JP7052731B2 - 積層延伸フィルム、化粧シート用基材、化粧シート及び化粧板 - Google Patents
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Description
このため、ポリ塩化ビニル系樹脂に替わり、ポリオレフィン系樹脂を用いた化粧シートが提案されている。しかし、ポリオレフィン系樹脂を用いた場合には、燃焼時の有毒ガス等の発生は抑制されるものの、ポリオレフィン系樹脂が燃焼性に優れた性質を有しているために、不燃材料の技術的基準を満たすことが困難であった。
以上のことに対応するために、化粧シート用基材として1軸延伸又は2軸延伸を施した延伸フィルムを採用すれば、化粧シート用基材が薄膜化して化粧シートの不燃性を高めると同時に、化粧シート用基材、更には化粧シートの機械的強度を高めることが可能となる。
本発明は、上述のような点に着目してなされたもので、基材強度と耐久性を両立した積層延伸フィルム、その積層延伸フィルムを備えた化粧シート用基材、その化粧シート用基材を備えた化粧シート及びその化粧シートを備えた化粧板を提供することを目的とする。
また、本発明の一態様に係る化粧シートは、上述した化粧シート用基材と、化粧シート用基材の表面層側の面に形成されたポリオレフィン系樹脂を含む一層又は複数層の透明樹脂層と、を備える。
すなわち、延伸フィルムであることから、基材の薄膜化と機械的強度を同時に高めることができる。
このとき、フィルムに延伸を施すと、基材としてのフィルム表面の結晶化が進み、基材に対するインキの湿潤親和性(インキが原反にどこまで染込むか)が低下することで、インキと基材との密着性が低下するおそれがある。これに対し、本発明の一態様によれば、延伸フィルムを構成する熱可塑性樹脂の層を複層化し、表面層の融点を、その他の層の融点より20度以上下げることで表面層での結晶化度を低減して、インキ(印刷層)との密着性が維持される。この結果、必ずしもエンボス加工を施さなくても、化粧シートとしての耐久性も確保可能となる。
また延伸によって基材を薄膜化できるので、不燃性を高めることも可能となる。
ここで、以下の図1に示す構成は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
ここで、基材6は、少なくとも最表面となる第一の基材層6-1(以下、表面層6-1と記載する)と、表面層6-1とは異なる第二の基材層6-2から第nの基材層6-nのうちの少なくとも一層とを備えている。すなわち、基材6は、表面層6-1と、第二の基材層6-2から第nの基材層6-n(nは、2以上の任意の正の整数)までのn個の基材層で形成されている。
なお、隠蔽層7は、基材6と印刷層5との間に形成してもよいし、省略しても構わない。特に本実施形態では、後述するように基材6に無機顔料を混合するため、隠蔽層7は省略しても意匠上問題はない。基材6に混合する顔料を少なく抑える場合には、必要に応じて隠蔽層7を設けることが好ましい。
化粧シート1の厚さは、例えば49μm以上360μm以下の範囲内とすることが好ましい。化粧シート1の厚さがこの範囲である場合、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上するとともに、製造コストを抑制することができる。
このような化粧シート1は、プライマー層8側の面を例えば木質基材等からなる基材板9に貼り付けられることで、化粧板を構成する。
以下、化粧シート1の各部について、詳細に説明する。
基材6は、不燃性の観点から1軸延伸又は2軸延伸により薄膜化された積層延伸フィルムからなる。基材6の厚さは、20μm以上60μm未満であることが好ましく、20μm以上40μm以下であることがより好ましい。基材6の厚さが20μm以上60μm未満の範囲である場合、化粧シート1の不燃性と機械特性(強度)を両立することができる。また、基材6の厚さが20μm以上40μm以下の範囲である場合、不燃性がさらに向上するためより好ましい。
基材6を構成する各層は樹脂材料により形成され、樹脂材料の主成分として熱可塑性樹脂を含んでいる。主成分とは、例えば、層を構成する樹脂材料を100質量部として、そのうちの70質量部以上100質量部以下、好ましくは90質量部以上100質量部以下含まれる樹脂材料をいう。
基材6の表面層6-1は、他の基材層6-2~6-nに比べて、少なくとも融点が20℃以上低い熱可塑性樹脂を含んでいる。樹脂の融点の差を20℃以上低く設定することによって、基材上にエンボス加工を施す時に、表面層にエンボス加工を施す温度において、表面層以外の基材層6-2~6-nの配向をある程度維持することができる。このため、延伸による基材の強度向上効果を維持したまま、表面層6-1と透明樹脂層3との層間密着性を改善できる。
ここで、同じ種類の樹脂ならば、融点が低いほど結晶化は進行し難い。例えば、高結晶性のポリプロピレンの融点は160℃程度で結晶化が進み易いが、低密度ポリエチレンの融点は130~145℃程度で、相対的に結晶化が進み難い。
ここで、表面層6-1が、他の基材層6-2~6-nに比べて、少なくとも融点が20℃以上低い熱可塑性樹脂の組合せとするには、例えば表面層6-1を低密度ポリエチレンで構成し、その他の基材層6-2~6-nを高結晶性のポリプロピレンで構成することで実現される。
基材6を構成する少なくとも1層、すなわち表面層6-1及び表面層6-1とは異なる他の基材層(第二の基材層6-2から第nの基材層6-n)の少なくとも一つの層は、ポリオレフィン系樹脂を含むことが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。特に、価格や加工適性の観点から、ポリオレフィン系樹脂としてポリエチレン、ポリプロピレンのうちの少なくとも1つを選択して用いることが好ましい。また、基材6の引っ張り弾性率の向上を図る場合には、高結晶性のポリプロピレンを用いることが好ましい。なお、本実施形態では、ポリプロピレン及びその誘導体を含む樹脂群を「ポリプロピレン系樹脂」と称する。
表面層6-1が軟質材を含む場合、表面層6-1は、表面層6-1を構成する主成分の樹脂(ベース樹脂)100質量部に対して軟質材が5質量部以上30質量部未満混合された混合樹脂により形成されることが好ましい。軟質材の混合量が5質量部未満の場合、軟質材の混合による軟質効果が現れにくい。また、軟質材の混合量が30質量部以上の場合、軟質材の混合による軟質効果は現れるが、基材6の延伸時における加熱処理により、表面層6-1のベタ付きが問題になる場合がある。
また、表面層6-1を形成する樹脂材料の均一性の観点から、軟質材は表面層6-1を形成する樹脂材料との相溶性が高い材料であることが好ましい。このような観点から、例えば、表面層6-1をポリプロピレン樹脂から構成する場合、混合する軟質材もポリプロピレン樹脂であることが望ましい。
化粧シート用基材6の表面層6-1と、化粧シート用基材6の表面層6-1上に形成した印刷層5との間の密着性は、基材6の表面の粗さによって向上する。しかしながら、1軸もしくは2軸の延伸を行うことにより、基材6の表面の粗さが減少してしまうため、非延伸の基材に比べて、延伸を施した基材では印刷層との密着性が低下してしまう。よって、基材6と印刷層5との密着性を向上する観点から、延伸後の基材6には適切な表面粗さを設けることが望ましい。なお、好ましい基材6上の表面粗さ指標は、最大谷深さRvが5μm以上10μm以下の範囲内である。Rvが5μm未満であると、基材と印刷層を接着するアンカー効果が低下してしまうため、適切な剥離強度試験結果を得ることができない。また、Rvが10μm超であると、印刷層の光沢値への影響が大きく、化粧シートに求められる意匠性が変化するため、好ましくない。
エンボス加工は、基材6にエンボスロールを圧着することによって行い、エンボスロール上の形状に応じた粗さを、基材6の表面に付与することができる。エンボス加工の際、エンボスロール温度は、基材6が十分に熱変形する温度以上とする必要があり、特に本願においては、基材6の表面層6-1は変形するものの、表面層6-1以外の基材層6-2~6-nが変形する温度以下とすることが望ましい。樹脂に対して適切なエンボスロール温度は、圧着時の圧力に影響を受けるため、一意に決定されるものではないが、一定の圧力下においては、基材6の各層を構成する樹脂の融点と相関するため、本願のように基材6の表面層6-1の融点が、それ以外の層6-2~6-nの融点より20℃以上低い設計であれば、基材6の表面層6-1にエンボスロール表面構造を転写し始める温度においては、表面層6-1以外の基材層6-2~6-nは変形しないか変形量が小さく抑えられる。
基材6を構成する少なくとも1層、すなわち表面層6-1及び表面層6-1とは異なる基材層(第二の基材層6-2から第nの基材層6-n)の少なくとも一つの層は、無機顔料を含んでいることが好ましい。無機顔料を含有することにより、基材6の光透過率が低下して、化粧シート1を貼り付ける基材板9の模様を透過させないようにすることができる。
無機顔料の混合量は、表面層6-1及び他の基材層6-2~6-nの各層において、樹脂材料に対してそれぞれ5vol%以上50vol%以下とすることが好ましい。無機顔料の混合量が5vol%以上50vol%以下である場合、無機顔料添加による不燃性向上の効果が発現するとともに、無機顔料の添加量が多すぎることによる基材6の脆化も抑制することができるためである。
天然無機顔料としては、例えば、土系顔料、焼成土、鉱物性顔料などが挙げられる。合成無機顔料としては、酸化物顔料、水酸化物顔料、硫化物顔料、珪酸塩顔料、燐酸塩顔料、炭酸塩顔料、金属粉顔料、炭素顔料などが挙げられる。また、天然無機顔料、合成無機顔料の中から、一種類もしくは二種類以上を混合した混合顔料を用いてもよい。
なお、顔料として有機顔料を用いることは好ましくない。基材6の不燃性が損なわれるためである。
印刷層5は、意匠性を付与するために絵柄模様が形成された層である。印刷層5は、既知の印刷手法を用いて化粧シート用基材6の表面層6-1上に設けることができる。基材6を巻取りの状態で用意できる場合には、印刷層5の形成のための印刷をロールツーロールの印刷装置で行うことができる。印刷手法は特に限定するものではないが、生産性や絵柄の品位を考慮すれば、例えばグラビア印刷法を用いることができる。
絵柄模様は、床材や壁材などの使用箇所に応じた意匠性を考慮して任意の絵柄模様を採用すればよい。例えば木質系の絵柄模様の化粧シート1を得る場合、絵柄模様には各種木目模様が好んで用いられることが多く、また、木目模様以外にもコルク模様が用いられてもよい。また、大理石などの石材の床をイメージした化粧シート1を得る場合、絵柄模様には大理石の石目などが用いられる。また、天然材料の絵柄模様以外にも、それらをモチーフとした人工的絵柄模様や幾何学模様などの人工的絵柄模様が印刷層5の絵柄模様として用いられる。
印刷インキには、適宜、通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、バインダーを添加する。顔料としては、例えば縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等が挙げられる。なお、バインダーは、水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでもよく、硬化法についても1液タイプ、主剤と硬化剤とからなる2液タイプ、もしくは、紫外線や電子線などによって硬化するタイプなど特に限定するものではない。中でも最も一般的な方法は、2液タイプのもので、ウレタン系の主剤と、イソシアネートからなる硬化剤を用いる方法である。この他にも、各種金属の蒸着やスパッタリングで意匠を施すようにしてもよい。
印刷層5の厚さは、3μm以上20μm以下であることが好ましい。印刷層5の厚さがこの範囲である場合、印刷を明瞭にすることができるとともに、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上し、かつ製造コストを抑制することができる。
接着剤層4は、基材6および印刷層5と、透明樹脂層3との接着を強固にする目的で設けられる。基材6および印刷層5と、透明樹脂層3との接着が強固であることにより、化粧シート1に対して、曲面や直角面に追随する曲げ加工性を付与することができる。接着剤層4は透明であることが好ましい。
接着剤層4は、例えばアクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などにより形成される。接着剤層4を構成する接着剤としては、通常、その凝集力から2液硬化タイプのものとして、特にイソシアネートを用いたポリオールとの反応で得られるウレタン系の材料を用いることが好ましい。なお、接着剤層4は、透明樹脂層3と印刷層5との接着強度が十分に得られる場合には、省略してもよい。
接着剤層4の厚さは、1μm以上20μm以下であることが好ましい。接着剤層4の厚さがこの範囲である場合、基材6および印刷層5と透明樹脂層3との間の接着強度を向上するとともに、化粧シート1製造時の印刷作業性が向上し、かつ製造コストを抑制することができる。
透明樹脂層3は、例えば透明樹脂シートで構成されており、接着剤層4によって基材6および印刷層5に接着されている。図1に示す化粧シート1では、透明樹脂層3が一層の場合を図示しているが、複数層の透明樹脂層3が積層されて構成されていてもよい。本実施形態の透明樹脂層3は、ポリオレフィン系樹脂を主成分として構成されることが好ましい。主成分とは、例えば、基材6を構成する樹脂材料を100質量部として、そのうちの70質量部以上100質量部以下、好ましくは90質量部以上100質量部以下含まれる樹脂材料をいう。
透明樹脂層3の厚さは、20μm以上200μm以下であることが好ましい。透明樹脂層3の厚さがこの範囲である場合、化粧シート1の強度が向上するとともに、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上して、かつ製造コストを抑制することができる。
表面保護層2は、化粧シート1の最表面に設けられており、表面の保護や艶の調整としての機能を有している。表面保護層2を構成する材料としては、例えばポリウレタン系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、尿素系樹脂などが挙げられる。樹脂材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定されるものではない。硬化法についても一液タイプ、二液タイプ、紫外線硬化法など適宜選択して行うことができる。
表面保護層2の厚さは、3μm以上20μm以下であることが好ましい。表面保護層2の厚さがこの範囲である場合、化粧シート1の表面保護を行うと共に十分な艶を持たせることができ、また化粧シート1製造時の印刷作業性が向上し、かつ製造コストを抑制することができる。
隠蔽層7は、化粧シート1のプライマー層8側の面が木質基材等の基材板9に貼り付けられた化粧板において、基材板9に対する隠蔽性を保たせることを目的として形成される。隠蔽層7は、例えば、印刷層5と同様にインキの印刷によって形成される。インキに含ませる顔料としては、不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用することが好ましい。また、隠蔽層7における化粧シート1が貼り付けられる木質基材等からなる基材板9の模様の隠蔽性を向上させるために、金、銀、銅、アルミ等の金属をインキに添加することも可能であり、一般的にはフレーク状のアルミを添加することが好ましい。なお、隠蔽層7は、上述のように、基材6のいずれかの基材層(例えば表面層6-1又は第二の基材層6-2)が不透明で隠蔽性を有している場合には、省略することができる。
隠蔽層7の厚さは、2μm以上20μm以下であることが好ましい。隠蔽層7の厚さがこの範囲である場合、基材板9に対する隠蔽性を保つとともに、化粧シート1製造時の印刷作業性が向上し、かつ製造コストを抑制することができる。
プライマー層8は、化粧シート1のプライマー層8側の面が基材板9に貼り付けられた化粧板において、化粧シート1と基材板9との密着性を向上させるために設けられる。
プライマー層8は、基本的には印刷層5と同様の材料(印刷インキ)を用いることができる。なかでも、化粧シート1の裏面に施されるためにウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、印刷インキに対してシリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させることが好ましい。これにより、化粧シート1を巻取る際におけるブロッキングの発生を避け、且つ接着剤との密着を高めることができる。
プライマー層8の厚さは、0.1μm以上20μm以下であることが好ましい。プライマー層8の厚さがこの範囲である場合、化粧シート1と基材板9との間の密着性を向上させるとともに、化粧シート1を製造する際の印刷作業性が向上して、かつ製造コストを抑制することができる。
また、本実施形態に係る化粧シート1は、延伸フィルムを構成する熱可塑性樹脂の層を複層化し、表面層6-1の融点を、表面層6-1以外の基材層6-2~6-nの融点に比べて20℃以上低く設定することで、基材表面での結晶化度を低減して、基材6に対するインキの湿潤親和性(インキが原反にどこまで染込むか)低下を抑制して、インキ(印刷層)との密着性を維持する。この結果、必ずしもエンボス加工を施さなくても、化粧シートとしての耐久性も確保できる。
このように、本実施形態によれば、基材強度と耐久性を両立した化粧シート1を得ることができる。
更に、延伸によって基材6を薄膜化できるので、不燃性を高めることも可能となる。
<サンプル1>
サンプル1の化粧シートを、以下に示す工程で形成した。
(透明樹脂層用樹脂シートの形成工程)
まず、ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、ヒンダードアミン系光安定化剤とを添加した樹脂材料を準備する。ここで、ホモポリプロピレン樹脂としては、メソペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3である材料を使用した。また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:BASF社製)は、ホモポリプロピレン樹脂に対して0.05質量%(500PPM)添加した。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:BASF社製)は、ホモポリプロピレン樹脂に対して0.2質量%(2000PPM)添加した。ヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944:BASF社製)は、ホモポリプロピレン樹脂に対して0.2質量%(2000PPM)添加した。このような樹脂材料を、溶融押出機を用いて押し出し、透明樹脂層として使用する厚さ80μmのポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜した。
続いて、得られた透明樹脂シートの両面にコロナ処理を施し、透明樹脂シート表面の濡れ張力を40dyn/cm以上とした。
表面層及び第二の基材層の2層が積層された基材を、押出法によって製膜し延伸することにより形成した。すなわち化粧シート用基材を、2層の熱可塑性樹脂層から構成した。
1層目の表面層の前駆体となる層を、無機顔料を添加した樹脂材料A(低密度ポリエチレン、融点120℃)を用いて厚さ60μmで形成した。続いて、1層目の表面層の前駆体となる層上に、2層目の第二の基材層の前駆体となる層を、無機顔料を添加した樹脂材料E(ホモポリプロピレン、融点160℃)を用いて厚さ60μmで形成した。これにより、2層の合計厚さが120μmの積層樹脂前駆体を形成した。
続いて、積層樹脂前駆体を1軸延伸法によって4倍に延伸することで、厚さ30μmの基材(表面層の膜厚15μm、第二の基材層の膜厚15μm)を形成した。
エンボス加工は、基材を構成する積層延伸シートを、表面粗さ形状を有するエンボスロールと鏡面ロールの間を通し、20MPaの圧力をかけることで、表面層にエンボスロールの表面構造を転写することで行った。エンボスロールの温度は110℃とした。
基材の表面層上に、グラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して印刷層を形成した。印刷層は、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造株式会社製)に、当該インキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5質量%添加したインキを用いて形成した。
また、基材の第二の基材層の裏面にプライマー層を形成した。プライマー層は、グラビア印刷方式にて印刷層と同様の2液型ウレタンインキを印刷することにより形成した。
続いて、基材のおもて面(印刷層形成面)に、接着剤層としてドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学株式会社製;塗布量2g/m2)を塗布した。この後、基材のおもて面に接着剤層を介して透明樹脂シートをドライラミネート法にて貼り合わせることにより、透明樹脂層を形成した。透明樹脂層の表面には、エンボス模様を施した。
エンボス模様を施した透明樹脂層の表面に、2液硬化型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス株式会社製)を塗布厚6g/m2にて塗布し、乾燥させて表面保護層を形成した。
これにより、総厚120μmの化粧シートを得た。
表面層を、樹脂材料B(ランダムポリプロピレン、融点135℃)で形成し、エンボスロール温度を125℃とした以外は、サンプル1と同様にして化粧シートを形成した。
<サンプル3>
表面層を、樹脂材料C(ランダムポリプロピレン100質量部と低結晶性ポリプロピレン(メソペンタッド分率30%)100質量部の混合樹脂、融点100℃)で形成し、エンボスロール温度を90℃とした以外は、サンプル1と同様にして化粧シートを形成した。
表面層を、樹脂材料D(ランダムポリプロピレン100質量部と低結晶性ポリプロピレン(メソペンタッド分率30%)20質量部の混合樹脂、融点105℃)で形成し、エンボスロール温度を95℃とした以外は、サンプル1と同様にして化粧シートを形成した。
<サンプル5>
表面層及び第二の基材層を、顔料を含ませることなく形成し、エンボスロール温度を110℃とした以外は、サンプル1と同様にして化粧シートを形成した。
表面層を樹脂材料Eとし、第二の基材層を樹脂材料Aとして形成し、エンボスロール温度を150℃とした以外は、サンプル1と同様にして化粧シートを形成した。
<サンプル7>
表面層を樹脂材料Eとし、第二の基材層を樹脂材料F(ホモポリプロピレン、融点165℃)として形成し、エンボスロール温度を150℃とした以外は、サンプル1と同様にして化粧シートを形成した。
第二の基材層を設けない基材を用いて延伸後の厚さが30μmとなるように形成した以外は、サンプル1と同様にして化粧シートを形成した。
<サンプル9>
表面層を樹脂材料B(ランダムポリプロピレン、融点135℃)を用いて延伸後の厚さが30μmとなるように形成するとともに、第二の基材層を設けない基材を用い、エンボスロール温度を125℃とした以外は、サンプル1と同様にして化粧シートを形成した。
延伸後の第二の基材層の厚さを30μmとし、表面層を設けない基材を用い、エンボスロール温度を150℃とした以外は、サンプル1と同様にして化粧シートを形成した。
<サンプル11>
第二の基材層を、延伸を行うことなく厚さ30μmで形成し、表面層を設けない基材を用い、エンボスロール温度を150℃とした以外は、サンプル1と同様にして化粧シートを形成した。
第二の基材層を、延伸を行うことなく厚さ60μmで形成し、表面層を設けない基材を用い、エンボスロール温度を150℃とした以外は、サンプル1と同様にして化粧シートを形成した。
<サンプル13>
第二の基材層を、延伸を行うことなく厚さ60μmで形成し、表面層を設けない基材を用い、エンボス加工を行わないとした以外は、サンプル1と同様にして化粧シートを形成した。
延伸後の第二の基材層の厚さを30μmとし、表面層を設けない基材を用い、エンボス加工を行わないとした以外は、サンプル1と同様にして化粧シートを形成した。
<サンプル15>
エンボス加工を行わないとした以外は、サンプル1と同様にして化粧シートを形成した。
各サンプルの化粧シートに対して、性能の評価を実施した。
[引っ張り弾性率]
各サンプルの化粧シートを、テンシロン万能材料試験機によって50mm/minで引っ張って、弾性率を測定した。
弾性率の評価については、次の通りである。
○:良好(弾性率500MPa以上)
×:不良(弾性率500MPa未満)
各サンプルの化粧シートを用いて、ISO5660-1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験を実施した。不燃性は、建築基準法施行令第108条の2第1号および第2号の規定を満足したか否かで判定した。
不燃性の評価は次の通りである。
○:良好(規格内)
×:不良(規格外)
層間密着試験は、透明樹脂層と基材との密着力を評価する試験である。層間密着試験は、各サンプルの化粧シートを用いて、JIS K 6854-2に従って実施した。
層間密着力の評価は次の通りである。
◎:非常に良好(規格内)
○:良好(規格内)
△:実用に耐える密着力あり(規格内)
×:不良(規格外)
[透明性試験]
透明性試験は、化粧シートの意匠性を評価する試験である。透明性試験では、各サンプルの化粧シートの透過率を分光光度計によって測定して評価した。
光透過率の評価は次の通りである。
○:隠蔽性は良好(規格内)
×:隠蔽性は不良(規格外)
以下の表1に、各評価の結果を示す。
また、表面層及び第二の基材層に顔料を含むサンプル1からサンプル4の化粧シートは、表面層及び第二の基材層に顔料を含まないサンプル5の化粧シートと比較して、光透過率が低く、隠蔽性に優れていた。
また、サンプル14のように、表面層を設けることなく、厚さ30μmで融点160℃の第二の基材層のみを有する化粧シートにおいて、基材に延伸加工を施した場合、エンボス加工を行わない場合には、層間密着性が低下した。
また、基材が表面層を有しておらず、かつ第二の基材層が延伸されていないサンプル11の化粧シートは、延伸を行わないために層間密着力は特に良好であった。しかしながら、第二の基材層の膜厚が30μmのサンプル11の化粧シートは、弾性率が十分でなかった。また、第二の基材層の膜厚が60μmのサンプル12、13の化粧シートは、第二の基材層の膜厚がサンプル11の化粧シートよりも厚いため、弾性率は十分であったものの、不燃性が低下した。この結果から、延伸による層間密着性の低下を補うために延伸(薄膜化)を行わなかった場合、化粧シートの強度と不燃性とを両立することが困難であることが分かった。
以上、各実施形態により本発明を説明したが、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
2 表面保護層
3 透明樹脂層
4 接着剤層
5 印刷層
6 基材(化粧シート用基材)
6-1 表面層(基材層)
6-2~6-n 表面層以外の基材層
7 隠蔽層
8 プライマー層
9 基材板
Claims (10)
- 1軸もしくは2軸の積層延伸フィルムであって、
複数の熱可塑性樹脂の層を有し、その複数の熱可塑性樹脂の層のうちの最表面に位置する第一層を表面層と定義したときに、上記表面層の樹脂の融点が、上記表面層以外の熱可塑性樹脂の層の樹脂の融点に比べて20℃以上低く、
上記表面層上の表面粗さは、最大谷深さRvが5μm以上10μm以下の範囲内であり、
上記表面層は、軟質材として、メソペンタッド分率が30%以上50%未満の範囲内であるポリプロピレンをさらに含み、
上記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする積層延伸フィルム。 - 上記表面層の樹脂の融点が、上記表面層以外の熱可塑性樹脂の層の樹脂の融点に比べて20℃以上70℃以下の範囲内で低いことを特徴とする請求項1に記載した積層延伸フィルム。
- 上記熱可塑性樹脂がポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した積層延伸フィルム。
- 上記表面層は、上記メソペンタッド分率が30%以上50%未満の範囲内であるポリプロピレンを、上記表面層を構成する樹脂のうち、もっとも含有量が多い樹脂100質量部に対して5質量部以上30質量部未満の範囲内で含むことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した積層延伸フィルム。
- 1軸もしくは2軸の積層延伸フィルムであって、
複数の熱可塑性樹脂の層を有し、その複数の熱可塑性樹脂の層のうちの最表面に位置する第一層を表面層と定義したときに、上記表面層の樹脂の融点が、上記表面層以外の熱可塑性樹脂の層の樹脂の融点に比べて20℃以上低く、
上記表面層は、軟質材として、メソペンタッド分率が30%以上50%未満の範囲内であるポリオレフィン系樹脂をさらに含み、
上記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする積層延伸フィルム。 - 上記軟質材は、メソペンタッド分率が30%以上50%未満の範囲内であるポリプロピレンであることを特徴とする請求項5に記載した積層延伸フィルム。
- 請求項1~請求項6のいずれか1項に記載した積層延伸フィルムを備えることを特徴とする化粧シート用基材。
- 不燃性基材と貼り合わせた状態でISO5660-1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、建築基準法施行令第108条の2第1号および第2号に記載の要件を満たす不燃材料であることを特徴とする請求項7に記載した化粧シート用基材。
- 請求項7又は請求項8に記載した化粧シート用基材と、上記化粧シート用基材の表面層側の面に形成された、ポリオレフィン系樹脂を含む一層又は複数層の透明樹脂層と、を備えることを特徴とする化粧シート。
- 請求項9に記載した化粧シートを木質基材上に設けたことを特徴とする化粧板。
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