JP7031943B2 - 顔料水分散体、及び水系インク - Google Patents
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Description
特に、インクジェット印刷方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を印刷媒体に直接吐出し、付着させて、文字や画像が記録された印刷物を得る印刷方式である。インクジェット印刷方式は、フルカラー化が容易で、かつ安価であり、被印刷物に対して非接触、という数多くの利点があるため普及が著しい。インクジェット印刷用インクとして、顔料、水系媒体及びポリマーを含有する種々のインクが提案されている。
特許文献2には、合成ゴム部材を使用するインクジェット記録装置に使用するインクジェット記録用水性液として、合成ゴム部材に含まれている金属化合物の析出を防止するためにカルボキシル基含有化合物を含有するインクジェット記録用水性液が記載されている。
本発明は、インクに配合し印刷した際に、樹脂印刷媒体への定着性及び画像濃度に優れる顔料水分散体、及び該顔料水分散体を含有する水系インクを提供することを課題とする。
なお、本明細書において、「印刷」とは、文字や画像を記録する印刷、印字を含む概念であり、「印刷物」とは、文字や画像が記録された印刷物、印字物を含む概念である。また、「水系」とは、インクに含有される媒体中で、水が最大割合を占めていることを意味する。
すなわち、本発明は、次の[1]及び[2]を提供する。
[1]顔料(A)を水不溶性ポリマー(B)で分散した顔料水分散体であって、
該ポリマー(B)が、イタコン酸(b-1)由来の構成単位及び疎水性モノマー(b-2)由来の構成単位を含み、更に酸基の少なくとも一部が中和されてなる、顔料水分散体。
[2]前記[1]に記載の顔料水分散体を、顔料換算で2質量%以上15質量%以下含有する、水系インク。
本発明の顔料水分散体は、顔料(A)を水不溶性ポリマー(B)(以下、単に「ポリマー(B)」ともいう)で分散した顔料水分散体であって、該ポリマー(B)が、イタコン酸(b-1)由来の構成単位及び疎水性モノマー(b-2)由来の構成単位を含み、更に酸基の少なくとも一部が中和されてなる。
本発明に係るポリマー(B)は、イタコン酸(b-1)由来の構成単位及び疎水性モノマー(b-2)由来の構成単位を含む。そのため、ポリマー鎖において、イタコン酸(b-1)により局所的に酸基密度の高い親水的な部分と、疎水性モノマー(b-2)により疎水的な部分が形成され、ポリマー鎖に親疎水分布の偏りが生じる。この偏りは、酸基が1つの親水性モノマーを用いた場合と比べてより顕著に発現し、親水的な部分は顔料水分散体中でポリマーの顔料分散能を高め、疎水的な部分は樹脂印刷媒体への定着性を向上させると考えられる。
特に、酸基が1つの親水性モノマーを用いた場合と比べて、イタコン酸(a-1)由来の構成単位は局所的に酸基密度の高い親水的な部分となるため、中和度が低い条件、すなわちイオン性が低い条件でも十分な分散力が得られ、その結果、顔料を水系媒体に高度に分散させることができるため、画像濃度が著しく向上すると考えられる。
顔料(A)は、無機顔料及び有機顔料のいずれであってもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
無機顔料としては、カーボンブラック、金属酸化物等が挙げられ、特に黒色インクにおいては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。
有機顔料としては、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができる。
好ましい有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、及びC.I.ピグメント・グリーンから選ばれる1種以上の各品番製品が挙げられる。
体質顔料としては、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられる。
顔料(A)は、上記の顔料を単独で又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
顔料含有ポリマー(B)粒子の形態は、例えば、ポリマー(B)中に顔料(A)が内包された(カプセル)粒子形態、ポリマー(B)中に顔料(A)が均一に分散された粒子形態、ポリマー(B)粒子表面に顔料(A)が露出された粒子形態等が挙げられ、これらの混合物であってもよい。これらの中でも、顔料の分散性の向上の観点から、ポリマー(B)が顔料(A)を含有している顔料内包状態が好ましい。
ポリマー(B)は、イタコン酸(b-1)(以下、単に「モノマー(b-1)」ともいう)由来の構成単位及び疎水性モノマー(b-2)(以下、単に「モノマー(b-2)」ともいう)由来の構成単位を含み、更に酸基の少なくとも一部が中和されてなる。ポリマー(B)は、顔料分散作用を発現する顔料分散剤と、印刷媒体への定着剤としての機能とを有する。
ここで、「水不溶性」とは、105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに飽和するまで溶解させたときに、その溶解量が10g未満であることを意味し、その溶解量は好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。ポリマー(B)の溶解量は、該ポリマー(B)の酸基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。
モノマー(b-1)は、イタコン酸である。モノマー(b-1)として、無水イタコン酸も用いることができる。
また、近年の環境保護問題において、従来の石油由来原料から植物由来原料への転換が進められている。イタコン酸は植物由来のものを用いることができるため、石油依存度を低減させることができる。
モノマー(b-2)は、定着性及び画像濃度の向上の観点から、ポリマー(B)のモノマー成分として用いられる。
本発明において「疎水性」とは、モノマーの25℃におけるイオン交換水100gへの溶解可能な量が10g未満であることをいう。疎水性モノマーの25℃におけるイオン交換水100gへの溶解量は、定着性及び画像濃度の向上の観点から、好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。
モノマー(b-2)は、その構造中に疎水性基と重合性基とを少なくとも有するものである。疎水性基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及び芳香族炭化水素基から選ばれる1種以上が挙げられ、好ましくは脂肪族炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選ばれる1種以上である。重合性基としては、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有する基であり、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ビニリデン基、及びビニレン基から選ばれる1種以上が挙げられ、好ましくはビニル基である。
芳香族基含有モノマーとしては、芳香族環と重合性基を有する化合物が挙げられる。芳香族基含有モノマーは、ヘテロ原子を含む置換基を有していてもよい、炭素数6以上22以下の芳香族基を有するビニルモノマーが好ましく、スチレン系モノマー、芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルがより好ましい。芳香族基含有モノマーの分子量は、500未満が好ましい。
スチレン系モノマーは、好ましくはスチレン、2-メチルスチレン、α-メチルスチレン及びジビニルベンゼンから選ばれる1種以上であり、より好ましくはスチレンである。
また、芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルは、好ましくはベンジル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上であり、より好ましくはベンジル(メタ)アクリレートである。
ここで、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸から選ばれる1種以上を意味する。「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートから選ばれる1種以上を意味する。
なお、本明細書において、「(イソ又はターシャリー)」及び「(イソ)」は、これらの接頭辞が存在する場合としない場合の双方を意味し、これらの接頭辞が存在しない場合には、ノルマルを示す。
他のモノマーとしては、例えば、イタコン酸及び無水イタコン酸以外の酸モノマー、ヒドロキシ基やポリアルキレングリコール鎖を含むノニオン性モノマーが挙げられる。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(n=2~30、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す。以下同じ)、ポリプロピレングリコール(n=2~30)(メタ)アクリレート、等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコール(n=1~30)(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;フェノキシ(エチレングリコール-プロピレングリコール共重合)(n=1~30、その中のエチレングリコール:n=1~29)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
モノマー(b-1)の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下である。
モノマー(b-2)の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは55質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは65質量%以上であり、そして、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、より更に好ましくは85質量%以下、より更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは75質量%以下である。
ポリマー(B)は、該ポリマー(B)を構成するモノマー(b-1)及び(b-2)を含むモノマー混合物から水不溶性ポリマー(B’)を得た後、中和剤により酸基の少なくとも一部を中和する方法により得ることが好ましい。水不溶性ポリマー(B’)は、モノマー混合物を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることによって製造される。これらの重合法の中でも溶液重合法が好ましい。
なお、本明細書において、中和前の水不溶性ポリマー(B)を「水不溶性ポリマー(B’)」又は「ポリマー(B’)」という。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができるが、重合開始剤としては、アゾ化合物が好ましく、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-カルボバレリック酸)がより好ましい。重合連鎖移動剤としては、メルカプタン類が好ましく、3-メルカプトプロピオン酸がより好ましい。
好ましい重合条件は、重合開始剤の種類等によって異なるが、重合温度は、好ましくは50℃以上90℃以下、重合時間は好ましくは1時間以上20時間以下である。また、重合雰囲気は、好ましくは窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気である。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマー(B’)を単離することができる。また、得られたポリマー(B’)は、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
なお、ポリマー(B’)の酸価は、実施例に記載のとおり、JIS K 0070の方法に基づき、測定溶媒のみをJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=4:6(容量比))に変更した方法により測定される。酸価は、ポリマー(B’)の合成時におけるモノマー成分の比から計算で求めることもできるが、ポリマー(B’)が酸価の測定溶媒に対する溶解性が悪い場合には、ポリマー鎖の内部に取り込まれ外側に出てこないモノマー(b-1)由来の構成単位があると考えられ、上記方法による測定値は、計算値に比べて低い値を示す傾向にある。
本発明の顔料水分散体は、定着性及び画像濃度の向上の観点から、下記工程1及び工程2を有する方法により、製造することが好ましい。
工程1:水不溶性ポリマー(B’)に中和剤を添加して水不溶性ポリマー(B)の水分散体を得る工程
工程2:工程1で得られた水分散体に顔料(A)を添加し、得られる顔料混合物を分散処理して、顔料(A)を水不溶性ポリマー(B)で分散した顔料水分散体を得る工程
工程1は、ポリマー(B’)に中和剤を添加してポリマー(B)の水分散体を得る工程である。良好な分散性の水分散体を得る観点から、まず、ポリマー(B’)を有機溶媒に溶解させ、ポリマー(B’)の有機溶媒溶液を得た後、中和剤を添加してポリマー(B)の水分散体を得ることが好ましい。
ポリマー(B’)を溶解させる有機溶媒に制限はないが、炭素数1以上3以下の脂肪族アルコール、ケトン類、エーテル類、エステル類等が好ましく、顔料への濡れ性、ポリマー(B’)の溶解性、及びポリマー(B)の顔料への吸着性を向上させる観点から、炭素数4以上8以下のケトンがより好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが更に好ましく、メチルエチルケトンがより更に好ましい。
ポリマー(B’)を溶液重合法で合成した場合には、重合で用いた溶媒をそのまま用いてもよい。
中和剤は、ポリマー(B)の中和度が好ましくは10モル%以上60モル%以下となるように添加することが好ましい。イタコン酸(b-1)は酸基を2つ有するため、酸基が1つの親水性モノマーを用いた場合と比べて、中和度が低い条件でも顔料を水系媒体に高度に分散させることができ、定着性及び画像濃度を向上することができる。当該観点から、ポリマー(B)の中和度は、より好ましくは15モル%以上、更に好ましくは20モル%以上であり、そして、より好ましくは55モル%以下、更に好ましくは50モル%以下、より更に好ましくは40モル%以下、より更に好ましくは30モル%以下である。
ここで中和度とは、中和剤のモル当量数を中和前のポリマー(B)(ポリマー(B’))の酸基のモル当量数で除した値、即ち「中和剤のモル当量数/ポリマー(B’)の酸基のモル当量数」の値である。本来、中和度は100モル%を超えることはないが、本発明では中和剤のモル当量数から計算するため、中和剤を過剰に用いた場合は100モル%を超える。
中和剤は、十分かつ均一に中和を促進させる観点から、中和剤水溶液として用いることが好ましい。中和剤水溶液の濃度は、前記観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
工程2は、工程1で得られた水分散体に顔料(A)を添加し、得られる顔料混合物を分散処理して、顔料(A)をポリマー(B)で分散した顔料水分散体を得る工程である。
前記顔料混合物における顔料(A)とポリマー(B)との質量比〔(A)/(B)〕は、顔料の分散性並びに定着性及び画像濃度の向上の観点から、好ましくは40/60以上、より好ましくは45/55以上、更に好ましくは50/50以上、より更に好ましくは60/40以上、より更に好ましくは70/30以上、より更に好ましくは80/20以上、より更に好ましくは90/10以上、より更に好ましくは95/5以上であり、そして、好ましくは99.8/0.2以下、より好ましくは99.7/0.3以下、更に好ましくは99.5/0.5以下、より更に好ましくは99/1以下である。
工程2においては、前記顔料混合物を分散処理して、顔料(A)をポリマー(B)で分散した顔料水分散体を得る。分散方法に特に制限はない。剪断応力による分散だけで顔料粒子を所望の粒径となるまで微粒化することもできるが、好ましくは顔料混合物を予備分散させた後、更に剪断応力を加えて本分散を行い、顔料粒子を所望の粒径とするよう制御することが好ましい。
工程2の予備分散における温度は、好ましくは0℃以上であり、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下、更に好ましくは25℃以下であり、分散時間は好ましくは0.5時間以上、より好ましくは0.8時間以上であり、そして、好ましくは30時間以下、より好ましくは10時間以下、更に好ましくは5時間以下である。
顔料混合物を予備分散させる際には、アンカー翼、ディスパー翼等の一般に用いられている混合撹拌装置を用いることができるが、中でも高速撹拌混合装置が好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いて本分散を行う場合、処理圧力やパス回数の制御により、顔料を所望の粒径になるように制御することができる。
処理圧力は、生産性及び経済性の観点から、好ましくは60MPa以上、より好ましくは100MPa以上、更に好ましくは130MPa以上であり、そして、好ましくは200MPa以下、より好ましくは180MPa以下である。
また、パス回数は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上であり、そして、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
工程1で有機溶媒を用いた場合には、工程2で前記顔料混合物を分散処理した後、分散体から、更に公知の方法で有機溶媒を除去することで、顔料水分散体を得ることが好ましい。得られた顔料水分散体中の有機溶媒は実質的に除去されていることが好ましいが、本発明の目的を損なわない限り、残存していてもよい。残留有機溶媒の量は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
また必要に応じて、有機溶媒を留去する前に加熱撹拌処理することもできる。
得られた顔料水分散体は、顔料(A)がポリマー(B)で分散されてなり、好ましくは顔料(A)を含有するポリマー(B)の粒子(顔料含有ポリマー(B)粒子)が水系媒体中に分散しているものである。
本発明の水系インク(以下、単に「インク」ともいう)は、定着性及び画像濃度の向上の観点から、前記顔料水分散体を含有する。
本発明のインクの色は、特に限定されず、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、特別色(S)等の有彩色;K(ブラック)、W(ホワイト)等の無彩色が挙げられる。
前記顔料水分散体のインク中の含有量は、定着性及び画像濃度の向上の観点から、顔料換算で、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上、より更に好ましくは4質量%以上であり、そして、好ましくは20質量%以下、より好ましくは17質量%以下、更に好ましくは15質量%以下、より更に好ましくは13質量%以下、より更に好ましくは10質量%以下である。
本発明のインクは、定着性及び画像濃度の向上の観点から、更に有機溶媒(C)を含有することが好ましい。有機溶媒(C)の沸点は、好ましくは90℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは150℃以上、より更に好ましくは180℃以上であり、そして、好ましくは250℃未満、より好ましくは240℃以下、更に好ましくは230℃以下、より更に好ましくは220℃以下であるものが好ましい。
なお、有機溶媒(C)として2種以上の有機溶媒を併用する場合には、有機溶媒(C)の沸点は、各有機溶媒の含有量(質量%)で重み付けした加重平均値である。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール(沸点197℃)、プロピレングリコール(沸点188℃)、1,2-ブタンジオール(沸点193℃)、1,2-ペンタンジオール(沸点206)、1,2-ヘキサンジオール(沸点223℃)等の1,2-アルカンジオール;ジエチレングリコール(沸点244℃)、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール(沸点232℃)、1,3-プロパンジオール(沸点210℃)、1,3-ブタンジオール(沸点208℃)、1,4-ブタンジオール(沸点230℃)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(沸点203℃)、1,5-ペンタンジオール(沸点242℃)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(沸点196℃)、1,2,6-ヘキサントリオール(沸点178℃)、1,2,4-ブタントリオール(沸点190℃)、1,2,3-ブタントリオール(沸点175℃)、ペトリオール(沸点216℃)等が挙げられる。
また、1,6-ヘキサンジオール(沸点250℃)、トリエチレングリコール(沸点285℃)、トリプロピレングリコール(沸点273℃)、グリセリン(沸点290℃)等の沸点が250℃以上の化合物を、沸点が250℃未満の化合物と組み合わせて用いてもよい。
有機溶媒(C)は、好ましくは多価アルコールであり、より好ましくはプロピレングリコール、ジエチレングリコール及びグリセリンから選ばれる1種以上、更に好ましくはプロピレングリコールである。
本発明のインクは、定着性及び画像濃度の向上の観点から、好ましくは更にポリマー(B)以外の水不溶性ポリマー(D)(以下、単に「ポリマー(D)」ともいう)粒子の水分散体を含有する。ポリマー(D)粒子は、定着助剤としての機能を有する。
ここで、「水不溶性」とは、前述のポリマー(B)における「水不溶性」と同様の意味である。105℃で2時間乾燥させ、恒量に達したポリマーを、25℃の水100gに飽和するまで溶解させたときに、ポリマー(D)の溶解量は好ましくは5g以下、より好ましくは1g以下である。ポリマー(D)がアニオン性ポリマーの場合、その溶解量は、該ポリマーのアニオン性基を水酸化ナトリウムで100%中和した時の溶解量である。ポリマー(D)がカチオン性ポリマーの場合、その溶解量は、該ポリマーのカチオン性基を塩酸で100%中和した時の溶解量である。
ポリマー(D)は、定着性及び画像濃度の向上の観点から、親水性モノマー(d-1)(以下、単に「モノマー(d-1)」ともいう)由来の構成単位と疎水性モノマー(d-2)(以下、単に「モノマー(d-2)」ともいう)由来の構成単位を含むことが好ましい。
ポリマー(D)としては、アクリル系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン等が挙げられる。これらの中でも、定着性及び画像濃度の向上の観点から、好ましくはアクリル系ポリマーである。
モノマー(d-1)は、定着性及び画像濃度の向上の観点から、25℃におけるイオン交換水100gへの溶解可能な量が10g以上である。
モノマー(d-1)は、好ましくは1つ以上の酸基を有するモノマーであり、より好ましくはカルボン酸モノマー、スルホン酸モノマー及びリン酸モノマーから選ばれる1種以上である。
モノマー(d-1)中の酸基の数は、好ましくは1つ以上3以下であり、より好ましくは1つ以上2つ以下、更に好ましくは2つである。
カルボン酸モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
スルホン酸モノマーとしては、スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-スルホプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
リン酸モノマーとしては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、ジフェニル-2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル-2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
これらの中でも、定着性及び画像濃度の向上の観点から、好ましくはカルボン酸モノマーであり、より好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸及び2-メタクリロイルオキシメチルコハク酸から選ばれる1種以上であり、更に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸から選ばれる1種以上であり、より更に好ましくはイタコン酸である。
モノマー(d-2)としては、前述の疎水性モノマー(b-2)で挙げられた芳香族基含有モノマー、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
モノマー(d-2)は、好ましくは芳香族基含有モノマーであり、より好ましくはスチレン系モノマー及び芳香族基含有(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる1種以上であり、更に好ましくはスチレン系モノマーであり、より更に好ましくはスチレンである。
ポリマー(D)を構成するモノマー単位の総量中、モノマー(d-1)及び(d-2)由来の構成単位の合計含有量は、定着性及び画像濃度の向上の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量以上、更に好ましくは95質量%以上、より更に好ましくは100質量%、すなわちモノマー(d-1)及び(d-2)由来の構成単位のみからなることが好ましい。
モノマー(d-1)の含有量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上、より更に好ましくは15質量%以上、より更に好ましくは20質量%以上、より更に好ましくは25質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、より更に好ましくは45質量%以下、より更に好ましくは40質量%以下、より更に好ましくは35質量%以下である。
モノマー(d-2)の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは55質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは65質量%以上であり、そして、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、より更に好ましくは85質量%以下、より更に好ましくは80質量%以下、より更に好ましくは75質量%以下である。
ポリマー(D)粒子の水分散体は、モノマー(d-1)が1つ以上の酸基を有する場合、ポリマー(D)を構成するモノマー(d-1)及び(d-2)を含むモノマー混合物から水不溶性ポリマー(D’)を得た後、中和剤により酸基の少なくとも一部を中和し、水系媒体中に分散させる方法により得ることが好ましい。水不溶性ポリマー(D’)は、モノマー混合物を塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の公知の重合法により共重合させることによって製造される。これらの重合法の中でも溶液重合法が好ましい。
なお、本発明において中和前の水不溶性ポリマー(D)を「水不溶性ポリマー(D’)」又は「ポリマー(D’)」という。
重合の際には、重合開始剤や重合連鎖移動剤を用いることができるが、重合開始剤としては、アゾ化合物が好ましく、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)がより好ましい。重合連鎖移動剤としては、メルカプタン類が好ましく、3-メルカプトプロピオン酸がより好ましい。
好ましい重合条件は、重合開始剤の種類等によって異なるが、重合温度は、好ましくは50℃以上90℃以下、重合時間は好ましくは1時間以上20時間以下である。また、重合雰囲気は、好ましくは窒素ガス雰囲気、アルゴン等の不活性ガス雰囲気である。
重合反応の終了後、反応溶液から再沈澱、溶媒留去等の公知の方法により、生成したポリマー(D’)を単離することができる。また、得られたポリマー(D’)は、再沈澱、膜分離、クロマトグラフ法、抽出法等により、未反応のモノマー等を除去することができる。
なお、ポリマー(D’)の酸価は、前述のポリマー(B’)と同様の方法により測定される。酸価は、ポリマー(D’)の製造時におけるモノマー成分の比から計算で求めることもできるが、ポリマー(D’)が酸価の測定溶媒に対する溶解性が悪い場合には、ポリマー鎖の内部に取り込まれ外側に出てこないモノマー(d-1)由来の構成単位があると考えられ、上記方法による測定値は、計算値に比べて低い値を示す傾向にある。
モノマー(d-1)が1つ以上の酸基を有する場合、ポリマー(D)粒子の水分散体は、ポリマー(D’)に中和剤を添加し、水系媒体中に分散させる方法により製造することが好ましい。これにより、モノマー(d-1)由来の構成単位に含まれる酸基の少なくとも一部が中和剤で中和され、該酸基の少なくとも一部が塩を形成し、分散性に優れる水分散体を得ることができる。
前記水系媒体は、水を主成分とする。水系媒体中の水の含有量は、ポリマーの分散性の向上の観点及び環境安全性の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、更に好ましくは100質量%である。水としては、脱イオン水、イオン交換水又は蒸留水が好ましく用いられる。水以外の成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒等の水に溶解する有機溶媒が挙げられる。
中和度は、水分散体の分散性の向上の観点から、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、更に好ましくは20モル%以上、より更に好ましくは25モル%以上であり、そして、好ましくは50モル%以下、より好ましくは45モル%以下、更に好ましくは40モル%以下、より更に好ましくは35モル%以下、より更に好ましくは30モル%以下である。
ここで中和度とは、中和剤のモル当量数を中和前のポリマー(D)(ポリマー(D’))の酸基のモル当量数で除した値、即ち「中和剤のモル当量数/ポリマー(D’)の酸基のモル当量数」の値である。本来、中和度は100モル%を超えることはないが、本発明では中和剤のモル当量数から計算するため、中和剤を過剰に用いた場合は100モル%を超える。
ポリマー(D)粒子の水分散体の不揮発成分濃度(固形分濃度)は、分散性の向上の観点及びインクの調製を容易にする観点から、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、そして、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。ポリマー(D)粒子の水分散体の固形分濃度は、実施例に記載の方法により測定される。
ポリマー(D)粒子の水分散体は、定着性及び画像濃度の向上の観点から、ポリマー(D)が架橋ポリマーであることが好ましい。該架橋ポリマーは、ポリマー(D)を架橋剤で架橋することにより形成される。
親水性モノマー(d-1)が1つ以上の酸基を有する場合、架橋剤は、定着性及び画像濃度の向上の観点から、該酸基と反応する反応性基を分子内に少なくとも2個有する化合物が好ましい。架橋剤の分子量は、反応性、定着性及び画像濃度の向上の観点から、好ましくは120以上、より好ましくは150以上であり、そして、好ましくは2,000以下、より好ましくは1,500以下、更に好ましくは1,000以下、より更に好ましくは500以下である。
架橋剤に含まれる反応性基の数は、ポリマー(D)の酸基の種類、及び架橋反応を効率よく行う観点から、好ましくは2以上4以下、より好ましくは2以上3以下、更に好ましくは2である。該反応性基としては、エポキシ基、オキサゾリン基、ヒドロキシ基、アミノ基及びイソシアネート基等が挙げられ、これらの中でもエポキシ基が好ましい。
前記多価アルコールの炭素数は、定着性及び画像濃度の向上の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、そして、好ましくは14以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは8以下である。
前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルキレングリコール;1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等のアルカンジオール;トリメチロールプロパン;ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
また、ポリマー(D)粒子は、該粒子の膨潤や収縮、該粒子間の凝集が生じないことが好ましく、インク中のポリマー(D)粒子の平均粒径は、水分散体中の平均粒径と同じであることが好ましい。インク中のポリマー(D)粒子の好ましい平均粒径の態様は、水分散体中の平均粒径の好ましい態様と同じである。インク中のポリマー(D)粒子の平均粒径も、実施例に記載の方法と同様の方法により測定される。
本発明のインクには、上記成分の他に、通常用いられる界面活性剤、保湿剤、湿潤剤、浸透剤、粘度調整剤、消泡剤、防腐剤、防黴剤、防錆剤等の各種添加剤を添加することができる。
本発明のインクは、定着性及び画像濃度の向上の観点から、更に界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、シリコーン系活性剤、フッ素系活性剤等が挙げられるが、非イオン界面活性剤がより好ましい。
非イオン界面活性剤としては、水系インクに用いることができるものであればよく、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、多価アルコール型界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。これらの中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル型界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤が好ましく、炭素数が6以上30以下のアルコールのアルキレンオキシド付加物の界面活性剤、及びアセチレングリコール系界面活性剤から選ばれる1種以上がより好ましく、定着性及び画像濃度の向上の観点から、炭素数6以上30以下のアルコールのアルキレンオキシド付加物の界面活性剤と、アセチレングリコール系界面活性剤とを併用することが更に好ましい。
本発明のインクは、前記顔料水分散体、必要に応じて、水、有機溶媒(C)、ポリマー(D)粒子の水分散体、界面活性剤、及びその他の成分を混合し、撹拌することによって得ることができる。
インク中の水の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、そして、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。
インクの25℃の粘度は、好ましくは2.0mPa・s以上、より好ましくは3.0mPa・s以上、更に好ましくは4.0mPa・s以上であり、そして、好ましくは12mPa・s以下、より好ましくは9.0mPa・s以下、更に好ましくは7.0mPa・s以下、より更に好ましくは6.0mPa・s以下である。インクの粘度は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明のインクは、樹脂印刷媒体に印刷しても、定着性及び画像濃度に優れる印刷物を得ることができるため、フレキソ印刷用、グラビア印刷用、又はインクジェット印刷用の水系インクとして用いることができ、インクジェット印刷における定着性及び画像濃度に優れることから、インクジェット印刷用の水系インクとして用いることが好ましい。
印刷媒体としては、アート紙、コート紙等の低吸水性印刷媒体、合成樹脂フィルム等の非吸水性の樹脂印刷媒体等が挙げられる。これらの中でも、定着性及び画像濃度の向上の観点から、樹脂印刷媒体が好ましい。また、普通紙、上質紙等の吸水性印刷媒体を印刷媒体として用いることもできる。
樹脂印刷媒体の厚さは特に制限はなく、厚さ1μm以上20μm未満の薄肉フィルムでもよいが、印刷媒体の外観不良の抑制、及び入手性の観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは50μm以上、更に好ましくは80μm以上であり、そして、好ましくは200μm以下、より好ましくは170μm以下、更に好ましくは150μm以下である。
合成樹脂フィルムの市販品としては、ルミラーP60、ルミラーT60(以上、東レ株式会社製、ポリエチレンテレフタレート)、太閤FE2001(フタムラ化学株式会社製、コロナ処理ポリエチレンテレフタレート)、PVC80B P(リンテック株式会社製、塩化ビニル)、カイナスKEE70CA(リンテック株式会社製、ポリエチレン)、太閤FOA(フタムラ化学株式会社製、コロナ処理二軸延伸ポリプロピレン(OPP))、ユポSG90 PAT1(リンテック株式会社製、ポリプロピレン)、ボニールRX(興人フィルム&ケミカルズ株式会社製、ナイロン)等が挙げられる。
各物性は次の方法により測定した。
水不溶性ポリマーの酸価は、JIS K 0070の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K 0070の規定のエタノールとエーテルの混合溶媒から、アセトンとトルエンの混合溶媒(アセトン:トルエン=4:6(容量比))に変更した。
N,N-ジメチルホルムアミドに、リン酸及びリチウムブロマイドをそれぞれ60mmol/Lと50mmol/Lの濃度となるように溶解した液を溶離液として、ゲル浸透クロマトグラフィー法〔GPC装置「HLC-8120GPC」(東ソー株式会社製)カラム「TSK-GEL、α-M」2本(東ソー株式会社製)、流速:1mL/min〕により、標準物質として分子量が既知のポリスチレンを用いて測定した。
動的光散乱型粒径測定機「Zetasizer Nano ZS」(マルバーン社製)を用いて、以下の測定条件でキュムラント平均粒径を測定した。得られるキュムラント平均粒径を水分散体中の顔料含有ポリマー(B)粒子又はポリマー(D)粒子の平均粒径とした。
(測定条件)
固形分濃度:0.1%
測定温度:25℃
媒質:水
測定用セル:Glass Cuvette
レーザー仕様:He-Ne、4mW,633nm
検出光学系:NIBS、173℃
測定回数:10回
等温化時間:5分
解析ソフト:Zeta Sizer Software 6.2
解析方法:General Purpose Mode(キュムラント法)
赤外線水分計「FD-230」(株式会社ケツト科学研究所製)を用いて、水分散体5gを乾燥温度150℃、測定モード96(監視時間2.5分/変動幅0.05%)の条件にて乾燥させ、水分散体の水分(%)を測定した。固形分濃度は下記の式に従って算出した。
固形分濃度(%)=100-M
M:水分散体の水分(%)=[(W-W0)/W]×100
W:測定前の試料質量(初期試料質量)
W0:測定後の試料質量(絶対乾燥質量)
E型粘度計「TV-25」(東機産業株式会社製、標準コーンロータ1°34’×R24使用、回転数50rpm)を用いて、25℃にて粘度を測定した。
pH電極「6337-10D」(株式会社堀場製作所製)を使用した卓上型pH計「F-71」(株式会社堀場製作所製)を用いて、25℃における水系インクのpHを測定した。
合成例1-1
温度計、還流装置を具備した200mL二つ口丸底フラスコに、イタコン酸9g、スチレン21g、1,4-ジオキサン(溶媒)55g、4,4’-アゾビス(4-カルボバレリック酸)「V-501」(和光純薬工業株式会社製、重合開始剤)0.55g、3-メルカプトプロピオン酸(東京化成工業株式会社製、重合連鎖移動剤)0.25gを入れ、マグネチックスターラーで混合した。混合物を窒素で10分間バブリングした後、水浴にて85℃に加温し、30分撹拌した。その後、85℃にて8時間保温し、反応を終結させた。その後、80℃、20kPaにて溶媒留去後、80℃、8kPaで、8時間乾燥させ、酸価237mgKOH/g、数平均分子量1,500のポリマー(B’1)を得た。
合成例1-1においてイタコン酸とスチレンの量を、表1に示す質量比となるように変更した以外は合成例1と同様にして、ポリマー(B’2)及び(B’3)を得た。酸価及び数平均分子量を表1に示す。
合成例1-1において3-メルカプトプロピオン酸の量をそれぞれ0.45g、0.05gに変更した以外は合成例1-1と同様にして、ポリマー(B’4)及び(B’5)を得た。酸価及び数平均分子量を表1に示す。
合成例1-1においてスチレンに代えてブチルアクリレートに変更した以外は合成例1-1と同様にして、ポリマー(B’6)を得た。酸価及び数平均分子量を表1に示す。
合成例1-1においてイタコン酸に代えてアクリル酸に変更した以外は合成例1-1と同様にして、ポリマー(B’7)を得た。酸価及び数平均分子量を表1に示す。
合成例1-1においてスチレンを用いない以外は合成例1-1と同様にして、ポリマー(B’8)を得た。酸価及び数平均分子量を表1に示す。
実施例1-1
(工程1)
上記合成例1-1で得たポリマー(B’1)1.4gをメチルエチルケトン10gに溶かし、その中に中和剤として5N水酸化ナトリウム水溶液を中和度20モル%になる量と、イオン交換水24gを加え、10~15℃でディスパー翼を用いて2,000rpmで15分間撹拌混合を行ない、ポリマー(B1)の水分散体を得た。
(工程2)
続いてマゼンタ顔料としてC.I.ピグメント・バイオレット19「Inkjet Magenta E5B02」(クラリアント社製)45g及びC.I.ピグメント・レッド122「6111T」(大日精化工業株式会社製)25gを加え、10~15℃でディスパー翼を用いて7,000rpmで3時間撹拌混合した。得られた顔料混合物を200メッシュ濾過し、マイクロフルイダイザー「M-110K」(Microfluidics社製、高圧ホモジナイザー)を用いて、150MPaの圧力で20パス分散処理した。得られた分散処理物より、減圧下60℃でメチルエチルケトンを除去し、更に一部の水を除去し、遠心分離した後、液層部分を孔径5μmのフィルター(Sartorius Stedim Biotech社製)で濾過して粗大粒子を除いて、水分散液を得た。
更にこの水分散液80gにグリセリン(花王株式会社製)5.0g、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン「プロキセルXL2」(アビシア株式会社製)0.2g、イオン交換水14.8gを混合し、70℃で1時間の滅菌処理を行なった後、室温まで冷却、前記孔径5μmのフィルターで濾過することで、顔料含有ポリマー(B1)粒子の水分散体(顔料水分散体1)〔固形分濃度20%、平均粒径103nm〕を得た。
実施例1-1において、表2に示すポリマー(B’)、中和度又は質量比〔顔料(A)/ポリマー(B)〕に変更した以外は実施例1-1と同様にして、顔料水分散体2~10及びC1~C2を得た。各顔料水分散体の固形分濃度20%であった。
合成例2-1
温度計、還流装置を具備した200mL二つ口丸底フラスコに、イタコン酸9g、スチレン21g、1,4-ジオキサン(溶媒)45g、2,2-アゾビス(イソブチロニトリル)(和光純薬工業株式会社製、重合開始剤)0.50g、3-メルカプトプロピオン酸(東京化成工業株式会社製、重合連鎖移動剤)0.30gを入れ、マグネチックスターラーで混合した。混合物を窒素で10分間バブリングした後、水浴にて77℃に加温し、30分撹拌した。その後、77℃にて16時間保温し、反応を終結させた。その後、70℃、20kPaにて溶媒留去後、70℃、8kPaで、8時間乾燥させ、酸価220mgKOH/g、数平均分子量1,600のポリマー(D’1)を得た。ポリマー(D’1)の質量比〔(d-1)/(d-2)〕は30/70であった。
合成例2-1において、イタコン酸をアクリル酸に変更した以外は合成例2-1と同様にして、酸価211mgKOH/g、数平均分子量1,700のポリマー(D’2)を得た。
製造例1
耐圧性を有するガラス瓶に、合成例2-1で得られたポリマー(D’1)15.4g、5N 水酸化ナトリウム水溶液1.5g、イオン交換水23.1g及びスターラーバーを投入し、蓋をした後90℃の水浴で1時間撹拌し、分散した。
その後、常温に戻し、架橋剤としてデナコールEX-212L(商品名、ナガセケムテックス株式会社、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル)を1.1g、イオン交換水1.49gを添加し、常温で30分撹拌した。その後70℃の水浴で3時間撹拌し、ポリマー(D)を架橋させて、架橋ポリマー粒子であるポリマー(D1)粒子の水分散体〔固形分濃度30%、平均粒径45nm〕を得た。ポリマー(D1)の質量比〔(d-1)/(d-2)〕は30/70であった。中和度は30モル%であった。
製造例1において、ポリマー(D’1)をポリマー(D’2)に変更した以外は、製造例1と同様にして架橋ポリマー粒子であるポリマー(D2)粒子の水分散体〔固形分濃度30%、平均粒径47nm〕を得た。ポリマー(D2)の質量比〔(d-1)/(d-2)〕は30/70であった。中和度は30モル%であった。
実施例2-1
プロピレングリコール(和光純薬工業株式会社製)24g、サーフィノール104PG-50(商品名、エアープロダクツアンドケミカルズ社製、アセチレングリコール系非イオン界面活性剤のプロピレングリコール溶液、有効分50%)1.50g、エマルゲン120(商品名、花王株式会社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エーテル系非イオン界面活性剤)1.50g及びイオン交換水29.96gを混合し、マグネチックスターラーを用いて室温で15分間撹拌して、混合溶液を得た。
次に実施例1-1で得られた顔料含有ポリマー(B1)粒子の水分散体(顔料水分散体1)46.67g(インク100g中の顔料分換算で7g)をマグネチックスターラーで撹拌しながら、前記混合溶液を混合した。更に製造例1で得られたポリマー(D1)粒子の水分散体30.1g(インク100g中の固形分換算で9g)をスポイトで滴下しながら撹拌混合した。最後に孔径1.2μmのフィルター(ザルトリウス社製)で濾過し、インクを得た。得られたインクの評価結果を表3に示す。
実施例2-1において、表3に示す組成に変更した以外は実施例2-1と同様にして、インクを得た。得られたインクの評価結果を表3に示す。
[OPPフィルム定着性]
得られたインクを、シリコンチューブを介してインクジェットプリンター「IPSiO GX5000」(商品名、株式会社リコー製)のヘッド上部のインク注入口に充填した。フォトショップ(登録商標)(アドビ社製)によりベタ印字の印刷パターン(横204mm×縦275mmの大きさ)を作製し、吐出量が14g/m2となるようにOPPフィルム「FOA#30」(商品名、フタムラ化学株式会社製)にベタ印刷し、気温50℃、相対湿度30%で60分間乾燥して印刷物を得た。該印刷物に対して、セルロース製不織布「ベンコットM-3II」(旭化成株式会社製)に錘の底面(底面の面積78.5cm2)を用いて1.5kg荷重をかけて30往復擦過した。擦過前後のベンコット表面の画像濃度を反射濃度計「RD-915」(グレタグマクベス社製)を用いて測定した。擦過前後の画像濃度差を算出し、該算出値からOPPフィルムへの定着性の評価を行った。該算出値が小さいほどOPPフィルムへの定着性に優れる。
前記定着性評価で用いたプリンターを用いて、前記印刷条件と同じ条件でOPPフィルム「FOA#30」(商品名、フタムラ化学株式会社製)にベタ印刷し、気温25℃、相対湿度50%の条件で1日放置後、光学濃度計SpectroEye(グレタグマクベス社製)を用いて任意の10箇所を測定し、その平均値を求めた。該平均値から画像濃度の評価を行った。該平均値が大きいほど画像濃度に優れる。
なお、表3中の各表記は下記のとおりである。
PG:プロピレングリコール
*1:インク中の顔料水分散体の顔料換算での含有量(質量%)
*2:インク中のポリマー(D)粒子の水分散体の固形分換算での含有量(質量%)
比較例2-1は、親水性モノマーとして酸基が1つのアクリル酸を用いているため、定着性及び画像濃度が劣る。
比較例2-2は、疎水性モノマーを用いていないため、定着性及び画像濃度が劣る。
Claims (10)
- 顔料(A)を水不溶性ポリマー(B)で分散した顔料水分散体であって、
該ポリマー(B)が、イタコン酸(b-1)由来の構成単位及び疎水性モノマー(b-2)由来の構成単位を含み、更に酸基の少なくとも一部がアルカリ金属の水酸化物で中和されてなり、
該ポリマー(B)を構成するモノマー単位の総量中、モノマー(b-1)及び(b-2)由来の構成単位の合計含有量が100質量%であり、
該ポリマー(B)の中和度が20モル%以上50モル%以下である、顔料水分散体。 - 前記顔料水分散体における顔料(A)と水不溶性ポリマー(B)との質量比〔(A)/(B)〕が50/50以上99.5/0.5以下である、請求項1に記載の顔料水分散体。
- 前記ポリマー(B)における前記イタコン酸(b-1)由来の構成単位と前記疎水性モノマー(b-2)由来の構成単位との質量比〔(b-1)/(b-2)〕が5/95以上50/50以下である、請求項1又は2に記載の顔料水分散体。
- 前記ポリマー(B)の数平均分子量が500以上10,000以下である、請求項1~3のいずれかに記載の顔料水分散体。
- 前記疎水性モノマー(b-2)が芳香族基含有モノマーを含む、請求項1~4のいずれかに記載の顔料水分散体。
- 前記疎水性モノマー(b-2)がスチレンである、請求項5に記載の顔料水分散体。
- 下記工程1及び工程2を有する、請求項1~6のいずれかに記載の顔料水分散体の製造方法。
工程1:水不溶性ポリマー(B’)にアルカリ金属の水酸化物を添加して水不溶性ポリマー(B)の水分散体を得る工程
工程2:工程1で得られた水分散体に顔料(A)を添加し、得られる顔料混合物を分散処理して、顔料(A)を水不溶性ポリマー(B)で分散した顔料水分散体を得る工程 - 請求項1~6のいずれかに記載の顔料水分散体を、顔料換算で2質量%以上15質量%以下含有する、水系インク。
- 更に有機溶媒(C)として多価アルコールを含有する、請求項8に記載の水系インク。
- 更に水不溶性ポリマー(D)粒子の水分散体を含有し、
該ポリマー(D)が、親水性モノマー(d-1)由来の構成単位及び疎水性モノマー(d-2)由来の構成単位を含む、請求項8又は9に記載の水系インク。
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