JP7040184B2 - 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献2には、質量%で、Si量が1.5%~3.5%およびP量が0.06%~0.20%で含有し、{100}<001>方位の集積度を{110}<001>方位の集積度より大きくした無方向性電磁鋼板が開示されている。また、この無方向性電磁鋼板は、L方向およびC方向の磁気特性に優れることが開示されている。さらに、この無方向性電磁鋼板は、冷間圧延において、中間焼鈍を挟む2回冷延を行うことにより得られることが開示されている。
特許文献3には、L方向およびC方向の両方向ともに優れた無方向性電磁鋼板が開示されている。また、この無方向性電磁鋼板は、冷間圧延において、上側ワークロールおよび下側ワークロール間の周速比が10%以上である異周速冷延を行うことにより得られることが開示されている。
特許文献4には、質量%で、Al量が0.02%以下で含有し、L方向およびC方向の磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板が開示されている。また、この無方向性電磁鋼板は、冷間圧延の最終パスを除く少なくとも1パスを、100℃~300℃で行うことにより得られることが開示されている。
特許文献5には、熱延で少なくとも1パスを異周速圧延する熱延板の製造方法が開示されている。
例えば、特許文献1に記載の無方向性電磁鋼板は、L方向の磁気特性に優れるが、C方向の磁気特性に改善の余地がある。
特許文献2に記載の無方向性電磁鋼板は、{100}<001>方位が発達しているので、L及びC方向の磁気特性が好ましい。しかし、磁気特性が十分とはいえず、磁気特性改善にさらなる改善の余地がある。さらに、この集合組織を得るためには中間焼鈍を挟む2回の冷延が必要であるため、生産コストの点で不利である。
特許文献3に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法では、冷延時の鋼板とロール間の摩擦係数が従来通りであるため、必ずしも表裏面および板厚中央に付加的せん断ひずみが多く導入されているわけではない。したがって、付加的せん断ひずみ導入による表裏面および板厚中央の集合組織改善に対して改善の余地があり、磁気特性をさらに向上させる見込みがある。
特許文献4に記載の無方向性電磁鋼板では、Al量が0.02%以下に限定されており、低鉄損が要求される高Al量の無方向性電磁鋼板は得られていない。また、製造方法については、最終冷延を除く冷延での温間圧延が前提となるため設備コストの点で不利である。
特許文献5に記載の無方向性電磁鋼板では、熱延での少なくとも1パスを異周速圧延するので、熱延板厚のばらつきが発生する。その結果、冷延率が変化し磁束密度の値がばらつくことが想定される。
質量%で、
C :0.0001%~0.005%、
Si:2.0%~5.0%、
Mn:0.1%~3.0%、
Al:0.1%~3.0%、
P :0.001%~0.20%、
S :0.0001%~0.005%、
N :0.0001%~0.005%、
Sn:0.001%~0.20%、並びに、
残部:Fe及び不純物からなる化学組成を有し、
鋼板表面から板厚1/10位置、板厚1/2位置、および板厚9/10位置における{410}<001>方位の集積度の和が13.0以上である無方向性電磁鋼板。
<2>
<1>に記載の無方向性電磁鋼板を製造する方法であって、
質量%で、C :0.0001%~0.005%、Si:2.0%~5.0%、Mn:0.1%~3.0%、Al:0.1%~3.0%、P :0.001%~0.20%、S :0.0001%~0.005%、N :0.0001%~0.005%、Sn:0.001%~0.20%、並びに、残部:Fe及び不純物からなる化学組成を有する鋼片を、熱間圧延する熱間圧延工程と、
前記熱間圧延後の鋼板に、冷間圧延を行う冷間圧延工程であって、累積された付加的剪断ひずみの平均値(aveΓ)が4.0以上である鋼板とする冷間圧延工程と、
前記冷間圧延後の鋼板に、仕上げ焼鈍する工程と、
を有する無方向性電磁鋼板の製造方法。
<3>
<1>に記載の無方向性電磁鋼板を製造する方法であって、
質量%で、C :0.0001%~0.005%、Si:2.0%~5.0%、Mn:0.1%~3.0%、Al:0.1%~3.0%、P :0.001%~0.20%、S :0.0001%~0.005%、N :0.0001%~0.005%、Sn:0.001%~0.20%、並びに、残部:Fe及び不純物からなる化学組成を有する鋼片を、熱間圧延する熱間圧延工程と、
前記熱間圧延後の鋼板に、冷間圧延を行う冷間圧延工程であって、周速の異なる2つのワークロールによる異周速での冷間圧延を、前記ワークロールと、前記ワークロールに接する鋼板の表面との摩擦係数が0.1超~0.3であり、かつ異速率が5%~40%である圧延を1パス以上実施し、前記摩擦係数と前記異速率を満足する異周速での冷延の合計圧下率が20%~50%となる条件で行う冷間圧延工程と、
前記冷間圧延後の鋼板に、仕上げ焼鈍する工程と、
を有する無方向性電磁鋼板の製造方法。
本明細書中において、成分(元素)の含有量を示す「%」は、「質量%」を意味する。
本明細書中において、C(炭素)の含有量を、「C量」と表記することがある。他の元素の含有量についても同様に表記することがある。
本明細書中において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
なお、以下の説明において、板厚1/10位置、板厚1/2位置、および板厚9/10位置は、それぞれ、1/10t、1/2t、および1/9tと称する場合がある。
本実施形態の無方向性電磁鋼板は、質量%で、C:0.0001%~0.005%、Si:2.0%~5.0%、Mn:0.1%~3.0%、Al:0.1%~3.0%、P:0.001%~0.20%、S:0.0001%~0.005%、N:0.0001%~0.005%、Sn:0.001%~0.20%、並びに、残部:Fe及び不純物を含有する化学組成を有する。そして、鋼板表面から板厚1/10位置、板厚1/2位置、および板厚9/10位置における{410}<001>方位の集積度の和が13.0以上である。
{410}<001>方位は、磁気特性に好ましい{100}<001>方位に近い方位であるため、磁気特性の向上に好ましい方位といえる。この磁気特性に好ましい{410}<001>方位の集積度が13.0以上に発達していることで、磁束密度が向上したと考えられる。したがって、本実施形態の無方向性電磁鋼板は優れた磁気特性を有する。
なお、1/10t、1/2t、および9/10tにおける{410}<001>方位の集積度の和は、言い換えると、鋼板両側の1/10tの2つの位置および1/2tにおける{410}<001>方位の集積度の合計でもある。
各測定用試験片について、X線回折装置により、{200}面、{110}面、{211}面の極点図を測定し、各層における結晶方位分布関数ODF(Orientation Determination Function)を作成する。この結晶方位分布関数に基づき、各層における各方位の集積度を得る。{410}<001>方位の集積度はφ2=0°断面のΦ=20°およびφ1=0°における集積度の値を読み取る。そして、板厚1/10位置、板厚1/2位置、板厚9/10位置における値の和をとる。この他、{111}<112>方位の集積度を測定する場合は、φ2=45°断面のΦ=55°およびφ1=30°における集積度の値を読み取る。また、{110}<001>方位の集積度を測定する場合は、φ2=0°断面のΦ=45°およびφ1=0°における集積度の値を読み取る。これらの結晶方位の集積度それぞれについて、板厚1/10位置、板厚1/2位置、板厚9/10位置における値の和をとる。
Cは、含有量が多いと、鉄損が低下する。そのため、C量は0.0001%~0.005%以下とする。C量は0.004%以下であることがよく、0.003%以下であることが好ましい。
Siは、電気抵抗を増加させるために有効な元素である。しかし、Si量が過剰になると、熱延板焼鈍の有無にかかわらず、冷延性が低下する。そのため、Si量は2.0%~5.0%とする。Si量は4.5%以下であることがよく、4.0%以下であることが好ましい。また、Si量は2.5%以上であることがよく、3.0%以上であることが好ましい。
Mnは電気抵抗を増大させて渦電流損を減少させるとともに、鉄損を低減する作用がある。しかし、Mn量が過剰になると、効果が飽和する。そのため、Mn量は0.1%~3.0%とする。Mn量は2.5%以下であることがよく、2.0%以下であることが好ましい。また、Mn量は0.5%以上であることがよく、0.8%以上であることが好ましい。
AlはSi同様に電気抵抗を増加させるのに有効な元素である。しかし、Al量が過剰になると、鋳造性が低下する。そのため、Al量は0.1%~3.0%とする。Al量は2.5%以下であることがよく、2.0%以下であることが好ましい。また、Al量は0.3%以上であることがよく、0.5%以上であることが好ましい。
Pは磁束密度を低下させることなく強度を高める作用がある。しかし、P量が過剰になると、鋼の靱性を損ない、鋼板に破断が生じやすくなる。そのため、P量は0.001%~0.20%とする。P量は0.15%以下であることがよく、0.10%以下であることが好ましい。
Sは、含有量が多いと、硫化物の増加により、鉄損に悪影響を及ぼす。そのため、S量は0.0001%~0.005%とする。S量は0.003%以下であることがよく、0.001%以下であることが好ましい。
Nは、含有量が多いと、窒化物の増加により、鉄損に悪影響を及ぼす。そのため、N量は0.0001%~0.005%とする。N量は0.002%以下であることがよく、0.001%以下であることが好ましい。
Snは磁束密度を高める作用がある。しかし、Sn量が過剰になると、鋼の靱性を損ない、鋼板に破断が生じやすくなる。そのため、Sn量は0.001~0.20%とする。Sn量は0.10%以下であることがよく、0.05%以下であることが好ましい。
鋼板の残部は、Feおよび不純物である。本実施形態の化学組成において、上述した各元素を除いた残部は、Fe及び不純物である。
ここで、不純物とは、原材料に含まれる成分、または、製造の過程で混入する成分であって、意図的に鋼板に含有させたものではない成分を指す。
まず、絶縁皮膜等を有する無方向性電磁鋼板を、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:10質量%+H2O:90質量%)に、80℃で15分間、浸漬する。次いで、硫酸水溶液(H2SO4:10質量%+H2O:90質量%)に、80℃で3分間、浸漬する。その後、硝酸水溶液(HNO3:10質量%+H2O:90質量%)によって、常温(25℃)で1分間弱、浸漬して洗浄する。最後に、温風のブロアーで1分間弱、乾燥させる。これにより、絶縁皮膜が除去される。
次に、本実施形態の無方向性電磁鋼板の好ましい製造方法の一例について説明する。
冷延工程では、累積された付加的剪断ひずみの平均値(aveΓ)が4.0以上である鋼板(冷延板)とする。
冷延工程は、周速の異なる2つのワークロールによる異周速での冷間圧延を、ワークロールと、ワークロールに接する鋼板の表面との摩擦係数が0.1超~0.3であり、かつ、異速率が5%~40%である圧延を1パス以上実施し、摩擦係数と異速率を満足する異周速での冷延の合計圧下率が20~50%となる条件で実施する。
式(A) 異速率(%)=((VH/VL)-1)×100
上記の化学組成を有する鋼片を加熱した後、熱間圧延する工程である。熱延前の鋼片の加熱温度は特に限定されるものではないが、例えば、コスト等の観点から1000℃~1300℃(好ましくは1100℃~1200℃)が挙げられる。
次に、熱延後の鋼板に冷延を施す。冷延工程は、生産性の観点から1回の冷間圧延で実施する。ここで、1回の冷間圧延は、仕上げ板厚とするために施される冷延を表す。
以下では、上記1)および2)を満たす異周速冷延を「適合異周速冷延」と記述することがある。また、異周速冷延のうち、特に上記1)および2)を満たす圧延であることを区別する必要がない場合は、単に「異周速冷延」と記述することがある。
また、本明細書では、説明の記述を簡略化するため、異速率=0%の圧延、つまり同周速の圧延を、「異速率ゼロの異周速冷延」として記述することがある。
なお、上側ワークロールおよび下側ワークロールの周速の組み合わせは、上記に限られない。適合異周速冷延となるのであれば、各パスにおいて、低速ワークロールおよび高速ワークロールの順序は特に限定されるものではない。
摩擦係数が0.1超~0.3の範囲であることで、板厚平均での付加的せん断ひずみ量が著しく増加する。摩擦係数が0.1以下でも、付加的せん断ひずみが導入されるが、板厚全体に導入される付加的せん断ひずみ量が少ない。そのため、磁束密度B50の向上効果が十分に得られない。また、摩擦係数が0.3を超える場合は、圧延荷重が増加するので、板厚を低減することが困難になる。その結果、生産性が低下する。摩擦係数の好ましい下限は、0.15以上であり、好ましい上限は、0.25以下である。
式(B) r(%)={1-(1-r1)×(1-r2)×・・・×(1-rn)}×100
ここで、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の好適な製造方法の一態様において、適合異周速冷延の「圧下率」については、「合計圧下率」の制御が重要であり、「各パスの圧下率」は合計圧下率が上記の範囲となるように定めればよい。つまり、例えば、適合異周速冷延の圧下率が非常に低いパスであっても、複数回実施して合計圧下率が上記範囲に入れば、磁束密度が高く、優れた磁気特性を有する無方向性電磁鋼板を得ることが可能である。
一方、摩擦係数μが0.20では、異速率0%において、鋼板表裏面近傍(0t、1t)の付加的せん断ひずみが著しく増加する。さらに、摩擦係数μが0.20では、異周速冷延を適用した場合に、板厚中央近傍(1/2t)の付加的せん断ひずみが著しく増加することが分かる。
図3に示すように、摩擦係数μが0.05では、異周速冷延を行ってaveΓが増加しても、磁束密度B50の向上は少ない。一方で、1パス目において摩擦係数μが0.20で、異速率が増加すると、摩擦係数μが0.20では、aveΓが増加し、L方向およびC方向のB50が著しく上昇することが分かる。
また、摩擦係数μが0.05のとき、aveΓが増加しても、1/10t、1/2t、および9/10tにおける{410}<001>方位の集積度の和は、ほとんど変化が見られないことが分かる。さらに、1/10t、1/2t、および9/10tにおける{111}<112>方位の集積度の和、並びに1/10t、1/2t、および9/10tにおける{110}<001>方位の集積度の和についても、ほとんど変化が見られないことが分かる。
なお、図3および図4において、四角で囲まれている部分は、1/10t、1/2t、および9/10tにおける{410}<001>方位の集積度の和が13以上となる範囲であって、磁束密度が優れる範囲を示している。
図5に示すように、異周速冷延の合計圧下率が増加するほどaveΓは増加する。一方で、異周速冷延の圧下率によって、aveΓが極大となる異速率は変化することが分かる。なお、図5~図7において、縦軸の異速率が0%のときの横軸は、異周速冷延を同周速冷延としたときの圧下率を表す。
また、図7に示すように、異周速冷延の合計圧下率が増加するほどC方向のB50には増加するが、異周速冷延の圧下率によって、C方向の磁束密度B50が極大となる異速率は変化することが分かる。
そして、上記のように、付加的せん断ひずみの平均値(aveΓ)の導入量は、異周速冷延の合計圧下率と異速率とのバランスによって決定されるものである。そのため、付加的せん断ひずみの平均値(aveΓ)の導入量が増加するように、異速率と異周速冷延での合計圧下率とのバランスを考慮し、各々の条件を決定すればよい。aveΓが4.0%以上になると、鋼板表面から板厚1/10位置、板厚1/2位置、および板厚9/10位置における{410}<001>方位の集積度の和の値が増加する。それによって、本実施形態の無方向性電磁鋼板は、磁気特性が向上する。したがって、aveΓが4.0%以上であるとする。
ここで、冷延全体とは、摩擦係数および異速率に関わらず、異周速での冷延パスおよび異周速以外(つまり同周速)での冷延パスで行った冷延の全体を表す。よって、冷延が全て適合異周速冷延である場合の冷延全体における全圧下率は、前述の適合異周速冷延での合計圧下率と同じ値となる。
次に、冷延後の鋼板に仕上げ焼鈍を施す。仕上げ焼鈍工程における諸条件は、無方向性電磁鋼板にとって望ましい{410}<001>方位の集合組織が発達する条件であれば、特に規定されるものではない。例えば、仕上げ焼鈍温度は800℃~1200℃(好ましくは850℃~1150℃)、仕上げ焼鈍時間は5秒~5時間(好ましくは10秒~3時間)とすることが好ましい。昇温速度は10℃/秒~100℃/秒であることが好ましい。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板を得るために、上記の工程以外に、従来の無方向性電磁鋼板の製造工程と同様のその他の工程を設けてもよい。その他の工程の各条件は、従来の無方向性電磁鋼板の製造工程と同様の条件を採用してもよい。仕上げ焼鈍工程後の鋼板(無方向性電磁鋼板)の表面に絶縁皮膜を設ける絶縁皮膜形成工程を有していてもよい。
絶縁皮膜の厚みは、特に限定されないが、片面当たりの膜厚として0.05μm~2μmであることが好ましい。
既述の結晶方位の測定方法にしたがって、1/10t、1/2t、及び9/10tにおける{410}<001>方位の集積度の和を求める。さらに、実施例1では、1/10t、1/2t、及び9/10tにおける{111}<112>方位の集積度の和、並びに、1/10t、1/2t、及び9/10tにおける{110}<001>方位の集積度の和も求める。
仕上げ焼鈍後に得られた無方向性電磁鋼板から切り出した55mm×55mmの鋼板サンプルに対して、L方向およびC方向に、それぞれ5000A/mの磁化力を与え、そのときの磁束密度の値B50(T)を測定する。
質量%で、C:0.003%、Si:3.3%、Mn:1.0%、Al:0.7%、P:0.02%、S:0.001%、N:0.001%、Sn:0.03%、並びに、残部:Fe及び不純物からなる化学組成の鋼片に粗熱延を施す。その後、1150℃に加熱して仕上げ熱延を施し、板厚2.0mmの熱延板を得る。仕上げ熱延後の鋼板に、酸洗を施す。酸洗後の鋼板に、900℃で1分間焼鈍する熱延板焼鈍を施し、平均粒径90μmの冷延前組織とする。さらに、表1に示す条件で、冷延の1パス目において、摩擦係数および異速率を変更し、異周速冷延の圧下率を30%、冷延温度を100℃として異周速冷延を実施する。そして、2パス目以降を同周速冷延とし、板厚が0.25mmとなるように冷延を施す(冷延全体で6パス)。冷延後の鋼板に、昇温速度20℃/secで加熱して、1000℃で30秒間の仕上げ焼鈍を施して、無方向性電磁鋼板を得る。
一方、比較材として、上記と同化学組成の鋼片を、上記と同条件の過程を経て熱延焼鈍板を得る。そして、この熱延焼鈍板を、表1に示す条件で、冷延の1パス目において摩擦係数を変更し、全パス同周速で、温度を100℃として冷間圧延し、板厚0.25mmの冷延板を得る。また、この熱延焼鈍板を、表1に示す条件で、冷延の1パス目において摩擦係数を変更し、さらに、異速率を5%、異周速冷延の圧下率を30%、温度を100℃として異周速冷延を実施する。そして、2パス目以降を同周速冷延とし、板厚0.25mmの冷延板を得る。この冷延鋼板に、昇温速度20℃/secで加熱して、1000℃で30秒間の仕上げ焼鈍を施して、無方向性電磁鋼板を得る。
得られた各無方向性電磁鋼板について、1/10t、1/2t、及び9/10tにおける各方位の集積度の和を求める。さらに、aveΓ及び磁束密度の評価を行う。結果を表1に示す。
また、No.A10、No.A17、およびNo.A18は、摩擦係数は高い。しかし、異速率と異周速冷延での圧下率のバランスが適正ではないため、aveΓの増加が十分ではなく、{410}<001>方位の集積度の和が増加しない。そのため、磁束密度B50が劣位である。
また、No.A19はaveΓが増加しないうえ、急速加熱により{110}<001>方位の集積度が高くなり、C方向のB50が劣位である。
実施例1と同様の熱延焼鈍板に、表2に示す条件で、冷延の1パス目において摩擦係数μを0.20、温度を100℃とし、異速率および異周速冷延の圧下率を変更して、異周速冷延を実施する。そして、2パス目以降を同周速冷延とし、板厚が0.25mmとなるように冷延を施す(冷延全体で6パス)。冷延後の鋼板に、昇温速度20℃/secで加熱して、1000℃で30秒間の仕上げ焼鈍を施して、無方向性電磁鋼板を得る。
また、表1及び表2において、異速率0%のときの異周速冷延(異速率ゼロの異周速冷延)の圧下率欄の数値は、同周速冷延としたときの圧下率を表している。
実施例2と同様の熱延焼鈍板に、冷延全体における全パスを6パスとし、表3に示す条件で、冷延を行う。全6パスの冷延のうち、摩擦係数μを0.20、温度を100℃とし、異速率、異周速冷延の合計圧下率、異周速冷延のパス数を変更して、異周速冷延を実施する。なお,異周速冷延を複数パス行うときの異速率は、各パスとも同じである。そして、異周速冷延後の残りのパスを同周速冷延とし、板厚が0.25mmとなるように冷延を施す。冷延後の鋼板に、昇温速度20℃/secで加熱して、1000℃で30秒間の仕上げ焼鈍を施して、無方向性電磁鋼板を得る。
Claims (3)
- 質量%で、
C :0.0001%~0.005%、
Si:2.0%~5.0%、
Mn:0.1%~3.0%、
Al:0.1%~3.0%、
P :0.001%~0.20%、
S :0.0001%~0.005%、
N :0.0001%~0.005%、
Sn:0.001%~0.20%、並びに、
残部:Fe及び不純物からなる化学組成を有し、
鋼板表面から板厚1/10位置、板厚1/2位置、および板厚9/10位置における{410}<001>方位の集積度の和が13.0以上である無方向性電磁鋼板。 - 請求項1に記載の無方向性電磁鋼板を製造する方法であって、
質量%で、C :0.0001%~0.005%、Si:2.0%~5.0%、Mn:0.1%~3.0%、Al:0.1%~3.0%、P :0.001%~0.20%、S :0.0001%~0.005%、N :0.0001%~0.005%、Sn:0.001%~0.20%、並びに、残部:Fe及び不純物からなる化学組成を有する鋼片を、熱間圧延する熱間圧延工程と、
前記熱間圧延後の鋼板に、冷間圧延を行う冷間圧延工程であって、累積された付加的剪断ひずみの平均値(aveΓ)が4.0以上である鋼板とする冷間圧延工程と、
前記冷間圧延後の鋼板に、仕上げ焼鈍する工程と、
を有する無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 請求項1に記載の無方向性電磁鋼板を製造する方法であって、
質量%で、C :0.0001%~0.005%、Si:2.0%~5.0%、Mn:0.1%~3.0%、Al:0.1%~3.0%、P :0.001%~0.20%、S :0.0001%~0.005%、N :0.0001%~0.005%、Sn:0.001%~0.20%、並びに、残部:Fe及び不純物からなる化学組成を有する鋼片を、熱間圧延する熱間圧延工程と、
前記熱間圧延後の鋼板に、冷間圧延を行う冷間圧延工程であって、周速の異なる2つのワークロールによる異周速での冷間圧延を、前記ワークロールと、前記ワークロールに接する鋼板の表面との摩擦係数が0.1超~0.3であり、かつ異速率が5%~40%である圧延を1パス以上実施し、前記摩擦係数と前記異速率を満足する異周速での冷延の合計圧下率が20%~50%となる条件で行う冷間圧延工程と、
前記冷間圧延後の鋼板に、仕上げ焼鈍する工程と、
を有する無方向性電磁鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2018052220A JP7040184B2 (ja) | 2018-03-20 | 2018-03-20 | 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 |
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