[第1実施形態]
(第1実施形態の概要)
アイドルモードの複数の無線端末がセル再選択によって再選択するセル及び/又は周波数を分散させるための再配分(redistribution)機能が知られている。具体的には、基地局は、再配分機能に用いる再配分パラメータをブロードキャストシグナリングによって送信する。アイドルモードの無線端末は、再配分パラメータを取得し、取得した再配分パラメータに基づいてセル再選択を行う。
このような再配分機能は、強化カバレッジ機能によって拡張されていないカバレッジ(第1カバレッジ)に居る無線端末に適用されることが想定されている。しかしながら、強化カバレッジ機能は、繰り返し送信等に起因してセルの負荷を高めるため、強化カバレッジ機能によって拡張されたカバレッジ(第2カバレッジ)に居る無線端末に対しても再配分機能を適用可能とすることが望まれる。
そこで、第1実施形態は、強化カバレッジ機能によって拡張されたカバレッジに居るアイドルモードの無線端末をセル再選択によって複数のセル及び/又は周波数に適切に分散させることを可能とするセル再選択制御を提供する。
第1実施形態に係るセル再選択制御は、移動通信システムにおける方法である。前記セル再選択制御方法は、基地局が、再配分機能に用いる再配分パラメータとして、第1カバレッジに居る無線端末に適用する第1再配分パラメータと、前記第1カバレッジの外側の第2カバレッジに居る無線端末に適用する第2再配分パラメータとをブロードキャストシグナリングによって送信するステップAと、前記第2カバレッジに居るアイドルモードの無線端末が、前記ステップAで送信された前記第2再配分パラメータを取得するステップBと、当該無線端末が、前記ステップBで取得した前記第2再配分パラメータを用いてセル再選択を行うステップCとを備える。前記再配分機能は、アイドルモードの複数の無線端末がセル再選択によって再選択するセル及び/又は周波数を分散させる機能である。前記第2カバレッジは、繰り返し送信を含む強化カバレッジ機能によって拡張されたカバレッジである。
このようなセル再選択制御方法によれば、強化カバレッジ機能によって拡張されたカバレッジ(第2カバレッジ)に居る無線端末に対しても再配分機能を適用することができる。また、第1カバレッジに居る無線端末と第2カバレッジに居る無線端末とに個別の再配分パラメータを適用することができるため、第2カバレッジに居る無線端末がセル再選択によって再選択するセル及び/又は周波数を適切に分散させることができる。
(移動通信システム)
第1実施形態に係る移動通信システムの構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る移動通信システムであるLTE(Long Term Evolution)システムの構成を示す図である。LTEシステムは、3GPP規格に基づく移動通信システムである。
LTEシステムは、無線端末(UE:User Equipment)100、無線アクセスネットワーク(E-UTRAN:Evolved-UMTS Terrestrial Radio Access Network)10、及びコアネットワーク(EPC:Evolved Packet Core)20を備える。
UE100は、移動型の通信装置である。UE100は、自身が在圏するセル(サービングセル)を管理するeNB200との無線通信を行う。
E-UTRAN10は、基地局(eNB:evolved Node-B)200を含む。eNB200は、X2インターフェイスを介して相互に接続される。eNB200は、1又は複数のセルを管理する。eNB200は、自セルとの接続を確立したUE100との無線通信を行う。eNB200は、無線リソース管理(RRM)機能、ユーザデータ(以下、単に「データ」という)のルーティング機能、モビリティ制御・スケジューリングのための測定制御機能等を有する。「セル」は、無線通信エリアの最小単位を示す用語として用いられる。「セル」は、UE100との無線通信を行う機能又はリソースを示す用語としても用いられる。1つのセルは1つのキャリア周波数に属する。
EPC20は、モビリティ管理エンティティ(MME)及びサービングゲートウェイ(S-GW)300を含む。MMEは、UE100に対する各種モビリティ制御等を行う。MMEは、NAS(Non-Access Stratum)シグナリングを用いてUE100と通信することにより、UE100が在圏するトラッキングエリア(TA)の情報を管理する。トラッキングエリアは、複数のセルからなるエリアである。S-GWは、データの転送制御を行う。MME及びS-GWは、S1インターフェイスを介してeNB200と接続される。
図2は、UE100(無線端末)の構成を示す図である。UE100は、受信部110、送信部120、及び制御部130を備える。
受信部110は、制御部130の制御下で各種の受信を行う。受信部110は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部130に出力する。
送信部120は、制御部130の制御下で各種の送信を行う。送信部120は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部130が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
制御部130は、UE100における各種の制御を行う。制御部130は、少なくとも1つのプロセッサ及びメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPU(Central Processing Unit)と、を含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。プロセッサは、後述する処理を実行する。
図3は、eNB200(基地局)の構成を示す図である。eNB200は、送信部210、受信部220、制御部230、及びバックホール通信部240を備える。
送信部210は、制御部230の制御下で各種の送信を行う。送信部210は、アンテナ及び送信機を含む。送信機は、制御部230が出力するベースバンド信号(送信信号)を無線信号に変換してアンテナから送信する。
受信部220は、制御部230の制御下で各種の受信を行う。受信部220は、アンテナ及び受信機を含む。受信機は、アンテナが受信する無線信号をベースバンド信号(受信信号)に変換して制御部230に出力する。
制御部230は、eNB200における各種の制御を行う。制御部230は、少なくとも1つのプロセッサ及びメモリを含む。メモリは、プロセッサにより実行されるプログラム、及びプロセッサによる処理に用いられる情報を記憶する。プロセッサは、ベースバンドプロセッサと、CPUと、を含んでもよい。ベースバンドプロセッサは、ベースバンド信号の変調・復調及び符号化・復号等を行う。CPUは、メモリに記憶されるプログラムを実行して各種の処理を行う。プロセッサは、後述する処理を実行する。
バックホール通信部240は、X2インターフェイスを介して隣接eNBと接続される。バックホール通信部240は、S1インターフェイスを介してMME/S-GW300と接続される。バックホール通信部240は、X2インターフェイス上で行う通信及びS1インターフェイス上で行う通信等に用いられる。
図4は、LTEシステムにおける無線インターフェイスのプロトコルスタックの構成を示す図である。図4に示すように、無線インターフェイスプロトコルは、OSI参照モデルの第1レイヤ乃至第3レイヤに区分されている。第1レイヤは物理(PHY)レイヤである。第2レイヤは、MAC(Medium Access Control)レイヤ、RLC(Radio Link Control)レイヤ、及びPDCP(Packet Data Convergence Protocol)レイヤを含む。第3レイヤは、RRC(Radio Resource Control)レイヤを含む。PHYレイヤ、MACレイヤ、RLCレイヤ、PDCPレイヤ、及びRRCレイヤは、AS(Access Stratum)レイヤを構成する。
PHYレイヤは、符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行う。UE100のPHYレイヤとeNB200のPHYレイヤとの間では、物理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
MACレイヤは、データの優先制御、ハイブリッドARQ(HARQ)による再送処理、及びランダムアクセスプロシージャ等を行う。UE100のMACレイヤとeNB200のMACレイヤとの間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。eNB200のMACレイヤはスケジューラを含む。スケジューラは、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS))及びUE100への割当リソースブロックを決定する。
RLCレイヤは、MACレイヤ及びPHYレイヤの機能を利用してデータを受信側のRLCレイヤに伝送する。UE100のRLCレイヤとeNB200のRLCレイヤとの間では、論理チャネルを介してデータ及び制御情報が伝送される。
PDCPレイヤは、ヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行う。
RRCレイヤは、制御情報を取り扱う制御プレーンでのみ定義される。UE100のRRCレイヤとeNB200のRRCレイヤとの間では、各種設定のためのRRCシグナリングが伝送される。RRCレイヤは、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル、及び物理チャネルを制御する。UE100のRRCとeNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE100はRRCコネクティッドモードである。UE100のRRCとeNB200のRRCとの間に接続(RRC接続)がない場合、UE100はRRCアイドルモードである。
RRCレイヤの上位に位置するNASレイヤは、セッション管理及びモビリティ管理等を行う。UE100のNASレイヤとMME300CのNASレイヤとの間では、NASシグナリングが伝送される。UE100は、無線インターフェイスのプロトコル以外にアプリケーションレイヤ等の機能を有する。
図5は、LTEシステムにおいて用いられる無線フレームの構成を示す図である。無線フレームは、時間軸上で10個のサブフレームで構成される。各サブフレームは、時間軸上で2個のスロットで構成される。各サブフレームの長さは1msである。各スロットの長さは0.5msである。各サブフレームは、周波数軸上で複数個のリソースブロック(RB)を含む。各サブフレームは、時間軸上で複数個のシンボルを含む。各リソースブロックは、周波数軸上で複数個のサブキャリアを含む。具体的には、12個のサブキャリア及び1つのスロットにより1つのRBが構成される。1つのシンボル及び1つのサブキャリアにより1つのリソースエレメント(RE)が構成される。UE100に割り当てられる無線リソース(時間・周波数リソース)のうち、周波数リソースはリソースブロックにより特定でき、時間リソースはサブフレーム(又はスロット)により特定できる。
下りリンクにおいて、各サブフレームの先頭数シンボルの区間は、主に下りリンク制御情報を伝送するための物理下りリンク制御チャネル(PDCCH:Physical Downlink Control Channel)として用いられる領域である。各サブフレームの残りの部分は、主に下りリンクデータを伝送するための物理下りリンク共有チャネル(PDSCH:Physical Downlink Shared Channel)として用いることができる領域である。
上りリンクにおいて、各サブフレームにおける周波数方向の両端部は、主に上りリンク制御情報を伝送するための物理上りリンク制御チャネル(PUCCH:Physical Uplink Control Channel)として用いられる領域である。各サブフレームにおける残りの部分は、主に上りリンクデータを伝送するための物理上りリンク共有チャネル(PUSCH:Physical Uplink Shared Channel)として用いることができる領域である。
(セル再選択の概要)
セル再選択動作の概要について説明する。アイドルモード(RRCアイドルモード)のUE100は、開始条件が満たされた場合に、現在のサービングセルに隣接する隣接セルの品質を測定し、選択条件を満たすセルの中からサービングセルとして用いるセルを選択する。
第1に、開始条件は、以下に示す通りである。
(A1)現在のサービングセルの周波数の優先度よりも高い優先度を有する周波数:
UE100は、高い優先度を有する周波数の品質を常に測定する。
(A2)現在のサービングセルの周波数の優先度と等しい優先度又は低い優先度を有する周波数:
UE100は、現在のサービングセルの品質が所定閾値を下回った場合に、等しい優先度又は低い優先度を有する周波数の品質を測定する。
第2に、選択条件は、以下に示す通りである。
(B1)隣接セルの周波数の優先度が現在のサービングセルの優先度よりも高い:
UE100は、所定期間(TreselectionRAT)に亘ってSqual>ThreshX,HighQの関係を満たすセル、若しくは、所定期間(TreselectionRAT)に亘ってSrxlev>ThreshX,HighPの関係を満たすセルを選択する。このようなケースにおいて、隣接セルが満たすべき基準を“S-criteria”と称することもある。
Squalは、セル選択品質レベルを表している。Squalは、Squal=Qqualmeas-(Qqualmin+Qqualminoffset)-Qoffsettempによって算出される。Qqualmeasは、隣接セルの品質レベル(RSRQ)である。Qqualminは、最小要求品質レベルである。Qqualminoffsetは、隣接セルに定常的に適用される所定オフセットである。Qoffsettempは、隣接セルに一時的に適用されるオフセットである。ThreshX,HighQは、所定閾値である。
Srxlevは、セル選択受信電力を表している。Srxlevは、Srxlev=Qrxlevmeas-(Qrxlevmin+Qrxlevminoffset)-Pcompensation-Qoffsettempによって算出される。Qrxlevmeasは、隣接セルの受信電力(RSRP)である。Qrxlevminは、最小要求受信電力である。Qrxlevminoffsetは、隣接セルに定常的に適用される所定オフセットである。Pcompensationは、アップリンクの能力に関するパラメータである。Qoffsettempは、隣接セルに一時的に適用されるオフセットである。ThreshX,HighPは、所定閾値である。
(B2)隣接セルの周波数の優先度が現在のサービングセルの優先度と同じである:
UE100は、現在のサービングセルのランキングRs及び隣接セルのランキングRnを算出する。UE100は、所定期間(TreselectionRAT)に亘ってRsよりも高いランキングRnを有するセルを対象セルとして選択する。このようなケースにおいて、隣接セルが満たすべき基準を“R-criteria”と称することもある。
Rsは、Rs=Qmeas,s+QHyst-Qoffsettempによって算出される。Rnは、Rn=Qmeas,n-Qoffset-Qoffsettempによって算出される。Qmeas,sは、現在のサービングセルの受信電力(RSRP)である。Qmeas,nは、隣接セルの受信電力(RSRP)である。QHystは、現在のサービングセルが対象セルとして再選択されやすくするためのヒステリシス値である。Qoffsettempは、現在のサービングセル及び隣接セルに一時的に適用されるオフセットである。
(B3)隣接セルの周波数の優先度が現在のサービングセルの優先度よりも低い:
UE100は、所定期間(TreselectionRAT)に亘ってSqual<ThreshServing,LowQが満たされる、若しくは、所定期間(TreselectionRAT)に亘ってSrxlev<ThreshServing,LowPが満たされるという前提下において、上述した(B1)と同様の手法によって隣接セルの中から対象セルを選択する。
但し、ThreshServing,LowQ及びThreshServing,LowPは、ThreshX,HighQ及びThreshX,HighPと同様に、所定閾値である。
対象セルの選択で用いる各種パラメータは、eNB200からブロードキャストされる情報(SIB:System Information Block)に含まれる。各種パラメータは、周波数の優先度(cellReselectionPriority)、所定期間(TreselectionRAT)、各種オフセット(Qqualminoffset、Qrxlevminoffset、Qoffsettemp、QHyst、Qoffset)、各種閾値(ThreshX,HighQ、ThreshX,HighP、ThreshServing,LowQ、ThreshServing,LowP)を含む。
(再配分機能の概要)
第1実施形態に係るLTEシステムは、再配分(redistribution)機能を有する。再配分機能は、アイドルモードの複数のUEがセル再選択によって再選択するセル及び/又は周波数を分散させる機能である。具体的には、再配分機能において、UE100は、eNB200からブロードキャストシグナリング(例えば、SIB)によって送信される再配分パラメータに基づいて再配分ターゲット(周波数又はセル)を選択する。例えば、UE100は、再配分ターゲットに対して別周波数(inter-frequency)のセル再選択を行う。
UE100は、再配分ターゲット(周波数又はセル)に再配分され、一定期間(すなわち、有効タイマ)の間、再配分された再配分ターゲットが最も高い優先度(すなわち、任意のネットワーク設定の優先度よりも高い)を有するとみなす。ネットワーク設定の優先度とは、例えば、SIBに含まれる周波数優先度(cellReselectionPriority)である。このような再配分は、ページングによってトリガされ得る。一定期間(有効タイマ)は、T360と称される。再配分がページングによってトリガされない場合、UE100は、周期的に(すなわち、T360が満了する度に)、再配分動作を行う。
再配分機能によれば、アイドルモードの複数のUE100が特定のセル又は特定の周波数に集中している状況下において、当該複数のUE100を(別の周波数の)別のセルに再配分することができる。よって、特定のセル又は特定の周波数に負荷が集中することを回避することができる。
(eMTC及びNB-IoTの概要)
eMTC及びNB-IoTの概要について説明する。第1実施形態において、MTC及びIoTサービスを対象とした新たなカテゴリのUE100が存在するシナリオを想定する。新たなカテゴリのUE100は、システム送受信帯域(LTE送受信帯域幅)の一部のみに送受信帯域幅が制限されるUE100である。新たなUEカテゴリは、例えば、カテゴリM1及びカテゴリNB(Narrow Band)-IoTと称される。カテゴリM1は、eMTC(enhanced Machine Type Communications)UEが属するカテゴリである。カテゴリNB-IoT(カテゴリNB1)は、NB-IoT UEが属するカテゴリである。カテゴリM1は、UE100(eMTC UE)の送受信帯域幅を例えば1.08MHz(すなわち、6リソースブロックの帯域幅)に制限する。カテゴリNB-IoT(カテゴリNB1)は、UE100(NB-IoT UE)の送受信帯域幅を180kHz(すなわち、1リソースブロックの帯域幅)にさらに制限する。このような狭帯域化により、eMTC UE及びNB-IoT UEに要求される低コスト化及び低消費電力化が実現可能となる。
図6は、eMTC UE及びNB-IoT UEが取り扱う周波数チャネルを示す図である。図6に示すように、LTEシステムのシステム周波数帯域の周波数帯域幅は10MHzであり得る。システム送受信帯域の帯域幅は、例えば、50リソースブロック=9MHzである。eMTC UEが対応可能な周波数チャネルの帯域幅は、6リソースブロック=1.08MHz以内である。eMTC UEが対応可能な6リソースブロック以内の周波数チャネルは、「狭帯域(NB:Narrow Band)」と称される。NB-IoT UEが対応可能な周波数チャネルの帯域幅は、1リソースブロック=180kHzである。NB-IoT UEが対応可能な1リソースブロックの周波数チャネルは、「キャリア(carrier)」と称される。
eMTC UEは、LTE送受信帯域幅内で運用される。NB-IoT UEは、LTE送受信帯域幅内で運用される形態、LTE送受信帯域幅外のガードバンドで運用される形態、及びNB-IoT専用の周波数帯域内で運用される形態をサポートする。
eMTC UE及びNB-IoT UEは、カバレッジ拡張を実現するために、繰り返し送信等を用いた強化カバレッジ(EC:Enhanced Coverage)機能をサポートする。強化カバレッジ機能は、複数のサブフレームを用いて同一信号を繰り返し送信する繰り返し送信(repetition)を含んでもよい。繰り返し送信の回数が多いほど、カバレッジを拡張することができる。強化カバレッジ機能は、送信信号の電力密度を上げる電力ブースト(power boosting)を含んでもよい。一例として、送信信号の周波数帯域幅を狭くする狭帯域送信により電力密度を上げる。送信信号の電力密度を上げるほど、カバレッジを拡張することができる。強化カバレッジ機能は、送信信号に用いるMCSを下げる低MCS(lower MCS)送信を含んでもよい。データレートが低く、誤り耐性の高いMCSを用いて送信を行うことにより、カバレッジを拡張することができる。
RRCアイドルモードのeMTC UE及びNB-IoT UEは、通常のカバレッジのための第1セル選択基準(第1S-criteria)が満たされず、強化カバレッジのための第2セル選択基準(第2S-criteria)が満たされた場合、自身が強化カバレッジに居ると判定してもよい。「強化カバレッジに居るUE」とは、セルにアクセスするために強化カバレッジ機能(強化カバレッジモード)を用いることが必要とされるUEを意味してもよい。
強化カバレッジ機能は、カバレッジを拡張する度合いが異なる複数の強化カバレッジレベルを有してもよい。eMTC UE及びNB-IoT UEは、RSRP(Reference Signal Received Power)を測定し、測定したRSRPを強化カバレッジレベルごとのRSRP閾値と比較することにより、自身の強化カバレッジレベルを決定する。強化カバレッジレベルは、少なくとも繰り返し送信における送信回数(すなわち、Repetition回数)と関連する。
強化カバレッジに居るUEは、上述したセル再選択における周波数の優先度に拘わらず、受信電力(RSRP)に基づくランキングによってセル再選択を行う。例えば、UEは、現在のサービングセルのランキングRs及び隣接セルのランキングRnを算出し、所定期間(TreselectionRAT)に亘ってRsよりも高いランキングRnを有するセルを対象セル(新たなサービングセル)として選択する。
(セル再選択制御方法)
第1実施形態に係るセル再選択制御方法について説明する。
図7は、第1実施形態に係るセル再選択制御方法の適用シーンを示す図である。
図7に示すように、eNB200が管理するセルは、第1カバレッジと、第1カバレッジの外側の第2カバレッジとを含む。第1カバレッジは、強化カバレッジ機能によって拡張されていないカバレッジ(すなわち、通常のカバレッジ)である。第2カバレッジは、強化カバレッジ機能によって拡張されたカバレッジ(すなわち、強化カバレッジ)である。第1実施形態において、第2カバレッジに居るUE100がeMTC UEである一例を説明する。但し、第2カバレッジに居るUE100は、NB-IoT UEであってもよい。
図8は、第1実施形態に係るeNB200の動作を示す図である。
図8に示すように、ステップS11において、eNB200は、再配分機能に用いる再配分パラメータとして、第1カバレッジに居るUEに適用する第1再配分パラメータをブロードキャストシグナリング(例えば、SIB)によって送信する。
第1再配分パラメータは、例えば、セルごとの確率を示すパラメータ(redistributionFactorCell)又は周波数ごとの確率を示すパラメータ(redistributionFactorFreq)を含む。第1カバレッジに居るUEは、第1再配分パラメータを取得し、第1再配分パラメータを用いてセル再選択を行う。具体的には、第1カバレッジに居るUEは、自UEの識別子(IMSI:International Mobile Subscriber Identity)とセル又は周波数ごとの確率を示すパラメータとに基づいて、再配分ターゲット(周波数又はセル)を選択する。このような動作の詳細については、例えば3GPP仕様書「TS36.304 V13.3.0 (2016-09)」の5.2.4.10章及び5.2.4.10.1章を参照されたい。eNB200は、第1再配分パラメータを、SIBタイプ3及びSIBタイプ5によって送信する。
ステップS12において、eNB200は、再配分機能に用いる再配分パラメータとして、第2カバレッジに居るUEに適用する第2再配分パラメータをブロードキャストシグナリングによって送信する。ステップS12は、ステップS11と同時に行われてもよい。
第2再配分パラメータに含まれる各パラメータの種類は、第1再配分パラメータに含まれる各パラメータの種類と同じであってもよい。第2再配分パラメータに含まれるパラメータの値は、第1再配分パラメータに含まれるパラメータの値と異なる値に設定することができる。eNB200は、第2再配分パラメータを、SIBタイプ3及びSIBタイプ5によって送信してもよい。一例として、第2再配分パラメータは、SIBタイプ3及びSIBタイプ5において、第1再配分パラメータとは異なる情報要素(IE)として設けられる。或いは、第2再配分パラメータは、SIBタイプ3及びSIBタイプ5とは異なるSIBに設けられてもよい。eNB200は、第2再配分パラメータを含むSIBの送信に、繰り返し送信を含む強化カバレッジ機能を適用する。
eNB200は、第2再配分パラメータを、強化カバレッジレベルごとに個別に送信してもよい。例えば、図9に示すように、第2再配分パラメータを含むSIBにおいて、強化カバレッジレベルごとの第2再配分パラメータのリストが設けられてもよい。図9に示す例において、強化カバレッジレベル#0~#3に第2再配分パラメータ#0~#3がそれぞれ対応付けられている。なお、強化カバレッジレベルが高いほど、繰り返し送信の回数が多くなり、カバレッジを拡張する度合いが大きくなる。よって、強化カバレッジレベルが高いほど、セル(eNB200)の負荷が高くなる。よって、強化カバレッジレベルごとに個別の第2再配分パラメータを規定することによって、セル(eNB200)の負荷分散をきめ細かく行うことが可能となる。
図10は、第1実施形態に係る第2カバレッジに居るUE100の動作を示す図である。
図10に示すように、ステップS21において、UE100は、第2再配分パラメータを受信していない状態において、eNB200が指定する優先度に拘わらず、受信電力(RSRP)に基づくランキングによってセル再選択を行う。例えば、UEは、現在のサービングセルのランキングRs及び隣接セルのランキングRnを算出し、所定期間(TreselectionRAT)に亘ってRsよりも高いランキングRnを有するセルを対象セル(新たなサービングセル)として選択する。
ステップS22において、UE100は、第2再配分パラメータを含むSIBを受信し、SIBに含まれる第2再配分パラメータを取得する。第2再配分パラメータが強化カバレッジレベルごとに個別に送信される場合、UE100は、当該UE100に適用される強化カバレッジレベルに対応する第2再配分パラメータを取得してもよい。例えば、図9に示すリストがSIBに含まれる場合において、UE100が強化カバレッジレベル#2の強化カバレッジ(第2カバレッジ)に居ると仮定する。この場合、UE100は、図9に示すリストから、強化カバレッジレベル#2に対応する第2再配分パラメータ#2を取得する。
ステップS23Aにおいて、UE100は、ランキングに代えて、第2再配分パラメータと当該UE100の識別子とに基づいてセル再選択を行う。具体的には、ステップS21のランキングに基づくセル再選択に代えて、第1カバレッジに居るUEと同様な方法によってセル再選択を行う。例えば、UE100は、自UEの識別子(IMSI)とセル又は周波数ごとの確率を示すパラメータとに基づいて、再配分ターゲット(周波数又はセル)を選択する。再配分ターゲットとして現在のサービングセル(又は現在のサービング周波数)が選択された場合、UE100は、現在のサービングセル(又は現在のサービング周波数)を維持してもよい。再配分ターゲットとして現在のサービングセル(又は現在のサービング周波数)とは異なるセル(又は周波数)が選択された場合、UE100は、再配分ターゲットに再配分される。再配分ターゲットに再配分された場合、UE100は、一定期間(すなわち、有効タイマ)の間、再配分された再配分ターゲットが最も高い優先度(すなわち、任意のネットワーク設定の優先度よりも高い)を有するとみなす。
このような再配分は、ページングによってトリガされ得る。一定期間(有効タイマ)に相当するT360は、第2再配分パラメータに含まれてもよい。再配分がページングによってトリガされない場合、UE100は、周期的に(T360が満了する度に)再配分動作を行う。
UE100は、第2再配分パラメータがブロードキャストされている間は、第2再配分パラメータをセル再選択に適用すると判断してもよい。再配分がページングによってトリガされる場合、UE100は、第2再配分パラメータを取得した後、再配分がページングによってトリガされた際に第2再配分パラメータをセル再選択に適用してもよい。再配分がページングによってトリガされない場合、UE100は、一定期間(有効タイマ)に相当するT360が動作中である間は第2再配分パラメータをセル再選択に適用すると判断してもよい。なお、再配分がページングによってトリガされるか否かを示す情報は第2再配分パラメータに含まれてもよい。
このように、第1実施形態によれば、強化カバレッジ機能によって拡張されたカバレッジ(第2カバレッジ)に居るUE100に対しても再配分機能を適用することができる。また、第1カバレッジに居るUEと第2カバレッジに居るUE100とに個別の再配分パラメータを適用することができるため、第2カバレッジに居るUE100がセル再選択によって再選択するセル及び/又は周波数を適切に分散させることができる。
第1実施形態において、第2再配分パラメータは、少なくとも同一周波数内(intra-frequency)におけるセル再選択に適用されてもよい。なお、一般的な再配分機能において、再配分パラメータは、異周波数間(inter-frequency)におけるセル再選択にのみ適用されることに留意すべきである。強化カバレッジ機能によって拡張されたカバレッジ(第2カバレッジ)に居るUE100は、移動しないUEであることが想定され、異周波数の隣接セルを検出することができず、同一周波数の隣接セルのみを検出可能であることがあり得る。よって、第2再配分パラメータを同一周波数内におけるセル再選択に適用することによって、第2再配分パラメータを用いて同一周波数の隣接セルへのセル再選択を可能とすることができる。かかる第2再配分パラメータは、同一周波数内用の再配分パラメータとして、異周波数間用の再配分パラメータとは別に送受信されてもよい。かかる第2再配分パラメータは、同一周波数内のセル固有のパラメータとして送受信されてもよい。
(第1実施形態の第1変更例)
第1実施形態の第1変更例について説明する。上述した第1実施形態において、第2カバレッジに居るUE100は、第2再配分パラメータを取得した後、ランキングに代えて、第2再配分パラメータと当該UE100の識別子とに基づいてセル再選択を行っていた。これに対し、第1実施形態の第1変更例において、第2カバレッジに居るUE100は、第2再配分パラメータを取得した後、ランキングに所定のオフセット値を適用することによってセル再選択を行う。
第1実施形態の第1変更例において、eNB200は、ランキングに適用されるオフセット値を第2再配分パラメータに含めてもよい。eNB200は、オフセット値を含む第2再配分パラメータを強化カバレッジレベルごとに個別に送信してもよい(図9参照)。オフセット値は、特定のセル又は特定の周波数に対応する受信電力(すなわち、ランキング)を高くするように調整する正のオフセット値であってもよい。オフセット値は、特定のセル又は特定の周波数に対応する受信電力(すなわち、ランキング)を低くするように調整する負のオフセット値であってもよい。
オフセット値は、無限大の値であってもよい。正の無限大の値である場合、当該オフセット値に対応する特定のセル又は特定の周波数が最高優先度に設定され、当該特定のセル又は当該特定の周波数が必然的に再配分ターゲットとして選択される。或いは、オフセット値は、有限の値(例えば、5dB)であってもよい。正の有限の値である場合、当該オフセット値に対応する特定のセル又は特定の周波数が必ずしも最高優先度に設定されず、当該特定のセル又は特定の周波数が最高優先度に設定され易くなる。
オフセット値は、第2再配分パラメータに含まれていなくてもよい。オフセット値は、仕様で定められた値がUE100に予め設定(preconfigure)されていてもよい。以下においては、オフセット値が第2再配分パラメータに含まれている一例を説明する。
図11は、第1実施形態の第1変更例に係る第2カバレッジに居るUE100の動作を示す図である。
図11に示すように、ステップS21は、上述した第1実施形態と同様である。
ステップS22において、UE100は、第2再配分パラメータを含むSIBを受信し、SIBに含まれる第2再配分パラメータを取得する。第2再配分パラメータは、セルごとのオフセット値又は周波数ごとのオフセット値を含んでもよい。第2再配分パラメータは、特定のセルの識別子とオフセット値との組み合わせ、又は特定の周波数の識別力とオフセット値との組み合わせを含んでもよい。第2再配分パラメータが強化カバレッジレベルごとに個別に送信される場合、UE100は、当該UE100に適用される強化カバレッジレベルに対応する第2再配分パラメータを取得してもよい。
ステップS23Bにおいて、UE100は、ランキングに所定のオフセット値を適用することによってセル再選択を行う。例えば、UEは、現在のサービングセルのランキングRs及び隣接セルのランキングRnを算出し、ランキングにオフセット値を適用し、所定期間(TreselectionRAT)に亘って、オフセット付きのランキングが最も高いセルを対象セル(新たなサービングセル)として選択する。
UE100は、第2再配分パラメータがブロードキャストされている間は、第2再配分パラメータをセル再選択に適用すると判断してもよい。再配分がページングによってトリガされる場合、UE100は、第2再配分パラメータを取得した後、再配分がページングによってトリガされた際に第2再配分パラメータをセル再選択に適用してもよい。なお、再配分がページングによってトリガされるか否かを示す情報は第2再配分パラメータに含まれてもよい。再配分がページングによってトリガされない場合、UE100は、一定期間(有効タイマ)に相当するT360が動作中である間は第2再配分パラメータをセル再選択に適用すると判断してもよい。
(第1実施形態の第2変更例)
上述した第1実施形態において、同一周波数内(イントラ周波数)用の再配分パラメータが、異周波数間(インター周波数)用の再配分パラメータとは別に送受信される一例について説明した。第1実施形態の第2変更例は、イントラ周波数再配分パラメータ及びインター周波数再配分パラメータ並びにそれらを用いた再配分手順の詳細に関するものである。
第1実施形態の第2変更例において、第1周波数に属するセルを管理するeNB200は、アイドルモードにおいて当該セルをサービングセルとして選択しているUE100に対して、第1周波数に属する他セルにUE100を再配分するためのイントラ周波数再配分パラメータと、第1周波数とは異なる第2周波数にUE100を再配分するためのインター周波数再配分パラメータとを送信する。UE100は、イントラ周波数再配分パラメータ及びインター周波数再配分パラメータを受信し、イントラ周波数再配分パラメータ及びインター周波数再配分パラメータの少なくとも一方を用いて、セル再選択の最高優先度を付与する周波数又はセルである再配分ターゲットを選択する。
上述したように、現状の3GPP仕様は、インター周波数再配分パラメータをサポートしているが、イントラ周波数再配分パラメータをサポートしていない。強化カバレッジ機能によって拡張されたカバレッジ(第2カバレッジ)に居るUE100は、移動しないUEであることが想定され、異周波数の隣接セルを検出することができず、同一周波数の隣接セルのみを検出可能であることがあり得る。よって、イントラ周波数再配分パラメータを導入することによって、同一周波数の隣接セルへのセル再選択を可能とすることができる。
しかしながら、UE100が同一周波数の隣接セルへのセル再選択を行う場合、元のサービングセルがUE100にとって最適なセル(Best Cell)であり、再選択された隣接セルは最適なセルではない場合がある。かかる状況下において、UE100が、再選択された隣接セルにおいてコネクティッドモードに遷移し、再選択された隣接セルへの上りリンク送信を行うシナリオを想定する。或いは、現在3GPPにおいて検討されているアーリーデータ伝送を用いる場合、UE100は、再選択された隣接セルに対して、ランダムアクセスプロシージャ中に上りリンクデータを送信し、コネクティッドモードに遷移せずにランダムアクセスプロシージャを終了し得る。
かかるシナリオにおいて、再選択された隣接セルへの上りリンク送信は、当該隣接セルと同じ周波数に属する元のサービングセルに対して強い上りリンク干渉を与える。具体的には、元のサービングセルと再選択された隣接セルとが同じ周波数に属するため、周波数干渉が生じる。よって、イントラ周波数再配分パラメータを用いた再配分手順は、低優先度で実行されることが望ましい。
そこで、第1実施形態の第2変更例において、UE100は、イントラ周波数再配分パラメータよりもインター周波数再配分パラメータを優先的に用いて再配分ターゲットを選択する。すなわち、イントラ周波数再配分パラメータを用いた再配分手順を低優先度で実行することにより、上述したような干渉の発生を抑制することができる。
例えば、イントラ周波数再配分パラメータ及びインター周波数再配分パラメータの両方が設定されたUE100は、次の動作を行う。なお、「イントラ周波数再配分パラメータ及びインター周波数再配分パラメータの両方が設定された」状態とは、UE100がイントラ周波数再配分パラメータ及びインター周波数再配分パラメータの両方を受信した状態を意味してもよい。まず、UE100は、インター周波数再配分パラメータを用いて再配分ターゲットを選択するインター周波数再配分手順を実行する。UE100は、インター周波数再配分手順が失敗に終わった場合に限り、イントラ周波数再配分パラメータを用いて再配分ターゲットを選択するイントラ周波数再配分手順を実行してもよい。これにより、UE100は、インター周波数再配分手順が成功し、インター周波数再配分パラメータを用いて再配分ターゲットを選択した場合には、イントラ周波数再配分手順を実行しない。すなわち、UE100は、別周波数において適切なセルが発見されない場合に限り、同一周波数内のセルを探索する。
UE100は、ネットワークからのページングによる再配分指示がなされた場合において、イントラ周波数再配分手順及びインター周波数再配分手順の両方がトリガされた場合に、イントラ周波数再配分手順を実行可能としてもよい。UE100は、インター周波数再配分プロシージャがページングによりトリガされ、かつ、イントラ周波数再配分手順がページングによりトリガされない場合には、イントラ周波数再配分手順を実行しない。
UE100は、イントラ周波数再配分手順及びインター周波数再配分手順の両方を実行する旨がSIBによって報知されている場合に、イントラ周波数再配分手順を実行可能としてもよい。すなわち、UE100は、イントラ周波数再配分手順及びインター周波数再配分手順の両方を実行する旨がSIBによって報知されていない場合には、イントラ周波数再配分手順を実行しない。
第1実施形態の第2変更例において、eNB200は、イントラ周波数再配分パラメータを用いて再配分ターゲットを選択することが許可されている旨の通知をUE100に送信してもよい。かかる通知は、SIB(例えば、SIBタイプ3)によってブロードキャストされてもよい。UE100は、かかる通知を受信した場合に限り、イントラ周波数再配分パラメータを用いた再配分ターゲットの選択を有効化してもよい。UE100は、かかる通知を受信しない場合には、イントラ周波数再配分手順を実行せずに、インター周波数再配分手順のみを実行する。
第1実施形態の第2変更例において、UE100は、繰り返し送信を含む強化カバレッジ機能によって拡張されたカバレッジに位置していてもよい。イントラ周波数再配分パラメータは、強化カバレッジ機能によって拡張されたカバレッジに位置するUE100にのみ適用されるとしてもよい。かかる場合、イントラ周波数再配分パラメータは、強化カバレッジ機能によって拡張されていない通常のカバレッジに位置するUE100には適用されない。
次に、インター周波数再配分パラメータ及びそれを用いた再配分手順(インター周波数再配分手順)の詳細について説明する。上述したように、インター周波数再配分手順については、例えば3GPP仕様書「TS36.304 V13.3.0 (2016-09)」の5.2.4.10章の「E-UTRAN Inter-frequency Redistribution procedure」及び5.2.4.10.1章の「Redistribution target selection」に規定されている。
eNB200は、再配分パラメータをSIBタイプ3及びSIBタイプ5によって送信する。再配分パラメータのうちインター周波数再配分パラメータは、SIBタイプ5に含まれるRedistributionInterFreqInfoに相当する。RedistributionInterFreqInfoは、隣接周波数リスト(InterFreqCarrierFreqList)中の隣接周波数ごとに規定される。なお、SIBタイプ5は、インター周波数セル再選択に関する情報を含むSIBである。
図12は、インター周波数再配分パラメータ(RedistributionInterFreqInfo)を示す図である。図12に示す各情報要素において「-r13」は3GPP仕様リリース13において導入されたものであることを意味し、以下においてその表記を省略する。
図12に示すように、RedistributionInterFreqInfoは、隣接周波数リスト(InterFreqCarrierFreqList)中の隣接周波数ごとに提供される。RedistributionInterFreqInfoは、その隣接周波数が再配分ターゲットとして選択される確率を定めるパラメータ(redistributionFactorFreq)を含む。或いは、RedistributionInterFreqInfoは、その隣接周波数におけるセルのリスト(redistributionNeighCellList)を含み、セルごとに再配分ターゲットとして選択される確率を定めるパラメータ(redistributionFactorCell)を含んでもよい。セルのリスト(redistributionNeighCellList)は、セルごとの情報要素(RedistributionNeighCell)を含む。セルごとの情報要素(RedistributionNeighCell)は、対応するセルの物理セル識別子(PhysCellId)及び確率を定めるパラメータ(redistributionFactorCell)を含む。
UE100は、かかるインター周波数再配分パラメータ(RedistributionInterFreqInfo)を用いて、TS36.304の5.2.4.10章に規定された再配分手順(インター周波数再配分手順)を次のように実行する。
UE100が再配分の能力を有しており、かつ、redistributionServingInfoがSIBタイプ3に含まれ、redistributionInterFreqInfoがSIBタイプ5に含まれており、UE100に専用の優先度が設定されていない場合であって:
-T360が稼働中ではなく、RedistrOnPagingOnlyがSIBタイプ3に存在しない場合;又は
-T360が満了し、redistrOnPagingOnlyがSIBタイプ3に存在しない場合;又は
-ページングメッセージが受信され、それにredistributionIndicationが含まれている場合、UE100は、TS36.304の5.2.4.2章に規定された周波数間測定(インター周波数測定)を行う。
なお、RedistrOnPagingOnlyは、再配分プロシージャがページングによってのみトリガされることを示し、SIBタイプ3の情報要素である。redistributionIndicationは、再配分プロシージャをトリガすることを示し、ページングメッセージの情報要素である。
UE100は、周波数間測定(インター周波数測定)によって測定結果が利用可能になると、TS36.304の5.2.4.10.1章で指定された再配分ターゲット選択を実行し、かつ、T360を起動する。T360は、SIBタイプ3の情報要素である。
UE100は、次の場合に、T360を停止し、再配分ターゲットとなる周波数又はセルを考慮しない。
-UE100がRRC_CONNECTED状態に入る;又は
-T360が満了した;又は
-T360の稼動中にページングメッセージが受信され、それにredistributionIndicationが含まれている:又は
-UE100が再配分ターゲットに属さないセルを再選択する。
次に、TS36.304の5.2.4.10.1章で指定された再配分ターゲット選択は次のようにして実行される。
UE100は、1又は複数の再配分ターゲットのソート済みリストをコンパイルし、各候補エントリ[j]に対して有効なredistrFactor[j]をコンパイルする。エントリは、次のようにインデックス0から順に増加するインデックス順に追加される。
サービング周波数について(再配分が設定されるときはいつでもSIBタイプ3にredistributionFactorServingが含まれる):
-redistributionFactorCellが含まれていればサービングセル;
-そうでなければサービング周波数;
-どちらの場合も、redistrFactor[0]はredistributionFactorServingに設定される。
InterFreqCarrierFreqList内の各エントリとそれに続くInterFreqCarrierFreqListExtの各エントリについて:
-redistributionNeighCellListが設定されていて、このセルが含まれている場合、TS36.304の5.2.4.6章に従って、この周波数で最良のセルとしてランク付けされたセル;
-そうでなければ、redistributionFactorFreqが設定され、かつ、周波数上の少なくとも1つのセルがTS36.304の5.2.3.2章で定義されたセル選択基準Sを満たしている場合、関連する周波数;
-セルが含まれる場合、redistrFactor[j]は対応するredistributionFactorCellに設定される。周波数が含まれる場合、redistrFactor[j]は対応するredistributionFactorFreqに設定される。
UE100は、次のように再配分ターゲットを選択する。
下記の数1を満たす場合、UE100は再配分ターゲットとしてredistrFactor[0]に対応する周波数又はセルを選択する。
下記の数2を満たす場合、UE100は再配分ターゲットとしてredistrFactor[i]に対応する周波数又はセルを選択する。
ここで、ueIDは、下記の数3によりUE100のIMSIに基づいて定められる。
なお、サービング周波数又はセル以外に、再配分候補がない場合、redistrRange[0]=1となる。サービング周波数又はセル以外に再配分候補がある場合、E-UTRAN周波数又はセルのredistrRange[i]は、下記の数4により定められる。
ここで、maxCandidatesは、有効なredistrFactor[j]を持つ周波数/セルの総数である。
かかるインター周波数再配分手順において、インター周波数再配分手順が失敗に終わった場合とは、サービング周波数又はサービングセル以外に再配分候補(すなわち、セル選択基準Sを満たしている隣接セル)が存在しない場合を意味してもよい。
次に、イントラ周波数再配分パラメータ及びそれを用いた再配分手順(イントラ周波数再配分手順)の一例について説明する。イントラ周波数再配分パラメータは、例えばSIBタイプ4に含まれる。SIBタイプ4は、イントラ周波数セル再選択に関する情報を含むSIBである。なお、イントラ周波数再配分手順において、SIBタイプ3に含まれる再配分パラメータをインター周波数再配分手順と共通化してもよいし、SIBタイプ3に含まれる再配分パラメータに対応する新たな再配分パラメータをイントラ周波数再配分手順向けにSIBタイプ3(又は他のタイプのSIB)に設けてもよい。
SIBタイプ4は、イントラ周波数におけるセルのリスト(intraFreqNeighCellList)を含む。イントラ周波数再配分パラメータは、このリスト(intraFreqNeighCellList)中のセルごとの情報要素(RedistributionNeighCell)として、再配分ターゲットとして選択される確率を定めるパラメータ(redistributionFactorCell)を含む。具体的には、セルごとの情報要素(RedistributionNeighCell)は、対応するセルの物理セル識別子(PhysCellId)及び確率を定めるパラメータ(redistributionFactorCell)を含む。
イントラ周波数再配分手順は、TS36.304の5.2.4.10.1章で指定された再配分ターゲット選択において、周波数の選択に関する動作を除去し、セルの選択に関する動作を流用したものである。すなわち、redistrFactor[0]にはサービングセルが設定され、redistrFactor[j]には対応するredistributionFactorCellが設定される。
例えば、イントラ周波数再配分手順において、TS36.304の5.2.4.10.1章で指定された再配分ターゲット選択が次のように変更される。
UE100は、1又は複数の再配分ターゲットのソート済みリストをコンパイルし、各候補エントリ[j]に対して有効なredistrFactor[j]をコンパイルする。エントリは、次のようにインデックス0から順に増加するインデックス順に追加される。サービング周波数についてredistrFactor[0]がredistributionFactorServingに設定される。intraFreqNeighCellList内の各エントリについて、redistrFactor[j]は対応するredistributionFactorCellに設定される。
UE100は、次のように再配分ターゲットを選択する。上記の数1を満たす場合、UE100は再配分ターゲットとしてredistrFactor[0]に対応するセルを選択する。上記の数2を満たす場合、UE100は再配分ターゲットとしてredistrFactor[i]に対応する周波数又はセルを選択する。なお、サービングセル以外に、再配分候補がない場合、redistrRange[0]=1となる。それ以外の場合、E-UTRANセルのredistrRange[i]は、上記の数4により定められる。
図13は、第1実施形態の第2変更例におけるUE100の動作の一例を示す図である。かかる動作の前提として、UE100はアイドルモードであり、eNB200のセルをサービングセルとして選択している。UE100は、eNB200のセルの拡張カバレッジ(第2カバレッジ)に位置する(図7参照)。
図13に示すように、ステップS31において、UE100は、インター周波数再配分パラメータ及びイントラ周波数再配分パラメータをeNB200から受信する。このとき、UE100は、同時又は異なるタイミングで、インター周波数再配分パラメータ及びイントラ周波数再配分パラメータをeNB200から受信してもよい。また、UE100は、eNB200から受信する代わりに、予め、インター周波数再配分パラメータ及びイントラ周波数再配分パラメータの両方を制御部130内のメモリに記憶しておいてもよく、その場合には、ステップS31を省略してもよい。また、UE100は、インター周波数再配分パラメータ及びイントラ周波数再配分パラメータのいずれか一方を制御部130内のメモリに記憶しておき、他方をeNB200から受信してもよい。
ステップS32において、UE100は、インター周波数再配分パラメータを用いて再配分ターゲットを選択するインター周波数再配分手順を実行する。インター周波数再配分手順が成功した場合(ステップS33:YES)、UE100は、インター周波数再配分手順において選択された再配分ターゲットを最高優先度とみなし、選択された再配分ターゲットに対応する隣接セル(すなわち、隣接周波数のセル)をUE100の新たなサービングセルとして再選択する。なお、UE100は、ステップS31の後に、インター周波数再配分パラメータ及びイントラ周波数再配分パラメータを設定した場合にのみステップS32を実行してもよい。
一方、インター周波数再配分手順が失敗に終わった場合(ステップS33:NO)、ステップS34において、UE100は、イントラ周波数再配分パラメータを用いて再配分ターゲットを選択するイントラ周波数再配分手順を実行する。UE100は、イントラ周波数再配分手順において選択された再配分ターゲットを最高優先度とみなし、選択された再配分ターゲットに対応する隣接セル(すなわち、サービング周波数のセル)をUE100の新たなサービングセルとして再選択する。なお、インター周波数再配分手順及びイントラ周波数再配分手順のいずれも失敗に終わった場合、UE100は現在のサービングセルを維持する。
図13のフローでは、インター周波数再配分手順が成功する場合にもUE100がステップS31でイントラ周波数再配分パラメータをeNB200から受信(取得)している。しかしながら、UE100は、インター周波数再配分手順が失敗に終わった場合に、イントラ周波数再配分パラメータをeNB200から受信してもよい。かかる場合、UE100は、ステップS31でイントラ周波数再配分パラメータを受信せずに、インター周波数再配分手順が失敗に終わった場合に(ステップS33:NO)、イントラ周波数再配分パラメータをeNB200から受信して、ステップS34のイントラ周波数再配分手順を実行する。
[第2実施形態]
第2実施形態について、第1実施形態との相違点を主として説明する。
(第2実施形態の概要)
上述した第1実施形態において、再配分(redistribution)機能を利用して、強化カバレッジ機能によって拡張されたカバレッジに居るアイドルモードのUE100をセル再選択によって複数のセル及び/又は周波数に適切に分散させる動作を説明した。
第2実施形態は、再配分機能を利用せずに、通常のセル再選択のプロシージャを改良することによって第1実施形態と同様な効果を得ることを可能とする実施形態である。第2実施形態は、強化カバレッジ機能によって拡張されたカバレッジに居るアイドルモードのUE100を主として対象とする。但し、第2実施形態は、通常のカバレッジに居るアイドルモードのUE100を対象としてもよい。
上述したように、強化カバレッジに居るUE100は、セル再選択における周波数の優先度に拘わらず、受信電力(RSRP)に基づくランキングによってセル再選択を行う。例えば、UEは、現在のサービングセルのランキングRs及び隣接セルのランキングRnを算出し、所定期間(TreselectionRAT)に亘ってRsよりも高いランキングRnを有するセルを対象セル(新たなサービングセル)として選択する。例えば、Rsは、Rs=Qmeas,s+QHyst-Qoffsettempによって算出される。Rnは、Rn=Qmeas,n-Qoffset-Qoffsettempによって算出される。ここで、各種オフセット値(Qoffsettemp、QHyst、Qoffset)は、eNB200からブロードキャストされるSIBに含まれるセル再選択パラメータの一部である。
このような前提下において、負荷が高い第1セルにおいてセル再選択パラメータ(以下、「第1セル再選択パラメータ」という)を変更することによって、第1セルに居るUE100に第2セル(隣接セル)へのセル再選択を行わせて、第1セルの負荷を第2セルに分散させることが考えられる。UE100は、第2セルへのセル再選択を行うと、第2セルにおいてブロードキャストされているSIBを用いてセル再選択を行う。具体的には、UE100は、第2セルから取得したセル再選択パラメータ(以下、「第2セル再選択パラメータ」という)を用いて上記のランキング動作を行い、第2セルに留まるか又は隣接セルへのセル再選択を行うかを判断する。ここで、第2セル再選択パラメータが不適切なものであると、UE100は、第1セルから第2セルへのセル再選択を行った直後に、第2セル再選択パラメータを用いて第2セルから第1セルへのセル再選択を行うことがある。このようなピンポン現象が生じると、第1セルの負荷を第2セルに分散させることができない。
負荷が高い第1セルにおいて第1セル再選択パラメータを変更する場合、第2セルも第2セル再選択パラメータを変更することによって、ピンポン現象の発生を回避することも考えられる。しかしながら、セルの負荷分散のためにセル再選択パラメータを変更する場合には、セル再選択パラメータを頻繁に(動的に)変更可能であることが必要とされる。第1セルにおいて第1セル再選択パラメータを変更する度に第2セルも第2セル再選択パラメータを変更することは非効率であり、望ましい方法ではない。
かかる問題を解決するために、第2実施形態に係るセル再選択制御方法は、第1セルをサービングセルとして選択しているUE100が、第1セルからブロードキャストされる第1セル再選択パラメータを受信するステップと、UE100が、第1セル再選択パラメータを用いて、第1セルとは異なる第2セルをサービングセルとして再選択するステップと、UE100が、第2セルをサービングセルとして再選択してから所定期間が経過するまで、第2セルからブロードキャストされる第2セル再選択パラメータを用いるセル再選択の開始を延期するステップとを備える。
このように、第1セル再選択パラメータを用いて第1セルから第2セルへのセル再選択を行ったUE100は、第2セルを再選択してから所定期間が経過するまで、第2セルからブロードキャストされる第2セル再選択パラメータを用いるセル再選択の開始を延期する。これにより、UE100が、第1セルから第2セルへのセル再選択を行った直後に、第2セル再選択パラメータを用いて第2セルから第1セルへのセル再選択を行うこと、すなわちピンポン現象を防止することができる。
セル再選択は、サービングセルに対応する第1受信電力に応じて定められる第1ランキングと隣接セルに対応する第2受信電力に応じて定められる第2ランキングとを比較することを含む。第1セル再選択パラメータ及び第2セル再選択パラメータのそれぞれは、第1受信電力に適用されるオフセット値及び/又は第2受信電力に適用されるオフセット値を含む。
第2実施形態に係るセル再選択制御方法は、UE100が、第2セルをサービングセルとして再選択してから所定期間が経過するまで、第1セル再選択パラメータをセル再選択に用いることを継続するステップをさらに備える。
第2実施形態に係るセル再選択制御方法は、UE100が、第1セルからブロードキャストされ、所定期間を指定する情報を受信するステップをさらに備える。延期するステップは、第2セルをサービングセルとして再選択してから、第1セルから指定された所定期間が経過するまで、第2セル再選択パラメータを用いるセル再選択の開始を延期するステップを含む。
第2実施形態に係るUE100は、第1セルをサービングセルとして選択している際に、第1セルからブロードキャストされる第1セル再選択パラメータを受信する受信部と、第1セル再選択パラメータを用いて、第1セルとは異なる第2セルをサービングセルとして再選択する制御部とを備える。制御部は、第2セルをサービングセルとして再選択してから所定期間が経過するまで、第2セルからブロードキャストされる第2セル再選択パラメータを用いるセル再選択の開始を延期する。
第2実施形態において、「第2セル再選択パラメータを用いるセル再選択の開始を延期する」とは、セル再選択のプロシージャ自体を実施しないこと、セル再選択のプロシージャのうち測定(特に、受信電力の測定)を実施しないこと、又は第2セル再選択パラメータを適用しないこと(測定・再選択プロシージャは開始・実行されていてもよい)ことをいう。
(第2実施形態に係る動作の一例)
第2実施形態に係る動作の一例について説明する。ここでは、セル再選択パラメータとして、隣接セルのランキングRnの算出に用いられるオフセット値であるQoffsetを例示する。ランキングRnは、“Qmeas,n-Qoffset-Qoffsettemp”によって算出される。すなわち、Qoffsetは、隣接セルに対応する受信電力Qmeas,nに適用されるオフセット値である。Qoffsetの値を変化させることによって、サービングセルのランキングに対する隣接セルのランキングを相対的に変化させることができる。例えば、Qoffsetによって、隣接セルに対応する受信電力“Qmeas,n”に正のオフセット値を付与する場合、隣接セルのランキングが相対的に高くなり、隣接セルへのセル再選択を促すことができる。
Qoffsetは、隣接セルごとに設定される。eNB200は、隣接セルの識別子であるセルIDとQoffsetとの複数のセットをSIBによってブロードキャストする。第2実施形態に係るQoffset、すなわち、隣接セルにおいても所定時間内において有効なQoffsetは、隣接セルにおいて無効になる既存のQoffsetとは別の新たな情報要素としてSIB中に設けられてもよい。Qoffsetを既存の情報要素と同じとして、隣接セルにおいても所定時間内において有効であることを示す識別子又はフラグをSIB中でQoffsetに関連付けてもよい。Qoffsetを既存の情報要素と同じとして、UE100が、所定期間を指定する情報がブロードキャストされている場合に、Qoffsetが隣接セルにおいても所定時間内において有効であると判断してもよい。
図14は、第2実施形態に係るアイドルモードのUE100の動作例を示す図である。UE100は、強化カバレッジ機能によって拡張されたカバレッジに居るUE100であってもよい。
図14に示すように、ステップS101において、UE100は、第1セル再選択パラメータ(Qoffset)を含むSIBを、現在のサービングセルである第1セルから取得する。ここでは、第1セル再選択パラメータ(Qoffset)が、隣接セルのランキングを相対的に高くするような値であると仮定する。UE100は、さらに、所定時間を指定する情報(タイマ値)を第1セルから取得してもよい。タイマ値は、第1セル再選択パラメータ(Qoffset)が含まれるSIBと同じSIBに含まれてもよいし、異なるSIBに含まれてもよい。
ステップS102において、UE100は、第1セル再選択パラメータ(Qoffset)を用いてランキング動作を行う。UE100は、現在のサービングセルのランキングRs及び隣接セルのランキングRnを算出し、所定期間(TreselectionRAT)に亘ってRsよりも高いランキングRnを有するセルを対象セル(新たなサービングセル)として選択する。例えば、Rsは、Rs=Qmeas,s+QHyst-Qoffsettempによって算出される。Rnは、Rn=Qmeas,n-Qoffset-Qoffsettempによって算出される。ここでは、ランキング動作によって、隣接セルの1つである第2セルが新たなサービングセルとして選択されたと仮定する。
ステップS103において、UE100は、第1セルから第2セルへのセル再選択を行う。UE100は、第1セルから第2セルへのセル再選択を行う場合に、第1セルから指定された所定時間に対応するタイマを起動する。タイマの起動タイミングは、第2セルへのセル再選択を行うタイミング、例えば、第2セルへのセル再選択を決定したタイミング又は第2セルへのセル再選択を完了したタイミング等であってもよい。
ステップS104において、UE100は、タイマ動作中は、第1セル再選択パラメータ(Qoffset)を用いるランキング動作を継続する。この時点では、第2セルが現在のサービングセルであるため、UE100が第1セル再選択パラメータ(Qoffset)をそのまま用いると、隣接セルである第1セルのランキングが高くなってしまう。よって、UE100は、第1セル再選択パラメータ(Qoffset)の正と負を逆転してランキング動作に用いてもよい。
UE100は、タイマ動作中は、第2セルにおいてブロードキャストされる第2セル再選択パラメータ(Qoffset)を取得しない(すなわち、無視する)。或いは、UE100は、タイマ動作中は、第2セルにおいてブロードキャストされる第2セル再選択パラメータ(Qoffset)を取得しても、第2セル再選択パラメータ(Qoffset)をランキング動作に適用せずに保持又は破棄する。
タイマが満了した場合(ステップS105:YES)、ステップS106において、UE100は、第2セル再選択パラメータ(Qoffset)を有していなければ第2セル再選択パラメータ(Qoffset)を第2セルから取得し、第2セル再選択パラメータ(Qoffset)を用いるランキング動作を開始する。
本フローは、UE100が、タイマ動作中は、第1セル再選択パラメータを用いるランキング動作を継続する一例を説明した。しかしながら、UE100は、タイマ動作中はランキング動作自体を中断し、タイマ満了後に第2セル再選択パラメータを用いるランキング動作を開始してもよい。或いは、eNB200は、タイマ動作中にのみ有効となる例外的なセル再選択パラメータを通常のセル再選択パラメータとは別にUE100に提供してもよい。この場合、UE100は、タイマ動作中は、例外的なセル再選択パラメータを用いるランキング動作を行ってもよい。
[第3実施形態]
第3実施形態について、第1及び第2実施形態との相違点を主として説明する。
(第3実施形態の概要)
第3実施形態は、セルの負荷が高い場合に、当該セルへのUE100のアクセスを規制することによって、当該セルがシャットダウンすることを回避することを可能とする実施形態である。第3実施形態は、強化カバレッジ機能によって拡張されたカバレッジに居るアイドルモードのUE100を主として対象とする。但し、第3実施形態は、通常のカバレッジに居るアイドルモードのUE100を対象としてもよい。
拡張されたカバレッジに居るアイドルモードのUE100は、例えば、eMTC UE及び/又はNB-IoT UEである。一般的に、かかるUE100は、移動せずに同じセルに居続けるため、アクセス規制が適用されると、アクセス規制が解除されるまでネットワークとの通信を行うことができない。
かかる問題を解決するために、第3実施形態に係るアクセス規制方法は、eNB200がアクセス規制を開始する前に、eNB200が、所定時間後にアクセス規制を開始することを示す予告通知をブロードキャストするステップと、UE100が、予告通知を受信するステップと、UE100が、予告通知に基づいて、所定時間内にeNB200へのアクセスを行うべきか否かを判断するステップと、eNB200が、予告通知をブロードキャストしてから所定時間が経過した後にアクセス規制を開始するステップとを備える。
このように、eNB200がアクセス規制を開始する前に予告通知をブロードキャストすることによって、UE100は、アクセス規制が開始されることを事前に把握することができるため、アクセスを行う必要があれば、アクセス規制が開始される前にeNB200へのアクセスを行うことができる。なお、予告通知に起因して、所定時間内において多数のUE100が一斉にアクセスを行うことにより輻輳が発生する可能性がある。しかしながら、予告なしにアクセス規制を行う場合と比較して、一部のUE100(特に、拡張されたカバレッジに居るeMTC UE及び/又はNB-IoT UE)だけでもデータ送受信を完了できる可能性を高めることができる。
第3実施形態に係るアクセス規制方法は、UE100に1又は複数のアクセスクラスを設定するステップと、eNB200が、所定時間内にeNB200へのアクセスを許可する特定のアクセスクラスを示すアクセスクラス情報をブロードキャストするステップと、UE100が、アクセスクラス情報を受信するステップと、UE100が、当該UE100に設定された1又は複数のアクセスクラスのいずれかが特定のアクセスクラスである場合に、当該UE100が所定時間内にeNB200へのアクセスを行うことが許可されると判断するステップとをさらに備える。これにより、アクセス規制が開始される前の所定時間内にアクセスを行うUE100の数を抑制し、輻輳が発生する可能性を低減することができる。例えば、eMTC UE及び/又はNB-IoT UEに対応するアクセスクラスをeNB200が指定してアクセスを許可するといった運用も可能である。なお、かかる方法は、「所定時間内」に限定せずに適用可能である。すなわち、上述した予告通知を前提とせずに、UE100に1又は複数のアクセスクラスを設定するステップと、eNB200が、eNB200へのアクセスを許可する特定のアクセスクラスを示すアクセスクラス情報をブロードキャストするステップと、UE100が、アクセスクラス情報を受信するステップと、UE100が、当該UE100に設定された1又は複数のアクセスクラスのいずれかが特定のアクセスクラスである場合に、当該UE100がeNB200へのアクセスを行うことが許可されると判断するステップとを、単独で実施してもよい。
第3実施形態において、アクセスクラスには、優先順位が対応付けられていてもよい。UE100は、eNB200から受信したアクセスクラス情報(特定のアクセスクラス)に対応する優先順位と、UE100に設定されたアクセスクラスに対応する優先順位とを比較する。UE100は、UE100に設定されたアクセスクラスに対応する優先順位が、eNB200から受信したアクセスクラス情報に対応する優先順位以上である場合に、所定時間内にeNB200へのアクセスを行うことが許可されると判断してもよい。例えば、アクセスクラスの優先順位が“1”から“4”まで規定されており、UE100には優先順位“2”が設定され、eNB200が優先順位“3”をブロードキャストしている場合、UE100は、優先順位“2”の方が優先順位“3”よりも高いので、アクセスを行うことが許可されると判断する。 第3実施形態に係るeNB200は、UE100からeNB200へのアクセスを規制するアクセス規制を開始する前に、所定時間後にアクセス規制を開始することを示す予告通知をブロードキャストする送信部と、予告通知をブロードキャストしてから所定時間が経過した後にアクセス規制を開始する制御部とを備える。
第3実施形態に係るUE100は、UE100からeNB200へのアクセスを規制するアクセス規制が所定時間後に開始されることを示す予告通知をeNB200から受信する受信部と、予告通知に基づいて、所定時間内にeNB200へのアクセスを行うべきか否かを判断する制御部とを備える。
(第3実施形態に係る動作の一例)
第3実施形態に係る動作の一例について説明する。図15は、第3実施形態に係る動作の一例を示す図である。UE100には、複数のアクセスクラスが設定される。UE100には、UE100の製造段階で複数のアクセスクラスが事前設定されてもよい。複数のアクセスクラスが記憶された不揮発性記憶媒体(例えば、UICC:universal integrated-circuit card)をUE100に装着することによってUE100に複数のアクセスクラスが設定されてもよい。ネットワーク(eNB200又はMME300等)がシグナリングによってUE100に複数のアクセスクラスを設定してもよい。当該アクセスクラスは、特殊用途向けのアクセスに適用するものであってもよい。特殊用途とは、例えば無人航空機などである。UE100が当該アクセスクラスを適用するか否かは、特殊用途向けの契約に基づいてもよく、特殊用途通信の能力を有するか否かに基づいてもよく、特殊用途の通信を行おうとしているか否かに基づいてもよく、特殊用途の状態(例えば飛行中)において通信を行おうとしているか否かに基づいてもよい。
図15に示すように、ステップS201において、eNB200は、例えば現時点のeNB200の負荷が高いこと又は近い将来にeNB200の負荷が高くなると予想したことに応じて、アクセス規制を行うことを決定する。eNB200は、アクセス規制が開始される前の所定時間内においてアクセスを許容するアクセスクラスを決定してもよい。
ステップS202において、eNB200は、アクセス規制を行うことを決定したことに応じて、所定時間後にアクセス規制を開始することを示す予告通知をブロードキャストする。予告通知は、所定時間の時間長(例えば、100秒)を示す時間情報を含んでもよい。或いは、所定時間に対応するタイマ値がLTEシステムの仕様において規定され、UE100に当該タイマ値が事前設定されていてもよい。eNB200は、さらに、所定時間内にeNB200へのアクセスを許可する特定のアクセスクラスを示すアクセスクラス情報をブロードキャストしてもよい。特定のアクセスクラスは、eNB200によって許可された1又は複数のアクセスクラスである。予告通知及びアクセスクラス情報は、同じSIBに含まれてもよいし、互いに異なるSIBに含まれてもよい。
ステップS203において、UE100は、eNB200からアクセスクラス情報を受信し、当該UE100に設定された1又は複数のアクセスクラスのいずれかが特定のアクセスクラスである場合に、UE100が所定時間内にeNB200へのアクセスを行うことが許可されると判断する。一方で、UE100に設定された1又は複数のアクセスクラスのいずれも特定のアクセスクラスではない場合、UE100は、UE100が所定時間内にeNB200へのアクセスを行うことが許可されていないと判断する。
所定時間内にeNB200へのアクセスを行うことが許可されている場合、ステップS204において、UE100は、eNB200から受信した予告通知に基づいて、所定時間内にeNB200へのアクセスを行うべきか否かを判断する。判断基準としては、以下の1)~3)の基準のうちいずれか1つ又は2以上の基準の組み合わせを用いることができる。
1)UE100が送信データを生成できるか否か。例えば、UE100は、アプリケーション側を制御して、データを少し前倒しで生成することによって今すぐにアクセスできるか否かを判断する。
2)送信データの許容レイテンシ。例えば、UE100は、送信データに許容されるレイテンシが小さい、例えば、即時性の高いアプリケーションに対応する送信データを生成する場合、今すぐにアクセスを行うべきと判断する。
3)事前に設定された、加入者情報に基づく許可情報がUE100に存在するか否か。許可情報には、上述したアクセスクラスが含まれてもよい。
所定時間内にeNB200へのアクセスを行うべきとUE100が判断した場合、処理がステップS205に進む。なお、ステップS203及びステップS204の順番は逆であってもよい。
ステップS205において、UE100は、eNB200へのアクセスを行う。例えば、UE100は、ネットワークへのアタッチプロシージャを行う。アタッチプロシージャは、ランダムアクセスプロシージャを伴ってもよい。
ステップS206において、UE100は、eNB200に対してデータを送信する。UE100は、eNB200からデータを受信してもよい。データの送受信が完了すると、UE100は、ネットワークからデタッチ(及びRRC接続を解放)してもよい。
ステップS207において、eNB200は、予告通知をブロードキャストしてから所定時間が経過した際にアクセス規制を開始する。アクセス規制を開始すると、eNB200は、全てのUE100のアクセスを拒否する。或いは、eNB200は、一部のアクセスクラスのUE100についてのみアクセスを拒否してもよいし、アクセスを禁止するアクセスクラスを指定する情報をブロードキャストしてもよい。
[その他の実施形態]
上述した実施形態において、移動通信システムとしてLTEシステムを例示した。しかしながら、本発明はLTEシステムに限定されない。LTEシステム以外の移動通信システム(例えば、第5世代移動通信システム)に、上述した実施形態に係る動作を適用してもよい。
UE100及びeNB200が行う各処理をコンピュータに実行させるプログラムが提供されてもよい。また、プログラムは、コンピュータ読取り可能媒体に記録されていてもよい。コンピュータ読取り可能媒体を用いれば、コンピュータにプログラムをインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能媒体は、非一過性の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROMやDVD-ROM等の記録媒体であってもよい。UE100及びeNB200が行う各処理を実行するためのプログラムを記憶するメモリ及びメモリに記憶されたプログラムを実行するプロセッサによって構成されるチップセットが提供されてもよい。
なお、日本国特許出願第2017-223366号(2017年11月21日出願)の全内容が、参照により、本願に組み込まれている。