したがって本発明の課題は、特に真空ポンプの構造スペースを制限すると同時に、真空チャンバにおいて、特に高い排気速度を提供することである。
この課題は、請求項1に記載の真空システムによって解決され、特に、第1のインレットと第2のインレットとが同一の真空チャンバに接続されていることによって解決される。
これにより、排気速度が大幅に増加し、ひいてはチャンバ内に特に低い圧力が生じる。しかも、この排気速度の増加は、実質的にロータ径の増大及びロータ速度の増加の必要なしに達成することができる。例示的な計算では、一定のロータ径及び一定のロータ速度で、最大50%どころか最大80%までの排気速度の増加が推測される。
例えば、誘導要素、付加的なポンプ段及び/又は付加的なインレットを設けるために、公知の構造と比較してロータ長さを増大させることが、場合によってはこのような背景において有利である、又は特定の構造において必要である。しかし、軸方向の長さの構造スペースは、いくつかの用途では、ポンプ直径又はロータ径よりは問題とはならない。さらに、ロータ長さの変化、特に増大によるロータの動的挙動に対する影響は、直径の変化による影響よりも小さく、これは、主に真空ポンプ、特にターボ分子ポンプの高い回転数に起因する。しかも、本発明による排気速度の増加においては、特にロータ径及びロータ速度を十分に維持することができるので、ロータの動特性も同じくわずかな範囲でしか変化せず、その結果、最良の場合、公知の構造の支持構想及び構成部材を用いることもできる、又は概して比較的わずかな又は良好に実現可能な要求が支持部に課せられている。したがって、コストも範囲内に抑えることができる。
したがって、本発明は、概して簡単な手段で特に良好な真空チャンバの排気速度を提供し、しかも特に排気速度の増加のための通常のアプローチと同時に生じるような欠点を伴わない、又は実質的に伴わない。
前述の利点は、特に、第1のポンプ段からの体積流と第2のインレットからの体積流とが、第2のポンプ段の領域、特に上流側のロータ要素の領域で実質的に初めて一緒になることによって得られる。特に、第1のポンプ段から到来するガスは、第2のインレットを迂回して、直接に第2のポンプ段へガイドされる。
本発明によれば、第1のインレットと第2のインレットとの両方が同一の1つのチャンバに接続されている、つまり第1のインレットと第2のインレットとの間で、チャンバ側に、各々のインレットに接続された領域が別個のチャンバとみなされることになる構造を設けてはならない。特に、インレットは、チャンバ側で、小さな開口又は絞りを有するとしても壁のようなコンダクタンスの低い構造によって仕切られるべきではない。
本発明の好適な用途は、質量分析システムである。その質量分析システムは、通常、複数の真空チャンバを有し、この場合、第1の真空チャンバは、絞りを介して、隣り合う第2のチャンバに通じる小さな流体連通部を有する。ただし、チャンバ内の絶対圧力は、特に原則として小さな絞りに基づいてそれぞれ異なっている。絞りは、1つ又は複数の真空ポンプ及び/又はポンプ段によって形成される圧力差を維持することを可能にする。
したがって、特に、流体連通部が存在するが、しかしこれが低いコンダクタンスを有する、又はコンダクタンスに比較して排気速度が低いときにも、別々のチャンバが存在する。これに対して、単一のチャンバは、本発明の範疇で、特に、第1のインレットと第2のインレットとの間の実質的に均一な圧力及び/又はチャンバ側の高いコンダクタンスにおいて優れている。
好適には、チャンバ内において第1のインレットと第2のインレットとの間でコンダクタンスLが規定されていて、この場合、両方のインレットにおける排気速度が一緒になって全体排気速度Sをなし、この場合、比S/Lは<300、特に<100、特に<50、特に<10である。これらの値は、特に室温でのガス状の窒素を基準とする。
本発明の一実施形態によれば、第1のポンプ段の下流側の端部から第2インレットに向かうガスの流れを阻止するための誘導要素又はガイド要素を設けることができ、この場合、誘導要素又はガイド要素は、以下、簡略化して誘導要素としか述べられないが、しかしガイド要素を意図してもよい。そのような誘導要素は、例えば壁又はプレートとして、第1のポンプ段の下流側の端部と第2のインレットとの間に形成することができる。好適には、誘導要素は、ロータ軸線に対して垂直に延在する。しかし、誘導要素は、必ずしも完璧なシール作用を発揮するわけではない。というより、誘導要素は、第1のポンプ段の下流側の端部から第2のインレットに向かうガスの流れを少なくとも実質的に妨害又は阻止しなければならない。誘導要素は、例えば、偏向要素として構成することができるが、原則的に、必ずしもガスに他の方向性を与えなくてよい。むしろ、第2のインレットに向かうガスの流れが回避される、又は少なくとも妨害されることが重要である。特定の実施形態では、チャネルの壁が誘導要素を形成しても、又はこれに接続してもよい。
誘導要素は、例えば、静的要素として構成することができる、かつ/又は真空ポンプのハウジングに取り付けることができる。そのような場合、例えば、特に運転中のロータの変位を考慮するために、偏向手段とロータとの間に間隙を設けることができる。そのような隙間があると、自然と小さな漏れ流が生じ得る。それにもかかわらず、偏向手段は、実質的にその機能を維持する。とういうのも、隙間を、排気速度と比較して特に小さく維持することができるからである。
第1のポンプ段の下流側の端部は、第2のポンプ段の上流側の端部に、例えばチャネルによって接続することができる。すなわち、チャネルは、ガスの流路を、とりわけインレットに向けてではなく、第2のポンプ段の上流側の端部に向けて規定する。チャネルは、例えば誘導要素の一部であってよい、又はこれに特に一体に接続されてよい。特に、チャネルのアウトレット端部は、特に軸方向にかつ/又は直接に、第2のポンプ段の上流側の端部に、特に第2のポンプ段のターボロータディスクに向けられている。概して、第1のポンプ段の下流側の端部は、第2のインレットを迂回して、好適には直接に第2のポンプ段の上流側の端部に接続されている。
一実施形態によれば、チャネルがロータに対して偏心して配置されていることが想定されている。これにより、ガスが、チャネルから有利に吸い出される。特に、第2のポンプ段が少なくとも1つのターボロータディスクを有するとき、このアプローチが有利である。というのも、各々のロータブレードが、偏心して又は半径方向外側で、内側よりも高い速度を有し、ひいてはガスが特に外側で又は偏心して特に良好に吸い出されるからである。チャネルは、ロータがチャネルの外側に配置されるように配置することができる。しかも、チャネルの偏心的な配置は、ロータがチャネルを通って延在するが、ロータの回転軸線とチャネルの縦軸線または中心軸線とが一致しないことを排除しない。
チャネルは、代替的に又は付加的に、ロータに対して同心に配置してもよい、かつ/又はロータを包囲してもよい。これにより、とりわけ格別に簡単な構造が得られる。
原則的に、複数のチャネルを、例えば同心の1つのチャネルと1つの偏心のチャネルとを設けてもよい。
別の実施例では、チャネルは、ロータに関して、第2のインレットとは反対側に配置されている。これにより、チャネル、特にチャネルアウトレットと第2のインレットとの間に大きな間隔が達成され、これにより、簡単に、ガス分子がチャネルから第2のインレットを通って逃げる確率が低下される、つまりポンピング作用が向上される。
別の実施形態では、ポンプは、ハウジングを有し、ハウジングは、ポンプ室を画定し、ポンプ室内に、ポンプ段のロータ要素が配置されていて、チャネルが、ポンプ室内に配置されている。これにより、特に省スペースの、特に半径方向に小さい構造を達成することができる。ポンプ室は、好適には円筒形である。特に、チャネルは、ポンプ段の包絡線内に配置することができる。
代替的に又は付加的に、チャネルは、例えば少なくとも部分的にポンプ室の外側に配置することもできる。ゆえに、チャネルは、例えば、少なくとも部分的にハウジング体内に、別個の剛体のブロック内に、かつ/又はチューブ又はパイプ内に形成することができる。原則的に、複数のチャネル及び/又はガイド要素を設けることもでき、これらのチャネル及び/又はガイド要素は、例えばそれぞれ異なって構成することもできる。このことは、製造プロセスまたはインレットの配置に基づいて有利であり得る。
一実施形態では、第2のポンプ段は、その上流側の端部に、ターボロータディスクを有し、ターボロータディスクは、上流側に配置された第1の軸方向部分と、第1の軸方向部分の下流側に配置された第2の軸方向部分とを有し、ロータディスクは、第1の軸方向部分において、第2の軸方向部分においてよりも小さな、ポンプ作用を奏する横断面積を有し、第1のポンプ段の下流側の端部は、特にチャネルによって、第1の軸方向部分を少なくとも部分的に迂回して、第2の軸方向部分に接続されている。これにより、粒子が第1のポンプ段の下流側の端部からかつ/又はチャネルアウトレットから第2のインレットに達することが特に効果的に阻止される。この場合、第1のポンプ段から、特にチャネルから到来し、半径方向に流出する又は第2のポンプ段内で還流する粒子が、その大部分で、再びポンピング方向の移動衝撃を受けることができ、ゆえに比較的高い確率で吸い出すことができる。つまり、ポンピング作用がさらに向上される。
例えば、第2のポンプ段は、少なくとも2つのターボロータディスクを有し、上流側に配置された第1のロータディスクは、第1のロータディスクの下流側に配置された第2のロータディスクよりも小さい、ポンプ作用を奏する直径を有し、第1のポンプ段の下流側の端部は、第1のロータディスクを少なくとも部分的に迂回して、第2ロータディスクに接続されていることも想定され得る。これにより、粒子が、第1のポンプ段の下流側の端部からかつ/又は第1のチャネルアウトレットから第2のインレットに達することが同様に特に効果的に阻止され、これにより、ポンピング作用がさらに向上される。
第2のポンプ段は、例えば、第1のポンプ段よりも大きなロータ径を有することができる、又はその逆も然りであり、第1のポンプ段は、第2のポンプ段よりも小さなロータ径を有することができる。これにより、第2のポンプ段の排気速度を、有利には、一方では第2のインレットに、他方では第1のポンプ段から到来するガスに合わせて調整することができるので、総じて有利には高い排気速度を達成することができる。例えば、さらに別のポンプ段が設けられているとき、例えば、第1のポンプ段は、他の全てのポンプ段よりも小さいロータ径を有することができる、かつ/又は第2のポンプ段は、他の全てのポンプ段よりも大きいロータ径を有することができる。
第1のインレット及び第2のインレットがロータ軸線に対して軸方向に配置されているとき、より大きなロータ径を有する第2のポンプ段が特に有利であることが分かった。これにより、さらなる排気速度の増加を達成することができる。しかも、半径方向のインレットが2つのときでも、より大きな第2のポンプ段によって、第2のインレットにおいて排気速度をさらに向上させることができる。
全てのインレット、特に第1のインレット及び/又は第2のインレットは、原則的に、例えば半径方向のインレット及び/又は軸方向のインレットとして構成することができる。例えば、第1のインレット及び第2のインレットが、半径方向のインレットとして構成されていると有利であり得る。代替的に、両方のうちの少なくとも1つを軸方向のインレットとして構成することもできる。特に軸方向の配置では、より良好なコンダクタンス又は向上された排気速度を達成することができる。
第1のインレットを特に完全に囲繞する第2のインレットの配置が特に有利である。ただし、2つの半径方向のインレットでも、すでに有利な排気速度の増加を達成することができる。一般的に、第2のインレットは、例えば、軸方向のインレットであってよく、半径方向にみて第1のポンプ段を越えた側に、つまり第1のポンプ段の半径方向外側に配置することができる。これにより、特に良好なコンダクタンスが得られる。
原則的に、1つのインレットが、複数のインレット開口を有することもできる。特に軸方向の配置では、これによりより良好なコンダクタンス及びより良好な排気速度を実現することができる。
別の有利な実施形態では、第1のポンプ段及び/又は第2のポンプ段に、第1のロータ要素と、第1のロータ要素の下流側に配置された、隣り合う第2のロータ要素とが設けられていて、第2のロータ要素は、第1のロータ要素よりも小さい排気速度を有する、かつ/又は第2のロータ要素は、第1のロータ要素よりも大きい圧縮度を有する。これにより、全体排気速度をさらに向上させることができる。
原則的に、第2のポンプ段は、第1のポンプ段とは異なる構成とすることができる。
一発展形態によれば、第2のポンプ段は、上流側で、実質的に同一の排気速度を有する少なくとも2つの、特に第1のロータ要素を有する。この場合、特に第1のロータ要素の下流側に配置された、隣り合う第2のロータ要素が設けられていて、この場合、第2のロータ要素は、第1のロータ要素よりも低い排気速度を有し、かつ/又は第2のロータ要素は、第1のロータ要素よりも大きな圧縮度を有する。
原則的に、第1のポンプ段及び/又は第2のポンプ段や別のポンプ段は、好適には、分子ポンプ段、特にターボ分子ポンプ段、ホルベックポンプ段又はジークバーンポンプ段として構成することができる。特に、全ての又は個々のロータ要素は、ターボロータ要素又はターボロータディスクとして構成することができる。ポンプは、原則的に、別のポンプ段を有することができ、特に共通のアウトレットに接続されたポンプ段及び/又は共通のロータ上に配置されたロータ要素を有するポンプ段を有することができる。ポンプは、別のポンプ段に割り当てられていて、そして好適には、第1のインレット及び第2のインレットとは別のチャンバに接続された別のインレットを有することもできる。
本発明の課題は、さらに、請求項15に記載の、少なくとも1つの真空チャンバを排気するための真空ポンプ、特にターボ分子ポンプの使用によって解決される。この場合、真空ポンプは、少なくとも第1のインレットと第2のインレットと、共通のアウトレットと、少なくとも第1のポンプ段と第2のポンプ段とを有し、第1のポンプ段と第2のポンプ段とは、それぞれ少なくとも1つのロータ要素を有し、ロータ要素は、共通のロータ上に配置されていて、第1のインレットは、第1のポンプ段の上流側の端部に接続されていて、第2のインレットは、第2のポンプ段の上流側の端部に接続されていて、第1のポンプ段の下流側の端部が、第2のインレットを迂回して、第2のポンプ段の上流側の端部に接続されている。この場合、第1のインレットと第2のインレットとは、同一の真空チャンバに接続されている。
本発明の課題は、独立した第2の観点によれば、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプにおいて、真空ポンプは、少なくとも第1のインレットと第2のインレットと、共通のアウトレットと、少なくとも第1のポンプ段と第2のポンプ段とを有し、第1のポンプ段と第2のポンプ段とは、それぞれ少なくとも1つのロータ要素を有し、ロータ要素は、共通のロータ上に配置されていて、第1のインレットは、第1のポンプ段の上流側の端部に接続されていて、第2のインレットは、第2のポンプ段の上流側の端部に接続されていて、第1のポンプ段の下流側の端部から第2のインレットに向かうガスの流れを阻止するための偏向手段と、第1のポンプ段の下流側の端部を、少なくとも第1のロータ要素の流れ方向に見て第2のポンプ段の下流側に位置する箇所に接続するチャネルとをさらに有し、チャネルは、少なくとも部分的にロータシャフト内に形成されている、真空ポンプによっても解決される。
特に有利には、真空システムは、このような真空ポンプと少なくとも1つの真空チャンバとを有し、この場合、第1のインレットと第2のインレットとは、同一の真空チャンバに接続されている。対応するそのような真空ポンプの使用も有利である。
一発展形態によれば、第2のポンプ段の第1のロータ要素、特に第1のロータディスク、特にディスクセットにおいてガスの流れを流入可能にするのではなく、特に第2のポンプ段に後置された第3のインレットに向かう、特に高真空ポートに向かう、より高い圧縮度を有する箇所においてシャフト内の適切な開放横断面を通ってガスの流れを流入可能にすることが特に有利である。
ガスは、特に、少なくとも第1のロータ要素、特に第1のロータディスクの後方まで、好適には第1のロータディスク及び第1のステータディスクの後方までガイドすることができる。
特に、ロータシャフトに形成されたチャネル内で良好なコンダクタンスを実現することができるときには、ガスは、有利には、第2の、第3の又は最後のロータディスク及び/又はステータディスクの後方に流入させることができる。
ロータシャフト内におけるチャネルは、特に溝として構成することができる。特に、複数のチャネル又は溝を設けることができる。1つ又は複数の溝は、特に軸方向に、第2のポンプ段の少なくとも第1のロータディスク、好適には全てのロータディスクの傍を通って延在する。
チャネルは、例えばシャフトの孔、特に中空孔によって形成することもできる。しかし、特にシャフトの表面に設けられた凹部としてのチャネルが製造技術的に有利である、かつ/又はより少ない手間で実現可能であり、特にこの場合、凹部が軸方向にシャフトに沿って延在する。
当然ながら、ここに記載された、様々な観点の発展形態及び個々の特徴は、有利には、技術的に有意である場合には、発展させてそれぞれ別の観点のものを作り出すために用いることができる。
以下、本発明を、例えば添付の図面を参照して、有利な実施形態に基づいて説明する。
図1に示されたターボ分子ポンプ111は、インレットフランジ113により包囲されたポンプインレット115を有する。ポンプインレット115には、それ自体公知の手段で、図示されていない真空容器を接続することができる。真空容器から到来するガスは、ポンプインレット115を介して真空容器から吸引され、そしてポンプを通ってポンプアウトレット117へと圧送することができる。ポンプアウトレット117には、例えばロータリベーンポンプなどの予真空ポンプを接続することができる。
インレットフランジ113は、図1の真空ポンプの方向では、真空ポンプ111のハウジング119の上端を形成する。ハウジング119は、下部121を有する。下部121には、側方にエレクトロニクスハウジング123が配置されている。エレクトロニクスハウジング123内には、真空ポンプ111の電気的なかつ/又は電子的なコンポーネントが収容されている。これらのコンポーネントは、例えば、真空ポンプ内に配置された電動モータ125を作動させるためのものである。エレクトロニクスハウジング123には、アクセサリに対する複数の接続部127が設けられている。さらに、データインタフェース129(例えばRS485規格に準拠するもの)及び電流供給接続部131が、エレクトロニクスハウジング123に配置されている。
ターボ分子ポンプ111のハウジング119には、通気インレット133が、特に通気バルブの形態で設けられている。通気インレット133を介して、真空ポンプ111に通気を行うことができる。下部121の領域には、その上さらに、パージガス接続部とも称されるシールガス接続部135が配置されている。シールガス接続部135を介して、パージガスを、ポンプによって圧送されるガスに対して電動モータ125(例えば図3参照)を防護するために、モータ室137内に送り込むことができる。モータ室137内で、真空ポンプ111に、電動モータ125が収容されている。ポンプ下部121には、その上さらに2つの冷却媒体接続部139が配置されている。この場合、一方の冷却媒体接続部は、冷却媒体用のインレットとして、他方の冷却媒体接続部は、アウトレットとして設けられている。冷却媒体は、冷却目的で真空ポンプ内に導入可能である。
真空ポンプの下面141は、ベースとして使用することができるので、真空ポンプ111は、下面141にて縦置きで運転することができる。しかも、真空ポンプ111は、インレットフランジ113を介して真空容器に固定することもでき、ひいてはいわば懸架した状態で運転することができる。さらに、真空ポンプ111は、図1に示された向きとは別の形で配向されているときにも運転することができるように構成され得る。下面141を下向きではなく、横向きに、又は上向きに配置することができる真空ポンプの実施形態も実現可能である。
図2に示された下面141には、さらに種々のねじ143が配置されている。これらのねじ143によって、ここでは詳細には特定されない真空ポンプの構成部材が互いに固定されている。例えば、軸受カバー145が下面141に固定されている。
下面141には、さらに固定孔147が配置されている。固定孔147を介して、ポンプ111を、例えば設置面に固定することができる。
図2~図5には、冷却媒体配管148が示されている。冷却媒体配管148において、冷却媒体接続部139を介して導入される又は導出される冷却媒体が循環可能である。
図3~図5の断面図に示されているように、真空ポンプは、複数のプロセスガスポンプ段を有する。これらのプロセスガスポンプ段は、ポンプインレット115に作用するプロセスガスをポンプアウトレット117へと圧送するためのものである。
ポンプハウジング119内には、ロータ149が配置されている。ロータ149は、回転軸線151を中心として回転可能なロータシャフト153を有する。
ターボ分子ポンプ111は、ポンピング作用を及ぼすように互いに直列に接続された複数のターボ分子ポンプ段を有する。これらのターボ分子ポンプ段は、ロータシャフト153に固定された半径方向の複数のロータディスク155と、ロータディスク155の間に配置され、そしてハウジング119内に固定されたステータディスク157とを有する。この場合、1つのロータディスク155とこれに隣り合う1つのステータディスク157とが、それぞれ1つのターボ分子ポンプ段を形成する。ステータディスク157は、スペーサリング159によって、互いに所望の軸方向間隔を置いて保持されている。
真空ポンプは、さらに、半径方向で互いに内外に配置され、そしてポンピング作用を及ぼすように互いに直列に接続されたホルベックポンプ段を有する。ホルベックポンプ段のロータは、ロータシャフト153に配置されたロータハブ161と、ロータハブ161に固定され、そしてこのロータハブ161によって支持された円筒側面状の2つのホルベックロータスリーブ163,165とを有する。これらのホルベックロータスリーブ163,165は、回転軸線151に対して同軸に配向されていて、そして半径方向で互いに内外に組み付けられている。さらに、円筒側面状の2つのホルベックステータスリーブ167,169が設けられている。これらのホルベックステータスリーブ167,169は、同様に回転軸線151に対して同軸に配向されていて、そして半径方向で見て互いに内外に組み付けられている。
ホルベックポンプ段の、ポンピング作用を奏する表面は、側面によって、つまりホルベックロータスリーブ163,165及びホルベックステータスリーブ167,169の半径方向内側面及び/又は外側面によって形成されている。外側のホルベックステータスリーブ167の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙171を形成しつつ、外側のホルベックロータスリーブ163の半径方向外側面と対向していて、外側のホルベックロータスリーブ163の半径方向外側面とともに、ターボ分子ポンプに後続する第1のホルベックポンプ段を形成する。外側のホルベックロータスリーブ163の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙173を形成しつつ、内側のホルベックステータスリーブ169の半径方向外側面と対向していて、内側のホルベックステータスリーブ169の半径方向外側面とともに、第2のホルベックポンプ段を形成する。内側のホルベックステータスリーブ169の半径方向内側面は、半径方向のホルベック間隙175を形成しつつ、内側のホルベックロータスリーブ165の半径方向外側面と対向していて、内側のホルベックロータスリーブ165の半径方向外側面とともに、第3のホルベックポンプ段を形成する。
ホルベックロータスリーブ163の下端には、半径方向に延在するチャネルを設けることができる。このチャネルを介して、半径方向外側に位置するホルベック間隙171が、中央のホルベック間隙173に接続されている。さらに、内側のホルベックステータスリーブ169の上端には、半径方向に延在するチャネルを設けることができる。このチャネルを介して、中央のホルベック間隙173が、半径方向内側に位置するホルベック間隙175に接続されている。これにより、互いに内外に組み込まれた複数のホルベックポンプ段が、互いに直列で接続される。半径方向内側に位置するホルベックロータスリーブ165の下端には、さらに、アウトレット117に通じる接続チャネル179を設けることができる。
ホルベックステータスリーブ163,165の、前述されポンプピング作用を奏する表面は、それぞれ、螺旋状に回転軸線151の周りを周回しつつ軸方向に延在する複数のホルベック溝を有する。他方、ホルベックロータスリーブ163,165の、これに対向する側面は、滑らかに形成されていて、真空ポンプ111を運転するためのガスをホルベック溝内にて前方へ送り出す。
ロータシャフト153を回転可能に軸支するために、ポンプアウトレット117の領域に転がり軸受181が設けられていて、ポンプインレット115の領域に永久磁石式の磁気軸受183が設けられている。
転がり軸受181の領域には、ロータシャフト153に円錐形のスプラッシュナット185が設けられている。これは、転がり軸受181へ向けて増大していく外径を有する。スプラッシュナット185は、作動媒体貯蔵部の少なくとも1つの掻落とし部材と滑り接触している。作動媒体貯蔵部は、上下にスタックされた吸収性の複数のディスク187を有する。これらディスク187は、転がり軸受181のための作動媒体、例えば潤滑剤に浸漬されている。
真空ポンプ111の運転時、作動媒体は、毛細管現象によって、作動媒体貯蔵部から掻落とし部材を介して、回転するスプラッシュナット185へと伝達され、そして、遠心力に基づいてスプラッシュナット185に沿って、スプラッシュナット185の、増大していく外径の方へと、転がり軸受181に向かって送られる。そこでは例えば潤滑機能が発揮される。転がり軸受181及び作動媒体貯蔵部は、真空ポンプ内において槽状のインサート189と軸受カバー145とによって囲繞されている。
永久磁石式の磁気軸受183は、ロータ側の軸受半部191とステータ側の軸受半部193とを有する。これらは、それぞれ1つのリングスタックを有する。リングスタックは、軸方向に上下にスタックされた永久磁石の複数のリング195,197からなる。リング磁石195,197は、互いに半径方向の軸受間隙199を形成しつつ対向していて、この場合、ロータ側のリング磁石195は、半径方向外側に、そしてステータ側のリング磁石197は、半径方向内側に配置されている。軸受間隙199内に存在する磁界は、リング磁石195,197の間に磁気的反発力を引き起こす。その反発力は、ロータシャフト153の半径方向の支持を実現する。ロータ側のリング磁石195は、ロータシャフト153の支持部分201によって支持されている。この支持部分201は、リング磁石195を半径方向外側で取り囲む。ステータ側のリング磁石197は、ステータ側の支持部分203によって支持されている。支持部分203は、リング磁石197を通って延在し、そしてハウジング119の半径方向の支材205に懸架されている。回転軸線151に対して平行に、ロータ側のリング磁石195が、支持部分203に連結されたカバー要素207によって固定されている。ステータ側のリング磁石197は、回転軸線151に対して平行に1つの方向で、支持部分203に結合された固定リング209と支持部分203に結合された固定リング211とによって固定されている。さらに、固定リング211とリング磁石197との間には、皿ばね213を設けることができる。
磁気軸受内に、非常軸受又は安全軸受215が設けられている。非常軸受又は安全軸受215は、真空ポンプの通常の運転時には、非接触で空転し、そしてロータ149がステータに対して相対的に半径方向に過剰に変位するとようやく作用し、これにより、ロータ側の構造とステータ側の構造との衝突が阻止されるので、ロータ149に対する半径方向のストッパが形成される。安全軸受215は、非潤滑式の転がり軸受として構成されていて、そしてロータ149及び/又はステータとともに半径方向の間隙を形成する。この間隙によって、安全軸受215は、通常のポンプ運転時には作用しないようになっている。安全軸受215が作用することになる半径方向の変位は、十分に大きく寸法付けられているので、安全軸受215は、真空ポンプの通常の運転中は作用せず、そして同時に十分に小さく寸法付けられているので、ロータ側の構造とステータ側の構造との衝突があらゆる状況で阻止される。
真空ポンプ111は、ロータ149を回転駆動する電動モータ125を有する。電動モータ125の電機子は、ロータ149によって形成されている。ロータ149のロータシャフト153は、モータステータ217を通って延在する。ロータシャフト153の、モータステータ217を通って延在する部分には、半径方向外側に又は埋入して、永久磁石アセンブリを配置することができる。モータステータ217と、ロータ149の、モータステータ217を通って延在する部分との間には、中間室219が配置されている。この中空室219は、半径方向のモータ間隙を有する。このモータ間隙を介して、モータステータ217と永久磁石アセンブリとは、駆動トルクを伝達するため、磁気的に影響し合うことができる。
モータステータ217は、ハウジング内で、電動モータ125に対して設けられたモータ室137内に固定されている。シールガス接続部135を介して、パージガスとも称され、例えば空気又は窒素であってよいシールガスが、モータ室137内へと到達可能である。シールガスを介して、電動モータ125を、プロセスガスに対して、例えばプロセスガスの、腐食作用を奏する部分に対して防護することができる。モータ室137は、ポンプアウトレット117を介して排気することもできる。つまりモータ室137内に、少なくとも近似的に、ポンプアウトレット117に接続された予真空ポンプによって実現される真空圧が作用する。
ロータハブ161と、モータ室137を画成する壁部221との間には、さらに、それ自体公知のいわゆるラビリンスシール223を設けることができる。これにより、特に、半径方向外側に位置するホルベックポンプ段に対するモータ室217のより良好なシールが達成される。
図1~図5には、いわゆる単流ポンプ、つまり単一のインレットを有するポンプが記載されている。要するに、前述された真空ポンプは、それ自体が本発明に従って構成されたものではないが、有利には、本発明の意図において発展させることができる。その逆に、ここに記載された、本発明の全ての実施形態は、技術的に有意である場合には、図1~図5の真空ポンプの個々の又は複数の特徴によって発展させることができる。
図6には、本発明による例示的な真空システム10が示されている。この真空システム10は、複数の真空チャンバを有し、真空チャンバは、真空ポンプ12によって排気される。具体的には、第1の真空チャンバ14、第2の真空チャンバ16及び第3の真空チャンバ18が設けられていて、これらの真空チャンバは、それぞれ、真空ポンプ12の少なくとも1つのインレットに接続されている。真空ポンプ12の第1のインレット20及び第2のインレット22が、第1のチャンバ14に接続されている。第3のインレット24及び第4のインレット26は、第2の真空チャンバ16又は第3の真空チャンバ18に接続されている。
つまり、真空ポンプ12は、この実施例では、4つのインレットを有する。インレット20,22,24,26を介してチャンバ14,16,18から吸い出されたガスは、真空ポンプ12を通って、図示されていない共通のアウトレットに圧送される。
真空ポンプ12は、複数のポンプ段、つまり第1のポンプ段28と第2のポンプ段30と第3のポンプ段32と第4のポンプ段34とを有する。この例では、第1、第2及び第3のポンプ段28,30,32が、ターボ分子ポンプ段として構成されている。この場合、ターボロータディスク36が、垂直の線で示唆されている。特に、各々のターボロータディスク36に、図示されていないターボステータディスクが続く。この例では、ポンプ段28,30,32が、それぞれ3つのターボロータディスクとターボステータディスクとのセットを有する。一般的に、ターボロータディスク及びターボステータディスクは、例えば図1~図5の真空ポンプによるターボロータディスク及びターボステータディスクに相応して構成することができる。ターボロータディスク36は、その全てが共通のロータ38上に配置されていて、運転時には同期回転する。
第4のポンプ段34は、ホルベックポンプ段として構成されている。また、第4のポンプ段34は、共通のロータ38上に配置されたロータ要素、つまり、例えば図3~図5に示されたようなホルベックロータスリーブを有する。
インレット20,22,24,26は、それぞれ、対応付けられたポンプ段の上流側の端部に接続されていて、この場合、全てのポンプ段28,30,32,34は、インレットから共通の図示されていないアウトレットへ圧送を行う。第1のインレット20は、第1のポンプ段28の上流側の端部に接続されている一方、第2のインレット22は、第2のポンプ段30の上流側の端部に接続されている。両方のインレット20,22は、同一の1つの真空チャンバ、つまり真空チャンバ14に接続されている。インレット22とインレット24との間又はインレット24とインレット26との間とは異なり、インレット20とインレット22の間には壁などが設けられていない。
真空チャンバ14,16,18は、それぞれ隣に対して壁40によって仕切られているが、この場合、壁40には、小さな絞り42が設けられている。小さな絞り42を通って、それぞれ、著しく制限された量のガスが、より高い圧力のチャンバから隣り合うより低い圧力のチャンバに流れることができる。この場合、第3の真空チャンバ18内の圧力が最高であり、第2の真空チャンバ16内の圧力がいくぶんかより低く、そして第1の真空チャンバ14内の圧力が最低である。その結果、絞り42を通って、ガスは、第3の真空チャンバ18から第2の真空チャンバ16内に、そして第2の真空チャンバ16から第1の真空チャンバ14内に流れる。第1のチャンバ14内では、ほぼ均一の圧力が作用する。
第1のポンプ段28と第2のポンプ段30とは、軸方向に隣り合っていて、そしてポンピング方向に見て相前後して配置されている。第1のポンプ段28の下流側の端部と第2のインレット22との間には、誘導要素44が設けられている。この誘導要素44は、ここでは実質的に半径方向に配向されたプレートとして構成されていて、プレートは、ポンプのハウジング46に接続されている。誘導要素44は、実質的に、第2のインレット22に対する第1のポンプ段28の下流側の端部のシールを形成し、またその逆も然りである。
誘導要素44は、開口48を有し、開口48を通って、共通のロータ38が延在する。ロータ38と誘導要素44との間の半径方向の間隙を空けておかなければならない。というのも、ロータ38が高速で回転し、そしてある程度のロータの変位が不可避であるからである。それにもかかわらず、半径方向の間隙は、シールが十分に保証されるように小さく構成されている。この半径方向の間隙には、例えばポンプ作用を奏する構造を設けることができ、これにより、第1のポンプ段28の下流側の端部から開口48を通って第2のインレット22に向かう漏れがさらに良好に回避される又は低減される。
さらに、チャネル50が設けられている。チャネル50は、誘導要素44に接続し、そして第1のポンプ段28の下流側の端部を第2のポンプ段30の上流側の端部に接続するが、この場合、インレット22が実質的に迂回される。そのために、チャネル50は、第2のポンプ段30の第1のターボロータディスク36に直接に通じる。したがって、インレット22から、そしてチャネル50から又は第1のポンプ段28から到来する体積流は、実質的に第2のポンプ段30において初めて一緒になる。
別の真空システム10が、図7に示されている。この真空システム10は、単一の、第1のチャンバ14を有し、第1のチャンバ14は、真空ポンプ12の第1のインレット20と第2のインレット22とに接続されている。真空ポンプ12は、第1のポンプ段28を有し、第1のポンプ段28の上流側の端部は、第1のインレット20に接続されていて、さらに第2のポンプ段30を有し、第2のポンプ段30の上流側の端部は、第2のインレット22に接続されている。第2のポンプ段30の下流側に、例えば図6の実施形態で当てはまるように、別のポンプ段を設けることができる。
図7の実施形態と同様に、誘導要素44及びチャネル50が設けられていて、これにより、ガスが第1のインレット20及び第1のポンプ段28から第2のインレット22を迂回して第2のポンプ段30に導かれる。チャネル50は、誘導要素44に接続されていて、特に誘導要素44に一体に成形されている。誘導要素44及びチャネル50は、ハウジングによって画定されたポンプ室51内に配置されている。
図8には、誘導要素44が、チャネル50とともに、ロータ軸線32に対する横断面を見た図で示されている。誘導要素44は、ハウジング46によって画定された円筒状のポンプ室51に相応して、その外周が略円形に形成されている。
ガイド要素44の円形面の一部は、略円筒状に軸方向に延在するチャネル50によって占められている。この例では、チャネル50は、約120度の円形の誘導要素の角度範囲を占めていて、この場合、この角度範囲は、ロータ軸線32を基準に、第2のインレット22とは反対側に配置されている。原則的に、チャネルは、その横断面が、図示されたように例えば部分円として形成することができる。
図9には、ここでは図示されていない共通の真空チャンバに接続するための第1のインレット20と第2のインレット22とを有する真空ポンプ12が示されている。ここでは、そして以下に、いくつかの実施形態による真空ポンプ12のみが説明され、その際、第2のポンプ段及び第2のポンプ段の上流側の構造がそれぞれ説明される。原則的に、例えば図6において説明されたように、別のポンプ段、別のインレット及び/又は様々な数の真空チャンバが設けられてもよい。
図9の真空ポンプ12は、第1のポンプ段28を有し、第1のポンプ段28は、第1のインレット20に接続されていて、さらに第2のポンプ段30を有し、第2のポンプ段30は、第2のインレット22に接続されている。図6~図8では、それぞれ3つのターボロータディスクとターボステータディスクとの対偶を有するポンプ段のみが示されているのに対して、ここでは、第1のポンプ段28が、2つのターボロータディスクとターボステータディスクとの対偶しか有さず、そのうちのターボロータディスク36のみが示唆されている。第2ポンプ段30は、3つのターボロータディスクとターボステータディスクとの対偶を有するが、この場合、上流側のターボロータディスク52は、段付きロータディスクとして構成されている。要するに、ターボロータディスク52は、軸方向に見て上流側に第1の軸方向部分54と、下流側に第2の軸方向部分56とを有し、この場合、これらの部分は、ポンプ作用を奏するそれぞれ異なる横断面積を有する。具体的には、ここでは、第1の軸方向部分54では、ターボロータディスク52の直径は、第2の軸方向部分56における直径よりも小さい。
図9の真空ポンプ12は、チャネル50を有し、チャネル50によって、第1のポンプ段28の下流側の端部が第2の軸方向部分56に接続されていて、この場合、チャネル50は、第1の軸方向部分54の傍を通って軸方向に延在する。圧送されるガス粒子がチャネル50と第2の軸方向部分56との間で半径方向に逃げるようであるとき、これらの粒子の一部が、ターボロータディスク52の第1の軸方向部分54によって捕捉され、これらの粒子に、ポンプアウトレットに向かう新たな衝撃が与えられる。つまり、図示された配置によって、第1のポンプ段28の下流側の端部とインレット22との間のシールが改善され、排気速度がさらに高められる。
同様の効果は、図10に示された真空ポンプ12の第2のポンプ段30によって達成される。しかしここでは、この効果は、段付きターボロータディスク52を介して得られず、その代わりに、比較的小さな直径を有する別個のターボロータディスク58が、チャネル50が通じるターボロータディスク36の上流側に配置されている。
図10の実施形態の別の特徴は、軸方向に配置された第1のインレット20である。これに対して、第2のインレット22は、図6~図9に示された全てのインレットにも当てはまるように、半径方向に配置されている。軸方向のインレット20は、チャンバと第1のポンプ段28との間に特に良好なコンダクタンスをもたらす。
図11は、第1のポンプ段28が第2のポンプ段30よりも小さいロータ径を有する実施形態を具体的に示している。この場合、示唆されているように、第1のインレット20と第2のインレット22とを軸方向に配置することができる。本実施形態では、第2のインレット22が、第1のインレット20及び/又は第2のポンプ段28を囲繞する。軸方向のインレット20,22は、各々のポンプ段28又はポンプ段30にとって特に良好なコンダクタンスを実現する。
図11の実施形態の別の任意選択的な特徴は、チャネル50がロータ38に対して同心に配置されていることである。具体的には、チャネル50がロータ38を囲繞する、又はロータ38が軸方向にチャネル50を通って延在する。この場合、チャネル50は、実質的に管状の要素によって形成されている。この場合、チャネル50は、第1のポンプ段28の下流側の端部の中央領域から第2ポンプ段30の上流側の端部の中央領域に通じる。
図12には、それぞれ異なる大きさのポンプ段28,30を有する別の一実施形態が示されている。さらに、ここでもインレット20,22が軸方向に配置されている。本実施形態では、第1のポンプ段28の下流側の端部は、直接に、第2のポンプ段30の上流側の端部に接し、しかも第2のインレット22から分けられた、ここではハウジング46によって実現された領域において接する。したがって、図示された実施形態は、付加的なガイド要素44及び付加的なチャネル50を設けずに構成されている。さらに、この実施形態は、小さな軸方向の構造長さを有する。
図13には、それぞれ異なる大きさのポンプ段28,30を有する別の一実施形態が示されていて、この場合、同様に両方のインレット20,22が、軸方向に構成されている。
第2のポンプ段30は、上流側に段付きターボロータディスク52を有する。しかし、この場合、ここでは図9の実施形態とは異なり、流れ方向に見て第1の軸方向部分54が、中央ではなく、周方向に延在するように形成されていて、要するに、この場合、ターボロータディスク52は、実質的に中央の凹部を有する。第1のポンプ段28は、ハウジング46でもって、少なくとも部分的に第1の軸方向部分54の傍を通って延在する、又はターボロータディスク52の中央の凹部内に延在し、対応する半径方向領域において、ターボロータディスク52の上流側の端部に向けて延在する。図9の実施形態と同様に、図示された配置によって、第1のポンプ段28から半径方向にハウジング46と第2の軸方向部分56又はターボロータディスク52との間で流出する粒子が、ターボロータディスク52の第1の軸方向部分54によって捕捉される。これによっても、排気速度がさらに向上される。
図14及び図15の実施形態は、とりわけ、インレット20,22が同心にかつ/又は同一の軸方向高さに配置されていることによって特徴付けられている。図15では、段28,30のロータ径は、実質的に同一の大きさであり、特にこの場合、インレット22が、段付きのハウジング部分によって形成されている。
図16及び図17は、図6の実施形態と同様の実施形態を、ただしより詳細に示している。特に、間隙48における特に大きなシール長さを実現するために、誘導要素44が、シャフトの凹部内に延在可能であることが描画されている。チャネル50は、図示されているように、それぞれ異なる大きさであってもよい。ここでは、チャネル50は、それぞれ静的に構成されている。原則的に、チャネルは、ロータと一緒に回転するように構成されてもよい。
第2の観点が、図18及び図19においてより詳細に説明される。ポンプは、ここでは複数のチャネル60,62を有し、チャネル60とチャネル62とが相俟って、1つのチャネルを形成し、このチャネルは、第1のポンプ段28の下流側の端部を、第2のポンプ段の、流れ方向に見て少なくとも1つの第1のロータ要素の下流側に位置する箇所に接続する。図18では、チャネル60,62は、第2のポンプ段30の下流側の端部に通じる。図19では、チャネル60,62は、軸方向で、ロータディスクとステータディスクとの第1の対偶の下流側の箇所に又はその後方に通じる。
チャネル62は、ここでは、ロータシャフトの周にわたって分配して配置された複数の軸方向溝として構成されている。チャネル60は、環状チャネルとして、ロータシャフトに対して同心に形成されている。誘導要素は、チャネル60の半径方向内側に、複数の貫通開口64を有する。
さらに、図16~図19は、図1~図5に関連してより詳細に説明されていて、そして単独でも組み合わせても有利である特徴を示している。