JP6980460B2 - 蓄熱材料及び蓄熱装置 - Google Patents

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Description

本開示は、蓄熱材料及び蓄熱装置に関する。
蓄熱材料は、熱又は冷熱を蓄えることができる材料であり、蓄熱材料に蓄えられた熱又は冷熱は需要に応じて放出される。物質の相変化に伴う発熱反応及び吸熱反応を主に利用して熱又は冷熱を蓄えることができる蓄熱材料は潜熱蓄熱材料と呼ばれている。冷熱を蓄え需要に応じて冷熱を放出できる潜熱蓄熱材料を、潜熱蓄冷材料、又は、単に蓄冷材料と呼ぶこともあるが、本明細書では蓄熱材料として統一して記載する。
例えば、特許文献1には、水分子で構成された籠状の包接格子内にC49基を持つオニウム塩がゲストとして包み込まれて結晶化する準包接水和物(液液クラストレート)を冷熱輸送媒体として使用することが記載されている。特許文献1には、冷熱輸送媒体の具体例として、水−TBAB系が示されており、この系においてTBABの濃度を調整することにより、クラストレートの融点をほぼ0℃〜12℃の範囲で変更できることが記載されている。
特開平10−259978号公報
特許文献1に記載の技術では、高い蓄熱密度を有しつつ蓄えられた冷熱を所望の温度で放出する観点から改良の余地を有する。そこで、本開示は、高い蓄熱密度を有しつつ蓄えられた冷熱を所望の温度で放出できる蓄熱材料を提供する。
本開示は、
ホスト物質である水と、
ゲスト物質と、を含有し、
前記ホスト物質及び前記ゲスト物質によってセミクラスレートハイドレートが構成され、
前記ゲスト物質は、テトラブチルアンモニウムイオンであるカチオンと、下記式(A)で表されるカルボン酸イオンであるアニオンとからなる、
蓄熱材料を提供する。
R−COO- (A)
[式中、Rは3〜5個の炭素原子を有する炭化水素基である。]
上記の蓄熱材料は、高い蓄熱密度を有しつつ蓄えられた冷熱を所望の温度で放出できる。
図1は、本開示の蓄熱材料の一例に係るゲスト物質の構造を示す図である。 図2は、本開示の蓄熱材料の別の一例に係るゲスト物質の構造を示す図である。 図3は、本開示の蓄熱材料のさらに別の一例に係るゲスト物質の構造を示す図である。 図4は、本開示の蓄熱材料のさらに別の一例に係るゲスト物質の構造を示す図である。 図5は、本開示の蓄熱材料のさらに別の一例に係るゲスト物質の構造を示す図である。 図6は、本開示の蓄熱材料のさらに別の一例に係るゲスト物質の構造を示す図である。 図7は、本開示の蓄熱材料のさらに別の一例に係るゲスト物質の構造を示す図である。 図8は、本開示の蓄熱材料のさらに別の一例に係るゲスト物質の構造を示す図である。 本開示の蓄熱装置の一例を示す断面図である。
<本発明者の検討に基づく知見>
潜熱蓄熱材料の中には、テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)水溶液及びテトラヒドロフラン(THF)水溶液等の、冷却によりクラスレートハイドレートと呼ばれる水和物を形成可能な高い蓄熱密度を有する潜熱蓄熱材料がある。クラスレートハイドレートとは、ゲスト物質と呼ばれる分子の周囲をホスト物質と呼ばれる水分子が複数で取り囲んだ籠状の結晶構造を有する化合物である。クラスレートハイドレートを形成するゲスト分子の大きさには制限がある。比較的大きいゲスト分子の例はシクロペンタン及びTHFである。比較的小さいゲスト分子の例はメタン及び二酸化炭素である。クラスレートハイドレートを形成するには、「ゲスト分子」と「水分子が作る籠」との間に適度な分子間相互作用が働き、構造的な安定性が保たれる必要がある。言い換えると、ゲスト分子の構造及びサイズは、安定なクラスレートハイドレートを形成する上で極めて重要であり、構造及びサイズのバランスが良い程、クラスレートハイドレートが安定であり、クラスレートハイドレートの融点が高くなる。
クラスレートハイドレートの一種であるセミクラスレートハイドレートは、ゲスト分子が複数の籠に跨って存在し、一般的には常温かつ常圧で形成される。セミクラスレートハイドレートにおける具体的なゲスト分子の例としては、4級アンモニウム塩が挙げられる。シクロペンタンの分子サイズよりも明らかに大きい分子又は3〜5個の炭素原子を有するアルキル鎖を複数有する分子は、水分子が作る一つの籠には収まらない。このため、このような分子がゲスト分子である場合、複数の籠がゲスト分子を取り囲んでセミクラスレートハイドレートが形成される。ゲスト分子が変われば、クラスレートハイドレート又はセミクラスレートハイドレートの融点及び潜熱量等の熱物性が変わることは経験的に知られている。すなわち、ゲスト分子が決まれば、熱物性が決まる。しかし、所望の熱物性に対して、積極的にゲスト分子を設計する発想はなかった。正確に言うと、例えば融点が6℃の融点を示す蓄熱材料が欲しい場合に融点が10℃と2℃の2種類のクラスレートハイドレートが存在すれば、両者を等量混合して中間的な融点のハイドレートを作ることが考えられる。しかし、2種類のクラスレートハイドレートが等量混合された蓄熱材料では、6℃における潜熱量が、10℃及び2℃における本来の潜熱量に比べて低下するなど、十分な蓄熱特性を実現することは難しい。このため、2種類のクラスレートハイドレートを混合するのではなく、単一種類のゲスト分子で6℃に融点を示すハイドレートを設計することが望ましい。ハイドレートが形成されたか否かの確認は、X線回折(XRD)などの分析的手段が有効である。しかし、簡便には、ハイドレートが形成されたか否かの確認は、ゲスト分子の水溶液が0℃以上で凝固する(結晶を作る)か否かで判断できる。すなわち、一般的には水にある物質を溶かすと、凝固点降下により、凝固点(融点)は0℃よりも低下し、上昇することはない。このため、水溶液の凝固点が0℃以上に上昇していれば、ハイドレートを形成していると判断できる。
TBABをゲスト物質とするクラスレートハイドレートにおいて、ゲスト物質は水分子でできた複数の籠にまたがって存在する。このようなクラスレートハイドレートは、セミクラスレートハイドレートと呼ばれており、1つのゲスト物質が水分子でできた1つの籠に収まっているクラスレートハイドレートとは区別されている。TBABは、THFに比べて毒性がなく取り扱いやすいうえに、そのセミクラスレートハイドレートは10℃付近に調和融点を示す。具体的に、TBABの濃度が40質量%のときに12℃の調和融点を示し、この場合の潜熱量は約189J/gである。クラスレートハイドレートが調和融点を示す場合、ゲスト物質とホスト物質とが籠構造を作るうえで過不足なく存在している。本明細書において、調和融点を示すクラスレートハイドレートにおけるゲストの質量基準の濃度を調和濃度と定義する。
蓄熱材料の用途によっては、蓄熱材料の融点が12℃未満であることが望ましい場合がある。例えば、アイドリングストップを自動的に行う機能を有する自動車において、アイドリングストップ時の車室の冷房のために蓄熱材料を利用することが考えられる。この場合、蓄熱材料の融点は8℃〜11℃であることが望ましい。アイドリングストップ時の車室の冷房には、エンジンによってコンプレッサを駆動することによって得られる冷熱の代わりに、蓄熱材料に蓄えられた冷熱が利用される。また、蓄熱材料を薬品の低温輸送に利用する場合、蓄熱材料の融点は2℃〜8℃であることが望ましい。蓄熱材料を野菜等の生鮮品の保冷に利用する場合、蓄熱材料の融点は0℃〜10℃であることが望ましい。
TBABをゲスト物質とするセミクラスレートハイドレートを構成する材料を蓄熱材料として使用して、蓄熱材料の融点を12℃よりも低下させるために、水を添加してTBABの濃度を調和濃度よりも低くすることが考えられる。例えば、本発明者の検討によれば、TBABをゲスト物質とするセミクラスレートハイドレートを構成する蓄熱材料におけるTBABの濃度を23質量%にすると、その蓄熱材料の融点を5〜10℃に調整できる。しかし、この場合、セミクラスレートハイドレートの潜熱量は約130J/gに低下してしまう。このように、特許文献1に記載の技術では、蓄熱材料の融点を12℃未満の温度にしようとすると、蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度を調和濃度から外れるように調整しなければならず、高い蓄熱密度を実現することが難しくなる。その結果、蓄熱材料に蓄えられた冷熱の利用可能時間が短くなり、省エネルギー効果を高めにくい。本発明者の検討によれば、ゲスト物質の濃度が調和濃度から外れると蓄熱密度が低下するのは、セミクラスレートハイドレートの構成に関与せず、潜熱蓄熱に関与しない水分子の数が増加するためであると考えられる。水は零下まで冷却すれば氷となり冷熱を蓄えることができるが、氷の融解に伴う潜熱が発生する温度は、蓄熱材料に求められる温度と合致しない場合もある。また、蓄熱材料を零下まで冷却すると、コンプレッサの作動に要するコストが嵩んでしまう。
このような事情に鑑みて、本発明者は、12℃未満の所望の温度の融点を有し、かつ、高い蓄熱密度を示すことができる蓄熱材料について検討を重ねた。その結果、セミクラスレートハイドレートを構成するゲスト分子のアニオンの構造を変化させることにより、水分子が作る籠とゲスト分子との分子間相互作用が変わり、ひいてはセミクラスレートハイドレートの安定性が変わることを見出した。すなわち、本発明者は、セミクラスレートハイドレートを構成するゲスト分子のアニオンの構造を変化させることにより、セミクラスレートハイドレートの融点を大きく変化させられることを発見した。本発見を踏まえて、セミクラスレートハイドレートを構成するゲスト分子のアニオンの構造及びサイズを調整することにより、高い蓄熱密度を維持しつつ、融点を2〜11℃に調整できることを見出し、本開示の蓄熱材料を案出した。
本開示の第1態様は、
ホスト物質である水と、
ゲスト物質と、を含有し、
前記ホスト物質及び前記ゲスト物質によってセミクラスレートハイドレートが構成され、
前記ゲスト物質は、テトラブチルアンモニウムイオンであるカチオンと、下記式(A)で表されるカルボン酸イオンであるアニオンとからなる、
蓄熱材料。
R−COO- (A)
[式中、Rは3〜5個の炭素原子を有する炭化水素基である。]
第1態様によれば、テトラブチルアンモニウムイオンと上記のカルボン酸イオンとからなるゲスト物質を用いることにより、蓄熱材料の融点を12℃未満の所望の温度に調整できる。しかも、蓄熱材料のゲスト物質の濃度を調和濃度又は調和濃度近くの濃度に調整しつつ蓄熱材料の融点を所望の温度に調節しやすい。このため、第1態様に係る蓄熱材料は、高い蓄熱密度を有しつつ蓄えられた冷熱を所望の温度で放出できる。加えて、カルボン酸イオンの構造を適宜選択することによって、蓄熱材料のゲスト物質の濃度が調和濃度又は調和濃度近くの濃度において、蓄熱材料の融点を幅広く調節できる。
本開示の第2態様は、第1態様に加えて、前記アニオンは、4‐メチルペンタン酸イオン、2‐メチルペンタン酸イオン、3‐メチルペンタン酸イオン、2‐エチルブチル酸イオン、n‐ペンタン酸イオン、3‐メチルブチル酸イオン、2‐メチルブチル酸イオン、又は3‐ブテン酸イオンである、蓄熱材料を提供する。第2態様によれば、蓄熱材料が、より確実に、高い蓄熱密度を有しつつ蓄えられた冷熱を12℃未満の所望の温度で放出できる。
本開示の第3態様は、第1態様又は第2態様に加えて、前記ゲスト物質と前記ホスト物質とによって構成されたセミクラスレートハイドレート化合物が調和融点を示すときの前記セミクラスレートハイドレート化合物における前記ゲスト物質の質量基準の濃度を調和濃度と定義したとき、当該蓄熱材料における前記ゲスト物質の質量基準の濃度と前記調和濃度との差の絶対値が3%以下である、蓄熱材料を提供する。第3態様によれば、蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度又は調和濃度の近くに調節されているので、蓄熱材料がより確実に、高い蓄熱密度を有する。
本開示の第4態様は、第1態様〜第3態様のいずれか1つの態様に加えて、2℃〜11℃の融点を有する、蓄熱材料を提供する。第4態様によれば、2℃〜11℃の冷熱が要求される様々な用途に蓄熱材料を利用できる。
本開示の第5態様は、
容器と、
前記容器に収容された第1態様〜第4態様のいずれか1つの態様の蓄熱材料と、を備えた、
蓄熱装置を提供する。
第5態様によれば、蓄熱材料が容器に収容されているので、蓄熱材料が劣化しにくいとともに、12℃未満の所望の温度で蓄えられた冷熱を取り出すことができる。
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明は本開示の蓄熱材料及び蓄熱装置を例示的に説明するものであり、本発明はこれらによって限定されるものではない。
本開示の蓄熱材料は、ホスト物質である水と、ゲスト物質と、を含有している。この蓄熱材料において、ホスト物質及びゲスト物質によってセミクラストレートハイドレートが構成される。これにより、蓄熱材料に潜熱の形態で冷熱が蓄えられ、セミクラストレートハイドレートが分解することにより蓄熱材料に潜熱の形態で蓄えられた冷熱が放出される。ゲスト物質は、テトラブチルアンモニウムイオンであるカチオンと、下記式(A)で表されるカルボン酸イオンであるアニオンとからなる。
R−COO- (A)
[式中、Rは3〜5個の炭素原子を有する炭化水素基である。]
蓄熱材料のゲスト物質がテトラブチルアンモニウムイオンと上記のカルボン酸イオンとからなる塩であることにより、蓄熱材料の融点が12℃未満の所望の温度に調整しやすい。しかも、蓄熱材料のゲスト物質の濃度を調和濃度又は調和濃度近くの濃度に調整しつつ蓄熱材料の融点を所望の温度に調節しやすい。このため、本開示の蓄熱材料は、高い蓄熱密度を有しつつ蓄えられた冷熱を所望の温度で放出できる。加えて、カルボン酸イオンの構造を適宜選択することによって、蓄熱材料のゲスト物質の濃度を調和濃度又は調和濃度近くの濃度において、蓄熱材料の融点を12℃未満の温度範囲で幅広く(例えば、2℃〜11℃)調節できる。
TBABをゲスト物質とするセミクラスレートハイドレートが分解すると、臭化物イオンが蓄熱材料中を拡散する。臭化物イオン等のハロゲンイオンは、蓄熱材料を収容する容器の内面を腐食させやすい。なぜなら、ハロゲンイオンが容器の内面に形成された酸化物皮膜を壊しやすいからである。これに対し、上記の式(A)で表されるアニオンは、蓄熱材料を収容する容器の内面を腐食させにくい。このため、本開示の蓄熱材料は、TBABをゲスト物質として含有している蓄熱材料に比べて、蓄熱材料を収容する容器の内面を腐食させにくいという利点も有する。
図1〜図8に、本開示の蓄熱材料のゲスト物質の例を示す。図1〜図8に示す通り、ゲスト物質のアニオンは、望ましくは、4‐メチルペンタン酸イオン、2‐メチルペンタン酸イオン、3‐メチルペンタン酸イオン、2‐エチルブチル酸イオン、n‐ペンタン酸イオン、3‐メチルブチル酸イオン、2‐メチルブチル酸イオン、又は3‐ブテン酸イオンである。この場合、蓄熱材料が、より確実に、高い蓄熱密度を有しつつ蓄えられた冷熱を12℃未満の所望の温度で放出できる。
ゲスト物質とホスト物質とによって構成されたセミクラスレートハイドレート化合物が調和融点を示すときのセミクラスレートハイドレート化合物におけるゲスト物質の質量基準の濃度を調和濃度と定義する。望ましくは、蓄熱材料におけるゲスト物質の質量基準の濃度と調和濃度との差の絶対値が3%以下である。この場合、蓄熱材料におけるゲスト物質の質量基準の濃度が調和濃度又は調和濃度に近い濃度である。このため、蓄熱材料がより確実に高い蓄熱密度を有する。蓄熱材料におけるゲスト物質の質量基準の濃度と調和濃度との差の絶対値が3%以下であれば、蓄熱材料における融点及び潜熱量と調和濃度の蓄熱材料における融点及び潜熱量との差異がない又は小さく、蓄熱材料が十分な実用性を有する。
蓄熱材料の調和濃度は、例えば、実施例に記載の方法で決定できる。
蓄熱材料は、望ましくは、2℃〜11℃の融点を有する。この場合、2℃〜11℃の冷熱が要求される様々な用途に蓄熱材料を利用できる。
蓄熱材料は、例えば150J/g以上の潜熱量を有する。蓄熱材料は、望ましくは160J/g以上の潜熱量を有し、より望ましくは170J/g以上の潜熱量を有する。
蓄熱材料は、典型的には1種類のゲスト物質を含有しているが、場合によっては、2種類以上のゲスト物質を含有していてもよい。例えば、蓄熱材料は、4‐メチルペンタン酸イオンをアニオンとして有するゲスト物質と、2‐メチルペンタン酸イオンをアニオンとして有するゲスト物質とを混合して含有していてもよい。この場合も、蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度は、調和濃度又は調和濃度に近い濃度であることが望ましく、ゲスト物質及びホスト物質がセミクラスレートハイドレートを構成するうえで過不足なく存在していることが望ましい。
蓄熱材料は、必要に応じて、公知の各種の添加剤を含有していてもよい。蓄熱材料に含有されうる添加剤は、例えば、防腐剤、防錆剤、粘度調整剤、整泡剤、酸化防止剤、脱泡剤、砥粒、充填剤、顔料、染料、着色剤、増粘剤、界面活性剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、粘着付与剤、硬化触媒、安定剤、シランカップリング剤、及びワックスである。蓄熱材料は、これらの添加剤を単独で含有していてもよいし、2種類以上の添加剤の組み合わせを含有していてもよい。添加剤の種類及び量は、蓄熱密度を有しつつ蓄えられた冷熱を所望の温度で放出できる限り、特に制限されない。
蓄熱材料の製造方法は特に限定されないが、例えば、以下の方法によって製造できる。容器に入れた純水又はイオン交換水を攪拌しながら、クラスレートハイドレートを形成するためのゲスト物質を徐々に所定量まで添加して、十分混合する。また、添加剤は、ゲスト物質の添加と同時又はゲスト物質の添加の前後で添加して、混合および/または攪拌する。別の方法として、予めゲスト物質及び添加剤を混合しておき、純水又はイオン交換水を注入する方法が考えられる。ゲスト物質及び添加剤の添加順序は任意に決定可能であり、ゲスト物質の溶解を促進するために特定の温度まで原料を加熱することも考えられる。ただし、原料を加熱する場合、ゲスト物質の熱分解等の不具合が生じないように留意する必要がある。
上記の蓄熱材料を用いた蓄熱装置の一例について説明する。図9に示す通り、蓄熱装置1は、容器10と、蓄熱材料20とを備えている。蓄熱材料20は、容器10に収容されており、上記のホスト物質及びゲスト物質を含有している蓄熱材料である。蓄熱装置1において、容器10の内部に上記の蓄熱材料20が収容されているので、蓄熱材料20が容器10の外部環境の影響を受けにくく劣化しにくい。加えて、12℃未満の所望の温度で蓄えられた冷熱を取り出すことができる。
容器10は、特に限定されないが、蓄熱材料20に対して耐腐食性を有する金属、合金、又は樹脂でできている。容器10は、例えば、蓄熱材料20が収容された状態で塊状、板状、又はシート状である。蓄熱材料20への蓄熱及び蓄熱材料20からの放熱の応答性を高める観点から、容器10の内部容積に対する容器10の外面の面積の比が大きいことが望ましい。このため、容器10は、例えば、蓄熱材料20が収容された状態で、薄型の形状であることが望ましい。容器10の材料は、望ましくは、アルミニウム、銅、及びステンレス等の金属又は合金である。この場合、容器10の熱伝導性が高く、蓄熱材料20への蓄熱及び蓄熱材料20からの放熱の効率が良い。なお、容器10は樹脂製であってもよい。この場合、容器10は、望ましくは、蓄熱材料20に対して良好な耐腐食性を有する。なお、容器10は、アルミニウム箔の両面に樹脂層が積層された積層フィルム等の可撓性の材料によってできていてもよい。
蓄熱材料20の熱伝導率は低い。このため、蓄熱装置1が短期間に蓄熱及び放熱を繰り返す必要がある場合、蓄熱材料20の厚みを小さくすることが望ましい。この場合、蓄熱材料20の厚みは、例えば5mm以下であり、望ましくは3mm以下であり、より望ましくは2mm以下である。蓄熱材料20の厚みを薄くするために、例えば、容器10を薄型の形状に作製すること又はバルク状の蓄熱材料20を高い熱伝導性を有する材料で薄く仕切ることが考えられる。
図9に示す通り、蓄熱装置1は、筐体30を備えている。容器10は、筐体30の内部に配置されている。筐体30は入口31及び出口32を有し、筐体30の内部には熱媒体のための流路35が存在する。流路35は、容器10の外面同士の間又は容器10の外面と筐体30の内面との間に存在している。筐体30の外面は、典型的には断熱性を有する材料で形成されている。
蓄熱材料20に冷熱を蓄える場合、蓄熱材料20の融点よりも低い温度を有する熱媒体が入口31を通過して流路35に導かれる。熱媒体は流路35を出口32に向かって流れる。このとき、熱媒体が有する冷熱を蓄熱材料20が受け取って冷熱が蓄えられる。液体状態の蓄熱材料20は、セミクラスレートハイドレートを構成し、潜熱として冷熱を蓄える。熱媒体は、その後出口32から排出される。
蓄熱材料20から冷熱を取り出す場合、蓄熱材料20の融点よりも高い温度を有する熱媒体が入口31を通過して流路35に導かれる。熱媒体は流路35を出口32に向かって流れる。このとき、蓄熱材料20に蓄えられた冷熱が熱媒体に放出され、セミクラスレートハイドレートが分解して液相に変化する。熱媒体は、その後出口32から排出される。
以下に、実施例により本開示の蓄熱材料をより詳細に説明する。ただし、本開示の蓄熱材料は以下の実施例に限定されない。
蓄熱材料の性能を評価するために、蓄熱材料の試料に対して下記の通り示差走査熱量測定(DSC)を行った。まず、蓄熱材料の試料を秤量して、アルミニウム製のサンプルパンに10mgの蓄熱材料を入れた。次に、蓄熱材料の入ったサンプルパンをDSC測定装置の内部に配置し、サンプルパンの環境温度を20℃から−20℃まで1℃/分の降温速度で低下させ、その後サンプルパンの環境温度を−20℃で10分間保った。ここまでのプロセスにより、蓄熱材料においてセミクラスレートハイドレートが構成され、蓄熱材料が結晶化した。次に、1℃/分の昇温速度でサンプルパンの環境温度を20℃まで上昇させた。これにより、セミクラスレートハイドレートが分解するときのDSC曲線が得られた。特定の蓄熱材料の試料に対して得られたDSC曲線においてセミクラスレートハイドレートの分解温度よりも低い0℃付近に吸熱ピークが存在する場合、その蓄熱材料の試料におけるゲスト物質の濃度は調和濃度から外れており、水分子の割合が相対的に多過ぎると判断した。そのうえで、そのような蓄熱材料の試料に対して水の濃度を徐々に減らして試料を調製しつつ示差走査熱量測定を行い、DSC曲線において0℃付近に吸熱ピークが存在しなくなった試料のゲスト物質の濃度を調和濃度と決定した。また、そのような試料の融点を調和融点と決定した。具体的には、ゲスト物質に対する水のモル比が20、25、30、35、40である蓄熱材料の試料を調製し、各試料に対して示差走査熱量測定を行った。ゲスト物質に対する水のモル比が40である試料においては水の割合が多過ぎるので、0℃付近に氷の融解に伴う吸熱ピークが現れた。ゲスト物質に対する水のモル比が20である試料においては水の割合が少な過ぎるので、0℃付近に吸熱ピークが現れなかった。ゲスト物質に対する水のモル比を40から段階的に減らして試料を調製し、示差走査熱量測定を行った。その結果、DSC曲線において0℃付近に吸熱ピークが現れなくなった試料におけるゲスト物質に対する水のモル比を特定し、そのモル比からその試料におけるゲスト物質の質量濃度を特定した。さらに、そのゲスト物質の濃度から1質量%ずつゲスト物質の濃度を増加及び減少させた複数の試料を調製し、示差走査熱量測定を行った。DSC曲線において0℃付近の吸熱ピークが丁度現れなくなる試料を特定するまで、複数の試料の中で水リッチな状態であると判断された試料から順次水の濃度が低い試料を選んで、示差走査熱量測定を行った。DSC曲線において0℃付近の吸熱ピークが丁度現れなくなる試料の濃度を調和濃度と定めた。なお、0℃付近に2J/g以下の潜熱量に相当するDSC曲線のベースラインシフトが現れた場合、そのベースラインシフトは実質的に無視できると判断し、吸熱ピークが現れなくなったか否か判断した。
<実施例1〜8>
図1〜8に示す構造のゲスト物質(テトラブチルアンモニウムイオン(TBA)と4‐メチルペンタン酸イオンとの塩、TBAと2‐メチルペンタン酸イオンとの塩、TBAと3‐メチルペンタン酸イオンとの塩、TBAと2‐エチルブチル酸イオンとの塩、TBAとn‐ペンタン酸イオンとの塩、TBAと3‐メチルブチル酸イオンとの塩、TBAと2‐メチルブチル酸イオンとの塩、TBAと3‐ブテン酸イオンとの塩)を用いてゲスト物質の濃度を上記のように特定した調和濃度に調節し、実施例1〜8に係る蓄熱材料を調製した。実施例1〜8に係る蓄熱材料に対して上記の通り示差走査熱量測定を行った。得られたDSC曲線における吸熱ピークから各実施例に係る蓄熱材料の融点及び潜熱量を決定した。結果を表1に示す。なお、潜熱量とは、結晶状態の蓄熱材料が液相状態に完全に相変化するまでに吸収する熱量に相当する。表1において、調和濃度の欄の「Y」は蓄熱材料のゲスト物質の濃度が調和濃度であることを示す。
<比較例1〜3>
TBABの濃度が表1に示す通りになるように、TBABと水とを混合して比較例1〜3に係る蓄熱材料を調製した。比較例1〜3に係る蓄熱材料に対して上記の通り示差走査熱量測定を行った。得られたDSC曲線における吸熱ピークから各比較例に係る蓄熱材料の融点及び潜熱量を決定した。結果を表1に示す。表1において、調和濃度の欄における「N」は蓄熱材料のゲスト物質の濃度が調和濃度ではないことを示す。
表1に示す通り、実施例1〜8に係る蓄熱材料は2〜11℃の調和融点を有していた。また、実施例1〜8に係る蓄熱材料の潜熱量は170J/gを超えており、実施例1〜8に係る蓄熱材料が高い蓄熱密度を有することが示唆された。一方、比較例1〜3に係る蓄熱材料は、2つの吸熱ピーク、すなわち、2つの明確な融点を有しており、比較例1〜3に係る蓄熱材料のゲスト物質の濃度は調和濃度から外れていることが示唆された。なお、比較例1〜3に係る蓄熱材料の低温側(0℃)の吸熱ピークは氷の融解に対応していると考えられる。また、比較例1〜3に係る蓄熱材料の高温側の吸熱ピークに基づく潜熱量は120J/g未満であった。これは、比較例1〜3に係る蓄熱材料のゲスト物質の濃度は調和濃度よりも低くなっており、比較例1〜3に係る蓄熱材料が水リッチな組成を有していたため起こったものと考えられる。換言すると、比較例1〜3に係る蓄熱材料において、余分な水が氷として結晶化し、セミクラスレートハイドレートの本来の潜熱量を低下させたものと考えられる。
逆に言うと、実施例1〜8に係る蓄熱材料では、水分子が単独で氷になることはほとんどなく、ほとんどの水分子がセミクラストレートハイドレートの構成に寄与していると考えられる。その結果、水分子間の水素結合の分解エネルギーが調和融点における潜熱量として現れるので、実施例1〜8に係る蓄熱材料の潜熱量が高かったと考えられる。
図1〜8に示す構造のゲスト物質を含有する蓄熱材料において許容できる調和濃度からのゲスト物質の濃度のずれの範囲を特定するために以下の評価を行った。図1〜8に示す構造のゲスト物質のそれぞれを用いて、調和濃度±3重量%及び調和濃度±7重量%の濃度にゲスト物質の濃度を調節した蓄熱材料の試料を調製し、示差走査熱量測定を行った。その結果を表2〜表9に示す。調和濃度を有する蓄熱材料の潜熱量を基準値と定めたうえで、基準値からの差異が8%以内である潜熱量を示す試料を「十分に効果がある」と判断して「A」と評価し、基準値からの差異が8%を超え20%以内である潜熱量を示す試料を「効果はあるものの小さい」と判断して「B」と評価した。なお、調和濃度を有する試料を「特に効果がある」と判断して「AA」と評価した。なお、「基準値からの差異」は、試料が示す潜熱量を基準値から差し引いた差の基準値に対する百分率を意味する。
ゲスト物質がTBAと4‐メチルペンタン酸イオンとの塩である蓄熱材料において、表2に示す通り、ゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は7.8%及び7.3%であり、8%以内に収まっていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である場合、蓄熱材料が望ましい性能を有することが示唆された。ゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は、16%及び17%であり、20%以内には収まっていたものの8%を超えていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である場合、効果はあるもののその効果は小さいことが示唆された。
ゲスト物質がTBAと2‐メチルペンタン酸イオンとの塩である蓄熱材料において、表3に示す通り、ゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は6.4%及び7.6%であり、8%以内に収まっていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である場合、蓄熱材料が望ましい性能を有することが示唆された。ゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は、12%及び19%であり、20%以内には収まっていたものの8%を超えていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である場合、効果はあるもののその効果は小さいことが示唆された。
ゲスト物質がTBAと3‐メチルペンタン酸イオンとの塩である蓄熱材料において、表4に示す通り、ゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は7.0%及び6.4%であり、8%以内に収まっていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である場合、蓄熱材料が望ましい性能を有することが示唆された。ゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は、12%及び13%であり、20%以内には収まっていたものの8%を超えていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である場合、効果はあるもののその効果は小さいことが示唆された。
ゲスト物質がTBAと2‐エチルブチル酸イオンとの塩である蓄熱材料において、表5に示す通り、ゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は5.5%及び6.0%であり、8%以内に収まっていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である場合、蓄熱材料が望ましい性能を有することが示唆された。ゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は、18%及び20%であり、20%以内には収まっていたものの8%を超えていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である場合、効果はあるもののその効果は小さいことが示唆された。
ゲスト物質がTBAとn‐ペンタン酸イオンとの塩である蓄熱材料において、表6に示す通り、ゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は8.0%及び7.5%であり、8%以内に収まっていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である場合、蓄熱材料が望ましい性能を有することが示唆された。ゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は、19%及び11%であり、20%以内には収まっていたものの8%を超えていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である場合、効果はあるもののその効果は小さいことが示唆された。
ゲスト物質がTBAと3‐メチルブチル酸イオンとの塩である蓄熱材料において、表7に示す通り、ゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は5.0%及び7.5%であり、8%以内に収まっていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である場合、蓄熱材料が望ましい性能を有することが示唆された。ゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は、20%及び20%であり、20%以内には収まっていたものの8%を超えていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である場合、効果はあるもののその効果は小さいことが示唆された。
ゲスト物質がTBAと2‐メチルブチル酸イオンとの塩である蓄熱材料において、表8に示す通り、ゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は6.5%及び7.0%であり、8%以内に収まっていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である場合、蓄熱材料が望ましい性能を有することが示唆された。ゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は、15%及び17%であり、20%以内には収まっていたものの8%を超えていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である場合、効果はあるもののその効果は小さいことが示唆された。
ゲスト物質がTBAと3‐ブテン酸イオンとの塩である蓄熱材料において、表9に示す通り、ゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は8.0%及び8.0%であり、8%以内に収まっていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±3重量%である場合、蓄熱材料が望ましい性能を有することが示唆された。ゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である試料の潜熱量の基準値との差異は、19%及び18%であり、20%以内には収まっていたものの8%を超えていた。このため、この蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度が調和濃度±7重量%である場合、効果はあるもののその効果は小さいことが示唆された。
以上より、蓄熱材料におけるゲスト物質の質量基準の濃度と調和濃度との差の絶対値が3%以下であれば、調和濃度を有する蓄熱材料の潜熱量からの潜熱量の低下は8%以内に収まる。このため、蓄熱材料におけるゲスト物質の濃度の調和濃度との差の絶対値が3%以下である場合、その蓄熱材料のゲスト物質の濃度は、調和濃度又は調和濃度に近い濃度と評価できる。この場合、蓄熱材料がより確実に高い蓄熱密度を有することが示唆された。
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本開示の蓄熱材料は、空調用の冷房に必要な冷熱を、潜熱として速やかに蓄熱し、かつ、融点近傍の一定温度で取り出せるシステムに広く利用可能である。また、本開示の蓄熱材料は、空調用途だけでなく、冷蔵用途及び定温保存用途等の幅広い用途に適応可能である。
1 蓄熱装置
10 容器
20 蓄熱材料

Claims (4)

  1. ホスト物質である水と、
    ゲスト物質と、を含有し、
    前記ホスト物質及び前記ゲスト物質によってセミクラスレートハイドレートが構成され、
    前記ゲスト物質は、テトラブチルアンモニウムイオンであるカチオンと、下記式(A)で表されるカルボン酸イオンであるアニオンとからなり、
    前記ゲスト物質と前記ホスト物質とによって構成されたセミクラスレートハイドレート化合物が調和融点を示すときの前記セミクラスレートハイドレート化合物における前記ゲスト物質の質量基準の濃度を調和濃度と定義したとき、
    当該蓄熱材料における前記ゲスト物質の質量基準の濃度と前記調和濃度との差の絶対値が3%以下である、
    蓄熱材料。
    R−COO- (A)
    [式中、Rは3〜5個の炭素原子を有する炭化水素基である。]
  2. 前記アニオンは、4‐メチルペンタン酸イオン、2‐メチルペンタン酸イオン、3‐メチルペンタン酸イオン、2‐エチルブチル酸イオン、n‐ペンタン酸イオン、3‐メチルブチル酸イオン、2‐メチルブチル酸イオン、又は3‐ブテン酸イオンである、請求項1に記載の蓄熱材料。
  3. 2℃〜11℃の融点を有する、請求項1又は2項に記載の蓄熱材料。
  4. 容器と、
    前記容器に収容された請求項1〜のいずれか1項に記載の蓄熱材料と、を備えた、
    蓄熱装置。
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