図1は、本発明の実施において好適な印刷装置の具体例を示す図である。図1に示す具体例において、印刷装置10は、画像入力部12と印刷エンジン14と印刷制御部16を備えている。
画像入力部12には、印刷対象となる印刷データが入力される。印刷データの好適な具体例は画像データ(文字や数字や記号のみのデータを含む)であり、例えば、コンピュータ等の外部装置から得られる画像データ、または、スキャナ等により読み込まれた画像データが画像入力部12に入力される。
画像入力部12は、例えばユーザから印刷指示された印刷対象であるユーザ画像の画像データを印刷エンジン14へ出力する。また、画像入力部12は、後に説明するテスト印刷において、チャート画像の画像データを印刷エンジン14へ出力する。
印刷エンジン14は、画像入力部12から得られる画像データに対応した画像(文字や数字や記号のみの画像を含む)を用紙などの媒体上に印刷する。なお、印刷エンジン14は、用紙以外の媒体、例えば樹脂製シートや金属製シートや板や布などの媒体に画像を印刷してもよい。
印刷制御部16は画像入力部12と印刷エンジン14を制御する。印刷制御部16は、例えば、操作デバイスなどを介して得られるユーザ操作に応じて、画像や文書などのユーザ画像を印刷するように、画像入力部12と印刷エンジン14を制御する。また、印刷制御部16は、後に説明するテスト印刷において、チャート画像の画像データを印刷するように画像入力部12と印刷エンジン14を制御する。なお、テスト印刷において、チャート画像とユーザ画像を合成した画像が印刷されてもよい。
図1に示す具体例の印刷装置10は、例えばコンピュータを利用して実現することができる。そのコンピュータは、CPU等の演算デバイス、メモリやハードディスク等の記憶デバイス、インターネット等の通信回線を利用する通信デバイス、光ディスクや半導体メモリ等の記憶媒体からデータを読み取りデータを書き込むデバイス、ディスプレイ等の表示デバイス、ユーザから操作を受け付ける操作デバイス等のハードウェア資源を備えている。
そして、例えば、図1の画像入力部12と印刷制御部16に対応したプログラム(ソフトウェア)がコンピュータに読み込まれ、そのコンピュータが備えるハードウェア資源と読み込まれたソフトウェアとの協働により、画像入力部12と印刷制御部16の機能がコンピュータにより実現される。そのプログラムは、例えば、インターネット等の通信ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよいし、光ディスク等の記憶媒体に記憶されてコンピュータに提供されてもよい。こうして、画像入力部12と印刷制御部16の機能を備えたコンピュータにより、例えばプリンター等の印刷エンジン14が制御されてもよい。
図1に例示する印刷装置10は、重ね刷り印刷に利用することができる。重ね刷り印刷では、まず、印刷対象となる用紙に対して先刷り印刷が行われ、次に、その先刷り印刷が行われた用紙に対して追い刷り印刷が行われる。
図1に示す具体例において、印刷装置10の印刷エンジン14は、重ね刷り印刷における先刷り印刷を実行する。そして、図示省略された別エンジン(印刷エンジン14とは別に設けられた印刷エンジン)により追い刷り印刷が実行される。なお、追い刷り印刷を実行する別エンジンは、別装置(印刷装置10とは別に設けられた印刷装置)が備えてもよいし、印刷装置10が印刷エンジン14と別エンジンを備える構成であってもよい。また印刷装置10の印刷エンジン14を複数回用いて先刷り印刷と追い刷り印刷を実行してもよい。
また、印刷装置10の印刷エンジン14は、重ね刷り印刷における追い刷り印刷を実行してもよい。この場合には、図示省略された別エンジン(印刷エンジン14とは別に設けられた印刷エンジン)により先刷り印刷が実行される。なお、先刷り印刷を実行する別エンジンは、別装置(印刷装置10とは別に設けられた印刷装置)が備えてもよいし、印刷装置10が印刷エンジン14と別エンジンを備える構成であってもよい。
また、先刷り印刷の具体例は、カラー画像印刷または白黒画像印刷などの通常印刷である。先刷り印刷として通常印刷を実行する場合、印刷エンジン(印刷エンジン14または別エンジン)は、例えば電子写真型フルカラープリントエンジンであり、色材としてC,M,Y,Kの4色のカラートナーを用いて、カラー画像または白黒画像を用紙などの媒体上に印刷する。
一方、追い刷り印刷の具体例は、メタリックトナーやクリアトナーなどを用いた特殊印刷である。追い刷り印刷として特殊印刷を実行する場合、印刷エンジン(印刷エンジン14または別エンジン)は、メタリックトナーやクリアトナー、白トナー、CMYK以外の色(多色、特色)トナーなどを用いた特殊印刷を実行する。
なお、先刷り印刷において特殊印刷が実行され、追い刷り印刷において通常印刷が実行されてもよい。また、通常印刷と特殊印刷の組み合わせ、例えば、通常印刷と通常印刷、特殊印刷と特殊印刷、等とは異なる組み合わせの重ね刷り印刷が実現されてもよい。
先刷り印刷を実行してから追い刷り印刷を実行する重ね刷り印刷では、先刷り印刷と追い刷り印刷との間の調整を行うことが望ましい。例えば、2つの印刷エンジンの一方で先刷り印刷を実行し、他方で追い刷り印刷を実行する場合には、それら2つの印刷エンジン間で、印刷位置の調整(ずれの調整)や倍率の調整等を行う。
図1に例示する印刷装置10は、重ね刷り印刷における先刷り印刷と追い刷り印刷の少なくとも一方の印刷を実行する機能に加え、その少なくとも一方の印刷に関するテスト印刷を実行する機能を備えている。印刷装置10の印刷エンジン14は、テスト印刷において、基準線同士の交点を基準位置とするチャートを媒体上に印刷する。その際に、印刷エンジン14は、先刷り印刷に対応した基準線の方向と追い刷り印刷に対応した基準線の方向が互いに異なるチャートを印刷する。
図2は、基準線の方向が互いに異なるチャートの具体例を示す図である。図2には、先刷り印刷に関するテスト印刷において印刷される第1チャートの具体例と、追い刷り印刷に関するテスト印刷において印刷される第2チャートの具体例が図示されている。
図2の具体例1~3には、先刷り印刷で印刷される第1基準線である複数の直線L1の交点を第1基準位置P1とする第1チャートと、追い刷り印刷で印刷される第2基準線である複数の直線L2の交点を第2基準位置P2とする第2チャートが図示されている。
図2の具体例1において、第1チャートは2つの直線L1で構成されるかぎ型マークを含んでおり、2つの直線L1の交点であるかぎ型マークの角が第1基準位置P1となる。また、第2チャートは2つの直線L2で構成されるかぎ型マークを含んでおり、2つの直線L2の交点であるかぎ型マークの角が第2基準位置P2となる。そして、具体例1では第1基準線の方向と第2基準線の方向が互いに異なっている。つまり、第1基準線である2つの直線L1が図の上下左右方向に対して斜め(例えば45度)に傾いているのに対して、第2基準線である2つの直線L2が図の上下左右方向となっている。
そのため、第1チャートと第2チャートが同じ用紙に重ね刷り印刷された際に、第1チャートのかぎ型マークと第2にチャートのかぎ型マークが重なるように印刷されてしまったとしても、直線L1(第1基準線)と直線L2(第2基準線)の方向が互いに異なっているため、直線L1と直線L2が交差することはあるものの、直線L1と直線L2が一直線上に重なり合うことがない。例えば、先刷り印刷と追い刷り印刷とのそれぞれの線分の角度を予め把握しておき、追い刷り印刷が完了した後にこの印刷物を画像読み取り装置で読み取り、そこで読み取られた画像データの中から、先刷り印刷と追い刷り印刷とのそれぞれの角度の線分を検出し、それぞれの線分の交点から基準点を検出することができ、さらにはその基準点間の距離から、例えば、予め決められた基準点間の距離との相違をもとに先刷り印刷と追い刷り印刷との画像形成位置のずれや、倍率のずれ等の調整を行うことができる。
例えば図2に示す比較例(破線の枠内)のように、直線L1と直線L2の方向が互いに同じであると、直線L1と直線L2が重なり合ってしまう場合がある。例えば図2の比較例では、1本の直線L1と1本の直線L2が一直線上に重なり合っており、重なり合った直線L1と直線L2が1本の直線として誤検出されてしまい、第1基準位置P1と第2基準位置P2の一方または両方を検出することができなくなる、あるいは、その直線が先刷り印刷と追い刷り印刷とのうちどちらの印刷で形成された直線なのかが判別できなくなる恐れがある。
これに対し、図2の具体例1では、直線L1と直線L2が重なり合うことがないため、比較例のような誤検出がなく、第1基準位置P1と第2基準位置P2の両方を検出することができる。
図2の具体例2では、第1チャートが2つの直線L1で構成されるX型マークを含んでおり、2つの直線L1の交点であるX型マークの中心が第1基準位置P1となる。また、第2チャートが2つの直線L2で構成されるプラス型マークを含んでおり、2つの直線L2の交点であるプラス型マークの中心が第2基準位置P2となる。そして、具体例2においても、第1基準線の方向と第2基準線の方向が互いに異なっている。つまり、第1基準線である2つの直線L1が図の上下左右方向に対して斜め(例えば45度)に傾いているのに対して、第2基準線である2つの直線L2が図の上下左右方向となっている。
そのため、第1チャートと第2チャートが同じ用紙に重ね刷り印刷された際に、第1チャートのX型マークと第2にチャートのプラス型マークが重なるように印刷されてしまったとしても、直線L1(第1基準線)と直線L2(第2基準線)の方向が互いに異なっているため、直線L1と直線L2が交差することはあるものの、直線L1と直線L2が一直線上に重なり合うことがない。したがって、具体例2においても、比較例のような誤検出がなく、第1基準位置P1と第2基準位置P2の両方を検出することができる。
図2の具体例3では、第1チャートが複数の直線L1で構成されるX型マークを含んでいる。具体例3では、第1チャート内において複数の直線L1は交差していないものの、複数の直線L1の延長線上(一直線上に並ぶ直線L1と直線L1を結ぶ直線上)における交点であるX型マークの中心が第1基準位置P1となる。
また、具体例3では、第2チャートが複数の直線L2で構成されるプラス型マークを含んでいる。第2チャート内において複数の直線L2は交差していないものの、複数の直線L2の延長線上(一直線上に並ぶ直線L2と直線L2を結ぶ直線上)における交点であるプラス型マークの中心が第2基準位置P2となる。
そして、具体例3においても、第1基準線の方向と第2基準線の方向が互いに異なっている。つまり、第1基準線である複数の直線L1が図の上下左右方向に対して斜め(例えば45度)に傾いているのに対して、第2基準線である複数の直線L2が図の上下左右方向となっている。
そのため、第1チャートと第2チャートが同じ用紙に重ね刷り印刷された際に、第1チャートのX型マークと第2にチャートのプラス型マークが重なるように印刷されてしまったとしても、直線L1(第1基準線)と直線L2(第2基準線)の方向が互いに異なっているため、直線L1と直線L2が一直線上に重なり合うことがない。したがって、具体例3においても、比較例のような誤検出がなく、第1基準位置P1と第2基準位置P2の両方を検出することができる。
さらに、具体例3では、第1基準位置P1と第2基準位置P2の近傍を避けるように複数の直線L1と複数の直線L2が配置されているため、具体例1,2に比べて、直線L1と直線L2が交差する可能性も低減される。もちろん、直線L1と直線L2が交差してしまったとしても、直線L1と直線L2の方向が互いに異なっているため、直線L1と直線L2が一直線上に重なり合うことによる誤検出がなく、第1基準位置P1と第2基準位置P2の両方を検出することができる。
図2の具体例3に例示するように、チャート上において基準線同士が交差していなくても、例えば基準線の延長線上における交点により基準位置が示されてもよい。
図3は、基準線の方向が互いに異なるチャートの変形例を示す図である。図3には、先刷り印刷に関するテスト印刷において印刷される第1チャートの具体例と、追い刷り印刷に関するテスト印刷において印刷される第2チャートの具体例が図示されている。
図3の変形例1~3には、先刷り印刷で印刷される第1基準線である複数の直線L1の交点を第1基準位置P1とする第1チャートと、追い刷り印刷で印刷される第2基準線である複数の直線L2の交点を第2基準位置P2とする第2チャートが図示されている。
図3の変形例1において、第1チャートは2つの直線L1で構成されるかぎ型マークを含んでおり、2つの直線L1の交点であるかぎ型マークの角が第1基準位置P1となる。また、第2チャートは2つの直線L2で構成されるかぎ型マークを含んでおり、2つの直線L2の交点であるかぎ型マークの角が第2基準位置P2となる。そして、第1基準線(直線L1)の方向と第2基準線(直線L2)の方向が互いに異なっている。
そのため、第1チャートと第2チャートが同じ用紙に重ね刷り印刷された際に、第1チャートのかぎ型マークと第2チャートのかぎ型マークが重なるように印刷されてしまったとしても、直線L1(第1基準線)と直線L2(第2基準線)の方向が互いに異なっているため、直線L1と直線L2が交差することはあるものの、直線L1と直線L2が一直線上に重なり合うことがない。したがって、直線L1と直線L2が一直線上に重なり合うことによる誤検出がなく、第1基準位置P1と第2基準位置P2の両方を検出することができる。
さらに、図3の変形例1では、第1基準線同士の角度と第2基準線同士の角度が異なっている。つまり、第1基準線である2つの直線L1の交差角度θ1と第2基準線である2つの直線L2の交差角度θ2が互いに異なっている(θ1≠θ2)。
したがって、例えば、第1チャートと第2チャートが重ね刷り印刷された用紙から得られる画像データ内において、複数の直線が検出された場合に、交差角度θ1で交差する2つの直線が第1基準線である2つの直線L1であることが分かり、交差角度θ2で交差する2つの直線が第2基準線である2つの直線L2であることが分かる。つまり、基準線同士の角度の相違(θ1≠θ2)から、先刷り印刷に対応した第1チャートの第1基準線(交差角度θ1)と追い刷り印刷に対応した第2チャートの第2基準線(交差角度θ2)を判別できる。
図3の変形例2では、第1チャートが2つの直線L1で構成されるX型マークを含んでおり、2つの直線L1の交点であるX型マークの中心が第1基準位置P1となる。また、第2チャートが2つの直線L2で構成されるプラス型マークを含んでおり、2つの直線L2の交点であるプラス型マークの中心が第2基準位置P2となる。
そして、図2の具体例2と同様に、図3の変形例2においても、第1基準線の方向と第2基準線の方向が互いに異なっている。つまり、第1基準線である2つの直線L1が図の上下左右方向に対して斜め(例えば45度)に傾いているのに対して、第2基準線である2つの直線L2が図の上下左右方向となっている。
そのため、第1チャートと第2チャートが同じ用紙に重ね刷り印刷された際に、第1チャートのX型マークと第2にチャートのプラス型マークが重なるように印刷されてしまったとしても、図2の具体例2と同じ理由により、図3の変形例2においても、直線L1と直線L2が重なり合うことによる誤検出がなく、第1基準位置P1と第2基準位置P2の両方を検出することができる。
さらに、図3の変形例2では、第1基準線の色と第2基準線の色が異なっている。例えば、第1基準線である2つの直線L1が青色であり、第2基準線である2つの直線L2が赤色となっている。
したがって、例えば、第1チャートと第2チャートが重ね刷り印刷された用紙から得られる画像データ内において複数の直線が検出された場合に、青色の直線が第1基準線である2つの直線L1であることが分かり、赤色の直線が第2基準線である2つの直線L2であることが分かる。つまり、基準線の色の相違から、先刷り印刷に対応した第1チャートの第1基準線と追い刷り印刷に対応した第2チャートの第2基準線を判別できる。もちろん、青色と赤色の組み合わせとは異なる色の組み合わせが利用されてもよいし、第1基準線と第2基準線との輝度や濃度を互いに異ならせることにより、基準線の輝度の相違から、第1基準線と第2基準線を判別できるようにしてもよい。ここで言う異ならせる色とは、色の色相にとどまらず、彩度、明度、濃度等であっても良い。
また、図3の変形例3に例示するように、第1基準線の線種と第2基準線の線種を互いに異ならせるようにしてもよい。図3の変形例3では、第1基準線である2つの直線L1が実線であり、第2基準線である2つの直線L2が破線となっている。
したがって、例えば、第1チャートと第2チャートが重ね刷り印刷された用紙から得られる画像データ内において複数の直線が検出された場合に、実線の直線が第1基準線である2つの直線L1であることが分かり、破線の直線が第2基準線である2つの直線L2であることが分かる。つまり、基準線の線種(実線、破線、一点鎖線など)の相違から、先刷り印刷に対応した第1チャートの第1基準線と追い刷り印刷に対応した第2チャートの第2基準線を判別できる。
なお、図2の具体例3と同じ理由により、図3の変形例3においても、直線L1と直線L2が重なり合うことによる誤検出がなく、第1基準位置P1と第2基準位置P2の両方を検出することができる。
また、先刷り印刷に対応した第1基準位置と追い刷り印刷に対応した第2基準位置を互いに異なる位置に配置するようにしてもよい。
図4は、第1基準位置と第2基準位置が互いに異なる位置に配置された第1チャートと第2チャートの具体例を示す図である。
図4に示す具体例において、先刷り印刷で印刷される第1チャートは、第1基準線(2つの直線)で構成されるかぎ型マークM1を含んでおり、2つの直線の交点であるかぎ型マークの角が第1基準位置となる(図2の具体例1参照)。また、追い刷り印刷で印刷される第2チャートは、第2基準線(2つの直線)で構成されるかぎ型マークM2を含んでおり、2つの直線の交点であるかぎ型マークの角が第2基準位置となる(図2の具体例1参照)。そして、第1基準線の方向と第2基準線の方向が互いに異なっている。さらに、図4に示す具体例では、第1基準位置と第2基準位置が互いに異なる位置に離れて配置される。
したがって、例えば、第1チャートと第2チャートが重ね刷り印刷された用紙から得られる画像データ内において、複数の直線が検出された場合に、例えば第1基準位置に対応した探索エリアA1(例えば第1基準位置の理想位置を中心とする探索領域)内にある直線がかぎ型マークM1を構成する第1基準線であることが分かり、例えば第2基準位置に対応した探索エリアA2(例えば第2基準位置の理想位置を中心とする探索領域)内にある直線がかぎ型マークM2を構成する第2基準線であることが分かる。つまり、配置された位置の相違から、先刷り印刷に対応した第1チャートに含まれる第1基準線(かぎ型マークM1)が示す第1基準位置と、追い刷り印刷に対応した第2チャートに含まれる第2基準線(かぎ型マークM2)が示す第2基準位置とを判別しつつ、第1基準位置と第2基準位置の両方を検出することができる。
図5は本発明の実施において好適な印刷システムの具体例を示す図である。図5には、媒体上に先刷り印刷を行ってから、その媒体上に追い刷り印刷を行う重ね刷り印刷を実行する印刷システムの具体例が図示されている。図5に示す具体例において、印刷システムは、印刷装置10Aと印刷装置10Bとスキャナ30とエンジン間コントローラ40と記憶デバイス50を備えている。
印刷装置10Aは、用紙などの媒体に対して先刷り印刷を実行する印刷エンジン14Aを備えている。印刷装置10Aの好適な具体例は、図1に例示した印刷装置10である。また、図5の印刷システムにおいて、印刷装置10Aが実行する先刷り印刷の好適な具体例は、カラー画像印刷または白黒画像印刷などの通常印刷である。先刷り印刷として通常印刷を実行する場合、印刷エンジン14Aは、例えば電子写真型フルカラープリントエンジンであり、色材としてC,M,Y,Kの4色のカラートナーを用いて、カラー画像または白黒画像を用紙などの媒体上に印刷する。
印刷装置10Bは、先刷り印刷を施された用紙などの媒体に対して追い刷り印刷を実行する印刷エンジン14Bを備えている。印刷装置10Bの好適な具体例は、図1に例示した印刷装置10である。また、図5の印刷システムにおいて、印刷装置10Bが実行する追い刷り印刷の好適な具体例は、メタリックトナーやクリアトナーなどを用いた特殊印刷である。追い刷り印刷として特殊印刷を実行する場合、印刷エンジン14Bは、先刷り印刷において例えば通常印刷が実行された用紙に対して、メタリックトナーやクリアトナーなどを用いた特殊印刷を実行する。なお、白トナー、CMYK以外の色(多色、特色)トナーなどを用いた特殊印刷が実行されてもよい。
例えばテスト印刷後に実行される本印刷では、ユーザから印刷指示された印刷対象であるユーザ画像が印刷装置10Aにより通常印刷(カラー画像印刷または白黒印刷)され、さらに、通常印刷後の用紙に対して印刷装置10Bにより特殊印刷が施される。これにより、例えば、用紙に印刷される画像や文書などのユーザ画像に対して、メタリックトナーやクリアトナー、白トナー、CMYK以外の色(多色、特色)トナーなどによる特殊な視覚効果が与えられる。
なお、図5に示す具体例において、先刷り印刷として特殊印刷が実行され、追い刷り印刷として通常印刷が実行されてもよい。また、通常印刷と特殊印刷の組み合わせ、例えば、通常印刷と通常印刷、特殊印刷と特殊印刷、等とは異なる組み合わせの重ね刷り印刷が実行されてもよい。
図5に例示する印刷システムは、重ね刷り印刷の調整のためのテスト印刷を実行する機能を備えている。つまり、印刷装置10Aの印刷エンジン14Aが先刷り印刷に関するテスト印刷を実行し、印刷装置10Bの印刷エンジン14Bが追い刷り印刷に関するテスト印刷を実行する。
印刷装置10Aの印刷エンジン14Aは、先刷り印刷に関するテスト印刷において、第1基準線同士の交点を第1基準位置とする第1チャートを用紙(媒体)上に印刷する。先刷り印刷に関するテスト印刷において、印刷エンジン14Aは、例えば、図2~図4を利用して説明した具体例の第1チャートを用紙に印刷してもよい。なお、印刷エンジン14Aは、テスト印刷において、第1チャートと共にユーザ画像(テスト印刷後に本印刷される画像)を用紙に印刷してもよい。
印刷装置10Bの印刷エンジン14Bは、追い刷り印刷に関するテスト印刷において、第1チャートが印刷された用紙(媒体)上に、第1基準線とは方向が異なる第2基準線同士の交点を第2基準位置とする第2チャートを印刷する。追い刷り印刷に関するテスト印刷において、印刷エンジン14Bは、例えば、図2~図4を利用して説明した具体例の第2チャートを用紙に印刷してもよい。
そして、スキャナ30は、第1チャートと第2チャートが印刷された用紙(媒体)上の画像データを光学的に読み取る。これにより、用紙に印刷された第1チャートと第2チャートの画像データが読み取られる。スキャナ30により読み取られた画像データは、エンジン間コントローラ40に送られる。
先刷り印刷と追い刷り印刷との画像の位置ずれを調整する場合、エンジン間コントローラ40は、データ取得部42と検出部44とずれ量導出部46を備えている。データ取得部42は、スキャナ30から得られる画像データを取得する。検出部44は、データ取得部42が取得した画像データ内において、先刷り印刷の第1基準位置と追い刷り印刷の前記第2基準位置を検出する。ずれ量導出部46は、検出部44により検出された第1基準位置と第2基準位置の相対的な位置関係を利用して、先刷り印刷の印刷位置と追い刷り印刷の印刷位置のずれ量を導出する。
記憶デバイス50には、第1チャートと第2チャートに関するチャート情報が記憶されている。エンジン間コントローラ40によって実行される処理には、記憶デバイス50に記憶されたチャート情報が利用される。
なお、例えば、プリント機能とコピー機能を備えた複合機が、印刷装置10Aまたは印刷装置10Bの機能とスキャナ30の機能を兼ね備える構成が実現されてもよいし、さらに、その複合機がエンジン間コントローラ40の機能を備える構成が実現されてもよい。
また、エンジン間コントローラ40は、例えばコンピュータを利用して実現することもできる。そのコンピュータは、CPU等の演算デバイス、メモリやハードディスク等の記憶デバイス、インターネット等の通信回線を利用する通信デバイス、光ディスクや半導体メモリ等の記憶媒体からデータを読み取りデータを書き込むデバイス、ディスプレイ等の表示デバイス、ユーザから操作を受け付ける操作デバイス等のハードウェア資源を備えている。
そして、例えば、図5に例示するデータ取得部42と検出部44とずれ量導出部46に対応したプログラム(ソフトウェア)がコンピュータに読み込まれ、そのコンピュータが備えるハードウェア資源と読み込まれたソフトウェアとの協働により、データ取得部42と検出部44とずれ量導出部46のうちの少なくとも一つの機能がコンピュータにより実現される。そのプログラムは、例えば、インターネット等の通信ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよいし、光ディスク等の記憶媒体に記憶されてコンピュータに提供されてもよい。
次に、図5の印刷システムが実行するテスト印刷の具体例について説明する。なお、図5に示した構成(符号を付した各部)については、以下の説明において図5の符号を利用する。
図5の印刷システムでは、印刷装置10Aの印刷エンジン14Aが、先刷り印刷に関するテスト印刷において、第1基準線同士の交点を第1基準位置とする第1チャートを用紙上に印刷し、さらに、第1チャートが印刷された用紙上に、印刷装置10Bの印刷エンジン14Bが、第1基準線とは方向が異なる第2基準線同士の交点を第2基準位置とする第2チャートを印刷する。そして、スキャナ30が用紙上に印刷された第1チャートと第2チャートの画像データを読み取り、スキャナ30で読み取った画像データから、エンジン間コントローラ40の検出部44が先刷り印刷の第1基準位置と追い刷り印刷の前記第2基準位置を検出する。
第1チャートと第2チャートの画像データ内には、第1基準線と第2基準線を構成する複数の直線が含まれている。エンジン間コントローラ40の検出部44は、まず、第1チャートと第2チャートの画像データ内において複数の直線を検出する。
図6は、画像データ内における直線検出の具体例を示す図である。エンジン間コントローラ40の検出部44は、スキャナ30からデータ取得部42が取得した画像データ内において、例えば公知の画像検出処理等を利用して、直線の画像上にある複数のサンプル点を検出する。図6に示す具体例では、検出された6つのサンプル点(S1~S6)が図示されている。
検出部44は、複数のサンプル点のうちの3つ以上が一直線上に並んでいる場合に、それら3つ以上のサンプル点を結んだ直線を基準線として検出する。例えば、図6に示す具体例において、3つのサンプル点(S1~S3)が一直線上に並んでいるため、検出部44は、3つのサンプル点(S1~S3)を結ぶ直線Laを基準線として検出する。
また、図6に示す具体例では、3つのサンプル点(S4~S6)が一直線上に並んでいるため、検出部44は、3つのサンプル点(S4~S6)を結ぶ直線、つまり、同一直線上に並ぶ直線Lbと直線Lcを一本の基準線として検出する。したがって、直線Lbと直線Lcの間に基準位置がある場合(図2の具体例3参照)でも、その基準位置を通る基準線が検出される。
こうして、例えば図6を利用して説明した直線検出により、第1チャートと第2チャートの画像データ内において第1基準線となる複数の直線と、第2基準線となる複数の直線が検出される。
複数の直線が検出されると、エンジン間コントローラ40の検出部44は、画像データ内において検出された複数の直線の交点である基準位置を検出する。
例えば、図2に示す具体例1~3の第1チャートと第2チャートに対応した画像データであれば、第1基準線である複数の直線L1は直交しており、また、第2基準線である複数の直線L2も直交している。そこで、例えば、画像データ内において検出された複数の直線のうち、互いに直交する直線の交点が基準位置(図2の第1基準位置P1と第2基準位置P2)として検出される。
さらに、例えば、図3に示す変形例1~3のように、第1基準線と第2基準線を判別できるようにしておけば、先刷り印刷の第1基準位置P1と追い刷り印刷の第2基準位置P2を判別して検出できるようになる。
例えば、図3に示す変形例1の第1チャートと第2チャートに対応した画像データであれば、第1基準線である複数の直線L1は交差角度θ1で交差しており、また、第2基準線である複数の直線L2は交差角度θ2で交差している。そこで、例えば、画像データ内において検出された複数の直線のうち、交差角度θ1で交差している直線の交点が第1基準位置P1として検出され、交差角度θ2で交差している直線の交点が第2基準位置P2として検出される。
また、図3に示す変形例2の第1チャートと第2チャートに対応した画像データであれば、第1基準線である複数の直線L1は青色であり、また、第2基準線である複数の直線L2は赤色である。そこで、画像データ内において検出された複数の直線のうち、青色の直線の交点が第1基準位置P1として検出され、赤色の直線の交点が第2基準位置P2として検出される。
また、図3に示す変形例3の第1チャートと第2チャートに対応した画像データであれば、第1基準線である複数の直線L1は実線であり、また、第2基準線である複数の直線L2は破線である。そこで、画像データ内において検出された複数の直線のうち、実線の直線の交点が第1基準位置P1として検出され、破線の直線の交点が第2基準位置P2として検出される。
また、例えば、図4に示す具体例のように、第1基準位置と第2基準位置を互いに異なる位置に配置しておくことによっても、第1基準位置と第2基準位置を判別して検出できるようになる。例えば、図4に示す具体例の第1チャートと第2チャートに対応した画像データであれば、画像データ内において検出された複数の直線のうち、探索エリアA1内にある直線の交点が第1基準位置として検出され、探索エリアA2内にある直線の交点が第2基準位置として検出される。
検出部44により第1基準位置と第2基準位置が検出されると、ずれ量導出部46は、検出された第1基準位置と第2基準位置の相対的な位置関係を利用して、先刷り印刷の印刷位置と追い刷り印刷の印刷位置のずれ量を導出する。ずれ量を導出するにあたっては、用紙(媒体)上において複数の基準位置を示すチャートを利用することが望ましい。
図7は、複数の基準位置を示すチャートの具体例を示す図である。図7の具体例1~4には、複数の基準位置を示す複数の基準マークRM1~RM4が図示されている。
図7の具体例1には、かぎ型の基準マークRM1が図示されている。例えば、かぎ型の基準マークRM1の角が基準位置となる。図7の具体例1では、6個の基準マークRM1が6個の基準位置を示している。つまり、6個の基準マークRM1が、用紙の4つのコーナー(隅)に対応した4つの基準位置と、用紙のコーナー間の中心に対応した2つの基準位置を示している。なお、図7の具体例1では、用紙のコーナー間の中心に対応した2つの基準位置が、中心からやや右側にずれた位置に配置されている。
例えば、図7の具体例1に示すチャートを第1チャートとして利用する場合には、第2チャートとして、かぎ型の基準マークRM1を構成する直線とは異なる方向の直線で構成されるマークを含んだチャートが利用される。また、図7の具体例1に示すチャートを第2チャートとして利用する場合には、第1チャートとして、かぎ型の基準マークRM1を構成する直線とは異なる方向の直線で構成されるマークを含んだチャートが利用される。
ちなみに、図7の具体例1では、6つの基準マークRM1が、用紙の向きの回転に関して非対称に配置される。例えば、用紙を回転(左右90度の回転と180度の反転を含む)させた場合に、複数の基準マークRM1の配置が、回転の前後において一致することがないように、複数の基準マークRM1が配置される。
したがって、例えば、図7の具体例1に示す6つの基準マークRM1を含んだ第1チャートが用紙に印刷されることにより、6つの基準マークRM1の配置から、用紙のセット方向(用紙が搬送される方向)が分かる。
例えば、先刷り印刷に関するテスト印刷において6つの基準マークRM1を含んだ第1チャートが印刷された用紙を見たユーザは、6つの基準マークRM1の配置から、追い刷り印刷に関するテスト印刷における用紙のセット方向が分かる。これにより、追い刷り印刷の用紙を正しくセットできるようになる。なお、例えば、図7の具体例1に示す6つの基準マークRM1の配置が正しいセット方向に対応した配置であることを、表示デバイスへの画像表示、取り扱い説明書への記載、用紙トレイへの記載等により、ユーザに知らせるようにしてもよい。
図7の具体例2には、プラス型の基準マークRM2が図示されている。例えば、プラス型の基準マークRM2の交点が基準位置となる。図7の具体例2においても、6個の基準マークRM2が、用紙の向きの回転に関して非対称に配置され、用紙の4つのコーナー(隅)に対応した4つの基準位置と、用紙のコーナー間の中心に対応した2つの基準位置を示している。なお、図7の具体例2では、用紙のコーナー間の中心に対応した2つの基準位置が、中心からやや左側にずれた位置に配置されている。
例えば、図7の具体例2に示すチャートを第1チャートとして利用する場合には、第2チャートとして、プラス型の基準マークRM2を構成する直線とは異なる方向の直線で構成されるマークを含んだチャートが利用される。また、図7の具体例2に示すチャートを第2チャートとして利用する場合には、第1チャートとして、プラス型の基準マークRM2を構成する直線とは異なる方向の直線で構成されるマークを含んだチャートが利用される。
なお、図7の具体例2に示す6つの基準マークRM2も用紙の向きの回転に関して非対称に配置されているため、例えば、図7の具体例2に示す6つの基準マークRM2を含んだ第1チャートが用紙に印刷されることにより、6つの基準マークRM2の配置から、用紙のセット方向(用紙が搬送される方向)が分かる。
図7の具体例3には、X型の基準マークRM3が図示されている。例えば、X型の基準マークRM3の交点が基準位置となる。図7の具体例3においては、8個の基準マークRM3が、用紙の向きの回転に関して非対称に配置され、用紙の4つのコーナー(隅)に対応した4つの基準位置と、用紙のコーナー間の中心に対応した4つの基準位置を示している。
例えば、図7の具体例3に示すチャートを第1チャートとして利用する場合には、第2チャートとして、X型の基準マークRM3を構成する直線とは異なる方向の直線で構成されるマークを含んだチャートが利用される。また、図7の具体例3に示すチャートを第2チャートとして利用する場合には、第1チャートとして、X型の基準マークRM3を構成する直線とは異なる方向の直線で構成されるマークを含んだチャートが利用される。
なお、図7の具体例3に示す8つの基準マークRM3も用紙の向きの回転に関して非対称に配置されているため、例えば、図7の具体例3に示す8つの基準マークRM3を含んだ第1チャートが用紙に印刷されることにより、8つの基準マークRM3の配置から、用紙のセット方向(用紙が搬送される方向)が分かる。
図7の具体例4には、逆V字型の基準マークRM4が図示されている。例えば、逆V字型の基準マークRM4の角が基準位置となる。図7の具体例1と同様に、図7の具体例4においても、6個の基準マークRM4が、用紙の向きの回転に関して非対称に配置され、用紙の4つのコーナー(隅)に対応した4つの基準位置と、用紙のコーナー間の中心に対応した2つの基準位置を示している。
例えば、図7の具体例4に示すチャートを第1チャートとして利用する場合には、第2チャートとして、逆V字型の基準マークRM4を構成する直線とは異なる方向の直線で構成されるマークを含んだチャートが利用される。また、図7の具体例4に示すチャートを第2チャートとして利用する場合には、第1チャートとして、逆V字型の基準マークRM4を構成する直線とは異なる方向の直線で構成されるマークを含んだチャートが利用される。
また、図7の具体例4に示す6つの基準マークRM4も用紙の向きの回転に関して非対称に配置されているため、例えば、図7の具体例4に示す6つの基準マークRM4を含んだ第1チャートが用紙に印刷されることにより、6つの基準マークRM4の配置から、用紙のセット方向(用紙が搬送される方向)が分かる。さらに、図7の具体例4では、逆V字型の基準マークRM4の角の向きが用紙のセット方向を示しているため、基準マークRM4の形状からも用紙のセット方向が分かる。
なお、図7に例示した具体例1~4は、複数の基準位置を示すチャートに関する具体例の一部に過ぎない。例えば、図2~図4に示した具体例のマークを利用して複数の基準位置を示すチャートが形成されてもよい。
図8は、重ね刷り印刷の調整に利用されるチャートの具体例を示す図である。重ね刷り印刷の調整を行うにあたり、印刷装置10Aの印刷エンジン14Aは、先刷り印刷のテスト印刷において、第1基準線同士の交点を第1基準位置とする第1チャートを用紙(媒体)上に印刷する。
図8には、重ね刷り印刷の調整に利用される第1チャートの具体例として、基準位置を示す逆V字型の基準マークRMを含んだ第1チャート(図7の具体例4参照)が図示されている。例えば、逆V字型の基準マークRMの角が基準位置となり、6個の基準マークRMが6個の基準位置を示している。つまり、6個の基準マークRMが、用紙の4つのコーナー(隅)に対応した4つの基準位置と、用紙のコーナー間の中心に対応した2つの基準位置を示している。
また、図8に示す具体例において、第1チャートには、用紙の向き(追い刷り印刷における用紙のセット方向)を示す方向マークSMが含まれている。図8の具体例において、方向マークSMは、形状(角の向き)によって用紙のセット方向(用紙が搬送される方向)を示している。
例えば、先刷り印刷のテスト印刷において、6個の基準マークRMは用紙の表面と裏面の両方に印刷され、方向マークSMは用紙の裏面のみに印刷される。これにより、方向マークSMが印刷された面が裏面であることが分かるようになる。
図8には、重ね刷り印刷の調整に利用される第2チャートの具体例も図示されている。重ね刷り印刷の調整を行うにあたり、印刷装置10Bの印刷エンジン14Bは、追い刷り印刷のテスト印刷において、第1チャートが印刷された用紙(媒体)上に、第1基準線とは方向が異なる第2基準線同士の交点を第2基準位置とする第2チャートを印刷する。
図8には、重ね刷り印刷の調整に利用される第2チャートの具体例として、複数の直線Lと複数のバーBとバーコードBCを含んだ第2チャートが図示されている。例えば、互いに異なる2つの直線Lの交点(格子点)が基準位置(探索基準位置)となる。また、複数のバーBの太さが用紙の向きを示している。例えば、4つのバーBのうちの最も太いバーBが、追い刷り印刷の先頭側(リード側)に配置される。さらに、例えば、用紙の表裏や用紙のサイズなどの情報を示すバーコードBCが含まれている。図8の具体例では、複数の直線Lが第2基準線として機能する。複数の直線Lは、第1チャートの基準マークRMを構成する斜めの直線とは異なる上下左右方向となっている。
例えば、追い刷り印刷のテスト印刷において、用紙の表面と裏面の両方に第2チャートが印刷される。なお、例えば、用紙の表裏の情報を示すバーコードBCが用紙の表面に印刷され、用紙サイズの情報を示すバーコードBCが用紙の裏面に印刷される。
そして、重ね刷り印刷の調整を行う際には、先刷り印刷のテスト印刷において第1チャートが印刷され、第1チャートが印刷された用紙に対して、追い刷り印刷のテスト印刷において第2チャートが印刷される。これにより、用紙上に第1チャートと第2チャートが重ね刷り印刷される。
また、重ね刷り印刷の調整に先立って、第1チャートと第2チャートに関するチャート情報が記憶デバイス50に記憶される。チャート情報には、第1チャートと第2チャートとの間の理想的な位置関係を示す理想位置情報が含まれる。
図9は、チャート情報に含まれる理想位置情報の具体例を示す図である。図9には、図8に例示する第1チャートと第2チャートに関する理想位置情報が示されている。
図8の具体例において、第1チャートは6個の基準マークRMを含んでおり、6個の基準マークRMが6個の基準位置を示している。図9には、それら6個の基準位置P1~P6が図示されている。
また、図8の具体例において、第2チャートは複数の直線Lを含んでおり、互いに異なる2つの直線Lの交点(格子点)が探索基準位置となる。図9には、第1チャートが示す6個の基準位置P1~P6に対応した6個の探索基準位置R1~R6が図示されている。
理想位置情報は、先刷り印刷と追い刷り印刷との間に印刷位置のずれがない理想的な重ね刷り印刷が行われた場合における第1チャートと第2チャートの位置関係を示す情報である。図9に示す具体例では、理想位置情報として、第1チャートが示す複数の基準位置と第2チャートが示す複数の探索基準位置のうち、互いに対応関係にある各基準位置と各探索基準位置との間の理想的な相対位置情報が利用される。
例えば、図9に示す具体例において、第1チャートが示す基準位置P1と第2チャートが示す探索基準位置R1が互いに対応関係にあり、理想的な重ね刷り印刷が行われた場合における基準位置P1と探索基準位置R1のx座標値の差とy座標値の差が相対位置情報(x1,y1)となる。
同様に、図9に示す具体例において、基準位置P2と探索基準位置R2の相対位置情報(x2,y2)、基準位置P3と探索基準位置R3の相対位置情報(x3,y3)、基準位置P4と探索基準位置R4の相対位置情報(x4,y4)、基準位置P5と探索基準位置R5の相対位置情報(x5,y5)、基準位置P6と探索基準位置R6の相対位置情報(x6,y6)が、互いに対応関係にある各基準位置と各探索基準位置との間の理想的な相対位置情報となる。
記憶デバイス50には、チャート情報として、例えば、図9に例示する互いに対応関係にある各基準位置と各探索基準位置との間の理想的な相対位置情報が記憶される。
図10は、重ね刷り印刷の調整に係る手順の具体例を示す図である。図10には、図5の印刷システムによる重ね刷り印刷の調整に係る手順の具体例がフローチャートによって示されている。本調整は、例えば、先刷り印刷と追い刷り印刷と間で生じる画像形成位置のずれの調整や倍率の調整などが挙げられる。なお、重ね刷り印刷の調整に先立って、第1チャートと第2チャートに関するチャート情報が記憶デバイス50に記憶される(S0)。例えば、図8に示す具体例の第1チャートと第2チャートであれば、図9に例示した相対位置情報(x1,y1)~(x6,y6)を含むチャート情報が記憶デバイス50に記憶される。
重ね刷り印刷の調整では、まず先刷り印刷に関するテスト印刷が実行される(S1)。例えば、印刷装置10Aの印刷エンジン14Aに対応した用紙トレイにユーザがテスト印刷用の用紙をセットし、印刷装置10Aが備える操作デバイス等を操作することにより、ユーザが第1チャートのテスト印刷を指示する。これにより、印刷エンジン14Aが第1チャートを印刷する。
次に、追い刷り印刷の用紙がセットされる(S2)。例えば、印刷装置10Aの印刷エンジン14Aに対応した出力トレイに出力された用紙、つまりS1の先刷り印刷に関するテスト印刷により第1チャートが印刷された用紙を、ユーザが、印刷装置10Bの印刷エンジン14Bに対応した用紙トレイにセットする。
S2のステップで用紙をセットする際に、用紙に印刷された第1チャートがその用紙のセット方向(用紙が搬送される方向)を示すようにしておけば(例えば図7の具体例4参照)、ユーザは、用紙に印刷された第1チャートが示すセット方向を参照しつつ、その用紙が正しい向きとなるように印刷装置10Bの印刷エンジン14Bに対応した用紙トレイにその用紙をセットする。これにより、追い刷り印刷の用紙が正しくセットできるようになる。なお、例えば、印刷装置10Bが備える表示デバイスに、用紙の正しい向き(例えば第1チャートの正しい向き)を示す画像を表示させてもよいし、用紙の正しい向きを示す図などを印刷エンジン14Bに対応した用紙トレイまたはその付近に示すようにしてもよい。
追い刷り印刷の用紙がセットされると、追い刷り印刷に関するテスト印刷が実行される(S3)。例えば、ユーザが、印刷装置10Bの操作デバイス等を操作することにより、第2チャートのテスト印刷を指示する。これにより、印刷エンジン14Bが第2チャートを印刷する。
次に、スキャナ30により画像データの読み取りが実行される(S4)。例えば、印刷装置10Bの印刷エンジン14Bに対応した出力トレイに出力された用紙、つまり、S1の先刷り印刷に関するテスト印刷により第1チャートが印刷され、さらにS3の追い刷り印刷に関するテスト印刷により第2チャートが印刷された用紙を、ユーザがスキャナ30にセットして画像データの読み取りを指示する。これにより、重ね刷り印刷された第1チャートと第2チャートの画像データが読み取られる。
そして、スキャナ30により読み取られた画像データをエンジン間コントローラ40のデータ取得部42が取得し、エンジン間コントローラ40により、重ね刷り印刷の調整処理が実行される(S5)。
データ取得部42が画像データを取得すると、検出部44は、画像データ内において複数の直線を検出し(図6参照)、複数の直線の交点である基準位置を検出する。
例えば、図8に示す具体例の第1チャートと第2チャートであれば、第1チャートに含まれる逆V字型の基準マークRMの角度(逆V字の内角の角度)を鋭角(鈍角でもよい)にしておくことにより、第2チャートに含まれる複数の直線Lの交差角度(直角)との相違から、基準マークRMを構成する直線を判別することができる。
これにより、第1チャートに含まれる複数の基準マークRMが示す複数の第1基準位置と、第2チャートに含まれる複数の直線Lの交点が示す複数の第2基準位置とを判別して検出することができる。
また、図8に示す具体例の第1チャートと第2チャートであれば、第2チャートに含まれる直線Lに比べて、第1チャートに含まれる逆V字型の基準マークRMを構成する直線は短い(例えば直線Lの長さの半分以下)ため、直線の長さから、第1チャートの基準マークRMを構成する直線と、第2チャートに含まれる直線Lとを判別するようにしてもよい。
こうして、例えば、図8に示す具体例の第1チャートと第2チャートであれば、画像データ内において、複数の第1基準位置として6個の基準位置P1~P6(図9)が検出され、複数の第2基準位置として6個の探索基準位置R1~R6(図9)が検出される。
エンジン間コントローラ40のずれ量導出部46は、画像データ内において検出された複数の第1基準位置と複数の第2基準位置の相対的な位置関係を利用し、先刷り印刷の印刷位置と追い刷り印刷の印刷位置のずれ量を導出する。例えば、画像データ内で検出された基準位置P1(図9参照)と探索基準位置R1(図9参照)から、それらの相対位置(x1,y1)が得られる。そして、記憶デバイス50から得られるチャート情報に含まれる理想的な相対位置(x1,y1)と検出された相対位置(x1,y1)の差から、基準位置P1(探索基準位置R1)に対応したずれ量が導出される。
また、画像データ内で検出された基準位置P2(図9参照)と探索基準位置R2(図9参照)から、それらの相対位置(x2,y2)が得られる。そして、記憶デバイス50から得られる理想的な相対位置(x2,y2)と検出された相対位置(x2,y2)の差から、基準位置P2(探索基準位置R2)に対応したずれ量が導出される。さらに、検出結果から得られる相対位置(x3,y3)~(x6,y6)と、チャート情報に含まれる理想的な相対位置(x3,y3)~(x6,y6)の差から、基準位置P3~P6(探索基準位置R3~R6)に対応したずれ量が導出される。
例えば、図8に例示する第1チャートのように、用紙の4つのコーナー(隅)に対応した4つの基準位置と、用紙のコーナー間の中心に対応した2つの基準位置を利用すれば、用紙上における印刷可能領域の全体的な印刷位置のずれを検出するのに好適である。
こうして、基準位置P1~P6(探索基準位置R1~R6)に対応したずれ量が得られると、ずれ量に応じた調整で重ね刷り印刷が実行される。例えば、ユーザから印刷指示された印刷対象であるユーザ画像が本印刷される。つまり、ユーザ画像が印刷装置10Aにより先刷り印刷され、さらに、先刷り印刷後の用紙に対して印刷装置10Bにより追い刷り印刷が施される。その本印刷において、ずれ量導出部46により導出されたずれ量が解消されるように(ずれが無くなるように)、印刷装置10Bの印刷エンジン14Bによる追い刷り印刷の位置が調整される。なお、本印刷において、ずれ量導出部46により導出されたずれ量に応じて、印刷装置10Aの印刷エンジン14Aによる先刷り印刷の位置が調整されてもよいし、2つの印刷エンジン14A,14Bの両方が調整されてもよい。
また、先刷り印刷のテスト印刷において、第1チャートと共に本印刷の対象となるユーザ画像の先刷り印刷を実行し、さらに、追い刷り印刷のテスト印刷において、第2チャートと共にユーザ画像の追い刷り印刷を実行してもよい。これにより、例えば、本印刷に酷似した印刷状況で印刷位置のずれ量を得ることができる。
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、上述した実施形態は、あらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。