(実施の形態1)
[医療用キャップ]
本発明の実施の形態1に係る医療用キャップについて、図1及び図2を参照しながら以下に説明する。但し、説明に不要な部分は省略し、また説明を容易にするために拡大又は縮小等して図示した部分がある。
図1(a)は、本実施の形態1に係る医療用キャップを表す断面模式図であり、同図(b)は当該医療用キャップを薬剤容器に取り付けた様子を表す断面模式図である。図2は、同図(a)は前記医療用キャップにおける弾性栓体の針刺面を模式的に表す平面図であり、同図(b)は前記弾性栓体を表す断面模式図である。尚、図1(a)に於いては、図示したものの方向関係を明確にするために、適宜XYZ直交座標軸を表示する。図1に於いて、XY平面は水平面を表し、十Z方向は鉛直上向きを表す。
図1に示すように、本実施の形態の医療用キャップ10は、弾性栓体11と、弾性栓体11を内部に保持する外枠体12とを少なくとも有する。弾性栓体11と外枠体12は、両者の接触面において熱溶着している(詳細については後述する。)。これにより、弾性栓体11が外枠体12から脱落するのを防止し、針刺しの際には弾性栓体11と外枠体12の位置ずれによる空隙の発生も防止することができる。その結果、密閉性を向上させ、薬液や輸液等の漏洩の防止、空気との接触による変質の防止も可能になる。
ここで、「熱溶着」とは、後述の通り、外枠体12を射出成形等により成形する際に注入される溶融樹脂の熱により、これに接した弾性栓体11の表面が溶融した結果、当該外枠体12の成形後に、外枠体12と弾性栓体11とがその接触面において結合した状態にあることを意味する。
弾性栓体11の全体形状は、図1及び図2に示す様に略円柱状である。但し、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば略円錐台状であってもよい。またその他に、後述の種々の形状のものを採用することもできる。
弾性栓体11は、外枠体12の内部に、天面部111を上側(図1(a)では+Z方向)にし、底面部112を下側にして収容されている。天面部111は、その周縁部111aを除き、針刺面111bとなっている。ここで「針刺面」とは、本実施の形態に係る医療用キャップ10が薬剤容器に装着され、薬液等を取り出す際に、穿刺針により針刺しが行われる面を意味する。尚、天面部111の周縁部111aは外枠体12の一部に覆われ、接触面で熱溶着している(図2(a)ではハッチングされた領域を表す。)。また、針刺面111bには、穿刺針により刺通する際の位置指標の役目を果たす凹部(図示しない)が少なくとも1つ設けられていてもよい。
底面部112は、その全面が接液面となっている。ここで「接液面」とは、薬剤容器に貯蔵されている薬液等が接する面を意味する。
弾性栓体11の側周部113には、弾性栓体11を金型に係合させるための被係合部114が設けられている。これにより、例えば弾性栓体11の成形後、金型の型開きの際に、成形された弾性栓体11を金型に係合させ固定させることができる。側周部113において、被係合部114の形成位置より上方(以下、「側周部上方」という)113aは、外枠体12の内壁面と熱溶着している。その一方、被係合部114及び当該被係合部114の形成位置より下方(以下、「側周部下方」という)113bは、外枠体12の内壁面と接しておらず、開口している(図1参照)。
本実施の形態において、側周部上方113aと被係合部114の境界には、パーティングラインPLが設けられている。パーティングラインPLは、後述の通り、弾性栓体11を成形するための一対の金型の接合面(あるいは分割位置)に対応して形成される。尚、本実施の形態において、パーティングラインPLは被係合部114よりも上方(図1(a)では、+Z方向)、すなわち、側周部上方113aにおける任意の位置に設けられることが必要となる。被係合部114や側周部下方113bにパーティングラインPLが設けられる場合であると、一対の金型の分割位置が当該被係合部114や側周部下方113bまで下がり、被係合部114を金型に係合させることが困難になるからである。
被係合部114は環状凹部からなる。被係合部114の深さh及び幅d(図2(b)参照)は、弾性栓体11を金型に係合させ固定させることができる程度であれば特に限定されず、適宜設定することができる。尚、弾性栓体11の高さ及び直径も特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
側周部113は、微細な凹凸構造の表面を有する。これにより、弾性栓体11の成形の際に、キャビティ23内に存在する空気を外部に排出させることが可能になり、側周部113にエアベントの機能を付与することができる。また、側周部下方113b及び被係合部114の表面を微細な凹凸構造にすることで、被係合部114を金型に係合させ、弾性栓体11を当該金型に固定させる際に、金型との接触面での摩擦抵抗を増大させ、当該金型との係合を強くすることができる。ここで、側周部上方113aと、側周部下方113b及び被係合部114とでは、凹凸構造における凹凸の程度(表面粗さ)が異なる。具体的には、側周部上方113aの凹凸構造の方が、側周部下方113b及び被係合部114の凹凸構造と比較して、凹凸の程度(表面粗さ)が小さい。これにより、金型開きの際に、弾性栓体11が金型に固定されず、離型不良が発生するのを防止することができる。尚、表面を微細な凹凸構造とする部分は側周部下方113b又は被係合部114の何れか一方であってもよい。また、側周部上方113aは平滑面であってもよい。これにより、金型の型開きを一層容易にし、離型不良の発生をさらに低減することができる。
また、天面部111及び底面部112の表面にも、微細な凹凸構造を設けてもよい。天面部111の表面に微細な凹凸構造を設けることにより、当該天面部111においてもキャビティ23内に存在する空気を外部に排出させることが可能になり、エアベントの機能を一層高めることができる。さらに天面部111の表面に微細な凹凸構造を設けることは、例えば、コンプレッション成形にて弾性栓体11を成形する際の外観不良の低減を可能にする。また、インジェクション成形にて弾性栓体11を成形する際にも、ウェルドラインの発生を低減し、外観不良も低減することができる。尚、天面部111及び底面部112の表面は微細な凹凸構造である場合のほか、平坦状であってもよい。
側周部上方113aの凹凸構造の表面粗さは、側周部下方113b及び被係合部114よりも凹凸の程度が小さく、かつ、エアベントとしての機能を果たすことが可能なものであれば特に限定されない。また、側周部下方113b及び被係合部114の凹凸構造の表面粗さは、金型との摩擦抵抗を増大させることが可能な程度であれば特に限定されず、適宜設定することができる。さらに、天面部111及び底面部112の凹凸構造の表面粗さについても特に限定されず、適宜必要に応じて設定すればよい。
前記弾性栓体11に用いる材料としては、例えば、ゴムや熱可塑性エラストマー樹脂が挙げられる。前記ゴムとしては特に限定されず、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、イソプレン-イソブチレンゴム等が例示できる。また、熱可塑性エラストマー樹脂としては特に限定されず、例えば、オレフィン系、スチレン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリ塩化ビニル系、ポリブタジエン系、ポリアミド系、ポリウレタン系等が例示できる。中でも共役ジエン系の熱可塑性エラストマーに水素添加した熱可塑性エラストマー(SEBS、SEPS、HSBR、SEBR、CEBC)が好適である。これらの熱可塑性エラストマー樹脂は単独で又は2種以上を併用することができる。
弾性栓体11の特性については特に限定されず、医療用注入針等が貫通できる程度の硬度を有していればよい。また、通常の保管の際に容易に変形したり、破損したりしない程度の形状保持性を有するものが好ましい。弾性栓体11の硬度は、JIS K6253法による測定に於いて、A5~A50であることが好ましく、A10~A45であることがより好ましい。
外枠体12は、全体形状が略円筒状の本体部12aと、接合用フランジ部12bとを少なくとも備える。本体部12aは、弾性栓体11の側周部上方113aと熱溶着している本体部上方121と、当該本体部上方121よりも厚さが小さい本体部下方122と、当該本体部上方121と本体部下方122を接続する段差123とを有している。本体部上方121と本体部下方122の直径は略同一である。本体部上方121の内周面は弾性栓体11の側周部上方113aと熱溶着している。また、本体部上方121の端部には環状の張り出し部124が設けられており、当該張り出し部124は、弾性栓体11の天面部111における周縁部111aと熱溶着している。その一方、本体部下方122及び段差123は弾性栓体11と接していない。接合用フランジ部12bは、本体部12aの端部に設けられており、薬剤容器の口部との接合に用いられる(詳細については後述する。)。
外枠体12を構成する材料としては、合成樹脂のうち、医療用途としての安全性が確立されたものであれば足りる。中でも熱可塑性樹脂を用いるのが一般的である。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート樹脂等の従来医療用途に用いられている樹脂が好ましい。これらは単独で又は2種以上を併用することができる。
次に、本実施の形態の医療用キャップ10を輸液容器等の薬剤容器に適用する場合について説明する。図1(b)に示すように、薬剤容器の口部14は、全体が略円筒状を成しており、外周面に環状鍔14aを有している。医療用キャップ10を口部14に取り付ける際には、外枠体12の接合用フランジ部12bと、口部14の環状鍔14aとを超音波溶着や加熱溶着等の手法により接合する。口部14の構成材料は特に限定されず、例えば、外枠体12の構成材料と同様のものを採用することができる。
[医療用キャップの製造方法]
次に、本実施の形態に係る医療用キャップの製造方法について、図3に基づき説明する。図3は、医療用キャップの製造方法を説明するための断面模式図であって、同図(a)は一対の金型が型閉じされ、弾性栓体成形用のキャビティが形成される様子を表し、同図(b)は弾性栓体が成形された後の金型を型開きする様子を表し、同図(c)は外枠体を成形する様子を表し、同図(d)は成形後の医療用キャップを表す。
本実施の形態に係る医療用キャップの製造方法は2色成形法を利用するものであり、弾性栓体11を成形する弾性栓体成形工程と、当該弾性栓体11を内部に保持する外枠体12を成形する外枠体成形工程とを含む。
先ず、図3(a)に示すように、弾性栓体成形工程は、第1金型21と第2金型22を用いて、弾性栓体11を射出成形する。第1金型21はコア(雄型、可動側金型又は下金型)であり、第2金型22はキャビティ(雌型、固定側金型又は上金型)である。第1金型21と第2金型22は、両者を型閉じした際、弾性栓体11の成形が可能な弾性栓体成形用のキャビティ23が形成される構造となっている。また、第1金型21と第2金型22の型閉じにより形成される接合面212の位置は、弾性栓体11の側周部上方113aと被係合部114の境界にパーティングラインPLが形成されるように設定されている。
第1金型21は、弾性栓体11の被係合部114を成形することが可能な係合部211を有している。係合部211は、円筒状の内周面に環状の凸部が設けられた、凹部成形用凸部からなる。これにより、弾性栓体11の側周部113に環状凹部からなる被係合部114を形成することが可能になる。また、係合部211の内周面や、弾性栓体11の側周部下方113b及び底面部112を形成する内側面には粗面化処理がなされており、これにより当該係合部211の内周面等は微細な凹凸構造となっている。粗面化処理の方法としては特に限定されず、ブラストショットやエッチング、放電加工等のシボ加工が挙げられる。尚、第2金型22の内側面の全面(弾性栓体11の側周部上方113a及び天面部111を形成する面)も粗面化処理により微細な凹凸構造が設けられている。但し、弾性栓体11の側周部上方113a及び天面部111の表面を平坦にする場合は、第2金型22の内側面も平滑状にするのが好ましい。
弾性栓体11の成形は、弾性栓体11の構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂を、弾性栓体成形用のキャビティ23内に注入して行う。溶融樹脂の注入後、冷却し、これにより被係合部114を備えた弾性栓体11を成形することができる。さらに、成形された弾性栓体11の被係合部114及び側周部下方113bの表面には、微細な凹凸構造が設けられている。尚、第1金型21の係合部211の内周面等や第2金型22の内側面には微細な凹凸構造が設けられているため、弾性栓体11の成形の際には、キャビティ23内の空気を外部に排出させることができ、エアベントとしての機能を発揮させることができる。
前記溶融樹脂の射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。射出された溶融樹脂は、弾性栓体成形用のキャビティ23内で冷却される。冷却時間は特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。
次に、図3(b)に示すように、第1金型21と第2金型22の型開きを行う。このとき、弾性栓体11は、被係合部114を第1金型21の係合部211に係合させることにより第1金型21に固定されている。また、弾性栓体11の被係合部114及び側周部下方113bの表面には、微細な凹凸構造が設けられており、さらに被係合部114と係合している第1金型21の係合部211の内周面にも微細な凹凸構造が設けられている。そのため、被係合部114と係合部211の係合は容易に解除され難くなっている。その上、第2金型22の内側面の凹凸構造は、第1金型21の係合部211の凹凸構造よりも凹凸の程度が小さいことから、弾性栓体11と第2金型22との離型が容易となっている。これにより、本実施の形態においては、第1金型21と第2金型22との型開きの際に、弾性栓体11が第2金型22に密着して離型不良が発生するのを防止することができる。その結果、製造効率の低下を防止することができる。
続いて、図3(c)に示すように、外枠体成形工程を行う。本工程は、弾性栓体11を第1金型21に固定させた状態で行う。また、本工程は、第1金型21と、当該第1金型21との型閉じにより外枠体成形用のキャビティ24を形成することが可能な第4金型25とを用いて行う。従って、第1金型21は外枠体12の成形にも適用可能な共通金型(第3金型)として機能する。具体的には、弾性栓体11を内部に収容した状態で、外枠体12の構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂を、外枠体成形用のキャビティ24内に注入して行う。溶融樹脂の射出圧力としては特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。射出された溶融樹脂は、型閉じされた状態で冷却される。冷却時間は特に限定されず、適宜必要に応じて設定され得る。
第1金型21と第4金型25との型開き後、図3(d)に示すように、弾性栓体11を内部に保持した外枠体12が得られる。また、外枠体12は弾性栓体11との接触面において熱溶着している。
以上により、本実施の形態に係る医療用キャップ10を製造することができる。本実施の形態の医療用キャップの製造方法によれば、弾性栓体成形工程において、係合部211を有する第1金型21を用いて弾性栓体11に被係合部114を形成すると共に、当該被係合部114を第1金型21の係合部211に係合させて固定した状態で、第1金型21と第2金型22の型開きを行う。そのため、弾性栓体11がキャビティである第2金型22内に取り残されるのを防止することができる。その結果、製造効率の低下を抑制した医療用キャップの製造方法を提供することができる。
[その他の事項]
本実施の形態においては、弾性栓体として、側周部113に環状凹部からなる被係合部114を備えた態様を例にして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図4~図11に示す形状の弾性栓体に適宜変更することができる。
例えば、本発明は、図4(a)及び4(b)に示すように、底面部112の周縁部(側周部113の端部)に環状凹部からなる被係合部132が設けられた弾性栓体131であってもよい。被係合部132は、天面部111に向かうに従い先細りのテーパ状(第1金型21に弾性栓体131を係合させた状態においては、当該第1金型21から離れる方向に先細りのテーパ状)となる縦断面形状を有している。これにより、弾性栓体131の被係合部132を第1金型21の係合部に強固に係合させることができ、弾性栓体131が第1金型21から脱離するのを一層規制することができる。また、このような形状の弾性栓体131の場合、パーティングラインPLは被係合部132に対し上方の天面部111側に設けられる。
尚、被係合部132に係合する第1金型21の係合部は、型閉じする第2金型22から離れる方向に先細りのテーパ状となる縦断面形状を有するものとなる。また、被係合部132の表面を微細な凹凸構造にし、弾性栓体131の被係合部132を第1金型21の係合部にさらに強固に係合させるようにしてもよい。さらに、側周部113の表面を微細な凹凸構造にすることにより、当該側周部113の表面にエアベントとしての機能を付与してもよい。この場合、側周部113の表面を、被係合部132の凹凸構造よりも凹凸の程度が小さい凹凸構造にすることで、型開きの際に、弾性栓体131が第2金型22に密着して離型不良が発生するのを一層防止することができる。
また、本発明は、図5(a)及び5(b)に示すように、側周部上方113aよりも直径の大きい側周部下方113bに環状凹部からなる被係合部134を備えた弾性栓体133であってもよい。このような場合でも、弾性栓体133の被係合部134を第1金型21の係合部に係合させることができ、弾性栓体133が第1金型21から脱離するのを規制することができる。また、このような形状の弾性栓体133の場合、パーティングラインPLは側周部上方113aと側周部下方113bの境界に設けられるのが好ましい。但し、パーティングラインPLの位置に関し、本発明はこの態様に限定されるものではなく、側周部上方113aと側周部下方113bの境界から被係合部134までの間の任意の位置に設けることが可能である。
尚、弾性栓体133に被係合部134を形成し、かつ、当該被係合部134に係合可能にする第1金型21の係合部は、環状の凹部成形用凸部からなる。また、被係合部134は、天面部111に向かうに従い先細りのテーパ状(第1金型21に弾性栓体133を係合させた状態においては、当該第1金型21から離れる方向に先細りのテーパ状)となる縦断面形状を有していてもよい。さらに、被係合部134の表面を微細な凹凸構造にし、弾性栓体133の被係合部134を第1金型21の係合部にさらに強固に係合させるようにしてもよい。また、側周部上方113aの表面を微細な凹凸構造にすることにより、当該側周部上方113aの表面にもエアベントとしての機能を付与してもよい。この場合、側周部上方113aの表面を、被係合部134の凹凸構造よりも凹凸の程度が小さい凹凸構造にすることで、型開きの際に、弾性栓体133が第2金型22に密着して離型不良が発生するのを一層防止することができる。
また、本発明は、図6(a)及び6(b)に示すように、底面部112の周縁部(側周部下方113bの端部)に環状凹部からなる被係合部136が設けられた弾性栓体135であってもよい。被係合部136は、天面部111に向かうに従い先細りのテーパ状(第1金型21に弾性栓体135を係合させた状態においては、当該第1金型21から離れる方向に先細りのテーパ状)となる縦断面形状を有している。このような場合でも、弾性栓体135の被係合部136を第1金型21の係合部に係合させることができ、弾性栓体135が第1金型21から脱離するのを規制することができる。また、このような形状の弾性栓体135の場合、パーティングラインPLは側周部上方113aと側周部下方113bの境界に設けられるのが好ましい。但し、パーティングラインPLの位置に関し、本発明はこの態様に限定されるものではなく、側周部上方113aと側周部下方113bの境界から被係合部136までの間の任意の位置に設けることが可能である。
尚、被係合部136に係合する第1金型21の係合部は、型閉じする第2金型22から離れる方向に先細りのテーパ状となる縦断面形状を有するものとなる。また、被係合部136の表面を微細な凹凸構造にし、弾性栓体135の被係合部136を第1金型21の係合部にさらに強固に係合させるようにしてもよい。さらに、側周部上方113aの表面を微細な凹凸構造にすることにより、当該側周部上方113aの表面にもエアベントとしての機能を付与してもよい。この場合、側周部上方113aの表面を、被係合部136の凹凸構造よりも凹凸の程度が小さい凹凸構造にすることで、型開きの際に、弾性栓体135が第2金型22に密着して離型不良が発生するのを一層防止することができる。
また、本発明は、図7(a)及び7(b)に示すように、側周部113に環状凸部からなる被係合部138が設けられた弾性栓体137であってもよい。このような場合でも、弾性栓体137の被係合部138を第1金型21の係合部に係合させることができ、弾性栓体137が第1金型21から脱離するのを規制することができる。また、このような形状の弾性栓体137の場合、パーティングラインPLは被係合部138に対し上方の天面部111側に設けられる。
尚、弾性栓体137に被係合部138を形成し、かつ、当該被係合部138に係合可能にする第1金型21の係合部は、環状の凸部成形用キャビティ部からなる。また、被係合部138は、天面部111に向かうに従い先細りのテーパ状(第1金型21に弾性栓体137を係合させた状態においては、当該第1金型21から離れる方向に先細りのテーパ状)となる縦断面形状を有していてもよい。さらに、被係合部138の表面を微細な凹凸構造にし、弾性栓体137の被係合部138を第1金型21の係合部にさらに強固に係合させるようにしてもよい。また、側周部上方113aの表面を微細な凹凸構造にすることにより、当該側周部上方113aの表面にもエアベントとしての機能を付与してもよい。この場合、側周部上方113aの表面を、被係合部138の凹凸構造よりも凹凸の程度が小さい凹凸構造にすることで、型開きの際に、弾性栓体137が第2金型22に密着して離型不良が発生するのを一層防止することができる。
また、本発明は、図8(a)及び8(b)に示すように、底面部112の周縁部(側周部113の端部)にフランジ部からなる被係合部140が設けられた弾性栓体139であってもよい。このような場合でも、弾性栓体139の被係合部140を第1金型21の係合部に係合させることができ、弾性栓体139が第1金型21から脱離するのを規制することができる。また、このような形状の弾性栓体139の場合、パーティングラインPLは被係合部140に対し上方の天面部111側に設けられる。
尚、弾性栓体139に被係合部140を形成し、かつ、当該被係合部140に係合可能にする第1金型21の係合部は、環状のフランジ部成形用キャビティ部からなる。また、被係合部140は、天面部111に向かうに従い先細りのテーパ状(第1金型21に弾性栓体139を係合させた状態においては、当該第1金型21から離れる方向に先細りのテーパ状)となる縦断面形状を有していてもよい。さらに、被係合部140の表面を微細な凹凸構造にし、弾性栓体139の被係合部140を第1金型21の係合部にさらに強固に係合させるようにしてもよい。さらに、側周部113の表面を微細な凹凸構造にすることにより、当該側周部113の表面にエアベントとしての機能を付与してもよい。この場合、側周部113の表面を、被係合部140の凹凸構造よりも凹凸の程度が小さい凹凸構造にすることで、型開きの際に、弾性栓体139が第2金型22に密着して離型不良が発生するのを一層防止することができる。
また、本発明は、図9(a)及び9(b)に示すように、側周部上方113aよりも直径の大きい側周部下方113bに環状凸部からなる被係合部142を備えた弾性栓体141であってもよい。このような場合でも、弾性栓体141の被係合部142を第1金型21の係合部に係合させることができ、弾性栓体141が第1金型21から脱離するのを規制することができる。また、このような形状の弾性栓体141の場合、パーティングラインPLは側周部上方113aと側周部下方113bの境界に設けられるのが好ましい。但し、パーティングラインPLの位置に関し、本発明はこの態様に限定されるものではなく、側周部上方113aと側周部下方113bの境界から被係合部142までの間の任意の位置に設けることが可能である。
尚、弾性栓体141に被係合部142を形成し、かつ、当該被係合部142に係合可能にする第1金型21の係合部は、環状の凹部成形用凸部からなる。また、被係合部142は、天面部111に向かうに従い先細りのテーパ状(第1金型21に弾性栓体141を係合させた状態においては、当該第1金型21から離れる方向に先細りのテーパ状)となる縦断面形状を有していてもよい。さらに、被係合部142の表面を微細な凹凸構造にし、弾性栓体141の被係合部142を第1金型21の係合部にさらに強固に係合させるようにしてもよい。また、側周部上方113aの表面を微細な凹凸構造にすることにより、当該側周部上方113aの表面にもエアベントとしての機能を付与してもよい。この場合、側周部上方113aの表面を、被係合部142の凹凸構造よりも凹凸の程度が小さい凹凸構造にすることで、型開きの際に、弾性栓体141が第2金型22に密着して離型不良が発生するのを一層防止することができる。
また、本発明は、図10(a)及び10(b)に示すように、底面部112の周縁部(側周部113の端部)にフランジ部からなる被係合部144が設けられた弾性栓体143であってもよい。このような場合でも、弾性栓体143の被係合部144を第1金型21の係合部に係合させることができ、弾性栓体143が第1金型21から脱離するのを規制することができる。また、このような形状の弾性栓体143の場合、パーティングラインPLは側周部上方113aと側周部下方113bの境界に設けられるのが好ましい。但し、パーティングラインPLの位置に関し、本発明はこの態様に限定されるものではなく、側周部上方113aと側周部下方113bの境界から被係合部144までの間の任意の位置に設けることが可能である。
尚、弾性栓体143に被係合部144を形成し、かつ、当該被係合部144に係合可能にする第1金型21の係合部は、環状のフランジ部成形用キャビティ部からなる。また、被係合部144は、天面部111に向かうに従い先細りのテーパ状(第1金型21に弾性栓体143を係合させた状態においては、当該第1金型21から離れる方向に先細りのテーパ状)となる縦断面形状を有していてもよい。さらに、被係合部144の表面を微細な凹凸構造にし、弾性栓体143の被係合部144を第1金型21の係合部にさらに強固に係合させるようにしてもよい。また、側周部上方113aの表面を微細な凹凸構造にすることにより、当該側周部上方113aの表面にもエアベントとしての機能を付与してもよい。この場合、側周部上方113aの表面を、被係合部144の凹凸構造よりも凹凸の程度が小さい凹凸構造にすることで、型開きの際に、弾性栓体143が第2金型22に密着して離型不良が発生するのを一層防止することができる。
また、本発明は、図11(a)及び11(b)に示すように、天面部111に向かうに従い先細りのテーパ状(第1金型21に弾性栓体145を係合させた状態においては、当該第1金型21から離れる方向に先細りのテーパ状)となる縦断面形状の側周部下方113b’からなる被係合部を備えた弾性栓体145であってもよい。このような場合でも、弾性栓体145の被係合部を第1金型21の係合部に係合させることができ、弾性栓体145が第1金型21から脱離するのを規制することができる。また、このような形状の弾性栓体145の場合、パーティングラインPLは側周部上方113aと側周部下方113b’の境界に設けられる。
尚、弾性栓体145に側周部下方113b’からなる被係合部を形成し、かつ、当該被係合部に係合可能にする第1金型21の係合部は、型閉じする第2金型22から離れる方向に先細りのテーパ状となる縦断面形状を有するものとなる。また、側周部下方113b’の表面を微細な凹凸構造にし、弾性栓体145の被係合部である側周部下方113b’を第1金型21の係合部にさらに強固に係合させるようにしてもよい。さらに、側周部上方113aの表面を微細な凹凸構造にすることにより、当該側周部上方113aの表面にもエアベントとしての機能を付与してもよい。この場合、側周部上方113aの表面を、側周部下方113b’の凹凸構造よりも凹凸の程度が小さい凹凸構造にすることで、型開きの際に、弾性栓体145が第2金型22に密着して離型不良が発生するのを一層防止することができる。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る医療用キャップ及びその製造方法について以下に説明する。
本実施の形態2は、実施の形態1と比較して、2色成形法に替えてインサート成形法を用いた点が異なる。この様な方法によっても、本実施の形態では、製造効率の低下を抑制した医療用キャップの製造方法を提供することができる。
[医療用キャップ]
実施の形態2に係る医療用キャップは、実施の形態1に係る医療用キャップ10と同一の構成を有するものである(図12(e)参照)。従って、その説明は同一符号を付して省略する。
[医療用キャップの製造方法]
次に、本実施の形態2に係る医療用キャップの製造方法について、図12を参照しながら以下に説明する。
図12は、前記医療用キャップの製造方法を説明するための断面模式図であって、同図(a)は一対の金型が型閉じされ、弾性栓体成形用のキャビティが形成される様子を表し、同図(b)は弾性栓体が成形された後の金型を型開きする様子を表し、同図(c)は弾性栓体を他の金型内にインサートする様子を表し、同図(d)は外枠体を成形する様子を表し、同図(e)は成形後の医療用キャップを表す。尚、本実施の形態においては、図12(d)及び12(e)に示す外枠体形成工程は、実施の形態1と同様であるため、それらの説明を省略する。
本実施の形態に係る医療用キャップの製造方法はインサート成形法を利用するものであり、弾性栓体11を成形する弾性栓体成形工程と、前記弾性栓体を金型内にインサートして外枠体を成形する外枠体成形工程とを含む。
先ず、図12(a)に示すように、弾性栓体成形工程は、第1金型27と第2金型28を用いて、弾性栓体11を射出成形する。第1金型27はコア(雄型、可動側金型又は下金型)であり、第2金型28はキャビティ(雌型、固定側金型又は上金型)である。第1金型27と第2金型28は、両者を型閉じした際、弾性栓体11の成形が可能な弾性栓体成形用のキャビティ23が形成される構造となっている。また、第1金型27と第2金型28の型閉じにより形成される接合面272の位置は、弾性栓体11の側周部上方113aと被係合部114の境界にパーティングラインPLが形成されるように設定されている。
第1金型27は、弾性栓体11の被係合部114を成形することが可能な係合部271を有している。係合部271は、円筒状の内周面に環状の凸部が設けられた、凹部成形用凸部からなる。これにより、弾性栓体11の側周部113に環状凹部からなる被係合部114を形成することが可能になる。また、係合部271の内周面や、弾性栓体11の側周部下方113b及び底面部112を形成する内側面には粗面化処理がなされており、これにより当該係合部271の内周面は微細な凹凸構造となっている。粗面化処理の方法としては、実施の形態1で説明したのと同様である。尚、第2金型28の内側面も粗面化処理により微細な凹凸構造が設けられている。但し、弾性栓体11の側周部上方113a及び天面部111の表面を平坦にする場合は、第2金型28の内側面も平滑状にするのが好ましい。
弾性栓体11の成形は、実施の形態1の場合と同様、射出成形により行うことができる。また、本実施の形態においては、弾性栓体11をコンプレッション成形により作成してもよい。この場合、弾性栓体11は、予め計量した成形材料を金型(キャビティ)内に入れ、圧縮成形機で加圧して硬化させることにより得ることができる。尚、第1金型27の係合部271の内周面等や第2金型28の内側面には微細な凹凸構造が設けられているため、弾性栓体11の成形の際には、キャビティ23内の空気を外部に排出させることができ、エアベントとしての機能を発揮する。
次に、図12(b)に示すように、第1金型27と第2金型28の型開きを行う。このとき、弾性栓体11は、被係合部114を第1金型27の係合部271に係合させることにより第1金型27に固定されている。また、弾性栓体11の被係合部114及び側周部下方113bの表面には、微細な凹凸構造が設けられており、さらに被係合部114と係合している係合部271の内周面にも微細な凹凸構造が設けられている。そのため、被係合部114と係合部271の係合は容易に解除され難くなっている。その上、第2金型28の内側面の凹凸構造は、第1金型21の係合部211の凹凸構造よりも凹凸の程度が小さいことから、弾性栓体11と第2金型28との離型が容易となっている。これにより、本実施の形態においては、第1金型27と第2金型28との型開きの際の弾性栓体11の離型不良の発生を防止し、製造効率の低下を抑制することができる。
続いて、図12(c)に示すように、弾性栓体11を第3金型29に装填する。第3金型29は、第1金型27の係合部271と同様の形状の係合部(他の係合部)291を備える。また、第3金型29は、第4金型25との型閉じにより、外枠体成形用のキャビティ24を形成することが可能な内部構造を有しており、基本的には、実施の形態1における第1金型21と同様である。
弾性栓体11の第3金型29への装填は、当該弾性栓体11の被係合部114が第3金型29の係合部291に係合する様に行う。これにより、弾性栓体11を第3金型29に固定することができる。その後、第3金型29と第4金型25を型閉じし、実施の形態1と同様にして、外枠体12の射出成形を行う。
以上により、本実施の形態に係る医療用キャップ10を製造することができる。本実施の形態の医療用キャップの製造方法によれば、弾性栓体成形工程において、係合部271を有する第1金型27を用いて弾性栓体11に被係合部114を形成すると共に、当該被係合部114を第1金型27の係合部271に係合させて固定した状態で、第1金型27と第2金型28の型開きを行う。そのため、弾性栓体11がキャビティである第2金型28内に取り残されるのを防止することができる。また、外枠体成形工程においては、第1金型27の係合部271と同様の形状の係合部291を備えた第3金型29を用いることで、当該工程でもインサートした弾性栓体11を第3金型29に固定した状態で外枠体12の成形を行うことができる。そのため、インサート後に弾性栓体11の位置ズレ等が発生するのを防止し、製造効率の低下を抑制することができる。
[その他の事項]
本実施の形態においては、弾性栓体として、側周部113に環状凹部からなる被係合部114を備えた態様を例にして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、前述の図4~図11に示す弾性栓体を用いることが可能である。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3に係る医療用キャップ及びその製造方法について以下に説明する。
本実施の形態3は、実施の形態1及び2と比較して、弾性栓体として被係合部が底面部に設けられたものを用いる点が異なる。また、弾性栓体形成工程及び外枠体形成工程でそれぞれ使用する金型も異なる。
[医療用キャップ]
実施の形態3に係る医療用キャップについて、図13を参照しながら以下に説明する。なお、前記実施の形態1及び2と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。図13は、本実施の形態3に係る医療用キャップを表す断面模式図である。
図13に示すように、本実施の形態の医療用キャップ20は、弾性栓体31と、弾性栓体31を内部に保持する外枠体32とを少なくとも有する。
弾性栓体31の全体形状は、図13に示す様に略円柱状である。但し、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば略円錐台状であってもよい。またその他に、後述の種々の形状のものを採用することもできる。尚、弾性栓体31の側周部113には、パーティングラインが存在しない。
弾性栓体31の底面部112には、弾性栓体31を金型に係合させるための被係合部33が設けられている。これにより、例えば弾性栓体31の成形後、金型の型開きの際に、成形された弾性栓体31を金型に係合させ固定させることができる。被係合部33は底面部112の周縁部112aであって、外枠体32の本体部31の内壁面から一定の距離だけ離間した位置に設けられている。
被係合部33は環状凹部からなる。被係合部33の深さh及び幅d(図13参照)は、弾性栓体31を金型に係合させ固定させることができる程度であれば特に限定されず、適宜設定することができる。尚、弾性栓体31の高さ及び直径も特に限定されず、適宜必要に応じて設定することができる。
環状凹部からなる被係合部33の内壁面には、微細な凹凸構造が設けられている。被係合部33は、これを金型に係合させ、弾性栓体31を当該金型に固定させる際に、金型との接触面となる。そのため、被係合部33の内壁面を微細な凹凸構造にすることで、金型との接触面での摩擦抵抗を増大させ、当該金型との係合を強固にすることができる。尚、弾性栓体31の底面部112の表面にも微細な凹凸構造を設けてもよい。
弾性栓体31の側周部113の表面にも微細な凹凸構造が設けられている。そして、側周部113の全面が外枠体32の本体部31aにおける内壁面と熱溶着している。これにより、弾性栓体31が外枠体32から脱落するのを防止し、針刺しの際には弾性栓体31と外枠体32の位置ずれによる空隙の発生も防止することができる。その結果、密閉性を向上させ、薬液や輸液等の漏洩の防止、空気との接触による変質の防止も可能になる。尚、側周部113の表面は平滑状であってもよい。
外枠体32は、全体形状が略円筒状の本体部31aと、接合用フランジ部12bとを少なくとも備える。本体部31aの内周面は、弾性栓体31の側周部113の全面と熱溶着している。また、本体部31の端部には環状の張り出し部124が設けられており、当該張り出し部124は、弾性栓体31の天面部111における周縁部111aと熱溶着している。
弾性栓体31及び外枠体32の構成材料は、実施の形態1の場合と同様である。
次に、本実施の形態の医療用キャップ20を輸液容器等の薬剤容器に適用する場合について説明する。図13(b)に示すように、薬剤容器の口部15は、全体が略円筒状を成しており、外周面に環状鍔15aを有している。医療用キャップ20を口部15に取り付ける際には、口部15の先端部15bを、医療用キャップ20の底面部112側の開口部から挿入する。このとき、口部15の先端部15bは弾性栓体31の底面部112を押圧するようにしてもよい。さらに、外枠体32のフランジ部12bと、口部15の環状鍔15aとを超音波溶着や加熱溶着等の手法により接合する。口部15の構成材料は特に限定されず、例えば、外枠体12の構成材料と同様のものを採用することができる。
[医療用キャップの製造方法]
次に、本実施の形態3に係る医療用キャップの製造方法について、図14を参照しながら以下に説明する。
図14は、前記医療用キャップの製造方法を説明するための断面模式図であって、同図(a)は一対の金型が型閉じされ、弾性栓体成形用のキャビティが形成される様子を表し、同図(b)は弾性栓体が成形された後の金型を型開きする様子を表し、同図(c)は外枠体を成形する様子を表し、同図(d)は成形後の医療用キャップを表す。
本実施の形態に係る医療用キャップの製造方法は2色成形法を利用するものであり、弾性栓体31を成形する弾性栓体成形工程と、当該弾性栓体31を内部に保持する外枠体32を成形する外枠体成形工程とを含む。
先ず、図14(a)に示すように、弾性栓体成形工程は、第1金型41と第2金型42を用いて、弾性栓体31を射出成形する。第1金型41はコア(雄型、可動側金型又は下金型)であり、第2金型42はキャビティ(雌型、固定側金型又は上金型)である。第1金型41と第2金型42は、両者を型閉じした際、弾性栓体31の成形が可能な弾性栓体成形用のキャビティ43が形成される構造となっている。また、第1金型41と第2金型42の型閉じにより形成される接合面412の位置は、弾性栓体11の底面部112よりも下方となるように設定されている。
第1金型41は、弾性栓体31の被係合部33を成形することが可能な係合部411を有している。係合部411は、弾性栓体31を載置する載置部上に略円形状の突条部が設けられた、凹部成形用凸部からなる。これにより、弾性栓体11の底面部112に環状凹部からなる被係合部33を形成することが可能になる。また、係合部411の表面には粗面化処理がなされていてもよい。これにより、当該係合部411の表面は微細な凹凸構造を有している。粗面化処理の方法としては特に限定されず、ブラストショットやエッチング等のシボ加工が挙げられる。第2金型42の内側面も粗面化処理により微細な凹凸構造が設けられている。但し、弾性栓体11の側周部113及び天面部111の表面を平坦にする場合は、第2金型42の内側面も平滑状にするのが好ましい。
弾性栓体31の成形は、弾性栓体31の構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂を、弾性栓体成形用のキャビティ43内に注入して行う。溶融樹脂の注入後、冷却し、これにより被係合部33を備えた弾性栓体31を成形することができる。溶融樹脂の射出条件及び冷却条件は実施の形態1と同様である。尚、第1金型41の係合部411の内周面等や第2金型42の内側面には微細な凹凸構造が設けられているため、弾性栓体11の成形の際には、キャビティ43内の空気を外部に排出させることができ、エアベントとしての機能を発揮する。
次に、図14(b)に示すように、第1金型41と第2金型42の型開きを行う。このとき、弾性栓体11は、被係合部33を第1金型41の係合部411に係合させることにより第1金型41に固定されている。また、弾性栓体31の被係合部33の内壁面には、微細な凹凸構造が設けられており、さらに被係合部33と係合している係合部411の表面にも微細な凹凸構造が設けられている。そのため、被係合部33と係合部411の係合は容易に解除され難くなっている。その上、第2金型42の内側面の凹凸構造は、第1金型41の係合部411の凹凸構造よりも凹凸の程度が小さいことから、弾性栓体31と第2金型42との離型が容易となっている。これにより、本実施の形態においては、第1金型41と第2金型42との型開きの際に、弾性栓体31の離型不良が発生するのを防止し、製造効率の低下を抑制することができる。
続いて、図14(c)に示すように、外枠体成形工程を行う。本工程は、弾性栓体31を第1金型41に固定させた状態で行う。また、本工程は、第1金型41と、当該第1金型41との型閉じにより外枠体成形用のキャビティ45を形成することが可能な第4金型44とを用いて行う。従って、第1金型41は外枠体42の成形にも適用可能な共通金型(第3金型)として機能する。具体的には、弾性栓体31を内部に収容した状態で、外枠体32の構成材料となる樹脂を溶融した溶融樹脂を、外枠体成形用のキャビティ45内に注入して行う。溶融樹脂の射出条件及び冷却条件は実施の形態1の場合と同様である。
第1金型41と第4金型44との型開き後、図14(d)に示すように、弾性栓体31を内部に保持した外枠体32が得られる。また、外枠体32は弾性栓体31との接触面において熱溶着している。
以上により、本実施の形態に係る医療用キャップ20を製造することができる。本実施の形態の医療用キャップの製造方法によれば、弾性栓体成形工程において、係合部411を有する第1金型41を用いて弾性栓体31に被係合部33を形成すると共に、当該被係合部33を第1金型41の係合部411に係合させて固定した状態で、第1金型41と第2金型42の型開きを行う。そのため、弾性栓体31がキャビティである第2金型42内に取り残されるのを防止することができる。その結果、製造効率の低下を抑制した医療用キャップの製造方法を提供することができる。
[その他の事項]
本実施の形態においては、弾性栓体として、底面部112に環状凹部からなる被係合部33を備えた態様を例にして説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、図15~図17に示す形状の弾性栓体に適宜必要に応じて変更可能である。
例えば、本発明は、図15(a)及び15(b)に示すように、底面部112の中央部分に設けられた開口部からなる被係合部312を備えた弾性栓体131であってもよい。このような場合でも、弾性栓体311の被係合部312を第1金型41の係合部に係合させることができ、弾性栓体311が第1金型41から脱離するのを規制することができる。
尚、弾性栓体311に被係合部312を形成し、かつ、当該被係合部312に係合可能にする第1金型41の係合部は、円柱状の凹部成形用凸部からなる。また、被係合部312の内壁面は、天面部111に向かうに従い先細りのテーパ状(第1金型41に弾性栓体311を係合させた状態においては、当該第1金型41から離れる方向に先細りのテーパ状)となる縦断面形状を有していてもよい。さらに、被係合部312の内壁面を微細な凹凸構造にし、弾性栓体311の被係合部312を第1金型41の係合部にさらに強固に係合させるようにしてもよい。また、側周部113の表面を微細な凹凸構造にすることにより、当該側周部113の表面にエアベントとしての機能を付与してもよい。この場合、側周部113の表面を、被係合部312の内壁面の凹凸構造よりも凹凸の程度が小さい凹凸構造にすることで、型開きの際に、弾性栓体311が第2金型42に密着して離型不良が発生するのを一層防止することができる。
また、本発明は、図16(a)及び16(b)に示すように、側周部上方113aよりも直径の大きい側周部下方113bを備えた弾性栓体313において、底面部112に環状凹部からなる被係合部314が設けられたものであってもよい。このような場合でも、弾性栓体313の被係合部314を第1金型41の係合部に係合させることができ、弾性栓体313が第1金型41から脱離するのを規制することができる。
尚、弾性栓体313に被係合部314を形成し、かつ、当該被係合部314に係合可能にする第1金型41の係合部は、環状の凹部成形用凸部からなる。また、被係合部314の内壁面は、底面部112に向かうに従い先細りのテーパ状(第1金型41に弾性栓体313を係合させた状態においては、当該第1金型41に近づく方向に先細りのテーパ状)となる縦断面形状を有していてもよい。さらに、被係合部314の内壁面を微細な凹凸構造にし、弾性栓体313の被係合部314を第1金型41の係合部にさらに強固に係合させるようにしてもよい。また、側周部113(側周部上方113a及び側周部下方113b)の表面を微細な凹凸構造にすることにより、当該側周部113の表面にエアベントとしての機能を付与してもよい。この場合、側周部113の表面を、被係合部314の内壁面の凹凸構造よりも凹凸の程度が小さい凹凸構造にすることで、型開きの際に、弾性栓体313が第2金型42に密着して離型不良が発生するのを一層防止することができる。
また、本発明は、図17(a)及び17(b)に示すように、側周部上方113aよりも直径の大きい側周部下方113bを備えた弾性栓体313において、底面部112の中央部分に設けられた開口部からなる被係合部312が設けられたものであってもよい。このような場合でも、弾性栓体315の被係合部316を第1金型41の係合部に係合させることができ、弾性栓体315が第1金型41から脱離するのを規制することができる。
尚、弾性栓体315に被係合部316を形成し、かつ、当該被係合部316に係合可能にする第1金型41の係合部は、円柱状の凹部成形用凸部からなる。また、被係合部316の内壁面は、天面部111に向かうに従い先細りのテーパ状(第1金型41に弾性栓体315を係合させた状態においては、当該第1金型41から離れる方向に先細りのテーパ状)となる縦断面形状を有していてもよい。さらに、被係合部316の内壁面を微細な凹凸構造にし、弾性栓体315の被係合部316を第1金型41の係合部にさらに強固に係合させるようにしてもよい。また、側周部113(側周部上方113a及び側周部下方113b)の表面を微細な凹凸構造にすることにより、当該側周部113の表面にエアベントとしての機能を付与してもよい。この場合、側周部113の表面を、被係合部316の内壁面の凹凸構造よりも凹凸の程度が小さい凹凸構造にすることで、型開きの際に、弾性栓体315が第2金型42に密着して離型不良が発生するのを一層防止することができる。