ここで、本実施形態において「抽出物」には、上記植物を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
本実施形態において使用する抽出原料は、クプアス(学名:Theobroma grandiflorum)およびアサイー(学名:Euterpe oleracea,Euterpe precatoria)である。
クプアス(Theobroma grandiflorum)は、アオイ科カカオ属に属する常緑低木であって、南米アマゾン地域に自生しているほか、これらの地域においてアグロフォレストリーにより栽培されており、容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るクプアスの構成部位としては、例えば、果実部、花部、葉部、幹部、樹皮部、根部またはこれらの混合物が挙げられるが、好ましくは果実部である。
アサイー(Euterpe oleracea,Euterpe precatoria,別名:ワカバキャベツヤシ)は、ヤシ科エウテルペ属に属する常緑高木であって、南米アマゾン地域に自生しているほか、これらの地域においてアグロフォレストリーにより栽培されており、容易に入手することができる。抽出原料として使用し得るアサイーの構成部位としては、例えば、果実部、葉部、幹部、樹皮部、根部またはこれらの混合物が挙げられるが、好ましくは果実部である。
上記クプアスおよびアサイーからの抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得ることができる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、上記抽出原料の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用することが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を抽出溶媒として使用する場合には、水と低級脂肪族アルコールとの混合比が9:1〜1:9(容量比)であることが好ましく、7:3〜2:8(容量比)であることがさらに好ましい。また、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水と低級脂肪族ケトンとの混合比が9:1〜2:8(容量比)であることが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水と多価アルコールとの混合比が8:2〜1:9(容量比)であることが好ましい。
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
以上のようにして得られるクプアスからの抽出物および/またはアサイーからの抽出物は、優れた抗老化作用を有しているため、抗老化剤の有効成分として用いることができる。本実施形態の抗老化剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品等、飲食品の幅広い用途に使用することができる。
ここで、クプアスからの抽出物が有する抗老化作用は、例えば、ラジカル消去作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、グルタチオン産生促進作用、トランスグルタミナーゼ−1(TG−1)産生促進作用、プロフィラグリンmRNA発現促進作用、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用、クローディン−1産生促進作用、サーチュイン1(SIRT1)mRNA発現促進作用、リシルオキシダーゼ(LOX)mRNA発現促進作用、および角層タンパク質カルボニル化抑制作用からなる群より選択される1または2以上の作用に基づいて発揮される。ただし、クプアスからの抽出物が有する抗老化作用は、上記作用に基づいて発揮される抗老化作用に限定されるものではない。
また、クプアスからの抽出物は、そのラジカル消去作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、グルタチオン産生促進作用、TG−1産生促進作用、プロフィラグリンmRNA発現促進作用、AQP3 mRNA発現促進作用、クローディン−1産生促進作用、SIRT1 mRNA発現促進作用、LOX mRNA発現促進作用、または角層タンパク質カルボニル化抑制作用を利用して、それぞれラジカル消去剤、I型コラーゲン産生促進剤、IV型コラーゲン産生促進剤、ラミニン5産生促進剤、表皮角化細胞増殖促進剤、グルタチオン産生促進剤、トランスグルタミナーゼ−1(TG−1)産生促進剤、プロフィラグリンmRNA発現促進剤、アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進剤、クローディン−1産生促進剤、サーチュイン1(SIRT1)mRNA発現促進剤、リシルオキシダーゼ(LOX)mRNA発現促進剤、または角層タンパク質カルボニル化抑制剤の有効成分として使用してもよい。
なお、本明細書において「ラジカル」とは、不対電子を1つ又はそれ以上有する分子又は原子を意味し、スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、DPPH等が含まれる。
アサイーからの抽出物が有する抗老化作用は、例えば、紫外線ダメージ抑制作用に基づいて発揮され、中でも紫外線(UVA)照射による遺伝子発現変動の抑制作用、特にMMP−1(Matrix Metalloprotease-1)遺伝子および/またはIL−1α(Interleukin-1α)遺伝子のUVA照射によるmRNA発現上昇の抑制作用、またはCOL1A1(Collagen,TypeI,α1)遺伝子のUVA照射によるmRNA発現低下の抑制作用に基づいて発揮される。ただし、アサイーからの抽出物が有する抗老化作用は、上記作用に基づいて発揮される抗老化作用に限定されるものではない。また、アサイーからの抽出物は、その紫外線ダメージ抑制作用を利用して、紫外線ダメージ抑制剤の有効成分として使用してもよい。
本実施形態の抗老化剤は、クプアスからの抽出物および/またはアサイーからの抽出物のみからなるものでもよいし、クプアスからの抽出物および/またはアサイーからの抽出物を製剤化したものでもよい。
本実施形態の抗老化剤は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。抗老化剤は、他の組成物(例えば、皮膚化粧料、飲食品等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
本実施形態の抗老化剤を製剤化した場合、クプアスからの抽出物および/またはアサイーからの抽出物の含有量は、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定することができる。
なお、本実施形態の抗老化剤は、必要に応じて、抗老化作用を有する他の天然抽出物等を、クプアスからの抽出物および/またはアサイーからの抽出物とともに配合して有効成分として用いることができる。
本実施形態の抗老化剤の患者に対する投与方法としては、経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本実施形態の抗老化剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
本実施形態の抗老化剤は、有効成分であるクプアスからの抽出物またはアサイーからの抽出物が有するラジカル消去作用、I型コラーゲン産生促進作用、IV型コラーゲン産生促進作用、ラミニン5産生促進作用、表皮角化細胞増殖促進作用、グルタチオン産生促進作用、TG−1産生促進作用、プロフィラグリンmRNA発現促進作用、AQP3 mRNA発現促進作用、クローディン−1産生促進作用、SIRT1 mRNA発現促進作用、LOX mRNA発現促進作用、角層タンパク質カルボニル化抑制作用、または紫外線ダメージ抑制作用を通じて、しわ形成や弾力低下等の皮膚の老化を予防、治療または改善できる。ただし、本実施形態の抗老化剤は、これらの用途以外にも上記作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
例えば、本実施形態の抗老化剤または前述したラジカル消去剤は、クプアスからの抽出物が有するラジカル消去作用を通じて、関節リウマチやベーチェット病等の組織障害、各種動脈硬化症(虚血性心疾患,心筋梗塞,脳虚血,脳梗塞等)、神経変性疾患(アルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン舞踏病等)、癌、喫煙等が原因の肺疾患、白内障、糖尿病、肩凝り、冷え性等の活性酸素やフリーラジカルが関与する各種疾患;などを予防、治療または改善することができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述したI型コラーゲン産生促進剤もしくはIV型コラーゲン産生促進剤は、クプアスからの抽出物が有するI型コラーゲン産生促進作用またはIV型コラーゲン産生促進作用を通じて、骨粗鬆症等のコラーゲン産生の低下に起因する疾患の予防、治療又は改善;損傷した腱や靱帯の再生促進;創傷又は熱傷の治癒の促進;等の用途に用いることができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述したラミニン5産生促進剤はクプアスからの抽出物が有するラミニン5産生促進作用を通じて、基底膜構造の再構築を誘導し、皮膚における創傷を治療・改善することができる。また、本実施形態の抗老化剤または前述したラミニン5産生促進剤は、ラミニン5の欠乏(欠損)に起因する疾患(表皮水疱症等)の予防又は治療剤として用いることができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述した表皮角化細胞増殖促進剤は、クプアスからの抽出物が有する表皮角化細胞増殖促進作用を通じて、肌の新陳代謝を回復させ、こじわ、くすみ、色素沈着等の予防、治療または改善;再生医療;などの用途に使用することができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述したグルタチオン産生促進剤は、クプアスからの抽出物が有するグルタチオン産生促進作用を通じて、肝障害(アルコールの多飲,または重金属や化学物質等の異物の摂取が原因となる)等の細胞内グルタチオン量の低下又は欠乏が病態と関連することが知られている疾患などを予防、治療または改善することができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述したTG−1産生促進剤もしくはプロフィラグリンmRNA発現促進剤は、クプアスからの抽出物が有するTG−1産生促進作用またはプロフィラグリンmRNA発現促進作用を通じて、皮膚のバリア機能を強化し、肌荒れ、乾燥肌等のほか、乾燥性皮膚疾患(例えば、アトピー性皮膚炎、乾癬、魚鱗癬等)を予防、治療または改善することができる。また、本実施形態の抗老化剤または前述したプロフィラグリンmRNA発現促進剤もしくはAQP3 mRNA発現促進剤は、そのプロフィラグリンmRNA発現促進作用またはAQP3 mRNA発現促進作用を通じて、加齢による水分保持能やバリア機能等を改善することができる。
前述した用途のほか、本実施形態の抗老化剤または前述したクローディン−1産生促進剤は、クプアスからの抽出物が有するクローディン−1産生促進作用を通じて、表皮角化細胞におけるタイトジャンクションの形成を促すことができ、これにより、皮膚のバリア機能および水分保持機能を高め、乾燥肌、荒れ肌、アトピー性皮膚炎や各種感染症などの皮膚症状を予防または改善することができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述したSIRT1 mRNA発現促進剤は、クプアスからの抽出物が有するSIRT1 mRNA発現促進作用を通じて、糖尿病、心血管疾患、神経系疾患、炎症性疾患などの各種疾患を予防・治療または改善することができるとともに、細胞の寿命を延長することができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述したLOX mRNA発現促進剤は、クプアスからの抽出物が有するLOX mRNA発現促進作用を通じて、皮膚において弾性線維および膠原線維の適切な架橋構造を形成し、しっかりとした弾性線維の形成を導くとともに膠原繊維の強度を高め、これにより、張り消失やシワ形成を予防、治療または改善することができる。
前述した用途の他、本実施形態の抗老化剤または前述した角質タンパク質カルボニル化抑制剤は、クプアスからの抽出物が有する角層タンパク質カルボニル化抑制作用を通じて、角層タンパク質のカルボニル化を抑制することができ、これにより、肌のくすみを抑制して美肌効果を得ることができる。
本実施形態の抗老化剤または前述した紫外線ダメージ抑制剤は、アサイーからの抽出物が有する紫外線ダメージ抑制作用、より具体的には、UVA照射による遺伝子発現変動の抑制作用、特にMMP−1遺伝子および/またはIL−1α遺伝子のUVA照射によるmRNA発現上昇の抑制作用、またはCOL1A1遺伝子のUVA照射によるmRNA発現低下の抑制作用を通じて、紫外線照射により細胞が受けるダメージを抑制し、これにより、皮膚の光老化を効果的に予防、治療または改善することができる。
また、本実施形態の抗老化剤は、優れた抗老化作用を有するため、例えば、皮膚外用剤や飲食品に配合するのに好適である。この場合に、クプアスからの抽出物および/またはアサイーからの抽出物をそのまま配合してもよいし、クプアスからの抽出物および/またはアサイーからの抽出物から製剤化した抗老化剤を配合してもよい。
ここで、皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、経皮的に使用される皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものであり、具体的には、例えば、軟膏、クリーム、乳液、化粧水、美容液、ローション、ジェル、美容オイル、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、シャンプー、リンス、石鹸、ボディシャンプー等が挙げられる。
飲食品とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態における「飲食品」は、経口的に摂取される一般食品、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品,栄養機能食品)、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。
なお、本実施形態の抗老化剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば,マウス,ラット,ハムスター,イヌ,ネコ,ウシ,ブタ,サル等)に対して適用することもできる。
以下、試験例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の各例に何ら制限されるものではない。なお、本試験例においては、被験試料としてクプアス果実抽出物(丸善製薬社製,試料1)およびアサイー果実抽出物(丸善製薬社製,試料2)を使用した。
〔試験例1〕ラジカル消去作用試験(DPPH法)
クプアス抽出物(試料1)について、以下のようにしてラジカル消去作用を試験した。
150μmol/L DPPH(diphenyl-p-picrylhydrazyl)エタノール溶液3mLに被験試料溶液(試料1,試料濃度は下記表1を参照)3mLを加え密栓した後、振り混ぜて30分間放置した。放置後、波長520nmにおける吸光度を測定した。ブランクとして、エタノールに被験試料溶液を3mL加えた後、直ちに波長520nmにおける吸光度を測定した。また、コントロールとして、被験試料溶液に代えて試料の溶解に使用した溶媒のみを加えて同様の操作を行い、波長520nmにおける吸光度を測定した。得られた結果から、下記式によりラジカル消去率(%)を算出した。
ラジカル消去率(%)={A−(B−C)}/A×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加での波長520nmにおける吸光度
B:被験試料添加での波長520nmにおける吸光度
C:被験試料添加直後(ブランク)の波長520nmにおける吸光度
結果を表1に示す。
表1に示すように、クプアス抽出物(試料1)は、優れたラジカル消去作用を有していると認められた。
〔試験例2〕I型コラーゲン産生促進作用試験
クプアス抽出物(試料1)について、以下のようにしてI型コラーゲン産生促進作用を試験した。
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.6×105 cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、96ウェルマイクロプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
培養終了後、培地を除去し、0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表2を参照)を各ウェルに100μLずつ添加し、3日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて同様に培養した。培養後、各ウェルの培地中のI型コラーゲン量をELISA法により測定した。測定結果から、下記式によりI型コラーゲン産生促進率(%)を算出した。
I型コラーゲン産生促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのI型コラーゲン量
B:試料無添加でのI型コラーゲン量
結果を表2に示す。
表2に示すように、クプアス抽出物(試料1)は、優れたI型コラーゲン産生促進作用を有することが確認された。
〔試験例3〕IV型コラーゲン産生促進作用試験
クプアス抽出物(試料1)について、以下のようにしてIV型コラーゲン産生促進作用を試験した。
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.6×105 cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、96ウェルマイクロプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
培養終了後、培地を除去し、0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表3を参照)を各ウェルに50μLずつ添加し、3日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加の0.25%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて同様に培養した。培養後、各ウェルの培地中のIV型コラーゲン量をELISA法により測定した。測定結果から、下記式によりIV型コラーゲン産生促進率(%)を算出した。
IV型コラーゲン産生促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのIV型コラーゲン量
B:試料無添加でのIV型コラーゲン量
結果を表3に示す。
表3に示すように、クプアス抽出物(試料1)は、優れたIV型コラーゲン産生促進作用を有することが確認された。
〔試験例4〕ラミニン5産生促進作用試験
クプアス抽出物(試料1)について、以下のようにしてラミニン5産生促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、80cm2フラスコにて正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.0×105 cell/mLの細胞密度となるようにKGMからBPEを除いた培地(KGM−BPE)で希釈した後、24ウェルプレートに1ウェルあたり500μLずつ播種し、一日間培養した。
培養終了後、培地を除去し、KGM−BPE培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表4を参照)を各ウェルに500μLずつ添加し、48時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGM−BPE培地を用いて同様に培養した。培養終了後、上清100μLをELISAプレートに移し換え、37℃で2時間プレートに吸着させた後、吸着させたラミニン5の量をELISA法により測定した。得られた測定結果から、下記式によりラミニン5産生促進率(%)を算出した。
ラミニン5産生促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのラミニン5量
B:試料無添加でのラミニン5量
結果を表4に示す。
表4に示すように、クプアス抽出物(試料1)は優れたラミニン5産生促進作用を有することが確認された。
〔試験例5〕表皮角化細胞増殖促進作用試験
クプアス抽出物(試料1)について、以下のようにして表皮角化細胞増殖促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理にて細胞を回収した。回収した細胞を3.0×104 cells/mLの細胞密度になるようにKGM培地で希釈した後、コラーゲンコートした96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。培養終了後、KGM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表5を参照)を各ウェルに100μL添加し、3日間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGM培地を用いて同様に培養した。
表皮角化細胞増殖促進作用は、MTTアッセイ法を用いて測定した。すなわち、3日間培養後、培地を除去し、終濃度0.4mg/mLでPBS(−)緩衝液に溶解したMTTを各ウェル100μLずつ添加した。2時間培養した後に、細胞内に生成したブルーホルマザンを2−プロパノール100μLで抽出した。抽出後、波長570nmにおける吸光度を測定した。同時に濁度として波長650nmにおける吸光度を測定し、両者の差をもってブルーホルマザン生成量とした。得られた結果から、下記式により表皮角化細胞増殖促進率(%)を算出した。
表皮角化細胞増殖促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのブルーホルマザン生成量
B:試料無添加でのブルーホルマザン生成量
結果を表5に示す。
表5に示すように、クプアス抽出物(試料1)は、優れた表皮角化細胞増殖促進作用を有することが確認された。
〔試験例6〕グルタチオン産生促進作用試験(線維芽細胞)
クプアス抽出物(試料1)について、以下のようにして、線維芽細胞におけるグルタチオン産生促進作用を試験した。
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有α−MEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×105 cells/mLの細胞密度になるように10%FBS含有α−MEM培地で希釈した後、48ウェルプレートに1ウェル当たり200μLずつ播種し、一晩培養した。
培養後、1%FBS含有ダルベッコMEM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表6を参照)を各ウェルに200μL添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、被験試料無添加の1%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて同様に培養した。培養終了後、各ウェルから培地を除去し、400μLのPBS(−)緩衝液にて洗浄した後、150μLのM−PER(PIERCE社製)を使用して細胞を溶解した。
このうちの100μLを使用して総グルタチオンの定量を行った。すなわち、96ウェルプレートに、溶解した細胞抽出液100μL、0.1mol/Lリン酸緩衝液50μL、2mmol/L NADPH25μL、およびグルタチオンレダクターゼ25μL(終濃度17.5unit/mL)を加え、37℃で10分間加温した後、10mmol/L 5,5'-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)25μLを加え、5分後までの波長412nmにおける吸光度を測定し、ΔOD/minを求めた。総グルタチオン濃度は、酸化型グルタチオン(和光純薬社製)を使用して作成した検量線をもとに算出した。得られた値を総タンパク量当たりのグルタチオン量に補正した後、下記式によりグルタチオン産生促進率(%)を算出した。
グルタチオン産生促進率(%)=B/A×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加における総タンパク量当たりのグルタチオン量
B:被験試料添加における総タンパク量当たりのグルタチオン量
結果を表6に示す。
表6に示すように、クプアス抽出物(試料1)は、線維芽細胞において優れたグルタチオン産生促進作用を有していると認められた。
〔試験例7〕グルタチオン産生促進作用試験(表皮角化細胞)
クプアス抽出物(試料1)について、以下のようにして、表皮角化細胞におけるグルタチオン産生促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理にて細胞を回収した。回収した細胞を1.0×105 cells/mLの細胞密度になるようにKGM培地で希釈した後、コラーゲンコートした24ウェルプレートに1ウェルあたり500μLずつ播種し、一晩培養した。
培養終了後、KGM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表7を参照)を各ウェルに400μL添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGM培地を用いて同様に培養した。培養終了後、各ウェルから培地を除去し、1mLのPBS(−)緩衝液にて洗浄した後、150μLのM−PER(PIERCE社製)を使用して細胞を溶解した。
このうちの100μLを使用して総グルタチオンの定量を行った。すなわち、96ウェルプレートに、溶解した細胞抽出液100μL、0.1mol/Lリン酸緩衝液50μL、2mmol/L NADPH25μL、およびグルタチオンレダクターゼ25μL(終濃度17.5unit/mL)を加え、37℃で10分間加温した後、10mmol/L 5,5'-dithiobis(2-nitrobenzoic acid)25μLを加え、5分後までの波長412nmにおける吸光度を測定し、ΔOD/minを求めた。総グルタチオン濃度は、酸化型グルタチオン(和光純薬社製)を使用して作成した検量線をもとに算出した。得られた値を総タンパク量当たりのグルタチオン量に補正した後、下記式によりグルタチオン産生促進率(%)を算出した。
グルタチオン産生促進率(%)=B/A×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:試料無添加における総タンパク量当たりのグルタチオン量
B:被験試料添加における総タンパク量当たりのグルタチオン量
結果を表7に示す。
表7に示すように、クプアス抽出物(試料1)は、優れたグルタチオン産生促進作用を有していると認められた。
〔試験例8〕トランスグルタミナーゼ−1産生促進作用試験
クプアス抽出物(試料1)について、以下のようにしてトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1×105 cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、2日間培養した。
培養終了後、KGM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表8を参照)を各ウェルに100μLずつ添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGM培地を用いて同様に培養した。培養終了後、培地を除去し、細胞をプレートに固定させ、細胞表面に発現したトランスグルタミナーゼ−1の量を、モノクローナル抗ヒトトランスグルタミナーゼ−1抗体を用いたELISA法により測定した。得られた測定結果から、下記式によりトランスグルタミナーゼ−1産生促進率(%)を算出した。
トランスグルタミナーゼ−1産生促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのトランスグルタミナーゼ−1量
B:試料無添加でのトランスグルタミナーゼ−1量
結果を表8に示す。
表8に示すように、クプアス抽出物(試料1)は、優れたトランスグルタミナーゼ−1産生促進作用を有していると認められた。
〔試験例9〕プロフィラグリンmRNA発現促進作用試験
クプアス抽出物(試料1)について、以下のようにしてプロフィラグリンmRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を20×104 cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、35mmシャーレに2mLずつ播種し(40×104 cells/シャーレ)、24時間培養した。
培養後に培地を除去し、KGM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表9を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGM培地を用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、プロフィラグリンおよび内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2 Step RT−PCR反応により行った。プロフィラグリンmRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりプロフィラグリンmRNA発現促進率(%)を算出した。
プロフィラグリンmRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表9に示す。
表9に示すように、クプアス抽出物(試料1)は、優れたプロフィラグリンmRNA発現促進作用を有していた。
〔試験例10〕アクアポリン3(AQP3)mRNA発現促進作用試験
クプアス抽出物(試料1)について、以下のようにしてAQP3 mRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて前培養し、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を20×104 cells/mLの細胞密度になるようにKGM培地で希釈した後、35mmシャーレに2mLずつ播種し(40×104 cells/シャーレ)、24時間培養した。
培養後に培地を除去し、KGM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表10を参照)を各シャーレに2mLずつ添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGM培地を用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、AQP3および内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2 Step RT−PCR反応により行った。AQP3 mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりAQP3 mRNA発現促進率(%)を算出した。
AQP3 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表10に示す。
表10に示すように、クプアス抽出物(試料1)は、優れたAQP3 mRNA発現促進作用を有することが確認された。
〔試験例11〕クローディン−1産生促進作用試験
クプアス抽出物(試料1)について、以下のようにしてクローディン−1産生促進作用を試験した。
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞用増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2×105 cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、96ウェルプレートに1ウェルあたり100μLずつ播種し、一晩培養した。
培養終了後、KGM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表11を参照)を各ウェルに100μLずつ添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のKGM培地を用いて同様に培養した。培養終了後、培地を除去し、細胞をプレートに固定させ、細胞表面に発現したクローディン−1の量を、ポリクローナル抗ヒトクローディン−1抗体を用いたELISA法により測定した。得られた測定結果から、下記式によりクローディン−1産生促進率(%)を算出した。
クローディン−1産生促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加でのクローディン−1量
B:試料無添加でのクローディン−1量
結果を表11に示す。
表11に示すように、クプアス抽出物(試料1)は、優れたクローディン−1産生促進作用を有していると認められた。
〔試験例12〕サーチュイン1(SIRT1)mRNA発現促進作用試験
クプアス抽出物(試料1)について、以下のようにしてSIRT1 mRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有α−MEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×105 cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、60mmシャーレに5mLずつ播種し(10×105 cells/シャーレ)、一晩培養した。培養終了後、培地を除去し、5mLのFBS不含有α−MEM培地に交換し、さらに24時間培養した。
培養終了後、培地を除去し、FBS不含有α−MEM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表12を参照)を各シャーレに5mLずつ添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のFBS不含有α−MEM培地を用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、SIRT1および内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2 Step RT−PCR反応により行った。SIRT1 mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりSIRT1 mRNA発現促進率(%)を算出した。
SIRT1 mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表12に示す。
表12に示すように、クプアス抽出物(試料1)は、優れたSIRT1 mRNA発現促進作用を有することが確認された。
〔試験例13〕リシルオキシダーゼ(LOX)mRNA発現促進作用試験
クプアス抽出物(試料1)について、以下のようにしてLOX mRNA発現促進作用を試験した。
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有α−MEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を2.0×105 cells/mLの細胞密度になるように上記培地で希釈した後、60mmシャーレに5mLずつ播種し(10×105 cells/シャーレ)、一晩培養した。培養終了後、培地を除去し、5mLのFBS不含有α−MEM培地に交換し、さらに24時間培養した。
培養終了後、培地を除去し、FBS不含有α−MEM培地に溶解した被験試料(試料1,試料濃度は下記表13を参照)を各シャーレに5mLずつ添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のFBS不含有α−MEM培地を用いて同様に培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、200ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、LOXおよび内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。検出はリアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2 Step RT−PCR反応により行った。LOX mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式によりLOX mRNA発現促進率(%)を算出した。
LOX mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:被験試料添加での補正値
B:試料無添加での補正値
結果を表13に示す。
表13に示すように、クプアス抽出物(試料1)は、優れたLOX mRNA発現促進作用を有することが確認された。
〔試験例14〕排気ガスによる角層タンパク質カルボニル化の抑制作用試験
クプアス抽出物(試料1)について、以下のようにして、排気ガスによる角層タンパク質カルボニル化の抑制作用を試験した。
非露光部である上腕内側部の角層を、角質チェッカー(アサヒバイオメッド社製)を用いてテープストリッピング法により剥離・回収した。角層が付着した角質チェッカー(サンプル)を、被験試料(試料1,試料濃度は下記表14を参照)の水溶液1mLに浸漬し、37℃で、16時間処理した。なお、コントロールとして、試料無添加の水を用いて同様に処理した。処理後、サンプルを取り出して風乾させた。次いで、チャック付きのビニール袋に採取したガソリンエンジンの排気ガスに曝露させ、室温にて24時間反応させた。なお、ブランクとして、室内空気に曝露させたサンプルも用意した。得られたサンプルについて、角層カルボニル化のレベルを以下の方法で評価した。
0.1mol/L MES(2-morpholinoethane sulfonic acid-Na)緩衝液(pH5.5)1mLにてサンプルを2回洗浄し、次いで、20μmol/L蛍光ヒドラジド(fluorescein-5-thiosemicarbazide,AnaSpec社製)を含有する0.1mol/L MES緩衝液(pH5.5)にサンプルを浸漬し、室温・遮光条件下で1時間反応させ、角層タンパク質のカルボニル基をラベル化した。反応終了後、PBS(−)緩衝液1mLで2回洗浄し、蛍光顕微鏡(オリンパスIX71,オリンパス社製)にて画像撮影した。得られた画像を画像解析ソフト(ImageJ,National Institute of Health製)を用いて解析し、角層面積あたりの蛍光輝度をカルボニル化レベルとした。得られた結果から、下記式により角層タンパク質カルボニル化抑制率(%)を算出した。
角層タンパク質カルボニル化抑制率(%)={1−(A−C)/(B−C)}×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:排気ガス処理・被験試料添加でのカルボニル化レベル
B:排気ガス処理・試料無添加(コントロール)でのカルボニル化レベル
C:排気ガス非処理・試料無添加(ブランク)でのカルボニル化レベル
結果を表14に示す。
表14に示すように、クプアス抽出物(試料1)は、排気ガスによる角層のカルボニル化を効果的に抑制した。
〔試験例15〕紫外線照射による遺伝子発現変動の抑制作用試験
アサイー抽出物(試料2)について、以下のようにして、紫外線(UVA)による遺伝子発現変動の抑制作用を試験した。
正常ヒト皮膚線維芽細胞(NB1RGB)を、10%FBS含有ダルベッコMEM培地を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。回収した細胞を1.0×105 cells/mLの細胞密度になるように2%FBS含有ダルベッコMEM培地で希釈した後、12ウェルプレートに1.0mLずつ播種し、一晩培養した。
培養終了後、培地を除去し、FBS不含有ダルベッコMEM培地に溶解した被験試料(試料2,試料濃度は下記表15を参照)を各ウェルに1.0mLずつ添加し、24時間培養した。なお、コントロールとして、試料無添加のFBS不含有ダルベッコMEM培地を用いて同様に培養した。培養後、培地を除去して1.0mLのHBSS(+)溶液に交換し、10J/cm2の紫外線(UVA)を照射した。
UVAの照射後、直ちにHBSS(+)溶液を除去してFBS不含有ダルベッコMEM培地を各ウェルに1.0mLずつ添加し、24時間培養した。培養後、培地を除去し、ISOGEN II(ニッポンジーン社製,Cat. No. 311-07361)にて総RNAを抽出し、それぞれのRNA量を分光光度計にて測定し、50ng/μLになるように総RNAを調製した。
この総RNAを鋳型とし、MMP−1(Matrix Metalloprotease-1)、IL−1α(Interleukin-1α)、COL1A1(Collagen,TypeI,α1)、および内部標準であるGAPDHについて、mRNAの発現量を測定した。なお、MMP−1およびIL−1αは、UVAの照射によりmRNA発現が上昇する遺伝子であり、一方COL1A1はUVA照射によりmRNA発現が低下する遺伝子である。mRNA発現量の検出は、リアルタイムPCR装置Smart Cycler(Cepheid社製)を用いて、TaKaRa SYBR PrimeScript RT-PCR kit(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製,code No. RR063A)によるリアルタイム2 Step RT−PCR反応により行った。各遺伝子mRNAの発現量は、「被験試料添加」および「試料無添加」にてそれぞれ培養した細胞から調製した総RNA標品を基にして、GAPDHの値で補正値を求めた。得られた値から、下記式により各遺伝子のmRNA発現変動抑制率(%)を算出した。
mRNA発現変動抑制率(%)={(A−B)−(A−C)}/(A−B)×100
式中の各項はそれぞれ以下を表す。
A:紫外線非照射・試料無添加での補正値
B:紫外線照射・試料無添加(コントロール)での補正値
C:紫外線照射・被験試料添加での補正値
結果を表15に示す。
表15に示すように、MMP−1およびIL−1αの各遺伝子において、UVA照射によるmRNA発現の上昇をアサイー抽出物(試料2)が抑制した。また、COL1A1遺伝子において、UVA照射によるmRNA発現の低下をアサイー抽出物(試料2)は抑制した。そのため、アサイー抽出物は、UVA照射により引き起こされる光老化の予防または改善に有効であることが確認された。