以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
(実施形態)
以下、実施形態を図面に基づいて説明するが、まず、本実施形態の座席姿勢制御装置10が搭載される車両1について、図1を参照して簡単に説明する。
(車両の概略構成)
座席姿勢制御装置10が搭載される車両1は、例えば、図1に示すように、いわゆる自動車であり、箱状の車体2を有してなる。
以下、説明の簡略化のため、車両1および車体2における、「前」、「後」、「上」および「下」の概念については、図1中の矢印で示した通りに定義する。また、図1に示した前後方向を「車長方向」と称し、前後方向に対して直交する左右方向を「車幅方向」と称する。
車体2は、図1に示すように、その内側に乗員が搭乗可能な空間である車室3を備え、車室3内に前部座席4と後部座席5とを備える。
前部座席4は、図1に示すように、車室3における前部に配置され、運転席と助手席とによりなる。前部座席4は、座面6と、シートバック7と、ヘッドレスト8とを有してなる。シートバック7は、図1に示すように、座面6から上方に延設されると共に、やや後方に傾いている。ヘッドレスト8は、シートバック7の上端部に装着されている。
後部座席5は、図1に示すように、車室3のうち前部座席4よりも後方に配置されると共に、前部座席4と同様に、座面6と、シートバック7と、ヘッドレスト8とを有してなる。後部座席5は、例えば、車幅方向を長手方向とする略矩形状の1つの座面が座面6とされるか、もしくは、略正方形状とされた複数の座面が車幅方向にて並んで配置されて座面6とされ、乗員が2名または3名着座可能な構成とされている。前者の場合には、車幅方向を長手方向とする略長方形状の1つのシートバックがシートバック7を構成する。後者の場合には、車体2の上下方向を長手方向とする略長方形状の複数のシートバックが、車幅方向にて並んで配置されてシートバック7を構成する。
車体2には、座席姿勢制御装置10が搭載されている。本実施形態では、座席姿勢制御装置10は、車両1と図示しない物体との衝突時において、前部座席4および後部座席5のうち乗員が着座している座席(以下「特定座席」という)の姿勢を制御し、乗員の傷害値を低減する構成とされている。
なお、特定座席については、例えば、座面6に図示しない圧力センサを配置し、当該圧力センサから所定以上の出力信号を検出することなどによって、特定されることができる。特定座席の検出については、上記の例に限られず、任意の方法が採用され得る。
(装置の機能構成)
以下、本実施形態の座席姿勢制御装置10について説明する。座席姿勢制御装置10は、図2に示すように、物体検出部11と、物理量取得部12と、加速度センサ13と、制御部14と、姿勢変更部15とを有してなる。
物体検出部11は、車両1の周囲に存在する物体を検出するものであり、車体2の任意の箇所に配置される。例えば、物体検出部11は、2個のカメラセンサを備えた、いわゆるステレオカメラとして構成された場合には、車体2のうち車室3を覆う天井部分の前部などに取り付けられる。物体検出部11は、車両1の周囲に存在する物体を検出することができる構成とされていればよく、上記の例に限られず、他の周知の技術が用いられてもよい。
なお、ここでいう「物体」とは、車両1と異なるものであり、例えば、歩行者、二輪車や自動車などの車両、動物や固定障害物などが挙げられる。「固定障害物」とは、例えば、柱や壁などの固定されたものである。
物理量取得部12は、車両1と車両1の周囲に存在する物体との衝突可能性に関する物理量、特に距離を取得するものであり、車体2の任意の箇所に配置される。物理量取得部12は、物体検出部11により検出された物体(以下「検出物体」という)と車両1からの距離を取得するように構成されており、例えば、ミリ波レーダセンサ、レーザレーダセンサや超音波センサなどの周知の技術が用いられる。物理量取得部12は、例えば、ミリ波レーダセンサとして構成された場合には、車体2のうち車室3を覆う天井部分の前部などに配置される。
なお、物体検出部11や物理量取得部12のより具体的な構成および配置については、本願の出願時点で既に公知あるいは周知であるため、本明細書では、その説明を省略する。また、物体検出部11と物理量取得部12とは、それぞれ別個独立の構成とされてもよいし、これらを備えて一体化された、いわゆるフュージョンセンサとして構成されてもよい。これらがいわゆるフュージョンセンサとして構成された場合、このような構成は「予防センサ」と称され得る。
加速度センサ13は、本実施形態では、前部座席4および後部座席5それぞれに取り付けられ、座席に生じる加速度(以下「座席加速度」という)を測定するものであり、任意の加速度センサが採用され得る。加速度センサ13は、前部座席4および後部座席5の任意の箇所に配置される。なお、加速度センサ13は、座席(シート)の加速度を測定するものであるため、「シート加速度センサ」と称され得る。
制御部14は、図2に示すように、本実施形態では、衝突判定部141と、衝撃判定部142と、出力部143とを有してなる。制御部14は、座席姿勢制御装置10全体の動作を制御する電子制御ユニットであり、例えば、図示しないCPU、ROM、RAMや不揮発性RAMを備えた制御ECU(Electronic Control Unitの略)として構成される。制御部14は、物体検出部11、物理量取得部12および加速度センサ13と電気的に接続されており、車体2の任意の箇所に配置される。
なお、不揮発性RAMは、例えば、フラッシュROMなどである。また、制御部14のCPU、ROM、RAMおよび不揮発性RAMを、以下、単に「CPU」、「ROM」、「RAM」および「不揮発性RAM」と称する。
制御部14は、CPUがROMまたは不揮発性RAMからプログラムを読み出して実行することで、各種の制御動作を実現可能な構成とされている。制御部14のROMまたは不揮発性RAMには、物体検出部11、物理量取得部12および加速度センサ13から得られた信号に基づいて動作する、プログラムの実行の際に用いられる各種のデータがあらかじめ格納されている。各種のデータには、衝突判定部141、衝撃判定部142および出力部143に対応するプログラムのほかに、例えば、座席の姿勢に関するデータ等が含まれている。
衝突判定部141は、物体検出部11からの出力と、物理量取得部12により得られた距離とに基づき、車両1と検出物体との衝突可能性の有無を判定する。車両1と検出物体とが衝突する可能性があると衝突判定部141が判定した場合には、所定の信号が出力部143に出力される。
衝撃判定部142は、衝突判定部141で車両1と検出物体とが衝突する可能性がないと判定した場合において、加速度センサ13から取得した座席加速度に基づいて、当該座席に衝撃が生じたか否かを判定する。乗員が着座している座席に衝撃が生じたと衝撃判定部142が判定した場合には、所定の信号が出力部143に出力される。
出力部143は、車両1と検出物体とが衝突する可能性があると衝突判定部141が判定した場合、または乗員が着座している座席に衝撃が生じたと衝撃判定部142が判定した場合に、特定座席の姿勢を変更するための駆動信号を姿勢変更部15に出力する。出力部143は、上記の場合に、特定座席の座面6およびシートバック7の駆動信号を姿勢変更部15に出力する。
姿勢変更部15は、出力部143の駆動信号に基づき、特定座席の座面6およびシートバック7を所定の位置に動作させる構成とされている。姿勢変更部15は、例えば、シート姿勢センサとシートモータとを有してなる。
シート姿勢センサは、座席の姿勢に関する情報、例えば、特定座席の座面6およびシートバック7の傾きなどの位置に関する情報を取得するものであり、傾斜センサなどの任意のデバイスが採用され得る。シートモータは、出力部143からの駆動信号に基づき、特定座席の座面6およびシートバック7を駆動させるものであり、任意のものが採用される。
(動作概要)
以下、上記の構成による動作概要およびその効果について、図3A、図3B、図4Aおよび図4Bを参照して説明する。
図3A、図3Bおよび図4Bでは、後述する乗員X、Yに相対加速度がかかる前の状態を破線で示し、乗員X、Yに相対加速度がかかった後の状態を実線で示している。図4Aでは、座面6およびシートバック7の姿勢制御前の状態を破線で示し、座面6およびシートバック7の姿勢制御後の状態を実線で示している。図3A、図3B、および図4Bでは、乗員XまたはYの頭部から腰部までの距離を分かり易くするための補助線を一点鎖線で示している。また、図3Aないし図4Bでは、図1と同様に、「前」、「後」、「上」および「下」の定義を矢印で示している。
車両1が通常の運転状況の場合には、例えば、図3Aに示すように、乗員Xが着座している座席は、座面6が車長方向と平行な状態とされ、シートバック7がやや後方に傾いている状態とされている。このとき、乗員Xは、図示しないシートベルトにより着座している座席に拘束されている。
なお、ここでいう「通常の運転状況」とは、衝突判定部141により車両1が検出物体と衝突する可能性がないと判定され、かつ衝撃判定部142により座席に衝撃が生じたと判定されていない状態における運転状況を意味する。この「通常の運転状況」には、走行している状態だけでなく、停車や駐車などの状態も含む。
ここで、例えば、本実施形態の座席姿勢制御装置を搭載していない車両が物体と衝突した場合において、乗員Xにかかる負荷について検討する。
車両と物体との衝突により、車両に異常な相対加速度が生じると、図3Aに示すように、乗員Xには車両の進行方向、すなわち前方への相対加速度αが生じ、この相対加速度αに起因した力が乗員Xにかかることとなる。具体的には、図3Aに示すように、乗員Xは、図示しないシートベルトの装着により上半身が座席に拘束されているものの、頭部が固定されていないため、頭部に腰部付近を軸とした回転トルクT1が発生する。
より具体的には、図3Aに示すように、乗員Xの腰部から頭部までの上下方向における距離(以下、単に「高さ」という)をr1とし、頭部重量をmとすると、乗員Xの頭部には、太矢印で示す回転トルクT1の力がかかる。その結果、図3Aに実線で示すように、乗員Xは、頭部が前方に飛び出した格好となる。
なお、この回転トルクT1は、図3Aに示すように、頭部重量m、相対加速度αおよび高さr1の積、すなわちm×α×r1となる。この回転トルクT1が大きいほど、乗員Xは、頭部がより前方に飛び出す体勢、すなわち傷害値が増加する体勢となる。例えば、乗員Xには、前部座席4のヘッドレスト8などとの接触による傷害や、エアバッグが前方に搭載されている場合には、作動したエアバッグとの接触による傷害などが生じ得る。
また、図3Bに示すように、前部座席4に乗員Y、後部座席5に乗員Xが着座し、かつ乗員Xと乗員Yとが対面している状況にあっては、乗員X、Yの傷害値がより高くなる。このような状況は、例えば、車両がいわゆる自動運転システムにより、運転者の操作によらずに車両が走行している場合などに起こり得る。
このような着座状況において車両に異常な相対加速度が生じた場合には、図3Bに示すように、後部座席5に着座している乗員Xは、上記の説明のように、前方への相対加速度αがかかり、回転トルクT1が生じて頭部が前方に飛び出した体勢となる。
一方、前部座席4に着座している乗員Yは、前方への相対加速度αがかかり、前部座席4のシートバック7に乗員Yがぶつかることとなる。その後、乗員Yは、前部座席4のシートバック7にぶつかった反動によって、図3Bに示すように、後方への相対加速度βが生じる。このとき、乗員Yの頭部をmとし、乗員Yの高さをr2とすると、乗員Yは、その頭部が回転トルクT2の作用により後方へと飛び出す体勢となる。なお、この回転トルクT2は、図3Bに示すように、頭部重量m、相対加速度βおよび高さr2の積、すなわちm×β×r2となる。
その結果、乗員Xの頭部と乗員Yの頭部とが接近することとなり、乗員X、Yが接触して傷害が生じ得る。
そこで、上記のような乗員X、Yの傷害が発生することを防止するため、本実施形態の座席姿勢制御装置10は、図4Aに示す座席の姿勢制御を実行する構成とされている。
以下、説明の簡略化のため、座席の向きが図3Bに示す後部座席5のようになっている状態を「前向き」と称し、図3Bに示す前部座席4のようになっている状態を「後向き」と称する。
乗員が着座している座席は、座席姿勢制御装置10による姿勢制御(以下、単に「姿勢制御」という)により、図4Aに示すように、座面6およびシートバック7の姿勢が変更される。
座面6は、姿勢制御がなされると、図4A中の太矢印に示すように、図示しないシートモータなどにより、シートバック7と反対側の端部6aが上方向に持ち上げられる。これは、後述するシートバック7の姿勢制御に伴って、乗員が座席から滑り落ちて他の座席の下に潜り込むサブマリン現象が生じることを防止し、乗員の傷害値を低減するためである。なお、座面6は、座席が前向きの状態、後向きの状態のどちらであっても、上記のように端部6aが上方向に持ち上げられる。
シートバック7は、姿勢制御がなされると、図4A中の太矢印に示すように、図示しないシートモータなどにより、より後方に向かってヘッドレスト8と共に倒れ込む。これは、図4Bに示すように、着座している乗員Xの頭部と腰部との上下方向における距離を相対的に小さくすることで、乗員Xにかかる回転トルクの作用を小さくするためである。
具体的には、図4Bに示すように、姿勢制御後の座席に着座する乗員Xの高さをr3とすると、この状態において乗員Xにかかる回転トルクT3は、m×α×r3となる。この高さr3は、シートバック7が後方に倒れ込んでいるため、姿勢制御前の座席に着座する乗員Xの高さr1よりも相対的に小さい。そのため、姿勢制御を行った状態において乗員Xにかかる回転トルクT3は、姿勢制御を行わない状態において乗員Xにかかる回転トルクT1よりも小さい。つまり、座席の姿勢制御により、乗員Xが前方に飛び出す度合いが低減され、ひいては乗員Xの傷害値が低減されることとなる。
シートバック7は、上記のように、姿勢制御により、着座している乗員にかかる回転トルクの作用が小さくなる方向、すなわち乗員と反対側の方向に倒れ込む。具体的には、シートバック7は、姿勢制御がなされると、前向きの状態となっているときには、乗員の反対側、すなわち後方に向かって倒れ込み、後向きの状態となっているときには、乗員の反対側、すなわち前方に向かって倒れ込む。言い換えると、シートバック7は、前向きの状態であるか、後向きの状態であるかを問わず、当該座席に着座する乗員の反対側(座面6の反対側)に向かって倒れ込む。
この姿勢制御は、特定座席それぞれ独立して行われるため、乗員が全員前を向いた状態で着座している場合、乗員同士が対面して着座している場合のいずれであっても、乗員の傷害値を低減することができる。
なお、上記の座面6およびシートバック7の姿勢制御後の位置に対応するデータついては、例えば、制御部14のROMにあらかじめ格納され、姿勢制御の実行の際に、CPUにより読み込まれる。
(処理操作例)
次に、本実施形態の構成による具体的な処理操作例について、図5を参照して説明する。制御部14のCPUは、図5に示す座席姿勢制御ルーチンを、所定時間(例えば0.5msec)毎に繰り返し起動する。
座席姿勢制御ルーチンが起動されると、CPUは、まず、ステップS510にて、物体検出部11により物体が検出されたか否かを判定する。物体が検出されなかったと判定された場合、すなわちステップS510にてNOの場合には、CPUは、座席姿勢制御ルーチンを一旦終了する。
一方、物体が検出されたと判定された場合、すなわちステップS510にてYESの場合には、CPUは、処理をステップS520に進行させる。続いて、ステップS520にて、CPUは、物理量取得部12から検出物体の車両1からの距離データを取得し、検出物体と関連付けつつ、不揮発性RAMに格納する。その後、CPUは、処理をステップS530に進行させる。
ステップS530にて、CPUは、ステップS520の実行により不揮発性RAMに格納された、検出物体および距離データを読み出して、車両1と検出物体とが衝突する可能性があるか否かを判定する。
なお、衝突可能性の判定については、図示しない他のセンサなどを用いて上記したデータ以外のデータ(例えば車両速度など)を取得し、そのデータを判定に用いてもよい。衝突可能性の判定処理については、公知の方法を採用できるため、本明細書ではその詳細な説明を省略する。
車両1と検出物体とが衝突する可能性があると判定された場合、すなわちステップS530にてYESの場合、CPUは、処理をステップS540に進行させる。続いて、ステップS540にて、CPUは、特定座席の座面6およびシートバック7を上記の動作概要にて説明した所定の位置とする駆動信号を出力する。これが、出力部143による特定座席の姿勢制御の指示である。この駆動信号に基づき、シートモータが特定座席の座面6およびシートバック7を所定の位置とし、特定座席の姿勢を変更する。これが、姿勢変更部15による特定座席の姿勢変更である。ステップS540の処理が終了したら、CPUは、座席姿勢制御ルーチンを一旦終了する。
一方、車両1と検出物体とが衝突する可能性はないと判定された場合、すなわちステップS530にてNOの場合、CPUは、処理をステップS550に進行させる。続いて、ステップS550にて、特定座席に衝撃が生じたか否かを判定する。
特定座席に衝撃が生じなかったと判定された場合、すなわちステップS550にてNOの場合には、CPUは、座席姿勢制御ルーチンを一旦終了する。
特定座席に衝撃が生じたと判定された場合、すなわちステップS550にてYESの場合には、CPUは、処理をステップS560に進行させる。ステップS560にて、CPUは、特定座席の座面6およびシートバック7の駆動信号を出力する。これにより、乗員にかかる相対加速度による負荷を緩和し、傷害値を低減できるように特定座席の姿勢が変更される。ステップS560の処理が終了したら、CPUは、座席姿勢制御ルーチンを一旦終了する。本実施形態の座席姿勢制御装置10によれば、車両1が物体と衝突した場合に、車両1と検出物体との衝突する可能性があると判定されたときには、その衝突前に乗員が着座している特定座席の姿勢を乗員が安全な体勢となるように変更することができる。車両1が物体と衝突する前に、その衝突可能性があることを判定できなかった場合であっても、その衝突の際に乗員が着座している特定座席の姿勢を上記と同様に変更することができる。
つまり、座席姿勢制御装置10は、図5に示すように、衝突が発生する可能性があると判定された場合には、座席制御Aが実行され、座席に衝撃が生じたと判定された場合には、座席制御Bが実行される構成とされている。いずれの場合であっても、乗員にかかる相対加速度による回転トルク、すなわち負荷が緩和される座席姿勢、かつサブマリン現象を防止する座席姿勢とされるため、乗員の姿勢を安全な体勢とすることができ、傷害値を低減することが可能となる。また、衝撃が生じたと判定された場合における座席姿勢制御では、乗員にかかる異常な加速度変化の抑制による傷害値の低減の効果も期待される。
また、この座席の姿勢制御は、前部座席4および後部座席5それぞれ独立で行われるため、乗員がどの座席に着座していても車両1と物体との衝突時における乗員の傷害値の低減を実現できる。特に、前部座席4に着座している乗員と後部座席5に着座している乗員とが対面している場合において、両乗員同士の接触を防止でき、それぞれの乗員の傷害値を低減することができる。
(変形例1)
次に、変形例1について、図6ないし図8を参照して説明する。図8では、上記実施形態との相違点を分かり易くするため、本変形例の座席姿勢制御装置20の動作例のうち上記実施形態との相違点を含む一部だけを示している。
変形例1にかかる座席姿勢制御装置20は、図6に示すように、さらに乗員姿勢検出部16を有し、乗員姿勢検出部16で得られた乗員姿勢に基づいて特定座席の姿勢制御を行う点において、上記実施形態と相違する。本変形例では、この相違点について主に説明する。
乗員姿勢検出部16は、車両1の座席に着座している乗員の姿勢を検出するものであり、例えば、車室3内を撮像するカメラなどが採用され得る。例えば、乗員姿勢検出部16は、カメラとされた場合、CCD(Charge Coupled Deviceの略)センサまたはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductorの略)センサ等のイメージセンサを内部に備え、画像データを生成および出力する構成とされる。
乗員姿勢検出部16は、例えば、図6に示すように、車室3内に複数配置される。具体的には、乗員姿勢検出部16は、例えば、車室3の車幅方向における中央部であって、車長方向における前部と後部とにそれぞれ配置され、前者が前部座席4側を含む第1の視野領域を、後者が後部座席5を含む第2の視野領域を撮像する。これにより、乗員姿勢検出部16は、前部座席4および後部座席5の乗員を撮像し、乗員の姿勢を検出することができる。
なお、乗員姿勢検出部16は、カメラにより構成された場合には、「車室内カメラ」と称され得る。乗員姿勢検出部16は、乗員の姿勢を検出できればよく、その配置や数などについては任意であり、上記の例に限られるものではない。
座席姿勢制御装置20は、図7に示すように、衝突判定部141により車両1が検出物体と衝突する可能性があると判定された場合に、乗員姿勢検出部16で得られた乗員姿勢を加味した上で出力部143から駆動信号が出力される構成とされている。
具体的には、座席姿勢制御装置20では、図8に示すように、上記実施形態のステップS530でYESの場合において、ステップS820による姿勢制御の処理に進む前に、ステップS810が行われる。
ステップS810にて、CPUは、乗員姿勢検出部16から座席に着座している乗員姿勢にかかるデータを取得し、これを着座している座席と関連付けしつつ、不揮発性RAMに格納する。
続いて、ステップS820にて、本変形例では、CPUは、乗員姿勢にかかるデータを目的変数とし、この目的変数が所定の値となるように特定座席の座面6およびシートバック7の姿勢を変更する駆動信号を出力する。つまり、ステップS820は、乗員姿勢検出部16から得られたデータを加味する点以外の点では、上記図5のステップS540と同様の処理である。
その結果、姿勢変更部15により特定座席の座面6およびシートバック7が所定の位置となるように制御される。言い換えると、本変形例では、乗員の姿勢を特定した上で、当該乗員が着座している特定座席の座面6およびシートバック7を所定の姿勢とすることにより、当該乗員の姿勢を傷害値が低くなる姿勢へと制御するように構成されている。
一方、ステップS550でYESの場合には、CPUは、処理をステップS830に進行させる。ステップS830にて、CPUは、上記のステップS810と同じ処理を実行する。その後、ステップS840にて、CPUは、ステップS830で取得した乗員の姿勢に関するデータを読み出し、これを加味した座席の駆動信号を出力し、特定座席の姿勢制御を実行する。
本変形例の座席姿勢制御装置20は、姿勢制御の実行前における特定座席の姿勢に加えて、当該特定座席に着座している乗員の姿勢を特定した上で、当該乗員の姿勢が所定の姿勢となるように特定座席の姿勢制御を行う構成となる。つまり、上記実施形態では、主として特定座席の姿勢に基づいて特定座席の姿勢制御を行うのに対し、本変形例によれば、乗員の姿勢を加味した上で特定座席の姿勢制御を行うため、より乗員の傷害値低減に効果的な座席姿勢制御装置となる。
(変形例2)
次に、変形例2について、図9を参照して説明する。
変形例2にかかる座席姿勢制御装置は、図9に示すように、座席にシートテーブル9を備える車両1に採用され、シートテーブル駆動部17をさらに備える。本変形例の座席姿勢制御装置は、図5に示すステップS530の座席制御AおよびステップS560の座席制御Bにて、CPUが特定座席の姿勢制御に加えて、さらにシートテーブル9を駆動して収納するための駆動信号を出力する。本変形例の座席姿勢制御装置は、上記の点において上記実施形態と相違する。本変形例では、この相違点について主に説明する。
シートテーブル9は、例えば、座席の左右方向のいずれかであって、車幅方向における中央部側に配置される。シートテーブル9は、シートテーブル駆動部17により駆動させられるようになっている。
シートテーブル駆動部17は、少なくとも特定座席の姿勢制御の際に、シートテーブル9を駆動するものであり、任意のモータなどが採用され得る。
乗員がシートテーブル9を備える座席に着座している場合に、車両1と物体との衝突により乗員に相対加速度が生じると、シートテーブル9と接触し、傷害が生じ得る。そこで、本変形例の座席姿勢制御装置は、特定座席の姿勢制御を行う場合において、座面6およびシートバック7の姿勢制御よりも前、またはこれと同時にシートテーブル駆動部17によりシートテーブル9を収納する制御を行う構成とされている。
これにより、特定座席の姿勢制御が実行される場合、当該特定座席のシートテーブル9は、座面6およびシートバック7と共に駆動して収納され、乗員の傷害値が増加しない制御がなされることとなる。
本変形例によれば、シートテーブル9を備える座席に乗員が着座している場合において、当該座席の姿勢制御が実行されるとき、シートテーブル9も駆動して収納されるように構成された座席姿勢制御装置となる。これにより、上記実施形態の効果に加えて、座席の姿勢制御の際に、シートテーブル9に起因する乗員の傷害値の増加を防止する効果が得られる座席姿勢制御装置となる。
(変形例3)
次に、変形例3について、図10、図11を参照して説明する。図13では、本変形例の座席姿勢制御装置による動作例のうち図5に示す上記実施形態と相違する部分を含む一部について示している。
変形例3にかかる座席姿勢制御装置は、図10に示すように、乗員が装着するシートベルト(図10中の破線部分)を巻き上げるシートベルト駆動部18を有する。本変形例の座席姿勢制御装置は、図5に示すステップS530の座席制御Aにて、CPUが特定座席の姿勢制御に加えて、さらにシートベルト駆動部18を駆動するための駆動信号を出力する。本変形例の座席姿勢制御装置は、これらの点で上記実施形態と相違する。本変形例では、この相違点について主に説明する。
本変形例の座席姿勢制御装置は、図11に示すように、特定座席の姿勢制御を実行する場合において、当該姿勢制御の実行前にシートベルト駆動部18を作動させ、乗員を特定座席に拘束するように構成されている。具体的には、本変形例では、図11に示すように、ステップS530でYESの場合には、座席制御Aの前にステップS1110の処理が実行される。
ステップS1110にて、CPUは、シートベルトを巻き上げて乗員を座席に拘束するため、シートベルト駆動部18の駆動信号を出力する。その後、CPUは、処理をステップS540に進行させる。
本変形例によれば、特定座席の姿勢制御を行う前に、乗員を予め当該特定座席に拘束し、乗員を特定座席の姿勢と同じ状態とした上で特性座席の姿勢制御が行われる。そのため、本変形例では、乗員を特定座席と同じ姿勢に制御することが容易となり、上記実施形態よりもさらに乗員の傷害値を低減する効果が期待される。
(変形例4)
次に、変形例4について、図12、図13を参照して説明する。図13では、本変形例の座席姿勢制御装置30による動作例のうち図5に示す上記実施形態の動作例と相違する部分を含む一部について示している。
変形例4にかかる座席姿勢制御装置30は、図12に示すように、上記実施形態の加速度センサ13を「第1加速度センサ」として、第2加速度センサ19と乗員加速度推定部144を備える点で、上記実施形態と相違する。本変形例では、この相違点について主に説明する。
第2加速度センサ19は、車両1の加速度(以下「車両加速度」という)を測定するものであり、車体2の任意の箇所に配置される。第2加速度センサ19で得られる車両加速度は、例えば不揮発性RAMに格納され、主として後述する乗員加速度推定部144にて用いられる。なお、この第2加速度センサ19は、「車両加速度センサ」または「車体加速センサ」と称され得る。
乗員加速度推定部144は、第2加速度センサ19で得られる車両加速度に基づき、異常な車両加速度が発生した場合に、乗員にかかる相対加速度(以下「乗員加速度」という)を推定するものであり、制御部14の一部として組み込まれている。この乗員加速度推定部144に対応するプログラムは、例えば、ROMに予め記憶されている。
座席姿勢制御装置30では、図13に示すように、ステップS550でYESの場合、CPUは、処理をステップS1310に進行させ、ステップS1320での座席制御Bの実行前に、乗員加速度を推定する。
ステップS1310において推定された乗員加速度は、例えば、不揮発性RAMに格納され、ステップS1320での座席制御Bにおける座面6およびシートバック7の位置決定に使用される。本変形例では、例えば、乗員加速度と、これを低減する座面6およびシートバック7の位置データとが関連付けられた状態でROMに格納されている。
ステップS1320にて、CPUは、推定された乗員加速度に基づき、座面6およびシートバック7をこの乗員加速度を低減する位置をROMから読みだして実行し、座面6およびシートバック7の駆動信号を出力する。
本変形例によれば、座席加速度を検出する前に、車両加速度に基づいて乗員加速度を推定し、推定された乗員加速度を利用して座席の姿勢制御が実行される座席姿勢制御装置となる。つまり、座席加速度に基づく座席姿勢制御よりも早いタイミングで、座席姿勢制御を実行できるため、駆動信号に対する姿勢変更部15の応答性を高めなくても、時間的余裕をもって座席制御を行える座席姿勢制御装置となる。
(変形例5)
次に、変形例5について、図14、図15を参照して説明する。図15では、図13に示す座席制御Bに相当する座席制御であって、本変形例における動作例を示している。
変形例5にかかる座席姿勢制御装置40は、図14に示すように、変形例4にかかる座席姿勢制御装置30に、座席姿勢推定部145と補正部146とをさらに加えた構成とされている。
座席姿勢推定部145は、制御部14の一部であって、出力部143による駆動信号の出力後において、第1加速度センサ13による座席加速度と第2加速度センサ19による車両加速度の差分に基づき、座席の姿勢変化、すなわち制御途中の座席姿勢を推定する。座席姿勢推定部145に対応するプログラムは、例えばROMなどに格納されている。
補正部146は、制御部14の一部であって、座席姿勢推定部145により推定された座席の姿勢(位置)と、姿勢変更部15による制御後の座席の姿勢(位置)との差分に基づき、必要に応じて、出力部143の駆動信号の補正を行う。補正部146に対応するプログラムは、例えばROMなどに格納されている。
具体的には、図15に示すように、本変形例における座席制御Bでは、ステップS1510にて、CPUは、座面6およびシートバック7の位置や駆動における力などの制御量を決定する。続いて、CPUは、処理をステップS1520に進行させ、座面6およびシートバック7の駆動信号を出力する。その後、ステップS1530にて、姿勢変更部15が座面6およびシートバック7を駆動し、制御が完了する前に、座席姿勢推定部145により座席の姿勢を推定する。そして、CPUは、処理をステップS1540に進行させる。
ステップS1540にて、CPUは、推定した座席の姿勢と制御後の座席の姿勢との差分が所定の値よりも大きいか否かを判定する。ステップS1540でNOの場合、CPUは、補正部146を動作させることなく、座面6およびシートバック7の駆動が終了した後、座席制御Bの処理を終了させる。
一方、ステップS1540でYESの場合、ステップS1550にて、CPUは、補正部146により出力部143の駆動信号の補正量を決定する。そして、CPUは、処理をステップS1510に再度進行させ、座席の位置や制御量の再決定を行う。その後、CPUは、処理をステップS1520に進行させ、上記と同様の処理を繰り返す。
つまり、本変形例の座席姿勢制御装置40は、座席姿勢推定部145により座席の姿勢を推定し、必要に応じて、補正部146によるフィードバックを行う構成とされている。
なお、ステップS1540における所定の値については、任意である。また、駆動信号の補正量の決定については、公知の方法を採用でき、上記の方法に限定されない。
本変形例によれば、姿勢制御中における座席の姿勢を推定し、必要に応じてその補正を行うため、変形例4による座席姿勢制御装置の精度をより高めることができる。
(変形例6)
次に、変形例6について、図16、図17を参照して説明する。
変形例6にかかる座席姿勢制御装置50は、図16に示すように、乗員姿勢検出部16と、姿勢判定部147とを備える点で、上記実施形態と相違する。本変形例では、この相違点について主に説明する。
姿勢判定部147は、制御部14の一部であって、乗員姿勢検出部16で検出した乗員の姿勢が、座席の姿勢制御を実行した場合に危険な姿勢であるか否かを判定する。姿勢判定部147に対応するプログラムは、例えばROMなどに格納されている。この危険な姿勢についての判定は、例えば、危険な姿勢に対応するデータをROMに格納しておき、CPUに検出された姿勢のデータと危険な姿勢のデータとを照合させることなどによって行われる。
なお、ここでいう「危険な姿勢」とは、例えば、座席に着座せずに乗員が身を乗り出した姿勢や乗員がチャイルドシートに着座している姿勢であるなど、座席の姿勢制御を実行すると、却って乗員の傷害値が大きくなり得る姿勢を意味する。
本変形例では、図17に示すように、座席制御Aを実行する前および座席制御Bを実行する前に、乗員の姿勢を検出すると共に、検出された乗員の姿勢が危険な姿勢か否かを判定し、危険な姿勢である場合には、座席制御AまたはBを実行しない構成とされている。つまり、座席姿勢制御装置50は、上記変形例1の座席姿勢制御装置20の処理に加えて、さらに、危険な姿勢であるか否かの判定を実行することと、危険な姿勢であると判定した場合には座席制御AまたはBの処理をスキップすることとを行う構成とされている。
具体的には、本変形例では、図17に示すように、上記変形例1と同様に、ステップS530にて車両1と検出物体とが衝突する可能性があると判定された場合、ステップS810の処理が実行され、乗員姿勢検出部16により乗員の姿勢に係るデータを取得する。その後、CPUは、処理をステップS1710に進行させ、ステップS810で取得した乗員の姿勢が危険な姿勢であるか否かの判定を行う。
ステップS1710にて危険な姿勢でないと判定された場合、すなわちステップS1710でNOの場合には、CPUは、処理をステップS540に進行させ、座席制御Aを実行する。その後、CPUは、座席姿勢制御ルーチンを一旦終了する。
一方、ステップS1710にて危険な姿勢であると判定された場合、すなわちステップS1710でYESの場合には、CPUは、ステップS540の処理をスキップして、座席姿勢制御ルーチンを一旦終了する。
また、本変形例では、図17に示すように、上記変形例1と同様に、ステップS550にて座席に衝撃が発生したと判定された場合、ステップS830の処理が実行され、乗員姿勢検出部16により乗員の姿勢に係るデータを取得する。その後、CPUは、処理をステップS1720に進行させ、ステップS830で取得した乗員の姿勢が危険な姿勢であるか否かの判定を行う。
ステップS1720にて危険な姿勢でないと判定された場合、すなわちステップS1720でNOの場合には、CPUは、処理をステップS840に進行させ、座席制御Bを実行する。その後、CPUは、座席姿勢制御ルーチンを一旦終了する。
一方、ステップS1720にて危険な姿勢であると判定された場合、すなわちステップS1720でYESの場合には、CPUは、ステップS540の処理をスキップして、座席姿勢制御ルーチンを一旦終了する。
本変形例によれば、乗員の姿勢を検出した上で、乗員の姿勢が座席の姿勢制御を実行すると、却って乗員の傷害値が大きくなり得る場合には、座席の姿勢制御を実行しない構成とされる。そのため、座席姿勢制御による傷害値の増加を防止できる座席姿勢制御装置となる。
(他の実施形態)
なお、上記した実施形態に示した座席姿勢制御装置は、本発明の座席姿勢制御装置の一例を示したものであり、上記の各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
(1)例えば、変形例2では、乗員が着座している特定座席にシートテーブル9が備えられている場合について説明したが、後部座席5については、その真正面に配置された前部座席4の背面側に備えられていてもよい。この場合において、前部座席4が、姿勢制御が実行される後部座席5と対面配置されていないとき、例えば、後部座席5の姿勢制御の実行に伴ってシートテーブル9が収納される制御とすればよい。
(2)上記実施形態および各変形例は、明らかに組み合わせが不可能であるものを除き、それぞれ自由に組み合わせられてもよい。