JP6977788B2 - セメント組成物の製造方法、及びセメント組成物の製造システム - Google Patents

セメント組成物の製造方法、及びセメント組成物の製造システム Download PDF

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Description

本開示は、セメント組成物の製造方法、及びセメント組成物の製造システムに関する。
セメントクリンカーは、石灰石、粘土、硅石、酸化鉄等を主原料として製造される。セメントクリンカーの製造では、これらの主原料の他に、各種産業副産物及び産業廃棄物等を原燃料として有効利用している。ところが、原材料の選択に応じて、セメントクリンカー中に、各種原燃料に由来するカドミウム、クロム、鉛、モリブデン等の重金属類が少量混入することがある。
重金属類のうち、六価クロムは、他の重金属類とは異なり、クロム酸イオン(CrO 2−)等の安定なオキソ陰イオンの状態で存在し、高pH条件下であっても難溶性の水酸化物を形成しない。このため、六価クロムは、その溶出対策が比較的難しい重金属に分類される。六価クロムの溶出量は、特に関東ローム等の火山灰質粘性土を地盤改良の対象とした場合に多くなることが知られている。
セメントクリンカー及びセメントは、地盤改良材の原料として用いられることもある。地盤改良土からの六価クロムの溶出量は、土壌環境基準で0.05mg/L以下に制限されている。特許文献1では、排煙脱硫工程で得られる亜硫酸カルシウム半水和物と二水石膏を含むスラリーを乾粉化して得られる還元性せっこう組成物をセメント系固化材に配合して六価クロムを三価クロムに還元し、固化処理土を無害化する技術が提案されている。
特開2007−246306号公報
市販されている亜硫酸カルシウム等の亜硫酸塩は高価であるため、市販品を用いるとセメント組成物の製造原価が上がってしまう。一方で、特許文献1のように、セメント系固化材に還元性せっこう組成物を用いることは、固化処理土からの六価クロムの溶出低減に有効ではあるものの、還元性せっこう組成物を生産することが必要となる。そこで、本開示では、六価クロムの溶出低減に有効なセメント組成物を簡便に製造することが可能なセメント組成物の製造方法及びセメント組成物の製造システムを提供する。
本開示の一側面に係るセメント組成物の製造方法は、セメントクリンカーと、亜硫酸塩組成物と、を配合して粉砕し、セメント組成物を得る混合工程を有する。この製造方法では、亜硫酸塩組成物とセメントクリンカーとを配合して粉砕しセメント組成物を得ていることから、簡便にセメント組成物を製造することができる。そして、このセメント組成物は亜硫酸塩組成物を含むことから、粉砕性に優れるとともに、例えば固化材として用いられた場合に六価クロムの溶出を低減することができる。
混合工程では、さらに石膏を配合してセメント組成物を得ることが好ましい。これによって、セメント組成物の組成を容易に調整することができる。
混合工程では、亜硫酸塩組成物を含む固形分が水を含む溶媒に分散した亜硫酸塩スラリーとして配合され、当該亜硫酸塩スラリー中の固形分の濃度が0.1〜90質量%であることが好ましい。当該固形分中の亜硫酸塩の含有量は1質量%以上であることが好ましい。これによって、取り扱い性が良好な亜硫酸塩スラリーを用いることができるとともに、セメントクリンカーに適量の水分が混合されることとなり粉砕を円滑にすることができる。また、セメント組成物中に含まれる石膏が過度に半水石膏化することを抑制し、流動性及び強度発現性に優れ、長期間貯蔵しても固結し難いセメント組成物を製造できる。このようなセメント組成物は、固化材として用いた場合に六価クロムの溶出を十分に低減することができる。
上記製造方法は、亜硫酸塩組成物を含む固形分が水を含む溶媒に分散した亜硫酸塩スラリーから水分を低減し、固形分の濃度が90質量%以上である粉末状又はケーキ状の固形物を得る水分調整工程を有し、固形分における亜硫酸塩の含有量が1質量%以上であり、混合工程では亜硫酸塩組成物は固形物として配合されることが好ましい。これによって、亜硫酸塩スラリー中の亜硫酸塩組成物の含有量が少なくても、セメント組成物中の亜硫酸塩組成物の含有量を十分に高くすることができる。また、ベルトコンベア等による輸送、及び一時的な保管が容易となり、取り扱い性を向上することができる。
亜硫酸塩組成物は、亜硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムと硫酸カルシウムとの複塩及び重亜硫酸カルシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。また、亜硫酸塩組成物を含む固形分は、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。このような成分を含有することによって、六価クロムの溶出を一層低減することが可能なセメント組成物とすることができる。
亜硫酸塩組成物に含まれる亜硫酸カルシウムは、主面の長軸及び短軸の長さがそれぞれ1〜500μm及び0.5〜300μmであり、厚さが長軸の長さの50%以下である薄片状結晶を含有することが好ましい。このような薄片状結晶を含有することによって、粉砕性に優れるとともに、比表面積を簡便に高めることが可能なセメント組成物を製造することができる。
亜硫酸塩組成物は、亜硫酸カルシウム及び重亜硫酸カルシウムの少なくとも一方の塩を含み、上記混合工程において、セメントクリンカー100質量部に対する亜硫酸塩組成物の配合比が、上記塩の無水物換算の合計(すなわち、亜硫酸カルシウムと重亜硫酸カルシウムの無水物換算の合計)で0.1〜20質量部であることが好ましい。これによって、六価クロムの溶出を十分に低い水準に維持しつつ、粉砕を十分に円滑に行うことができる。
上記製造方法は、セメントクリンカーを製造する際に発生する排ガス、火力発電設備で発生する排ガス、硫黄を燃焼して得られる燃焼ガス、及び硫黄化合物を加熱分解して得られる加熱分解ガスからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、亜硫酸ガスを含有するガスと、アルカリ土類金属及び/又はアルカリ金属を有する化合物を含む原料スラリーと、を接触させて、亜硫酸塩組成物を含む固形分が水を含む溶媒に分散した亜硫酸塩スラリーを得るスラリー調製工程を有することが好ましい。なお、アルカリ金属及びアルカリ土類金属は、炭酸塩及び/又は水酸化物として原料スラリーに含まれてよい。これによって、セメント組成物の製造コストを十分に低減することができる。
上記製造方法は、セメントキルン部の窯尻とプレヒータ部のボトムサイクロンとの間のガスを抽気して排ガスを得る抽気工程を有することが好ましい。これによって、既存のセメントクリンカー製造設備におけるバイパス部を活用して、亜硫酸塩組成物を調製することができる。ただし、本開示は、セメントクリンカーの製造設備を新設することを排除するものではない。
上記製造方法は、上記排ガスを原料スラリーと接触させる前に、排ガスを冷却して、塩素化合物を含むダスト粒子を得る冷却工程と、集塵部で排ガスからダスト粒子の少なくとも一部を除去する集塵工程と、を有することが好ましい。これによって、不要な成分が低減された亜硫酸塩組成物を効率良く製造することができる。
上記原料スラリーと接触する上記ガスは、硫黄を燃焼して得られる燃焼ガス、及び/又は硫黄化合物を加熱分解して得られる加熱分解ガスを、空気及び/又はセメントクリンカーを製造する際に発生する排ガスで希釈して得られる混合ガスを含むことが好ましい。これによって、亜硫酸ガスの濃度、及び排ガスの温度を好適な範囲に調整して、排ガスに含まれる亜硫酸ガスを効率よく亜硫酸塩組成物にすることができる。
セメント組成物のブレーン比表面積は2500〜10000cm/gであることが好ましい。亜硫酸塩組成物は粉砕性に優れることから、このようなブレーン比表面積を有するセメント組成物を円滑に製造することができる。
本開示の一側面に係るセメント組成物の製造システムは、セメントクリンカーと、亜硫酸塩組成物と、を配合して粉砕し、セメント組成物を製造する混合部を備える。この製造システムでは、亜硫酸塩組成物をセメントクリンカーに配合して粉砕する混合部を備えていることから、簡便にセメント組成物を製造することができる。そして、このセメント組成物は亜硫酸塩組成物を含むことから、粉砕性に優れるとともに、例えば固化材として用いられた場合に六価クロムの溶出を低減することができる。
上記混合部では、亜硫酸塩組成物を含む固形分が水を含む溶媒に分散した亜硫酸塩スラリーとして配合され、当該亜硫酸塩スラリー中の固形分の濃度が0.1〜90質量%であり、固形分中の亜硫酸塩の含有量が1質量%以上であることが好ましい。これによって、取り扱い性が良好な亜硫酸塩スラリーを用いることができるとともに、セメントクリンカーに適量の水分が混合されることとなり粉砕を円滑にすることができる。また、セメント組成物中に含まれる石膏が過度に半水石膏化することを抑制し、流動性及び強度発現性に優れ、長期間貯蔵しても固結し難いセメント組成物を製造できる。このようなセメント組成物は、固化材として用いた場合に六価クロムの溶出を十分に低減することができる。
上記製造システムは、硫黄分を含む原料を焼成してセメントクリンカーを得るセメントキルン部と、サイクロンを備え、原料とセメントキルン部からの排ガスを含むガスとを接触させて原料を予熱するプレヒータ部と、セメントキルン部の窯尻とプレヒータ部のボトムサイクロンとの間から亜硫酸ガスを含む排ガスを抽気するバイパス部と、排ガスを含むガスとアルカリ土類金属及びアルカリ金属の少なくとも一方の炭酸塩及び/又は水酸化物を含む原料スラリーとを接触させて、亜硫酸塩組成物を含む固形分が水を含む溶媒に分散した亜硫酸塩スラリーを得るスラリー調製部と、を備えることが好ましい。これによって、既存のセメントクリンカーの製造設備を活用することが可能となり、セメント組成物の製造コストを十分に低減しつつ、設備構成の簡略化を図ることができる。ただし、本開示は、セメントクリンカーの製造設備を新設することを排除するものではない。
上記製造システムは、セメントキルン部からの排ガスを冷却して凝集する塩素化合物を含むダスト粒子を生成する冷却部と、排ガスに含まれるダスト粒子の少なくとも一部を除去して、亜硫酸ガスを含む排ガスを得る集塵部と、を備えることが好ましい。これによって、不要な成分が低減されたスラリーを効率良く製造することができる。
上記製造システムは、硫黄を燃焼させる硫黄炉、及び/又は硫黄化合物を加熱分解する加熱炉と、上記硫黄炉で得られる燃焼ガス、及び/又は上記加熱炉で得られる加熱分解ガスを含むガスと、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の少なくとも一方の炭酸塩及び/又は水酸化物を含む原料スラリーとを接触させて、亜硫酸塩組成物を含む固形分が水を含む溶媒に分散した亜硫酸塩スラリーを得るスラリー調製部と、を備えることが好ましい。これによって、亜硫酸塩を高い含有率で含むスラリーを容易に調製することができる。
上記製造システムは、燃焼ガス及び/又は加熱分解ガスと、空気及び/又はセメントキルン部からの排ガスと、を混合するガス混合部を備え、スラリー調製部はガス混合部で得られる混合ガスを含むガスと原料スラリーとを接触させて、亜硫酸塩スラリーを得ることが好ましい。これによって、亜硫酸ガスの濃度、及びガスの温度を好適な範囲に調整して、亜硫酸ガスを効率よく亜硫酸塩組成物にすることができる。
上記製造システムは、セメントクリンカーのクロム含有量に応じて、セメントクリンカーに対する、亜硫酸塩組成物の配合比を調整する制御部を備えることが好ましい。これによって、六価クロムの溶出を十分に低減しつつ、亜硫酸塩組成物を有効活用することができる。
本開示によれば、六価クロムの溶出低減に有効なセメント組成物を簡便に製造することが可能なセメント組成物の製造方法及びセメント組成物の製造システムを提供することができる。
図1は薄片状結晶の一例を示す模式図である。図1(A)は薄片状結晶の平面図であり、図1(B)は薄片状結晶の側面図である。 図2は、セメント組成物の製造システムの一例を示す図である。 図3は、セメント組成物の製造システムの別の例を示す図である。 図4は、実施例において、スラリー調製部として用いた装置を示す図である。 図5(A)及び図5(B)は、実施例1−1の亜硫酸塩組成物のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。 図6は、横軸を粉砕時間、縦軸をブレーン比表面積として、実施例及び比較例の結果をプロットしたグラフである。
以下、場合により図面を参照して、本開示の一実施形態について説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、各要素の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
本開示の一実施形態に係るセメント組成物の製造方法は、セメントクリンカーと、亜硫酸塩組成物を含む固形分と、を配合して粉砕し、セメント組成物を得る混合工程を有する。一例として、混合工程では、セメントクリンカーと、亜硫酸塩組成物を含む固形分が水を含む溶媒に分散したスラリーとを配合した後、得られた配合物を粉砕してセメント組成物を得てもよい。別の例として、混合工程では、セメントクリンカーと亜硫酸塩組成物を含む固形分が水を含む溶媒に分散したスラリーとの配合と、粉砕とを同時に行ってもよい。さらに別の例として、混合工程では、セメントクリンカーをある程度粉砕した後、亜硫酸塩組成物を含む固形分が水を含む溶媒に分散したスラリーとを配合し、得られた配合物をさらに粉砕してもよい。上述のいずれかの混合工程では、石膏を同時に配合又は後から配合してセメント組成物を得てもよい。
本開示において、亜硫酸塩組成物とは、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、又はこれらの一方又は双方を含む複塩を含む。亜硫酸塩としては、例えばアルカリ金属及びアルカリ土類金属の亜硫酸塩、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸銅、亜硫酸鉄、亜硫酸亜鉛、及び亜硫酸アルミニウム等が挙げられる。亜硫酸塩は、例えば、亜硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウムと硫酸カルシウムとの複塩及び重亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。本開示における「亜硫酸カルシウム」は、特に言及しない限り、半水和物である。ただし、亜硫酸塩として、亜硫酸カルシウム半水和物以外の4水和物及び無水和物等、半水和物以外の水和物を含有してもよい。
亜硫酸カルシウムは、主面の長軸及び短軸の長さがそれぞれ1〜500μm及び0.5〜300μmであり、厚さが長軸の長さの50%以下である薄片状結晶を含有することが好ましい。このような亜硫酸カルシウムは、結晶サイズが小さいため反応性に優れる。薄片状結晶は粉砕性に優れることから、反応性の高い亜硫酸塩組成物を容易に製造することができる。薄片状結晶の主面の長軸及び短軸の長さと厚さは、SEMによる観察画像に基づいて測定することができる。
図1は、SEMによる観察画像に含まれる薄片状結晶の一例を示す模式図である。図1の(A)は薄片状結晶61の平面図であり、図1の(B)は薄片状結晶61の側面図である。薄片状結晶61の主面62の長軸64の長さは、板状結晶の主面(面積が最も大きい平面を有する面)において、主面の外縁上において選ばれる互いに異なる位置にある2つの点を結ぶ距離のうち、最大距離である。主面62の短軸66の長さは、主面62の長軸64に直交する方向において、主面62の外縁上において選ばれる互いに異なる位置にある2つの点を結ぶ距離のうち、最大距離である。例えば、主面が正方形である場合は、主軸及び短軸の長さは、ともに対角線の長さに等しくなる。薄片状結晶の厚さは、主面に直交する方向に沿う長さのうち、最大長さである。図1の(B)では、薄片状結晶61の厚みはTである。
主面62の長軸64の長さは、好ましくは1〜500μmであり、より好ましくは3〜300μmであり、更に好ましくは5〜150μmであり、最も好ましくは10〜100μmである。主面62の短軸66の長さは、好ましくは0.5〜300μmであり、より好ましくは1〜150μmであり、更に好ましくは5〜50μmである。薄片状結晶61の厚さTは、主面の長軸64の長さに対して、好ましくは50%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、特に好ましくは5%以下であり、最も好ましくは1%以下である。具体的には、厚さTは、例えば30μm以下であってよく、10μm以下であってよく、1μm以下であってもよい。
本開示において、亜硫酸塩組成物を含む固形分が溶媒に分散したスラリーを「亜硫酸塩スラリー」と称することもある。本開示において、原料スラリーとは、アルカリ土類金属及び/又はアルカリ金属を有する化合物が溶媒に分散されたスラリーである。そのような化合物の例としては、アルカリ土類金属及びアルカリ金属の少なくとも一方の炭酸塩及び/又は水酸化物が挙げられる。具体的には、炭酸カルシウム及び水酸化カルシウム等のカルシウム化合物であってよい。ただし、原料スラリーはカルシウム化合物以外の成分を含んでもよい。そのような成分としては、例えば、水酸化マグネシウムが挙げられる。原料スラリーにおけるカルシウム化合物の含有量は、排ガスの流量、排ガスにおける硫黄酸化物の濃度、吸収設備の大きさ等を考慮して調整することができる。原料スラリーの流動性を良好に維持する観点から、原料スラリーにおけるカルシウム化合物等の固形分の濃度は、例えば1〜90質量%であってよい。
亜硫酸塩スラリー及び原料スラリーの溶媒は、水であってよく、水を主成分とする液体であってよい。本開示におけるスラリー(亜硫酸塩スラリー及び原料スラリー)は、粒状の固体と水を主成分とする溶媒とを含む。本開示のスラリーは懸濁液であってもよいし、流動性が汚泥の同程度の流体であってもよい。
亜硫酸塩組成物を含む固形分は、亜硫酸塩組成物の他に、石膏、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、銅、アルミニウム及び亜鉛等の硫酸塩、亜硫酸塩組成物を合成する際に用いられた未反応のアルカリ成分(消石灰等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸カルシウム等のアルカリ金属及びアルカリ金属の炭酸塩等)並びにその他の不純物成分(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の塩化物;硫化カルシウム等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属の硫化物;カルシウムシリケート等のケイ酸塩化合物;鉄等の酸化物等)を含み得る。固形分は、硫酸カルシウムの二水和物、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
亜硫酸塩スラリーは、例えば、石炭、石油、石炭コークス、石油コークス等の硫黄含有燃料の排ガスに含まれる硫黄酸化物(SO、SO等)と、原料スラリーとを、接触させて得ることができる。接触の方法は特に限定されず、例えば、原料スラリー中において、排ガスをバブリングさせることによって両者を接触させてもよい。
硫黄酸化物を含有する排ガスとしては、石炭又は石油を用いる火力発電設備に設置されるボイラからの排ガス、及びセメントキルンからの排ガス等が挙げられる。火力発電設備において、石灰・石膏法による排煙脱硫工程によって亜硫酸塩スラリーを得てもよい。また、上記排ガスに代えて、又は排ガスとともに、硫黄を燃焼する硫黄炉で得られる燃焼ガス及び/又は石膏等の硫黄化合物を加熱分解する加熱炉で得られる加熱分解ガスを用いてもよい。硫黄酸化物を含有するガスは、2種以上を混合して得られる混合ガスとして用いてもよいし、空気で希釈して硫黄酸化物及び温度を調節してもよい。ただし、亜硫酸塩スラリーを得る手段は、上述のものに限定されない。
例えば、セメントキルン部からの排ガスには硫黄を含む原料から発生する硫黄酸化物が含まれている。そのため、セメントキルン部からの排ガスを原料スラリーと接触させることで亜硫酸塩組成物を含む亜硫酸塩スラリーを効率良く製造することができる。特に、セメントキルン部の窯尻から仮焼炉の間のガスには硫黄酸化物が多く含まれるため、この間の排ガスを利用すれば、亜硫酸塩を多く含む亜硫酸塩スラリーを十分に高い効率で製造することができる。セメントキルン部の窯尻から仮焼炉にかけての排ガスを抽気する設備として塩素バイパスが設置されていることが多い。したがって、塩素バイパスからガスを抽気して排ガスを得る抽気工程を行って、排ガスと原料スラリーとを接触させれば好適な亜硫酸塩スラリーを得ることができる。
また例えば、水酸化マグネシウム法による脱硫工程から排出される亜硫酸マグネシウムを含む水溶液をカルシウムで処理して亜硫酸塩スラリーを得てもよい。また、化学工場等で発生するアルカリ金属及びアルカリ土類金属の少なくとも一方を含有する水溶性亜硫酸塩を含む工業廃水を、カルシウムで処理して亜硫酸塩スラリーを得てもよい。このようにして得られる亜硫酸塩スラリーの一種を単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。
亜硫酸塩スラリーに含まれる固形分における亜硫酸塩の含有量は、例えば1質量%以上であり、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。亜硫酸塩スラリーは、固形分として、亜硫酸塩組成物以外の成分を含んでもよい。そのような成分として、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム及び硫酸カルシウム等が挙げられる。硫酸カルシウムは、二水和物(二水石膏)、半水和物(半水石膏)、及び無水物(無水石膏)のいずれを含んでもよい。亜硫酸塩スラリーが硫酸カルシウムを適量含有する場合、混合工程における石膏の配合を低減又は省略することができる。亜硫酸塩スラリーにおける硫酸カルシウム・二水和物の含有量は、固形分全体に対して例えば30質量%以下である。上述の各成分を好適な範囲で含む亜硫酸塩スラリーとする観点から、そのpHは3.0〜11.0であることが好ましく、4.0〜9.0がより好ましく、5.0〜7.0がさらに好ましい。
亜硫酸塩スラリー中の固形分の濃度は、例えば0.1〜90質量%であり、好ましくは1〜70質量%であり、より好ましくは3〜50質量%であり、さらに好ましくは5〜40質量%である。このような範囲であれば、亜硫酸塩スラリーの取り扱い性を高水準に維持しつつ、亜硫酸塩スラリーとセメント組成物との混合を十分に均一にすることができる。
セメントクリンカーは、その種類に特に制限はなく、JIS R 5210:2003「ポルトランドセメント」に規定の各種ポルトランドセメントのいずれであってもよい。本実施形態のセメント組成物によれば、十分に六価クロムの溶出を抑制できる。セメントクリンカーの全クロム量は、例えば、20〜250mg/kgであってもよく、80〜200mg/kgであってもよく、100〜150mg/kgであってもよい。セメント協会標準試験方法I−51−1981記載の方法に準拠して測定されるセメントクリンカーの水溶性六価クロムの量は、例えば、3〜40mg/kgであってもよく、10〜40mg/kgであってもよく、20〜30mg/kgであってもよい。
本実施形態の製造方法で製造されるセメント組成物は、JIS R 5210「ポルトランドセメント」に規定のポルトランドセメントにすることができる。このようなポルトランドセメントとして、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等が挙げられる。更に、これらのポルトランドセメントに、高炉スラグ、フライアッシュ及びシリカ質から選ばれる少なくとも1種を加えて混合セメントにしてもよい。
混合工程では、セメントクリンカー、亜硫酸塩スラリー及び石膏を配合して粉砕しセメント組成物を得てもよい。配合される石膏は、二水石膏、半水石膏及び無水石膏のいずれの形態であってよい。各形態の石膏は単独で配合してもよく、複数種を組み合わせて配合してもよい。セメントクリンカー、亜硫酸塩スラリー及び石膏の配合の順序は特に制限されず、これらのうちの2種を先に配合した後に残りの1種を配合してもよいし、3種を同時に配合してもよい。石膏の配合量は、セメントクリンカーに対して、SO換算で3〜10質量%程度としてよい。
混合工程における粉砕は、ボールミル、又は竪型ミル等の仕上げミルで行ってよい。仕上げミルには、セメントクリンカー、亜硫酸塩スラリー、石膏、及び粉砕助剤等を投入し、粉砕しながら混合することでセメント組成物を製造する。このようにして得られるセメント組成物には、亜硫酸塩が含まれる。したがって、セメント組成物における六価クロムの含有量を低減することができる。セメント組成物における亜硫酸塩の含有量は、例えば0.1〜15質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましく、1〜5質量%がさらに好ましい。
粉砕処理して得られるセメント組成物のブレーン比表面積は、例えば2500〜10000cm/gであり、好ましくは3000〜8000cm/gであり、より好ましくは3500〜7000cm/gであり、さらに好ましくは4300〜6000cm/gであり、最も好ましくは5000〜6000cm/gである。ブレーン比表面積が2500cm/g以上であれば、優れた強度発現性を達成しやすくなる。他方、ブレーン比表面積が10000cm/g以下であれば、コンクリート又は固化材スラリーとして使用したときの粘性を好適な範囲に制御しやすい。
セメント組成物に含まれる石膏の形態は、二水石膏又は無水石膏(II型)であることが好ましい。セメント組成物に含まれる石膏のうち、半水石膏の割合は二水石膏と無水石膏の合量に対して50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。
各種設備から発生する排ガス、燃焼ガス、及び/又は加熱分解ガスに含まれる亜硫酸ガスと原料スラリーとを接触させて得られる亜硫酸塩組成物を含む亜硫酸塩スラリーを、そのままセメントクリンカーに配合することによって、大規模な新規設備の設置をしなくても六価クロムの溶出を低減できるセメント組成物を簡便に製造することができる。亜硫酸塩スラリーは排ガス、燃焼ガス、及び/又は加熱分解ガスの脱硫にも寄与し、また、亜硫酸塩を乾燥させることなくスラリーのまま用いることから、脱硫及びセメント組成物の製造の一連のプロセスを簡素化することができる。また、セメント組成物の粉砕時における注水の代わりに亜硫酸塩スラリーを使用できること、及び、既存設備を活用して亜硫酸塩組成物とセメントクリンカーとを均一に混合できることから、製造工程の短縮及び設備の簡素化のみならず、六価クロムの溶出低減に有効なセメント組成物の製造コストを大幅に削減できるという利点がある。
上記実施形態では、亜硫酸塩スラリーとセメントクリンカーとを配合していたが、変形例では、亜硫酸塩スラリーから水分を低減し、固形分の濃度が90質量%以上である粉末状又はケーキ状の固形物を得る水分調整工程と、セメントクリンカーと、亜硫酸塩組成物を含む固形物とを配合して粉砕し、セメント組成物を得る混合工程を有する。この混合工程では、石膏を同時に配合又は後から配合してセメント組成物を得てもよい。
水分調整工程は、脱水と乾粉化を行って固形物を得てもよい。例えば、脱水して得られたケーキに、せん断を加えながら減圧乾燥して亜硫酸塩組成物を粉末状にしてもよい。固形物における固形分の濃度は、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよく、98質量%以上であってもよい。混合工程では、亜硫酸塩組成物を含むケーキ又は粉末等の固形物と、セメントクリンカーとを配合してセメント組成物を得る。石膏も併せて配合してもよい。セメント組成物は、セメントクリンカー100質量部に対して亜硫酸塩を例えば固形分基準で0.1〜20質量部含んでよく、2〜20質量部含んでもよい。
混合工程では、亜硫酸塩組成物を含むケーキ又は粉末とセメントクリンカーと石膏とを順次又は同時に粉砕機(例えばミル)に導入し、粉砕しながら混合してセメント組成物を調製してもよい。高温のセメントクリンカーと亜硫酸塩組成物を含む固形分を含有するケーキを粉砕機に導入すれば、乾燥、混合及び粉砕を並行して行ってセメント組成物を製造することができる。
上述の各例で得られるセメント組成物は、そのまま土壌改良材として用いてもよいし、石膏と配合して土壌改良材としてもよい。土壌改良土は、改良対象の土壌とセメント組成物と石膏を配合して調製してもよい。
本実施形態のセメント組成物の製造方法は、以下に説明するセメント組成物の製造システムを用いて行ってもよいし、それ以外のセメント組成物の製造システムを用いて行ってもよい。本実施形態のセメント組成物の製造方法には、以下に説明するセメント組成物の製造システムについての説明内容が適用可能である。
本開示の一実施形態に係るセメント組成物の製造システムは、セメントクリンカーと、亜硫酸塩を含むスラリーと、を配合して粉砕しセメント組成物を製造する混合部を備える。この製造システムは、セメントクリンカーの製造装置を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。亜硫酸塩組成物を含む亜硫酸塩スラリーは、硫黄含有原料を用いるセメントクリンカーの製造装置、又は火力発電設備等から排出される排ガスとCa系スラリーとを接触して得られるものであってよい。
図2は、セメント組成物の製造システムの一例を示す図である。セメント組成物の製造システム100は、硫黄分を含む原料を焼成してセメントクリンカーを生産するセメントキルン部10及び排ガスを抽気するバイパス部12を有するセメントクリンカー製造装置70と、バイパス部12から抽気された排ガスを冷却して凝集する塩素化合物を含むダスト粒子を生成する冷却部17と、排ガスに含まれるダスト粒子の少なくとも一部を除去して、亜硫酸ガスを含む排ガスを得る集塵部19と、排ガスとカルシウム化合物を含む原料スラリーとを接触させて、亜硫酸塩として亜硫酸カルシウムを含む亜硫酸塩スラリーを得るスラリー調製部30と、を備える。
セメントクリンカー製造装置70は、複数のサイクロンを備える、硫黄分を含む原料とセメントキルン部10からの排ガスとを接触させて原料を予熱するプレヒータ部(不図示)と、セメントキルン部10の窯尻とプレヒータ部のボトムサイクロン(最下部にあるサイクロン)又は仮焼炉との間から亜硫酸ガスを含む排ガスを抽気するバイパス部12と、を備える。このバイパス部12は、セメントクリンカー製造装置70の塩素バイパス部であってよい。
セメントキルン部10では、石炭、及び石油コークス等が燃焼し、二酸化硫黄を含む排ガスが発生する。セメントキルン部10の窯尻とボトムサイクロン又は仮焼炉(図示せず)の間に、バイパス部12を構成する抽気管から抽気したガスを排ガスとして用いる。このバイパス部12からの排ガス中の二酸化硫黄の濃度は、体積基準(標準状態)で、例えば100〜5000ppm程度であってよい。バイパス部12から排ガスが抽気される(抽気工程)。抽気された排ガスは、冷却部17によって例えば100〜200℃程度に冷却される(冷却工程)。冷却部17における冷却は、排ガスに外気(空気)等を混ぜることによって行ってもよいし、冷却水又は空気等との熱を用いたクーラーによって行ってもよい。
排ガスを冷却することによって、排ガスに元々含まれるダスト粒子の表面に揮発性の塩素化合物等が凝集する。このようなダスト粒子の少なくとも一部は、集塵部19によって取り除かれる(集塵工程)。集塵部19は、例えばバグフィルタを有する。排ガスがダスト粒子を含んでいてもよい場合は、集塵部19をバイパスしてもよい。
集塵部19においてダスト粒子の少なくとも一部が取り除かれた排ガスは、スラリー調製部30に導入される。スラリー調製部30は、例えば、カルシウム化合物を含む原料スラリーを貯留するバブリング槽を備える。原料スラリー中に排ガスを導入してバブリングさせることによって両者を接触させる(スラリー調製工程)。これによって、二酸化硫黄が原料スラリーに取り込まれて、亜硫酸塩スラリーを得ることができる。また、大気中への放出が規制される二酸化硫黄の有効利用を図ることができる。このようにスラリー調製部30は、排煙脱硫部としても機能する。なお、原料スラリーと排ガスの接触手段はバブリングに限定されるものではない。
スラリー調製部30には、空気を導入してもよい。これによって、亜硫酸カルシウムの一部を酸化して硫酸カルシウムの二水和物を得てもよい。これによって、亜硫酸カルシウムと硫酸カルシウムの二水和物とを含む亜硫酸塩スラリーを得ることができる。亜硫酸塩スラリーが硫酸カルシウムの二水和物を含有することによって、配合部51における石膏の配合量を低減又はなくすことができる。亜硫酸塩スラリーに含まれる固形分における亜硫酸塩の含有量は、例えば1質量%以上であり、好ましくは10質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。各亜硫酸塩の含有量は、例えば、実施例に示すような熱重量分析、又はXRDリートベルト法によって求めることができる。亜硫酸塩スラリーは、固形分として、亜硫酸塩組成物以外の成分を含んでもよい。そのような成分として、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム及び硫酸カルシウム等が挙げられる。
スラリー調製部30で得られた亜硫酸塩スラリーと、セメントクリンカーは、混合部50における配合部51に導入される。セメントクリンカーは、一旦サイロ18に貯留されたものであってもよいし、セメントキルン部10で得られたものをそのまま用いてもよい。亜硫酸塩スラリーは、送液部を経由して配合部51に導入される。
配合部51では、必要に応じて石膏を配合してもよい。亜硫酸塩スラリーは、亜硫酸カルシウム及び重亜硫酸カルシウムの少なくとも一方の塩を含んでよい。セメントクリンカー100質量部に対する亜硫酸塩スラリーの配合比は、上記塩の無水物換算の合計で、好ましくは0.1〜20質量部であり、より好ましくは0.15〜15質量部であり、さらに好ましくは0.2〜10質量部であり、特に好ましくは0.25〜5質量部である。これによって、得られるセメント組成物における亜硫酸塩組成物の含有量を維持しつつ、配合物の粉砕を円滑に行うことができる。セメントクリンカー100質量部に対する石膏の配合比は、SO換算で1.5〜20質量部程度であってよい。
セメントクリンカー、亜硫酸塩及び石膏を含む配合物は、仕上げミル52に導入される。仕上げミル52は、ボールミルであってよいし竪型ミルであってもよい。仕上げミル52は、粉砕時の摩擦熱により温度が上昇する傾向にある。仕上げミル52内部の温度が過剰に上昇しないように仕上げミル52内に散水することが行われる。したがって亜硫酸塩スラリーが水分を含むことによって、仕上げミル52内の過剰な温度上昇を抑制することができる。このため、亜硫酸塩をスラリー状で配合することは、仕上げミル52内への散水量の低減にも寄与する。
仕上げミル52の温度は、好ましくは20℃〜180℃であり、より好ましくは40℃〜130℃であり、さらに好ましくは70℃〜110℃である。仕上げミル52の温度が80℃よりも低くなると、亜硫酸塩スラリーの水分がセメント組成物と水和反応を起こす傾向がある。一方、180℃を超えると、亜硫酸カルシウムが酸化されて硫酸カルシウムに変化する傾向がある。すなわち、仕上げミル52を上述の温度範囲にすることによって、亜硫酸カルシウムの酸化を抑制しつつ、配合物の乾燥が十分な速度で進行する。また、セメントクリンカー、亜硫酸カルシウム及び石膏を十分均一に混合することができる(混合工程)。
このようにして得られる、六価クロムの溶出量を低減することが可能なセメント組成物は、サイロ60に収容して保管してもよい。本例では、混合部50は、配合部51と仕上げミル52を備えるが、これに限定されない。例えば、本例の変形例では、セメントクリンカー、亜硫酸塩スラリー及び必要に応じて配合される石膏は、仕上げミル52に直接投入され、仕上げミル52で配合及び粉砕を行ってもよい。また、セメントクリンカーと石膏を配合部51で配合し、配合部51から仕上げミル52に得られた配合物を搬送するベルトコンベア上において、配合物に亜硫酸塩スラリーを散布し、仕上げミル52で粉砕を行ってもよい。
別の変形例では、スラリー調製部30で調製された亜硫酸塩スラリーの少なくとも一部が、水分調整部に導入されてよい。水分調整部は、脱水又は加水によって、亜硫酸塩スラリー中の固形分濃度を調整可能に構成される。亜硫酸塩スラリー中の固形分濃度は、0.1〜95質量%であってよい。スラリー濃度調製部では、亜硫酸塩スラリーの脱水及び/又は乾燥を行って、脱水ケーキ状又は粉末状の固形物を得てもよい。これによって、亜硫酸塩スラリー中の亜硫酸塩組成物の含有量が少なくても、セメント組成物中の亜硫酸塩組成物の含有量を十分に高くすることができる。また、ベルトコンベア等による輸送、及び一時的な保管が容易となり、取り扱い性を向上することができる。固形物における固形分の濃度は、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよく、98質量%以上であってもよい。
さらに別の変形例では、セメントキルン部10から導出されるセメントクリンカーのクロム含有量に応じて、セメントクリンカーに対する亜硫酸塩スラリーの配合比を調整する制御部を備えていてもよい。セメントクリンカーのクロム含有量は、所定の頻度でサイロ18からサンプリングして計測してもよいし、セメントクリンカー製造装置70に導入される原料に含まれるクロム含有量から計算で求めてもよい。
制御部は、上述のようにして求められるセメントクリンカーのクロム含有量の入力値に基づいて、セメントクリンカーに配合される亜硫酸塩スラリー(亜硫酸塩組成物)の量を算出する。制御部は、セメントクロム含有量と亜硫酸塩スラリーの配合量の関係を示すテーブルデータを有していてもよいし、両者の相関式データを有していてもよい。制御部は、このようなデータを用いて亜硫酸塩スラリーの配合量を算出する。制御部は算出結果に基づいて、例えば、亜硫酸塩スラリーの流量を調節する流量調節弁の制御を行う。このようにして、セメントクリンカーに対する亜硫酸塩スラリーの配合比を調整することができる。このような制御は、流動性を有するスラリーであるために容易に実現することができる。
セメント組成物の製造システム100及びその変形例は、既存のセメントクリンカーの製造装置を用いれば、大掛かりな新規設備の設置をせずに、六価クロムの溶出が低減できるセメント組成物を製造することができる。亜硫酸塩スラリーの製造と、排ガスの脱硫を併せて行うことが可能であるうえに、スラリーの脱水設備等を設けたり、脱水後の固形物用の専用タンク、計量機、輸送設備を設けたりすることが必要ではなくなる。このため、設備の導入コスト及び運転コストを十分に低減することができる。
図3は、セメント組成物の製造システムの別の例を示す図である。図3の製造システム110は、セメントクリンカー製造装置70からの排ガスに代えて、ボイラ40の排ガスを使用している点で、図2の製造システムと異なっている。その他の点は、図2の製造システム100と同じである。ここでは、製造システム100とは異なる点を中心に説明する。
ボイラ40は、例えば火力発電設備に備えられるボイラである。ボイラ40からの排ガスには二酸化硫黄が含まれる。排ガスは、スラリー調製部30Aに導入される。スラリー調製部30Aは、スラリー調製部30と同様の構成及び機能を有する。したがって、スラリー調製部30Aにおいて、二酸化硫黄が原料スラリーに取り込まれて、亜硫酸塩スラリーを得ることができる。また、大気中への放出が規制される二酸化硫黄の有効利用を図ることができる。
ボイラ40が、セメントクリンカー製造装置70及び粉砕設備から離れて設置されている場合、ボイラ40からの排ガスと原料スラリーとを接触させて得られる亜硫酸塩スラリーを、パイプライン、タンクローリー車、又は船で搬送してもよい。
セメント組成物の製造システム110であれば、排ガスに含まれる二酸化硫黄を活用して、六価クロムの溶出が低減できるセメント組成物を製造することができる。
本実施形態のセメント組成物の製造システムは、上述したセメント組成物の製造方法を用いて行ってもよいし、それ以外のセメント組成物の製造方法を行ってもよい。本実施形態のセメント組成物の製造システムにも、上述したセメント組成物の製造方法についての説明内容が適用可能である。
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、ボイラ40の代わりに硫黄を燃焼する硫黄炉を用いてもよく、石膏等の硫黄化合物を加熱分解する加熱炉を用いてもよい。硫黄炉において硫黄を燃焼して得られた燃焼ガス、及び/又は加熱炉において石膏等の硫黄化合物を分解して得られた加熱分解ガスをスラリー調製部30(30A)に導入して亜硫酸塩組成物を含む亜硫酸塩スラリーを調製してもよい。燃焼ガス及び/又は加熱分解ガスは、ガス混合部において、他のガス(排ガス)で希釈して二酸化硫黄濃度及び温度が調整された混合ガスとしてよい。このような混合ガスを単独で又は他の排ガスとともにスラリー調製部30(30A)に導入してよい。他のガスは、空気であってよく、セメントクリンカー製造装置の塩素バイパス部から抽気された排ガスであってもよい。
実施例及び比較例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
(実施例1−1〜実施例1−9)
[亜硫酸塩スラリーの調製]
スラリー調製部としての機能を有する図4に示すような製造装置を用いた。図4の製造装置31は、亜硫酸塩組成物を含む亜硫酸塩スラリーを調製する吸収塔81と、原料スラリーを吸収塔81に供給する原料スラリータンク90と、吸収塔81から導出ライン85で導出された亜硫酸塩スラリーを貯留する亜硫酸塩スラリータンク92と、亜硫酸塩スラリーに含まれる水分を低減する水分調整部94と、亜硫酸塩スラリーを冷却する冷却部95とを備える。吸収塔81の底部に滞留する亜硫酸塩スラリー98は、冷却部95から冷却液が供給される熱交換器96との熱交換によって冷却される。
吸収塔81の底部に滞留する亜硫酸塩スラリーの一部は吸収塔81の上部に循環ライン82によって循環され、ノズル84で吸収塔81内に噴霧される。吸収塔81の底部に滞留する亜硫酸塩スラリーの他部は、導出ライン85を経由して亜硫酸塩スラリータンク92に導出される。
セメントキルン部の窯尻とプレヒータ部のボトムサイクロンとの間のガスを抽気して得られた排ガスを含む原料ガスを、ガス導入部86から吸収塔81に約200℃で導入した。また、炭酸カルシウムを含む原料スラリーを原料スラリータンク90から吸収塔81に導入した。吸収塔81の底部に滞留する亜硫酸塩スラリー98のpHを5.50〜5.80に調節しながら、表1に示すとおり、原料ガス中のSO濃度を変えて、亜硫酸塩スラリーに含まれる固形分の組成が互いに異なる実施例1−1〜1−9の亜硫酸塩スラリーを製造した。各実施例における、吸収塔81の底部の亜硫酸塩スラリー98の温度は、表1に示すとおりであった。
[亜硫酸塩スラリー中の固形分濃度の分析]
亜硫酸塩スラリーを、空気中、100℃で乾燥し、質量減少量から固形分濃度を測定した。具体的な計算式は以下のとおりである。各実施例の固形分濃度は表1に示すとおりであった。
・固形分濃度(質量%)=(亜硫酸塩スラリーの質量−質量減少量)/亜硫酸塩スラリーの質量×100
[固形分の組成分析]
亜硫酸塩スラリーをろ過して脱水してケーキを得た。このケーキを、空気中、60℃で乾燥して固形分を得た。得られた固形分の粉末XRD分析を行い、亜硫酸カルシウム・半水和物、炭酸カルシウム、及び二水石膏のみが検出されることを確認した。その後、熱重量分析を行って、固形分中の亜硫酸カルシウム半水和物、炭酸カルシウム、及び二水石膏の含有率(質量%)を求めた。結果は、表1に示すとおりであった。なお、各分析条件は下記のとおりとした。
<粉末XRD分析>
X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製、加速電圧:30kV、電流:10mA、管球:Cu)を用いた。
<熱重量分析>
市販の熱重量分析計を用い、200℃、600℃及び900℃に加熱したときの熱重量変化を測定した。200℃では二水石膏が脱水する。600℃では亜硫酸カルシウムが酸化する。900℃では炭酸カルシウムが分解する。各温度における質量の変化を利用して、以下の式に基づいて、二水石膏、亜硫酸カルシウム及び炭酸カルシウムの含有率をそれぞれ算出した。試料質量とは、熱重量分析に用いた固形分の質量である。なお、各加熱温度における保持は、重量変化がなくなるまでとした。各加熱温度における保持時間は、それぞれ1時間であった。また、加熱時の雰囲気はいずれも空気とした。
・二水石膏の含有率(質量%)=室温から200℃に加熱して質量変化がなくなるまでの質量減少量×([二水石膏の分子量]/[二水石膏中に含まれる結晶水の分子量])/試料質量×100
・炭酸カルシウムの含有率(質量%)=(900℃に加熱して質量変化がなくなった後の試料の質量−600℃に加熱して質量変化がなくなった後の試料の質量)×[CaCOの分子量]/[COの分子量]/試料の質量×100
・亜硫酸カルシウムの含有率(質量%)=100−(二水石膏の含有率+炭酸カルシウムの含有率)
Figure 0006977788
表1に示すとおり、実施例1−1〜1−9は、いずれも、固形分中に亜硫酸カルシウム・半水和物、炭酸カルシウム及び二水石膏を含有しており、亜硫酸カルシウム・半水和物の含有率が30質量%以上であった。
図5(A)及び図5(B)は、実施例1−1の亜硫酸塩組成物のSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。図5(A)は、図5(B)よりも拡大して示すSEM写真である。亜硫酸塩組成物に含まれる亜硫酸カルシウム・半水和物の結晶は、主面における短軸の長さが10〜30μm、主面における長軸の長さが15〜100μmであり、厚みが1μmである薄い板状結晶であることが確認された。このような結晶は粉砕されやすく、粉砕機を用いなくても容易に1μm未満の微粒子にすることができる。
(実施例2−1〜2−5、比較例2−1〜2−4)
[セメント組成物の調製]
実施例1−9の亜硫酸塩スラリーを、空気中、40℃で乾燥して亜硫酸塩組成物を含む粉末状の固形物(含水率:<1質量%)を調製した。この固形物及び/又は排煙脱硫石膏と、普通ポルトランドセメントクリンカーとを、表2に示す配合でボールミルに投入し、所定の時間粉砕してセメント組成物を得た。このようにして得たセメント組成物の粉末度を評価した。評価方法は以下のとおりである。なお、ここで用いた排煙脱硫石膏は、石灰−石膏法で脱硫している火力発電設備で生成された二水石膏である(以下、排脱二水石膏という)。
[セメント組成物の粉末度の評価]
セメント組成物の粉末度は、ブレーン比表面積と、45μm残分で評価した。ブレーン比表面積は、JIS R5201:2015「セメントの物理試験方法」に準拠して測定した。45μm残分は、JCAS K−02−2004「45μm網ふるいによるセメントの粉末度試験方法」に準拠して測定した。これらの測定結果は表2に示すとおりであった。
Figure 0006977788
[セメント組成物の粉砕性の評価結果]
亜硫酸塩組成物を含む固形物を配合した実施例2−1及び実施例2−2のセメント組成物は、亜硫酸塩組成物を配合していない比較例2−1のセメント組成物に対して、短い粉砕時間でブレーン比表面積が4420〜4470cm/gとなった。
図6は、横軸を粉砕時間、縦軸をブレーン比表面積として、表2の結果をプロットしたグラフである。図6中、黒丸は、亜硫酸塩組成物を含む固形物の配合割合が15.5質量%の場合のデータ(実施例2−2,2−5)であり、黒四角は、亜硫酸塩組成物を含む固形物の配合割合が4質量%及び排脱二水石膏の配合割合が11.5質量%のデータ(実施例2−1,2−3,2−4)である。一方、白三角は、亜硫酸塩組成物が配合されておらず、排脱二水石膏の配合割合が15.5質量%のデータ(比較例2−1〜2−4)である。図6に示すとおり、亜硫酸塩組成物を含む固形物を配合すると短時間でブレーン比表面積を高くできることが確認された。このように、亜硫酸カルシウム・半水和物を含む亜硫酸塩組成物を配合することによってセメント組成物の粉砕効率を向上することができる。
(実施例3−1)
[セメント組成物の製造]
セメント製造に通常用いられているボールミルを使用して、普通ポルトランドセメントクリンカー、二水石膏及び亜硫酸塩組成物を含む亜硫酸塩スラリーを混合して粉砕し、実施例3−1のセメント組成物を製造した。
亜硫酸塩スラリーとしては、実施例1−1〜実施例1−9と同様にして調製した亜硫酸塩スラリーを用いた。固形分濃度が6質量%である亜硫酸塩スラリーを脱水して含水率60質量%の脱水ケーキを調製し、ボールミルに投入した。亜硫酸塩スラリーの固形分の組成は、亜硫酸カルシウム・半水和物が78.1質量%、二水石膏が16.3質量%、炭酸カルシウムが5.6質量%であった。
固形分の組成と配合比から算出される、セメント組成物における亜硫酸カルシウム・半水和物の含有率は3.48質量%であった。セメント組成物のブレーン比表面積は、5050cm/gであった。亜硫酸塩組成物を含有する亜硫酸塩スラリーを添加しない場合に比べて、セメント組成物の単位時間当たりのミル挽き入れ量が最大60%向上した。したがって、セメント組成物の生産量を増加することができた。
[固化処理土の評価]
実施例3−1のセメント組成物を用いて、以下の要領で土壌の地盤改良を行い、その性能を評価した。処理対象土として、関東ローム(湿潤密度:1.36cm/g)を準備した。この処理対象土に対し、実施例3−1のセメント組成物を、300kg/mの割合で配合し、ホバートミキサーを用いて混合し、混合物を得た。
調製した混合物を、直径50mm×高さ100mmの円柱型枠内にランマーを用いて3層詰めした後、20℃で材齢7日まで密封養生し、固化処理土を作製した。作製した固化処理土について、環境庁告示46号(平成3年8月23日)に則って溶出試験を行い、六価クロム[Cr(VI)]の溶出量を求めところ、六価クロムの溶出量は、土壌環境基準の基準値(0.05mg/L以下)を満足した。
本開示によれば、六価クロムの溶出低減に有効なセメント組成物を簡便に製造することが可能なセメント組成物の製造方法及びセメント組成物の製造システムを提供することができる。
10…セメントキルン部、12…バイパス部、17…冷却部、18…サイロ、19…集塵部、30,30A…スラリー調製部、31…製造装置、40…ボイラ、50…混合部、51…配合部、52…ミル、60…サイロ、61…薄片状結晶、62…主面、64…長軸、66…短軸、70…セメントクリンカー製造装置、81…吸収塔、82…循環ライン、84…ノズル、85…導出ライン、86…ガス導入部、90…原料スラリータンク、92…亜硫酸塩スラリータンク、94…水分調整部、95…冷却部、96…熱交換器、98…亜硫酸塩スラリー、100…製造システム。

Claims (22)

  1. セメントクリンカーと、亜硫酸カルシウムを含む亜硫酸塩組成物と、を配合して粉砕し、セメント組成物を得る混合工程を有し、
    前記亜硫酸カルシウムは、主面の長軸及び短軸の長さがそれぞれ1〜500μm及び0.5〜300μmであり、厚さが前記長軸の長さの50%以下である薄片状結晶を含有する、セメント組成物の製造方法。
  2. 前記混合工程では、さらに石膏を配合して前記セメント組成物を得る、請求項1に記載のセメント組成物の製造方法。
  3. 前記混合工程では、前記亜硫酸塩組成物を含む固形分が水を含む溶媒に分散した亜硫酸塩スラリーとして配合され、
    当該亜硫酸塩スラリー中の前記固形分の濃度が0.1〜90質量%であり、
    前記固形分中の亜硫酸カルシウムの含有量が1質量%以上である、請求項1又は2に記載のセメント組成物の製造方法。
  4. 前記亜硫酸塩組成物を含む固形分が水を含む溶媒に分散した亜硫酸塩スラリーから水分を低減し、前記固形分の濃度が90質量%以上である粉末状又はケーキ状の固形物を得る水分調整工程を有し、
    前記固形分における亜硫酸カルシウムの含有量が1質量%以上であり、
    前記混合工程では前記亜硫酸塩組成物は前記固形物として配合される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造方法。
  5. 前記薄片状結晶は、前記主面の長軸及び短軸の長さがそれぞれ15〜100μm及び10〜30μmであり、前記厚さが1μmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造方法。
  6. 前記亜硫酸塩組成物を含む固形分における前記亜硫酸カルシウムの前記薄片状結晶の含有率が30質量%以上である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造方法。
  7. 前記亜硫酸塩組成物を含む固形分は、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、及び水酸化マグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種を含有し、
    前記混合工程では、前記セメントクリンカーと前記固形分とを配合して粉砕し、前記セメント組成物を得る、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造方法。
  8. 記混合工程において、前記セメントクリンカー100質量部に対する前記亜硫酸塩組成物の配合比は、前記亜硫酸カルシウムの無水物換算で0.1〜20質量部である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造方法。
  9. 前記セメントクリンカーを製造する際に発生する排ガス、火力発電設備で発生する排ガス、硫黄を燃焼して得られる燃焼ガス、及び硫黄化合物を加熱分解して得られる加熱分解ガスからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、亜硫酸ガスを含有するガスと、
    カルシウム化合物を含む原料スラリーと、を接触させて、前記亜硫酸塩組成物を含む固形分が水を含む溶媒に分散した亜硫酸塩スラリーを得るスラリー調製工程を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造方法。
  10. セメントキルン部の窯尻とプレヒータ部のボトムサイクロンとの間のガスを抽気して前記排ガスを得る抽気工程を有する、請求項9に記載のセメント組成物の製造方法。
  11. 前記排ガスを前記原料スラリーと接触させる前に、
    前記排ガスを冷却して、塩素化合物を含むダスト粒子を得る冷却工程と、
    集塵部で前記排ガスから前記ダスト粒子の少なくとも一部を除去する集塵工程と、を有する、請求項9又は10に記載のセメント組成物の製造方法。
  12. 前記原料スラリーと接触する前記ガスは、硫黄を燃焼して得られる燃焼ガス、及び/又は硫黄化合物を加熱分解して得られる加熱分解ガスを、空気及び/又は前記セメントクリンカーを製造する際に発生する前記排ガスで希釈して得られる混合ガスを含む、請求項9〜11のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造方法。
  13. セメント組成物のブレーン比表面積が、2500〜10000cm/gである、請求項1〜12のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造方法。
  14. セメントクリンカーと、亜硫酸カルシウムを含む亜硫酸塩組成物と、を配合して粉砕し、セメント組成物を製造する混合部を備え
    前記亜硫酸カルシウムは、主面の長軸及び短軸の長さがそれぞれ1〜500μm及び0.5〜300μmであり、厚さが前記長軸の長さの50%以下である薄片状結晶を含有する、セメント組成物の製造システム。
  15. 前記混合部では、前記亜硫酸塩組成物を含む固形分が水を含む溶媒に分散した亜硫酸塩スラリーとして配合され、
    当該亜硫酸塩スラリー中の前記固形分の濃度が0.1〜90質量%であり、
    前記固形分中の亜硫酸カルシウムの含有量が1質量%以上である、請求項14に記載のセメント組成物の製造システム。
  16. 前記薄片状結晶は、前記主面の長軸及び短軸の長さがそれぞれ15〜100μm及び10〜30μmであり、前記厚さが1μmである、請求項14又は15に記載のセメント組成物の製造システム。
  17. 前記亜硫酸塩組成物を含む固形分における前記亜硫酸カルシウムの前記薄片状結晶の含有率が30質量%以上である、請求項14〜16のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造システム。
  18. 硫黄分を含む原料を焼成して前記セメントクリンカーを得るセメントキルン部と、
    サイクロンを備え、前記原料と前記セメントキルン部からの排ガスを含むガスとを接触させて前記原料を予熱するプレヒータ部と、
    前記セメントキルン部の窯尻と前記プレヒータ部のボトムサイクロンとの間から亜硫酸ガスを含む排ガスを抽気するバイパス部と、
    前記排ガスを含むガスと炭酸カルシウム及び/又は水酸化カルシウムを含む原料スラリーとを接触させて、前記亜硫酸塩組成物を含む固形分が水を含む溶媒に分散した亜硫酸塩スラリーを得るスラリー調製部と、を備える、請求項14〜17のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造システム。
  19. 前記セメントキルン部からの前記排ガスを冷却して凝集する塩素化合物を含むダスト粒子を生成する冷却部と、
    前記排ガスに含まれる前記ダスト粒子の少なくとも一部を除去して、亜硫酸ガスを含む前記排ガスを得る集塵部と、を備える、請求項1に記載のセメント組成物の製造システム。
  20. 硫黄を燃焼する硫黄炉、及び/又は硫黄化合物を加熱分解する加熱炉と、
    前記硫黄炉で得られる燃焼ガス、及び/又は前記加熱炉で得られる加熱分解ガスを含むガスと、炭酸カルシウム及び/又は水酸化カルシウムを含む原料スラリーとを接触させて、前記亜硫酸塩組成物を含む固形分が水を含む溶媒に分散した亜硫酸塩スラリーを得るスラリー調製部と、を備える、請求項14〜19のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造システム。
  21. 前記燃焼ガス及び/又は前記加熱分解ガスと、空気及び/又はセメントキルン部からの排ガスと、を混合するガス混合部を備え、前記スラリー調製部は前記ガス混合部で得られる混合ガスを含む前記ガスと前記原料スラリーとを接触させて、前記亜硫酸塩スラリーを得る、請求項20に記載のセメント組成物の製造システム。
  22. 前記セメントクリンカーのクロム含有量に応じて、前記セメントクリンカーに対する、前記亜硫酸塩組成物の配合比を調整する制御部を備える、請求項14〜21のいずれか一項に記載のセメント組成物の製造システム。
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