以下、本発明による外部共振器型半導体レーザ装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
≪第1の実施形態≫
図1は、本発明の第1の実施形態による外部共振器型半導体レーザ装置1を示す概略構成図である。ここに示される通り本実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置1は基本的に、光10を発する半導体発光素子11、共振器ミラー12、半導体発光素子11と共振器ミラー12との間に配されたコリメーターレンズ13、コリメーターレンズ13と共振器ミラー12との間に配された波長制御素子としての狭帯域バンドパスフィルター14、および半導体発光素子11を駆動する駆動回路15を有している。
また、共振器ミラー12から出射する出力光16の光路には、この出力光16を一部反射して分岐させるビームスプリッタ17が配されている。分岐された一部の出力光16は、例えばフォトダイオード等からなる光検出器18によって光量が検出される。光検出器18は、検出した光量を示す光量検出信号S1を出力し、この光量検出信号S1はマイクロコンピュータ19に入力される。
上記半導体発光素子11は一例として、レーザダイオードからなるものである。このレーザダイオードは後述の構成とされて、単体では、つまりそれ自身のみでは発振しないものであるが、発光素子としての半導体層構成は通常のレーザダイオードと基本的に同等であるので、このように「レーザダイオード」と称することとする。本実施形態では一例として窒化物半導体、つまりGaN系化合物半導体からなる、波長が488nm近辺の光10を発するレーザダイオードが適用されている。
この半導体発光素子11は、発光部となるチャンネル状の光導波路11aと、この光導波路11aの一方の端面を含む前端面11bと、光導波路11aの他方の端面を含む後端面11cとを有している。そして上記前端面11bには、半導体発光素子11が発する光10の波長に対して反射率が略0%である無反射コート11dが施されている。一方後端面11cには、上記波長に対して反射率が99.9%以上である高反射コート11eが施されている。
以上のように半導体発光素子11においては、発光部である光導波路11aを挟む1対の端面11bおよび11cのうち、前端面11bに無反射コート11dが施されていることにより、光10がこれらの端面11bおよび11cの間で共振することはない。こうして半導体発光素子11は、単体では発振しないものとされている。
他方、共振器ミラー12は前端面(半導体発光素子11と反対側の端面)12bと後端面12cとを有している。そして前端面12bには、上記波長に対して反射率が略0%である無反射コート12dが施されている。一方後端面12cには、上記波長に対して反射率が65%程度である部分反射コート12eが施されている。
半導体発光素子11および共振器ミラー12が以上のように形成されていることにより、半導体発光素子11の後端面11c(共振器ミラー12から遠い側の端面)と共振器ミラー12の後端面12cとにより、半導体発光素子11から発せられた光10を共振させる外部共振器が構成されている。
狭帯域バンドパスフィルター14は、半導体発光素子11から発せられた光10のうち、所定の狭い波長域の光だけを選択して透過させるものである。この狭帯域バンドパスフィルター14の透過特性の一例を図2に示す。ここに示す特性では、透過中心波長λcf=488nm、半値全幅(FWHM:full width at half maximum)で示す透過幅Δλf=2.0nmであるが、透過中心波長λcfは後述のようにして変更可能である。
駆動回路15は、コイル20を介して半導体発光素子11に直流電流を供給する直流電流源21、コイル20と半導体発光素子11との間にコンデンサ22を介して接続された発振器23、および制御回路24を有している。この制御回路24は、前述のマイクロコンピュータ19が出力する制御信号S2に基づいて直流電流源21および発振器23の動作を制御する。
以下、上記構成を有する外部共振器型半導体レーザ装置1の動作について説明する。直流電流源21からは、所定の値の直流電流が発せられる。図1のA点を流れるこの直流電流の概略波形を図3のAに示す。また発振器23からは、一例として周波数が100MHz〜350MHz程度の範囲内にあるサイン波形の高周波電流が発せられる。図1のB点を流れるこの高周波電流の概略波形を図3のBに示す。この高周波電流はコンデンサ22を通過した後、コイル20を経た上記直流電流に重畳される。したがって半導体発光素子11には、高周波電流が重畳された駆動電流が印加される。図1のC点を流れるこの駆動電流の概略波形を図3のCに示す。
半導体発光素子11は上記駆動電流を受けて、発散光状態の光10を発する。この光10はコリメーターレンズ13によって平行光とされ、狭帯域バンドパスフィルター14を透過して共振器ミラー12に入射する。この光10は、前述したように半導体発光素子11の後端面11cと、共振器ミラー12の後端面12cとで構成される外部共振器において共振する。こうして共振器内のエネルギーが高められることにより、半導体発光素子11において誘導放出がなされ、発振したレーザ光が得られる。このレーザ光は一部が共振器ミラー12を透過して、出力光16として共振器外に取り出される。
レーザ光である出力光16の概略波形を図3のDに示す。ここに示される通り出力光16の光出力は、前述したように高周波が重畳された半導体発光素子11の駆動電流に対応して、周期的に増減するものとなっている。こうして半導体発光素子11は、高速変調駆動される。なお、図3のDに示す出力光16の光出力波形は、基本的には、図3のCに示す駆動電流波形と同じものとなる。より正確に言えば、出力光16の光出力波形は半導体発光素子11の光出力特性も反映したものとなるから、厳密には駆動電流波形と一致しないが、図3では一致した状態に示している。
出力光16は、ビームスプリッタ17において一部が反射して分岐され、残余はビームスプリッタ17を透過して利用光とされる。なお、ビームスプリッタ17の反射率は例えば10%程度とされるが、それに限られるものではない。分岐された出力光16は光検出器18に入射し、その光量が光検出器18によって検出される。光検出器18が出力する光量検出信号S1は、マイクロコンピュータ19に入力される。マイクロコンピュータ19はこの光量検出信号S1に基づいて制御回路24の動作を制御する。すなわち、光量検出信号S1が設定値よりも大であれば(つまり検出光量が目標値よりも大であれば)、直流電流源21が発する直流電流の値を低下させ、反対に光量検出信号S1が設定値よりも小であれば(つまり検出光量が目標値よりも小であれば)、直流電流源21が発する直流電流の値を増大させるように、制御回路24の動作が制御される。それにより、出力光16の光出力(平均値)が、所望の一定値に維持されるようになる。
ここで、レーザ光である出力光16の波長は、狭帯域バンドパスフィルター14によって選択される。つまり本実施形態では、図2に示したような透過特性を有する狭帯域バンドパスフィルター14によって光10の波長が選択され、その波長選択された光10が外部共振器から半導体発光素子11に帰還される。それにより、発振する光10の、つまりは出力光16の波長が比較的狭い範囲に限定される。
狭帯域バンドパスフィルター14の透過特性は、外部共振器内の光軸に対して斜めに配置されているこの狭帯域バンドパスフィルター14を、光軸に対して入射角が変化する方向に回転させることにより変えることができる。こうして狭帯域バンドパスフィルター14の透過特性を変えて、この狭帯域バンドパスフィルター14による選択波長を変えることにより、出力光16の波長を所望値に設定可能となる。なお、狭帯域バンドパスフィルター14を上述のように回転させた後、回転不可能となるように狭帯域バンドパスフィルター14を固定すれば、出力光16の波長を安定させることができる。
次に、本実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置1が奏する効果について説明する。この効果を確認するために、本実施形態の中で、下記の仕様とした外部共振器型半導体レーザ装置を作成した。これを以下、実施例1と称する。
(実施例1)
(1)半導体発光素子11の仕様
・利得が存在する帯域:470nm〜495nm
・前端面11bの反射率:略0%
・後端面11cの反射率:99.9%以上
(2)共振器ミラー12の仕様
・前端面12bの反射率:略0%
・後端面12cの反射率:65.0%
(3)狭帯域バンドパスフィルター14の仕様
・透過特性:基本的に図2の通り。ただし、回転により透過中心波長λcfを変更可能。
(4)ビームスプリッタ17の仕様
・反射率:10.0%
(5)半導体発光素子11の駆動電流
・直流電流に高周波重畳。高周波の周波数=100MHz。
また、実施例1の外部共振器型半導体レーザ装置1と比較するために、比較例1〜4の外部共振器型半導体レーザ装置を作成した。それらの比較例1〜4の主要な構成を、外部共振器型半導体レーザ装置1の構成と比較して表1に示す。
なお、表1に特記してある点以外の比較例1〜4の構成は、基本的に実施例1の外部共振器型半導体レーザ装置1と同じである。上記表1において、「駆動」の欄の「DC」は、高周波重畳されていない直流電流で半導体発光素子11を駆動していることを示している。また「波長制御素子」の欄の「なし」は、波長選択する波長制御素子が設けられていないことを、「BPF」は波長選択する波長制御素子として狭帯域バンドパスフィルターが適用されていることを、「プリズム」は波長選択する波長制御素子としてアナモルフィックプリズム対が適用されていることを示している。なお、このアナモルフィックプリズム対を用いるレーザ光の波長選択については、例えば特開2015−56469号公報に記載がなされている。また、「外部共振器」の欄の「なし」は、外部共振器を設けずに、半導体発光素子として単体で発振可能なレーザダイオードを用いていることを示している。
まず、実施例1の外部共振器型半導体レーザ装置1における縦モードについて説明する。この外部共振器型半導体レーザ装置1の半導体発光素子11を、駆動電流の値(平均値)を7通りに変えて駆動した際の出力光16のスペクトラムを図4に示す。この図4は、光スペクトラムアナライザーの表示画面を写真に撮影したものである。なおこのスペクトラムの測定に当たっては、狭帯域バンドパスフィルター14の透過特性を、前述したように該フィルター14を回転させることにより、透過中心波長λcfが482nm近辺となるように設定した。
図4に示す画面101、102、103、104、105、106および107はそれぞれ、半導体発光素子11の光出力が3mW、9.8mW、15.4mW、26mW、39mW、49mWおよび61.6mWとなるように該半導体発光素子11の駆動電流を変えた各場合のスペクトラムを示している。各画面では、横軸が波長を、縦軸が光出力を示している。この図4より、実施例1の外部共振器型半導体レーザ装置1では、縦モードがマルチモードになっていることが分かる。また実施例1の外部共振器型半導体レーザ装置1では、例えばCCD撮像素子を備えたモードフィールド測定器により、横モードもシングルモードになっていることが確認された。
図5は、上記7通りの各場合における、出力光16の中心波長λcおよび、中心波長λcを取るスペクトラムの波長幅Δλを示すグラフである。ここに示す中心波長λcは、いわゆるPk-XdB法で、X=10として規定したものである。すなわち、スペクトラムの最大ピーク値から10dB減衰したベースラインで切られるスペクトラムの点aおよびbの間を波長幅Δλとし、点aおよびbの中間点の波長を中心波長λcとする。なお上記波長幅Δλは、一般にFWTM(full width at tenth maximum)と言われる波長全幅である。
この図5に示される通り、実施例1においては、半導体発光素子11の駆動電流が上記範囲で増減しても、出力光16の中心波長λcは482.3nm近辺で安定していることが分かる。具体的にこの中心波長λcの変動は、±0.1nmの範囲に収まっている。また、波長幅Δλ(FWTM)は0.35nm〜0.6nmの範囲に収まっている。
それに対して、比較例1の外部共振器型半導体レーザ装置(高周波が重畳されない直流電流で半導体発光素子が駆動され、波長制御素子および外部共振器を持たない点以外は、実施例1の外部共振器型半導体レーザ装置1と同様の構成とされた装置)においては、駆動電流を実施例1の場合と同じように増減させた場合、レーザ光の中心波長λcは最大で1.5nm変動した。またこの場合、波長幅Δλ(FWTM)は0.98nm〜1.6nmの値を取った。
また、比較例2の外部共振器型半導体レーザ装置(波長制御素子および外部共振器を持たない点以外は、実施例1の外部共振器型半導体レーザ装置1と同様の構成とされた装置)においては、駆動電流を実施例1の場合と同じように増減させた場合、レーザ光の中心波長λcは最大で1.2nm変動した。またこの場合、波長幅Δλ(FWTM)は2.4nm〜3.13nmの値を取った。
また、比較例3の外部共振器型半導体レーザ装置(波長制御素子としてアナモルフィックプリズム対が適用されている点以外は、実施例1の外部共振器型半導体レーザ装置1と同様の構成とされた装置)を、半導体発光素子の駆動電流を変えることにより、光出力が5.8mW〜89mWの間で17通りに変化するように駆動し、それらの各場合についてレーザ光の中心波長λcおよび、波長幅Δλ(FWTM)を測定した。なおこの波長幅Δλ(FWTM)も、中心波長λcを取るスペクトラムにおける1/10幅である。この測定の結果を図6に示す。
図6に示される通り、比較例3の外部共振器型半導体レーザ装置においては、駆動電流の増減に応じて、レーザ光の中心波長λcは1.0nm以上変動した。またこの場合、波長幅Δλ(FWTM)は0.01nm〜0.7nmの値となった。なお、0.01nmの値は、波長測定器の測定限界である。
以上より、実施例1の外部共振器型半導体レーザ装置1は比較例1〜3の各外部共振器型半導体レーザ装置と比べて、駆動電流が増減したときのレーザ光の中心波長λcの変動が小さく、また波長幅Δλ(FWTM)も小さい上にそれらの変動も小さいことが分かる。
次に、実施例1の外部共振器型半導体レーザ装置1の光出力特性について説明する。この光出力特性を測定した結果を図7に示す。この図7において横軸の合計電流Iは、直流電流と高周波電流(平均電流で換算)とを合計した電流値を示す。この図7より、合計電流Iが増減した際に、それに応じて光出力が滑らかに変化することが分かる。
それに対して、比較例4の外部共振器型半導体レーザ装置、つまり高周波重畳を行わないで直流電流で駆動される以外は、実施例1の外部共振器型半導体レーザ装置1と同様とされた外部共振器型半導体レーザ装置の光出力特性を測定した結果を図8に示す。この図8において横軸の電流IDCは、半導体発光素子11に印加される直流電流の値である。この図8より、比較例4においては、直流電流IDCが増減した際に光出力は滑らかに変化しないことが分かる。
比較例1〜3の装置のように、駆動電流の増減によってレーザ光の中心波長λcが大きく変動する外部共振器型半導体レーザ装置を、波長依存性が有る対象物に関する計測や検査等を行う装置に光源として適用すると、中心波長λcの変動のために計測結果や検査結果が変わってしまう。したがって、そのような外部共振器型半導体レーザ装置は、波長依存性が有る対象物に関する計測や検査等を行う装置に適用するには、計測や検査等の精度を高く確保する上で不向きなものとなる。それに対して実施例1の外部共振器型半導体レーザ装置1は、駆動電流が増減してもレーザ光の中心波長λcの変動が小さく抑えられるものであるので、波長依存性が有る対象物に関する計測や検査等を行う装置にも好適に用いられ得る。
次に、本実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置1におけるノイズ量に関して説明する。図9は、実施例1の外部共振器型半導体レーザ装置1が発する出力光16のノイズ特性を示すものである。同図においては、横軸が出力光16の光出力を、縦軸が光出力に対するノイズの比率(%rms:二乗平均平方根の百分率)を示している。なおこの特性の測定に当たっては、カットオフ周波数が20MHzであるローパスフィルタ特性を有する光検出器により出力光16を検出した。この図9より、実施例1の外部共振器型半導体レーザ装置1では、光出力の増減に従って連続的にノイズが増減することが分かる。これは、実施例1の外部共振器型半導体レーザ装置1では、周波数100MHzで高周波重畳を行っていることにより、光出力が増減しても光スペクトルが安定して発振しているためと考えられる。
それに対して、比較例1の外部共振器型半導体レーザ装置に対して同様の測定を行った結果を図10に示す。この図10より、比較例1の外部共振器型半導体レーザ装置では、光出力が概ね40mW以下の領域において、光出力の増減に伴ってノイズ量が大きく変動することが分かる。これは、高周波重畳を行わない場合は、スペクトルが不安定で縦モードの数が大きく変動し、その結果、ノイズが大きく変動するものと考えられる。
以上説明した第1の実施形態では、GaN系化合物半導体からなる、波長(ゲインピーク波長)が488nm近辺の光10を発するレーザダイオードが適用されている。このレーザダイオードは、例えばGaAs系の赤色レーザダイオード等とは異なり、直流電流駆動した場合の発振スペクトルの幅が広く、マルチ縦モード発振する。さらに、戻り光のノイズ低減のために高周波重畳駆動した場合は、上記のことがより顕著となる。そのため、GaN系化合物半導体からなるレーザダイオードを用いる場合は、発振波長が安定していて、かつ発振波長幅が狭い光源を構成するのは非常に困難となっていた。この傾向は、GaN系化合物半導体からなる、488nm以外の波長の光を発するレーザダイオードにおいても認められている。
そこで、488nm以外の波長として、例えば370nm、405nm、445nm、473nm、530nmの光を発するGaN系化合物半導体からなるレーザダイオードを用い、その他の構成は第1の実施形態と同様とした5種の外部共振器型半導体レーザ装置を作製して、発振波長の安定性を調べたところ、基本的に第1の実施形態におけるのと同様の効果が得られることが分かった。以上より、GaN系化合物半導体からなるレーザダイオードを用いる場合に本発明を適用することは、波長に拘わらず、発振波長を安定させる上で特に効果的であると言える。
また本実施形態では、半導体発光素子11として、単体では発振しないレーザダイオードを適用しているが、単体で発振する半導体発光素子を適用した場合も、基本的に第1の実施形態におけるのと同様の効果が得られることを確認した。具体的には、図1に示した半導体発光素子11の前端面11bに、この半導体発光素子11が発する光の波長に対して反射率が10%、20%、30%であるコートを施して該素子11単体でも発振可能とし、その他の構成は第1の実施形態と同様とした3種の外部共振器型半導体レーザ装置を作製して、発振波長の安定性を調べたところ、基本的に第1の実施形態におけるのと同様の効果が得られることが分かった。なお上記の場合は、半導体発光素子であるレーザダイオードの両端面からなる共振器と外部共振器とにより、複合共振器が構成される。
以上説明した本実施形態では、直流電流源21が発する直流電流の値を、高周波電流の振幅の1/2に設定している。それにより、高周波重畳された半導体発光素子11の駆動電流は、最低値(ボトム値)を0(ゼロ)値として周期的に増減するものとなっている。しかしそれに限らず、直流電流源21が発する直流電流の値を、高周波電流の振幅の1/2よりも大きい値に設定して、高周波重畳後の駆動電流の最低値が+(プラス)の値になるようにしても構わない。
なお、直流電流源21が発する直流電流の値を、高周波電流の振幅の1/2よりも小さい値に設定すると、高周波重畳後の駆動電流が+(プラス)の値と−(マイナス)の値を交互に取るようになる。本実施形態のように半導体発光素子11としてレーザダイオードを適用する場合、レーザダイオードには常に+か、あるいは常に−の電流が流れるようにすることが必要であるので、高周波重畳後の駆動電流が上述のように+の値と−の値を交互に取ることは避けなければならない。この点は、高周波重畳前の直流電流の値を、後述する第4あるいは第5の実施形態におけるように連続的に変化させる場合は、特に注意する必要がある。
なお、半導体発光素子11として用いられるレーザダイオードとは逆方向にツェナーダイオードを接続しておくと、万一サージ電流が入った場合等には、より安全となる。なお、上記の「逆方向に接続」とは、レーザダイオードのp−nジャンクションに対して、ツェナーダイオードのジャンクション方位をn−pとして両者を並列に接続することを意味する。
≪第2の実施形態≫
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図11は、本発明の第2の実施形態による外部共振器型半導体レーザ装置2を示す概略構成図である。なおこの図11において、図1に示したものと同等の要素には同じ参照番号を付してあり、それらについては特に必要の無い限り説明を省略する(以下、同様)。
本実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置2は、図1に示した第1の実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置1と比べると基本的に、制御回路24とは異なる制御回路224が用いられている点で相違している。すなわち、この制御回路224は、信号レベルが所定のレベルに立ち上がるオン(ON)期間と、信号レベルが0(ゼロ)レベルであるオフ(OFF)期間とが繰り返すデジタル信号からなる外部コントロール信号S3を発するものとされている。図11のAo点を流れるこの外部コントロール信号S3の概略波形を図12のAに示す。
上記外部コントロール信号S3は、直流電流源21と発振器23に入力される。直流電流源21は外部コントロール信号S3が入力されると、この外部コントロール信号S3と同じ波形の電流を発する。つまり、図11のA点を流れる電流の波形は、基本的に図12のAに示す波形となる。
一方、発振器23は外部コントロール信号S3が入力されると、サイン波形の高周波電流を発する。この高周波電流のレベルは、外部コントロール信号S3の出力レベルに対応したものとなっている。つまり、図11のB点を流れる信号の波形は、図12のBに示す波形となる。
コイル20を経た電流、つまり図11のA点を流れる電流は、コンデンサ22を通過した上記高周波電流にバイアス電流として足される。そこで図11のC点を流れる電流は、マイナス電流分が無くなりプラス電流の波形となる。図11のC点を流れるこの駆動電流の概略波形を図12のCに示す。したがって半導体発光素子11には、周期的にON−OFFする駆動電流が印加される。
半導体発光素子11は上記駆動電流を受けて、光10を発する。そして図1の外部共振器型半導体レーザ装置1におけるのと同様にして、発振したレーザ光が得られる。このレーザ光は一部が共振器ミラー12を透過して、出力光16として共振器外に取り出される。出力光16の概略波形を図12のDに示す。ここに示される通り出力光16は、半導体発光素子11の駆動電流のON−OFF波形に対応して、断続的にパルス状に発せられる。そして出力光16の各発光期間においてその光出力は、上記高周波電流の波形に対応して、周期的に増減するものとなっている。
以上のようにして本実施形態では、出力光16の光出力を、外部コントロール信号S3に基づいてデジタル変調することが可能になっている。このようなデジタル変調は、例えば画像記録や画像表示等のためのパルス幅変調やパルス数変調に適用することができる。そして本実施形態においても、パルス光となる出力光16が高周波重畳駆動により高速変調されるので、この高速変調による効果が第1の実施形態におけるのと同様に得られることになる。
ここで、半導体発光素子11の駆動電流に重畳される高周波電流の周波数と、外部コントロール信号S3の周波数との関係について説明する。なお、ここでは、外部コントロール信号S3はON期間とOFF期間が同じで、周波数一定でON−OFFする信号であるとして説明する。上記高周波電流の周波数は、外部コントロール信号S3の周波数の2倍以上であることが望ましい。つまり、そうでなければ、外部コントロール信号S3の1つのON期間の中に、1周期の高周波信号が存在し得なくなり、ひいては、出力光16の1つの発光期間内でその光出力が最低1周期増減することが不可能になるからである。
特に、断続的に発せられるパルス状の出力光16が画像記録に利用されて、複数のパルス状の出力光16で画素1ドットが記録されるような場合は、高周波電流の周波数が外部コントロール信号S3の周波数の2倍よりさらに高いことが望ましい。
≪第3の実施形態≫
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図13は、本発明の第3の実施形態による外部共振器型半導体レーザ装置3を示す概略構成図である。本実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置3は、図11に示した第2の実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置2と比べると基本的に、発振器23とは異なる発振器323が用いられている点、直流電流源21の代わりに変調信号源321が用いられている点、そしてコンデンサ22と半導体発光素子11との間にミキサー300が配置されている点で相違している。なお、この構成において、図11に示したコイル20は不要となっている。
上記変調信号源321は、外部コントロール信号S3を受けると電圧信号である変調信号を出力し、この変調信号はミキサー300に入力される。この変調信号の波形を、図14のAに示す。なお本実施形態では、図11に示した第2の実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置2におけるものと同様の制御回路224が用いられている。この制御回路224から出力されて図13のAo点を流れる外部コントロール信号S3の概略波形を、図14のAに示す。つまり、図13のA点を流れる変調信号の波形は、基本的に上記外部コントロール信号S3の波形と同じものとなる。
一方発振器323は、信号レベルが所定のレベルに立ち上がるオン(ON)期間と、信号レベルが0(ゼロ)レベルであるオフ(OFF)期間とが繰り返すパルス電流を発するものとされている。図13のB点を流れるこのパルス電流の概略波形を図14のBに示す。
上記パルス電流はコンデンサ22を通過した後、ミキサー300において、変調信号源321から出力された上記変調信号に基づいて変調される。それにより半導体発光素子11には、外部コントロール信号S3が立ち上がっている期間のみ、上記パルス電流からなる駆動電流が印加される。図13のC点を流れるこの駆動電流の概略波形を図14のCに示す。
半導体発光素子11は上記駆動電流を受けて、光10を発する。そして図1の外部共振器型半導体レーザ装置1におけるのと同様にして、発振したレーザ光が得られる。このレーザ光は一部が共振器ミラー12を透過して、出力光16として共振器外に取り出される。出力光16の概略波形を図14のDに示す。ここに示される通り出力光16は、半導体発光素子11の駆動電流のパルス波形に対応して、パルス状に発せられる。
以上のようにして本実施形態では、出力光16の光出力を、外部コントロール信号S3に基づいてデジタル変調することが可能になっている。このようなデジタル変調は、例えば画像記録や画像表示等のためのパルス幅変調やパルス数変調に適用することができる。そして本実施形態においても、出力光16がパルス状に高速変調されるので、この高速変調による効果が第2の実施形態におけるのと同様に得られることになる。
≪第4の実施形態≫
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図15は、本発明の第4の実施形態による外部共振器型半導体レーザ装置4を示す概略構成図である。本実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置4は、図1に示した第1の実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置1と比べると基本的に、制御回路24とは異なる制御回路424が用いられている点で相違している。すなわち、この制御回路424は、サイン波形のアナログ信号からなる外部コントロール信号S4を発するものとされている。図15のAo点を流れるこの外部コントロール信号S4の概略波形を図16のAに示す。
上記外部コントロール信号S4は、直流電流源21と発振器23に入力される。直流電流源21は外部コントロール信号S4が入力されると、この外部コントロール信号S4と基本的に同じ波形の直流電流を発する。つまり、図15のA点を流れる直流電流の波形は、図16のAに示す波形となる。
一方、発振器23は外部コントロール信号S4が入力されると、サイン波形の高周波電流を発する。この高周波電流のレベルは、外部コントロール信号S4の出力レベルに対応したものとなっている。つまり、図15のB点を流れる信号の波形は、図16のBに示す波形となる。
コイル20を経た電流信号、つまり図15のA点を流れる電流は、コンデンサ22を通過した上記高周波電流にバイアス電流として足される。そこで図15のC点を流れる電流は、マイナス電流分が無くなりプラス電流の波形となる。図15のC点を流れるこの駆動電流の概略波形を図16のCに示す。したがって半導体発光素子11には、外部コントロール信号S4に倣って振幅変調された、高周波電流からなる駆動電流が印加される。図15のC点を流れるこの駆動電流の概略波形を図16のCに示す。
半導体発光素子11は上記駆動電流を受けて、光10を発する。そして図1の外部共振器型半導体レーザ装置1におけるのと同様にして、発振したレーザ光が得られる。このレーザ光は一部が共振器ミラー12を透過して、出力光16として共振器外に取り出される。出力光16の概略波形を図16のDに示す。ここに示される通り出力光16は、上記高周波電流の波形に対応して周期的に発光し、そして各発光において、半導体発光素子11の駆動電流の振幅変調波形に対応して光出力が変わるものとなっている。
以上のようにして本実施形態では、出力光16の光出力を、外部コントロール信号S4に基づいてアナログ変調することが可能になっている。このようなアナログ変調は、例えば画像記録や画像表示等のための光強度変調に適用することができる。そして本実施形態においても、強度変調される出力光16が高周波電流に基づいて高速変調されるので、この高速変調による効果が第1の実施形態におけるのと同様に得られることになる。
なお本実施形態において、外部コントロール信号S4はサイン波形のものとされているが、それ以外の波形とされても構わない。
≪第5の実施形態≫
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図17は、本発明の第5の実施形態による外部共振器型半導体レーザ装置5を示す概略構成図である。本実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置5は、図13に示した第3の実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置3と比べると基本的に、変調信号源321とは異なる変調信号源521が用いられ、また、制御回路224とは異なる制御回路424が用いられている点で異なるものである。なお、上記制御回路424は図15に示したものと基本的に同じものである。
上記変調信号源521は、外部コントロール信号S4を受けると電圧信号である変調信号を出力し、この変調信号はミキサー300に入力される。この変調信号の波形を、図18のAに示す。
一方、発振器323は図13に示したものと同様のもので、信号レベルが所定のレベルに立ち上がるオン(ON)期間と、信号レベルが0(ゼロ)レベルであるオフ(OFF)期間とが繰り返すパルス電流を発するものとされている。図17のB点を流れるこのパルス電流の概略波形を図18のBに示す。制御回路424から出力されて図17のAo点を流れる外部コントロール信号S4の概略波形を、図18のAに示す。つまり、図17のA点を流れる電流の波形は、基本的に外部コントロール信号S4の波形と同じものとなっている。
上記パルス電流はコンデンサ22を通過した後、ミキサー300において、変調信号源521から出力された上記変調信号に基づいて変調される。すなわち、このパルス電流は、上記変調信号の波形を包絡線とするように振幅変調される。それにより半導体発光素子11には、外部コントロール信号S4に倣って振幅変調された、パルス電流からなる駆動電流が印加される。図17のC点を流れるこの駆動電流の概略波形を図18のCに示す。
半導体発光素子11は上記駆動電流を受けて、光10を発する。そして図1の外部共振器型半導体レーザ装置1におけるのと同様にして、発振したレーザ光が得られる。このレーザ光は一部が共振器ミラー12を透過して、出力光16として共振器外に取り出される。出力光16の概略波形を図18のDに示す。ここに示される通り出力光16は、上記パルス電流の波形に対応して周期的に発光し、そして各発光において、半導体発光素子11の駆動電流の振幅変調波形(上記包絡線)に対応して光強度が変わるものとなっている。
以上のようにして本実施形態では、出力光16の光強度を、外部コントロール信号S4に基づいて変調することが可能になっている。そして、このように強度変調される出力光16がパルス電流に基づいて高速変調されるので、この高速変調による効果が第1の実施形態におけるのと同様に得られることになる。
次に、本発明の外部共振器型半導体レーザ装置におけるコヒーレント長等について説明する。図19および図20は、本発明による外部共振器型半導体レーザ装置、特に詳しくは先に述べた実施例1としての外部共振器型半導体レーザ装置について、コヒーレント長Lcおよび発振波長幅Δλ(FWTM)を測定した結果を示すものである。
なお図19は、狭帯域バンドパスフィルター14として、図2に示す透過特性を有するもの(透過幅Δλf=2.0nm)を用いた場合の測定結果を示している。一方図20は、狭帯域バンドパスフィルター14として、図2に示す透過特性とは透過幅Δλfだけが異なるもの(透過幅Δλf=5.0nm)を用いた場合の測定結果を示している。そして各図においては、高速変調の周波数を100MHz、200MHz、290MHzとした場合の測定結果を示すと共に、比較のために、通常の半導体レーザに関する測定結果を最も右側に併せて示している。ここで、上記通常の半導体レーザとは、外部共振器は持たずにそれ自身で発振可能で、直流駆動され、発振波長(中心波長)が488nm、縦モードがマルチモードの半導体レーザである。
通常の半導体レーザは、本発明の外部共振器型半導体レーザ装置と比べると、発振波長幅Δλが広く、つまり中心波長が変動しやすく、さらにコヒーレント長Lcも長くて干渉性が高いものとなっている。これらの点から、通常の半導体レーザは扱い難い面を有していると言える。具体的には、干渉、スペックルにより、レーザ光を検出器で受光したときの検出データの値が変動したり、レーザ光のビーム強度分布パターンが凸凹に乱れたりする。
それに対して本発明の外部共振器型半導体レーザ装置は、発振波長幅Δλが狭く、また外部共振器と波長制御素子(狭帯域バンドパスフィルター14)とにより発振波長をロックしているので、中心波長が変動し難く安定している。さらに本発明の外部共振器型半導体レーザ装置は、コヒーレント長Lcが数mm程度と短くて干渉性が低い。これらの点から、本発明の外部共振器型半導体レーザ装置は扱い易いものであると言える。具体的には、レーザ光を検出器で受光したときの検出データの値が安定する。また、レーザ光のビーム強度分布パターンが円滑なものとなるので、例えばビーム径の計測がより正確になされるようになる。
上述した通り本発明の外部共振器型半導体レーザ装置は、コヒーレント長Lcが数mm程度と短いため、干渉による不具合が低減された発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)のような性質を有する。また本発明の外部共振器型半導体レーザ装置は、発振波長幅Δλが狭くて単色性が良いことから、通常の半導体レーザと同様に、出力したレーザ光が回折限界まで絞れるという特徴を有する。
さらに、発光ダイオードでは出力が10mW程度に留まるのに対して、本発明の外部共振器型半導体レーザ装置は通常の半導体レーザと同様に、100mW以上の出力を得ることも可能である。
以上説明した通り、第1〜第5の実施形態では半導体発光素子11として窒化物半導体からなるレーザダイオードが適用されているが、本発明の外部共振器型半導体レーザ装置に用いられる半導体発光素子はこれに限られるものではない。また、半導体発光素子11として窒化物半導体からなるレーザダイオードが適用される場合も、上記の波長を発するものに限らず、波長が370nm〜530nm程度の光10を発する窒化物半導体からなるレーザダイオードを適宜用いることができる。
また、上述のようなレーザダイオードとして、横モードがマルチモードである比較的高出力タイプのレーザダイオードを用いることも可能である。さらにその他、波長が445nm程度のレーザ光を発する窒化物半導体からなるレーザダイオードを励起源として用い、このレーザ光により、Pr3+がドープされた例えばLiYF結晶等の固体レーザ媒質を励起するようにしたレーザダイオード励起固体レーザ等において、励起源としてのレーザダイオードに本発明を適用することも可能である。
一方、本発明の外部共振器型半導体レーザ装置に用いられる波長制御素子も、前述した狭帯域バンドパスフィルターに限られるものではなく、例えばVBG(Volume Bragg Grating)やプリズムペア、さらには狭帯域バンドパスフィルターとプリズムペアとを共振器内光路に直列に配置してなるもの等、その他の公知の素子も適宜利用可能である。
また、以上説明した第1〜第5の実施形態では、共振器ミラー12の後端面12cに部分反射コート12eが施されて、この後端面12cと半導体発光素子11の後端面11cとで外部共振器が構成されているが、共振器ミラー12の前端面12bに部分反射コートが施されて、この前端面12bと半導体発光素子11の後端面11cとで外部共振器が構成されるようにしてもよい。その点は、以下に説明する第6の実施形態以降の実施形態においても同様である。
≪第6の実施形態≫
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。図21は、本発明の第6の実施形態による外部共振器型半導体レーザ装置6を示す概略構成図である。本実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置6は、図1に示した外部共振器型半導体レーザ装置1と比べると基本的に、外部共振器の光路に共焦点光学系が配置されている点で相違する。なおこの基本的な相違点は、後に説明する第7および第8の実施形態でも同様である。
すなわち本第6の実施形態においては、半導体発光素子11の後端面11c(共振器ミラー12から遠い側の端面)と共振器ミラー12の後端面12cとにより、半導体発光素子11から発せられた光10を共振させる外部共振器が構成されている。そしてこの外部共振器の光路内に、前述したものと同様のコリメーターレンズ13、および集光レンズ61からなる共焦点光学系が配されている。コリメーターレンズ13は半導体発光素子11から発せられた光10を平行光化すると共に、共振器ミラー12から半導体発光素子11に戻る光10を集光して、半導体発光素子11の前端面(本発明における他端面)11b上において焦点を結ばせる。また集光レンズ61は、光10を集光して共振器ミラー12の後端面12cにおいて焦点を結ばせると共に、この後端面12cで反射した光10を平行光化する。共振器ミラー12の後端面12cを透過して発散光状態となった光10は、コリメーターレンズ62によって平行光化される。
上記コリメーターレンズ13と集光レンズ61との間の光10の光路には、図1に示した狭帯域バンドパスフィルター14と基本的に同様の狭帯域バンドパスフィルター63が配置されている。この狭帯域バンドパスフィルター63による作用および効果は、狭帯域バンドパスフィルター14による作用および効果と基本的に同様である。
なお、前述した通り、共振器ミラー12の前端面12bに部分反射コートが施されて、この前端面12bと半導体発光素子11の後端面11cとで外部共振器が構成されてもよい。その構成では、光10が共振器ミラー12の前端面12bで反射して共振することになる。その場合の共焦点光学系は、集光レンズ61が光10を集光して上記前端面12cにおいて焦点を結ばせるように構成される。共焦点光学系をそのように構成してもよいことは、後に説明する第7および第8の実施形態でも同様である。
また本第6の実施形態においては、図1に示したものと同様の構成により、半導体発光素子11が高周波重畳駆動される。しかし、半導体発光素子11を高速変調駆動するためには、図1に示した構成に限らず、その他の構成、例えば図11、13、15あるいは17に示される構成が適用されてもよい。この点は、後に説明する第7および第8の実施形態でも同様である。
本第6の実施形態において半導体発光素子11としては、一例として、発した光10を自身では共振させない構造のものが用いられている。しかし、上述のような共焦点光学系が配置される場合は、発した光10を自身で共振させる構造を有する半導体発光素子が用いられてもよい。
次に、この外部共振器型半導体レーザ装置6の縦モードに関して、該装置6の一例について説明する。なおこの例における半導体発光素子11、共振器ミラー12および狭帯域バンドパスフィルター63の仕様は、前述した第1の実施形態の実施例1における仕様と基本的に同じである(狭帯域バンドパスフィルター63については、狭帯域バンドパスフィルター14と対比)。また半導体発光素子11の駆動電流も上記実施例1と同様、直流電流に高周波重畳した電流であるが、ここでは高周波の周波数=200MHzである。
この外部共振器型半導体レーザ装置6の半導体発光素子11を、駆動電流の値(平均値)を8通りに変えて駆動した際の出力光16のスペクトラムを図22〜図29に示す。これらの図は、先に述べた図4と同様、光スペクトラムアナライザーの表示画面を写真に撮影したものである。また、それらの図に示す画面201、202、203、204、205、206、207および208はそれぞれ、半導体発光素子11の光出力が10mW、20mW、30mW、40mW、50mW、60mW、70mWおよび80mWとなるように該半導体発光素子11の駆動電流を8通りに変えた各場合のスペクトラムを示している。各画面では、横軸が波長を、縦軸が光出力(相対値)を示している。これらの図22〜図29より、この外部共振器型半導体レーザ装置6においては、光出力を10mW〜80mWの間で変化させても、出力光16のスペクトラムの変化が小さいことが分かる。
図30は、上記8通りの各場合における、出力光16の中心波長λcおよび、中心波長λcを取るスペクトラムの波長幅Δλを示すグラフである。この図30における表示の仕方は、先に説明した図5における表示の仕方と基本的に同様である。この図30に示される通り、この例においては、光出力が10mWと80mWとの間で増減しても、中心波長λcは0.1nm程度しか変動しない。また、波長幅Δλ(FWTM)の変化も、最大で0.15nm程度であり、狭い波長範囲での発振が維持される。
次に、上記8通りの各場合におけるノイズ量に関して説明する。図31は、上記8通りの各場合における出力光16のノイズ特性を示すものである。この図31における表示の仕方は、前述した図9における表示の仕方と基本的に同じである。また、ノイズ特性の測定方法も、図9に示すノイズ特性を測定した場合の測定方法と基本的に同じである。この図31に示される通り、本例の外部共振器型半導体レーザ装置6においては、光出力が10mWと80mWとの間で増減してもノイズの変動は小さく、そして光出力に対するノイズの比率は0.4%rmsと低い値に収束する。
次に図32〜図38を参照して、上記8通りの中から、光出力が10mWである場合を除いた、7通りの各場合においてコヒーレント長Lcを測定した結果について説明する。この測定は、外部共振器型半導体レーザ装置6からの出力光16を2系統に分岐させ、分岐された2つの出力光16間の干渉強度を求め、その干渉強度に基づいてコヒーレント長Lcを求めるものである。
図32〜図38は、上記干渉強度を求めた干渉計の表示画面を写真に撮影したものである。それらの図に示す画面301、302、303、304、305、306および307はそれぞれ、半導体発光素子11の光出力が20mW、30mW、40mW、50mW、60mW、70mWおよび80mWとなるように該半導体発光素子11の駆動電流を変えた各場合の干渉強度測定結果を示している。各画面では、縦軸が干渉強度(相対値)を示している。また横軸は、上記2系統の出力光16を検出する2つのポート間の距離(これは、2系統の出力光16の光路長差に対応する)を示している。このポート間の距離は、各図において横軸最左端がゼロであり、横軸最右端で41mmである。図32に表示しているように、干渉強度を示す信号の包絡線を求め、この包絡線において干渉強度が最大値の20%を取るポート間距離をコヒーレント長Lcと規定する。
図32〜図38に示されている通り、本例の外部共振器型半導体レーザ装置6においては、光出力が20mW〜80mWの範囲において、コヒーレント長Lcは約20mm〜12mmと小さい値に維持される。
上記の共焦点光学系は先に述べた通り、波長制御素子と同様に、共振する光の波長域を選択する効果を奏する。共焦点光学系を構成する集光レンズ61(図21参照)として、焦点距離がそれぞれ2.4mm、4.0mm、6.2mmの凸レンズを用い、上記効果を確認する実験を行った。その結果、いずれのレンズでも、波長域選択効果が確認された。一般には、レンズの焦点距離が短い方が、波長域選択効果がより大きくなる。そして、この効果が大きいほど、半導体発光素子の駆動電流の増減に対する中心波長λcおよび波長幅Δλの変化がより小さくなる。
≪第7の実施形態≫
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。図39は、本発明の第7の実施形態による外部共振器型半導体レーザ装置7を示す概略構成図である。本実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置7は、図21に示した外部共振器型半導体レーザ装置6と比べると基本的に、波長制御素子として、狭帯域バンドパスフィルター63に代えて2つのプリズム71および72が配置されている点で相違する。これら2つのプリズム71および72は、いわゆるアナモルフィックプリズムペアを構成している。プリズム71および72による波長制御素子としての効果は、狭帯域バンドパスフィルター63による効果と基本的に同様である。
なお、波長制御素子としての効果を得るためには、図40に示すように、1つのプリズム71だけを用いてもよい。しかし、アナモルフィックプリズムペアを用いれば、入射する光10のビーム断面形状が楕円状である場合、断面形状が真円状の光10として出射させることが可能となる。そこで、出力光16のビーム断面形状が真円状であることが望まれる場合は、アナモルフィックプリズムペアを適用することが好ましい。また、図40と図39とを比べれば明らかなように、1つだけプリズム71を用いる場合は、光10の進行方向が偏位してしまうが、アナモルフィックプリズムペアを用いる場合はその前後の光10の進行方向を並行に揃えることができる。
図41は、半導体発光素子11の光出力が20mW、30mW、40mW、50mW、60mW、および70mWとなるように該半導体発光素子11の駆動電流を6通りに変えた各場合の、出力光16の中心波長λcおよび、中心波長λcを取るスペクトラムの波長幅Δλ(FWHM)を示すグラフである。この図41における表示の仕方は、先に説明した図5における表示の仕方と基本的に同様である。この図41に示される通り、この例においては、光出力が20mWと70mWとの間で増減しても、中心波長λcは0.2nm程度しか変動しない。また、波長幅Δλ(FWTM)の変化も、最大で0.11nm程度であり、狭い波長範囲での発振が維持される。
ここで、波長制御素子としてのプリズムについて、具体的な例を説明する。まず、アナモルフィックプリズムペアについて説明する。硝材がSF10、頂角が27.5°である同一のプリズムを2つ用いて、アナモルフィックプリズムペアを形成した。1つ目と2つ目のプリズムへの光の入射角が異なる光路を設定することで、角度分散量が45μrad/nm(波長1nm当たりの屈折角度量)を実現することができた。この角度分散量のプリズムペアを共振器内に配置して、図39に示すような構成の外部共振器型半導体レーザ装置7を得、前述の図41に結果を示す実験等を行った。
プリズムを透過する光の波長に応じてプリズムからの出射角が異なることから、所定の出射角の光のみが共振するように構成して、外部共振器における共振波長を決めることができる。また、プリズムペアを用いる場合は、1つ目のプリズムと2つ目のプリズムの相対角度を変えることで、プリズムペアに、上記と異なる角度分散量を与えることもできる。さらには、例えば1つ目のプリズムの硝材をSF10、2つ目のプリズムの硝材をBK7等と、互いに変えることにより、所望の角度分散量を得ることも可能である。
次に、図40に示すようにプリズムを一つだけ用いる場合の例を説明する。硝材がBK7、頂角が30°のプリズムを用いて、角度分散量66μrad/nmを実現することができた。このプリズムを用いて、図39に示すような外部共振器を構成した場合でも、本発明が奏する効果を得ることができた。
≪第8の実施形態≫
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。図42は、本発明の第8の実施形態による外部共振器型半導体レーザ装置8を示す概略構成図である。本実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置8は、図21に示した外部共振器型半導体レーザ装置6と比べると基本的に、波長制御素子として、狭帯域バンドパスフィルター63に加えて、さらに2つのプリズム71および72が配置されている点で相違する。これら2つのプリズム71および72は、図39に示したものと基本的に同じものである。この図42の構成においては、プリズム71および72からなるアナモルフィックプリズムペアと、狭帯域バンドパスフィルター63とが共に、波長制御素子として機能する。
ここで図43および図44を用いて、本第8の実施形態の外部共振器型半導体レーザ装置8における干渉性並びに縦モード特性について説明する。これらの図43および図44は、先に述べた図32〜図38と同様に干渉計の表示画面を撮影した写真を上段に示し、また先に述べた図4と同様に光スペクトラムアナライザーの表示画面を撮影した写真を下段に示すものである。図43の画面を401とし、図44の画面を402とする。
図44は、図42に示す外部共振器型半導体レーザ装置8の一例における測定結果を示している。この例において半導体発光素子11は、周波数=200MHzの高周波が重畳された電流で駆動される。この例における光出力は60mWである。一方図43は、上記外部共振器型半導体レーザ装置8に対する比較例としての外部共振器型半導体レーザ装置における測定結果を示している。この比較例において、半導体発光素子11は直流電流で駆動される。この比較例における光出力は55mWである。なお、各例とも、狭帯域バンドパスフィルター63としては、透過幅Δλf(図2参照)=1.0nmのものが用いられている。
2つの例のいずれでも、縦モードはシングルモードで発振している。図44においては、画面402にLcとしてコヒーレント長を示しているが、Lc=12mmである。なお、このコヒーレント長Lcは、先に図32を参照して説明した規定の仕方と同様にして規定した値である。それに対して、図43に測定結果を示す比較例において、コヒーレント長Lcは41mm(前述した、出力光を検出する2つのポート間の距離)を超えており、数百mm以上と推定される。
なお、コヒーレント長Lcは、レーザ装置を精密位置検出装置の測定用光源に適用する場合等は、干渉性を低く抑える上で好ましい値、例えば40mm未満に設定することが望ましい。コヒーレント長Lcを40mm未満に設定するためには、一般的に、変調度を例えば80%を上回る値に設定することが望ましい。変調度が80%以下の場合は、駆動電流において直流成分が相対的に増えることにより、一般的にコヒーレント長Lcが40mm以上と長くなる。その場合は、外部共振器型半導体レーザ装置の干渉性が増して、装置の性能悪化を招く。ここで、変調度=駆動電流の変調成分/(駆動電流の直流成分+駆動電流の変調成分)である。
以上説明の通り、本発明による外部共振器型半導体レーザ装置8では、比較例と同じ共振用光学系を採用していながら、縦シングルモード発振と、短いコヒーレント長という性能が両立される。一般的なレーザは、縦シングルモード発振時はコヒーレント長が比較的長くなり、縦マルチモード発振とした時にコヒーレント長がより短くなる特性を有する。それに対して本発明による外部共振器型半導体レーザ装置8では、コヒーレント長が短い非干渉性と、縦シングルモード発振という2つの特性を共に得ることができる。この点から本発明による外部共振器型半導体レーザ装置8は、計測機器等において広い応用への適用が可能となる。
上述した例の外部共振器型半導体レーザ装置8の半導体発光素子11を、駆動電流の値(平均値)を10mW、20mW、30mW、40mW、50mWおよび60mWと6通りに変えて駆動した。図45は、その際の出力光16の中心波長λcおよび、中心波長λcを取るスペクトラムの波長幅Δλ(FWTM)を示すグラフである。この図45における表示の仕方は、先に説明した図5における表示の仕方と基本的に同様である。この図45に示される通り、この例においては、光出力が10mWと60mWとの間で増減しても、中心波長λcは0.1nm程度しか変動しない。また、波長幅Δλ(FWTM)の変化も、最大で0.1nm程度であり、狭い波長範囲での発振が維持される。以上説明の通り、この外部共振器型半導体レーザ装置8においては、プリズム71および72からなるアナモルフィックプリズムペアと、狭帯域バンドパスフィルター63とが共に波長制御素子として機能することから、中心波長λcおよび波長幅Δλのそれぞれの変化がより小さく抑えられる。