JP6993424B2 - 易開封性シーラントフィルムおよびその用途 - Google Patents

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Description

本発明は易開封性シーラントフィルムに使用するエチレン系重合体組成物およびその用途等に関するものである。更に詳しくは、食品用、飲料用、医療用などの容器包装材に好ましく用いられる易開封性シーラントフィルム用のエチレン系重合体組成物およびその用途等に関する。
一般的に包装材料に使用されるラミネートフィルムは、インフレーション成形またはキャスト成形で製造されたポリエチレンフィルムを、ドライラミネートまたは押出ラミネートによって紙、板紙、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルム、金属箔、金属蒸着フィルム、セラミック蒸着フィルムなどの基材に接着させて作製されることは広く知られている。これらの基材のうち、アルミニウム箔や紙のようにプラスチックフィルムよりも強度が比較的弱いものが使用される際には、包装材料を簡単に開封できることが強く望まれることが多い。現在、世界的に社会問題となっている食品ロスへの対策にも見られるように、必要な時に必要な分だけ使用できるように、様々な商品がより少量での個包装化される状況であるため、包装材料を特に子供や高齢者といった比較的力が弱い人が開封する機会が増加する中、簡単に開封できることはますます重要な性能となると言える。このような性能としては、たとえば開封用のノッチなどが無くても人の力で包装材料を簡単に破くことができる易カット性、包装材料に人の指で簡単に穴をあけることができる易指突き性、包装されている液体を取り出すために包装材料に簡単にストローなどを突刺すことができる易突刺し性などが挙げられる。
一方で、包装材料に使用されるラミネートフィルムには、易開封性は求められながらも内容物の密封性はしっかりと確保することが求められるため、両性能のバランスを取ることが必須となる。また、易カット性が発現する方向(以下「易カット性の方向」とも記載する。)についてもスーパーマーケットなどの小売店に陳列される商品ごとに切れてほしい向きは様々である事から、単純な易カット性というだけでなく、易カット性の方向を任意の方向に調整できることも強く望まれる。
一般的にポリエチレン材料の易開封性を向上させる方法としては、分子量が小さく、分子の絡み合いが少ない(強度の弱い)材料を使用することが挙げられる。しかし、材料の分子量を小さくすると、溶融粘度も下がってしまうため、インフレーション成形やキャスト成形を行った際の溶融樹脂の安定性が悪化し、安定してフィルム生産を行うことが困難となり、そのため生産性が著しく低下する。また、比較的強度の弱いポリエチレン樹脂として高圧法低密度ポリエチレン(以下「LDPE」とも記載する。)を使用することで易カット性を付与することも一般的に行われるが、易カット性が特定の方向に発現してしまい易い。すなわち、LDPEを単体で使用する場合にはフィルム生産時の樹脂の流れ方向に直角である横方向にのみ切れ易い傾向がみられ、直鎖状低密度ポリエチレン(以下「LLDPE」とも記載する。)とLDPEとをブレンドした際にはフィルム生産時の樹脂の流れ方向に平行な縦方向にのみ切れ易くなる傾向がみられる。しかし、LDPEにLLDPEをブレンドする場合には、LLDPEの添加量が増えるにつれ易指突き性が悪くなってしまうため、易指突き性を維持したまま自由な方向に容易に切ることができ、かつ優れたヒートシール性を兼ね備えたフィルムを作製することは、極めて困難であった。
特許文献1では、ヒートシール性を確保するために直鎖状低密度ポリエチレンを使用しつつ、3層フィルムの中間層に環状ポリオレフィンをブレンドすることでヒートシール性と易引裂き性を両立したインフレーションフィルムが提案されている。ただし、易指突き性は言及されていない。
特許文献2に記載のラミネートフィルムは、長鎖分岐を含む特定のポリエチレンを使用しており、押出ラミネート成形に適しており、シール強度および易カット性に優れており、その成形には押出ラミネート成形が特に適している。ただし、特許文献2には、易指突き性の言及はない。
特許文献3では、特定の溶融特性を有するエチレン系重合体から製造したインフレーションフィルムは易カット性とインフレーション加工性に優れることが提案されており、特許文献4では、その特定の溶融特性を有するエチレン系重合体がLLDPEのインフレーション加工性を改質効果があることが提案されている。ただし、ヒートシール性および易指突き性には言及されていない。
特開2004-284351号公報 特開2014-074103号公報 特開2008-031380号公報 特開2008-031385号公報
このように、ポリエチレン材料をインフレーション成形、あるいはキャスト成形することによって易カット性を発現するフィルムが製造されることは広く知られている。しかしながら、従来の技術では、ポリエチレン材料をフィルム成形する際の加工性、およびフィルムの諸物性の点で改善の余地がある。
たとえばLLDPEとLDPEとを含む組成物では、上述のように易カット性が特定の方向に発現し易く、また易カット性の方向を変えるためにLLDPEの割合を高めると、易指突き性が劣ってしまう。
特許文献1に記載の技術では、高価な環状ポリオレフィンを使用することが必須であるため包装材料のコストが高くなってしまい、かつ易指突き性の確保の点で問題が残る。
また、特許文献2に記載の技術は、押出ラミネートフィルムに特に適した技術であるため、分子量が低い材料を使用することが前提となり、インフレーション成形やキャスト成形に対しても十分な加工性を確保することが難しいという問題が残る。
さらに、特定の溶融特性を持ったエチレン系重合体を単体で使用、または特定の溶融特性を持ったエチレン系重合体をLLDPEと組み合わせて使用する特許文献3、4に記載の技術には、易指突き性を確保しつつ自由な方向に易カット性を発現することが難しいという問題が残る。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、優れた加工性(具体的には、インフレーションフィルムを成形する際のバブル安定性)で、ヒートシール性および易指突き性に優れた易開封性シーラントフィルムを製造することができる易開封性シーラントフィルム用エチレン系重合体組成物を提供すること、ならびに易開封性シーラントフィルムの優れたヒートシール性および易指突き性を実現し、かつフィルムの易カット性の方向を任意の方向に調整することができる方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の特性を持つエチレン系重合体とLDPEとを含む組成物によって、優れたヒートシール性および易指突き性を発現する易開封性シーラントフィルムを優れた加工性で製造できること、ならびにこれらのエチレン系重合体とLDPEとの割合を変えることで、フィルムの易カット性の方向を任意の方向に調整できることを見い出し、本発明を完成させた。
本発明の要旨は以下のとおりである。
〔1〕
エチレン系重合体(A1)と高圧法低密度ポリエチレンとを、エチレン系重合体(A1):高圧法低密度ポリエチレン=1重量%:99重量%~99重量%:1重量%の割合(ただし、エチレン系重合体(A1)および高圧法低密度ポリエチレンの合計量を100重量%とする。)で含み、前記エチレン系重合体(A1)は下記要件(I)~(V)を満たすエチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの共重合体である、易開封性シーラントフィルム用エチレン系重合体組成物(A2)。
(I)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1~10g/10分の範囲にある。
(II)密度(d)が875~970kg/m3の範囲にある。
(III)13C-NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル分岐数〔A(/1000C)〕とエチル分岐数〔B(/1000C)〕との和〔(A+B)(/1000C)〕が1.80以下である。
(IV)GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×104.30~1.0×104.50の範囲にある。
(V)135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とが下記関係式(Eq-1)を満たす。
0.80×10-4×Mw0.776≦[η]≦1.65×10-4×Mw0.776
…(Eq-1)
〔1a〕
前記エチレン系重合体(A1)と前記高圧法低密度ポリエチレンとを、エチレン系重合体(A1):高圧法低密度ポリエチレン=60重量%:40重量%~99重量%:1重量%の割合(ただし、エチレン系重合体(A1)および高圧法低密度ポリエチレンの合計量を100重量%とする。)で含む、前記〔1〕のエチレン系重合体組成物(A2)。
〔1b〕
前記エチレン系重合体(A1)と前記高圧法低密度ポリエチレンとを、エチレン系重合体(A1):高圧法低密度ポリエチレン=41重量%:59重量%~59重量%:41重量%の割合(ただし、エチレン系重合体(A1)および高圧法低密度ポリエチレンの合計量を100重量%とする。)で含む、前記〔1〕のエチレン系重合体組成物(A2)。
〔1c〕
前記エチレン系重合体(A1)と前記高圧法低密度ポリエチレンとを、エチレン系重合体(A1):高圧法低密度ポリエチレン=1重量%:99重量%~40重量%:60重量%の割合(ただし、エチレン系重合体(A1)および高圧法低密度ポリエチレンの合計量を100重量%とする。)で含む、前記〔1〕のエチレン系重合体組成物(A2)。
〔2〕
前記〔1〕、〔1a〕、〔1b〕または〔1c〕のエチレン系重合体組成物(A2)を含む易開封性シーラントフィルム。
〔3〕
厚さが15~300μmである前記〔2〕の易開封性シーラントフィルム。
〔4〕
前記〔1〕、〔1a〕、〔1b〕または〔1c〕のエチレン系重合体組成物(A2)をフィルム状に成形する工程を有する、前記〔2〕の易開封性シーラントフィルムの製造方法。
〔5〕
前記〔2〕または〔3〕の易開封性シーラントフィルムと他のフィルムとを有するラミネートフィルム。
〔6〕
前記〔2〕もしくは〔3〕の易開封性シーラントフィルムまたは前記〔5〕のラミネートフィルムを有する袋体。
〔7〕
前記〔1〕、〔1a〕、〔1b〕または〔1c〕のエチレン系重合体組成物(A2)から易開封性シーラントフィルムを製造する際に、前記エチレン重合体(A1)および前記高圧法低密度ポリエチレンの割合を、エチレン系重合体(A1):高圧法低密度ポリエチレン=1重量%:99重量%~99重量%:1重量%の割合(ただし、エチレン系重合体(A1)および高圧法低密度ポリエチレンの合計量を100重量%とする。)の範囲で変化させる、易開封性シーラントフィルムの易カット性が発現する方向を調整する方法。
本発明に係る易開封性シーラントフィルム用エチレン系重合体組成物(以下、単に「エチレン系重合体組成物」とも記載する。)(A2)によれば、ヒートシール性および易指突き性に優れた易開封性シーラントフィルムを製造することができる。また、本発明に係るエチレン系重合体組成物(A2)からインフレーションフィルムを成形する際のバブル安定性も優れている。さらに、本発明に係るエチレン系重合体組成物(A2)から易開封性シーラントフィルムを製造する際に、エチレン重合体(A1)およびLDPEの割合を所定の範囲で変化させることにより(すなわち、本発明に係る、易開封性シーラントフィルムの易カット性が発現する方向を調整する方法により)、易開封性シーラントフィルムの易カット性の方向を任意の方向に調整することができる。
以下、本発明に係る易開封性シーラントフィルム用エチレン系重合体組成物、およびその用途等について詳細に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
[エチレン系重合体組成物]
本発明に係るエチレン系重合体組成物(A2)は、エチレン系重合体(A1)とLDPEとを、エチレン系重合体(A1):LDPE=1重量%:99重量%~99重量%:1重量%の割合(ただし、エチレン系重合体(A1)およびLDPEの合計量を100重量%とする。)で含み、前記エチレン系重合体(A1)は下記要件(I)~(V)を満たすエチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの共重合体であることを特徴としている。(I)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1~10g/10分の範囲にある。
(II)密度(d)が875~970kg/m3の範囲にある。
(III)13C-NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル分岐数〔A(/1000C)〕とエチル分岐数〔B(/1000C)〕との和〔(A+B)(/1000C)〕が1.80以下である。
(IV)GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×104.30~1.0×104.50の範囲にある。
(V)135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とが下記関係式(Eq-1)を満たす。
0.80×10-4×Mw0.776≦[η]≦1.65×10-4×Mw0.776
…(Eq-1)
本発明によれば、特定の特徴を有するエチレン系重合体(A1)とLDPEとを組み合わせた組成物を使用することで、何らかの作用が働き樹脂の配向性や結晶状態が変化する。一般的にフィルムの易カット性が発現する方向はフィルムを成形するときの分子配向の向きに依存するとされており、LLDPEとLDPEとの組合せではフィルム成形時の分子の流れ方向に分子配向が起こりやすいためにラメラ結晶も流れ方向に配向した状態で形成され、結果として得られたフィルムは、流れ方向に切れやすく、流れに直角の方向には切れにくい状態になりやすい。一方、分子量分布の狭いLLDPEを用いる等、フィルム加工による分子配向が起こりにくい状態で製造されたフィルムはどちらの方向にも切れにくい状態となりやすい。また、LDPEを単体で使用したインフレーションフィルムの場合、バブルを膨らます際に分子配向が起こると推測されることから、樹脂の流れに対して直角の方向に切れやすく、逆に分子の流れ方向には切れにくい性能を有することが多い。
したがって、周知技術の組合せで易カット性の方向をコントロールするには、流れ方向に切れやすいLLDPEとLDPEとの組合せをベースに、流れ方向に直角方向に切れ易い特徴を持つLDPEの量を増加させるという方策が考えられる。しかし、LDPE分子とLLDPE分子との絡み合いが極めて強いことに由来すると思われるが、本明細書の比較例1~4に示すようにLLDPEの配合量を極少量にしない限り流方向に配向が起こりやすい性能が抑えられないため、易カット性の方向のコントロールを行えるブレンド範囲は極めて限定的になってしまい、また、優れたヒートシール性および易指突き性を両立させることができない。
本発明者らが研究している多分岐ポリエチレン(以下「E-PE」とも記載する。)である前記エチレン系重合体(A1)を単体でフィルム成形に使用する場合には、その分岐の導入状態によって分子配向の向きが変わるためと推測されるが、LLDPEを単体でフィルム成形に使用する場合と比較して易カット性の方向の挙動が変化する。したがって、エチレン系重合体を製造する触媒や重合条件によって分岐の状態を変更できれば、易カット性の方向も自由に変更することが理論上は可能となるが、現実的には適応する包装材料によって重合触媒や重合条件を細かく変更することは不可能であり、一般的には手に入る材料の組合せで方向性をコントロールすることが強く求められる。
以上のようにフィルムを成形する際に分子配向をコントロールすることで、易カット性の方向をコントロールすることは可能であるが、既存の公知技術ではそのコントロールが極めて難しい状況であった。しかしながら本発明では、驚くべきことに、E-PE型の前記エチレン系重合体(A1)(通常は、触媒を用いて製造される。)と、ラジカル重合で製造されるE-PE型のLDPEを組み合わせることによって、同じE-PE型の樹脂の組合せでありながら優れたヒートシール性と易指突き性とを維持しつつ、実用的に問題とならないブレンド範囲の中で、易カット性の方向をコントロールすることができる。その機構については、必ずしも明らかではないが、E-PE型の分子同士の絡み合いの程度をブレンドによってコントロールすることによって、成形中の分子配向がコントロールされるという機構が推測される。
以上の推定機構によって、本発明によれば、通常のブレンダーを用いて高速成形を行ってもフィルムの易カット性の方向のコントロールが十分に可能であり、そのフィルムを単体で使用する場合、またはラミネートフィルムに加工した場合でも、所望の方向に対して良好な易カット性が発現する。
次に、前記エチレン系重合体組成物(A2)中の各成分について具体的に説明する。
〔エチレン系重合体(A1)〕
前記エチレン系重合体(A1)は、エチレンと炭素数4~10のα-オレフィン、好ましくはエチレンと炭素数4~10のα-オレフィン(ただし、コモノマーとしてブテン-1を使用する場合には、炭素数6~10のα-オレフィンも必要である)、より好ましくはエチレンと炭素数6~10のα-オレフィンとの共重合体である。エチレンとの共重合に用いられる炭素数4~10のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられる。
前記エチレン系重合体(A1)は、下記要件(I)~(V)で表される特性を有している。
要件(I):メルトフローレート(MFR)が0.1~10g/10分、好ましくは0.3~10g/10分、より好ましくは0.5~10g/10分、特に好ましくは0.5~8.0g/10分の範囲にある。
メルトフローレート(MFR)を特定することにより、分子量を制御し、インフレーション加工またはキャスト加工に適した伸張粘度が得られ、厚物のフィルムも成形できる。メルトフローレート(MFR)が0.1g/10分以上の場合、エチレン系重合体のせん断粘度が高すぎず、押出性や薄物フィルムの加工性が良好である。メルトフローレート(MFR)が10g/10分以下の場合、特に8.0g/10以下の場合、本発明の組成物から形成されるフィルムのヒートシール強度が良好であり、またインフレーション加工時のバブル安定性やTダイ成形時のネックインに優れる。
メルトフローレート(MFR)は、ヒートシール強度や押出加工に関係する数値である。MFRは樹脂の流動性を示す数値ではあるが、分子量に強く依存しており、メルトフローレート(MFR)が小さいほど分子量は大きく、メルトフローレート(MFR)が大きいほど分子量は小さくなる。また、エチレン系重合体の分子量は、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、曽我和雄他編、「Catalytic Olefin Polymerization」、講談社サイエンティフィク、1990年、p.376)。このため、水素/エチレンを増減させることで、エチレン系重合体のメルトフローレート(MFR)を増減させることが可能である。
メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に従い、190℃、2.16kg荷重の条件下で測定される。
要件(II):密度(d)が875~970kg/m3、好ましくは885~970kg/m3、より好ましくは890~970kg/m3の範囲にある。
密度(d)が875kg/m3以上の場合、エチレン系重合体から成形されたフィルム表面のべたつきが少なく、密度(d)が970kg/m3以下の場合、ヒートシール強度が良好であり密封性に優れ、特に低温シール性に優れる。
密度は、べたつきがなくシールも可能なフィルムとして使用可能な範囲を示す指標であり、エチレン系重合体のα-オレフィン含量に依存しており、α-オレフィン含量が少ないほど密度は高く、α-オレフィン含量が多いほど密度は低くなる。また、エチレン系重合体中のα-オレフィン含量は、重合系内におけるα-オレフィンとエチレンとの組成比(α-オレフィン/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、Walter Kaminsky, Makromol.Chem. 193, p.606(1992))。このため、α-オレフィン/エチレンを増減させることで、上記範囲の密度を有するエチレン系重合体を製造することができる。
密度(d)の測定は、JIS K6922-1の方法に従い、サンプルを沸騰水で30分間熱処理し、1時間かけて放冷条件で室温まで徐冷した後、JIS K7112の方法に従い、密度勾配管により行われる。
要件(III):13C-NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル分岐数〔A(/1000C)〕とエチル分岐数〔B(/1000C)〕との和〔(A+B)(/1000C)〕が1.80以下、好ましくは1.30以下、より好ましくは0.80以下、さらにより好ましくは0.50以下である。
1.80以下であると、結晶パッキング悪化によるフィルム強度、シール強度が良好である。
エチレン系重合体中にメチル分岐、エチル分岐などの短鎖分岐が存在すると、短鎖分岐が結晶中に取り込まれ、結晶の面間隔が広がってしまうため、樹脂の機械的強度が低下することが知られている(例えば、大澤善次郎他監修、「高分子の寿命予測と長寿命化技術」、(株)エヌ・ティー・エス、2002年、p.481)。そのため、メチル分岐数とエチル分岐数との和(A+B)が1.80以下の場合、結晶に取り込まれ易い短鎖分岐構造が少ないため、結晶のパッキングが良好であり、かつタイ分子が多いため、エチレン系重合体の機械的強度が良好であると共に優れたヒートシール強度が発現する。
エチレン系重合体中のメチル分岐数、エチル分岐数は、エチレン系重合体の重合方法に強く依存し、その和は、結晶のパッキングに関係し、フィルムの強度に関係する数値である。高圧ラジカル重合により得られたエチレン系重合体は、チーグラー型触媒系を用いた配位重合により得られたエチレン系重合体に比べ、メチル分岐数、エチル分岐数が多い。配位重合の場合、エチレン系重合体中のメチル分岐数、エチル分岐数は、重合系内におけるプロピレン、1-ブテンとエチレンとの組成比(プロピレン/エチレン、1-ブテン/エチレン)に強く依存する。このため、1-ブテン/エチレンを増減させることで、エチレン系重合体のメチル分岐数とエチル分岐数の和(A+B)を増減させることが可能である。
13C-NMRにより測定されたメチル分岐数およびエチル分岐数は下記の方法またはこれと同等の方法で決定される。
測定は、日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置(1H:500MHz)を用い、積算回数1万~3万回にて測定する。なお、化学シフト基準として主鎖メチレンのピーク(29.97ppm)を用いる。直径10mmの市販のNMR測定石英ガラス管中に、エチレン系重合体のサンプル250~400mgと和光純薬工業(株)製特級o-ジクロロベンゼン:ISOTEC社製ベンゼン-d6=5:1(体積比)の混合液3mlを入れ、120℃にて加熱、均一分散させることにより測定する。NMRスペクトルにおける各吸収の帰属は、化学領域増刊141号 NMR-総説と実験ガイド[I]、p.132~133に準じて行う。1,000カーボン当たりのメチル分岐数は、5~45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対する、メチル分岐由来のメチル基の吸収(19.9ppm)の積分強度比より算出する。また、エチル分岐数は、5~45ppmの範囲に現れる吸収の積分総和に対するエチル分岐由来のエチル基の吸収(10.8ppm)の積分強度比より算出する。
要件(IV):GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×104.30~1.0×104.50、好ましくは1.0×104.30~1.0×104.48、さらに好ましくは1.0×104.30~1.0×104.45の範囲にある。
最大重量分率での分子量(peak top M)が上記範囲内にあると、ヒートシール強度が良好であり、また、成形時に引取サージングの発生が抑制される。
エチレン系重合体の機械的強度には、低分子量成分が強く影響を及ぼすことが知られている。低分子量成分が存在すると、破壊の起点になると考えられている分子末端が増加するため、機械的強度が低下すると考えられている(松浦一雄・三上尚孝編著、「ポリエチレン技術読本」、株式会社工業調査会、2001年、p.45)。GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×104.30以上の場合、ヒートシール強度に悪影響を及ぼす低分子量成分が少ないため、ヒートシール強度に優れる。
GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)は、フィルムの強度を示し、重合系内における水素とエチレンとの組成比(水素/エチレン)により決定されることが知られている(例えば、曽我和雄他編、「Catalytic Olefin Polymerization」、講談社サイエンティフィク、1990年、p.376)。このため、水素/エチレンを増減させることで、分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)を増減させることが可能である。また、後述する好ましいオレフィン重合用触媒を用いることで、最大重量分率での分子量(peak top M)を適切な範囲に調整しやすくなる。
分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)は、以下の条件またはこれと同様の条件で測定し、算出する。
[測定条件]
使用装置;ウォーターズ社製ゲル浸透クロマトグラフ allianceGPC2000型(高温サイズ排除クロマトグラフ)
解析ソフト;クロマトグラフィデータシステムEmpower(Waters社)
カラム;TSKgel GMH6- HT×2+TSKgel GMH6-HTL×2
(内径7.5mm×長さ30cm,東ソー社)
移動相;o-ジクロロベンゼン(和光純薬 特級試薬)
検出器;示差屈折計(装置内蔵)
カラム温度;140℃
流速;1.0mL/分
注入量;500μL
サンプリング時間間隔;1秒
試料濃度;0.15%(w/v)
分子量較正;単分散ポリスチレン(東ソー社)/分子量495~分子量2060万
Z. Crubisic, P. Rempp, H. Benoit, J. Polym. Sci., B5, 753 (1967)に記載された汎用較正の手順に従い、ポリエチレン分子量換算として分子量分布曲線を作成する。この分子量分布曲線から最大重量分率での分子量(peak top M)を算出する。
要件(V):135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とが下記関係式(Eq-1)を満たす。
0.80×10-4×Mw0.776≦[η]≦1.65×10-4×Mw0.776
…(Eq-1)
すなわち、前記エチレン系重合体(A1)においては、135℃、デカリン中で測定した極限粘度〔[η](dl/g)〕と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量の0.776乗(Mw0.776)との比が下記式(Eq-2)
0.80×10-4≦[η]/Mw0.776≦1.65×10-4 …(Eq-2)
を満たす。下限値は好ましくは0.85×10-4、より好ましくは0.90×10-4であり、上限値は好ましくは1.55×10-4、より好ましくは1.45×10-4である。
エチレン系重合体中に長鎖分岐が導入されると、長鎖分岐の無い直鎖型エチレン系重合体に比べ、分子量の割に極限粘度[η](dl/g)が小さくなることが知られている(例えばWalther Burchard, ADVANCES IN POLYMER SCIENCE, 143, Branched PolymerII, p.137(1999))。
また、Mark-Houwink-桜田式に基づき、ポリエチレンの[η]はMvの0.7乗、ポリプロピレンの[η]はMwの0.80乗、ポリ-4-メチル-1-ペンテンの[η]はMnの0.81乗に比例することが報告されている(例えばR. Chiang, J. Polym. Sci., 36, 91 (1959): P.94、R. Chiang, J. Polym. Sci., 28, 235 (1958): P.237、A. S. Hoffman, B. A. Fries and P. C. Condit, J. Polym. Sci. Part C, 4, 109 (1963): P.119 Fig. 4)。
そして、エチレンと炭素数4以上10以下のα-オレフィンとの共重合体の代表的な指標としてMwの0.776乗を設定することとし、従来のエチレン系重合体に比べて分子量の割に[η]が小さいことを表したものが、前記要件(V)である。
よって、エチレン系重合体(A1)の[η]/Mw0.776が上記上限値以下、特に1.65×10-4以下の場合は多数の長鎖分岐を有しており、エチレン系重合体組成物(A2)の成形性、流動性が優れる。
後述のようにオレフィン重合用触媒中の成分比率を調整することで長鎖分岐含量は多くなることから、前記範囲の極限粘度[η]を有するエチレン系重合体(A1)を製造することができる。
なお、GPC-VISCO法による重量平均分子量(Mw)は、以下の方法またはこれと同等の方法で測定する。
測定装置としてウォーターズ社製GPC/V2000を用いる。ガードカラムはShodex AT-G、分析カラムはAT-806を2本使用し、カラム温度は145℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼンおよび酸化防止剤としてBHT0.3重量%を用い、1.0ml/分で移動させ、試料濃度は0.1重量%とし、検出器として示差屈折計、3キャピラリー粘度計を用いる。標準ポリスチレンは、東ソー社製のものを用いる。分子量計算においては、粘度計と屈折計とから実測粘度を算出し、実測ユニバーサルキャリブレーションより重量平均分子量(Mw)を算出する。
また、極限粘度[η](dl/g)はデカリン溶媒を用い、以下のように測定される。
サンプル約20 mgをデカリン15 mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定する。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5 ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定する。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/C値を極限粘度[η]とする。(下式(Eq-3)参照)
[η]=lim(ηsp/C) (C→0) …(Eq-3)
次に、前記エチレン系重合体(A1)の製造方法を説明する。
前記エチレン系重合体(A1)は、特開2017-25340に記載のエチレン系重合体(B1)を製造するオレフィン重合用触媒の存在下、エチレンと、炭素数4~10のα-オレフィンを特開2017-25340に記載された方法で重合することによって効率的に製造することができる。
以下に具体的に、エチレン系重合体(A1)の好ましい製造方法および製造用触媒について述べるが、エチレン系重合体(A1)の製造方法および製造用触媒は、下記のものに限定されない。
(エチレン系重合体(A1)の好ましい製造方法)
・エチレン系重合体(A1)の好ましい製造用触媒
前記エチレン系重合体(A1)は、成分(α)、成分(β)および成分(γ)を含む触媒の存在下、エチレンと炭素数4以上10以下のα-オレフィンとを重合することによって効率的に製造することができる。
前記触媒は、以下に述べる成分(α)、成分(β)および成分(γ)に加えて、固体状担体(S)ならびに成分(G)を含んでもよい。
前記触媒で用いられる各成分について説明する。
・成分(α)
成分(α)は、下記一般式(I)で表される架橋型メタロセン化合物である。
Figure 0006993424000001
一般式(I)中、Mは周期表第4族遷移金属原子を示し、具体的には、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれる遷移金属原子であり、好ましくはジルコニウムである。
1~R8は、水素原子、炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、およびスズ含有基から選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよいが、すべてが同時に水素原子ではない。また、R1~R8の内、隣接する基同士が互いに結合して脂肪族環(すなわち、芳香性を有さない炭化水素環)を形成してもよい。
1~R8の態様は、好ましくは、水素原子または炭素数1~15のアルキル基であり、さらに好ましくは、R1~R8の置換基のうち6つ以上が水素原子であり、かつ残りの2つが炭素数3~15のアルキル基であり、特に好ましくは、R1~R8の置換基のうち7つが水素原子であり、かつ残りの1つが炭素数3~15のアルキル基である。
1は二つの配位子を結合する二価の基であって、アルキレン基、置換アルキレン基およびアルキリデン基などの炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基ならびにスズ含有基から選ばれる基であり、特に好ましくはケイ素含有基である。
Xは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン含有炭化水素基、ケイ素含有基、酸素含有基、硫黄含有基、窒素含有基およびリン含有基から選ばれる原子または基であり、好ましくはハロゲン原子または炭化水素基である。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられ、特に好ましくは塩素が挙げられる。炭化水素基としては、炭素数1~20のアルキル基が特に好ましい。
・成分(β)
成分(β)は、下記一般式(II)で表される架橋型メタロセン化合物である。
Figure 0006993424000002
一般式(II)中、Mは周期表第4族遷移金属原子を示し、具体的には、チタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選ばれる遷移金属原子であり、好ましくはジルコニウムである。
9~R20は、水素原子、炭化水素基、ハロゲン含有基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、硫黄含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基およびスズ含有基から選ばれ、互いに同一でも異なっていてもよく、またR9~R20の内、隣接する2個の基が互いに連結して環を形成してもよい。R9~R20に好ましい基は、水素原子および炭化水素基であり、より好ましくはR9~R12が水素原子であり、R13~R20が水素原子または炭素数1~20のアルキル基である。
2は、二つの配位子を結合する二価の基であって、アルキレン基、置換アルキレン基およびアルキリデン基などの炭素数1~20の炭化水素基、ハロゲン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基ならびにスズ含有基から選ばれる基であり、好ましくは、アルキレン基、置換アルキレン基およびアルキリデン基などの炭素数1~20の炭化水素基ならびにケイ素含有基から選ばれる基であり、特に好ましくはアルキレン基、置換アルキレン基およびアルキリデン基などの炭素数1~10の炭化水素基である。
Xは、上記式(I)中のXと同様のものが挙げられる。
・成分(γ)
成分(γ)は、下記(γ-1)~(γ-3)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
(γ-1)下記一般式(III)、(IV)または(V)で表される有機金属化合物、
RαmAl(ORβ)npq・・・(III)
〔一般式(III)中、RαおよびRβは、炭素数が1~15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。〕
MαAlRα4・・・(IV)
〔一般式(IV)中、MαはLi、NaまたはKを示し、Rαは炭素数が1~15の炭化水素基を示す。〕
RαrMβRβst・・・(V)
〔一般式(V)中、RαおよびRβは、炭素数が1~15の炭化水素基を示し、互いに同一でも異なっていてもよく、MβはMg、ZnまたはCdを示し、Xはハロゲン原子を示し、rは0<r≦2、sは0≦s≦1、tは0≦t≦1であり、かつr+s+t=2である。〕
(γ-2)有機アルミニウムオキシ化合物、および、
(γ-3)成分(α)および成分(β)と反応してイオン対を形成する化合物、
から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
一般式(III)、(IV)または(V)で表される有機金属化合物(γ-1)の中では、一般式(III)で示されるものが好ましく、その例として具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウムおよびトリオクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム;ならびにジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ-n-ブチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライドおよびジイソヘキシルアルミニウムハイドライドなどのアルキルアルミニウムハイドライドなどが挙げられる。これらは、1種単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
・固体状担体(S)
本発明において、必要に応じて用いることができる固体状担体(S)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状または微粒子状の固体である。
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が挙げられ、好ましくは多孔質酸化物が挙げられる。
多孔質酸化物としては、SiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaOおよびThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物、具体的には、天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al23、SiO2-TiO2、SiO2-V25、SiO2-Cr23およびSiO2-TiO2-MgOなどが用いられる。これらのうち、SiO2を主成分とするものが好ましい。
・成分(G)
必要に応じて用いることができる成分(G)としては、下記(g-1)~(g-6)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
(g-1)ポリアルキレンオキサイドブロック、
(g-2)高級脂肪族アミド、
(g-3)ポリアルキレンオキサイド、
(g-4)ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル、
(g-5)アルキルジエタノールアミン、および
(g-6)ポリオキシアルキレンアルキルアミン。
本発明において、成分(G)は、反応器内でのファウリングを抑制し、あるいは生成重合体の粒子性状を改善する目的で、エチレン系重合体(A1)製造用触媒中に共存させることができる。成分(G)の中では、(g-1)、(g-2)、(g-3)および(g-4)が好ましく、(g-1)および(g-2)が特に好ましい。ここで、(g-2)の例として、高級脂肪酸ジエタノールアミドなどが挙げられる。
・エチレン系重合体(A1)の好ましい製造用触媒の調製方法
エチレン系重合体(A1)の好ましい製造用触媒の調製方法について記載する。
上記エチレン系重合体(A1)の好ましい製造用触媒は、成分(α)、成分(β)および成分(γ)を不活性炭化水素中または、不活性炭化水素を用いた重合系中に添加することにより調製することができる。
また固体状担体(S)を含む場合、成分(α)、成分(β)および成分(γ)の少なくとも1つの成分と、固体状担体(S)とを不活性炭化水素中で接触させ、次いで残りの成分をさらに接触させ、固体触媒成分を調製することができる。
本発明者らは、上記エチレン系重合体(A1)が生成する機構において、成分(α)および成分(γ)、ならびに必要に応じて固体状担体(S)を含むオレフィン重合用触媒成分の存在下で、エチレンまたはエチレンと炭素数4~10のα-オレフィン、好ましくはエチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとを重合させることによって数平均分子量4000~20000、好ましくは4000~15000の末端ビニルを有する重合体である「マクロモノマー」を生成させ、次いで、成分(β)および成分(γ)、ならびに必要に応じて固体状担体(S)を含むオレフィン重合用触媒成分により、エチレンおよび炭素数4~10のα-オレフィンの重合と競争的に該マクロモノマーを共重合させることにより、エチレン系重合体(A1)中に長鎖分岐が生成すると考えている。エチレン系重合体(A1)中の長鎖分岐含量は、重合系中のマクロモノマーとエチレンとの組成比([マクロモノマー]/[エチレン])に依存しており、[マクロモノマー]/[エチレン]が高いほどエチレン系重合体(A1)中の長鎖分岐含量は多くなる。オレフィン重合用触媒中の成分(α)の比率([成分(α)]/[成分(α)+成分(β)])高くすることで[マクロモノマー]/[エチレン]を高くすることができる。
このように、成分(α)および成分(β)の使用量比は、製造しようとするエチレン系重合体(A1)の長鎖分岐量から任意に決定できるが、成分(α)から生成するポリマーと成分(β)から生成するポリマーとの比率[=成分(α)からの生成ポリマー重量/成分(β)からの生成ポリマー重量]が、通常40/60~95/5、好ましくは50/50~95/5、より好ましくは60/40~95/5となる範囲にある。
エチレン系重合体(A1)の製造には、固体触媒成分をそのまま用いることができるが、固体触媒成分にオレフィンを予備重合させ、予備重合触媒成分を形成したものを用いることもできる。
得られたエチレン系重合体(A1)の物性値のばらつきを抑制するため、重合反応により得られたエチレン系重合体粒子および所望により添加される他の成分を、任意の方法で溶融、混練、造粒などを施してもよい。
〔高圧法低密度ポリエチレン〕
前記エチレン系重合体組成物(A2)は、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)を含有する。
前記LDPEのMFR(JIS K7210に準拠、190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.2g/10分以上10g/10分以下、より好ましくは0.2g/10分以上6g/10分以下、更に好ましくは0.2g/10分以上4g/10分以下の範囲にある。MFRが前記範囲にあるLDPEは、前記エチレン系重合体(A1)との相溶性が良好であることから好ましい。
LDPEは市場で入手可能な一般的な銘柄から選定してもよい。
〔エチレン系重合体組成物(A2)〕
本発明のエチレン系重合体組成物(A2)は、前記エチレン系重合体(A1)と前記LDPEとを、エチレン系重合体(A1):LDPE=1重量%:99重量%~99重量%:1重量%、好ましくは5重量%:95重量%~95重量%:5重量%、さらに好ましくは10重量%:90重量%~90重量%:10重量%の割合(ただし、前記エチレン系重合体(A-1)および前記LDPEの合計量を100重量%とする。)で含んでいる。エチレン重合体(A1)またはLDPEの割合が全体の1重量%未満である場合、樹脂のブレンドが均一になりにくくなり、易カット性の方向が安定しないため、フィルム製品の品質安定性の観点から好ましくない。
本発明のエチレン系重合体組成物(A2)は、発明の効果を損なわない限り、エチレン系重合体(A1)およびLDPE以外の樹脂成分を含んでいても構わない。その含有量は、エチレン系重合体組成物(A2)の通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
本発明のエチレン系重合体組成物(A2)からフィルムを製造するに当たり、前記エチレン系重合体(A1)と前記LDPEとの割合を前記範囲内で変化させることにより、フィルムの易カット性の方向を任意の方向に調整することができる。具体的には、エチレン系重合体(A1)の割合を増加させると樹脂の流れ方向(MD)への易カット性を発現させることができ、LDPEの割合を増加させると樹脂の流れと直角の方向(TD)への易カット性を発現させることができ、両者の割合が同程度であるとすべての方向への易カット性を発現させることができる。
すなわち、成形時の樹脂の流れ方向(MD)方向への易カット性を発現させたい場合には、エチレン系重合体組成物(A2)は、前記エチレン系重合体(A1)と前記LDPEとを、エチレン系重合体(A1):LDPE=60重量%:40重量%~99重量%:1重量%の割合で含むことが好ましく、エチレン系重合体(A1):LDPE=61重量%:39重量%~99重量%:1重量%の割合で含むことがより好ましく、エチレン系重合体(A1):LDPE=70重量%:30重量%~99重量%:1重量%の割合で含むことがさらに好ましい(エチレン系重合体(A1)およびLDPEの合計量を100重量%とする。)。これらの割合において、エチレン系重合体(A1)量の上限値を95重量%、または90重量%(LDPE量の下限値を5重量%、10重量%)としてもよい。
成形時の樹脂の流れ方向(MD)方向およびそれと直角の方向(TD)方向の両方向への易カット性を発現させたい場合には、エチレン系重合体組成物(A2)は、前記エチレン系重合体(A1)と前記LDPEとを、エチレン系重合体(A1):LDPE=41重量%:59重量%~59重量%:41重量%の割合で含むことが好ましく、エチレン系重合体(A1):LDPE=45重量%:55重量%~55重量%:45重量%の割合で含むことがより好ましい(エチレン系重合体(A1)およびLDPEの合計量を100重量%とする。)。
成形時の樹脂の流れと直角の方向(TD)方向への易カット性を発現させたい場合には、エチレン系重合体組成物(A2)は、前記エチレン系重合体(A1)と前記LDPEとを、エチレン系重合体(A1):LDPE=1重量%:99重量%~40重量%:60重量%の割合で含むことが好ましく、エチレン系重合体(A1):LDPE=1重量%:99重量%~39重量%:61重量%の割合で含むことがより好ましく、エチレン系重合体(A1):LDPE=1重量%:99重量%~30重量%:70重量%の割合で含むことがさらに好ましい(エチレン系重合体(A1)およびLDPEの合計量を100重量%とする。)。これらの割合において、エチレン系重合体(A1)量の下限値を5重量%、10重量%(LDPE量の上限値を95重量%、または90重量%)としてもよい。
本発明のエチレン系重合体組成物(A2)は、酸化防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤など一般的な添加剤を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
本発明のエチレン系重合体組成物は、特にインフレーション成形またはキャスト成形に適している。これらの成形法は、押出ラミネート加工よりも比較的低温で行われるため、得られるフィルムによる、包装される内容物への味覚、臭気に対する影響は少なく、良好な保存性、保香性を達成できる。
[エチレン系重合体組成物の用途]
本発明に係るフィルムは、本発明に係るエチレン系重合体組成物(A2)からなることを特徴としており、好ましくは易開封性シーラントフィルムとして使用される。
本発明に係るフィルムは、本発明に係るエチレン系重合体組成物(A2)をフィルム状に成形することにより製造することができる。
また、本発明に係るラミネートフィルムは、本発明に係るフィルムと他のフィルムとを有することを特徴としている。本発明に係るラミネートフィルムは、易カット性に優れている。
本発明に係るラミネートフィルムは、たとえば、本発明に係るエチレン系重合体組成物(A2)を他の熱可塑性樹脂と共押出加工することにより製造することができる。成形性に優れ、かつ易カット性に優れた多層フィルムが得られる。本発明に係るエチレン系重合体組成物と、他の熱可塑性樹脂との共押出比率(重量比)は、99.9/0.1~0.1/99.9である。
他の熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルおよびポリアセタールなどの結晶性熱可塑性樹脂;ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリアクリレートなどの非結晶性熱可塑性樹脂が用いられ、ポリ塩化ビニルも好ましく用いられる。
上記ポリオレフィンとして具体的には、エチレン共重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体、3-メチル-1-ブテン系重合体、ヘキセン系重合体、環状モノマー含有ポリオレフィンなどが挙げられる。なかでも、エチレン共重合体、プロピレン系重合体、4-メチル-1-ペンテン系重合体が好ましい。エチレン共重合体は、前記エチレン系重合体(A1)であっても従来のエチレン共重合体であってもよく、エチレン・極性基含有共重合体であってもよい。従来のエチレン共重合体としては、高圧法低密度ポリエチレンが好ましく、エチレン・極性基含有共重合体としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン・メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体等の酸コポリマー、およびそれらの樹脂を金属イオンにて擬似架橋しているアイオノマー等が好ましい。
上記ポリアミドとして具体的には、ナイロン-6、ナイロン-66、ナイロン-10、ナイロン-12、ナイロン-46などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンより製造される芳香族ポリアミドなどが挙げられる。
上記ポリエステルとして具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステル;ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートなどが挙げられる。
上記ポリアセタールとして具体的には、ポリホルムアルデヒド(ポリオキシメチレン)、ポリアセトアルデヒド、ポリプロピオンアルデヒド、ポリブチルアルデヒドなどを挙げることができる。中でも、ポリホルムアルデヒドが特に好ましい。
上記ポリスチレンは、スチレンの単独重合体であってもよく、スチレンとアクリロニトリル、メタクリル酸メチル、α-メチルスチレンとの二元共重合体であってもよい。
上記ABSとしては、アクリロニトリルから誘導される構成単位を20~35モル%の量で含有し、ブタジエンから誘導される構成単位を20~30モル%の量で含有し、スチレンから誘導される構成単位を40~60モル%の量で含有するABSが好ましく用いられる。
上記ポリカーボネートとしては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタンなどから得られるポリマーが挙げられる。なかでも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから得られるポリカーボネートが特に好ましい。
上記ポリフェニレンオキシドとしては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンオキシド)を用いることが好ましい。
上記ポリアクリレートとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルアクリレートを用いることが好ましい。
上記のような熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、また2種以上組み合わせて用いてもよい。特に好ましい熱可塑性樹脂はポリオレフィンであって、エチレン共重合体が特に好ましい。
本発明に係るエチレン系重合体組成物(A2)を単独押出加工、または該エチレン系重合体組成物(A2)と異種の熱可塑性樹脂組成物とを共押出加工することにより、優れた成形性で、ヒートシール性および易指突き性に優れたフィルム、好ましくはインフレーションフィルムが得られる。このフィルムは、少なくとも一層が本発明のエチレン系重合体組成物からなる層である。本発明のエチレン系重合体組成物からなる層は、共押出成形による多層成形による層の中の少なくとも1層でもよく、単独押出成形による単層成形による層でもよい。
本発明に係るエチレン系重合体組成物(A2)からなるフィルムの厚みは、好ましくは15~300μm、より好ましくは20~250μmである。厚みが15μm以上であるとヒートシール強度の点で好ましく、300μm以下であるとフィルムの易指突き性の点で好ましい。
例えば、インフレーション成形においてはエチレン系重合体組成物(A2)を100~300℃、好ましくは120~200℃で成形する。100℃以上であると樹脂が十分に溶融するため未溶融ゲルの発生を抑制できるため、安定したフィルムの連続生産が可能となるとなる。また、300℃以下であると樹脂劣化によるブツ発生や樹脂の分解反応の抑制ができる。分解反応を抑制できると、本発明のフィルムを特に食品包装に使用した際に、フィルムの臭気や味覚の悪化を抑制できる。
本発明に係るフィルムは、押出ラミネート加工によるサンドイッチラミネーションで使用しても良く、ドライラミネート加工のように被接着フィルムに通常アンカーコート剤(接着剤)を塗布して接着させてもよい。本発明に係るフィルムと被接着フィルム(基材)とを有するラミネートフィルムにおいて、本発明に係るフィルムの易カット性を維持するためには、被接着フィルム(基材)としてプラスチックの延伸フィルム(OPP、OPET、ONy)、紙、金属箔といった比較的易カット性に優れる被接着フィルム(基材)を使用することが好ましく、易指突き性も付与するためには、被接着フィルム(基材)は紙、金属箔を含むことが特に好ましい。基材には保護層として樹脂がコーティングされているものや印刷がされているものを使用してもよい。被接着フィルム(基材)の厚さは好ましくは1~500μm、より好ましくは5~300μmである。被接着フィルム(基材)が薄すぎ場合は、強度が弱くなりすぎて包装材としての役割を果たさなくなり、また厚すぎる場合は、剛性が極端に高くなるため、ラミネート加工が難しくなり樹脂の性能が適切に発揮されない。
アンカーコート剤(接着剤)として、一般的に市販されているウレタン系、チタネート系、イミン系、ブタジエン系、オレフィン系のうち少なくとも一種を塗布しても良い。
本発明のエチレン系重合体組成物(A2)を使用したフィルムを単独で使用するフィルム、もしくは本発明に関わるフィルムをラミネート加工することにより得られるラミネートフィルムは、水物包装袋、液体スープ包袋、液体紙器、ラミ原反、特殊形状液体包装袋(スタンディングパウチなど)、規格袋、重袋、ラップフィルム、砂糖袋、油物包装袋、食品包装用などの各種包装用フィルム、プロテクトフィルム、輸液バック、農業用資材、バックインボックス、半導体材料、医薬品、食品などの包装に用いられるクリーンフィルムなどの材料として好適である。これらの用途において、前記ラミネートフィルムは、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィンフィルムなどからなる基材にエチレン系重合体組成物(A2)からなる層を積層した形態であってもよい。
本発明に係る易開封性シーラントフィルムを用いた袋体は、本発明のエチレン系重合体組成物からなる層を少なくとも1層含むフィルムから製造される。本発明に係る袋体(袋体としては容器も挙げられる。)に用いられるフィルムは、外観及び感触の点から、本発明に係るフィルムの層の他に少なくとも一層に延伸フィルム、紙、金属箔などの基体が含まれたラミネートフィルムであっても良い。また、必要に応じて、フィルムの最外層の外側にはその保護層として樹脂がコーティングされていても良い。
本発明に係る袋体は、本発明に係るラミネートフィルムを使用し、シール層、すなわち本発明の易開封性シーラントフィルムからなる層、の面を対向させて重ね合わせ、その後、その周辺端部をヒートシールしてシール部を形成して製造することもできる。その製造方法としては、例えば、ラミネートフィルムの周辺端部を折り曲げるかあるいは重ね合わせて、内層の面を対向させ、更にその周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型、その他等のヒートシール形態によりヒートシールする方法が挙げられる。袋体は内容物や使用環境、使用形態に応じて種々の形態をとり得る。その他、例えば、自立性包装用袋(スタンディングパウチ)等も可能である。ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
袋体にその開口部から内容物を充填し、その後、開口部をヒートシールしてもよい。
こうした構成を有する袋体は、たとえば、本発明に係るエチレン系重合体組成物(A2)から作製したフィルムをシーラントとして用い、該フィルムをシール層同士もしくは基体の表面保護層とシール層が接する形で重なり合うように重ね合わせて所定箇所をヒートシールして、当該所定箇所の対面するエチレン共重合体組成物(A2)からなる層を、一辺が開口した袋体が得られるように接着することで製造できる。
以上説明したように、本発明に係るエチレン系重合体組成物(A2)を使用することで、既知の技術の範囲では成し得ない、フィルム加工時の分子配向性のバランス調整ができ、エチレン系重合体(A1)とLDPEとの割合を変化させることで、優れたヒートシール性と易指突き性を発現させつつ、易カット性の方向を調整できる。本発明のフィルムを包装材料に使用することで、十分なヒートシール性(密封性)を持ちながらも、実用的に開封しやすい特性を両立することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<エチレン系重合体の分析ないし評価>
エチレン系重合体(A1)の分析方法および評価方法は以上の説明中に記述のとおりであり、以上の説明中に記述されていない方法は以下の通りである。エチレン系重合体(A1)以外のエチレン系重合体の分析ないし評価の方法も同様である。
[ゼロせん断粘度(η0)]
200℃におけるゼロせん断粘度〔η0(P)〕は以下のようにして求めた。
測定温度200℃におけるせん断粘度(η*)の角速度〔ω(rad/秒)〕分散を0.02512≦ω≦100の範囲で測定した。測定にはレオメトリックス社製ダイナミックストレスレオメーターSR-5000を用いた。サンプルホルダーは25mmφのパラレルプレートを用い、サンプル厚みは約2.0mmとした。測定点はω一桁当たり5点とした。歪み量は、測定範囲でのトルクが検出可能で、かつトルクオーバーにならないよう、3~10%の範囲で適宜選択した。せん断粘度測定に用いたサンプルは、神藤金属工業所製プレス成形機を用い、予熱温度190℃、予熱時間5分間、加熱温度190℃、加熱時間2分間、加熱圧力100kg重/cm2、冷却温度20℃、冷却時間5分間、冷却圧力100kg重/cm2の条件にて、測定サンプルを厚さ2mmにプレス成形することで調製した。
ゼロせん断粘度η0は、下記数式(Eq-4)のCarreauモデルを非線形最小二乗法により実測のレオロジー曲線〔せん断粘度(η*)の角速度(ω)分散〕にフィッティングさせることで算出した。
Figure 0006993424000003
ここで、λは時間の次元を持つパラメーター、nは材料の冪法則係数(power law index)を表す。なお、非線形最小二乗法によるフィッティングは下記数式(Eq-5)におけるdが最小となるよう行われる。
Figure 0006993424000004
ここで、ηexp(ω)は実測のせん断粘度、ηcalc(ω)はCarreauモデルより算出したせん断粘度を表す。
[溶融張力]
溶融張力(MT)は、溶融されたエチレン系重合体を一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定した。測定には東洋精機製作所製、MT測定機を用いた。測定条件は、樹脂温度190℃、溶融時間6分、バレル径9.55mmφ、押し出し速度15mm/分、巻取り速度24m/分(溶融フィラメントが切れてしまう場合には、巻取り速度を5m/分ずつ低下させる)、ノズル径2.095mmφ、ノズル長さ8mmとした。
<フィルムの分析ないし評価>
以下の方法により、インフレーションフィルムを作製し、その分析ないし評価を行った。
[インフレーションフィルムの成形]
実施例等で得られた樹脂(エチレン系重合体組成物、エチレン系重合体、LDPEまたはLLDPE。以下同様。)を、50mmφの押出機とダイ径100mmφの丸ダイを有するモダン社製単層インフレーション成形機を用いて、以下の条件でインフレーションフィルムに加工した。
フロストライン:300mm
樹脂温度:180~200℃
引取速度:20m/分
フィルムサイズ:320mm幅×40μm厚み
[バブルの安定性]
インフレーションフィルムの成形時にバブルの揺れを確認し、以下の基準で評価した(官能試験として判定)。
○:揺れが無い
△:揺れが少ない
×:揺れ易い
[ヒートシール試験]
上記の方法で作製したインフレーションフィルムを15mm幅に切断して試験片を得た。
2つの試験片を重ね合わせ、下記条件に従って、ヒートシールを行い、かつヒートシール強度を測定した。5回の測定の平均値を表2に示す。
・片面加熱バーシーラーを使用
ヒートシール圧力:2kg/cm2
ヒートシール時間:0.5秒
ヒートシール温度:130℃
シールバーの幅:10mm
試験片幅:15mm
剥離角度:180度
剥離速度:300mm/分
ヒートシールの剥離状態は、n=5で剥離面を目視で確認し以下の基準で評価した(官能試験)。
〇:5回とも、2つの試験片が完全に融着してフィルム破壊が起こった。
×:5回の測定のうち1回以上においてヒートシール界面で剥離が起こった。
[指突き試験]
インフレーションフィルムを適度に張った状態で、フィルムに人間の親指を突刺して、突刺しやすさを以下の基準で官能的に評価した。
○:LDPEフィルムと同等の易突刺し性
×:LLDPEフィルムと同等の難突刺し性
△:これらの中間の突刺し性
[エルメンドルフ引裂き強度、易カット性の方向]
ASTM D1922に準拠して、下記条件にて測定した。
軽荷重引裂試験機(東洋精機製作所製:振り子の左端に容量ウェイトB:79gを取り付け)を使用し、インフレーションフィルムから引裂き方向(MD方向およびTD方向)に長さ63.5mm(長辺)及び引裂き方向と直角方向(TD方向およびMD方向)に幅50mm(短辺)の長方形の試験片を切出し、短辺の中央に端から12.7mmの切り込みを入れて複数枚の試験片を用意した。
1枚の試験片を機械に設置し、引裂き試験を行い、TD方向における引裂き強度(N)を求めた。なお、試験機の測定レンジ(R)は200とした。
他の試験片を機械に設置し、引裂き試験を行い、MD方向における引裂き強度(N)を求めた。なお、試験機の測定レンジ(R)は200とした。
MD方向における引裂き強度/TD方向における引裂き強度の値を算出し、これに基づき易カット性の方向を評価した。
[予備重合触媒成分の製造]
特開2017-25340の[触媒調製例XP-1]、[触媒調製例XP-2]および[触媒調製例XP-3]の記載に従って、予備重合触媒成分(XP-1)、(XP-2)、(XP-3)をそれぞれ製造した。以下に、具体的な製造方法を記載する。
[触媒調製例XP-1]
(固体状担体(X-1)の調製)
内容積270リットルの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、シリカゲル(富士シリシア株式会社製:平均粒径70μm、比表面積340m2/g、細孔容積1.3cm3/g、250℃で10時間乾燥)10kgを77リットルのトルエンに懸濁させた後0~5℃に冷却した。この懸濁液にメチルアルミノキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.5mmol/mL)19.4リットルを30分間かけて滴下した。この際、系内温度を0~5℃に保った。引き続き0~5℃で30分間接触させた後、約1.5時間かけて系内温度を95℃まで昇温して、引き続き95℃で4時間接触させた。その後常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにトルエンで2回洗浄した後、全量115リットルのトルエンスラリーを調製した。得られたスラリー成分の一部を採取し濃度を調べたところ、スラリー濃度:122.6g/L、Al濃度:0.62mol/Lであった。
(固体触媒成分の調製)
内容積200ミリリットルの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエンを300ミリリットル、および上記で得られた固体状担体400ミリリットル(Al原子換算で0.25mol)を装入した。次に、遷移金属錯体(成分(β))として、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液を、Zr原子換算で1.12mmol滴下し、系内温度20~25℃で1時間接触させた後、系内温度を95℃に昇温し、さらに2時間接触させた。30℃まで降温後、遷移金属錯体(成分(α))として、ジメチルシリレン(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液を、Zr原子換算で0.12mmol滴下し、これらを系内温度20~30℃で1時間接触させた。上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて2回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量1リットルとし、固体触媒成分のスラリーを調製した。
(予備重合触媒成分(XP-1)の調製)
上記の方法で得られた固体触媒成分スラリーを10℃まで冷却した後、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl-H)120mmolを添加した。さらに常圧下でエチレンを系内に連続的に数分間供給した。この間系内の温度は10~15℃に保持し、次いで1-ヘキセン18ミリリットルを添加した。1-ヘキセン添加後、系内温度を35℃に昇温し、固体触媒成分に対して重量換算で3等量分のエチレンを重合させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量を1リットルとした。次に、系内温度を35℃に昇温した後、成分(G)として、エマルゲン(登録商標)108(花王株式会社製)1.0gを添加し、2時間接触させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した。次に、内容積1リットルのガラス製グラスフィルターに上記ヘキサンスラリーを移し、ヘキサンを濾別後、減圧下で減圧乾燥させることで、予備重合触媒成分(XP-1)196gを得た。得られた予備重合触媒の組成を調べたところ、予備重合触媒成分1g当たり、Zr原子が0.54mg含まれていた。
[触媒調製例XP-2]
(固体触媒成分の調製)
固体状担体(X-1)を用いて、触媒調製例1のイソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドと、ジメチルシリレン(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドの添加量を、それぞれZr原子換算で1.59mmol、0.18mmolに変更した以外は、触媒調製例XP-1と同様の条件にて固体触媒成分のスラリーを調製した。
(予備重合触媒成分(XP-2)の調製)
触媒調製例1の成分(G)を、ケミスタット(登録商標)2500(三洋化成工業株式会社製)2gに変更した以外は、触媒調製例1と同様の条件にて調製し、予備重合触媒成分(XP-2)186gを得た。得られた予備重合触媒の組成を調べたところ、予備重合触媒成分1g当たり、Zr原子が0.84mg含まれていた。
[触媒調製例XP-3]
(固体触媒成分の調製)
内容積200ミリリットルの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、トルエンを300ミリリットル、および触媒調製例1で得られた固体状担体400ミリリットル(Al原子換算で0.25mol)を装入した。次に、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(2,7-ジ-t-ブチル-9-フルオレニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液を、Zr原子換算で1.07mmol滴下し、ジメチルシリレン(3-n-ブチルシクロペンタジエニル)(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液を、Zr原子換算で0.17mmol滴下し、これらを系内温度20~25℃で1時間接触させた後、系内温度を75℃に昇温し、さらに2時間接触させた。30℃まで降温後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、さらにヘキサンを用いて2回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量1リットルとし、固体触媒成分のスラリーを調製した。
(予備重合触媒成分(XP-3)の調製)
上記の方法で得られた固体触媒成分のヘキサンスラリーを38~40℃まで昇温した後、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DiBAl-H)120mmolを添加した。系内温度を38~40℃に保持したまま、常圧下にてエチレン供給を開始し、固体触媒成分に対して重量換算で3等量分のエチレンを重合させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した後、ヘキサンを加えて全量を1リットルとした。次に、系内温度を35℃に昇温した後、成分(G)として、エマルゲン(登録商標)108(花王株式会社製)1.0gを添加し、2時間接触させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、ヘキサンを用いて4回洗浄した。次に、内容積1リットルのガラス製グラスフィルターに上記ヘキサンスラリーを移し、ヘキサンを濾別後、減圧下で減圧乾燥させることで、予備重合触媒成分(XP-3)195gを得た。得られた予備重合触媒の組成を調べたところ、予備重合触媒成分1g当たり、Zr原子が0.54mg含まれていた。
[製造例1]
内容積1.7m3の流動層型気相重合反応器において、予備重合触媒成分(XP-1)を用いて、エチレン・1-ヘキセン共重合体の製造を行った。
反応器内のガス組成が表1に示す値になるように、原料ガスなどを供給した。また、予備重合触媒成分(XP-1)も、表1に示す量で連続的に供給した。さらに、表1に記載のとおり製造条件を設定した。
重合反応物を、反応器から連続的に抜き出し、乾燥装置にて乾燥し、エチレン系重合体(A1-1)パウダーを得た。
エチレン系重合体(A1-1)パウダーに耐熱安定剤としてスミライザーGP(住友化学株式会社製、登録商標)850ppmを加え、株式会社池貝製2軸異方向46mmφ押出機を用いて、温度200℃、スクリュー回転数300rpm、フィーダー回転数30rpmの条件で溶融混練し、エチレン系重合体(A1-1)のペレットを得た。得られたエチレン系重合体(A-1)の物性を表1に示す。
[製造例2、3]
諸条件を表1に記載のとおり変更したこと以外は製造例1と同様にして、エチレン系重合体(A1-2)および(A1-3)をそれぞれ製造した。得られたエチレン系重合体(A1-2)および(A1-3)の物性を表1に示す。
[製造例4]
特許文献2(特開2014-074103号公報)の実施例1に従いエチレン系重合体を製造した。得られたエチレン系重合体(C1)の物性を表1に示す。
[製造例5]
特許文献3(特開2008-031380号公報)の製造例18に従いエチレン系重合体を製造した。得られたエチレン系重合体(C2)の物性を表1に示す。
以下に製造例5における具体的な製造方法を記載する。
(固体成分(S-1)の調製)
内容積260リットルの攪拌機付き反応器に、窒素雰囲気下、250℃で10時間乾燥したシリカ(SiO2:平均粒子径12μm)10kgを90.5リットルのトルエンに懸濁した後、0~5℃まで冷却した。この懸濁液にメチルアルモキサンのトルエン溶液(Al原子換算で3.0mmol/ml)45.5リットルを30分間かけて滴下した。この際、系内の温度を0~5℃に保った。引き続き0~5℃で30分間反応させた後、約1.5時間かけて95~100℃まで昇温して、引き続き95~100℃で4時間反応させた。その後常温まで降温して、上澄み液をデカンテーションにより除去した。このようにして得られた固体成分をトルエンで2回洗浄した後、トルエンを加えて全量129リットルとし、固体成分(S-1)のトルエンスラリーを調製した。得られた固体成分の一部を採取し、濃度を調べたところ、スラリー濃度:137.5g/L、Al濃度:1.1mol/Lであった。
(固体触媒成分(X-5)の調製)
窒素置換した200mlのガラス製フラスコにトルエン50mlを入れ、攪拌下、上記で調製した固体成分(S-1)のトルエンスラリー(固体部換算で2.0g)を装入した。次に、予め混合した、ジメチルシリレンビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(以下「メタロセン化合物(A-1)」とも記載する。)のトルエン溶液(Zr原子換算で0.002mmol/ml)32.5ml、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド(以下「メタロセン化合物(B-1)」とも記載する。)のトルエン溶液(Zr原子換算で0.001mmol/ml)7.23mlの混合液を滴下し、室温で1時間反応させた。その後、上澄み液をデカンテーションにより除去し、デカンで2回洗浄し、固体触媒成分(X-5)のデカンスラリーとした。固体触媒成分(X-5)調製時のメタロセン化合物(A-1)とメタロセン化合物(B-1)の混合モル比は、(A-1)/(B-1)=90/10であった。また、得られた固体触媒成分(X-5)のデカンスラリーの一部を採取して濃度を調べたところ、Zr濃度0.065mg/ml、Al濃度3.77mg/mlであった。
[重合]
充分に窒素置換した内容積1リットルのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン500mlを入れ、エチレンを流通し、液相および気相をエチレンで飽和させた。次に、水素-エチレン混合ガス(水素濃度:0.064vol%)を用いて、系内を置換した後、1-ヘキセン30ml、トリイソブチルアルミニウム0.375mmol、ジルコニウム換算で0.0026ミリモルの固体触媒成分(X-5)をこの順に装入した。70℃に昇温して、0.78MPa-Gにて90分間重合を行った。得られたポリマーを10時間、真空乾燥し、エチレン系重合体92.9gを得た。
Figure 0006993424000005
[実施例1~3]
製造例3で製造されたエチレン系重合体(A1-3)のペレットと、LDPEとして旭化成株式会社より市販されている高圧ラジカル重合法によるポリエチレン(商品名:サンテックLD M1920)の製品ペレット(その物性を表1に示す。)とを、表1に記載されたブレンド比率でドライブレンドを行い、得られた混合物を用いてインフレーションフィルムの成形を行った。物性評価の結果を表2に示す。
[比較例1]
株式会社プライムポリマーより市販されている直鎖状低密度ポリエチレンであるエチレン・1-ヘキセン共重合体(商品名:エボリューSP1510)の製品ペレット(その物性を表1に示す。)をそのまま用いてインフレーションフィルムを成形した。物性評価の結果を表2に示す。
[比較例2]
株式会社プライムポリマーより市販されている直鎖状低密度ポリエチレンであるエチレン・1-ヘキセン共重合体(商品名:エボリューSP1510)の製品ペレットと旭化成株式会社より市販されている高圧ラジカル重合法によるポリエチレン(商品名:サンテックLD M1920)の製品ペレットとを80重量%:20重量%の割合でドライブレンドを行い、得られた混合物からインフレーションフィルムを成形した。物性評価の結果を表2に示す。
[比較例3]
株式会社プライムポリマーより市販されている直鎖状低密度ポリエチレンであるエチレン・1-ヘキセン共重合体(商品名:エボリューSP1510)の製品ペレットと旭化成株式会社より市販されている高圧ラジカル重合法によるポリエチレン(商品名:サンテックLD M1920)の製品ペレットを20重量%:80重量%の割合でドライブレンドを行い、得られた混合物からインフレーションフィルムを成形した。物性評価の結果を表2に示す。
[比較例4]
旭化成株式会社より市販されている高圧ラジカル重合法によるポリエチレン(商品名:サンテックLD M1920)の製品ペレットをそのまま用いてインフレーションフィルムを成形した。物性評価の結果を表2に示す。
[比較例5]
株式会社プライムポリマーより市販されている直鎖状低密度ポリエチレンであるエチレン・1-ヘキセン共重合体(商品名:エボリューSP1510)の製品ペレットと製造例3で製造したエチレン系重合体(A1-3)とを80重量%:20重量%の割合でドライブレンドを行い、得られた混合物からインフレーションフィルムを成形した。物性評価の結果を表2に示す。
[比較例6]
実施例1で使用したエチレン系重合体(A1-3)のみからインフレーションフィルムを成形した。物性評価の結果を表2に示す。
[比較例7]
製造例4で製造したエチレン系重合体(C1)のみからインフレーションフィルムを成形した。物性評価の結果を表2に示す。
[比較例8]
製造例5で製造したエチレン系重合体(C2)のみからインフレーションフィルムを成形した。物性評価の結果を表2に示す。
Figure 0006993424000006
比較例1~4のフィルムは、バブルの安定性、指突き性およびヒートシール性のいずれかが実施例のフィルムよりも劣っていた。
比較例1~4によると、LDPEとLLDPEとを含む系においては、易カット性の方向のコントロールを行えるブレンド範囲は、LLDPEの配合量が極少量である、極めて限定的な範囲であると考えられる。
比較例5のフィルムは、指突き性が実施例のフィルムよりも劣っていた。
比較例6のフィルムは、ヒートシール強度が実施例のフィルムよりも劣っていた。
比較例1、5および6によると、エチレン系重合体(A1)およびLLDPEとを含むエチレン系重合体組成物から構成されたフィルムにおいては、易カット性の発現が特定の方向(MD方向)のみに限定されてしまうと考えられる。その原因としては、エチレン系重合体(A1)をLDPEではなくLLDPEと組み合わせると分子配向のバランスが取れない、ということが考えられる。
比較例7のフィルムは上述した要件(I)を満たさないエチレン系重合体(C1)から作製されたため、また比較例8のフィルムは上述した要件(IV)を満たさないエチレン系重合体(C2)から作製されたため、いずれもエチレン系重合体(A-3)から作製された比較例6のフィルムよりもヒートシール強度が弱くなってしまった。したがって、実施例1~3においてエチレン系重合体(A-3)に替えてエチレン系重合体(C1)またはエチレン系重合体(C2)を配合してフィルムを作製すると、それらのフィルムのヒートシール強度は、実施例のフィルムよりも弱いと考えられる。

Claims (9)

  1. エチレン系重合体(A1)と高圧法低密度ポリエチレンとを、エチレン系重合体(A1):高圧法低密度ポリエチレン=1重量%:99重量%~99重量%:1重量%の割合(ただし、エチレン系重合体(A1)および高圧法低密度ポリエチレンの合計量を100重量%とする。)で含み、前記エチレン系重合体(A1)は下記要件(I)~(V)を満たすエチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの共重合体であるエチレン系重合体組成物(A2)を含む易開封性シーラントフィルム。
    (I)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1~8.0g/10分の範囲にある。
    (II)密度(d)が875~970kg/m3の範囲にある。
    (III)13C-NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル分岐数〔A(/1000C)〕とエチル分岐数〔B(/1000C)〕との和〔(A+B)(/1000C)〕が1.80以下である。
    (IV)GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×104.30~1.0×104.50の範囲にある。
    (V)135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とが下記関係式(Eq-1)を満たす。
    0.80×10-4×Mw0.776≦[η]≦1.65×10-4×Mw0.776
    …(Eq-1)
  2. 前記エチレン系重合体組成物(A2)が、前記エチレン系重合体(A1)と前記高圧法低密度ポリエチレンとを、エチレン系重合体(A1):高圧法低密度ポリエチレン=60重量%:40重量%~99重量%:1重量%の割合(ただし、エチレン系重合体(A1)および高圧法低密度ポリエチレンの合計量を100重量%とする。)で含む、請求項1に記載の易開封性シーラントフィルム。
  3. 前記エチレン系重合体組成物(A2)が、前記エチレン系重合体(A1)と前記高圧法低密度ポリエチレンとを、エチレン系重合体(A1):高圧法低密度ポリエチレン=41重量%:59重量%~59重量%:41重量%の割合(ただし、エチレン系重合体(A1)および高圧法低密度ポリエチレンの合計量を100重量%とする。)で含む、請求項1に記載の易開封性シーラントフィルム。
  4. 前記エチレン系重合体組成物(A2)が、前記エチレン系重合体(A1)と前記高圧法低密度ポリエチレンとを、エチレン系重合体(A1):高圧法低密度ポリエチレン=1重量%:99重量%~40重量%:60重量%の割合(ただし、エチレン系重合体(A1)および高圧法低密度ポリエチレンの合計量を100重量%とする。)で含む、請求項1に記載の易開封性シーラントフィルム。
  5. 厚さが15~300μmである請求項1~4のいずれか1項に記載の易開封性シーラントフィルム。
  6. 前記エチレン系重合体組成物(A2)をフィルム状に成形する工程を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の易開封性シーラントフィルムの製造方法。
  7. 請求項1~5のいずれか1項に記載の易開封性シーラントフィルムと、他のフィルムとを有するラミネートフィルム。
  8. 請求項1~5のいずれか1項に記載の易開封性シーラントフィルムまたは請求項7に記載のラミネートフィルムを有する袋体。
  9. エチレン系重合体(A1)と高圧法低密度ポリエチレンとを、エチレン系重合体(A1):高圧法低密度ポリエチレン=1重量%:99重量%~99重量%:1重量%の割合(ただし、エチレン系重合体(A1)および高圧法低密度ポリエチレンの合計量を100重量%とする。)で含み、前記エチレン系重合体(A1)は下記要件(I)~(V)を満たすエチレンと炭素数4~10のα-オレフィンとの共重合体であるエチレン系重合体組成物(A2)から易開封性シーラントフィルムを製造する際に、前記エチレン重合体(A1)および前記高圧法低密度ポリエチレンの割合を、エチレン系重合体(A1):高圧法低密度ポリエチレン=1重量%:99重量%~99重量%:1重量%の割合(ただし、エチレン系重合体(A1)および高圧法低密度ポリエチレンの合計量を100重量%とする。)の範囲で変化させる、易開封性シーラントフィルムの易カット性が発現する方向を調整する方法。
    (I)190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)が0.1~10g/10分の範囲にある。
    (II)密度(d)が875~970kg/m3の範囲にある。
    (III)13C-NMRにより測定された炭素原子1000個当たりのメチル分岐数〔A(/1000C)〕とエチル分岐数〔B(/1000C)〕との和〔(A+B)(/1000C)〕が1.80以下である。
    (IV)GPC測定により得られた分子量分布曲線における最大重量分率での分子量(peak top M)が1.0×104.30~1.0×104.50の範囲にある。
    (V)135℃、デカリン中で測定した極限粘度[η](dl/g)と、GPC-粘度検出器法(GPC-VISCO)により測定された重量平均分子量(Mw)とが下記関係式(Eq-1)を満たす。
    0.80×10-4×Mw0.776≦[η]≦1.65×10-4×Mw0.776
    …(Eq-1)

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