以下に図面を参照して、本発明にかかる光送信装置および光受信装置の実施の形態を詳細に説明する。
(実施の形態1)
(実施の形態1にかかる光送信装置)
図1は、実施の形態1にかかる光送信装置の一例を示す図である。図1に示すように、実施の形態1にかかる光送信装置100は、送信回路110aと、発光素子121~124と、を備える。図1に示す例では、光送信装置100は、発光素子121~124からそれぞれ光信号を送信することにより大容量の光伝送を行う4チャネルの送信装置である。この4チャネルをチャネル#1~#4とする。
一例としては、光送信装置100は、発光素子121~124からそれぞれ25[Gbps]の光信号を送信することにより、25×4=100[Gbps]の光伝送を行うことができる。他の一例としては、光送信装置100は、発光素子121~124からそれぞれ28[Gbps]の光信号を送信することにより、28×4=112[Gbps]の光伝送を行ってもよい。
送信回路110aは、入力されるチャネル#1~#4のデータ信号(電気信号)に基づいて、発光素子121~124を駆動するための各駆動信号を生成する回路である。送信回路110aは、たとえばFPGAなどの1以上の集積回路により実現することができる。FPGAはField Programmable Gate Arrayの略語である。たとえば、送信回路110aは、それぞれチャネル#1~#4に対応する送信部110(#1~#4)と、位相比較器116と、位相シフタ制御回路117と、を備える。
送信部110(#1~#4)は、それぞれチャネル#1~#4に対応して、送信部110(#1)、送信部110(#2)、送信部110(#3)、送信部110(#4)の順に配列されている。すなわち、送信部110(#1)と送信部110(#2)、送信部110(#2)と送信部110(#3)、送信部110(#3)と送信部110(#4)がそれぞれ互いに隣接している。隣接するとは、隣り合って配置されることである。
送信部110(#1~#4)には、それぞれチャネル#1~#4のデータ信号が入力される。ここで、送信部110(#1~#4)へ入力されるチャネル#1~#4のデータ信号の間の位相関係は一定ではない。これは、チャネル#1~#4のデータ信号の送信元がチャネル間の位相を揃えていないこと、伝送路においてチャネル間の位相がずれること、またはその両方に起因する。ただし、送信部110(#1~#4)へ入力されるチャネル#1~#4のデータ信号の各周波数は同じである。
複数のチャネル(たとえばチャネル#1~#4)のデータ信号の間の位相関係とは、複数のチャネルのデータ信号の各位相の間のずれに関する関係である。たとえば、複数のチャネルのデータ信号の間の位相関係は、複数のチャネルのデータ信号の各位相のうちいくつの位相が同じ位相であるかの関係である。または、複数のチャネルのデータ信号の間の位相関係は、複数のチャネルのデータ信号の各位相のうちいずれの位相が同じ位相であるかの関係であってもよい。または、複数のチャネルのデータ信号の間の位相関係は、複数のチャネルのうちの1つのチャネルのデータ信号の位相に対する、複数のチャネルのうちの他の各チャネルのデータ信号の位相のずれの方向と量(位相差)等であってもよい。
送信部110(#1~#4)のうち、最初に送信部110(#1)について説明する。送信部110(#1)は、送信回路110aへ入力されたチャネル#1のデータ信号に基づいて、発光素子121を駆動するための駆動信号を生成する。たとえば、送信部110(#1)は、伝送路ロス補償回路111(#1)と、CDR回路112(#1)と、0/1判定回路113(#1)と、可変位相シフタ114(#1)と、出力ドライバ115(#1)と、を備える。CDRはClock Data Recoveryの略語である。
伝送路ロス補償回路111(#1)は、送信部110(#1)へ入力されたチャネル#1のデータ信号を増幅することにより、そのデータ信号における伝送路ロスを補償する増幅回路である。伝送路ロスは、たとえば、送信回路110aへデータ信号を送信した回路(一例としては後述の図20に示す計算機31)と、送信回路110aと、の間の伝送路において生じたデータ信号のロス(減衰)である。伝送路ロス補償回路111(#1)は、伝送路ロスを補償したデータ信号をCDR回路112(#1)および0/1判定回路113(#1)へ出力する。
CDR回路112(#1)は、伝送路ロス補償回路111(#1)から出力されたデータ信号からクロックを再生し、再生したクロック(再生クロック)を0/1判定回路113および位相比較器116へ出力する。たとえば、CDR回路112(#1)は、PLLを用いた位相同期方式、位相補間回路(インタポレータ)を用いた位相補間方式など各種方式の回路とすることができる。PLLはPhase Locked Loop(位相同期回路)の略語である。
図1に示す例では、CDR回路112(#1)は、PLLを用いた位相同期方式の回路であり、位相検出器112a(#1)と、平均化回路112b(#1)と、VCO112c(#1)と、を備える。VCOはVoltage Controlled Oscillator(電圧制御発振器)の略語である。
位相検出器112a(#1)は、CDR回路112(#1)へ入力されたデータ信号と、VCO112c(#1)からフィードバックされたクロック信号と、の位相差を検出し、検出した位相差を示す電圧信号を平均化回路112b(#1)へ出力する。たとえば、位相検出器112a(#1)は排他的論理和やチャージポンプなどの回路により実現することができる。
平均化回路112b(#1)は、位相検出器112a(#1)から出力された電圧信号を時間平均し、時間平均した電圧信号を制御電圧としてVCO112c(#1)へ出力する。たとえば、VCO112c(#1)はLPFなどにより実現することができる。LPFはLow Pass Filter(ローパスフィルタ)の略語である。
VCO112c(#1)は、平均化回路112b(#1)から出力された制御電圧に応じた周波数のクロック信号を発振し、発振したクロック信号を再生クロックとして0/1判定回路113(#1)および位相比較器116へ出力する。また、VCO112c(#1)は、発振したクロック信号を位相検出器112a(#1)にフィードバックする。VCO112c(#1)には、たとえばQVCOなどの各種のVCOを用いることができる。QVCOはQuadrature Voltage Controlled Oscillator(電圧制御発振器)の略語である。
0/1判定回路113(#1)は、伝送路ロス補償回路111(#1)から出力されたデータ信号の値(0または1)を、CDR回路112(#1)から出力された再生クロックのエッジ(立ち上がりまたは立ち下がり)のタイミングにおいて判定する。そして、0/1判定回路113(#1)は、その判定結果を、送信部110(#1)へ入力されたデータ信号から識別再生したデータ信号として可変位相シフタ114(#1)へ出力する。0/1判定回路113(#1)は、たとえばフリップフロップ(flip-flop)により実現することができる。
可変位相シフタ114(#1)は、0/1判定回路113(#1)から出力されたデータ信号の位相を、位相シフタ制御回路117から出力された制御信号に基づいてシフトさせる。そして、可変位相シフタ114(#1)は、位相をシフトさせたデータ信号を出力ドライバ115(#1)へ出力する。可変位相シフタ114(#1)の構成については後述する(たとえば図12参照)。
出力ドライバ115(#1)は、可変位相シフタ114(#1)から出力されたデータ信号に基づく発光素子121の駆動信号を生成し、生成した駆動信号を発光素子121へ出力する。
送信部110(#2)は、送信回路110aへ入力されたチャネル#2のデータ信号に基づいて、発光素子122を駆動するための駆動信号を生成する。たとえば、送信部110(#2)は、伝送路ロス補償回路111(#2)と、CDR回路112(#2)と、0/1判定回路113(#2)と、可変位相シフタ114(#2)と、出力ドライバ115(#2)と、を備える。
これらの送信部110(#2)の各構成は、それぞれ上述の送信部110(#1)の伝送路ロス補償回路111(#1)、CDR回路112(#1)、0/1判定回路113(#1)、可変位相シフタ114(#1)および出力ドライバ115(#1)と同様である。ただし、伝送路ロス補償回路111(#2)は、送信部110(#2)へ入力されたチャネル#2のデータ信号を増幅する。また、出力ドライバ115(#2)は、生成した駆動信号を発光素子122へ出力する。
送信部110(#3)は、送信回路110aへ入力されたチャネル#3のデータ信号に基づいて、発光素子123を駆動するための駆動信号を生成する。たとえば、送信部110(#3)は、伝送路ロス補償回路111(#3)と、CDR回路112(#3)と、0/1判定回路113(#3)と、可変位相シフタ114(#3)と、出力ドライバ115(#3)と、を備える。
これらの送信部110(#3)の各構成は、それぞれ上述の送信部110(#1)の伝送路ロス補償回路111(#1)、CDR回路112(#1)、0/1判定回路113(#1)、可変位相シフタ114(#1)および出力ドライバ115(#1)と同様である。ただし、伝送路ロス補償回路111(#3)は、送信部110(#3)へ入力されたチャネル#3のデータ信号を増幅する。また、出力ドライバ115(#3)は、生成した駆動信号を発光素子123へ出力する。
送信部110(#4)は、送信回路110aへ入力されたチャネル#4のデータ信号に基づいて、発光素子124を駆動するための駆動信号を生成する。たとえば、送信部110(#4)は、伝送路ロス補償回路111(#4)と、CDR回路112(#4)と、0/1判定回路113(#4)と、可変位相シフタ114(#4)と、出力ドライバ115(#4)と、を備える。
これらの送信部110(#4)の各構成は、それぞれ上述の送信部110(#1)の伝送路ロス補償回路111(#1)、CDR回路112(#1)、0/1判定回路113(#1)、可変位相シフタ114(#1)および出力ドライバ115(#1)と同様である。ただし、伝送路ロス補償回路111(#4)は、送信部110(#4)へ入力されたチャネル#4のデータ信号を増幅する。また、出力ドライバ115(#4)は、生成した駆動信号を発光素子124へ出力する。
位相比較器116には、それぞれ送信部110(#1~#4)のCDR回路112(#1~#4)から出力された各再生クロックが入力される。位相比較器116は、入力された各再生クロックの位相を比較することにより、送信回路110aへ入力されたチャネル#1~#4の各データ信号の間における位相差(位相関係)を検出し、検出結果を位相シフタ制御回路117へ出力する。位相比較器116の構成については後述する(たとえば図3参照)。
位相シフタ制御回路117は、位相比較器116から出力された位相差の検出結果に基づいて、それぞれ送信部110(#1~#4)の可変位相シフタ114(#1~#4)におけるデータ信号の位相のシフトを制御する処理を行う論理回路である。この制御は、位相シフタ制御回路117が可変位相シフタ114(#1~#4)へ出力する制御信号に基づいて行われる。位相シフタ制御回路117による処理については後述する(たとえば図13,図14参照)。
位相比較器116および位相シフタ制御回路117は、たとえば、送信回路110aを実現する集積回路に含まれるプロセッサおよびメモリが協調して動作することにより実現することができる。
発光素子121~124は、それぞれチャネル#1~#4に対応して、発光素子121、発光素子122、発光素子123、発光素子124の順に配列されている。発光素子121は、送信部110(#1)から出力されたチャネル#1の駆動信号に応じた光信号を生成し、生成した光信号を、光送信装置100の対向装置(一例としては図20に示す第2光伝送装置2030)へ向けて出射する。同様に、発光素子122~124は、それぞれ送信部110(#2~#4)から出力されたチャネル#2~#4の駆動信号に応じた光信号を生成し、生成した光信号を、光送信装置100の対向装置へ向けて出射する。
発光素子121~124から出射された各光信号は、光送信装置100と対向装置との間の光伝送路(たとえば光ファイバ)を介して送信され、対向装置により受信される。発光素子121~124は、たとえばVCSELなどの各種のレーザダイオードにより実現することができる。VCSELはVertical Cavity Surface Emitting Laser(垂直共振器面発光レーザ)の略語である。
たとえば多チャネルの光送信装置100においては、250[μm]ピッチでの高密度化が求められ、送信部110(#1~#4)は一例としてはこのピッチで配列される。したがって、送信部110(#1~#4)のそれぞれの間の距離が短いため、特に出力ドライバ115(#1~#4)などの電流消費が大きい部分においてチャネル間のクロストークが発生する。
図1に示すデータ信号11~14は、上述の位相シフタ制御回路117による位相制御を行わないと仮定した場合における、それぞれ送信部110(#1~#4)から発光素子121~124へ出力される駆動信号である。
図1に示す例では、データ信号11~14のうち、データ信号11,13,14は同じ時間(t)において立ち上がっており、データ信号12はデータ信号11,13,14よりも遅い時間(t)において立ち上がっている。すなわち、データ信号11~14のうち、データ信号11,13,14は位相が揃っており、データ信号12はデータ信号11,13,14に対して位相がずれている。
図1のデータ信号12について、クロストークによる影響がないと仮定した場合の波形を点線で示し、クロストークによる影響がある場合の波形を実線で示している。図1に示すように、データ信号12には、立ち上がりの前の値が0の部分において、データ信号11,13,14の立ち上がりによるクロストーク成分が発生している。また、データ信号12には、立ち上がりの後の値が1の部分において、データ信号11,13,14の立ち下がりによるクロストーク成分が発生している。
このため、発光素子122へ出力されるデータ信号12の波形が局所的に大きく歪み、発光素子122から出射される光信号の波形も局所的に大きく歪むことになる。このため、受信側(対向装置)において、0のデータ信号を1と誤判定したり、1のデータ信号を0と誤判定したりして伝送品質が劣化する。
このようなチャネル間のクロストークは、電流消費が比較的大きな出力ドライバ115(#1~#4)において特に発生しやすい。すなわち、あるチャネルの出力ドライバ115で生じた信号ノイズが、他チャネルのデータ信号の信号波形を歪ませることになる。
チャネル間のクロストークは、信号波形が0から1(または1から0)に遷移するときに発生する。そして、クロストークを与えるチャネル(図1に示す例ではチャネル#1,#3,#4)すべての信号位相が揃ったとき、クロストークを受けるチャネル(図1に示す例ではチャネル#2)の信号は最も歪む。
図1に示すデータ信号21~24は、上述の位相シフタ制御回路117による位相制御を行う場合における、それぞれ送信部110(#1~#4)から発光素子121~124へ出力される駆動信号である。図1に示す例では、位相シフタ制御回路117は、データ信号21~24の位相がそれぞれずれるように、可変位相シフタ114(#1~#4)の制御を行う。
図1のデータ信号22について、クロストークによる影響がないと仮定した場合の波形を点線で示し、クロストークによる影響がある場合の波形を実線で示している。データ信号21,23,24によるデータ信号22へのクロストークについてみると、データ信号21,23,24の位相がずれていることにより、データ信号21,23,24によるデータ信号22へのクロストークが時間的に分散する。
このため、発光素子122へ出力されるデータ信号12の波形の局所的な歪みが小さくなり、発光素子122から出射される光信号の波形の局所的な歪みが小さくなる。このため、受信側(対向装置)における0と1の誤判定が発生しにくくなり、伝送品質が向上する。このように、光送信装置100は、各チャネルのデータエッジ(立ち上がりと立ち下がり)を意図的にずらすことで、チャネル間のクロストークを低減することができる。
(実施の形態1にかかるデータ信号および再生クロック)
図2は、実施の形態1にかかるデータ信号および再生クロックの一例を示す図である。図2において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は信号強度(P)を示す。図2に示すデータ信号210は、たとえば送信部110(#1)へ入力され、伝送路ロス補償回路111(#1)によりロスを補償されたデータ信号(0/1判定回路入力)をアイパターン(データ信号eye)で示したものである。図2に示す再生クロック220は、CDR回路112(#1)がデータ信号210から再生したクロック信号である。
図2に示すように、CDR回路112(#1)は、データ信号210に基づいて、たとえばデータ信号210のアイの中心において立ち上がり221が発生する再生クロック220を生成する。これにより、0/1判定回路113(#1)は、再生クロック220の立ち上がり221のタイミングを参照することで、データ信号210のアイの中心において0と1の判定を行うことができる。
チャネル#1のデータ信号210および再生クロック220について説明したが、チャネル#2、チャネル#3、チャネル#4のデータ信号210および再生クロック220も同様である。そして、図1に示した位相比較器116は、チャネル#1~#4の再生クロック220の位相(たとえば立ち上がり221のタイミング)を比較することにより、チャネル#1~#4の各データ信号の間における位相差を検出することができる。
(実施の形態1にかかる位相比較器)
図3は、実施の形態1にかかる位相比較器の一例を示す図である。図1に示した位相比較器116は、たとえば、図3に示すように、分周器311~314と、基準チャネルセレクタ321と、被測定チャネルセレクタ322と、第1位相検出回路331と、第2位相検出回路332と、を備える。
分周器311は、送信部110(#1)のCDR回路112(#1)から出力された再生クロックを分周(たとえば1/2分周)し、分周した再生クロックを基準チャネルセレクタ321および被測定チャネルセレクタ322へ出力する。同様に、分周器312~314は、それぞれ送信部110(#2~#4)のCDR回路112(#2~#4)から出力された再生クロックを分周し、分周した再生クロックを基準チャネルセレクタ321および被測定チャネルセレクタ322へ出力する。分周器311~314による再生クロックの分周については後述する(たとえば図4参照)。
基準チャネルセレクタ321は、分周器311~314から出力された各再生クロックのうちいずれかを基準チャネルの再生クロックとして選択し、選択した再生クロックを第1位相検出回路331および第2位相検出回路332へ出力する。基準チャネルは、チャネル間の位相比較において基準とするチャネルである。基準チャネルセレクタ321による再生クロックの選択(基準チャネル選択)は、たとえば位相シフタ制御回路117からの制御信号によって行われる。
被測定チャネルセレクタ322は、分周器311~314から出力された各再生クロックのうちいずれかを被測定チャネルの再生クロックとして選択し、選択した再生クロックを第1位相検出回路331および第2位相検出回路332へ出力する。被測定チャネルは、チャネル間の位相比較において基準チャネルと比較するチャネルである。被測定チャネルセレクタ322による再生クロックの選択(被測定チャネル選択)は、たとえば位相シフタ制御回路117からの制御信号によって行われる。
第1位相検出回路331は、基準チャネルセレクタ321から出力された基準チャネルの再生クロックと、被測定チャネルセレクタ322から出力された被測定チャネルの再生クロックと、の間の位相差の検出を行う。第1位相検出回路331により検出される位相差については後述する(たとえば図5,図6参照)。第1位相検出回路331は、検出結果を位相シフタ制御回路117へ出力する。たとえば、第1位相検出回路331は、乗算器331aと、平均化・量子化回路331bと、を備える。
乗算器331aは、基準チャネルセレクタ321から出力された基準チャネルの再生クロックと、被測定チャネルセレクタ322から出力された被測定チャネルの再生クロックと、を乗算し、乗算により得られた信号を平均化・量子化回路331bへ出力する。平均化・量子化回路331bは、乗算器331aから出力された信号を平均化し、平均化した信号の量子化を行う。そして、平均化・量子化回路331bは、量子化した値を第1位相検出回路331による検出結果として位相シフタ制御回路117へ出力する。
第2位相検出回路332は、基準チャネルセレクタ321から出力された基準チャネルの再生クロックと、被測定チャネルセレクタ322から出力された被測定チャネルの再生クロックと、の間の位相差の検出を行う。第2位相検出回路332により検出される位相差については後述する(たとえば図7,図8参照)。第2位相検出回路332は、検出結果を位相シフタ制御回路117へ出力する。たとえば、第2位相検出回路332は、フリップフロップ332aと、平均化・量子化回路332bと、を備える。
フリップフロップ332aは、被測定チャネルセレクタ322から出力された被測定チャネルの再生クロックの値を、基準チャネルセレクタ321から出力された基準チャネルの再生クロックの立ち上がりタイミングで保持する。そして、フリップフロップ332aは、保持した値を平均化・量子化回路332bへ出力する。平均化・量子化回路332bは、フリップフロップ332aから出力された信号を平均化し、平均化した信号の量子化を行う。そして、平均化・量子化回路332bは、量子化した値を第2位相検出回路332による検出結果として位相シフタ制御回路117へ出力する。
なお、たとえば後述の図13,図14に示す例のように、チャネル#1~#4のうち基準チャネルが1つ(たとえばチャネル#1)に決まっている場合は、基準チャネルセレクタ321を省いた構成としてもよい。この場合は、分周器311~314のうちその基準チャネルに対応する分周器から出力された再生クロックが、基準チャネルの再生クロックとして第1位相検出回路331および第2位相検出回路332へ入力される。
(実施の形態1にかかる分周器による再生クロックの分周)
図4は、実施の形態1にかかる分周器による再生クロックの分周の一例を示す図である。図4のグラフ400において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は再生クロックの強度を示している。再生クロック401(in)は、分周器311(#1)へ入力される再生クロックである。再生クロック402(out)は、分周器311(#1)から出力される再生クロックである。
図4に示すように、分周器311(#1)は、入力された再生クロック401の周波数を1/2にした再生クロック402を出力する。分周器311(#1)による分周について説明したが、分周器311(#2~#4)による分周についても同様である。
分周器311(#1~#4)による再生クロックの分周(低速化)を行うことにより、分周器311(#1~#4)より後段の回路の動作速度がデータ信号の速度に対して低くても、これらの回路による処理を行うことができる。分周器311(#1~#4)より後段の回路には、たとえば、基準チャネルセレクタ321、被測定チャネルセレクタ322、第1位相検出回路331、第2位相検出回路332、位相シフタ制御回路117などが含まれる。
(実施の形態1にかかる第1位相検出回路による検出)
図5および図6は、実施の形態1にかかる第1位相検出回路による検出の一例を示す図である。図5に示すグラフ501~504において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は再生クロックの強度(v)を示している。再生クロック510は、基準チャネルセレクタ321から第1位相検出回路331へ出力される基準チャネルの再生クロックである。再生クロック520は、被測定チャネルセレクタ322から第1位相検出回路331へ出力される被測定チャネルの再生クロックである。
乗算器出力530は、第1位相検出回路331の乗算器331aが出力する信号、すなわち再生クロック510,520の乗算結果である。検出結果540は、第1位相検出回路331の平均化・量子化回路331bが出力する量子化された値、すなわち第1位相検出回路331から位相シフタ制御回路117へ出力される検出結果である。
図5に示す例では、平均化・量子化回路331bは、乗算器331aから出力される信号のパルス幅に応じて3値(-1、0、+1)の量子化を行うものとする。ただし平均化・量子化回路331bにおける量子化の分解能はこれに限らず、たとえば平均化・量子化回路331bにおける量子化の分解能をさらに高くしてもよい。
グラフ501の例では、基準チャネルの再生クロックと、被測定チャネルの再生クロックと、の位相が揃っており、この場合に検出結果540は+1となる。グラフ502の例では、基準チャネルの再生クロックの位相に対して被測定チャネルの再生クロックの位相が90[°]遅れており、この場合に検出結果540は0となる。
グラフ503の例では、基準チャネルの再生クロックの位相に対して被測定チャネルの再生クロックの位相が180[°]遅れており、この場合に検出結果540は-1となる。グラフ504の例では、基準チャネルの再生クロックの位相に対して被測定チャネルの再生クロックの位相が270[°]遅れており、この場合に検出結果540は0となる。
以上により、基準チャネルの再生クロックに対する被測定チャネルの再生クロックの位相遅れ量[°]と、第1位相検出回路331による検出結果と、の関係は図6に示すテーブル600のようになる。
(実施の形態1にかかる第2位相検出回路による検出)
図7および図8は、実施の形態1にかかる第2位相検出回路による検出の一例を示す図である。図7に示すグラフ701~704において、横軸は時間(t)を示し、縦軸は再生クロックの強度(v)を示している。再生クロック710は、基準チャネルセレクタ321から第2位相検出回路332へ出力される基準チャネルの再生クロックである。再生クロック720は、被測定チャネルセレクタ322から第2位相検出回路332へ出力される被測定チャネルの再生クロックである。検出結果730は、第2位相検出回路332の平均化・量子化回路332bが出力する量子化された値、すなわち第2位相検出回路332から位相シフタ制御回路117へ出力される検出結果である。
図7に示す例では、平均化・量子化回路332bは、フリップフロップ332aから出力される信号の平均値に応じて3値(-1、0、+1)の量子化を行うものとする。ただし平均化・量子化回路332bにおける量子化の分解能はこれに限らず、たとえば平均化・量子化回路332bにおける量子化の分解能をさらに高くしてもよい。
グラフ701の例では、基準チャネルの再生クロックと、被測定チャネルの再生クロックと、の位相が揃っており、この場合に検出結果730は0となる。グラフ702の例では、基準チャネルの再生クロックの位相に対して被測定チャネルの再生クロックの位相が90[°]遅れており、この場合に検出結果730は-1となる。
グラフ703の例では、基準チャネルの再生クロックの位相に対して被測定チャネルの再生クロックの位相が180[°]遅れており、この場合に検出結果730は0となる。グラフ704の例では、基準チャネルの再生クロックの位相に対して被測定チャネルの再生クロックの位相が270[°]遅れており、この場合に検出結果730は+1となる。
以上により、基準チャネルの再生クロックに対する被測定チャネルの再生クロックの位相遅れ量[°]と、第2位相検出回路332による検出結果と、の関係は図8に示すテーブル800のようになる。
(実施の形態1にかかる第1、第2位相検出回路による各検出結果と各再生クロックの位相差との関係)
図9は、実施の形態1にかかる第1、第2位相検出回路による各検出結果と各再生クロックの位相差との関係の一例を示す図である。基準チャネルの再生クロックに対する被測定チャネルの再生クロックの位相遅れ量[°]と、第1位相検出回路331および第2位相検出回路332による各検出結果の組み合わせと、の関係は図9に示すテーブル900のようになる。
テーブル900に示すように、第1位相検出回路331および第2位相検出回路332による各検出結果の少なくともいずれかに基づいて、基準チャネルの再生クロックに対する被測定チャネルの再生クロックの4通りの位相遅れ量(位相差)を判定できる。
たとえば、第1位相検出回路331の検出結果が+1であれば、基準チャネルの再生クロックに対する被測定チャネルの再生クロックの位相遅れ量が0[°]である(位相が揃っている)と判定できる。また、第1位相検出回路331の検出結果が0であり第2位相検出回路332の検出結果が-1であれば、基準チャネルの再生クロックに対する被測定チャネルの再生クロックの位相遅れ量が90[°]であると判定できる。
また、第1位相検出回路331の検出結果が-1であれば、基準チャネルの再生クロックに対する被測定チャネルの再生クロックの位相遅れ量が180[°]であると判定できる。また、第1位相検出回路331の検出結果が0であり第2位相検出回路332の検出結果が+1であれば、基準チャネルの再生クロックに対する被測定チャネルの再生クロックの位相遅れ量が270[°]であると判定できる。
(実施の形態1にかかる高分解能の第1位相検出回路の検出結果と各再生クロックの位相差との関係)
図10は、実施の形態1にかかる高分解能の第1位相検出回路の検出結果と各再生クロックの位相差との関係の一例を示す図である。図10において、横軸は、基準チャネルの再生クロックに対する被測定チャネルの再生クロックの位相遅れ量[°]を示し、縦軸は、第1位相検出回路331による検出結果をアナログ表記で示している。出力特性1001は、平均化・量子化回路331bの分解能を十分に高くした場合における、基準チャネルの再生クロックに対する被測定チャネルの再生クロックの位相遅れ量と、第1位相検出回路331が出力する検出結果の値と、の関係を示している。
(実施の形態1にかかる高分解能の第2位相検出回路の検出結果と各再生クロックの位相差との関係)
図11は、実施の形態1にかかる高分解能の第2位相検出回路の検出結果と各再生クロックの位相差との関係の一例を示す図である。図11において、横軸は、基準チャネルの再生クロックに対する被測定チャネルの再生クロックの位相遅れ量[°]を示し、縦軸は、第2位相検出回路332による検出結果をアナログ表記で示している。出力特性1101は、平均化・量子化回路332bの分解能を十分に高くした場合における、基準チャネルの再生クロックに対する被測定チャネルの再生クロックの位相遅れ量と、第2位相検出回路332が出力する検出結果の値と、の関係を示している。
たとえば図10,図11に示した例のように、平均化・量子化回路331b,332bの分解能を高くし、第1位相検出回路331および第2位相検出回路332により高分解能の検出結果を得る構成としてもよい。これにより、基準チャネルの再生クロックに対する被測定チャネルの再生クロックの位相遅れ量(位相差)を高分解能で検出し、位相シフタ制御回路117によるチャネル間の位相制御を高精度に行うことができる。
(実施の形態1にかかる可変位相シフタ)
図12は、実施の形態1にかかる可変位相シフタの一例を示す図である。図12に示すように、可変位相シフタ114(#1)は、たとえば、入力部1210と、バッファ1221~1223と、遅延量セレクタ1230と、を備えてもよい。入力部1210は、可変位相シフタ114(#1)へ入力されたデータ信号を遅延量セレクタ1230およびバッファ1221へ出力する。
バッファ1221は、入力部1210から出力されたデータ信号を所定の遅延量だけ遅延させ、遅延させたデータ信号を遅延量セレクタ1230およびバッファ1222へ出力する。バッファ1222は、バッファ1221から出力されたデータ信号を所定の遅延量だけ遅延させ、遅延させたデータ信号を遅延量セレクタ1230およびバッファ1223へ出力する。バッファ1223は、バッファ1222から出力されたデータ信号を所定の遅延量だけ遅延させ、遅延させたデータ信号を遅延量セレクタ1230へ出力する。
遅延量セレクタ1230は、入力部1210およびバッファ1221~1223から出力された各データ信号のいずれかを選択し、選択したデータ信号を出力ドライバ115(#1)へ出力する。これにより、遅延量セレクタ1230の選択に応じた遅延量を与えたデータ信号を出力することができる。遅延量セレクタ1230によるデータ信号の選択(切り替え制御)は、たとえば位相シフタ制御回路117からの制御信号により行われる。
ここで、遅延量セレクタ1230が入力部1210からのデータ信号を選択した場合のデータ信号の遅延量を「0」とする。また、遅延量セレクタ1230がバッファ1221~1223からのデータ信号を選択した場合のデータ信号の遅延量をそれぞれ「1」~「3」とする。
バッファ1221~1223における所定の遅延量は、たとえばデータ信号のサイクルであるUI(Unit Interbal)の1/4程度(たとえば数[ps]~10[ps]程度)とすることができる。この場合に、上述の遅延量の「0」~「3」は、それぞれ0[°]、90[°]、180[°]、270[°]に相当する遅延量になる。
このように、可変位相シフタ114(#1)は、一例としては4段階調整のバッファチェーン構成により実現することができる。可変位相シフタ114(#1)の構成について説明したが、可変位相シフタ114(#2~#4)の構成についても同様である。
(実施の形態1にかかる光送信装置による位相検出・制御処理)
図13は、実施の形態1にかかる光送信装置による位相検出・制御処理の一例を示すフローチャートである。実施の形態1にかかる光送信装置100は、たとえば図13に示す位相検出・制御処理を実行する。たとえば、光送信装置100は、図1に示した位相シフタ制御回路117により、図13に示す位相検出・制御処理を実行する。
まず、光送信装置100は、CDR回路112(#1~#4)がロック状態になったか否かを判断し(ステップS1301)、CDR回路112(#1~#4)がロック状態になるまで待つ(ステップS1301:Noのループ)。たとえばCDR回路112(#1)のロック状態とは、CDR回路112(#1)がデータ信号に同期して位相が安定したクロック信号を生成している状態である。CDR回路112(#2~#4)のロック状態についても同様である。
ロック状態の判断は、たとえば、光送信装置100の起動時から、CDR回路112(#1~#4)がロック状態になるために十分な時間が経過したか否かを判断することにより行うことができる。または、ステップS1301の判断は、位相シフタ制御回路117が、CDR回路112(#1~#4)の動作状態(たとえば生成されるクロック信号の位相が安定しているか否か)を監視することにより行われてもよい。
ステップS1301において、CDR回路112(#1~#4)がロック状態になると(ステップS1301:Yes)、光送信装置100は、可変位相シフタ114(#1~#4)のそれぞれの遅延量を「1」に設定する(ステップS1302)。この遅延量の「1」は、たとえば上述のようにデータ信号のUIの1/4に相当する。ステップS1302は、たとえば、位相シフタ制御回路117の制御により、可変位相シフタ114(#1~#4)のそれぞれについて、図12に示した遅延量セレクタ1230がバッファ1221からの信号を選択することにより実行される。
また、光送信装置100は、基準チャネルをチャネル#1に設定する(ステップS1303)。ステップS1303は、たとえば、位相シフタ制御回路117の制御により、図3に示した基準チャネルセレクタ321が、分周器311~314のうちチャネル#1に対応する分周器311からの信号を選択することにより実行される。また、光送信装置100は、送信回路110aのメモリに記憶される情報であって基準チャネルを示す$bに、チャネル#1を示す1を設定する。
つぎに、光送信装置100は、チャネル#1~#4を対象とする4チャネル間位相検出・制御処理を行い(ステップS1304)、一連の処理を終了する。4チャネル間位相検出・制御処理については図14において説明する。
ただし、光送信装置100による位相検出・制御処理は図13に示した例に限らない。たとえば、図13に示した例ではステップS1302において可変位相シフタ114(#1~#4)のそれぞれの遅延量を「1」に設定する場合について説明したが、このような処理に限らない。たとえば、ステップS1302において、可変位相シフタ114(#1~#4)のそれぞれの遅延量を「2」に設定する処理としてもよい。
図13に示した位相検出・制御処理は、たとえば光信号を用いた光伝送の運用前に実行される。この場合に、光送信装置100は、たとえば、4チャネルのトレーニング用のデータ信号(ランダム信号や一定パターン信号など)が入力された状態で図13に示した位相検出・制御処理を実行する。また、図13に示した位相検出・制御処理は、位相シフトに伴う信号劣化に対する耐性を受信側が有する場合等は、光信号を用いた光伝送の運用中に実行されてもよい。
(実施の形態1にかかる光送信装置による4チャネル間位相検出・制御処理)
図14は、実施の形態1にかかる光送信装置による4チャネル間位相検出・制御処理の一例を示すフローチャートである。実施の形態1にかかる光送信装置100は、たとえば図13に示したステップS1304の4チャネル間位相検出・制御処理として、たとえば図14に示す処理を実行する。たとえば、光送信装置100は、図1に示した位相シフタ制御回路117により、図14に示す処理を実行する。
ここで、4チャネル間位相検出・制御処理の対象となる4チャネルは、現在の$b(基準チャネルを示す情報)が示すチャネル#$bと、現在の$bに基づくチャネル#($b+1)~#($b+3)と、の4チャネルである。
まず、光送信装置100は、現在の$b(基準チャネルを示す情報)に基づいて、送信回路110aのメモリに記憶されたインデックスであって現在の対象の被測定チャネルを示す$iに$b+1の値を設定する(ステップS1401)。
つぎに、光送信装置100は、現在の$iに基づいて、チャネル#$iについての第1位相検出回路331および第2位相検出回路332の各検出結果を取得する(ステップS1402)。ステップS1402においては、たとえば、図3に示した被測定チャネルセレクタ322が、位相シフタ制御回路117の制御により、分周器311~314のうちチャネル#$iに対応する分周器からの信号を選択する。その後に、位相シフタ制御回路117は、第1位相検出回路331および第2位相検出回路332から出力される、チャネル#$iについての各検出結果を取得する。
つぎに、光送信装置100は、現在の$b,$iに基づいて、$iが$b+3以上であるか否かを判断する(ステップS1403)。$iが$b+3以上でない場合(ステップS1403:No)は、3つの被測定チャネルのうち、第1位相検出回路331および第2位相検出回路332の各検出結果を取得済みでないチャネルが存在する。この場合に、光送信装置100は、$iをインクリメントし(ステップS1404)、ステップS1402へ戻る。
ステップS1403において、$iが$b+3以上である場合(ステップS1403:Yes)は、3つの被測定チャネルのすべてについて、第1位相検出回路331および第2位相検出回路332の各検出結果を取得済みである。この場合に、光送信装置100は、対象の4チャネルすべての信号位相が揃っているか否かを判断する(ステップS1405)。
ステップS1405の判断は、たとえば、位相シフタ制御回路117が、ステップS1402により取得した3つの被測定チャネルについての第1位相検出回路331の検出結果がすべて+1であるか否かを判断することにより行うことができる。3つの被測定チャネルについての第1位相検出回路331の検出結果がすべて+1である場合は、チャネル間の位相差はすべて0(たとえば図9参照)、すなわち対象の4チャネルすべての信号位相が揃っていると判断することができる。
ステップS1405において、対象の4チャネルすべての信号位相が揃っている場合(ステップS1405:Yes)は、光送信装置100は、ステップS1406へ移行する。すなわち、光送信装置100は、対象の4チャネルの可変位相シフタ114の遅延量をそれぞれ「0」~「3」に設定し(ステップS1406)、一連の4チャネル間位相検出・制御処理する。
ステップS1406において、たとえば、位相シフタ制御回路117は、可変位相シフタ114(#1)について、図12に示した遅延量セレクタ1230が入力部1210からの信号を選択するように制御する。また、位相シフタ制御回路117は、可変位相シフタ114(#2~#4)について、図12に示した遅延量セレクタ1230が、それぞれバッファ1221~1223からの信号を選択するように制御する。
ステップS1405において、対象の4チャネルのうち少なくともいずれかのチャネルの位相が他のチャネルの位相に対してずれている場合(ステップS1405:No)は、光送信装置100は、ステップS1407へ移行する。すなわち、光送信装置100は、チャネル#($b+1),#($b+2)、つまり対象の4チャネルのうち中央の2チャネルの信号位相が揃っているか否かを判断する(ステップS1407)。
ステップS1407の判断は、たとえば、チャネル#($b+1),#($b+2)の間で、第1位相検出回路331の各検出結果が等しく、かつ第2位相検出回路332の各検出結果が等しいか否かを判断することにより行うことができる。
ステップS1407において、チャネル#($b+1),#($b+2)の信号位相が揃っていない場合(ステップS1407:No)、すなわち対象の4チャネルのうち中央の2チャネルの信号位相がずれている場合はチャネル間のクロストークの影響が小さい。この場合に、光送信装置100は、チャネル間の位相制御を行わずに一連の4チャネル間位相検出・制御処理を終了する。
ステップS1407において、チャネル#($b+1),#($b+2)の信号位相が揃っている場合(ステップS1407:Yes)、すなわち対象の4チャネルのうち中央の2チャネルの信号位相が揃っている場合はチャネル間のクロストークの影響が大きい。この場合に、光送信装置100は、チャネル#$b,#($b+1)、すなわち対象の4チャネルのうち1番目と2番目のチャネルの信号位相が揃っているか否かを判断する(ステップS1408)。
ステップS1408の判断は、たとえば、チャネル#$b,#($b+1)の間で、第1位相検出回路331の各検出結果が等しく、かつ第2位相検出回路332の各検出結果が等しいか否かを判断することにより行うことができる。
ステップS1408において、チャネル#$b,#($b+1)の信号位相が揃っている場合(ステップS1408:Yes)は、対象の4チャネルのうち1番目~3番目のチャネルの信号位相が揃っており、それに対して4番目のチャネルの信号位相がずれている。この場合に、光送信装置100は、送信回路110aのメモリに記憶される情報であって信号位相をずらすチャネルを示す$vに、2番目のチャネルを示す$b+1の値を設定する(ステップS1409)。また、光送信装置100は、ステップS1409において、送信回路110aのメモリに記憶される情報であって他チャネルから信号位相がずれているチャネルを示す$aに、4番目のチャネルを示す$b+3の値を設定する。
つぎに、光送信装置100は、チャネル#$aの他チャネルからの信号位相のずれが90[°]遅れであるか否かを判断する(ステップS1410)。ステップS1410の判断は、たとえば、チャネル#$aについての第1位相検出回路331の検出結果が0であり、かつチャネル#$aについての第2位相検出回路332の検出結果が-1であるか否かの判定により行うことができる。
ステップS1410において、信号位相のずれが90[°]遅れである場合(ステップS1410:Yes)は、光送信装置100は、ステップS1411へ移行する。すなわち、光送信装置100は、チャネル#$vの可変位相シフタ114(#$v)の遅延量を「0」に設定し(ステップS1411)、一連の4チャネル間位相検出・制御処理を終了する。ステップS1411により、チャネル#$vの信号位相が1段階分(たとえば90[°])進む。ステップS1411において、たとえば、位相シフタ制御回路117は、可変位相シフタ114(#$v)について、図12に示した遅延量セレクタ1230が、入力部1210からの信号を選択するように制御する。
ステップS1410において、信号位相のずれが90[°]遅れでない場合(ステップS1410:No)は、光送信装置100は、チャネル#$aの他チャネルからの信号位相のずれが180[°]遅れであるか否かを判断する(ステップS1412)。ステップS1412の判断は、たとえば、チャネル#$aについての第1位相検出回路331の検出結果が-1であるか否かの判定により行うことができる。
ステップS1412において、信号位相のずれが180[°]遅れである場合(ステップS1412:Yes)は、光送信装置100は、ステップS1411へ移行する。これにより、チャネル#$vの可変位相シフタ114(#$v)の遅延量が「0」に設定され、チャネル#$vの信号位相が1段階分(たとえば90[°])進む。ただし、このとき、光送信装置100は、後述のステップS1413へ移行し、チャネル#$vの可変位相シフタ114(#$v)の遅延量を「2」に設定することによりチャネル#$vの信号位相を1段階分遅らせてもよい。すなわち、チャネル#$aの信号位相のずれが180[°]遅れである場合、チャネル#$vの信号位相はいずれの方向にシフトさせてもよい。
ステップS1412において、信号位相のずれが180[°]遅れでなく270[°]である場合(ステップS1412:No)は、光送信装置100は、ステップS1413へ移行する。すなわち、光送信装置100は、チャネル#$vの可変位相シフタ114(#$v)の遅延量を「2」に設定し(ステップS1413)、一連の位相検出・制御処理を終了する。ステップS1413により、チャネル#$vの信号位相が1段階分遅れる。
ステップS1413において、たとえば、位相シフタ制御回路117は、可変位相シフタ114(#$v)について、図12に示した遅延量セレクタ1230が、バッファ1222からの信号を選択するように制御する。なお、チャネル#$vの信号位相のずれが270[°]である場合、チャネル#$aについての第1位相検出回路331の検出結果は0であり、チャネル#$aについての第2位相検出回路332の検出結果は+1である。
ステップS1408において、チャネル#$bとチャネル#($b+1)の信号位相が揃っていない場合(ステップS1408:No)、光送信装置100は、ステップS1414へ移行する。チャネル#($b+2)とチャネル#($b+3)、すなわち対象の4チャネルのうち3番目と4番目のチャネルの信号位相が揃っているか否かを判断する(ステップS1414)。
ステップS1414の判断は、たとえば、チャネル#($b+2),#($b+3)の間で、第1位相検出回路331の各検出結果が等しく、かつ第2位相検出回路332の各検出結果が等しいか否かを判断することにより行うことができる。
ステップS1414において、信号位相が揃っている場合(ステップS1414:Yes)は、対象の4チャネルのうち2番目~4番目のチャネルの信号位相が揃っており、それに対し1番目のチャネルの信号位相がずれている。この場合に、光送信装置100は、上述の$vに3番目のチャネルを示す$b+2の値を設定し、上述の$aに1番目のチャネルを示す$bの値を設定し(ステップS1415)、ステップS1410へ移行する。
ステップS1414において、信号位相が揃っていない場合(ステップS1414:No)は、対象の4チャネルのうち2番目,3番目のチャネルの信号位相が揃っており、それに対して1番目,4番目のチャネルの信号位相はずれている。この場合はクロストークの影響が小さいため、光送信装置100は、位相制御を行わずに一連の4チャネル間位相検出・制御処理を終了する。
(実施の形態1にかかる光送信装置による位相制御)
図15は、実施の形態1にかかる光送信装置による位相制御の第1の例を示す図である。図15に示す出力波形1511~1514は、それぞれチャネル#1~#4における送信部110(#1~#4)から出力されるデータ信号(駆動信号)の波形である。ここでは位相検出・制御処理の対象がチャネル#1~#4であるとする。また、チャネル#1~#4の信号位相が揃っているとする。
この場合に、光送信装置100は、図14に示した位相検出・制御処理においてステップS1406へ移行する。ステップS1406による位相制御の前は、グラフ1501に示すように、対象の4チャネルすべての出力波形1511~1514の位相が揃っている。これに対して、光送信装置100は、ステップS1406により可変位相シフタ114(#1~#4)の遅延量をそれぞれ「0」~「3」に設定する。これにより、グラフ1502に示すように、対象の4チャネルの出力波形1511~1514の位相を所定量(たとえばUIの1/4)ずつずらすことができる。
図16は、実施の形態1にかかる光送信装置による位相制御の第2の例を示す図である。図16において、図15に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。ここでは位相検出・制御処理の対象がチャネル#1~#4であるとする。また、チャネル#1~#3の信号位相が揃っており、それに対してチャネル#4の信号位相が90[°]だけ遅れているとする。
この場合に、光送信装置100は、図14に示した位相検出・制御処理においてステップS1411へ移行する。ステップS1411による位相制御の前は、グラフ1601に示すように、出力波形1511~1513の位相が揃っており、出力波形1511~1513の位相に対して出力波形1514の位相が90[°]遅れている。
これに対して、光送信装置100は、ステップS1411により可変位相シフタ114(#2)の遅延量を「1」から「0」に変更する。これにより、グラフ1602に示すように、信号位相が揃っているチャネル#1~#3のうち中央のチャネル#2の信号位相を、信号位相がずれている(遅れている)チャネル#4とは反対方向にずらす(早める)ことができる。
図17は、実施の形態1にかかる光送信装置による位相制御の第3の例を示す図である。図17において、図15に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。ここでは位相検出・制御処理の対象がチャネル#1~#4であるとする。また、チャネル#2~#4の信号位相が揃っており、それに対してチャネル#1の信号位相が90[°]だけ進んでいる(すなわち270[°]遅れている)とする。
この場合に、光送信装置100は、図14に示した位相検出・制御処理においてステップS1413へ移行する。ステップS1413による位相制御の前は、グラフ1701に示すように、出力波形1512~1514の位相が揃っており、出力波形1512~1514の位相に対して出力波形1511の位相が90[°]だけ進んでいる(すなわち270[°]遅れている)。
これに対して、光送信装置100は、ステップS1413により可変位相シフタ114(#3)の遅延量を「1」から「2」に変更する。これにより、グラフ1702に示すように、信号位相が揃っているチャネル#2~#4のうち中央のチャネル#3の信号位相を、信号位相がずれている(進んでいる)チャネル#4とは反対方向にずらす(遅らせる)ことができる。
図14~図17に示したように、光送信装置100は、対象の4チャネルすべての信号位相が揃っている場合は、対象の4チャネルすべての信号位相をずらす制御を行う。また、光送信装置100は、対象の4チャネルのうち隣接する3チャネルの信号位相が揃っている場合は、その3チャネルのうち中央のチャネルの信号位相をずらし、その際に、位相がずれているチャネルの信号位相と同一位相にならない方向にずらす。
また、光送信装置100は、これら以外の場合、すなわち対象の4チャネルのうち隣接し信号位相が揃ったチャネルが2チャネル以下である場合は、クロストークの影響は小さいため、位相制御を行わない。これにより、対象の4チャネルのうち隣接し信号位相が揃ったチャネルが3チャネル以上である状態を回避し、チャネル間のクロストークによる伝送品質への影響を抑制することができる。
(実施の形態1にかかる光送信装置におけるクロストークの低減)
図18は、実施の形態1にかかる光送信装置におけるクロストークの低減の一例を示す図である。図18において、横軸は光送信装置100が送信した光信号を受信する光受信装置における受信パワーPin[dBm]を示し、縦軸は光送信装置100が送信した光信号についてのその光受信装置におけるBERを示している。BERはBit Error Rate(ビット誤り率)の略語である。ここでは、光送信装置100が、発光素子121~124からそれぞれ28[Gbps]の光信号を送信することにより、28×4=112[Gbps]の光伝送を行うとする。
受信パワーBER特性1801は、光送信装置100が1チャネルのみを使用して光信号を送信すると仮定した場合の、光受信装置における受信パワーとBERとの関係を示している。受信パワーBER特性1802は、光送信装置100が4チャネルを使用して光信号を送信し、かつ上述の位相検出・制御処理を行わないと仮定した場合の、光受信装置における受信パワーとBERとの関係を示している。受信パワーBER特性1803は、光送信装置100が4チャネルを使用して光信号を送信し、かつ上述の位相検出・制御処理を行う場合の、光受信装置における受信パワーとBERとの関係を示している。
受信パワーBER特性1801~1803に示すように、一般的に、光受信装置における受信パワーが高いほどBERは低くなる。光受信装置における受信パワーは、光送信装置100からの送信パワーや、光送信装置100と光受信装置との間の伝送路におけるロスに応じて決まる。
ここで、たとえばシステム要件としてBERが10-12以上であることが要求されるとすると、BERが10-12となる受信パワーの小ささにより、光送信装置100が送信する光信号のクロストークによる影響を評価することができる。すなわち、BERが10-12となる受信パワーが小さいほど、光送信装置100からの送信パワーが低かったり伝送路におけるロスが大きかったりしてもシステム要件を満たせることから、クロストークによる影響が小さいと評価することができる。
受信パワーBER特性1801に示すように、光送信装置100が1チャネルのみを使用する場合はチャネル間のクロストークがないため、BERが10-12となる受信パワーは-7.4[dBm]程度と比較的小さい。ただし、この場合は1チャネルのみの使用であるため28[Gbps]の低速な光伝送になる。
また、受信パワーBER特性1802に示すように、光送信装置100が4チャネルを使用して光信号を送信し、かつ上述の位相検出・制御処理を行わない場合は、BERが10-12となる受信パワーが-6.3[dBm]程度と比較的大きい。これは、チャネル間のクロストークによる影響が大きいことを示している。
これに対して、受信パワーBER特性1803に示すように、光送信装置100が4チャネルを使用して光信号を送信し、かつ上述の位相検出・制御処理を行う場合は、BERが10-12となる受信パワーが-7.3[dBm]程度と比較的小さい。これは、上述の位相検出・制御処理により、チャネル間のクロストークによる影響が抑制されていることを示している。
図18に示すように、光送信装置100の位相検出・制御処理により、4チャネルによる高速な光伝送におけるチャネル間のクロストークによる影響を抑制することができる。このため、たとえば光送信装置100を適用した光インターコネクトなどの送受信性能を向上させることができる。したがって、たとえば、プロセスばらつきや、温度や電源電圧といった環境面のばらつきに強くなり、伝送速度や伝送距離の向上を図ることができる。
(実施の形態1にかかる8チャネルの光送信装置による位相検出・制御処理)
図19は、実施の形態1にかかる8チャネルの光送信装置による位相検出・制御処理の一例を示すフローチャートである。図1に示した例では光送信装置100はチャネル#1~#4の4チャネルの送信装置であるが、たとえば、さらにチャネル#5~#8に対応する送信回路110a(#5~#8)および発光素子を設け、チャネル#1~#8の8チャネルの送信装置としてもよい。送信回路110a(#5~#8)の構成は、送信回路110a(#1~#4)の構成と同様である。
図19においては8チャネルの光送信装置100による処理について説明する。8チャネルの光送信装置100は、一例としては、それぞれチャネル#1~#4、チャネル#3~#6、チャネル#5~#8を対象とする3回の4チャネル間位相検出・制御処理を実行する。たとえば、8チャネルの光送信装置100は、図1に示した位相シフタ制御回路117により、図19に示す処理を実行する。
まず、光送信装置100は、CDR回路112(#1~#8)がロック状態になったか否かを判断し(ステップS1901)、CDR回路112(#1~#8)がロック状態になるまで待つ(ステップS1901:Noのループ)。
ステップS1901において、CDR回路112(#1~#8)がロック状態になると(ステップS1901:Yes)、光送信装置100は、可変位相シフタ114(#1~#8)のそれぞれの遅延量を「1」に設定する(ステップS1902)。また、光送信装置100は、送信回路110aのメモリに記憶されるインデックスであって現在の基準チャネルを示す$jに、チャネル#1を示す1を設定する(ステップS1903)。
つぎに、光送信装置100は、現在の$jに基づいて、基準チャネルをチャネル#$jに設定する(ステップS1904)。ステップS1904は、たとえば、図3に示した基準チャネルセレクタ321について、分周器311~314のうちチャネル#$jに対応する分周器($j=1であれば分周器311)からの信号を選択するように制御することにより実行される。また、光送信装置100は、送信回路110aのメモリに記憶される情報であって基準チャネルを示す$bに、チャネル#$jを示す$jを設定する。
つぎに、光送信装置100は、チャネル#$j~#($j+3)を対象とする4チャネル間位相検出・制御処理を行う(ステップS1905)。ステップS1905における4チャネル間位相検出・制御処理は、図14に示した4チャネル間位相検出・制御処理と同じである。つぎに、光送信装置100は、現在の$jに基づいて、$jが5以上であるか否かを判断する(ステップS1906)。
ステップS1906において、$jが5以上でない場合(ステップS1906:No)は、上述の3回の4チャネル間位相検出・制御処理のうち少なくともいずれかの4チャネル間位相検出・制御処理が完了していない。この場合に、光送信装置100は、$jの値を2だけ増加させ(ステップS1907)、ステップS1904へ戻る。
ステップS1906において、$jが5以上である場合(ステップS1906:Yes)は、上述の3回の4チャネル間位相検出・制御処理が完了しているため、光送信装置100は、一連の位相検出・制御処理を終了する。
ただし、光送信装置100による位相検出・制御処理は図19に示した例に限らない。たとえば、図19に示す例ではステップS1902において可変位相シフタ114(#1~#8)のそれぞれの遅延量を「1」に設定する場合について説明したが、このような処理に限らない。たとえば、ステップS1902において、可変位相シフタ114(#1~#8)のそれぞれの遅延量を「2」に設定する処理としてもよい。
図19に示す位相検出・制御処理は、図13に示した位相検出・制御処理と同様に、光信号を用いた光伝送の運用前や、光信号を用いた光伝送の運用中に実行される。
(実施の形態1にかかる光送信装置を適用したAOC)
図20は、実施の形態1にかかる光送信装置を適用したAOCの一例を示す図である。実施の形態1にかかる光送信装置100は、たとえば図20に示すAOC2000に適用可能である。AOCはActive Optical Cableの略語である。AOC2000は、電気信号を光信号に変換する(E/O)モジュール、光信号を伝送する光ファイバ、光ファイバを通して受信した光信号を電気信号に戻す(O/E)モジュールが一体となった光インターコネクトである。
たとえば、AOC2000は、第1光伝送装置2010と、光ファイバケーブル2020と、第2光伝送装置2030と、を一体化した光モジュールである。上述した光送信装置100は、たとえば第1光伝送装置2010に適用することができる。
第1光伝送装置2010は、計算機31に接続可能なコネクタになっている。そして、第1光伝送装置2010は、コネクタにより接続された計算機31から出力された電気信号を光信号に変換し、変換した光信号を、光ファイバケーブル2020を介して第2光伝送装置2030へ送信する。たとえば、第1光伝送装置2010は、送信回路2011と、電光変換モジュール2012と、を備える。
送信回路2011は、計算機31から出力されたデータ信号(電気信号)に基づいて、後述の電光変換モジュール2012の発光素子2012aを駆動する駆動信号を生成する。たとえば、送信回路2011は、最終段または最終段付近に、駆動信号を生成する出力ドライバ2011aを有する。そして、送信回路2011は、出力ドライバ2011aにより生成した駆動信号を電光変換モジュール2012へ出力する。上述の送信回路110aは、たとえば送信回路2011に適用することができる。
また、送信回路2011は、第1光伝送装置2010から出力された電気信号を、AOC2000による光伝送に対応するように符号化する符号化回路を備えてもよい。この場合に、出力ドライバ2011aは、この符号化回路により符号化された電気信号に基づいて駆動信号を生成する。
電光変換モジュール2012は、送信回路2011から出力された駆動信号を光信号に変換し、変換した光信号を光ファイバケーブル2020へ送出する。たとえば、電光変換モジュール2012は、発光素子2012aと、レンズ2012bと、ファイバ保持部2012cと、を備える。発光素子2012aは、送信回路2011から出力された駆動信号に応じた光信号を生成し、生成した光信号をレンズ2012bへ出射する。
レンズ2012bは、発光素子2012aから出射された光信号を、電光変換モジュール2012の内部に固定された光ファイバケーブル2020の端部へ集光する。これにより、発光素子2012aから出射された光信号が光ファイバケーブル2020へ送出される。ファイバ保持部2012cは、光ファイバケーブル2020における第1光伝送装置2010の側の端部を、電光変換モジュール2012の内部に固定するように保持する。
また、第1光伝送装置2010は、送信回路2011および電光変換モジュール2012の組み合わせを複数有し、複数の光信号を送出可能な多チャネルの伝送装置である。たとえば、第1光伝送装置2010は、送信回路2011および電光変換モジュール2012の組み合わせを4つ有し、4つの光信号を送出可能な4チャネルの伝送装置である。
この場合に、上述の送信部110(#1~#4)および発光素子121~124は、この4つの組み合わせの送信回路2011および電光変換モジュール2012(発光素子2012a)に適用することができる。また、この場合に、第1光伝送装置2010は、計算機31から出力された電気信号を複数の信号に分割し、分割した各信号をそれぞれ複数の送信回路2011へ分配する分配回路を備えてもよい。
光ファイバケーブル2020は、第1光伝送装置2010と光ファイバケーブル2020とを接続する光ファイバを含むケーブルである。たとえば、光ファイバケーブル2020は、第1光伝送装置2010から送出された光信号を通過させ、通過させた光信号を第2光伝送装置2030へ入射させる。また、光ファイバケーブル2020は、第1光伝送装置2010から送出される複数の(たとえば4チャネルの)光信号を通過させる複数の(たとえば4本の)光ファイバを含むケーブルである。
第2光伝送装置2030は、計算機32に接続可能なコネクタになっている。そして、第2光伝送装置2030は、第1光伝送装置2010から光ファイバケーブル2020を介して送信された光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号を、コネクタにより接続された計算機32へ出力する。たとえば、第2光伝送装置2030は、光電変換モジュール2031と、受信回路2032と、を備える。
光電変換モジュール2031は、光ファイバケーブル2020を通過した光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号を受信回路2032へ出力する。たとえば、光電変換モジュール2031は、ファイバ保持部2031aと、レンズ2031bと、受光素子2031cと、を備える。ファイバ保持部2031aは、光ファイバケーブル2020における第2光伝送装置2030の側の端部を、光電変換モジュール2031の内部に固定するように保持する。
レンズ2031bは、光電変換モジュール2031の内部に固定された、光ファイバケーブル2020の端部から出射された光信号を受光素子2031cへ集光する。受光素子2031cは、レンズ2031bにより集光した光信号を受光し、受光した光信号に応じた電気信号を生成し、生成した電気信号を受信回路2032へ出力する。
受信回路2032は、光電変換モジュール2031から出力された電気信号の受信処理を行い、受信処理により得られた電気信号を計算機32へ出力する。たとえば、受信回路2032は、TIAを含み、光電変換モジュール2031から出力された電気信号をTIAにより電流信号から電圧信号に変換する処理を受信処理として行う。TIAはTransimpedance Amplifier(インピーダンス変換増幅器)の略語である。また、受信回路2032は、最終段または最終段付近に、電圧信号を増幅して出力する出力ドライバ2032aを有する。また、たとえば、受信回路2032は、復号回路を備え、上述の符号化回路に対応する復号を受信処理として行ってもよい。
第2光伝送装置2030は、光電変換モジュール2031および受信回路2032の組み合わせを複数有し、複数の光信号を受信可能な多チャネルの伝送装置である。たとえば、第2光伝送装置2030は、光電変換モジュール2031および受信回路2032の組み合わせを4つ有し、4つの光信号を受信可能な4チャネルの伝送装置である。また、この場合に、第2光伝送装置2030は、複数の受信回路2032から出力された各電気信号を結合し、結合した電気信号を計算機32へ出力する結合回路を備えてもよい。
また、AOC2000において、第1光伝送装置2010から光ファイバケーブル2020へ光信号を送信する構成について説明したが、第1光伝送装置2010と第2光伝送装置2030との間で光信号を双方向に送信する構成としてもよい。たとえば、図20に示した第1光伝送装置2010の構成を第2光伝送装置2030にも設けることにより、計算機32から出力された電気信号に基づく光信号を、光ファイバケーブル2020を介して第1光伝送装置2010へ送信する。
この場合に、光ファイバケーブル2020は、第2光伝送装置2030から第1光伝送装置2010へ送信される光信号を通過させる光ファイバを含む。また、この場合は、たとえば図20に示した第2光伝送装置2030の構成を第1光伝送装置2010にも設ける構成とする。これにより、第2光伝送装置2030から光ファイバケーブル2020を介して送信された光信号を、第1光伝送装置2010において電気信号に変換し、変換した電気信号を計算機31へ出力することができる。
このように、実施の形態1にかかる光送信装置100は、送信部110(#1~#4)によって再生されたクロックの各位相の比較結果に基づいて、送信部110(#1~#4)によって出力される各データ信号(駆動信号)の間の位相差を制御する。これにより、各チャネルのデータ信号の間の相対的な位相を調整し、チャネル間のクロストークによる伝送品質への影響を抑制することができる。なお、各データ信号の間の位相差の制御は、各データ信号の位相シフト量を制御することにより行われる。位相シフト量の制御には、位相シフト量を0にする、すなわち位相をシフトさせないことも含まれる。
また、光送信装置100は、送信部110(#1~#4)の0/1判定回路113(#1~#4)によって識別再生され出力ドライバ115(#1~#4)により増幅される前の各データ信号の位相差を制御する。これにより、チャネル間に大きなクロストークが発生しやすい出力ドライバ115(#1~#4)におけるチャネル間のクロストークによる、伝送品質への影響を抑制することができる。
また、実施の形態1にかかる光送信装置100は、送信部110(#1~#4)によって再生された各クロックの位相が揃っている場合は、送信部110(#1~#4)によって出力される各データ信号に対する位相シフト量をそれぞれ異なる量にする。これにより、1つのチャネルのデータ信号に対し、複数の他チャネルの各データ信号からの同一タイミングのクロストークが発生しやすい状態を解消し、チャネル間のクロストークによる伝送品質への影響を抑制することができる。この位相制御は、たとえば図14に示したステップS1406により実現することができる。
また、実施の形態1にかかる光送信装置100は、第1送信部、第1送信部に隣接する第2送信部および第2送信部に隣接する第3送信部を含む。第1送信部、第2送信部および第3送信部は、たとえば上述の送信部110(#1~#3)または送信部110(#2~#4)である。
そして、光送信装置100は、これらの送信部により再生された各クロックの位相が同じである場合は、第2送信部により出力されるデータ信号に対する位相シフト量を、第1,第3送信部により出力される各データ信号に対する位相シフト量と異なる量にする。これにより、第2送信部から出力されるデータ信号の位相を、第1送信部および第3送信部から出力される各データ信号の位相からずらすことができる。
したがって、第2送信部から出力されるデータ信号に対し、隣接する2つの他チャネルの各データ信号からの同一タイミングのクロストークが発生する状態を解消し、チャネル間のクロストークによる伝送品質への影響を抑制することができる。この位相制御は、たとえば図14に示したステップS1411またはステップS1413により実現することができる。
また、実施の形態1にかかる光送信装置100は、第1送信部または第3送信部に隣接する第4送信部を含む。第1送信部、第2送信部および第3送信部が上述の送信部110(#1~#3)である場合は、第4送信部はたとえば送信回路110a(#4)である。第1送信部、第2送信部および第3送信部が上述の送信部110(#2~#4)である場合は、第4送信部はたとえば送信回路110a(#1)である。
そして、送信回路110aは、第1送信部、第2送信部および第3送信部によって再生された各クロックの位相が第1位相(同一)であり、第4送信部によって再生されたクロックの位相が第1位相と異なる第2位相である場合は、つぎの位相制御を行う。すなわち、光送信装置100は、第2送信部によって出力されるデータ信号に対する位相シフト量を、第2送信部によって出力されるデータ信号の位相が第1位相および第2位相と異なる位相になるように制御する。
これにより、第2送信部から出力されるデータ信号の位相を、第1,第3送信部から出力される各データ信号の位相からずらす際に、第2送信部から出力されるデータ信号の位相が、第4送信部から出力されるデータ信号の位相と揃わないようにすることができる。
したがって、第2,第4送信部の間の送信部(第1送信部または第3送信部)から出力されるデータ信号に対し、第2,第4送信部の各データ信号からの同一タイミングのクロストークが発生する状態を回避することができる。すなわち、第2送信部から出力されるデータ信号の位相を、第1,第3送信部から出力される各データ信号の位相からずらした結果、第2,第4送信部の間の送信部のデータ信号に対するクロストークの影響が大きくなることを回避することができる。このため、チャネル間のクロストークによる伝送品質への影響を抑制することができる。
なお、実施の形態1においては光送信装置100が4チャネルまたは8チャネルの送信装置である場合について説明したが、光送信装置100が対応するチャネル数はこれらに限らない。たとえば、光送信装置100は16チャネル以上の送信装置であってもよい。
また、光信号を送信する光送信装置100について説明したが、実施の形態1は光信号を受信する光受信装置にも適用可能である。たとえば、図20に示した第2光伝送装置2030の受信回路2032には、図1に示した送信回路110aと同様の回路を設けることができる。
ただし、この場合に、伝送路ロス補償回路111(#1~#4)には、第1光伝送装置2010により送信されたチャネル#1~#4の光信号を、チャネル#1~#4の光電変換モジュール2031が受光することにより得られたデータ信号が入力される。また、出力ドライバ115(#1~#4)は、それぞれ可変位相シフタ114(#1~#4)から出力されたデータ信号を増幅し、増幅したデータ信号を計算機32へ出力する。これにより、第2光伝送装置2030が計算機32へ出力する各チャネルのデータ信号について、チャネル間のクロストークによる伝送品質への影響を抑制することができる。
(実施の形態2)
実施の形態2について、実施の形態1と異なる部分について説明する。実施の形態2においては、たとえば実施の形態1にかかる可変位相シフタ114(#1~#4)、位相比較器116、位相シフタ制御回路117を設けなくても、他の回路を利用してクロストークによる影響を抑制する構成について説明する。
(実施の形態2にかかる光送信装置)
図21は、実施の形態2にかかる光送信装置の一例を示す図である。図21において、図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図21に示すように、実施の形態2にかかる光送信装置100は、図1に示した可変位相シフタ114(#1~#4)に代えて可変位相シフタ2111(#1~#4)を備える。また、実施の形態2にかかる光送信装置100は、図1に示した位相比較器116および位相シフタ制御回路117に代えてVCOゲイン検出部2112および位相シフタ制御回路2113を備える。
この場合に、0/1判定回路113(#1)は、伝送路ロス補償回路111(#1)から出力されたデータ信号の値を、可変位相シフタ2111(#1)から出力された再生クロックのエッジのタイミングにおいて判定する。そして、0/1判定回路113(#1)は、データ信号の値の判定結果を、識別再生したデータ信号として出力ドライバ115(#1)へ出力する。
同様に、0/1判定回路113(#2~#4)は、それぞれ伝送路ロス補償回路111(#2~#4)から出力されたデータ信号の値を、それぞれ可変位相シフタ2111(#2~#4)から出力された再生クロックのエッジのタイミングにおいて判定する。そして、0/1判定回路113(#2~#4)は、データ信号の値の判定結果を、識別再生したデータ信号としてそれぞれ出力ドライバ115(#2~#4)へ出力する。
CDR回路112(#1)は、生成した再生クロックを可変位相シフタ2111(#1)へ出力する。同様に、CDR回路112(#2~#4)は、生成した再生クロックをそれぞれ可変位相シフタ2111(#2~#4)へ出力する。
可変位相シフタ2111(#1)は、CDR回路112(#1)から出力された再生クロックの位相を、位相シフタ制御回路2113から出力された制御信号に基づいてシフトさせる。そして、可変位相シフタ2111(#1)は、位相をシフトさせた再生クロックを0/1判定回路113(#1)へ出力する。同様に、可変位相シフタ2111(#2~#4)は、それぞれCDR回路112(#2~#4)から出力された再生クロックの位相を、位相シフタ制御回路2113から出力された制御信号に基づいてシフトさせる。そして、可変位相シフタ2111(#2~#4)は、位相をシフトさせた再生クロックをそれぞれ0/1判定回路113(#2~#4)へ出力する。
たとえば、VCO112c(#1)が複数の再生クロックを出力する場合に、可変位相シフタ2111(#1)は、この複数の再生クロックの選択や合成を行うことにより、再生クロックの位相をシフトさせることができる。複数の再生クロックとは、たとえば、データ信号に同期した再生クロックと、その再生クロックに対してそれぞれ位相が90[°]、180[°]、270[°]ずれた3つのクロック信号である。同様に、可変位相シフタ2111(#2~#4)は、それぞれVCO112c(#2~#4)から出力される複数の再生クロックの選択や合成を行うことにより、再生クロックの位相をシフトさせることができる。
これにより、たとえば図12に示したバッファチェーン構成を用いた、データ信号の位相をシフトさせる可変位相シフタ114(#1~#4)に比べて簡易な構成により可変位相シフタ2111(#1~#4)を実現することができる。ただし、可変位相シフタ114(#1~#4)と同様に、図12に示したバッファチェーン構成を用いて可変位相シフタ2111(#1~#4)を実現してもよい。
出力ドライバ115(#1)は、0/1判定回路113(#1)から出力されたデータ信号に基づく発光素子121の駆動信号を生成する。同様に、出力ドライバ115(#2~#4)は、それぞれ0/1判定回路113(#2~#4)から出力されたデータ信号に基づく発光素子122~124の駆動信号を生成する。
VCOゲイン検出部2112は、VCO112c(#1)の入力信号および出力信号の少なくともいずれかに基づいて、VCO112c(#1)におけるVCOゲインを直接的(図26,図27)または間接的(図28~図32)に検出する。VCO112c(#1)の入力信号とは、平均化回路112b(#1)からVCO112c(#1)へ出力される制御電圧である。VCO112c(#1)の出力信号とは、VCO112c(#1)から出力される再生クロックである。
同様に、VCOゲイン検出部2112は、それぞれVCO112c(#2~#4)の入力信号および出力信号の少なくともいずれかに基づいて、それぞれVCO112c(#2~#4)のVCOゲインを直接的または間接的に検出する。また、VCOゲイン検出部2112によるVCO112c(#1~#4)のVCOゲインの検出は、それぞれCDR回路112(#1~#4)のロック状態において行われる。
VCOゲインとは、VCOへ入力される制御電圧に対する、VCOが出力するクロック信号の周波数の比率[Hz/V]である。VCOゲイン検出部2112によるVCOゲインの検出については後述する(たとえば図26~図32参照)。VCOゲイン検出部2112は、VCO112c(#1~#4)のVCOゲインの各検出結果を位相シフタ制御回路2113へ出力する。
位相シフタ制御回路2113は、VCOゲイン検出部2112から出力されたVCOゲインの検出結果に基づいて、それぞれ送信部110(#1~#4)の可変位相シフタ2111(#1~#4)における再生クロックの位相のシフトを制御する処理を行う。この制御は、位相シフタ制御回路2113が可変位相シフタ2111(#1~#4)へ出力する制御信号に基づいて行われる。位相シフタ制御回路2113による処理については後述する(たとえば図33参照)。
VCOゲイン検出部2112および位相シフタ制御回路2113は、たとえば、送信回路110aを実現する集積回路に含まれるプロセッサおよびメモリが協調して動作することにより実現することができる。
(実施の形態2にかかる光送信装置が回避対象とするワースト位相)
図22は、実施の形態2にかかる光送信装置が回避対象とするワースト位相の一例を示す図である。図22において、横方向は時間を示す。データ信号2210,2220,2230は、チャネル#1~#4に含まれ隣接する3つのチャネルの各データ信号である。隣接する3つのチャネルとは、送信部110(#1~#4)のうち隣接して配置される3つの送信部110の各データ信号、すなわちチャネル#1~#3またはチャネル#2~#4の各データ信号である。
データ信号間のクロストークは、アグレッサ(Aggressor)のデータ信号と、ビクティム(Victim)のデータ信号と、の間の位相差によって影響が異なる。ここで、データ信号2210,2230の間のデータ信号2220をビクティムとし、データ信号2220の両側のデータ信号2210,2230をアグレッサとする。
図22に示すクロストーク2211は、データ信号2210がデータ信号2220へ与えるクロストークである。クロストーク2231は、データ信号2230がデータ信号2220へ与えるクロストークである。データ信号2220は、クロストーク2211,2231を受けることにより、元のデータ信号2220にクロストーク2211,2231を加算した波形となる。
そして、図22に示すように、データ信号2220(ビクティム)のアイセンタ付近と、データ信号2210,2230(アグレッサ)のデータエッジと、のタイミングが同じであると、データ信号2220(ビクティム)の品質が最も低下する。データ信号2220の品質の低下とは、データ信号2220の波形が歪み、受信側においてデータ信号2220の値(0または1)が識別困難になることである。
このように、互いに隣接する3つのデータ信号について、中央のデータ信号のアイセンタ付近と、その両側の各データ信号のデータエッジと、のタイミングが同じになっているという位相関係を、クロストークの影響が大きい最もワースト位相とする。また、光送信装置100が対応する各チャネルに、位相関係がワースト位相となる3チャネルが含まれる状態をワースト状態とする。実施の形態2にかかる位相シフタ制御回路2113は、たとえばこのワースト位相(ワースト状態)を回避するように、可変位相シフタ2111(#1~#4)における再生クロックの位相のシフトを制御する。
ただし、ワースト位相はこれに限らず、たとえば、4チャネルのうち一端のチャネルのみの信号位相がずれていることにより、その一端のチャネルにおけるクロストークの影響が大きくなるという位相関係もワースト位相に含めてもよい。そして、ワースト状態には、光送信装置100が対応する各チャネルに、位相関係がそのようなワースト位相となる4チャネルが含まれてもよい(たとえば図41のワースト状態4104,4105)。
(実施の形態2にかかるVCOゲイン検出部が検出するVCOゲイン)
図23は、実施の形態2にかかるVCOゲイン検出部が検出するVCOゲインの一例を示す図である。図23において、横軸はチャネル#1のCDR回路112(#1)のVCO112c(#1)へ入力される制御電圧[V]を示し、縦軸はVCO112c(#1)が出力する再生クロックの周波数[GHz]を示す。
電圧周波数特性2301は、VCO112c(#1)へ入力される制御電圧に対する、VCO112c(#1)が出力する再生クロックの周波数の特性である。VCOゲイン検出部2112によって検出されるVCO112c(#1)のVCOゲインは、電圧周波数特性2301の傾きに相当する。
チャネル#1のCDR回路112(#1)のVCO112c(#1)のVCOゲインについて説明したが、チャネル#2~#4のCDR回路112(#2~#4)のVCO112c(#2~#4)の各VCOゲインについても同様である。VCOゲイン検出部2112は、VCO112c(#1~#4)の各VCOゲインを直接的または間接的に検出し、検出結果を位相シフタ制御回路2113へ出力する。
(実施の形態2にかかるチャネル間の信号位相差に応じた磁界カップリング)
図24は、実施の形態2にかかるチャネル間の信号位相差に応じた磁界カップリングの一例を示す図である。図24に示すデータ信号2411~2414は、それぞれチャネル#1~#4のデータ信号である。
ここで、CDR回路112(#1~#4)のVCO112c(#1~#4)のそれぞれは、インダクタと可変容量を並列接続したLCタンクを含む発振器により実現することができる。図24に示すインダクタ2421~2424は、それぞれVCO112c(#1~#4)のLCタンクのインダクタである。
送信回路110aにおいては、送信部110(#1~#4)が並んで設けられるため、VCO112c(#1~#4)のインダクタ2421~2424も並んで設けられる。このため、インダクタ2421~2424の間において、互いの距離に応じた磁界カップリングが生じる。
たとえば、チャネル#1,#2のデータ信号2411,2412の間に位相差がない場合は磁界カップリングが発生せず、チャネル#1,#2のデータ信号2411,2412の間の位相差が大きくなるほど大きな磁界カップリングが発生する。そして、チャネル#1,#2の間で発生する磁界カップリングが大きくなるほど、チャネル#1,#2のVCO112c(#1,#2)におけるVCOゲインが変化する。たとえばこの磁界カップリングが少なくとも-60[dB]程度あれば、VCOゲインの変化を観測可能である。
したがって、たとえばVCO112c(#1)のVCOゲインを検出することにより、チャネル#1のデータ信号2411における、隣接チャネルのデータ信号(チャネル#2のデータ信号2412)との間の位相差を判定することが可能である。同様に、VCO112c(#2)のVCOゲインを検出することにより、チャネル#2のデータ信号2412における、隣接チャネルのデータ信号(チャネル#1,#3のデータ信号2411,2413)との間の位相差を判定することが可能である。
同様に、VCO112c(#3)のVCOゲインを検出することにより、チャネル#3のデータ信号2413における、隣接チャネルのデータ信号(チャネル#2,#4のデータ信号2412,2414)との間の位相差を判定することが可能である。同様に、VCO112c(#4)のVCOゲインを検出することにより、チャネル#4のデータ信号2414における、隣接チャネルのデータ信号(チャネル#3のデータ信号2413)との間の位相差を判定することが可能である。
(実施の形態2にかかるチャネル間の信号位相差とVCOゲインとの関係)
図25は、実施の形態2にかかるチャネル間の信号位相差とVCOゲインとの関係の一例を示す図である。図25において、横軸はチャネル#1,#2の間の信号位相差を示し、縦軸はチャネル#1のVCO112c(#1)のVCOゲイン[GHz/V]を示す。
位相差ゲイン特性2500は、チャネル#1,#2の間の信号位相差に対するVCO112c(#1)のVCOゲインの特性を示す。位相差ゲイン特性2500に示すように、チャネル#1,#2の間の信号位相差の変化に対して、VCO112c(#1)のVCOゲインは、データ信号の1UIの周期で周期変化する。
VCOゲイン2510は、チャネル#1のデータ信号のデータエッジとチャネル#2のデータ信号のデータエッジが揃っており、チャネル#1,#2の間の磁界カップリングによる干渉がない場合のVCO112c(#1)のVCOゲインである。
信号位相差2501は、チャネル#1のデータ信号の位相に対してチャネル#2のデータ信号の位相が90[°]程度進んでいる状態であり、この場合にVCO112c(#1)のVCOゲインは最小値付近になる。
信号位相差2502は、チャネル#1のデータ信号の位相とチャネル#2のデータ信号の位相が揃っている状態であり、この場合にVCO112c(#1)のVCOゲインはVCOゲイン2510になる。
信号位相差2503は、チャネル#1のデータ信号の位相に対してチャネル#2のデータ信号の位相が90[°]程度遅れている状態であり、この場合にVCO112c(#1)のVCOゲインは最大値付近になる。
(実施の形態2にかかるVCOゲイン検出部)
図26は、実施の形態2にかかるVCOゲイン検出部の一例を示す図である。図26に示すデータ信号2601は、チャネル#1のCDR回路112(#1)へ入力されるデータ信号である。図26に示すVCOゲイン検出部2112は、CDR回路112(#1)へ入力されるデータ信号2601の周波数を制御する。
たとえば、VCOゲイン検出部2112は、光送信装置100による光伝送の運用前に、データ信号2601としてVCOゲイン検出用の信号をCDR回路112(#1)へ入力し、そのVCOゲイン検出用の信号の周波数を制御する。VCOゲイン検出用の信号は、たとえばランダムに生成した信号や固定パターンの信号などとすることができる。
また、VCOゲイン検出部2112は、データ信号2601の周波数を切り替えながら、平均化回路112b(#1)からVCO112c(#1)へ出力される制御電圧を検出する。そして、VCOゲイン検出部2112は、切り替えた各周波数と、検出した各制御電圧に基づいて、VCO112c(#1)のVCOゲインを算出する。
上述のように、VCO112c(#1)のVCOゲインは、VCO112c(#1)へ入力される制御電圧に対するVCO112c(#1)が出力する再生クロックの周波数の比率である。これに対して、図26に示すVCOゲイン検出部2112は、複数の周波数の各信号(データ信号2601)についてVCO112c(#1)を用いてクロックを再生させる。そして、VCOゲイン検出部2112は、その複数の周波数と、その複数の周波数の各信号についてクロックを再生させた際にVCO112c(#1)へ入力された各制御電圧と、に基づいて、VCO112c(#1)のVCOゲインを直接的に検出する。なお、図26に示すVCOゲイン検出部2112は、各チャネルについてVCOゲインの検出が終了すると、CDR回路112(#1)へ入力されるデータ信号2601を、伝送路ロス補償回路111から出力されるデータ信号に切り替える。
VCO112c(#1)のVCOゲインの検出について説明したが、VCO112c(#2~#4)のVCOゲインの検出についても同様である。
(実施の形態2にかかるVCOゲイン検出部によるVCOゲインの算出)
図27は、実施の形態2にかかるVCOゲイン検出部によるVCOゲインの算出の一例を示す図である。図27において、横軸は平均化回路112b(#1)からVCO112c(#1)へ出力される制御電圧(VCO制御電圧)を示し、縦軸はVCO112c(#1)へ入力するデータ信号2601の周波数(入力周波数)を示す。
周波数電圧特性2710は、VCO112c(#1)へ入力するデータ信号2601の周波数に対する、平均化回路112b(#1)からVCO112c(#1)へ出力される制御電圧の特性である。データ信号2601の周波数を変化させると、CDR回路112(#1)は変化後のデータ信号2601と周波数が同じクロック信号を再生する。このため、周波数電圧特性2710に示すように、平均化回路112b(#1)からVCO112c(#1)へ出力される制御電圧も変化する。
プロット点2721~2725は、VCOゲイン検出部2112がデータ信号2601の周波数を切り替えながらVCO112c(#1)へ入力される制御電圧を検出した結果である。たとえば、VCOゲイン検出部2112は、プロット点2721~2725に基づく線形補間等により周波数電圧特性2710の傾きを算出する。
これにより、VCO112c(#1)へ入力される制御電圧に対するVCO112c(#1)が出力する再生クロックの周波数の比率、すなわちVCO112c(#1)のVCOゲインを検出できる。VCO112c(#1)のVCOゲインの検出について説明したが、VCO112c(#2~#4)のVCOゲインの検出についても同様である。
(実施の形態2にかかるVCOゲイン検出部の他の例)
図28は、実施の形態2にかかるVCOゲイン検出部の他の一例を示す図である。図28に示すVCOゲイン検出部2112は、VCO112c(#1)から位相検出器112a(#1)へフィードバックされる再生クロックに基づいて、その再生クロックのジッタ(トラッキングジッタ)を検出する。ジッタの検出は、周期ジッタ、サイクル・トゥ・サイクル・ジッタ等を用いた各種の方法により行うことができる。
そして、VCOゲイン検出部2112は、検出したジッタと、CDR回路112(#1)の再生クロックのジッタとVCO112c(#1)のVCOゲインとの対応情報と、に基づいて、VCO112c(#1)のVCOゲインを検出する。VCO112c(#1)のVCOゲインの検出について説明したが、VCO112c(#2~#4)のVCOゲインの検出についても同様である。
(実施の形態2にかかるCDR回路の再生クロックのジッタ)
図29は、実施の形態2にかかるCDR回路の再生クロックのジッタの一例を示す図である。図29に示す再生クロック2901は、VCO112c(#1)のVCOゲインが比較的小さい場合におけるCDR回路112(#1)の再生クロックである。再生クロック2902は、VCO112c(#1)のVCOゲインが比較的大きい場合におけるCDR回路112(#1)の再生クロックである。
再生クロック2901,2902に示すように、VCO112c(#1)のVCOゲインが大きくなると、CDR回路112(#1)の再生クロックのジッタも大きくなる。CDR回路112(#1)の再生クロックのジッタについて説明したが、CDR回路112(#2~#4)の再生クロックのジッタについても同様である。
(実施の形態2にかかるCDR回路の再生クロックのジッタとVCOゲインとの関係)
図30は、実施の形態2にかかるCDR回路の再生クロックのジッタとVCOゲインとの関係の一例を示す図である。図30において、横軸はCDR回路112(#1)の再生クロックのジッタを示し、縦軸はVCO112c(#1)のVCOゲインを示す。ジッタゲイン特性3001は、CDR回路112(#1)の再生クロックのジッタに対する、VCO112c(#1)のVCOゲインの特性である。
ジッタゲイン特性3001に示すように、VCO112c(#1)のVCOゲインが大きいほど、CDR回路112(#1)の再生クロックのジッタも大きくなる。たとえば、送信回路110aのメモリには、ジッタゲイン特性3001を示す対応情報が記憶されている。そして、位相検出器112aは、検出したCDR回路112(#1)の再生クロックのジッタと、この対応情報と、に基づいてVCO112c(#1)のVCOゲインを検出する。ジッタゲイン特性3001を示す対応情報は、たとえば対応テーブルや関数などにより実現することができる。
このように、図28に示したVCOゲイン検出部2112は、CDR回路112(#1)の再生クロックのジッタを検出し、検出したジッタと、ジッタとVCOゲインとの対応情報とに基づいて、VCO112c(#1)のVCOゲインを間接的に検出する。このVCOゲインの検出は、光送信装置100による光伝送の運用前において実行されてもよいし、光送信装置100による光伝送の運用中、すなわちCDR回路112(#1)へ実際のデータ信号が入力されている状態において実行されてもよい。
VCO112c(#1)のVCOゲインの検出について説明したが、VCO112c(#2~#4)のVCOゲインの検出についても同様である。
(実施の形態2にかかるVCOゲイン検出部のさらに他の例)
図31は、実施の形態2にかかるVCOゲイン検出部のさらに他の一例を示す図である。図31に示すVCOゲイン検出部2112は、平均化回路112b(#1)からVCO112c(#1)へ出力される制御電圧を検出する。
そして、VCOゲイン検出部2112は、検出した制御電圧と、VCO112c(#1)の制御電圧とVCO112c(#1)のVCOゲインとの対応情報と、に基づいて、VCO112c(#1)のVCOゲインを検出する。VCO112c(#1)のVCOゲインの検出について説明したが、VCO112c(#2~#4)のVCOゲインの検出についても同様である。
(実施の形態2にかかるVCOの制御電圧とVCOゲインとの関係)
図32は、実施の形態2にかかるVCOの制御電圧とVCOゲインとの関係の一例を示す図である。図32において、横軸はVCO112c(#1)の制御電圧を示し、縦軸はVCO112c(#1)のVCOゲインを示す。電圧ゲイン特性3201は、VCO112c(#1)の制御電圧に対するVCO112c(#1)のVCOゲインの特性である。
電圧ゲイン特性3201に示すように、VCO112c(#1)のVCOゲインは小さいほど、VCO112c(#1)の制御電圧が大きくなる。これは、CDR回路112(#1)が、再生するクロック信号の周波数が一定の周波数(入力されるデータ信号の周波数)になるように動作するためである。
たとえば、送信回路110aのメモリには、電圧ゲイン特性3201を示す対応情報が記憶されており、位相検出器112aは、検出したVCO112c(#1)の制御電圧と、この対応情報と、に基づいてVCO112c(#1)のVCOゲインを検出する。電圧ゲイン特性3201を示す対応情報は、たとえば対応テーブルや関数などにより実現することができる。
このように、図31に示したVCOゲイン検出部2112は、VCO112c(#1)の制御電圧を検出し、検出した制御電圧と、制御電圧とVCOゲインとの対応情報とに基づいて、VCO112c(#1)のVCOゲインを間接的に検出する。このVCOゲインの検出は、光送信装置100による光伝送の運用前において実行されてもよいし、光送信装置100による光伝送の運用中、すなわちCDR回路112(#1)へ実際のデータ信号が入力されている状態において実行されてもよい。
VCO112c(#1)のVCOゲインの検出について説明したが、VCO112c(#2~#4)のVCOゲインの検出についても同様である。
(実施の形態2にかかる光送信装置による位相検出・制御処理)
図33は、実施の形態2にかかる光送信装置による位相検出・制御処理の一例を示すフローチャートである。実施の形態2にかかる光送信装置100は、たとえば図33に示す位相検出・制御処理を実行する。たとえば、光送信装置100は、図21に示したVCOゲイン検出部2112および位相シフタ制御回路2113により、図33に示す処理を実行する。
まず、光送信装置100は、送信回路110aのメモリに記憶されたインデックスであって現在の評価対象のチャネルを示す$iに1を設定する(ステップS3301)。ステップS3301は、たとえば位相シフタ制御回路2113により実行される。
つぎに、光送信装置100は、現在の$iに基づいて、VCO112c(#1~#4)のうちチャネル#$iのVCO112cのVCOゲインを検出する(ステップS3302)。ステップS3302によるVCOゲインの検出には、上述の各種の検出方法を用いることができる。ステップS3302は、たとえばVCOゲイン検出部2112により実行される。
つぎに、光送信装置100は、ステップS3302により検出されたVCOゲインに基づいて、チャネル#$iについての規格化評価値V(#$i)を算出する(ステップS3303)。規格化評価値V(#$i)は、チャネル#$iについて、クロストークの影響の大きさを示す評価値である。たとえば、規格化評価値V(#$i)は、0~1の値を取り、1に近いほどクロストークの影響が大きいことを示す評価値である。規格化評価値V(#$i)の算出については後述する。ステップS3303は、たとえば位相シフタ制御回路2113により実行される。
つぎに、光送信装置100は、現在の$iに基づいて、$iが4以上であるか否かを判断する(ステップS3304)。ステップS3304は、たとえば位相シフタ制御回路2113により実行される。$iが4以上でない場合(ステップS3304:No)は、規格化評価値V(#$i)を算出していないチャネルが存在する。この場合に、光送信装置100は、$iをインクリメントし(ステップS3305)、ステップS3302へ戻る。ステップS3305は、たとえば位相シフタ制御回路2113により実行される。
ステップS3304において、$iが4以上である場合(ステップS3304:Yes)は、すべてのチャネルについて規格化評価値V(#$i)を算出済みである。この場合に、光送信装置100は、規格化評価値V(#$1)~V(#$4)のすべてが所定の閾値σ(dev_A)未満か否かを判断する(ステップS3306)。ステップS3306は、たとえば位相シフタ制御回路2113により実行される。閾値σ(dev_A)は、規格化評価値V(#$i)と比較することによりワースト位相の発生を判定するための閾値であり、一例としては0.2とすることができる。
ステップS3306において、規格化評価値V(#$1)~V(#$4)の少なくともいずれかが閾値σ(dev_A)未満でない場合(ステップS3306:No)は、チャネル#1~#4において上述のワースト位相が発生していない。この場合に、光送信装置100はチャネル間の位相制御を行わずに一連の位相検出・制御処理を終了する。
ステップS3306において、規格化評価値V(#$1)~V(#$4)のすべてが閾値σ未満である場合(ステップS3306:Yes)は、チャネル#1~#4において上述のワースト位相が発生している可能性がある。この場合に、光送信装置100は、チャネル#1,#3の信号位相をPshiftだけシフトさせる位相制御を行い(ステップS3307)、一連の位相検出・制御処理を終了する。
Pshiftは、上述のワースト位相の状態から、そのワースト位相を解消するためのシフト量であって、たとえばデータ信号のUIの1/4に相当するシフト量、またはそれ以下のシフト量である。ステップS3307により、ワースト位相が発生していた場合はそのワースト位相が解消する。ステップS3307は、たとえば、位相シフタ制御回路2113が、可変位相シフタ2111(#1,#3)における再生クロックの位相のシフト量をPshiftだけ変化させることにより実行される。
または、ステップS3307において、光送信装置100は、チャネル#2,#4の信号位相をPshiftだけシフトさせる位相制御を行ってもよい。これにより、ワースト位相が発生していた場合はそのワースト位相が解消する。この場合に、ステップS3307は、たとえば、位相シフタ制御回路2113が、可変位相シフタ2111(#2,#4)における再生クロックの位相のシフト量をPshiftだけ変化させることにより実行される。
ステップS3303において算出される規格化評価値V(#$i)について説明する。ステップS3303において、光送信装置100は、たとえば下記(1)式によりチャネル#$iの規格化評価値V(#$i)を算出する。
規格化評価値V(#$i)=ABS(Kvco_ch#i-Kdef_ch#i)
/Vmax_ch#i …(1)
上記(1)式において、ABS(X)は、Xの絶対値を示す。Kvco_ch#iは、チャネル#iについてステップS3302において検出されたVCOゲインである。Kdef_ch#iは、チャネル#iについてのベスト状態におけるVCOゲインである。チャネル#iのベスト状態とは、クロストークによるチャネル#iへの影響がない状態である。たとえば、Kdef_ch#iは、予め計算により求められ、送信回路110aのメモリに記憶されている。または、Kdef_ch#iは、予めクロストークが発生しない状況で測定され、送信回路110aのメモリに記憶されていてもよい。
Vmax_ch#iは、チャネル#iについてのワースト状態における規格化評価値Vである。チャネル#iのワースト状態とは、上述のワースト位相が発生しておりチャネル#iがビクティムとなっている状態である。たとえば、Vmax_ch#iは、予め計算により求められ、送信回路110aのメモリに記憶されている。一例としては、Vmax_ch#1=0.5、Vmax_ch#2=1、Vmax_ch#3=1、Vmax_ch#4=0.5とすることができる。または、Kdef_ch#iは、予めクロストークが発生しない状況で測定され、送信回路110aのメモリに記憶されていてもよい。
上記(1)式により、0~1の値を取り、チャネル#iにおけるクロストークの影響が大きいほど1に近くなる規格化評価値V(#$i)を算出することができる。
(実施の形態2にかかる光送信装置が記憶するベスト状態のVCOゲインおよびワースト状態の規格化評価値)
図34は、実施の形態2にかかる光送信装置が記憶するベスト状態のVCOゲインおよびワースト状態の規格化評価値の一例を示す図である。たとえば、送信回路110aのメモリには、図34に示すテーブル3400が記憶されている。テーブル3400は、チャネル#1~#4のそれぞれについて、ベスト状態のVCOゲインおよびワースト状態の規格化評価値を示している。
たとえば、Kdef_ch#1~Kdef_ch#4は、それぞれチャネル#1~#4についてのベスト状態におけるVCOゲインである。Vmax_ch#1~Vmax_ch#4は、それぞれチャネル#1~#4についてのワースト状態における規格化評価値Vである。たとえば、光送信装置100は、チャネル#iについて、検出したチャネル#iのVCOゲインと、テーブル3400のKdef_ch#iおよびVmax_ch#iと、上記(1)式と、に基づいて規格化評価値V(#$i)を算出する。
(実施の形態2にかかる光送信装置が記憶するベスト状態のVCOゲインおよびワースト状態の規格化評価値の他の例)
図35は、実施の形態2にかかる光送信装置が記憶するベスト状態のVCOゲインおよびワースト状態の規格化評価値の他の一例を示す図である。たとえば、送信回路110aのメモリには、図35に示すテーブル3500,3501,3502,…が記憶されていてもよい。
テーブル3500は、送信回路110aの温度が0[℃]の場合における、ベスト状態のVCOゲインおよびワースト状態の規格化評価値をチャネルごとに示している。テーブル3501は、送信回路110aの温度が10[℃]の場合における、ベスト状態のVCOゲインおよびワースト状態の規格化評価値をチャネルごとに示している。テーブル3502は、送信回路110aの温度が20[℃]の場合における、ベスト状態のVCOゲインおよびワースト状態の規格化評価値をチャネルごとに示している。
すなわち、VCO112c(#1~#4)の各VCOゲインは送信回路110aの温度によって変化するため、図34に示したテーブル3400と同様の対応情報を、送信回路110aの温度ごとに記憶しておく。
この場合に、光送信装置100は、たとえば送信回路110aの温度を測定する温度測定部を備える。この温度測定部は、たとえば送信回路110aのチップに集積されたものでもよいし、送信回路110aのチップの近傍に設けられたものでもよい。
光送信装置100は、0[℃]、10[℃]、20[℃]、…のうち温度測定部により測定された温度に最も近い温度を特定する。または、光送信装置100は、0[℃]、10[℃]、20[℃]、…のうち、温度測定部により測定された温度を端数処理(たとえば10の倍数となるように切り捨て)した温度を特定してもよい。
そして、光送信装置100は、記憶しているテーブル3500,3501,3502,…のうち、特定した温度に対応するテーブルに基づいて、上述の規格化評価値V(#$i)を算出してもよい。これにより、送信回路110aの温度に応じて、クロストークの影響を正確に示す規格化評価値V(#$i)を算出し、チャネル間のクロストークの影響を精度よく抑制することができる。
(実施の形態2にかかる光送信装置が適用される光モジュール)
図36は、実施の形態2にかかる光送信装置が適用される光モジュールの一例を示す図である。実施の形態2にかかる光送信装置100は、たとえば図36に示す光モジュール3600に適用することができる。
光モジュール3600は、基板3601上に、マイクロコンピュータ3602と、記憶素子3603と、ドライバIC3604と、発光素子3605と、受光素子3606と、TIA_IC3607と、カードエッジ電気コネクタ3608と、を備える。光モジュール3600は、一例としてはQSFPモジュールである。QSFPはQuad Small Form-factor Pluggableの略語である。基板3601は、たとえばPCB(Printed Circuit Board:プリント基板)である。
マイクロコンピュータ3602は、光モジュール3600の通常動作時には、たとえば、光モジュール3600のIC(たとえばドライバIC3604やTIA_IC3607)内のLOS情報等のアラーム信号を外部へ出力する。LOSはLoss Of Signal(入力断)の略語である。また、マイクロコンピュータ3602は、後述のTIA_IC3607により得られた受信信号について測定したRSSI等の受信光パワーなどの情報を外部へ出力する。RSSIはReceived Signal Strength Indicator(受信信号強度)の略語である。外部とは、後述のカードエッジ電気コネクタ3608によって光モジュール3600と接続される装置である。
また、マイクロコンピュータ3602は、光モジュール3600に設けられた温度測定部によって測定された温度に応じて、ドライバIC3604やTIA_IC3607の設定変更等を行ってもよい。マイクロコンピュータ3602による記憶素子3603、ドライバIC3604、TIA_IC3607、光モジュール3600の外部等との間の通信には、たとえばI2Cインターフェース等の制御線が用いられる。
記憶素子3603は、マイクロコンピュータ3602に接続されており、各種の情報を記憶する。一例としては、記憶素子3603にはEEPROMを用いることができる。EEPROMはElectrically Erasable Programmable Read Only Memoryの略語である。ドライバIC3604は、発光素子3605の駆動信号を生成し、生成した駆動信号を発光素子3605へ出力する駆動回路である。発光素子3605は、ドライバIC3604から出力された駆動信号に応じた光信号を、光モジュール3600の対向装置へ送信する。
受光素子3606は、光モジュール3600の対向装置から送信された光信号を電気信号に変換し、変換した電気信号を受信信号としてTIA_IC3607へ出力する。TIA_IC3607は、受光素子3606から出力された受信信号を電流信号から電圧信号に変換する。カードエッジ電気コネクタ3608は、光モジュール3600と外部の装置との間の電気的な接続を行うためのコネクタである。
また、光モジュール3600は、送信および受信ともに、複数チャネルの光伝送に対応していてもよい。この場合に、ドライバIC3604および発光素子3605の組み合わせは、送信側のチャネル数(たとえば4つ)に相当する数だけ設けられる。また、受光素子3606およびTIA_IC3607の組み合わせは、受信側のチャネル数(たとえば4つ)に相当する数だけ設けられる。
図21に示した送信回路110aは、たとえばドライバIC3604により実現することができる。図21に示した発光素子121~124は、たとえば発光素子3605により実現することができる。また、図21に示したVCOゲイン検出部2112および位相シフタ制御回路2113は、たとえばマイクロコンピュータ3602および記憶素子3603により実現することができる。
この場合に、マイクロコンピュータ3602は、たとえばドライバIC3604に含まれるCDR回路112(#1~#4)を監視することによりチャネル#1~#4の各VCOゲインを検出する。また、マイクロコンピュータ3602は、各VCOゲインの検出結果に基づいて、ドライバIC3604に含まれる位相シフタ制御回路2113(#1~#4)を制御する。また、図34に示したテーブル3400や図35に示したテーブル3500,3501,3502,…は、たとえば記憶素子3603に記憶される。
また、光モジュール3600は、たとえば、図20に示した第1光伝送装置2010に適用することができる。この場合に、ドライバIC3604は図20に示した送信回路2011に含まれ、発光素子3605は図20に示した発光素子2012aに対応する。
また、光モジュール3600は、たとえば、図20に示した第2光伝送装置2030に適用することができる。この場合に、受光素子3606は図20に示した受光素子2031cに対応し、TIA_IC3607は図20に示した受信回路2032に含まれる。
また、上述のように、図20に示した第1光伝送装置2010と第2光伝送装置2030との間で光信号を双方向に送信する構成においては、第1光伝送装置2010および第2光伝送装置2030のそれぞれに光モジュール3600を適用することができる。
(実施の形態2にかかる光送信装置におけるクロストークの低減)
図37は、実施の形態2にかかる光送信装置におけるクロストークの低減の一例を示す図である。図37において、図18と同様に、横軸は光送信装置100が送信した光信号を受信する光受信装置における受信パワーPin[dBm]を示し、縦軸は光送信装置100が送信した光信号についてのその光受信装置におけるBERを示している。図18に示した例と同様に、ここでは、光送信装置100が、発光素子121~124からそれぞれ28[Gbps]の光信号を送信することにより、28×4=112[Gbps]の光伝送を行うとする。
受信パワーBER特性3701は、上述のベスト状態における、光受信装置における受信パワーとBERとの関係を示している。受信パワーBER特性3702は、上述のワースト状態(ワースト位相が発生した状態)における、光受信装置における受信パワーとBERとの関係を示している。受信パワーBER特性3703は、ワースト状態を上述の位相検出・制御処理により解消した場合における、光受信装置における受信パワーとBERとの関係を示している。
受信パワーBER特性3701に示すように、ベスト状態においては、チャネル間のクロストークが小さいため、BERが10-12となる受信パワーは-7.6[dBm]程度と比較的小さい。
また、受信パワーBER特性3702に示すように、ワースト状態においては、BERが10-12となる受信パワーが-2[dBm]程度と比較的大きい。これは、チャネル間のクロストークによる影響が大きいことを示している。
これに対して、受信パワーBER特性3703に示すように、光送信装置100が上述の位相検出・制御処理を行ってワースト位相を解消することにより、BERが10-12となる受信パワーが-4.7[dBm]程度と比較的小さくなる。これは、上述の位相検出・制御処理により、チャネル間のクロストークによる影響が抑制されていることを示している。たとえば、ワースト位相を解消することにより、最大で6[dB](4倍)程度の改善効果を得ることができる。
図37に示すように、光送信装置100の位相検出・制御処理により、4チャネルによる高速な光伝送におけるチャネル間のクロストークによる影響を抑制することができる。このため、たとえば光送信装置100を適用した光インターコネクトなどの送受信性能を向上させることができる。したがって、たとえば、プロセスばらつきや、温度や電源電圧といった環境面のばらつきに強くなり、伝送速度や伝送距離の向上を図ることができる。
(実施の形態2にかかる光送信装置におけるベスト状態とワースト状態の比較)
図38は、実施の形態2にかかる光送信装置におけるベスト状態とワースト状態の比較の一例を示す図である。図38に示す入力データ3811~3814は、それぞれチャネル#1~#4の送信部110(#1~#4)へ入力された28[Gbps](35.7[ps]周期)のデータ信号をアイパターンで示したものである。内部クロック3821~3824は、それぞれチャネル#1~#4の送信部110(#1~#4)のCDR回路112(#1~#4)により再生された35.7[ps]周期の再生クロックである。
ワースト状態3801は、チャネル#2~#4において上述のワースト位相が発生したワースト状態の一例である。具体的には、入力データ3812~3814について、中央の入力データ3813のアイセンタ付近と、その両側の入力データ3812,3814のデータエッジと、のタイミングが同じになっている。ワースト状態3801におけるチャネル#1~#4についてのVCOゲインの検出結果は、たとえばすべて1となる。
ベスト状態3802は、チャネル#1~#4においてクロストークの影響が小さいベスト状態の一例である。具体的には、入力データ3811~3814の各信号位相が揃っている。ベスト状態3802におけるチャネル#1~#4についてのVCOゲインの検出結果は、たとえばすべて1となる。
したがって、チャネル#1~#4についてのVCOゲインの検出結果では、規格化評価値V(#1~#4)の算出結果が同じになり、ワースト状態3801とベスト状態3802とを区別することができない。これは、ワースト状態3801とベスト状態3802とが、入力データ3811~3814の各データエッジ(立ち上がりまたは立ち下がり)が揃っていることに起因する。
これに対して、図33に示した処理では、ワースト状態3801とベスト状態3802を区別せず、ワースト状態3801とベスト状態3802のいずれにおいてもステップS3307の位相制御が行われる。これにより、ワースト状態3801が発生していた場合はワースト状態3801を解消し、チャネル間のクロストークによる伝送品質への影響を抑制することができる。
このように、実施の形態2にかかる光送信装置100によれば、VCO112c(#1~#4)のVCOゲインの検出結果に基づいて、送信部110(#1~#4)によって出力される各データ信号(駆動信号)の間の位相差を制御することができる。これにより、各チャネルのデータ信号の間の相対的な位相を調整し、チャネル間のクロストークによる伝送品質への影響を抑制することができる。
また、実施の形態2にかかる光送信装置100は、送信部110(#1~#4)の0/1判定回路113(#1~#4)によって識別再生され出力ドライバ115(#1~#4)により増幅される前の各データ信号の位相差を制御する。これにより、チャネル間に大きなクロストークが発生しやすい出力ドライバ115(#1~#4)におけるチャネル間のクロストークによる、伝送品質への影響を抑制することができる。
また、実施の形態2にかかる光送信装置100によれば、VCO112c(#1~#4)へ入力される制御電圧と、VCO112c(#1~#4)が出力するクロックと、の少なくともいずれかに基づいてVCOゲインを検出することができる。これにより、たとえば既存のVCO112c(#1~#4)を利用して検出したVCOゲインに基づいて、各チャネルのデータ信号の間の相対的な位相を調整することができる。このため、たとえば図3に示した位相比較器116の各構成等を設けなくても、チャネル間のクロストークによる伝送品質への影響を抑制することができる。したがって、たとえば回路部品の変更を抑制することができる。
たとえば、光送信装置100は、図26,図27に示したように、送信回路110a(#1~#4)のそれぞれについて、複数の周波数の各信号についてVCO112cを用いてクロックを再生させる。そして、光送信装置100は、その複数の周波数と、その複数の周波数の各信号についてクロックを再生させた際にVCO112cへ入力された各制御電圧と、に基づいてVCOゲインを検出することができる。
または、光送信装置100は、図28~図30に示したように、VCO112c(#1~#4)が出力するクロックのジッタと、クロックのジッタとVCO112c(#1~#4)のゲインとの対応情報と、に基づいてVCOゲインを検出することができる。または、光送信装置100は、図31,図32に示したように、VCO112c(#1~#4)へ入力される制御電圧と、制御電圧と電圧制御発振器のゲインとの対応情報と、に基づいてVCOゲインを検出することができる。または、光送信装置100は、上述の各方法を組み合わせてVCOゲインを検出してもよい。
また、実施の形態2にかかる光送信装置100は、送信部110(#1~#4)のそれぞれについて、VCO112cのゲインの検出結果と、VCO112cの基準ゲインと、の差分に基づく評価値を算出する。基準ゲインは、たとえば上述のベスト状態のVCOゲインである。評価値は、たとえば上述の規格化評価値である。そして、光送信装置100は、算出した各評価値に基づいて、各データ信号の間の位相差を制御する。これにより、各チャネルについて、クロストークに起因するVCOゲインの変動を示す評価値を用いて、各チャネルのデータ信号の間の相対的な位相を調整し、チャネル間のクロストークによる伝送品質への影響を抑制することができる。
なお、実施の形態2においては光送信装置100が4チャネルの送信装置である場合について説明したが、光送信装置100が対応するチャネル数はこれらに限らない。たとえば、光送信装置100は8チャネル以上の送信装置であってもよい。
また、光信号を送信する光送信装置100について説明したが、実施の形態2は光信号を受信する光受信装置にも適用可能である。たとえば、図20に示した第2光伝送装置2030の受信回路2032には、図21に示した送信回路110aと同様の回路を設けることができる。
ただし、この場合に、伝送路ロス補償回路111(#1~#4)には、第1光伝送装置2010により送信されたチャネル#1~#4の光信号を、チャネル#1~#4の光電変換モジュール2031が受光することにより得られたデータ信号が入力される。また、出力ドライバ115(#1~#4)は、それぞれ0/1判定回路113(#1~#4)から出力されたデータ信号を増幅し、増幅したデータ信号を計算機32へ出力する。これにより、第2光伝送装置2030が計算機32へ出力する各チャネルのデータ信号について、チャネル間のクロストークによる伝送品質への影響を抑制することができる。
(実施の形態3)
実施の形態3について、実施の形態2と異なる部分について説明する。実施の形態3においては、図38に示したワースト状態3801とベスト状態3802を区別し、ワースト状態3801の場合はワースト状態3801を解消し、ベスト状態3802の場合はベスト状態3802を維持することが可能な構成について説明する。
(実施の形態3にかかる光送信装置が備えるCDR回路)
図39は、実施の形態3にかかる光送信装置が備えるCDR回路の一例を示す図である。図39において、図21に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図39に示すように、実施の形態3にかかる光送信装置100は、図21に示した構成に加えてCDR回路112(#2)に固定位相シフタ3911(#2)を備える。固定位相シフタ3911(#2)は、VCO112c(#2)から位相検出器112a(#2)へフィードバックされる再生クロックの位相を、データ信号のUIの1/4だけ遅延させる。
また、実施の形態3にかかる光送信装置100は、図21に示した構成に加えてCDR回路112(#4)に固定位相シフタ3911(#4)を備える。固定位相シフタ3911(#4)は、VCO112c(#4)から位相検出器112a(#4)へフィードバックされる再生クロックの位相を、データ信号のUIの1/4だけ遅延させる。
一方、CDR回路112(#1,#3)は、CDR回路112(#2,#4)の固定位相シフタ3911(#2,#4)に対応する固定位相シフタを備えておらず、たとえば図21に示した構成と同様である。すなわち、光送信装置100は、チャネル#1~#4のうち、互いに隣接する各チャネルの再生クロックに異なる遅延量を与える固定位相シフタ3911(#2,#4)を備える。
これにより、たとえば、図38に示したワースト状態3801とベスト状態3802とで、チャネル#1~#4について検出されるVCOゲインの組み合わせが異なるようにすることができる。したがって、ワースト状態3801とベスト状態3802とを区別し、ワースト状態3801の場合はワースト状態3801を解消し、ベスト状態3802の場合はベスト状態3802を維持することが可能になる。
(実施の形態3にかかる光送信装置による位相検出・制御処理)
図40は、実施の形態3にかかる光送信装置による位相検出・制御処理の一例を示すフローチャートである。実施の形態3にかかる光送信装置100は、たとえば図40に示す処理を実行する。たとえば、光送信装置100は、図21に示したVCOゲイン検出部2112および位相シフタ制御回路2113により、図40に示す処理を実行する。
図40に示すステップS4001~S4005は、図33に示したステップS3301~S3305と同様である。ステップS4004において、$iが4以上である場合(ステップS4004:Yes)は、光送信装置100は、ステップS4006へ移行する。
すなわち、光送信装置100は、ステップS4003により算出した規格化評価値V(#$1)~V(#$4)の少なくともいずれかが所定の閾値σ(dev_B)より大きいか否かを判断する(ステップS4006)。ステップS4006は、たとえば位相シフタ制御回路2113により実行される。閾値σ(dev_B)は、規格化評価値V(#$i)と比較することによりワースト位相の発生を判定するための閾値であり、一例としては0.8とすることができる。
ステップS4006において、規格化評価値V(#$1)~V(#$4)のすべてが閾値σ(dev_B)以下である場合(ステップS4006:No)は、チャネル#1~#4において上述のワースト位相が発生していない。この場合に、光送信装置100はチャネル間の位相制御を行わずに一連の処理を終了する。
ステップS4006において、規格化評価値V(#$1)~V(#$4)の少なくともいずれかが閾値σ(dev_B)より大きい場合(ステップS4006:Yes)は、チャネル#1~#4において上述のワースト位相が発生している。この場合に、光送信装置100は、チャネル#1~#4のうち、算出した規格化評価値V(#$i)が最大のチャネルの信号位相を、Pshiftだけシフトさせる位相制御を行い(ステップS4007)、一連の処理を終了する。Pshiftは、たとえばデータ信号のUIの1/2に相当するシフト量であるが、これに限らない。
ステップS4007において、規格化評価値V(#$i)が最大のチャネルが複数ある場合は、光送信装置100は、その複数のチャネルのいずれかのチャネルを選択して信号位相をシフトさせる。たとえば、光送信装置100は、その複数のチャネルのうちチャネル番号が最も小さいチャネルや、その複数のチャネルの中からランダムに選択したチャネルの信号位相をシフトさせる。
ステップS4007により、ワースト位相のビクティムになっているチャネルのデータ信号の信号位相をシフトさせ、上述のワースト位相を解消することができる。また、信号位相をシフトさせるチャネル数を少なくし、信号位相のシフトによる伝送品質への影響を抑制することができる。ステップS4007は、たとえば、位相シフタ制御回路2113が、算出した規格化評価値V(#$i)が最大のチャネルの可変位相シフタ2111における再生クロックの位相のシフト量をPshiftだけ変化させることにより実行される。ただし、光送信装置100は、ステップS4006において、図33に示したステップS3307と同様の位相制御を行ってもよい。この場合も上述のワースト位相を解消することができる。
(実施の形態3にかかる光送信装置におけるベスト状態とワースト状態の比較)
図41は、実施の形態3にかかる光送信装置におけるベスト状態とワースト状態の比較の一例を示す図である。図41において、図38に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。ここでは、図40に示したステップS4006で用いる閾値σ(dev_B)が0.8であるとする。
図41に示すベスト状態4101は、チャネル#1~#4においてクロストークの影響が小さいベスト状態の一例である。具体的には、ベスト状態4101において、入力データ3811~3814の各信号位相が揃っている。実施の形態3にかかる光送信装置100においては、ベスト状態4101においても固定位相シフタ3911(#2,#4)により内部クロック3822,3824の位相がずれる。このため、チャネル#1~#4のVCOゲインはそれぞれ1.25、0.5、1.5、0.75となる。そして、チャネル#1~#4についての規格化評価値V(#1~#4)はすべて0となる。この場合に、光送信装置100は、規格化評価値V(#1~#4)のすべてがσ(dev_B)=0.8以下であるため、ステップS4007による位相制御を行わない。このため、ベスト状態4101を維持することができる。
ワースト状態4102は、チャネル#2~#4においてチャネル#3がビクティムとなるワースト位相が発生したワースト状態の一例である。ワースト状態4102においては、チャネル#1~#4のVCOゲインはそれぞれ1.25、1.0、0.5、1.25となる。そして、チャネル#1~#4についての規格化評価値V(#1~#4)はそれぞれ0、1、1、0.5となる。この場合に、光送信装置100は、規格化評価値V(#2,#3)がσ(dev_B)=0.8より大きいため、ステップS4007において、チャネル#2,#3のうちのいずれかの信号位相をシフトさせる。これにより、チャネル#2~#4においてチャネル#3がビクティムとなるワースト位相が発生したワースト状態を解消することができる。
ワースト状態4103は、チャネル#1~#3においてチャネル#3がビクティムとなるワースト位相が発生したワースト状態の一例である。ワースト状態4103においては、チャネル#1~#4のVCOゲインはそれぞれ0.75、1.5、1、1.25となる。そして、チャネル#1~#4についての規格化評価値V(#1~#4)はそれぞれ0.5、2、1、0となる。この場合に、光送信装置100は、規格化評価値V(#2,#3)がσ(dev_B)=0.8より大きいため、ステップS4007において、チャネル#2,#3のうちのいずれかの信号位相をシフトさせる。これにより、チャネル#1~#3においてチャネル#3がビクティムとなるワースト位相が発生したワースト状態を解消することができる。
ワースト状態4104は、チャネル#4がビクティムとなるワースト位相が発生したワースト状態の一例である。ワースト状態4104においては、チャネル#1~#4のVCOゲインはそれぞれ1.25、0.5、1.0、1.25となる。そして、チャネル#1~#4についての規格化評価値V(#1~#4)はそれぞれ0、0、1、0.5となる。この場合に、光送信装置100は、規格化評価値V(#3)がσ(dev_B)=0.8より大きいため、ステップS4007においてチャネル#3の信号位相をシフトさせる。これにより、チャネル#4がビクティムとなるワースト位相が発生したワースト状態を解消することができる。
ワースト状態4105は、チャネル#1がビクティムとなるワースト位相が発生したワースト状態の一例である。ワースト状態4105においては、チャネル#1~#4のVCOゲインはそれぞれ0.75、1、1.5、0.75となる。そして、チャネル#1~#4についての規格化評価値V(#1~#4)はそれぞれ0.5、1、0、0となる。この場合に、光送信装置100は、規格化評価値V(#2)がσ(dev_B)=0.8より大きいため、ステップS4007においてチャネル#2の信号位相をシフトさせる。これにより、チャネル#1がビクティムとなるワースト位相が発生したワースト状態を解消することができる。
図41に示すように、実施の形態3にかかる光送信装置100においては、ワースト状態である場合はそのワースト状態を解消し、ベスト状態である場合はそのベスト状態を維持することが可能である。
このように、実施の形態3にかかる光送信装置100によれば、実施の形態2と同様に、各チャネルのデータ信号の間の相対的な位相を調整し、チャネル間のクロストークによる伝送品質への影響を抑制することができる。
また、実施の形態3にかかる光送信装置100は、送信部110(#1~#4)のうちの互いに隣接する各送信部が再生する各クロックの少なくともいずれかの位相をシフトさせる固定位相シフタ3911(#2,#3)を備える。この位相シフタは、その互いに隣接する各送信部が再生する各クロックに対する位相シフト量が異なるように位相をシフトさせる。互いに隣接する各送信部が再生する各クロックとは、たとえば、送信回路110a(#1,#2)が再生する各クロックと、送信回路110a(#2,#3)が再生する各クロックと、送信回路110a(#3,#4)が再生する各クロックと、を含む。
これにより、各チャネルの位相が揃っている状態が各チャネルのVCOゲインに基づいて判別可能になる。そして、光送信装置100は、そのような状態においては各チャネルのデータ信号の間の相対的な位相を調整しないことにより、信号位相のシフトによる伝送品質への影響を抑制することができる。
なお、図39,図41に示す例ではCDR回路112(#2,#4)に固定位相シフタ3911(#2,#4)を設ける場合について説明したが、CDR回路112(#1,#3)に固定位相シフタ3911(#1,#3)を設ける構成としてもよい。また、CDR回路112(#1~#4)にそれぞれ固定位相シフタ3911(#1~#4)を設け、固定位相シフタ3911(#1,#3)と、固定位相シフタ3911(#2,#4)と、で位相シフト量が異なるようにしてもよい。
また、実施の形態3にかかる光送信装置100は、実施の形態2にかかる光送信装置100と同様に、4チャネルの送信装置に限らず、たとえば8チャネル以上の送信装置であってもよい。また、実施の形態3は、実施の形態2と同様に、光信号を受信する光受信装置にも適用可能である。たとえば、図20に示した第2光伝送装置2030の受信回路2032には、図39に示したCDR回路112(#1~#4)を備える送信回路110aと同様の回路を設けることができる。
また、実施の形態1と、実施の形態2,3と、の各構成は入れ替えることも可能である。たとえば、実施の形態1にかかる光送信装置100において、実施の形態2,3にかかる光送信装置100のように、可変位相シフタ114(#1~#4)に代えて可変位相シフタ2111(#1~#4)を備えてもよい。すなわち、実施の形態1にかかる光送信装置100において、0/1判定回路113へ入力される再生クロックの位相をシフトさせることにより位相制御を行ってもよい。
また、実施の形態1にかかる光送信装置100において、実施の形態2,3にかかる光送信装置100のように、各チャネルの再生クロックの位相の比較結果に基づいて、ワースト位相が発生している可能性があるか否かを判定してもよい。そして、ワースト位相が発生している可能性がある場合にそのワースト位相を解消する位相制御を行ってもよい。
また、実施の形態2,3にかかる光送信装置100において、実施の形態1にかかる光送信装置100のように、可変位相シフタ2111(#1~#4)に代えて可変位相シフタ114(#1~#4)を備えてもよい。すなわち、実施の形態2,3にかかる光送信装置100において、出力ドライバ115(#1~#4)へ出力されるデータ信号の位相をシフトさせることにより位相制御を行ってもよい。
また、実施の形態2,3にかかる光送信装置100において、実施の形態1にかかる光送信装置100のように、図12に示した構成のようなバッファチェーン構成を用いて可変位相シフタ2111(#1~#4)を実現してもよい。
また、実施の形態2,3にかかる光送信装置100において、実施の形態1にかかる光送信装置100のように、各チャネルの信号位相が揃っている場合に、各チャネルの信号位相を互いにずらす位相制御を行ってもよい。また、実施の形態1にかかる光送信装置100において、実施の形態3にかかる光送信装置100のように、各チャネルの信号位相が揃っている場合は、その各チャネルの信号位相を維持するようにしてもよい。
なお、上述した各実施の形態においては、位相シフトを行うことから、チャネル間のスキュー(最大で1UI程度)が発生する。このチャネル間のスキューについては、たとえば受信側におけるデスキュー処理(たとえば±1000UI程度まで補償可能)により補償することができる。
以上説明したように、光送信装置および光受信装置によれば、チャネル間のクロストークによる伝送品質への影響を抑制することができる。
上述した各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)複数のチャネルに対応して配列された複数の送信部であって、各送信部が、入力されたデータ信号からクロックを再生し、再生した前記クロックに基づいて識別再生した前記データ信号を発光素子へ出力する複数の送信部と、
前記各送信部によって再生された前記クロックの位相の比較結果に基づいて、前記各送信部によって出力される前記データ信号の間の位相差を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする光送信装置。
(付記2)前記各送信部は、識別再生した前記データ信号を増幅するドライバを有し、前記ドライバにより増幅した前記データ信号を前記発光素子へ出力し、
前記制御部は、前記各送信部によって識別再生された前記データ信号であって前記ドライバにより増幅される前の前記データ信号の間の位相差を制御する、
ことを特徴とする付記1に記載の光送信装置。
(付記3)前記制御部は、前記各送信部によって再生された前記クロックの位相が同じである場合は、前記各送信部によって出力される前記データ信号に対する位相シフト量をそれぞれ異なる量にすることを特徴とする付記1または2に記載の光送信装置。
(付記4)前記複数の送信部は、第1送信部、前記第1送信部に隣接する第2送信部および前記第2送信部に隣接する第3送信部を含み、
前記制御部は、前記第1送信部、前記第2送信部および前記第3送信部によって再生された各クロックの位相が同じである場合は、前記第2送信部によって出力されるデータ信号に対する位相シフト量を、前記第1送信部および前記第3送信部によって出力される各データ信号に対する位相シフト量と異なる量にする、
ことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載の光送信装置。
(付記5)前記複数の送信部は、前記第1送信部または前記第3送信部に隣接する第4送信部を含み、
前記制御部は、前記第1送信部、前記第2送信部および前記第3送信部によって再生された各クロックの位相が第1位相であり、前記第4送信部によって再生されたクロックの位相が前記第1位相と異なる第2位相である場合は、前記第2送信部によって出力されるデータ信号に対する位相シフト量を、前記第2送信部によって出力されるデータ信号の位相が前記第1位相および前記第2位相と異なる位相になるように制御する、
ことを特徴とする付記4に記載の光送信装置。
(付記6)複数のチャネルに対応して配列された複数の受信部であって、各受信部が、受光素子が光信号を受光して得たデータ信号からクロックを再生し、再生した前記クロックに基づいて識別再生した前記データ信号を出力する複数の受信部と、
前記各受信部によって再生された前記クロックの位相の比較結果に基づいて、前記各受信部によって出力される前記データ信号の間の位相差を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする光受信装置。
(付記7)前記各受信部は、識別再生した前記データ信号を増幅するドライバを有し、前記ドライバにより増幅した前記データ信号を出力し、
前記制御部は、前記各受信部によって識別再生された前記データ信号であって前記ドライバにより増幅される前の前記データ信号の間の位相差を制御する、
ことを特徴とする付記6に記載の光受信装置。
(付記8)複数のチャネルに対応して配列された複数の送信部であって、各送信部が、入力されたデータ信号から電圧制御発振器を用いてクロックを再生し、再生した前記クロックに基づいて識別再生した前記データ信号を発光素子へ出力する複数の送信部と、
前記各送信部の前記電圧制御発振器のゲインの検出結果に基づいて、前記各送信部によって出力される前記データ信号の間の位相差を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする光送信装置。
(付記9)前記各送信部の前記電圧制御発振器はインダクタを含むことを特徴とする付記8に記載の光送信装置。
(付記10)前記制御部は、前記電圧制御発振器へ入力される制御電圧と、前記電圧制御発振器が出力するクロックと、の少なくともいずれかに基づいて前記電圧制御発振器のゲインを検出することを特徴とする付記8または9に記載の光送信装置。
(付記11)前記制御部は、前記各送信部について、複数の周波数の各信号について前記電圧制御発振器を用いてクロックを再生させ、前記複数の周波数と、前記複数の周波数の各信号についてクロックを再生させた際に前記電圧制御発振器へ入力された各制御電圧と、に基づいて前記電圧制御発振器のゲインを検出することを特徴とする付記10に記載の光送信装置。
(付記12)前記制御部は、前記電圧制御発振器が出力するクロックのジッタの検出結果と、前記ジッタと前記電圧制御発振器のゲインとの対応情報と、に基づいて前記電圧制御発振器のゲインを検出することを特徴とする付記10に記載の光送信装置。
(付記13)前記制御部は、前記電圧制御発振器へ入力される制御電圧と、前記制御電圧と前記電圧制御発振器のゲインとの対応情報と、に基づいて前記電圧制御発振器のゲインを検出することを特徴とする付記10に記載の光送信装置。
(付記14)前記制御部は、前記各送信部について、前記電圧制御発振器のゲインの検出結果と、前記電圧制御発振器の所定の基準ゲインと、の差分に基づく評価値を算出し、算出した各評価値に基づいて前記位相差を制御することを特徴とする付記8~13のいずれか一つに記載の光送信装置。
(付記15)前記制御部は、自装置の温度の測定結果に基づいて、前記電圧制御発振器のゲインの検出結果と、自装置の温度に応じた前記基準ゲインと、の差分に基づく前記評価値を算出することを特徴とする付記14に記載の光送信装置。
(付記16)前記複数の送信部のうちの互いに隣接する各送信部が再生する各クロックの少なくともいずれかの位相を、前記互いに隣接する各送信部が再生する各クロックに対する位相シフト量が異なるようにシフトさせる位相シフタを備えることを特徴とする付記8~15のいずれか一つに記載の光送信装置。
(付記17)複数のチャネルに対応して配列された複数の受信部であって、各受信部が、受光素子が光信号を受光して得たデータ信号から電圧制御発振器を用いてクロックを再生し、再生した前記クロックに基づいて識別再生した前記データ信号を出力する複数の受信部と、
前記各受信部の前記電圧制御発振器のゲインの検出結果に基づいて、前記各受信部によって出力される前記データ信号の間の位相差を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする光受信装置。