JP5037796B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に関し、特に優れた磁気特性の方向性電磁鋼板を安価に得ようとするものである。
方向性電磁鋼板は、トランスなどに使用される鉄心の素材として好適な材料である。近年、省エネルギー化のために、方向性電磁鋼板には商用周波数での低鉄損および低励磁場での高磁束密度が求められている。従って、このような要求に応えるべく、磁気特性の更なる改善が必要とされている。
方向性電磁鋼板は、鉄の磁化容易軸である<001>方位が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有するものである。このような集合組織は、方向性電磁鋼板の製造工程中、仕上焼鈍時に、いわゆるGoss方位と称される(110)[001]方位の結晶粒を優先的に巨大成長させる、二次再結晶を通じて形成される。従って、二次再結晶粒の結晶方位が磁気特性に大きな影響を及ぼす。
従来、このような方向性電磁鋼板は、Siを4.5mass%程度以下と、MnS,MnSe,AlNなどのインヒビター成分を含有するスラブを、1300℃以上に加熱後、熱間圧延し、必要に応じて熱延板焼鈍を施したのち、1回または中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延により最終板厚とし、ついで湿潤水素雰囲気中にて一次再結晶焼鈍を施すことにより、一次再結晶および脱炭を行い、ついでマグネシアを主剤とする焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶およびインヒビター成分純化のために、1200℃,5時間程度の最終仕上焼鈍を行うことにより製造されてきた。例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3等に、その技術が開示されている。
しかしながら、このような技術を正確に実施するためには、方向性電磁鋼板の製造工程に適した特殊な設備が必要であり、また工程も複雑である。その結果、方向性電磁鋼板の製造コストは極めて高いものとなっていた。
一方、磁気特性を向上させる手法として、最終冷間圧延前の焼鈍後の冷却過程を制御することによって、鋼中Cの形態を制御する方法が報告されている。例えば、特許文献4には、焼鈍後の冷却において、600℃から300℃までを150℃/min以上の速度で冷却することにより、冷却後の固溶Cを増加させる技術が開示されている。
また、特許文献5には、焼鈍後、300℃まで急冷し、300〜150℃間を徐冷する、あるいは100℃まで急冷し 300〜150℃の温度域で短時間の時効処理を施すことにより、100〜500Åの微細炭化物を析出させる技術が開示されている。
上述した種々の手法は、冷間圧延時に導入される転位等の欠陥部に固溶C等を固着させ、いわゆるコットレル雰囲気を形成させるという技術思想を応用したものと考えられる。このような効果は、一般鋼でも、冷間圧延後の焼鈍において、再結晶後の集合組織中の(110)強度を増加させる手法として良く知られている。(110)組織は二次再結晶の良好な核として働くため、結果的に磁気特性を改善する。従って、方向性電磁鋼板では、再結晶焼鈍時の集合組織改善は極めて重要な要素である。
しかしながら、固溶Cや微細炭化物を用いる技術を実施するためには、焼鈍後、急冷処理、冷延過程におけるパス間時効処理、あるいは板温を200℃以上として通板する温間圧延、中間焼鈍や時効処理等の工程が必要となり、やはり工程の煩雑化、特殊設備の導入が避けられなかった。また、焼鈍後に急冷を行うことで鋼板が硬化、変形し、通板が困難となる問題も見受けられた。
米国特許No.1965559号 特公昭40−15611号公報 特公昭51−13469号公報 特公昭56−3892号公報 特開昭58−157917号公報
前述したとおり、方向性電磁鋼板において、鋼中Cを利用して磁気特性を向上させるためには、急冷によって固溶Cとして粒内に残留させるか、炭化物として微細析出させる必要がある。また、これらの手法は、適切な圧延条件、時効処理との組み合わせにより、効果を発現させるものであるため、工程は煩雑化し、製造コストは高くなっていた。
従って、安価でかつ容易に製造でき、磁気特性についても近年の高特性材の要求に対し十分に応えるためには、固溶Cや微細炭化物によらない集合組織の改善方法が必要である。
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、優れた磁気特性を低コストで得ることができる方向性電磁鋼板の有利な製造方法を提案することを目的とする。
以下、本発明の解明経緯について説明する。
さて、発明者らは、冷延前の焼鈍後に析出するカーバイド(炭化物)の形態に着目して鋭意研究を進めた結果、1回の冷間圧延で最終板厚とする場合、従来の知見とは逆に強冷延前に2μm以上の粗大な炭化物を結晶粒内に適量析出させることが、集合組織の改善に有効であるを見出した。
図1に、冷延前の焼鈍後に析出した炭化物の粒径およびその存在頻度が、1回強冷延・再結晶板の集合組織に及ぼす影響について調べた結果を示す。
同図より明らかなように、粒径が2μm 以上の粗大炭化物をある程度存在させることによって、集合組織が改善されることが分かる。
なお、上記の実験の際における、集合組織の良不良は、板厚中心部での(211)インバース強度によって評価するものとし、この(211)インバース強度が1.1以下の場合を良、1.1よりも高かった場合を不良とした。
この理由は、1回冷延後の一次再結晶板の板厚中心部で、(211),(110),(200),(222),(321),(411)の計6つの結晶面についてインバース強度を測定し、それぞれの値と最終製品板での磁気特性(磁束密度)との相関を取った結果、従来、二次再結晶の良好な核として働くことが知られている(110)インバース強度よりも(211)インバース強度の方が磁気特性と強い相関が見られたからである。
図2に、組成が異なる2種類の鋼板A,Bについて、(211)インバース強度と最終製品板の磁束密度B8との関係について調べた結果を示す。
同図より明らかなように、鋼板A,Bとも、(211)インバース強度が1.1以下の場合に良好な磁束密度B8が得られている。
また、炭化物の観察は、走査型電子顕微鏡で行い、観察視野はコイル幅方向中央部から圧延直角方向の断面を切り出し、板厚中心から上下にそれぞれ100μm、幅方向に5mmの範囲を観察し、1μm以上の粗大炭化物の存在頻度を求めた。
一般に炭化物の析出は、600℃以下から徐冷した場合、高温においては結晶粒界に析出し、より低温になって結晶粒内に析出するようになる。この際、比較的高温、または低温でも長時間保持することにより、針状粗大粒が析出することが知られている(W.C.Leslie,R.L.Rickett,C.P. Stroble,and G.Konoval;Trans-ASM,1961,Vol.53, P.715, Fig.12)。
その結果、上述したとおり、2μm以上の針状あるいはプレート状のカーバイドを、圧延直角方向断面の板厚中心から上下100μmの範囲内で50個/mm2以上析出させることによって、磁気特性が改善されることが確認された。
そこで、次に、かような粗大な炭化物を適量析出させる手段について検討を行った。
その結果、集合組織改善に必要な2μm以上という粗大な炭化物を焼鈍冷却過程で得るためには、550〜300℃の温度域を緩冷却とする、すなわち該温度域に少なくとも45秒以上滞留させる必要があることが判明した。
図3は、550〜300℃の温度域に10sec, 30secおよび45sec滞留させた時の炭化物の析出状況を示す顕微鏡写真である。
同図に示したとおり、550〜300℃の温度域での滞留時間が45secの場合には、針状の炭化物が明瞭に形成されていることが分かる。
また、図4には、別の試料を、やはり550〜300℃の温度域に10sec, 30secおよび45sec滞留させた時の炭化物の析出状況を示す顕微鏡写真を示すが、この場合も550〜300℃の温度域での滞留時間が45secの時にプレート状のカーバイドが明瞭に析出している。
ところで、室温まで冷却した熱延板焼鈍後の鋼板に対しても、その後に熱処理を施すことによって、針状あるいはプレート状の炭化物が得られることが考えられる。
そこで、室温まで冷却した熱延板焼鈍後の鋼板に対し、100℃,200℃,300℃でそれぞれ1時間の熱処理を施してみたところ、図5に示すように、200℃または300℃で1時間の熱処理を施した場合には、粒径が2μm以上の針状あるいはプレート状の粗大炭化物が得られることが確認された。
本発明は、上記の知見を基に、さらに工業的規模での適用を誠みた結果、開発されたものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)質量%で、Cを0.01%以上 0.10%以下、Siを2.0%以上 4.5%以下含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる電磁鋼素材スラブを、熱間圧延し、熱延板焼鈍後、圧下率:80%以上の1回の冷間圧延により最終板厚としたのち、一次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶焼鈍を施す工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
上記熱延板焼鈍後の冷却時、550〜300℃の温度域に滞留させる滞留時間を調整するか、または上記熱延板焼鈍後、室温まで冷却したのち、200℃以上550℃以下の温度域で熱処理を施す熱処理時間を調整して、上記冷間圧延前の鋼板に、該鋼板の圧延直角方向断面に見られる2μm以上の針状あるいはプレート状のカーバイドを、圧延直角方向断面の板厚中心から上下100μmの範囲内で50個/mm2以上存在させることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
(2)前記550〜300℃の温度域での滞留時間が、少なくとも45秒であることを特徴とする上記(1)記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(3)前記200℃以上550℃以下の温度域での熱処理時間が、30秒以上であることを特徴とする上記(1)記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(4)前記電磁鋼素材スラブに、さらに質量%で、Al:0.010〜0.080%、N:0.005〜0.015%、Mn:0.02〜1.0%、Se:0.001〜0.05%およびS:0.001〜0.05%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
(5)前記電磁鋼素材スラブに、さらに質量%で、B,Bi,Sb,Mo,Te,Sn,P,Ge,As,Nb,Cr,Ti,Cu,Pb,ZnおよびInのうちから選んだ1種または2種以上を、それぞれ0.0005〜1.0%含有することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、方向性電磁鋼板の製造に際し、冷間圧延前焼鈍での急冷処理や圧延での特殊な装置を必要とせず、ただ1回の冷間圧延と再結晶焼鈍によって集合組織の改善が可能となり、その結果、磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を安価かつ容易に得ることができる。
以下、本発明を具体的に説明する。なお、成分に関する「%」表示は特に断らない限り質量%を意味するものとする。
本発明のスラブは、公知の方法、例えば製鋼−連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法によって製造される。その際、スラブ組成については、以下のように限定される。
C:0.01%以上 0.10%以下
Cは、一次再結晶集合組織の改善に有用な元素であり、かつ粗大炭化物を発現させる上でも必要なものである。しかしながら、含有量が、0.01%未満では炭化物の量が少なすぎて集合組織改善の効果が得られず、一方0.10%超では製品板までに脱炭が極めて困難となり、残留Cによる磁気時効が起こって製品特性が劣化するので、C量は0.01%以上 0.10%以下の範囲に限定した。
Si:2.0%以上 4.5%以下
Siは,電気抵抗を高めることによって鉄損を改善する有用元素であるが、含有量が2.0%に満たないとその添加効果に乏しく、一方 4.5%を超えると冷間圧延が著しく困難になるため、Siは2.0%以上 4.5%の範囲に限定した。
また、鋼中には、上記の元素の他に、インヒビター形成元素として、AlやN,Mn,Se等をそれぞれ、Al:0.010〜0.080%、N:0.005〜0.015%、Mn:0.02〜1.0%、Seおよび/またはS:0.001〜0.05%程度含有させることができる。その他、B,Bi,Sb,Mo,Te,Sn,P,Ge,As,Nb,Cr,Ti,Cu,Pb,ZnおよびIn等のインヒビター形成元素を、各々5ppm〜1.0%程度単独または複合して適宜含有させることもできる。
さらに、特開2000−129356号公報等に開示されるような、インヒビターを使用しないで製造される方向性電磁鋼板に対しても、本発明の適用は可能である。
上記のスラブを、スラブ加熱後、熱間圧延に供する。スラブ加熱は、スラブの成分によって必要となる温度が異なる。通常、AlN,MnSやMnSe等のインヒビターを用いる鋼種においては、スラブ加熱時にインヒビター成分を完全に固溶させる必要があるため、これらの鋼種では1350℃以上の高温加熱を行うことが望ましい。一方、インヒビター成分を含有させずに二次再結晶させる技術(インヒビターレス法)を利用する場合には、1050℃から1250℃程度とするのが好適である。1250℃を超える高温スラブ加熱は、スラブにインヒビター成分を含まない鋼種においては不要であり、一方1050℃未満ではスラブを円滑に圧延することができなくなる。
ついで、熱延鋼板に熱延板焼鈍を施す。この冷却時に、550〜300℃の温度域を緩冷却とし、すなわちこの温度域に45秒以上滞留させて、2μm以上の針状あるいはプレート状炭化物を析出させる。
ここで、針状炭化物とは、図3に示したように、一次元的に粗大化した炭化物を指し、またプレート状炭化物とは、図4に示したように、二次元的に粗大化した炭化物を指すこととする。
熱延板焼鈍後の冷却過程における炭化物の析出については、600℃以下であれば針状炭化物を得ることは可能であるが、550℃を超える温度では粒界への析出も進行し、結晶粒内のC濃度が低下してしまう結果、粗大炭化物の量が減少し、集合組織改善の効果が得られない。一方、300℃を下回っても、針状炭化物は生成するものの粗大化に必要な時間が長くなりすぎるので、工程化は困難となる。
そこで、緩冷却を施すべき温度域として、550〜300℃の温度範囲を定めたのである。また、滞留時間については少なくとも45秒を必要とするが、滞留時間をあまりに長くすると生産性が阻害されるので、滞留時間の上限は100秒程度とするのが好適である。
また、冷却過程で緩冷却を実施できない場合には、200℃以上 550℃以下の温度域で熱処理を行うことによって、炭化物を2μm以上に粗大化させることが可能である。この熱処理温度が200℃未満 600℃超では針状炭化物を得ることができず、また550℃超、600℃以下の温度域に関しては、上述したとおり、粒界への析出も進行するため、結晶粒内でのC濃度が低下し、粗大炭化物の量が減ってしまい、集合組織改善の効果が得られない。
そこで、かかる熱処理については、処理温度を200℃以上 550℃以下の範囲に限定したのである。また、処理時間については、少なくとも30秒必要であることが判明した。なお、あまりに長い処理時間は生産性の低下を招くので、その上限は10h程度とするのが好ましい。
得られた熱延鋼板に対しては、中間焼鈍を施さずに、圧下率:80%以上の1回の強冷延により最終板厚とする。圧下率が80%未満では、再結晶時の集合組織改善が不十分なものとなってしまう。これは、粗大炭化物の周辺に転位を蓄積するには、1回でしかも強圧下の圧延が必要不可欠なためと考えられる。この点、中間焼鈍を挟む2回圧延では、中間焼鈍時に一次的に転位が開放され、十分に転位が蓄積されないため、満足いくほどの集合組織の改善効果は得られない。
ついで、最終冷間圧延板に、一次再結晶焼鈍を施した後、鋼板の表面に焼鈍分離剤を塗布する。焼鈍分離剤としては、従来から公知のものいずれもが適合する。特に、マグネシアを主剤とし、必要に応じてチタニア、ストロンチウム化合物、硫化物、塩化物およびほう化物などの添加剤を添加したものを、水スラリーとして塗布したものが好適である。その他の焼鈍分離剤としては、シリカやアルミナなどを用いることもできる。
次に、二次再結晶焼鈍を行う。この二次再結晶焼鈍についてはとくに制限はなく、インヒビターを使用する方法またはインヒビターレス法いずれの場合も、従来公知の方法に従って行えばよい。
上記の仕上焼鈍後、鋼板表面に絶縁被膜を塗布、焼き付けることもできる。絶縁被膜の種類については、特に限定されないが、従来公知の絶縁被膜いずれもが適合する。例えば、特開昭50−79442号公報や特開昭48−39338号公報に記載されている、リン酸塩−クロム酸−コロイダルシリカを含有する塗布液を、鋼板に塗布し、800℃程度で焼き付ける方法が好適である。
また、平坦化焼鈍により、鋼板の形状を整えることも可能であり、さらには絶縁被膜の焼き付けを兼ねた平坦化焼鈍を行うこともできる。
実施例1
C:0.04%,Si:3.35%,Mn:0.1%,S:0.01%およびSe:0.02%を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる電磁鋼素材スラブを、1350℃に加熱後、熱間圧延により2.3mm厚の熱延板とした。ついで、1030℃、60秒の熱延板焼鈍後、冷却時 550〜300℃の温度域を30℃/s、10℃/s、5℃/s、3℃/sの冷却速度で冷却した。また、30℃/s、10℃/sで冷却した素材は、350℃で0秒保持、20秒保持、30秒保持、45秒保持を行い、その後、300℃まで同じ冷却速度で冷却した。
かくして得られた熱延焼鈍板のコイル幅方向中央部から圧延直角方向の断面を切り出し、板厚中心から上下にそれぞれ100μm、幅方向に5mmの範囲を観察し、2μm以上の粗大炭化物の存在頻度を求めた。
ついで、圧下率:90%の1回の冷間圧延により0.23mm厚の冷延板としたのち、均熱温度:800℃、均熱時間:30sの一次再結晶焼鈍を施した。その後、MgO:95mass%、TiO2:5mass%の焼鈍分離剤を、水スラリーとして鋼板表面に塗布し、二次再結晶焼鈍に供した。このようにして得られた仕上焼鈍板の表面に、リン酸塩−クロム酸塩−コロイタルシリカを重量比3:1:3で含有する塗布液を塗布し、800℃で焼き付けた。
かくして得られた製品板コイルの幅中央部の磁気特性を調査した。磁気特性は、800℃、3時間の歪取焼鈍を行った後、800 A/mで励磁したときの磁束密度B8で評価した。
得られた結果を、熱延板焼鈍後の冷却速度および2μm以上の粗大炭化物の存在頻度との関係で表1に示す。
なお、2μm以上の粗大炭化物の存在頻度については、圧延直角方向断面の板厚中心から上下100μmの範囲内で、2μm以上の粗大炭化物が50個/mm2以上存在した場合を○、それ未満の場合を×で示す。
同表より明らかなように、本発明に従い、熱延板焼鈍後の冷却過程において、550〜300℃の温度域に45秒以上滞留させて、圧延直角方向断面の板厚中心から上下100μmの範囲内に2μm以上の粗大炭化物を50個/mm2以上析出させた場合には、高い磁束密度を得ることができた。
実施例2
C:0.03%、Si:3.5%およびMn:0.05%を含有し、S,Se,Oを各々50ppm未満、Nを60ppm未満に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物の組成になる、インヒビター成分を含有しない電磁鋼素材スラブを、1220℃に加熱後、熱間圧延により板厚:1.60mmの熱延板とし、1050℃,40秒の熱延板焼鈍後、50℃/sの速度で室温まで冷却したのち、100〜400℃で60minの時効処理を行った。
かくして得られた熱延焼鈍板のコイル幅方向中央部から圧延直角方向の断面を切り出し、板厚中心から上下にそれぞれ100μm、幅方向に5mmの範囲を観察し、2μm以上の粗大炭化物の存在頻度を求めた。
ついで、1回の冷間圧延により、板厚:0.30mm(圧下率:81%),0.35mm(圧下率:78%)としたのち、均熱温度:880℃、均熱時間:30sの一次再結晶焼鈍を施した。その後、MgO:95mass%、SrSO4:5mass%の焼鈍分離剤を、水スラリーとして鋼板に塗布し、二次再結晶焼鈍に供した。このようにして得られた仕上焼鈍板の表面に、リン酸塩−クロム酸塩−コロイタルシリカを重量比3:1:2で含有する塗布液を塗布し、800℃で焼き付けた。
かくして得られた製品板コイルの幅中央部の磁気特性を調査した。磁気特性は、800℃、3時間の歪取焼鈍を行った後、800 A/mで励磁したときの磁束密度B8で評価した。
得られた結果を、熱延板焼鈍後の冷却速度および2μm以上の粗大炭化物の存在頻度との関係で表2に示す。
なお、2μm以上の粗大炭化物の存在頻度については、圧延直角方向断面の板厚中心から上下100μmの範囲内で、2μm以上の粗大炭化物が50個/mm2以上存在した場合を○、それ未満の場合を×で示す。
同表より明らかなように、熱延板焼鈍後、室温まで冷却した場合であっても、その後に200〜550の温度域で時効処理を施し、圧延直角方向断面の板厚中心から上下100μmの範囲内に2μm以上の粗大炭化物を50個/mm2以上析出させた場合には、高い磁束密度を得ることができた。
本発明によれば、磁気特性に優れた方向性電磁鋼板を、工業的規模で安定して得ることが可能となり、その工業的価値は極めて大きい。
冷延前の焼鈍後に析出した炭化物の粒径およびその存在頻度が、1回強冷延・再結晶板の集合組織改善に及ぼす効果を示した図である。 (211)インバース強度と最終製品板の磁束密度B8との関係を示す図である。 550〜300℃の温度域に10sec, 30secおよび45sec滞留させた時の炭化物の析出状況を示す顕微鏡写真である。 別の試料を、550〜300℃の温度域に10sec, 30secおよび45sec滞留させた時の炭化物の析出状況を示す顕微鏡写真である。 室温まで冷却した熱延板焼鈍後の鋼板に対し、100℃,200℃,300℃でそれぞれ1時間の熱処理を施した時の炭化物の析出状況を示す顕微鏡写真である。

Claims (5)

  1. 質量%で、Cを0.01%以上 0.10%以下、Siを2.0%以上 4.5%以下含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる電磁鋼素材スラブを、熱間圧延し、熱延板焼鈍後、圧下率:80%以上の1回の冷間圧延により最終板厚としたのち、一次再結晶焼鈍を施し、ついで焼鈍分離剤を塗布してから、二次再結晶焼鈍を施す工程からなる方向性電磁鋼板の製造方法において、
    上記熱延板焼鈍後の冷却時、550〜300℃の温度域に滞留させる滞留時間を調整するか、または上記熱延板焼鈍後、室温まで冷却したのち、200℃以上550℃以下の温度域で熱処理を施す熱処理時間を調整して、上記冷間圧延前の鋼板に、該鋼板の圧延直角方向断面に見られる2μm以上の針状あるいはプレート状のカーバイドを、圧延直角方向断面の板厚中心から上下100μmの範囲内で50個/mm2以上存在させることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記550〜300℃の温度域での滞留時間が、少なくとも45秒であることを特徴とする請求項1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 前記200℃以上550℃以下の温度域での熱処理時間が、30秒以上であることを特徴とする請求項1記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 前記電磁鋼素材スラブに、さらに質量%で、Al:0.010〜0.080%、N:0.005〜0.015%、Mn:0.02〜1.0%、Se:0.001〜0.05%およびS:0.001〜0.05%のうちから選んだ1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 前記電磁鋼素材スラブに、さらに質量%で、B,Bi,Sb,Mo,Te,Sn,P,Ge,As,Nb,Cr,Ti,Cu,Pb,ZnおよびInのうちから選んだ1種または2種以上を、それぞれ0.0005〜1.0%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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