以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
実施形態では、光学装置を備えた映像表示装置を例に説明する。実施形態の映像表示装置では、ウェアラブル端末であって、マクスウェル視を利用してユーザの網膜上に直接映像を描画する網膜描画方式のヘッドマウントディスプレイ(HMD;Head Mounted Display)を例に説明する。
実施形態では、「人」の左目の眼球に対する映像表示装置を例に説明するが、右目の眼球に対しても同様である。また映像表示装置を2つ備え、両目の眼球に対して適用することも可能である。
実施形態では、画像は静止画と同義であり、映像は動画と同義である。またレーザ光線と、レーザビームは同義である。レーザ光線は、特許請求の範囲に記載の「光」の一例である。
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態の映像表示装置の構成の一例を示す図である。
図1に示されているように、映像表示装置100は、レーザ光源1と、レンズ2と、開口部材3と、減光素子4と、第1走査ミラー5と、第2走査ミラー6と、投射ミラー7とを有する。また映像表示装置100は、姿勢可変部8と、メガネフレーム9と、制御部20と、操作部21とを有する。メガネフレーム9には、ツル9aと、保持部9bとが含まれる。
尚、映像表示装置100は、特許請求の範囲に記載の「映像表示装置」の一例である。また第1走査ミラー5と、第2走査ミラー6と、投射ミラー7と、姿勢可変部8とを有する構成は、特許請求の範囲に記載の「光学装置」の一例である。
レンズ2、開口部材3、減光素子4、第1走査ミラー5、第2走査ミラー6、及び姿勢可変部8は、ツル9aの内部に配設される。投射ミラー7は、保持部9bに配設される。レーザ光源1、及び減光素子4は、図1のようにツル9aの内部に配設してもよいし、これらを外部に設け、レーザ光源1が出射するレーザ光線のみをツル9aの内部に導光して用いてもよい。また制御部20、及び操作部21は、ツル9aの内部に配設してもよいし、これらを外部に設け、駆動信号のみをツル9aの内部に供給してもよい。
レーザ光源1から出射された発散光は、レンズ2により平行化される。平行光は、開口部材3と減光素子4を通過して第1走査ミラー5に入射する。第1走査ミラー5に入射した光は、第1走査ミラー5で反射され、第2走査ミラー6、及び投射ミラー7でそれぞれ反射されて、眼球50の内部に入射する。眼球50の内部に入射した光線は、瞳孔52の近傍で一旦収束した後、眼球50の奥の網膜53で結像する。尚、レーザ光源1は、特許請求の範囲に記載の「光源」の一例であり、レンズ2は、特許請求の範囲に記載の「光学系」の一例である。
レーザ光源1は、単一、又は複数の波長のレーザ光線を出射する、例えば半導体レーザである。レーザ光源1は、制御部20からの駆動信号に従い、レーザ光線を時間変調して出射する。単一波長のレーザ光線によればモノクロの映像が描画され、複数の波長のレーザ光線によればカラーの映像が描画される。映像表示装置100は、カラー映像を描画するために、複数の波長のレーザ光線を出射するレーザ光源を備えてもよいし、相互に波長の異なる複数のレーザ光源を備えてもよい。レーザ光源1が出射するレーザ光線は、映像を描画する映像光線の一例である。
開口部材3は開口を備える。開口部材3は、開口に入射するレーザ光線の一部を遮蔽し、残りを通過させることで、レーザ光線を所望の断面形状、又は直径に整形する。開口部材3の開口の直径は、レンズ2で平行化されたレーザ光線の1/e2の光強度における直径と等しいか、又はそれ以下である。尚、「e」は自然対数の底である。
開口部材3は、開口部材3を通過し、第1走査ミラーに入射するレーザ光線の直径を、第1走査ミラーの有効径よりも小さくする。本実施形態では、開口の一例として円形開口を想定するが、一部に歪みをもたせた形状や楕円形状を有する開口であってもよい。開口部材3により、断面光強度分布を均一化する等、レーザ光線を所望の状態にすることができ、映像光線、及び映像の品質を向上させることができる。
減光素子4は、「人」の眼の安全性を考慮した適切な光強度になるように、通過するレーザ光線の光強度を低下させる。減光素子4は、例えば、樹脂を材質とする板状部材に、所定の透過率を有する光学薄膜が形成されたND(Neutral Density)フィルタである。
「人」の眼の安全性を考慮した適切な光強度は、例えばレーザ光の安全性に関する国際規格であるIEC(国際電気標準会議;International Electro-technical Commission)60825-1で定めるクラス1を下回る光強度である。減光素子4によりレーザ光線を所望の光強度にすることで、安全なレーザ光線を網膜に投射することができ、「人」の眼の安全性を確保することができる。
尚、本実施形態では、開口部材3と第1走査ミラー5の間に減光素子4を配置した例を示すが、減光素子4を開口部材3とレンズ2の間に配置してもよいし、複数の箇所に配置してもよい。減光素子4の配置を適正化することで、映像表示装置100の小型化等を図ることができる。
第1走査ミラー5は、減光素子4を通過したレーザ光線を反射し、反射角度を変化させてレーザ光線を図のX方向(水平方向)に走査する。第2走査ミラー6は、第1走査ミラー5によりX方向に走査されたレーザ光線を、図のY方向(垂直方向)に走査する。レーザ光線を同期させてX、及びY方向に走査することで、画像、又は映像が描画される。図示は省略するが、X、及びY方向へのレーザ光線の走査を同期させるために、映像表示装置100は、公知の同期検知光学系等を備えることができる。
X方向は、時間的に連続して画素が描画され、一連の画素群が形成される主走査方向である。Y方向は、一連の画素群を並べる副走査方向である。主走査方向と副走査方向は交差する。第2走査ミラー6による副走査方向への走査速度に対して、第1走査ミラー5による主走査方向への走査速度は、高速に設定される。
尚、X方向は、特許請求の範囲に記載の「第1の方向」の一例であり、Y方向は、特許請求の範囲に記載の「第2の方向」の一例である。
第1走査ミラー5、及び第2走査ミラー6は、例えば、それぞれ1軸のMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーである。第1走査ミラー5、及び第2走査ミラー6は、それぞれの備える可動部を所定の軸回りに回動させることで、レーザ光線を走査する。尚、第1走査ミラー5、及び第2走査ミラー6の構成の詳細は、図2を用いて別途説明する。
第1走査ミラー5、及び第2走査ミラー6は、MEMSミラーに限定されず、ポリゴンミラー、ガルバノミラー等、光を走査する反射部を有する可動物であればよい。MEMSミラーによれば、小型化・軽量化の点で有利となる。MEMSミラーの駆動方式は、静電式、圧電式、電磁式などいずれであってもよい。
第1走査ミラー5は、特許請求の範囲に記載の「走査部」の一例であり、「第1走査ミラー」の一例であり、また「回動ミラー」の一例である。
姿勢可変部8は、第1走査ミラー5を並進させて第1走査ミラー5の位置を変化させる。並進には並進機構が用いられる。並進機構は、接続されたモータの回転を駆動源にして、操作部21からの駆動信号に従って第1走査ミラー5を並進させる。
また姿勢可変部8は、第1走査ミラー5を回動させて第1走査ミラー5の向きを変化させる。回動には回動機構が用いられる。回動機構は、接続されたモータの回転を駆動源にして、操作部21からの駆動信号に従って第1走査ミラー5を回動させる。
姿勢可変部8の駆動源は、モータに限定されず、例えばピエゾアクチュエータ等としてもよい。ピエゾアクチュエータを用いることで、モータと比較して駆動源の小型化が可能になる。また上記の電動による駆動に限定されず、手動で駆動してもよい。姿勢可変部8が第1走査ミラー5を並進、及び回動させる例を示したが、回動のみをさせる構成にしてもよい。回動のみの構成にすることで、映像の投射方向を変化させる機能を確保しつつ、映像表示装置100の構成を簡略化させることが可能になる。
尚、姿勢可変部8の動作、及び作用の詳細は、図3~5を用いて、別途説明する。
ところで、レーザ光線は第1走査ミラー5で反射された後に、第2走査ミラー6で反射される。姿勢可変部8による第1走査ミラー5の並進量、及び/又は回動量が大きいと、第1走査ミラー5で反射されたレーザ光線が、第2走査ミラー6の反射面に入射できない場合が生じる。そのため本実施形態では、第2走査ミラー6の反射面の面積を、第1走査ミラー5の反射面の面積より大きくしている。このようにすることで、第1走査ミラー5の並進量、及び/又は回動量を大きくしても、第1走査ミラー5で反射されたレーザ光線を第2走査ミラー6の反射面に入射させることができ、第1走査ミラー5の並進、及び/又は回動の範囲を広げることができる。
図1に戻り、投射ミラー7は凹面の反射面を有するミラーである。投射ミラー7は、第1走査ミラー5、及び第2走査ミラー6により走査されたレーザ光線を反射し、瞳孔近傍に一旦収束させてから網膜で結像させる。走査されたレーザ光線で描画される画像、又は映像は、投射ミラー7を介し、映像表示装置100を装着するユーザの網膜に直接投射される。瞳孔中心付近を通る光は水晶体の焦点調節に関係なく網膜に達する。そのためユーザは、現実空間のどの位置に眼の焦点を合わせても、投射された画像、又は映像を焦点の合った状態で鮮明に視認することができる。このような状態は、所謂フォーカスフリーの状態である。尚、ユーザの眼は、「被投射面」の一例である。
投射ミラー7は、例えば、樹脂、又はガラス等を基材にして加工された凹面にアルミニウム等の金属反射膜を蒸着し、ミラー面とすることで形成される。但し、金属反射膜を設けずに樹脂、又はガラス等の基材を鏡面加工してもよい。凹面の形状は球面であってもよいし、非球面であってもよい。非球面を用いると、凹面ミラーによる結像の光学収差をより高品質に補正することができる。
また凹面に形成されるミラーは、ハーフミラーであってもよい。ハーフミラーは、入射光線のうちの一部の光強度の光を反射し、残りの光強度の光を透過する。ハーフミラーを用いると、現実空間とデジタル映像を同時に視認可能なシースルー型の映像表示装置を実現できる。
例えば映像表示装置100がシースルー型である場合、図1で、映像表示装置100の外部から負のZ方向に、眼球50に向かって伝搬する光のうち、投射ミラー7を透過する光により、現実空間が視認される。一方、レーザ光源1から出射され、投射ミラー7で反射されたレーザ光線により、デジタル映像が視認される。尚、ハーフミラーによる反射光強度と透過光強度は、必ずしも1対1にならなくてもよい。投射ミラー7は、「光学部」の一例である。
制御部20は、描画する映像の元となる映像データを入力し、入力した映像データに基づき、レーザ光源1によるレーザ光の出射を制御する。また制御部20は、第1走査ミラー、及び第2走査ミラーの駆動を制御することで、第1走査ミラー、及び第2走査ミラーによる光の走査を制御する。制御部20のハードウェア構成の詳細は、図3を用いて別途説明する。また制御部20の機能構成の詳細は、図4を用いて別途説明する。
操作部21は、姿勢可変部8が備える並進機構8c、及び回動機構8bをそれぞれ駆動するための駆動信号を供給する。操作部21は、例えばツル9aに設けられたダイヤルや押しボタン等のインターフェースである。ユーザは操作部21を介して、並進機構8cに対して並進方向、及び並進量を指示し、或いは回動機構8bに回動方向、及び回動量を指示することができる。尚、操作部21をマイクロメータヘッド等の機構部で構成し、手動で機構部を操作することで、並進機構8cを並進させ、又は回動機構8bを回動させてもよい。尚、並進機構による並進には、平行移動も含まれる。
図1の例では、開口部材3と、減光素子4とを有する構成を示したが、ユーザの網膜に投射される光の強度の安全性が確保されるのであれば、減光素子4等を必ずしも設けなくてもよい。
ところで、映像表示装置100は、レーザ光源1に印加する電流、又は電圧を変化させ、出射するレーザ光線の光強度を変化させることができる。これにより映像表示装置100を使用する周辺環境の明るさに応じて、画像、又は映像の明るさを調整可能である。減光素子4は、例えば、レーザ光源1が出射するレーザ光線の光強度が最大となる場合において、「人」の眼の安全性を考慮した適切な光強度になるように、通過するレーザ光線の光強度を低下させる。
次に図2は、第1走査ミラー5の構成の一例を説明する図である。図2では、矢印で示される方向をそれぞれα方向、β方向、及びγ方向とする。第1走査ミラー5は、支持基板41と、可動部42と、蛇行状梁部43と、蛇行状梁部44とを備える。
蛇行状梁部43は、複数の折り返し部を有して蛇行して形成され、一端が支持基板41に連結し、他端が可動部42に連結する。蛇行状梁部43は、3つの梁を含む梁部43aと、3つの梁を含む梁部43bとを備える。梁部43aの梁と梁部43bの梁は1つおきに交互に形成される。梁部43aと梁部43bに含まれる各梁は、それぞれが独立に圧電部材を備えている。
同様に、蛇行状梁部44は、複数の折り返し部を有して蛇行して形成され、一端が支持基板41に連結し、他端が可動部42に連結する。蛇行状梁部44は、3つの梁を含む梁部44aと、3つの梁を含む梁部44bとを備える。梁部44aの梁と梁部44bの梁は1つおきに交互に形成される。梁部44aと梁部44bに含まれる各梁は、それぞれが独立に圧電部材を備えている。
尚、梁部43a、及び43bにおける梁の数は3つに限定されることなく任意でよい。
梁部43a、43b、44a、及び44bが備える圧電部材は、図2では図示が省略されているが、例えば多層構造で形成された各梁の層の一部に、圧電層として備えられる。以下では、梁部43a、及び44aが備える圧電部材を圧電部材45aと総称し、梁部43b、及び44bが備える圧電部材を圧電部材45bと総称する場合がある。
圧電部材45aと圧電部材45bに、逆位相となる電圧を印加し、蛇行状梁部44に反りを生じさせると、隣接する梁部が異なる方向に撓む。この撓みが累積され、図2のA軸回りに、反射ミラー42aを往復回動させるための回動力が発生する。
可動部42は、β方向において、蛇行状梁部43と蛇行状梁部44との間に挟まれるようにして形成される。可動部42は、中央部分に反射ミラー42aを備え、蛇行状梁部43と蛇行状梁部44の回動力により、反射ミラー42aをA軸回りに回動させる。この回動により、反射ミラー42aに入射し、反射されたレーザ光線は、α方向に走査される。
支持基板41は、可動部42と、蛇行状梁部43と、蛇行状梁部44とを囲むように形成される。支持基板41は、蛇行状梁部43、及び蛇行状梁部44に連結し、これらを支持する。また支持基板41は、蛇行状梁部43、及び蛇行状梁部44に連結された可動部42を間接的に支持する。
第1走査ミラー5を構成するMEMSミラーは、例えばマイクロマシニング技術を用い、シリコンやガラスを微細加工して形成される。マイクロマシニング技術により、高精度で微小な可動ミラーを、蛇行状梁部等の駆動部と一体にして基板上に形成することができる。
具体的には、例えば、1枚のSOI(Silicon On Insulator)基板をエッチング処理等により成形する。成形した基板上に、反射ミラー42a、蛇行状梁部43~44、圧電部材45a~45b、電極接続部等が一体的に形成され、MEMSミラーが形成される。尚、反射ミラー42a等の形成は、SOI基板の成形後に行ってもよいし、SOI基板の成形中に行ってもよい。
SOI基板は、単結晶シリコン(Si)からなるシリコン支持層の上に酸化シリコン層が設けられ、酸化シリコン層の上にさらに単結晶シリコンからなるシリコン活性層が設けられた基板である。シリコン活性層は、α方向、又はβ方向に対してγ方向の厚みが薄いため、シリコン活性層のみで構成された部材は、弾性を有する弾性部としての機能を備える。
SOI基板は、必ずしも平面状である必要はなく、曲率等を有していてもよい。また、エッチング処理等により一体的に成形でき、部分的に弾性を持たせることができる基板であれば、MEMSミラーの形成に用いられる部材はSOI基板に限られない。
第2走査ミラー6の構成も、第1走査ミラー5と同様である。但し、第1走査ミラー5が反射ミラー42aに入射するレーザ光線を主走査方向に走査するように、映像表示装置100に設置されるのに対し、第2走査ミラー6は、レーザ光線を副走査方向に走査するように、映像表示装置100に設置される。
主走査方向への走査の場合、制御部20からの駆動信号として、正弦波波形の電圧が逆位相で第1走査ミラー5の備える圧電部材45a、及び45bに印加される。正弦波波形の電圧の周波数は、A軸回りの可動部42の共振モードに応じた周波数である。正弦波波形の電圧の印加により、第1走査ミラー5は、低電圧で且つ非常に大きな回動角度で往復回動する。
一方、副走査方向への走査の場合、制御部20からの駆動信号として、ノコギリ波波形の電圧が逆位相で第2走査ミラー6の備える圧電部材45a、及び45bに印加される。これにより第2走査ミラー6は、所望の駆動周波数で往復回動する。
尚、上記のノコギリ波波形は、正弦波波形の重ね合わせによって生成することができる。また本実施形態では、副走査方向に走査する場合に、第2走査ミラー6をノコギリ波波形の電圧により駆動する例を示したが、これに限定されない。例えばノコギリ波波形の頂点を丸くした波形や、ノコギリ波波形の直線領域を曲線とした波形等を用いてもよい。また第2走査ミラー6のデバイス特性に応じた固有の波形形状にしてもよい。
図3は、本実施形態の制御部20のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。制御部20は、CPU(Central Processing Unit)22と、ROM(Read Only Memory)23と、RAM(Random Access Memory)24と、光源駆動回路25と、走査ミラー駆動回路26とを有する。これらはシステムバス27を介して相互に電気的に接続されている。
CPU22は、制御部20の動作を統括的に制御する。CPU22は、RAM24をワークエリア(作業領域)として、ROM23に格納されたプログラムを実行することで、制御部20全体の動作を制御し、後述する各種機能を実現する。
光源駆動回路25は、レーザ光源1と電気的に接続し、レーザ光源1に電流、又は電圧を印加して、レーザ光源1を駆動する電気回路である。レーザ光源1は、光源駆動回路25の出力する駆動信号により、レーザ光線の出射をON、又はOFFし、また出射するレーザ光線の光強度を変化させる。
走査ミラー駆動回路26は、例えば電気回路である。走査ミラー駆動回路26は、第1走査ミラー5と電気的に接続し、第1走査ミラー5に電圧を印加して、第1走査ミラー5を駆動する。第1走査ミラー5は、走査ミラー駆動回路26の出力する駆動信号により、可動部42が備える反射ミラー42aの回動の角度を変化させる。
また、走査ミラー駆動回路26は、第2走査ミラー6と電気的に接続し、第2走査ミラー6に電圧を印加して、第2走査ミラー6を駆動する。第2走査ミラー6は、走査ミラー駆動回路26の出力する駆動信号により、反射ミラーの回動の角度を変化させる。
制御部20は、図3に示されているハードウェア構成によって、次に説明する機能構成を実現することができる。
図4は、本実施形態の制御部20の構成要素の一例を機能ブロックで示す図である。尚、図4に図示される制御部20の各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部又は一部を、任意の単位で機能的又は物理的に分散・結合して構成することが可能である。制御部20の各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、上述のCPU22にて実行されるプログラムにて実現され、或いはワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
制御部20は、出射制御部31と、光源駆動部32と、走査制御部33と、走査ミラー駆動部34とを有する。
出射制御部31は、描画する映像の元となる映像データを入力し、入力した映像データに基づいて、レーザ光源1を駆動制御するための制御信号を光源駆動部32に出力する。
走査制御部33は、描画する映像の元となる映像データを入力し、入力した映像データに基づいて、第1走査ミラー5、及び第2走査ミラー6を駆動制御するための制御信号を走査ミラー駆動部34に出力する。
出射制御部31、及び走査制御部33は、例えばCPU22等により実現される。
尚、出射制御部31と走査制御部33は、好適な位置で視認される映像が歪み等を有する場合に、歪み等を補正するように制御を行ってもよい。
光源駆動部32は、出射制御部31から入力した制御信号に基づき、レーザ光源1に電流、又は電圧を印加して、レーザ光源1を駆動する。光源駆動部32は、例えば光源駆動回路25等により実現される。
走査ミラー駆動部34は、走査制御部33から入力した制御信号に基づき、第1走査ミラー5に電圧を印加して、第1走査ミラー5を駆動する。また走査ミラー駆動部34は、走査制御部33から入力した制御信号に基づき、第2走査ミラー6に電圧を印加して、第2走査ミラー6を駆動する。走査ミラー駆動部34は、例えば走査ミラー駆動回路26等により実現される。
次に、図5は、本実施形態の姿勢可変部8の動作の一例を詳細に説明する図である。姿勢可変部8は、ベース部材8aと、回動機構8bと、並進機構8cとを有する。
ベース部材8aは金属等を材質とする板状の部材である。図5において、第1走査ミラー5は、ベース部材8aの正のY方向側の面に固定される。この「固定」は、接着剤による固定であってもよいし、嵌合やネジ止めによる固定であってもよい。この点は、以下においても同様である。ベース部材8aの負のY方向側には回動機構8bが配置され、ベース部材8aは、回動機構8bに固定される。
図5では、回動機構8b、及び並進機構8cにより、第1走査ミラー5が回動、及び並進する前の状態と、回動、及び並進した後の状態が示されている。
図5において、実線で示されている可動部52bは、回動、及び並進する前の状態を示し、一点鎖線で示されている可動部52cは、回動、及び並進した後の状態を示す。また実線で示されているレーザ光線83は、回動、及び並進する前における第1走査ミラー5によるレーザ光線の中心走査光線を示す。尚、中心走査光線とは、レーザ光線の走査範囲で中心に位置するレーザ光線である。
一方、二点鎖線で示されているレーザ光線84は、回動、及び並進した後における第1走査ミラー5によるレーザ光線の中心走査光線を示す。
レーザ光線84はレーザ光線83に対し、回動角度θだけ傾いている。またレーザ光線84はレーザ光線83に対し、レーザ光線の入射方向と平行な方向に並進量Sだけシフトしている。
回動機構8bは、ベース部材8a、及び第1走査ミラー5を一体にして矢印81の方向に回動させる。この回動の回動軸は、例えば、第1走査ミラー5の可動部42の回動軸(図2のA軸)に一致する。尚、この「一致」は完全な一致までを要求するものではなく、組立や加工の誤差と認められる程度の誤差は許容するものである。この点は、以下においても同様である。また以下では、「第1走査ミラー5の可動部42の回動軸」を「第1走査ミラー5の回動軸」と称する場合がある。
また第1走査ミラー5の回動軸は、第1走査ミラー5におけるレーザ光線の入射位置に含まれることが望ましい。尚、入射するレーザ光線の断面積は、第1走査ミラー5の反射面の面積より小さい。
回動機構8bの負のY方向側には、並進機構8cが配置され、回動機構8bは、並進機構8cに固定される。並進機構8cは、回動機構8b、ベース部材8a、及び第1走査ミラー5を一体にして矢印82の方向に並進させる。並進の方向は、レーザ光源1から出射され、第1走査ミラー5に入射するレーザ光線の入射方向に沿った方向である。このような方向は、例えば、第1走査ミラー5に入射するレーザ光線の入射方向に平行な方向である。尚、この「平行」は完全な平行までを要求するものではなく、組立や加工の誤差と認められる程度の誤差は許容するものである。
回動機構8b、ベース部材8a、及び第1走査ミラー5が並進機構8cにより並進する際にも、回動機構8bによる回動の回動軸は、第1走査ミラー5の回動軸に一致した状態で並進する。
本実施形態の姿勢可変部8の作用の一例を、図6~7を参照して説明する。まず図6は、本実施形態の姿勢可変部8の回動の作用の一例を説明する図である。図6(a)は、姿勢可変部8の回動によるレーザ光線軌跡の変化を説明する図である。図6(a)においては、レーザ光線は第1走査ミラー5に入射し、反射される。反射されたレーザ光線は第2走査ミラー6、及び投射ミラー7で反射され、眼球50に入射する。
図6(a)において、実線で示されているレーザ光線は、回動前の状態を示す。レーザ光線61は、中心走査光線を示す。レーザ光線62は、正のX方向の最大走査角に該当する走査光線を示す。レーザ光線63は、負のX方向の最大走査角に該当する走査光線を示す。レーザ光線61~63は瞳孔52の中心付近で収束し、何れも瞳孔52を通過して網膜で結像する。
一方、図6(a)において、破線で示されているレーザ光線は、回動後の状態を示す。例えば、第1走査ミラー5へのレーザ光線の入射角度が大きくなるように、姿勢可変部8により第1走査ミラー5を回動させた場合である。レーザ光線64は、中心走査光線を示す。レーザ光線65は、正のX方向の最大走査角に該当する走査光線を示す。レーザ光線66は、負のX方向の最大走査角に該当する走査光線を示す。
レーザ光線64~66の収束位置は、瞳孔52の中心付近になり、これらのレーザ光線は何れも瞳孔52を通過して網膜で結像する。図5で説明したように、姿勢可変部8の回動機構8bは、第1走査ミラー5の回動軸で回動し、また第1走査ミラー5の回動軸は、第1走査ミラー5に入射するレーザ光線の入射位置に含まれる。これにより姿勢可変部8の回動の前後で第1走査ミラー5におけるレーザ光線の反射位置は変化せず、投射ミラー7によるレーザ光線の収束位置は変化しない。そのためフォーカスフリーの状態が確保される。一方で、走査されるレーザ光線の投射ミラー7での反射位置は正のX方向にずれ、ユーザには正のX方向にずれた映像が視認される。
また図6(a)では図示が省略されているが、第1走査ミラー5へのレーザ光線の入射角度が小さくなるように、姿勢可変部8により第1走査ミラー5を回動させた場合は、走査されるレーザ光線の投射ミラー7での反射位置は負のX方向にずれ、ユーザには負のX方向にずれた映像が視認される。この場合においても、上記の作用により、姿勢可変部8の回動の前後で、レーザ光線の収束位置は変化せず、フォーカスフリーの状態は確保される。
このように姿勢可変部8により第1走査ミラー5を回動させることで、レーザ光線の収束位置を変化させず、フォーカスフリーの状態を確保しながら、ユーザによる映像の視認方向を変化させることができる。例えば、ユーザが映像表示装置100を装着した際に、映像を視認しながら姿勢可変部8を操作することで、ユーザの映像視認好適位置に合わせて、ユーザは映像の視認方向を調整することができる。
一方、図6(b)は、眼球の動きによるレーザ光線軌跡の変化を説明する図である。図6(a)と同様に、実線で示されているレーザ光線は、回動前の状態を示し、破線で示されているレーザ光線は、回動後の状態を示す。例えば、第1走査ミラー5へのレーザ光線の入射角度が大きくなるように、姿勢可変部8により第1走査ミラー5を回動させた場合である。
図6(b)において、レーザ光線は、眼球50に入射し、瞳孔52で一旦収束した後、瞳孔52を通過して網膜53で結像する。図6(b)の左側に示されている図は眼球50が正面を向いている場合である。中央に示されている図は眼球50が正のX方向(図の右方向)を向いた場合であり、右側に示されている図は眼球50がさらに正のX方向を向いた場合である。
図6(b)の中央の図に示されているように、眼球50が正のX方向を向くと、瞳孔52の中心が正のX方向にずれる。そして図6(b)の右側の図に示されているように、眼球50がさらに正のX方向を向くと、瞳孔52の中心位置はさらに正のX方向にずれ、その結果、レーザ光線は、収束位置で瞳孔52にケラレてしまい、網膜53に到達しなくなる。
このように姿勢可変部8で回動のみをさせると、眼球50の動き量によっては、ユーザは映像を視認できなくなる場合がある。
次に、図7は、本実施形態の姿勢可変部8の並進と回動の作用の一例を説明する図である。図7(a)は、姿勢可変部8の並進、及び回動によるレーザ光線軌跡の変化を説明する図である。図6(a)と同様に、図7(a)では、第1走査ミラー5にレーザ光線が入射し、反射される。反射されたレーザ光線は第2走査ミラー6、及び投射ミラー7で反射されて、眼球50に入射する。
図7(a)において、実線で示されているレーザ光線は、並進、及び回動前の状態を示す。図6(a)と同様に、レーザ光線61は、中心走査光線を示す。レーザ光線62は、正のX方向の最大走査角に該当する走査光線を示す。レーザ光線63は、負のX方向の最大走査角に該当する走査光線を示す。レーザ光線61~63は瞳孔52の中心付近で収束し、何れも瞳孔52を通過して網膜で結像する。
一方、図7(a)において、破線で示されているレーザ光線は、並進、及び回動後の状態を示す。例えば、姿勢可変部8により、第1走査ミラー5へのレーザ光線の入射角度が大きくなるように第1走査ミラー5を回動させ、且つ第1走査ミラー5を第1走査ミラー5へのレーザ光線の入射方向において前進させた場合である。レーザ光線67は、中心走査光線を示す。レーザ光線68は、正のX方向の最大走査角に該当する走査光線を示す。レーザ光線69は、負のX方向の最大走査角に該当する走査光線を示す。レーザ光線67~69の収束位置は、瞳孔52の中心付近から正のX方向(図の右方向)にずれている。
また図7(a)では図示が省略されているが、姿勢可変部8により、第1走査ミラー5へのレーザ光線の入射角度が大きくなるように第1走査ミラー5を回動させ、且つ第1走査ミラー5を第1走査ミラー5へのレーザ光線の入射方向において後退させた場合は、レーザ光線67~69の収束位置は、瞳孔52の中心付近から負のX方向(図の左方向)にずれる。
一方、図7(b)は、眼球の動きによるレーザ光線軌跡の変化を説明する図である。図7(a)と同様に、実線で示されているレーザ光線は、並進、及び回動前の状態を示す。破線で示されているレーザ光線は、並進、及び回動後の状態を示す。例えば、第1走査ミラー5へのレーザ光線の入射角度が大きくなるように、姿勢可変部8により第1走査ミラー5を回動させ、且つ姿勢可変部8により第1走査ミラー5を、第1走査ミラー5に入射するレーザ光線の入射方向に前進させた場合である。
図7(b)では、レーザ光線が眼球50に入射し、瞳孔52で一旦収束した後、瞳孔52を通過し、網膜53で結像する。図7(b)の左側に示されている図は眼球50が正面を向いている場合である。中央に示されている図は眼球50が正のX方向(図の右方向)を向いた場合であり、右側に示されている図は眼球50がさらに正のX方向を向いた場合である。
図7(b)の中央、及び右側の図に示されているように、眼球50が正のX方向を向いていくと、瞳孔52の中心は正のX方向にずれていく。しかし、図6の場合とは異なり、姿勢可変部8による第1走査ミラー5の前進により、レーザ光線67~69の収束位置は正のX方向にずらされている。そのためレーザ光線67~69は、瞳孔52にケラレることなく、網膜53に到達している。
このように、姿勢可変部8で第1走査ミラーを回動させることで、フォーカスフリーの状態を確保しながら、ユーザによる映像の視認方向を変化させることができる。また姿勢可変部8で第1走査ミラーを並進させることで、レーザ光線67~69の収束位置をずらすことができる。これにより眼球50が動いたとしても、レーザ光線67~69の瞳孔52でのケラレ等を防止することができる。
以上説明してきたように、本実施形態の映像表示装置100は、レーザ光線を走査する第1走査ミラー5、及び第2走査ミラー6等の走査部と、走査部の位置、又は向きを変化させる姿勢可変部8と、走査されたレーザ光線をユーザの網膜に投射する投射ミラー7とを備える。姿勢可変部8により、第1走査ミラー5を並進、及び/又は回動させることで、映像光線の収束位置、及び映像の投射方向を任意のタイミングで調整可能な映像表示装置を提供することができる。
瞳孔間間隔(眼球の間隔)等はユーザ毎に異なるため、映像表示装置100を装着した際に、映像が視認される位置はユーザ毎に異なり、好適でない位置に映像が視認される場合がある。また、ユーザ毎で視認の好適位置が異なるため、これにより好適でない位置に映像が視認される場合がある。
本実施形態によれば、映像を視認しながら姿勢可変部8を操作することで、ユーザの映像視認好適位置に合わせて、ユーザは映像の投射方向を調整することができる。これによりユーザは好適位置で映像を視認することができる。また映像を視認しながら姿勢可変部8を操作することで、映像光線の収束位置を調整し、瞳孔52でのレーザ光線のケラレにより映像を視認できなくなる等の状態を回避できる。また機構部を用いて調整を行うため、振動等により調整後の状態が変動することなく、好適な状態が安定的に維持される。
さらに、本実施形態によれば、マクスウェル視を利用してユーザの網膜に直接映像を描画するため、現実空間のどの位置に焦点を合わせても画像を鮮明に視認することができる。
これらの効果は、第1走査ミラー5と、第2走査ミラー6と、投射ミラー7と、姿勢可変部8とを備える光学装置においても同様である。
尚、本実施形態では、グラス型のHMDを映像表示装置の例として説明したが、HMD等の映像表示装置は、「人」の頭部に直接装着させるだけでなく、固定部等の部材を介して間接的に「人」の頭部に装着させるものであってもよい。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態の映像表示装置を、図8~10を参照して説明する。尚、第2の実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部分についての説明は省略する場合がある。
本実施形態では、レーザ光線を走査する走査部として、固定ミラー、及び2軸走査ミラーを用いる。2軸走査ミラーは、レーザ光線を2軸方向に走査する。
図8は、本実施形態の映像表示装置100aの構成の一例を示す図である。映像表示装置100aは、固定ミラー10と、2軸走査ミラー11と、姿勢可変部8Aとを有する。
固定ミラー10は、減光素子4を通過したレーザ光線を2軸走査ミラー11に向けて反射するミラーである。固定ミラー10は、メガネフレーム9のツル9aに固定される。固定ミラー10の表面は、平面に限らず、凹面や凸面等の任意の形状としてよい。
2軸走査ミラー11は、固定ミラー10で反射されたレーザ光線を投射ミラー7に向けて反射し、反射角度を変化させることで、レーザ光線をX方向(水平方向)、及びY方向(垂直方向)の2軸方向に走査する。レーザ光線を同期させてX、及びY方向に走査することで、画像、又は映像が描画される。図示は省略するが、X、及びY方向へのレーザ光線の走査を同期させるために、映像表示装置100aは、公知の同期検知光学系等を備えることができる。
2軸走査ミラー11は、例えば2軸のMEMSミラーである。2軸走査ミラー11の構成の詳細は、図9を用いて別途説明する。
2軸走査ミラー11は、MEMSミラーに限定されず、ポリゴンミラー、ガルバノミラー等、光を走査する反射部を有するものを組み合わせて構成してもよい。MEMSミラーによれば、小型化・軽量化の点で有利となる。MEMSミラーの駆動方式は、静電式、圧電式、電磁式などいずれであってもよい。
2軸走査ミラー11は、特許請求の範囲に記載の「走査部」の一例であり、「回動ミラー」の一例である。
姿勢可変部8Aは、2軸走査ミラー11を回動させて、2軸走査ミラー11の向きを変化させる。姿勢可変部8Aは、例えば、2軸走査ミラー11の水平方向(X方向)への回動軸を中心にして、2軸走査ミラー11を回動させる。2軸走査ミラー11の水平方向(X方向)への回動軸は、2軸走査ミラー11に入射するレーザ光線の入射位置にあることが望ましい。回動には回動機構が用いられる。回動機構は、接続されたモータの回転を駆動源にして、操作部21からの駆動信号に従って2軸走査ミラー11を回動させる。
また姿勢可変部8Aは、2軸走査ミラー11を並進させて、2軸走査ミラー11の位置を変化させる。姿勢可変部8Aは、例えば、2軸走査ミラー11へのレーザ光線の入射方向に沿った方向に、2軸走査ミラー11を並進させる。2軸走査ミラー11へのレーザ光線の入射方向に沿った方向は、例えば2軸走査ミラー11へのレーザ光線の入射方向と平行な方向である。並進には並進機構が用いられる。並進機構は、接続されたモータの回転を駆動源にして、操作部21からの駆動信号に従って2軸走査ミラー11を並進させる。
姿勢可変部8Aの構成は、姿勢可変部8と同様である。また姿勢可変部8Aの作用の詳細は、図10を用いて、別途説明する。
画像、又は映像は、2軸走査ミラー11により走査されたレーザ光線で描画され、映像表示装置100aを装着するユーザの網膜に直接投射される。瞳孔中心付近を通るレーザ光線は、水晶体の焦点調節に関係なく網膜に達するため、ユーザは、現実空間のどの位置に眼の焦点を合わせても、投射された画像、又は映像を、焦点の合った状態で鮮明に視認することができる。
次に図9は、2軸走査ミラー11の構成の一例を説明する図である。図9では、矢印で示される方向を、それぞれα方向、β方向、及びγ方向とする。2軸走査ミラー11は、支持基板91と、可動部92と、蛇行状梁部93と、蛇行状梁部94と、電極接続部95とを備える。
蛇行状梁部93は、複数の折り返し部を有して蛇行して形成され、一端が支持基板91に連結し、他端が可動部92に連結する。蛇行状梁部93は、3つの梁を含む梁部93aと、3つの梁を含む梁部93bとを備える。梁部93aの梁と梁部93bの梁は1つおきに交互に形成される。梁部93aと梁部93bに含まれる各梁は、それぞれが独立に圧電部材を備えている。
同様に、蛇行状梁部94は、複数の折り返し部を有して蛇行して形成され、一端が支持基板91に連結し、他端が可動部92に連結する。蛇行状梁部94は、3つの梁を含む梁部94aと、3つの梁を含む梁部94bとを備える。梁部94aの梁と梁部94bの梁は1つおきに交互に形成される。梁部94aと梁部94bに含まれる各梁は、それぞれが独立に圧電部材を備えている。
尚、梁部93a、及び93bにおける梁の数は3つに限定されることなく任意でよい。
梁部93a、93b、94a、及び94bが備える圧電部材は、図9では図示が省略されているが、例えば多層構造で形成された各梁の層の一部に、圧電層として備えられる。以下では、梁部93a、及び94aが備える圧電部材を圧電部材95aと総称し、梁部93b、及び94bが備える圧電部材を圧電部材95bと総称する場合がある。
圧電部材95aと圧電部材95bに、逆位相となる電圧信号を印加し、蛇行状梁部94に反りを生じさせると、隣接する梁部が異なる方向に撓む。この撓みが累積され、図9のA軸回りに、反射ミラー92aを往復回動させるための回動力が発生する。
可動部92は、β方向において、蛇行状梁部93と蛇行状梁部94との間に挟まれるようにして形成される。可動部92は、反射ミラー92aと、トーションバー92bと、圧電部材92cと、支持部92dとを備える。
反射ミラー92aは、例えば、基材上にアルミニウム、金、銀等を含む金属薄膜が蒸着されて形成される。トーションバー92bは、反射ミラー92aに一端が連結し、正、及び負のα方向に伸びて反射ミラー92aを回動可能に支持する。
圧電部材92cは、一端がトーションバー92bに連結し、他端が支持部92dに連結する。圧電部材92cに電圧を印加すると、圧電部材92cは屈曲変形してトーションバー92bにねじれを生じさせる。トーションバー92bのねじれが回動力となり、反射ミラー92aはB軸回りに回動する。
反射ミラー92aのA軸回りの回動により、反射ミラー92aに入射するレーザ光線はα方向に走査される。反射ミラー92aのB軸回りの回動により、反射ミラー92aに入射するレーザ光線はβ方向に走査される。
支持部92dは、反射ミラー92aと、トーションバー92bと、圧電部材92cとを囲むように形成される。支持部92dは圧電部材92cと連結し、圧電部材92cを支持する。また支持部92dは、圧電部材92cに連結されたトーションバー92b、及び反射ミラー92aを間接的に支持する。
支持基板91は、可動部92と、蛇行状梁部93と、蛇行状梁部94とを囲むように形成される。支持基板91は、蛇行状梁部93、及び蛇行状梁部94に連結し、これらを支持する。また支持基板91は、蛇行状梁部93、及び蛇行状梁部94に連結された可動部92を間接的に支持する。
2軸走査ミラー11の製造方法は、第1の実施形態で説明した第1走査ミラー5の製造方法と同様である。また駆動方法は、第1の実施形態の第1走査ミラー5、及び第2走査ミラー6の駆動方法と同様である。
次に、図10は、本実施形態の姿勢可変部8Aの並進と回動の作用の一例を説明する図である。図10は、姿勢可変部8Aの並進、及び回動によるレーザ光線軌跡の変化を示している。図10において、レーザ光線は、固定ミラー10に入射し、2軸走査ミラー11に向けて反射される。反射されたレーザ光線は2軸走査ミラー11、及び投射ミラー7で反射されて、眼球50に入射する。
図10に実線で示されているレーザ光線は、並進、及び回動前の状態を示す。レーザ光線71は、中心走査光線を示す。レーザ光線72は、正のX方向の最大角度となる走査光線を示す。レーザ光線73は、負のX方向の最大角度となる走査光線を示す。レーザ光線71~73は、瞳孔52の中心付近で収束し、何れも瞳孔52を通過して網膜で結像する。
一方、図10に破線で示されているレーザ光線は、並進、及び回動後の状態を示す。例えば、姿勢可変部8Aにより、2軸走査ミラー11へのレーザ光線の入射角度が小さくなるように2軸走査ミラー11を回動させ、且つ2軸走査ミラー11を、2軸走査ミラー11へのレーザ光線の入射方向に後退(固定ミラー10から遠ざける)させた場合である。レーザ光線74は、中心走査光線を示す。レーザ光線75は、正のX方向の最大角度となる走査光線を示す。レーザ光線76は、負のX方向の最大角度を示す走査光線を示す。レーザ光線74~76の収束位置は、瞳孔52の中心付近から負のX方向にずれている。
逆に、図10では図示が省略されているが、姿勢可変部8Aにより、2軸走査ミラー11へのレーザ光線の入射角度が小さくなるように2軸走査ミラー11を回動させ、また2軸走査ミラー11へのレーザ光線の入射方向に2軸走査ミラー11を前進(固定ミラー10に近づける)させた場合は、レーザ光線74~76の収束位置は、瞳孔52の中心付近から正のX方向にずれる。
姿勢可変部8Aによる並進移動量、及び回動角度をさらに大きくすれば、レーザ光線の収束位置のずれと共に眼球50へのレーザ光線の入射方向、すなわち映像の投射方向も大きく変化する。
また、姿勢可変部8Aにより、レーザ光線の入射角度が小さくなるように2軸走査ミラー11を回動させた場合には、レーザ光線の収束位置は変化することなく、映像の投射方向が負のX方向に変化する。
このように、本実施形態によれば、姿勢可変部8Aで2軸走査ミラー11を並進、及び/又は回動させることにより、映像光線の収束位置や映像の投射方向を変化させることができる。また本実施形態によれば、固定ミラー10と、2軸走査ミラー11と、投射ミラー7と、姿勢可変部8Aとを備える光学装置を小型化できる。さらに光学装置を備えた映像表示装置を小型化することができる。
本実施形態によれば、2軸走査ミラー11を、固定ミラー10と眼球50との間の光路に配設することで、光学装置、及び光学装置を備えた映像表示装置を、さらに小型化することができる。
尚、これ以外の効果は、第1の実施形態で説明したものと同様である。
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態の映像表示装置を、図11~12を参照して説明する。尚、第3の実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部分についての説明は省略する場合がある。
本実施形態の映像表示装置は、瞳孔位置を検出する構成を備え、眼球の動きに伴う瞳孔位置の変化に応じて、姿勢可変部が第1走査ミラーを並進、及び/又は回動させる。これにより、映像光線の収束位置や映像の投射方向を、眼球の動きに追従させて自動調整する。
図11は、本実施形態の映像表示装置100bの構成の一例を示す図である。映像表示装置100bは、検出用レーザ光源12と、光位置検出素子13と、制御部20bとを有する。
検出用レーザ光源12は、眼球50の瞳孔52に向けてレーザ光線を照射する。検出用レーザ光源12は、指向性を有するレーザ光線を出射する。検出用レーザ光源12は、例えば半導体レーザである。
検出用レーザ光源12から出射される光の波長は、瞳孔位置を検知される「人」の視認が阻害されないように、非可視光である近赤外光の波長であることが好ましい。但し、これに限定はされず、可視光であっても構わない。
光位置検出素子13は、検出用レーザ光源12から照射され、眼球50で反射されたレーザ光線を受光し、レーザ光線の位置を検出する。
角膜表面は水分を含む透明体であり、約2~4%の反射率を有するのが一般的である。瞳孔52付近に入射したレーザ光線は眼球50の角膜表面の反射点Pで反射され、光位置検出素子13に入射する。光位置検出素子13は、光位置検出素子13へのレーザ光線の入射位置を検出する。
光位置検出素子13は、例えば2次元PSD(Position Sensitive Detector)である。2次元PSDは、受光面への入射光の位置から、受光面内で直交する2方向において、電極までの距離に応じた電流値を検出し、2方向の電流値の比から入射光の位置を算出して出力する。2次元PSDは、入射光の光強度に依存せずに、入射光の位置を検出することができる。そのため、眼球50における反射位置等に起因して反射光量に差が生じたとしても、反射光量の差の影響を受けずに高感度の位置検出が可能である。
但し、光位置検出素子13は2次元PSDに限定はされない。X方向における入射光の位置を検出可能な1次元PSDをY方向に配列させたり、Y方向における入射光の位置を検出可能な1次元PSDをX方向に配列させたりして、入射光のXY平面内での位置を検出してもよい。この場合は、1次元PSDは2次元PSD等と比較して安価であることから、光位置検出素子13のコストを抑制できる等の効果が得られる。
また、光位置検出素子13としてCCDやCMOS等の撮像素子を用い、撮像面に入射した光の空間強度分布に基づく画像処理により、光の位置の検出、又は推定を行っても構わない。
検出用レーザ光源12に、VCSEL(垂直共振器面発光レーザ;Vertical Cavity Surface Emitting LASER)やLDA(Laser Diode Array)等のアレイ光源を用いてもよい。アレイ光源を用いると、眼球50の動きに応じて発光部を切り替え、眼球50へのレーザ光線の入射角度を変化させることで、眼球50で反射されたレーザ光線が光位置検出素子13の受光面から外れることを防止、或いは低減できる。
検出用レーザ光源12と、光位置検出素子13とを有し、瞳孔位置を検出する構成は、特許請求の範囲に記載の「検知部」の一例である。
光位置検出素子13による検出信号は、制御部20bに入力される。入力された検出信号に基づいて、姿勢可変部8により第1走査ミラー5の並進、及び/又は回動が制御される。
図12は、本実施形態の制御部20bのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。制御部20bは、ステージ駆動回路28を有する。ステージ駆動回路28は、姿勢可変部8が備えるモータに電気的に接続し、電圧を印加することでモータを駆動する電気回路である。モータは、姿勢可変部8が備える並進機構8c、及び回動機構8bにそれぞれ設けられる。並進機構8cはモータを駆動源に並進し、回動機構8bはモータを駆動源に回動する。
図13は、本実施形態の制御部20bの構成要素の一例を機能ブロックで示す図である。制御部20bは、瞳孔位置推定部35と、姿勢制御部36と、ステージ駆動部37とを有する。
瞳孔位置推定部35は、受信した光位置検出素子13の検出信号に基づき、瞳孔52の中心位置を推定する。光位置検出素子13による検出信号は、眼球50における反射点Pの法線ベクトルの向き、すなわち3次元形状に該当する。この3次元形状と眼球モデルとの対応関係に基づき、瞳孔中心位置が推定される。
より詳しくは、瞳孔位置推定部35は、入力された検出信号(位置データ)を、眼球50の回旋角度を推定する逆演算式に代入し、眼球回旋角度を算出する。瞳孔位置推定部35は、算出された眼球回旋角度に基づき、眼球表面形状のモデルを用いて、瞳孔中心位置を算出する。
瞳孔位置推定部35は、例えばCPU22により実現される。
姿勢制御部36は、瞳孔位置推定部35により推定された瞳孔中心位置に基づき、姿勢可変部8を並進、及び回動させるための制御信号をステージ駆動部37に出力する。これにより、映像光線の収束位置、又は映像の投射方向が、眼球50の動きに応じて自動調整される。
より詳しくは、例えば、好適な位置で映像を視認するための映像光線の収束位置、又は映像の投射方向と、瞳孔中心位置と、姿勢可変部8の並進量、及び回動量との関係は、予め実験やシミュレーション等で求められ、ROM23やRAM24等のメモリに記憶される。姿勢制御部36は、推定された瞳孔中心位置に基づき、メモリを参照することで、好適な位置で映像を視認するための姿勢可変部8の並進量、及び回動量を取得する。姿勢制御部36は、取得した並進量、及び回動量を示す制御信号をステージ駆動部37に出力する。
姿勢制御部36は、例えばCPU22により実現される。
ステージ駆動部37は、姿勢制御部36から入力した制御信号に基づき、姿勢可変部8の備えるモータに電圧を印加して、並進機構8c、及び回動機構8bを駆動する。ステージ駆動部37は、例えばステージ駆動回路28等により実現される。
尚、出射制御部31と走査制御部33は、好適な位置での映像が歪み等を有する場合は、歪み等を補正するように制御を行ってもよい。
以上説明してきたように、本実施形態によれば、眼球の動きに伴う瞳孔位置の変化に応じて姿勢可変部を制御することにより、網膜に投射される映像の瞳孔でのケラレ等が抑制され、瞳孔位置の変化に追従した映像を網膜に形成することが可能となる。ユーザは眼球の動きに左右されることなく、常に良好な映像を視認することが可能となる。
尚、本実施形態では、「眼球の位置を検知する検知部」の一例として、瞳孔位置を検出する構成を示したが、これに限定されない。「眼球の位置を検知する検知部」は、眼球の瞳孔の位置(瞳孔付近の角膜の位置)、眼球の傾き位置、眼球の回旋位置、眼球の回旋角(回旋角度)、視線の傾き位置等を検知してもよい。
尚、これ以外の効果は、第1~2の実施形態で説明したものと同様である。
[第4の実施形態]
次に、第4の実施形態の検眼装置を説明する。尚、第4の実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部分についての説明は省略する場合がある。
例えば、本発明の光学装置および映像表示装置は検眼装置にも採用する事ができる。検眼装置とは、視力検査、眼屈折力検査、眼圧検査、眼軸長検査など種々の検査を行う事が出来る装置を指す。検眼装置は、眼球に非接触で検査可能な装置であって、被験者の顔を支持する支持部と、検眼窓と、検眼に際し被検者の眼球に検査用情報を投影する表示部と、制御部と、測定部とを有している。被検者は支持部に顔を固定し、検眼窓から表示部により投影される検査用情報を凝視する。このとき、被験者毎に眼球位置や視認しやすい投影方向は異なるため、表示部として本実施形態の光学装置が利用可能である。また、本実施形態の映像表示装置を利用すれば、グラス形態の検眼装置の実現が可能となる。それにより、検査に必要な空間や大型の検眼装置が不要となり、簡便な構成で場所に左右されることなく検査が可能となる。
また、測定部の測定精度を上げるために眼球(視線)を動かさず一点を見つめる事が求められる場合は、本実施形態の瞳孔位置検出手段を備える映像表示装置が利用可能であり、瞳孔位置検出手段により得られた瞳孔位置(視線)情報を制御部にフィードバックする事により、眼球の瞳孔位置情報に応じた測定をする事が可能となる。
以上、実施形態に係る光学装置、映像表示装置、及び検眼装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。