
配列番号18は、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)由来のラクターゼのアミノ酸配列である。
配列番号19は、オリゴヌクレオチドプライマーI-SceI-1である。
配列番号20は、オリゴヌクレオチドプライマーI-SceI-2である。
配列番号21は、オリゴヌクレオチドプライマー配列番号981である。
配列番号22は、オリゴヌクレオチドプライマー配列番号984である。
配列番号23は、オリゴヌクレオチドプライマー配列番号985である。
配列番号24は、オリゴヌクレオチドプライマー配列番号983である。
配列番号25は、配列番号26のラクトバチルス・デルブレッキィ(Lactobacillus delbrueckii)トランスガラクトシル化ポリペプチドをコードする核酸配列である。
配列番号26は、ラクトバチルス・デルブレッキィ(Lactobacillus delbrueckii)トランスガラクトシル化ポリペプチドのアミノ酸配列である。
詳細な説明
特定の実施形態では、本開示は、β-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素を発現/産生する改変バチルス(Bacillus)宿主細胞、並びに1つ以上の乳製品関連最終製品においてガラクトオリゴ糖(GOS)組成物を生成するためのそのような酵素の使用を対象とする。例えば、特定の酵素産物(例えば、β-ガラクトシダーゼ産物)においては、少量の好ましくない酵素活性が主に産生宿主細胞から生じ、酵素副活性と呼ばれる。本明細書に記載されるように、本開示は、乳製品調合物/用途で使用するβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素の生成に使用する宿主細胞における好ましくない酵素副活性を低減/排除することを対象とする。
より特には、特定の実施形態では、本開示は、改変バチルス(Bacillus)宿主細胞においてこのようなβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素を発現/産生させることを対象とし、ここで、改変バチルス(Bacillus)宿主細胞から産生及び精製されるそのような酵素は、好ましくない/望ましくない酵素副活性、例えば、以下に限定されないが、好ましくない/望ましくないリパーゼ副活性、ホスホリパーゼ副活性、セルラーゼ副活性、ペクチナーゼ副活性、アミラーゼ副活性、プロテアーゼ副活性、マンナナーゼ副活性などを含まない。
したがって、本開示の特定の実施形態は、好ましくない酵素副活性の非存在下でβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素を産生するためにバチルス(Bacillus)宿主細胞の遺伝子を改変することに関する。特定の実施形態では、本開示のバチルス(Bacillus)宿主細胞は、好ましくない/望ましくないパラーニトロベンジルエステラーゼ副活性の非存在下でβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素を産生するように遺伝子改変される。したがって、特定の実施形態では、本開示のバチルス(Bacillus)宿主細胞は、パラニトロベンジルエステラーゼ酵素をコードする内在性バチルス(Bacillus)遺伝子を欠失、破壊、又はダウンレギュレートすることによって遺伝子改変される。本明細書に記載されるように、このような遺伝子改変バチルス宿主細胞は、β-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素の生成に特に有用であり、ここで、このようなβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素は、乳製品関連最終製品において使用される場合、非常に望ましくない異臭及び臭いを引き起こす、好ましくないパラ-ニトロベンジルエステラーゼ酵素副活性を特に含まない。
特定の他の実施形態では、パラニトロベンジルエステラーゼ酵素をコードする、欠失、破壊又はダウンレギュレートされた内在性遺伝子を含む、本開示の遺伝子改変バチルス(Bacillus)宿主細胞は、リパーゼ副活性、ホスホリパーゼ副活性、セルラーゼ副活性、ペクチナーゼ副活性、アミラーゼ副活性、プロテアーゼ副活性、マンナナーゼ副活性などから選択される少なくとも1つのさらなる好ましくない/望ましくない酵素副活性をコードする欠失、破壊又はダウンレギュレートされた遺伝子をさらに含む。
したがって、特定の実施形態では、本開示の遺伝子改変バチルス(Bacillus)宿主細胞(すなわち、パラ-ニトロベンジルエステラーゼ酵素をコードする内在性遺伝子を欠失、破壊、又はダウンレギュレートする遺伝子改変を含む)は、本開示のβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素をコードするポリヌクレオチド(例えば、発現コンストラクト)で形質転換される。より特には、本明細書に記載されるように、本開示の遺伝子改変バチルス(Bacillus)宿主細胞において発現/産生される、本開示のβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素は乳製品用途において特に有用である。
より具体的には、以下の実施例の項に記載されるように、そのような遺伝子改変バチルス(Bacillus)宿主細胞において発現/産生されるβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素(これらのβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素はそれらの細胞から単離及び精製される)は、検出可能なパラ-ニトロベンジルエステラーゼ副活性を含まない。より特には、本明細書の実施例に記載されるように、本開示の出願人は、このようなβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素を用いて調合された乳製品の不快な異臭/味の原因となる酵素副活性として、パラ-ニトロベンジルエステラーゼを特定した。したがって、本開示の遺伝子改変バチルス(Bacillus)宿主細胞(すなわち、パラ-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子を欠失、破壊又はダウンレギュレートする遺伝子改変を含む)は、そのような汚染(すなわち、好ましくない/望ましくない)パラニトロベンジルエステラーゼ副活性を含まないβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素を生成するのに特に有用である。
I.定義
本明細書に記載の、好ましくないパラ-ニトロベンジルエステラーゼ(以下、「p-NBE」)副活性の非存在下でβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼを発現/産生する改変バチルス(Bacillus)種の宿主細胞及びその方法を考慮して、以下の用語及び句を定義する。本明細書中に定義されていない用語には、当該技術分野において使用されるそれらの通常の意味が与えられるべきである。
他に定義されていない限り、本明細書で使用する技術用語及び科学用語は全て、本発明の組成物及び方法が属する分野の当業者であれば一般に理解する意味と同一の意味を有する。本組成物及び本方法を実施又は試験する際、本明細書に記載のものに類似した、又は同等の方法及び材料もまた使用することができるが、ここで、説明に役立つ代表的な方法及び材料を記載する。本明細書で引用した刊行物及び特許は全て、参照により本明細書に組み込まれる。
特許請求の範囲が、任意選択の要素を排除するように記載されていることにもさらに留意されたい。したがって、この記述は、請求項の構成要素の列挙に関連して「唯一(solely)」、「ただ~のみ(only)」、「~を除いて(excluding)」、「~を含まない(not including)」などの排他的な用語の使用、又はその「否定的な」限定若しくは条件の使用のための先行文として機能することを意図している。
本開示を読めば当業者には明らかなように、本明細書に記載及び例示する個々の実施形態のそれぞれは、本明細書に記載する本組成物及び方法の範囲又は精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離又は組み合わせることができる別個の構成要素及び特徴を有する。記載した方法はいずれも、記載した事象の順序で、又は論理的に可能な他の任意の順序で実施することができる。
本明細書で使用される場合、用語「トランスガラクトシラーゼ」は、特に、ガラクトースをD-ガラクトース若しくはD-グルコースの水酸基に移動させることができ、それによってガラクトオリゴ糖が生成される酵素を意味している。1つの態様では、トランスガラクトシラーゼは、所与の時間に生成されるガラクトースの量が生成されるグルコースの量より少ないラクトース上の酵素反応によって同定される。
本明細書で使用される場合、用語「トランスガラクトシル化活性」は、水(H2O)以外の分子へのガラクトース部分の移動を意味する。このトランスガラクトシル化活性は、反応中の所与の時間に生成された[グルコース]-[ガラクトース]として測定するか、又は反応中の所与の時間に生成されたガラクトオリゴ糖(GOS)の直接的定量により測定することができる。このような活性測定は、当該技術分野で知られた方法(例えば、HPLC法)によって実施し得る。
本明細書で使用される場合、用語「β-ガラクトシダーゼ活性」は、β-ガラクトシド分子を加水分解する(例えば、ラクトース二糖を単糖グルコース及びガラクトースに加水分解する)酵素の能力を指す。
本明細書で使用される場合、「トランスガラクトシル化活性/β-ガラクトシダーゼ活性」(比)を計算すると、β-ガラクトシダーゼ活性は、反応中の所与の時間に生成された[ガラクトース]として測定される。このような活性比の測定は、当該技術分野で知られた方法(例えば、HPLC法)によって実施し得る。
本明細書で使用される場合、「トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼ」という句は、105%、125%、150%、175%、200%などを超えるなど、100%を超えるトランスガラクトシル化活性の比を有するβ-ガラクトシダーゼを意味する。トランスガラクトシル化活性を有するβ-ガラクトシダーゼの例は、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)、バチルス・サークランス(Bacillus circulans)、ルミノコッカス(Ruminococcus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)、ラクトバチルス・デルブレッキィ(Lactobacillus delbrueckii)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)及びラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)に由来し得るが、これらに限定されない(Oliveira et al.,2011)。
本明細書で使用される場合、用語「[グルコース]」又は「グルコース濃度」は重量%でのグルコース濃度を意味し、用語「[ガラクトース]」又は「ガラクトース濃度」は、重量%でのガラクトース濃度を意味する。
本明細書で使用される場合、「ラクトースがガラクトシル化されている」という句は、例えば、ラクトース分子中のいずれかの遊離水酸基に共役結合した、又は内部トランスガラクトシル化によって生成されたように、ガラクトース分子がラクトース分子に共役結合していることを意味する。
本発明との関連で、「そのポリペプチドは噴霧乾燥されている」という用語は、そのポリペプチドが、溶液若しくは懸濁液中のポリペプチドを水の除去に適切な温度及び適切な期間にわたって噴霧乾燥することによって得られていることを意味する。
本明細書で使用される場合、用語「ミルク」は、本開示との関連で、ウシ、ヒツジ、ヤギ、バッファロー、ラクダなどの哺乳動物から得られる乳汁分泌物として理解されるべきである。
本明細書で使用される場合、用語「ミルクベース基質」は、任意の生乳物質及び/又は加工乳物質又はミルク成分由来の物質を意味する。ミルクベース基質は、当該技術分野で知られた方法によって均質化及び/又は低温殺菌することができる。
本明細書で使用する「均質化」は、可溶性懸濁液又はエマルジョンを得るための集中的混合を意味する。均質化は、乳脂肪がもはやミルクから分離しないほど小さなサイズに破壊できるように実施することができる。これは、例えば、ミルクを小さい開口部に高圧で通過させることにより達成できる。
本明細書で使用される場合、「低温殺菌」は、ミルクベース基質中の微生物などの生菌の存在を減少又は排除することを意味する。低温殺菌は、特定の温度及び圧力を特定の時間維持することによって達成される。特定の温度は、通常、加熱することによって達成される。温度及び持続時間は、有害細菌などの所定の細菌を殺滅若しくは不活性化するため、及び/又はミルク中の酵素を不活性化するために選択することができる。その後に急速冷却工程を続けることができる。
本明細書で使用される場合、「乳製品」は、本開示との関連で、主要成分の1つがミルクベース基質である食品であり得る。好ましくは、主要成分は、ミルクベースである。本発明との関連で、「主要成分の1つ」は、乳製品の全乾燥物質の20%超、好ましくは30%超又は40%超を構成する乾燥物質を有する構成成分を意味し、一方「主要成分」は、乳製品の全乾燥物質の50%超、好ましくは60%超又は70%超を構成する乾燥物質を有する構成成分を意味する。
本明細書で使用される場合、「発酵乳製品」は、本発明との関連で、任意のタイプの発酵が製造工程の一部を形成する任意の乳製品であると理解されるべきである。発酵乳製品の例としては、ヨーグルト、バターミルク、クレーム・フラーシュ、クォーク及びフロマージュ・フレが挙げられるが、これらに限定されない。発酵乳製品のまた別の例は、チーズである。特定の実施形態では、発酵ヨーグルト乳製品は、セットタイプヨーグルト、撹拌ヨーグルト又は飲用ヨーグルトである。他の実施形態では、発酵乳製品は、アシドフィラスミルク、レーベンミルク、アイランミルク、ケフィールミルク、又はサワーミルク(Sauermilch milk)である。このような発酵乳製品は、当該技術分野で知られた任意の方法によって製造できる。
本明細書で使用される場合、「単離ポリヌクレオチド」は、供給源から単離されたポリヌクレオチドを指す。本開示の特定の態様では、ポリヌクレオチドは、アガロース電気泳動による測定で、少なくとも1%純粋であり、好ましくは少なくとも5%純粋であり、より好ましくは少なくとも10%純粋であり、より好ましくは少なくとも20%純粋であり、より好ましくは少なくとも40%純粋であり、より好ましくは少なくとも60%純粋であり、より一層好ましくは少なくとも80%純粋であり、最も好ましくは少なくとも90%純粋である。
本明細書で使用される場合、「実質的に純粋なポリヌクレオチド」は、他の外来の又は好ましくないヌクレオチドを含まず、且つ遺伝子操作されたタンパク質産生系内での使用に適した形態のポリヌクレオチド調製物を指す。したがって、実質的に純粋なポリヌクレオチドは、それが天然に又は組換え的に会合している他のポリヌクレオチド物質を、多くとも10重量%、好ましくは多くとも8重量%、より好ましくは多くとも6重量%、より好ましくは多くとも5重量%、より好ましくは多くとも4重量%、より好ましくは多くとも3重量%、より一層好ましくは多くとも2重量%、最も好ましくは多くとも1重量%、さらに好ましくは多くとも0.5重量%含有する。しかし、実質的に純粋なポリヌクレオチドは、プロモーター及びターミネーターなどの、天然に存在する5’及び3’非翻訳領域を含み得る。実質的に純粋なポリヌクレオチドは、重量で、少なくとも90%純粋であり、好ましくは少なくとも92%純粋であり、より好ましくは少なくとも94%純粋であり、より好ましくは少なくとも95%純粋であり、より好ましくは少なくとも96%純粋であり、より好ましくは少なくとも97%純粋であり、より一層好ましくは少なくとも98%純粋であり、最も好ましくは少なくとも99%純粋であり、さらに好ましくは少なくとも99.5%純粋であることが好ましい。本発明のポリヌクレオチドは実質的に純粋な形態である(すなわち、ポリヌクレオチド調製物は、それが天然に又は組換え的に会合している他のポリヌクレオチド物質を実質的に含まない)ことが好ましい。ポリヌクレオチドは、ゲノム起源、cDNA起源、RNA起源、半合成起源、合成起源、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。
本明細書で使用される場合、「単離ぺプチド」は、供給源から単離されたポリぺプチドを指す。好ましい態様では、ポリぺプチドは、SDS-PAGEによる測定で、少なくとも1%純粋であり、好ましくは少なくとも5%純粋であり、より好ましくは少なくとも10%純粋であり、より好ましくは少なくとも20%純粋であり、より好ましくは少なくとも40%純粋であり、より好ましくは少なくとも60%純粋であり、より一層好ましくは少なくとも80%純粋であり、最も好ましくは少なくとも90%純粋である。
本明細書で使用される場合、「実質的に純粋なポリペプチド」は、それが天然に又は組換え的に会合している他のポリぺプチド物質を、多くとも10重量%、好ましくは多くとも8重量%、より好ましくは多くとも6重量%、より好ましくは多くとも5重量%、より好ましくは多くとも4重量%、より好ましくは多くとも3重量%、より一層好ましくは多くとも2重量%、最も好ましくは多くとも1重量%、さらに好ましくは多くとも0.5重量%含有するポリペプチド調製物を本明細書中では意味する。したがって、実質的に純粋なポリペプチドは、調製物中に存在する全ポリペプチド物質の重量に比して少なくとも92%純粋である、好ましくは少なくとも94%純粋である、より好ましくは少なくとも95%純粋である、より好ましくは少なくとも96%純粋である、より好ましくは少なくとも97%純粋である、より好ましくは少なくとも98%純粋である、より一層好ましくは少なくとも99%純粋である、最も好ましくは99.5%純粋である、さらに好ましくは100%純粋であることが好ましい。本発明のポリペプチドは実質的に純粋な形態である(すなわち、ポリペプチド調製物は、それが天然に又は組換え的に会合している他のポリペプチド物質を実質的に含まない)ことが好ましい。これは、例えば、よく知られた組換え法又は伝統的な精製方法によってポリペプチドを調製することによって達成できる。
本明細書で使用される場合、「実質的に純粋なβ-ガラクトシダーゼポリペプチド」及び「実質的に純粋なラクターゼポリペプチド」は、それが天然に又は組換え的に会合している他のポリぺプチド物質を、多くとも10重量%、好ましくは多くとも8重量%、より好ましくは多くとも6重量%、より好ましくは多くとも5重量%、より好ましくは多くとも4重量%、より好ましくは多くとも3重量%、より一層好ましくは多くとも2重量%、最も好ましくは多くとも1重量%、さらに好ましくは多くとも0.5重量%含有するポリペプチド調製物を指す。したがって、実質的に純粋なポリペプチドは、調製物中に存在する全ポリペプチド物質の重量に比して少なくとも92%純粋である、好ましくは少なくとも94%純粋である、より好ましくは少なくとも95%純粋である、より好ましくは少なくとも96%純粋である、より好ましくは少なくとも97%純粋である、より好ましくは少なくとも98%純粋である、より一層好ましくは少なくとも99%純粋である、最も好ましくは99.5%純粋である、さらに好ましくは100%純粋であることが好ましい。
より特には、本開示に関して、「実質的に純粋なβ-ガラクトシダーゼポリペプチド」及び「実質的に純粋なラクターゼポリペプチド」は、検出可能な「p-ニトロベンジルエステラーゼ活性」を本質的に含まないこのようなポリペプチドを指す。より具体的には、本明細書に記載されるように、検出可能な「p-ニトロベンジルエステラーゼ活性」を完全に含まない、実質的に純粋なβ-ガラクトシダーゼポリペプチド組成物及び/又は実質的に純粋なラクターゼポリペプチド組成物は、このようなβ-ガラクトシダーゼポリペプチド及び/又はラクターゼポリペプチドを、本開示の遺伝子改変バチルス(Bacillus)宿主細胞(すなわち、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子(例えば、配列番号1)の欠失、破壊又はダウンレギュレーションを含むバチルス(Bacillus)宿主細胞)中で発現/産生させることによって得ることができる。特定の他の実施形態では、実質的に純粋な「β-ガラクトシダーゼポリペプチド」又は「実質的に純粋なラクターゼポリペプチド」は、検出可能なp-ニトロベンジルエステラーゼ活性を実質的に含まず、且つセルラーゼ活性、マンナナーゼ活性、ペクチナーゼ活性、アミラーゼ活性、プロテアーゼ活性などからなる群から選択される少なくとも1つのさらなる好ましくない副活性を実質的に含まない。
したがって、本明細書で使用される場合、「セルラーゼを実質的に含まない」という用語は、セルラーゼを、多くとも10重量%、好ましくは多くとも8重量%、より好ましくは多くとも6重量%、より好ましくは多くとも5重量%、より好ましくは多くとも4重量%、多くとも3重量%、より一層好ましくは多くとも2重量%、最も好ましくは多くとも1重量%、さらに好ましくは多くとも0.5重量%含有する調製物を意味する。したがって、本明細書では、「実質的に含まない」という用語は、用語「単離ポリペプチド」及び「単離形態のポリペプチド」と同義であると見なすことができる。
本明細書で使用される場合、「マンナナーゼを実質的に含まない」という用語は、マンナナーゼを、多くとも10重量%、好ましくは多くとも8重量%、より好ましくは多くとも6重量%、より好ましくは多くとも5重量%、より好ましくは多くとも4重量%、多くとも3重量%、より一層好ましくは多くとも2重量%、最も好ましくは多くとも1重量%、さらに好ましくは多くとも0.5重量%含有する調製物を本明細書では意味する。したがって、本明細書では、「実質的に含まない」という用語は、用語「単離ポリペプチド」及び「単離形態のポリペプチド」と同義であると見なすことができる。
本明細書で使用される場合、「ペクチナーゼを実質的に含まない」という用語は、ペクチナーゼを、多くとも10重量%、好ましくは多くとも8重量%、より好ましくは多くとも6重量%、より好ましくは多くとも5重量%、より好ましくは多くとも4重量%、多くとも3重量%、より一層好ましくは多くとも2重量%、最も好ましくは多くとも1重量%、さらに好ましくは多くとも0.5重量%含有する調製物を本明細書では意味する。したがって、本明細書では、「実質的に含まない」という用語は、用語「単離ポリペプチド」及び「単離形態のポリペプチド」と同義であると見なすことができる。
本明細書で使用される場合、「アミラーゼを実質的に含まない」という用語は、アミラーゼを、多くとも10重量%、好ましくは多くとも8重量%、より好ましくは多くとも6重量%、より好ましくは多くとも5重量%、より好ましくは多くとも4重量%、多くとも3重量%、より一層好ましくは多くとも2重量%、最も好ましくは多くとも1重量%、さらに好ましくは多くとも0.5重量%含有する調製物を本明細書では意味する。したがって、本明細書では、「実質的に含まない」という用語は、用語「単離ポリペプチド」及び「単離形態のポリペプチド」と同義であると見なすことができる。
本明細書で使用される場合、用語「安定剤」は、ポリペプチドを安定化させる任意の安定化剤、例えば、グリセロール若しくはプロピレングリコールなどのポリオール、糖若しくは糖アルコール、乳酸、ホウ酸、又はホウ酸誘導体(例えば、芳香族ホウ酸エステル)を意味する。1つの態様では、安定剤はポリオールではないか、又はポリオールは0.1重量%以下の濃度で存在する。
本明細書で定義する場合、「内在性遺伝子」は、生物のゲノム中の天然の位置に存在する遺伝子を指す。
本明細書で定義する場合、「異種の」遺伝子、「非内在性の」遺伝子、又は「外来の」遺伝子は、通常は宿主生物に存在せず、遺伝子導入によって宿主生物に導入される遺伝子(又はORF)を指す。本明細書で使用される場合、「異種の」遺伝子は、非天然生物に挿入された天然遺伝子(若しくはORF)及び/又は天然若しくは非天然生物に挿入されたキメラ遺伝子を含む。
本明細書で使用される場合、用語「外来ポリヌクレオチド」又は「異種ポリヌクレオチド」(及びそのバリエーション)は、(A)宿主細胞に対して天然ではないポリヌクレオチド、(B)宿主細胞に対して天然であるが、宿主細胞から単離されたポリヌクレオチドと天然では会合しない遺伝子エレメント(例えば、異種プロモーター、5’UTR、3’UTRなど)の使用によって改変されたポリヌクレオチド、又は(C)宿主細胞において通常は生じない様式で機能するように操作された天然エレメントの使用と定義される。
本明細書で定義する場合、「異種の」核酸コンストラクト、又は「異種の」核酸配列は、それが発現する細胞から生じたものではない配列部分を有する。
本明細書で使用される場合、「形質転換細胞」は、組換えDNA技術の使用によって形質転換された細菌細胞(例えば、バチルス(Bacillus)細胞)を含む。形質転換は一般に、1つ以上のヌクレオチド配列(例えば、ポリヌクレオチド)の細胞への導入によって生じる。導入されたヌクレオチド配列はまた、異種ヌクレオチド配列(すなわち、細胞に対し内在性でない核酸配列)であり得る。
本明細書で使用される場合、用語「核酸コンストラクト」は、天然に存在する遺伝子から単離されるか、又はそうでなければ天然には存在することがない方法で核酸のセグメントを含むように改変されるか、又は合成された、一本鎖又は二本鎖の核酸分子(例えば、ポリヌクレオチド分子)を指す。核酸コンストラクトという用語は、核酸コンストラクトがコード配列の発現に必要な制御配列を含む場合、「発現カセット」という用語と同義である。
本明細書で使用される場合、用語「制御配列」は、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現のために必要であるか又は有利であるすべての成分を含むように定義される。各制御配列は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対して天然であっても外来であってもよく、又は互いに天然であっても外来であってもよい。このような制御配列としては、リーダー、ポリアデニル化配列、プロペプチド配列、プロモーター、シグナルペプチド配列、及び転写ターミネーターが挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも、制御配列は、プロモーター、並びに転写及び翻訳停止シグナルを含む。制御配列は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列のコード領域との制御配列の連結を容易にする特定の制限部位を導入するためにリンカーを有し得る。
本明細書で定義する場合、「異種制御配列」は、天然では、目的遺伝子の発現を調節(制御)する働きをしない遺伝子発現制御配列(例えば、プロモータ又はエンハンサー)を指す。一般に、異種核酸配列は、細胞、又はそれらの配列が存在するゲノムの一部に対して内在性(天然)ではなく、感染、形質移入、形質転換、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどによって細胞に付加されている。「異種」核酸コンストラクトは、天然宿主細胞内で見出される制御配列/DNAコード配列の組み合わせと同一、又は異なる制御配列/DNAコード(ORF)配列の組み合わせを含有し得る。
本明細書で使用される場合、用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼに結合し、そのポリメラーゼを、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの正しい下流転写開始部位に導くDNA配列と定義される。RNAポリメラーゼは、コード領域の適切なDNA鎖に相補的なメッセンジャーRNAの組み立てを効果的に触媒する。用語「プロモーター」はまた、mRNAへの転写後の翻訳のための5’非コード領域(プロモーターと翻訳開始との間)、エンハンサーのようなシス作用性転写制御エレメント、及び/又は転写因子と相互作用し得る他のヌクレオチド配列を含むと理解される。プロモーターは、野生型、多様体、ハイブリッド、又はコンセンサスプロモーターであり得る。
本明細書で使用される場合、用語「プロモーター領域」は、1つ以上の(いくつかの)プロモーター配列(例えば、デュアルプロモーター、トリプルプロモーターなど)を含むヌクレオチド配列と定義される。
本明細書で使用される場合、用語「作動可能に連結された」は、制御配列(例えば、プロモーター配列)がポリペプチドのコード配列の発現を指示するように、ポリヌクレオチド配列のコード配列に対して適切な位置に配置される構成を意味する。コード配列:本明細書で使用される場合、用語「コード配列」は、そのタンパク質産物のアミノ酸配列を直接特定するヌクレオチド配列を意味する。コード配列の境界は一般に、オープンリーディングフレームによって決定され、これは、通常、ATG開始コドン、又はGTG及びTTGなどの代替開始コドン(例えば、GTG及びTTG)で始まり、TAA、TAG及びTGAなどの終止コドンで終わる。コード配列は、DNA配列、cDNA配列、合成配列、又は組換えヌクレオチド配列であり得る。
本明細書で使用される場合、「多様体(variant)」又は「多様体(variants)」は、ポリペプチド又は核酸を指し得る。用語「多様体」は、用語「変異体」と互換的に使用され得る。多様体には、アミノ酸配列又はヌクレオチド配列の1つ以上の場所での挿入、置換、バリエーション、トランケーション、欠失及び/又は逆位が含まれる。
本明細書で使用される場合、「発現」は、目的ポリペプチド(POI)の産生に関与する任意の工程を含み、その例としては、転写、転写後修飾、翻訳、翻訳後修飾及び分泌が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」及び「発現コンストラクト」は互換的に使用され、目的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み、且つその発現を提供するさらなるヌクレオチドに作動可能に連結されている線状又は環状のDNA分子を指す。
本発明との関連で、「主要成分の1つ」は、乳製品の全乾燥物質の20%超、好ましくは30%超又は40%超を構成する乾燥物質を有する成分を意味し、一方「主要成分」は、乳製品の全乾燥物質の50%超、好ましくは60%超又は70%超を構成する乾燥物質を有する成分を意味する。
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」は、ポリペプチドを発現するために、ポリペプチド産生用の組換え発現ベクターが導入され得る細胞又は細胞株を指す。例えば、特定の実施形態では、本開示の宿主細胞は、本開示のβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素をコードする発現コンストラクトを含む。宿主細胞としては単一宿主細胞の子孫が挙げられ、この子孫は、天然の、偶発的な又は意図的な変異に起因して、元の親細胞と(形態学的に又は全ゲノムDNA補体で)必ずしも完全に同一でなくてもよい。宿主細胞としては、発現ベクターによりインビボで形質移入された又は形質転換された細胞が挙げられる。
本明細書で使用される場合、「改変宿主細胞」、「変更宿主細胞」及び「遺伝子改変宿主細胞」という用語は、互換的に使用され、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼポリペプチドに対して少なくとも60%の配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼポリペプチドをコードする遺伝子を欠失、破壊又はダウンレギュレートする改変を少なくとも含む組換え宿主細胞を指す。例えば、本開示の「遺伝子改変」宿主細胞はさらに、親宿主細胞に由来する「遺伝子改変(宿主)細胞」(ここで、改変(娘)細胞は、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼポリペプチドに対して少なくとも60%の配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼポリペプチドをコードする遺伝子を欠失、破壊又はダウンレギュレートする改変を少なくとも含む)と定義することができる。
本明細書で使用される場合、「非改変細胞」、「非変更細胞」、「非改変宿主細胞」及び「非変更宿主細胞」は、互換的に使用され、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼポリペプチドに対して少なくとも60%の配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼポリペプチドをコードする遺伝子を欠失、破壊又はダウンレギュレートする改変を含まない「非改変」(親)宿主細胞を指す。特定の実施形態では、「非改変」(親)宿主細胞は、特に、本開示の「改変」(娘)宿主細胞と比較する場合、又はそれと相対させる場合、「対照細胞」と呼び得る。
本明細書では、「非改変」(親)細胞(すなわち、対照細胞)におけるPOIの発現及び/又は産生が、「改変」(娘)細胞における同じPOIの発現及び/又は産生と比較される場合、「改変」細胞及び「非改変」細胞は、実質的に同じ条件(すなわち、培地、温度、pHなどの同じ条件)下で増殖/培養/発酵されると理解される。
本明細書で使用される場合、用語「改変」及び「遺伝子改変」は互換的に使用され、以下を含む:
(a)遺伝子(若しくはそのORF)における1つ以上のヌクレオチドの導入、置換、若しくは除去、又は遺伝子若しくはそのORFの転写若しくは翻訳に必要な調節/制御エレメントにおける1つ以上のヌクレオチドの導入、置換、若しくは除去、(b)遺伝子破壊、(c)遺伝子変換、(d)遺伝子欠失、(e)遺伝子のダウンレギュレーション、(f)特異的変異誘発、及び/又は(g)本明細書に開示される任意の1つ以上の遺伝子のランダム変異誘発。
本明細書で使用される場合、「遺伝子の破壊」、「遺伝子破壊」、「遺伝子の不活性化」及び「遺伝子不活性化」は、互換的に使用され、宿主細胞が機能的遺伝子産物(例えば、タンパク質)を産生することを実質的に妨げる任意の遺伝子改変を広く指す。遺伝子破壊の例示的な方法には、ポリペプチドコード配列、プロモーター、エンハンサー、又は別の調節エレメントを含む遺伝子の任意の部分の完全又は部分的欠失、或いはそれらの変異誘発(ここで、変異誘発は、標的遺伝子を破壊/不活性化し、機能的遺伝子産物(すなわち、タンパク質)の産生を実質的に減少又は阻害する置換、挿入、欠失、逆位、並びにそれらの任意の組み合わせ及びバリエーションを包含する)が含まれる。
本明細書で使用される場合、遺伝子発現の「ダウンレギュレーション」という用語は、遺伝子のより低い(ダウンレギュレートされた)発現をもたらす任意の方法を含む。例えば、遺伝子のダウンレギュレーションは、RNA誘導遺伝子サイレンシング、プロモーターなどの制御エレメントの遺伝子改変、リボソーム結合部位(RBS)/シャイン・ダルガノ配列、非翻訳領域(UTR)、コドン変化などによって達成することができる。したがって、特定の実施形態では、好ましくないp-ニトロベンジルエステラーゼ(p-NBE)活性をコードする遺伝子を含む本開示のバチルス(Bacillus)(宿主)細胞は、p-NBE遺伝子の発現をダウンレギュレートするように遺伝子改変される。
用語「組換え」は、細胞、核酸、タンパク質又はベクターに関連して使用される場合、細胞、核酸、タンパク質又はベクターが、異種の核酸若しくはタンパク質の導入又は天然の核酸若しくはタンパク質の改変により改変されていること、或いは細胞がそのように改変された細胞に由来することを示す。そのため、例えば、組換え細胞は、天然(非組換え)形態の細胞内には見出されない遺伝子を発現する、又は別の状況では異常に発現される、低く発現される、若しくは全く発現されない天然遺伝子を発現させる。
用語「培養する」は、液体又は固体の培養培地中で、増殖に適した条件下にて微生物細胞の集団を増殖させることを指す。
用語「培養培地」は、このプロセスで使用する培地を指す。
核酸配列を細胞に挿入するという文脈での用語「導入される」は、「形質移入」、「形質転換」又は「形質導入」を含み、真核細胞又は原核細胞への核酸配列の組み込みを指し、これらの細胞では、核酸配列は、細胞のゲノム(例えば、染色体、プラスミド、色素体又はミトコンドリアDNA)中に組み込まれ得る、自律レプリコンに変換され得る、又は一時的に発現され得る。
本明細書で使用される場合、用語「形質転換された」及び「安定に形質転換された」は、そのゲノムに組み込まれた導入(外因性)核酸配列を有する細胞、又は複数の世代を通して維持されるエピソームプラスミドを指す。
したがって、用語「遺伝子」、あるタンパク質のコード配列の全て又は一部を含む、ある特定のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを指し、例えば、遺伝子が発現する条件を決定する、プロモーター配列などの調節(非転写)DNA配列を含み得る。遺伝子の転写領域は、イントロン、5’-非翻訳領域(UTR)及び3’-UTRを含む非翻訳領域(UTR)、並びにコード配列を含み得る。
本明細書で使用される場合、用語「コード配列」は、その(コードする)タンパク質産物のアミノ酸配列を直接特定するヌクレオチド配列を指す。コード配列の境界は、一般にオープンリーディングフレーム(以下「ORF」)によって決定され、それは、通常、ATG開始コドンで開始する。コード配列には、通常、DNA、cDNA、及び組換えヌクレオチド配列が含まれる。
本明細書で定義する場合、「オープンリーディングフレーム」(以下「ORF」)という用語は、(i)開始コドン、(ii)アミノ酸を示す一連の2以上のコドン、及び(iii)終止コドンからなる連続するリーディングフレームを含む核酸又は核酸配列(天然由来であるか、天然由来でないか、また合成であるかにかかわらず)を意味し、ORFは、5’から3’の方向に読まれる(又は、翻訳される)。
本明細書で使用される場合、「ターゲティングベクター」は、形質転換する宿主細胞の染色体の領域に相同のポリヌクレオチド配列を含み、その領域で相同組み換えを行わせることができるベクターである。例えば、ターゲティングベクターは、相同組み換えによって宿主細胞の染色体に変異を導入するのに使用される。いくつかの実施形態では、ターゲティングベクターは、他の非相同的配列を含み、これは、例えば末端に付加される(すなわち、スタッファー配列又はフランキング配列)。末端は、例えば、ベクターへの挿入など、ターゲティングベクターが閉環するように閉じることができる。適切なベクターの選択及び/又は構成は、十分に当業者の知識の範囲内である。
本明細書で使用される場合、「相同遺伝子」は、異なるものの、通常、関連する種の1対の遺伝子を指し、それらは、互いに対応し、且つ同一であるか、又は非常に類似している。この用語は、種形成(すなわち、新しい種の発生)によって分離された遺伝子(例えば、オルソログ遺伝子)、及び遺伝子の重複によって分離された遺伝子(例えば、パラログ遺伝子)を包含する。
本明細書で使用される場合、「オルソログ」及び「オルソログ遺伝子」は、種形成によって共通の先祖遺伝子(すなわち、相同遺伝子)から生じた、異なる種の遺伝子を指す。通常、オルソログは、進化の過程で同じ機能を保持している。オルソログの同定は、新しく配列が決定されたゲノムにおける遺伝子機能の信頼性の高い予測に使用される。
本明細書で使用される場合、「パラログ」及び「パラログ遺伝子」は、ゲノム内での複製に関係する遺伝子を指す。オルソログは進化の過程を通して同じ機能を保持し、一方、パラログはいくつかの機能は多くは元の機能に関連するものの新しい機能を生じる。パラログ遺伝子の例としては、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ及びトロンビン(これらはいずれも、セリンプロテイナーゼであり、同じ種において同時に発生する)をコードする遺伝子が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で使用される場合、「相同性」は、配列の類似性又は同一性を指し、好ましくは同一性である。この相同性は、当該技術分野で知られた標準的な手法を用いて決定し得る(例えば、Smith and Waterman,1981;Needleman and Wunsch,1970;Pearson and Lipman,1988;Wisconsin Genetics Software Package(Genetics Computer Group,Madison,WI)のGAP、BESTFIT、FASTA及びTFASTAなどのプログラム;並びにDevereux et al.,1984を参照されたい)。
本明細書で使用される場合、「アナログ配列」は、遺伝子の機能(例えば、パラ-ニトロベンジルエステラーゼ)が、本開示のバチルス(Bacillus)細胞に由来するパラ-ニトロベンジルエステラーゼ遺伝子と実質的に同じであるものである。さらに、アナログ遺伝子は、配列番号1のパラ-ニトロベンジルエステラーゼ配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を含む。アナログ配列は、既知のシーケンスアライメント法で決定される。一般に使用されるアライメント法はBLASTであるが、上記及び下記に示すように、他の方法も配列のアライニングに使用される。
本明細書で使用される場合、「ハイブリダイゼーション」という用語は、当該技術分野で知られているように、核酸鎖がその相補鎖と塩基対を形成するによって結合するプロセスを指す。核酸配列は、2つの配列が中~高ストリンジェンシーなハイブリダイゼーション条件及び洗浄条件下で互いに特異的にハイブリダイズする場合、対照核酸配列に「選択的にハイブリダイズ可能」であると考えられる。ハイブリダイゼーション条件は核酸結合複合体又はプローブの融解温度(Tm)に基づいている。例えば、「最大ストリンジェンシー」は、通常、Tm
-5℃(プローブのTmを5℃下回る)程度で、「高ストリンジェンシー」はTmを約5~10℃下回って、「中間ストリンジェンシー」はプローブのTmを約10~20℃下回って;そして「低ストリンジェンシー」はTmを約20~25℃下回って、起こる。機能上、最大ストリンジェンシー条件はハイブリダイゼーションプローブと厳密な同一性、又はほぼ厳密な同一性を有する配列を同定するために用いることができ、一方、中間又は低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションはポリヌクレオチド配列ホモログを同定又は検出するために用いることができる。中~高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は当該技術分野でよく知られている。高ストリンジェンシー条件の例としては、50%ホルムアミド、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS及び100pg/ml変性キャリアDNA中、約42℃でハイブリダイゼーションし、続いて2×SSC及び0.5%SDS中、室温(RT)で2回洗浄し、さらに、0.1×SSC及び0.5%SDS中、42℃で2回洗浄することが挙げられる。中ストリンジェント条件の例としては、20%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸3ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%硫酸デキストラン及び20mg/ml変性剪断サケ***DNAを含む溶液中、37℃で終夜インキュベートし、続いて1×SSC中、約37~50℃でフィルタを洗浄することが挙げられる。プローブ長などの因子を適合させるために必要な温度、イオン強度などの調節の仕方は、当業者であれば知っている。
本明細書で使用される場合、「フランキング配列」は、対象配列の上流又は下流にある配列を指す(例えば、遺伝子A-B-Cでは、遺伝子BがA及びC遺伝子配列にフランキングされている)。特定の実施形態では、入来配列は両側で相同ボックスにフランキングされている。別の実施形態では、入来配列及び相同ボックスは両側にスタッファー配列がフランキングしている単位を含む。いくつかの実施形態では、フランキング配列は一方の側(3’又は5’)にのみ存在するが、好ましい実施形態では、フランキングされている配列の両側に存在する。各相同ボックスの配列は、バチルス(Bacillus)染色体の配列に相同である。これらの配列は、バチルス(Bacillus)染色体に新しいコンストラクトが組み込まれ、バチルス(Bacillus)染色体の一部が入来配列により置換されることを目的とする。他の実施形態では、選択マーカーの5’及び3’末端に、不活化染色体断片の一部を含むポリヌクレオチド配列がフランキングしている。いくつかの実施形態では、フランキング配列は一方の側(3’又は5’)にのみ存在するが、他の実施形態では、フランキングされている配列の両側に存在する。
本明細書で使用される場合、用語「スタッファー配列」は、相同ボックス(代表的には、ベクター配列)にフランキングしている任意のエクストラDNAを指す。しかし、この用語は、任意の非相同DNA配列を包含する。いかなる理論によっても限定されるものではないが、スタッファー配列は細胞がDNA取り込みを開始するために重要ではない標的を提供する。
本明細書で使用される場合、「プラスミド」、「ベクター」及び「カセット」は、多くは、細胞の中央代謝には通常関与しない遺伝子を持ち、普通は環状の二本鎖DNA分子の形態の、染色体外エレメントを指す。このようなエレメントは、任意のソースに由来する、線状又は環状で、一本鎖又は二本鎖のDNA又はRNAからなる自己複製配列、ゲノム組み込み配列、ファージ又はヌクレオチド配列であり得、それらにおいては、選択された遺伝子産物のためのプロモーター断片及びDNA配列を3’非翻訳配列と共に細胞に導入することができる固有の構成に、多くのヌクレオチド配列が結合又は再結合している。
本明細書で使用される場合、「選択可能マーカー」及び「選択マーカー」という用語は、宿主細胞で発現することができる核酸(例えば、遺伝子)を指し、そのベクターを含む宿主の選択を容易にする。このような選択可能マーカーの例としては抗微生物剤が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、「選択可能マーカー」という用語は、宿主細胞が目的の入来DNAを取り込んだか、又は何らかの他の反応が起こったことを示す遺伝子を指す。通常、選択可能マーカーは、形質転換中に外来性の配列を受け取っていない細胞から外来性DNAを含む細胞を区別することを可能にする抗微生物剤耐性又は代謝有利性を宿主細胞に付与する遺伝子である。
本明細書で使用される場合、「選択可能マーカーをコードするヌクレオチド配列」という用語は、宿主細胞中で発現可能であり、選択可能マーカーの発現が発現された遺伝子を含む細胞に、対応する選択剤の存在下又は必須栄養素の欠如下で増殖する能力を付与する、ヌクレオチド配列をいう。
本明細書で使用される場合、「バチルス(Bacillus)属」には、当業者に知られる「バチルス(Bacillus)」属内の全ての菌株が含まれ、例えば、以下に限定はされないが、B.サブチリス(B.subtilis)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.レンツス(B.lentus)、B.ブレビス(B.brevis)、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B.アルカロフィルス(B.alkalophilus)、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B.クラウシイ(B.clausii)、B.ハロドゥランス(B.halodurans)B.メガテリウム(B.megaterium)、B.コアグランス(B.coagulans)、B.サークランス(B.circulans)、B.ラウツス(B.lautus)及びB.チューリンギエンシス(B.thuringiensis)が挙げられる。バチルス(Bacillus)属が分類学的再編成を受け続けていることは認識されている。したがって、この属は、再分類された種、例えば、限定はしないが、現在、「ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)」と称されている「B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)」などの生物を含むものとする。
本発明の実行は、別途指示しない限り、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学及び生化学の従来の技術を用いることができ、これらは当分野の技術範囲内である。このような技術は文献、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook et al.,1989);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Current Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al.,eds.,1994);PGR:The Polymerase Chain Reaction(Mullis et al.,eds.,1994);及びGene Transfer and Expression:A Laboratory Manual(Kriegler,1990)において十分に説明されている。
II.β-ガラクトシダーゼ/ラクターゼポリペプチド
酵素産物(例えば、β-ガラクトシダーゼ産物)においては、少量の好ましくない酵素活性が主に産生宿主細胞から生じ、酵素副活性と呼ばれる。本明細書に記載されるように、本開示は、乳製品調合物/用途で使用するβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素の生成に使用する宿主細胞における好ましくない酵素副活性を低減することを対象とする。したがって、好ましくは、乳製品用途での酵素活性をこの特定の用途に適したpH及び温度で測定すべきである。例えば、ミルクでは、pHは6.4から6.8まで変化し、ヨーグルトpHは約4であり、乳児用調製粉乳pHは5.9~7.3の範囲であり、モツァレラはpH5.2~5.5を有し、マヨネーズはpH4を有する。最適には、望ましくない活性のレベルを、意図した用途それぞれでの適用試験によって決定することができる。
したがって、本開示の特定の実施形態は、β-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素を発現/産生する遺伝子改変バチルス(Bacillus)宿主細胞、並びに1つ以上の乳製品関連最終製品においてガラクトオリゴ糖(GOS)組成物を生成するためのそのような酵素の使用を対象とする。より具体的には、特定の実施形態は、改変バチルス(Bacillus)宿主細胞においてこのようなβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素を発現/産生させることを対象とし、ここで、改変バチルス(Bacillus)宿主細胞から産生及び精製されるそのような酵素は、好ましくない/望ましくない酵素副活性、例えば、以下に限定されないが、好ましくない/望ましくないリパーゼ副活性、ホスホリパーゼ副活性、セルラーゼ副活性、ペクチナーゼ副活性、アミラーゼ副活性、プロテアーゼ副活性、マンナナーゼ副活性などを含まない。
特定の実施形態では、このようなβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素は遺伝子改変されたバチルス(Bacillus)宿主細胞において産生され、そしてそこから精製され、このような精製された酵素は好ましくない/望ましくないp-ニトロベンジルエステラーゼ活性を含まない。したがって、特定の実施形態では、検出可能な「p-ニトロベンジルエステラーゼ活性」を完全に含まない、実質的に純粋なβ-ガラクトシダーゼポリペプチド組成物及び/又は実質的に純粋なラクターゼポリペプチド組成物は、このようなβ-ガラクトシダーゼポリペプチド及び/又はラクターゼポリペプチドを、本開示の遺伝子改変バチルス(Bacillus)宿主細胞中で発現/産生させることによって得ることができ、ここで、改変バチルス(Bacillus)宿主細胞は、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子(例えば、配列番号1)の欠失、破壊又はダウンレギュレーションを含む。例えば、以下の実施例の項で示されるように、本開示の改変バチルス(Bacillus)(娘)細胞(すなわち、欠失、破壊又はダウンレギュレートされた、p-ニトロベンジルエステラーゼ(例えば、配列番号2)をコードする遺伝子(例えば、配列番号1)を含む)は、それから産生されるβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ産物から、好ましくない/望ましくないp-ニトロベンジルエステラーゼ副活性を完全に消失させた。
さらに、以下の実施例の項で記載されるように、好ましくない/望ましくないp-ニトロベンジルエステラーゼ副活性をコードする遺伝子の排除(例えば、欠失)(すなわち、本開示の改変バチルス(Bacillus)宿主細胞における)は、このようなβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素を含む/で調合される乳製品において検出される悪臭を完全に消失させた。
したがって、本開示の特定の実施形態は、欠失、破壊又はダウンレギュレートされた、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼに対して60%の配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子を含む改変バチルス(Bacillus)宿主細胞におけるβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼの発現/産生を対象とする。例えば、特定の実施形態では、本開示の改変されたバチルス宿主細胞(すなわち、欠失、破壊又はダウンレギュレートされた、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼに対して60%の配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子を含む)は、β-ガラクトシダーゼ酵素又はラクターゼ酵素をコードするポリヌクレオチドで形質転換され、この宿主細胞は、コードされたβ-ガラクトシダーゼ又はラクターゼを発現/産生するような条件下で増殖/培養される。したがって、本明細書に記載の改変バチルス宿主細胞は、任意のβ-ガラクトシダーゼ又はラクターゼ酵素の発現/産生に好適であり、ここで、精製されたβ-ガラクトシダーゼ又はラクターゼ酵素組成物及びその生成物は、検出可能なp-ニトロベンジルエステラーゼ副活性を含まない。
例えば、国際公開第2016/071504号パンフレット、国際公開第2016/071500号パンフレット、国際公開第2015/086746号パンフレット、及び国際公開第2011/120993号パンフレット(それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)は、トランスガラクトシル化活性を有する様々なβ-ガラクトシダーゼ又はラクターゼ酵素(及びトランスガラクトシル化活性を有するその多様体)を開示する。したがって、本明細書に記載されるように、国際公開第2016/071504号パンフレット、国際公開第2016/071500号パンフレット、国際公開第2015/086746号パンフレット、及び国際公開第2011/120993に開示される酵素(すなわち、トランスガラクトシル化活性を有する)は、本開示の改変バチルス(Bacillus)宿主細胞における発現/産生に特に好適である。別の言い方をすれば、本開示の改変バチルス(Bacillus)宿主細胞におけるβ-ガラクトシダーゼ又はラクターゼ酵素(トランスガラクトシル化活性を有する)の発現/産生は、β-ガラクトシダーゼ又はラクターゼ酵素(トランスガラクトシル化活性を有する)が改変バチルス(Bacillus)宿主細胞において発現/産生され得、そして検出可能なp-ニトロベンジルエステラーゼ活性を含まない限り、特定のβ-ガラクトシダーゼ又はラクターゼアミノ酸配列(又は、それをコードする特定の遺伝子/ポリヌクレオチド配列)に限定されることを意図しない。
特定の実施形態では、本開示の改変バチルス(Bacillus)宿主細胞において発現されるβ-ガラクトシダーゼ又はラクターゼポリペプチドは、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号26から選択されるアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、本開示の改変バチルス(Bacillus)宿主細胞において発現されるβ-ガラクトシダーゼ又はラクターゼポリペプチドは、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号17、配列番号18及び配列番号2のいずれか1つに対して約80%の配列同一性を含むアミノ酸配列を含む。特定の他の実施形態では、本開示の改変バチルス(Bacillus)宿主細胞において発現されるβ-ガラクトシダーゼ又はラクターゼポリペプチドは、配列番号4の部分的又はトランケートされたアミノ酸配列を含む。
したがって、特定の実施形態では、本開示は、3重量/重量%の初期ラクトース濃度以上の濃度で、少なくとも0.5、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも2.5、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11若しくは少なくとも12のトランスガラクトシル化活性:β-ガラクトシダーゼ活性の比を有するポリペプチドを対象とする。
特定の他の実施形態では、トランスガラクトシル化活性を有するポリペプチドは、以下からなる群から選択される:
(a)配列番号6と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、多くとも980個のアミノ酸残基からなるポリペプチド、(b)配列番号8と少なくとも97%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、多くとも975個のアミノ酸残基からなるポリペプチド、(c)配列番号10と少なくとも96.5%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、多くとも1.300個のアミノ酸残基からなるポリペプチド、(d)配列番号4、6、8、10、12、14、16若しくは26のポリペプチドをコードする配列番号3、5、7、9、11、13、15若しくは25に含まれる核酸配列、又はその相補鎖と少なくとも低いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、(e)配列番号4、6、8、10、12、14、16若しくは26のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に対して少なくとも70%の同一性を有するヌクレオチド配列、又は成熟ポリペプチドをコードする配列番号3、5、7、9、11、13、15又は25に含まれるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド、並びに(f)配列番号4、6、8、10、12、14、16又は26の1つ以上のアミノ酸残基の欠失、挿入及び/又は保存的置換を含むポリペプチド。
特定の実施形態では、本開示のポリペプチドは、配列番号4、6、8、10、12、14、16、17、18又は26の成熟アミノ酸配列に対して少なくとも68%、70%、72%、74%、76%、78%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
別の実施形態では、本開示は、配列番号6の成熟アミノ酸配列に対して90%の配列同一性を有するポリペプチドを対象とする。
別の実施形態では、本開示は、配列番号8の成熟アミノ酸配列に対して90%の配列同一性を有するポリペプチドを対象とする。
別の実施形態では、本開示は、配列番号10の成熟アミノ酸配列に対して96.5%の配列同一性を有するポリペプチドを対象とする。
別の実施形態では、本開示は、配列番号12の成熟アミノ酸配列に対して96.5%の配列同一性を有するポリペプチドを対象とする。
別の実施形態では、本開示は、配列番号14の成熟アミノ酸配列に対して96.5%の配列同一性を有するポリペプチドを対象とする。
別の実施形態では、本開示は、配列番号16のアミノ酸配列に対して90%の配列同一性を有するポリペプチドを対象とする。
別の実施形態では、本開示は、配列番号17のアミノ酸配列に対して90%の配列同一性を有するポリペプチドを対象とする。
別の実施形態では、本開示は、配列番号18のアミノ酸配列に対して90%の配列同一性を有するポリペプチドを対象とする。
別の実施形態では、本開示は、配列番号26のアミノ酸配列に対して90%の配列同一性を有するポリペプチドを対象とする。
別の実施形態では、本開示は、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)由来のトランスガラクトシル化ポリペプチドを対象とする。別の実施形態では、本開示は、ラクトバチルス・デルブレッキィ(Lactobacillus delbrueckii)由来のトランスガラクトシル化ポリペプチドを対象とする。
したがって、本明細書に開示のポリペプチドは、β(1->4)コンフォメーションを有する炭水化物結合に対して活性を有する。この活性は効果的に、これらの酵素をβ-ガラクトシダーゼのIUMBMB EC3.2.1.23クラスに分類する。この活性は、例えば、p-ニトロフェノール-B-D-ガラクトピラノシド(PNPG)、オルト-ニトロフェノール-p-D-ガラクトピラノシド(ONPG)、又は発色性アグリコンを有するβ-D-ガラクトピラノシド(XGal)などの合成基質を利用することによって決定することができる。
特定の酵素がβ-ガラクトシダーゼのEC3.2.1.23クラスに属するかどうかを決定する代替法としては、酵素をラクトースなどの基質とともにインキュベートし、酵素決定法、HPLC、TLC又は当業者には知られた他の方法によってグルコースの遊離を測定することである。
したがって、特定の実施形態では、本明細書に開示のポリペプチドは、15分、30分又は180分の反応後の37℃及び5重量/重量%のラクトースでのミルクベースのアッセイにおいて100ppmの濃度で測定した場合の、トランスガラクトシル化活性:ガラクトシダーゼ活性の比が、少なくとも1、少なくとも2.5、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11又は少なくとも12である。
他の実施形態では、本開示のポリペプチドは、180分等の15分、30分又は180分の反応後の37℃及び5重量/重量%のラクトースでのミルクベースのアッセイにおいて100ppmの濃度で測定した場合に、初期のラクトースの20%超、30%超、40%超、最大で50%がトランスガラクトシル化されるようなトランスガラクトシル化活性を有する。
さらなる態様では、ポリペプチドは、180分等の15分、30分又は180分の反応後の37℃及び5重量/重量%のラクトースでのミルクベースのアッセイにおいて100ppmの濃度で測定した場合に、ラクトースの80%未満、70%未満、60%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満が加水分解されているようなβ-ガラクトシダーゼ活性を有する。別の態様では、β-ガラクトシダーゼ活性及び/又はトランスガラクトシル化活性は、国際公開第2003/186286号パンフレットの方法4に特定されるように、2.13LAUに対応する100ppmの濃度で測定される。
特定の態様では、本明細書で使用されるポリペプチドは、4~9、例えば5~8、例えば5.5~7.5、例えば6.5~7.5などのpH範囲にわたって有用なトランスガラクトシル化活性を有する。
他の実施形態では、相同配列は、対象配列に対して少なくとも66%、70%、75%、78%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%又は少なくとも99%も同一性を有し得るアミノ酸配列を含む。通常、相同体は、対象アミノ酸配列と同一の活性部位などを含むであろう。相同性は類似性(すなわち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)の観点から考慮することもできるが、本開示との関連では、配列同一性の観点から相同性を表現することが好ましい。
したがって、本開示はまた、本明細書に定義したポリペプチドのいずれかのアミノ酸配列、特に、配列番号4、6、8、10、12、14、16、17、18又は26のアミノ酸配列の多様体、相同体及び誘導体の使用を包含する。
好ましい実施形態では、本開示のトランスガラクトシル化ポリペプチドは、本開示の改変宿主細胞において発現/産生され、それから実質的に単離され、精製される。別の好ましい実施形態では、本開示の改変宿主細胞において発現/産生され、それから精製されるそのようなトランスガラクトシル化ポリペプチドは、検出可能なp-ニトロベンジルエステラーゼ副活性を含まない(すなわち、精製/単離されたトランスガラクトシル化ポリペプチドは好ましくない/望ましくないp-ニトロベンジルエステラーゼ活性を含まない)。
本開示の改変宿主細胞における特定の野生型又は多様体トランスガラクトシル化ポリペプチド(例えば、β-ガラクトシダーゼ)の発現を評価するために、発現したタンパク質、対応するmRNA、又はβ-ガラクトシダーゼ活性を測定するアッセイが容易に実施される。例えば、好適なアッセイとしては、適切に標識されたハイブリダイジングプローブを使用する、ノーザンブロッティング及びサザンブロッティング、RT-PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)、並びにインサイチューでのハイブリダイゼーションが挙げられる。好適なアッセイとして、試料中の活性を測定することも挙げられる。ポリペプチド活性の好適なアッセイとしては、ONPGベースのアッセイ、又は反応混合物中のグルコース濃度の決定が挙げられるが、これらに限定されない。
したがって、本開示の改変宿主細胞において発現/産生させる本明細書に記載のポリペプチドは、トランスガラクトシル化活性を含む。特定の実施形態では、トランスガラクトシル化活性/β-ガラクトシダーゼ活性の比は、3重量/重量%の初期ラクトース濃度を超える濃度などの30分間の反応後には、少なくとも0.5、例えば少なくとも1、例えば少なくとも1.5又は例えば少なくとも2である。
したがって、本開示のβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼポリペプチド(すなわち、トランスガラクトシル化活性を含む)及びその多様体は、微生物源、特に糸状菌、酵母、又は細菌に由来し得る。したがって、β-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼポリペプチド(トランスガラクトシル化活性を含む)は、アガリクス(Agaricus)(例えば、A.ビスポラス(A.bisporus))、アスコバギノスポラ(Ascovaginospora)、アスペルギルス(Aspergillus)(例えば、A.ニガー(A.niger)、A.アワモン(A.awamon)、A.フォエティダス(A.foetidus)、A.ジャポニカス(A.japonicus)、A.オリザエ(A.oryzae))、カンジダ属(Candida)、ケトミウム(Chaetomium)、ケトトマスティア(Chaetotomastia)、ディクチオステリウム(Dictyostelium)(例えば、D.ディスコイデウム(D.discoideum));クルベロミセス(Kluveromyces)(例えば、K.フラギリス(K.fragilis)、K.ラクティス(K.lactis))ムコール(Mucor)(例えば、M.ジャバニクス(M.javanicus)、M.ムセド(M.mucedo)、M.スブチリシムス(M.subtilissimus)ニューロスポラ(Neurospora)(例えば、N.クラッサ(N.crassa))、リゾムコール(Rhizomucor)、リゾプス(Rhizopus)(例えば、R.アルヒザス(R.arrhizus)、R.ジャポニクス(R.japonicus)、R.ストロニファー(R.stolonifer))、スクレロティニ(Sclerotini)(S.リベルティアナ(S.libertiana))、トルラ(Torula)、トルロプシス(Torulopsis)、トリコフィトン(Trichophyton)(例えば、T.ルブラム(T.rubrum))フェトゼリニア(Whetzelinia)(例えば、W.スクレロティロウム(W.sclerotiorum))、バチルス(Bacillus)(例えば、B.コアグランス(B.coagulans)、B.サークランス(B.circulans)、B.メガテリウム(B.megaterium)、B.ノバリス(B.novalis)、B.サブチリス(B.subtilis)、B.プミルス(B.pumilus)、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B.チューリンギエンシス(B.thuringiensis))ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)(例えば、B.ロングム(B.Iongum)、B.ビフィダム(B.bifidum)、B.アニマーリス(B.animalis))、クリセオバクテヌム(Chryseobactenum)、サイトロバクター(Citrobacter)(例えば、C.フレウンディイ(C.freundii))クロストリジウム(Clostridium)(例えば、C.パーフリンゲンス(C.perfringens))ディプロディア(Diplodia)(例えば、D.ゴシピナ(D.gossypina))、エンテロバクター(Enterobacter)(例えば、E.アエロゲネス(E.aerogenes)、E.クロアカエ(E.cloacae))、エドワージエラ(Edwardsiella)(例えば、E.タルダ(E.tarda))、エルウィニア(Erwinia)(例えば、E.ヘルビコラ(E.herbicola))、エシェリキア(Escherichia)(例えば、E,コリ(E.coli))、クレブシエラ(Klebsiella)(例えば、K.ニューモニアエ(K.pneumoniae))、ミノコッカム(Minococcum)、ミロセシウム(Myrothesium)、プロテウス(Proteus)(例えば、P.ブルガリス(P.vulgaris))、プロビデンシア(Providencia)(例えば、P.スチュアルティイ(P.stuartii))ピクノポラス(Pycnoporus)(例えば、P.シンナバンヌス(P.cinnabannus)、P.サングイネウス(P.sanguineus))ルミノコッカス(Ruminococcus)(例えば、R.トルケス(R.torques))、サルモネラ(Salmonella)(例えば、S.ティフィムリウム(S.typhimurium))セラチア(Serratia)(例えば、S.リケファシエンス(S.liquefasciens)、S.マルセッセンス(S.marcescens))シゲラ(Shigella)(例えば、S.フレクスネリ(S.flexneri))、ストレプトミセス(Streptomyces)(例えば、S.アンチバイオティカス(S.antibioticus)、S.カスタネオグロビスポルス(S.castaneoglobisporus)、S.ヴィオルセオルバ(S.violeceoruber))トラメテス(Trametes)、トリコデルマ(Trichoderma)(例えば、T.リーゼイ(T.reesei)、T.ビリデ(T.viride))、エルシニア(Yersinia)(例えば、Y.エンテリコリティカ(Y.enterocolitica))などの菌株に由来し得る。
β-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼポリペプチド及びその多様体は、それらの核酸配列及び/又は一次アミノ酸配列によって、三次元構造モデリングによって、且つ/又は比活性によって特徴付けることができる。本明細書で定義するポリペプチド又はポリペプチド多様体の追加の特徴には、安定性、pH範囲、酸化安定性及び熱安定性が含まれる。発現及び酵素活性のレベルは、当業者に知られた標準的アッセイを使用して評価することができる。
したがって、特定の実施形態では、宿主細胞へのDNAコンストラクト又はベクターの導入として、形質転換、エレクトロポレーション、核マイクロインジェクション、形質導入、形質移入(例えば、リポフェクション媒介及びDEAE-デキストリン媒介形質移入)、リン酸カルシウムDNA沈殿物とのインキュベーション、DNA被覆マイクロプロジェクティルによる高速衝突、並びにプロトプラスト融合などの技術が挙げられる。一般的な形質転換技術は当該技術分野でよく知られている(例えば、Ausubel et al.,1987、Sambrook et al.,2001、及びCampbell et al.,1989を参照されたい)。同様に、形質転換体の選択には、当該技術分野において知られた方法を使用することができる。
特定の他の実施形態では、当該技術当分野で知られた方法に従ってトランスガラクトシル化ポリペプチド組成物を調製することができ、この組成物は液体組成物の形態であっても乾燥組成物の形態であってもよい。例えば、ポリペプチド組成物は顆粒又は微小顆粒の形態であってもよく、組成物中のポリペプチドは当該技術分野でよく知られた方法に従って安定化することができる。
III.P-ニトロベンジルエステラーゼ活性が欠損した遺伝子改変バチルス(Bacillus)細胞
上述したように、本開示の特定の実施形態は、β-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素を発現/産生する遺伝子改変宿主細胞、並びに1つ以上の乳製品関連最終製品においてガラクトオリゴ糖(GOS)組成物を生成するためのそのような酵素又はその細胞の使用を対象とする。より具体的には、特定の実施形態は、このようなβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素を改変バチルス(Bacillus)種宿主細胞において発現/産生させることを対象とし、ここで、このような改変バチルス(Bacillus)宿主細胞で産生及び/又は精製された酵素は好ましくない/望ましくないp-ニトロベンジルエステラーゼ活性を含まない。例えば、以下の実施例の項に示すように、本開示の出願人らは、β-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素を用いて調合された乳製品における不快な異臭及び味がp-ニトロベンジルエステラーゼ酵素の好ましくない/望ましくない酵素副作用によって引き起こされることを実験により確認した。
より詳細には、配列番号1に示す核酸配列は配列番号2に示すp-ニトロベンジルエステラーゼ酵素をコードし、このコードされたp-ニトロベンジルエステラーゼ酵素はポリ(エチレンテレフタレート;PET)を加水分解し得る酵素として、B.サブチリス(B.subtilis)において最初に同定され、これはリサイクルされた材料中のPETポリマーの分解/加水分解に特定的な有用性を有し得る(例えば、Ribitsch et al.,2011を参照されたい)。さらに、実施例2に示すように、本開示のβ-ガラクトシダーゼを発現/産生する(改変)バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)(娘)宿主細胞におけるp-ニトロベンジルエステラーゼ(配列番号2)をコードする遺伝子の欠失は、改変されていない(親)バチルス(Bacillus)細胞によって産生されたβ-ガラクトシダーゼ組成物において同定された検出可能なp-ニトロベンジルエステラーゼ副活性を完全に消失させた。
したがって、特定の実施形態では、本開示のバチルス(Bacillus)種宿主細胞は、p-ニトロベンジルエステラーゼをコードする内在性遺伝子を欠失、破壊又はダウンレギュレートするように遺伝子改変される。特定の実施形態では、p-ニトロベンジルエステラーゼをコードするバチルス(Bacillus)種遺伝子は、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼに対して少なくとも約60%~100%のアミノ酸配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする。他の実施形態では、p-ニトロベンジルエステラーゼをコードするバチルス(Bacillus)種遺伝子は、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼに対して少なくとも約70%のアミノ酸配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする。別の実施形態では、p-ニトロベンジルエステラーゼをコードするバチルス(Bacillus)種遺伝子は、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼに対して少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする。特定の他の実施形態では、p-ニトロベンジルエステラーゼをコードするバチルス(Bacillus)種遺伝子は、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼに対して少なくとも約90%のアミノ酸配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする。さらに他の実施形態では、p-ニトロベンジルエステラーゼをコードするバチルス(Bacillus)種遺伝子は、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼに対して約100%のアミノ酸配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする。
例えば、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)pnbA遺伝子(配列番号1)は、約4.8のpI及び約53kDaの分子量を含む、489個のアミノ酸からなるp-ニトロベンジルエステラーゼ(配列番号2、図13;EC番号3.1.1.3)をコードする。より詳細には、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼの一次(1°)アミノ酸配列分析(例えば、図13を参照されたい)は、この酵素をα/βヒドロラーゼスーパーファミリーのメンバーとして同定し、この触媒装置は、セリン(Ser)、グルタミン酸(Glu)又はアスパラギン酸(Asp)、及びヒスチジン(His)を含む触媒三残基を含み、且つ配列番号2のおよそ85~211位のアミノ酸残基由来のアセチルエステラーゼ(AES)ドメインをその中に含む。
したがって、特定の実施形態では、遺伝子改変バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)宿主細胞は、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼに対して少なくとも60%の配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする改変内在性遺伝子を含み、このp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子は、コードされたp-ニトロベンジルエステラーゼの少なくともアセチルエステラーゼドメインを欠失、破壊又はダウンレギュレートする遺伝子改変を含んでいる。特定の他の実施形態において、遺伝子改変バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)宿主細胞は、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼに対して少なくとも60%の配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする改変内在性遺伝子を含み、このp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子は、セリン(Ser)、グルタミン酸(Glu)又はアスパラギン酸(Asp)、及びヒスチジン(His)から選択される、触媒三残基アミノ酸の少なくとも1つを欠失、破壊又は置換する遺伝子改変を含んでいる。他の実施形態では、p-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子は、セリン(Ser)、グルタミン酸(Glu)又はアスパラギン酸(Asp)、及びヒスチジン(His)から選択される少なくとも2つの触媒三残基アミノ酸を欠失、破壊又は置換する遺伝子改変を含んでいる。さらに他の実施形態では、p-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子は、触媒三残基アミノ酸であるセリン(Ser)、グルタミン酸(Glu)又はアスパラギン酸(Asp)、及びヒスチジン(His)の3つ全てを欠失、破壊又は置換する遺伝子改変を含んでいる。例えば、配列番号2のB.サブチリス(B.subtilis)p-ニトロベンジルエステラーゼは、Ser-189、Glu-310及び399-Hisを含む触媒三残基を含む。
他の実施形態では、遺伝子改変バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)宿主細胞は、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼに対して少なくとも60%の配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする改変内在性遺伝子を含み、このp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子は、コードされたp-ニトロベンジルエステラーゼのアセチルエステラーゼドメインを欠失、破壊又はダウンレギュレートする遺伝子改変を含んでいる。したがって、特定の実施形態では、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼに対して少なくとも60%の配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子は、コードされたp-ニトロベンジルエステラーゼのアセチルエステラーゼ(AE)ドメインを欠失、破壊又はダウンレギュレートする遺伝子改変を含み、そのAEドメインは配列番号2の85~211位のアミノ酸残基を含んでいる。例えば、特定の実施形態では、p-ニトロベンジルエステラーゼのAEドメインは、アンチセンスRNA方法論(例えば、p-ニトロベンジルエステラーゼのアミノ酸残基位置85~211(又はその部分配列)をコードする内在性遺伝子に相補的なRNA分子)によってダウンレギュレートされる(その相補的RNA分子が、改変宿主細胞においてp-ニトロベンジルエステラーゼの発現/産生をダウンレギュレートする)。他の実施形態では、遺伝子改変されたAEドメインが欠失又は破壊され、この改変宿主細胞はそのp-ニトロベンジルエステラーゼの低減又は消失を示す。
他の実施形態では、遺伝子改変バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)宿主細胞は、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼに対して少なくとも60%の配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする改変内在性遺伝子を含み、このp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする改変遺伝子は、p-ニトロベンジルエステラーゼ基質結合ポケットを欠失、破壊又はダウンレギュレートする遺伝子改変を含んでいる。例えば、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼは、105~107、188~190、193、326、330、331、358、400及び403の位置に13個のアミノ酸残基を含む基質結合ポケットを含む。特定の実施形態では、配列番号2のアミノ酸残基105~107は、基質結合ポケットの一部を形成するモチーフ「GGA」(G105;G106;A107)を含む。他の実施形態では、配列番号2のアミノ酸残基188~193は、基質結合ポケットの一部を形成するモチーフ「ESAXXM」(E188、S189、A190、X191、X192、M193(ここで、Xは任意のアミノ酸である))を含む。別の実施形態では、アミノ酸残基326は基質結合ポケットの一部を形成するトレオニン(T326)であり、アミノ酸残基330は基質結合ポケットの一部を形成するアラニン(A330)であり、アミノ酸残基331は基質結合ポケットの一部を形成するロイシン(T331)であり、アミノ酸残基358は基質結合ポケットの一部を形成するメチオニン(M358)であり、アミノ酸残基400は基質結合ポケットの一部を形成するアラニン(A400)であり、アミノ酸残基403は基質結合ポケットの一部を形成するロイシン(T403)である。
したがって、特定の実施形態では、配列番号2のバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)p-ニトロベンジルエステラーゼをコードする配列番号1の核酸配列(又はその部分配列)は、p-ニトロベンジルエステラーゼ活性を含むポリペプチドをコードする1つ以上の遺伝子の存在について、他のバチルス(Bacillus)種宿主細胞(例えば、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)など)をスクリーニングするために使用される。例えば、特定の実施形態では、本開示は、欠失、破壊又はダウンレギュレートされた、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼに対して60%の配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子を含む遺伝子改変バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)宿主細胞を対象とする。特定の他の実施形態では、本開示は、約483~484のアミノ酸を含み、且つ配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼに対して62%の配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする、欠失、破壊又はダウンレギュレートされた遺伝子を含む遺伝子改変バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)宿主細胞を対象とする。他の実施形態では、本開示は、約490~492個のアミノ酸を含み、且つ配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼに対して58%の配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする、欠失、破壊又はダウンレギュレートされた遺伝子を含む遺伝子改変バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)宿主細胞を対象とする。
例えば、配列番号2のB.サブチリス(B.Subtilis)p-ニトロベンジルエステラーゼは、NCBI非冗長性参照配列データベース(データは示さず)において検索されたBLAST-Pであり、そのデータベースでは、配列番号2に対して100%~約80%の範囲の配列同一性を有する、28を超える相同B.サブチリス(B.subtilis)p-ニトロベンジルエステラーゼタンパク質が同定された。同様に、配列番号2に対して62%~約65%の範囲の配列同一性を有し、コードされたp-ニトロベンジルエステラーゼが約483~484個のアミノ酸を含む、10を超える相同B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)p-ニトロベンジルエステラーゼタンパク質が同定された。さらに、配列番号2に対して60%~約65%の範囲の配列同一性を有し、コードされたp-ニトロベンジルエステラーゼが約490~492個のアミノ酸を含む、8を超える相同B.リケニフォルミス(B.licheniformis)p-ニトロベンジルエステラーゼタンパク質が同定された。
したがって、本開示の特定の実施形態は、配列番号2のp-ニトロベンジルエステラーゼアミノ酸配列に対して少なくとも60%の配列同一性を含む、欠失、破壊又はダウンレギュレートされたp-ニトロベンジルエステラーゼタンパク質を含む改変バチルス(Bacillus)種宿主細胞を対象とする。したがって、関連する実施形態は、本開示の改変バチルス(Bacillus)宿主細胞においてβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼを発現/産生させることに関し、ここで、それから発現/産生されるβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼは、検出可能なp-ニトロベンジルエステラーゼ活性を含まず、それによって、そのようなp-ニトロベンジルエステラーゼ副活性で汚染された乳製品で観察される不快な異臭及び味が排除される。
したがって、本開示の特定の実施形態は、本開示の1つ以上のβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼを発現/産生することができる遺伝子改変バチルス(Bacillus)宿主細胞を対象とする。例えば、国際公開第2016/071504号パンフレットには、種々のβ-ガラクトシダーゼをコードするポリヌクレオチドコンストラクト(例えば、発現コンストラクト)で形質転換された組換えバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)宿主細胞が開示されている。したがって、バチルス(Bacillus)宿主細胞は発現宿主として当該技術分野でよく知られており、本開示の1つ以上のβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼの発現/産生に特に好適な宿主細胞である。
特定の実施形態では、本開示は、したがって、バチルス(Bacillus)細胞を遺伝子改変する方法を対象とし、その改変は、(a)遺伝子(若しくはそのORF)における1つ以上のヌクレオチドの導入、置換、若しくは除去、又は遺伝子若しくはそのORFの転写若しくは翻訳に必要な調節エレメントにおける1つ以上のヌクレオチドの導入、置換、若しくは除去、(b)遺伝子破壊、(c)遺伝子変換、(d)遺伝子欠失、(e)遺伝子のダウンレギュレーション、(f)部位特異的変異誘発、及び/又は(g)ランダム変異誘発を含む。
したがって、本開示の改変バチルス(Bacillus)細胞は当該技術分野でよく知られた方法、例えば、挿入、破壊、交換、欠失、トランケーション、置換、フレームシフト変異などを使用して、上記のp-ニトロベンジルエステラーゼ遺伝子の発現を低減又は排除することによって構築される。p-ニトロベンジルエステラーゼ遺伝子を改変又は不活性化すべき部分は、例えば、コード領域、又はコード領域の発現に必要とされる調節/制御エレメントであり得る。このような調節又は制御配列の例は、プロモーター配列又はその機能的部分(すなわち、核酸配列の発現に十分に影響を及ぼし得る部分)であり得る。改変のための他の制御配列としては、リーダー配列、プロペプチド配列、シグナル配列、転写ターミネーター、転写活性化因子などが挙げられるが、これらに限定されない。
特定の他の実施形態では、改変バチルス(Bacillus)細胞は、p-ニトロベンジルエステラーゼ遺伝子の発現を消失又は低減させる遺伝子欠失によって構築される。遺伝子欠失技術は遺伝子の部分的又は完全な除去を可能にし、それによって、遺伝子の発現を排除するか、又は非機能性(若しくは、活性が低下した)タンパク質産物を発現する。このような方法では、遺伝子の欠失は、遺伝子にフランキングする5’及び3’領域が隣接して含まれるように構築されたプラスミドを使用する相同組換えによって達成され得る。隣接する5’及び3’領域は、例えば、pE194などの温度感受性プラスミド上で、このプラスミドが細胞内で定着できる許容温度で第2の選択可能マーカーと会合して、バチルス細胞に導入し得る。次いで、細胞を非許容温度にシフトさせて、相同フランキング領域の1つで染色体に組み込まれたプラスミドを有する細胞を選択する。プラスミドを組み込むための選択は、第2の選択可能マーカーによる選択によって達成される。組込み後、第2の相同フランキング領域での組換え事象を、細胞を選択せずに数世代にわたって許容温度にシフトさせることによって刺激する。細胞を平板培養して単一コロニーを得、これらのコロニーについて両方の選択可能マーカーの欠損の有無を調べる(例えば、Perego,1993を参照されたい)。したがって、当業者であれば(例えば、p-ニトロベンジルエステラーゼ遺伝子(核酸)配列及びそのコードされたタンパク質配列を参照することによって)、完全又は部分的欠失に好適な遺伝子のコード配列及び/又は遺伝子の非コード配列中のヌクレオチド領域を容易に同定することができる。
他の実施形態では、本開示の改変バチルス(Bacillus)細胞は、遺伝子中の1つ以上のヌクレオチド、又はp-ニトロベンジルエステラーゼ転写若しくはその翻訳に必要な調節エレメントを導入、置換、又は除去することによって構築される。例えば、終止コドンの導入、開始コドンの除去、又はオープンリーディングフレームのフレームシフトをもたらすように、ヌクレオチドを挿入又は除去することができる。このような改変は、当該技術分野で知られた方法に従い、部位特異的変異誘発又はPCR生成変異誘発によって達成し得る(例えば、Botstein and Shortle、1985;Lo et al.,1985;Higuchi et al.,1988;Shimada,1996;Ho et al.,1989;Horton et al.,1989、及びSarkar and Sommer,1990を参照されたい)。したがって、特定の実施形態では、本開示のp-ニトロベンジルエステラーゼ遺伝子は、完全な又は部分的な欠失によって不活性化される。
別の実施形態において、改変Bacillus細胞は遺伝子変換のプロセスによって構築される(例えば、Iglesias及びTrautner、1983を参照のこと)。例えば、遺伝子変換法では、遺伝子に対応する核酸配列をインビトロで変異させて欠陥核酸配列を生成し、次いでこれを親バチルス(Bacillus)細胞に形質転換して欠陥遺伝子を生成する。相同組換えにより、欠陥核酸配列は内因性遺伝子に代わる。欠陥遺伝子又は遺伝子断片はまた、欠陥遺伝子を含む形質転換体の選択に使用することができるマーカーをコードすることが望ましい場合がある。例えば、欠陥遺伝子は、選択マーカーと関連して、非複製又は温度感受性プラスミドに導入され得る。プラスミドを組み込むための選択は、プラスミドを複製させない条件下でのマーカー選択によって達成される。遺伝子置換をもたらす第2の組換え事象の選択は、選択可能マーカーの欠損及び変異遺伝子の獲得についてコロニーを調べることによって達成される(Perego,1993)。或いは、欠陥核酸配列は、以下に記載されるように、遺伝子の1つ以上のヌクレオチドの挿入、置換、又は欠失を含み得る。
他の実施形態では、改変バチルス(Bacillus)細胞は、p-ニトロベンジルエステラーゼ遺伝子の核酸配列に相補的なヌクレオチド配列を使用する確立されたアンチセンス技術によって構築される(Parish and Stoker,1997)。より具体的には、バチルス(Bacillus)細胞によるp-ニトロベンジルエステラーゼ遺伝子の発現が、p-ニトロベンジルエステラーゼ遺伝子の核酸配列に相補的なヌクレオチド配列を導入することによって低減(ダウンレギュレート)又は消失され得、その相補的なヌクレオチド配列は細胞内で転写され得、そして細胞内で産生されたp-ニトロベンジルエステラーゼmRNAにハイブリダイズし得る。そのため、相補的アンチセンスヌクレオチド配列をmRNAにハイブリダイズさせることを可能にする条件下では、翻訳されるp-ニトロベンジルエステラーゼタンパク質の量は低減される、又はなくなる。このようなアンチセンス方法には、RNA干渉(RNAi)、低分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、アンチセンスオリゴヌクレオチドなどが含まれ、これらは全て当業者によく知られているが、これらに限定はされない。
他の実施形態では、改変Bacillus細胞は、CRISPR-Cas9編集により生成/構築される。例えば、p-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子は、DNA上の標的配列にエンドヌクレアーゼを補充するガイドRNA(例えば、Cas9)及びCpf1又はガイドDNA(例えば、NgAgo)に結合することによってそれらの標的DNAを見出す核酸誘導型エンドヌクレアーゼによって破壊(又は欠失又はダウンレギュレート)され得、ここで、エンドヌクレアーゼは、DNAにおいて一本鎖又は二本鎖切断を生成し得る。この標的DNA切断はDNA修復のための基質となり、提供された編集テンプレートと組換えて、遺伝子を破壊又は欠失させることができる。例えば、核酸誘導型エンドヌクレアーゼ(この目的のために、S.ピオゲネス(S.pyogenes)からのCas9)をコードする遺伝子、又はCas9ヌクレアーゼをコードするコドン最適化遺伝子は、バチルス(Bacillus細胞において活性なプロモーター及びバチルス(Bacillus)細胞において活性なターミネーターに作動可能に連結され、それによって、バチルス(Bacillus)Cas9発現カセットを作製する。同様に、p-ニトロベンジルエステラーゼ遺伝子に固有の1つ以上の標的部位は、当業者によって容易に同定される。例えば、目的遺伝子内の標的部位を指向したgRNAをコードするDNAコンストラクトを構築するために、可変標的(VT)ドメインは(PAM)プロトスペーサー隣接モチーフ(TGG)の5’である標的部位のヌクレオチドを含み、このヌクレオチドは、S.ピオゲネス(S.pyogenes)Cas9のCas9エンドヌクレアーゼ認識ドメイン(CER)をコードするDNAに融合する。VTドメインをコードするDNAとCERドメインをコードするDNAとの組み合わせは、それによってgRNAをコードするDNAを生成する。したがって、gRNAのためのバチルス(Bacillus)発現カセットは、gRNAをコードするDNAを、バチルス(Bacillus)細胞において活性なプロモーター及びバチルス(Bacillus)細胞において活性なターミネーターに作動可能に連結することによって作製される。
さらに他の実施形態では、改変バチルス(Bacillus)細胞は、化学的変異誘発(例えば、Hopwood、1970を参照されたい)及び転位(例えば、Youngman et al.,1983を参照されたい)を含むが、これらに限定されない、当該技術分野でよく知られた方法を使用して、ランダム又は特異的変異誘発によって構築される。遺伝子の改変は、親細胞に変異を誘発させ、p-ニトロベンジルエステラーゼ遺伝子の発現が低減又は消失された変異細胞をスクリーニングすることによって行うことができる。変異誘発は特異的であってもランダムであってもよく、例えば、好適な物理的若しくは化学的変異誘発剤の使用により、好適なオリゴヌクレオチドの使用により、又はDNA配列をPCR生成変異誘発にかけることにより実施することができる。さらに、変異誘発は、これらの変異誘発法の任意の組合せの使用により実施することができる。
本目的に好適な物理的又は化学的な変異誘発剤の例としては、紫外(UV)線、ヒドロキシルアミン、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(MNNG)、N-メチル-N’-ニトロソグアニジン(NTG)、O-メチルヒドロキシルアミン、亜硝酸、エチルメタンスルホネート(EMS)、亜硫酸水素ナトリウム、蟻酸及びヌクレオチドアナログが挙げられる。このような薬剤を使用する場合、変異誘発は、一般に、選択した変異誘発剤の存在下、好適な条件の下で、変異誘発させる親細胞をインキュベートし、p-ニトロベンジルエステラーゼ遺伝子の発現の低下を示す、又は発現をしない変異細胞を選択することにより行われる。
他の実施形態では、改変バチルス(Bacillus)細胞は内在性p-ニトロベンジルエステラーゼ遺伝子の破壊を含み、ポリヌクレオチド破壊カセットは、マーカー遺伝子を含む。
国際公開第2003/083125号パンフレットには、バチルス(Bacillus)細胞を改変するための方法、例えば、E.コリ(E.coli)をバイパスするためにPCR融合を使用するバチルス(Bacillus)欠失株及びDNAコンストラクトの作製が開示されている。
国際公開第2002/14490号パンフレットには、(1)組み込みプラスミド(pComK)の構築及び形質転換、(2)コード配列、シグナル配列及びプロペプチド配列のランダム変異誘発、(3)相同組換え、(4)形質転換DNAに非相同フランクを付加することによる形質転換効率の増加、(5)二重交差組み込みの最適化、(6)部位特異的変異誘発、及び(7)マーカーレス欠失を含む、バチルス細胞を改変するための方法が開示されている。
当業者はポリヌクレオチド配列を細菌細胞(例えば、E.コリ(E.coli)及びバチルス(Bacillus)種)に導入する好適な方法をよく知っている(例えば、Ferrari et al.,1989;Saunders et al.,1984;Hoch et al.,1967;Mann et al.,1986;Holubova、1985;Chang et al.,1979;Vorobjeva et al.,1980;Smith et al.,1986;Fisher et al.,1981及びMcDonald,1984)。実際に、プロトプラスト形質変換及び会合、形質導入、並びにプロトプラスト融合を含む形質転換などの方法は知られており、本開示における使用に適している。形質転換の方法は、本開示のDNAコンストラクトを宿主細胞に導入するために特に好ましい。
一般に使用される方法に加えて、いくつかの実施形態では、宿主細胞を直接、形質転換する(すなわち、宿主細胞内に導入する前にDNAコンストラクトを増幅させるために、又はさもなければプロセシングするために、中間細胞を使用しない)。DNAコンストラクトの宿主細胞内への導入には、プラスミド又はベクター内へ挿入することなくDNAを宿主細胞内に導入するために当該技術分野において知られている物理的及び化学的方法が含まれる。このような方法としては、塩化カルシウム沈澱、エレクトロポレーション、裸DNA、リポソームなどが挙げられるが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、DNAコンストラクトを、プラスミドに挿入せずに、プラスミドと共に同時形質転換させる。
さらなる実施形態では、選択マーカーは、当該技術分野で知られた方法(例えば、Stahl et al.,1984及びPalmeros et al.,2000)により、改変バチルス(Bacillus)株から欠失されるか又は実質的に切除される。いくつかの実施形態では、宿主染色体からのベクターの分離は、染色体中のフランキング領域を残し、一方、固有の染色体領域を除去する。
したがって、特定の実施形態では、本開示の好適なバチルス(Bacillus)宿主細胞として、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)、B.レンツス(B.lentus)、B.ブレビス(B.brevis)、B.ステアロサーモフィルス(B.stearothermophilus)、B.アルカロフィルス(B.alkalophilus)、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)、B.コアグランス(B.coagulans)、B.サークランス(B.circulans)、B.ラウツス(B.lautus)及びB.チューリンギエンシス(B.thuringiensis)が挙げられる、これらに限定されない。1つの特定の実施形態では、バチルス(Bacillus)宿主細胞は、B.サブチリス(B.subtilis)宿主細胞、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)宿主細胞又はB.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)宿主細胞である。
特定の他の実施形態では、遺伝子改変バチルス(Bacillus)宿主細胞(すなわち、p-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子の欠失、破壊又はダウンレギュレーションを含むバチルス(Bacillus)宿主細胞)においてこのようなβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ酵素を発現/産生させること、ここで、改変バチルス(Bacillus)宿主細胞から産生及び精製されるそのような酵素は、好ましくない/望ましくない酵素副活性、例えば、以下に限定されないが、好ましくない/望ましくないp-ニトロベンジルエステラーゼ副活性、好ましくない/望ましくないリパーゼ副活性、ホスホリパーゼ副活性、セルラーゼ副活性、ペクチナーゼ副活性、アミラーゼ副活性、プロテアーゼ副活性、マンナナーゼ副活性などを含まない。例えば、特定の実施形態では、本開示は、セルラーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ及び/又はホスホリパーゼ副活性から選択される少なくとも1つのさらなる好ましくない/望ましくない酵素活性をコードする遺伝子の欠失、破壊又はダウンレギュレーションを含む遺伝子改変バチルス宿主細胞を対象とする。
例えば、これらの酵素が実質的に不活性である改変バチルス(Bacillus)宿主細胞は、p-ニトロベンジルエステラーゼ活性に関して上記に一般的に記載されるような組換え遺伝子操作技術を使用する遺伝子改変によって得ることができる。セルラーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、及び/又はホスホリパーゼをコードする遺伝子の改変は、親バチルス(Bacillus)細胞に変異を誘発し、これらの酵素を発現する能力が親バチルス(Bacillus)細胞との直接比較で低下している変異バチルス細胞を選択することによって生成することができる。変異誘発は特異的であってもランダムであってもよく、例えば、好適な物理的若しくは化学的変異誘発剤の使用により、好適なオリゴヌクレオチドの使用により、CRSIPR/Cas9編集の使用により、又はDNA配列をPCR生成変異誘発にかけることにより行うことができる。さらに、変異誘発は、これらの変異誘発剤の任意の組合せを使用することにより実施することができる。
セルラーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、及び/又はホスホリパーゼ欠損宿主細胞は、酵素の発現レベルをモニターすることによって選択され得る。任意選択により、セルラーゼ、マンナナーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ及び/又はホスホリパーゼ欠損宿主細胞は、その後、宿主細胞において発現されるべき所与の目的遺伝子(例えば、本開示のβ-ガラクトシダーゼ/ラクターゼ酵素)の発現レベルを測定することによって選択され得る。酵素活性が低下している宿主細胞の選択は、培養ブロス中で、培養上清中で、透過細胞中で又は細胞溶解物中で酵素活性を直接測定することより行なってもよい。
或いは、リパーゼ副活性、ホスホリパーゼ副活性、セルラーゼ副活性、ペクチナーゼ副活性、アミラーゼ副活性、プロテアーゼ副活性、マンナナーゼ副活性の量が減少している宿主細胞(又は、これらの酵素が実質的に不活性である宿主細胞)を、組換えDNA技術を使用して構築してもよい。遺伝子不活性化又は遺伝子破壊のためのいくつかの技術、例えば、一工程遺伝子破壊、マーカー挿入、部位特異的変異誘発、欠失、RNA干渉、アンチセンスRNA、CRSIPS/Cas9遺伝子編集、TALEN遺伝子編集、メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)編集などは当該技術分野で記載されており、全て、リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ活性が低減した工業生産株を得るために、リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ活性の合成を抑制、阻害、妨害又は防止に使用され得る。また、リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ遺伝子の発現を指示する制御配列を変化させることによる、リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ活性の不活性化も、本発明の一部である。例えば、遺伝子破壊などの方法は容易に利用可能であり、プロモーター活性の低減又は排除に有用である。
したがって、特定の実施形態では、本開示の宿主細胞のゲノムは、リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ活性が(例えば、酵素活性をコードする遺伝子に「マーカー遺伝子」を挿入することによって)欠損するように改変される。したがって、特定の実施形態では、挿入されたマーカー遺伝子が、ゲノム由来の酵素をコードする遺伝子の一部(例えば、遺伝子の25%、50%若しくは75%)、又はゲノム由来の酵素をコードする遺伝子の全てに取って代わる。
そのような遺伝子不活性化を実施する方法は、多くの異なる微生物に関して説明されており、当業者に知られている。改変宿主細胞におけるリパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼの発現は、それによって低減又は消失され得る。これらの技術を用いて改変される特定の宿主細胞に応じて、この手順は、リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼをコードする配列の全て又は大部分を除去するために、数回繰り返され得る。
リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼなどの宿主遺伝子の改変又は不活性化は、遺伝子のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を使用する確立されたアンチセンス技術によって実施することができる。同様に、宿主細胞遺伝子の修飾は、RNA干渉(RNAi)技術によって得ることができる(FEMS Microb
Lett.237:317-324(2004))。より具体的には、発現が影響を受けるヌクレオチド配列の同一のセンス部分及びアンチセンス部分を、間にヌクレオチドスペーサーを挟んで一列にクローニングし、発現ベクター中に挿入し、この発現ベクターを細胞(この細胞では、二本鎖RNA(dsRNA)が転写され、標的mRNAにハイブリダイズすることができる、より短いsiRNAへとプロセシングされ得る)中に導入することにより、バチルス(Bacillus)宿主細胞による遺伝子の発現を、低減又は消失させることができる。dsRNAが転写された後、小さい(21~23個の)ヌクレオチドsiRNA断片の形成により、影響を受けるmRNAの標的分解が起こり得る。特定のmRNAの消失は様々な程度であり得る。国際公開第2005/05672号パンフレット、及び国際公開第2005/026356号パンフレットに記載されているRNA干渉技術を、宿主遺伝子の改変のために使用することができる。
したがって、特定の実施形態では、減少したリパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ活性を含む本開示の改変宿主細胞は、古典的な遺伝子操作技術又は組換えDNA技術によって構築される。特定の好ましい実施形態では、これらの改変宿主細胞は、トランスガラクトシル化活性を有する工業的に関連する酵素の産生のために使用される。より好ましくは、これらの改変宿主細胞を、食品工業で使用する酵素の製造に使用し、より一層好ましくは、これらの酵素を乳製品の加工で使用する。
最も好ましくは、減少したリパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ活性を有するこのような工業生産宿主細胞はラクトース基質からのガラクトオリゴ糖(GOS)を生産するために使用される。
したがって、特定の実施形態では、本発明のリパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ欠損宿主細胞は、国際公開第2016/071504号に一般的に記載されているように、検出可能な細胞内又は細胞外リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ活性が50%未満の改変宿主細胞である。より好ましくは、他の実施形態では、本開示のリパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ欠損宿主細胞は、リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ活性が50%未満の改変宿主細胞である。別の実施形態では、本開示のリパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ欠損宿主細胞は、リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ活性が、改変されていない(親)宿主細胞のリパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ活性の25%未満である改変宿主細胞である。別の実施形態では、本発明の欠損(すなわち、遺伝子改変)宿主細胞におけるリパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ活性は10%未満、より好ましくは5%未満、より好ましくは1%未満であり、最も好ましくは検出不能である。
ポリペプチド/酵素を検出するための様々なシステム及び方法が当業者に知られている。検出システムとして、ポリペプチド又は酵素活性の検出用のあらゆる可能なアッセイが挙げられる。例えば、このようなアッセイシステムとして、比色分析、光測定、蛍光測定、比濁分析、粘度測定、免疫学、生物学、クロマトグラフに基づくアッセイ及びその他の利用可能なアッセイが挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施形態では、産生される活性酵素(例えば、活性リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ)の量は、モデル反応において、その活性を測定することによって決定される。
特定の他の実施形態では、本開示のリパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ欠損(すなわち、改変)宿主細胞は、改変された宿主細胞がトランスガラクトシル化活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を含む発現コンストラクトで形質転換された場合、改変されていない(親)宿主細胞が同じ培養条件下で、この未改変(親)宿主細胞もまた、リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ欠損改変宿主細胞と同じ発現コンストラクトで形質転換されている場合に、産生するポリペプチドと少なくとも同じ量のポリペプチドを産生するという事実によって特徴付けられる。好ましい実施形態では、本開示のリパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ欠損宿主細胞は、同じ培養条件下の未改変(親)宿主細胞と同量又はそれ以上のトランスガラクトシル化活性を有するポリペプチドを産生する改変宿主細胞である。特定の実施形態では、リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ欠損宿主細胞は、所与のポリペプチドを、同じ培養条件下の未改変(親)宿主細胞より多く産生する。
IV.β-ガラクトシダーゼポリヌクレオチド及びそのベクター
特定の実施形態では、本開示は上記のようなトランスガラクトシル化活性を有する単離されたポリペプチドを使用し、このポリペプチドは、非常に低いストリンジェンシー条件下、好ましくは低ストリンジェンシー条件下、より好ましくは中ストリンジェンシー条件下、より好ましくは中~高ストリンジェンシー条件下、より一層好ましくは高ストリンジェンシー条件下、最も好ましくは非常に高いストリンジェンシー条件下で、(i)配列番号4、6、8、10、12、15、16又は26の成熟ポリペプチドをコードする配列番号3、5、7、9、11、13、15又は25に含まれる核酸配列、(ii)(i)のcDNA配列、又は(iii)(i)又は(ii)の相補鎖にハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる。特定の実施形態では、配列番号3、5、7、9、11、13、15又は25の部分配列は、少なくとも100個の連続ヌクレオチド又は少なくとも200個の連続ヌクレオチドを含有する。さらに、部分配列は、ラクターゼ又はトランスガラクトシダーゼ活性を有するポリペプチド断片をコードし得る。
配列番号3、5、7、9、11、13、15若しくは25のヌクレオチド配列(又はその部分配列)、及び配列番号4、6、8、10、12、14、16若しくは26のアミノ酸配列(又はその断片)は、当業者によく知られた方法に従って、様々な属若しくは種の菌株由来のトランスガラクトシル化活性を有するポリペプチドをコードするDNAを同定及びクローン化するための核酸プローブを設計するために使用することができる。
特に、そのようなプローブは、その中の対応する遺伝子を同定及び単離するために、標準サザンブロット法に従って、目的の属又は種のゲノム又はcDNAとハイブリダイゼーションするために使用することができる。そのようなプローブは、全配列より相当に短い可能性があるが、長さが少なくとも14ヌクレオチド、好ましくは少なくとも25ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも35ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも70ヌクレオチドでなければならない。しかし、核酸プローブは、長さが少なくとも100ヌクレオチドであることが好ましい。例えば、核酸プローブは、長さが少なくとも200ヌクレオチド、好ましくは少なくとも300ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも400ヌクレオチド又は最も好ましくは少なくとも500ヌクレオチドであってよい。より一層長いプローブ(例えば、長さが少なくとも600ヌクレオチド、好ましくは少なくとも700ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも800ヌクレオチド、又は最も好ましくは少なくとも900ヌクレオチドである核酸プローブ)を使用してもよい。DNAプローブ及びRNAプローブの両方を使用することができる。これらのプローブは、通常、対応する遺伝子を検出するために(例えば、32P、3H、35S、ビオチン又はアビジンを用いて)標識される。そのようなプローブは、本発明に包含される。
このため、そのような生物から調製されたゲノムDNAライブラリーは、上述したプローブとハイブリダイズし、且つラクターゼ活性を有するポリペプチドをコードするDNAについてスクリーニングすることができる。そのような他の生物からのゲノム又は他のDNAは、アガロース若しくはポリアクリルアミドゲル電気泳動法、又は他の分離技術によって分離することができる。ライブラリー由来のDNA又は分離したDNAは、ニトロセルロース又は他の好適な担体材料に移して固定化することができる。配列番号3、5、7、9、11、13、15若しくは25(又はその部分配列)と相同性であるクローン若しくはDNAを同定するためには、サザンブロット法の担体材料が使用される。
本開示の目的のためには、ハイブリダイゼーションは、ヌクレオチド配列が配列番号3、5、7、9、11、13若しくは15に示したヌクレオチド配列、その相補鎖又はその部分配列に、超低~超高ストリンジェンシー条件下で、対応する標識核酸プローブにハイブリダイズすることを示している。これらの条件下で核酸プローブがハイブリダイズする分子は、X線フィルムを使用して検出することができる。
核酸プローブは、配列番号3、5、7、9、11、13、15若しくは25の成熟ポリペプチドをコードする領域であってよい。
長さが少なくとも100ヌクレオチドである長いプローブに対しては、最適には12~24時間の標準サザンブロッティング手順にしたがって、超低~超高ストリンジェンシー条件は、5×のSSPE、0.3%のSDS、200g/mLの剪断及び変性サケ***DNA、並びに25%のホルムアミド(超低及び低ストリンジェンシーの場合)、35%のホルムアミド(中及び中~高ストリンジェンシーの場合)又は50%のホルムアミド(高及び超高ストリンジェンシーの場合)中、42℃でのプレハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーションと定義される。
長さが少なくとも100ヌクレオチドである長いプローブに対しては、担体材料は、2×のSSC、0.2%のSDSを用いて、好ましくは少なくとも45℃(超低ストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも50℃(低ストリンジェンシー)、より好ましくは55℃(中ストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも60℃(中~高ストリンジェンシー)、より一層好ましくは少なくとも65℃(高ストリンジェンシー)、最も好ましくは少なくとも70℃(超高ストリンジェンシー)で最終的にそれぞれ15分間ずつ3回洗浄される。
特定の実施形態では、洗浄は、0.2のSSC、0.2%のSDSを用いて、好ましくは少なくとも45℃(超低ストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも50℃(低ストリンジェンシー)、より好ましくは55℃(中ストリンジェンシー)、より好ましくは少なくとも60℃(中-高ストリンジェンシー)、より一層好ましくは少なくとも65℃(高ストリンジェンシー)、最も好ましくは少なくとも70℃(超高ストリンジェンシー)で実施される。
長さが約15ヌクレオチド~約70ヌクレオチドである短いプローブに対しては、ストリンジェンシー条件は、標準サザンブロッティング手順にしたがって、0.9MのNaCl、0.09Mのトリス-HCl(pH7.6)、6mMのEDTA、0.5%のNP-40、1×のデンハルト溶液、1mMのピロリン酸ナトリウム、1mMの一塩基性リン酸ナトリウム、0.1mMのATP及び0.2mg/mlの酵母RNA中で、Bolton and McCarthy(1962,Proceedings of the National Academy of Sciences USA 48:1390)による計算を使用して算出したTmより約5℃~約10℃下でのプレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、及びハイブリダイゼーション後洗浄と定義される。
長さが約15ヌクレオチド~約70ヌクレオチドである短いプローブに対しては、担体材料は、15分間にわたり6×のSCC+0.1%のSDS中で1回、及び算出したTmより5℃~10℃下で6×のSSCを使用してそれぞれ15分間ずつ2回洗浄される。
塩含有ハイブリダイゼーション条件下では、有効Tmは、上首尾のハイブリダイゼーションのためにプローブとフィルタ結合DNAとの間に必要とされる同一性の程度を制御するものである。有効Tmは、様々なストリンジェンシー条件下で2つのDNAがハイブリダイズするために必要とされる同一性の程度を決定するために下記の式を使用して決定することができる。
有効Tm=81.5+16.6(log M[Na+])+0.41(%G+C)-0.72(%ホルムアミド)
したがって、本開示の変異核酸には、配列番号4、6、8、10、12、15、16又は26をコードする核酸と所定のパーセント(例えば、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%)の配列同一性を有するポリヌクレオチドが含まれる。特定の態様では、本明細書に開示したポリペプチドをコード可能な核酸が提供される。他の実施形態では、本明細書に開示した核酸は、配列番号3、5、7、9、11、13、15又は25と少なくとも60%、例えば少なくとも65%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%同一である核酸配列を有する。
特定の実施形態では、本開示は、本開示のβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼポリペプチドをコードする核酸を含むプラスミドを提供する。特定の他の実施形態では、本開示は、本開示のβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼポリペプチドをコードする核酸を含む発現ベクターを提供する。
したがって、特定の実施形態では、本明細書に記載のβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼポリペプチド(及びその多様体)が当該技術分野でよく知られた手順に従って、宿主細胞中での組換え発現によって産生される。より特には、特定の実施形態において、本明細書に記載のβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼポリペプチド(及びその多様体)は、配列番号2に対して少なくとも60%の配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子の少なくとも破壊又は欠失を含む改変バチルス(Bacillus)宿主細胞中で発現/産生される。
ポリペプチドの遺伝子改変及び組換え生産の方法は、例えば、米国特許第7,371,552号明細書、同第7,166,453号明細書、同第6,890,572号明細書、及び同第6,667,065号明細書;並びに米国特許出願公開第2007/0141693号明細書、同第2007/0072270号明細書、同第2007/0020731号明細書、同第2007/0020727号明細書、同第2006/0073583号明細書、同第2006/0019347号明細書、同第2006/0018997号明細書、同第2006/0008890号明細書、同第2006/0008888号明細書、及び同第2005/0137111号明細書に記載されている。ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列、プライマー、ベクター、選択方法、宿主細胞、発現ポリペプチド多様体の精製及び再構成、並びに酵素アッセイのために有用なバッファー、pH範囲、Ca2+濃度、基質濃度及び酵素濃度を含む本明細書に定義したポリペプチド多様体の特性解析を含む、これらの開示の関連する教示は、参照により本明細書に組み込まれる。
特定の実施形態では、本開示は、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む1つ以上のベクターを対象とする。特定の好ましい実施形態では、このような目的タンパク質には、β-ガラクトシダーゼ/ラクターゼポリペプチド、例えば、配列番号4、6、8、10、12、14、16、17、18又は26として記載のβ-ガラクトシダーゼ/ラクターゼポリペプチドが含まれる。したがって、特定の他の実施形態では、本開示の組換え宿主細胞は、その中に導入された1つ以上のベクターを含む。特定の他の実施形態では、本開示のβ-ガラクトシダーゼ/ラクターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド/DNAコンストラクトは、「発現ベクター」として宿主細胞に導入され、このベクターはβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼをコードする配列に作動可能に連結された調節配列(例えば、プロモーター配列、ターミネーター配列、5’UTR、3’UTRなど)を含む。より特には、特定の実施形態において、本開示のβ-ガラクトシダーゼ/ラクターゼポリペプチドをコードする核酸配列を含む発現ベクターは、遺伝子改変宿主細胞(例えば、バチルス(Bacillus)細胞)に導入され、この遺伝子改変宿主細胞は、配列番号2に対して少なくとも60%の配列同一性を含むp-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子の少なくとも欠失、破壊又はダウンレギュレーションを含む。
例示的なベクターとしては、E.コリ(E.coli)において複製可能なpBR322及びpUC19、並びにバチルス(Bacillus)において複製可能なpE194が挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態では、本開示のβ-ガラクトシダーゼ/ラクターゼポリペプチドをコードする核酸は、宿主細胞における転写を可能にする好適なプロモーターに作動可能に連結されている。例えば、プロモーターは、宿主細胞にとって同種又は異種のタンパク質をコードする遺伝子由来であってよい。バチルス(Bacillus)細胞における遺伝子、そのオープンリーディングフレーム(ORF)及び/又はその変異配列の発現に使用するためのプロモーター及びプロモーター配列領域は、当業者に一般に知られている。本開示のプロモーター配列は一般に、それらがバチルス(Bacillus)細胞(例えば、B.リケニフォルミス(B.licheniformis)細胞、B.サブチリス(B.subtilis)細胞など)において機能的であるように選択される。特定の例示的なバチルス(Bacillus)プロモーター配列としては、B.サブチリス(B.subtilis)アルカリプロテアーゼ(aprE)プロモーター、B.サブチリス(B.subtilis)のα-アミラーゼプロモーター、B.アミロリケファシエンス(B.amyloliquefaciens)のα-アミラーゼプロモーター、B.サブチリス(B.subtilis)由来の中性プロテアーゼ(nprE)プロモーター、変異aprEプロモーター(国際公開第2001/51643号パンフレット)、又は関連するバチルス(Bacilli)由来の任意の他のプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。特定の他の実施形態では、プロモーターは米国特許出願公開第2014/0329309号明細書に開示されるリボソームタンパク質プロモーター又はリボソームRNAプロモーター(例えば、rrnIプロモーター)である。バチルス(Bacillus)細胞において一連の活性(プロモーター強度)を有するプロモーターライブラリーをスクリーニング及び作製するための方法は、国際公開第2003/089604号パンフレットに記載されている。特定の実施形態では、プロモーターはバチルス(Bacillus)宿主細胞に対して天然であるが、他の実施形態では、プロモーターはバチルス(Bacillus)宿主細胞に対して異種(外来)である。
他の実施形態では、β-ガラクトシダーゼ/ラクターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列(例えば、ベクター/発現コンストラクトに含まれる)は、シグナル配列(シグナルペプチド)をコードする核酸配列に作動可能に連結されている。したがって、特定の実施形態では、シグナル配列をコードする核酸配列は、B.ビフィダム(B.bifidum)又はバチルス(Bacillus)種に由来する。特定の他の実施形態では、B.サブチリス(B.subtilis)aprEの天然シグナル配列が使用されるか、又はそれに代えて、他のバチルス(Bacillus)種分泌タンパク質由来のシグナル配列をコードするヌクレオチド配列が使用される。したがって、特定の実施形態では、シグナル配列をコードするポリヌクレオチド配列は、本開示のβ-ガラクトシダーゼ/ラクターゼポリペプチドをコードするポリヌクレオチドのすぐ上流(5’)で、且つインフレームに位置する(すなわち、作動可能に連結される)。
したがって、特定の他の実施形態では、本開示は、宿主細胞に導入するベクターに含まれるシグナル配列及びプロモーター配列を含む。他の実施形態では、発現ベクターはまた、終止配列を含む。特定の実施形態では、終止配列、シグナル配列及びプロモーター配列は、同じ供給源又は異なる供給源に由来する。
特定の他の実施形態では、発現ベクターは選択可能マーカーを含む。適切な選択マーカーの例としては、抗微生物剤(例えば、ヒグロマイシン、フレオマイシンなど)に対する耐性を付与するもの、及び栄養選択(栄養要求性)マーカーが挙げられる。
したがって、本開示のβ-ガラクトシダーゼ/ラクターゼポリペプチドをコードするDNAコンストラクトを含む好適な発現ベクターは、バチルス(Bacillus)宿主細胞において自己複製することができるか、又は宿主細胞のゲノムに組み込むことができる任意のベクターであり得る。
VI.好ましくない酵素副活性を欠損した改変バチルス(BACILLUS)宿主細胞におけるβ-ガラクトシダーゼ/ラクターゼの産生
特定の他の実施形態では、本開示は、(好ましくない/望ましくない)パラ-ニトロベンジルエステラーゼ活性を欠損した改変宿主細胞においてヌクレオチド配列を転写する方法を対象とする。さらに他の実施形態では、本開示は、パラ-ニトロベンジルエステラーゼ活性が欠損した改変宿主細胞においてヌクレオチド配列を転写する方法を対象とし、その改変宿主細胞はリパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼ活性から選択される少なくとも1つのさらなる(好ましくない/望ましくない)酵素活性が欠損するようにさらに操作されており、その転写配列はトランスガラクトシル化活性を有するポリペプチドをコードし、培養培地中で、本開示のトランスガラクトシル化ポリペプチドをコードする発現コンストラクトを含む、本開示の改変宿主細胞を培養することを含む。
例えば、特定の実施形態では、パラ-ニトロベンジルエステラーゼ活性を欠損した改変宿主細胞は、(1)(a)上流の、(b)本開示のトランスガラクトシル化ポリペプチドをコードする下流ヌクレオチド配列(例えば、ORF)に作動可能に連結された5’プロモーター領域、及び(c)3’であり、トランスガラクトシル化ポリペプチドをコードする核酸配列に作動可能に連結された翻訳停止シグナルを含み、且つ(2)改変宿主細胞においてトランスガラクトシル化ポリペプチドを発現する発現コンストラクトで形質転換される。別の実施形態では、本開示の改変宿主細胞において発現/産生されるトランスガラクトシル化ポリペプチドは培養培地から、又は改変宿主細胞から(例えば、細胞溶解を介して)回収される。
パラ-ニトロベンジルエステラーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼを欠損した改変宿主細胞は、本開示の方法に従って生産される。したがって、特定の実施形態では、欠損(改変)宿主細胞は、当該技術分野で知られた方法を使用して、所望のポリペプチドの産生に好適な栄養培地中で増殖又は維持される。例えば、好適な培地中で、且つポリペプチドの発現及び/又は単離を可能にする条件下で、細胞を固体基質上に播種してもよく、フラスコ中で振盪してもよく、実験室用又は工業用の発酵槽で小規模又は大規模発酵(連続式、バッチ式、フェドバッチ式又は固体式の発酵など)で培養してもよい。
培養は、炭素及び窒素源と、無機塩とを含む好適な栄養培地で、当該技術分野で知られた手順によって行われる。好適な培地は商業的供給業者から入手可能であり、又は(例えば、American Type Culture Collectionのカタログ中で)公開されている組成物を使用して調製してもよい。ポリペプチドが栄養培地中に分泌される場合、この培地からポリペプチドを直接回収することができる。ポリペプチドが分泌されない場合、細胞溶解物から回収することができる。
得られたポリペプチドは、当該技術分野で知られた方法により単離することができる。例えば、ポリペプチドは、従来の手順、例えば、以下に限定されないが、遠心分離、ろ過、抽出、噴霧乾燥、蒸発又は沈殿により、栄養培地から単離することができる。次いで、単離したポリペプチドを、当該技術分野でよく知られた様々な方法、例えば、以下に限定されないが、クロマトグラフィ(例えば、イオン交換、アフィニティ、疎水性、クロマト分画若しくはサイズ排除)、電気泳動(例えば、予備等電点電気泳動)、溶解度差(例えば、アセトン若しくは硫酸アンモニウム沈殿)、又は抽出(例えば、カオトロープ、塩若しくはpH)によりさらに精製することができる。
このポリペプチドを、トランスガラクトシル化活性を有するポリペプチドに特異的である当該技術分野で知られた方法を使用して検出することができる。これらの検出方法としては、特異的抗体の使用、酵素生成物の形成、酵素基質の消失又はSDS-PAGEを挙げることができる。例えば、酵素アッセイを使用してポリペプチドの活性を測定することができる。多くの酵素に関して酵素活性を測定する手順は当該技術分野で知られている。より特には、国際公開第2016/071504号パンフレット及び国際公開第2015/086746号パンフレットの開示は、トランスガラクトシル化活性を有するポリペプチド(例えば、β-ガラクトシダーゼ/ラクターゼ)をアッセイするための特定の方法及びその組成物を提供しており、その方法は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。したがって、特定の実施形態では、トランスガラクトシル化活性を有する(すなわち、本開示の改変宿主細胞において産生されるような)ポリペプチドは、国際公開第2016/071504号パンフレット及び国際公開第2015/086746号パンフレットに記載される方法及び組成物によってアッセイされる。
したがって、特定の他の実施形態では、本開示は、本明細書に記載のトランスガラクトシル化ポリペプチドを発現させる組成物及び方法に関し、本開示の改変宿主細胞(すなわち、パラ-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子の少なくとも欠失、破壊又はダウンレギュレーションを含む)を得ること、及び改変宿主細胞においてトランスガラクトシル化ポリペプチドを発現させること、及び任意選択によりトランスガラクトシル化ポリペプチドを精製することを含む。上記のように、本開示の改変宿主細胞において発現/産生されるこのようなトランスガラクトシル化ポリペプチドは、検出可能なパラ-ニトロベンジルエステラーゼ活性を有さず、それ自体、ラクトース基質によるガラクトオリゴ糖(GOS)組成物の生成に特に有用である。より特には、以下の実施例の項で示すように、本開示の改変宿主細胞(すなわち、配列番号2のパラ-ニトロベンジルエステラーゼをコードする遺伝子の欠失、破壊又はダウンレギュレーションを含む)における1つ以上のトランスガラクトシル化ポリペプチドの発現/産生は、汚染性パラ-ニトロベンジルエステラーゼ副活性の非存在下でこのようなトランスガラクトシル化ポリペプチドを産生し、それによって、パラ-ニトロベンジルエステラーゼ副活性を含む非改変(親)宿主細胞において発現/産生されるこのようなトランスガラクトシル化ポリペプチドを使用する場合に検出される、不快な異臭味及び臭いを排除する。同様に、他の実施形態では、本開示の改変宿主細胞は、リパーゼ、ホスホリパーゼ、セルラーゼ、ペクチナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ及び/又はマンナナーゼから選択される少なくとも1つのさらなる好ましくない/望ましくない酵素副活性が欠損するようにさらに改変される(例えば、国際公開第2016/071504号パンフレットを参照されたい)。
したがって、特定の実施形態では、宿主細胞への発現コンストラクト又はベクターの導入として、形質転換、エレクトロポレーション、核マイクロインジェクション、形質導入、形質移入(例えば、リポフェクション媒介及びDEAE-デキストリン媒介形質移入)、リン酸カルシウムDNA沈殿物とのインキュベーション、DNA被覆マイクロプロジェクティルによる高速衝突、並びにプロトプラスト融合などの技術が挙げられる。一般的な形質転換技術は当該技術分野でよく知られている(例えば、Ausubel et al.,1987、Sambrook et al.,2001、及びCampbell et al.,Curr.Genet.16:53-56(1989)を参照されたい)。同様に、形質転換体選択には、当該技術分野において知られた方法を使用することができる。
特定の実施形態では、本開示は、改変宿主細胞を発酵/培養することを含む、改変宿主細胞においてトランスガラクトシル化ポリペプチドを産生させる方法に関する。当該技術分野でよく知られている発酵方法を適用して、本開示の改変(娘)及び非改変(親)バチルス(Bacillus)細胞を発酵させることができる。いくつかの実施形態では、細胞は、バッチ又は連続発酵条件下で培養される。古典的なバッチ発酵は、クローズドシステムであり、培地の組成は発酵の開始時に設定され、発酵中に変更されない。発酵の開始時に、培地に所望の生物を接種する。この方法では、系にいかなる成分も添加することなく醗酵を行うことができる。一般に、バッチ発酵は、炭素源の添加に関して「バッチ」であると見なされ、pH及び酸素濃度などの因子を制御することが頻繁に行われる。バッチシステムの代謝産物及びバイオマス組成は、発酵が停止される時まで絶えず変化する。典型的なバッチ培養では、細胞は静的誘導期を経由して高増殖対数期へ進行し、最終的には増殖率が減少若しくは停止する静止期に進む。未処理のまま放置すると、静止期にある細胞は最終的には死滅する。一般に、対数期の細胞は、生成物の大部分の産生を担っている。
標準バッチ系に関する好適な変形形態は、「フェドバッチ発酵」系である。典型的なバッチ系のこの変形形態では、発酵の進行につれて基質が徐々に加えられる。フェドバッチシステムは、カタボライト抑制が細胞の代謝を阻害する可能性が高い場合、及び培地中の基質量が限られた量であることが望ましい場合に有用である。フェドバッチシステムでは、実際の基質濃度の測定は困難であり、したがって、pH、溶存酸素、及びCO2などの廃ガスの分圧などの測定可能な因子の変化に基づいて推定される。バッチ及びフェドバッチ発酵は、当該技術分野において一般的であり、知られている。
連続発酵は、定義された発酵培地がバイオリアクターに連続的に加えられ、処理のために等量の馴化培地が同時に除去される開放系である。連続発酵は、一般に、培養物を一定の高密度に維持し、細胞は主として対数増殖期にある。連続発酵は、細胞の増殖及び/又は産生物の濃度に影響する1つ以上の因子の調節を可能にする。例えば、一実施形態では、炭素源又は窒素源などの制限栄養素は一定比率で維持され、他の全てのパラメータは調節することができる。他のシステムでは、培地の濁度によって測定される細胞濃度を一定に保ちながら、増殖に影響する多くの因子を連続的に変化させることができる。連続システムは、定常状態の増殖条件を維持しようとする。したがって、培地を取り出すことによる細胞損失は、発酵中の細胞増殖速度とバランスさせなければならない。連続発酵プロセスで栄養素及び増殖因子を調節する方法、並びに産生物形成速度を最大化するための手法は、工業微生物学の分野においてはよく知られている。
したがって、特定の実施形態では、改変宿主細胞によって産生されたトランスガラクトシル化ポリペプチドは、従来の手順、例えば、宿主細胞を培地から遠心分離若しくは濾過によって分離する、又は、必要ならば、細胞を破壊し、上清を細胞破砕物及び残屑から取り除くことによって、培養培地から回収することができる。清浄化後、通常、上清又は濾液のタンパク質性成分を、塩、例えば、硫酸アンモニウムによって沈澱させる。その後、沈澱させたタンパク質を可溶化し、様々なクロマトグラフ法、例えば、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過によって精製することができる。
VI.適用例
下記に、本開示の宿主細胞、ポリペプチド又はポリペプチド組成物の好ましい使用例を示す。例えば、特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるように、ラクトースを含む基質をトランスガラクトシル化ポリペプチド又はそのポリペプチド組成物で処理することによって食品を製造する方法を提供する。別の実施形態では、本開示は、本明細書に記載されるように、ラクトースを含むミルクベースの基質をトランスガラクトシル化ポリペプチド又はそのポリペプチド組成物で処理することによって乳製品を製造する方法を提供する。別の実施形態では、ラクトースを含む基質は、さらに加水分解性β-ガラクトシダーゼにより処理される。
本開示に従って調製した食品成分の形態などの酵素調製物は、用途及び/又は適用の様式及び/又は投与の様式に応じて、溶液の形態であってもよいし固体としての形態であってもよい。固体形態は、乾燥酵素粉末としてであっても顆粒状酵素としてであってもよい。
特定の実施形態では、酵素組成物は、組成物中のポリペプチドの総量に基づいて、本明細書に開示される1つ以上のトランスガラクトシル化ポリペプチドを、少なくとも5重量/重量%、例えば、10重量/重量%、15重量/重量%、20重量/重量%、25重量/重量%、30重量/重量%、35重量/重量%、40重量/重量%、45重量/重量%、50重量/重量%含む。これは、当業者に知られている下記の技術を使用することによって評価することができる。評価対象の試料をSDS-PAGEに供し、例えばBio-Rad Criterionシステムなどのタンパク質定量に適した染料を使用して可視化する。次に、ゲルを、例えばBio-Rad Criterionシステムなどの適切な密度計スキャナーを使用してスキャンし、得られた画像がダイナミックレンジ内にあるようにする。任意のトランスガラクトシル化ポリペプチドに対応するバンドを定量し、ポリペプチドのパーセンテージを以下のように計算する:対象ポリペプチドのパーセンテージ=対象ポリペプチド/(トランスガラクトシル化活性を示す全てのポリペプチドの合計)×100。ポリペプチドの総数は、当業者に知られた方法により、配列番号4、6、8、10、12、14、16、17、18又は26のβ-ガラクトシダーゼ/ラクターゼポリペプチドに対する特異性を有するポリクローナル抗体を使用するウェスタンブロッティングによって決定することができる。
したがって、特定の実施形態では、本開示による組成物は、配列番号4、6、8、10、12、14、16、17、18及び26からなる群から選択される1つ以上のポリペプチドを含む。
別の態様では、本発明は、本発明による酵素錯体、酵素担体並びに任意選択的に安定剤及び/又は防腐剤を含む酵素錯体調製物を提供する。特定の実施形態では、酵素担体はグリセロール又は水からなる群から選択される。別の実施形態では、酵素担体はポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール又はソルビトール)を含まない。
別の実施形態では、調製物/組成物は安定剤を含む。特定の実施形態では、安定剤は、無機塩、ポリオール、糖及びこれらの組合せからなる群から選択される。特定の実施形態では、安定剤は、例えば塩化カリウムなどの無機塩である。別の態様では、ポリオールは、グリセロール、プロピレングリコール又はソルビトールである。また別の実施形態では、安定剤は、グリセロール、プロピレングリコール又はソルビトールなどのポリオールではない。さらに別の実施形態では、安定剤は、低分子量炭水化物、特に、グルコース、ガラクトース、フルクトース及びサッカロースなどの数種の甘味物質のいずれかである。
他の実施形態では、調製物は防腐剤を含む。一態様では、防腐剤は、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸塩、ソルビン酸塩若しくは他の食品用防腐剤、又はそれらの混合物である。
特定の実施形態では、本開示の方法は、固定化酵素(例えば、固定化ラクターゼ又は他のGOS産生酵素)を用いて実施することができる。酵素は、任意の有機又は無機支持体に固定化することができる。例示的な無機支持体としては、アルミナ、celite、Dowex-1-クロライド、ガラスビーズ及びシリカゲルが挙げられる。例示的な有機支持体としては、DEAE-セルロース、アルギン酸ヒドロゲル若しくはアルギン酸ビーズ、又は等価物が挙げられる。
特定の実施形態では、β-ガラクトシダーゼ/ラクターゼの固定化は、無機支持体への物理的吸着によって最適化される。本開示の実施に使用する酵素は、水、トリス-HCl緩衝液及びリン酸緩衝溶液などの様々な媒体中で固定化することができる。酵素は、任意のタイプの基材(例えば、フィルタ、線維、カラム、ビーズ、コロイド、ゲル、ヒドロゲル、メッシュなど)に固定化することができる。
別の実施形態では、ラクトースを含むミルクベースの基質を本明細書に記載のポリペプチド又はポリペプチド組成物で処理することによって乳製品を製造する方法が提供される。さらなる態様では、ラクトースを含むミルクベースの基質を15分の反応後に60%超の、例えば70%超、例えば75%超の相対的トランスガラクトシル化活性を有するポリペプチドで処理することにより乳製品を製造する方法が提供される。一態様では、相対的トランスガラクトシル化活性は、30分間の反応後に3より大きい。さらなる態様では、相対的トランスガラクトシル化活性は、30分間の反応後に6より大きい。なおさらなる態様では、相対的トランスガラクトシル化活性は、30分間の反応後に12より大きい。
別の実施形態では、本明細書に記載のポリペプチド又はポリペプチド組成物による処理を酵素の活性に最適な温度で行なう方法が提供される。さらなる態様では、ポリペプチド又はポリペプチド組成物を0.01~1000ppmの濃度でミルクベースの基質に添加する。なおさらなる態様では、ポリペプチド又はポリペプチド組成物を0.1~100ppmの濃度でミルクベースの基質に添加する。さらなる態様では、ポリペプチド又はポリペプチド組成物を1~10ppmの濃度でミルクベースの基質に添加する。一態様では、乳製品などの基質を微生物により発酵させる工程をさらに含む方法が提供される。さらなる態様では、乳製品は、ヨーグルトである。さらなる態様では、ポリペプチド又はポリペプチド組成物及び微生物による処理を実質的に同時に行う。一態様では、ポリペプチド又はポリペプチド組成物及び微生物を、実質的に同時にミルクベースの基質に添加する。
一態様では、本明細書に記載の細胞又はポリペプチド若しくはポリペプチド組成物を含む乳製品が提供される。一態様では、本明細書で定義するポリペプチド又はポリペプチド組成物を0.01~1000ppmの濃度で添加する。
一態様では、本明細書で定義するポリペプチド又はポリペプチド組成物によりインサイチューで形成されたGOSを含む乳製品が提供される。一態様では、本明細書で定義する細胞を含む乳製品が提供される。
本明細書に記載の乳製品は、例えば、スキムミルク、低脂肪乳、全乳、クリーム、UHT乳、延長された貯蔵寿命を有するミルク、発酵乳製品、チーズ、ヨーグルト、バター、デイリースプレッド、バターミルク、酸性化ミルク飲料、サワークリーム、ホエイベース飲料、アイスクリーム、コンデンスミルク、加糖練乳若しくはフレーバードミルク飲料であり得る。乳製品は、当該技術分野で知られる任意の方法によって製造し得る。
乳製品は、非ミルク成分(例えば、植物油、植物性タンパク質及び/又は植物性炭水化物などの植物性成分)をさらに含むことができる。乳製品はまた、さらなる添加物、例えば、酵素、矯味剤、プロバイオティクス培養物などの微生物培養物、塩、甘味料、糖、酸、果実、果汁、又は当該技術分野において乳製品の成分若しくは添加物として知られる任意の他の成分をさらに含むことができる。本発明の一実施形態では、1つ以上のミルク成分及び/又はミルク分画は、乳製品の少なくとも50重量/重量%、例えば少なくとも70重量/重量%、例えば少なくとも80重量/重量%、好ましくは少なくとも90重量/重量%を占める。
本発明の一実施形態では、トランスガラクトシル化活性を有する本明細書に定義する酵素を用いて処理されている1つ以上のミルクベース基質は、乳製品の少なくとも50重量/重量%、例えば少なくとも70重量/重量%、例えば少なくとも80重量/重量%、好ましくは少なくとも90重量/重量%を占める。
本開示の別の実施形態では、乳製品は、予め製造されたガラクトオリゴ糖(GOS)の添加によって強化されていない乳製品である。
本開示の別の実施形態では、ポリペプチド処理ミルクベース基質は、乳製品中の1つの成分として使用される前には乾燥されない。
本開示の別の実施形態では、乳製品は、アイスクリームである。本発明との関連で、アイスクリームは、高脂肪アイスクリーム、低脂肪アイスクリーム、又はヨーグルト若しくは他の発酵乳製品をベースとするアイスクリームなどの、任意の種類のアイスクリームであってよい。アイスクリームは、当該技術分野で知られる任意の方法によって製造し得る。
本開示の別の実施形態では、乳製品はミルク又はコンデンスミルクである。
本開示のさらに別の実施形態では、乳製品は超高音殺菌(UHT)ミルクである。本開示との関連で、UHT乳は、細菌胞子を含む全微生物を殺滅することを意図した滅菌手順を受けているミルクである。したがって、UHT処理には、130℃で30秒間の熱処理、又は145℃で1秒間の熱処理が含まれる。
本開示の別の実施形態では、乳製品はESLミルクである。本発明との関連で、ESLミルクは、精密濾過及び/又は熱処理のために貯蔵寿命が延長され、2~5℃の貯蔵棚上で少なくとも15日間、好ましくは少なくとも20日間、新鮮さを維持することができるミルクである。本開示の別の実施形態では、乳製品は発酵乳製品(例えば、ヨーグルト)である。
大多数の発酵乳製品で使用される微生物は、一般に「乳酸」菌と呼ばれる細菌の群から選択される。本明細書で使用される場合、用語「乳酸菌」は、糖を発酵させて、主として生成される酸としての乳酸、酢酸及びプロピオン酸を含む酸を生成するグラム陽性菌、微好気性菌又は嫌気性菌を示す。工業的に最も有用な乳酸菌は、ラクトコッカス(Lactococcus)種、ストレプトコッカス(Streptococcus)種、ラクトバチルス(Lactobacillus)種、ロイコノストック(Leuconostoc)種、シュードロイコノストック(Pseudoleuconostoc)種、ペディオコッカス(Pediococcus)種、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)種、エンテロコッカス(Enterococcus)種及びプロピオニバクテリウム(Propionibacterium)種を含む「ラクトバチルス(Lactobacillales)」目の中に見出される。さらに、単独で又は乳酸菌と組み合わせて食品培養物として頻繁に使用される嫌気性細菌のビフィズス菌(すなわち、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)種)の群に属する乳酸産生菌が、乳酸菌の群に一般に含まれる。
乳酸菌は、通常、バルクスターター増殖のための冷凍若しくはフリーズドライ培養物として、又は発酵乳製品を製造するための発酵容器内若しくはバット内へ直接接種することを企図した、いわゆる「Direct Vat Set」(DVS)培養物として乳業に供給される。そのような培養物は、一般に、「スターター培養物」又は「スターター」と呼ばれる。
よく使用されている乳酸菌のスターター培養株は、一般に、約30℃に最適な成長温度を有する中温性生物と、約40℃~約45℃の範囲に最適な成長温度を有する高温性生物とに分けられる。中温性の群に属する代表的な生物としては、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・ラクチス亜種クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)、ロイコノストック・メセンテロイデス亜種クレモンス(Leuconostoc mesenteroides subsp.cremons)、シュードロイコノストック・メセンテロイデス亜種クレモリス(Pseudoleuconostoc mesenteroides subsp.cremoris)、ペジオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・カゼイ亜種カゼイ(Lactobacillus casei subsp.casei)及びラクトバチルス・カゼイ亜種パラカゼイ(Lactobacillus paracasei subsp.paracasei)が挙げられる。高温性乳酸菌種としては、例として、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ラクティス(Lactobacillus delbrueckii subsp.lactis)、ラクトバチルス・ヘルベティクス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)及びラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)が挙げられる。
また、ビフィドバクテリウム・ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリウム・アニマリス(Bifidobacterium animalis)及びビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)を含むビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する嫌気性細菌も乳製品スターター培養物としてよく使用されており、一般に乳酸菌の群に含まれる。さらに、プロピオニバクテリウム(Propionibacteria)の種は、特にチーズの製造における乳製品スターター培養物として使用される。さらに、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する生物は、食品スターター培養物としてよく使用される。
微生物スターター培養物の別の群は、特に特定のタイプのチーズ及び飲料の製造において使用される酵母培養物及び糸状菌の培養物を含む真菌培養物である。真菌の例としては、ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium roqueforti)、ペニシリウム・カンディダム(Penicillium candidum)、ゲオトリクム・カンディダム(Geotrichum candidum)、トルラ・ケフィア(Torula kefir)、サッカロミセス・ケフィア(Saccharomyces kefir)及びサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)が挙げられる。
本発明の一実施形態では、ミルクベース基質の発酵に使用される微生物は、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、又はストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)及びラクトバチルス・デルブレッキイ亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp.bulgaricus)の混合物である。
本開示の方法に使用される発酵工程は当技術分野においてよく知られており、当業者であれば、温度、酸素、微生物の量及び特性、炭水化物、香味料、ミネラル、酵素などの添加物、及び処理時間などの好適なプロセス条件を選択する方法を知っているであろう。明らかに、発酵条件は、本発明の達成を支持するように選択される。
発酵の結果として、ミルクベース基質のpHは低下するであろう。本開示の発酵乳製品のpHは、3.5~6の範囲内、例えば3.5~5の範囲内、好ましくは3.8~4.8の範囲内であり得る。
したがって、本開示の特定の実施形態は、ポリペプチド又はポリペプチド組成物を使用する方法、又はオリゴ糖を産生するための上記の改変宿主細胞タイプのいずれか1つ以上を使用する方法に関する。オリゴ糖は、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖及びキシロオリゴ糖を含むが、これらに限定されない。
特定の実施形態では、オリゴ糖は、例えば、ラクツロース、トレハロース、ラムノース、マルトース、スクロース、ラクトース、又はセロビオースなどの二糖基質を含む培地中でポリペプチドを発現する本開示の改変宿主細胞をインキュベートすることによって産生される。このインキュベーションを、オリゴ糖が産生される条件下で行なう。細胞は、ヨーグルト、チーズ、発酵乳製品、栄養補助食品及びプロバイオティクス食品からなる群から選択される製品の一部であってよい。或いは、オリゴ糖を回収し、その後、目的製品の調製前後にこの製品に添加することができる。
特定の実施形態では、ヨーグルト、チーズ、発酵乳製品、栄養補助食品及びプロバイオティクス食品からなる群から選択される製品を製造するための本明細書に開示した改変宿主細胞の使用が提供される。
別の実施形態では、ガラクトオリゴ糖(GOS)を製造するための、本明細書で開示するトランスガラクトシル化ポリペプチド若しくはポリペプチド組成物(又は、本明細書で開示する細胞)の使用が提供される。一態様では、ヨーグルト、チーズ、発酵乳製品、栄養補助食品及びプロバイオティクス食品からなる群から選択される製品の一部とするガラクトオリゴ糖を製造するための、本明細書で開示するトランスガラクトシル化ポリペプチド若しくはポリペプチド組成物、又は本明細書で開示する細胞の使用が提供される。特定の実施形態では、製品は、ヨーグルト、チーズ又は発酵乳製品である。別の態様では、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)の増殖を増強するガラクトオリゴ糖を産生するための、本明細書で開示するトランスガラクトシル化ポリペプチド若しくはポリペプチド組成物(又は、改変宿主細胞)の使用が提供される。別の態様では、混合培養発酵でのビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)の増殖を増強するガラクトオリゴ糖を製造するための、本明細書で開示するトランスガラクトシル化ポリペプチド若しくはポリペプチド組成物、又は改変宿主細胞の使用が提供される。
別の態様では、本明細書で開示するトランスガラクトシル化ポリペプチド又はポリペプチド組成物を製造する方法であって、ポリペプチドの発現を可能にする条件下、好適な培養培地中において本明細書で開示する改変宿主細胞を培養する工程、及びその結果生じるポリペプチドを培養物から回収することを含む方法が提供される。ガラクトオリゴ糖を製造する方法であって、本明細書で開示するポリペプチド若しくはポリペプチド組成物、又は本明細書で開示する細胞と、ラクトースを含むミルクベースの溶液とを接触させる工程を含む方法が提供される。
オリゴ糖の添加により、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)のみ、又は混合培養物中のビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)の増殖を増強することができる。
他の実施形態では、トランスガラクトシル化ポリペプチド又はポリペプチド組成物を、キモシン又はレンニンなどのプロテアーゼ、ホスホリパーゼなどのリパーゼ、アミラーゼ、トランスフェラーゼ及びラクターゼなどの他の酵素とともに使用することができる。一態様では、本明細書に開示するトランスガラクトシル化ポリペプチドは、ラクターゼとともに使用することができる。これは、特に低ラクトースレベルで本明細書に開示するトランスガラクトシル化ポリペプチドによる処理を行った後の残留ラクトースを減少させることが望ましい場合に特に有用であり得る。一実施形態では、酵素は、細菌由来の(例えば、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteriaceae)科由来の)、例えばビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属由来のラクターゼであり、このラクターゼは国際公開第2009/071539号パンフレット及び国際公開第2013/182686号パンフレットに記載されている。
本発明のいくつかの態様は、以下の実施例に照らしてさらに理解することができるが、それらの実施例は限定するものと解釈すべきでない。材料及び方法の変更は、当業者には明白であろう。
実施例1
β-ガラクトシダーゼ及びラクターゼを産生するバチルス(Bacillus)宿主細胞における、望ましくないp-ニトロベンジルエステラーゼ酵素副活性の同定
本開示の出願人らは、バチルス(Bacillus)宿主細胞中で産生されるβ-ガラクトシダーゼ酵素を用いてヨーグルト及びUHTミルクを調合する場合の、これらの乳製品における不快な異臭が存在することを発見した。例えば、ヨーグルト製品又はUHTミルク製品にβ-ガラクトシダーゼ酵素を添加した1日目に、4人のうち1人がヨーグルト中の異臭を検出することができ、この異臭は5日目までに著しく悪化した。異臭の特性評価は、製品中に短鎖遊離脂肪酸(例えば、酪酸)を与えるリパーゼ活性と一致した。
したがって、これらのヨーグルト及びUHTミルク製品において検出された異臭をさらに評価するために、バチルス(Bacillus)宿主細胞におけるβ-ガラクトシダーゼの小規模生産からの物質を、リパーゼ活性についてスクリーニングしたが、リパーゼ活性は検出されなかった。リパーゼ活性のスクリーニングは、概ね、以下のように行った:リパーゼ含有試料とともにトリオクタン酸グリセリル基質を37℃で10分間インキュベートした後、形成された遊離脂肪酸の量をNEFA法によって測定する。NEFA Cキット(MEGAZYME)の原理は、遊離脂肪酸を補酵素Aでエステル化し、次いで過酸化水素の形成下で酸化する3段階反応である。酵素反応により、過酸化水素は紫色のキノニミン着色を引き起こし、インキュベーション直後にOD520nmを読み取る。さらに、バチルス(Bacillus)宿主において産生された(すなわち、小規模食品グレード発酵によって産生され、噴霧乾燥された)β-ガラクトシダーゼの物質「E」はヨーグルトにおける官能分析に合格し、さらに、最終製品に異臭のリスクがないことを示した。
最終製品(ヨーグルト及びUHTミルク)における異臭の突然の検出を説明するために、いくつかのシナリオが考えられている。例えば、異臭は、β-ガラクトシダーゼ産生におけるUFCのリパーゼ汚染、噴霧乾燥/ブレンド中のリパーゼ汚染、又は宿主生物(バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis))から発現されるリパーゼのバッチ間変動であり得る。
エステラーゼ/リパーゼ副活性の定性的評価
上記のヨーグルト及びUHTミルク製品中の異臭をさらに評価するために、噴霧乾燥したβ-ガラクトシダーゼのいくつかの試料(すなわち、β-ガラクトシダーゼの大規模産生に由来する)を、1%のトリブチリン、1.5%のレシチン、0.01MのCaCl2を含む0.05MのHEPES緩衝液(pH7.4)及びフェノールレッドを含む新たに開発した寒天スポットプレート上に適用した。リパーゼ/ホスホリパーゼ活性が、ウェルの周りのプレート上の黄色のハローとして検出され、3つの試料の全てが、リパーゼ/ホスホリパーゼ活性について陽性と同定された。したがって、これらの試料中で検出されたリパーゼ/ホスホリパーゼ活性は、リパーゼ/ホスホリパーゼ活性がいくつかの独立したバッチ中に存在したので、噴霧乾燥中のリパーゼからの交差汚染の結果ではないことを示した。例えば、試料「C」中のリパーゼ活性を、LIPU-K(E117)分析を使用し、試料ブランク値を補正して0.41 LIPU/gと定量された。
しかし、ホスホリパーゼはしばしばリパーゼ活性を含み、上記アッセイはスポットプレート中にリパーゼ基質(すなわち、トリブチリン)及びホスホリパーゼ基質(すなわち、レシチン)の混合物を使用したので、試料がホスホリパーゼ基質のみのスポットプレートアッセイで陽性であるかどうかを試験することとした(図1A)。試料「C」を適用した試料は、ホスホリパーゼ活性について陽性ではなかった(図1A中、ウェル「A」及び「B」の周りにハローは見られなかったので)。したがって、この結果は、副活性がリパーゼ/エステラーゼを加水分解するトリグリセリドであることを示した。
さらに、噴霧乾燥した物質中に存在するこの特異的リパーゼ酵素活性に対する混合基質スポットプレートの感度を試験した。0.41LIPU/gを有すると定量された試料「C」についていくつかの希釈を行い、各希釈物10μLを混合基質スポットプレートに適用した(例えば、表1及び図1Bを参照)。
驚くべきことに、試料はわずかに0.41LIPU/gを保持しただけであったが、160倍に希釈されてもなお陽性ハローを検出することができ(図1Bを参照)、10μLをプレートに適用した場合に、溶液中わずか0.0026LIPU/g程度の検出が可能であることを示した。一般に、LIPU-k E117法では、0.1LIPU/g未満を検出することは不可能である(データは示さず)。比較すると、これは、試料中に検出されたリパーゼ/エステラーゼ活性は中性pHを好み、乳製品用途において「チーズ様」異臭を生じることも知られている短鎖脂肪酸に特異的であることを示し得た。
発酵におけるエステラーゼ副活性
バチルス(Bacillus)宿主中で産生されたβ-ガラクトシダーゼ試料A及びBの2つの安定化限外濾過濃縮物(UFC)中間体を試験して、リパーゼ活性がUFC試料中に存在し、したがって噴霧乾燥中の汚染経路に由来しないことを確認した。例えば、2つのUFC試料A及びBは同じ発酵に由来し、したがって、両試料は汚染事象が発酵後に生じない限り、リパーゼ活性を含むはずである。より特には、リパーゼ/エステラーゼ活性の試験結果が陽性であった粉末β-ガラクトシダーゼ物質は全て、試料A物質に由来した。より具体的には、発酵物を2つに分け、使用を意図した用途に応じて、2つの異なる仕様後に安定化した。A及びBの仕様を以下の表2に示す。
リパーゼ活性(LIPU-k、E117)の定量により、両UFC物質がリパーゼ副活性を有することが確認され、リパーゼ副活性がバチルス(Bacillus)産生宿主細胞に由来することが示された。さらに、より低いpH及びソルビン酸カリウムで安定化した材料(試料A)は、1000BLU(表3を参照)に正規化してUFCの希釈を補正した場合であっても、より高いpH及び塩化ナトリウムで安定化した材料(試料B)よりもリパーゼ/エステラーゼ活性が低かった。
異臭が最初の官能試験で検出されなかった理由をより明確に理解するため、エステラーゼ活性を定量するための試料をいくつか選択した。これらの試料中のリパーゼレベルを、LIPU-k(E117)を使用して定量し、試料ブランク値を補正し、且つ1000BLUに正規化して、結果を比較した。比較した試料は、(A)UFC A(大規模発酵から)由来の粉末物質「C」、(B)噴霧乾燥物質D(小規模発酵から)である試料、及び(C)官能試験に使用した実際の試料E(小規模発酵から)であった。定量したリパーゼレベルを表4に示す。β-ガラクトシダーゼ活性に対して正規化されたリパーゼ/エステラーゼレベルで見ると、試料D(小規模発酵)及び試料E(官能分析に使用)中のリパーゼがより少なかったことを示している。
より特には、小規模発酵由来の試料D及びEは、大規模発酵試料C由来の物質と比較して、約半分のリパーゼレベルを示している。これは大規模(発酵)生産に入った場合にリパーゼ/エステラーゼレベルが増加したことを示す。上記を考慮すると、試料Cの大規模発酵は小規模発酵(すなわち、試料D及びE)よりも細胞倍加数(すなわち、世代数)が多いので、大規模(発酵)生産からの試料Cが小規模(発酵)生産からの試料D及びEと比較して高いリパーゼ活性を示すことは、さほど驚くべきことではない。したがって、より高いレベルの(好ましくない)リパーゼ副活性についての最も可能性のある説明は、その活性がβ-ガラクトシダーゼ酵素を産生するために使用したバチルス(Bacillus)宿主細胞に由来することである。例えば、ヨーグルト中のこの異臭味の閾値限界は当初は知られていなかったが、本明細書で示すデータは、0.11LIPU/1000BLUから0.25LIPU/1000BLUになると、第1週以内の味見で、異臭が検出限界未満から検出限界を超えるまでにシフトしたことを示す。
リパーゼ/エステラーゼザイモグラム
ナノLC-MSMSによる同定のための選択領域を狭めるために、リパーゼ/ホスホリパーゼザイモグラムを実施した。物質Cを(pH3~10)等電点電気泳動(IEF)ゲル上に対称的に負荷した。その後、ゲルを2つに切断した。第1の部分(図2、パネルB)を、1%のトリブチリン、0.75%のレシチン、0.2MのHEPES緩衝液(pH7.4)、0.01MのCaCl2及びフェノールレッドを含有する寒天ゲル(図2、パネルA)上に置き、40℃で2時間インキュベートした。第2の部分を固定し、クーマシーで染色した(図2、パネルC)。寒天ゲル(図2、パネルA)から、オーバーレイを介してリパーゼ/エステラーゼ(図2、パネルB)が基質を分解し、ゲル中に透明な孔を残した場所を見ることができる。上方矢印で示すクーマシーブルー染色ゲル上のバンド(図2、パネルC)は、ゲルの底部から13~14mmに位置し、寒天ゲルに示すように(図3を参照)、リパーゼ活性が位置したのと同様であった。図2、パネルCに示すゲル中の矢印で示すバンドを、同定のために切り出した。
ナノLC-MSMSによる同定の結果は、上方バンド(図2、パネルCの上方矢印)において、同定されたパラ-ニトロベンジルエステラーゼ(p-NBE;配列番号2)を示し、これは、リパーゼ活性を有するとして文献に記載されている(Ribitsch et al.,2011)。結果はさらに、p-NBE酵素がバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)宿主細胞に由来することを示している(すなわち、交差汚染とは対照的に)。さらに、カルボキシエステラーゼが下方のバンド(図2、パネルCの下方の矢印)で同定され、この同定されたカルボキシエステラーゼはp-NBEに対して高い配列相同性を有する。しかし、配列比較により、この同定されたカルボキシエステラーゼがパラ-ニトロベンジルエステラーゼのタンパク質分解による切断の人工産物であることが明らかになった。
B.サブチリス(B.subtilis)p-NBEの生化学的特徴は文献に記載されている(Chen et al.,1995;Kaiser et al.,2006;Ribitsch et al.,2011)。この酵素は、短鎖p-ニトロフェニルエステル及びトリアシルグリセロールに対して特異的である。さらに、このp-NBEは最適pHが8であり、Ca2+によって刺激される。さらに、本開示において使用されるリパーゼ/エステラーゼスポットプレートはpH7.4であり、Ca2+を含み、これらの特定のスポットプレートがp-NBE酵素に対して非常に高い感受性を有する理由のさらなる証拠を提供する。例えば、p-NBE酵素はpH5ではほとんど不活性(約10%の残存活性)であるが、pH6.5ではその最適pH8に対して略50%の活性を保持している(Kaiser et al.,2006)。したがって、p-NBEは低pHでより不安定であるので、UFCの異なるpH仕様は、物質Aと比較して物質Bにおいてより多くのリパーゼ活性が観察される理由を説明し得る。さらに、p-NBEは50℃まで安定であるが、50℃を超える温度で急速且つ不可逆的に不活性化される。
リパーゼ/エステラーゼ活性の不活性化の推定方法
50℃を超えるが55℃未満の熱処理がβ-ガラクトシダーゼ活性に影響を及ぼすことなく、リパーゼ/エステラーゼ活性を不活性化し得るかどうかを試験した(すなわち、55℃を超える温度は、β-ガラクトシダーゼ活性を著しく損なうと考えられる)。したがって、物質A及びCを、53℃で20分間、40分間及び60分間インキュベートすることによって試験した。粉末物質Cには物理的変化は認められなかったが、UFC試料Aには激しい凝集が生じた。この凝集物を遠心分離(12,000rpmで5分間)により除去した。残留エステラーゼ活性を寒天スポットプレート上で半定量化した(図4を参照)。
粉末を熱処理することによるハローの大きさの差は観察されなかった。リパーゼ/エステラーゼスポットプレートの感度を測定したときの実験におけるハローサイズを比較すると、UFC Aの推定残留エステラーゼ活性は以下の通りである:
CB-100%
B-20分-5%
B-40分-2.5%
さらに、ラクターゼ活性を、無色の基質、2-ニトロフェリルβ-D-ガラクトピラノシド(ONPG)の、黄色の2-ニトロフェノール(ONP)及びガラクトースへの30℃での10分間の加水分解にしたがって定量した。750μLの10%炭酸ナトリウムで反応を停止させ、ONPをOD420で測定した。活性は、試料Cの希釈によって調製した標準曲線に対して計算した。表5に示すのは試料の53℃熱処理後のβ-ガラクトシダーゼ活性である。
これから、リパーゼ活性とβ-ガラクトシダーゼ活性との間の関係を計算することができる。表6に示すように、リパーゼ活性は20分間のインキュベーション(すなわち、試料B20;表6)直後に大きく減少しており、したがって、ヨーグルト及びUHTミルク中の異臭の検出限界未満であるはずである。
48℃、51℃及び53℃でのラクターゼ及びエステラーゼ活性の安定性をさらに評価することとした。試料をアリコートし、種々の温度及び時間でインキュベートした。その後、エステラーゼ(図5)及びラクターゼ(図6)活性を測定し、生成した凝集物を前記のように遠心分離によって除去した。
図5に示すように、エステラーゼ活性は、48℃のインキュベーションによって有意に低下せず、エステラーゼを不活性化するために129分間以上インキュベートする必要があろう。図5に示すように、53℃のインキュベーションが最も有効な温度であり、20分後に活性が約95%低下した。図6に示すように、20分間のインキュベーション後、使用した温度(すなわち、48℃、51℃及び53℃)の間で回復にあまり差はなく、さらなるインキュベーション時間は、試験したすべての温度でラクターゼ活性のさらなる低下を単にもたらすだけである。したがって、エステラーゼ安定性に基づいて、53℃の温度で20分間が、UFC試料Aの推奨される処理であろう(しかし、より大きな容量にはより長いインキュベーション時間が必要となり得る)。
用量依存適用試験
UHTミルク及びヨーグルトの両方における異臭の分析フィンガープリントを決定するために、種々の用量の物質を用いて試験した(物質は下記の表7及び8に示すように投与された)。UHTミルクを次のように処理した;間接管式加熱、下流ホモジナイゼーション 200バール、75℃。
5℃又は周囲温度で1週間貯蔵した後、試料を味見したところ、0.033%を超える投与はヨーグルト及びUHTミルクの両方において異臭をもたらし、一方、0.033%以下の投与では1週間の貯蔵後に異臭を知覚することができないことがわかった(下記の表9及び10を参照)。
さらに、ヨーグルト及びUHTミルクを1週間貯蔵した後、試料をまた、主にケトン及び遊離脂肪酸を含む香味成分の分析のために送った。異臭プロファイルが2つの用途で異なることは明らかであった。ヨーグルトでは(図7)、β-ガラクトシダーゼ粉末物質Cの用量を増加させることによって増加したのは主に遊離脂肪酸レベルであり、ケトンの度合いはさほどではなかった。UHTミルクでは(図8)、遊離脂肪酸及びケトン(特に2-ヘプタノン)はいずれも用量に従って増加していた。
したがって、間接管式加熱によってUHTミルクを処理したことは、異臭をいくらか隠すようであった。例えば、UHTミルク(直接注入によって処理された)における別の試験は、異臭に対してより敏感であるようであった。例えば、図9に示すように、0.13%投与した場合、貯蔵期間にわたって遊離脂肪酸(特に、2-ヘプタノン及び2-ノナノン)のレベルが増加していることが明らかにわかる。
実施例2
p-ニトロベンジルエステラーゼ副活性が欠損するように遺伝子改変されたバチルス(Bacillus)宿主細胞
パラ-ニトロベンジルエステラーゼ(配列番号2)をコードするバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)pnbA遺伝子(配列番号1)を、Janes and Stibitz(2006)によって記載されたマーカーレス法を用いて欠失させた。組込みプラスミドpKSV-I-Sce-Kmの構築を以下のように行った。20ピコモルの2つの一本鎖オリゴマー、I-SceI-1(cgatTAGGGATAACAGGGTAATat;配列番号19、下線を有する太字はI-SceI制限酵素部位の相同配列である)及びI-SceI-2(cgatATTACCCTGTTATCCCTAat;配列番号20)を、98℃で7分間インキュベートし、次いで、55℃で5分間保持して、オリゴマーをアニールした。アニールした断片をT4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England BioLabs)でリン酸化し、次いで、pKSV7のClaI部位とライゲートした(Smith and Youngman,1992)。pKSV7に存在するクロラムフェニコール耐性遺伝子を排除するために、プラスミドをNcoI及びMfeIで消化し、T4 DNAポリメラーゼ(New England BioLabs)で平滑化した。アガロースゲル電気泳動によってクロラムフェニコール耐性遺伝子断片からrepF及びcop-6を含有する断片を分離し、ゲル抽出キット(Qiagen)で精製した後、自己連結させて、pKSベクターを作製した。pKSベクターを制限エンドヌクレアーゼHindIIIで消化し、HindIII制限エンドヌクレアーゼで消化した後、プラスミドpDG780(Guerout-Fleury et al.,1995)に由来するカナマシン耐性遺伝子に連結した。ここで、得られたプラスミドは「pKSV-I-Sce Km」である。
バチルス・サブチリス(B.subtilis)168ゲノムDNA由来のpnbA遺伝子の上流及び下流の遺伝子座を、以下のプライマーを使用して増幅した:
プライマー番号981:5’-AACCAGCACTAGTGTCGACGCCTGGTAGGTCG-3’(配列番号21);プライマー番号984:5’-GCACCAATGTATCCTGTTTTCCCCATATCGTTAGCCCTTTAACCGATCATCATC-3’(配列番号22);プライマー番号985:5’-ATATGGATCCGTTCTACTAGACATTTATGAAGTACAG-3’(配列番号23)及びプライマー番号983:5’-GATGATGATCGGTTAAAGGGCTAACGATATGGGGAAAACAGG-3’(配列番号24)。
2つのPCR産物を、プライマー番号981:5’-AACCAGCACTAGTGTCGACGCCTGGTAGGCG-3’(配列番号21)及びプライマー番号985:5’-ATATGGATCCGTTCTACTAGACATTTATGAAGTACAG-3’(配列番号23)を使用し、融合PCRによって構築した。
アンプリコンを制限部位SpeI及びBamHIで消化し、制限酵素XbaI及びBamHIで線状化したpKSV-I-Sce-Kmベクターに連結し、得られたベクターをpKSV-ISce-pnbAと命名した。
pKSV-ISce-pnbAベクターを形質転換し、親B.サブチリス(B.subtilis)宿主細胞のゲノムに組み込んだ。制限酵素I-Sceの発現コンストラクトを含むpKBJ233(Janes and Stibitz,2006)と呼ばれる第2のベクターを使用して、親B.サブチリス(B.subtilis)(pksV-ISce-pnbA)宿主細胞を形質転換した。12時間毎に培地を更新することによって、この株を72時間増殖させ、次いで、ルリア寒天プレート上で再単離した。カナマイシン感受性クローンを選択し、PCRによってpnbA遺伝子の欠失について試験した。得られたB.サブチリス(B.subtilis)娘細胞(すなわち、欠失pnbA遺伝子を含む)をCB103と名付けた。
実施例3
宿主株におけるP-ニトロベンジルエステラーゼ遺伝子のノックアウト後のUFC物質の評価
上記実施例2に記載したように、同定された好ましくないp-NBE酵素活性(配列番号2)をコードするB.サブチリス(B.subtilis)遺伝子を、本開示のB.サブチリス(B.subtilis)(β-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼ産生)宿主細胞において欠失させた。したがって、実施例2に記載される、得られたp-NBE欠失B.サブチリス(B.subtilis)宿主細胞を、β-ガラクトシダーゼの発酵に使用した。本明細書において、特定の遺伝子の欠失(ノックアウト)は、問題の欠失遺伝子が宿主細胞に必須であるか、又は宿主細胞が類似の特徴を有する別の酵素を発現することによって補償する場合、特定のリスクを提供することに留意されたい。本明細書に記載されるように、p-NBE酵素をコードする遺伝子は、B.サブチリス(B.subtilis)宿主細胞に必須ではなく、したがって、p-NBE欠失B.サブチリス(B.subtilis)宿主細胞の発酵から生じるUFC物質のエステラーゼ活性を、スポットプレート分析によって試験した。
陽性対照として、20μLの53℃で熱処理した試料を適用した。同様に、10μL及び20μLの新しい物質(すなわち、p-NBE欠失B.サブチリス(B.subtilis)宿主細胞中で産生された)をスポットプレートに適用し、40℃で24時間インキュベートした。図10に示すように、新しい物質においてエステラーゼ活性は検出されなかった。図10に示すように、黄色のハローは、53℃で処理した試料(図10中、53Cと表示)におけるリパーゼ活性を示す。対照的に、p-NBE酵素をコードする遺伝子が欠失したB.サブチリス(B.subtilis)宿主細胞から産生された試料(実施例2)に対応する、「新」(すなわち、黄色のハローを欠く)と表示した図10のスポットプレートの穴は、検出可能なリパーゼ活性を有さなかった(図10)。
続いて、試料C(すなわち、p-NBE副活性を含む)及び新しいp-NBEを含まない物質(すなわち、B.サブチリス(B.subtilis)Δp-NBE宿主細胞から産生された)の両方を、ヨーグルト及びUHTミルクの両方の適用試験において使用して(直接注入によって処理)、異臭が完全に消失したことを確認した。したがって、アッセイにおいて成分のわずかな変化も明確に検出可能であることを確実にするために、新しい物質を0.207%で過剰投与することとした。
図11(ヨーグルト)及び図12(UHTミルク)に示すように、新しいUFC物質は対照(すなわち、図11及び12;レファレンス、酵素未添加)と同等で、したがって、新しいUFC物質は、特定の用途において異臭をもたらさないことが明らかに観察される。さらに、図11及び図12は、エステラーゼ含有物質(旧株)が他の物質(すなわち、新株)よりも高いレベルの遊離脂肪酸及びケトンを有し、UHTミルク中の2-ヘプタノンが、異臭の大きな原因になっていることを明確に示している。
したがって、本明細書に記載されるように、本開示のβ-ガラクトシダーゼ及び/又はラクターゼを産生するために使用されるB.サブチリス(B.subtilis)宿主細胞(実施例2を参照)におけるp-NBE酵素(配列番号2)をコードする遺伝子の欠失は、元の(親)B.サブチリス(B.subtilis)宿主細胞に存在するp-NBE酵素副活性によって引き起こされる異臭を完全に消失させ、改変された(娘)B.サブチリス(B.subtilis)宿主細胞においてはp-NBE活性が消失している。
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