各図においてZ軸方向は、上下方向Zとする。X軸方向は、上下方向Zと直交する水平方向のうちの左右方向Xとする。Y軸方向は、上下方向Zと直交する水平方向のうち左右方向Xと直交する軸方向Yとする。上下方向Zのうちの正の側を「上側」と呼び、負の側を「下側」と呼ぶ。軸方向Yのうちの正の側を「前側」と呼び、負の側を「後側」と呼ぶ。前側は、軸方向一方側に相当し、後側には、軸方向他方側に相当する。なお、上側、下側、前側、後側、上下方向、および左右方向とは、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
<第1実施形態>
図1および図2に示す本実施形態のバルブ装置10は、例えば、車両に搭載されるコントロールバルブである。バルブ装置10は、油路ボディ20と、スプールバルブ30と、マグネット50と、センサモジュール40と、弾性部材70と、支持部材71と、を備える。
図3に示すように、油路ボディ20は、オイルが流れる油路10aを内部に有する。図3において指し示す油路10aの部分は、後述するスプール穴23の一部である。各図においては、例えば、油路ボディ20の一部を切り出した状態を示す。図1に示すように、油路ボディ20は、下部ボディ21と、上部ボディ22と、を有する。図示は省略するが、油路10aは、例えば、下部ボディ21と上部ボディ22との両方に設けられる。
下部ボディ21は、下部ボディ本体21aと、下部ボディ本体21aの上側に重ねて配置されるセパレートプレート21bと、を有する。本実施形態において下部ボディ21の上面は、セパレートプレート21bの上面に相当し、上下方向Zと直交する。上部ボディ22は、下部ボディ21の上側に重ねて配置される。上部ボディ22の下面は、上下方向Zと直交する。上部ボディ22の下面は、下部ボディ21の上面、すなわちセパレートプレート21bの上面と接触する。
図3に示すように、上部ボディ22は、軸方向Yに延びるスプール穴23を有する。本実施形態においてスプール穴23の軸方向Yと直交する断面形状は、中心軸Jを中心とする円形状である。中心軸Jは、軸方向Yに延びる。なお、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。
スプール穴23は、少なくとも前側に開口する。本実施形態においてスプール穴23の後端は、閉塞される。すなわち、スプール穴23は、前側に開口し底部を有する穴である。なお、スプール穴23は、例えば、軸方向Yの両側に開口してもよい。スプール穴23の少なくとも一部は、油路ボディ20内の油路10aの一部を構成する。
スプール穴23は、スプール穴本体23aと、導入穴部23bと、を有する。図示は省略するが、スプール穴本体23aの内周面には、油路ボディ20のうちスプール穴23以外の部分に設けられる油路10aが開口する。導入穴部23bの内径は、スプール穴本体23aの内径よりも大きい。導入穴部23bは、スプール穴本体23aの前側の端部に繋がる。導入穴部23bは、スプール穴23の前側の端部であり、前側に開口する。
上部ボディ22は、上部ボディ22の前側の端部に、貫通孔22a,22bを有する。貫通孔22aは、上部ボディ22における上部ボディ22の上面から導入穴部23bの内周面までの部分を上下方向Zに貫通する。貫通孔22bは、上部ボディ22における上部ボディ22の下面から導入穴部23bの内周面までの部分を上下方向Zに貫通する。すなわち、貫通孔22bは、上部ボディ22の下側の面からスプール穴23の内周面まで上下方向Zに延びる第3貫通孔に相当する。図2に示すように、貫通孔22aおよび貫通孔22bは、上側から視て左右方向Xに長い長方形状である。貫通孔22aと貫通孔22bとは、上側から視て互いに重なり合う。
図3に示すように、貫通孔22bは、大径部22cと、小径部22dと、を有する。大径部22cは、上部ボディ22の下側の面から上側に窪み、底面22eを有する部分である。底面22eは、下側を向き、上下方向Zと直交する面である。大径部22cは、前側に開口する。小径部22dは、底面22eからスプール穴23の内周面まで延び、大径部22cよりも内径が小さい部分である。
なお、本明細書において「小径部の内径が大径部の内径よりも小さい」とは、上下方向Zと直交する方向のうちの少なくとも一方向における寸法が、大径部よりも小径部の方が小さいことを含む。本実施形態では、小径部22dの軸方向Yの寸法が、大径部22cの軸方向Yの寸法よりも小さい。小径部22dの左右方向Xの寸法と大径部22cの左右方向Xの寸法とは、同じである。
図1に示すように、上部ボディ22におけるスプール穴23が設けられる部分は、上部ボディ22の他の部分よりも上側に突出する。この突出する部分のうち前側の端部における上面は、上側に凸となる半円弧状の曲面である。貫通孔22aは、この半円弧状の曲面の上端部に開口する。下部ボディ本体21aとセパレートプレート21bと上部ボディ22とは、例えば、それぞれ単一の部材である。下部ボディ本体21aとセパレートプレート21bと上部ボディ22とは、非磁性体製である。
図3に示すように、スプールバルブ30は、上下方向Zと交差する軸方向Yに延びる中心軸Jに沿って配置される。スプールバルブ30は、円柱状である。スプールバルブ30は、油路ボディ20に取り付けられる。スプールバルブ30は、スプール穴23の内部に軸方向Yに移動可能に配置される。本実施形態においてスプールバルブ30は、例えば、金属製の単一の部材である。スプールバルブ30は、スプールバルブ本体部31と、マグネット固定部32と、突出部33と、を有する。
スプールバルブ本体部31は、スプール穴本体23a内を軸方向Yに移動して、スプール穴本体23aの内周面に開口する油路10aの開口部を開閉する。図示は省略するが、スプールバルブ本体部31の後側の端部には、オイルの油圧あるいはソレノイドアクチュエータ等の駆動装置から前側向きの力が加えられる。スプールバルブ本体部31は、複数の大径部31aと、複数の小径部31bと、を有する。スプールバルブ30の各部は、中心軸Jを中心として軸方向Yに延びる円柱状である。
複数の大径部31aと複数の小径部31bとは、マグネット固定部32の後側の端部に繋がる大径部31aから後側に向かって交互に連続して配置される。大径部31aの外径は、小径部31bの外径よりも大きい。大径部31aの外径は、スプール穴本体23aの内径とほぼ同じであり、スプール穴本体23aの内径よりも僅かに小さい。大径部31aは、スプール穴本体23aの内周面に対して滑りながら軸方向Yに移動可能である。大径部31aは、スプール穴本体23aの内周面に開口する油路10aの開口部を開閉する弁部として機能する。
マグネット固定部32は、スプールバルブ本体部31の軸方向Yの端部に繋がる。より詳細には、マグネット固定部32の後側の端部は、複数の大径部31aのうち最も前側に配置される大径部31aの前側の端部に繋がる。マグネット固定部32は、導入穴部23bの内部に、軸方向Yに移動可能に配置される。マグネット固定部32の外径は、大径部31aの外径よりも大きい。マグネット固定部32の外径は、導入穴部23bの内径とほぼ同じであり、導入穴部23bの内径よりも僅かに小さい。
マグネット固定部32は、導入穴部23bの内周面に対して滑りながら軸方向Yに移動可能である。すなわち、マグネット固定部32は、スプール穴23の内周面に対して滑りながら軸方向Yに移動可能な滑り部を有する。本実施形態において滑り部は、マグネット固定部32全体である。マグネット固定部32の後側の面のうち径方向外縁部は、スプール穴本体23aと導入穴部23bとの間に生じる段差における前側を向く段差面に、接触可能である。これにより、スプールバルブ30が図3に示すマグネット固定部32と段差面とが接触する位置から後側に移動することを抑制でき、スプールバルブ30の最後端位置を決めることができる。
図2に示すように、マグネット固定部32は、中心軸Jを中心とする円柱の下側の端部を左右方向Xに沿って切り欠いたような形状である。これにより、マグネット固定部32は、中心軸Jの径方向と直交する平坦な面である対向部34を有する。対向部34は、マグネット固定部32の前側の端部からマグネット固定部32の後側の端部まで延びる。対向部34は、対向部34以外の部分におけるマグネット固定部32の外周面よりも、径方向内側に位置する。対向部34は、軸方向Yに長い長方形状の面である。図3に示すように、対向部34は、導入穴部23bの内周面と径方向に隙間Sを介して対向する。
マグネット固定部32は、マグネット固定部32の外周面から径方向内側に窪む収容凹部32aを有する。上述したように、本実施形態では、マグネット固定部32全体が滑り部に相当するため、収容凹部32aは、滑り部の外周面から径方向内側に窪む。図3では、収容凹部32aは、マグネット固定部32の上端部から下側に窪む。収容凹部32aの内側面は、軸方向Yに対向する一対の面を含む。
図2に示すように、突出部33は、マグネット固定部32から前側に延びる。突出部33は、中心軸Jを中心とする円柱状である。図3に示すように、突出部33の外径は、マグネット固定部32の外径および大径部31aの外径よりも小さい。突出部33の外径は、小径部31bの外径よりも大きい。突出部33の前側の端部は、支持部材71の後側に配置される。
本実施形態においてスプールバルブ本体部31とマグネット固定部32とを合わせた部分は、軸方向Yに延びる中心軸Jに沿って配置される第1部分に相当する。すなわち、スプールバルブ30のうちの第1部分が、対向部34を有する。突出部33は、第1部分から軸方向一方側、すなわち前側に延びる第2部分に相当する。
図2に示すように、マグネット50は、略直方体状である。マグネット50の上面は、例えば、周方向に沿って円弧状に湾曲する面である。図3に示すように、マグネット50は、収容凹部32a内に収容されて、マグネット固定部32に固定される。これにより、マグネット50は、スプールバルブ30に固定される。マグネット50は、例えば、接着剤により固定される。マグネット50の径方向外側面は、例えば、マグネット固定部32の外周面よりも径方向内側に位置する。マグネット50の径方向外側面は、導入穴部23bの内周面と径方向に隙間を介して対向する。
上述したように、収容凹部32aが設けられるマグネット固定部32はスプール穴23の内周面に対して滑りながら移動する滑り部である。そのため、マグネット固定部32の外周面とスプール穴23の内周面とは、接触する、あるいは僅かな隙間を介して対向する。これにより、収容凹部32a内にはオイルに含まれる金属片等の異物が入り込みにくい。したがって、収容凹部32aに収容されるマグネット50に、オイルに含まれる金属片等の異物が付着することを抑制できる。
センサモジュール40は、筐体42と、磁気センサ41と、を有する。すなわち、バルブ装置10は、筐体42と、磁気センサ41と、を備える。筐体42は、磁気センサ41を収容する。図1に示すように、筐体42は、例えば、上下方向Zに扁平の直方体箱状である。筐体42は、上部ボディ22の上面のうち、貫通孔22aが設けられる半円弧状の曲面の後側に位置する平坦面に固定される。
図3に示すように、磁気センサ41は、筐体42の内部において筐体42の底面に固定される。これにより、筐体42を介して、磁気センサ41は、油路ボディ20に取り付けられる。磁気センサ41は、マグネット50の磁界を検出する。磁気センサ41は、例えば、ホール素子である。なお、磁気センサ41は、磁気抵抗素子であってもよい。
スプールバルブ30の軸方向Yの移動に伴って、マグネット50の軸方向Yの位置が変化すると、磁気センサ41を通るマグネット50の磁界が変化する。そのため、磁気センサ41によってマグネット50の磁界の変化を検出することで、マグネット50の軸方向Yの位置、すなわちスプールバルブ30の軸方向Yの位置を検出することができる。
磁気センサ41とマグネット50とは、上下方向Zに重なる。すなわち、マグネット50の少なくとも一部は、磁気センサ41と、径方向のうちの上下方向Zと平行な方向に重なる。そのため、マグネット50の磁界を磁気センサ41によって検出しやすい。したがって、センサモジュール40によって、スプールバルブ30の軸方向Yの変位をより精度よく検出できる。
なお、本明細書において「マグネットの少なくとも一部が磁気センサと径方向に重なる」とは、マグネットが直接的に固定されたスプールバルブが軸方向に移動する範囲内の少なくとも一部の位置において、マグネットの少なくとも一部が磁気センサと径方向に重なればよい。すなわち、例えば、スプールバルブ30が図3の位置から軸方向Yに変位した際に、マグネット50が磁気センサ41と上下方向Zに重ならなくなってもよい。本実施形態では、マグネット50は、スプールバルブ30が軸方向Yに移動する範囲内であれば、いずれの位置においても、一部が磁気センサ41と上下方向Zに重なる。
図2に示すように、支持部材71は、軸方向Yと交差する方向に延びる。本実施形態において支持部材71は、軸方向Yと直交する上下方向Zに延びる。支持部材71は、板面が左右方向Xと平行な板状である。図3に示すように、支持部材71は、油路ボディ20に取り付けられる。支持部材71は、貫通孔22bに通される。支持部材71は、延伸部71aと、引掛け部71bと、を有する。
延伸部71aは、上下方向Zに延びる。延伸部71aの板面は、軸方向Yと直交する。延伸部71aは、前側から視て上下方向Zに長い長方形状である。図1および図3に示すように、延伸部71aは、貫通孔22bを介して導入穴部23bの内部に挿入される。延伸部71aの上端部は、貫通孔22aに挿入される。これにより、支持部材71は、軸方向Yと交差する方向に延びてスプール穴23の内部を貫通する。延伸部71aは、導入穴部23bの前側の開口の一部を塞ぐ。引掛け部71bは、延伸部71aの下側の端部から前側に屈曲する。引掛け部71bは、大径部22cに挿入される。引掛け部71bは、底面22eの下側に対向して配置される部分である。これにより、引掛け部71bが上側に移動することを抑制できる。
図3に示すように、支持部材71は、弾性部材70の前側に配置される。これにより、支持部材71は、スプール穴23内において弾性部材70の前側の端部を支持する。図4に示すように、支持部材71は、軸方向Yに沿って視て、中心軸Jと重なる。そのため、支持部材71によって、弾性部材70の中心を支持することができ、弾性部材70を安定して支持できる。また、上述したように支持部材71はスプール穴23の内部を貫通するため、支持部材71のうち弾性部材70を支持する部分を径方向に大きくできる。これにより、弾性部材70をより安定して支持できる。本実施形態では、支持部材71のうち延伸部71aが、軸方向Yに沿って視て、中心軸Jと重なる。本実施形態において支持部材71の左右方向Xの中心は、導入穴部23bの左右方向Xの中心と同じ位置に配置される。図3に示すように、支持部材71は、弾性部材70から前側向きの弾性力を受け、延伸部71aが貫通孔22a,22bの内周面のうち前側の部分に押し付けられる。
本実施形態において支持部材71は、上部ボディ22と下部ボディ21とを重ね合わせる前に、上部ボディ22の下面に開口する貫通孔22bの開口部から、貫通孔22bおよび導入穴部23bを介して貫通孔22aまで挿入される。そして、上部ボディ22と下部ボディ21とが上下方向Zに積層されて組み合わされることで、大径部22cに挿入された引掛け部71bが下部ボディ21の上面によって下側から支持される。これにより、支持部材71を油路ボディ20に対して取り付けることができる。
このように本実施形態によれば、貫通孔22bが上部ボディ22の下側の面に設けられるため、貫通孔22bに通した支持部材71を、下部ボディ21によって下側から支持でき、支持部材71が下側に移動することを抑制できる。また、引掛け部71bが底面22eの下側に対向して配置されるため、支持部材71が上側に移動することを抑制できる。したがって、支持部材71が上下方向Zに移動して、油路ボディ20から外れることを抑制できる。
弾性部材70は、軸方向Yに延びるコイルスプリングである。弾性部材70は、スプール穴23内においてマグネット固定部32の前側、すなわちスプールバルブ30における第1部分の前側に配置される。弾性部材70の内側には、突出部33が通される。そのため、突出部33によって弾性部材70を内側から支持することができる。これにより、弾性部材70が径方向に移動して位置がずれることを抑制できる。
弾性部材70の後側の端部は、マグネット固定部32の前側の端面に接触する。弾性部材70の前側の端部は、支持部材71と接触する。より詳細には、弾性部材70の前側の端部は、延伸部71aと接触する。
弾性部材70の前側の端部が支持部材71に支持されることで、弾性部材70は、スプールバルブ30のうちの第1部分に後側向きの弾性力を加える。そのため、例えば、スプールバルブ30の後側の端部に加えられるオイルの油圧あるいはソレノイドアクチュエータ等の駆動装置から加えられる力と、弾性部材70の弾性力とが釣り合う位置に、スプールバルブ30の軸方向Yの位置を維持することができる。これにより、スプールバルブ30の後側の端部に加えられる力を変化させることで、スプールバルブ30の軸方向Yの位置を変化させることができ、油路ボディ20の内部の油路10aの開閉を切り換えることができる。
バルブ装置10は、回転止め部材60をさらに備える。回転止め部材60は、軸方向Yに延びる。図2に示すように、回転止め部材60は、軸方向Yに延びる円柱から上下方向Zと直交する平面によって切り取られた部分のような形状であり、軸方向Yに延びる円柱の下側の端部のような形状である。図4に示すように、回転止め部材60とマグネット固定部32とを合わせた部分を軸方向Yに沿って視た形状は、中心軸Jを中心とする円形状である。
回転止め部材60の上側の面は、上下方向Zと直交する平坦な面である。図3に示すように、回転止め部材60は、中心軸Jよりも径方向外側においてスプール穴23内に配置される。回転止め部材60の後側の端部は、スプールバルブ30の第1部分とスプール穴23の内周面との隙間Sに挿入される。より詳細には、回転止め部材60の後側の端部は、対向部34と導入穴部23bの内周面との隙間Sに挿入される。回転止め部材60の後側の端部は、スプール穴本体23aと導入穴部23bとの間に生じる段差における前側を向く段差面よりも前側に離れて配置される。
図2に示すように、回転止め部材60は、回転止め部材60を上下方向Zに貫通する第1貫通孔60aを有する。第1貫通孔60aは、上下方向Zに沿って視て左右方向Xに長い長方形状である。第1貫通孔60aは、回転止め部材60の前側の端部に設けられる。図3および図4に示すように、第1貫通孔60aは、上下方向Zに沿って視て、貫通孔22a,22bと重なる。
第1貫通孔60aには、支持部材71が通される。これにより、回転止め部材60の前側の端部は、支持部材71に取り付けられる。本実施形態では、第1貫通孔60aに支持部材71を通すことによって、支持部材71に回転止め部材60を取り付けることができるため、支持部材71に対する回転止め部材60の取り付けが容易である。第1貫通孔60aの軸方向両側の内側面は、例えば、支持部材71の軸方向両側の面と接触する。
回転止め部材60と対向部34とは周方向に対向する。本明細書において「ある2つの部分が周方向に対向する」とは、ある2つの部分の両方が周方向に沿った1つの仮想円上に位置し、かつ、互いに対向することを含む。回転止め部材60と対向部34とは、互いに接触可能である。すなわち、対向部34は、回転止め部材60と中心軸Jの周方向に対向し回転止め部材60と接触可能である。
そのため、本実施形態によれば、例えば、対向部34が中心軸J周りに回転しようとした場合、対向部34は回転止め部材60と接触する。これにより、回転止め部材60によって対向部34の回転が抑制され、スプールバルブ30が中心軸J周りに回転することが抑制される。したがって、スプールバルブ30に固定されるマグネット50の位置が周方向にずれることを抑制できる。そのため、スプールバルブ30の軸方向Yの位置が変化していない場合に、磁気センサ41によって検出されるスプールバルブ30の位置情報が変化することを抑制できる。これにより、スプールバルブ30の軸方向Yの位置を把握する精度を向上できる。なお、図3図4においては、対向部34は、例えば、対向部34の前側の部分が回転止め部材60の上面と面接触する。
また、回転止め部材60は、軸方向Yに延びる部材であり、スプールバルブ30の第1部分とスプール穴23の内周面との隙間Sに対して、軸方向Yに挿し込んでスプール穴23内に配置できる。そのため、本実施形態のように油路ボディ20が下部ボディ21と上部ボディ22とに分割された構成の場合、下部ボディ21と上部ボディ22とを組み立てる際に、回転止め部材60が下側に抜け落ちることがない。そのため、バルブ装置10の組み立てを容易にしつつ、スプールバルブ30の回転を抑制できる。そして、支持部材71に対して回転止め部材60を取り付けることで、支持部材71を利用して回転止め部材60が軸方向Yに移動することを抑制できる。そのため、回転止め部材60をスプール穴23内に留めるための部材を別途設ける必要がなく、バルブ装置10の部品点数の増加を抑制しつつ、回転止め部材60がスプール穴23から抜け出ることを抑制できる。
また、本実施形態によれば、回転止め部材60の後側の端部は、対向部34とスプール穴23の内周面との隙間Sに挿入され、対向部34は、中心軸Jの径方向と直交する平坦な面である。そのため、円柱状のスプールバルブ30の一部を切り欠く加工を施すことで、容易に対向部34を作ることができる。また、本実施形態によれば、中心軸Jの径方向と直交する平坦な面である対向部34は、回転止め部材60の上側の平坦な面と接触可能である。そのため、対向部34と回転止め部材60との接触を面接触とすることができ、スプールバルブ30の回転をより安定して抑制できる。
また、本実施形態によれば、マグネット50は、スプールバルブ本体部31の軸方向Yの端部に繋がるマグネット固定部32に固定される。そのため、スプールバルブ30のうち、スプール穴23の内周面に開口する油路10aの開口部を開閉する部分、すなわちスプールバルブ本体部31以外の部分にマグネット50を設けることができる。したがって、例えば本実施形態のように、マグネット固定部32の外径をスプールバルブ本体部31の外径よりも大きくすることで、マグネット固定部32に固定されるマグネット50をより径方向外側に配置しやすい。これにより、マグネット50を磁気センサ41に近づけて配置しやすく、磁気センサ41によるスプールバルブ30の位置検出精度を向上できる。
本実施形態のバルブ装置10を組み立てる際、作業者は、まずスプール穴23にスプールバルブ30を挿入する。作業者は、弾性部材70を突出部33に通してスプール穴23内に配置する。また、作業者は、マグネット固定部32と導入穴部23bの内周面との隙間Sに前側から回転止め部材60を挿し込む。このとき、作業者は、第1貫通孔60aが貫通孔22a,22bと上下方向Zに重なる位置に、回転止め部材60を配置する。
作業者は、弾性部材70および回転止め部材60をスプール穴23内に配置した後、支持部材71を貫通孔22a,22bおよび第1貫通孔60aに挿入して、弾性部材70を前側から押さえるともに、回転止め部材60と支持部材71とを連結する。このとき、支持部材71は、弾性部材70から前側向きの力を受けて貫通孔22a,22bの内周面に押し付けられるため、貫通孔22a,22bから下側に抜け落ちることが抑制される。ここで、本実施形態によれば、回転止め部材60を軸方向Yに挿し込むことでスプール穴23内に配置する構成であるため、支持部材71の他に上部ボディ22の下面から挿入する部材がない。そのため、上部ボディ22の下面を下側に向けた状態であっても、部品が下側に抜け落ちることを抑制できる。これにより、バルブ装置10を組み立てる際に、油路ボディ20を上下方向Zに反転させる等の手間がなく、バルブ装置10の組み立てを容易にできる。その後、作業者は、上部ボディ22を下部ボディ21の上側に重ね合わせる。このようにして、作業者は、バルブ装置10を組み立てる。
<第2実施形態>
図5に示すように、本実施形態のバルブ装置110において、スプールバルブ130は、スプールバルブ本体部31とマグネット固定部132とによって構成される。スプールバルブ本体部31とマグネット固定部132とを合わせた部分は、第1部分に相当する。スプールバルブ130は、第2部分としての突出部を有しない。すなわち、本実施形態では、スプールバルブ130の全体が第1部分に相当する。
第1部分としてのスプールバルブ130は、スプールバルブ130における前側の端部から後側に窪む第1凹部132bを有する。本実施形態においてスプールバルブ130の前側の端部は、マグネット固定部132である。第1凹部132bは、マグネット固定部132の前側の端面から後側に窪む。第1凹部132bは、軸方向Yに延びる。第1凹部132bは、中心軸Jよりも径方向外側に配置される。図5では、第1凹部132bは、中心軸Jの上側に配置される。図示は省略するが、第1凹部132bの軸方向Yに沿って視た内縁は、円形状である。
支持部材171は、第1部材172と、第2部材173と、を有する。第1部材172は、スプール穴23の前側の端部に嵌め合わされる。第1部材172は、底部172aと、筒部172bと、を有する。底部172aは、板面が軸方向Yと直交する板状である。図示は省略するが、底部172aは、軸方向Yに沿って視て、中心軸Jを中心とする円形状である。底部172aの後側の面には、弾性部材170の前側の端部が接触する。これにより、底部172aは、弾性部材170の前側の端部を支持する。弾性部材170は、軸方向Yに延びるコイルスプリングである。本実施形態によれば、底部172aによって弾性部材170を支持できるため、弾性部材170を安定して支持しやすい。
底部172aは、底部172aを軸方向Yに貫通する第2貫通孔172eを有する。第2貫通孔172eは、中心軸Jよりも径方向外側に配置される。図5では、第2貫通孔172eは、中心軸Jの上側に配置される。図示は省略するが、第2貫通孔172eは、軸方向Yに沿って視て、円形状である。第2貫通孔172eは、軸方向Yに沿って視て、第1凹部132bと重なる。
筒部172bは、底部172aから前側に延びる。より詳細には、筒部172bは、底部172aの径方向外縁部から前側に延びる。筒部172bは、中心軸Jを中心とし、前側に開口する円筒状である。筒部172bの外周面は、スプール穴23の内周面と接触する。
筒部172bは、筒部172bの壁部を径方向に貫通する孔部172c,172dを有する。孔部172cは、筒部172bのうち下側の端部の壁部を上下方向Zに貫通する。孔部172dは、筒部172bのうち上側の端部の壁部を上下方向Zに貫通する。孔部172cと孔部172dとは、上下方向Zに沿って視て、互いに重なる。図示は省略するが、孔部172c,172dは、上下方向Zに沿って視て、左右方向Xに長い長方形状である。
第2部材173は、第1実施形態における支持部材71と同様の形状である。第2部材173は、孔部172cと孔部172dとに通される。すなわち、第2部材173は、筒部172bを中心軸Jの径方向に貫通する。これにより、第1部材172と第2部材173とが連結され、第2部材173によって、第1部材172が中心軸J周りに回転することを抑制できる。第2部材173は、第2貫通孔172eの前側に配置される。
回転止め部材160は、軸方向Yに延びる円柱状である。回転止め部材160は、第2貫通孔172eに通されて、底部172aを軸方向Yに貫通する。回転止め部材160は、弾性部材170の内側を通される。回転止め部材160の後側の端部は、第1凹部132bの内部に挿入される。回転止め部材160は、前側の端部に外径が大きくなるフランジ部161を有する。フランジ部161は、底部172aの前側に対向して配置される部分である。そのため、フランジ部161が底部172aの前側の面に引っ掛かり、回転止め部材160が後側に移動することを抑制できる。図5において、フランジ部161は、底部172aの前側の面と接触する。
回転止め部材160の前側の端部、すなわちフランジ部161は、第2部材173の後側の面と接触する。これにより、第2部材173は、回転止め部材160の前側において回転止め部材160の前側の端部を支持する。したがって、回転止め部材160が後側に移動することを抑制できる。このように、回転止め部材160の前側の端部は、フランジ部161が底部172aに引っ掛かり、かつ、第2部材173によって前側から支持されることで、支持部材171に取り付けられる。
本実施形態によれば、第1凹部132bの内周面は、回転止め部材160のうち第1凹部132bの内部に挿入された部分の外周面と、周方向に対向し、かつ、接触可能である。すなわち、本実施形態において、対向部は、第1凹部132bの内周面である。対向部としての第1凹部132bの内周面が回転止め部材160と接触することで、スプールバルブ130の回転を抑制できる。
(変形例)
図6に示すように、本変形例のバルブ装置210においてスプールバルブ230は、スプールバルブ本体部31とマグネット固定部232とによって構成される。スプールバルブ本体部31とマグネット固定部232とを合わせた部分は、第1部分に相当する。スプールバルブ230は、第2部分としての突出部を有しない。すなわち、本変形例では、スプールバルブ230の全体が第1部分に相当する。
第1部分としてのスプールバルブ230は、スプールバルブ230における前側の端部から後側に窪む第2凹部235を有する。本変形例においてスプールバルブ230の前側の端部は、マグネット固定部232である。第2凹部235は、マグネット固定部232の前側の端面から後側に窪む。図示は省略するが、第2凹部235の内縁は、前側から視て中心軸Jを中心とする円形状である。
弾性部材270の少なくとも一部は、第2凹部235内に配置される。そのため、弾性部材270の少なくとも一部をスプールバルブ230と径方向に重ねることができ、バルブ装置210の軸方向Yの寸法を小型化しやすい。また、弾性部材270を第2凹部235の内周面によって支持することができ、弾性部材270が径方向に移動することを抑制できる。本変形例では、弾性部材270の後側の部分が、第2凹部235内に配置される。弾性部材270の後側の端部は、第2凹部235の底面に接触する。
<第3実施形態>
図7に示すように、本実施形態のバルブ装置310において、スプールバルブ330のマグネット固定部332は、中心軸Jよりも径方向外側に第1凹部332bを有する。第1凹部332bの内径は、例えば、第2実施形態の第1凹部132bの内径よりも大きい。回転止め部材360は、軸方向Yに延びる円柱状である。回転止め部材360の後側の端部は、第1凹部332bの内部に挿入される。回転止め部材360は、回転止め部材360の前側の端部を上下方向Zに貫通する第1貫通孔360aを有する。第1貫通孔360aには、支持部材71が通される。これにより、回転止め部材360の前側の端部が支持部材71に取り付けられる。本実施形態において対向部は、第1凹部332bの内周面である。
本発明は上述の実施形態に限られず、他の構成を採用することもできる。対向部の構成は、回転止め部材と周方向に対向し回転止め部材と接触可能であれば、特に限定されない。第2部分としての突出部の形状は、特に限定されない。第2部分としての突出部は、複数設けられてもよい。回転止め部材は、複数設けられてもよい。この場合、複数の回転止め部材は、後側の端部がスプールバルブの第1部分とスプール穴の内周面との隙間に挿入された回転止め部材と、後側の端部が第1凹部の内部に挿入された回転止め部材と、の両方を含んでもよい。
また、マグネットの構成は、特に限定されない。マグネットは、例えば、円環状でスプールバルブに嵌め合わされてもよい。マグネットは、複数のマグネットが組み合わされて構成されてもよい。また、磁気センサによってマグネットの磁界を検出できるならば、磁気センサとマグネットとは径方向に重ならなくてもよい。
また、上述の実施形態では、油路ボディが有するスプール穴は、上部ボディに設けられる構成としたが、これに限られない。スプール穴は、下部ボディに設けられてもよい。セパレートプレートは設けられなくてもよい。油路ボディは、上部ボディと下部ボディとに分かれていなくてもよい。また、中心軸Jが延びる軸方向は、上下方向Zと直交せずに交差してもよいし、上下方向Zと平行であってもよい。
また、油路ボディは、油路ボディ本体と、油路ボディ本体と別部材であり、油路ボディ本体に取り付けられるセンサ取付部材と、を有してもよい。センサ取付部材には、磁気センサ41が取り付けられる。センサ取付部材は、例えば、上述した上部ボディ22のうち、センサモジュール40が固定される前側の部分である。すなわち、上述した上部ボディ22の前側の部分は、別部材として構成されて、油路ボディ本体に取り付けられてもよい。この構成において油路ボディ本体は、上部ボディ22のうちのセンサ取付部材以外の部分と、下部ボディ21と、を有する。この構成においてスプール穴23は、油路ボディ本体とセンサ取付部材とに跨って設けられる。この場合、導入穴部23bは、センサ取付部材に設けられる。そのため、スプール穴23のうちセンサ取付部材に設けられた部分の内部には、マグネット50が収容される。この構成によれば、センサ取付部材を交換することのみによって、マグネット50が収容される導入穴部23bの構成を容易に変更することができる。
また、上述した実施形態のバルブ装置の用途は、特に限定されず、車両以外に搭載されてもよい。また、上記の各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。