JP2018178198A - 無方向性電磁鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
・無方向性電磁鋼板にSi及びAl等を含有する。
・無方向性電磁鋼板の結晶粒径を制御する。
・無方向性電磁鋼板の板厚を薄くする。
本発明による無方向性電磁鋼板の化学組成は、次の元素を含有する。なお、無方向性電磁鋼板の化学組成における「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
炭素(C)は鋼中に固溶Cとして存在し、温間圧延時の動的ひずみ時効による集合組織を改善する。これにより、無方向性電磁鋼板の磁束密度が高まる。C含有量が0.001%未満であれば、この効果が得られない。一方、C含有量が0.005%を超えれば、鋼中に微細な炭化物が析出して磁気特性が低下する。したがって、C含有量は0.001〜0.005%である。C含有量の好ましい下限は0.0015%であり、さらに好ましくは0.002%である。C含有量の好ましい上限は0.004%であり、さらに好ましくは0.003%である。
シリコン(Si)は、鋼板の固有抵抗を高め、渦電流損を低減する。Siはさらに、ヒステリシス損を低減する。Si含有量が3.0%未満であれば、上記効果が得られない。また、Si含有量が3.0%未満であれば、仕上げ焼鈍時に相変態が生じる場合があり、本発明の効果が損なわれる場合がある。一方、Si含有量が5.0%を超えれば、後述の温間圧延での圧延性、及び、無方向性電磁鋼板の打ち抜き加工性が低下する。したがって、Si含有量は3.0〜5.0%である。Si含有量の好ましい下限は3.5%である。Si含有量の好ましい上限は4.5%であり、さらに好ましくは4.0%である。
マンガン(Mn)は、鋼の固有抵抗を高める。Mnはさらに、硫化物を粗大化して無害化する。また、Mnが粒界に偏析することで限界打ち抜き回数を増加させることができる。Mn含有量が1.0%未満であれば、これらの効果が得られない。一方、Mn含有量が3.0%を超えれば、鋼の磁束密度が低下する。さらに、焼鈍時に相変態が生じ、本発明の効果が損なわれる。したがって、Mn含有量は1.0〜3.0%である。Mn含有量のこのましい下限は1.5%であり、さらに好ましくは2.0%である。Mn含有量の好ましい上限は2.8%であり、さらに好ましくは2.5%ある。
リン(P)は不純物である。Pは鋼の加工性を低下し、冷間圧延時に鋼板に割れを発生させ得る。したがって、P含有量は0.02%以下である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。P含有量の下限は特に制限されない。脱リンのコスト及び生産性の観点から、P含有量の好ましい下限は0.01%である。
硫黄(S)は不純物である。Sは、MnSを生成して鉄損を増加する。したがって、S含有量は0.005%以下である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。S含有量の下限は特に制限されない。脱硫のコスト及び生産性の観点から、S含有量の好ましい下限は0.001%である。
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Alはさらに、窒化物を粗大化して無害化する。しかしながら、Al含有量が0.01%を超えれば、Mnの粒界偏析を抑制するため、本発明の効果が損なわれる。したがって、Al含有量は0.01%以下である。
窒素(N)はCと同様に、鋼中に固溶Nとして存在し、温間圧延時の動的ひずみ時効による集合組織を改善する。これにより、無方向性電磁鋼板の磁束密度が高まる。N含有量が0.001%未満であれば、この効果が得られない。一方、N含有量が0.005%を超えれば、微細なAlNが析出して、磁気特性が低下する。したがって、N含有量は0.001〜0.005%である。N含有量の好ましい下限は0.0015%であり、さらに好ましくは0.002%である。N含有量の好ましい上限は0.004%であり、さらに好ましくは0.003%である。
本発明の無方向性電磁鋼板の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ti、V及びNbからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素を含有する場合、化学組成は式(A)を満たす。
V:0.01%以下
Nb:0.01%以下
チタン(Ti)、バナジウム(V)及びニオブ(Nb)は任意元素である。これらの元素は炭窒化物を形成して、C及びNを固定する。冷間圧延前にこれらの炭窒化物が存在すれば、固溶C、固溶Nによる動的ひずみ時効が得られない。Ti含有量が0.01%以下、V含有量が0.01%以下、Nb含有量が0.01%以下であり、さらに、Ti、V及びNbの合計含有量が式(A)を満たせば、固溶C及び固溶Nによる動的ひずみ時効が活用できる。
スズ(Sn)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Snは鋼板の集合組織を改善し、磁束密度を高める。Snはさらに、仕上げ焼鈍時の窒化を抑制し、磁気特性の低下を抑制する。一方、Sn含有量が0.2%を超えれば、鋼板の加工性を低下して、冷間圧延時に鋼板に割れを発生させ得る。したがって、Sn含有量は0.2%以下とする。Sn含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Sn含有量の好ましい上限は0.15%であり、さらに好ましくは0.1%である。
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。過剰に含有される場合、Cuは、飽和磁束密度を下げ、磁束密度B50を下げる。Cuはさらに、CuSを形成して鉄損を劣化する。Cuはさらに、Niとともに含有されると鋼板表面に内部酸化層が形成されやすく、その結果、高周波鉄損が劣化する。したがって、Cu含有量は0.1%以下である。Cu含有量の下限値は、特に制限はないが、鉄スクラップから混入される観点から、0.01%以上であるのが好ましい。
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Niは磁束密度B50を高め、さらに、鋼板強度を高める。しかしながら、Ni含有量が高すぎれば、原料コストが高くなる。Niはさらに、Cuとともに含有されると、鋼板表面に内部酸化層が形成されやすく、その結果、高周波鉄損が劣化する。したがって、Ni含有量は0.1%以下である。Ni含有量の下限値は、特に制限はないが、磁束密度B50及び鋼板強度の観点から、0.01%以上であるのが好ましい。
クロム(Cr)は任意元素であり、含有されなくてもよい。過剰に含有される場合、Crは飽和磁束密度を下げ、磁束密度B50を低下させる。したがって、Cr含有量は0.2%以下である。Cr含有量の下限値は特に制限はないが、鉄スクラップから混入される観点から、0.01%以上であるのが好ましい。
ボロン(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。過剰に含有される場合、Bは、飽和磁束密度を下げ、磁束密度B50を低下させる。したがって、B含有量は0.001%以下である。B含有量の下限値は、特に制限はないが、鉄スクラップから混入される観点から、0.0001%以上であるのが好ましい。
本発明の無方向性電磁鋼板の粒界における、オージェ電子分光で得られるMnの545eVにおけるピーク(粒界Mn545)の、Feの700eVにおけるピーク(粒界Fe700)に対する比(粒界Mn545/粒界Fe700)は、0.05〜0.15である。
粒界Mn545、粒内Mn545及び粒界Fe700は次の方法で測定される。無方向性電磁鋼板を圧延方向に垂直な断面で切断し、18mmL×4mmW(Lは圧延方向長さ、Wは板幅を意味する)の粗試料片を複数採取する。粗試料片に対して長さ方向中央に切り欠き加工してオージェ電子分光ピーク測定用試験片を作製する。
好ましくはさらに、本発明の無方向性電磁鋼板の板厚をt(mm)と定義したとき、無方向性電磁鋼板の集合組織は、下記(特徴I)及び(特徴II)を有する。
(I)鋼板表面からt/2深さ位置(板厚中心層)での集合組織において、{100}<012>方位の集積度I(c)が4.0以上である。
(II)鋼板の表面からt/10深さ位置(表層)での{100}<012>方位の集積度I(s)の、表面からt/2深さ位置での{100}<012>方位の集積度I(c)に対する比(I(s)/I(c))が0.8〜1.2である。
板厚中心層での{100}<012>方位の集積度I(c)が4.0以上であれば、ダレ量が低下する。集積度I(c)の好ましい上限値は4.5であり、さらに好ましくは5.0である。
{100}<012>方位の表層と板厚中心層の集積度の比は、打ち抜き加工時の打ち抜き寸法精度を改善する。I(s)/I(c)が0.8〜1.2であれば、この効果が有効に得られる。I(s)/I(c)の好ましい範囲は0.85〜1.15であり、さらに好ましくは0.9〜1.1である。
集積度I(s)、及び、集積度I(c)は次の方法で測定できる。無方向性電磁鋼板を圧延方向に垂直な断面で切断し、板厚tの粗試料片を複数採取する。粗試料片に対して化学研磨を実施して、板厚を表面からt/10減厚したI(s)測定用試験片を作製する。また、粗試験片に対して化学研磨を実施して、板厚を表面からt/2減厚したI(c)測定用試験片を作製する。
本発明において、平均結晶粒径は特に限定されないが、100μm以上とすることが好ましい。本発明鋼板においては、後述するように温間圧延を含む仕上げ圧延後の仕上げ焼鈍工程における再結晶および粒成長過程で粒界にMnを偏析させる。このため、粒成長が進展するほど粒界のMn偏析も強くなる傾向があり、平均結晶粒径を大きくすることは好ましい形態である。打ち抜き加工性の観点では一般的に、結晶粒径が大きくなると、鋼板の延性が増し、打ち抜きの破断時に引き伸ばされるような変形を伴うことになり、バリの発生や形状精度の問題を生ずる場合がある。しかしながら、本発明鋼はMn偏析のため粒界破壊が容易に発生し、粒界破壊を起点に破壊が一気に進行する。そのため、結晶粒径を粗大にしても、上述の問題が生じ難い。さらに、低鉄損化の観点でも粒径を大きくすることは好ましい。したがって、好ましい平均結晶粒径は100μm以上である。さらに好ましい平均結晶粒径は120μm以上である。好ましい平均結晶粒径は250μm以下であり、さらに好ましくは200μm以下である。
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法の一例を説明する。本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する工程(熱間圧延工程)と、少なくとも1パス目の圧延で温間圧延を実施し、2パス目以降の圧延で温間圧延又は冷間圧延を実施して、さらに、1パス目の温間圧延を特定条件で実施して薄鋼板を製造する工程(仕上げ圧延工程)と、薄鋼板に対して仕上げ焼鈍を実施して再結晶させる工程(仕上げ焼鈍工程)とを含む。以下、各工程について詳述する。
熱間圧延工程では、スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する。スラブは、上述の化学組成を有する。スラブは周知の方法で製造される。たとえば、上述の化学組成の溶湯を用いて、連続鋳造法によりスラブを製造する。上述の化学組成の溶湯を用いて、造塊法によりインゴットを製造し、インゴットを分塊圧延してスラブを製造してもよい。連続鋳造法により製造されたスラブに対して分塊圧延を実施してもよい。
熱延工程により熱延鋼板を製造した後に実施される仕上げ圧延工程と仕上げ焼鈍工程は、本発明の特徴である粒界へのMn偏析と密接に関連しており、各工程の制約条件も、粒界へのMn偏析への影響を考慮して決定される。このため、最初に、仕上げ圧延工程から仕上げ焼鈍工程において生ずるMn偏析に関する現象を説明する。なお、この現象は完全に解明されたものではなく、ここでの説明は検討結果を踏まえての想定も含めたものであることをあらかじめ断っておく。
粒界へMnを十分に濃化させるには、MnとCを相当量含有する鋼材を、T1(℃)以上の温度域で圧延する必要がある。これは圧延中の特殊な変形挙動による、加工組織での高転位密度状態が原因になっていると考えられる。なお、T1は以下の式で表わされる。
上述のようにT1〜600℃の温度域ではMn及びCはMn−Cダイポールの形で転位と強い相互作用を持つ。再結晶の過程においては、特に仕上げ焼鈍の焼鈍初期において、加工組織中の高い転位密度を駆動力とする再結晶粒界がMn−Cダイポールとの相互作用の下で移動するため、粒界はMn−Cダイポールを掃き溜めるような形で移動し、粒界にMnが濃化する。より高温となる焼鈍後期においては、MnとCの相互作用は弱くなると考えられる。しかしながら、一旦粒界に濃化したMnは、粒成長にともなう粒界移動においては、偏析したまま粒界とともに移動する。そのため、最終的な組織の粒界には、十分な量のMnを濃化させることが可能となる。
仕上げ圧延工程では、熱延工程により製造された熱延鋼板に対して、少なくとも最初の1パス目の圧延を温間圧延で実施する。そして、2パス目以降の圧延を温間圧延又は冷間圧延で実施して、薄鋼板を製造する。ここで、「パス」とは、一対のワークロールを有する1つの圧延スタンドを鋼板が通過して圧下を受けることを意味する。
仕上げ圧延工程での累積圧下率は75〜95%である。なお、累積圧下率(%)は次のとおり定義される。
累積圧下率=(1−仕上げ圧延工程の最終パス後の薄鋼板の板厚/1パス目の温間圧延前の熱延鋼板の板厚)×100
上述のとおり、熱延鋼板に対する1パス目の圧延を、温間圧延で行う。1パス目の温間圧延における条件は次のとおりである。
1パス目の温間圧延ではさらに、式(1)〜式(3)を満たす条件で圧延を実施する。
初期圧延温度Tは、前述のように粒界へのMn偏析程度を制御する重要な因子である。
初期ひずみ速度εドット(イプシロンドット)は、初期圧延温度Tと関連して、動的ひずみ時効の発生に影響を及ぼす因子である。初期ひずみ速度εドットはさらに、結晶のすべり変形による不均一変形組織の発生頻度を制御する因子である。初期ひずみ速度εドットが高くなれば、変形に対し転位の移動速度が追随できず、変形帯のような不均一変形が発生する。このような不均一変形は、その後の再結晶焼鈍における粒界へのMn偏析には好ましいものではない。
初期圧下率rは、初期圧延温度Tと関連して、ひずみの蓄積に影響を及ぼす因子である。初期圧下率rはまた、結晶のすべり変形による不均一変形組織の発生頻度を制御する因子である。
仕上げ圧延工程における1パス目の圧延を実施する圧延スタンドのワークロールの直径は、1000mm以下であり、好ましくは、400〜1000mmである。ワークロール直径が1000mm以下であれば、粒界Mn545/粒界Fe700が0.05以上となり、十分な限界打ち抜き回数が得られる。ワークロール直径が400mm以上であればさらに、集積度I(c)が4.0以上となり、I(s)/I(c)が0.80〜1.20の範囲内となり、ダレ量が抑制され、打ち抜き加工精度も高まる。さらに、粒界Mn545/粒内Mn545が高くなるため、限界打ち抜き回数も増加する。
ひずみを効果的に蓄積させる観点では,1パス目圧延から温間圧延を実施することが好ましい。2パス目以降の圧延(初期圧延スタンドの下流側に配置された圧延スタンドでの圧延)では板厚が薄くなっているため、十分な圧延形状比(ロール接触弧長さ/平均板厚)をとることが難しい。このため、本発明にとって必要な変形状態としにくく、発明効果の大幅な向上は期待できない。また圧延工程の後段で温間圧延しても、Mn偏析効果は飽和し、限界打ち抜き回数が減少する場合もある。
圧延の1パス目を含む前段での温間圧延のために、熱延鋼板を加熱する。温間圧延工程における加熱方法は、電磁誘導加熱、通電加熱、ヒーター加熱、雰囲気ガス中での加熱等を含め、公知の加熱方法を適用できる。
仕上げ圧延工程を実施して製造された冷延鋼板に対して、仕上げ焼鈍を実施して、無方向性電磁鋼板を製造する。仕上げ焼鈍では、最終の板厚に仕上げられた冷延鋼板を焼鈍して再結晶させる。
上述の製造方法において、仕上げ焼鈍工程後にコーティング工程を実施してもよい。コーティング工程では、仕上げ焼鈍後の無方向性電磁鋼板の表面に、絶縁コーティングを施す。絶縁コーティングの種類は特に限定されない。絶縁コーティングは有機成分であってもよいし、無機成分であってもよい、絶縁コーティングは、有機成分と無機成分とを含有してもよい。無機成分はたとえば、重クロム酸−ホウ酸系、リン酸系、シリカ系等である。有機成分はたとえば、一般的なアクリル系、アクリルスチレン系、アクリルシリコン系、シリコン系、ポリエステル系、エポキシ系、フッ素系の樹脂である。塗装性を考慮した場合、好ましい樹脂は、エマルジョンタイプの樹脂である。加熱及び/又は加圧することにより接着能を発揮する絶縁コーティングを施してもよい。接着能を有する絶縁コーティングはたとえば、アクリル系、フエノール系、エポキシ系、メラミン系の樹脂である。
各試験番号の無方向性電磁鋼板に対して、55mm角磁気測定試験により、5000A/mにおける磁束密度B50を測定した。磁束密度B50は、L方向(圧延方向)及びC方向(圧延方向に直交する方向)の平均値として求めた。
製造された無方向性電磁鋼板に対して、55mm×55mmの正方形状の磁気測定試料を打ち抜く打ち抜き加工試験を実施した。打ち抜き方向と平行であって、打ち抜き刃と垂直な断面となるように、無方向性電磁鋼板を切断した。そして、切断面のうち、無方向性電磁鋼板の端部を樹脂に埋め込み、研磨した。研磨後の無方向性電磁鋼板の端部を光学顕微鏡で撮影して写真画像を生成した。写真画像を用いて、打ち抜き加工により鋼板端部に形成されたかえり高さを測定した。図6は、打ち抜き試験における、鋼板端部の写真画像の模式図である。図6を参照して、鋼板端部100には、打ち抜き方向PUから順に、ダレ部101、せん断面102、破断面103、かえり104が形成されている。
打ち抜き試験を次の方法で実施した。55mm角金型を用いて、打ち抜き加工を実施して、図7(A)及び図7(B)に示す、55mm×55mmの試験片を作製した。クリアランスは板厚の8%とした。
製造された無方向性電磁鋼板に対して、55mm×55mmの正方形状の磁気測定試料を打ち抜く打ち抜き加工試験を実施した。打ち抜き方向と平行であって、打ち抜き刃と垂直な断面となるように、無方向性電磁鋼板を切断した。そして、切断面のうち、無方向性電磁鋼板の端部を樹脂に埋め込み、研磨した。研磨後の無方向性電磁鋼板の端部を光学顕微鏡で撮影して写真画像を生成した。写真画像を用いて、打ち抜き加工により鋼板端部に形成されたダレ量D101(図6参照)を求めた。具体的には、打ち抜き加工後の任意の5箇所の鋼板端部において、ダレ部101のダレ量D101を測定する。測定されたダレ量D101の平均を、ダレ量と定義した。
評価結果を表2に示す。表2を参照して、試験番号2〜12、16、17、27、32、37、39、40、41、43〜46では、化学組成が適切であり、製造条件も適切であった。そのため、オージェピーク比粒界Mn545/粒界Fe700が0.05〜0.15の間にあった。その結果、限界打ち抜き回数も43×104回以上となり、良好であった。
結果を表3に示す、試験番号1〜2では、化学組成が適切であり、製造条件も適切であった。そのため、集積度I(c)が4.0以上であり、I(s)/I(c)が0.8〜1.2の間にあった。また、Mn545/Fe700は0.05〜0.15の間にあった。その結果、ダレ量は15μm以下と少なく、打ち抜き寸法精度は10μm以下と少なかった。さらに、限界打ち抜き回数にも優れていた。
Claims (9)
- 無方向性電磁鋼板であって、
化学組成が、
質量%で、
C:0.001〜0.005%、
Si:3.0〜5.0%、
Mn:1.0〜3.0%、
P:0.02%以下、
S:0.005%以下、
Al:0.01%以下、及び、
N:0.001〜0.005%、
を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
前記無方向性電磁鋼板の粒界における、オージェ電子分光で得られるMnの545eVにおけるピークMn545の、Feの700eVにおけるピークFe700に対する比が0.05〜0.15である、無方向性電磁鋼板。 - 請求項1に記載の無方向性電磁鋼板であってさらに、
前記無方向性電磁鋼板の粒界における、オージェ電子分光で得られるMnの545eVにおけるピークの、前記無方向性電磁鋼板の粒内における、オージェ電子分光で得られるMnの545eVにおけるピークに対する比が2.0〜10.0である、無方向性電磁鋼板。 - 請求項1又は請求項2に記載の無方向性電磁鋼板であってさらに、
前記無方向性電磁鋼板の板厚をtと定義したとき、無方向性電磁鋼板の表面からt/2深さ位置での{100}<012>方位の集積度I(c)が4.0以上であり、
前記無方向性電磁鋼板の表面からt/10深さ位置での{100}<012>方位の集積度I(s)の、前記集積度I(c)に対する比が0.8〜1.2である、無方向性電磁鋼板。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板であって、
前記化学組成はさらに、Feの一部に代えて、
Ti:0.01%以下、
V:0.01%以下、及び、
Nb:0.01%以下からなる群から選択された1種又は2種以上を含有し、
前記化学組成は式(A)を満たす、無方向性電磁鋼板。
- 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板であって、
前記化学組成はさらに、Feの一部に代えて、
Sn:0.2%以下、
Cu:0.1%以下、
Ni:0.1%以下、
Cr:0.2%以下、及び、
B:0.001%以下、
からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、無方向性電磁鋼板。 - 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の化学組成を有する素材に対して熱間圧延を実施して熱延鋼板を製造する熱間圧延工程と、
前記熱延鋼板に対して、少なくとも1パス目の圧延で温間圧延を実施し、2パス目以降の圧延で温間圧延又は冷間圧延を実施して、0.10〜0.50mmの板厚を有する薄鋼板を製造する仕上げ圧延工程と、
前記薄鋼板に対して仕上げ焼鈍を実施する仕上げ焼鈍工程とを備え、
前記仕上げ圧延工程では、
前記1パス目の圧延において、圧延温度をT(℃)、ひずみ速度をεドット(s-1)、圧下率をr(%)と定義したとき、式(1)〜式(3)を満たす条件で前記熱延鋼板に対して温間圧延を実施し、
前記1パス目の圧延を実施するワークロールの直径は1000mm以下とし、
前記仕上げ圧延工程での累積圧下率を75〜95%とする、無方向性電磁鋼板の製造方法。
- 請求項6に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記冷間圧延では、
3パス目以降における前記圧延温度を150℃以下とする、無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 請求項6又は請求項7に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記仕上げ圧延工程では、
各々が一対のワークロールを有し、一列に並んだ複数の圧延スタンドを含むタンデム圧延機を用い、
少なくとも前記1パス目の圧延を実施する前記圧延スタンド、又は、前記圧延スタンド及びその下流に配列された圧延スタンドにて前記温間圧延を実施し、
前記温間圧延を実施する前記圧延スタンドの下流に配列された圧延スタンドにて冷間圧延で実施する、無方向性電磁鋼板の製造方法。 - 請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
前記仕上げ焼鈍工程では、
最高到達温度を900〜1200℃とする、無方向性電磁鋼板の製造方法。
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