以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る画像付与装置(画像付与システム)について図1を参照して説明する。図1は同画像付与装置の使用形態の一例の示す斜視説明図である。
画像付与装置(画像付与システム)1000は、カセット200と、印刷装置1と、本発明に係る加熱装置500とを備えている。印刷装置1は、カセット200が着脱可能で、カセット200に保持された印刷対象(被印刷部材)でもある布地400に画像を印刷する。加熱装置500は、カセット200を収容可能であり、布地400を保持したカセット200ごと収容して、布地400を加熱して画像を定着する。
この画像付与装置1000の印刷装置1と加熱装置500とは別体であり、印刷装置1と加熱装置500を並べて配置する形態で使用することも、印刷装置1と加熱装置500とを積み重ねる形態で使用することもできる。なお、印刷装置1と加熱装置500とは離れた位置に配置することもできる。印刷装置1と加熱装置500とを積み重ねて設置することによって設置面積の効率化を図ることができる。
この画像付与装置1000によって布地400に画像を付与するときには、布地400を保持したカセット200を印刷装置1にセット(装着)し、印刷装置1によって布地400に画像を印刷する。
印刷装置1による布地400への画像の印刷が終了したときには、印刷装置1から布地400を保持したままのカセット200を取り出す。そして、加熱装置500の扉部材である前扉(前カバー、前ドア)502を開き、印刷された布地400を保持したままのカセット200を加熱装置500内に収容し、前扉502を閉じて、加熱装置500でカセット200ごと布地400を加熱する。布地400を加熱することによって布地400に印刷された画像が布地400に定着する。
つまり、画像が付与される布地400を布地保持部材であるカセット200に保持する工程と、布地保持部材であるカセット200に保持された状態で布地400に対して画像を印刷する工程と、布地400を保持した状態の布地保持部材であるカセット200を、本発明に係る加熱装置500の受け部材503(図9参照)に保持し、布地400を加熱する工程とを行って、布地400に画像を付与する。
このように、布地保持部材であるカセット200を印刷装置1と加熱装置500の両方で共用できる。これにより、印刷した布地400を印刷したときの状態のまま保持して加熱装置500にセットすることができ、布地400を持ち運んでも皺が寄ったり、一部が重なったりして印刷面が乱れることはなく、布地400に対する画像付与の作業性が向上する。
次に、印刷装置の一例について図2ないし図4を参照して説明する。図2は同印刷装置の外装を外した状態の斜視説明図である。図3は同印刷装置のステージが着脱位置にある状態でのヘッドより下側の機構部の平面説明図、図4は同印刷装置のステージが最奥まで移動した状態でのヘッドより下側の機構部の平面説明図である。なお、図3(a)及び図4(a)はカセットを装着していないときを、図3(b)及び図4(b)はカセットを装着しているときを示している。また、カセットで保持している布地は省略している。
印刷装置1は、装置本体100内に、被印刷部材でもある布地400を保持する布地保持部材であるカセット200を着脱可能に保持して進退移動する受け部材であるステージ111と、ステージ111で保持されたカセット200に保持されている布地400に印刷する印刷手段112とを備えている。
ここで、布地400としては、ハンカチ、タオルなどの一枚の布地で形成されるものだけではなく、Tシャツ、トレーナーなどの衣服として加工された布地、トートバック等の製品の一部となっている布地も用いることができる。
ステージ111は、ガイド部材113に沿って矢印Y方向(送り方向)に移動可能に配置されている。ステージ111が移動することで、ステージ111に着脱可能に装着されたカセット200もY方向に移動する。
印刷手段112は、ステージ111に対して矢印X方向(主走査方向)に移動するキャリッジ121を有し、キャリッジ121には液体吐出ヘッドを備えている。すなわち、この印刷装置1はインクジェット記録方式で画像を形成する装置であるが、これに限るものではない。
この印刷装置1においては、カセット200のプラテン部材300に布地400をセットした状態で、装置本体100内のステージ111にカセット200を装着して保持する。そして、ステージ111の矢印Y方向への移動と印刷手段112(キャリッジ121)の矢印X方向への往復移動を繰り返すことで、布地400に所要の画像を印刷する。
ここで、ステージ111はZ方向にも昇降可能とし、カセット200に保持されている布地400の表面高さを検知してステージ111を昇降させることで、布地400とヘッドとのギャップを所定のギャップに調整可能としている。つまり、印刷動作では布地400の厚みにかかわらず、液体吐出ヘッドと布地400の表面とのギャップが一定になるようにしている。
印刷動作では、カセット200を装着したステージ111を、図3の位置から図4の位置に移動させながら印刷してもよいし、一旦、図4の位置まで移動した後、図3の位置に戻しながら印刷してもよい。
次に、カセットの概要について図5ないし図7も参照して説明する。図5は同カセットの斜視説明図、図6は同じくカセットの外周カバーを開いた状態の斜視説明図、図7は同じく図6の面S1における断面に相当するカセットの長手方向に沿う概略断面説明図である。
カセット200は、ベース部材201と、布地400の印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテン部材300とを有している。
プラテン部材300は、プラテン構造体302と、布地400を平坦な状態で保持する面を構成する断熱部材301とで構成されている。断熱部材301は、加熱装置による加熱に対して耐熱性を有する。
そして、ベース部材201には、外周カバー部材202の一端部がヒンジ203で回転可能に取り付けられ、外周カバー部材202はベース部材201に対して矢印方向に開閉可能に設けられている。
外周カバー部材202は、プラテン部材300に対応する部分に開口部202aを有する枠部202bを備え、枠部202bとプラテン部材300の外周部分のフランジ部300aとの間で布地400を押さえる。
プラテン部材300はベース部材201に対して支持部311で支持して、プラテン部材300とベース部材201との間には布地400の余剰部分400aを収容できる収容空間312を形成している。余剰部分400aは、例えばTシャツの前面に印刷を行う場合においては、両袖や襟口、すそ等が該当する。
ここで、プラテン部材300はベース部材201から着脱可能であり交換可能に形成されている。これによりプラテン部材300を複数用意し、印刷動作中に別のプラテン部材300に衣類を巻き付けておくことができ、印刷、定着終了後にプラテン部材300を交換するだけで速やかに次の布地の印刷を開始することができる。
このカセット200に布地400をセットするときには、図6に示すように、外周カバー部材202を開いて、プラテン部材300上に布地400をセット(保持)する。このとき、布地400の余分な部分(余剰部分)400aを図7に示すように、収容空間312内に収容した状態で、図5に示すように、外周カバー部材202を閉じる。
そして、布地400に印刷するときには、布地400をセットしたカセット200を印刷装置1の装置本体100のステージ111上に装着する(セットする)。
このように、カセット200は装置本体100から全体を取り出した状態にして印刷対象である布地400をプラテン部材300上にセットすることができるので、プラテン部材300への布地400のセット作業が容易になる。
このようなカセット200は印刷装置1で印刷が完了した後、布地400を保持したまま、加熱装置500にセットし(移して)、画像が印刷された布地400を加熱して定着する。
また、このカセット200において、プラテン部材300を支持する支持部311は、ベース部材201側の中空支柱部231と、中空支柱部231に移動可能に嵌め合わされたプラテン部材300側の中空支柱部331と、中空支柱部231と中空支柱部331との間に配置した圧縮スプリング313とを備えている。
これにより、プラテン部材300はベース部材であるベース部材201に対して変位可能に支持される。
また、外周カバー部材202にロック爪部材204aを備えている。ロック爪部材204aは、外周カバー部材202のヒンジ203でベース部材201に対して開閉可能に保持された側と反対側に配置されている。
一方、ベース部材201にはロック爪部材204aを保持し、あるいは、ロック爪部材204aの保持を解除するロック爪保持部材204bを備えている。
これらのロック爪部材204aとロック爪保持部材204bでプラテン部材300の周縁部を覆う外周カバー部材202のベース部材201に対する高さを規制するロック手段204を構成している。
このように構成したので、布地400の厚みが変化したときにプラテン部材300がスプリング313の復元力に抗して下降してベース部材201との間隔が変化し、異なる厚みの布地400にも対応することができる。
そして、プラテン部材300は常に外周カバー部材202に一定の力で押し付けられることになるので、カセット200を持ち運びしたときでも布地400のずれが起き難い。
また、布地400の厚みが変わった場合でも、プラテン部材300が下がることで、プラテン部材300と外周カバー部材202の隙間を確保するため、布地400の厚みを変えても外周カバー部材202のベース部材201に対する高さは変わらない。
つまり、プラテン部材300に保持される布地400の表面高さは外周カバー部材202のベース部材201に対する高さが基準となる。
これにより、ロック手段204による外周カバー部材202のベース部材201に対するロック位置を固定化することができ、カセット200自体の構成を簡易にすることができる。また、ロック位置が変わらないことで、使用者の操作が容易になる。
また、印刷手段112に液体吐出ヘッドを使用する場合、液体吐出ヘッドと液体を付与する対象表面との距離が狭いほど精度のよい画質が得られる。
この場合、プラテン部材300を変位可能として、プラテン部材300の周縁部を外周カバー部材202に押し当てることで、布地400の厚みが変化しても外周カバー部材202によって布地400の表面高さを規定するので、画質を向上できる。
また、プラテン部材300を変位可能とする場合、印刷手段112のヘッドの移動面に対してプラテン部材300の表面の平行度を確保するためには、支持部311をプラテン部材300の周縁部側で保持することが好ましい。しかしながら、このようにすると、支持部311が布地400の余剰部分400aの収容の妨げになる。
これに対して、外周カバー部材202の高さでプラテン部材300に保持される布地400の表面高さを規定することで、支持部311をプラテン部材300の内側に配置することができ、支持部311の数も減らすことができる。これにより、布地400の余剰部分400aを容易に収容できるようにすることができる。
次に、本発明の第1施形態に係る加熱装置について図8ないし図12を参照して説明する。図8は同加熱装置の外観斜視説明図、図9は同加熱装置の前扉を開いた状態の斜視説明図である。図10は同加熱装置の長手方向(カセット出し入れ方向)に沿う模式的断面説明図、図11は同加熱装置の使用形態の説明に供する長手方向(カセット出し入れ方向)に沿う模式的断面説明図である。図12は同じく加熱装置の短手方向(カセット出し入れ方向と直交する方向)に沿う模式的断面説明図である。
この加熱装置500は、本実施形態では布地を加熱する加熱装置であり、装置本体501と、装置本体501の前面側に設けられ、カセット200を出し入れする装置本体501の開口部511を開閉する扉部材である前扉(前カバー)502を備えている。
前扉502は、図10に示す矢印方向に開閉可能であって、図9に示すように開いて倒すことが可能に設けられている。前扉502を開くことで、開口部511を通じて、加熱対象である布地400を保持した布地保持部材であるカセット200を、装置本体501内に対して出し入れすることができる。
装置本体501の内部(装置本体内)には、加熱対象部材である布地400を着脱可能に保持する保持部材としてのカセット200を出し入れ可能に保持する受け部材(テーブル)503が配置されている。
受け部材503は、印刷装置1のステージ111と同様に、カセット200が着脱可能に装着されることで保持する部材、あるいは、カセット200を単に載置することで保持するテーブルなどで構成できる。
そして、受け部材503の上方には、カセット200に保持された布地400を加熱する加熱手段504が配置されている。
加熱手段504は、カセット200に保持されている布地400に対向する発熱手段であるヒータ542と、ヒータ542による受け部材503側と反対側への熱を断熱する断熱部材543とを備えている。断熱部材543と装置本体501の内壁面との間には空間506が設けられている。
ヒータ542の受け部材503との対向面は、装置本体501内にセットされたカセット200に保持された布地400の露出した面に略平行に位置するよう構成されている。
なお、ヒータ542の受け部材503側には、例えばアルミなどの熱伝導性に優れた材料で形成した平面部材を設け、ヒータ542による発熱で面温度がほぼ均一になるように加熱する構成とすることもできる。このようにすれば、ヒータ542の加熱位置にかかわらず、面内でほぼ同じ温度で加熱することができる。
加熱手段504は、装置本体501の開口部511側では保持部材508で保持されている。本実施形態では、保持部材508の下方がカセット200を挿入する挿入開口部512となる。ただし、装置本体501の開口部511の上端が保持部材508の下端よりも下方に位置する構成としたときには、開口部511が挿入開口部512となる。
受け部材503は、昇降手段となる上下動機構(位置切替機構)507によって保持されて、加熱手段504に対して3段階で上下方向(相対距離が変化する方向)に相対移動可能に配置されている。
ここで、受け部材503に加熱手段504に対する相対位置には、図10に示す待機位置(第1位置)と、図11(a)に示す非接触加熱位置(第2位置)と、図11(b)に示す接触加熱位置(第3位置)とがある。このとき、受け部材503と加熱手段504との相対距離は、待機位置が最も長く、非接触加熱位置は接触加熱位置よりも長く、接触加熱位置は最も短い(接触した状態にある)。
図10の待機位置は、カセット200を出し入れするときの位置である。図11(a)の非接触加熱位置は、布地400が加熱手段504に非接触で加熱される加熱位置である。図11(b)の接触加熱位置は、布地400が加熱手段504に接触されて加熱される加熱位置(プレス位置)である。
また、図8を参照して、操作パネル520には、予熱動作の開始を指示する自照式予熱開始キー(ボタン)521a、加熱動作の停止を指示するストップキー521b、加熱中を表示する加熱中表示部521cなどが設けられている。
ここで、受け部材の上下動機構の一例について図13及び図14を参照して説明する。図13は同上下動機構の斜視説明図、図14は同上下動機構の内のカム機構部分の斜視説明図である。
受け部材(テーブル)503は、テーブル上下動機構555上に保持されている。
上下動機構507は、受け部材503を保持した保持テーブル556(図9参照)と、保持テーブル556を上下動させるカム機構部557を備えている。
カム機構部557は、装置本体501の底板部551に水平方向に回転可能に保持された位置切替レバー部材である操作レバー558を有している。操作レバー558には、高さの異なる第1傾斜カム部561と、第2傾斜カム部562とを備えている。なお、第1傾斜カム部561が第2傾斜カム部562よりも最上面の高さが低いものとする。
一方、保持テーブル556の底面には、第1傾斜カム部561を倣う第1コロ563と、第2傾斜カム部562を倣う第2コロ564とをそれぞれ回転可能に保持したコロ保持部材567、568が固定されている。保持テーブル556はこれらの第1コロ563及び第2コロ564を介してカム機構部557上に保持されている。
ここで、図13に示すように、操作レバー558を中央位置である待機位置から矢印HA方向に回転操作することで、保持テーブル556の第1コロ563が第1傾斜カム部561上に載り上げる。これにより、保持テーブル556が第1傾斜カム部561の高さまで上昇し、受け部材503は待機位置から非接触加熱位置まで上昇する。
また、同じく操作レバー558を中央位置である待機位置から矢印HB方向に回転操作することで、保持テーブル556の第2コロ564が第2傾斜カム部562上に載り上げる。これにより、保持テーブル556が第2傾斜カム部562の高さまで上昇し、受け部材503は待機位置から接触加熱位置まで上昇する。
このように、操作レバー558を操作することによって保持テーブル556が上下動し、保持テーブル556で保持された受け部材503上に載置されたカセット200の高さが変わり、布地400と加熱手段504とのギャップ(相対距離)ないし押し付け力を変更することができる。
また、図13に示すように、受け部材503が非接触加熱位置になるまで操作レバー558が矢印HA方向に回転操作されたときに、操作レバー558を検知する第1検知部591を備えている。また、受け部材503が接触加熱位置になるまで操作レバー558が矢印HB方向に回転操作されたときに、操作レバー558を検知する第2検知部592を備えている。
この加熱装置500は、予熱開始キー521aの指示を受けて加熱手段504のヒータ542に給電して予熱を開始し、ヒータ温度が目標温度に達したときに予熱完了を報知する。予熱完了は、例えば、予熱開始キー521aの点滅、加熱中表示部521cの点灯などで行うことができる。
そして、加熱装置500は、非接触加熱を行う場合、操作レバー558が回転操作されて第1検知部591によって受け部材503が非接触位置に移動したことが検知されたときを加熱開始タイミングとして、加熱手段504による布地400の加熱制御(ヒータ542の発熱制御、定着制御ともいう。)を行うようにしている。
次に、加熱装置500の扉ロック手段について図15を参照して説明する。図15は前扉と装置本体との扉ロック手段周りの平面説明図である。
この加熱装置500では、装置本体501に対して扉部材である前扉502をロックする扉ロック手段509を備えている。
扉ロック手段509は、前扉502の上端面に設けられた係止部532(図9も参照)を係止するロック爪533を備えている。ロック爪533は装置本体501に軸部534で回転可能に保持されている。また、ロック爪533の係止部532に係合する側と反対側には、プッシュ型ソレノイド535のプランジャ535aが軸533aで連結されている。
この扉ロック手段509は、ソレノイド535をON状態にすることでロック爪533が実線図示の位置に移動して係止部532に係合し、前扉502が施錠(ロック)される。また、ソレノイド535をOFF状態にすることで、ロック爪533が破線図示の位置に移動して係止部532に係合しなくなり、前扉502が開錠(アンロック)される。
次に、加熱装置の制御部について図16のブロック説明図を参照して説明する。
コントローラ800は、この加熱装置500に係る制御を司り、本発明に係る加熱制御(発熱制御手段)、ロック手段の制御手段などを兼ねており、CPU、ROM、RAM、I/Oなどを含むマイクロコンピュータで構成されている。
コントローラ800は、加熱手段504のヒータ542に対する給電(通電)制御してヒータ542の発熱及び発熱停止並びに発熱量の制御を行う。また、コントローラ800は、操作パネル520の予熱開始キー521a、ストップキー521bなどのキー入力を受け付け、予熱開始キー521aや加熱中表示部521cなどの各種表示部に対する表示制御を行う。
コントローラ800は、第1検知部591によって受け部材503が非接触加熱位置に移動したことの検知信号、第2検知部592によって受け部材503が接触加熱位置に移動したことの検知信号を入力する。また、コントローラ800は、第1検知部591或いは第2検知部592によって操作レバー558が検知された状態から検知されなくなった状態に遷移したときには待機位置に戻されたと判断する。
コントローラ800は、第1温度検知部593からの検知信号、第2温度検知部594からの検知信号なども入力する。ここでは、第1温度検知部593は、加熱手段504のヒータ542の温度(ヒータ温度)を検知する。第2温度検知部594は、加熱対象部材である布地400の温度に相関する温度、例えば、布地400の表面温度、装置本体内の温度を検知する。
また、コントローラ800は、前扉502をロックする扉ロック手段509を制御して、前扉502のロック(施錠)及びロック解除(開錠)を行う。
次に、本発明の第1実施形態における加熱装置の発熱制御について図17及び図18を参照して説明する。図17は同発熱制御の説明に供するフロー図、図18は同発熱制御の具体的な一例を説明する説明図である。
まず、図17を参照して、コントローラ800は、予熱開始キー521aが押されると、加熱手段504のヒータ542に給電してON状態することで予熱動作を開始する。
そして、第1温度検知部593の検知信号からヒータ温度が目標温度T1に到達したか否かを判別する。そして、ヒータ温度が目標温度T1になったときには、予熱を完了し、予熱状態を維持する。
予熱が完了すると、ユーザーは、加熱装置500の前扉502を開けて、例えば液体が付与された布地400を保持したカセット200を受け部材503にセットする。そして、操作レバー558を矢印HA方向に操作してカセット200を非接触加熱位置まで上昇させる。このとき、第1検知部591によって受け部材503が非接触加熱位置に移動されたことが検知される。
そこで、コントローラ800は第1検知部591によって受け部材503が非接触加熱位置に移動されたことが検知されたときを加熱開始(定着開始)タイミングとして加熱動作を開始する。
まず、ヒータ542をON状態にして昇温を開始し、予め定めた昇温時間A1が経過したか否かを判別して、昇温時間A1が経過するまで、ヒータ542を発熱させて昇温を行う。
そして、加熱開始から昇温時間A1が経過したときに、ヒータ542への給電をOFF状態にして発熱を停止し、ヒータ542をOFF状態にして発熱を停止したときから予め定めた加熱時間A2が経過したか否かを判別する。
そして、加熱時間A2が経過した以後に加熱終了(定着終了)の処理をする。
次に、図18を参照して、この例では、ヒータ542の予熱における目標温度をT1、布地400に黄変が生じる黄変温度をT2,布地400に付与した液体の定着に最低限必要な定着下限温度をT3(T1>T2>T3)とする。
そして、予熱開始キー521aが押下されたときからヒータ542に給電して目標温度T1になるまで予熱を行い、目標温度T1になった時点t1から目標温度T1を維持する待機状態に移行する。
ここで、ユーザーが加熱装置500の受け部材503に布地400を保持したカセット200をセットし、操作レバー558を矢印HA方向に操作してカセット200を非接触加熱位置まで上昇させた時点t2から加熱(定着)を開始する。
まず、加熱開始の時点t2から昇温時間A1が経過するまでの間、ヒータ542をON状態にして昇温する。
すなわち、定着開始直後は、ヒータ542にカセット200に保持された布地400に近づくことで、ヒータ542の熱が布地400に伝熱して失われるため、一時的にヒータ542の温度(ヒータ温度)が下がることがある。このとき、予熱時の目標温度T1にもよるが、布地400によってヒータ542の熱が奪われたままであると定着不足に繋がることがある。
そこで、加熱開始直後は、ヒータ542をON状態にして発熱させることで、ヒータ温度を所要の温度まで昇温する。
このとき、例えば、ヒータ542を常時ON状態(100%デューティ)にすることによって常時発熱させて、目標温度T1から低下したヒータ温度を急速に上昇させることができる。なお、昇温時間A1が経過したときのヒータ温度は、目標温度T1と同じである必要はなく、目標温度T1よりも高い温度でもよいし、目標温度T1に達しない温度でもよい。
また、ヒータ542の通電をデューティ制御する場合、ONデューティ100%である必要はないが、布地400によって奪われたヒータ542の熱の損失分を補える程度のONデューティ比とすることが好ましい。
そして、加熱開始時点t2から昇温時間A1が経過した時点t3においてヒータ542をOFF状態にして発熱を停止している。
その後、ヒータ542をOFF状態にした時点t3から加熱時間A2が経過した時点t4(時点t4以降であればよい。)で加熱終了の処理をする。
この加熱時間A2の間は、ヒータ542の出力をOFF状態としているので、時点t3以降は余熱状態で布地400の表面を加熱することになる。
つまり、熱転写プレス機やアイロンのような一般的な定値制御でヒータ542の温度を制御すると、ヒータ温度は図18に一点鎖線で示すように一定値に維持され、布地400の表面温度は図18に二点破線で示すように上昇し続ける。
そのため、ユーザーの使用環境や、カセット200の初期温度、布地400の種類によっては、布地400の表面温度が黄変温度T2を超えてしまい、布地400が黄変することがある。
そこで、本実施形態における加熱制御では、ヒータ542をOFF状態にして発熱を停止させ、余熱によって布地400の加熱を続行することで、ヒータ温度は実線で示すように時間の経過に従って低下する。
一方、布地400の表面温度は、ヒータ542をOFF状態にした直後には若干上昇する傾向があるものの、その後は、略一定に維持され、あるいは、緩やかに下降する。
これによって、布地400の表面温度が黄変温度T2を超えることはなく、安定した加熱を行うことができ、布地400の品質が低下することを防止できる。
なお、ここでは、布地400の加熱を開始した後(この例では、昇温時間A1が経過したとき)に、ヒータ542をOFF状態にしているが、図17に示すように、ヒータ542の発熱量を低下させる制御とすることもできる。
例えば、ヒータ542に対する通電をデューティ制御する場合、ONデューティを小さくすることで、給電量を減らして発熱量を低下させることができる。
この場合、昇温時間A1が経過した時点t3から、例えば、ONデューティを、100%→60%→20%→0%(OFF)というように段階的に下げて、発熱量を段階的に低下させる制御を行うこともできる。
また、加熱終了の処理は、ここでは、加熱開始から加熱中表示部521cを点灯させ、加熱終了の処理で加熱中表示部521cを消灯することで、加熱が終了した旨をユーザーに報知している。この場合、加熱装置500の取り扱い上、加熱中表示部521cが消灯するまでユーザーは前扉502を開けないものとしている。
また、加熱終了の処理として、加熱開始から扉ロック手段509によって前扉502をロックしておき、加熱時間A2が経過した以後に、加熱終了としてロック手段509によるロックを解除する処理を行うようにすることもできる。
次に、本発明の第2実施形態における加熱装置の発熱制御について図19及び図20を参照して説明する。図19は同発熱制御の説明に供するフロー図、図20は同発熱制御の具体的な一例を説明する説明図である。
本実施形態では、第2温度検知部594は、布地400の表面温度(以下「布地温度」という。)を検知する構成としている。なお、布地温度は、布地400の表面温度に相関する温度であればよく、また、表面温度を接触して検知し、あるいは、表面温度を非接触で検知する手段を使用することができる。
図19を参照して、前記第1実施形態と同様に、コントローラ800は第1検知部591によって操作レバー558が非接触加熱位置に移動されたときを加熱開始(定着開始)タイミングとしてヒータ542をON状態にして昇温する。
その後、第2温度検知部594で検知した布地温度を取り込み、布地温度が予め定めた黄変温度T2よりも低い目標昇温温度T4に到達したか否かを判別し、目標昇温温度T4に到達するまで昇温を続行する。
そして、布地温度が目標昇温温度T4に到達したときに、ヒータ542をOFF状態にして発熱を停止し、ヒータ542をOFF状態にして発熱を停止したときから加熱時間A2が経過したときに加熱終了の処理をする。
次に、図20を参照して、第1実施形態と同様に、目標温度T1、黄変温度T2,定着下限温度T3とする。また、この例では、布地Uは、布地Sよりも温度上昇がし易いものとする。
まず、加熱開始の時点t2からヒータ542をON状態にすると、布地400が布地Uの場合には、破線で示すように、時点t2から布地温度が上昇し、時点t3で目標昇温温度T4に到達する。そこで、布地Uの場合には、目標昇温温度T4に到達した時点t3で、ヒータ542をOFF状態にする。
一方、布地400が布地Sの場合には、実線で示すように、時点t2から布地温度が上昇し、時点t4で目標昇温温度T4に到達する。そこで、布地Sの場合には、目標昇温温度T4に到達した時点4で、ヒータ542をOFF状態にする。
そしてヒータ542のOFF状態にした時点t3から加熱時間A2が経過したときに加熱終了の処理をするので、布地400が布地Uの場合には時点t5で加熱終了とし、布地400が布地Sの場合には時点t6で加熱終了とする。
このように、温度上昇がし易い布地(加熱対象部材)の場合には、加熱開始後のヒータのON時間を温度上昇がし難い布地(加熱対象)に比べて相対的に短くすることで、黄変温度T2に到達する前にヒータをOFF状態とする。
これによって、温度上昇がし易い布地の場合にも黄変を抑えた加熱(定着)を行うことができる。
なお、ここでは、加熱開始からヒータ542をOFF状態にするまでの時間を布地温度が目標昇温温度T4に達したか否かで布地に応じた昇温時間としているが、温度検知に限るものではない。
例えば、予め布地の種類に応じた加熱開始からヒータ542をOFF状態にするまでの時間(昇温時間A1)を保持しておき、布地の種類を指示することによって、布地の種類に応じた昇温時間A1を読み出して、布地の種類に応じた昇温時間で昇温することができる。
同様に、予め布地の種類に応じた加熱開始からヒータ542をOFF状態にするまでの時間(昇温時間)を加熱装置500に与えることによって、加熱装置500は与えられた昇温時間を読み出して、布地の種類に応じた昇温時間で昇温するようにすることができる。
これらの場合には、例えば、カセット200に情報記憶手段を備えて、昇温時間を記憶しておき、加熱装置500側の読み取り手段によってカセット200が収容されたときに非接触で情報記憶手段から昇温時間を読み出すようにすることができる。
なお、本実施形態においても、加熱開始後(上記の例では目標昇温温度になったとき)にヒータをOFF状態にする例で説明しているが、前記第1実施形態で説明したように、ヒータへの給電量を減らして発熱量を低下させるようにすることもできる。
次に、本発明の第3実施形態における加熱装置の発熱制御について図21及び図22を参照して説明する。図21は同発熱制御の説明に供するフロー図、図22は同発熱制御の具体的な一例を説明する説明図である。
図21を参照して、前記第1実施形態と同様に、コントローラ800は第1検知部591によって受け部材503が非接触加熱位置に移動されたことを検知したときを加熱開始(定着開始)タイミングとして、ヒータ542をON状態にして昇温する。
その後、第1温度検知部593で検知したヒータ温度を取り込み、ヒータ温度が予め定めた目標昇温温度T5に到達したか否かを判別し、目標昇温温度T5に到達するまで昇温を続行する。
そして、ヒータ温度が目標昇温温度T5に到達したときに、ヒータ542をOFF状態にして発熱を停止し、ヒータ542をOFF状態にして発熱を停止したときから加熱時間A2が経過したときに加熱終了の処理をする。
次に、図22を参照して、加熱開始の時点t2からヒータ542をON状態にすると、ヒータ温度が上昇し、時点t3で目標昇温温度T5に到達する。そこで、目標昇温温度T5に到達した時点t3で、ヒータ542をOFF状態にして発熱を停止する。
そして、ヒータ542をOFF状態にして発熱を停止した時点t3から加熱時間A2が経過した時点t4で加熱終了とする。
つまり、ここでは、加熱を開始するときの昇温をヒータ温度で管理し、ヒータ542をOFF状態にするときのヒータ温度を目標昇温温度T5している。
これによって、ユーザーがカセット200を収容するために前扉502を開いている時間が変化することで生じる昇温終了時の温度変化(余熱等による加熱開始時のヒータ温度の変化)を抑制することができる。
本実施形態においても、ヒータ452をOFF状態にして発熱を停止することに代えて、ヒータ543の発熱量を低下させる制御を行うこともできる。
なお、上記各実施形態においては、加熱を開始したときから発熱手段の発熱を停止し、又は、発熱量を低下させるまでの間に、発熱手段を発熱させて昇温する期間を設けているが、発熱手段を発熱させて昇温する期間は必ずしも必要でない。
例えば、予熱の目標温度を高く設定して、布地が非接触加熱位置まで移動してヒータの熱が奪われて温度が低下しても十分な温度を維持できるようにしておけば、加熱開始と同時に発熱手段の発熱を停止し、又は、発熱手段の発熱量を低下させて、余熱あるいは低発熱量による加熱を所定の加熱時間行うようにすることもできる。
また、加熱を開始するときのヒータ温度を検知して、検知したヒータ温度が所要温度(例えば第3実施形態の目標昇温温度T5)以上であるときには、そのまま、発熱手段の発熱を停止し、又は、発熱手段の発熱量を低下させ、所要温度未満であるときには、発熱手段による発熱を行って昇温した後に、発熱手段の発熱を停止し、又は、発熱手段の発熱量を低下させるようにすることもできる。
本発明における「布地保持部材」とは、印刷装置、或いは、加熱装置ないし定着装置とに着脱できる構成を備えていれば、形状等は上記実施形態のカセットのような箱状の形態に限られるものではない。具体的には、印刷装置と加熱装置とに挿入可能に形成された一枚の板状のプラテン部材であってもよい。
また、より作業性を向上するために、このような布地保持部材に対し、印刷時に作業者が毎回布地(Tシャツ等)をトレイにセットする工程をなくすために、布地(Tシャツ等)をセット済みの布地保持部材を利用することもできる。この場合、使用後の布地保持部材は回収され、再び布地がセットされた状態で供給される。
さらに、同様の効果を奏するために、布地保持部材に着脱可能に形成されたプラテン部材に布地(Tシャツ等)をセットした布地セット済みのプラテン部材を利用することもできる。使用する場合は、この布地セット済みのプラテン部材をそのまま布地保持部材に装着し、印刷、定着が完了したあとに、布地保持部材からプラテン部材を取り外し、次の布地セット済みのプラテン部材を布地保持部材に装着し、印刷、定着が行われる。この場合、使用後のプラテン部材は回収され、再び布地がセットされた状態で供給される。
このようにすることで、作業者が毎回布地(Tシャツ等)をセットする必要がなく、複数枚の連続処理が容易になり、複数枚の連続処理を自動化することも可能となる。
また、上記実施形態では、布地がTシャツなどである場合について説明しているが、例えば布地を含めて、加熱対象を媒体(メディア)とする場合にも本発明を同様に適用することができる。この場合には、前記実施形態における「布地」が媒体となる。さらに、布地や媒体以外の加熱対象部材、例えば食品などを加熱する加熱装置にも本発明を適用することができる。